サーニャ「501の皆と仲良くなるために、私は今日も部屋を間違える」 (199)

―第501統合戦闘航空団基地 サーニャの部屋―

サーニャ「すぅ……すぅ……」

「リーネちゃーん!!」

「芳佳ちゃーん!!」

サーニャ「……ん?」

「ルッキーニ、ちょっとこっちこいよー」

「シャーリー!! 今いくぅー!!」

サーニャ「……」

「こら!! ハルトマン!! 廊下で寝るな!! 起きろ!!」

「ふわぁーい」

サーニャ(楽しそう……私も……一緒に遊びた――)

サーニャ「すぅ……すぅ……」

廊下

サーニャ(寝て起きたら、もう夕方)

サーニャ(サウナに行って、ごはんを食べたら、すぐに夜間哨戒……)

サーニャ「……」

ルッキーニ「びゅーん!!!」

ペリーヌ「お待ちなさい!!」

ルッキーニ「べーっ」

ペリーヌ「今日という今日は許しませんわよ!!」

サーニャ(楽しそう……)

ルッキーニ「こっこまでおいでー」

ペリーヌ「きぃー!!」

サーニャ「……サウナ、行かなきゃ」

食堂

サーニャ「……いただきます」

サーニャ「……」モグモグ

サーニャ(食事の時間、できればもう少しずらしてほしいな……)

サーニャ「……ごちそうさま」

サーニャ「……」

芳佳「サーニャちゃん」

サーニャ「……あ」

芳佳「今日のご飯、私が作ったんだけど、どうだった?」

サーニャ「お、美味しかったよ。ありがとう」

芳佳「よかったぁ! 今から夜間哨戒だよね? がんばってね!!」

サーニャ「う、うん……。行ってきます」

芳佳「いってらっしゃーい!!」

サーニャ(上手く話せなかった。芳佳ちゃんとはもっとお話したいのに)

空中

サーニャ「……」ブゥゥゥン

バルクホルン『サーニャ。異常はないか?』

サーニャ「はい。ありません」

バルクホルン『そうか。このところ夜間にネウロイが出現するケースは減っているが油断はしないでくれ』

サーニャ「了解」

バルクホルン『頼むぞ』

サーニャ「……あ、あ、の」

バルクホルン『どうした?』

サーニャ「今日は……バルクホルンさんが、その……」

バルクホルン『宿直だ』

サーニャ「が、がんばってください」

バルクホルン『ありがとう。ではな』

サーニャ「あ……」

サーニャ(会話が続かない)

サーニャ「……」ブゥゥゥン

『――ち……ら……リー』

サーニャ「なにか聞こえる……?」

『――こちらはハイデマリー・W・シュナウファーです。聞こえますか?』

サーニャ「あ、えーと、私はサーニャ・V・リトヴャクです」

『貴方が。噂は聞いています』

サーニャ「ありがとうございます」

『……』

サーニャ「……」

『……あ、それではこれで』

サーニャ「は、はい。任務の邪魔をしてすいません」

『いえ、こちらこそ』

サーニャ「……」

サーニャ(友達を増やすチャンスだったかもしれない……)

サーニャ「はぁ……」

翌朝 基地

サーニャ「……」

サーニャ(今日はエイラの部屋で寝よう……)

サーニャ「……」ガチャ

エイラ「すぅ……すぅ……」

サーニャ(ごめんね、エイラ。少しでも誰かの温もりを感じたいの)

サーニャ「……」バタッ

エイラ「うぇ!? なになに!?」

サーニャ「……」

エイラ「もぉー。何、部屋間違えてんだよぉー。今日だけだかんなぁー」

サーニャ(エイラ……ごめんね……)

エイラ「えーと……服をたたんで……」

エイラ「……うぅ。サーニャ、寝ちゃったし……起こしたら悪いから……私は食堂にいくか」

サーニャ(え……一緒に寝てくれないの……?)

エイラ「おやすみ、サーニャ」

夕方

サーニャ(……今日は誰とも会話していない)

