※ダンガンロンパ、及びにスーパーダンガンロンパ2の絶望的なネタバレを含みます。ご了承ください。
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――どうなってるの?
気付いた時、私はどこかの学校の教室にいた。机に突っ伏して寝ていたみたい。
反射的に私は椅子から飛び上がり、臨戦態勢を取る。周りに危険がない事を確認してから緊張状態を緩和。
……あれ? 気付いた時? 私はその前に何をしていたっけ?
――いや、そもそも私は誰?
えっと、何か思いだせ――
『――戦刃むくろ』
えっと、これは……名前? 私の……名前かな?
知識はある、だけど自分に関することは全く記憶がない。
身体は女性の10代後半といったところ。
拳を握り軽くジャブを出す。その場で軽くバク宙。身体能力は高そうだ。
服は学校の制服かな。武器の携帯はしていない。
取り敢えずは、周りの状況を確認しないと……。
一般的な教室。違和感を感じるのは軽く見た感じだと3つ。監視カメラ、窓の代わりに打ち付けられている鉄板。そして、机の上に置いてある手紙の様な物。
??????????
入学あんない
あたらしいがっきが
はじまりました。しんきいってん
この学えんがオマエラの
あたらしいせかいとなり
ます。
??????????
何だろう? 誰かがふざけて書いたのかな?
でも、これからどうしよう……。ここから出た方が良いのかな? 出ないと怒られちゃうかな?
――怒られちゃうって誰に?
良く分からないけどそのうち思い出すかもしれないよね。
一応このイスで簡易なトンファーを作って、隠し持っておこう。
――学園内廊下―――
まずは出口を確認をしないと。日本語があったから、ここは日本の可能性が高い。ただ、廊下にも火薬の臭いが微かにしている。
日本だとしたら、非常口の標識があるはず。外に出るかは別として緊急時の離脱ポイントは大切だから調べておこう。
……あった。でも、人の気配がする。
敵かもしれないから慎重に行かないと。今、私は銃器がないから多対1に持ち込まれるとまずい。そこの物陰に隠れて様子を窺おう。
――玄関ホール―――
??「――おぬし、そこに隠れて何をしておる」
??「監視カメラを使わずこちらを伺っている様子からすると、私たちを陥れた犯人ではなさそうね」
??「ふん、どうやらネズミが紛れ込んでいたようだな」
……まさか、見付かるとは思わなかった。
でも、敵ではなさそうだし服の膨らみ的に見て銃器の携行はしてない。ただし、玄関ホールには硝煙の臭いが残っている。
??「あ?ん? 誰かいんのか?」
長身の女の子と、白いスーツを着ている男の子は筋肉と身のこなしから見て戦闘能力がある。
??「ひ?お助けを?」
特にあの女の子は相当強いはず。私でも素手なら負けるかもしれない。
そしてもう1人私の存在を察知した手袋をしている女の子は、強くはなさそうだけど要注意かな。
あとは……――ッ!!
何!? 今の寒気は。あの背の高い女の子は気付いてないようだから誰かが殺気を送った訳じゃない。
手が震えてる。何に、私は何に怯えてる? 何に……恐怖を感じているの?
どうして――
??「出て来ぬのならこちらも考えがあるぞ」
……今は考えても仕方ない。彼女らをわざわざ敵にする事もないかな。
不確定要素はあるけど、ここで出て行った方がいいだろう。何か情報を持っている可能性もあるし。
戦刃「待って、私はあなたと敵対するつもりはない」
隠れていたところから出て行くと14人の瞳が私に注目した。年は10代後半から20歳くらいまでかな。
私は注目されるのはあまり慣れてはいないようで、身体が強張る。
>>8
どうも波ダッシュ『~』が文字化けしてるみたいです。すみません。
??「あなたも新入生?」
戦刃「えっと、ごめんなさい。分かりません」
??「分からないというのは?」
戦刃「目が覚めたら、教室のようなところにいたんです」
??「え? オメーもそうなんか?」
??「とすると、ますます妙ですわね……」
??「異常だ……これは間違いなく異常事態宣言発令ですぞ!」
戦刃「あ、あの……どういう事? よく状況を把握出来ていないんだけど……」
??「ちょっと待ちたまえ! その前にだ!」
白い学生服を着ている真面目そうな男の子が、私の方に迫ってきて問い詰めるように言ってきた。
私はあまり、こういう人は得意じゃないみたい。身体が拒否してるろいうか……。
??「遅刻とはけしからんじゃないか!! 8時集合と知らされてあったはずだろう!」
そんな事言われても……でも、知らされていたのかな?
