上条「希望ヶ峯学園・・・?」 (112)


注意事項 ちょっと多いので分けます

・このssはダンガンロンパ×禁書のクロスです(正確にはダンガンロンパの世界に上条さんを放り込んだ感じ)
クロスが苦手、という方は見るのを控えた方が良いかと思います

・最近ダンガンロンパにはまり超高校級の幸運(不運?)の苗木君が、
超高校級の不幸の上条さんになったらというのを妄想したものです(似たり寄ったりの性質ですが)

・ダンガンロンパはアニメが主、プロローグをプレイ動画で見ました
ちょっと把握しきれてないキャラもいますがご容赦を

・内容上苗木君は9割方、登場しません、ファンの方はすみません
(作者は苗木君は好きです、嫌いだから省いたわけではないです)

・更新は不定期になると思います、報告は必ずするつもりです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380295677


・異能の力が無いので幻想殺しはほぼ意味ありません
そのため上条さんには補正が付きます(例:移動速度などなど、元から主人公補正あるけど)

・怪我の応急処置については、ネットで拾った浅い知識です
またストーリーの都合上上条さんの治りが早いかもです(これもある意味補正ですね)

・説教でツッコミ所があるでしょうがご容赦を

・あくまでストーリー展開はダンガンロンパが主です
ストーリーの都合上改編も時々あります(特に記憶に関して)

・論破ではなく、説教になるかも・・

・2行分の点線は少し時間が経った、または場面が変わったと思ってください

・描写に初挑戦で、拙い文ですがご容赦を


本編に入る前に注意事項ではなく
今も更新中の別作品です
タイトルは「男子高校生と通学少女」
男子高校生と通学少女 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371294819/)

自分の会話形式のみの初ssとなっております
気が向いたら見てやってください


□□  ■■
Chapter0
プロローグ

上条「希望ヶ峯学園・・・」
学園都市から公共機関を使って、数日の場所。
現在は公共機関を降り、歩きながら渡された書類を読むのは、
学園都市のレベル0の中でも稀有な存在、上条当麻である。
上条はいつも通りの夏服の制服、黒ズボンにYシャツだった。
Yシャツの中はオレンジのTシャツだ。

上条「この学園を卒業すると、その後の人生は成功する、
つまりほぼ勝ち組と同義って噂だとか・・」

上条「そんなのが約束されてても、俺だけは・・とかありそうだよな~・・」
学園都市内でも平凡な高校に通う上条だが、頻繁に補修に追われる彼は、
御世辞にも学業優秀とは言えない。凄い学校ならなおさら不安であるが・・。

上条「にしても急に一時的に編入学とか・・」
そんな上条が、卒業=人生で成功する、とまで言われる学園に飛ばされるとは。
これも補修の一環のようなものなのか、というのが彼の考えの範疇だ。

期待。ただ一つだけ言うと峯じゃなくて峰だな


編入とはいっても、学園都市内から外に行くのはかなり規模が大きいように思える。
都市内部に適切な学校が無かったのか・・まるで島流しの刑のようにも思えた。
とはいえ、上条の一番の問題はそこではない。
上条には普通の学生とは違い、居候という大きな問題がある。

上条の居候は、インデックス。
見た目はかなり可愛いし性格も少し子供っぽいが、それらに反して
10万3000冊の魔導書を記憶した、魔導書図書館を担う銀髪のシスターだ。
暴食で機械に疎く、かつ自分では料理を作れないので、1人放っておくのは些か心配だが。

上条「インデックスは子萌先生や、姫神に任せてあるからいいけど・・」
困った時は子萌先生の家である。子萌の家には結標という居候がいる。
そして、インデックスには姫神や、風斬もいる。
仲良くやって行けるだろう。
他人の心配よりも、今は自分の心配をした方がいい。そもそも学園都市の生徒が、
外の学校に行くのはかなりイレギュラーな事態なのだから。

峰ってこっちじゃなかった?
あえてならすまん

>>6
ぐわぁぁぁ・・なんと酷い間違いを・・
これから修正しなければ
あ、注意書きに書き忘れてました
ご指摘は歓迎です

>>8
いえ、あえてじゃなく純粋な間違いです
タイトルにもなってるのに・・
絶望的ぃぃぃぃぃ!
立て直そうかな・・

>>9
あと、子萌先生じゃなくて小萌先生だな。良SSっぽいから楽しみにしてるぜ

大和田とかは話聞いてやれば兄貴の話とか克服できそうだが十神とセレスが圧倒的に厳しいな 

>>13
結構好きなキャラなのにありがちな間違いをしてしまった・・
>>14
十神との和解、というか協力関係は今でも悩んでます・・
セレスは、というか殆どそうですけど
全ての過去とかが明らかになっているわけでもないので都合のいい改変かなぁ・・
何で普通に友人、ではなく山田を従わせるのか、とか
禁書補正で、ほんとに悪い人はあんまいない、みたいな感じで
まぁかなりのこじつけですけど・・
そこらへんも注意事項に加えてください


歩いて20分は経っただろうか。
書類にある目的の場所に着いた。

上条「・・と、ここかぁ」
地図からして場所は間違いないし、校門にも[私立希望ヶ峰学園]と書かれている。
それにしても・・

上条「何かでかくて立派な校門、城みたいな校舎だな・・」
今まで平凡な学校に通っていた上条には、縁が無さそうな雰囲気の学園だった。
彼が思いつく立派な学校と言えば、あの常盤台中学くらいだ。

上条「不幸な上条さんですが・・・何か良さげな雰囲気だな~」

上条「贅沢過ぎて不幸な事になったり?流石にないか・・」
正直なところ、ここまで凄いと流石の上条でも浮き足立つが・・
やはり不幸な彼の事、不安を口走ってしまう。

精神面では普通な桑田、大和田、石丸、不二咲、山田、葉隠、朝日奈辺りは上条さんがどうにか出来そうだけど、情と行動が切り離れてる十神、セレス、舞園、霧切、さくらちゃん、腐川、戦刃辺りは無理だと思う。
上条さんは苗木よりも日向に近い印象がある(旧約1巻の上条さんは別だけど)から依存気質な奴らとは相性がいいんだろうけどね。


上条「・・っと、集合時間は後50分くらい、まだ誰もいないか」

上条「遅刻しなかったあたり少し不幸ではなかったか・・?」
珍しく遅刻ギリギリ、という事態にはならなかったため、
上条は少し安心した。集合時間はまだ先。

ならば大人しく待つのが常識だ。
まだ誰もいないのが少し残念だが・・
そこで上条は思った。考えてみれば今、自分は編入学だ。
入学式の時期ではないのだから、同じように入学する人がぞろぞろいる訳が無い。

教師もまだいないのは、自分が早すぎたせいか、と納得した。

しかしやはり、これだけ立派な学園での生活・・
上条はどこか楽しみにしていた。ちょっとした期待もあった。
これからの不幸も知らずに・・。

>>17
ここまで言われると何か自信なくなってきましたな・・
日向知らないし・・
アニメが基本だから深い所を理解してなかったのは自覚してますけどね
舞園さんとさくらちゃんてそんな扱いつらいキャラだったかな・・
十神と霧切、腐川はホント苦労しそうだけど
戦刃さんはほとんどアニメで出番なかったし
ss見ると基本残念な姉としか書かれてないし

>>19
そんなに肩に力入れなくても良いと思うよSSだし
変な所有ったら俺らが指摘するからその都度直せばいいんだよ

>>20
その都度直すってのが
単純に誤字とか、一人称が間違ってるとかならいいんですけどね・・
実際朝日奈さんは最初間違えました
こんなにいい人じゃないよ、って言われたらちょっとヤバいかも・・
とりあえずもう少し投下しておきます
学園の外がどうなってるか、学園都市は・・というのも
あまりつっこまないで頂けるとありがたいですね
都合よく改変すると思いますけど・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

同時刻
窓も扉も無いビル

ここは学園都市の中枢とも言われる、窓も扉もないビル。
様々な憶測があるが、このビルの中身と意味を知るのはごく一部である。
そのごく一部に該当する人物、土御門元春が声を発した。

土御門「急にカミやんを編入学とは、どういうつもりだ?」
金髪グラサン、アロハの彼は上条とはクラスメイト。
戦場では戦友となる人物だ。
天才陰陽師の魔術師であるが、超能力者でもある彼は
この場所によく来る。話し相手は1人しかいない。

アレイスター「フゥー・・・少々異常と思われる学園の調査のためにね」
そう答えたのは、赤い液体に満たされた生命維持装置に逆さで浮いている、アレイスター=クロウリー。
学園都市の統括理事長だが、その姿は男にも女にも、
大人にも子供にも見えるが、唯1つ言えるのはそのあり方が異常という事だけだ。


土御門「調査だと?白々しい。上条当麻をぶつけるなら、
調査ではすまない出来事だろう!いや、問題はそこではない」
アレイスターが上条をわざわざ、調査程度で使わない事は土御門も先刻承知だ。
どう考えても調査用の機材も渡してないし、そもそも上条に調査は似合わない。
問題は・・

