エーリカ「聞いた? 扶桑からウルトラルーキーが来るって話」
芳佳「え? 誰ですか?」
シャーリー「確かまだ軍学校に在籍中なんだろ?」
バルクホルン「既にネウロイとの戦闘経験もあるようだな」
リーネ「すごいですねぇ。私なんて飛ぶことに精一杯だったのに。どれだけの実力があるんだろう」
エイラ「私にすら被弾させられるぐらいの実力がありそうだな。正直、そんな奴が来たら嫉妬するゾ」
サーニャ「そういえば少佐の教え子でもあるとか」
ルッキーニ「おぉー。それじゃあ、バルクホルン大尉よりもつよい!?」
バルクホルン「技能を比べるのはどうかと思うが、手合わせしてみたいのは確かだな」
静夏「……っ」プルプル
美緒「服部、どうした。入らないのか?」
ミーナ「美緒、きっと緊張しているのよ」
美緒「はっはっはっは。何を緊張することがあるか。皆いいやつだぞ、服部」
ペリーヌ「少佐にご指導を受けるほどの才覚を有していると思ったほうがよろしいのでしょうか?」
バルクホルン「だろうな。少佐が目にかけたウィッチはこんなにも成長していることだしな」ナデナデ
芳佳「や、やめてくださいよ。バルクホルンさん」
リーネ「私なんて……まだまだ……」
エーリカ「お。トゥルーデが褒めた。明日は雨かなぁ」
バルクホルン「何を言っている。私は事実を言っただけに過ぎない」
エイラ「でも、怖いよなぁ。下に見られそうで」
芳佳「それはないと思いますよ。坂本さんが指導したっていうなら」
サーニャ「うん。私もそう思うわ」
エーリカ「きっと、あれだね、少佐みたいにおおらかなんだよ。細かいことには拘らないような」
シャーリー「おぉ。いいねぇ。あたしたちと気が合いそうだ」
静夏「……っ」プルプル
美緒「服部。まだ心の準備ができないか?」
ミーナ「それじゃあ、まずは私たちが先に入るわね。合図をしたら服部さんは入ってきてね」
美緒「遅れてすまないな」
芳佳「あ、坂本さん。新しい人が来るって……」
美緒「ああ。その通りだ」
バルクホルン「噂は聞いている。軍学校に在籍しながら、その飛びぬけた技術で様々な任務を任されているとか」
ミーナ「そうよ。坂本少佐が手放しで天才だと賞賛するぐらいにね」
シャーリー「それはすごいな」
リーネ「芳佳ちゃんだってそこまで言われたことないのに」
芳佳「リーネちゃんだって」
ペリーヌ「さ、坂本少佐にそこまで言わせるなんて……一体……」
ルッキーニ「まだきてないのー?」
美緒「来てはいるがな……」
ミーナ「もういいかしら?」
静夏「……」プルプル
静夏ちゃん・・・
エイラ「そいつの階級は?」
美緒「軍曹だ。まだ軍学校に在籍している所為もあるがな。まぁ、恐らく奴の実力なら半年もかからず二階級ぐらいは昇進できるだろう」
サーニャ「そんなに凄い人が来るんだ」
エイラ「うーん。なんかもう私の中ではハルトマン中尉よりすごい奴になってるゾ」
美緒「そこまで期待はするな。といいたいところだが、しても構わん」
エーリカ「何かエピソードでもあるの?」
美緒「ウルトラルーキーは私が考案した地獄の持久走を一人耐え抜いた者だ」
シャーリー「あれを? やるなぁ……」
美緒「それに終わった後は息一つ乱してはいなかった」
バルクホルン「なんだと。私でもあれは相当な疲労なのに、なんてスタミナだ」
ルッキーニ「シャーリーよりすごいかなぁ?」
シャーリー「今の話だけで負けを認めていいよ」
ミーナ「服部さん、もういいかしら?」
静夏「……」プルプル
芳佳「どんな人なんだろー。たのしみー」
リーネ「マルセイユ大尉みたいにすっごくかっこいい人だと思うなぁ」
芳佳「あぁ。うん。分かるよ。背が高くって、足が長くて……それから……」
ルッキーニ・エイラ「「胸が大きい!!」」
リーネ「も、もう! エイラさん! ルッキーニちゃん!!」
バルクホルン「しかし、少佐のように豪胆なのはいいが、軍規はきちんと守ってほしいところだな」
エーリカ「そんなの実力があるんだから、どーでもいーじゃん」
バルクホルン「言い訳がないだろ。だが、そうだな。常軌を逸していない限りは目をつぶろう」
シャーリー「なんで? バルクホルンらしくもない」
バルクホルン「そのような実力者ならば皆を守れるだろう。今後の501にとっては不可欠な人員だ」
ペリーヌ「大尉……それは……」
バルクホルン「若いウィッチが入ってくれるのは純粋に嬉しい」
美緒「そうだな……。では、そろそろ扶桑の超ウルトラ級ハイパースペシャルなルーキーを紹介するか」
ルッキーニ「まってましたぁ!!!!」
シャーリー「いえーい!!」
ミーナ「服部さーん。入ってきてー」
芳佳「ワクワクするねー」
リーネ「ねー?」
エーリカ「まだぁー?」
ミーナ「おかしいわね……。服部さーん。服部静夏軍曹、入室して」
美緒「服部ぃー!! はいってこーい!!」
ルッキーニ「入ってこないじゃん」
エイラ「なんだ? そんな超ルーキーはいないのか?」
サーニャ「そんなことないと思うけど」
バルクホルン「どうした!! 何故入ってこない!!」
ペリーヌ「宮藤さん、ちょっと見てください」
芳佳「あ、はい」
芳佳「あのー。呼ばれてますけどー」ガチャ
静夏「……あ」ビクッ
芳佳「あ、どうも」
静夏「あ、あの……わ、私……その……」
芳佳「……」
静夏「は、服部静夏です。私はその、坂本少佐から501の、特に宮藤軍曹の話をよく聞いていまして……それで……あの……」
芳佳「自己紹介は中でしたほうがいいと思いますよ?」
静夏「は、はっ!! 失礼しました!!!」
芳佳「……」
静夏「私は!! 扶桑皇国海軍兵学校所属の服部静夏軍曹であります!!」
