上条「インデックスを無視し続けたらどうなるか」(142)


【朝】

禁書「ふあー……」

上条「……」スタスタ

禁書「とうまー、おはよー」

上条「……」

禁書「…?」

禁書「とーうーまー! おーはーよーうー!」

 一言ごと、上条の背をバシバシと叩くが、

上条「うー…トイレトイレっと……」

  バタン……

禁書「わっ…!」

禁書「……」

禁書「むぅ~……?」


禁書「とうま、具合でもわるいのかな…?」

  ガチャリ

上条「ふいー、スッキリしたー」

禁書「とーまー?」

禁書「ねぇ、とーまぁー?」

 流しでじゃばじゃば手を洗う上条の顔を、
 流しの上に乗っかり10センチの至近距離で覗き込んでみるが、

上条「……」じゃばじゃば

禁書「……」どきどき

上条「さーて、学校の準備しなきゃ」

禁書「あっ…」

 上条は手を拭くと、すたこらと部屋の方へと行ってしまった。

禁書「むぅ~……」


 上条はてきぱきと教科書を集め、鞄に入れている。

禁書「ねぇ、とうまー? おなかすいたんだよー?」

上条「……」

禁書「……」

 すぅーっと、思いっきり息を吸って、

禁書「とーーおーーまーー!!!!」

 上条の耳元、ゼロ距離で叫んだ。
 ベッドで寝ていたスフィンクスが、にゃっと飛び起きる。

上条「……」

 上条の、鞄に教科書を入れる手が止まった気がした。

禁書「とうま…?」


上条「…あ、まずい!! もうこんな時間か!!」

上条「急がないと遅刻だ!!」

 上条は鞄を背負うとそそくさととドアへと向かう。

禁書「あ、待って! 朝ご飯がまだ…」

 バタン!!

禁書「行っちゃった……」


禁書「スフィンクスーおなかすいたんだよー……」

 スフィンクスを、ぎゅっと抱きしめた。

スフィンクス「にゃあ?」

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

禁書「スフィンクスはいいよねー、キャットフードがあるから」

 ガツガツとキャットフードを食べるスフィンクスが妬ましかった。

禁書(とうま、いったいどうしちゃったのかな?)

 とても不機嫌なように見えたけれど……

禁書「もしかして学校に遅れそうだったから、とかかな…?」

禁書「それにしても、ご飯も用意しないとは薄情な…!」

 帰ってきたら思いっきりかみついてやろう。
 インデックスはそう決意した。


【昼】

禁書「おなかすいて死にそう……」

禁書「昼ご飯もないし……」

禁書「なにかないかなー」

 と、冷蔵庫の中をあさってみると、

禁書「む、昨日の夜ご飯の残りを発見!!」

禁書「助かったんだよ!」

 お腹いっぱいになったインデックスは、そのままベッドで眠りました。


【夜】

 目が覚めて、部屋がすっかり暗くなっていることに気づいた。

禁書「もう夜…?」

 電気を付けて、時計を確認してみると、現在18時半。
 どうやら上条はまだ帰ってきてないらしい。

禁書「おそいなー……」

【19:00】

禁書「あ、超機動少女カナミンの時間だ」

  ポチ

  わーわー

  いけーいけー

【19:30】

禁書「あー面白かったー」

禁書「……」

禁書「とうま、どこでなにやっているのかな……」ぐすん


【21:30】

禁書「さびしーよー、スフィンクスー」ギュ

スフィンクス「にゃあ?」

禁書「夜ご飯たべたいー、おなかすいたー」

禁書「こんなかわいい女の子を放置プレイなんて、
    帰ってきたらぜったい許さないんだから!」

 と、怒りを新たにするインデックスだったが、

【22:00】

  ガチャ

上条「ああー、つかれたー」

禁書「とうまー!」

禁書「おかえりなんだよー!」

 怒りなど忘れて満面の笑みで出迎えに行くインデックスだった。


上条「まったくあいつめ」

上条「とうとつに耐久カラオケしようなど言い出しやがって…」

 上条は、ドアの前の廊下に立って目を輝かせるインデックスを
 ヒョイと避けて部屋の中に入っていった。

禁書「……」


禁書「とうま……ひょっとして、怒ってる?」

 ベッドにもたれ掛かってる上条に向かって、おずおず聞いてみた。

上条「……」

禁書「えーっと、その……」

禁書「もし私のせいだって言うなら、謝ってあげてもいいかも……」

上条「……」

禁書「ごめんなさいなんだよ」

禁書「だから、」

 てへへっと笑って、

禁書「夜ご飯作ってくれるとありがたいかなーって、
    禁書は禁書は懇切丁寧にお願いしてみたり……って、あ!」

 しかし上条は話を最後まで聞きもせずに、

上条「のど痛てー、うがいしよっと」サッ

禁書「……むぅ」

禁書「謝ってあげたのに、聞きもしないとは……!」


 『えー、今日のニュースは……』

 『田代商社代表取締役の田代まさしが女風呂を覗いた現行犯で逮捕され……』

 『これで5度目の逮捕となり……』

上条「ふむふむ……」

禁書「なんか面白いニュースやってるの?」

 テーブル前に座っている上条の隣に、自分もちょこんと腰を下ろす。

上条「うーむ、田代商社もついに倒産かー…」

禁書「なーに、それ?」

 上条は興味深そうにテレビを見ているが、
 インデックス的には小難しい話はちんぷんかんぷんだし、だいたい興味も無いし、
 ぶっちゃけニュースなんて見ていても暇なだけである。