土御門「カミやんの右手は能力が関わらない世界では何も役に立たない!
しかも素人に・・異常な所とやらに行かせたのか!?」
行かせてしまってから言っても遅いが、問題は今回魔術が関係ない所に行かせたという事だ。
今までを知る土御門からすれば、どう考えてもそれこそ異常だ。

今回土御門が心配しているのは、上条の身の安全だ。
普段から危ない友人だが、魔術、超能力に上条は絶対の力を持つ。
だから多少安心できたが、今回は別だ。

言うなれば砂漠に漁師を連れて行くようなもの。
どう考えても異能の力が無い所は、上条には危険で場違いなのだ。


アレイスター「フゥー・・・あのイマジンブレイカーも、
それだけで今まで生き残ってきたわけではあるまい?」
そんな土御門の不安を一蹴するが・・

土御門「それは俺達のようなプロがいたからで・・」
土御門も黙ってはおらず、反論する。
しかし・・

アレイスター「仮に君が行けば・・能力、または魔術の事がばれる可能性もあるぞ・・?」

土御門「・・・」
今度は土御門が行くとどうなるかの、危険性を提示してきた。
それは言外に、君の力は不要、と言われているのだ。
超能力や魔術がばれるのはまずい、しかし上条はその心配が最も低い、
特に周りに異能の力が無ければばれようがないからだ。
更にアレイスターは続ける。

アレイスター「彼には不思議と人が集まる、
それにこれから彼の同級生となる人物達は・・」


土御門「なんだ・・?」
上条の同級生になる者達・・
それが異常な場所ならば、上条の味方になるのか敵になるのか・・。
土御門の不安はそこだ。上条は人を信用し過ぎる。
敵か味方かも、騙されれば上条では判別できないだろう。
どんな人物達なのか・・?

アレイスター「学園都市で言えば、無能力者の位置にも関わらず、
特筆した才能を持つ者ばかり・・」

アレイスター「非常に興味深い」
アレイスターの答えは殆ど意図が分からない。
特筆した才能を持つ者、とは・・?土御門の疑問は解決しない。
アレイスターは不思議な笑みをうかべたままだ。

土御門「くっ・・(カミやん、無事でいてくれよ・・)」
今は学園都市にいない友人の無事を、
土御門は祈る事しかできない。


土御門「因みにどうやって編入学させたんだ?希望ヶ峰学園・・
定員は15人、カミやんが加われば16人だぞ?」
土御門は今回の件についての数少ない資料を見て、
別の疑問を投げかける。

アレイスター「フゥー・・・当然ながら1人、苗木誠という人物と入れ替えさせてもらった」
学園都市統括理事長はあっさり答えた。
具体的な方法を言わないのが、若干不気味である。
しかし、土御門にはその方法はさほど重要ではない。

土御門「苗木誠?そいつはどんな才能を?」
異能の力の世界に浸かる土御門にとって、
異能の力以外の才能とは何なのか、少し想像しづらいのである。

アレイスター「フゥー・・・彼は超高校級の幸運らしい」

土御門「超高校級の幸運、だと?(ねーちんと関係があるのか?)」


幸運で土御門が思いつくのは、ロンドンでも実力が十指に入る、
必要悪の教会=ネセサリウス所属の聖人、神裂火織だ。
まさか一般人の中に聖人候補が?と、彼は一瞬勘ぐったが。

その可能性を彼はすぐに否定した。
もしそうなら、イギリス清教の最大主教が黙っていないはずだ。

アレイスター「確かに彼は幸運だよ、希望ヶ峰学園に行かなくて済むのだからね・・」ニヤリ

土御門「・・・」
意味深な一言と不敵な笑みに土御門は沈黙するしかなかった。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

某所
???「はぁ、希望ヶ峰学園に行けると思ったのに・・」

苗木誠「急に取り下げられるって、どういう事だ・・?」
とある場所では、幸運な人物が今回の事を嘆いていた。
だが彼には知る由もなかった。その学園に行かない事こそ幸運なのだということを。

とりあえず今回はここまでで
先が不安な見切り発車ですがよろしくです
書きためはしてあるのでまた、投下できると思います
お休みなさい

しかし世界的な世紀末化を考えると入学しないのは良いことなのか?

>>28

あの、定員15名だと残姉ちゃんあたりの存在が消えそうなんですがあの

>>35
あれ、最初の設定上は
集められた高校生は15人じゃありませんでしたっけ?
実は16人いたってのは後から分かったことだと思ったのですが・・
違いましたっけ?

てかアニメしか見てないとはいえアニメは見てるんだよね

苗木君の不幸がフルスロットルなんですけど

学級裁判はどうするの?
霧切とかが犯人を見つけて上条さんが説教するのか?

芥川雅哉(男子二番)と奈良橋智子(女子十一番)という、擦れた男子と優等生の女子という世にも珍しい組み合わせのペアと別れた後、蓮井未久(女子十三番)は同じ班のメンバーである芳野利央(男子十九番)と阪本遼子(女子八番)と共に、神社の境内へと続く階段を上がっていた。

「でもさー、意外な組み合わせだよね、芥川と奈良橋さんってさ」

未久の隣を歩く遼子が呟いた。

「確かにね、まあ同じ班なんだから一緒にいて当然なのかもしれないけど。
 でも、意外な組み合わせ…の割に、良い雰囲気じゃなかった?」

「うん、なんかそれも意外だったなぁ…
 あたしの中の芥川って評価最悪だったんだけど、なんか奈良橋さんに対しては
 ちゃんと大事にして気を遣ってる感じがして、ちょっとイメージ変わったかも。
 ほら、芥川ってすぐに女子に手ぇ出すじゃん?
 …あ、未久も声掛けられたことあったっけ?」

遼子のつり上がり気味の大きな目に見上げられ、未久は苦笑した。

雅哉と言えば、帝東学院においては割と有名な人だ。
雅哉の兄は、3年前には中等部で生徒会長を務め(未久は中等部からの入学なので直接は知らないが、1年の時から同じクラスの平野南海(女子十四番)が教えてくれた)、現在帝東学院高等部でも生徒会長を務めている優等生だ。
一方弟である雅哉は、授業中は寝ていることが多く(体育には殆ど出席していないらしい)、成績はそのサボり具合に伴ってすこぶる悪い。
更に、手当たり次第に女子に声を掛け、引っ掛かった女子と付き合ってはやることだけやってすぐに別れるという女癖の悪さで悪評が高い。
兄弟の差が激しいことで有名だが、そのことを雅哉が気にするような素振りはほぼ見られず、教師たちもお手上げ状態で、親にも見放されている。

そんな雅哉に、未久は1年生の頃に声を掛けられた。
「未久ちゃんって可愛いよね、良かったら今度遊ばない?」という、オリジナリティーの欠片もない声掛けだった。
生憎、未久はクラスメイトとはいえそれ程話したことのない人と遊びに行く程社交的ではないので、雅哉の思惑などわからないまま断ったのだが。

「そういえば未久って結構モテるのにさ、彼氏とかいたことなかったよね」

「え、別にモテてないよー」

「はァ!? モテてたじゃん、告白とか結構されてたしさぁ。
 全部断ってたってことは…何、未久って理想高いの?」

遼子に追及され、未久は再び苦笑いを浮かべた。
そんな場合ではないのにどうしてそんなことばかり訊いてくるのか――しかし、プログラムという非日常的状況だからこそ、あえて日常的な話をしたいのかもしれない。

遼子の指摘通り、未久はこれまで何度か告白というものをされてきたのだが、その全てを断ってきた。
確かに“彼氏”という存在に憧れることもあったし、恋人がいるクラスメイトが中睦まじくしている姿を見れば羨ましくもあった。
しかし、これまで誰かに対して特別な感情を抱いたことはなかったし(好きだな、と思う異性はいたけれど、それは同性の友達のことを好きだと思う感情と酷似していたので、恋愛感情ではなかったと思う)、告白されても驚きと照れくささ以外の感情を抱くことは一度もなかった。
恋愛以上の感覚が持てない以上、告白されたからといって付き合うのは相手に申し訳なく、自分のためにもならないと思い、全て断ってきたのだ。
きっといつか、恋に落ちることができるような相手に巡り合えるはず、そう信じて。
まさか、弱冠14歳にして人生終焉の危機を迎えるとは思わなかったけれど。

未久は前を歩く利央の背中を見上げた。
これまであまり関わりを持ってこなかったけれど、無愛想だが話し相手に常に気を遣っていて、言動がいつも落ち着いている、とても頼りになる委員長。
普段一緒にいるところを見たことがなかったが、あの超俺様気質の城ヶ崎麗(男子十番)が認めている存在。
現実を見てくれと責めたのにいざ放送でクラスメイトの名前が呼ばれると泣いてしまった未久と遼子のことを責めず、理解をしてくれた、優しい人。
これまで好きだと思った異性たちとは違う、心臓がむず痒くなるような、息が詰まるような――見ていると、そんな不思議な心地になる。