芳佳「とにかく、中に入りましょう」
静夏「は、はい!! しっつれいしましたぁ!!」
芳佳「どうぞ」
静夏「は、はい!! 失礼します!!」
バルクホルン「ようやく姿を見せたか」
ルッキーニ「にひひ」
エイラ「あれが超大型ルーキーか」
リーネ「……」
静夏「……っ」プルプル
エーリカ「ふーん。へぇー」
シャーリー「なるほど……」
バルクホルン「かなり緊張しているようだが」
ペリーヌ「まぁ、初めての場というのはどんな実力者でもああなってしまいますわ」
エーリカ「私も昔はあんなだったし、トゥルーデもそうだろ?」
バルクホルン「……そういえばそうだな」
サーニャ「友達になれるかな……」
エイラ「サーニャなら一発だろ」
サーニャ「だといいな」
ミーナ「それじゃあ、服部さん。自己紹介を」
静夏「は、はい!! わ、わわ、わたしはぁ!!! 服部静夏軍曹です!! 階級は軍曹です!!」
静夏「扶桑皇国海軍兵学校所属の服部静夏軍曹であります!!」
シャーリー「自分の名前を押すなぁ。さっさと覚えろってことか?」
エーリカ「へえ、挑発的だねぇ」
美緒「うむ。服部、元気があっていいことだな」
静夏「は、はい!! ありがとうございます!!」
ミーナ「では、各自の自己紹介は……」
バルクホルン「時間の無駄だ。今やろう」
ミーナ「わかったわ。私と坂本少佐のことはいいわね?」
静夏「は、はい!! だ、大丈夫であります!!」
バルクホルン「ゲルトルート・バルクホルン。階級は大尉だ」
静夏「は、はい!! いつも新聞やラジオで大尉のことは聞いています!!」
バルクホルン「そうか。私も服部の噂は耳に入っている。後ほど模擬訓練に付き合って欲しい」
静夏「了解!!!」
ペリーヌ「大尉の申し出を簡単に……」
バルクホルン「ほう。風聞に違わぬ実力があるということか」
シャーリー「あたしはシャーロット・E・イェーガー。今、一番気になっているのは服部の実力かな。よろしく」
静夏「は、はい!! よろしくおねがいします!!」
ルッキーニ「あたしはフランチェスカ・ルッキーニだよ!」
エイラ「エイラ・イルマタル・ユーティライネンだ」
サーニャ「アレクサンドラ・ウラディミローヴナ・リトヴャクです」
ペリーヌ「ペリーヌ・クロステルマンですわ」
静夏「あ……は、はい……」
リーネ「リネット・ビショップです」
芳佳「私は宮藤芳佳。よろしくね!」
エーリカ「エーリカ・ハルトマン。よろしくぅ」
静夏「は、はい……」
美緒「覚えたか?」
静夏「紹介されるまでもありません!!!」
シャーリー「……どういう意味だ?」
静夏「え……?」
静夏ちゃんピンチ
バルクホルン「中々、威勢がいいな。新人」
静夏「あ、あの……え……?」
シャーリー「あたしたちの名前なんて覚えるまでもないってか?」
エーリカ「あーあ」
静夏「……っ」プルプル
芳佳「まってください!!」
バルクホルン「どうした?」
芳佳「ほら、服部さん、さっきも言っていたじゃないですか。新聞やラジオでよく聞いてるって。名前はもう覚えているって意味ですよ」
バルクホルン「……そうなのか?」
静夏「は、はい。そうです……」
シャーリー「なーんだ。びっくりしたぁ」
エイラ「おまえらぁ。サーニャが驚いて震えてるだろ!?」
サーニャ「うぅ……」
静夏「すいません!! すいません!!」
美緒「……ふむ。では、宮藤、リーネ。服部に基地の案内をしてやってくれ」
バルクホルン「宮藤」
芳佳「あ、はい」
バルクホルン「最後で構わないから格納庫へ新人を連れてきてくれ。模擬戦をやってみたい」
芳佳「わかりました」
エーリカ「私も服部と模擬戦しよーっと」
バルクホルン「私が終わってからだぞ。ハルトマン」
シャーリー「それいいな。あたしは観戦するか」
ルッキーニ「あったしもぉ!」
エイラ「いいな。ベテランの大尉と超大型ルーキー服部の勝負か。面白そうだゾ」
サーニャ「……」
芳佳「それじゃ、宿舎のほうから案内しますね。服部さん」
静夏「は、はっ!! よろしくお願いします!! 宮藤軍曹!!」
リーネ「よろしく」
静夏「は、はっ!! リネット曹長!!!」
ミーナ「宮藤さんとリーネさんなら大丈夫そうね。すぐに仲良くなれるといいんだけど……」
リーネ「ここが服部さんの部屋になります」
静夏「はい。この程度は既に覚えています」
リーネ「……」
芳佳「えーと、服部さん。食堂の場所なんかも大丈夫?」
静夏「問題ありません。ここに来る前に見取り図で確認していますから」
芳佳「へぇ。すごいね」
静夏「これくらいは当然のことです。自身が所属する隊の基地構造を把握していないなど、問題外ですからっ」
芳佳「……問題外なんだ」
リーネ「芳佳ちゃん、私も覚えてなかったから」
静夏「どうかされましたか、宮藤軍曹」
芳佳「ああ、ううん。なんでもないの。服部さんはやっぱりすごいなぁって。着任する前から色々準備をしてるんだね」
静夏「ですから、これぐらいは軍人として当然ですから。この程度で褒められても、嬉しくありません」
芳佳「やっぱり、すごいね。自信に満ち溢れてるよ」ヒソヒソ
リーネ「うん。坂本少佐が天才っていうだけのことはあるね」ヒソヒソ
リーネ「ここはお風呂になります。向こうにはサウナもありますよ」
静夏「これは、露天風呂ですか。すばらしい」
芳佳「いい眺めでしょー」
静夏「全くです。日々の疲れも癒せそうですね」
リーネ「えーと、あとは格納庫だけですけど、見ておきたい場所はありますか?」
静夏「いえ。もう十分です。全て頭の中に入っていますから」
芳佳「そう……」
リーネ「そういえば服部さんの年齢って?」
静夏「満14歳です!」
