刹那「インフィニット・ストラトス?」(856)

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刹那「IS?」 - SSまとめ速報
(ttp://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1298877202/237n-)

~乙女座による前回のあらすじ~
・ELSとの対話を終えた少年は量子ワープで地球に帰還しようとするも、到着したのは一夏のいないIS世界であった。
 この状況……青天の霹靂、いや、千載一遇の機会と言うべきか。
・ELSとISを融合させることにより、世界初の男性操縦者として学園に迎えられる少年。女性だらけの学園へ、男子生徒として一人転入することとなる。
 つまりはワンマンアーミー……たった一人の男性なのだよ。どれほどやれるか、刮目させてもらおう、ガンダム。
・ISエクシア(仮称)でセシリアの歪みを断ち切った少年。
 その圧倒的な性能に、私は心奪われた!

・お姫様抱っこ関連で誤字があったようだ。
前スレ>>206
>支点を腰と背中に~
 正しくは背中と膝裏だ。これでは世界の鼻つまみ者だ……!

~乙女座によるこれからの方針~
・少年が異星人である以上、一夏は存在せず、結果的に箒と鈴音はヒロイン入りしないことになる。その上、ラウラの過去に無理が生じている。
 ISの作品だと言うのにメインヒロインに出番がないとは……このSS、存在自体が矛盾している!
・だが、IS学園が初対面の場であった人間……セシリア・シャル・ラウラに関してはそうはいかん。
 矛盾を孕んでも存在し続ける、それが生きることだ!
・セシリアを倒してしまった上、少年は一夏より優秀と来ている。メアリ・スーと言われても仕方がないな、これは。
 だが……メアリを越え、厨二を超越し、SSとなった! ご都合主義に耐性のない者は下がれ、ガンダムは私がやる!
・原作の展開をなぞる以上、ヒロイン達が少年に心を傾ける展開になり得る。
 NTRを嫌う諸君は撤退したまえ。信心深さが暴走すると、あらぬ悲劇を招く。
・少なくとも、ネオドイツのガンダムファイターとガンダムファイトするまでは進めたいものだな。
 男の誓いに、訂正はない。

※このSSに乙女座は出演しません


 翌日。
 グラウンドに集合した1年1組は、五列隊形で並んでいた。
 ‘休め’の姿勢で待機している中、男子は刹那一人である。

≪……刹那、昨日の影響は?≫
(ミッションの遂行に支障はない)
≪そうか。……何か困ったことがあればすぐに伝えてくれ≫
(ああ)

 全員女子の中一人だけ男子と言う時点で疎外感は物凄そうなものだが、刹那自身、とんと気にした様子はない。
 これはこれと割り切っているのか、それともそう言う思考がないのか。

「ではこれより、ISの基本的な飛行操縦を実践してもらう」

 隊列の前に出た千冬が、ざっとメンバーを見渡す。

「セイエイ、オルコット。試しに飛んでみろ」
「わかりましたわ」
「了解した」

 それぞれ独特の返答と共に、セシリアの耳につけた青いイヤーカフスが、刹那の場合は体が淡く発光する。
 周囲一帯が光に包まれた瞬間には、もうISの装備を終えていた。
 刹那はIS装着の際に指を鳴らしてガンダムを呼んではどうかと考えていたらしいが、結局却下されたようだ。何よりである。

ごめんなさいロックオンは出ません

「よし。……飛べ!」

 無事成功したことを確認してから、千冬が声を張った。

「はいっ!」
「エクシア、飛翔する」

 両者同時に地面を蹴り、空高くへ舞い上がる。
 先んじたのは、セシリア。
 目標高度に達した時点で、刹那から二メートルほどの距離を開けていた。

『セイエイ、遅いぞ。スペック上の出力はエクシアの方が上のはずだ。
 ……お前は‘特別’なものを持っている。その程度ではないだろう』
「……すまない、俺のミスだ」

 通信機越しに聞こえる千冬の注意に対し、素直に謝罪する刹那。
 いかんせん、ISの操縦は感覚的だ。手馴れているセシリアに対し、刹那はやや不慣れな面が目立っている。
 もっとも、今回のセシリアはスターライトmkⅢを装備していないので、先の戦闘より機動力が向上していると言う点もあるだろうが。

≪MSとは操縦系統が根本からして違う。気負いすぎるな≫
(……すまない、ティエリア)
「自分の前方に角錐を展開するイメージ……教本にはそう書いてありますが、
 イメージは所詮イメージ。自分のやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ?」

 先を行っていたセシリアが、速度を落として刹那に並ぶ。
 その心遣いに、刹那は感謝せざるを得なかった。


「セシリア・オルコット……」
「差し出がましいようですけれども……どうやら、あまり慣れていないように見えましたので」
「ああ……否定はできない」
「その……よろしければ、放課後に指導して差し上げますわよ?」
「指導?」
「その時は、二人きりで……」
『セイエイ、オルコット。急降下と完全停止をやってみせろ』

 セシリアの言葉を遮って、千冬から通信が入る。
 表情を引き締めると、セシリアはブルー・ティアーズのスピードを上げた。

「では、お先に」

 そのままの勢いでいくらか進むと、九十度に近しい角度で地面に降下。
 ギリギリまで待ってからスピードを落とし、激突を避け、着地する。

≪……上手いものだな。操縦技術に関しては、あちらが上と見ていい≫
(ああ……例え希少価値があるとしても、パイロットとして実が伴わなければ意味がない。
 帰還の方法だけでなく、ISの操縦にも力を割く必要があるか)

 思考しながら、刹那はセシリアの後を追った。



ごめんなさいインフィニットジャスティスも出ません

 日が沈み、放課後。

「セイエイ君、クラス代表決定おめでと~!」

 寮のフロントを貸切り、刹那のクラス代表就任を祝うパーティーが催されていた。
 あくまで学生の身分である以上、質素さの目立つ部分はあるが、こう言った催しものは祝おうとする気持ちが大事なのである。

 しかし、クラス代表になどなってしまえば、色々と仕事を押し付けられるのは目に見えている。
 帰還を第一とする刹那からすれば、喜べない事態であった。

(……失敗したか)
≪そうとは言い切れないぞ≫
(ティエリア?)
≪IS操縦者としても優秀、クラス内でも人望が有る……
 そのような評価が下されれば、学園側もよりこちらを手放したくなくなるはずだ。
 この学園自体、時代に反して技術は格段に進歩している。
 IS自体も、宇宙空間での活動を想定したパワードスーツだ。
 となれば、学園も宇宙開発に関心を向けているだろう。
 学園内での地位が向上すれば、それだけ情報が手に入りやすくなる≫
(自分自身を質にする、と?)
≪そう考えてもらって構わない。
 それに、僕だけでも作業自体は行える。
 能率は落ちるが、クアンタのシステムと学園のネットワーク……二つの面から同時に情報収集を行った方が効率はいい≫

 ティエリアの論を聞いて、刹那は納得した。
 ならば、この地球の座標特定はティエリアに任せ、自身は学園内での地位獲得とIS操縦の技量を高めることになる。


 だとするならば、クラス代表と言う役職はおあつらえ向きであった。
 黙々と思考する刹那は、ふと閃いた光に目を細める。

「はいは~い、新聞部で~す」

 聞くまでもなく名乗った少女に、刹那は大体のあたりをつけた。
 おおかた、唯一の男子がクラス代表になったことを祭り上げようと言うのだろう。
 刹那からすれば、なかなかに都合のいいことであった。

「ああ、セシリアちゃんも一緒に、写真いいかな?」

 刹那の右隣に座っているセシリアへ、眼鏡の新聞部員――部長か何かだろう――が声をかける。
 提案に対し、セシリアは顔に喜色が浮かびそうになるのを堪えつつ問う。

「え……二人で、ですの?」
「注目の専用機持ちだからねえ。
 そうだ、握手とかしてるといいかもねえ」
「そっ、そうですか……
 あの、撮った写真は当然いただけますわよね?」
「そりゃもちろん。ささ、立って立って!」

 ジェスチャーで二人に指示する新聞部員に、刹那は従った。
 下手に抗う理由もない。校内新聞に掲載されれば名も上がろう言うものだ。

「じゃ、握手してもらえるかな~?」

 セシリアへ向け、右手を差し出す刹那。ELSに指示して、感触は人間と同じにしてある。
 おずおずとその手を握り返すと、セシリアは小さく呟いた。

「よろしくお願いしますわね、刹那さん」

 呼び方が変わったことには気づいたが、刹那はきっと見直してくれたのだろうと認識して、特別触れるようなことはしなかった。
 対話は、相手とわかりあう意思をもって初めて可能になる。
 態度が軟化したのは、きっとあの戦いをきっかけに対話を望むようになったからなのだろう、と刹那は推量した。

「あ~ん、もうちょい笑顔で寄って寄ってぇ。
 はぁい、緊張しないでぇ。
 それじゃ、撮るよぉ?」

 指示をこなし、最もよいであろう構図を作った二人を、カメラのレンズが捉え、

「はぁ~い」

 撮影した時には、何故かクラスメンバー殆どが写真に写っていた。

「何故全員入ってますの!」
「まあまあ」
「セシリアだけ抜け駆けはないでしょ~」

 怒気を露にするセシリアと、それをなだめる女子生徒。
 この状況、どう対応したものか、と刹那は再び頭を悩ませた。



 自室に戻った直後、ティエリアは刹那に相談をもちかけていた。

≪刹那≫
(どうした?)
≪ダブルオークアンタを回収しに行く≫
(ダブルオークアンタを?)

 何故、今クアンタを引っ張り出す必要があるのか。
 全長十八メートルの巨人を夜に持ち出しては、怪談になるか、見つかって厄介なことになるだけだ。
 そこでティエリアの出した回答は、刹那の予想に反したものだった。

≪ISを取り込んだことで、待機形態を利用することが可能になったはずだ≫

 確かに、ELSは融合した対象の外見・能力・技術をコピー、あるいは独自に発展させることが可能だ。
 自己進化・自己再生・自己増殖の三大理論を兼ね備えている、超科学生命体なのである。
 それがISを飲み込んだのだから、後は推して知るべし、だ。

≪それを用いて、刹那の体内にダブルオークアンタを収納する≫
(……可能なのか?)