「…未久、未久?
 ぼーっとしてると転ぶよ?」

「え、あ、ごめん…!!」

未久は慌てて視線を利央から逸らし、訝しむ遼子に笑みを向けた。
遼子は眉間に皺を寄せながら、何事かという様子で未久と利央を交互に見ていた。

危機的状況に陥った男女は感じている緊張を恋愛感情だと錯覚してしまう、という話を聞いたことがあるが、利央を見ていて高鳴る心臓の鼓動は、それと同じ現象なのかもしれない。
“恋人”への憧れが、無意識のうちに間近にいる唯一の異性に恋のフィルターを掛けてしまっているだけなのかもしれない。
それでも、生まれて初めて、恋なのかもしれないと感じている。
こんな所で死にたくはないし死ぬつもりもないけれど、初めて抱いているこの感情を、大事に育てたいと思う。
勘違いかもしれないし、勘違いではないとしても、実るかどうかはわからないけれど(実るまで生きていられるかすらもわからないのだし)。

拳銃コルト・パイソンを取り出し(これは小石川葉瑠(女子五番)の最期を看取った時に受け取った物で、元は荻野千世(女子三番)に支給されていた)、木製のグリップをしっかりと握った。
誰かいるかもしれないのなら、使用することもあるかもしれない。
隣では遼子が漆黒の自動拳銃ブローニング・ハイパワーを握り締めていた(元々未久に支給されていたのだが、コルト・パイソンの方が見た目が大きいので、手が小さい遼子にブローニングを預けた)。

「行こう」

利央の合図をきっかけにし、利央を先頭にして境内を一気に駆け抜けた。
誰かに狙われていたら、と、拝殿までの数十メートルがとてつもない長い距離に思えたが、幸い誰にも襲われることなく辿り着くことができた。

「…誰もいなかったら何の収穫もないね、神社じゃ食糧も武器もないじゃん。
 骨折り損のくたびれ儲けってやつ?」

「でも、こういう単独で建ってる建物には人が集まりそうじゃない?
 事実、下には芥川くんと奈良橋さんがいたわけだし」

そう、そもそも未久たちが神社を訪れたのは、決して肝試しのためではない。
地図に掲載されているランドマークはさほど多くはないので誰かが訪れる可能性は高く、情報を得ることができたり武器になる物があるのではないかという予想をし、非常事態であれば神頼みをしたくなる者がいてもおかしくなく、それはやる気になって動き回っている者ではない可能性が高いのではないかかという理由で訪れた。
雅哉と智子が近くにいたことは、この推測の裏付けになっているかもしれない(2人は偶然立ち寄っただけだったのだが)。
もしもやる気出ない誰かがいるのなら、葉瑠の最期の願いに従い、持っている情報を渡してあげたい、たとえ自己満足だとしても。

袋ではなく、それは、人だった。
如月梨杏(女子四番)らを発見した時の光景が脳裏に蘇り、うっと呻いた。

「じょ…女子……じゃない……?」

未久の服の裾を掴み、遼子が震えた声を絞り出した。
離れた場所にある木の枝に括り付けられた電球に照らされぼんやりと全体が確認でき、よく見てみると、スカートから伸びる足が見えた。
千世、佐伯華那(女子七番)、広瀬邑子(女子十五番)、山本真子(女子十九番)――既に放送で名前を呼ばれ、遺体を見ていない女子4人の生前の元気な姿が浮かび、気付けば未久の足は倒れた何者かへと動き出していた。
後ろから遼子の足音も聞こえた。

未久は辺りを見渡してから、手で覆いながら懐中電灯のスイッチを入れた。
顔を見るのが怖くて、足元からゆっくりと照らしていく。
小さな靴――クラスの女子で一番大柄な千世ではないようだ。
脹脛、裏膝まで照らし、未久は唇を噛みしめて目を閉じた。
可能性のある3人の中で黒いニーハイソックスを好んで履いていたのは、たった一人しかいない。

「…真子……」

未久と同じ結論に達したらしい遼子が、ぽつりと呟いた。
そう、2人の足元で斃れ伏しているのは、未久たちといつも行動を共にしていて、遼子とは1cmの身長差でいつも背の順を争っていた内の一人――山本真子だった。
学校指定のチェック柄のスカート、アイボリーのやや大きいサイズのカーディガン、そして――未久は息を呑み、灯りを消した。
一瞬照らされた真子の頭部は、生前の形を成していなかった。
サイドポニーが解けているとか血で汚れているとか、そういうレベルではなく、丸いはずの頭に、凹凸があるように見えたのだ。
何者かが、いやクラスメイトの誰かが、真子の頭が原形を留めなくなるまで殴打し続け、殺害したのだ。

酷い…誰がこんな…こんなこと、クラスの人にできるの…
真子…可哀想に……怖かったよね……

目を閉じ、真子に黙祷を捧げた。
嗚咽を漏らす遼子の肩を抱いたが、未久の頬も涙で濡れた。

「阪本、蓮井…」

利央が小さな声で呼んだので、未久は涙を拭い、遼子の手を引いて利央のもとへ向かった。
拝殿の角をまた一つ曲がった所で、利央は立ち尽くしていた。
屋根の裏側から照らしている灯りの下に広がる惨状に、未久は眩暈を憶えた。

壁から一番近い場所で仰向けになり上半身をどす黒く染めているのは、男子主流派グループの一員で爽やかな印象のある雨宮悠希(男子三番)。
その近くでうつ伏せになり背中を悠希と同じ色で染め、首(未久たちにも付けられている忌まわしい首輪のすぐ上だ)にぱっくりと穴を開けているのは、その髪型から察するに悠希の友人で学年一の運動能力を持っていた川原龍輝(男子五番)。
そして2人から少し離れた場所で変色した地面の中心に倒れ後頭部の一部を変色させているのは、色素の薄い猫っ毛を二つくくりにしている髪型から、クラスの大人しい女子のグループに属する佐伯華那。
真子を含め、全員が同じ放送で名前を呼ばれた、知っている情報をまとめることで消去法で導くことができた、一つの班の構成メンバーだ。

とにかく、酷い光景だった。
特に、仰向けになっている悠希の顔は、一部の皮膚が抉れ捲れており、生前の整った顔立ちは見る影もなかった。
これは人がやったものとは考えにくいので、恐らく烏が啄ばんだのだろう――クラスメイトに命を奪われた上に、その身体が他の動物によって更に傷付けられていくだなんて、もう、たまらなかった。

「そりゃ、帝東ソフト部が誇る四番バッターだからね…わあッ!!」

再びバットが襲ったが、再び空を切った。
奇声を発してバットを振り回しているので錯乱しているのは確かだが、身体に染みついているのか、振り回す前の構えはソフトボール部一の強打者のそれだった。
利央は遼子を突き離しながら振り向き、バットを振ったばかりでがら空きになった南海の上半身に体当たりを食らわせた。
南海が悲鳴を上げて倒れた。

「蓮井、立てるか?」

利央が未久の傍に膝を付いた。
大丈夫、と言いたいところだったが、左腕の痛みは増していく一方で、言葉を発しようにも息が漏れるばかりだ。
もしかしたら、骨に罅がいったか、下手をすれば折れているかもしれない。

「南海、もうやめてよッ!!
 落ち着いてよ、ちょっとはこっちの話聞けっての、馬鹿ッ!!」

「うるさいッ!!!
 そうやって油断させようったって、そうはいくかぁッ!!!」

「だから違うっつってんじゃん、わからずや…うわぁッ!!!
 危ないな、死んだらどうすんのさ、馬鹿ッ!!!」

遼子と南海は互いに声を張り上げていた。
南海がバットを振るが、遼子はその場にしゃがんでかわし、南海の足に掴み掛って南海を転倒させると、転がるように利央と未久の傍に駆け寄ってきた。

「もう、南海ってば何言ってもわかってくんない、言葉が届かないッ!!」

遼子は怒りを顕わに叫んでいたが、その目には涙が滲んでいた。
遼子と南海は、南海の家の近所に住んでいた横山圭(男子十八番)も含めて3人で下校することも多かった親しい仲だったので、言葉が通じないばかりか何度も自分を襲ってくるということがショックなのだろう。

「…蓮井、阪本」利央は低く囁いた。

「目を、閉じていてくれないか」

「え?」と、未久と遼子は同時に声を出した。

呆れて溜息を洩らす小石川葉瑠(女子五番)に、荻野千世(女子三番)はへらっと笑みを浮かべてビスケットを1枚手渡した。

千世たちがいるのは島の北側のB=06エリア内に位置する港にある駐車場の端に停車している軽トラックの陰だ。
少し離れた場所には商店があり、千世の手にあるビスケットの袋はその商店で頂いた物のうちの1つだ。
味気ないパンだけではとても成長期の胃袋を満足させられず、商店でお菓子類や缶詰などを頂戴してきた。
商店の中に留まっていても良かったのかもしれないが、建物の中では万一誰かに襲われた時に逃げ道が少ないから危険かもしれないと葉瑠が主張したので、誰かが来るかもしれない商店からは少し離れた港へと向かい、今の場所に身を顰めることにしたのだ。

「相葉くんも、どーぞ」

「ん…ああ、ありがとねー荻野ちゃん」

優人が小さく笑ってビスケットを受け取ってくれたので、千世も笑みを返した。
班のメンバーだった宍貝雄大(男子八番)が突如殺害された上に、襲ってきた相手の内の1人が優人の親友である望月卓也(男子十七番)だったことにショックを受けてからというもの、優人はずっと元気がなく沈みきっていた。
普段関わりなどなかったけれど優人がいつも場を盛り上げるタイプの人だということは千世にもわかっていたので、その面影がないことを心配していた(プログラムという状況下でいつも通り元気一杯に振舞われればそれはそれで問題だと思うが)。
しかし、数時間前に親友の日比野迅(男子十五番)に会って話をしてからは少しずつ元気を取り戻していったようで、今のように時折笑みを浮かべるようになった。
そのことに、千世は安堵していた。