芳佳「えー!? そうなのー!?」
リーネ「ごめんなさい。年上だと思ってました」
芳佳「うん……私より大きいし……」
静夏「いえ!! 宮藤軍曹も立派です!! 坂本少佐より色々と伝え聞いていますから!!!」
芳佳「あ、ありがとう。服部さん」
リーネ「……」
リーネちゃんに虐められる静夏ちゃんはよ
芳佳「私を呼ぶときは階級をつけなくていいからね。私も静夏ちゃんって呼ぶから」
リーネ「私もリーネでいいですよ。そのかわり静夏ちゃんって呼ばせてね?」
静夏「それはいけません!! リネット曹長は私の上官です!! それに宮藤軍曹も先任である以上は上官ということになります!!」
芳佳「ここでは階級で呼び合うことが少ないから」
静夏「いえ!! それが軍規ですからっ!!」
リーネ「えっと……」
芳佳「ハルトマンさんぐらいの天才なのに軍規にまで厳しいなんて」
リーネ「バルクホルンさんは大喜びしそう」
芳佳「うん」
静夏「それでは格納庫のほうへ案内してください」
芳佳「あ、うん。でも、こっちに来たばかりで大丈夫?」
静夏「なにがですか?」
リーネ「バルクホルン大尉と模擬戦をするのに、疲れはないかなって」
静夏「どなたがあの英雄バルクホルン大尉と模擬戦を?」
芳佳「静夏ちゃんがだけど」
バルクホルン「遅いな……」
シャーリー「おーい。お菓子、あるぞー」
ルッキーニ「わぁーい!! おっかしぃー!!」
エーリカ「おかしだぁー!!」
エイラ「サーニャ!! おかしだぞ!!」
サーニャ「うん。エイラ、一緒にたべよう」
ペリーヌ「まったく。お菓子程度ではしゃいで、恥ずかしくありませんの?」
シャーリー「紅茶も入れ放題だ」
ペリーヌ「……ご用意のいいことで。いただきます」
バルクホルン「おまえらなぁ……」
サーニャ「どうぞ。バルクホルンさん」
バルクホルン「あ、ありがとう……サーニャ……。うん、うまいな。それよりも、宮藤たちはまだか」
静夏「……」
芳佳「ほら、待ってるよ。いこっ」
リーネ「静夏ちゃんがやるって言ったんだし、バルクホルン大尉も楽しみにしているみたいだから」
美緒「ん? 服部、こんなところにいたのか。バルクホルンとの模擬戦をするのだろう? 早くいかんか」
静夏「なっ……!!」
バルクホルン「ん? なんだ、来ていたのか。こちらはもうあ準備ができている。早く来い、服部」
芳佳「はーい。ほら、静夏ちゃん」グイッ
リーネ「いこうよ」グイッ
静夏「ま、まってください!!」
シャーリー「ん? どうした?」
ルッキーニ「でたぁ! スーパールーキーだぁ!!」
エイラ「待ってたぞ。未来のウルトラエースさん」
静夏「バルクホルン大尉!!」
バルクホルン「なんだ?」
静夏「何故、模擬戦を?」
バルクホルン「お前の実力を見ておきたいからだ」
静夏「そんなこと、やるまでもありません!!! け、結果は分かりきっています!!!」
エーリカ「……あ?」
芳佳「静夏ちゃん……!!」
リーネ「そんなこと言っちゃだめ……!!」
バルクホルン「新人。言ってくれるな」
静夏「と、当然です!! こ、ここ、こんなの模擬戦の意味がありません!!」
シャーリー「ふぅん……」
エイラ「大尉相手にあそこまで言えるやつが存在するとは……」
サーニャ「それだけポテンシャルが高いってことよ」
エイラ「そうかもしれないけどさ」
エーリカ「おい、服部ぃ……」
静夏「は、はい!!」
エーリカ「どれだけの実力があるのかは知らないけどさぁ……」
シャーリー「ハルトマン、落ち着けって」
エーリカ「トゥルーデを馬鹿にすんな」
静夏「し、したつもりはありません!!」
エーリカ「お前……」
美緒「まぁまぁ。待て。簡単な話だろう。バルクホルンとハルトマンがロッテを組み、服部は単機で模擬戦を行えばいいだけの話だ」
静夏「な……!?」
エーリカ「そうだね。それがいいかも」
バルクホルン「よし。ハルトマン、準備をしてくれ」
エーリカ「オッケー」
芳佳「あ、あの、いくらなんでも、それは……」
シャーリー「いいんじゃないか? 勝負にならないって服部自身が言ったんだし」
リーネ「で、でも、バルクホルン大尉とハルトマン中尉のロッテ相手に単機なんて、マルセイユ大尉でも勝てないような……」
エイラ「流石の私もかわしきれないナ」
サーニャ「うん」
美緒「これでいいな、服部?」
静夏「ち、違います!! いくら増やそうとも!! 関係ありません!!!」
美緒「ほう?」
静夏「模擬戦とは訓練です!! 訓練にならないことをしても意味がないと言ってるんです!!!」
ペリーヌ「服部さん。では、シャーリーさんとルッキーニさんも一緒に相手をなさっては? 単機で一個小隊と戦えばいくら天才でも訓練ぐらいにはなりますでしょう?」
静夏ちゃん・・・不器用な子・・・・
ルッキーニ「おっ。あたしはいいよぉ! にひぃ!!」
シャーリー「よっし。覚悟しろよ、服部」ポキポキ
静夏「で、ですからぁ!!」
バルクホルン「いや、私とハルトマンだけでやらせてくれないか」
エーリカ「おねがい」
ルッキーニ「いいのぉ?」
バルクホルン「私とハルトマンのロッテが敗れることなどありはしない」
エーリカ「そのとーりっ」
美緒「ほら、服部。あまり待たせるな。折角、歴戦のウィッチが相手をしてくれると言っているのだ。こんな機会は滅多にないぞ」
静夏「で、ですが……」プルプル
リーネ「静夏ちゃんのストライカーユニットはこれだよね? はい、どうぞ」
静夏「……っ」プルプル
バルクホルン「服部。早くしろ」
エーリカ「こいよ、服部」
静夏「は、はぃ……」プルプル
バルクホルン「服部。早くしろ」
エーリカ「こいよ、服部」