 確かに、ISの待機形態は物凄く小さい。全行二メートルはあろうかと言うブルー・ティアーズが、
 イヤーカフスに、つまるところ三センチ程度の大きさに縮められてしまうほどである。
 だが、MSを体に収めるなど、刹那からすればやや躊躇われる行動であった。


 確かに、ISの待機形態は物凄く小さい。全行二メートルはあろうかと言うブルー・ティアーズが、
 イヤーカフスに、つまるところ三センチ程度の大きさに縮められてしまうほどである。
 だが、MSを体に収めるなど、刹那からすればやや躊躇われる行動であった。

≪そもそも、ELSに現代の物理は通用しないと考えていい。
 質量保存の法則を無視できる時点で、人間とはもはや次元が違う≫
(…………)

 こればかりは、刹那も押し黙った。
 そう、ELSはトンデモSFの住人のようなものである。

≪行くぞ、刹那。目的地までは僕が案内しよう≫
(……了解した)

 結局、刹那は首を縦に振るほかなかった。




 翌朝。

「もうすぐクラス対抗戦だね」
「そうだ、二組のクラス代表が変更になったって聞いてる?」
「ああ、何とかって転校生に代わったのよね」
「転校生?」

 会話中に出てきたその単語に、刹那は興味を駆られた。
 自身の境遇は転校生である。
 可能性はごく僅かではあるが、自らと同じようにこの惑星へ飛ばされてきた人間かもしれない。

「うん。中国から来た子だって」

 中国……刹那の時代観からすれば、人革連の連中である。
 元人革連の知り合いは、生憎アレルヤ・ハプティズムと同じ超兵であるソーマ・ピーリス程度だ。
 まあ、もし顔見知りでないにせよ、同じ状況の人間がいることがわかれば、それは大きな収穫ではある。

「うん。中国から来た子だって」
「ふん。私の存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 セシリア一人にそれほどの影響力があるかどうかはともかくとして。

「どんな子だろ。強いのかな……」
「今のところ、専用機を持ってるのって一組と四組だけだから余裕だよ~」
「その情報、古いよ!」


同じこと二回言わせちゃった……

 聞き慣れない声が、会話に介入してくる。
 音源の方向を見やれば、教室の入口に見えるのは小さな人影。

 長い栗色の髪はリボンで束ねられ、ツインテールの形をとっている。
 ぱっちり開いた目と、低い身長からは、成長を終えていない幼さを感じさせた。

「2組もクラス代表が専用機持ちになったの。そう簡単には優勝できないから!」

 勝気な性格を反映した高い声が、教室に響く。
 彼女の態度に何かを感じ取ったのか、セシリアが口を開いた。

「貴方が、噂の転入生なのかしら?」
「そうよ! 中国代表候補生、凰 鈴音(ファン リンイン)!」

 代表候補生。この時点で、刹那と同じエトランゼである可能性は潰えた。
 まあ、それほど大きな期待を寄せていたわけではない。
 せんなきことだ、と刹那は思考を掃いて捨てた。

「今日は宣戦布告に来たってわけ!」

 大々的な敵対宣言に、教室内がざわつく。
 潔いと言えば、潔い手法であった。

「専用機があるからって、いつまでも舐めてると痛い目――――」


 意気揚々と喋り続ける鈴音の言葉は、しかし、ごんっ、と鈍い音と共に中断された。
 頭頂部をこちらに向けている様はどことなくシュールだが、
 とにかく上方から衝撃を受けたのだろうことを端的に表現している。

「いったぁい、何すんのっ……!」
「もうSHRの時間だぞ」
「ち、千冬さん……」

 颯爽と登場した千冬を目にして、鈴音は見るからに勢いを殺した。
 その表情から推察するに、ただ調子に乗っていたところに先生が来て気まずい思いをしているのではなく、
 千冬に対して何らかの苦手意識を抱いているらしい。

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、邪魔だ」

 しっしと鈴音をあしらうと、つかつかと教壇に向かっていく。

「すっ、すいません……」

 しおらしくなった鈴音はどもりながら頭を下げると、
 きっと刹那たちの方を見やって、

「あんまり油断してると、すぐ負けちゃうんだから!」

 最後にそう残して、鈴音はぱたぱたと廊下を走り去っていった。



のほほんさんは一応喋ってます。でもキャラクターとしては出ないので、モブの一人みたいな扱いです。
名前の無い女子生徒は大体アニメ通りのセリフを言っているので、もしかしたらわかるかもしれません。


 クラス対抗戦当日。
 刹那が所属する一組と相対するのは、鈴音のクラス、二組。

 カタパルトにて準備を終えた刹那は、真耶から敵機の説明を受けていた。

「あちらのISは甲龍(シェンロン)。セイエイ君のエクシアと同じ、近接格闘型です」

 ブルー・ティアーズとは違い、今度は近距離での戦闘がメインになる。
 いかにして相手の裏をかくかは同じだが、今回競われるのは反応速度が主。
 その一点においては、ディスアドバンテージを負っているのは刹那である。
 機械の反応速度は、決して駆動系の性能とイコールではない。
 パイロットの神経と、それを伝達するスピードが要になる。
 となれば、ISにおいてはどの要素でも後塵を拝している刹那の荷が重いのは当然であった。

 だからと言って、むざむざやられるわけにもいかない。
 クラス対抗戦での勝利には、なかなかの名誉が付随する。
 帰還を優先する以上は、いくら気の進まぬ戦いと言えど、全力で挑む他ない。


「私のときとは勝手が違いましてよ。
 油断は禁物ですわ」

 念を押すセシリアに、刹那は頷いて返す。
 この日まで、セシリアからIS操縦の訓練を受けてきたのだ。
 彼女の期待を、一回戦敗退と言う最悪の結果で裏切るわけにはいかない。

「それでは両者、規定の位置まで移動してください」

 アナウンスが流れ、刹那はエクシアを稼動させる。
 カタパルトの上に乗せられたエクシアが、空中へ打ち出された。

 もはや、慣れたものだ。
 セシリアとの特訓でゆうに百をこなした姿勢制御術を用い、刹那は中空で静止する。

「今辞退すれば、痛い思いをしなくてすむわよ?」

 高度を引き上げた鈴音が、刹那と向き合った。

「そうするつもりはない」
「一応言っておくけど、絶対防御も完璧じゃないのよ。
 シールドを突破する攻撃力があれば、殺さない程度にいたぶることが可能なの」
「それを望むと言うのか?」
「……いや、やりたいわけじゃないけどさ」

 ならばいい、と言いたげに刹那が口を閉ざすと、
 タイミングを見計らったかのように女性の声が入る。

「それでは両者、試合を開始してください」


 鈴音が、背負った青龍刀――――双天牙月を右手に携えた。
 機体の全長ほどはあろうかと言う巨大な刃物は、直撃すれば大惨事になりかねない。

 応えるように、刹那はGNソードを展開。
 長大な刀身ならば、エクシアも持ち合わせている。

 二人同時に、互いに向け直進。
 クラス対抗戦の火蓋が、切って落とされた。





 互いに進行方向を同じくした両者は、空中で激突。
 一度の邂逅は、火花と金属音を生み出しただけだった。

≪刹那!≫
(ああ……出力は敵機の方が上だ)

 エクシアの主眼は、高速接近戦闘、即ちヒットアンドアウェイを繰り返す戦法である。
 機動力の代わりに単純な腕力を犠牲にした結果、取っ組み合いにおいては、甲龍が上に来るのだろう。

 張り付かれれば、確実に敗北が訪れる。
 ここは、一撃離脱を繰り返すべきか。


「ふぅん、初撃を防ぐなんてやるじゃない。
 けど」

 そこで口を止めた鈴音は、空手だった左手を空に突き出す。
 一瞬の発光の後、そこには二本目の青龍刀が存在していた。

 内心刹那は舌打ちをこぼすと、自ら攻勢に出る。
 自由に泳がせていては、こちらの不利がより決定的なものになってしまう。

 体重をかけて押し付けられたGNソードを、鈴音は苦もなく、青龍刀の腹で防いでみせた。
 そのまま自らの膂力を頼りに刹那を押し返すと、もう一方の得物で刹那の横腹を狙う。

 それを見抜いていたのか、刹那もまたフリーであった左腕でGNブレイドを抜刀、
 不安定な姿勢ながらもつばぜり合いに持ち込み、即座にバックブースト。

 仕切りなおしとなったことを利用し、腰部のGNダガーを投擲する。
 自然、鈴音は両腕の双天牙月でダガーを弾いた。

 その隙に、刹那は鈴音の背後に回り込む。
 あの長物は、密着状態では活かせまい。

 作り出した好機、刹那はGNソードで一文字に斬撃を加える。
 鈴音のシールドが削れる音を耳にして、
 このまま押し切れれば、と刹那は次撃の準備に入り、


「こん、のっ!」

 鈴音の肘打ちをくらい、吹き飛ばされた。
 GNドライヴを頼りに逆転した天地を正し、意識をはっきりとさせる。

 不意打ちの肘鉄とGNソードでの奇襲攻撃ならば、火力で上回るのは刹那側だ。
 シールドエネルギーの削りあいでは、刹那が優勢であった。

 だが、この時点で、刹那はGNダガーと言う手札を切ったのである。
 鈴音が手の内を明かしているのに対し、この事実は無視できない劣勢と言えるだろう。

 だからこそ、このまま攻めきる必要がある。
 刹那が前方へ加速するのに同じく、鈴音は二本の青龍刀の柄を合わせた。

 その行動を訝しむ刹那だが、ともかく今は攻めの一手である。
 鈴音に向け、GNソードを突き出す。
 敵を調子付かせぬための速攻は、しかし、

 カウンターをもろに見舞われ、自らのシールドゲージを削る結果で終結した。 
 剣に添えていた左腕に、電流に似た感覚が走る。


 ――――何が起きた。
 一度距離を離し、刹那は鈴音を捕捉する。
 鈴音の武器である双頭の青龍刀は、柄同士を連結させることにより、一本の薙刀と化していた。

 GNソードよりもリーチで勝るその武装ならば、敵の攻撃に合わせ反撃、
 後の先を取ることも容易であろう。

 ――――武器の形態変化。
 新兵器を持ち出すならまだしも、MS同士の戦闘では、まず起こりえないことである。

 ISの特性とMSの特性には、やはり大きな隔たりがあるのだ。
 その差異を把握出来ていない刹那がしっぺ返しをくらうのも、当然の帰結である。


 そんな刹那の焦燥など知ったことではないと、
 演舞でもしているかのように、鈴音はくるくると薙刀を手で弄び、

「はあっ!」

 両の手で掴みなおすと、敵手の息の根を止めるべく、意趣返しとばかりに刺突を狙う。

ハムのスサノオも二本の刀合体させて薙刀のように使えるけどな

>>33
見逃して

 その鋭鋒を迎えるだけの胆力を、刹那は持ち合わせていない。
 高度を引き上げ、半円を描くように鈴音の背中側へ退避。
 安全地帯へと抜けようとするも、薙刀を前に押し出した体勢のまま、鈴音は振り返る。
 返す刀で、横薙ぎの一撃。

 しかし、イノベイターである刹那の反射神経は、鈴音の予測を超えた。
 頭を刈り取ろうかと言うその刃にGNソードをかち当て、一瞬の拮抗を作り、再びスラスターを吹かす。
 鈴音の頭上を取った刹那は、そのまま重力の支持を受けて、鈴音へ襲い掛かった。