第1班のリーダーは千世だ。
普段はのんびりしていて人を引っ張っていくよりも誰かについていくタイプの千世にとって、腕に付けられた王冠の印はプレッシャーでしかない。
普段の学校生活でも、千世はいつも行動を共にしていた鷹城雪美(女子九番)にくっついて行動していた。
雪美は例えば城ヶ崎麗(男子十番)のような強烈なリーダーシップがあるわけではないけれども、さり気なく千世や佐伯華那(女子七番)や室町古都美(女子十八番)を引っ張ってくれていた。
雪美の柔らかなリーダーシップに古都美はぴったりとくっついていたし、千世も自分で物事を決めるのは苦手なので助けてもらっていたし、頭が良いのに千世以上にぼーっとしている印象の華那もきっとそうだろう。

しかし、今ここに雪美はいない。
千世がどれだけ重荷に思おうが、リーダーであることは変わらない。

急に葉瑠がテンションを上げて千世に頭突きをしそうな勢いで顔をずいっと近付けた。
そういえば、葉瑠は人の色恋沙汰で盛り上がるのが好きなように見えた。
誰と誰が付き合っているとか、誰が誰を好きだとか――同じグループの子たちや、同じようにそういう話が好きらしい水田早稀(女子十七番)と話しているのを聞いたことが何度かあるし、華那は幼馴染だという川原龍輝(男子五番)との関係を疑われてよく話を聞かれていた。

「ちゃうちゃうー好きな人とかおらんもん。
 …雪美ちゃんと古都美ちゃん、元気かなぁって思っとっただけやってー」

葉瑠は顔を離し、俯いた。
きっと、葉瑠も状況のわからない友人たちを思っているのだろう。
特に、教室を出る時に阪本遼子(女子七番)は不機嫌さを顕にして興奮状態だったし、平野南海(女子十四番)は自分で立ち上がることもできない程に憔悴しきっているように見えたので、一層心配しているだろう。

悲しげに聞こえる柔らかな中性的な声――それは間違いなく、優人の親友である春川英隆(男子十四番)のものだった。
つまり、千世たちを襲ったのは、宍貝雄大の命を奪った第10班だ。
背中を向けている千世には確認できないが、きっと側にはチームメイトである望月卓也(男子十七番)・財前永佳(女子六番)・広瀬邑子(女子十五番)もいるだろう。

いや…今大事なのは、うちを撃ったんが誰かってことやない…
うちの、怪我の、具合や…

千世は左手で自分の腹部にそっと触れた。
一瞬で手が真っ赤に染まるほどに出血しており、それは全く止まる気配がない。
目を開けていることが苦痛だし、体の震えが止まらない。
5月末の夕方とはこれ程までに寒いものだっただろうか――いや、先程までこんな寒さを感じていただろうか。

「あ……あかん……」

声を出すだけでも苦労する。
身じろぎすると、葉瑠が千世の体重を支えきれず、千世はその場にどさっとうつ伏せで倒れた。
なんとか立ち上がろうとしたが、体が思うように動かない。
医学的知識なんて全くないが、今すぐに治療しなければ危険な傷だということくらいはいくらなんでもわかる。
しかし、今、救急車も救急病院もここにはないし、医者もいない。

エリア。
木々が覆い茂っているのだがこの島の中では比較的標高が高く、夜が明ければ周りを見渡すこともできるであろうこの場所に1つのチームがいた。

時刻は午前4時15分――自分たちの2つ後のチームが出発した頃だ。
今教室に残されているメンバーは最後の1チームで、彼らが出発するのは4時24分、それから20分後にあの小中学校は禁止エリアに指定され、それ以降に侵入すれば首輪に内蔵されているという爆弾が爆発し、ジ・エンドだ。

少女――小石川葉瑠(女子五番)は頭を抱えた。
プログラムだなんてありえない。
全国に何万とあるであろう中学3年生のクラスから年間50クラスが選ばれる、非常に当たる可能性の低い話のはずだったのに。
まさかその50クラスの中に、天下の帝東学院中等部3年A組が入ってしまうなんて。

クラスメイトとの殺し合いだなんて、まっぴらごめんだ。
しかも、あんなにも個性豊かで楽しいクラスが崩壊するなんて、考えたくもない。
どうにかして回避したい。
過去には、プログラムから脱出したという例も数例ニュースで流されているので不可能ではないはずなのだが、何十年と続くプログラムの中でほんの数例しか脱出したケースがないということは、それだけ難易度が高く不可能に近いということも意味している。
本部を襲う?――いやいや、たかが素人の中学3年生が戦闘に関する訓練を受けた軍人たちのいる場所に攻め入るなんて愚行でしかない。
ここは島らしいから海から逃げる?――これも無理。
葉瑠は上まできっちりと締められているジャージのファスナーを少し下ろし(葉瑠はいつも学校指定のえんじ色のジャージを上着代わりに着用している。アイボリーのどこか高級感のあるブレザーがどうも自分の地味な顔には合わなくて嫌いなのだ。ダサかろうが何だろうが、ジャージの方が似合うし安心する)、自分の首元に手を遣った。
無機質な首輪の感触がそこにはあった。
そう、これがある限り、逃げることなんてできるはずがない。

「あぁー…駄目だぁ…
 …誰か、この首輪外す方法ある人ー」

葉瑠は顔を上げ、チームメイトたちを見遣った。

「え、そんなんできるの!?
 こんな物騒なモン、外せるものなら外したいよな、葉瑠ッ!」

最初に反応を見せたのは相葉優人(男子一番)。
青縁の眼鏡を着用している優人は眼鏡の色同様普段はふざけたヤツなのだが、今は顔面は青褪めており、情けないことに葉瑠の袖をずっと握っている。
子どもか、アンタは。

低く静かな声が優人を諌めた。
野球部の規則のために丸刈りにしてある頭、クラスでは林崎洋海(男子二十番)・池ノ坊奨(男子四番)に次ぐ身長の高さなのだが筋肉質で横幅があるために洋海や奨よりも大柄に見える身体――宍貝雄大(男子八番)だ。
人間観察が大好きな葉瑠なのだが、雄大についての情報はあまりない。
女子と話をするのが苦手なのだろう、ほとんど会話をしたことがないのだ。
しかし、いつも原裕一郎(男子十三番)と横山圭(男子十八番)の衝突を落ち着いて止めている兄貴的存在で、今もプログラムに放り込まれたとは思えない程に落ち着いているように見える。
趣味がイケメンを追いかけることである葉瑠にとってのA組ナンバー1のイケメンである裕一郎(んもう、あの小さいくせにストイックで、仏頂面なのに可愛い物好きで怖がりだなんて、ギャップがホントにたまんないわっ)が信頼を置く人物なので、良い人であることは間違いない。

ああ、裕一郎くん今頃どうしてるんだろう。
南海も古都美も羨ましいったらないわっ。裕一郎くん、ああ見えて怖がりさんだから震えてないかしら…ないか、それは。そういうのを周りに見せないのが、裕一郎くんだもんね。

いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
考えて現実逃避してしまいたいのは山々なのだけれど、しっかりと現実を見据えなければいけない。
既に銃声は数回聞こえている。
クラスメイトが、クラスメイトに向けて発砲しているのだ。

「うーん…みんなと戦ったりせんと出られるなら…それが1番ええ方法よねぇ…
 でも引っ張ったら爆発する言うてたし…どうすればええんやろ…」

こちらはこちらで、緊張感はないのかと言いたくなる程のおっとりした口調。
天然のウェーブがかかった肩までの黒髪、太めの眉と穏やかな垂れ下がった目、クラスの女子の中では最も大きな体つき――誰が見ても初見でのんびりやさんだということがわかるであろう荻野千世(女子三番)はふうっと溜息を吐いた。
千世ともそれ程深い付き合いがあるわけではないので千世について知っていることはあまりないが、確か小学生の頃は兵庫県に住んでおり、父親の転勤をきっかけにして帝東学院を受験し入学したらしい。
一般入試で合格しただけのことはあり、見かけによらず頭が良い(ま、あたし程じゃないけどね。こう見えても頭の良い人が割と多いA組内で常に10位以内をキープしてますから)。
ただ、見かけ通り運動能力は非常に低く、特に反射神経が鈍いと思う。

優人、雄大、千世、葉瑠――この4人が第1班のメンバーだ。
普段一緒につるんでいるグループが全員ばらばらで、何故この4人が同じチームになったのか理由は定かではないが、比較的バランスの取れたチームだと思う。

なければ困るのだが、千世は動くのものんびりで足も遅い(この前の体育で50m走のタイムを計ったのだが、室町古都美(女子十八番)に次いで遅かった上に、いつまでも肩で息をしていた)。
まあ、こればかりはこちらで決められないので、千世を皆で護るしかない。