サーニャ「サウナ……行かなきゃ……」

芳佳「坂本さーん!! シャーリーさん!! まってくださいよぉー!!」

シャーリー「ほら、早くいくぞー」

美緒「はっはっはっは。やはり訓練の後は風呂に限るな!!」

ルッキーニ「おっふろ! おっふろ!! たのっしみぃ!!」

リーネ「芳佳ちゃーん!! 待ってー!!」

ペリーヌ「ちょっと!! もう少しお静かに!!」

バルクホルン「なんだ、お前たちも風呂か」

エーリカ「それじゃ、みんなではいるかぁー」

ミーナ「うふふ。私も混ぜてもらおうかしら」

サーニャ「……私も」

エイラ「サーニャ! ここにいたのか。サウナ行くのか? 私も丁度行こうと思ってたんだ。行こう」

サーニャ「エイラ……」

サウナ

エイラ「それでさぁ、あのツンツンメガネと宮藤がさぁ」

サーニャ「……」

エイラ「ん? あ、ツンツンメガネの話はつまんないか。ごめんな」

サーニャ「……エイラ」

エイラ「なんだ?」

サーニャ「私、皆と仲良くしたい」

エイラ「な……」

サーニャ「どうしたら、いいと思う?」

エイラ「わ、わわ、私のこと、き、嫌いなのか?」

サーニャ「え?」

エイラ「サーニャ、嫌わないでくれぇ……」

サーニャ「違うの。そうじゃなくて」

エイラ「サーニャぁぁ……いかないでくれぇ……」

サーニャ「……よしよし。大丈夫よ。エイラは大切な友達だから」ナデナデ

夜 空中

サーニャ「……」ブゥゥゥン

エーリカ『ピンポンパンポーン!!』

サーニャ「……!?」ビクッ

エーリカ『エーリカ・ハルトマンが午前1時をお知らせします』

サーニャ「……」

エーリカ『おわり』

サーニャ「あ……あぁ……あの……」

エーリカ『どうかした、サーニャ?』

サーニャ「時報、ありがとうございます。その、丁度、時間が知りたかったので……」

エーリカ『時計持ってないの?』

サーニャ「あ、あります」

エーリカ『どういうこと?』

サーニャ「……いえ、なんでもありません」

エーリカ『そう。それじゃ、がんばってね』

サーニャ「……はぁ」

エーリカ『ピンポンパンポーン!!!』

サーニャ「きゃっ!?」ビクッ

エーリカ『サーニャ、何か話さない?』

サーニャ「え? でも、任務中ですよ?」

エーリカ『いーのいーの。朝まで暇なんだよねー』

サーニャ「……ハルトマンさん」

エーリカ『んー?』

サーニャ「相談、してもいいですか?」

エーリカ『いいよー』

サーニャ「私、その……仲良くなりたいんです……」

エーリカ『私と? いやぁ、モテる女はつらいねー』

サーニャ「ち、違います」

エーリカ『違うのぉー!? ショックで死にそう』

サーニャ「あ、そ、そうじゃなくて、あの、ハルトマンさんとも仲良くなりたくて、で、でも、皆とも仲良くなりたいんです』オロオロ

エーリカ『ふんふん。なるほど。確かにサーニャはみんなとは生活リズムが逆だもんね』

サーニャ「はい。なんとか無理に起きても、途中で眠ってしまいます」

エーリカ『会話する機会が少ないから困ってるんだ』

サーニャ「はい……」

エーリカ『でも、サーニャはエイラとよく一緒にいるじゃん』

サーニャ「エイラは確かに私の傍にいてくれます。だけど、私としては……もっと……」

エーリカ『仲良くなるために今までどんなことしてきた?』

サーニャ「……」

エーリカ『そっか。策はないんだね』

サーニャ「はい。すいません」

エーリカ『誰かを夜間哨戒の専従班に引き込んじゃえば?』

サーニャ「ハルトマンさん、やってくれるんですか?」

エーリカ『私はできないけど、ほら、宮藤とかリーネは? 新人だし、今から鍛えれば立派なナイトウィッチになれるかも』

サーニャ「芳佳ちゃん……!? 芳佳ちゃんがナイトウィッチに……!?」

エーリカ『あー、でも無理かー。少佐はそんなこと考えてなさそうだもんねー』

芳佳「サーニャちゃん、星がきれいだねー」

サーニャ「うん……。くしゅんっ」

芳佳「サーニャちゃん、大丈夫?」

サーニャ「少し冷えただけよ」

芳佳「はい、手を繋いで飛ぼうよ」

サーニャ「え……?」

芳佳「こうすれば、ちょっとは暖かいから」ギュッ

サーニャ「芳佳ちゃん……」ギュッ


エーリカ『――そもそも二人には素養もなさそうだし』

サーニャ「芳佳ちゃん……」

エーリカ『私の話聞いてる?』

サーニャ「あ、はい。ネウロイは依然、確認できません」

エーリカ『……まぁ、いいけど。あぁ、そういえばさ、前にエイラから聞いたけど、サーニャはよく部屋を間違えるんだって?』

サーニャ「は、はい。寝ぼけて……」

エーリカ『それ、使えるんじゃない? 寝ぼけたって理由で部屋に転がり込んで眠っちゃえばさ、相手との距離もぐっと縮まったりするかもしれないし』

翌朝 基地

サーニャ「……」ガチャ

エーリカ「すぅ……すぅ……」

サーニャ「……」バタッ

エーリカ「ん……?」

サーニャ「……来ちゃいました」

エーリカ「……いらっしゃい」

サーニャ「おやすみ……なさい……」

エーリカ「すぅ……すぅ……」

バルクホルン「――起きろ、ハルトマン!! 宿直明けでも仮眠時間は守れ!!!」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エーリカ「あと……40ぷん……」

バルクホルン「な……!! 何をしている!! エーリカぁ!!! お、お前!! サーニャを連れ込んでなにをしている!!!」

エーリカ「うるさいなぁ、サーニャが起きるだろぉ」

バルクホルン「いいから起きろぉ!!!」

夕方

サーニャ(……怒られちゃった)

エーリカ「サーニャ、おっはよ」

サーニャ「ハルトマンさん。今朝はすいませんでした」

エーリカ「いいって、いいって。まぁ、私の部屋に来たのは予想外だったけどさ」

サーニャ「でも、寝ぼけて部屋を間違えたほうがいいって……」

エーリカ「私とこれ以上仲良くなってどうするのさ」

サーニャ「え……」

エーリカ「私とサーニャはもう親友だろ?」

サーニャ「……そうだったんですか?」

エーリカ「うわ……傷つく」

サーニャ「あ、ち、ちがいます!! お、おいどろいて……!!」

エーリカ「冗談だって。ま、あんな感じで部屋を間違えまくればきっと自然と仲良くなれるんじゃない?」

サーニャ「分かりました。がんばってみます」

エーリカ「うん。私もサーニャが皆と仲良くしてくれたら、嬉しいよ」

>>40
サーニャ「あ、ち、ちがいます!! お、おいどろいて……!!」

サーニャ「あ、ち、ちがいます!! お、おどろいて……!!」

翌日 早朝

サーニャ「……」キョロキョロ

サーニャ(今日は……誰の部屋に……)

サーニャ(芳佳ちゃん……ううん……まだ、早い気がする……)

サーニャ(リーネちゃん……? ダメ……まだそんなに親しくないし……)

サーニャ(ルッキーニちゃん……は、部屋にいない……)

サーニャ(ペリーヌさんは私を幽霊と勘違いするし)

サーニャ(ミーナ隊長は、少し怖い……)

サーニャ(坂本少佐も怖い……)

サーニャ(バルクホルンさんは昨日怒られたばかりだし……)

サーニャ「うーん……どうしよう……」

シャーリー「ふわぁぁ……ねむい……トイレ……」

サーニャ「……」

シャーリー「おぉ、サーニャ。夜間哨戒明けか? ご苦労様」

サーニャ「お、おはようございます」

シャーリーの部屋

シャーリー「――あぁー。さーてと、着替えて朝メシにするかぁー」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

シャーリー「おわ!?」

サーニャ「すぅ……すぅ……」

シャーリー「サーニャ? 寝てるのか?」

サーニャ「ぅん……」チラッ

シャーリー「仕方ないな。部屋まで運ぶか」

サーニャ(運ばれる……!?)