 単純に力負けするのなら、何らかの力を自力に加えればよい。
 そして、高度、即ち重力は、空中戦において最も重要視される要素である。

 刹那の影を追う鈴音は、しかし太陽光に目を焼かれ、ほんの僅かであれど反応を遅らせた。
 これこそが、刹那の立てた策。
 視界を潰し、更に高度差で有を占めることで、一息に押し切ろうと言うのである。

 刹那の予測は見事的中し、鈴音は破れかぶれで薙刀を振るう。
 自然、GNソードとぶつかり合うが、やはり優位に立っているのは刹那。
 その勢いのまま刹那は鈴音を押し出し、

「落ちろ!」

 GNドライヴから得た推力で、踏みつけるかのごとく鈴音に蹴りを入れる。
 ISの重量、そしてGNドライヴの出力を余すところなく受けた鈴音はあえなく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


 巻き起こる砂塵。鈴音の姿は確認できないが、しかし、競技終了のアナウンスは響かない。
 ならば、未だ健在なのだ。

 接近戦を前提とする機体には、敵弾幕を突破する機動力と、被弾をものともしない装甲が求められる。
 甲龍のコンセプトから推量するに、あの程度で破壊出来るほどやわではあるまい。
 何にせよ、油断は禁物である。


 その判断は、正解だった。
 閃光が溢れ、刹那の視界を埋め尽くす。

 ――――これは。
 今までの経験から、推測できる。
 これは、危険だ。
 警鐘を鳴らし続ける頭に喝を入れ、刹那は強引に体をひねる。

 目には見えないが。

 目には見えないが、確かに、何かが過ぎ去った。
 刹那が居た空間を引き裂き、進路上の全てを溶かそうとする光の渦が、天を貫いたのだ。
 下方向から放たれたであろう砲撃は、

「今のはジャブだからね」

 やはり、甲龍の――――


 あたりを着ける間もなく、刹那は熱に身を包まれた。
 第二射。
 あれほどの高火力ならば連発できるはずがないと言う刹那の当て推量を裏切り、
 時間を置いての攻撃で、鈴音は刹那の裏をかいたのである。

 鈴音と同じく地面に墜落した刹那は、片手を地に着けてどうにか立ち上がった。
 追撃の手を緩めるつもりはさらさらないのだろう、鈴音の様子を見る限り、どうやら第三射に移るようである。

 しかし、運動性においてはエクシアが勝っているのだ。
 鈴音の視線と自身の移動方向から着弾地点を見切り、不安定ながらも射撃をいなしていく。

(……あれは)
≪……衝撃砲だ。空間自体に圧力をかけて砲弾を撃ち出したのだろう≫

 ティエリアの声は、やや覇気に欠けていた。
 ISへ負担がかかれば、その分パーツの一つであるターミナルユニットにも被害が及ぶ。

≪構造上、砲身も砲弾も視認は不可能だ。
 加えて、射格の制限も無いと見ていい。……文字通り、死角が無い≫

 ティエリアが口を動かす最中にも、透明の砲撃は鳴り止まない。
 無秩序な軌道で、刹那は回避に専念する。
 パターンを作らないよう意識はしているが、ラッキーパンチをもらう可能性がある。
 逃げてばかりでは、どうにもならない。

 何と言う窮地。何と言う逆境。
 だとしても。いや、だからこそ。

≪……だが、逆転の芽はある≫

 ティエリアは諦めていない。勝つつもりなのだ。
 それは、

(……ああ。
 ソレスタルビーイングに失敗は許されない……
 ミッションプランに変更がない以上、目標を駆逐するだけだ)

 刹那も、同様である。
 彼らは、ガンダムマイスターなのだ。
 絶望的な状況にあり、勝算がなくてもなお、希望を持って進まなければならない。
 自らの望む、未来のために。

≪いけるな、刹那? タイミングは譲渡する。
 最も効果的と思われる場面で使用しろ≫
(ああ。同調を頼む)

 ティエリアと言葉を交わしながら、刹那は鈴音の行動を観察する。
 今は衝撃砲を用いて圧倒することで攻勢に出ているが、いくらなんでも無尽蔵に撃てるわけではあるまい。
 高火力・高性能であるほど、取り扱いは難しくなるものだ。
 いずれ、息切れする。
 それを、待つのだ。今は、ただ耐えねばならぬ雌伏の時。

 粒子で軌跡を描き出し、刹那は空を翔ける。
 エクシアは第三代のガンダム。
 事実上の永久機関であるGNドライヴにより、燃費やエネルギーの対効率は特筆すべきものがある。

 それに対し、鈴音の甲龍は専用機とは言えIS。
 限度と言うものは、少なからず存在する。


 刹那は逃げ、鈴音は撃ち。
 そして。
 続いていた砲撃が、止んだ。
 鈴音の表情が、みるみるうちに曇っていく。
 
「ティエリア!」
≪ああ! いけ、刹那!≫

 反撃の狼煙は上がった。
 今こそ、戦況を覆す時。

 赤い閃光が、アリーナを突き抜けた。




 刹那と鈴音を、巻き込んで。


 轟音、爆風、閃耀。
 IS同士の戦闘によるものではない余波が、立て続けに巻き起こる。

 鈴音の策かと思ったが、

「何……!?」

 ただ驚いているその様子を見るに、そうではないようだ。
 モニターで自機のステータスを確認するが、異常は検知されていない。GNドライヴの暴走でもないらしい。


『システム破損! 何かがアリーナの遮断シールドを、貫通してきたみたいです!』

 管制室から聞こえるのは、焦っている真耶の声。
 ならば、これはハプニングなのか。
 誰もが予想せず、そして誰かが定めたわけではない、完全なまでの緊急事態。

『試合中止! セイエイ、凰(ファン)、ただちに退避しろ!』

 千冬の言がきっかけとなってか、会場へ一気に動揺が生まれた。
 そこかしこから悲鳴が上がるものの、生徒を守るために張られたシェルターで、その波が途切れる。

(ティエリア、何が起こっているかわかるか?)
≪いや……僕がわかる範囲では何も。
 だが、先の粒子ビーム……かなりの高出力だ!≫
『聞こえた!? 試合は中止よ、すぐピットに戻って!』

 鈴音が通信が入ると同時、モニター右に赤枠の警告文がポップアップ。

 ――――ステージ中央に熱源
     所属不明のISと断定
     ロックされています

 それに重なるように、黄色い刺激色のウインドウ。

 ――――LOCKED


(所属不明のIS……?)
≪可能性はあるが……! 刹那、今は対応を優先しろ!
 その所属不明機にロックされている!≫
(了解……!)

 ISに関しては最大級の規模を誇る施設、IS学園。
 その学園が所属不明と判断するということは、もしかすれば、MSかもしれない。

 しかし、こちらを敵対性として認識する以上、可能性は低いだろう、と刹那は判断した。
 他のISよりもMS寄りの外見をしているエクシアへ、問答無用で仕掛けてくるあたりからも明らかである。

『聞こえてるの!? 早くピットへ!』

 その思考よりも、急かしてくる鈴音への返答が先か。

「お前はどうする」
『あたしが時間を稼ぐから、その間に逃げなさいよ!』
「……危険だ」
『って言ったって、ISに触ってからそう時間が経ってないんでしょ!?
 あたしの方が経験があるんだからしょうがないでしょ!』

 鈴音の言っていることは事実だ。
 確かに、IS操縦者として訓練を積んできた時間は、鈴音の方がはるかに長い。
 黙った刹那に、鈴音は続ける。

『別にあたしも最後までやりあうつもりはないわよ。
 こんな異常事態、すぐに学園の先生がやってきて収拾――――』

劇場版見てないんだけど、ELSと一体化した刹那って外見一期の状態にでも戻ってるの?
成長した状態で高校生と言い張るのは厳しくね?


>>44
二期せっさんなので身長は175cm、まあ高校にいないこともない、
そして顔を見たグラハムも少年と言い切っていたので、まあ顔立ちも少年に見えないこともない、
最悪、大人びている・老け顔と言う言い訳で乗り切れないこともない。

ごめんなさい、各自で補正をお願いします


 鈴音が言い切るが速いか、刹那の感覚が明確な敵意を捉えた。 
 脳量子波による探知と、今まで戦士として過ごしてきたが故の勘が、刹那の体を突き動かす。

 GNドライヴを再稼動させ、装甲に覆われた鈴音の腕を引っつかむ。
 被弾面積を少なくするべく、セシリアへそうしたように支点を背中と膝裏へ移した。

「ビーム兵器……!」
≪高出力だな……しかし、純正・擬似共にGN粒子の反応は検出されていない。
 旧世代のMSと言う場合もあるが……≫
「……あ、ちょっ、ちょっとバカ、離しなさいよ!」

 呆気に取られた状態の鈴音が意識を覚醒させ、刹那をひっぺがすべく腕を伸ばす。
 顎を狙ったその一撃を紙一重でかわすと、刹那は要望通り鈴音を開放した。

「動けるか?」
「あ……う、うん」
「立ち止まるな。狙い撃ちにされるぞ」

 それを言い含め、刹那は鈴音のそばから離脱。
 鈴音も承知しているのか、刹那から距離を取り、ターゲットを分散させる。


 刹那らが二発目をやりすごすのに遅れて、敵機は姿を現した。

 巨大な腕と足に反して華奢な胴体と言う歪なフォルム、
 通常のISの二倍はあろうかと言うその体躯、
 無機質さを感じさせる、人の目のような穴。

 奇妙なその外見は、薄ら寒いイメージを抱かせる。
 外面だけならば、ファンタジー小説に出てくるようなゴーレムを彷彿とさせる見た目だ。

(MSではない……)
≪ああ、MSにしては小さすぎる。ISと見るのが妥当だろう≫

 その事実に少なからず落胆したが、今すべきは彼奴への対処。
 刹那はスピーカーを機動させ、音声を所属不明機に届かせる。

「こちらはIS学園所属、刹那・F・セイエイ。
 当方に交戦の意思はない。武器を収めろ」

 警告に、ゴーレムは応えなかった。

「繰り返す。当方に交戦の意思はない。武器を収めろ」

 再度の警告にも、ゴーレムは応えなかった。


 どう動いたものか、刹那が頭をひねると同時、真耶から通信が入る。

『セイエイ君、凰さん! 今すぐアリーナから脱出してください!
 先生達が、ISで制圧に行きます!』
≪そうはいかない。ビームの出力を考えれば、あのシェルターでは危険だ≫

 ティエリアから全く喜べない報告を受けて、刹那は選択した。
 ――――戦わなければならない。
 自身が戦うことで、生徒を守れるのならば、戦う。
 破壊するためではない、守るための戦いだ。