??「入学初日に遅れるなど言語道断! 学校側に報告の上、厳正なる処罰を――」
??「――キャハハッ! つーか、ムリっしょ、しょうがないっしょ。こんな訳分かんないねー状況なんだしさ」
派手な服装の女の子が私を庇ってくれた。……嬉しい。
??「それより、改めて自己紹介しない!? 遅れてきた子の為にもさ!」
??「自己紹介だぁ? んなことやってる場合じゃねーだろ!!」
??「ですが問題について話し合う前に、お互いの素性はわかっていたほうがよろしいでしょう」
??「なんてお呼びしていいのかわからないままでは、話し合いも出来ないじゃありませんか……」
??「それも、そうだよねぇ……」
??「じゃあ、まず最初に自己紹介って事でいいですか? 話し合いはその後という事で……」
自己紹介……困ったな。
自分の事がわかってない私はどうすればいいのかな。
名前だけ、言っておこう。記憶がない事はまだ伏せておくべき。
戦刃「私は戦刃むくろ……」
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全員の簡単な自己紹介が終わり、この異常事態について話し合いを始めて少しした時、突然『それ』は始まった。
「キーン、コーン…カーン、コーン…」
??「あー、あー…!マイクテスッ、マイクテスッ!校内放送、校内放送…!」
??「大丈夫?聞こえてるよね?えーっ、ではでは…」
場に則さない不自然な明るい声。
直感で分かる。
あれは――まずい。
私は冷や汗が出てくるほど恐怖を感じた。
あれは駄目だ。近づいては……いけない。私の中の何かがそう叫んでいる。
??「えー、新入生のみなさん、今から入学式を執り行いたいと思いますので至急体育館までお集まりくださ?い。」
??「ってことで、ヨロシク!」
江ノ島「うっわ何、今の? チョーウケるんですけど」
十神「俺は先に行くぞ」
戦刃「あ……あの……」
江ノ島「え、何? もう行っちゃう感じ?」
戦刃「――あ……」
ぞろぞろと出て行ってしまった。
結局、私は伝えられなかった。自分のコミュニケーション能力のなさを感じてしまう。
でも、どうせ根拠もない何かを信じてもらうなんて『私には』出来ないだろうけど。
どうしよう、私だけ単独で行動しようかな。
でも、記憶のない私は情報を得るためにも集団で行動する方が安全かもしれない。
戦闘時に足手まといになったら見捨てればいいし。
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私は体育館に集まった皆の最後尾から警戒しつつ見渡す。
??「オーイ、全員集まった~!?それじゃあ、そろそろ始めよっか!!」
その声でいっせいに壇上を見ると、教壇から『何か』が飛び出してきた。
緊張のあまりとっさに手探りで武器を確認してしまう。冷や汗が止まらない。
――??「ヌイグルミじゃないよ!」
自律稼動にしては無駄な動きが多い。
――モノクマ「ボクはモノクマだよ!」
いや、違う。あの無駄な動きは生物がする、合理的な動きだ。
本来、ロボットには必要ない動きまで再現しているんだ。
――モノクマ「キミたちの……この学園の……学園長なのだッ!!」
脱出ポイントは後方の扉1つ。あれが敵なら、すでにあの扉はなんらかのトラップが仕掛けられているはず。
―― モノクマ「だからさぁ…ヌイグルミじゃなくてモノクマなんですけど! しかも、学園長なんですけど!」
対して此方の――味方かどうかは分からないけれど、明確な戦力は私の他に2人だけ。
他は……囮にしようにも、まともに使えるだろうか?
――モノクマ「では、これより記念すべき入学式を執り行いたいと思います!」
あのサイズの兵器、私だったら何を仕込むだろう……。
――モノクマ「オマエラには『この学園だけ』で生活を送ってもらいます!みんな、仲良く秩序を守って暮らすようにね!」
小型で連射性能が高いSMG系の武器と、擲弾系のランチャーウェポン。
そして……。
――モノクマ「一生ここで暮らしていくのです! それがオマエラに課せられた学園生活なのです!」
爆発物かな。
――モノクマ「外の世界とは完全にシャットアウトされてますから!だから、汚れた外の世界の心配なんて、もう必要ないからねっ!!」
……あれ? まだ攻撃してこないけど、もしかして敵じゃないのかな?
