ほむら「レストランほむほむ」(1000)
ほむら「今日も赤字……」
ほむら「全くお客さんがこないわ……」
ほむら「あら? だれか来客……?」
QB「やあ、暁美ほむら」
ほむら「帰ってちょうだい」
QB「待ってくれ。今日は君にいい話を持って来たんだ」
ほむら「いい話?」
QB「ボクとフランチャイズをして加盟店になってよ!」
ほむら「フランチャイズ契約?」
QB「ああ。そうすればQBグループのノウハウに基づいて君の店を急成長させられる筈さ」
ほむら「……」
QB「対価として売り上げの一部は頂くけど、君にとっても悪い話じゃないと思うよ」
ほむら「そうね……、このまま店を畳むぐらいなら……」
QB「よく言ってくれたね! それじゃあ、今日のところは契約の概要だけ説明させてもらうよ」
QB「まず、QBグループとフランチャイズ契約を結ぶにあたって、
看板を取り替えてもらう必要がある」
ほむら「レストランほむほむのままじゃ駄目なの?」
QB「ああ。そこは大前提だ」
ほむら(まどかが考えてくれた名前なのに……)
QB「メニューもQBグループで生産しているチルド商品に総替えだ」
ほむら「……」
QB「不服そうだね」
ほむら「ほむほむカレーだけは残しちゃ駄目かしら……?」
QB「駄目駄目。そんなQBグループのイメージと合わないメニューは却下だよ」
ほむら「じゃあ、ほむほむステーキは……?」
QB「それも駄目だ」
ほむら「……」
『ほむらちゃん! このカレー美味しいよ!』
『本当、本当! お店で出せるぐらい!』
『もっと色々な人にこの味を知って欲しいなぁ』
『えっ!? レストランをつくるから、店名を考えて欲しい?』
『じゃあこういうのはどうかな。レストランほむほむ!』
QB「さて、対価となる料金の設定に移ろう。ボクとしては売り上げの50%を……」
ほむら「やっぱり止めるわ」
QB「……は?」
ほむら「ほむほむカレーを店で出せなくなるぐらいなら……、
私は今のままのこのお店で頑張る」
QB「君は何を言っているんだい? 全く訳が分からないよ。
そんなカビ臭いカレーなんかにこだわっているから、この店は閑古鳥が鳴いているんだろう?
ボクはその惨状から脱するチャンスを君に―――」
ほむら「カビ臭いカレーなんかじゃ……ない……」
QB「……」
ほむら「まどかが美味しいって言ってくれたカレーだもの」
QB「……本当に後悔はしないね?」
ほむら「私は自分が作った料理を皆に食べて欲しいの。
QBグループの一員にはならないわ」
QB「そうかい、残念だよ」
ほむら「……」
ほむら(これでいいのよね……)
ほむら(QBを追い出したはいいけど、後になって不安になってきたわ……)
ほむら(いくら皆に料理を食べて欲しいと思っても、お客さんが来ないんじゃ……)
からんからん
ほむら(!! 今日初めてのお客さん!)
ほむら「いらっしゃいませ!」
杏子「なんだ、夕飯時だってのに空いてるな」
ほむら「お一人様ですか?」
杏子「ああ。見ての通りだよ」
杏子「よいしょ、と。……ふーん、変わった商品名が多いな。
店員さん、何かおすすめはあるかい?」
ほむら「お、おすすめは……」
杏子「おすすめは?」
ほむら「ほむほむカレー、です……」
杏子「おいおい、本当にそれがおすすめメニューなのか?
そんなに自信なさげに言われると、なんだか不安になってくるぞ」
ほむら「すみません……」
杏子「まあいいや。じゃ、ほむほむカレーを頼むよ」
ほむら「3日ぶりのお客さん。張りきって作らなくちゃ」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「できた!」
ほむら「良い匂い」
ほむら「カビ臭くなんてない……、よね」
ほむら「お待たせしました」
杏子「おっ、きたきた! いっただきまーす!
ほむら「……」ジーッ
杏子「……あ? なっ、何だよ。じっと見られてると食いにくいじゃんか」
ほむら「あ、す、すみません!」
杏子「別に逃げたりしないからさ、ちょっと離れててくんないかな」
ほむら「はい……」
――――
杏子「店員さん、お勘定お願い」
ほむら「はい。480円になります」
杏子「じゃ、1000と80円で」
ほむら「こちら1000円と80円からおあずかりします。600円のお返しです」
杏子「どうも。んじゃな」
ほむら「ありがとうございました」
杏子「あ、そうそう」
ほむら「?」
杏子「カレー美味かった。またくるよ、ごちそうさん」
からんからん
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「うっ……」
ほむら「ううっ、うっ……」
ほむら「まどか……」
ほむら「美味しかったって……、言ってもらえたよ……」
ほむら「嬉しいよぉ……」
――――
ほむら「結局今日はお客さんは一人だけだった」
ほむら「でも、美味しかったって、始めて言ってもらえた……」
ほむら「まどか。私、明日からも頑張るね」
ほむら「……」
ほむら「おやすみなさい、まどか……」
―――――
レストランほむほむの向かいの店
~BLUE SEA~
さやか「いらっしゃいませ!」
QB「やあ、さやか」
さやか「……なんだ、客じゃないのか」
QB「今日は君にいい話を持って来たんだ」
さやか「いい話?」
QB「ボクとフランチャイズ契約をして加盟店になってよ!」
さやか「加盟店に? ……いいわ、詳しく話を聞かせなさい」
~BLUE SEA~
早々に看板消滅
――――
翌日
ほむら「おはよう、まどか……」
ほむら「今日はお客さん3人を目標に頑張るわ……」
ほむら「まずは店先の掃除をしようかしら」
ほむら「あら? 向かいの店が……QBグループのレストランに?
