杏子「ワイルドタイガーだ!」(284)
バーナビー「調子はどうですか、虎徹さん」
虎徹「おうバニー。だいぶよくなったぞ。あと数日で退院できそうだ」
バーナビー「それはよかった。おや、杏子さん寝ていらっしゃいますね」
虎徹「あれからずっと寝ずに看病してくれてたからな……無理もないさ」
バーナビー「優しい子ですね」
虎徹「俺に似たんだな、きっと」
バーナビー「それはないかと」
虎徹「そこ否定すんのかよ!」
このスレは下記のスレの続きです
杏子「ワイルドタイガーだ!」 杏子「ワイルドタイガーだ!」 - SSまとめ速報
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イワン「失礼します」
カリーナ「タイガー、調子はどう?」
キース「ワイルド君、果物を持ってきたぞ!」
ホァン「買い過ぎだよこれ……」
アントニオ「まぁみんなで食べればいいさ」
ネイサン「アタシは果物よりタイガーを食べちゃいたいわぁ」
バーナビー「日中なんですよ、自重してください」
ネイサン「じゃあ夜中なら……」
バーナビー「却下します」
ネイサン「んもう、ツれないわねぇ」
カリーナ「杏子、寝てるわね」
虎徹「ずっと看病してたからな」
キース「優しい子だ、そして優しい子だ!」
杏子「ん……あれ、みんな?」
虎徹「起きたか、杏子」
キュゥべえ「やぁ杏子。ようやく目を覚ましたんだね」
杏子「キュゥべえ!? なんでここに……」
キース「きゅぅべえ?」
イワン「久兵衛……何かニッポンの臭いがするでござる!」
杏子「あ、やべっ」
キュゥべえ「姿を現した方が話をつけやすそうだね、よっと」
ホァン「な、なにこのぬいぐるみ!?」
カリーナ「可愛い!」
ネイサン「本当にキュートねぇ。すりすりしちゃいたくなるわ」
キュゥべえ「え、遠慮しておくよ」
虎徹「テメェがキュゥべえか。よくも杏子にあんなことしてくれたじゃねぇか」
杏子「虎徹……」
キュゥべえ「一体何の事だい?」
虎徹「しらばっくれんじゃねぇ!」バキッ
キュゥべえ「痛いじゃないか。いきなり何をするんだい」
バーナビー「どうしたんですか虎徹さん!」
アントニオ「そうだぞ、落ち着け虎徹!」
キース「まずは事情を離してくれないか、ワイルド君」
杏子「それはアタシが話すよ」
キース「魔法少女!?」
イワン「魔法少女は実在したんですね。ゴクリ……」
アントニオ「何でも一つだけ願いを叶えられる、か。眉唾ものだな」
ネイサン「でもそれを杏子は実際に味わったんだし、事実よね」
カリーナ「でも叶えてもらった代わりに一生命懸けの戦いなんて……」
キュゥべえ「君たちヒーローもある意味では似てると思うけどな」
バーナビー「違います。僕たちはちゃんといろいろな情報を貰った上で判断している」
バーナビー「しかし魔法少女の場合は、あなたに不都合な情報は伏せられているじゃないですか」
キュゥべえ「聞かれなかったから、答えなかっただけだよ」
バーナビー「そんな言い分が通用すると思っているんですか」
ネイサン「そうねぇ……そんなビジネスの仕方じゃ、いずれ信用なくすわよ」
虎徹「お前、また杏子に何かするんじゃねぇのか」
キュゥべえ「違うよ。杏子にお願いがあってきたんだ」
杏子「お願い?」
虎徹「杏子、こいつの言葉に耳を貸すな!」
杏子「…………」
杏子「いや、聞くだけ聞いてみるよ」
キュゥべえ「ありがとう」
虎徹「ふざけたこと言ったら、ミンチにしてチャーハンの具にしてやるからな」
キュゥべえ「こわいこわい」
キュゥべえ「ボクのお願いはね、君にワルプルギスの夜を倒して欲しいっていうことなんだ」
杏子「ワ、ワルプルギスの夜っていうとかなり強大な魔女だったけか」
キュゥべえ「アイツの魔力は桁違いだ。なんせ結界を作らず、現実世界に直接顕現できるぐらいだからね」
杏子「マ、マジかよ……化物じゃねぇか!」
バーナビー「今までの魔女は精神が弱った人間を結界内に連れ込み、殺していたんですよね」
アントニオ「そんな耳っちぃ事をする必要はないってことか」
キュゥべえ「うん。アイツは街の一つや二つぐらい簡単に壊滅させることができるからね」
ネイサン「な、なによソレ。ジェイクより強いんじゃなぁい?」
虎徹「そんな化物を相手に、杏子一人で戦わせるわけにはいかねぇ。俺も手伝う」
バーナビー「さすがにオジサンの年齢では魔法少女にはなれませんよ……」
イワン「魔法少女ではなく魔法オッサンになってしまいますね」
虎徹「折紙、後で屋上な」
イワン「ひぃっ!」
キュゥべえ「この中で魔法少女になれそうなのは、キミとキミぐらいかな」
カリーナ「アタシと……」
ドラゴンキッド「ボク?」
キュゥべえ「そ。ネクストが魔法少女になるなんて前例がないけど、おそらく凄まじい強さになるよ」
杏子「おいキュゥべえ。これ以上勧誘活動しないほうがいいぜ。おっかないオッサンがぶち切れそうだから」
虎徹「…………」
キュゥべえ「そ、そうだね……」
キュゥべえ(な、なんだろうこの負のオーラは……身の危険を感じる)
バーナビー「杏子さん一人で倒せる相手なんですか、ワルプルギスの夜は」
キュゥべえ「杏子一人じゃ厳しいけど、ワルプルギスの夜が現れる街には他にも魔法少女がいるんだ」
キュゥべえ「巴っていう名前、覚えているかな?」
虎徹「友恵!? まさかテメェ友恵を魔法少女にしやがったのか、あぁ!?」
キュゥべえ「く、苦しいよ」
杏子「虎徹、巴の知り合いなのか?」
虎徹「当たり前だ、俺の嫁さんだぞ!」
杏子「は?」
カリーナ「え、タイガーって結婚してたの……」
キース「少し前にバイソン君が言ってたトモエさんとはワイルド君のお嫁さんだったわけか」
キース「ということは、一緒に名前が挙がったカエデさんというのは娘さんあた りだろうか」
カリーナ「娘ぇええええええええ!?」
ホァン「ブルーローズ!? しっかりして!」
ネイサン「これはだいぶ深い傷を受けたわね。アンタのせいよ!」
虎徹「え、俺ぇ?」
キュゥべえ「あのー、話を続けてもいいかな」
バーナビー「どうぞ、あの人達は放っておきましょう」
杏子「巴ってのは巴マミのことだよな? ってことはワルプルギスの夜は見滝原に現れるってことか」
キュゥべえ「そういうことさ。協力してもらえるかな?」
杏子「……いいぜ」
虎徹「杏子!? こいつが嘘をついてるかも知れないんだぞ!」
杏子「それはないな。コイツは嘘はついたことがない。だんまりはよくあるけどな」
キュゥべえ「よく分かってるね、そのとおりさ。ボクは嘘は絶対につかない」
虎徹「どうだか……まっ、杏子がいいって言うなら、好きにしろ」
カリーナ「ちょっと待って。杏子はこの街をジェイクから救った救世主みたいに扱われてるのよ?」
カリーナ「今杏子がいなくなったら、復興に向けて頑張ってる人たちはどうなるのよ」
イワン「確かに……」
ネイサン「今の時期に杏子が抜けるのは確かに痛いわね」
アントニオ「なんせジェイクに止めを差したんだからな……あ、ギリギリ殺してはいなかったか」
虎徹「いい加減にしろ!」
虎徹「確かに杏子がジェイクに止めを差したさ。それで英雄扱いされるのも分かる」
虎徹「けどよ、杏子 だけの力で勝ったわけじゃねぇ」
虎徹「スカイハイやロックバイソンに俺、そしてバーナビーが戦った」
虎徹「んで折紙がジェイクの注意を惹き、ドラゴンキッドが閃光を放って、ブルーローズが足を止めて、ファイヤーエンブレムが槍に炎を宿した」
虎徹「全員の頑張りがあったからこそ、ジェイクを倒せたんだろ!」
虎徹「杏子がいなくなったら街がだめになる? そんなことがあってたまるか!」
虎徹「俺たちはヒーローとしての先輩だろ? 先輩が後輩に頼り切りで恥ずかしくねぇのか」
虎徹「先輩だったら後輩の旅立ちを、優しく見守ってやるもんだろ。街の平和は俺たちに任せておけ、ってな!」
先輩たち「…………」
キース「その通りだ、そして その通りだ!」
ネイサン「アタシとしたことが……タイガーに諭されるなんてね」
ホァン「そうだね。みんなが頑張ったからこその平和だったよ」
イワン「僕ももっと強くならないと、街の平和を守るために」
アントニオ「フッ……最近あまり活躍できてないせいで弱気になってたぜ」
カリーナ「アンタはもう少し頑張ったほうがいいかもね」
アントニオ「なんだとぉおおお!」
バーナビー「はは、僕も負けないように頑張らないと」
アントニオ「そういうわけだ、街の平和は俺たちに任せておけ」
虎徹「おい、俺の台詞取るなよ!」
アントニオ「いいだろう、お前はいつも活躍してるんだから」
バーナビー「やれやれ。最後まであの人達は……」
カリーナ「二人ともいい歳したオジサンなんだから、少しはしっかりしてほしいわね」
杏子「はは、でもこういうノリ、嫌いじゃないぜ」
杏子「それじゃ、シュテルンビルトは頼んだよ……先輩たち」
ロイズ「ちょっと待った!」
杏子「ロ、ロイズさん?」
ロイズ「何勝手にヒーローやめるなんて言ってるのよ」
杏子「ごめん、ロイズさん。アタシにはやらなきゃいけないことがあるんだ」
マーベリック「話は扉の前ですべて聞かせてもらったよ」
バーナビー「マーベリックさんまで!」
マーベリック「見滝原というのは日本にある街のことだね?」
杏子「あぁ、そうさ」
マーベリック「それなら丁度いい。最近日本ではネクストによる犯罪が増加していてね、ネクストの立場がどんどん悪くなっているんだ」
アントニオ「そういや最近、日本でネクストによるでかいテロがあったそうですね」
マーベリック「うむ。そこで、日本にもヒーロー制度を導入してみようという話が挙がっていてね」
マーベリック「凶悪犯罪人ジェイクを倒したクリムゾンランサーなら、うってつけだとは思わないかね」
杏子「へぇ、あっちでもヒーローか。悪くねぇな」
ネイサン「でも杏子一人だけじゃ危険だと思うわ」
ロイズ「一人じゃないわ。スカイハイとロックバイソンにも日本に行ってもらうつもりよ」
アントニオ「さ、左遷ですか!」
キース「バイソン君、そういう言い方はやめてくれ……」
マーベリック「まさか。日本は今やシュテルンビルトより危険な状態にある」
マーベリック「信頼しているからこそ、君たちを選んだんだ」
アントニオ「わ、分かりました!」
キース「ご期待に添えるよう、全力を尽くします。そして尽くします!」
マーベリック「あぁ、日本の平和は君たちの肩にかかっている。頼んだよ」
キュゥべえ(佐倉杏子がヒーローとなって街をひとつ救ったことにより、彼女の因果は大きく増大した)
キュゥべえ(膨大な因果を持つ鹿目まどかと佐倉杏子……どちらかが魔女になれば宇宙のエネルギーも安泰だね)
キュゥべえ(もし二人とも魔女になればとんでもない量のエネルギーを生むだろう。まぁ、それは彼が阻止するだろうけど)
キュゥべえ(彼にはとてもお世話になってるし、まぁいいさ)
キュゥべえ(さてさて、彼女たちはどんな絶望によって宇宙のエネルギーを生むのだろう?)
