俺「誰ってお前……安中さんだよ。同じクラスの」
ゆっこ「知らない」
俺「え」
ゆっこ「誰だっけ」
俺「ほら、赤いリボンの……」
ゆっこ「知らない」
俺「え」
ゆっこ「知らないから」
ゆっこ「楽しげに喋ってたよね。何で?」
俺「シャーペン落としたのを拾ってくれたんだよ」
ゆっこ「何で?」
俺「な、何でって……近くにいたからじゃね……?」
ゆっこ「何で私を呼んでくれなかったの?」
俺「……だって、お前遠くにいたし、悪いなと思って……」
ゆっこ「……」
俺「……」
俺「……ゆっこ?」
ゆっこ「……」
ゆっこ「なぁんだぁ、そっかそっか! いやごめんね、勘違いしてたよー!」
俺「……」
ゆっこ「わッ、次って赤城の授業じゃん! やっばいまたゲンコツでグーされる!」
俺「……」
ゆっこ「どしたの?」
俺「いや、別に何も……」
赤城「ほら席につけー。号令かけろー」
麻衣「起立。礼。着セコ」
俺(着セコ!?)
赤城「じゃあ前回の続きから。分かる奴ー」
俺「……」
赤城「じゃあ俺」
俺「ぁっ……ぇ……無理ですごめんなさい……」
赤城「お前減点」
赤城「今日はここまで。宿題忘れるなよ」
安中「あっ。ペンが……」
俺「おっと」
俺「ほれ」
安中「ありがとー」
ゆっこ「ねぇ」
俺「うわっ!」
安中「?」
ゆっこ「何してるの?」
俺「ペンを……拾って……」
ゆっこ「それ、さっきも聞いたよ。まさか、二回ともウソなの?」
俺「違うよ! ね、違うよね安中さん!」
安中「へっ? あ、う、うん。ペン拾ったり拾われたりだよ」
ゆっこ「……」
ゆっこ「あんた、誰?」
安中「」ガーン
俺「だから安中さんだって!」
ゆっこ「ああ……そういえばいたね。そんな人」
俺「本人を前にしてそんな事言うなよ!」
安中「」
俺「ご、ごめんね安中さん。ゆっこバカだから……」
安中「気にしてないよ、あはは……」
俺(涙出てるよ)
ゆっこ「行こう」グイッ
俺「えっ」
ゆっこ「あっち行こう」グイッ グイッ
俺「なあ、ゆっこ」
ゆっこ「何?」
俺「お前、最近怖い」
ゆっこ「意味分かんない」
俺(怖ッ……)
俺「だってさ、何と言うか、常に俺を責めるような喋り方してくるしさ」
ゆっこ「してない」
俺「してるって! 普段の明るい振る舞いはどこに行ったんだよ!」
ゆっこ「どこにも行ってないから。普段の私だから」
俺「もうやだ、怖い! 別れよう!」
ゆっこ「……え?」
俺「だって、ゆっこは俺の事が嫌いなんだろ? だからそんな冷たくするんだろ?」
ゆっこ「……やだ」
ゆっこ「やだやだやだやだやだやだやだやだ」
俺「ゆっこ!?」
ゆっこ「絶対放さない絶対放さないから絶対に」
俺「うわぁああぁ」
ゆっこ「待ってよ! どこ行くの!!」ギュゥゥゥ
俺「教室だよ!」
ゆっこ「行かせないから! 他の女の子と会うの禁止!!」ギュゥゥゥ
俺「痛ッ……! な、何でだよ!」
ゆっこ「汚れちゃうから! 私以外の女の子を見たら汚れちゃうから!!」
俺「汚れないから!」
ゆっこ「その目、潰した方がいいよね! そしたら他の女の子見なくていいもんね!」
俺「なっ……なに言ってんのお前!?」
ゆっこ「私、丁度はさみ持ってるんだ。少しの間、ジッとしててね」
俺「いやいやいやいや!!」
ゆっこ「行くよォーっ」
俺「目ぇ潰したらゆっこも見られなくなるだろがッ!!」
ゆっこ「」ピタッ
俺「ッ……」
俺(と、止まった……?)