ほむら「あそこは美樹さやかのカフェだった筈なのに」
QB→□λλλλλλ...ガヤガヤガヤ ■←レストランほむほむ
ほむら「あっちのお店は人がたくさん……」
ほむら「こっちは誰も来てくれない……」
ほむら「どうしよう……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「そ、そうだ。チラシを配ってみようかしら」
ほむら「それで少しでも知名度が上がったら……」
ほむら「どうせ時間はあるし……」
ほむら「できたわ!」
―――――
レストランほむほむ
l:::|::::::::::::::::::::::::::::::::::、::::::::::::}::::::|:l|::::::::::::::::::::::::::ト.
|:::|:::::::::::::|::::::::ハ:::::::N:::::::::::ハ:斗七::アヽ:|l:::::::::|:l
|:::|:::::::::::::|_l::斗チ::升 ヽ::::/ ∨-‐∨ Y:::::::::|:|
|:::|:::::::::::::|∧/ |/-l- 、∨ rf爪笊刈l:::::::::|:l
∨:::::::::::::l rf芥笊圷 弋廴ソ ||:::::::::リ
‘,:::::::::::::ト、 V廴ツ ///ヽ|l:::::::::| ほ
、:::::::::|ヒヘ ///ヽ ' ノ|:::::::::| む
ほ l::::::::|`ー'、 -‐( ....:::::::|:::::::::|
む |::::::::|:::::::::>- __ イ__:::::::::|:::::::::|
l::::::::|::::::::::::::::::::rf_」_  ̄ _}ノノ}::::::l:::::::∧
∧::::‘,::::::::::::::::::::〉 ̄ ̄`Y´ ̄ ̄ (__::/::::::∧:ヽ、
/::∧::::<工工二 -- 、_人_ -─‐-/::::::/ー─- 、
/::/ }:::::::〔::.::.::.::.::.::.::.::.::.{::.::.::.}:-:、:::.::/::::::/.::.:〕 ハ
ほむほむカレー480円
ほむほむステーキ780円
まどかパフェ360円
お子様ランチ(手編み人形付き)600円
他、豊富なメニューを取り揃えています
今ならお会計時に「ほむほむ」と言って下さると粗品をプレゼント
ほむら「100枚コピーしたわ……」
ほむら「お昼の営業時間までに配ってきましょう」
―CLOSED―
ほむら「ドアの板をひっくり返して、と……」
ほむら「よし、頑張りましょう」
――――
駅前
ほむら「お願いします」
通行人1「……」
ほむら「お願いします」
通行人2「……」
ほむら「お、お願いします」
通行人3「あ、ども」
ほむら「ありがとうございます!」
ほむら(受け取ってくれた!)
通行人3(なんだこれ……。いらねーや、捨てよう)ポイッ
ほむら「……」
ほむら「お願いします……」
通行人4「……」
ほむら「お願いします……」
通行人5「……」
JK1「ねー、ちょっとあそこのビラ配り暗くない?」
JK2「本当だ、マジ暗っ。朝から勘弁って感じ」
JK3「なんかネタになりそうだし私シャメ撮ろ」
JK1「あ、私も私も」
ほむら「……」カアアアッ
ほむら(もう帰ろう……)
JK2「あ、逃げた! 超ウケるー!」
――――
ほむら「何やってるんだろう……」
ほむら「結局、全然配れなくって……」
ほむら「はあ……」
からんからん
ほむら(お客さん!?)
ほむら「いらっしゃいませ!」
幼女「……? お人形屋さんじゃないの?」
ほむら(子供? 店先に私の人形とまどか人形が置いてあるから、勘違いされたのかしら……)
幼女「人形、置いてないの?」
ほむら「えっと、その……」
ほむら(お子様ランチのおまけ用のぬいぐるみは……、あったあった)
ほむら「はい、どうぞ。これでいいかしら?」
幼女「可愛い! えっと……、これで足りる?」
ほむら(100円玉……、子供にとっては大金よね)
ほむら「ううん、いいの。そのお人形はプレゼント」
幼女「本当に!? ありがとう!」
ほむら(喜んでもらえてよかった……)
ほむら(……店先に人形を置いていたから、子供に人形屋と間違えられた……のよね?)