杏子「見滝原も久しぶりだな……」
キース「ここが日本……素晴らしい、そして素晴らしい!」
アントニオ「タイガーが住んでいる村は、この国をモチーフにしていると聞いたが……別物だな」
杏子「キュゥべえ、ワルプルギスの夜が来るのは今から二週間後だったよな」
キュゥべえ「うん。まずはマミに会いに行こう」
杏子「話聞いてくれるかなぁ、いきなり撃たれたりしそうだぜ」
アントニオ「そんなに物騒な奴なのか、マミって子は」
杏子「いや、そういうタイプじゃない。でも、前に何度か戦ったことがあるからねぇ」
キース「ケンカはよくないぞ、杏子君」
杏子「ケンカじゃねーよ、グリーフシードの取り合いだ」
キュゥべえ「まぁ、ボクがついてるから大丈夫だよ」
杏子「あぁ、バッチリ盾になってもらうよ」
キュゥべえ「ひどいなぁ」
杏子「てかそれ以前に、こんな大勢で押しかけたら間違いなく警戒される。しかもオッサン二人」
アントニオ「オ、オッサン!?」
キース「オッサン……そうだね、私は子どもからしたら立派なオッサンだったよ。はは」
杏子「おいマジで落ち込むなよスカイハ……じゃなくてキースさん! 今のはアタシが悪かった」
キース「いや、事実だから気にしないでくれたまえ」
アントニオ「まぁ俺たちは魔女には何も出来ないし、いろいろ手続きもあるから一旦別れるか」
杏子「あぁ、すまねぇな。手続きとかは任せたぜ。何かあったら連絡してくれ」
アントニオ「おう、後でな。キース、いい加減しっかりしてくれ。行くぞ」
キース「す、すまないバイソン君」
アントニオ「アントニオって言ってくれ」
杏子「大丈夫かな、キースさん……不安だ」
「な、なぜあなたがいるの!?」
杏子「へ?」
ほむら「インキュベーター、お前の仕業ね!?」
杏子「こいつが例のイレギュラーか?」
キュゥべえ「うん。ボクは契約した記憶がないんだけれど、魔法少女なのは間違いない」
ほむら「仕掛けてこないのかしら?」
杏子「うーん、今までのアタシならそうするんだけどね」
杏子「まずは話し合いってのはどうだい」
ほむら「……? あなた、本当に佐倉杏子よね?」
杏子「そうだけど。っていうか知らない奴に自分の名前が知られてるって気味悪いな」
ほむら「そう、ごめんなさい。うーん、話し合いならそこの喫茶店でいいかしら?」
杏子「あぁ、構わねぇ」
ほむら「お金はあるの?」
杏子「おいおい、ケンカ売ってんのか? サ店に入るぐらいの金は持ってるよ」
ほむら「ならいいのだけれど」
ほむら「私の名前は暁美ほむら。あなたと同じ魔法少女よ」
杏子「アタシは佐倉杏子。ま、そっちは知ってるみたいだけどな」
ほむら「率直に聞くわ。あなたを呼び寄せたのはインキュベーター……キュゥべえね?」
杏子「そうだ。この街にワルプルギスの夜が現れるって聞いてよ」
ほむら「それは事実ね。あと二週間でワルプルギスの夜が現れる」
杏子「ほむら、アンタとマミはどういう関係だい?」
ほむら「巴マミのこと? 彼女のことを知ってるのね」
杏子「あぁ。アタシも以前この街にいたからな」
ほむら「成程。巴マミとはあまり仲がよくなかったのだけど、少し前に彼女の命を救ってからは友好的よ」
杏子「んじゃ、ケーキ食ったらマミん家に着いてきてくれるか?」
ほむら「分かったわ」
杏子「マミいるかー?」コンコン
杏子「おいマミ! いないのか?」ゴンゴン
杏子「マミ、マミ! 返事しろ! おい!」ドンドン
ほむら「ちょっと佐倉杏子、近所迷惑よ。チャイムを使いなさい」
杏子「おっと、そうだった」ピンポーン
マミ「暁美さん、何をやってるのかしらー?」
ほむら「と、巴マミ! 外出してたの?」
マミ「そうよ。マンションの前についたと思ったら、自分の部屋のあたりから大きなノックが聞こえて驚いたわよ」
杏子「すまねぇ」
マミ「あ、あなたは佐倉杏子! 一体何のようかしら?」
キュゥべえ「落ち着いてマミ。杏子こそが、ボクが言ってた助っ人なのさ」
マミ「え」
マミ「あなたがあのクリムゾンランサーなの!? こ、この槍にサインしてください!」
杏子(マミがアタシのファンだったとは。しかもグッズまで買うなんて……)
杏子「お、おう」
マミ「キャーッ! 一生大事にするわね、ありがとう!」
杏子「何か照れるな……」
ほむら(佐倉杏子がヒーローだったなんて初耳……今までこんなパターンはなかった)
ほむら(出会ったときに仕掛けてこなかったのもそのせいかしら)
マミ「ジェイクを倒す時のコンビネーションはすごかったわ!」
マミ「まず裁きの雷(トニトルス)で目眩まし」
マミ「次に絶対の氷(グラキエース)によって動きを封じる」
マミ「そしてトドメは地獄の業火(アドゥレーレ)を槍に宿しての、獄炎の紅槍(イグニス・テールム)!」
マミ「キャーッ! 思い出しただけで興奮するわ!」
杏子「そ、そうかい?」
ほむら「ついていけないわ……」
ほむら「話を戻しましょう。ワルプルギスの夜に対しての戦術を……」
マミ「クリムゾンランサー様がいればワルプルギスの夜なんてイチコロよ!」
杏子「恥ずかしいから普段は名前で読んでくれ。一応正体秘密なんだしさ」
マミ「ハッ! ご、ごめんなさい杏子様」
杏子「様とかつけんな! 普通に、普通に接してくれ」
マミ「うーん、杏子。こんな感じでいいかしら?」
杏子「オーケー、オーケー。これからもそんな感じで頼む」
ほむら「いい加減話を進めたいのだけれど……」
ほむら「とりあえず、佐倉杏子の実力を図らせてもらう」
ほむら「今日の夜、お手合わせ願えるかしら?」
杏子「いいぜ、やってやるよ」
マミ「夜まではまだ時間があるけど、どうしましょうか」
ほむら「そうね……私が知る全てを話そうと思うの」
ほむら「そこのインキュベーターが隠してることをね」
キュゥべえ「やれやれ。一体キミは何者なんだい、暁美ほむら」
ほむら「佐倉杏子……はまぁ大丈夫でしょう。問題は巴マミ」
マミ「私がどうかしたの、暁美さん」
ほむら「あなたは、魔法少女の真実を知る覚悟があるかしら」
マミ「真実?」
ほむら「それはとても生々しく、えぐいものなの。知ったら今までどおりの生活は送れないかも知れない」
マミ「それだけ聞くと、その真実を知るメリットがないように思えるのだけれど」
ほむら「これを聞けば、鹿目まどかや美樹さやかを魔法少女にする気なんてなくなる」
ほむら「私の狙いはそこよ。それに、魔法少女には知っておいて欲しいことでもある」
マミ「それを聞けば、なぜあなたが魔法少女が増えるのを頑なに拒むのかもわかるのね」
ほむら「えぇ」
マミ「なら、聞くわ」
ほむら「分かった。ショックを受けることも多くあるけど、落ち着いて聞いて」
杏子「ゴクリ」
キュゥべえ「…………」
杏子「マジかよ……」
マミ「魔法少女が魔女になるなんて、嘘よね?」
ほむら「嘘じゃないわ。すべて真実よ」
マミ「じゃあ私達が倒してきた魔女も、今までは普通の女の子だった」
マミ「私、人殺しじゃない!」
ほむら「落ち着いて、精神が不安定になると魔女化してしまうって言ったでしょう!」
マミ「魔女、魔女魔女魔女……あはあはははははは!」
杏子「だーっ、落ち着けこのバカ!」ポカッ
マミ「いたっ」
マミ「あれ、私……?」
杏子「大丈夫か」
マミ「え、えぇ。ごめんなさい、杏子」
ほむら「はい、紅茶淹れたわ」
マミ「あ、ありがとう……ってマズッ!」ブフー
ほむら「熱っ! ちょっと。せっかく淹れてあげたのに、吹き出さないでもらえるかしら」
マミ「ご、ごめんなさい。あまりにも味が……」
ほむら「わ、悪かったわね。紅茶淹れたことなんてほとんどないのよ」
マミ「そうなの。それじゃ、今度コツを教えてあげるわね」
ほむら「そう、楽しみにしてるわ」
ほむら(紅茶でやけどはしてしまったけど、だいぶ落ち着いてきたみたいね。よかった)
マミ「キュゥべえ、暁美さんが言ったことはすべて事実?」
キュゥべえ「そうだよ」
マミ「そう……」
キュゥべえ「何故黙っていたのか、聞かないのかい?」
マミ「どうせ、聞かれなかったから……とでも返すんでしょう。無意味だわ」
キュゥべえ「まぁ、そうなんだけどね」
マミ「キュゥべえはしばらくご飯抜き! 別に食べなくても死なないんでしょ」
キュゥべえ「そんなぁ……マミのご飯おいしいのに」
杏子「そろそろ腹減ってきたな」
ほむら「そうね。一度家に戻るわ」
マミ「食べていってもいいのよ?」
杏子「おっ、いいねぇ。アタシも料理手伝うよ」
ほむら「あなた、料理できるの?」
杏子「任せとけって! 今日はアタシの手料理を振舞ってやるよ」
マミ「クリムゾンランサー様の手料理……ウフフフフ」
ほむら「ご飯抜き程度で済ませるの? インキュベーターが憎いとは思わない?」
マミ「思わないわけじゃないけど、腹いせにキュゥべえを殺したりしても……何の意味もないわ」
マミ「それに、私がキュゥべえに命を救われたことに変わりはないのだし」
ほむら「マミ……」
マミ「私が両親をなくしたことによるショックで塞ぎ込んでいた時、なぐさめてくれたのもキュゥべえだから」
ほむら「でもそれは……」
マミ「立ち直らせて、希望を持たせて……より深い絶望を味合わせる為だったんでしょうね」
ほむら「そこまで分かってるのに何で! 何でなのよ!」
マミ「これ以上なんて説明すればいいか分からないわね。自分でもあまり分かっていないでしょうし」
ほむら「…………」