ゆっこ「……そ」
俺「?」
ゆっこ「そうだよねッ! いやぁ気づかなかったよアハハハ」
俺(九死に一生を得た……)
ゆっこ「いやぁ危なかった。一生、私の顔を見られなくなるところだったね!」
俺(お前のせいでね……)
ゆっこ「早く教室戻ろうよ!」
俺「……女の子を見てもいいのかよ」
ゆっこ「だって仕方ないし! 私の事を見れば、汚れた目も綺麗になるから!」
俺(……本当、何なのこの人……)
ゆっこ「ほらほら、次の授業始まっちゃうよ!」
お前何書いても同じだな
高崎「――で、ここがこうなってだな……」
俺(まずいまずいまずい……このままではいずれ殺されてしまう……)
俺(どうしようどうしよう……)
俺(そうだ! みおちゃんにメールを……)カチカチ
『昼休み、相談したい事があります。屋上に来てください』
俺(何で敬語なんだろ……まあいいや。送信)ポチッ
みお「!」
みお(メール……? 俺君からだ……)
>>22
誰?
みお(ふむふむ、相談……。ゆっこについてかな……)
みお(まあいいや。オッケーで返信……と)
俺(お、来た来た)
俺(わぁい。オッケーだってさ)
高崎「おっと、もう時間だな。号令」
麻衣「起立。礼。着セコ」
俺(だから着セコって何……)
高崎「ふーっ。腹減った」
俺(そして何で皆、スルーなんだ……)
俺「よく来てくれた長野原」
みお「相談って?」
俺「実は、ゆっこの事なんだけど」
みお「ああ、やっぱりか」
俺「やっぱりって……。最近、ゆっこの様子がおかしいからか?」
みお「……うん」
みお「ボーッとして、俺君の名前呟いて……。声をかけても上の空だし」
俺「ふぇぇ怖いよぅ」
みお「確かにちょっと不思議だけど、でも愛されてるんだからいいんじゃないの?」
俺「いやさっき、眼球をはさみで貫かれそうになったし」
みお「えぇ!?」
俺「しかもアイツ、安中さんの事を誰だか分からないって言ってたし」
みお「……そりゃあバカだから」
俺「バカでもクラスメイトの事を忘れる奴はいないだろ、流石に……」
みお「まあ、確かにそうだとは思うけどさ」
ゆっこ「……何してんの」
俺「うわっ!!」
みお「ゆ、ゆっこ!?」
ゆっこ「俺君……今日……私を避けようとしてる……」
俺「してないから! ないから! ね!」
ゆっこ「じゃあ何で私の知らない間にみおちゃん誘って屋上にいるの?」
ゆっこ「しかも……二人きりで……」
俺「そ、それは……えっと、相談があってね!」
ゆっこ「相談って何? 何で恋人である私に相談しないの? おかしいよね?」
俺「あー……えーっと……」
みお「試験勉強についてだよ!」
書き溜めしてんの?
俺(えっ……?)
ゆっこ「試験勉強?」
みお「そうっ! ゆっこバカでしょ。俺君はゆっこに訊いても無駄だって思ったんだよ」
俺(なるほど!)
ゆっこ「……」
みお(うっ……ゆっこってバカって言われると怒るからなぁ)ドキドキ
ゆっこ「……」
ゆっこ「なぁんだ、そうだったのかー!」
>>31
ごめん殴り書き
みお「えっ?」
ゆっこ「うん? どうしたの?」
みお「い、いや、バカって言ったから怒ると思ってた……」
ゆっこ「何言ってるんですかー。そんぐらいじゃあ私は怒りませんって」
みお「いつからそんな心の広い人間に……」
ゆっこ「んー? 俺君に告白されてからだよぅ」
俺「ふぇぇ……恥ずかしいよぅ」
みお「……」
ゆっこ「じゃあそういう事なら、私は教室戻ってお昼ご飯食べてるね」
みお「うん。ごめんね」
ゆっこ「いいって事よっ! じゃねー」
みお「……」
俺「……」
みお「バカだね。私達、筆記用具とか持ってない上にお弁当食べてるのに」
俺「そだな」
みお「バカでよかった……。殺気を感じたよ」
俺「……で、俺が心配なのは唐突に変貌するゆっこについてなんだが」
みお「さっきみたいな、死んだ魚みたいな目になってる時の?」
俺「そう。あれマジ怖い」
