みどり「恋の花咲くバレンタイン」 (5)
「もうすぐバレンタインですねー。ということで、本日はバレンタイン特集です。現場の○○さん?」
「はーい、ただいま××のバレンタインコーナーに来ています!」
朝食を食べながら、ぼーっとテレビを眺める。
テレビではバレンタインの特集をしていて、百貨店の売り場には所狭しとチョコレートが陳列されている。
私は傍に置いた携帯を開いて日付を確認する。
2月10日、火曜日。
携帯のメニューを開いてカレンダーを見る。
……やっぱり。バレンタインデーは土曜日だ。
つまり、学校は休み。
正直な話、バレンタインデーは私にとって少し煩わしいものだったから、チョコを避けれるのは嬉しい。
毎年毎年バレンタインデーに貰った分のお返しに追われるからだ。
相手は一つ用意して渡せば終わりだけど、私は山のようにお返しを用意しなくてはならない。
出費も馬鹿にならないし、かといって一人一人に渡すチョコをおざなりにするのも心苦しい。
さらに開封した後のメッセージや、直接口頭で告白なんてされたら余計に。
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私には、好きな人がいる。
だから仮に告白をされたとしても、断る以外の選択肢は無い。
そして私の片想いが成就することは決して無いと分かっていても。
そろそろ家を出る時間だ。
着替えを手早く済ませ、鞄を持って玄関を出る。
家を出ると、2月の冷たい風が私の肌を刺した。
手に持っていたマフラーを首に巻いて歩き始める。
遠くの山には靄がかかっていて、より一層冬の雰囲気を高めていた。
しかし、例年通りのバレンタインが無いだけで気分は楽だし、憂鬱な感じもしない。
バレンタインが休日の場合、経験上その前日に渡されることもあるけど、それでも普段よりもずっと少ないはず。
角を曲がると、可愛い装飾が施された『うさぎ山商店街』の看板が見えた。
小さい頃から気になっていたけど、看板から垂れている梯子は一体何に使うんだろうか。
その梯子の近くにたまことかんながいた。
たまこはセーターを着込んでいたけど、それでも寒いようで、体をちぢこませながらかんなと話していた。
みどり「おはよっ!」
かんな「おはようみどちゃん」
たまこ「みどりちゃんおはよ〜。寒いね〜」
みどり「だねぇ……」
かんな「私は大丈夫ですけどね。セーターに4枚カイロを潜ませましたから」
たまこ「えっ!? かんなちゃんずるい!」
かんな「ふふふ。何なら私の使いますか? 体に密着したやつですけど……」
たまこ「うん! 使う使う〜」
かんな「おおう……たまちゃん大胆だね」
かんなは少し呆気に取られたような表情をしながら服の下からカイロを一つ取り出し、たまこに差し渡す。
それを受け取ってたまこも自分の服の中に入れた。
私は常々、たまこには少し危機感が足りないんじゃないかと思う。
かんなだからこそ大丈夫ではあるけど、これが大路であってもたまこなら平然とやってのけそうだから。
結局王子が帰ったその後も、私達の間柄に何か大きな変化は訪れなかった。
大晦日の夜、初詣に行ったことを思い出した。
近くの神社は人がいっぱいで苦労したことを今でも憶えている。
おみくじは中吉。願望、待人、学問、恋愛、後何があるっけ。
どれも当たり障りの無いことが書かれていた。個人的には、良いのか悪いのか簡潔に書いてくれていた方が嬉しい。
まあ私は、おみくじや占いは良い結果だけ信じるタイプだけど。
たまこ「みどりちゃんは寒くない?」
みどり「私は結構強いかも」
かんな「羨ましいですな。抱きついてやるー」
そういってかんなは私のお腹の辺りに手を回して抱きついてくる。
かんな「みどちゃんあったかいね」
たまこ「私もー!」
『えいっ』と可愛らしい掛け声を発して私に抱きついてくる。
二人に抱きつかれて、私は暖かいどころか暑いくらいだった。嬉しいけど。
流石にずっと続けるつもりは無いとは思ってたけど、なかなか二人は私に密着するのをやめようとしなかったから適当な言い訳でやめさせることにした。
みどり「歩き辛いよ……」
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