――モノクマ「おやおや、オマエラもおかしな人達だねぇ。だって、オマエラは望んで、この希望ヶ峰学園にやって来たんでしょう?」
あわわ、話聞いて無かった……。困ったな、何か要求とかあったかもしれなかったのに。
――モノクマ「まぁ、だけどぶっちゃけた話、ないわけじゃないよ。ここから出られる方法」
……良かった。今からみたい。
――モノクマ「人が人を殺す事だよ……」
誰をどうやって殺せばいいのかな?
――モノクマ「殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺……殺し方は問いません。『誰かを殺した生徒だけがここから出られる』それだけの簡単なルールだよ。」
……自由って事? 誰を殺すのも、どうやって殺すのも。
――モノクマ「殺りたい放題、殺らして殺すから、殺って殺って殺って殺りまくっちゃえっつーの!!」
でも、そんな簡単なわけないよね。何か条件があるはず。
――モノクマ「キャー!学園長への暴力は校則違反だよ?ッ!?」
ヤンキー? みたいな人がモノクマを踏みつけていた。大和田くん……だったかな。
――モノクマ「………………」ピッピッ
あっ、やっぱり爆弾が仕込んであったんだ。どうしよう、大和田くん気付いてなさそう……。
戦刃「えっと……あの……」
どう言えばいいのかな? でも、私なんかが言っても信じてもらえないかもしれないし……。
――モノクマ「………………」ピピピピピピッ
あっ、考えてる間に時間がなくなっちゃった……。
仕方ない。私が――殺る。
素早く大和田くんに接近して、モノクマを踏みつけてていた足を蹴り上げる。バランスを崩した彼を傍目にモノクマをステージの天井にシュート。
天井と後ろの壁でバウンドをしてモノクマが登場してきた教壇机裏の下の空間に入る。後ろに倒れ込みそうな大和田くんの背中を受け止め横抱きして離脱。
――そして爆発。
遮蔽物を作ったけど衝撃波を気にするほど大きい爆発じゃなかったみたい。飛んできた教壇机を排除しようとしたら、大神さんが正拳突きで壊してくれた。
大神「我は油断していた。おぬしのお陰で助かったぞ」
助かったって、彼女はすぐそばで爆発が起きてもどうとでも出来ると思うけど何を言っているのだろう?
戦刃「……どういう――」
大和田「――おい、いい加減放してくれ」
そういえば大和田くんを抱えたままだった。素早く放すけど、悪かったかもしれない。
戦刃「ご、ごめんなさい……」
大和田「いや、別に謝らなくていいんだけどよ。助けてもらったわけだしな……」
迷惑だったかな? 余計なお世話だったかな?
モノクマ「イチャイチャしてるところ悪いんだけどさ、一応最後まで説明させてよ」
桑田「うわっ、また出てきやがった」
モノクマ「何さ、その嫌そうな顔は! 分かったよ、一気に説明するからしっかり聞いててね。1回しか言わないよ。さっきのボクへの暴力、今回特別に警告だけで許すけど、今後は気を付けてよね」
モノクマ
「校則違反をするような悪い子は、お尻ペンペンレベルの体罰じゃ済まさないからッ!
モノクマは、学園内の至る所に配置されております。さらに、学園内には監視カメラも設置されております
そして、校則を破る者を発見した場合は、今みたいなグレートな体罰を発動しちゃうからねっ!
うぷぷ……次からは外さないから、そうならないよう気をつけてね!
じゃあ最後に、入学祝いとして、オマエラにこれを渡しておきましょう
この学園の生徒手帳です。カッコイイでしょ?電子化された生徒手帳、その名もなんとっ!
電子生徒手帳です!!
電子生徒手帳は学園生活に欠かす事の出来ない必需品だから、絶対になくさないようにね!!
それと、起動時に自分の本名が表示されるから、ちゃんと確認しておいてね。単なる手帳以外の使い道もあるんでね……
ちなみに、その電子生徒手帳は完全防水で、水に沈めても壊れない優れ物! 耐久性も抜群で、10トンくらいの重さなら平気だよ!
詳しい校則もここにかいてあるんで、各自、じっくりと読んでおくよーに! 何度も言うけど、校則違反は許さないからね!」
ルールは人を縛りもするけど守りもするんだ。
社会でも、法律がないと平和は成立しないでしょ? それと一緒! だから、違反者は厳しく罰する必要があるのです!