怖すぎ
美緒「制限時間は10分だ。いいな?」
バルクホルン「十分だ」
エーリカ「いくよ。トゥルーデ」
バルクホルン「ああ。全力でな」
静夏「……っ」プルプル
芳佳「静夏ちゃん、どうしたの?」
リーネ「震えてるけど……」
静夏「……なぜ」
芳佳「え? 何故って、それはみんなが静夏ちゃんに期待しているから」
静夏「なぜ……わたしは……みなさんに……この伝説の英雄たちに……ここまで期待をされているのでしょうか……」プルプル
リーネ「天才だから?」
静夏「天才……?」
芳佳「坂本さんが言ってたよ。静夏ちゃんは天才だぁーって」
静夏「そ、そんな……私は天才なんかでは……」プルプル
リーネ「謙遜しなくてもいいよ、静夏ちゃん。みんな分かってるから、静夏ちゃんが凄いってことは」
サーニャ「服部さん、震えてる……」
エイラ「武者震いってやつだな」
シャーリー「服部ぃー!! もうバルクホルンたちは空にいるぞー。早くしろー」
静夏「で、ですが……」
美緒「服部。何を怯えている」
静夏「さ、坂本少佐……!! あの、説明をしてください……わたしは天才では……!!」
美緒「お前をどうしてスカウトしたのか。それを考えれば自ずと答えは見えてくるはずだ」
静夏「え……?」
ペリーヌ「そうですわね。ここは即戦力しか求めていません。たとえ軍学校在籍中であっても、戦力になるのなら坂本少佐はここへ招きますわ」
美緒「その通りだ」
静夏「し、しかし……」
美緒「服部。お前は才能の塊だ。心配するな」
静夏「さいのうの……かたまり……」
美緒「バルクホルンとハルトマンに一泡ふかせてやれ」
静夏「……は、はいっ。服部静夏、出撃しますっ」
芳佳「がんばって!! 静夏ちゃん!!」
リーネ「がんばってー!!」
静夏「は、はい!!!」
美緒「服部!! お前の実力ならやれる!! 訓練通りにやれ!! 訓練通りにな!!」
静夏「了解っ!!!」
シャーリー「おー。行った行ったぁ」
エイラ「これは見ものだな。中々見れないゾ。こんな模擬戦」
ルッキーニ「エイラ、お菓子いるぅ?」
エイラ「もらう」
サーニャ「私も」
ペリーヌ「なんとも頼りのない背中に見えましたが、空では印象が違ってくるのでしょうね」
リーネ「だと思います」
芳佳「リーネちゃん、こっちにすわろ。ペリーヌさんも」
ペリーヌ「はいはい。紅茶を淹れますわ。きっと制限時間いっぱいを使ってしまうでしょうから」
シャーリー「ワクワクするなぁ」
バルクホルン「……来たか」
エーリカ「遅れてこっちをイライラさせる作戦?」
静夏「……ふぅ……ふぅ……」
バルクホルン「いくぞ」
エーリカ「……戦闘開始っ」
静夏「ひっ!?」ビクッ
バルクホルン「はぁぁぁぁ!!!!」
エーリカ「おりゃぁぁ!!!」
静夏「くっ……!!」
バルクホルン「逃げたか。――ハルトマン!!」
エーリカ「頭を押さえる!! トゥルーデは後ろを!!」
バルクホルン「了解だ!!」
静夏「なんてすばやい連携……!! 照準を……えーと……それから……脇をしめて……」オロオロ
バルクホルン「捕らえた!!!」
エーリカ「もらったぁぁぁ!!!!」
静夏「ひっ?!」
エーリカ「よけた……!?」
バルクホルン「今のを……。やるな、新人」
エーリカ「やるじゃん。見直したよ」
静夏「あぁ……あぅ……あぅ……おとうさ、ま……わたしは……なぜ……こんなめに……」ウルウル
エーリカ「それじゃあ。ちょっと本気だそうかなぁ」
バルクホルン「私もだ……」
静夏「えっ!?」
エーリカ「服部……」
バルクホルン「もう逃げられんぞ?」
静夏「あぁぁ……やめ……」
エーリカ「シュトゥルムっ!!!」
バルクホルン「うおぉぉぉ!!!!!」
静夏「ひぇ――」
美緒「――やはり、無理だったか」
静夏「……」
芳佳「静夏ちゃん!? 大丈夫!?」
リーネ「今、拭いてあげるから!!」
エイラ「ペイント弾、ほとんど命中かよ……」
サーニャ「服部さん、全身塗料まみれ」
バルクホルン「200発中、150発は当ててやった」
エーリカ「にひぃ、私は190ぱっつぅー」
シャーリー「やっぱり、すごいな。この二人は」
ルッキーニ「かっこいぃー!!」
エーリカ「やったね!!」
バルクホルン「服部」
静夏「な、なんですか……?」
バルクホルン「これでわかっただろう? 上には上がいることをな」
エーリカ「いいか? もう二度とトゥルーデをバカにすんな」
静夏「……りょうかい」
芳佳「あぁ、これ拭くだけじゃとれないね。お風呂にいかなきゃ」
リーネ「うん。そうだね」
静夏「……いたいです」
芳佳「あぁ、痣になってる。そっかペイント弾の所為で……。今、治してあげる」
静夏「……」
リーネ「よいしょよいしょ」ゴシゴシ
美緒「残念だったな。服部。だが、いい勉強になっただろう」
静夏「は、はぁ……」
ペリーヌ「あれだけ大口を叩きながら、30秒も持たなかったとは……。少し拍子抜けですわね」
リーネ「ペリーヌさん。静夏ちゃんだって疲れがあったんです。天才の静夏ちゃんがこんなに簡単に負けちゃうなんておかしいです」
ペリーヌ「ま、まぁ、そういったハンデが服部さんにあったことは認めますわ。動きもぎこちなかったですし」
リーネ「次、がんばろ。静夏ちゃん」
静夏「はい……。リネット曹長」
リーネ「リーネでいいよ?」
静夏「で、では……その……リ、リーネさんで」
芳佳「さ、ゆっくりお風呂につかって、疲れをとらなきゃ。明日からは訓練もあるし」
静夏「は、はい!! 私、がんばります!!」
リーネ「その意気だよ!」
ルッキーニ「あぁー! 静夏がいりゅー!!」
静夏「え?」