杏子「自分のことを完全に分かってる人間なんていないさ」
杏子「マミがそれでいいんなら、いいんじゃないのかい。ほむら」
ほむら「それはそうだけど……」
杏子「とりあえずメシでも食おう。いつまでもこんな空気じゃ、心によくねぇ」
マミ「そうね。またさっきみたいになってしまうかも」
ほむら「……わかった」
杏子「ほむらも手伝ってくれるかい?」
マミ「えーっと……暁美さんは、食器の準備してくれるかしら? そうしたら休んでて」
杏子「何でさ?」
マミ「えっと、その、ね……」
ほむら「前に巴マミと料理して、失敗しまくったのよ」
杏子「んじゃ、アタシがじっくり教えてやるよ」
ほむら「え……でも、悪いわ」
杏子「飯食うのに料理手伝わないほうがよっぽど悪いぞ。そこのクソ宇宙人と同列だ」
杏子「あ、コイツは飯抜きだから関係なかったか」
キュゥべえ「ク、クソ宇宙人はやめてほしいなぁ」
マミ「フフ、確かに杏子の言うとおりね。みんなで作りましょ」
キュゥべえ「マミ……」
マミ「もちろん、キュゥべえ以外のみんなでね」
キュゥべえ「」
マミ「おいしかったわ、みんなで料理するっていいわね」
杏子「だな。うまかった!」
ほむら「えぇ。料理、楽しかったわ。指を少し切ってしまったけど」
キュゥべえ「少し? 人差し指の第一関節より上が、本体から分離したよね?」
杏子「お前は空気を読め!」ポコッ
キュゥべえ「いたっ」
ほむら「鍋の中に指が入りそうになったときは、心臓が止まるかと思ったわ」
ほむら「あ、心臓なんて止まっても関係ないわね……私達には」
杏子「やめようぜ、そういうの」
ほむら「え?」
杏子「たとえジョークでも、悲しくなっちまうだろ」
ほむら「そう、ね……。ごめんなさい」
マミ「暁美さんだけズルイわ、私にも叱って!」
杏子「な、なんだよそれ。うーん、そうだな……部屋にちょっとお菓子多すぎじゃね、太るぞ」
マミ「」
街外れの廃墟――
ほむら「さて、このあたりなら人も来ないわ。はじめましょう」
杏子「よっしゃ、どっからでもかかって来な」
ほむら(杏子は、おそらく今までより遥かに強い。最初から全開でいくわ)
杏子「機関銃? そんなものがアタシに通用すると思ってんのか。そらそらそら!」
杏子を襲う機関銃の弾丸は、槍を風車上に振り回すことによりあっさり弾かれてしまう。
杏子「隙だらけだぜ!」
ほむら「それはこっちの台詞よ」
杏子「何を言ってやが……」
杏子が持っていた槍が突如大爆発を起こす。
杏子「きゃああああッ!?」
杏子「バカな、爆弾を使う素振りなんて!」
ほむら「あなたがその動作を捉えることは決してできない」
杏子「……なんてな」
いつの間にかほむらは、杏子の蛇腹状の槍によって完全に動きを封じられていた。
ほむら「な!?」
杏子「攻撃の素振りを見せないだなんて、どんな能力なのかは知らねぇが……厄介だな」
ほむら「む、無傷!? そんな、さっきまで身体中にやけどを負っていたはずなのに」
杏子「それはきっと夢だったんじゃないか?」
ほむら「まさか、それがあなたの能力……」
杏子「そういうこった」
ほむら(目があった時に一瞬感じた妙な違和感……幻術の類ね。おそらくこれが、願いによって得られた能力)
杏子「だがほむらも相当なもんだな。その拘束をもう解いてやがる」
ほむら「何度も何度も、誰かさんの拘束魔法を食らったからよ」
マミ「これが、高等な戦闘者(ハイバトラー)同士の戦い……やるわね」
キュゥべえ「素直についていけないっていいなよ……」
マミ「ウフフ」バキッ
キュゥべえ「いたっ! 笑顔で殴るなんてひどいよ、マミ」
杏子「さて、とりあえず今日はここらへんにしとくか」
ほむら「今日は魔女も使い魔も現れなかったわね」
マミ「そうね、いいことだわ」
杏子「グリーフシードは大丈夫なのか、二人とも」
ほむら「私は問題ないわ」
マミ「微妙ね……今日暁美さんの話を聞いたときにかなり濁っちゃったし」
ほむら「これ、持っていなさい」
マミ「二つもいいの?」
ほむら「今日のことは私が原因だし、魔女になってもらったら困るわ」
マミ「ありがとう」
杏子「アタシも一つやるよ、ほい」
マミ「杏子まで……二人ともありがとう」
杏子「ケータイの番号とアドレス、交換しておくか」
ほむら「ケータイ!?」
杏子「どうした。持ってないのか?」
ほむら(今までの佐倉杏子とは違うって分かってるのだけど……違和感がすごいわね)
ほむら「いいえ、持ってるわ」
杏子「持ってるなら何であんなに驚くんだよ……。赤外線って便利だねぇ、ほらよ」
ほむら「ん、来たわね」
杏子「次はマミだな。準備できてるか?」
マミ「えぇ、いいわよ」
杏子「ほい」
マミ「ありがと」
ほむら「私の家、この近くだから。また明日ね」
マミ「えぇ。またね」
杏子「んじゃな。何かあったらすぐ連絡しろよ」
ほむら「頼りにしてるわよ」
マミ「杏子はどこに住んでるの?」
杏子「…………」
杏子「どこなんだ?」
マミ「!?」
杏子「ちょっと電話してみる。キースさんは不安だからアントニオにしとこ」ピポパ
アントニオ『お、どうした杏子』
杏子「なぁアントニオ。今どこにいる?」
アントニオ『ホテルだが』
杏子「アタシの部屋は取ってある?」
アントニオ『あ』
杏子「おい!」
アントニオ『スマン』
杏子「スマンじゃ済まねぇぞ! 野宿しろってか!」
アントニオ『ちょっと待ってろ、フロントに聞いてくる』
杏子「頼むぜ」
アントニオ『悪い、満室だとさ』
杏子「マジかよ」
アントニオ『この街にはここしかホテルないみたいだしな』
アントニオ『俺とキースと同じ部屋でいいなら構わないが……』
杏子「まぁ、野宿よりはマシか」
マミ「杏子」
杏子「ん?」
マミ「わ、私の家に泊っていかない?」
杏子「!」
杏子「それいいな!」
杏子「アントニオ。やっぱ、何とかなりそうだわ」
アントニオ『そうか? ならいいが……』
杏子「んじゃ、切るぜ」
アントニオ『おう。すまなかったな』
杏子「いいって。また明日な」
アントニオ『あぁ』
マミ「電話の相手って、もしかしてヒーロー?」
杏子「よく分かったな」
マミ「ヒーローが日本……しかも見滝原に来るって噂で、街中が大騒ぎしてるからね」
杏子「なるほどね。明日にはテレビとかで正式に発表されると思うぜ」
マミ「すごいわね、テレビなんて」
杏子「そうでもないさ。さて、そろそろ風呂入って寝ようぜ」
マミ「一緒に入る?」
杏子「そんなにデカイのか、マミん家の風呂は」
マミ「うーん、ちょっと厳しいかも」
杏子「なら先に入って来いよ」
マミ「それじゃ、お言葉に甘えて」
杏子「騒がしい一日だったな……」ピロリロリン
杏子「電話? こ、虎徹!?」
虎徹『無事に日本についたか?』
杏子「あ、あぁ。いろいろあったけどね」
虎徹『そうか、よかった。ちゃんとメシ食ってるか?』
杏子「食ってるよ。ガキ扱いすんなって」
虎徹『心配なんだよ杏子が。ちゃんと風呂にも入れよ』
杏子「だーっ! もう……楓の気持ちがよく分かるぜ」
虎徹『楓? なんでそこで楓が出てくるんだ』
杏子「……まぁいいや。んじゃ、そろそろ風呂入るから」
虎徹『そうか、しっかり洗えよ。おやすみ』
杏子「うん、おやすみ」
杏子「ふわぁ……よく寝たぜ」
マミ「あら、もう起きたの。早いわね」
杏子「まーな。おっ、いい匂い」
マミ「何だか早く目が覚めたから、ご飯作っておいたの」
杏子「ありがてぇ。んじゃ、いただきますか」
マミ「いただきます」
杏子「うめぇな、この味噌汁」
マミ「そう? ありがと。シュテルンビルトではどんな物を食べてたの?」
杏子「一緒に住んでた人がチャーハンしか作れなくてさ。交代交代で作ってたから……半分チャーハン、半分その他って感じ」
マミ「え! ダメよそんなの。もっといろいろなもの食べて栄養取らないと! それに、さすがに飽きるわ」
杏子「あのチャーハンはなぜか飽きない味だったんだよなー」
マミ「ふーん、不思議ね。あ、そろそろ学校に行かないと。あ、一応鍵のスペア渡しておくわ。テレビ出るのよね?」
杏子「そ、昼頃に生放送だ」
マミ「学校のテレビで楽しませてもらうわ。それじゃ……い、いってきます!」
杏子「何どもってんだよ。いってらっしゃい」
マミ「おはよう、みんな」
まどか「あ、マミさん! おはようございます!」
さやか「おはよーございますっ!」
ほむら「おはよう、マミ」
さやか「転校生がマミさんのことを名前で呼ぶの、何か違和感あるんだよねー」
まどか「確かに」
さやか「まさか二人はもうあんなことやこんなことをする仲にっ……!」
さやか「経験の少ない転校生にマミさんが優しく手ほどき!? だめ、そこはだめよマミ!」
ほむら「ちょ、ちょっと美樹さやか!」
マミ「美樹さーん……」
さやか「じょ、冗談ですよ! 冗談!」
マミ「あのね、二人に大事なお話しがあるんだけど……」
まどか「なんですか?」
マミ「もう、魔法少女体験コースはやめにしましょう」
まどか「へ?」
さやか「え?」
マミ「本当にごめんなさい。勝手に巻き込んだ挙句、いきなりやめるだなんて」
ほむら「あなた達もお菓子の魔女との戦いで、危険さが分かったでしょう?」
さやか「あれは本当に怖かった……死ぬかと思ったもん」
まどか「うん。ほむらちゃんがいなかったら、マミさんや私たち死んじゃったかもしれないんですよね」
マミ「あの時、私は自分の未熟さを知った。普通の女の子を連れて歩くことなんて、とてもできない実力よ」