武器も既に確認済みだ。
最も頼りになりそうな武器を引いていたのはリーダーの千世で、黒く光る小ぶりなコルト・パイソンという名の回転式拳銃だった。
逆に言えば武器と呼べる物はこれだけだったのだが。
雄大の鞄には、美術の時間にお世話になったことがある彫刻刀が、葉瑠の鞄には生活科や理科でお世話になったことがある双眼鏡が入っていた。
そして、優人に支給された物は、不可解なものだった。
優人が鞄に手を突っ込んでは拳銃を取り出すという動作を6回も繰り返した時には何事かと思ったが、付属の説明書を読んだところ6丁の銃の中に本物は一つもなく、全てが別々の機能を持った偽銃6個セットだった。
煙幕を出せるという有用そうな物もあれば、見た目はそっくりだけれどもただのレプリカであったり水鉄砲であったりと役立ちそうにない物もある。
今は千世のコルト・パイソンだけが4人の中央に置かれ、他の物は役立ちそうにないのでデイパックに戻してある。

「なー、葉瑠ー。
 いや、葉瑠だけじゃなくてユータも荻野ちゃんも…これから…どうする?」

優人は偽銃セットの中の1つ、ただのレプリカの銃をデイパックから取り出し、手で弄びながら訊いてきた。
答えが欲しいというよりも、沈黙が辛いのでとりあえず話題を提供したようだ。

田中顕昌(男子十一番)の名前が出た瞬間、優人の葉瑠の服を掴む手がびくっと震え、「アッキー…」と小さく名を呼び、そのまま静かに泣いていた。
優人は顕昌と同じグループでいつも一緒に行動していた。
あまり目立たない地味なタイプの顕昌は、騒ぐ優人や川原龍輝(男子五番)や内藤恒祐(男子十二番)らを温かく見守っているイメージが強い。
誰もが言いたいことを言えない状況で涙ながらに反抗したのはとても意外だったのだが、それ程に顕昌はクラスメイトと傷付け合うことが我慢ならなかったのだろう。

顕昌の遺志を継ぐ意味でも、プログラムには参加したくない。
千世の言う通り、誰かがこのプログラムから脱出する方法を知っているのなら、全力でそれをサポートして、皆で逃げ出したい。

「頭の良い人…ねぇ。
 …瑠衣斗くんとか利央くんとか麗くんとか…女子なら智子とか梨杏?」

「…正直、何考えてるかわからない面子だな」

雄大が溜息混じりに呟いた。
確かに、城ヶ崎麗(男子十番)は出発の際にプログラムに乗らないことを宣言していたので信用に足るとは思うのだが(最初に聞こえた銃声に、麗はほぼ確実に関わっている。無事でいてくれればいいのだが。麗はもちろん、葉瑠の中では裕一郎に次ぐイケメンの健太もだ)、残りの4人については交友関係が広い葉瑠ですら普段交流が殆どないので何を考えているかわからない。
学年首席の真壁瑠衣斗(男子十六番)は麗の仲間なので麗の意志に従っている可能性もありまだ期待はできるが、学級委員の芳野利央(男子十九番)と奈良橋智子(女子十一番)はわからないし、如月梨杏(女子四番)に至って教室内で二度も冷静に質問をしている様子を見るとプログラムに乗っていても不思議ではない。

>>51
誰ですか?
乗っ取りですか?

プリキュら!!

>>53
乗っ取り&荒らしですか?
自分のss乗っ取っても大した意味ないですよ
穴だらけで、ここどうすんの?って疑問だらけのssですからね
ss書きたいなら自分でスレ立ててください

この4人に一体何の共通点があるのか、と。
それは、4人中3番目に名前を呼ばれた如月梨杏(女子四番)も同意見だ。
どうして自分がこんな連中と行動を共にしなければならないのか、理解に苦しむ。

そもそも梨杏は3年A組に対して思い入れもなければ親しくする者もいない。
いや、親しくする価値のある人間なんて、このクラスにはほとんどいないのだ。
誰も彼も馬鹿ばかり。
せいぜい認めてやっても良いのは、成績で梨杏の上を行く学年首席の真壁瑠衣斗(男子十六番)・委員長の芳野利央(男子十九番)・副委員長の奈良橋智子(女子十一番)くらいのものだ。
それ以外の人間とは、同じ空間にいるだけでも嫌になる。
梨杏は、馬鹿で愚かな人間が嫌いなのだ。

梨杏は黒いストレートヘアーを指先で弄びながら溜息を吐いた。

「…あのさ如月さん。
 ムカつくからさ、溜息とかやめてくれない?」

「私が何をしようが勝手でしょ。
 …じゃあ言わせてもらうけど、ムカつくので喋らないでくれる?」

「…マジムカつく、一回死んで」

梨杏に文句を言ってきた星崎かれん(女子十六番)は大袈裟な舌打ちをし、不機嫌な表情を浮かべて梨杏から視線を逸らした。

そう、まずこの女。
大東亜人には似合わない金髪と、中学生らしからぬケバいメイクとチャラチャラとしたアクセサリー類、男を誘っているとしか思えない短すぎるスカート――どんなに頑張って見ようとしても馬鹿以外の何者にも見えない(事実勉強もできない馬鹿だ、この女は)、梨杏が最も忌み嫌う下品なギャルだ。
伝統ある帝東学院において頭の湧いたような、街中で自分は頭が軽い馬鹿だという看板を掲げながら闊歩しているギャルはそれ程数が多くないのだけれど(ギャルがニュース番組などのインタビューを受けているのをたまに見るが、発言も喋り方も態度も全てが馬鹿みたいだ、あんなのと同じ生き物だと思うだけで吐き気がする)、このクラスにはそれが4人も存在している。
派手さはかれんを凌ぐ、金髪を巻いたツインテールに赤いピアス、赤いブーツに紫のセーターと、色合いからして馬鹿みたいで、耳に入ってくる声は腹立たしい程騒がしく甲高い湯浅季莉(女子二十番)。
髪色はかれんや季莉よりは落ち着いているがそれでも明るい赤みがかった茶色に染め、鼓膜を破りかねないような大声で季莉と騒いでいる、昔は喧嘩ばかりしていたという荒っぽい女、水田早稀(女子十七番)。
そして騒がしくないだけまだマシだが、両耳には頭がイカれているのかと思えるほどに多くのピアスをしており、昔は万引きの常習犯だったという噂もある財前永佳(女子六番)。
かれんは彼女らと行動を共にしているだけでなく、クラス内にいる彼氏と仲良くやっている3人とは異なり、援助交際という淫行に手を染めていると聞いたことがある。
そんな女が仲間だなんて、ありえない。

その隣で膝を抱えているのは内藤恒祐(男子十二番)。
A組男子の中で最も派手で馬鹿丸出しの出で立ちをしている恒祐も、梨杏の嫌う愚かな人間の1人だ。
いつも教室の真ん中でくだらない話をして大騒ぎしており、どこにいても恒祐の声は聞こえてくるのではないかと思えるほど煩い。
非常に軽い男であり気に入った女子に次々と声をかけていることは有名で、梨杏はその全てを知っているわけではないが、朝比奈紗羅(女子一番)や平野南海(女子十四番)といった、頭の軽そうな女子に軽く告白をしては振られているのは、彼女らが話をしていたのを小耳に挟んでいたので知っている。

の擁護?――馬鹿らしい。

ライド(担当教官)にプログラムに対する異議を申し立てて射殺された田中顕昌(男子十一番)――余計なことを言えばああなる可能性はこの国でなら十分あり得る話だというのに、その考えに至らなかった憐れで愚かな男。
あまり目立たない地味な印象の顕昌が、派手な恒祐と親しいのは意外だった。

「…ああなることなんて目に見えてたのに。
 それがわからずに行動した人を悼んで泣かれても迷惑なのよ」

「テメェ…ッ!!」

恒祐がばっと顔を上げ、泣き腫らした目で梨杏を睨んだかと思うと、腰を浮かせて手を伸ばし梨杏の胸倉を掴んで後ろの幹に叩きつけた。
梨杏は背中を打ち、「うっ」と呻いた。

「あんなこと言えばああなることくらい、アッキーは絶対わかってたんだよ!!
 それでも言っちまうくらいに、アッキーは優しいんだよッ!!
 それを…テメェは馬鹿にしたな…アッキーを馬鹿にしたな…如月…ッ!!」

「煩いわね、誰かに見つかったらどうするのよ」

梨杏は右横に置いていた自身に支給されたデイパックの中に入っていた銀色に光る銃身と黒いグリップが特徴のリボルバー式拳銃、S&W M686を掴むと、その銃口を恒祐の額に向けた。
恒祐の元々ぎょろっとしている瞳が一層見開かれる。

「こ…の…ッ!!!」

恒祐も梨杏のM686と同じ位の大きさだが形が大きく違う黒光りする自動拳銃、ジェリコ941Lをベルトから抜き、梨杏に向けてきた。
梨杏自身人に銃口を突き付けているというのに、恒祐の行動に息を呑んだ。