ルッキーニ「にひぃ!! どれどれぇ?」モミモミ
静夏「なぁぁ!!!」
ルッキーニ「うーん。まぁまぁ」
静夏「な、何をするのですか!! ルッキーニ少尉!!!」
エイラ「ウルトラルーキーの後ろをとったぁ!!」モミモミ
静夏「あぁぁぁぁ!!!」
エイラ「おまえ、スーパールーキーのくせに背中がお留守だぞぉ?」
ルッキーニ「にひひぃ。まぁ、あたしはマルセイユ大尉の後ろも奪ったけどねぇ」
静夏「マルセイユ大尉……!? あのアフリカの星であるマルセイユ大尉の後ろを……!?」
芳佳「あれかぁ。あれはすごかったよねぇ。シャーリーさんとマルセイユさんの凄まじい攻防が……」
リーネ「芳佳ちゃん……」
静夏「ど、どのように後ろをとったのですか!?」
ルッキーニ「どうって?」
静夏「そのときの状況を詳しくおしえてください!!」
ルッキーニ「あたしがこうスッといって、グルっと回って、ガシっとしただけ」
静夏「ど、どういうことですか……?」
エイラ「あれ? ルッキーニの解説が通じないのか? ハルトマン中尉なら一発で理解してたぞ?」
静夏「今のような抽象的な説明ではとても……」
ルッキーニ「えぇー?」
エイラ「天才は天才でも、また種類の違う天才ってことかぁー」
静夏「あ、あの言っておきますが、私は天才では……」
エイラ「天才はみんなそういうんだ。ルッキーニは天才か?」
ルッキーニ「うんっ。あたしは大天才」
静夏「す、すごい自信ですね……」
リーネ「それを言ったら、エイラさんも」
エイラ「私は、そうだなぁ。まぁ、被弾数はゼロだからなぁ」
ルッキーニ「あたしだってぇ、狙った的ははずさない~」
芳佳「それはリーネちゃんもだよぉ! ね!?」
リーネ「わ、私は……ルッキーニちゃんみたいには……」
芳佳「そんなことないよ!!」
リーネ「芳佳ちゃん」
エイラ「はいはい。ごちそうさまぁ」
ルッキーニ「それを言ったら、芳佳だってぇ、治癒魔法の天才だよね」
芳佳「え!?」
エイラ「ああ、そうだな。あんなにすぐ傷を癒せるようなウィッチは世界でもお前ぐらいじゃないか?」
芳佳「そんなことないですよぉ」
エイラ「そんなことあるだろぉ」
静夏「……みなさん、すごいんですね」
ルッキーニ「静夏だってすごいんでしょ? ねね、今度はあたしと模擬戦やろう!」
エイラ「いいな。私ともやるぞ」
芳佳「私もできれば……」
リーネ「私も模擬戦してみたいな」
静夏「や、やめてください!!」
ルッキーニ「うにゃぁ!?」
エイラ「なんだよ、いきなり」
静夏「す、すいません。で、ですが!! もうたくさんです!!! あんなのは訓練とは呼べません!!! 先ほどの模擬戦を見ればわかることです!!!」
エイラ「私じゃ相手にならないっていうのか?」
ルッキーニ「静夏ぁ。どういうことだぁ」
静夏「はい。相手になんてなりません!! 虐めになってしまいます!!! エイラ中尉もルッキーニ少尉もそんなことをして楽しいですか!? 嬉しいんですか!?」
エイラ「なぁ……!?」
ルッキーニ「むぅ」
芳佳「静夏ちゃん!! なんてこというの!?」
静夏「で、で、ですが、事実です!!」
リーネ「……」
静夏「私がバルクホルン大尉とハルトマン中尉と模擬戦を行ったことで、はっきりしたはずです!!!」
エイラ「……そこまで言うのか」
静夏「いいます!!」
ルッキーニ「静夏……」
静夏「宮藤さんだって、そう思うでしょう!? リーネさんも!!!」
芳佳「えっと……」
リーネ「どうだろう」
静夏「戦えるだけの実力なんてないんです!!!」
エイラ「静夏、こらぁ。新人だからってなぁ、いつまでも甘やかすことはしないゾ」
ルッキーニ「……」
静夏「本当のことなんです!!! まだわからないんですかぁ!?」
エイラ「……っ」
ルッキーニ「……もういい。出る」
芳佳「あぁ、ルッキーニちゃん!! まって!!」
ルッキーニ「静夏、キライっ」
リーネ「ルッキーニちゃんがあんな風に不機嫌になったところ初めてみたかも……」
芳佳「ルッキーニちゃん!!」
静夏「あの……?」
エイラ「服部」
静夏「は、はい」
エイラ「お前にこのカードを渡しておく」
静夏「え……? これは……?」
エイラ「死神だ」
静夏「ひっ!?」
エイラ「ふんっ」
静夏「ど、どうして……どうして……」
リーネ「静夏ちゃん……。あの言い方はひどいと思うな」
静夏「ど、どうしてですか?!」
リーネ「だって、天才の静夏ちゃんがあんなこと言ったら、嫌味にしか聞こえないよ」
静夏「ちが……う……わたしは……てんさいじゃ……」
芳佳「静夏ちゃん?」
静夏「わたし……てんさいじゃ……ないです……」
リーネ「でも、坂本少佐が100年の1人のウィッチだって」
芳佳「そこまで言ってたっけ?」
リーネ「言ってなかった?」
静夏「わ、わたしぃ……みなさんみたいっ……に……てん、さいじゃ……ないです……」
芳佳「静夏ちゃん……」
静夏「なんで……こんなっ……にっ……きた、い……するの……か……わかりません……」
リーネ「ごめんなさい、静夏ちゃん」ナデナデ
静夏「うっく……ぐすっ……憧れの501にこれたのに……これたのにぃ……こんなことって……こんな……ことっ……うぅぅ……」
芳佳「……リーネちゃん」
リーネ「うん。なんとかしてあげないと、このままじゃ静夏ちゃんが孤立しちゃう」
芳佳「よし。リーネちゃんは静夏ちゃんをお願い」
リーネ「どこに行くの?」
芳佳「坂本さんのところっ」
ミーナ「服部さんの様子はどう?」
美緒「宮藤とリーネに連れられて風呂に行った。今日一日で随分と仲良くなったものだ。宮藤の場合はもう才能だろうな」