みお「何かスイッチがあるんじゃないのかな。前のゆっこの、バカって言われたらキレる、みたいな」
俺「なるほど」
俺「アイツが切れる時は……決まって俺が他の女子と話してる時だな」
みお「……」
みお「それ、嫉妬って事じゃん」
俺「嫉妬なのかな」
みお「うん。私も笹はr……、何でもない」
俺「?」
みお「ともかく、ゆっこが近くにいる時は、なるべく女の子と話さない方がいいね」
俺「そうしたいんだけどさ……」
みお「うん」
俺「今だって、わざわざ屋上まで長野原を呼び出して話してたのに、ゆっこ来たじゃんか」
みお「……確かに」
俺「悪魔みたいな嗅覚で嗅ぎつけてくるんですね」
みお「怖いね」
俺「怖い」
みお「もう、なるべく女子には関わらない方がいいかも」
俺「そ、そんな……」
みお「私はほら、試験勉強っていう建前で話し相手になるから」
俺「長野原……」
みお「困った時は頼ってよ」
俺「ありゃっす! マジありゃっす!」
みお「いやいや。大した事じゃないから、頭下げないで」
俺「お前の事、超好きになった」
みお「」
俺「じゃあ、また後でな!」ダダダッ
みお「……」
みお「……」
みお「いやいや……おかしいよ……」
みお「……おかしいよ」
桜井「では、これでHR終わりますね。号令お願いします」
麻衣「起立。礼」
「さようならー」
俺(流石にHRは座る必要ないね)
ゆっこ「俺君っ!」
俺「あ、はい」
ゆっこ「かーえろっ!」
俺「うん」
ゆっこ「それでねー、麻衣ちゃんったら緑一色でさー」
俺(……普通に可愛い子なのに……)
ゆっこ「あっ! 見て見て、子猫!」
俺「ん」
ゆっこ「にゃあ~っ♪」
子猫「にゃあ~っ」
ゆっこ「かわいー♪」
俺「……」
ゆっこ「俺君、またねっ!」
俺「うん。また明日」
ゆっこ「~♪」
俺「……」
俺「……はぁ」
みお「あ、あのっ……」
俺「うわっ、ビックリした!」
みお「ごめんなさい……」
俺「な、長野原……? どうしたんだよ」
みお「……あぅ……」
みお「……こんな事……しちゃいけないって分かってる」
俺「へ?」
みお「で、でも……自分の素直な気持ちには逆らえないっ……」
俺「何を――」
みお「好きですっ!!」
俺「」
みお「っ……」
俺「あ、えっと……」
みお「何も言わなくていいっ! ……返事は……分かってるから……」
俺(返事は分かってるって事は……フラれる前提で……)
俺(それにしても、人生にモテ期は必ずあるらしいけど、まさに今がそれだ……)
俺(……ともかく、どうしよう。俺にはゆっこがいる……でも……)
『さっきの女の子、誰?』
『汚れちゃうから! 私以外の女の子を見たら汚れちゃうから!!』
『その目、潰した方がいいよね! そしたら他の女の子見なくていいもんね!』
俺(ううっ……)
みお「……?」
俺「俺もずっと好きでした! 長野原、付き合ってくれ!」
みお「――」
俺「ぐぅ……」
みお「……ほ、ほんとに……?」
俺「本当だよ本当!」
みお「……」
みお「う、う……」
俺「泣くなって」
みお「うん……」
みお「俺君……」ギュゥゥゥ
俺「長野原……」ギュゥゥゥ
ゆっこ「……」ジィィィ
翌日
安中「おはよー」
俺「おはよ」
俺(……ゆっこは来てない)
みお「あ、あの……俺君……」
俺「あ、長野原。どした」
みお「……お、おお、おはよっ」
俺「おはよーおはよー」
みお「うー……」
安中「?」
ゆっこ「……」
俺(ゆっこだ。いつも通りに振舞わないと)
俺「ゆっこ、おはよ」
ゆっこ「……おはよう」
俺「……ゆっこ?」
ゆっこ「……」
俺「お、おい」
みお「ゆっこー。おはよー」
ゆっこ「……みおちゃん、あっち行って」
みお「えっ」
ゆっこ「邪魔。どっか行って」
みお「で、でもあんたの前が私の席だし……」
ゆっこ「じゃあ違う席に移りたいって桜井先生に言えばいいじゃん」
俺「おい、ゆっこ」