ほむら(店先に何か宣伝になるものを置けば、通行人が見てくれるのかしら……)
ほむら「……」
ほむら「そうだわ。店の前に小さいブラックボードでも置こうかしら……」
ほむら「おすすめメニューや可愛いイラストを書いて……」
ほむら「そうすればきっと……」
ほむら「よし。明日買いにいきましょう」
――――
お昼時
TVスタッフ「マミさん! こちらが本日グルメレポートをするお店です!」
マミ「……何よこれ、物凄く混んでるじゃないの」
TVスタッフ「本日改装したてですので、物珍しいのでしょう。
それに何といってもあのQBグループのレストランですからね!」
マミ「こんなに混んでるお店で食べたくないわ」
TVスタッフ「そう言わずにー! QB側と話しはついているので、
ちゃんとお席は空けていただますって!」
マミ「それでも嫌よ。こんなに人が多い場所で食べたくないわ。
私、こっちのお店の方がいい」
TVスタッフ「ちょっ、マミさーん!? あ、ま、待ってくださいったら!」
――――
からんからん
ほむら(またお客さん!)
ほむら「いらっしゃいま……せ……?」
マミ「何よ。外から見てそんな感じはしていたけれど、誰も客がいないじゃない。
あら? でも内装は悪くないわね」
ほむら(げ、芸能人の巴マミ!?)
TV「ちょっとマミさん、困りますって! QBレストランを持ちあげろって、上からの指示なんです!」
ほむら「あ、あの……」
マミ「1人」
ほむら「あ、はい。お1人様……、で、いいんですか」
マミ「ええ。さ、早く席に案内してちょうだい」
ほむら「メニューはこちらになります」
マミ「ありがとう」
マミ(……?)
マミ(ほむほむカレー? まどかパフェ?)
マミ(どういう意味?)
ほむら「あの、何かメニューについてご質問がありましたら……」
マミ「いえ、その必要は無いわ! 私が知らない料理用語が存在する筈ないじゃない!」
ほむら「は、はあ……」
マミ(……)
マミ(見栄張ったけど、ほむほむとまどかってどういう意味の言葉よ!?)
マミ(ほむほむ……)
マミ(“ほむ”という音のダ・カーポ~繰り返し~により成り立っている言葉ね)
マミ(ほむ……、ほむ……)
マミ(ほむと聞いて連想するのは……)
マミ(そうね、地獄の業火の如く燃え上がる焔~ほむら~)
マミ(そういえばカレーと炎というのはイメージが合うわね……)
マミ(うん、きっとこの線だわ!)
マミ(ほむほむというのは、さながら地獄の番犬ケルベロスが
多頭から吐き出す業火~ヘルフレイム~のように)
マミ(激しく燃えるような熱い辛さであることを表現している言葉に違いない!)
マミ(こんな用語があったなんてね……、まだ世界は広いわ)
マミ(続いてまどかね)
マミ(“ま”という部分には、当然“魔”という字があてられるとして)
マミ(問題は“どか”ね)
マミ(どか……、どか……)
マミ(……どかベン?)
マミ(……)
マミ(あら? そういえばまどかという言葉は、円~真なる円環~と表記することもできるわね)
マミ(なるほど……)
マミ(言うなればパフェというのは、食事の終焉を告げる鐘、ティロ・フィナーレ)
マミ(食のラグナロクに際して、円環の理の加護を受けたデザートを食すというのは……)
マミ(どう考えても理にかなっているわね)
マミ(ふふっ、やはり食の世界は奥が深い)
マミ「では、このほむほむカレー~繰り返し身を焦がす地獄のマグマ~と、
まどかパフェ~聖戦の終焉告げる女神の涙~をいただくわ」
ほむら「え、あ、えっと、はい」
ほむら(そういえば……)
ほむら(インパクトのある解説をすることで有名なんだっけ……)
ほむら(……)
ほむら(芸能人だからとか関係なく……)
ほむら(いつも通りのカレーをつくろう)
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「……で、できた」
ほむら「いつも美味しいものを食べてる人に、通用するのかな……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「まどかが美味しいって言ってくれたカレーだもの」
ほむら「きっと大丈夫」
ほむら「おまたせしました。ほむほむカレーです」
マミ「ありがとう」
マミ(……あ、あら?)
マミ(普通のカレーのように見えるわね)
マミ(食べてみるとヘルフレイムに舌を焼きつくされるのかしら)
マミ「Mangiamo……、いただきます」
ほむら「ど、どうぞ」
『マミー、あなたー、ご飯できたわよ!』
『おっ。今日はカレーか』
『わーい! 私お母さんのカレー大好き!』
『いただきまーす!』
ききーっ……どっかん!
『お父さん……? お母さん……?』
『や、嫌……返事して……返事してよ……』
マミ「う、……ああっ……」
ほむら「お、お客様? お口に……あいませんでしたか?」
マミ「違う、違うの……美味しいの……」
ほむら「えっ……?」
マミ(不幸を味わった分、私はいつか人一倍幸せになるんだって、意気込んで……)
マミ(でも現実は厳しくて、馬鹿な妄想に逃げて……)
マミ(その後、なんとか運よく芸能界で成功できたものの、どこか物足りなくて……)
マミ(これ、お母さんのカレーみたい……)
マミ(私に欠けていたもの~カツテ失ッタ愛トイウ名ノヌクモリ~に包まれているような、そんな気持ち……)
マミ「ここ数年食べた料理の中で一番美味しいわ……」
ほむら「ほっ、本当ですか!?」
マミ「ええ……、本当よ」
マミ(私が失った、愛~人を人たらしめるモノ~、はここにあったのね)
おやすみ準備してくるよマミさん
マミ「あなた、名前は何というの?」
ほむら「あ、暁美ほむら……です」
マミ「そう。暁美さん、本当にありがとう。このカレーを食べさせてくれて、
プレシャスメモリーを思い出させてくれて、本当にありがとう」
ほむら「いえ……。私の方こそ、ありがとうございます」
――――
マミ「パフェも美味しかったわ。お代はここに置いておくわね」
ほむら「!? う、受け取れません、こんな何万円も!」
マミ「いいの、受け取って」
ほむら「……そ、それなら、少し待っていてください」
ほむら(紙に……、ペンで……)
ほむら(こんな感じかな……?)