ミーナ「そうねえ。宮藤さんは私たちと打ち解けただけじゃなく、みんなの心を穏やかにしてくれたものね」
美緒「ああ。あれだけは訓練で身につくものではないからな」
ミーナ「この分なら服部さんもきっとすぐに501に馴染めるでしょうね」
美緒「時間はかからないだろうな」
芳佳「――坂本さん!!」
美緒「どうした、宮藤?」
芳佳「静夏ちゃんのことで……お話が……」
ミーナ「服部さんがどうかしたの?」
芳佳「坂本さん。静夏ちゃんは期待しないでほしいと言っています」
美緒「どういうことだ?」
芳佳「501のみんなに期待されて困っているって、今……」
ミーナ「でも、坂本少佐からしたら、服部さんは天才なんでしょう?」
美緒「それは間違いない。だから、ここへ連れて来た。バルクホルンをはじめ、優秀なウィッチが多いからな。ここで刺激を受けながら鍛えれば、服部は必ず化ける」
芳佳「坂本さん、それじゃあ、まだ静夏ちゃんは……!!」
美緒「ん? 何を目を丸くしている?」
芳佳「まだ基礎訓練も必要ってことですよね?」
美緒「当然だ。今の服部など、ひよっことも呼べん。まだ孵化前だ」
芳佳「……」
ミーナ「誰しもそんなものよね。ハルトマン中尉も初陣は散々だったもの」
美緒「その話はあまりしないほうがいいんじゃないか?」
ミーナ「うふふ。そうね」
芳佳「坂本さん!!」
美緒「ど、どうした?」
芳佳「坂本さんが流したかは分からないですけど、みんなが静夏ちゃんのことを勘違いしちゃってますよ!?」
美緒「どのような勘違いだ?」
芳佳「ウルトラルーキーだって」
美緒「よくわからんな。服部はウルトラルーキーだが?」
芳佳「いや……!! 違うんです!! 実は――」
美緒「――そのようなことが。全く。新人なのだから、才能はあってもまだ実力がないことぐらいわかるだろう」
ミーナ「そうだったの……。それじゃあ、今の服部さんは」
芳佳「……困ってます」
美緒「私の所為だな。反省しよう」
芳佳「ど、どうしたらいいですか?」
美緒「服部の技能がまだまだ未熟であることを分からせるしかあるまい」
芳佳「それって……」
美緒「ミーナ中佐。明日はまだネウロイが出現することはなさそうか?」
ミーナ「ええ。予報の上では問題ないわ」
美緒「よし。決定だな」
芳佳「坂本さん、一体何を……」
美緒「決まっている。服部に501のメンバー全員と模擬戦をさせる」
芳佳「えぇぇぇ!?」
美緒「一番手っ取り早いだろう」
ミーナ「大丈夫かしら……」
エイラ「サーニャ。服部は嫌な奴だ。あまり関わるな」
サーニャ「エイラ。そんなこと言っちゃダメよ」
エイラ「だって……」
ルッキーニ「むぅ……!!」
シャーリー「ルッキーニも随分とご機嫌斜めだな」ナデナデ
ルッキーニ「だって……」
ペリーヌ「服部さん……困ったものですわね」
エーリカ「私とトゥルーデが窘めただけじゃ、効果ないか」
バルクホルン「それが服部の性格なのだとしたら、あまり好ましくないな」
シャーリー「どうするんだ?」
バルクホルン「ラウラのような扱いにはしたくないが……」
エーリカ「……」
美緒「全員……ではないか。だが、これだけそろっているなら丁度いい。話がある」
バルクホルン「どうした?」
静夏「はぁ……」
リーネ「静夏ちゃん、落ち着いた?」
静夏「は、はい。この紅茶、すごくすごいです」
リーネ「ありがとう」
静夏「失礼しました。リーネさんの胸であんな見っとも無く泣いてしまって」
リーネ「ううん。気にしないで」
静夏「実は自己紹介のとき、みなさんの会話は聞こえていました」
リーネ「え?」
静夏「みなさんが不自然なほどに私に対して高評価をしてくれていましたよね?」
リーネ「う、うん」
静夏「期待に応えないと……そう思いもしました……」
静夏「ですが!! やはり私には無理です!! あのような伝説的なウィッチに囲まれては……私は……!!」
リーネ「私もそうだよ。今でもバルクホルン大尉やハルトマン中尉と一緒に飛ぶときは緊張するし、坂本少佐にだって怒られる」
静夏「リ、リーネさんが?」
リーネ「うん。私たちが世間からどう呼ばれているのかは知っているけど、でも、実際は静夏ちゃんと大して変わらないよ? まだまだ新人みたいなものだから」
静夏「そうなのですか……」
リーネ「だからね、静夏ちゃんもこれから頑張ればいいと思う」
静夏「リーネさん……できるでしょうか……私に……」
リーネ「私や芳佳ちゃんと一緒なら、きっともっと上手く飛べるようになるよ」
リーネ「それに静夏ちゃんはあのバルクホルン大尉とハルトマン中尉のコンビネーションアタックを一度回避してる。これってすごいことだよ?」
静夏「そんなあのときは無我夢中で……」
リーネ「私じゃあそこで終わってたよ。絶対」
静夏「そんなことはないのでは?」
リーネ「あれを回避できたのは、本当に凄いよ。静夏ちゃんはきっと私や芳佳ちゃんより、才能があるはず」
静夏「そう、でしょうか……」
リーネ「静夏ちゃん。一緒に頑張ろうよ。階級なんて気にしないで、新人として一緒に」
静夏「は、はい!! ありがとうございます!!! で、でも、やはり階級は気にします……軍規ですから……」
リーネ「ふふっ」
静夏「あははは」
芳佳「――静夏ちゃん!! 大変!!! 大変!!!」
静夏「え? 全員と……?」
芳佳「誤解を解くにはそうしたほうがいいって、坂本さんが……」
静夏「そんなこと絶対に無理です!!!」
リーネ「でも、少佐の命令、なんだよね?」
芳佳「う、うん」
静夏「な……ぁ……!!」
リーネ「静夏ちゃん」
静夏「あ、あの!! 宮藤さんからなんとか……話し合いで解決できる道を……!!」