ゆっこ「何?」
俺「その態度はないだろ……」
ゆっこ「……」
ゆっこ「……」ギロッ
俺「ひッ」
桜井「HR始めますよー」
みお「あっ、先生来ちゃった」ガタッ
ゆっこ「どっか行ってって言ってるでしょ」
みお「そ、そんな無茶だよ」
ゆっこ「桜井せんせーい。みおちゃんが違う席に移りたいって」
桜井「え? そ、そうなんですか長野原さん?」
みお「いえ言ってません! ゆっこが勝手に……」
ゆっこ「みおちゃんが言ってました」
桜井「え? え?」
ざわざわ ざわざわ
俺(お、おいおい……ヤバイ事になってきたぞ……)
桜井「個人の席替えは難しいので……ごめんなさい」
ゆっこ「……チッ」
みお「……!」ゾクッ
みお(背中に……物凄い寒気が……)
桜井「ではHR終わりますね」
ざわざわ ざわざわ
ゆっこ「……」
なの「あのっ。相生さんっ」
ゆっこ「……何、なのちゃん」
なの「い、いえあの、何だか顔色良くないですよ……?」
ゆっこ「……そんな事ないよ」
なの「いや、保健室に行った方が……」
ゆっこ「大丈夫って、言ってるでしょ?」ギロッ
なの「ひぃっ!」
なの「ご、ごめんなさいっ……」
ゆっこ「……」
ゆっこ「あっち行って」
なの「え……?」
ゆっこ「邪魔だからあっち行って!」
なの「すみませんっ! すみませんっ!」
ゆっこ「……」
俺「東雲」
なの「えっ……? あ、俺さん……」
俺「こっち来い……」
なの「は、はい」
俺「……」
ゆっこ「……」
みお「なのちゃん、ゆっこに近づいたらダメだよ」
なの「……喧嘩……したんですか?」
俺「いや、喧嘩ではないんだけど……」
みお「今、ゆっこの心は荒んでるから、あまり刺激しない方がいいよ」
みお「そっとしとくのが一番だよ」
なの「分かりました……」
みお「なのちゃんって性格良いからさ。悪い人とかにもついて行っちゃいそうで心配」
俺「全面同意」
ゆっこ「……」
ゆっこ「……」パカッ
ゆっこ「……」ゴクゴク
ゆっこ「……」
高崎「おっ?」
高崎「おい相生。サイフ落としたぞ」
ゆっこ「……」
高崎「相生?」
ゆっこ「……あ、高崎先生。ありがとうございます……」
高崎「大丈夫か。……何か、相生じゃないみたいだぞ」
ゆっこ「大丈夫です」
高崎「どう見ても大丈夫には見えん。保健室に行った方が……」
ゆっこ「大丈夫です」
高崎「……」
高崎「無理するなよ。辛かったら、すぐ保健室行けよ」
ゆっこ「はい……ありがとうございます……」
高崎「……」
高崎(気になるな……)
みお「でね、麻衣ちゃんが国士無双で」
なの「あっ……相生さん戻ってきた……」
ゆっこ「……」
俺(……みおちゃんに目を向けてる……俺は蚊帳の外なのか?)
みお「……」
みお「ちょっとゆっこ!」
俺「!?」
なの「!?」
みお「何なのよもう! 言いたい事があるなら言いなさいよ!」
俺「長野原……! よせ!」
みお「うっさい! もう堪忍袋の緒が切れてるのよ!」
なの「あわわ……」
ゆっこ「……」
ざわざわ ざわざわ
みお「早く何か言いなさいよ! だんまりしてんじゃないわよ!」
ゆっこ「……」
ゆっこ「うるさいなぁ……みおちゃんは……」
みお「はぁ? あんたが何も喋らないから声荒げてるんでしょうが!」
ゆっこ「そんな大声出さなくても、聞こえてるよ。バカなんじゃないの?」
みお「こ、こいつッ……!!」
田中「おいやめろよ! ここは戦場じゃねぇんだよ!!」バッ
みお「ッ!」
ゆっこ「田中……!」
田中「何で喧嘩してんのか知らねぇが、お前らみたいな小さな争いの積み重ねが、やがて戦争になるんだよ!」
みお「……」
ゆっこ「……」
田中「分かったか? 分かったなら握手だ! 仲直りの握手!」
みお「……」
ゆっこ「……」
みお「ほらっ」バッ
ゆっこ「……」ギュッ
田中「一件落着だ!」
俺(田中かっけぇ! お前の事DQNだと誤解してた!)