シャーリー「よっと」グイッ

サーニャ「……っ」ギュゥゥ

シャーリー「な……!? ベッドのシーツをしっかり掴んでる……。サーニャ、ほら、手を離してくれって」グイッ

サーニャ「ふっ……ぅ……!」ギュゥゥ

シャーリー「ダメだ。全然、離そうとしないな。このまま寝かせておくしかないか。バルクホルンや中佐に見られたら、なんか言われるかな」

サーニャ(ごめんなさい……シャーリーさん……)

シャーリー「――これでよし」

サーニャ(あったかい……)

シャーリー「夜間哨戒で疲れるんだろうな。こんなに気持ちよさそうに寝て」ナデナデ

サーニャ「ぅ……ん……」

シャーリー「ゆっくり休めよ。また来るから」

サーニャ「はい」

シャーリー「え?」

サーニャ「……すぅ……すぅ……」

シャーリー「……気のせいか」

サーニャ(シャーリーさん……)

シャーリー「にしても、寝ぼけてあたしの部屋に来るなんて、サーニャも中々物好きだな」

シャーリー「遠慮なくいつでも、おいで」

サーニャ「……」コクッ

シャーリー「さーて、メシだ、メシー」

サーニャ(シャーリーさん、優しい……。何かお礼しなきゃ……)

夕方 食堂 キッチン

サーニャ「……できた。これをシャーリーさんに」

リーネ「あれ、サーニャちゃん、なにしてるの?」

サーニャ「あ……あの……」

リーネ「お料理? わぁ、美味しそうっ。これオラーシャの?」

サーニャ「う、うん。そう」

リーネ「へぇ……」

サーニャ「……」

リーネ「……」グゥ~

サーニャ「あ」

リーネ「あ!! ち、ちがうの!! あの、訓練してきたばかりで……!! だから……!!!」

サーニャ「どうぞ」

リーネ「え? で、でも、これ、サーニャちゃんが今から食べるんじゃないの?」

サーニャ「いいえ。作ってみただけだから。よかったら食べて。私はそろそろ夜間哨戒があるから」

リーネ「ありがとう。サーニャちゃん」

夜 空中

サーニャ「……」ブゥゥゥン

サーニャ(シャーリーさんのお礼……朝にしよう……)

美緒『サーニャ。異常はないか?』

サーニャ「はい。問題ありません」

美緒『そうか。ところでどうしても寝る前にお前と話がしたいというやつがいるのだが、いいか?』

サーニャ「はい、構いません」

リーネ『サーニャちゃん』

サーニャ「……どうしたの?」

リーネ『あのお料理とっても美味しかったよ!! ありがとう!! どうしてもこれが言いたくて……』

サーニャ「よかった」

芳佳『サーニャちゃん!!!』

サーニャ「よ、しか、ちゃん……!?」

芳佳『私にも作ってくれると嬉しいな!! 夜間哨戒がんばってね!!』

サーニャ「う、うん……あ、ありがとう……」

翌朝 食堂

シャーリー「おーい。あたしの部屋の前に料理おいていったの誰だぁ?」

バルクホルン「なんだいきなり」

シャーリー「いや、朝起きたら、部屋の前にメシが置いててさ。すげーうまかったけど」

バルクホルン「なら、良かったじゃないか」

シャーリー「いや、礼ぐらいは言わなきゃダメだろ」

ルッキーニ「えぇー!? いいなぁー。あたしにはなかったよぉ?」

シャーリー「ルッキーニは部屋で寝てないからじゃないか?」

芳佳「――リーネちゃんも部屋の前に料理があったの?」

リーネ「うん」

シャーリー「宮藤、リーネ。お前たちもこれがあったのか?」

芳佳「あー! シャーリーさんもですか!!」

シャーリー「誰が置いたんだ?」

リーネ「オラーシャの料理なのできっとサーニャちゃんだと思います」

シャーリー「サーニャか……。今、どこにいるんだ?」

坂本の部屋

美緒「――ふぅ。これだけ訓練をしても、やはり魔法力は低下しているな」

美緒「朝の訓練を増やすだけでは、やはり抗うことはできないか」ガチャ

サーニャ「すぅ……すぅ……」

美緒「……サーニャ?」

サーニャ「うぅん……」

サーニャ(お、おこられるかもしれないけど……私は……少佐とも……)ドキドキ

美緒「ふっ。こうしてみると、やはり随分と幼いな。夜空では凛々しいのだが」

サーニャ「……」チラッ

美緒「んー……」

サーニャ(顔が近い……!!)ビクッ

美緒「起きているのなら、自室へ戻れ」

サーニャ「……今日は、ここで、眠りたいんです。ダ、ダメですか?」

美緒「やれやれ。寝たら戻れよ?」

サーニャ「は、はい。すいません」

美緒「何が目的なんだ?」

サーニャ「それは――」

ミーナ『美緒ー? 戻ったー?』コンコン

美緒「ミーナ。ああ」

ミーナ「よかった。実は――」ガチャ

サーニャ「すぅ……すぅ……」

ミーナ「……」

美緒「どうした?」

ミーナ「どうして……サーニャさんが部屋に?」

美緒「知らん。部屋に戻ってきたら眠っていた」

ミーナ「そっ――」

美緒「ミーナ。寝かせてやれ。サーニャにどれだけの負担をかけているか分かっているだろう」

ミーナ「……ごめんなさい」

美緒「さ、行こう。話しなら別室で聞く」

ミーナ「ええ。そうしましょう。おやすみなさい、サーニャさん」

廊下

美緒「そうか。では、また上層部に掛け合うのか」

ミーナ「そうなるわ。もう少し書類のほうをなんとかしてからになるけど」

美緒「お前も大変だな」

ミーナ「他人事じゃないのよ?」

シャーリー「少佐、中佐」

美緒「どうした?」

シャーリー「サーニャ、見ませんでしたか?」

美緒「……いや」

ミーナ「私も見ていないわ」

シャーリー「おっかしいなぁ。どこにも居ないんですよね」

美緒「何、心配はいらんだろ。なぁ、ミーナ?」

ミーナ「ええ。サーニャさんならきっとぐっすり寝ているわ」

シャーリー「そうですか?」

美緒「はっはっはっは。そうだとも」

数日後 廊下

エイラ(サーニャが全然、部屋にこないぞ……。どうなってんだぁ……)

ペリーヌ「全くもう……」

エイラ「……」

ペリーヌ「あら、エイラさん。おはようございます」

エイラ「なに朝からツンツンしてんだ?」

ペリーヌ「別に」

エイラ「ま、どうでもいいけどナ」

ペリーヌ「なら訊ねないでください」

エイラ「なんだよー」

ペリーヌ「ふんっ」

エイラ(様子が変だな……)