「……ここで逃げては、また不要な犠牲者が出る。
 敵機の狙いはこちらだ。ここで、奴の足を止める必要がある」
『そっ……それは、そうですけど……
 でもいけません! セイエイ君!』
『刹那さん!』
「時間を稼ぐだけだ、問題は無い」

 通信機の向こうには、セシリアもいるのだろう。
 彼女の声が聞こえたが、刹那の決意が揺らぐことはない。
 ……しかし。
 確か、管制室はアリーナに直通の通路があったはずだ。
 ならば。

「……セシリア、頼みがある」



「お前は撤退しろ。後は俺がやる」

 鈴音へ向け、通信回線を開く。
 戦うことは、刹那のような戦士にこそ相応しい。
 年端も行かぬ少女が、自らの命を危険に晒す必要などないのである。

『……誰に言ってんのよ』

 鈴音の声は、ブレなかった。
 はっきりした芯を保ったまま、彼女は刹那に向け言葉を紡ぐ。

『あたしも付き合う』
「支援は無用だ」
『……だったら、あんたの協力はしない! けど、あたしはここに残る!』

 鈴音の目には、恐怖はない。
 それは、争いを軽んじているのではない。
 今ここで自分が退けば、人が死ぬのだと言うことを、端的に理解しているのだ。
 だから、逃げない。
 己の身を犠牲にするつもりは毛頭ないが、他者を贄に、自らは背を向けるつもりは全くない。
 誰かのために、戦うのだ。
 それは、刹那と同じ。守るための戦い。

「……そうか。行くぞ」
『えっ……ええ、任せなさい!』

 鈴音は、もっと刹那が渋るものだと思っていたのだろう、一度小さく声を漏らしたが、すぐに戦闘態勢に入った。


 刹那の周囲には、戦う人間が多く居た。
 世界との戦争を繰り広げたソレスタルビーイングだけではない。
 国の民を救うため、努力を続けたマリナ・イスマイール。
 少女の優しさを取り戻すため、戦場に身を投じた沙慈・クロスロード。
 彼らもまた、刹那とは違った形で戦っていた。
 戦いは、悪意を生み出すばかりではない。自らの意思で、あるいは他者の幸福のために、戦うことも出来るのだ。
 だから、刹那は鈴音が戦うことを止めなかった。

 刹那は左へ、鈴音は右へ。それぞれ、弾かれたように飛び出す。
 回避行動を取りながら、刹那はアリーナの壁に視線を滑らせ、カメラが破壊されていることを確認しつつ、ティエリアとの会話を行っていた。

(クアンタムバーストを使う)
≪ダブルオークアンタを出すのか!?≫
(ああ。ISを形態移行させ、ダブルオークアンタの能力を引き出す)

 前述の通り、今のELSはISの能力を取り込んでいる。即ち、待機形態を利用してのサイズ縮小が可能なのだ。
 刹那のISがエクシアの形を保っているのだから、それを応用すれば、ダブルオークアンタをISにすることも出来るはず。

(いけるか?)

 ――――肯定。
 ELSから返ってきたのは、最高の言葉であった。


(ティエリア、頼む。もし対話を行えれば、あいつが仕掛けてきた意図もわかるはずだ)
≪……了解した。今は戦闘中だ、荒療治になるぞ≫
(覚悟の上だ)

 エクシアが、光に包まれる。淡い緑の粒子をまとい、刹那のISが、形を変えていく。
 右腕のGNソードと左腕のGNシールドは、クアンタ用のGNソードVとGNシールドへ。
 それぞれ二つずつのGNブレイドとGNビームサーベルは、一つとなりGNソードビットへ。
 各部装甲も形状を変え、新たな機体を形作っていく。

 発行が終わり、生れ落ちたのは――――対話のためのガンダム、ダブルオークアンタ。

(形態移行……!?)

 その様を横目にしつつ、鈴音は思わず息を飲んだ。
 まさか、今この状況で実行しようとは。

≪刹那、調子はどうだ?≫
(悪くない……いける)
≪ツインドライヴ、同調……不安定だが、許容範囲内か≫
(出来るのか?)
≪トランザムの準備をしておいたのが功を奏したな。
 いざとなったら、僕がサポートする。いけ、刹那!≫
「……ああ!」


 二基のGNドライヴが、共鳴を始める。
 ――――QUANTUM SYSTEM
 刹那の瞳が、金色に輝いた。
 能力を発揮する際、イノベイターの虹彩は黄金の色を放つのだ。

「クアンタムシステムを作動させる!」

 刹那の叫びに応え、GNシールドが背中へとスライド。内部に搭載されたソードビットが、クアンタを囲むように展開する。
 クアンタの装甲が、緑の色に染まる。超高濃度のGN粒子が、反応しているのだ。

 GN粒子を開放するため、腕部、脚部、胸部の装甲がパージ。
 GNコンデンサーを露出させ、粒子散布を開始。


「クアンタムバースト!」

 咆哮が、引き金となった。
 刹那の意識は溶け合い、脳量子波と合一化される。

(探せ……奴の意思を!)

 クアンタムバーストは、言語や種族の壁を越え、対話を成すための装置。
 これをもってすれば、皆わかりあうことができるのだ。


「お前は何者だ……!
 何を求めてここへ来た……!」

 だが。

「答えろぉぉぉぉ!」

 返答は、ない。

(何だ……無い!?)
≪意思が見当たらない……あの機体、無人機だとでも言うのか!?≫
(だが、先ほどの敵意は……!)
≪量子空間の範囲内に、奴は入っている! しかし意思が無いとなれば……!≫
(……遠隔操作、あるいは製造者の悪意!)

 自ら結論にたどり着いた刹那は、クアンタムバーストを終了させる。
 ソードビットをGNシールドに帰還させ、各部GNコンデンサーを収容。
 パージした装甲は無理にしろ、出来る限り元の状態を復元する。

「あんた、一体何を……?」
「戦いに集中しろ……来るぞ!」


 刹那が言い切るより早く、敵機はその巨大な足で地面を蹴り上げ、空中へと飛ぶ。
 巨体に似合わぬ俊敏さだが、しかし、代表候補生である鈴音と、クアンタに形態移行した刹那に追いつける道理は無い。
 歪な拳は空を切るも、散開した両者に向け、所属不明機はビームで攻撃。
 先の一撃とは違い、殺傷力を弱めての拡散形式。
 しかし、これも当たらない。エースパイロットである二人からすれば、この程度、造作も無いことである。

 攻撃後の隙を突き、刹那はGNソードVでの射撃を開始。
 クアンタムバーストで貯蔵GN粒子を使い切ったためか、本来のクアンタのそれに比べ、火力は随分と大人しくなっている。
 それを補うべく、装甲の薄くなる間接部を狙うが、敵機の推進力はISと比較して桁外れだ。
 最低限の動きで射撃をいなすと、所属不明機は二人の間に突っ込んでくる。

 ――――速い。
 なかなかの難敵だ。
 刹那たちの行く先を示しているかのように、暗雲も立ち込めてきていた。



≪アリーナがロックされた……!?≫
(ティエリア?)
≪第二アリーナ全体がロックされたようだ。これでは避難も救援もままならない……!≫

 再びティエリアから凶報を受けて、刹那は俄然表情を渋める。

『何、どうしたの?』
「……アリーナがロックされた。避難に必要な時間を改める必要がある」
『嘘でしょ!? どうしてそんなことがわかる――――』
「待て」

 鈴音の言葉に被せ、刹那は手で待ったをかける。
 反射的に鈴音は口を閉ざし、それに合わせ、巨人は掃射を再開した。

『……何、今の……こっちが喋り終わるのを待っててくれたってわけ?』

 敵弾をかわしつつ、呆然と呟く。
 そう、敵機は、こちらが会話を行っているときに限り、攻撃の手を緩めている。
 どのような意図があると言うのか。

(こちらの情報を探っている……?
 ならば、なぜ大々的に仕掛けて来た? 潜入捜査員を送り込んだ方が、効率と安全性は格段に上のはず……)
≪刹那、考えている時間はない≫
(ティエリア?)
≪避難が終わるのを待つより、奴を仕留めた方が早い≫

 確かに、ティエリアの言葉にも一理有った。
 相手は無人機だ、遠慮も何もなく、問答無用で叩き潰せる。


 GNバスターライフルで遮断シールドをブチ抜き、増援を呼び込む方法もあったが、救援に駆けつけた連中を巻き込みかねない。
 であるならば、殲滅戦に移行した方が安全かつ合理的だ。

「……奴を破壊する」
『えっ……殺すの?』
「あれに人は乗っていない」
『はあ? 人が乗らなきゃISは動かな――――』

 途中ではっとして、鈴音は記憶を振り返る。
 アリーナをロックし、
 学園の情報をもってしても所属不明扱い、
 会話をしていれば、何故か攻撃の手が止まり。

 奇妙な点が多すぎるのだ。
 説明がつかない以上は、そこにどのような結果が待ち受けているかはわからない。

『……ううん、でも無人機なんてありえない。
 ISは人が乗らないと絶対に動かない……そういうものだもの』
「だが、間違いではないはずだ」

 クアンタムバーストは、そこに生命がある限り作用する。
 それに反応しないのであれば、それ即ち無人であることに他ならない。


 頑なに自身の意見を譲らない刹那に、鈴音はため息を一つこぼして、

『……じゃあ、そんなことありえないけど。
 あれが無人機だと仮定して攻めましょうか』

 割り切ったのか、双天牙月を構えなおす。
 割り切れなければ死ぬ。そうわかっているのだ。ならば、グダグダ抜かしている暇はない。

「俺が敵の足を止める。その間に撃て」
『またアバウトな……でもいいわ、やってやろうじゃない』

 気合充分と言った様子の鈴音から視線を滑らせて、刹那は巨人を見やる。
 話は終わったか、とでも言いたげな様子で、所属不明機は腕をこちらに向けた。

 腕部にしかけられた銃口から、ビームが放たれる。
 死角へ回りながら、刹那はソードビットを展開。
 ゴーレムの間接部に張り付かせ、駆動系を狙う。

 遠方からの直線的なビームは回避できても、その巨体では、小回りの利くビットからは逃れられない。
 運動系に支障が出たのか、所属不明機は一時的な硬直を晒す。


 このチャンスを、鈴音は見逃さない。
 刹那の指示通り溜めておいた衝撃砲のエネルギーを、開放。
 目には見えなくとも、風の流れでその威力が知れる一撃を、敵手へ撃ち出した。

 巨体が、揺れる。
 激突した重圧に耐えられなくなったか、真正面から直撃した衝撃砲に、巨人はたじろぎ、仰向けに倒れこんだ。
 追い討ちとばかりに、刹那はソードビットを回収、伏した巨人に接近し、GNソードVで右腕を切断する。
 人口の血液が、切断面から噴出した。

 このまま行動不能まで追い込む。
 その意気で右腕へ移行した刹那は、しかし、突然横殴りに吹き飛ばされた。

「がぁっ……!?」
≪刹那!≫
(損傷は軽微……ミッションの続行は可能……!?)