ほむら「お待たせしました……、これをどうぞ」
マミ「カレー食べ放題券……?」
ほむら「はい……。またきてくださったら、嬉しいなって……。
私、誰かにカレーを食べていただくのが大好きなんです」」
マミ(食べ放題ということは……、毎日でもきてください的な、あれよね?)
マミ(しかも暁美さんは、私に愛のこもったカレーを食べさせてくれた)
マミ(これはまさか……)
マミ(毎日味噌汁を作ってあげる的な、あれ?)
マミ(……)キュンッ
マミ「あ、あ、あ、暁美さんっ!」
ほむら「は、はいっ?」
マミ「ふつつか者ですが……、ま、また来ます!」
ほむら「え……? あ、ありがとうございました……?」
ほむら「……」
ほむら「えへへ……」
ほむら「またきてくれるって、言ってもらっちゃった」
ほむら「最後はなんだか様子がおかしかったけど……」
ほむら「喜んでくれたの……よね?」
支援!
――――
テレビ局
上司「駄目だ駄目だ。こんなものは放送できん!」
TVクルー「と、巴マミの新たな一面ってことで……やっぱ駄目ですかね?」
上司「これが他の店なら、そういうキャッチフレーズでCMを飛ばして視聴率を稼ぐさ。
だが、大手のスポンサー様の向かいの店ともなれば話は別だ」
TVクルー「はは……、そうっすよね……」
――――
からんからん
杏子「ちーっす」
パンパーン!
杏子「な、何だぁ!? クラッカー!?」
ほむら「お、おめでとうございます……、あなたは本日3人目のお客様です……!」
杏子「さ、3人目?」
ほむら「最高記録なんです」
杏子「ちょい待ち! 3人で最高記録って、そりゃやばくないか!?」
ほむら「……やっぱりそうでしょうか?」
杏子「ああ。そんなんじゃ赤字どころの騒ぎじゃないだろ!
味は大手のチェーンなんかより全然美味いんだけどなぁー」
ほむら「……」
杏子「やっぱ知名度の問題か? となれば……、手軽なとこだとビラ配りとか」
ほむら「び、ビラ配りは駄目! 絶対駄目!」
杏子「お、落ち着けって! あー、まあ、アンタそういうの苦手そうだしな。
まあいいや、とりあえずほむほむカレー頼むよ」
杏子「うん、やっぱうめぇ! 次は別のメニューも頼んでみるかな」
ほむら(次……)
ほむら(また来る前提で、話してくれてる……)
ほむら(嬉しいな)
杏子「ところでさっきの話の続きだけどさ。アンタは何か宣伝とかするつもりあんの?」
ほむら「明日、店の前に小さな黒板を置こうかと……」
杏子「ああ、ああ。よく今日のおすすめメニューとか書かれてるようなあれか」
ほむら「はい」
杏子「うん、それいいんじゃないかね。ここの店って外見だけじゃ、
何が売りなのかイマイチ分かりづらいし」
杏子「ただそれだけじゃ弱いと思うんだよなぁー。
待ちの姿勢なんてのは、商売の世界じゃ避けるべきだ。まだ何か無いの?」
ほむら「じ、実は……」
杏子「ん?」
ほむら「今日、巴マミさんがこのお店に」
杏子「はぁあああああ!? え、何それ!? 本物!?」
ほむら「はい……」
杏子「おいおい! そんじゃ店の前に置く板にはこう書きな! 巴マミ御用達の店って!」
ほむら「で、でも、まだ一回しかご来店……」
杏子「そこはハッタリきかせればいいって! いける、いけるぞこれは!」
ほむら「……くすっ」
杏子「あ? なんで笑うんだよ?」
ほむら「なんだか、この店の為にそんなに一生懸命に考えてくださってるのが不思議で……」
杏子「……ははっ。そうだな、何こんなに必死になってんだろうな」
ほむら「でも、ありがとうございます」
杏子「いいよ。多分それだけこの店が好きなんだろうね、あたし」
ほむら「……」
杏子「さってと、そろそろお暇するかな」
ほむら「あ、待ってください。粗品が……」
杏子「粗品? もしかして3人目記念の?」
ほむら「はい」
ほむら(本当は「ほむほむ」って言ってくれた人にあげるつもりだったけど……)
ほむら「よろしかったらどうぞ」
杏子「おっ。美味そうなクッキーじゃん! 手作り?」
ほむら「ええ……」
杏子「後で食わせてもらうな。……ところで、これ何の形? 2つ結びの女の子?」
ほむら「まどかです」
杏子「まどか? 誰かの名前?」
ほむら「わ、私の……よ、じゃなくて、大切な人です」
杏子「ふーん……。そういえばメニューの中にもまどかって付いたものがあったな」
ほむら「はい……」
杏子「今度機会があったら会わせてくれな! そんじゃ、ごちそうさま!」
ほむら「ありがとうございました」
――――
ほむら「無理よ、会わせるなんて……」
ほむら「だってまどかは……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「会いたいよ……」
ほむら「まどかぁ……」
ほむら「……」
ほむら「……」
ほむら「おやすみなさい、まどか」
――――
マミ(ふふ、昨日の今日だけどまたきちゃった)
マミ(暁美さん待っててくれるかしら)
マミ(……あら? 店の外で何かしてるわね)
ほむら(こんなものかしら)
マミ「と、巴マミ御用達の店!?」
ほむら「っ!? あ、ま、マミさん……」
マミ(そう、そうなのね暁美さん!)