エイラ「ツンツンメガネのやつ、部屋でなにかしてたのか……?」ガチャ

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エイラ「……」

食堂

エーリカ「トゥルーデのところにサーニャが寝ぼけて寝にこなかった?」

バルクホルン「何を言っている。そんなことはない」

エーリカ「そうなの? なら、その食器はなに?」

バルクホルン「今朝、部屋の前においてあっただけだ」

エーリカ「オラーシャ料理?」

バルクホルン「さぁな。もう食べてしまったから、わからん」

エーリカ「なんだよぉ。はっきりしろよぉ」

リーネ「今朝もあったね」

芳佳「ホント、またお礼しなきゃ」

ルッキーニ「いいなぁ、いいなぁ! あたしもたべたーい」

シャーリー「部屋で寝てればデリバリーされるんじゃないか?」

ルッキーニ「ホントぉー!?」

エイラ「おい!! おい!! おーい!!!」

芳佳「エイラさん、どうしたんですか?」

エイラ「い、いま、ペリーヌのサーニャがベッドで寝てて、なんか気持ちよさそうなんだぁ!!!」

芳佳「な、何をいってるんですか?」

エイラ「大尉!!! これは事件だぁ!!!」

バルクホルン「きちんと要点を纏めてから報告しろ、エイラ」

エイラ「だ、だからぁ!! エイラのペリーヌが気持ちよくて!! ベッドがねてるんだぁ!!!」

シャーリー「さっきより酷いな」

リーネ「エイラさん、お水をどうぞ」

エイラ「ありがとう!!! んぐっ……んぐっ……!!」

エーリカ「落ち着いた?」

エイラ「……サーニャがペリーヌの部屋で寝てたんだ」

エーリカ「あ、そうなんだ」

シャーリー「よくあることだろ」

バルクホルン「どうせサーニャが寝ぼけてたんだろう」

エイラ「そんな!! 今まで私の部屋にしかこなかったのに……」

ペリーヌ「騒がしいですわね。何かありまして?」

エイラ「おい!! ペリーヌ!!!」

ペリーヌ「な、なんですの?」

エイラ「サーニャを……サーニャをどうしたぁ……!!」

ペリーヌ「は、はぁ? サーニャさんのことなんて、知りませんわよ」

エイラ「お前!! なんでそんなうそをぉ!!」

ペリーヌ「し、知らないって言っているでしょう!?」

エイラ「少佐に言うぞ!! こらぁ!!」

ペリーヌ「な!! そ、それだけはぁ!!」

美緒「おい。朝から喧嘩とは何事だ」

エイラ「少佐!! 聞いてくれぇ!! サーニャがペリーヌで寝てたんだぁ!!!」

美緒「……ペリーヌ。あまりその、程ほどにな」

ペリーヌ「しょ、少佐!! 違うんです!! 誤解ですわぁ!!!」

芳佳「あのどういうことですか?」

シャーリー「あれ、宮藤のところにはサーニャは来てないのか?」

芳佳「サーニャちゃん? いえ、最近は夕食前に少しお話するぐらいですけど」

芳佳「えぇー!? サーニャちゃん、そんなことしてるんですか!?」

シャーリー「みたいだ。どうにも少し前に少佐や中佐の部屋にも寝ぼけて部屋を間違えて、そのまま寝ちゃったらしい」

リーネ「そうなんだぁ」

芳佳「リーネちゃんのところには来たの?」

リーネ「ううん。私も来てないよ」

ルッキーニ「あたしもー!!」

シャーリー「ルッキーニは部屋にいないからなぁ」

エーリカ「トゥルーデは?」

バルクホルン「来ていないと言ったはずだ」

エーリカ「私は来たけどねー」

エイラ「ちょっとまてぇ……なんの話だぁ……それぇ……」

シャーリー「エイラのところには当然、行ってるだろ?」

エイラ「……うぅ……っ……」

エイラ「うわぁぁぁん!! サーニャぁぁぁ!!! どうしちゃったんだぁぁぁ!!!」ダダダッ

芳佳「エイラさーん!?」

ペリーヌの部屋

サーニャ「すぅ……すぅ……」

エイラ「サーニャぁ!!!」ガチャ

サーニャ「ん? エイラ?」

エイラ「サーニャ……サーニャ……」スリスリ

サーニャ「どうしたの、エイラ?」

エイラ「最近、私の部屋にこないと思ったら、みんなのところに言ってたんダナ……」

サーニャ「うん。寝ぼけて」

エイラ「少佐や中佐のところにも行ったって聞いたぞぉ?」

サーニャ「うん……」

エイラ「サーニャ……寝ぼけてもいいけど……私以外の部屋にはいかないでくれぇ……」スリスリ

サーニャ「エイラ……」

エイラ「いやだぁ……サーニャぁ……」ギュゥゥ

ペリーヌ「――サーニャさん。朝食を……って!! わたくしの部屋で何をしていますの!!」

エイラ「なんだ、こらぁ!! こっちみんなぁぁ!! 見世物じゃないぞぉ!!」

エイラの部屋

サーニャ「エイラの所為で追い出されちゃったわ」

エイラ「いいじゃないか、あんなツンツンメガネのところにいなくても」

サーニャ「でも、ペリーヌさん、すごく優しくしてくれたから……」

エイラ「な、なにされたんだぁぁ!!! うわぁぁぁ!!!!」

サーニャ「エイラ、落ち着いて」

エイラ「だって……だって……」

サーニャ「前にも言ったでしょ? 私はみんなと仲良くなりたいの」

エイラ「うぐっ……えぐっ……」

サーニャ「でも、私は話したりするのが苦手だから、こんな不器用なことしかできないの」ナデナデ

エイラ「うっ……ん……」

サーニャ「ほんの少し、みんなに近づきたい。輪に入りたい。そうずっと思っていたわ」

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「だから、エイラには応援してほしい。一番、大切な友達だから」

エイラ「サーニャ、私が一番好きなんダナ? そうダナ?」

サーニャ「ええ。エイラは一番の友達よ」

エイラ「サーニャは私が一番好きなんだな?」

サーニャ「ええ。一番大切な友達よ」

エイラ「な、なら、いいんだ。取り乱して、ごめん」

サーニャ「気にしてないわ」

エイラ「それで、仲良くなれたのか?」

サーニャ「まだ実感はないけど……。きっとこれから……」

エイラ「そ、そうか。よし。私が訊いてくる」

サーニャ「なにを?」

エイラ「みんながサーニャをどう思っているかだ。ちょっとでも批判したら、殴ってやるから安心してくれ」

サーニャ「エイラ。ダメ。そんなことしないで」

エイラ「で、でも……」

サーニャ「エイラは見守ってて、お願い」

エイラ「わ、わかった。見守っていればいいんだな」

サーニャ「それだけで心強いから」

夜 空中

サーニャ(エイラにはああいったけど……。実際、私がどう思われているのかはよくわからない)