 冷静に機体状況を分析し、刹那はISを起こそうとして、巨人の右腕に、握られていることに気づいた。
 万力にも近しいその豪腕で、所属不明機は刹那をISごと握りつぶさんとしている。

≪クアンタムバーストでGN粒子を使いすぎた……量子化は出来ないぞ!≫

 鈴音も、先の衝撃砲で消耗している。
 そう簡単には救援に来られないだろう。
 だが。


「今だ……狙い撃て、セシリア!」
『ええ……照準は完璧』

 通信機越しに響く、少女の声。
 専用機を駆る、狙撃手の声。

『狙い撃ちます!』

 ビットの援護を受け、スターライトmkⅢが閃光を放つ。
 一直線に進んだ弾丸は、巨人の胸部を寸分違わぬ狙いで射抜いた。

 遅れて、爆発。
 派手に火の粉があがり、刹那を拘束する力が緩む。

≪まだだ! 止めを刺せ、刹那!≫

 開放された刹那は、GNソードVの切っ先を所属不明機に向ける。
 それに続いて、刀身にソードビットが装着。ブルー・ティアーズのそれに劣らぬ巨大な銃――――GNバスターライフルを作り出す。

「この俺が、破壊する!」

 GNソードVの切っ先、ライフルの銃口から、太さ十メートルはあろうかと言うビームが出現した。
 その力は所属不明機を巻き込み、地面に穴を穿つ。

 一際大きく輝いた後には、どうにか原形をとどめている所属不明機と、クレーターが残されているのみだった。


箒ポジションでハム先生(♀)を出そうかどうかすごい迷ったけどやめた


 余談ではあるが、
 本来のGNバスターライフルはこれを大きく上回る破壊力を秘めているものの、
 クアンタムバーストでGN粒子を使い切っていたこと、ISで扱えるようサイズダウンがはかられていたことから、この程度の損害で済んだのである。
 単機でELSを壊滅せしめるMS、ダブルオークアンタ。その力は、未だ未知数であった。


 IS学園、地下施設。
 病院の診療台を思わせるベッドには、確かに、ヒトガタのものが眠っていた。
 それは、中身がからっぽの、ISと呼べるかどうかすらわからない代物だが。

 天井からは機械の溶接などに使うだろう機器が吊るされていて、どうやら、ISの解体作業に従事しているようだった。

「やはり、無人機ですね。登録されていないコアでした」

 分厚い壁を隔てた隣の部屋でキーボードを叩きながら、真耶は千冬に研究成果を告げた。

「そうか……」

 対する千冬は、吐息混じりに返答するばかりである。
 それを気にしているのかいないのか、真耶は報告を再開した。

「ISのコアは、世界に467しかありません。
 でもこのISには、そのどれでもないコアが使用されていました。
 ……一体」
「…………」

 二人は、不可解な疑問を抱えたまま黙り込んだ。
 答えに到達するには、まだまだ時間がかかりそうである。




「刹那・F・セイエイ……苦戦してしまったようだね。
 これでは期待外れだよ」
「…………」
「少しは僕を楽しませてくれなきゃ……それほどの事を、君はしたんだからね」



「今日はなんと、転校生を紹介します!」

 二度目になる真耶のセリフを聞きながら、刹那は眉をひそめた。
 昨日あんな事件が起きたと言うのに、すぐに転入生とは、切り替えの早い学校だと関心すべきか。
 あるいは……

(想定の内だったと言うのか……?)

 クラス対抗戦に乱入してきた、あの巨大なIS。
 アリーナを破壊し、更には学園のネットワークにまで進入、データを改ざんした形跡が残っている。
 あれがもし、学園が用意した差し金だとしたら。

 しかし、下手を打てば世界で唯一の男性操縦者と中国の代表候補生を失うかもしれなかったのだ。
 その確率は低いだろうが、まあ、頭の隅にとどめて置いてもいいかもしれない。

 例の所属不明機によりアリーナも半壊、クラス対抗戦も延期の運びとなったのだ。
 あまり気を張り詰めすぎては、疲れてしまうだろう。

 刹那が物思いにふけっていることなど知る由もなく、転校生の紹介はさくさくと進行していく。


 扉が開き、着任者を迎え入れる。
 転入生は、揺ぎ無い足取りで教室に足を踏み入れた。

「シャルル・デュノアです、フランスから来ました。
 皆さん、よろしくお願いします」

 束ねられた金髪、西洋人らしい碧眼、そして柔らかい物腰と声。
 まるで少女なのではと錯覚するような少年が、そこに立っていた。

 静まり返る教室。
 何拍かの間を置いて、女子生徒の一人が呆然と質問を投げかける。

「お……男?」
「はい! こちらに、僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国より転入を――――」

 途端、黄色い声の大合唱。

「えっ?」
「男子! 二人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形! 守ってあげたくなる系の!」

 教室中を埋め尽くす大歓声に、刹那も意識を現実へ引き戻す。


(転入生……男性か?)
≪ああ、そのようだ……≫

 真面目に話を聞いていたらしいティエリアが、刹那に答える。
 何かが引っかかっているのか、いまいち歯切れの悪い答え方だったが。

 しかし、男性か。これにより、刹那の価値は相対的に減少したと言える。
 喪失したのはよくて半減、最悪七、八割程度か。

 この学園における刹那の存在意義は、世界で唯一の男性IS操縦者と言う一点であった。
 ところが、彼――――シャルルの出現により、刹那は世界に二人いるうちの片割れと言う扱いになってしまうのである。
 加えて、彼は異世界人だ。男性IS操縦者としてのサンプルは、シャルルの方が適任であろう。

(しかし……デュノア。ISメーカーのデュノアか?)

 参考書で目にした、その名前。
 第二世代でありながら第三世代ISにも引けを取らぬ能力を持ち、
 量産型ISの配備数では第三位を記録している名機、ラファール・ディヴァイヴを作り出した一流メーカーの一つである。


 そんな大手メーカーの子息が転入してきたと言うのは重大事だが、ティエリアの不審な態度を疑問に思ったらしい刹那は、再び問いかけた。

(ティエリア?)
≪……いや、何でもない≫

 何でもないと言うのなら、触れぬほうがいいだろう。
 いくらイノベイドとは言え彼も人間。悩みの一つや二つはあって当然である。
 そして、刹那もそれを無理に聞き出そうとは思わなかった。
 人と話すことで解決できる類のものならよいが、他人に知られたくない悩みと言う場合もあるのだ。

 刹那がこうしてティエリアと会話している間、常に鳴り響いていた高い声に、千冬が喝を入れた。

「騒ぐな、静かにしろ」

 怒気自体は強くないのだが、千冬と言う人間の言葉には不思議な圧力感がある。
 気圧されたのか、騒いでいた連中は皆一様に口を閉ざし、教室にはしんと静寂が訪れる。


「……今日は二組と合同でIS実習を行う。
 各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。
 ……それから、セイエイ」

 話の途中で名前を呼ばれて、刹那は千冬に目を向ける。

「デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子同士だ。
 ……解散!」

 千冬の声を皮切りに、女子がトレーニングウェアを取り出しに向かう。
 席から動かない連中も、結構な数がいるようだが。

 それを尻目に、シャルルは刹那の席に歩み寄り、

「君がセイエイ君? 始めまして、僕はシャルル・デュノア。よろしくね」
「ああ、よろしく頼む」

 挨拶を交わしながら刹那は立ち上がり、ドアへ歩きながらシャルルへと手招きをした。

「まずは教室から出る」

 女子が着替え始めるからな、と刹那が口にする前に、シャルルは後を追っている。
 なかなかどうして、物分りがいいらしい。




「俺たちは、アリーナの更衣室で着替える。
 実習の度に移動しなければならない、覚えておいたほうがいい」
「うん、わかったよ」

 廊下を歩きながら、刹那とシャルルは言葉を交わす。
 落ち着きがあり、素直な性格のシャルルは、刹那の記憶の中、誰かのことを思い出させた。

(似ている……アレルヤ・ハプティズムと)

 尖ったところがなく、温和で人当たりのいい彼と、シャルルはどこか同じ空気を感じさせる。
 付け加えて言えば、アレルヤ・ハプティズムやマリナ・イスマイールのような柔らかい雰囲気をもった人間は、刹那にとって非常に好ましい部類に入る。
 刹那がそんな回想に浸っていると、

「あ、噂の転校生発見!」
「しかもセイエイ君も一緒!」
「な、何……?」
「聞いた!? こっちよ!」
「者ども出会え出会え~!」
「見てみて、二人仲よさそう!」
「セイエイ君の黒髪もいいけど、金髪もいいわね!」

 一人が声を上げると、それが連なって大所帯となる。
 仲間意識というか連帯感と言うか、そう言ったよくわからない協調性を、二人の前で壁を作っている女生徒たちは発揮していた。


まずい書き溜めが尽きる……こんなに進むとは思わなかった
あとそう言われるとハム先生がマジで出て来ることになります
それを避けたい諸君は「(設定崩壊など)興が乗らん!」とレスをしたまえ! 乙女座は気分屋だ!

「……後れを取るな。行くぞ」
「えっ?」

 人の波が生まれているのは、後方と正面。前門の虎、後門の狼と言うやつだが、道はそれだけではない。
 刹那が選択した道は、右方。鍛え上げられた健脚と、無尽蔵に等しい体力でもって、刹那は廊下を駆け抜ける。

「あ~逃げた~!」
「追いかけるのよ!」
「待って~! せめて、写真を一枚~!」

 聞き覚えのある声を背にしながら、刹那はただただ道を行く。




「何で、みんな騒いでるの?」

 両足を動かしながら、シャルルが刹那に問う。
 息切れ一つしていないのは、IS操縦者として鍛えている証だろうか。

「今のところ、ISを操縦できる男性は俺たちだけ……そこに珍しさを覚えているのだろう」
「あっ……ああうん、そうだね」

 不自然な間を作りつつも、シャルルは応答した。
 シャルル自身、IS学園転入初日なのだ。慣れていないからこうなっているのだろう。

「進路を変更したことで、タイムリミットが迫っている……
 このままアリーナまで走るぞ。いけるか?」

 シャルルは頷いて、速度を引き上げた。




まさか賛成案が出るとは……私は聞いていないぞ!


