雪ノ下「比企谷君あなた、専業主夫になりたいそうだけど」 (88)

雪ノ下「そこまで公言できるとうことは、自分は将来結婚できる」

雪ノ下「もっと言えば、その相手のあてが、当然もうあるのよね」

比企谷「おいおい、いきなり人の夢をゴミくずみたいに丸めるなよ」

比企谷「そんなあて、ぼっちの俺にはあるはずないだろ」

比企谷「でも、俺だってさすがに将来は」

雪ノ下「結婚くらいできる?甘いわね比企谷君。今、どのくらいの男女が生涯独身だと思っているのかしら」

雪ノ下「さらにあなたの目標は専業主夫よね。ただ結婚できればいいというわけではないわ」

雪ノ下「あなたを養っていける人と結婚できなければならない」

雪ノ下「正直に言わせてもらえば、今のままではその夢は実現不可能だわ」

雪ノ下「どう。反論できるかしら?」

比企谷「いや、ないっす。もうやめてくれ……」

雪ノ下「いえ、聞きなさい。これはあなたをただ打ちのめしたいのではない。つまりあなたは、もっと未来のために努力をすべきだと言っているのよ」

雪ノ下「例えば、今身近にいて、将来あなたを養えそうな女性にアピールするとか」

比企谷「確かにもっともな話だが」

比企谷「身近にいる、将来有望な女……」

比企谷「すでに働いている平塚先生……!」

雪ノ下「」

雪ノ下「な、なぜそうなるのかしら」

比企谷「いや、だって先生はすでに就職してるし、将来もないだろ」

雪ノ下「待ちなさい、比企谷君。先生とあなたの年の差を考えて。あなたが二十代になる頃には、先生は三十路越えなのよ?」

比企谷「別にいいんじゃないか。先生、顔とスタイルはいいしな」

雪ノ下「それは今独身だからでしょう。結婚すれば油断から崩れるのは必至よ」

雪ノ下「あと、分かってるのかしら比企谷君、今でさえあなたは先生に頭が上がらないでしょう」

雪ノ下「この上結婚をして専業主夫ともなれば、確実に尻にしかれるわ」

雪ノ下「結婚をするなら、対等な関係を築ける相手にすべきよ」

比企谷「将来有望で、対等な関係を築ける女……」

比企谷「小町に養ってもらおう」ポン

雪ノ下「あなた……相手は妹でしょう。兄として恥ずかしくないのかしら」

比企谷「いや、小町も将来結婚できなかったら養ってあげるって言ってたんだが」

雪ノ下「それは冗談に決まっているでしょう。真に受けてどうするのよ」

雪ノ下「それに小町さんだって、そのうち交際相手や、結婚相手を見つけてくるのよ」

雪ノ下「あなた、そうなっても小町さんに養ってもらうつもりかしら」

比企谷「小町が結婚……ちょっと、鬱になるから、そういうこと言わないで」

雪ノ下「結婚して専業主夫でもなく、働かない兄であるあなたは、ニートと呼ぶにふさわしい存在なのよ」

雪ノ下「そのままでは小町さんの結婚式に出席できないという可能性もあるわ」

比企谷「痛い痛い。心が痛い」

雪ノ下「やはり、ちゃんと結婚という関係になれる相手にするべきよ」

比企谷「先生もダメ、小町もダメとなると、ぼっちの俺の周りにいる女子なんてもう全滅だろ」

雪ノ下「確かに、あなたの女性の知り合いは微々たるものかもしれないけれど、全くいないということはないでしょう」

雪ノ下「よく思い出してみなさい」

比企谷「こうなると後は……戸塚か」

雪ノ下「な ぜ そ う な る の か し ら」

比企谷「単純に結婚したい相手だからだ」

雪ノ下「彼は男でしょう。さっきも言ったように、結婚できない相手はやめなさい」

比企谷「いや、愛さえあれば性別くらい」

雪ノ下「あなたは戸塚君にもその後ろ指差される人生を歩ませたいのかしら」

比企谷「く、確かにそれは心苦しい」

雪ノ下「もういいわ。とりあえず、身近にいる女性の名前をあげてみなさい」

比企谷「うーん、由比ヶ浜?」

比企谷「でも由比ヶ浜は男を養うって感じじゃないだろ」

雪ノ下「そうね。私もそう思うわ。それで、他には?」

比企谷「うーん、そうだな」

由比ヶ浜「ちょっと待ってよ!なんであたしだけそんな早いの!?」

比企谷「いたのかお前」

雪ノ下「まるで、扉の前で立ち聞きしていたかのようなタイミングの良さね」

由比ヶ浜「ち、違うし!今来たところだし!」

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