 だが、そういう価値観の違いが気持ちのすれ違いを生み出すのかも、と
 ニュース内容について会話してみようと試みたのだが、

上条「……」ムシ!

禁書「……はぁ」

 思わずため息が漏れた。
 ここまで完全無視されるとさすがに精神的にきついものがあった。


禁書「とうまー、おなかすいたんだよー?」

上条「……」

上条「あ、すっかり忘れていた」

禁書「!?」

 上条はテーブルの上に無造作に置かれた買い物袋を手に取った。
 そのまま、コンビニの店名が印刷されたビニール袋に手を突っ込み、取り出した物は、

禁書「わあ!!」

禁書「ねーねー、くれるの? くれるの?」

 上条の手にあるのは、菓子パンだった。

上条「今日中に食べないと固くなっちゃうからなー」

 と、包装を開けてむしゃむしゃ食べ始めた。

禁書「……あのー」

上条「……」もぐもぐ

禁書「私のぶんはどこかなー…?」


上条「……」もぐもぐ

禁書「……ごくり」

禁書「半分でいいから…私にももらえるととっても嬉しいかなーって、思っていたり……」

 しかし上条は一定のペースで食べ続け、菓子パンはみるみるうちに小さくなっていく。

禁書「ねえ、聞いてるの!?」ゆさゆさ!

上条「……」もぐもぐ



 もはや残り数口分というところである。

禁書「……」

禁書「もらいっ!」

 飛びかかり、上条の手ごと菓子パンに食らいつこうとするが、

上条「……」ぴょい ぱく

 空振り。
 最後のひとかけらを、上条が全部口に放り込んでしまったのだ。

禁書「……」

上条「さーて、風呂入って寝よっと」

禁書「……」


【上条入浴中】

禁書「スフィンクスー、私はどうしたらいいんだろうね……?」

禁書「どうしたらとうまが機嫌直してくれるかな?」

禁書「……」

禁書「そうだ!」

 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

禁書「よし、こんなところかな」

 見えそうで見えないパンツ。
 はだけかけたシャツ。
 うん、完璧だ。

 浴室前のドアに横になったインデックスは、一人相づちを打った。

 名付けてエロエロ作戦だ。
 自分のこんな魅力的な姿を見れば、いくら不機嫌な上条だってイチコロのはず!



 などと考えていると、

  ガチャ

上条「ふー、いい湯だったー」

禁書「とととと、とうま!」

 できる限り色ぽい声を出すようにして、

禁書「その…ちょっとだけならさわっても許してあげるかも…あ!」

上条「……」スタスタ

 決死の思いのインデックスを平然とまたいで乗り越える上条。
 まるで床に落ちたゴミ袋か何かのような扱いだった。

上条「さーて、もう遅いし。そろそろ寝よっと」

 上条は大きくあくびをして、ベッドに横になった。


禁書「ひ、ひどい……」うる…


【上条就寝中】

禁書「どうしてこうなったんだろう……」

 上条にベッドを使われてしまったので、
 インデックスは浴槽の中で寝る事を余儀なくされてしまっていた。

禁書「私がわるいのかな……?」

 今日の朝から、上条に無視され続けている。
 自分が何をしたのだろうか。
 朝のことを振り返ってみるが、特に心当たりはない。

禁書「……」

 いや、思えば、昨日の夜からとうまの雰囲気が違った気もしなくはない。
 昨日の夜と言えば……
 なにがあっただろうか。

 いつも通り夕食を食べて、いつも通りテレビをみて、いつも通り寝て。

禁書(……私がわるいのかな)

 自分が見たい番組に勝手に変えちゃったから?
 食事の用意が遅いってとうまに噛みついちゃったから?