サーニャ(ルッキーニちゃん、リーネちゃん……そして芳佳ちゃんの部屋へはまだいけていないし……)

ミーナ『サーニャさん。どうかしら、空は穏やか?』

サーニャ「はい。問題ありません」

ミーナ『このまま何も出なければいいのだけどね』

サーニャ「私もそう思います」

ミーナ『ところで、先日私の部屋の前に料理が置いてあったけど、サーニャさんが作ってくれたのかしら?』

サーニャ「は、はい……」

ミーナ『そう』

サーニャ「……あ、あの……」

ミーナ『とっても美味しかったわ。あれは、確か……ボルシチだったかしら?』

サーニャ「よかった……」

ミーナ『でも、置くときはきちんと言ってね。夕食前だったから……その、ちょっと重量オーバーというか……』

サーニャ「す、すいません。気をつけます」

ミーナ『うふふ。気にしなくていいわ。あなたの気持ちが嬉しいんですもの』

サーニャ「私も喜んでもらえて、う、うれしいです……ミーナ隊長……」

ミーナ『それでは、引き続き夜間哨戒お願いね』

サーニャ「がんばりますっ」

サーニャ(いつもよりたくさんお話できた……たのしい……)

『――リー……おう……て……』

サーニャ「こちらサーニャ・V・リトヴャクです」

『あ、ハイデマリー・W・シュナウファーです』

サーニャ「はい」

『……』

サーニャ「……」

『あ、あの……』

サーニャ「なんですか?」

『……リンゴ』

サーニャ「リンゴ……?」

『い、いえ。なんでもありません。失礼しました』

サーニャ「あ……。ゴリラ」

『……』

サーニャ「……違いましたか?」

『ラクダ』

サーニャ「ダイヤ」

『ヤ……ヤ……』

サーニャ「あの」

『なんでしょうか? あ、やっぱり、楽しくないですか……』

サーニャ「そんなことは。ただ、急に始まったので驚いて……」

『すいません……。まさか、私の意図に気がついてくれる人がいるとは思わなくて……』

サーニャ「そうですか」

『あの、よければ友達になってください』

サーニャ「はい。よろこんで」

『あぁ……うれしい……! あ、えーと……ヤ……ヤ……』

翌朝 基地 格納庫

サーニャ(まだ会ったことのない人と友達になれた……。これなら、きっと501のみんなとも……)