「……振り切ったようだな」

 到着した更衣室で、二人は小休憩を取っていた。
 シャルルの体力が思った以上に長続きしたことで、刹那の予想を上回るタイムを出せたのだ。

「ごっ、ごめんね……いきなり迷惑かけちゃって」

 息を弾ませながら、シャルルは謝罪の意を述べた。
 刹那からすれば、この程度どうと言うことはないのだが。

 そもそも、刹那の体は完全に金属である。
 それ故、刹那の呼吸器官は、常人のそれとは比べものにならないほど強靭なのだ。
 その上、自己再生能力により、基本的に磨耗することがない。
 そんな事情もあって、刹那はこれと言って迷惑していなかった。

「気にするな。俺は気にしない」
「でも……」
「遅れたが、俺は刹那・F・セイエイ。よろしく頼む」

 でも、だって、でうじうじと始まりそうな罪悪感の吐露を断ち切るべく、刹那は強引に話題を切り替えた。
 昔のアレルヤにも、こう言うナーバスと言うか、過敏なところがあったものだ。
 戦士として成長し、自身の中に眠るもう一つの人格と折り合いをつけた今では、立派な男になったものだが。


「……うん。よろしくね、刹那。僕のことも、シャルルでいいよ」

 にっこりと笑いかけてくるシャルルに、刹那も小さな笑みで返す。

「了解した。……そろそろ刻限が近い。急いだ方がいい」

 言いながら、刹那は上着を脱ぎ、シャツのボタンを外していく。
 ソレスタルビーイングの制服と違い、IS学園の制服は脱ぎ着に時間がかかるのだ。
 まあ、すぐにパイロットスーツに着替えられるよう意匠されているソレスタルビーイングのそれと比べては、そうなるだろうが。

 ELSに指示し、人間だった頃と同じ外見を獲得している刹那の肌が、外気に晒される。

今書いてるところがハム先生を出す最後のチャンスなのでマジで安価
このレスから下二つめで女ハムor出番カットのどちらをレスしてください
ダメだった場合は下に繰り越しで
この手のスレで何やってんのと思うかもしれませんが今本気で悩んでるのでお願いします

なんとぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ

自分で言っといてなんだけどそれって原作レイプじゃね……



あ、分岐すればいいのか
今回はハム先生なしで、片が付いたらハム先生(♂か♀のどっちか)ありの話を書きます
安価は絶対なのにごめんなさい

ごめん自分で言っといて本当にごめん


「う、うわぁっ!?」

 素っ頓狂な声を上げながら、シャルルは両手で顔を覆い、刹那から視線をそらして、後ろへ体を向ける。
 その調子から、まだ金属の部分が残っていたかと刹那が姿見で上半身を確認するも、見た限り、どこも中東人らしい浅黒い肌だ。

「どうした、シャルル。着替えないのか」
「うっ、うん。着替えるよ? 着替える、から、あっち向いてて、ね?」

 動揺の色を隠そうともしないシャルルの声音に、刹那は内心首を傾げた。
 まさか、この年頃になって同性の裸を見たことがないというわけではあるまい。
 しかし一般的にはそうであるが、神経質な人間の場合、多少の気恥ずかしさを覚えることもあるのかもしれなかった。

「……すまない、無神経だった。気になるのなら、外で待っている」
「いっ、いや、気にしないで! 悪いのは僕だから……!」

 シャルルの声を受けながら、刹那はアリーナのドアから出て行く。
 背後でドアが閉まる音を耳にしつつ、刹那は壁に背を預けてシャルルを待った。




「本日から実習を開始する」

 グラウンドに集められた一組・二組は、隊列を組んで千冬の指顧を仰いでいた。

「まずは戦闘を実演してもらおう。
 ……凰、オルコット」
「はい!」
「はいっ!」
「専用機持ちなら、すぐに始められるだろう。
 前に出ろ」
「……めんどいなぁ~……なぁんであたしが」
「……何と言うか、こう言うのは見世物のようで気が進みませんわね……」
「お前ら、少しはやる気を出せ」

 先生の目の前で堂々と怒られそうな発言をしたにも関わらず、千冬の言葉から、咎めようとする意図は感じられない。

「では、対戦相手だが……」
「うひゃああああああああああ! どいてっ、どいてくださあああああああああああい!」

 千冬の言葉を飲み込むような大音響で、空から降ってきたのは―――― 一組の副担任、山田真耶。
 半分涙ぐみながらも、今なお地表へ向け高速で落下している。


 着弾地点は、丁度刹那たち生徒ど真ん中。
 密集隊形だったことかアダとなってか、生徒達は既に皆全力で避難していた。

 これを目にした刹那は、反射的にISを装備。クアンタのままだったため、都合がよかったのもある。
 ソードビットを自身の頭上へ、円を描くように展開、GN粒子で薄い膜を張るよう出力を調整。
 計五基のソードビットは五芒星のように配置され、中心の空間にビームシールドを作り出す。

 そこへ、丁度良く真耶が落ちて来る。

 ビームで形成されたネットに着地したことで、勢いが殺された。
 ISには標準でシールドを作る機能があるのだから、多少ビームに触れたところでエネルギーを消費するだけなのだ。
 リスクは少ない行動だった。


「あれ?」

 襲い来るであろう衝撃に身構えていた真耶は、ぱちぱちとまばたきを繰り返すと、
 自身の状態を把握し、それから刹那に助けられたことを理解して、所在なさげに頭を下げた。

「ごっ……ごめんなさいセイエイ君、ありがとうございます」
「気にするな。俺は気にしない」
「……その言葉、気に入ってるの?」

 シャルルがかけた問いに頷きつつ、ISを装着した真耶が千冬のそばへ移動するのを見届けて、刹那はISを解除した。

「……ハプニングがあったが、山田先生は元代表候補だ。
 ……さて小娘共、さっさと始めるぞ」
「え……あ、あの、二対一で?」
「いや、さすがにそれは……」

 千冬は淡々と話を進めていくが、いくら生徒と先生と言えど、数の不利を覆すのは難しいものだ。
 そんなことなどとうに把握しているらしい二人は、千冬へ抗議するが、

「安心しろ。今のお前達ならすぐ負ける」
「……」
「……」

 自信に満ちた返答を受けて、教習に入る他なかった。



 諸君、夜の挨拶、即ちこんばんはと言う言葉を、謹んで贈らせてもらおう。
 おっと、名乗るのが遅れたな。グラハム・エーカーだ。

 さて、私が何故このような舞台にひっばりだされたのか、しっかり説明しておこう。
 次のシーンは、セシリア・鈴音VS真耶の模擬戦闘だ。
 この試合に、一夏少年は介入していない。空気状態というやつだな。
 それ即ち、少年の出番は皆無であると言うことだ。
 加えて、アニメのワンシーンをただ文章に起こすと言うのも気が遠くなる作業……
 それ故、丸々カットしたために生じた障害を取り除くべく私が駆り出されたというわけさ。
 つまりは幕間、たった一人の道化なのだよ……

 そう言えば、3月23日発売「IS」のBlue-ray&DVDはもう予約したかね?
 なんとっ、未だ果たしていないと言うのか!?
 初回特典の豪華設定資料集はISのあらゆる設定が網羅されている重要資料だ。
 残念ながらガンダムやフラッグのデータは掲載されていないが、
 各種ISのカタログスペックはきっちり調査済みらしい。
 未だ予約していないフラッグファイターの諸君、私と共に予約に行くぞ!

すげー細かいけど、ソードビットは全部で6基ですよ
あえて5基展開したならごめんなさい

>>134
劇場版でELSの攻撃を防いだ時は五基だったので五基にしました


 上空から叩き落され、二機のISが轟音と砂嵐を巻き起こした。
 負けたのは、セシリアと鈴音のペア。
 代表候補生二人がかりだと言うのに、真耶のISには傷一つついていない。

 ――――完全試合である。

 いくらカスタムしてあるとは言え、旧式機で専用機二機を相手取り大勝を上げるなど、並みの腕ではない。
 それに対し、敗者の側は、

「まさか、この私が……」
「あんたねぇ……! 何面白いように回避先読まれてんのよ!」
「鈴さんこそ……! 無駄にバカスカと撃つからいけないのですわ!」

 地面に墜落し、互いにISの装甲が複雑に絡み合った格好のまま、二人で言い合いをする始末である。
 昔のティエリアと自分を見ているようで、刹那は思わずわずかな笑みを飛ばした。

「これで諸君にも、教員の実力が理解できただろう」 

 腕を組んだまま、千冬は二人の前まで歩み出ると、

「以後は敬意を持って接するように」

 言い含めて、千冬は視線を隊列に戻した。

「次に、グループになって実習を行う。リーダーは、専用機持ちがやること。
 では分かれろ!」




「デュノア君の操縦技術を見たいな~」
「ねえねえ、私もいいよね!」





「セイエイ君、一緒に頑張ろう!」
「わかんないところ、教えて!」

 いくらか予想はしていたが、刹那にとっては歓迎できない誘いであった。
 刹那は形式上IS操縦者ではあるが、ティエリアとELSのサポートを受けて初めて動かすことができるのだ。

(……ティエリア)
≪……あ、ああ、すまない刹那。どうした?≫
(……ティエリア?)


 ティエリアの本体は、今やヴェーダのターミナルユニットである。
 体調不良とは考えがたい。


(他の生徒に操縦の指導を行うことになった。力を借りたい)
≪了解した。ELSとのチャンネルを開く≫

 ティエリアのアドバイスを得ながら、刹那は生徒に稽古をつけていく。
 口と手を動かしながら、合間を縫い刹那は脳量子波でティエリアとのコミュニケーションを取っていた。

(……何を考えている?)
≪刹那?≫
(一日中、注意が散漫だ。……俺でよければ、話相手にはなれる)
≪そうか……ありがとう、刹那≫
(気にするな。俺は気にしない)
≪……本格的に気に入ったのか。
 まあいい、君には話してもいいかもしれないな……≫


 合同演習も終わり。

「ねえ刹那、今日のお昼、空いてる?」
「ああ」

 シャルルの質疑に、刹那は肯定の意を示した。
 先ほど大人気だったシャルルだが、見たところそれほど疲労していない。先ほどの全力疾走を含めて考えるに、体力はある方なのだろう。

「よかったら、お昼ごはん、一緒に食べない?」

 持ちかけられた誘いに、刹那は首を縦に振る。
 本来、ELSと同化した刹那に食事と言う行為は必要ないが、一応周囲には人間として通してあるのだ。
 昼食時に何も食べずにいると言うのも不自然極まりないため、形式上の食事を取ってはいる。

「それじゃあ、屋上でいいかな」
「あの……私も混ぜてもらって、よろしいでしょうか?」

 場所の検討を始めるシャルルへ、声をかけたのは、

「セシリアか」
「その、迷惑でしたら……」
「ううん、そんなことないよ。一緒に食べよう」

 おずおずと申し出るセシリアに、シャルルは柔らかい笑顔を見せた。
 さて、セシリアと刹那との距離は、あのクラス代表を決める戦い以来、確実に近づいていると言ってもいい。
 加えて、対話を第一に望む刹那からすれば、自身の立場はともかくとして、シャルルとも親しくしたいところである。
 この機会を逃すわけにはいかなかった。