 ――明日、本気で謝ろう。

 次第にぼんやりしていく意識の中で、なんども反すうした。


【翌朝】

 あくびをかみ殺しつつも時計を確認すると、現在時刻は6時半。

禁書「背中がいたい……」

 浴槽で寝るというのはあまり熟睡できるものではなかった。

禁書「おなかすいた……」

禁書「なんか食べ物ないかな……」

 ダメ元で、部屋をあさってみる。

 冷蔵庫の中、炊飯器の中、戸棚の中。
 食べれそうなものは何もない。

禁書「飢え死にしちゃいそうなんだよー……」


禁書「ん、あれは?」

 テーブルの上にある買い物袋に目がいった。
 たしか上条は昨日、あの袋から菓子パンを取り出していた。

禁書「もしかして食べ物が入っていたりなんて……」

禁書「っ!」

 袋をさわってみて、ハッとした。
 中身が入っている。

 慌てて袋をひっくり返すと、

禁書「や、焼きそばパン!」


 さっそくかぶりつこうとして、直前で思いとどまった。

 勝手に食べたら怒られるかもしれない。
 インデックスはベッドで寝ている上条をチラリと見る。
 もしかしたらとうまの朝ご飯だったりして……

 などと逡巡したのは実質1秒ほど。

 昨日の昼から何も食べていない腹ぺこのインデックスに、
 目の前に食料があるのに食べずに我慢など出来るわけがなく、

禁書「あーむ…!」

 焼きそばパンを一口で、口の中に放り込んだ。

禁書「んぐんぐ……う、うまい!」


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

上条「うぅん……」モゾモゾ

禁書「あ……」

禁書「ごめんとうま、起こしちゃった?」

上条「ふあー……」

上条「疲れてるはずなのに、何でこんなに早く目が覚めちゃったんだろう」

上条「うるさい羽虫でも沸いてるのかなァ…?」

禁書「ッ……!」グサ


禁書(とうま、すっごく怒ってる……)

禁書(やっぱり私が悪いのかな……?)

禁書(よし……ちゃんと謝らなきゃ……)

禁書「今まで迷惑かけてごめんなさい」

 深々と土下座した。

禁書「私に気にいらないことがあったなら謝るし、改善する努力もするから」

禁書「だから……今まで通りの、いつものとうまに戻ってほしいんだよ…!」

上条「……」

上条「あれ、俺の焼きそばパンが……」

禁書「あ、パン……あったから勝手に食べちゃったけど……」

上条「……」ギロリ

禁書「ひ…!」タジ


上条「まいったなー、俺の朝飯が食い荒らされちゃってるよ」

上条「汚い害虫でも沸いてるのかなー」

禁書「う…あ…」じわ…

上条「病原菌移されたらたまんないよなー」

上条「バルサンで買ってくっかなー」

禁書「う、うぅ」ぽろぽろ

上条「ちょっと早いけど、途中で朝飯買わなきゃ行けないし、そろそろ学校行くか」

  バタン

禁書「とうま……」ドサ

禁書「うう…ぐす…ひっく…ひっく…」


【上条の教室・昼休み】

青髪「それでな、そいつがなー……」

上条「マジでー? あははは」

  わいわい
  がやがや

土御門「カミやーん、お客さんやでー」

上条「んん、誰だ?」

土御門「みればわかるぜよ。銀髪シスターさんだにゃー」

 と、土御門が指す方向、ドアの入り口にいるのは、

禁書「とうまー…?」

上条「……あんな奴しらねーよ」


青髪「またまたーご冗談を」

土御門「なんだ、喧嘩でもしたのかにゃ?
     ま、喧嘩するほど仲がいいってもいうけどなー」

上条「……気色悪いこと言ってんなよ。胸くそ悪い」

禁書「とうまー、とうまー」

土御門「彼女、なんか目ー腫れてないか?」

青髪「んー言われてみればそんな気もするような……」

小萌「こらこらシスターちゃん。勝手に入っちゃダメですよぉ~~~」

禁書「あの、ちょっととうまに会いたくて……」

小萌「あなたたちは家でいくらでも会えるんですから…」ぐいぐい

禁書「あ、ちょっと、放して!」


 △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼  △  ▼

小萌「……シスターちゃん、元気無いけどどうかしたんですか?」

禁書「とうま、クラスの人とは楽しそうにおしゃべりしてた……」ボソ

 ・
 ・
 ・

小萌「なるほど、そんな事が」

禁書「とうまに嫌われたら……私……私……」ぐすん

小萌「うーん、上条ちゃんも困ったちゃんですねー」

小萌「先生、上条ちゃんとお話してみるんですー」


 ・
 ・
 ・

 ようするに、『あんな穀潰しニートと一緒に暮らせるか!!』と言うことらしい。

 と言うことで、上条とインデックスは小萌を交えて話し合い、
 紆余曲折の末、料理はインデックスが担当するって事で和解しました。


                            めでたしめでたし







禁書「とうまー、気合い入れてご飯作ったよー」

上条「おお! もぐもぐ……ッ!! まっずぅ!!!!!」ブバァー!!

禁書「!!!」


                      ――END


以上です

こういう系はしめ方が難しいなーと思った。

このSSまとめへのコメント

1 :  キド   2014年02月08日 (土) 21:44:26   ID: 5j8DWQ-v

インデックスワロタwwwww

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