サーニャ(今日はリーネちゃんのところに……」

ルッキーニ「ぅにゃぁ……すぅ……すぅ……」

サーニャ「ルッキーニちゃん、こんなところで寝てる」

ルッキーニ「うぅぅ……ぅにゃぁ……」

サーニャ「……」バタッ

ルッキーニ「んにゃ!?」

サーニャ「……」

ルッキーニ「あぁ! サーニャぁ!!」ギュッ

サーニャ「ん……ルッキーニちゃん……」

ルッキーニ「サーニャだぁ。えへへ」ギュゥゥ

サーニャ「ルッキーニちゃん、ちょっと苦しいわ……」

ルッキーニ「サーニャ、いいにおーい……すぅ……すぅ……」

サーニャ「あ、ありがとう……」

海岸

美緒「ふっ!! せいっ!!」

ペリーヌ「やぁ!!」

芳佳「おぉー!!」

美緒「どうだ宮藤。これが剣舞というものだ」

ペリーヌ「まぁ、宮藤さんには到底真似などできないでしょうけど」

芳佳「はい。たぶん、できないです!!」

ペリーヌ「おーっほほほ。でしょう? なら、もう朝の素振りはおやめなさい」

美緒「そんなことはない。宮藤も鍛錬次第でできるようになる」

芳佳「わかりました!! がんばります!!」

美緒「はっはっはっはっは。その意気だ、宮藤」

ペリーヌ「……」

「ウワァァァァアアア!!!!!」

芳佳「警報!? まさかネウロイ!?」

ペリーヌ「い、いえ、エイラさんの絶叫のようですわ」

格納庫

美緒「どうした、エイラ!!」

エイラ「アァァァァ……」

ペリーヌ「エイラさん?」

エイラ「アァ……ァ……」

芳佳「一体、何が……」

ルッキーニ「サーニャぁ……」スリスリ

サーニャ「うぅん……」ギュゥゥ

美緒「なんだ。微笑ましいな」

ペリーヌ「緊張感がありませんわね。和みますが」

芳佳「二人とも寄り添っててかわいい。写真撮りたいぐらいです」

美緒「それはいいな。持ってくるか」

エイラ「オォォ……おぇぇ……」

芳佳「エイラさん!? だ、大丈夫ですか!?」

エイラ「だ、ダイジョウブ、ダ……サーニャのイチバンは……ワタシ、ダカラな……ミマモルだけで……イイんダ……!!」

食堂

ルッキーニ「シャーリー、シャーリー!! うんとね、サーニャって花の匂いがするんだよぉ!!」

シャーリー「へえ。そうなのか。じっくり嗅いだことはないからなぁ」

ルッキーニ「にひぃ。またサーニャと一緒にねたいなぁー」

エーリカ「どうしたのさ。今朝のルッキーニはかなり機嫌がいいみたいだけど」

シャーリー「ああ、サーニャと一緒に寝たことが嬉しかったみたいだな」

エーリカ「どうしてまた」

シャーリー「ほら、サーニャが起きるころにはルッキーニは昼寝していることが多いし、あまりこういうことはなかったからな」

エーリカ「なるほど。新しい発見ができて、有頂天なのか」

シャーリー「そんなところだ」

ルッキーニ「エイラはいいよねぇ。いっつもサーニャの良い匂い独り占めにできてさぁ」

バルクホルン「全くだな」

ルッキーニ「んにゃ?」

バルクホルン「……なんだ?」

ルッキーニ「い、いえ、なにも……」

夕方

サーニャ「サウナ……」

ルッキーニ「サーニャぁー!!!」ギュッ

サーニャ「きゃっ!?」

ルッキーニ「くんくん……にひぃ! いいにおーい!!」

サーニャ「……あ、あの……」モジモジ

シャーリー「こら、ルッキーニ。サーニャが困ってるだろ」

ルッキーニ「あ、ごめん。つい」

シャーリー「悪いな、サーニャ。ルッキーニのやつ、サーニャの匂いが気に入ったらしくて」

サーニャ「わ、わたしの匂い……?」

ルッキーニ「うん! ここで初めて出会って抱きついたときはエイラが邪魔してきて気づかなかったけど、サーニャの匂いすきー!!」

サーニャ「ルッキーニちゃん……」

シャーリー「今から風呂か? よかったら、あたしたちとどうだ?」

サーニャ「あ、えっと……はい、いきます」

ルッキーニ「やたー! サーニャと一緒におっふろぉ!! おっふろぉ!!」

大浴場

ルッキーニ「やっほー!!」

シャーリー「ころぶなよぉー」

サーニャ「……」

芳佳「あ、サーニャちゃんだ」

サーニャ「よ、よ、よしか、ちゃん……!?」

芳佳「サーニャちゃん、今日はサウナじゃないの?」

サーニャ「う、うん……きょ、今日は……ごめんなさい……」

芳佳「謝らなくていいよー!! あ、背中洗ってあげようか?」

サーニャ「え……そんな……あの……」

リーネ「サーニャちゃんもこっちなんだ」

サーニャ「う、うん」

シャーリー「しっかし、サーニャは肌白いな」ペチペチ

サーニャ「あ……あの……」ビクッ

ルッキーニ「サーニャの肌、スベスベー!!」スリスリ

芳佳「よいしょ……よいしょ……」ゴシゴシ

サーニャ「……」

リーネ「サーニャちゃん、腕も洗うね」

サーニャ「あ、ありがとう」

芳佳「いつもオラーシャ料理を作ってくれてるから、そのお礼」

リーネ「うん。あんなに美味しい料理、いつもありがとう」

サーニャ「私はあれぐらいしかできないから」

芳佳「あれぐらいって、十分すごいよ。私、あんなの作る自信ないもん」

リーネ「私も。なんだが、難しそう」

サーニャ「そんなことないわ。二人だったらきっとすぐに作れると思う」

シャーリー「あの味を簡単には再現できないだろうなぁ」

ルッキーニ「ねえねえ!! サーニャぁ!! あたしにもぉ!!」

サーニャ「え?」

芳佳「ルッキーニちゃん、サーニャちゃんの料理食べたいってずっと言ってるんだ」

ルッキーニ「あたしもたべたいぃ! サーニャの手料理ぃ!」

シャーリー「サーニャ、無理しない範囲でいいからさ、ルッキーニにも一度食べさせてやってくれないか?」

サーニャ「ふふ……」

ルッキーニ「だめなのぉ?」

サーニャ「ううん。私のでよければ」

ルッキーニ「やったぁ!! 約束だからね!! ぜったいだよぉ!!」

サーニャ「ええ。約束」

ルッキーニ「にひぃ!! サーニャ、ありがとー!!」ギュッ

芳佳「よかったね、ルッキーニちゃん」

ルッキーニ「うんっ!!」

リーネ「もしよかった手伝おうか?」

サーニャ「……それじゃあ、明日、手伝ってくれる?」

リーネ「うんっ。もちろん」

芳佳「私も!! お手伝いさせて!!」

サーニャ「芳佳ちゃん……!! うん、してほしい。芳佳ちゃんにお手伝い、してほしいわ」

シャーリー「あははは。なんだ、いつの間にか仲良くなってるじゃないか」

食堂

芳佳「サーニャちゃん、これはどうするのー?」

サーニャ「まずは細かく切って、それから――」

ルッキーニ「にひひ……いただきます」

リーネ「ルッキーニちゃん! つまみ食いはダメっ!」

シャーリー「……」

バルクホルン「何の騒ぎだ?」

シャーリー「サーニャたちが料理を作ってるんだよ」

バルクホルン「ほう。それは楽しみだ」

シャーリー「バルクホルンにはないぞ?」

バルクホルン「何故だ? サーニャと宮藤とリーネとルッキーニの合作なら、私にだって食べる権利はあるはずだ」

シャーリー「ルッキーニは違うから。それにサーニャだってあたしらの分まで作れないだろ。すぐに夜間哨戒に行かなきゃならないんだしさ」

バルクホルン「それもそうか……ううむ……」

シャーリー「そんなに食べたかったのか?」

バルクホルン「……いや、別に。ほんの少し、興味があるだけだ」

ミーナ「あら、随分といい匂いね」

美緒「うむ。オラーシャ料理か?」

シャーリー「お。流石、少佐。大正解」

美緒「サーニャが何度か置いていった料理の芳香だからな。そう簡単には忘れんさ」

エーリカ「おぉぉ……なんだこれぇ……いい匂いがするぅ……」

ペリーヌ「本当ですわね……。訓練のあとにこんなのを嗅いでしまったら――」グゥ~

ペリーヌ「はぁ!!」

美緒「はっはっはっは。まぁ、仕方ないな。ペリーヌ」

ペリーヌ「うぅ……」

バルクホルン「だが、あれはペリーヌだけのものらしい。私たちは匂いだけを楽しむことになりそうだ」