ここまで一息、ちょっと休憩……。というか君たちちゃんと聞いてた?
ではでは、入学式はこれで終了となります!! 豊かで陰惨な学園生活をどうぞ楽しんでください! それじゃあ、まったね?!」
モノクマは一気にいろいろ説明をして去っていった。
結局、殺しの条件は言っていなかったけれどまた今度するって事かな。
それとも校則に載ってるのかな。
そうだ、電子生徒手帳ってやつを起動させてみよう。私の記憶に関する――最低でも名前の確認は出来るはず。
それっぽいボタンを押して起動させると、『戦刃むくろ』と文字が浮かび上がった。やっぱり私の名前は戦刃むくろで合っていたみたい。
あとは校則を確認しよう……。
――校則――――――
1. 生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。共同生活の期限はありません。
2. 夜10時から朝7時までを『夜時間』とします。夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。
3. 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。他の部屋での故意の就寝は居眠りとみなし罰します。
4. 希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。特に行動に制限は課せられません。
5. 学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。
6. 仲間の誰かを殺したクロは『卒業』となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
7. なお、校則は順次増えていく場合があります。
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6番から考えるに、密殺が条件でいいのだろうか。暫くは様子見で計画を練ろう。
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何か密殺に利用できそうなものがあるんじゃないかと思い、私は購買部に来た。しかし、あるのは甲冑や様々な骨董品ばかり。
とても使えそうな物はなかった。無駄足だったかと引き返そうとした私はふと、カプセルトイに目がいった。
モノクマメダルを入れると回せるようだ。江ノ島さんにメダルを2枚もらった事を思い出した私はポケットを探り、1度やってみることにした。
ガチャガチャというお馴染みの音と共に現れた球状のカプセルを開けると、何やら変な形のこけしが出た。
私は使えない物が出てきた事に落胆し、横にあるゴミ箱に捨てようと近づいた。
戦刃「あ……れ?」
掃除のし忘れだろうか、ゴミ箱と隣接した自動販売機のと隙間に何かが落ちている。
ゴミはしっかり捨てないとだめ……だよね。そう思い、私はそれを屈んで拾い上げた。
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迂闊だった。さっきから身体が熱い、重い、怠い。
即死していないのは幸か不幸か。どちらにせよ、ここでは対処のしようがない。
――私の生命力に懸けるしかない。
部屋の鍵はかけた、トラップもいくつか仕掛けてある。3時間程度なら安全に睡眠がとれるだろう。
それで駄目なら私はここで終わるだけだ。戦場ですらないところで惨めに野垂れ死ぬだなんて……。
――情報処理室―――
――あ~絶望的にめんどくさい。どうして日中の監視カメラ映像のチェックとか地味な作業をやんなきゃいけないんだっつーの。
だけど昼は普通の超高校級のギャル、夜は超高校級の絶望って言うのは……ダメだわありきたりすぎてつまんねーや。
私様としては影の絶望、真の黒幕として君臨したいのですが、そうもいかなくなってしまったので絶望しました、まる。
あら、むくろお姉ちゃんが購買部に行っていますね。午後3時頃ですか。
う~んとね、殺しに必要なものとかさがしてるんだろうなぁ。あはは~動くこけしひいてるぅ。
全く、あの子にあれが何なのか分かるんだろうね?
あれが……何なのか分かる私は……汚れているのでしょう……。
――えっ?
ゴミ箱と自動販売機の隙間?