マミ(ここが2人の愛の巣であることを、わざわざ看板でアピールしてくれるなんて……)
マミ(そんなに私のこと……)
ほむら「と、とりあえず店内へ……」
マミ「そうさせてもらうわね」
ほむら「お好きな席へどうぞ」
マミ「では厨房の近くのこの席で。……暁美さん、早速だけどこれを使うわ。
カレー食べ放題券~2人の絆の証たる唯一無二のアーティファクト~」
ほむら「は、はい……、今用意しますね……」
ほむら(勝手に名前使ったこと、怒ってないかしら……?)
ほむら「お待たせしました」
マミ「ありがとう。……あら、昨日と少し具が違うわね」
ほむら「え、ええ。2日続けてなら、少しは変化をつけた方がいいかなと……」
マミ(暁美さん、あなた、私のことを思ってそんな涙ぐましい努力を……)
マミ(あなたの気持ちは分かったわ! 私、仕事の合間を縫ってできる限りこのお店に通う!)
マミ「あ、そうそう。食事の後で私の写真を撮りましょう」
ほむら「え? ま、マミさんの?」
マミ「表の黒板に私の写真が貼ってあったら、文字だけよりも集客力が上がると思うの。
自分で言うのもなんだけどね」
ほむら「な、なるほど……」
――――
数日後
さやか「な、何でよ! 何で客の入りが減ってるのよ!」
さやか「それに引き換え、レストランほむほむは……」
さやか「……」
さやか「やばいよ……。契約通り売り上げの50%をQBに流したら、このままだと赤字に……」
さやか「……」
さやか「……」
さやか「レストランほむほむさえ駄目になれば……」
「レストランほむほむの店主はレズビアン」
「レストランほむほむのカレーは作ってから丸1日放置している粗悪品」
「レストランほむほむの手編み人形は夜中になると動き出す」
さやか「ふ、ふふふ……」
さやか「悪口を書いた紙を作ったわ」
さやか「後はこれを夜中の内に……」
――――
数日後
百合オタ「あの人が……ごくり」
カレーは一晩置く派「美味い」
オカ板住人「レストランほむほむでお子様ランチオフ会」
さやか「な、なんで!?」
さやか「客層が微妙にシフトしたものの、向こうの客足はむしろ増加傾向……」
さやか「こっちの客は減る一方だし……」
さやか「どう、しよう……」
さやか「このままだと……、恭介の治療費が……」
QB「やれやれ、苦戦しているようだね」
さやか「あ、きゅ、QB……」
QB「このままだとウチの看板を汚したってことで違約金を払ってもらうはめになるね」
さやか「え……、い、違約金……?」
QB「契約書には確かに書いてあった筈だよ。
一定の収益を上げられない場合、違約金を払う旨がね」
さやか「そ、そんな……」
さやか「どうしよう……」
さやか「は、あはは……」
さやか「終わりだよ、何もかも」
さやか「……」
さやか「恭介……」
さやか「助けて……」
『さやかはレアなCDを集める天才だね!』
『でもそのレアなCDをボクばかりが独占するのは悪いと思うんだ』
『だから……そうだ、カフェを開いたらどうかな』
『素敵な音楽が流れる、そんなカフェを』
『残念だな……、カフェを開いたらお見舞いに来られる頻度が減っちゃうよね……』
『でも頑張ってね、さやか』
『大忙しになるぐらいカフェが繁盛することを祈ってるよ!』
さやか「罰が当たったのかな……」
さやか「他人を蹴落とそうなんて、そんなこと考えたから……」
さやか「……ごめんねほむら」
さやか「ごめん、ね……」
さやか「そういえば、最近きちんと音楽も聞いてなかったな……」
さやか「そんな心の余裕もなくして……」
さやか「あたし何してたんだろう……」
さやか「……」
さやか「恭介……」
さやか「久しぶりに、会いにいこう……」
――――
仁美「またきちゃいましたわ、上条さん」
上条「やあ。いつもありがとう」
仁美「いいえ、いいんですの。だって私は……」
上条「志筑さん……。いや、仁美……」
さやか「……なん、で?」
――――
さやか「う、うう、うああ……」
さやか「結局、体の良い厄介払いだったんだ……」
さやか「あたしは……」
さやか「もう、あたしには何にも……」
さやか「……いっそ、死んじゃおっかな……」
杏子「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇよ」
さやか「誰、あんた……。見ず知らずの人間に何が分かるのよ……」
杏子「そりゃ、何も分かんないよ……。あたしだって面倒事は御免だし、無視していくつもりだった。
でもさぁ。あんなムカつくこと聞いちまったら、素通りできる訳ないよなぁ?」
さやか「ムカつく、こと……?」
杏子「死んじゃおっかな……、とかなんとか。何だよそれ。“かな”とはなんだよ、“かな”とは」
さやか「……」
杏子「迷う余地があるんだろ? どこかで、死ぬことを嫌と思う気持ちがあるんだろ?