芳佳「ごめん、静夏ちゃん。坂本さんはもうやる気満々で……」
静夏「リーネさん!!」
リーネ「上官の命令だから……」
静夏「そ、そんなぁ……!! どうして……!!」
芳佳「明日の正午にするって。だから、ストライカーユニットの調整等は今日のうちに終わらせておくようにって」
リーネ「そうなんだ。芳佳ちゃん、それじゃあハンガーにいこ。ストライカーの状態を確認しておかなきゃ」
静夏「ま、まってください!! リーネさん!! 宮藤さん!!!」
静夏「こ、ころされる……」プルプル
静夏「きっと……模擬弾で私……銃殺される……」プルプル
静夏「おとうさま……あこがれの第501統合戦闘航空団は……とてもすごくすごい怖いです……」プルプル
サーニャ「服部さん?」
静夏「あ!? えーと……!! あの……リ、リトヴャグ中尉……」
サーニャ「サーニャでいいよ。私も静夏ちゃんって呼んでもいい?」
静夏「は、はい!! どうぞ中尉のお好きなように呼んでください!!」
サーニャ「明日、みんなと模擬戦をするって……」
静夏「は、はい」
サーニャ「静夏ちゃん」
静夏「も、もしかして……手加減を……」
サーニャ「私、全力でやるから、静夏ちゃんも全力で戦ってね」
静夏「あ……あぁ……」
サーニャ「全力でぶつかれば、本当の友達になれるって聞いたことがあるから。強敵って書いて、ともだちって読むみたいなんだけど」
静夏「……りょうかい」プルプル
翌日
美緒「服部はどうした?」
リーネ「部屋に居なかったので、芳佳ちゃんとサーニャちゃんが今基地内を探しているところです」
美緒「何をやっているんだ。全く」
バルクホルン「シャーリー。時間が惜しい。少し私のストライカーユニットを見てくれ」
シャーリー「あぁ? どうするんだ?」
バルクホルン「エンジンのほうだが――」
エーリカ「ふわぁぁ……。私はちょっとねてよーっと」
エイラ「腕がなるな」
ルッキーニ「おぉ。エイラ、もえてるねー」
エイラ「当たり前だ。新人にあそこまで言われたら、スオムスナンバーワンウィッチとしてのプライドが黙っていない」
ルッキーニ「よぉーし!! あたしも本気でやっるぞぉー!!!」
エイラ「いくぞ、ルッキーニ」
ルッキーニ「おっしゃー!!」
ミーナ「ほどほどにね。相手は新人なんだから」
芳佳「サーニャちゃん、どう!?」
サーニャ「こっち」
芳佳「よーし!! 静夏ちゃーん!!!」
サーニャ「――芳佳ちゃん。ここにいるみたい」
芳佳「トイレに……。――静夏ちゃん!!」ドンドン
静夏『ひぃ……!!』
芳佳「出てきてよ」
静夏『で、ですが……出てしまえば……伝説の魔女たちと模擬戦を……』
芳佳「誤解を解こうよ」
静夏『とくまえに……しんで……しんで……うぅ……』
サーニャ「私、静夏ちゃんとお友達になりたいわ」
静夏『……サーニャさん』
サーニャ「友達がみんなと仲良くできないのは悲しいから……だから……」
芳佳「私も同じだよ。静夏ちゃんがこのまま孤立しちゃうなんて、絶対に嫌!! みんなで楽しくご飯食べよう!! おしゃべりしよう!! お風呂にも入ろうよ!! 静夏ちゃん!!」
静夏『宮藤さん……』
芳佳「――坂本さん!!」
静夏「申し訳ありません!! 遅れました!!!」
美緒「ん? やっときたか、服部。10分遅刻だぞ」
静夏「すいませんでした!! 30秒で準備を整えます!!!」
美緒「よし!! まずはハルトマンからだ!!!」
エーリカ「おぉーし!!」
美緒「制限時間は3分。一戦終了後、1分のインターバルを挟み、二戦目を開始する。各員、順番は覚えているな!! 遅れるなよ!!」
バルクホルン「分かっている」
シャーリー「了解」
エイラ「やってやる」
ルッキーニ「にひぃ」
サーニャ「……」
リーネ「がんばろうね、芳佳ちゃん」
芳佳「うん」
静夏「これで誤解さえとければ……私はきっと501の一員になれる……!! サーニャさんが言っていたように全力でぶつかれば、きっとみなさんはわかってくれる!!! はず」
―1戦目―
エーリカ「いくぞ。服部?」
静夏「はいっ!!!」
エーリカ「シュトゥルム!!!」
静夏「はぁぁぁ!!!!」
―2戦目―
バルクホルン「服部、容赦はせんぞ?」
静夏「はい……!!」
バルクホルン「おぉぉぉぉ!!!!」
静夏「やぁぁぁぁ!!!」
―3戦目―
シャーリー「服部、まだへばってないよな?」
静夏「は……ぃ……」
シャーリー「特別に見せてあげるよ。音速の飛行を……!!」
―4戦目―
エイラ「服部。ほら、休憩は終わりだゾ」
静夏「はぁ……はぁ……はぃ……!!」
エイラ「私に一発でも当てられたらお前の勝ちでいい。じゃ、始めるかっ」
―5戦目―
美緒「すまんが、他の者を見ている手前、手は抜けん。お前も全力でこい」
静夏「はぁ……ひぃ……ひぃ……」
美緒「いくぞぉ!!! 服部ぃ!!!」
―6戦目―
ペリーヌ「……」
静夏「ごほっ……おぇ……」
ペリーヌ「服部さん? ギブアップしますか?」
静夏「い、いえ……や、やれま……ふぅー……はぁ……」
ペリーヌ「では、いきますわよ? 恨まないように」
―7戦目―
静夏「ぁ……ぅ……」
ルッキーニ「ルッキーニアタック!!!」
静夏「ごっ!?」
―8戦目―
リーネ「静夏ちゃん、ごめんね。これも命令だから」
静夏「あ、あの……もう……まんぞくに……とべ……」
リーネ「ごめんね……ごめんね……本当にごめんね……」
―9戦目―
サーニャ「静夏ちゃん……本気で……」
静夏「……」フラッ
サーニャ「静夏ちゃん!?」ガシッ
静夏「……こう、さん……で――」
サーニャ「ミーナ中佐。静夏ちゃんが気を失いました。模擬戦を終了します」