俺(……でも、この件は落着だろうが、実質的には解決になってないんだな……)
昼休み 屋上
みお「……ごめん」
俺「いや、いいんだよ」
みお「昨日も寝れなくて……凄くイライラするんだ……」
俺「……」
俺「みお……」ナデナデ
みお「ひゃわっ」
みお「……俺君……」ギュゥ
俺「……」
教室
なの(よかった……二人共仲直りしてくれた)
なの(これで相生さんも……)チラッ
ゆっこ「……」ゴゴゴゴゴ
なの(!? こ、怖いっ!)
なの(何で何で何で!? 仲直りしたのに!)
なの(……ぅう、ちょっと外の景色でも眺めに行こう……)ガタッ
なの(相生さん、一体何があったんだろう……)
なの(こんな時、相談相手がいれば……)
なの(……)
なの(あんまり友達いないから誰に相談したらいいのか分からないよぉ!)
なの(……、あ!)
なの(そうだ! あの人なら!)ダダダッ
理科準備室
中村「東雲? 何だ、呼んだ覚えはないのだが」
なの「い、いえあの、相談したい事があって……」
中村「相談?」
中村(ま、まさか……身体を隅々まで調べてほしいとか……?)ドキドキ
中村「相談とは、何だ」
なの「はい。えっと、友達の事なんですけど……」
中村(全然違った……)ガックリ
中村「帰ってくれ。私もそこまで暇じゃないんだ」
なの「そ、そんな!」
中村「お前の身体……じゃなかった、えっと、勉強の事なら教えてやらんでもないが」
なの「お願いしますッ! 先生しか頼れる人がいないんですっ!!」
中村「……」
なの「……」ウルウル
中村「……ふぅ。言ってみろ」
なの「! ありがとうございます!!」
中村「……、なるほど」
なの「どうですか……?」
中村「そういう事なら、これを使え」
なの「? 何ですか、これ」
中村「ウソ発見薬『ナンデモザンゲ』だ。これを飲めば、何でも真実を話してしまう」
なの「わおっ」
中村「取り扱いには気をつけろ。あと、この件については私は一切関係ない事にしてくれ」
なの「はいっ! ありがとうございました!」
なの「相生さん!」
ゆっこ「……」
なの「これ、飲んでください!」
ゆっこ「……なにこれ」
なの「え、ええっと、これはアレです! 天ぷらです!」
ゆっこ「え」
なの「早く飲んでください!」
ゆっこ「……うん」ゴクッ
なの(やった!)
ゆっこ「……」
なの「じゃあ相生さん、お聞きします。何故怒っているんですか?」
ゆっこ「みおちゃんが許せない」
なの「……」
なの「何故ですか?」
ゆっこ「俺君を奪ったから」
なの「……?」
なの「どういう事ですか?」
ゆっこ「俺君は私の彼氏……」
ゆっこ「俺君に近づく女の子は……皆、邪魔……」
なの「え……え……?」
ゆっこ「俺君と一緒に帰って……帰り道が違うから途中で分かれたら……」
ゆっこ「みおちゃんが……俺君に告白して……」
ゆっこ「奪われ……う……うう……」
なの「相生さん!」
ゆっこ「許さない許さない許さない許さない許さない」
ゆっこ「なのちゃん」
なの「は、はいっ」ビクッ
ゆっこ「協力してくれる?」
なの「へっ!?」
ゆっこ「みおちゃんへの復讐……」
なの「えっ……えぇと……」
ゆっこ「協力してくれる?」
なの「うっ……は、はいぃ……」
ゆっこ「ありがと」
なの(怖いよぉ……後悔した……)
屋上
俺「みおっ……」
みお「俺君っ……んっ……」
俺「ずっとこうしていたい」
みお「そうだね」
みお「でも、あんまりしちゃダメだよ。……私達、高校生なんだから」
俺「そうだけどさぁ。でもいいじゃん、うりうり」
みお「ぁっ……だ、だめだってば……」
みお「もう……あんまりアレだと嫌いになっちゃうからね」
俺「ごめんなさい。マジでごめんなさい」
みお「まったく……」
高崎「おい、お前ら」
みお「ひゃあっ!?」