「いい天気だね。晴れててよかった」
「ええ。私、雨はあまり好きではありませんもの。湿度は低すぎてもいけませんが、高すぎると、髪も痛んでしまいますし」
「ああ、そうだよね。僕も……いや、女の人は大変だろうね、そういうの」
(……やはり)
≪ああ。怪しくはある≫

 シャルルの言動に注目しつつ、一行は食事を取っていた。
 それはあくまでティエリアの疑念を明らかにするためであり、そこに他意はないことをここに記しておく。

 刹那の視線がシャルルに向いていることに気づいたのか、
 セシリアは小さく咳払いをしてから、

「刹那さん、その、私今朝偶然早く目が覚めまして、こういうものを用意してみましたの」

 背に隠していたバスケットを両手に持ち、そっと刹那に差し出す。

「イギリスは、料理が評価されていない傾向がありますから……
 せっかくですし、本当はどうなのか、刹那さんにも確かめてもらおうと思いまして」

 中に詰まっていたのは、イギリスが生み出した世界的に有名な料理、サンドイッチだった。
 見た目にも鮮やかであり、色合いやバランスは充分及第点、あるいはそれ以上だろう。


「デュノアさんもどうぞ」
「わぁ、ありがとう」

 刹那とシャルルが、それぞれ一つずつサンドイッチを手に取る。

「頂きます」
「いただきます」

 そのままごく自然な流れで、口に運び。

 シャルルの顔が、青くなった。
 刹那は自身の傍に置いておいたペットボトルのお茶を、キャップを外してシャルルに手渡す。

 シャルルは咄嗟にそれを受け取って、口内に水を流し込んだ。
 傍目にもわかるほどの喉の動きが数回繰り返され、何度か咳き込みつつも、シャルルはペットボトルから口を離す。

「デュノアさん、大丈夫ですか?」
「うっ、うん、喉に詰まっちゃったみたい。あ、あは、ははは……」

 笑いを振りまいて、シャルルはこの場を誤魔化そうとする。
 ともあれ、セシリアの本命は刹那。
 当の本人は、未だ食べている途中。咀嚼を繰り返し、よく噛んでから、飲み込む。


「……いかが?」
「……美味い」

 刹那は微笑んで、セシリアに返した。
 シャルルが驚愕の目を向け、セシリアは喜びの視線を贈る。


 さて、こう言ってはなんだが、セシリアの料理はお世辞にも上手くない。
 むしろ、一般的な味覚からすれば不味いと言っても差し支えないレベルであった。

 しかし、刹那は元少年兵。泥を食み、雨水を啜って生きてきた男である。
 一般人と比べ、‘下限’が突き抜けているのだ。


 その上、刹那はELS。舌まで金属と化している。
 さて、味覚や痛覚と言った五感、中でも痛みや不味いなどの感覚は、‘生命の危機’に密接に関連している。
 痛覚と言うのは、言わば命を保持するための危険信号なのだ。
 痛覚の一種でもある味覚。
 その中の不味い――――言うなれば臭い、苦い、気持ち悪い、などは、基本的に人間にとって悪影響を及ぼすものから発せられる味である
 (それを逆手に取り、甘い匂いを漂わせることで他の生物を引き寄せ寄生する虫や、
  苦み成分を実に含ませることで食べられるのを避けようとする植物などもあるが)。

 ELSとなったことで死から遠ざかった刹那は、味覚と言う瑣末な衝撃程度で命の危険を感じるほどヤワではないのだ。
 故に、セシリアの料理に対し、何ら脅威を検出しなかったのである。



 そんな事情もあって、刹那はセシリアの作ったサンドイッチを堪能していた。

「どんどん召し上がってくださって、かまいませんのよ」

 心底嬉しそうな表情を浮かべながら、セシリアは再びバスケットを差し出す。
 期待に応える意図があったのかはわからないが、刹那は手に持ったサンドイッチを食べきってから、バスケットへ手を伸ばした。

 刹那にとっては久々の、楽しいランチタイムであった。
 隣で、シャルルは笑みを保ち続けていたが。
 ……そこに苦笑いが混じっていたことは、記さずともわかることだろうが。


≪……刹那、僕の言葉を忘れていないか?≫
(……次の機会はすぐに来る)
≪…………≫
(…………すまない)


 午後の授業を消化し、HRを終え、刹那はISの操縦訓練を行うべく、いつもの場所へ向かおうとしていた。

「刹那」

 呼び止められて、刹那は振り返る。
 視線を下げて、己より頭一つは低いだろう身長の持ち主、シャルル・デュノアを見つけ、刹那は何の用かと問い返した。

「どこかに行くの?」
「ああ。ISの操縦訓練にな」
「そう言えば、いつも放課後に特訓してるって聞いたけど」
「俺の腕は、他のパイロットに比べて劣っている。
 その差を、少しでも埋めなければならない」

 無論、それは自己顕示欲や個人の欲求から来るものではなく、あくまで元の地球へ帰還する上での手段だが。
 それを知る由もないであろうシャルルは、

「僕も、加わっていいかな? 専用機もあるから、役に立てると思うんだ」

 キラキラと少年のように――事実少年だが――目を輝かせ、刹那に問いかけた。
 好意的に接してくれるのならば、それに越したことはない。むしろ願ってもないことである。
 刹那は、シャルルに向け首肯した。

「ああ。頼む」
「うん。任せて」

 シャルルは、柔和な笑みを見せる。

≪…………≫

 その笑顔に、やはりティエリアはどこか引っかかるものを感じていた。




「えっとぉ……きょ、今日も、嬉しいお知らせがあります」

 やや困惑した様子で、真耶は教壇に立っていた。

「また一人、クラスにお友達が増えました」

 ――――転入生が、いやに多い。何故この時期に? 刹那は、訝しまずにいられなかった。
 自分が転入生であるから、と言う事情もあるが、いかんせん、刹那を第一号として、続々と着任者が増えている。
 そして、その全てが、代表候補生、一流ISメーカーの息子など、大きなポストについている人間だ。

 刹那の思案を後に、真耶は続ける。

「ドイツから来た転校生の、ラウラ・ボーデヴィッヒさんです」

 背中まである長い銀髪に、左目につけられた黒いアイパッチ。
 肌は健康的でないまでの白さを保っているが、その儚げな容貌と違い、どこか近寄りがたい雰囲気をかもし出している。


「どういうこと?」
「二日連続で転校生だなんて……」
「いくらなんでも変じゃない?」

 流石に、生徒達も違和感を覚えているらしい。
 ざわめき出した教室に、真耶は焦りつつも、話をまとめにかかる。

「皆さん、お静かに! まだ自己紹介が終わってませんから……!」
「挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」

 千冬の指示に、転入生の少女――――ラウラは返答した。

 ……教官。軍との戦争を経験した刹那はともかく、ISを動かせるだけの一般人しかいないこの学園では、なかなか耳にしない単語であった。
 それを突っ込む暇もなく、ラウラはぱっと教室の中心へ向き直り、

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 それだけ、言った。
 皆、黙る。何か続けるのだろうと思って、黙る。
 その牽制合戦が、数秒間続いた。


「あの……以上、ですか?」

 沈黙に耐え切れなくなったのか、真耶がラウラに質問をなげかける。

「以上だ」

 きっぱりと言い切って、ラウラは視線を滑らせた。
 捉えたのは、刹那・F・セイエイ。
 敵意をむき出しにしたその目に、刹那は自然と警戒体勢に入る。

「貴様が……」

 彼女にしか聞こえない程度の音量で呟き、ラウラは歩を進める。
 そのまま、刹那の席までたどり着くと、



 思いっきり、右の手の甲でビンタした。


 刹那の頬へ、殴られた感覚が走る。

 だが、それだけだ。痛くはない。腫れもしない。

 繰り返し言うが、刹那はELSである。
 即ち、肌も、骨も、血液も金属なのである。
 それも、MSの装甲すら再現できるような、硬質の。

 そして、刹那は普段、肉体の硬度を一般的な人間と同じぐらいに調整してある。
 肩を叩かれたり、頬を突っつかれたりする際に、やたら硬かったら訝しまれてしまい、困るためだ。

 しかし、刹那は警戒態勢に入っていた。
 戦闘状態とほぼイコールであるその状態は、即ち、肉体の硬度を引き上げている状態である。

 そのため、結果的に、ラウラは金属塊へビンタを見舞った形になった。
 直立不動、立っていないが、ビンタをくらったところでピクリともしない刹那は、自分から立ち上がり、

「……すまない、手は大丈夫か?」

 いきなり攻撃してきた相手の心配までやってのけた。

「……いや刹那さん、まずはいきなりの態度の説明から求めるべきではありませんの?」

 セシリアが突っ込みに入るものの、ラウラは動かない。

 刹那を睨みつけながら、左腕で自ら右の手首を支え、

「……私は認めない。貴様があの人の‘特別'であるなど……」

 敵対の意思の表れとして、目を細める。

「認めるものか!」


今日はここまで。にしたい。
ラウラがまだ登場したばっかりだけど

一日で書き溜めの半分が消えた事実に、恐怖を感じられずにはいられない……

あんまりやりすぎると作品のヘイトみたいになってしまうのと、
刹那が無敵すぎるとクロスオーバーとしてどうなのよって言う一面もあります

作品の扱いはあくまで平等でないといけないので

久しぶりに面白いSSだー

颯爽登場! 銀河>>1

保守ありがとうございます
とりあえず今日は嫁宣言まで進めたいと思います
投下は前回と同じく夕方以降になりそうです

昨日(今日)放送した分は録画したまままだ見ていないので、視聴してからやるかどうか決めます

あとラッキースケベイベントは大体回避することになります ご了承ください

保守ありがとうございます

投下します


気持ちせっさんを強くしました


 試合開始前、選手はアリーナの中心で待機することになる。
 そこに、刹那たちはいた。
 当然、向かい合う敵手は――――ラウラ・ボーデヴィッヒ。

「一戦目で当たるとはな……待つ手間が省けたと言うものだ」
「…………」

 確かに、一回戦で当たれたのは幸運ではあった。
 先の模擬戦闘を見るに、ラウラの実力は本物である。
 加えて、あの攻撃性だ。大会と言う空気も相まって、生徒達も危機感が薄れている。死人が出かねない。
 それを阻止できたのは、不幸中の幸いであった。