じゃあ死ぬなよ、ボンクラ。生きろよ」
さやか「そりゃあたしだって本当は……、でも、もう何もなくなっちゃったから」
杏子「……ちょっとこい。まだテメェに残されてるものがあるって教えてやる」
――――
さやか(え……? こ、ここ……)
杏子「いいから入る入る」
からんからん
ほむら「いらっしゃいませ」
杏子「ははっ、相変わらず覇気の無い店長だ」
ほむら「あ、佐倉さん……、と、えっ? み、美樹さやか?」
さやか「……」
杏子「へ? 知り合いなの? ……まあいいや、今日は2人で」
ほむら「ほむほむカレー2つお持ちしました」
杏子「ありがとう」
さやか「……」
杏子「さ、食えよ。おごりだからさ」
さやか「う、うん……」
杏子「……」
さやか「……」
杏子「……どうだい?」
さやか「悔しいけど……、美味しい」
杏子「ほら。まだ残ってたじゃないか。自分には何もないなんて幻想はこれで終わりだ」
さやか「……えっ?」
杏子「美味しい、そう感じることができたんだろ?
死んじまうとそれすら無くなっちまうんだよ」
さやか「……」
杏子「今は美味しいを糧に生きればいい。
その内何かまた別の幸せが、ひょっこり見つかるからさ」
さやか「……う、ううっ」
杏子「……」
さやか「う、ああっ、あああっ……」
杏子「落ち着いたか?」
さやか「うん……。手間かけさせてごめん」
杏子「別に良いさ。好きでやったことだし」
さやか「……あんたの名前、聞いてもいいかな」
杏子「佐倉杏子、だ」
さやか「そっか。じゃあ杏子。美味しい以外にもう一つ見つけたよ、あたしに残されたもの」
杏子「へっ?」
さやか「杏子みたいな、あたしを心配してくれる人がまだいた」
杏子「……」
さやか「……」
杏子「ぷっ、なんだそれ。臭すぎ」
さやか「あはは……、杏子には言われたくないっての」
――――
杏子「っと、気がつきゃもう閉店時間か。ごめんな」
ほむら「い、いえ……」
さやか「……美味しかったよ、ほむら」
ほむら「ありがとう、美樹さやか」
さやか「まあ気が向いたら……、またくるかも」
杏子「んじゃなー! ごちそうさまでした!」
ほむら「ありがとうございました」
――――
ほむら(佐倉さんと美樹さやか、仲よさそうだった……)
ほむら(あんな風に笑いあえる相手が、私にもいたら……)
ほむら(……)
ほむら(……)
ほむら(まど、か……)
「ただいま、ほむらちゃん!」
ほむら「え……?」
まどか「ほむらちゃーん! 会いたかったよー!」ギュウッ
ほむら「まど、か? ほ、本人……よね?」
まどか「もちろん! もうかれこれ……、3年ぶりなのかな?」
ほむら「心配……したんだから……」
まどか「あはは、ごめんね。」
ほむら「でも今までどこに?」
まどか「ちょっとアメリカにね」
ほむら「アメリカ!? な、なんでわざわざ……。それに、一度ぐらい連絡くれたって……」
まどか「ほむらちゃんの声を聞いたら、戻りたくなっちゃうと思ったから……。
でもね、凄いんだよ! 私、むこうで凄く成功したの!」
ほむら(せっ、性交……? そ、そそ、そんな……)
まどか「エッチな方じゃないよ?」
ほむら「え、あ、うん。わっ、分かってたわ・!」
ほむら(よかった……)
まどか「去年から日本にも進出してるんだけどね。
マドカナルドってファーストフード店、聞いたことない?」
ほむら「マドカナルド!? あの大手ハンバーガーショップの!?」
まどか「うん! 色々大変だったけど、何とか軌道に乗ってからは一気に成長して」
ほむら「まさかあのマドカナルドがまどかのお店だったなんて……」
まどか「これでようやく、私の夢がかなえられるだけの準備が整った。
そう思ったから日本に戻ってきたの」
ほむら「まどかの……夢?」
まどか「私の夢は、ほむらちゃんのカレーをたくさんの人に食べてもらうこと」
まどか「だからね……。ほむらちゃんのカレーの味を再現したルー入りの、
揚げカレーパンを販売しようと思うの」
まどか「ね、どうかな?」
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「あ……、えっ、ええ! 素晴らしいと思うわ!」
まどか「だよね!」
ほむら(……どうしてかしら)
ほむら(どうして大勢の人にカレーを食べてもらえることが、嬉しいと思えないの……?)
ほむら「そうだまどか。久しぶりに私のカレーを食べてくれない?」
まどか「いいの?」
ほむら「ええ。まだストックがあるから」
まどか「やったー! 楽しみだな!」
ほむら「ふふ……」
ほむら(……あれ?)