エーリカ「えぇー!? なんでだぁー!! サーニャぁ!! 私にもつくれぇー!!」

シャーリー「おいおい。無茶は……」

サーニャ「はい。今、作ってますから」

エーリカ「ホントぉ!? やったぁ!!」

サーニャ「芳佳ちゃんとリーネちゃんが手伝ってくれていますから、皆の分も用意できます」

エイラ「うぅぅぅ……ガルルルル……」

芳佳「あれ、エイラさん?」

エイラ「おま……えらぁ……!!」

サーニャ「エイラ、どうしたの?」

エイラ「サーニャ……私は……みまもっているからなぁ……!! 私はぁ……応援してるからなぁ……!!」

サーニャ「ありがとう、エイラ」

エイラ「お……」

サーニャ「エイラも食べよう」

エイラ「た、食べるにきまってるだろぉー!!」

ルッキーニ「ねえねえ!! もうたべてもいいよねぇ!?」

芳佳「あ、ちょっとまってね。すぐに盛り付けるから」

リーネ「急がなきゃ。お皿、お皿ぁ」

シャーリー「ほぉー!! こりゃ、うまそうだなぁー!!」

バルクホルン「あ、ああ。宮藤とサーニャとリーネの合作だ。不味いわけがないがな!!」

サーニャ「……」テテテッ

格納庫

サーニャ「魔導エンジン……よし」

サーニャ「始動」ブゥゥゥン

エイラ「サーニャ!!」

サーニャ「エイラ? 料理は食べてくれた?」

エイラ「まだ、いいじゃないか!! せめてみんなが食べ終わるまで……」

サーニャ「いいの。みんなが私の料理を食べてくれるだけで、嬉しいから。それにもう時間だし」

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「エイラ。行ってきます」

エイラ「あ……」

サーニャ「……」ブゥゥゥゥン

エイラ「まってくれぇ!!!」テテテッ

サーニャ「エイラ……?」

エイラ「今日は、私も夜間哨戒に行く!! ちょっとまってくれぇ!! 40秒で飛べるからぁ!!」

サーニャ「勝手なことをしたら、エイラが怒られるわ」

空中

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「エイラったら、どうしたの?」

エイラ「だって……あんなに楽しそうにしているサーニャを見るのは初めてで……」

サーニャ「え……」

エイラ「サーニャが遠くに行っちゃいそうで……怖くて……」

サーニャ「エイラ、私はあなたの傍にいるわ」

エイラ「でも……でも……もう全然私の部屋にきてくれないし……」

サーニャ「寝ぼけているだけだから」

エイラ「寝ぼけても私の部屋にくるって、それは無意識の行動だから、きっとサーニャは私のことが大好きで、だから部屋まできてくれて、ベッドに寝てくれて……」

エイラ「うあぁぁぁぁ!!!! サーニャがぁぁぁ!!!」

サーニャ「エイラっ」ギュッ

エイラ「あ……サーニャ……」

サーニャ「言ったはずよ、エイラ。私にとってエイラは世界で一番、大切な友達だって。あなたを置いて遠くになんて行かないわ」

エイラ「うんっ……ごめん……。サーニャは私のことをこんなに想ってくれているのに……私……私……」ギュッ

サーニャ「でも、嬉しいのは本当」

エイラ「なにがだ?」

サーニャ「芳佳ちゃんやリーネちゃんとああして料理をしたり、私の料理で皆が笑ってくれたり……」

サーニャ「こんなに楽しいこと、今までになかったから」

エイラ「そうだな……。サーニャは今まで……」

サーニャ「うん。みんなと話す機会なんて、あまりなかったから。共通の話題でなんて、特になかった」

エイラ「……」

サーニャ「ごめんね、エイラ。寂しかった?」

エイラ「全然っ。サーニャがこうして隣にいてくれれば、私はそれでいい」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「サーニャ……」

美緒『エイラ。お前は何を勝手なことをしている?』

エイラ「げっ……少佐……」

美緒『すぐに戻って来い』

サーニャ「あ、あの、少佐。私がエイラに無理を言って頼んだんです。今日はネウロイが来るかもしれないからって……」

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「しーっ」

美緒『サーニャ、ネウロイの気配がするのか?』

サーニャ「微弱ですが、ネウロイの気配はあります」

美緒『……そうか。だが、そういうことは私かミーナ中佐に一言相談してくれ』

サーニャ「申し訳ありません」

美緒『わかった。エイラ、しっかりな』

エイラ「りょ、了解!」

美緒『それからサーニャ』

サーニャ「はい」

美緒『オラーシャ料理、とても美味かった。また機会があれば是非味わいたい。皆も同じことを言っていた』

サーニャ「はいっ。喜んで作りますっ」

エイラ「よかったなぁ。サーニャ」

サーニャ「ええ。行きましょう、エイラ」

エイラ「サーニャ、ありがとう。大好きだゾ」

深夜

エイラ「オ……オラーシャ」

サーニャ「シャ……シャーベット」

エイラ「トマト」

サーニャ「ト……ト――」ピクッ

エイラ「サーニャ、どうした?」

サーニャ「……ネウロイ」

エイラ「なに……!? サーニャの言ったこと、嘘じゃなかったのか!?」

サーニャ「こちらに向かってきてる」

エイラ「よし」チャカ

サーニャ「――少佐」

美緒『どうした?』

サーニャ「ネウロイがこちらに高速接近してきています」

美緒『なんだと? わかった。すぐに応援を向かわせる。時間を稼いでくれ』

サーニャ「了解」

格納庫

バルクホルン「宮藤!! 行けるな!!」

芳佳「はいっ!! いつでもいけます!!」

ミーナ「宮藤さん、絶対に無茶はしないでね」

美緒「まだ夜間戦闘の経験が浅いお前では無理をするだけ足を引っ張ると思え」

芳佳「は、はい!!」

エーリカ「でも、飛ばすんだね。宮藤を」

バルクホルン「それだけ期待しているという証拠だ。それに実績がないわけでもない」

エーリカ「まぁ、確かに」

バルクホルン「宮藤!! 命の保障はない!! 降りるなら今だ!!」

芳佳「いえ!! 行かせてください!! サーニャちゃんとエイラさんを守らせてください!!」

バルクホルン「よく言った!! では、行くぞ!!」

エーリカ「メンドーだけど宮藤は私が何があっても守るよ、トゥルーデ」

バルクホルン「頼む、エーリカ」

美緒「よし!! 出撃!!!」

空中

サーニャ「来る!」

ネウロイ「……」ゴォォォ

エイラ「くらえっ!!」ズガガガ

サーニャ「ふっ!」バシュゥッ

エイラ「――どうだ!?」

サーニャ「まだ……生きてる……」

エイラ「しつこいなぁ!!」ズガガガ

ネウロイ「……」ピカッ!!!

サーニャ「……!!」

エイラ「サーニャ!」グイッ

サーニャ「ありがとう、エイラ」

エイラ「この……!! サーニャになにすんだぁぁ!!!!」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「サーニャを傷つけさせてたまるかぁぁ!!」

芳佳「――サーニャちゃぁぁぁん!!!」ブゥゥゥン!!!!

サーニャ「よしか……ちゃん……? 芳佳ちゃん!!」

エイラ「宮藤!?」

芳佳「よかった!! 無事だったんだね!!」

サーニャ「来てくれたんだ……」ギュッ

芳佳「勿論だよ。ちょっと坂本さんに我侭言っちゃったけど」

サーニャ「どうして?」

芳佳「サーニャちゃんを守りたかったの」

サーニャ「……芳佳ちゃん」ギュッ

バルクホルン「ハルトマン!! 一斉攻撃を仕掛けるぞ!!」

エーリカ「りょーかーい!!」

ミーナ「美緒! コアを!!」

美緒「分かっている!!」

芳佳「行こう、サーニャちゃん。私たちも戦わないと」

サーニャ「うんっ」

ネウロイ「……」ピカッ!!