静夏「う……ぅ……」
芳佳「静夏ちゃん!! 気がついた!?」
リーネ「よかった!! 静夏ちゃん!! 心配したんだよ!!」
静夏「あ……宮藤さん……私は……」
サーニャ「私との模擬戦の最中に倒れたの」
ミーナ「魔法力を酷使したことと、体力の限界だったのね」
静夏「はぁ……そうですか……。ご迷惑をおけしました」
シャーリー「あぁ、まだ起きなくていいぞ」
バルクホルン「すまなかった。お前の実力は模擬戦で確認させてもらった」
エーリカ「もー。なんで言ってくれないんだよ? 恥ずかしい勘違いしただろ?」
エイラ「悪かったな、服部。無茶苦茶なこと言って」ナデナデ
静夏「いえ。私もみなさんの期待を裏切りたくはなかったんです」
ルッキーニ「静夏ぁ、ごめんね?」
静夏「いえ……大丈夫です……。すこし……ねむり……ま――」
芳佳「うん。おやすみ、静夏ちゃん」
美緒「服部は?」
ペリーヌ「今、眠ったそうです」
美緒「そうか。無事ならそれでいい」
ペリーヌ「少佐も人が悪いですわ。あれだけのことを言われたら誰だって服部さんのことを大きく期待してしまいますわ」
美緒「はっはっはっは。私は大げさにいったつもりはないし、嘘も言っていないのだがな。言葉が悪かったか」
ペリーヌ「これからはわたくしも服部さんを新人の1人として扱います」
美緒「そうしてくれ」
ペリーヌ「ですが、服部さんは少佐の言うとおり才能の塊かもしれませんわね」
美緒「ペリーヌもそう思うか?」
ペリーヌ「まさか模擬戦であそこま戦えるような新人がいるとは思いませんでしたから」
美緒「バルクホルンやシャーリーもそのことには感づいているだろうな」
ペリーヌ「エイラさんもハルトマン中尉、あとリーネさんもきっと」
美緒「それだけ分かってくれているなら、もう服部は大丈夫だな。明日から頼む、ペリーヌ」
ペリーヌ「了解」
美緒「服部、強くなれ。お前はこれからだ。次代を担うウィッチとなるのだ」
数日後
ペリーヌ「はい。服部さん、箒に乗ってみなさい」
静夏「は、はい!!」
静夏「ぐっ……くいこむ……!!」
ペリーヌ「これができない限りはストライカーユニットは装着させませんわよ」
静夏「は、はいぃ! しかし、あの……これ……みなさんも……?」
ペリーヌ「疑いますの? ――ルッキーニさん」
ルッキーニ「うにゃ?」
ペリーヌ「箒に乗ってくださいな」
ルッキーニ「あーい」
静夏「……」
ルッキーニ「ほいほい」スイスイ
静夏「あ、あの!! コツはあるのでしょうか!?」
ルッキーニ「え? フッとして、グイってやってから、ふわって感じだよ」
静夏「……ありがとうございます」
芳佳「静夏ちゃん!! それお塩入れすぎ!!」
静夏「え!? す、すいません!!」
リーネ「でも、これぐらいなら……」ペロッ
リーネ「うっ……しょっぱい……」
静夏「すいません!! すいません!!」
シャーリー「晩飯、大丈夫か?」
バルクホルン「宮藤はこんなことなかったがな」
芳佳「わ、私は最初から料理が少しできていたからで……」
エイラ「静夏、しっかりやれよ」
静夏「すいません……」
サーニャ「エイラ。静夏ちゃんだって頑張っているんだから」
エーリカ「今思えばさ、宮藤ってかなりすごかったんだな」
バルクホルン「そうだな。初飛行で赤城をネウロイから守ったことといい、料理の腕も確かで、しかも、かわ……」
芳佳「かわ?」
バルクホルン「ば、場を和ませるのが上手いからな。宮藤のポテンシャルはルーキーとは思えないほどだった」
リーネ「うん。芳佳ちゃんは確かに501に来たときから、もういろんなものを持っていた気がするし」
芳佳「わ、私は別に。みんながオーバーに言っているだけで」
エイラ「扶桑の超ウルトラ級ハイパースペシャルなルーキーって宮藤のことだよな」
サーニャ「うん、そうかも」
シャーリー「まぁ、間違いじゃないかな」
エーリカ「扶桑の超ウルトラ級ハイパースペシャルルーキー!! 美味しいごはんをおねがーい」
ルッキーニ「スーパールーキーよっしかぁ!! ごはんまだぁ!?」
シャーリー「おいおい。やめてやれって、宮藤はもうルーキーって呼べないだろ? なぁ?」
バルクホルン「何を言っている。私たちからすれば宮藤などまだまだルーキーだ」
シャーリー「そうかぁ? 貫禄もあるし、新人は卒業してるだろ」
バルクホルン「いーや。まだまだだ」
エーリカ「トゥルーデは宮藤のお世話をしたいから、そう主張するんだよね」
バルクホルン「違う!! 違うからな!! 宮藤!!」
宮藤「もー、恥ずかしいんでやめてくださいよぉー」
静夏「……」
ミーナ「服部さんも随分と馴染めてきたようね」
美緒「宮藤たちのおかげだな」
ミーナ「よかったわ。これからも服部さんは長い目で――」
静夏「失礼します」
美緒「服部か。どうした?」
ミーナ「服部さん?」
静夏「私……宮藤さんと比べられているみたいで……」
美緒「お、おい」
静夏「もう、この空気がすごくすごい辛くて……苦しくて……」
美緒「確かに宮藤さんも扶桑のウルトラルーキーだが」
静夏「比べられればられるほど、自分が惨めに思えてきて……」
ミーナ「服部さん、そんなことないわ。頑張って」
美緒「そうだ!! 服部!! 扶桑の超ルーキーがこんなことで挫けてどうする!!! さぁ!! 特訓だ!!! 特訓!!!」
静夏(扶桑に帰りたい……私のようなウィッチが501に来るなんて……あってはいけなかったんです……。お父様……私は少し、自惚れていました……)
おしまい。
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