ほむら(私のカレーを再現したものを商品化してもらえると聞いた時は、全然嬉しくなかったのに)
ほむら(まどかに食べてもらえるとなった今は、凄く嬉しい……)
まどか「いっただきまーす!」
ほむら(どきどきする……)
まどか「うん、おーいしい! すっごく美味しい!」
ほむら「えへへ、ありがとう……。まどかに食べてもらえるのが一番嬉しいよ」
まどか「あはは、そんなこと言われたら照れちゃうよ」
ほむら「……ずっとずっと会いたかったんだよ、まどか。
もしかしてもう一生会えないんじゃないかって、不安で……」
まどか「ごめんね、本当に……」
ごめん、さすがに7時間ぶっ続けだから死にそう
ちょっと休ませて
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 30分以内
04:00-09:00 50分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 20分以内
19:00-00:00 10分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 20分以内
02:00-04:00 35分以内
04:00-09:00 60分以内
09:00-16:00 35分以内
16:00-19:00 20分以内
19:00-00:00 10分以内
>>701の続き
――――
まどか「商品名はどうしよう? フライドほむほむカレーパン、ほむほむカレーパイ、
私とほむらちゃんの愛の結晶パン、ほむほむカレーサンド……」
ほむら(あ、え、あ、愛の結晶!?)
まどか「名前って売れ行きに大きく関わるから、悩むなぁ」
ほむら「まどか、なんだか楽しそうね」
まどか「そうだね。規模が大きい分、やりがいは凄くあるよ」
ほむら「料理を通して本当に大勢を笑顔にできる、そんな立場だもんね」
まどか「……? 別に顧客の笑顔を見る機会なんて……無いよ?」
ほむら「えっ?」
まどか「マドカナルドは安さで売ってるところだから、
顧客も“まあこんなもんか”ぐらいの気持ちで食べる人が多くてさ。
それにそもそも、わざわざ私が直接リサーチしに行く必要なんてないしね」
ほむら「……い、いいものだよ、お客さんの笑顔を見るのって」
まどか「ふーん……」
ほむら「……」
まどか「あ、そうそう。商品開発に付き合ってもらいたいから、レストランは少し休んでもらっていいかな?」
ほむら「え? 少しってどのぐらい?」
まどか「うーん。1月ぐらい?」
ほむら(ひと、月……?)
まどか「これから一緒に頑張ろうね!」
ほむら「……ごめんね、まどか」
まどか「えっ?」
ほむら「私、やっぱりカレーを商品にして貰うの諦める」
まどか「なんで!? だって日本中の……。
ううん、世界中の人にカレーを食べてもらうチャンスなのに!」
ほむら「確かに私は大勢の人にカレーを食べて欲しいと思った」
まどか「うん。だから私は、アメリカでそのためのし下地作りに励んで……」
ほむら「でもそれは、私のカレーを食べてくれる人の笑顔が見たいから」
まどか「えが、お……?」
ほむら「料理を食べて美味しいって喜んでくれる姿を見ることが、私の幸せなの」
まどか「……」
ほむら「私の幸せの始まりは、まどかの笑顔だったんだよ」
まどか「……分かんないよ」
ほむら「まどか……」
まどか「訳分かんないよ……。大勢の人に食べてもらうことが、ほむらちゃんの幸せじゃないの……?」
ほむら「うーん……、少しだけ違うみたい」
まどか「違う、の……?」
ほむら「なんて、私もこうして話していて気がついたんだけどね。あはは……」
まどか「……」
ほむら「だから私は……、マドカナルドに比べればちっぽけかもしれないけど、レストランほむほむを大切にしたい」
まどか「……嫌だよ」
まどか「そんなの嫌だ! 私はもっともっと大勢の人にほむらちゃんのカレーを食べて欲しい!」
ほむら「でも……、そうしてお店で出されるカレーは、私が直接作ったカレーではない」
まどか「味ならウチの開発部の力でなんとかなるよ!」
ほむら「ごめんね、まどか。そういう問題じゃないの」
まどか「さっきから、言ってることがよく、分かんないよ……」
ほむら「……」
まどか「ああ、そうだ! このお店があるからいけないんだ!