さやか「うーん……それなら、あたしも魔法少女になろっかな。願い事もあるし」
ほむら「駄目!」
さやか「て、転校生?」
ほむら「あ、大声だしてごめんなさい」
さやか「びっくりしたぞ、もう」
マミ「私も同意よ。魔法少女になってはダメ」
まどか「マ、マミさんもですか?」
マミ「えぇ。暁美さん、あの話をしたほうがいいと思うわ」
ほむら「でも美樹さやかは過去に……」
さやか「?」
マミ「大丈夫、私だって何とか耐えられたもの。美樹さんなら大丈夫。まだ魔法少女じゃないしね」
ほむら「あなたがそこまで言うのなら……」
さやか「魔法少女が、魔女!?」
まどか「わ、私……世界を滅ぼしちゃうんですか」
ほむら「あなたたちは、まだ魔法少女になりたい?」
さやか「い、いやに決まってるじゃん!」
まどか「う、うん。いやだよ」
ほむら「よかった……」
マミ「あ、学校着いちゃったわね。話の続きは後でしましょう」
昼休み――
さやか「話の続き、やっぱ屋上?」
まどか「そだね。人に聞かれちゃいけないし」
ほむら「マミの教室に行きましょう」
マミ「待って!」ガラッ
ほむら「!?」
まどか「マ、マミさん?」
マミ「今日のお昼は見たい番組があるの!」
さやか「そ、そんな主婦みたいなこと言われても……魔女とかとテレビ、どっちが大事なんですか?」
マミ「魔女とも関係ないわけじゃないのよね、これが」
ほむら「あ、そういえば今日……」
アナウンサー『おまたせしました! HERO TV IN JAPAN!』
アナウンサー『凶悪犯罪が増えている日本に、なんとシュテルンビルトからヒーローがやってきました!』
アナウンサー『それではさっそく紹介していきましょう! まずは西海岸の猛牛戦車、ロックバイソォオオオン!』
ロックバイソン『日本の平和は……この俺が守る!』
アナウンサー『ロックバイソンと言えば、両肩に書かれた牛角の文字が有名でしょう』
アナウンサー『日本人なら誰でも知っている焼肉屋チェーンですね!』
マミ「なんでいきなりスポンサーの話なのかしら」
さやか「あんま活躍してないらしいですよ」
ほむら「大人の事情ね」
まどか「なんだかかわいそう……」
アナウンサー『続いてキングオブヒーロー、スカイハァァアイ!』
スカイハイ『日本人の諸君、私がスカイハイだ。キングオブヒーローの名にかけて、悪人から君たちを助ける、そして助ける!』
アナウンサー『スカイハイはシュテルンビルトのヒーローランキング一位にヒーローです!』
アナウンサー『風を操る能力で、犯人逮捕から人命救助まで何でもござれの完璧超人!』
まどか「スカイハイってすごいよねー、私も空を飛びたいな」
ほむら「数メートルぐらいジャンプするなら簡単だけど、自由に飛ぶのは無理ね」
マミ「私なら、ティロ・フィナーレの反動を利用すれば数十メートルぐらい行けるわよ」
さやか「それ死んじゃいますって!」
アナウンサー『最後に、凶悪犯罪人ジェイクを倒したシュテルンビルトの英雄、クリムゾォンランサァアアアアアッ!』
杏子『日本はアタシが育った国だ。祖国の平和を乱す悪人は、この槍が貫くぜ!』
アナウンサー『つい最近現れ、あのタイガー&バーナビーとトリオを結成し、数々の難事件を解決してきたニューヒーロー!』
アナウンサー『彼女なら、必ずや日本を救ってくれるでしょう!』
さやか「なんかすごい持ち上げっぷり。ロックバイソンとは大違いだわ」
まどか「ジェイクって人はすごい悪い人だったんだよね」
ほむら「そうよ。能力を二つ持ってるネクストらしいわ」
マミ「やっぱりツインテールがステキよね……」
アントニオ「俺の扱いひどすぎるだろう……」
キース「しっかりしたまえバイソン、ではなくアントニオ君」
杏子「そうそう。メインスポンサーがある国なんだし、これから頑張れば日本一のヒーローになれるかもしれねーだろ」
アントニオ「そ、そうだな! 日本を救ったヒーローのスポンサーは、日本の企業である牛角!」
アントニオ「フッ……マーベリックさんが俺を日本によこした理由が分かった気がするぜ」
キース「杏子君は友人の家に泊まるんだったかな?」
杏子「そうだぜ」
アントニオ「もしかして例の巴マミって子か?」
杏子「そうさ。結構仲良く慣れたよ」
キース「それはよかった。日本にはこういうことわざがあるそうだ……仲良きことは美しきなか、そして美しきなか!」
杏子(なげーよ! しかも微妙にちげぇ!)
マーベリック「日本でのヒーローの反応はまずまず、と言ったところか。これからに期待しよう」
マーベリック「ん? 君か。何かようかね」
マーベリック「あぁ、分かってる。もう二週間を切った」
マーベリック「なに、なぜそこまで彼女を信じられるか?」
マーベリック「うーむ、そうだな……彼女の生い立ちと、今の彼女を照らし合わせればいい」
マーベリック「そうすれば、誰にでも分かることだろう、彼女の精神の強さがね」
マーベリック「おっと失敬。君たちには、感情というものがなかったね」
まどか「ヒーローと魔女、どういう関係があるんですか?」
マミ「すぐに分かるわ」
さやか「ま、まさかあのクリムゾンランサーって女のヒーローが魔女になりかけ……だったり?」
ほむら「違うわ」
マミ「まぁ、ある意味当たってるけどね」
さやか「???」
マミ「着いたわ。さ、上がって頂戴」
まどか「お邪魔します」
さやか「おじゃましまーす」
杏子「おかえり……って誰?」
さやか「あ、あんたこそ誰よ! 何でマミさんの家に勝手に入ってんのよ!」
マミ「美樹さん。彼女はね……」
さやか「ク、クリムゾンランサー!?」
まどか「魔法少女がヒーロー……なんだかすごいね」
さやか「ご、ごめんなさい。事情も知らずにあたし……」
杏子「ダチの家に知らない奴がいたら驚くのも無理はないさ。気にすんなよ」
さやか「はい……本当にすみませんでした」
杏子「辛気臭い顔すんなって! てか敬語はやめてくれよ。年齢も近いんだしさ」
まどか「おいくつなんですか?」
杏子「15だ。アンタたちはほむらと同じクラスなんだよな。なら、一つだけアタシの方がおねーさんだな
杏子「マミ、ほむら。二人に話はしたのかい?」
マミ「えぇ」
ほむら「二人とも魔法少女になるのを思いとどまってくれたわ」
杏子「そいつはよかった。んじゃそろそろ……ほむらにワルプルギスの夜の能力とかを教えてもらおうかな」
まどか「私たちは帰ろ、さやかちゃん」
さやか「そうだね」
ほむら「送って行くわ。いつキュゥべえが勧誘に来るか分からないもの」
杏子「キュゥべえならアタシが見張ってるから大丈夫さ。今は寝てるし」
キュゥべえ「Zzz……」
ほむら「どうせそういう演技でしょう。私達を油断させるための」
杏子「ま、妙な動きをしたら柱にでも縛り付けてやればいい」
ほむら「それもそうね」
まどか「それじゃ、お邪魔しました」
ほむら「さて、それじゃまずはワルプルギスの夜の外見について教えておくわ」
ほむら「なんていうか、舞踏会とかで使いそうなドレスを着た女性が、ひっくり返ったっていう感じ」
マミ「???」
杏子「なんつーか、奇妙だな」
ほむら「そして大きさは、数十メートルはある」
杏子「いいマトじゃねーか。そんだけ大きいなら小回りも聞かねぇだろうし、攻撃をかわしやすそうだな」
ほむら「侮らないで。奴は近寄るものすべてをぶち壊すほどの能力がある。近づきすぎれば、木っ端微塵よ」
マミ「杏子とは相性が悪そうね」
杏子「だな……」
「キャァアアアアアアアッ!」
マミ「悲鳴!」
ほむら「まどか!?」
ほむら「まどか、大丈夫!?」
まどか「変なオジサンが二人、マミさんの部屋の窓の方をジーっと見てて、その人達と目が合っちゃって、怖くなって……」
さやか「あたしたちに気づいたら逃げたんです! 人間とは思えないスピードで!」
マミ「まさか、最近増えているネクストの犯罪者……?」
杏子「どこに逃げた?」
さやか「あっちの方!」
杏子「分かった。ほむらは二人を頼む。行くぜ、マミ!」
マミ「えぇ」
杏子「おっと、道が分かれてる」
マミ「私が右に行くわ」
杏子「逃げられたか……なんて足の速い奴だ」
マミ『杏子、怪しいオジサンを捕まえたわ、一人だけど……』
杏子「ナイス。すぐそっちに行く。そいつをエサにすれば、もう一人もくるだろ」
マミ『そうね。一体何が目的だったのかしら』
杏子「本人たちに聞けば分かるさ」
マミ「さて、あなたたちの目的を教えてもらいましょうか」
さやか「下着ドロボーとか?」
「ち、違う! お、俺はあいつが心配でだな……」
マミ「あいつ? 誰のことか分からないけど、心配なら堂々と部屋に入ればいいじゃない」
まどか「こそこそとするなんて、怪しいです」
「あいつに迷惑がかかると思って……」
マミ「覗く方がよっぽど迷惑だわ。言い訳はもう済んだかしら?」
杏子「悪ィ、かなり遠くまで行ってたからちょいと遅れたぜ」
杏子「……って何でお前がいるんだよ!」
アントニオ「き、杏子……すまん」
杏子「マミと本当にうまくやれてるか不安だったってことか」
アントニオ「あぁ……殺し合いをした仲だって聞いたからな。どうにも不安で」
アントニオ「なんせ相手は魔法少女だ。相手を操ったりできる可能性もある」
マミ「なるほど、それは一理あるわ……ずいぶん慎重な方ね」
杏子「もう一人はキースさんか。逃げ足が速いに決まってるな、そりゃ……」ピポパ