恒祐は起き上がりながら、自分を引っ張ったもう1人のチームメンバーである林崎洋海(男子二十番)を見上げた。
細身だがクラスで最も背の高い洋海は、手にしていた金属バットを振り下ろした。
恒祐が身を起こすために地面に付けていた右手のすぐ横にそれは振り下ろされ、小石に当たったらしくカァンという高音が響いた。
恒祐はぎこちなく首を動かして金属バットが振り下ろされた先を見、口許をわなわなと震わせていた。

洋海は梨杏とは同じ文芸部に所属する部活仲間だ。
とは言うものの、洋海は挨拶以外では言葉を発しないのではないかと思う程に無口で(このクラスには池ノ坊奨(男子四番)や榊原賢吾(男子七番)や瑠衣斗や利央といった口数の少ない者が多いが、その彼らですら饒舌だと思えてしまう程に洋海の無口さは群を抜いていた)、梨杏も挨拶以外には言葉を交わさない。
梨杏に言わせれば、何を考えているのかさっぱり理解できない、勉強も運動も人並以下のことしかできないウドの大木だ。
辺りを見回しているところをみると、騒いで誰かに見つかるのを防ぐために、梨杏と恒祐を引き剥がし、騒がしい恒祐を威圧して黙らせたのだろうか。
洋海自身がこの間一言も発していないので、真相は定かではないが。

「あーあ、馬鹿馬鹿しい」

かれんはわざとらしく溜息を吐き、人工的な睫毛に覆われた瞳で3人を見遣った。

「一応チームメイトなわけだしさ、仲間割れとかやめない?
 こんなところ誰かに狙われたら、あっという間に全滅じゃないの」

「星崎…でも俺やだぜ。
 星崎と林崎はともかく、如月とつるむとか絶対できねーよ。
 しかも、他のヤツらと戦うことになったとしたら、コイツ護らなきゃいけないとか…やだよ、こんな最悪なヤツのために命張るとか」

恒祐は失礼なことに梨杏を指差した。
そう、この共通点もなければ普段の接点もなければチームワークが生まれる兆しもないチームのリーダーは、他でもない梨杏だ。
馬鹿たちの命を、梨杏は背負っているのだ。
自分の左腕に王冠のマークを見つけた時、心底ほっとした。
当たり前だ、こんな馬鹿たちの中の誰かに自分の命を握られていたかもしれないだなんて、考えただけでぞっとする。

横山圭(男子十八番)は何度目になるかわからない溜息を吐いた。
既に半数近くのクラスメイトがこの教室を後にした。
銃声らしきものも二度聞こえている。
外では、既に殺し合いは始まっているのだ。

『俺は政府の連中の言うことなんか絶対聞いてやらねぇ』

最初に出発した城ヶ崎麗(男子十番)はそう言い殺し合いなどしないということを宣言していたが(あの自信に満ちた感じがあまりにもいつも通りなので、こんな状況だというのに圭は思わず笑ってしまった。ほんっと麗サマ面白過ぎ)、恐らく2番目に出て行ったチームと戦闘を行った。
2チーム目の構成は、ほぼ大人しいイメージのある人間ばかりだったので、銃声が聞こえた時には非常に驚いた。
麗のあの宣言は嘘だったのだろうか。
そう思いもしたが、麗は周りを陥れる嘘を吐くような小さな人間ではないはずだ――深い付き合いがあるわけではないが、圭は麗をそう評価しているので、麗の言葉に嘘はないと確信していた。
しかし、それでも戦闘に巻き込まれたとすれば2番目に出発したチームが要注意ということになるのだが、それもメンバーを考えるととても信じられない。

…あーやだやだ、ダチを疑うとか、ほんっとやだ。

圭は溜息を吐き、1つ前の空席をぼんやりと眺めた。
この席の主は、2つ前に名前を呼ばれて出て行った阪本遼子(女子八番)。
初等部1年生で初めて同じクラスになって以来中等部3年生になるまで、ずっと同じクラスに配属されてきた腐れ縁の女の子。
強気で生意気で愛想があまり良くないけれど、9年間一緒にいたので何でも話すことのできる友人。
何でも言い合えるからこそぶつかることも多かったが、それだけ本音でぶつかれる相手はそうはいないし、自然体になれる相手もなかなかいない。

このプログラムがチーム戦だということを告げられた時、遼子と同じチームになれればいいのに、と思ったのだが、遼子は先に名前を呼ばれてしまった。
遼子は名前を呼ばれてから教室を出て行くまで、一度も圭のことを見なかった。
ライド(担当教官)に突っかかり、芳野利央(男子十九番)や蓮井未久(女子十三番)に抑えられている姿に、ああ、自分のことで精一杯で周りに全く目が行っていないな、猪かよ、と心の中でつっこんだ。
しかし、遼子が周りが見えなくなるということは非常に珍しいことなので、怖くて怖くて仕方がなかったのだろうな、と思った。
沈着冷静な利央や落ち着きのある未久が遼

よく周りからは「付き合ってるのか?」と訊かれたけれど、恋愛感情を抱いたことはこれまで一度もない(俺の好みは遼子みたいなキツい女じゃなくて、優しい子だ。上野原咲良(女子二番)なんかストライクど真ん中だったけれど、お近づきになる前に木戸健太(男子六番)に持って行かれてしまった。ちくしょう、健太のヤロウ。中等部入学のくせに上野原をひょいっと掻っ攫って行きやがって。まあ今は2人があまりにも仲睦まじいし、健太が良いヤツなのもわかるから、諦めたけど)。
遼子は、真正面からぶつかることのできる、性別を超えた友人だ。
何となく、これから先も何だかんだで付き合いが続くのだろうと思っていた。
その矢先に、これだ。
腐れ縁はここまでとなった。

…敵になっちまっても、阪本には会っておきたいな。
『腐れ縁もここまでで清々する』って、冗談めかして言ってやりたいな。
阪本が何て言うか想像つくな、『は?そんなのこっちの台詞だし』…だろうな。
いつもみたいにちょっと言い合いして、でも最後にはちゃんと、『今まで色々ありがとう、楽しかった』って言っておきたいな。

「10分経ったなぁ、じゃあ次は9班やな!
 男子十三番・原裕一郎君!
 男子十八番・横山圭君!
 女子十四番・平野南海さん!
 女子十八番・室町古都美さん!
 新しい世界を探してきてな!」

圭は自分の名前を呼ばれ、顔を上げた。
圭から見て右斜め後方にいる裕一郎の方をばっと見遣ると、裕一郎も目を大きく見開いて圭のことを見ていた。

まさか、裕一郎と同じ班になるとは。
裕一郎も、遼子同様真正面からぶつかることのできる数少ない人物だ。

圭と裕一郎は互いに帝東学院初等部出身なのだが、互いのことを認識したのは中等部1年生で初めて同じクラスになった時だった。
その後部活動見学でも顔を合わせ、互いにサッカー部に入部を希望していたということもあり意気投合し、互いにレギュラーになり全国大会に出ることを誓った。
サッカーの花形と言えば、最前線にいるフォワード――圭も裕一郎も同じポジションを希望していた。
他にも同じポジションを狙っている者は多くいたのだが、誰よりも真面目に真剣にストイックに練習に打ち込む裕一郎の姿に、圭は刺激を受けた。
この先裕一郎とエースストライカーの座を争うことになる――そう直感し、自然と裕一郎のことをライバル視するようになった。
裕一郎も圭をライバル視するようになるのに時間はかからず、2人は足の速さからリフティングの回数から果ては朝練に来る時間の早さと居残り練習の時間の長さまで張り合うようになり、その延長上で部活の時間以外でも様々なことで張り合うようになり、それが喧嘩に発展することも多くなり、周りからは「一緒にいる割に2人はとても仲が悪い」と言われるようになった。
確かにいつも元気でお茶らけていて騒がしい圭と、真面目で無愛想で自分にも他人にも厳しい裕一郎とは性格も全く違うので合わないことが多く、それもぶつかる大きな理由なのだが、互いに心底嫌っているということはない、と圭は思っている。
裕一郎の真面目なところや厳しいところは彼の長所だと思っているし、自分にはないところに魅かれている。
遼子と同じく、しっかりと関わっているからこそぶつかり合うことができるのだ。

とにかく、そんな裕一郎と同じ班になったことは、喜ぶべきことなのかもしれない。
裕一郎から前方に視線を戻す途中、廊下側の窓際の席に座るもう1人の親しい友人、宍貝雄大(男子八番)と目が合った。
雄大は、所構わずぶつかる圭と裕一郎のストッパー役をいつも務めてくれている、2人にとっては兄貴のような男だ。
雄大は小さく笑みを浮かべていたのだが、それはとても悲しげに見えた。

…そっか。
雄大とは、敵同士になるのか…
実感が湧かないけど…

「雄大……今まで、ありがとうな!」

圭は精一杯の笑みを雄大に向け、礼を述べた。
それは顔の筋肉がひくひくと痙攣するのが自覚できる程に無理した笑顔だったが、「こっちこそ、楽しかったよ」と返した雄大の笑みも似たようなものだった。