エイラ「サーニャ!! 攻撃がくる――」

サーニャ「芳佳ちゃん」ギュッ

芳佳「任せて!! 私のシールドでサーニャちゃんもエイラさんも守るから!!」ギィィィン!!!

サーニャ「芳佳ちゃん……やっぱり、頼りになる……」

エイラ「お、おう……そうダナ」

エーリカ「シュトゥルム!!!」ゴォォォ!!!

ミーナ「コアが見えたわ!! トゥルーデ!!!」

バルクホルン「これで終わりだぁぁぁ!!!」ズガガガ!!!

ネウロイ「……」パキンッ

ドォォォォン!!!!

美緒「――よし。ネウロイを撃墜。これより帰投する」

ミーナ「サーニャさん、エイラさん、あなたたちも帰投して。今日はもういいわ。ありがとう、お疲れ様」

サーニャ「了解」

エイラ「はぁい」

格納庫

芳佳「無事でよかったぁ!」

サーニャ「芳佳ちゃんが来てくれたから」

芳佳「そうかなぁ?」

サーニャ「そうよ」

エイラ「サーニャ、私は……」

サーニャ「エイラもかっこよかったわ。ありがとう」

エイラ「だ、だよなぁ。だよなぁ。あはははは」

バルクホルン「……どうやら、宮藤は本番に強いようだな」

美緒「奴の初陣を忘れたのか?」

バルクホルン「少佐から何度も自慢話のように聞かされている」

エーリカ「宮藤って意外と大物かもね」

ミーナ「そうね。人を惹きつける魅力もあるし。宮藤さんはこれからも私たちにとって大きな力になってくれると思うわ」

芳佳「すっかり汗かいちゃったね。お風呂でもいこっか?」

サーニャ「うんっ。いくっ」

廊下

リーネ「芳佳ちゃーん!!」ギュッ

芳佳「リーネちゃん!!」

リーネ「心配したんだよ!!」

芳佳「ありがとう。でも、もう平気だから」

リーネ「サーニャちゃんも怪我は?」

サーニャ「なんともないわ。芳佳ちゃんが守ってくれたから」

エイラ「私も!! 私も守った!!!」

サーニャ「うん。そうね」

芳佳「それじゃあ、リーネちゃん。私たち今からお風呂入ってくるから」

リーネ「あ、うん」

サーニャ「おやすみなさい」

エイラ「おやすみ、リーネ」

芳佳「また、あしたねー」

リーネ「うん! おやすみ、芳佳ちゃん!」

早朝

サーニャ「……」

サーニャ「……」ガチャ

芳佳「すぅ……すぅ……」

サーニャ「……」バタッ

芳佳「え? なに……? なに……?」キョロキョロ

サーニャ「すぅ……すぅ……」

芳佳「サーニャちゃん……? どうしたの?」

サーニャ「寝ぼけて……部屋を間違えたの……」

芳佳「そうなんだ……なら、しかた……な……すぅ……すぅ……」

サーニャ「芳佳ちゃん……やっとこれた……」

サーニャ「どうしても芳佳ちゃんの部屋だけだは入る勇気がでなかったの……」

芳佳「すぅ……すぅ……」

サーニャ「どうしてかはわからないけど……入る前より、今こうしているほうが……どきどきする……」ギュッ

芳佳「うぅん……」

サーニャ「芳佳ちゃ――」

ガチャ

サーニャ「……!?」バッ

リーネ「……」

サーニャ「リーネちゃん……」

リーネ「……」

サーニャ「あ、あの……寝ぼけて……」

芳佳「すぅ……すぅ……」

リーネ「……」バタッ

芳佳「え!? なに!?」

リーネ「芳佳ちゃん。また来ちゃった」

芳佳「リーネちゃん……また……リーネちゃんの部屋はとなり……だって……すぅ……すぅ……」

サーニャ「リーネちゃんも寝ぼけて、芳佳ちゃんの部屋にくるの?」

リーネ「うん。もう最近はほぼ毎日だよ。サーニャちゃんもこれから一緒に寝ぼける?」

サーニャ「……いいの?」

リーネ「芳佳ちゃぁん……」ギュゥゥ

芳佳「おぉぉ……」

サーニャ「芳佳ちゃん」ギュゥゥ

芳佳「うぅん……」

サーニャ「リーネちゃんも芳佳ちゃんのこと……」

リーネ「大好き。世界で一番、好きな人かな」

サーニャ「私も芳佳ちゃんのこと、大好き」

リーネ「ふふ。一緒だね」

サーニャ「うん」

芳佳「うぅん……」

サーニャ「でも、リーネちゃんは今まで独り占めにしてきたから、その分私にも……」

リーネ「ダメ。下半分は私」ギュッ

サーニャ「そうなの?」

リーネ「サーニャちゃんはその、上半分で……ダメ?」

サーニャ「いいよ。私は芳佳ちゃんの上半身を……」

食堂

芳佳「……」

シャーリー「なんだ、宮藤。髪の毛ボサボサじゃないか」

芳佳「なんか、変な寝癖がついちゃって……」

バルクホルン「どれ、私が梳いてやろう」

芳佳「あぁ、そんな。いいですよぉ」

バルクホルン「いいから」

芳佳「すいません」

バルクホルン「慣れているから心配するな」

エイラ「サーニャぁ? サーニャぁ? どこだぁー!?」

ルッキーニ「どったの、エイラ?」

エイラ「サーニャがいないんだぁ!? 夜は一緒に寝てたのにぃ!!」

ルッキーニ「えぇー!? いいなぁー!! 私もサーニャとねたーい!!!」

ペリーヌ「……そうですわね。もう一度、ぐらいなら」

ルッキーニ「んにゃ? ペリーヌ、なにか言った?」

数日後 早朝 廊下

サーニャ「……」

サーニャ「リーネちゃん」コンコン

リーネ「……おかえり、サーニャちゃん」

サーニャ「行きましょう」

リーネ「うん。もう何だか、習慣になっちゃったね」

サーニャ「ええ。そうね。でも、とっても楽しいわ」

リーネ「私もだよ」

サーニャ「そろそろ寝ぼけて芳佳ちゃんの服を……」

リーネ「ううん。それはダメだよ。それをするなら私たちの服を……」

サーニャ「……うんっ」

リーネ「さ、入ろう」

サーニャ「……」ガチャ


――501の皆と仲良くなるために、私は今日も部屋を間違える。

おしまい。

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