俺「た、高崎っ……!」
高崎「何してんだ、こんな所で」
俺「青春っすよ」
高崎「青春ねぇ。行きすぎた真似はしないようにな」
俺「分かってますって」
高崎「もうチャイム鳴るぞ。早く教室戻れ」
俺「へーい」
みお「……」
高崎「……」
みお「……」
高崎「どうした長野原。行かないのか?」
みお「……高崎先生」
みお「私、今、すっごく迷ってるんです」
高崎「ん?」
みお「高崎先生はゆっこと仲良いですよね」
高崎「……。話す回数は多いが、別段そういう訳じゃ……」
みお「先生を信じて話します」
みお「私……ゆっこと付き合ってた俺君を奪ってしまったんです」
高崎「! ……」
みお「最低ですよね。友達なのに、親友なのに……」
高崎「……いや」
みお「え……?」
高崎「それは一時の気の迷いだろう。今は、こうして打ち明けられたじゃないか」
みお「高崎先生……」
高崎「相生の様子がおかしかったのは、それが原因か」
みお「はい」
高崎「なるほど。とにかく、お前は今すぐ相生に謝るべきだ」
みお「……そうですよね。ありがとうございます、吹っ切れました」
みお「行ってきます!」
高崎「待て」
みお「え?」
高崎「真の憎むべき相手は、相生という恋人がいながらお前を新たな恋人とした男だ」
みお「……でも、俺君は――」
高崎「事情はどうであれ、相生を見捨てたのは事実だろう」
みお「……」
高崎「相生の愛を受け切れるだけの心を持ち合わせておらず、結果逃げてしまったんだ」
高崎「アイツは、ちゃんと相生に話をつけたのか?」
みお「……私の知る限りでは、してません」
高崎「分かったか。そういう奴だったんだよ」
高崎「まあ、この経験は後の人生に生かせ。ちなみに、俺は生かせなかったがな、ははは」
教室
みお「ゆっこ、ごめんッ!!」
ゆっこ「へ」
ざわ……
俺「……!?」
みお「いや……ごめんなさいッ!!」
ゆっこ「み、みおちゃん……」
みお「許してくれなくていいよっ! でも、私はあんたに謝りたいのッ!!」
ゆっこ「……」
ゆっこ「みお……ちゃん……」ウルッ
ゆっこ「みおちゃん! みおちゃんっ!」ギュゥゥゥ
みお「ゆっこ! ゆっこぉお!」ギュゥゥゥ
ゆっこ「ちゃんみお! ちゃんみお!!」
みお「ゆっこぉおおおお!!」
おおおおおおおおおおおおお パチパチ
俺「な、何だ……何だよ一体……!?」
俺「何なんだよこいつらッ……!」ダダッ
なの「きゃっ!」ポロッ
俺「dkskdgjかそてゃうぇうへらwgwlk」
なの「あわわわ! 相生さんに頼まれて中村先生から貰ってきた硫酸が……」
俺「亜dfさldfkふぁsfかfかあskdふぁんf痛い痛い痛い」
なの「大丈夫ですか!? ど、どうしよう相生さんに殺されちゃうよ!」
俺「あsふぁふぁlggふぁ――ガ……」チーン
なの「あっ……ぁぁああぁ! 俺さぁぁぁん!」
俺「」
なの「え、えっと……」
俺「」
なの「どうしよう!?」
俺「」
みんな自虐的すぎ
お前らは悪くないよ
ゆっこ「みおちゃーん、スラマッパギー」
みお「あ、ゆっこおはよう」
ゆっこ「えへへー、昨日大三元アガっちゃったー」
みお「わお」
みお「……それにしても、あんた前のゆっこに戻ったね」
ゆっこ「え、何の事?」
みお(本当、見事に俺君の事忘れてるなー)
ゆっこ「早く学校行こうよ、遅刻しちゃうよ」
みお「あ、うん待ってー」
完
俺「なのちゃん、昨日はありがとうね」
なの「いえ、私がドジなのがいけなかったんですし…」
俺「そんなことないよ。一日中看病してくれてたって坂本さんが言ってた」
なの「た、たいしたことじゃ」
俺「俺、なのちゃんのこと好きになっちゃったかも」
なの「@@@@!!」
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