キース『きょ、杏子君か? はぁ、はぁ……』
杏子「アントニオは捕まった。戻って来ていいよ」
キース『そ、そうか……』
キース「すまない、そしてすまない!」
さやか「それってスカイハイのモノマネ?」
アントニオ「モノマネっていうか……」
杏子「スカイハイ本人だな」
ほむら「でしょうね。杏子の知り合いかつ外国人といえば……ヒーローぐらいのものだわ」
マミ「私の疑いは晴れたかしら」
アントニオ「あぁ、すまなかった」
キース「アントニオ君、私たちはトレーニングルームに戻るとしよう」
アントニオ「おう。三人とも、ワルプルギスの夜は頼んだぜ」
杏子「任せろ」
ほむら「一般人に魔女のことを話すなんて、あまり褒められたことじゃないわね」
杏子「話すつもりはなかったんだけどな。ヒーロー全員がいる時に、キュゥべえがいきなり姿を現しやがって」
ほむら「インキュベーター……本当に迷惑ね」
マミ「それじゃ、そろそろ部屋に戻ってワルプルギスの夜への対策を練りましょ」
杏子「そうだな」
ほむら「えぇ……」
杏子「風呂でたぞー」
マミ「分かったわ」
杏子「ふぅ、今日はかなり汗かいたからな……さっぱりしたぜ」ピロリロリン
杏子「アントニオからか……もしもし?」
アントニオ『今日はすまなかったな、本当に』
杏子「もういいて。てか、虎徹じゃなくてよかったよ」
アントニオ『はは、杏子にとってオジサンと言えばやっぱ虎徹か』
杏子「あぁ。もし日本にきてたらぶん殴ってるな」
アントニオ『何でさ』
杏子「虎徹たちはシュテルンビルトのことを守るって言ったんだ。その数日後に日本に来たら……なぁ?」
アントニオ『ハハハ。その通りだな』
杏子「!」
アントニオ『杏子、どうかしたのか?』
杏子「魔女が出た」
アントニオ『なにっ!』
杏子「悪い、切るぞ!」
アントニオ『待て、俺も行く』
杏子「来ても仕方ないだろ!」
アントニオ『だが……』
杏子「アントニオまで魔女の餌食になるかもしれねぇ。駄目だ」
アントニオ『分かった……』
杏子「マミ、風呂はいってる場合じゃねぇ。魔女だ、かなりデカい!」
マミ「分かってるわ。行きましょう」
杏子「ほむらに電話しねーと!」
ほむら『魔女ね? もうすぐ結界ってところまで来てるから、先に行くわよ。放っておいたら犠牲者が増える』
杏子「分かった」
マミ「暁美さんはなんて?」
杏子「もうすぐ魔女の結界に着くってよ」
マミ「急ぎましょう」
その結界内は非常に暗くて、明かり一つないので周りがまったく見えなかった。
ほむら「これは厄介ね……どこから来るか分からない。時を止めても無意味」
突如、ほむらの身体の至る所が切り裂かれた。
ほむら「あぐっ……! 相手はこの暗闇でも私が見えてるの?」
ほむら(本当にそうかしら……もしかしたら音を利用しているのかも)
ほむら(試してみましょう)
ほむら「…………」
ほむらが口を閉ざし、身体の動きを完全に停止。心臓音などの生きるために必要なあらゆる音も停止。
ほむら(長時間は危険だけど……少しの間なら)
ほむら(予想通りね、相手が攻撃してこない)
突然どこからか音がした。
ほむら(しびれを切らして広範囲の大技に出る気ね。それなら先手を打つまでよ!)
ほむらは音がした方向へ大量の爆弾を投げ込んだ。
「きゃああああああああああっ!」
ほむら「うそ、今の声って……ガハッ!」
聞き覚えのある声が上げた悲鳴を聞いて、ほむらは音をだしてしまった。
魔女がそのチャンスを逃すはずがなく、ほむらの身体中をズタズタに切り裂いた。
ほむら(今の、マミと杏子の声、よね。私はなんてことを……)
ほむら(だめだわ。冷静に、冷静になりなさい! ネガティブになったら魔女になってしまう)
ほむら(ソウルジェム、かなり濁っるでしょうね。身体がうまく動かない)
ほむら(この暗闇じゃ分からないけど。もしかしたら、もう……)
ほむら(グリーフシードを使うこともできないし、どうすればいいのよ)
ほむら(ワルプルギスの夜の前に終わるなんて……ごめんね、まどか。さやか、マミ、杏子……)
暗闇の魔女は、魔法少女を始末したと確信すると、彼女たちのソウルジェムを食べようとする。
しかし、突然その動きを止めた。新たな侵入者が二人も現れたからだ。
この街には魔法少女はもういない。結果に紛れ込んだただの人間か。
金属がぶつかる音がした。間違いなく侵入者が鳴らした音。さっさと始末してしまおう。
「なんだ……大したことはないな、魔女も。しっかり捕まえたぜ、やってくれ」
そう言った瞬間、魔女の身体が何かに切り裂かれ、倒れこんだ。
「……お前の敗因は三つだ」
「一つ、俺たちを一般人だと思っていたこと」
「二つ、俺がわざと音を出したことに気づかなかったこと」
「三つ……」
ロックバイソン「この俺の防御力を侮っていたことだ」
ほむら「う……ここは?」
杏子「やっと起きたか」
マミ「大丈夫? 暁美さん」
ほむら「杏子、マミ!? 何か、身体が……うっ」
杏子「まだあんまり動くなよ。アタシたち結構ダメージ受けてんだからさ」
ほむら「私のせいで……ごめんなさい!」
杏子「かなり効いたぜ、すごい威力だったな」
マミ「もう、杏子! でも、今度からは気をつけてね? 私達全滅してたかも知れないのよ」
杏子「ごめん。でもどうやってあの状況から……」
ほむら「ほら、恥ずかしがってないで出てきなさい」
ほむら「う……ここは?」
杏子「やっと起きたか」
マミ「大丈夫? 暁美さん」
ほむら「杏子、マミ!? 何か、身体が……うっ」
杏子「まだあんまり動くなよ。アタシたち結構ダメージ受けてんだからさ」
ほむら「私のせいで……ごめんなさい!」
杏子「かなり効いたぜ、すごい威力だったな」
マミ「もう、杏子! でも、今度からは気をつけてね? 私達全滅してたかも知れないのよ」
ほむら「わ、分かった。爆弾はもっと慎重に使わないと……」
ほむら「それにしても、一体どうやってあの状況から……」
杏子「ほら、恥ずかしがってないで出てこいよ」
アントニオ「よ、よう。傷の具合はどうだ?」
ほむら「アントニオさん? 少し休めば治るわ。魔力も誰かが補充してくれたみたいだし」
マミ「アントニオさんとキースさんが助けてくれたのよ」
ほむら「え!?」
キース「病人にはやはり果物、そして果物! たくさん買ってきたぞ!」
ほむら「ど、どうも……。って二人が助けたってどういうこと?」
杏子「魔女は魔法少女以外じゃ倒せない……って言いたいんだよな」
ほむら「そうよ」
アントニオ「魔女が現れた時、杏子には来るなって言ったが、どうにも気になってな……」
キース「私が空を飛んで君たちを探し、後をつけたんだ」
アントニオ「そんで二人が入っていったところに入ろうとしたんだが、どうも入れなくてな」
キース「ヤケで私が風の弾丸を撃ってみたら空間に亀裂が入ってね」
アントニオ「そんで俺のドリルが魔女を貫いたってわけさ」
キース「嘘は良くないぞアントニオ君」
ほむら「どっからどこまでが嘘なの……」
アントニオ「トドメを差したのはキース、俺はただのオトリだ……」
ほむら「魔女の結界に入るには魔法少女の力じゃないと入れない……わけじゃないのね」
杏子「今さら思い出したんだけどよ、この二つの能力の性質が似てるっていうってのを実際に体験してるんだよね、アタシ」
キース「ほほう」
杏子「キースとアントニオは知ってるよな。アタシがワイルドタイガーのスーツを着たこと」
キース「あぁ、ワイルドタイガーJrだね」
杏子「そうそう。あのスーツはさ、ネクストが能力を発動すると伸び縮みしてジャストフィットするのさ」
アントニオ「……なるほどな」
マミ「ネクストじゃない杏子にスーツがフィットしたっていうことは、杏子が放出した魔力がネクストの能力として認識されたのね」
杏子「そういうこと」
ほむら「一体どんな関係があるのかしら……」
杏子「それは分からねぇ」
マミ「でも、この事実を知れたことは大きいわね」
キース「あぁ。私もワルプルギスの夜と戦うことが出来る!」
アントニオ「俺とスカイハイが居れば百人力だな!」
杏子「まぁ、アントニオの能力は攻撃には使えないけどな」
アントニオ「おい! 人が気にしてるっていうのに容赦ないな!」
ほむら「いや、使えるわ」
杏子「え?」
ほむら「能力発動して、硬さを利用しての突撃よ」
アントニオ「そうだった! 大至急カタパルトを用意しなければな!」
ほむら(冗談で言ったんだけど……)
マミ「他のヒーローにも協力してもらえないかしら」
キース「確かに、その方が勝率は高い、そして高い。連絡してみよう!」
キース「あ、ワイルド君? 今すぐ見滝原に来てくれ! 共にワルプルギスの夜を倒そう!」
キース「なに、魔女は魔法少女にしか倒せない? そんなことはない、私とバイソン君で倒したぞ!」
キース「嘘じゃないさ、本当だよ。私が嘘を付くはずがないじゃないか、ははは」
杏子「ごめん、電話貸してくれ」
キース「あ、待ってくれ。杏子君が電話を代わるそうだ……はい、どうぞ」
杏子「サンキュ……虎徹か?」
虎徹『おいスカイハイが言ってることは本当なのか?』
杏子「あぁ。どうやらネクストでも魔女と戦えるっぽい」
杏子「魔女の結界への入り口をネクストの力でこじ開けやがった」
虎徹『分かった。ワルプルギスの夜が来るのはいつだ?』
杏子「えーっと、明日だな」
虎徹『マジかよ!?』
ほむら「あの魔女にやられてから相当時間が経ってるわね……」