よく周りからは「付き合ってるのか?」と訊かれたけれど、恋愛感情を抱いたことはこれまで一度もない(俺の好みは遼子みたいなキツい女じゃなくて、優しい子だ。上野原咲良(女子二番)なんかストライクど真ん中だったけれど、お近づきになる前に木戸健太(男子六番)に持って行かれてしまった。ちくしょう、健太のヤロウ。中等部入学のくせに上野原をひょいっと掻っ攫って行きやがって。まあ今は2人があまりにも仲睦まじいし、健太が良いヤツなのもわかるから、諦めたけど)。
遼子は、真正面からぶつかることのできる、性別を超えた友人だ。
何となく、これから先も何だかんだで付き合いが続くのだろうと思っていた。
その矢先に、これだ。
腐れ縁はここまでとなった。

…敵になっちまっても、阪本には会っておきたいな。
『腐れ縁もここまでで清々する』って、冗談めかして言ってやりたいな。
阪本が何て言うか想像つくな、『は?そんなのこっちの台詞だし』…だろうな。
いつもみたいにちょっと言い合いして、でも最後にはちゃんと、『今まで色々ありがとう、楽しかった』って言っておきたいな。

「10分経ったなぁ、じゃあ次は9班やな!
 男子十三番・原裕一郎君!
 男子十八番・横山圭君!
 女子十四番・平野南海さん!
 女子十八番・室町古都美さん!
 新しい世界を探してきてな!」

圭は自分の名前を呼ばれ、顔を上げた。
圭から見て右斜め後方にいる裕一郎の方をばっと見遣ると、裕一郎も目を大きく見開いて圭のことを見ていた。

まさか、裕一郎と同じ班になるとは。
裕一郎も、遼子同様真正面からぶつかることのできる数少ない人物だ。

圭と裕一郎は互いに帝東学院初等部出身なのだが、互いのことを認識したのは中等部1年生で初めて同じクラスになった時だった。
その後部活動見学でも顔を合わせ、互いにサッカー部に入部を希望していたということもあり意気投合し、互いにレギュラーになり全国大会に出ることを誓った。
サッカーの花形と言えば、最前線にいるフォワード――圭も裕一郎も同じポジションを希望していた。
他にも同じポジションを狙っている者は多くいたのだが、誰よりも真面目に真剣にストイックに練習に打ち込む裕一郎の姿に、圭は刺激を受けた。
この先裕一郎とエースストライカーの座を争うことになる――そう直感し、自然と裕一郎のことをライバル視するようになった。
裕一郎も圭をライバル視するようになるのに時間はかからず、2人は足の速さからリフティングの回数から果ては朝練に来る時間の早さと居残り練習の時間の長さまで張り合うようになり、その延長上で部活の時間以外でも様々なことで張り合うようになり、それが喧嘩に発展することも多くなり、周りからは「一緒にいる割に2人はとても仲が悪い」と言われるようになった。
確かにいつも元気でお茶らけていて騒がしい圭と、真面目で無愛想で自分にも他人にも厳しい裕一郎とは性格も全く違うので合わないことが多く、それもぶつかる大きな理由なのだが、互いに心底嫌っているということはない、と圭は思っている。
裕一郎の真面目なところや厳しいところは彼の長所だと思っているし、自分にはないところに魅かれている。
遼子と同じく、しっかりと関わっているからこそぶつかり合うことができるのだ。

とにかく、そんな裕一郎と同じ班になったことは、喜ぶべきことなのかもしれない。
裕一郎から前方に視線を戻す途中、廊下側の窓際の席に座るもう1人の親しい友人、宍貝雄大(男子八番)と目が合った。
雄大は、所構わずぶつかる圭と裕一郎のストッパー役をいつも務めてくれている、2人にとっては兄貴のような男だ。
雄大は小さく笑みを浮かべていたのだが、それはとても悲しげに見えた。

…そっか。雄大とは、敵同士になるのか…実感が湧かないけど…

「雄大……今まで、ありがとうな!」

圭は精一杯の笑みを雄大に向け、礼を述べた。それは顔の筋肉がひくひくと痙攣するのが自覚できる程に無理した笑顔だったが、「こっちこそ、楽しかったよ」と返した雄大の笑みも似たようなものだった。

よく周りからは「付き合ってるのか?」と訊かれたけれど、恋愛感情を抱いたことはこれまで一度もない(俺の好みは遼子みたいなキツい女じゃなくて、優しい子だ。上野原咲良(女子二番)なんかストライクど真ん中だったけれど、お近づきになる前に木戸健太(男子六番)に持って行かれてしまった。ちくしょう、健太のヤロウ。中等部入学のくせに上野原をひょいっと掻っ攫って行きやがって。まあ今は2人があまりにも仲睦まじいし、健太が良いヤツなのもわかるから、諦めたけど)。
遼子は、真正面からぶつかることのできる、性別を超えた友人だ。
何となく、これから先も何だかんだで付き合いが続くのだろうと思っていた。
その矢先に、これだ。
腐れ縁はここまでとなった。

…敵になっちまっても、阪本には会っておきたいな。
『腐れ縁もここまでで清々する』って、冗談めかして言ってやりたいな。
阪本が何て言うか想像つくな、『は?そんなのこっちの台詞だし』…だろうな。
いつもみたいにちょっと言い合いして、でも最後にはちゃんと、『今まで色々ありがとう、楽しかった』って言っておきたいな。

「10分経ったなぁ、じゃあ次は9班やな!
 男子十三番・原裕一郎君!
 男子十八番・横山圭君!
 女子十四番・平野南海さん!
 女子十八番・室町古都美さん!
 新しい世界を探してきてな!」

圭は自分の名前を呼ばれ、顔を上げた。
圭から見て右斜め後方にいる裕一郎の方をばっと見遣ると、裕一郎も目を大きく見開いて圭のことを見ていた。

まさか、裕一郎と同じ班になるとは。
裕一郎も、遼子同様真正面からぶつかることのできる数少ない人物だ。

圭と裕一郎は互いに帝東学院初等部出身なのだが、互いのことを認識したのは中等部1年生で初めて同じクラスになった時だった。
その後部活動見学でも顔を合わせ、互いにサッカー部に入部を希望していたということもあり意気投合し、互いにレギュラーになり全国大会に出ることを誓った。
サッカーの花形と言えば、最前線にいるフォワード――圭も裕一郎も同じポジションを希望していた。
他にも同じポジションを狙っている者は多くいたのだが、誰よりも真面目に真剣にストイックに練習に打ち込む裕一郎の姿に、圭は刺激を受けた。
この先裕一郎とエースストライカーの座を争うことになる――そう直感し、自然と裕一郎のことをライバル視するようになった。
裕一郎も圭をライバル視するようになるのに時間はかからず、2人は足の速さからリフティングの回数から果ては朝練に来る時間の早さと居残り練習の時間の長さまで張り合うようになり、その延長上で部活の時間以外でも様々なことで張り合うようになり、それが喧嘩に発展することも多くなり、周りからは「一緒にいる割に2人はとても仲が悪い」と言われるようになった。
確かにいつも元気でお茶らけていて騒がしい圭と、真面目で無愛想で自分にも他人にも厳しい裕一郎とは性格も全く違うので合わないことが多く、それもぶつかる大きな理由なのだが、互いに心底嫌っているということはない、と圭は思っている。
裕一郎の真面目なところや厳しいところは彼の長所だと思っているし、自分にはないところに魅かれている。
遼子と同じく、しっかりと関わっているからこそぶつかり合うことができるのだ。

とにかく、そんな裕一郎と同じ班になったことは、喜ぶべきことなのかもしれない。
裕一郎から前方に視線を戻す途中、廊下側の窓際の席に座るもう1人の親しい友人、宍貝雄大(男子八番)と目が合った。
雄大は、所構わずぶつかる圭と裕一郎のストッパー役をいつも務めてくれている、2人にとっては兄貴のような男だ。
雄大は小さく笑みを浮かべていたのだが、それはとても悲しげに見えた。

…そっか。
雄大とは、敵同士になるのか…
実感が湧かないけど…

「雄大……今まで、ありがとうな!」

圭は精一杯の笑みを雄大に向け、礼を述べた。
それは顔の筋肉がひくひくと痙攣するのが自覚できる程に無理した笑顔だったが、「こっちこそ、楽しかったよ」と返した雄大の笑みも似たようなものだった

太田マキ

リプキュア

幽々子

どうしましょうか?
NG報告したってすぐ効果があるわけではないですし
何よりこのままだとどうしても見づらい・・
題名も間違ってるし・・非常に申し訳ない感がある

考えうる選択肢は
1気にせず書き込む
2このスレを諦める
2-1新たにスレを立てる
2-2pixivなどでssを続ける
3書くのを止める(これはよほどのことが無ければしませんが)
皆さんの考えが欲しいです


>>5の日本国内で数日って、おかしくね?
後、超能力の存在が都市外に知られてないとかも。
意図的な改変?