とっさに周りを見渡す。部屋にはいるのは私だけ――ではなかった。
??「動かないで、盾子ちゃん」
気付いた時には既にアタシは拘束されていた。他でもない――姉によって。
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戦刃「動かないで、盾子ちゃん」
情報処理室にあっけなく侵入し、妹の拘束もすんなりと出来た。
――ただ、1つ言うならばこれは妹の不用心ではない。今の私に罠なんて通用しないだけだ。
戦刃「ごめんね、痛いよね。だけど、1つだけ質問に答えて欲しいんだ」
私はたった1つの答えを聞くためだけに今までの自分を裏切った。絶望を捨ててでも聞かなくてはいけないものだった。
戦刃「『苗木くん』はどこ?」
江ノ島「お姉ちゃん、記憶が戻ったんだね。あの『脱出スイッチ』を使って」
戦刃「余計な事は言わないで。『苗木くん』をどこにやったの?」
江ノ島「おかしい言い方だね、お姉ちゃん。『どこ』だなんてさ。その言い方は生きてる事前提に聞こえるよ」
戦刃「いいから……答えてよ……」
江ノ島「いいよ。ただし、私を喜ばせてくれたら教えてあげる」
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う~ん予想外。まさか、あのスイッチを見付けるとはね。
さて、私を喜ばせばるって言ったけど、お姉ちゃんはどんな事をするだろうか。誰かを殺すとか空気清浄機をぶっ壊すのも面白いかも。
まあ、残姉ちゃんに期待しても仕方ないかな。
所詮は残念なお姉ちゃんだもんな。
絶望を希望だなんて、面白いじゃない。うぷぷぷぷ……。
戦刃「ごめんね、盾子ちゃん。私は――」
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盾子ちゃんが喜んでくれる事。私は1つしか知らない。
それは絶望。
それなら私は妹の望みを叶えよう。
戦刃「ごめんね、盾子ちゃん。私は……殺す事しか出来ないから」
私は用意しておいたナイフで盾子ちゃんの四肢を切断した。
江ノ島「――えっ? 何これ……?」
江ノ島盾子
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
戦刃「答えてくれたら……殺してあげるよ」
江ノ島「あ゛ああああああああ、何これ何これ、何なの何なの何なの、何で何で何で……っく、私、お姉ちゃんに殺されちゃうの……?」
戦刃「ごめんね……」
江ノ島「何年もかけた計画が失敗しかけて、せっかくリセットでやり直せたと思ったのにお姉ちゃんに裏切られて惨めに終わるだなんて……」
江ノ島「そんなのって……」
江ノ島「最っっ高ぉぉじゃないぃいい!!」
江ノ島「ああああ、もう、この絶望のためにアタシは今まで生きてたのね」
戦刃「早く……答えて」
江ノ島「苗木? 隣の部屋の地下に放ってるわ。そんなくだらない事でアタシの絶望を邪魔しないで、はぁん……絶望に絶望して、希望に絶望して、幸せを感じる自分にも絶望して、絶望を希望することに絶望しちゃってるわぁ。最・高」
戦刃「盾子ちゃん――ありがとう」
心臓に突き立てたナイフで絶命した妹の顔は幸せに満ちていた。盾子ちゃんのまぶたを閉じさせ、最後に……頭を撫でた。
絶望のためでもなく希望のためでもなく、自分のためだけに盾子ちゃんを殺した。
私は選んだのだった、盾子ちゃんではなく苗木くんを。
――――――――――
戦刃「苗木くん……大丈夫……?」
苗木「うん、大丈夫だよ。ありがとう戦刃さん」
名前を呼ばれる。それだけで顔が火照る。顔は赤くなっていないかな。
戦刃「えっと、盾子ちゃんは死んじゃったから空気清浄機が壊れてここから出なきゃいけないんだけど……」
苗木「そっか……でも、それでいいんじゃないかな」
戦刃「脱出スイッチは私が卒業試験で失敗して壊しちゃったから……ごめんね。でも、別の方法を考えるからちょっと待ってて欲しい……」
苗木「それはボクに任せてくれないかな?」
戦刃「えっと……どういう……?」
苗木「江ノ島さんが言ってたんだ。モノモノマシーンには、記憶を戻す『偽物の脱出スイッチ』だけじゃなくて、ちゃんと本物の脱出スイッチも入ってるって」
苗木「まぁ、江ノ島さんには『それなのに偽物の脱出スイッチを引いちゃうだなんて、超高校の幸運じゃなくて不運じゃん』って笑われちゃったけどね」
苗木「でもさ、今のボクなら……『本物の脱出スイッチ』を引けると思うんだ」
戦刃「任せてもいいの……?」
苗木「うん。その代わりボクと一緒にここを脱出してくれるかな?」
戦刃「……分かった。ありがとう」
私は絶望を捨て希望を得た。
私が変わっても世界は簡単に変わらないだろし、私が絶望にいたという事実は消えない。
それでも私は――
過去が赦されるわけではないけれど、それでも私は絶対にこの命を懸けて彼を――私の希望を守っていこう。
終わり
戦刃さんがもっとカッコイイSSがあってもいいんじゃないかと思って書きました
SSを投稿するのは久しぶりでしたが、楽しんで書けたと思います。
ここまでありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
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