アントニオ「三人とも今日、ようやく目を覚ましたんだ。相当なダメージだったんだろう」
虎徹『他の連中も呼んですぐに向かう! 待ってろよ!』
杏子「頼んだぜ」
マミ「対策も全然できてないのに。もう時間がないわ」
ほむら「あいつは、対策なんてしてもしかたない。というかしようがない」
ほむら「強さを知れば知る程、勝てる気がしなくなるもの」
杏子「弱気になるな、なったら負けだぜ」
キース「そうだぞほむら君。私たちは勝たねばならないのだ。日本、いいや……世界に住むみんなのためにも!」
アントニオ「フッ、その通りだな。ない、俺達もいるんだ。絶対に倒せる」
ほむら(今まではこんなに味方がいたことはなかった。何が起こるかなんて分からないじゃない)
ほむら「そうね、魔法少女とヒーローが手を組めば……勝てない相手なんていないわ」
杏子「あぁ、絶対に勝つぞ!」
マーベリック「事情はよく分かった。しかし、ヒーロー全員を行かせるわけにはいかない」
ワイルドタイガー「何故ですか! 人類全ての命がかかってるんですよ!」
バーナビー「ですが、この隙に乗じてシュテルンビルトが乗っ取られるかもしれません」
マーベリック「そういうことだ。この街は犯罪率が非常に高い……ヒーローが全員いないと知ったらどうなるか、分かるだろう?」
ドラゴンキッド「でも……」
マーベリック(さすがにヒーロー全員はマズい。パワーバランスが崩れてしまう)
ルナティック「話は聞かせてもらったぞ」
ルナティック「話は聞かせてもらったぞ」
ファイヤーエンブレム「ルナティック!?」
ルナティック「そう構えるな。戦いに来たわけではない」
バーナビー「信じられないな」
ルナティック「君たちがワルプルギスの夜を倒すまでの間、シュテルンビルトは私が守ってやる」
マーベリック「だが君は、殺人者を殺すのだろう? そんなことはシュテルンビルトでは許されない!」
ルナティック「人類全員と、殺人者数名の命……どちらが大事だと思う?」
ワイルドタイガー「命の重さなんて比べられるか!」
マーベリック「ワイルドタイガーの言うとおりだ、ルナティック」
ルナティック「やれやれ……本当に頭の固い男だな」
ワイルドタイガー「何とでも言えばいいさ」
ルナティック「いいだろう。君達が帰ってくるまでは人を殺さないと誓おう」
ワイルドタイガー「本当か?」
ルナティック「あぁ。もう言い争っている時間はない」
マーベリック(なんということだ……ユーリが自分の信念に背くとは。これ以上反論したら怪しまれる)
マーベリック「分かった。ヒーロー諸君は、大至急見滝原に向かってくれたまえ」
ワイルドタイガー「っしゃあ!」
ほむら「あれが、ワルプルギスの夜よ」
杏子「ほむらの説明した通りのカッコだな。頭に血が上りそうだぜ」
スカイハイ「ワイルド君たちはまだ来ていないようだな……」
ロックバイソン「向こうで何かでかい事件でもあったのかも知れねぇ。ウロボロスの時みたいな」
マミ「来るわよ!」
杏子「ほむらの情報によると、アイツの障壁はメチャクチャ固いんだよな」
ほむら「えぇ。でも一箇所でも破れば全体が壊れるわ」
マミ「再構築には時間がかなりかかるから、一気に攻めればいいのね!」
ロックバイソン「フッ、今回こそ俺のドリルの出番だな!」
スカイハイ「奴の攻撃は私が引き受けた! 空に浮かぶもの同士での戦い……負けるわけにはいかない!」
スカイハイがワルプルギスの夜に接近し、注意を引く。
ワルプルギスの夜はスカイハイに向けてレーザーや、巨大な車輪によって攻撃するものの、スカイハイはそれらをたくみにかわす。
スカイハイ「君の攻撃は遅い、そして遅い!」
ほむら「今のうちに、一点に集中して攻撃よ!」
ほむらはバズーカや対戦車ライフル、ミサイルランチャーなどの軍隊から盗んだ兵器を次々と撃つ。
ロックバイソン「うおおおおおおおお!」
杏子「おりゃあああああああっ!」
ロックバイソンは街中に設置したカタパルトを利用し、ワルプルギスの夜に何度も突撃。
たまにタイミングを誤り、ほむらの兵器の爆発に巻き込まれていた。
杏子はロックバイソンにつかまり、突撃と同時に槍で攻撃。そして、落下の際にはワルプルギスの夜の攻撃を迎撃する。
マミ「ティロ・フィナーレ! もう一発……の前にスカイハイさんをフォローしないと!」
マミはティロ・フィナーレを撃ちづけながら、スカイハイに向かう車輪を時々狙い撃つ。
マミ「はぁ、はぁ……これ以上ティロ・フィナーレを撃つと魔力がもたないわ。グリーフシードももうないし」
ロックバイソン「クッ……俺に任せろ! 行くぜ杏子!」
杏子「カタパルト、全部壊されちまった」
ほむら「強力な兵器は撃ち尽くしたわ……クッ、これだけの攻撃を浴びせたっていうのに破れないなんて」
スカイハイ「ぐわあああああっ!」
ロックバイソン「スカイハイ!」
マミ「こっちに狙いを定めてきたわね……万事休すかしら」
さやか「そんな。魔法少女が3人、ヒーローが2人もいるのに……勝てないなんて」
まどか「みんな……」
キュゥべえ「まどか!」
まどか「キュゥ、べえ」
さやか「あんた、まどかと契約しに来たわけ?」
キュゥべえ「もちろんさ」
さやか「契約すると思ってるの?」
キュゥべえ「うん、だから来たんだよ」
さやか「駄目だよまどか、契約しちゃ。転校生やマミさんが教えてくれたじゃない! まどかが契約したらどうなるか!」
まどか「うん、分かってるよ。さやかちゃん」
キュゥべえ「君が契約しても、世界は滅ばないかもしれないとしたらどうする?」
さやか「そんな言葉、信じないわよ。あたしはあんたなんかより、転校生のことを信じてるもん」
さやか「まどかもそうでしょ?」
まどか「うん。私はほむらちゃんを信じてる。あなたの誘いには乗らないよ、インキュベーター」
キュゥべえ「うーん、聞いてから判断してもいいんじゃないかなぁ」
さやか「お断りよ。いこう、まどか」
キュゥべえ「おいおい、ボクの言葉がどうやってキミたちに届いているか忘れたのかい」
さやか「!」
まどか「テレパシー……」
キュゥべえ「そういうことさ。キミたちはボクからかなりの距離を取らない限り、ボクの話を聞くことを拒否できないのさ」
さやか「インキュベーター、あんたって奴は……!」
キュゥべえ「それじゃ、話を聞いてもらおうかな」
キュゥべえ「まずまどかが魔法少女となり、ワルプルギスの夜を倒す」
キュゥべえ「そうするとまどかはすぐに魔女になってしまう」
さやか「そんなこと分からないじゃん!」
キュゥべえ「まどかが抱えてる因果は異常な量なんだ。魔法少女になったときの魔力もとんでもない量になる」
キュゥべえ「それは一個人が制御できるものじゃない。一度でも力を使えば、あっという間に魔力が暴走してしまう」
キュゥべえ「そしてあっという間に魔力が枯渇し、魔女になってしまうのさ」
まどか「嘘だよ。ほむらちゃんは私が魔女になる前にソウルジェムを割ったことがあるって、言ってた」
キュゥべえ「その時は今ほどの因果はなかったんだよ。ほむらが時間遡行を繰り返すほど、キミの因果と魔力が増えるんだからね」
さやか「結局どう転んでも世界は滅ぶじゃない」
キュゥべえ「いいや、魔女になったまどかを倒せばいいんだよ」
さやか「そんなの無理に決まってる。魔女のまどかを倒せる人なら、ワルプルギスの夜なんて簡単に倒せるじゃない」
キュゥべえ「それが倒せるんだよ、佐倉杏子なら」
まどか「え?」
キュゥべえ「彼女はまどかに勝るとも劣らない魔法少女なんだよ」
キュゥべえ「今までに前例がまったくないんだけど、彼女は本来増えるはずのない因果の量を莫大に増やした」
キュゥべえ「ヒーローとなり、様々な事件を解決し、極悪人ジェイク・マルチネスまで倒してしまったことによって」
キュゥべえ「街、いや国を動かしかねない行動だ……英雄とまでよばれたぐらいだしね」
キュゥべえ「しかも彼女はそんなに強大な魔力を持っているのにそれを制御している」
さやか「なら何でワルプルギスの夜に押されてるのよ」
キュゥべえ「気づいてないからだ、自分の因果の増大に」
まどか「魔力が増えたら自然に気づくんじゃないの?」
キュゥべえ「そこがボクにも分からないんだ……。でも魔力は精神と深く関わりがあるからね、なにかキッカケがないと目覚めないのだろうさ」
さやか「あんたバカだね、キュゥべえ」
さやか「今からあたしがそれを杏子に伝えてこればいいだけじゃん。じゃあね!」
マーベリック「申し訳ないが、そうはさせられない」
さやか「だ、誰! どっかで見たような」
マーベリック「君はここで何も見ていない」
さやか「あ……」バタッ
まどか「さやかちゃん!」
マーベリック「大丈夫。今記憶を再構築してるだけだ。命に別状はない」
キュゥべえB「美樹さやかは別の場所に移動しておくよ」
まどか「あ、待ちなさい!」
マーベリック「落ち着きたまえ。別に命を取ったりはしない。少しご退場してもらっただけだ」
まどか「あなた、ヒーローTVで見たような……」
マーベリック「私のことを知っているとは光栄だね。私はアルバート・マーベリック……ヒーローTVの発案者だ」
まどか「そんな人が何でインキュベーターなんかに……」
キュゥべえ「インキュベーターなんかに、とはひどいなぁ」
マーベリック「昔は今よりネクストへの批判がひどかった。私はその事態を打開するためにヒーローTVを創り上げたんだ」