>>72
学園都市は東京西部だけど希望ヶ峰学園が具体的にどこにあるか明らかになってなかったような…だったので
数時間だと近いかな、と思ったのですが
よく考えてみたら現実でも東京から京都でも数時間でしたね
流石に数分は近いかと思うので…
数時間に変換していただいてもよろしいかと…(汗)

超能力に関しては考えてみれば、御坂はロシアでドンパチやってましたなぁ…

でも本来は学園都市の外に出るのは色々面倒な手続きもあるし、能力者が容易に出られないようにしているって面から、あまり公にしたくない傾向があるかなぁ…って思ったしだいです

まぁ、実際にはただの建前で他の役目があるから土御門は希望ヶ峰学園には行かせない、とか考えていただけるとありがたいですかね…

すみません
>>32
>>37
この2方の質問に答えてませんでした

アニメ見てるとはいえ、最終回、つまり外がどうなってるか全く知らないうちに書いた物なので…

最終回はようやく見て、学園の外の世紀末化については先程知りました
記憶云々は他のss読んでたら偶然知ったので…

学園都市はその絶望に対抗してるものの1つ、とか考えてもらえると上手く都合がつきませんかね…

>>38
この方の質問、学級裁判をどうするのかに関しては
このssのネタバレになると思うので…
催促されればお答えします

ヒントとしては、上条さんはやっぱ上条さんてところですかね(ほぼ答えでしょうけど)

>>74
別に学園都市が滅ぼうが存続していようが魔術師たちが何かしていようが滅んでいようが
そこはどうでもいいんだよ。
絶望は感染するから、スキルアウトと壁を感じている面々は簡単に絶望しそうだけど
学園都市が滅びるとまでは行かないだろうし

問題は苗木君がどうなったかなんだよ。学園都市が受け入れてくれるの?無理か

>>78
最終回を見ても、具体的に外のあれが、世界のどれくらいを覆っているのかは分かりませんでしたが(モノクマが意図的にそういうとこだけ映像に映した可能性はありますし)

苗木君をどうするかの考えは、自分も学園都市に、つまり上条さんととっかえひっかえを考えたりはしました
☆が超高級の○○に興味を持ってる、とかどうか、と思ったのですが…
やはり無理がありますかね…

にしても、あっという間にこれだけ指摘を貰うとは…
いかに自分の設定が穴だらけなのか思い知りました

それだけ皆さんが、これらの作品に真剣なんだなぁ、と考えさせられます…
(単に批判をしたい人も中にはいるのかもしれませんけど…)
人気の作品をssにするのは大変なんですね…

(合成臭さが凄いとはいえ世界の有名ドコロがモノクマになっているのに‥・・?)
まぁ、作者が明言してくれればある程度は納得するから
でもインデックスを放置して大丈夫なの?

>>81
土御門が上条さんの学園都市外へ、を知っているなら…
あの神父あたりに連絡が行き、電柱から見守っていると考えていただけると…(笑)
真面目に答えると小萌先生の家にいるので、一応近くに能力的に強い結標さんや、擬似天使の風斬もいますし
基本的に心配はないと思ってください

まぁ…新約禁書でも上条さんが出かけてる間、インデックスは平気なの…?
と思いましたけど

>>76
なんか学園都市が真っ先に潰れそうだな
超電磁砲のアニメですら才能(能力)ない頭良さそうな奴等が能力至上主義が嫌でロボット作って暴動起こしてたぐらいだし

>>83
大覇星祭の時のような事がなければ、基本的に学園都市は外とはほぼ遮蔽してますからね
いくら絶望が感染すると言っても、空気やら外からの物資ではないと思いますけど…
最低でもモノクマの覆面被った=絶望して暴れてる人と接触が必要かと
自分としては魔術師は基本的にそういう人に該当させる気はないので、一般のしかも情緒不安定の絶望した人達が学園都市の壁を越えられる、とは考えてないです
荒らしのほとぼりも収まったようなので、今日辺りに少し投下したいと思います

>>84
いや絶望の感染は絶望した人物に接触して始まるんじゃなくて
絶望の価値観に染まったものに触れた瞬間始まる
小説や歌でも感染するのね

学園都市はみさきちがいるからギリ大丈夫だろう
みさきちが絶望堕ちしたら完全に終わるけど

>>85
お~…
そういうものでしたか
削板、一方さん、垣根は何もしなくても大丈夫そうですけどね(笑)

もう
気付くと上条当麻は見知らぬ教室にいた。
で始まっていいと思うの

>>87
あ~
そろそろ問答を止めて再開しろ、と…
見直したら丁度そこからですね
苗木君に関しては気になる人もいるようなので、禁書の視点変えて描かれる、みたいなサイド的な展開を組み込んでみようかと考えてます
では投下予定として夕方頃で

>>79
もし☆さんが超高校級の幸運に興味があるなら苗木よりよっぽど適任なキャラがいるからちょっときついかも……

>>89
ダンガンロンパ2の生徒の事ですかね?

>>90
そうですそうです
ただこのSSはあくまでダンガンロンパ1だけの話って設定なら大丈夫だと思います


>>89の方の書き込みで
苗木君が助かる理由が希薄になってしまったので…
ちょっと考え直さないといけなくなったので(この部分をハッキリさせないと>>29の修正ができない…)
更新は20時あたりからの夜になりそうです
真に申し訳ないです

>>91
ちょっと調べたら、狛枝君ですかね…

自分はアニメのみなので、ダンガンロンパ1の方しか知らなかったし、2の人を登場させる気は無いのですが
設定上どこかしらにいるとは考えた方がいいのですかね…
77期生らしいですが、1の時にどうしてるか知らないですし
とにかく苗木君が助けられる理由を、もう少し明確にできないか考えてみます

今更だけど別に苗木いてもいいだろ
17人目の高校生ってことで

>>94
これも全く考えなかった訳ではないんですけど…
・超電磁砲sみたいに本来主人公キャラの苗木君の出番や活躍が減りそうなんで…
・また、苗木君が活躍できるなら上条さんもいらないような気がして…そもそも推理キャラじゃないし、右手の事考えると大和田とかのポジションになりそう
・フラグを立てる、説教と論破するキャラが2人もいるのもどうかと思ったのですけど…

これを実行するなら、設定を考え直して別のssを1から書いた方がいいかもしれません
指摘や穴も多すぎですしあっさりと、書くのを止める、がいいのかもしれませんね
全話見てから考えるべきでした
というよりダンガンロンパにクロスは合わないのかもしれません
自分が早計というのもありますけど
もう止めましょうかね

変に考え込まず、矛盾とか穴とか気にせずに勢いで突っ走れば良かったのに

>>97
生真面目な人間てつくづく損をするんだなって実感しました
何でもスルーしたら、作品を侮辱してる気がして…

元々好きな禁書
アニメのみだけど好きになったダンガンロンパ
でも好きなキャラ死んじゃったなぁ…
あ、上条さん投入して救えないかなって妄想したものでしたけど…
一方さん投入で一発解決の方がいっか

一方通行「希望ヶ峰学園だァ…?」

一方通行「ンだァ…?この鉄の扉ァ…?」
苗木「外に出られないなんて…」
大神「我の力でも無理とは…」
十神「ふん…」
モノクマ「うぷぷぷ…」

一方通行「うううォォォォォああああ!」
ガン!

モノクマ「アポ…?」
朝日奈「うっそー!開いた!…ってか扉が吹っ飛んだ!」
セレス「適応など必要ありませんでしたわね…」
舞園「早く仲間の無事を確認しにいきます!」
大和田「なーんだ…もぅ出れんのか…」
モノクマ「」
江ノ島(戦刃)「」
桑田「ハァー、ミュージシャンの夢どうすっかなー…」
不二咲「僕たくましくなるよ!」
山田「さて、次の性の頂点の探求でも…」
霧切「探索、なんのためにしたのかしら…」
葉隠「外でまた占い…もう騙されないべ」
石丸「うむ…この学園ともお別れだ!」
腐川「びゃ…白y、びゃくしょん!」
ジェノ「ヒャッハー!また外で、可愛い子血祭りだし~!あたしという猛獣が、再び世の中に放たれるぅ~!」

物凄く偉そうになってしまうが着眼点は良かったと思う
他作品を出すのはアレだがめだかボックスとの某クロスみたいな折り合いの付け方もあるし
上条には事件を危機回避で未遂で終わらせたりしてキャラ付も出来たと思う
>>1 は生真面目そうな人だから作品の理解深めて再チャレンジして欲しい

長々とすまそ

>>101
舞園さんとか殺される前に桑田と上条さんがぶつかるってのは予定してました

「中途半端な知識でクロスssに手を出すとこうなる」ってのがよく分かるssだったよ

あと>>99の文章だけど
一方さんが捕まってる時点で相手側に「ベクトル操作ができる一方さんを捕まえる技術がある」って事になるから
一方さんが扉をぶち壊すのは難しいんじゃ?

せめて外から壊して皆でばんざーいって感じにすればよかったんじゃない?

>>103
最後にツッコミを無視したものを書いただけです


html化の依頼を出しました
では皆さんさようなら

ありゃやめちゃったか。
あととある魔術師でも超能力者でもメンタル弱い人多いから黒幕が上位の誰か墜とせばあとは芋づる式に墜ちるだろ。

また、書いてくれることを祈る

>>106
自分の中では完結させますが、公開するかは怪しいですね
>>105
のツッコミが非常に自分の中では問題だと思われるので

html化終わるまで見守るつもりですが…
その後も何か物申したければ、男子高校生のssの方で書き込んで頂いても構いませんので

自分の中では書き続けますが、もしかしたらver.2として、また公開したくなる日が来るかもしれません、とは言っておきます

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