下手にお店という場があるから、ほむらちゃんはその殻にこもっちゃってる!」
まどか「そうだよ。ここを潰しちゃえばいいんだ。そうすればほむらちゃんは私に頼らざるを得なくなる。
大丈夫だよ。ちゃんとマドカナルドを通してほむらちゃんのカレーは世界に広まる。
結果的にはカレーは、より大勢の人の口に届く。
そうすればほむらちゃんだって分かってくれ―――」
ほむら「……ねえ、まどか」
まどか「何、ほむらちゃん」
ほむら「今のまどかの幸せって何?」
まどか「え……? 私の……、幸せ?」
『ビルの中での店舗営業を許可する!? ありがとうございます!』
『よーし、これで3店舗目!』
『嬉しいな、ようやく軌道に乗ってきた』
『このままいけばきっといつか、ほむらちゃんのカレーを広められるだけの影響力を手に入れられる』
『そしたら、ほむらちゃんどれぐらい喜んでくれるんだろう!』
『笑顔になって……、くれるかな』
『いつかそんな日がくればいいなぁ……』
―――――
『第179店舗は売れ行き良好、第180店舗は及第点、第181店舗は……』
『はぁ? 何この売上』
『ここ直営店じゃなくてフランチャイズのとこだっけ』
『この店舗はもう見切りをつけよう』
『ああ、大丈夫大丈夫。別に大した痛手じゃないから』
『大体立地が悪いんだよねぇ、こんな田舎……。もっと効率的に人が集まる所じゃないと』
『え? 周辺住民はマドカナルドが進出してきて喜んでる?』
『笑顔じゃ、お腹は膨れないよ』
まどか「あ、ああ……」
まどか「私最初は、ただ純粋にほむらちゃんの笑顔が見たくて……」
まどか「その為の手段として、店を大きくして……」
まどか「でもいつしか、手段と目的が……入れ替わって……」
まどか「私は……、私の幸せって……」
ほむら「まどか」ギュウッ
まどか「ほむらちゃん……」
まどか(そっか。私の幸せは……、最初からこんなに身近にあったんだ)
まどか(たった1人の笑顔が見たくって、私は……)
まどか(私の、私の幸せは……最初からこんなに近くに……)
まどか「ねえ、ほむらちゃん……」
ほむら「うん」
まどか「勝手に姿を消しておいて、今更図々しいけど……」
「もう一度私の幸せに、なってください」
.
――――
からんからん
「いらっしゃいませ!」
「うお!? 店員が増えたのか!?」
「はい! 本日より新しく店員になりました!」
「その髪型……、もしかしてあんた、クッキーのモデルになった、まどかとかいう」
「クッキー? あはは、ほむらちゃんったらそんなものを……」
「ふーん、なぁるほど。店長はこういうのが……」
「え、えへへ……」
「まあいいや、ほむほむカレーを頼む」
「はい!」
――――
からんからん
「暁美さん、あなたの愛の女神~交わした約束、忘れられないコネクト~が会いに……」
「いらっしゃいませ!」
「え……? あ、暁美さんじゃ……、ない!?」
「はい! 私、本日より新しく店員になったんです!」
(え、ええっ!? あ、ああ、暁美さんとこの子、ど、どういう関係なの!? )
「……あー、そうだわ。あなた、カレー食べ放題券は持っているかしら?」
「?? そのようなものは存じませんが……」
(勝った!)
「おーっほっほ、そうよねそうよね!
さーて、今日もほむほむカレー~愛という名の炎~を頼もうかしら」
「は、はあ……」
――――
からんからん
「いらっしゃ……、さやかちゃん!?」
「まどか!? あんたどうしてここに……」
「うーん、なんか色々あって」
「そっか……」
「ほむらちゃんから色々話は聞いたよ。大変だったみたいだね」
「……うん。0からどころか、マイナスからのスタートって感じかな」
「ねえ、さやかちゃん。あるチェーン店がね、今、新しい形態の店舗を開こうとしているの」
「……?」
「安さだけでなく、居心地の良さにもこだわった、きれいな音楽と笑顔で満たされた……カフェみたいな店舗」
「それが一体……」
「そこの店長、やってみない?」
――――
「うわああああああああ!」
「どんどん業績が悪化していく!!」
「それもこれも、マドカナルドが日本に進出してきたせいだ……」
「……え? フランチャイズ契約を解除したい?」
「わあああああ! 待ってぇえええええ!」
「ひぃいいいいいいいい!!」
――――
「ありがとうございました!」
からんからん
「ふうっ……。ほむらちゃーん、最後のお客さんが帰ったよー!」
「お疲れ様、まどか。でも最後のお客さんはまだいるのよ」
「え?」
「はい、ほむほむカレー」
「あ……」
「いっただきまーす!」
「どうぞ」
「ね、ほむらちゃん」
「ん?」
「お客さんの笑顔って良いね」
「うん……そうだね」
「……あー。それにしても、やっぱりほむらちゃんのカレーおーいしい!」
「えへへへ……」
そうしてその日のレストランほむほむの営業は終了した
営業が終了してからも、しばらくの間、2人の少女の談笑の声が途切れることは無かった
(あなたは私の最高の……そして最愛のお客さんよ、まどか)
おわり
.,-'''''~~~ ̄ ̄~~''' - 、
\ ,へ.人ゝ __,,.--──--.、_/ _,,..-一" ̄
\ £. CO/ ̄ \ _,,..-" ̄ __,,,...--
∫ / ,、.,、 |,,-¬ ̄ _...-¬ ̄
乙 イ / / ._//ノ \丿 ..|__,,..-¬ ̄ __,.-一
.人 | / ../-" ̄ || | 丿 / ). _,,..-─" ̄ ._,,,
マ .ゝ∨ / || " 丿/ノ--冖 ̄ __,,,,....-─¬ ̄
( \∨| " t-¬,,...-一" ̄ __--¬ ̄
ミ ⊂-)\_)` -一二 ̄,,..=¬厂~~ (_,,/")
.⊂--一'''''""|=|( 干. |=| |_ (/
/ ( / ∪.冫 干∪ 人 ` 、 `
/ ) ノ '`--一`ヽ 冫
く.. /
. ト─-----イ |
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このSSまとめへのコメント
マミさんがヤバいwwww