マーベリック「しかし視聴率は伸びず、ネクストへの攻撃はやまなかった」
キュゥべえ(あと10分でヒーローたちが来るよ。ウロボロスの人たちに足止めさせたけど、もう限界だ)
マーベリック(それだけあれば問題ない)
マーベリック「そこでウロボロスという強大な犯罪組織と手を組み、犯罪を大量に起こさせ、ヒーローに解決させて視聴率アップを狙った」
マーベリック「だが手を尽くしても、ウロボロスの協力を得られなかった」
マーベリック「そんなある日、私は魔法少女について知ってしまった。知り合いに相談されてね」
マーベリック「そして魔法少女についての情報を集め、キュゥべえと出会った」
キュゥべえ「本当に驚いたよ。お前たちの行動を見逃す、魔女関連の事件ももみ消す。だから力を貸せ、なんて言ってきたんだからね」
マーベリック「こうして私はウロボロスとのコネクションができたのだ」
まどか「インキュベーターは少女の願いを利用しないと何もできないはずじゃ……」
マーベリック「キュゥべえに、才能を秘めた魔法少女についてのデータをもらったんだ」
マーベリック「そして彼女らに接触をし、ありとあらゆる方法を持ちいて願わせた」
まどか「ひどいよ、そんなのってないよ……」
マーベリック「話が長くなってしまったな。外に行くとしよう」
まどか「きゃ! は、離して!」
マーベリック「時間もない。急がねば」
スカイハイ「ま、まどか……くん!? に、逃げるんだ」
スカイハイはスーツがボロボロになり、全身から大量に血が流れていた。
ほむら「まどか! だ、駄目! 逃げ……ガハッ! ゲホッ、ゲホッ!」
ほむらは傷は少なめだが、右手の肘から下がなくなっていた。
ロックバイソン「バカ、なんで来たんだ!」
ロックバイソンは頑丈だが、他の人より遥かに多い傷ができていて今にも倒れそうだった。
おそらく他の人をかばっていたのだろう。
マミは……地面に倒れ、微動だにしなかった。
まどか「そんな、そんな……」
まどか「なんで、なんでこんなひどいことするの。答えてよ、インキュベータァアアアアア!」
キュゥべえ「君が魔法少女になれば、みんなの傷を治せる。マミだって蘇らせることができる」
キュゥべえ「ワルプルギスの夜だって倒せるさ」
キュゥべえ「君が魔女になった後はボクが杏子に真実を教えてあげる」
キュゥべえ「そうすれば世界も滅びない」
キュゥべえ「さぁ……ボクと契約して、魔法少女になってよ」
まどか「私、契約……」
杏子「バカヤロー!」
まどかの後頭部を杏子が殴る。
まどか「いたっ!」
キュゥべえ「きょ、杏子!?」
杏子「こいつに何を吹きこまれたか知らねーが、契約なんてすんな!」
杏子「教えただろ、お前が魔女になったら世界は終わりだって」
まどか「その時は杏子ちゃんが私を……」
杏子「無理に決まってんだろ! 世界を滅ぼせるような奴相手に勝てるか!」
まどか「ううん、無理じゃない」
キュゥべえ(まずい、それ以上言ったら……!)
マーベリック「仮に杏子が魔女となった君を倒したとしても、みんなの傷は戻らない」
マーベリック「杏子は治癒魔法の才がない。亡くなった巴マミの蘇生なんて無理だ。暁美ほむらのちぎれた腕の修復すら難しいかもしれない」
マーベリック「悩む余地はないと思うが?」
杏子「マ、マーベリックさん!? アンタ何を……」
マーベリック「すまない杏子。だが、私はキュゥべえに協力せざるを得ないんだよ」
杏子「いい人だと思ってたのに……畜生!」
マーベリック「なに。この戦いが終わればすべて忘れるさ」
キュゥべえ「もう悩んでる時間はないよ。まどか、ボクと契約を!」
まどか「みんなの傷をなくして、マミさんを生き返らせる。それが私の……」
「ワイルドに吠えるぜぇえええええええええええっ!」
杏子「虎徹!?」
ワイルドタイガー「うおらあああああああああああっ!」
ワイルドタイガーは戦闘機から飛び降り、ワルプルギスの夜の上から拳を振り下ろす。
ワイルドタイガー「いってえええええええ! ジェイクみてーなシールド持ってやがる!」
ファイアーエンブレム「ちょっと、カッコ悪すぎよ」
バーナビー「遅くなって申し訳ありません。ウロボロスの奴らが大量に攻めてきまして……」
ドラゴンキッド「ルナティックが協力してくれなかったら、かなり時間かかったかも」
ブルーローズ「すごい怪我してるじゃない!? すぐに病院に行かないと……」
折紙サイクロン「この金髪の少女は、もう……」
ワイルドタイガー「よくもやってくれたじゃねぇか……俺たちの仲間によぉ! 絶対に許さねぇぞ、ワルプルギスの夜!」
ワイルドタイガー「行くぜぇええ……」
バーナビー「待った!」
ワイルドタイガー「何だよ! さっさとこいつ倒してみんなを病院に……」
バーナビー「闇雲に攻撃しても駄目だって昨日言われたじゃないですか!」
ブルーローズ「そうよ、一点に攻撃を集中しないと」
杏子「魔女の……頭を、狙え。今までの攻撃はあそこに集中した」
ドラゴンキッド「頭って……下にある奴? それとも、純粋に上の方のスカートみたいな所?」
杏子「…………」
ファイヤーエンブレム「駄目、気絶してるわ」
バーナビー「他の人ももう意識がないみたいですね……」
折紙サイクロン「拙者が蚊になって接近してみるでござる! その間、耐えてほしいでござる!」
ワイルドタイガー「頼む、折紙!」
ファイアーエンブレム「なんて攻撃の量なの……避けきれないわ! グッ!」
ワイルドタイガー「みんな、俺とバニーの後ろにいてくれ!」
バーナビー「ハンドレッドパワーを使っててこのダメー、ガハッ! ぐぅ……能力が切れるまで持ちそうにないですね」
ファイヤーエンブレム「炎の力で、シールドを張るわ!」
ブルーローズ「アタシも、氷で……」
ドラゴンキッド「ボクは、あの車輪をできるだけ撃ち落とす!」
まどか「みんな頑張ってるのに、私には……」
マーベリック「契約を拒み続けることが、君の戦いだ」
まどか「マーベリック、さん?」
折紙サイクロン「間近で見ると、ここだけかなり脆くなってるでござる」
折紙サイクロン「後は地上に戻ってみんなに……」
なかなかヒーロー達を倒せないせいか、ワルプルギスの夜は上下を逆にした。
人形の頭が上に来た、それは彼女が本気になったことを意味する。
彼女は物凄いスピードで回転をはじめて、周りにあるものをはじき飛ばした。
折紙サイクロン「うわあああああああああっ!」
キュゥべえ「あーあ……とうとう本気になっちゃった。まどかじゃなくて、ワルプルギスの夜によって人類は滅ぼされそうだね」
まどか「そんな!」
キュゥべえ「今ならまだ間にあうかも。契約するかい?」
まどか「で、でも……」
ワイルドタイガー「何だよあの攻撃! 折紙がやばい!」
バーナビー「あんなのを食らったら、とてもじゃないですけど耐えられません!」
ブルーローズ「どんどん回転が早くなってるわよ!」
ファイヤーエンブレム「ダメ、もうここまで来るわ!」
ドラゴンキッド「何か手はないの!?」
荒れ狂う暴風を前に、誰もが目を閉じた。
杏子「く、何なんだこの風は?」
杏子「……おいおい、なんだよあれ。今までとはケタ違いの威力、範囲」
杏子「あんな奴、どうしろっていうんだよ……」
杏子(諦めたらダメだ。何か、手はないのか?)
杏子(まどかは言った。魔女になったまどかを、アタシなら止められるって)
杏子(嘘を言ってる感じはしなかった。そんな状況でもなかった)
杏子(魔法少女の強さは因果の量で決まる。もしも、その因果の量が増えたとしたら?)
杏子(アタシは人の命を食っている生活から一転し、ヒーローとして人の命を守るようになった)
杏子(極悪人のジェイクを倒したりして、英雄なんてよばれたりもしてる)
杏子(そういや、歴史上の女性の英雄の多くは魔法少女だっけ?)
杏子(でも仮に因果が増えたとしたら……何でアタシはワルプルギスの夜にボコされたんだ)
杏子(因果と魔力の増大……それに、気づいてなかったからとか?)
杏子(まさかな……って、え!?)
杏子(な、なんだよこの魔力は。ヤバイ、デカすぎる)
杏子(制御できねぇ、飲み込まれそうだ!)
杏子(だーっ! アタシがここで踏ん張らねぇでどうする!)
杏子(自分に負けるなんてカッコ悪いだろ!)
ワルプルギスの夜は魔力が増大してる杏子を危険と判断し、強力なレーザーを放った。
今の杏子は魔力の制御に必死で、隙だらけだ。防御も回避もできない。
しかし、杏子の身体は放たれたレーザーの射線上にいなかった。
ルナティック「フン……頼りにならないヒーローたちだ。この程度の風で身動きが取れなくなるとはな」
杏子「ル、ルナティック……なんでここに」
ルナティック「ヒーローたちが日本に向かった後、シュテルンビルト市民が立ち上がってな……ウロボロスと戦い始めたのだ」
ルナティック「ありとあらゆるものを武器にな。そして、私にも日本へ行けというのだ」
ルナティック「この状況を打開できるのは貴様だけだ。市民の思いを無駄にするなよ?」
杏子「わ、わかってらぁ!」
杏子(虎徹、バーナビー、アントニオ、キースさん)
杏子(カリーナ、ホァン、イワン、ネイサン)
杏子(まどか、さやか、マミ、ほむら)
杏子(ロイズさん、斎藤さん、ルナティック、アニエスさん、マリオさん、そしてシュテルンビルトのみんな……)
杏子(アタシは一人で戦ってんじゃねぇ。みんな、一緒に戦ってくれてる!)
杏子(一人じゃキツイけど、みんながいりゃ、なんとかなるさ!)
杏子「だからよ、いい加減言うことを聞きやがれ……アタシの魔力!」
杏子「ハァ、ハァ……なんとか、いけそうだな」
ルナティック「貴様の力、見せてもらおうか」
杏子「あぁ、たっぷりと見せてやるぜ! うぉおりゃあああああああっ!」
杏子は槍に膨大な魔力を込め、ワルプルギスの夜目掛けて投擲する。
光の速さで飛ぶそれは、バリアごとワルプルギスの夜を貫通し、宇宙の彼方まで飛んでいった。
杏子「どんなもんよ!」
杏子「やべ、慣れないことしたら力が一気に……」
力を一度に使いすぎたせいで、落下していく杏子。
ルナティック「最後まで世話の焼け……チッ、私も能力を使いすぎたか!」
シュテルンビルトから見滝原まで自力で来たせいか、ルナティックは能力を使い果たしてしまった。
そして杏子と共に落下していく。
ワイルドタイガー「杏子!」
杏子「ナ、ナイスキャッチ虎徹。死ぬかと思ったよ」
バーナビー「大丈夫か、ルナティック」
ルナティック「私を助けるとはな……後悔するぞ」
バーナビー「失われていい命なんてない。そうですよね、虎徹さん」
ワイルドタイガー「あぁ。その通りだ、バニー」
キュゥべえ「まさか本気になったワルプルギスの夜を一撃で倒すなんてね……驚いたよ」
杏子「まだアタシたちの目の前に姿を現せるお前に驚いたよ、アタシは」
ワイルドタイガー「杏子、そんな奴に構うな。みんなの手当をするぞ」
杏子「分かった! アタシに任せろ!」
キュゥべえ「…………」
キュゥべえ「これは、かなり嫌われちゃったかな?」
杏子「ほとんどの奴は完治できた」
杏子「だがほむらの右手の肘より下は完全に消し飛んじまってるから無理だ……」
バーナビー「大丈夫、今の医療技術ならなんとかなります」
杏子「そうなのか、すげぇな」
ドラゴンキッド「でも、マミちゃんは……」
ネイサン「魔法少女ってのはソウルジェムが濁らなければ死なないんじゃないの?」
杏子「あまりに大きなダメージを受けたら死ぬこともあるらしい。例えば、首チョンパされたりすりゃアウトだ」
まどか「こんない大きな穴がお腹に空いてるなんて……うっ、マミさん。なんで、なんでなの……?」
ワイルドタイガー「バカ、見るな!」
ブルーローズ「折紙は、どうなっちゃったのかしら」
ファイヤーエンブレム「蚊になってる状態であの暴風を間近で受けたのよ……分かるでしょう」
ネイサン「バリアが脆くなってるところを探すために……あんな無茶しやがって!」
「誰かー」
ブルーローズ「え?」
「誰かそこにー」
ワイルドタイガー「何か聞こえたような」
「助けてほしいでござるー」
杏子「そこの瓦礫の下から聞こえるぞ!」
ワイルドタイガー「よし、ここは俺が! ぐ、力が使えないとキツいな」
バーナビー「僕も手伝いますよ」
ブルーローズ「アタシも!」
ネイサン「ファイヤーするわけにもいかないわね……ま、アタシは力仕事も得意よぉ」
ドラゴンキッド「よい、しょ!」
ルナティック「く……なかなか手強いな。瓦礫というものは」
まどか「うんしょ、うんしょ」
マーベリック「力仕事なんて、久しぶりだな」
折紙サイクロン「かたじけないでござる」
バーナビー「よく無事でしたね、折紙先輩」
ファイヤーエンブレム「そうよぉ。あんな暴風の中で、しかも蚊に擬態中でしょ?」
折紙サイクロン「あの時、拙者は奴の真下に潜り込んでいたのでござる」
ブルーローズ「台風の目、ってことかしら」
折紙サイクロン「その通りでござる!」
杏子「じゃあなんで瓦礫の中にいたのさ」
折紙サイクロン「恐ろしさのあまり擬態が解けて落下してしまい、その衝撃で周りの瓦礫が……」
バーナビー「なるほど。とにかくご無事でなによりです」
ワイルドタイガー「やっと医療班が来たか!」
バーナビー「ほむらさんは彼らに任せましょう……」
ブルーローズ「気絶してるロックバイソンやスカイハイもね」
杏子「マミ……」
まどか「折紙サイクロンだって生きてたんだし、マミさんも実は……」
ネイサン「気持ちは分かるけど、現実を受け止めなさい」
さやか「まどか! 大丈夫!?」
まどか「さやかちゃん!?」
さやか「あたし、避難所に行ってからの記憶があいまいで……でも何故かここに来ないとって思って」
さやか「あれ? マミ、さん……?」
まどか「さやかちゃん見ちゃダメ!」
さやか「嘘、でしょ?」
さやか「キュゥべえ! いるんでしょ! あたしと契約しなさい!」
杏子「何言ってやがる! アタシやマミ、それにほむらが……お前たちを契約させたくないって言ったの忘れたのか!」
さやか「忘れてるわけない! でも、マミさんが死んじゃうなんてあんまりでしょ……」
キュゥべえ「ボクはいつでもいいよ?」
杏子「ほむらが言ってただろ。アンタは心が弱い。だから魔女になりやすいって……」
さやか「あたしが魔女になっても世界が滅ぶわけじゃないじゃん!」
ドラゴンキッド「待って。ボクでも、魔法少女になれるんだよね?」
さやか「!?」
ドラゴンキッド「自分で言うのもアレだけど……ボク、普通の人よりは遥かに打たれ強いと思う」
ドラゴンキッド「ボクはネクストとしての能力があるから、魔力を使う必要はほとんどない」
ドラゴンキッド「精神が安定していれば、魔力を使いすぎない限り魔女にはならないんだよね」
杏子「そ、そりゃそうだけどよ……もしドラゴンキッドが魔女になったら、かなりの被害がでると思うぞ」
ドラゴンキッド「杏子ほどじゃないよ。それに万一の時は、自決する覚悟もできてる」
さやか「じ、自決って……」
ドラゴンキッド「世界を守るために命を賭して戦ったヒーローが、こんな所で死ぬなんて……ボクは認めたくない」
ドラゴンキッド「だから、ボクと契約してよ。キュゥべえ」
キュゥべえ(本人が言ってる通り、この子が魔女になる確率は限りなく低いんだよね)
キュゥべえ(しかも因果の量はかなりのものだし……でも、ボクに拒否権はない)
キュゥべえ「分かった。ホァン・パオリン。君はどんな願いでソウルジェムを輝かせるんだい?」
ドラゴンキッド「ボクの願いは、巴マミさんを蘇らせることだ!」
キュゥべえ「君の願いはエントロピーを凌駕した――」
数日後――
杏子「もう戻るのか」
虎徹「まぁな。アントニオとキースも目を覚ましたことだし」
ネイサン「シュテルンビルトには問題が山積みだしねぇ」
バーナビー「まさか、マーベリックさんがウロボロスと通じていたなんて……」
杏子「あぁ、アタシもショックだったよ」
カリーナ「何で、折紙を助ける時に手伝ってくれたのかしら」
イワン「謎ですね」
虎徹「ま、本人しか分からねぇな」
ほむら「そう、ね……」
マミ「ドラゴンキッドさん、本当にありがとうございました。このご恩は忘れません」
ドラゴンキッド「ボクがキミを助けたかっただけだよ。キミみたいな立派な人は、死んじゃいけないって思っただけ」
まどか「うんうん。マミさんすごいもん」
さやか「あたしも、人に尊敬される人間になりたいな。マミさんや、ドラゴンキッドみたいに」
虎徹「あれ、俺は入ってないの?」
さやか「あ、虎徹さんも尊敬してますよもちろん!」
虎徹「なんか付け加えた感じしかしねぇ……ちぇ」
バーナビー「ははは、すねないでくださいよ。僕は虎徹さんのこと尊敬してますから」
虎徹「どーだか。バニーちゃんは油断ならねぇからな」
アニエス『雑談もいいけど、もう時間ないわよ! さっさとヘリに乗りなさい!』
虎徹「へいへい。それじゃあな! 暇ができたら遊びに来いよー」
杏子「おう! それまでにエアコンなんとかしろよ!」
ほむら「行ったわね……」
キース「ま、間に合わなかったか!」
アントニオ「おいおい、せっかく退院したってのに、ひでぇ奴らだ」
杏子「おせーぞ二人とも」
キース「病院から全力で飛んできたんだけどね」
さやか「え、素顔で飛んだんですか!」
アントニオ「……しまった!」
キース「ハハハ! まぁ気にしない、そして気にしない!」
まどか「なんていうか、キースさんってマイペースですよね」
杏子「マイペースすぎて仕事でたまに困るよ……」
アントニオ「同意だな」ビービー
キース「おや、緊急コールか」
アントニオ「病み上がりだってのにな」
杏子「ヒーローは年中無休さ。この数日はアタシ一人で頑張ってきたんだぜ?」
キース「そうだったのか。ありがとう、そしてありがとう!」
アントニオ「ワルプルギスの夜との戦いで生まれ変わった、ニュー・ロックバイソンの強さを見せてやろう!」
杏子「スーツのデザインが変わったんだっけか? ワルプルギスの夜との戦いで奮闘したから」
アントニオ「そうだ! なんとドリルが二本増量! 出血大サービスだ!」
ほむら「へぇ。ライバルとして、期待してるわよ」
アントニオ「ライバル!?」
ほむら「私もヒーローになったから」
キース「ほほう。これは楽しみだ、そして楽しみだ!」
杏子「何人ライバルが増えても、見滝原最強の称号は……アタシのものだ!」
見滝原編、おわり
夜遅く(朝早く?)までありがとう、そしてすまない!
大筋は予め作っておいたから、途中からは「ながら」でもなんとかなると思った。でもやっぱり書き溜めって大事だ
ひと通り書き終えてから一日経って見なおして、ミス直したり冗長な場所をカットしたりするべき
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