 ラウラと刹那、シャルルの視線が交差する。
 そして、一人尋常でない疎外感と場違い感に苛まれている女子生徒は、涙目になりながらも敵意に耐えていた。


 そんな連中をよそに、カウントダウンが開始される。
 ――――3。

「……ラウラ・ボーデヴィッヒの相手は俺がする」
「えっ、でも……」

 ――――2。

「勝算は有る。もう一人を頼む」

 ――――1。

「……わかった。でも、無理はしないでね」

 ――――0。


 電子音の音階が高くなり、それに合わせ、刹那とラウラはお互いに向け突撃。


「叩きのめす!」
「駆逐する!」

 エクシアのGNソードが、太陽光を反射してきらめいた。
 その鋭い刃が、ラウラの喉仏へ迫る。
 急所へ直撃すれば、たちまちシールドゲージは空になるだろう。

 だが、そんなことはラウラとて百も承知だ。
 予定調和とばかりに右腕をかざし、AICを起動。

 進路上に展開されたそれへ、GNソードが突き刺さる。
 慣性を失い、エクシアの動きが止まった。

「開幕直後の先制攻撃か……分かりやすいな」

 ラウラが、口端を吊り上げる。
 ――――馬鹿が。
 口に出さずそう告げると、シュヴァルツェア・レーゲンのレールカノンが稼動。
 フレキシブルに動かせるためか、その巨大な砲身を自在に操り、刹那へ銃口を押し付ける。

 エネルギーが充填され、レールカノンが放たれた。




 刹那とて、AICの特性は把握している。
 右腕のGNソードを、刹那は躊躇なく‘取り外した’。

 そのまま地面を蹴り、空中へと舞い上がる。
 AIC力場に進入していたのは、GNソードの先端。
 その部位を外すことで、AIC力場から抜け出したのである。
 前回の戦闘で、有効範囲を見切っていたのが有効に働いた。

 ラウラの頭上を取った刹那は、GNロングブレイドを抜刀。
 GNロングブレイドは、GNソード以上の重量と刃渡りを誇る。
 切れ味では劣るが、斬馬刀の要領で叩き斬ることを目的とした兵装なため、デメリットとしては薄い。

 そのGNロングブレイドを、刹那は重力の加護を受けつつラウラに押し付ける。
 AICは、同時に二つ展開することが出来ない。多方向からの攻撃には、対処しきれないはずだ。

 ラウラは舌打ちをこぼすと、GNソードを捉えたAIC力場を解除。
 上空から襲い来る刹那へ、右腕のビームブレードを構え、迎撃。

 迎え撃たれることなど、刹那は予測できている。
 GNロングブレイドとビームブレードがぶつかり合うその寸前、刹那はGNビームサーベルを引き抜く。
 自らの得物を持ち替え、ラウラの虚を突き、GNビームサーベルを両肩に突き刺した。


 しかし、ラウラとて一流の兵士。揺さぶりにも動じることなく、
 ビームブレイドでロングブレイドを弾き、右肩を狙うビームサーベルとのつばぜり合いに持ち込む。
 結果、シュヴァルツェア・レーゲンの左肩に、エクシアのビームサーベルが差し込まれた。

 眉をひそめると、ラウラは刹那に向けAIC力場を発動しようとする。
 動きからそれを読み取った刹那は、ラウラの肩をえぐったままのビームサーベルを踏み抜き、中空へと退避した。
 AICの間合いを、大体ではあるが把握しているのだ。

 更に肩部装甲をえぐったビームサーベルを無造作に引っこ抜くと、
 ラウラは苛立ちを隠そうともせず、足元のGNソードとGNロングブレイドをまとめて蹴り飛ばす。
 勢いよく地面を転がったそれは、アリーナの壁にぶつかった。
 回収は難しいだろう。背を向けていては、レールカノンの餌食だ。



「ねえ、あれ……」
「ええ、動きがよくなっていますわ……」

 観客席から試合を観戦している鈴音とセシリアの二人は、思わず刹那の動きに目を奪われていた。
 刹那の挙動が、前とは違うのだ。反応が早く、対応が正確になっている。

 そう、刹那はこれまでこなしたISでの戦闘は、模擬戦を含めれば相当な数に達するのだ。
 それほどの時間をかけたことで、刹那はようやくISに慣れた。
 セシリアの指導の下での特訓と、シャルルとの訓練が、実を結び始めたのである。

 そうなれば、刹那はガンダムマイスター。いくつもの戦場を渡り歩いた、戦いのプロフェッショナルだ。
 たかが十五年の歳月しか重ねていない小娘に、引けを取る要素がない。

 刹那の本領が、発揮されようとしていた。



 今度はラウラから、刹那に吶喊してくる。
 直線を引くような、単純な軌道。しかし、それは恐ろしく早く、それでいて隙がない。
 高速で接近しながら、ビームブレードを横に振るう。

 しかし、ここは刹那の距離だ。
 エクシアの武器は、残り少ない。セブンソードのうち、四つを失っている。
 それ故、ラウラは攻め込んだのか。

 ならば、それは見当違いだ。


 ラウラのビームブレードと、刹那の‘GNソード’がぶつかり合う。
 突如として出現したGNソード。その事実に、ラウラの目が見開かれる。先ほど、ラウラは刹那の武器を移動させたはずなのに。

 その前提からして、間違っているのだ。遠くにやるだけでは、刹那の武器を奪えない。
 今やISを構成しているのは、ELSなのである。ELSはMSと同等の速度での単独行動が可能なのだ。
 刹那が手ずから拾わなくとも、武器の方からエクシアに戻ってくるのである。


 その事実を、ラウラは知らなかった。知りえなかった。
 故に、動揺する。太刀筋が、わずかに鈍る。
 刹那が、それを見逃すはずもない。

 ビームブレードと打ち合ったGNソードをそのままに、刹那は空いた左手でGNショートブレイドを抜く。
 そのまま、無防備なラウラの鳩尾へ、ショートブレイドを突き立てる。

 それに気づいたラウラは、地面を蹴り後方へ撤退。
 体勢を立て直すべく、刹那から離れようとする。

 それを、刹那は許さない。
 GNショートブレイドを投擲し、自身も直進。二つの弾丸が、ラウラに迫る。

 咄嗟に、ラウラは正面へAIC力場を展開。
 GNショートブレイドが、慣性を失って落下する。


 GNショートブレイド、だけが。


 後方から、気配。
 気づいても、振り返れない。
 ラウラは、たった今AICを使用したばかりである。

 だから、刹那は容赦しない。
 今が好機とばかりに、袈裟斬り、横薙ぎ、縦斬りの三連撃を、ラウラの背に刻み込む。

 ラウラは苦悶の表情を浮かべつつ、しかしされるがままではいてやらぬ、と、シュヴァルツェア・レーゲンの装甲の一部をパージ。
 四本のペンデュラムが、刹那に向かう。

 刹那は一時攻勢を緩め、空中へと上昇。
 円を描くように動き回り、ペンデュラムから逃れようとする。

 そこを、ラウラは狙う。
 レールカノンのサイトを定め、刹那の進路を予測。
 直撃するようにタイミングを計り、トリガーを引く――――


 それが、出来ない。
 背中に、実弾の乱射。
 舌打ちをこぼしながらラウラが振り向けば、アサルトライフルを二丁構えたシャルルが、射撃体勢に入っていた。
 彼女の相手をしていた生徒は、既に戦闘続行は不能。
 刹那がラウラとやりあっている間に、シャルルは片をつけたのだ。
 
 銃に気を引かれたラウラは、ひとまずうっとうしいシャルルを仕留めようとターゲットを切り替え、

「お前の相手は、この俺だっ!」

 背後から、GNダガーの奇襲を受ける。
 シールドゲージが削れる音がするが、構わずラウラはシャルルに接近。
 シャルルもバックブーストで逃げ回るが、しかし、世代差が出る。
 スピードにおいては、シュヴァルツェア・レーゲンの方が上だ。
 AIC力場の中へ、シャルルが取り込まれ――――


「刹那!」

 シャルルが、声を張り上げた。
 それは、助けを求める弱気なそれではない。
 ならば、これは、仕組まれた状況なのだ。

「オーバーブーストモードを使う! ティエリア!」
≪了解! GNドライヴの安全装置を解除する!≫

 ティエリアの手によって、太陽炉を抑えるパーツが外される。
 一時的ながらも最大出力を誇る、ガンダムエクシアの奥の手、オーバーブーストモード。

 GNソードを真っ直ぐに突きつけると、エクシアの背中が‘爆ぜた’。
 いや、違う。爆発したように見えたのだ。あれは、GN粒子の光。

 桁外れの加速力を得たエクシアが、ラウラを襲う。
 あの勢いでGNソードが突き刺されば、大破は免れまい。
 ラウラはシャルルのAIC力場を解き、刹那に対して自ら攻める。

 ラウラと刹那との間に、直線が結ばれた。
 当然、ラウラはAICを使用し――――



 背後から、GNソードによる一撃を受けた。
 何故? ラウラが思考するが、しかし答えは出ない。
 糸の切れた人形のように、シュヴァルツェア・レーゲンが落下する。
 地面に墜落したそれは、アリーナを揺るがす轟音と、視界を覆う砂埃を立てた。


 何故、刹那はAICの影響を受けなかったのか。
 簡単な話である。
 後ろ側に、回り込んだだけなのだ。
 オーバーブーストモードであれば、エクシアの機動力は第四世代ガンダム――――ツインドライヴ搭載型に匹敵する。
 それに、MSで養われた刹那の操縦技術が加われば、敵機のシールドを避け、弱点に攻撃をねじ込むことなど容易い。


 ――――だが。途中で強引に進路変更した以上、破壊力は大きく削がれた。
 試合終了のアナウンスがないことからも、未だ敵機は健在であることが知れる。

(ティエリア、太陽炉は?)
≪……エクシアのGNドライヴはしばらく使えないだろう≫
(了解した。準備を頼む)
≪わかった。最中は無防備だ、警戒を≫


十分だと長いなあ 七、八分なら大丈夫かな


 ――――私は、負けられない。負けるわけにはいかない!

「遺伝子強化試験体、C-0037。
 君の新たな識別記号は、『ラウラ・ボーデヴィッヒ』だよ。
 ……『ラウラ・ボーデヴィッヒ』」

 頭の中に、男の声が反響する。
 高くもない。低くもない。くせもない。感情もない。
 およそ個性と言うものを没した声が、頭の中で、ぼんやりと響く。


 ――――私はただ、戦いのために作られ、生まれ、育てられ、鍛えられた。
 ラウラ・ボーデヴィッヒは、兵器であった。

 ――――私は優秀だった。最高レベルを維持し続けた。
 ラウラ・ボーデヴィッヒは、機械であった。

 ――――しかしそれは、世界最強の兵器、ISの出現までだった。
 ラウラ・ボーデヴィッヒは、軍人であった。

 ――――ただちに私にも、適合性向上のため、肉眼へのナノマシン移植手術が施された。
 ラウラ・ボーデヴィッヒは、機材であった。

 ――――しかし私の体は適応しきれず、その結果……出来損ないの烙印を押された。
 ラウラ・ボーデヴィッヒは、無用であった。

 ――――そんな時、あの人に出会った。
 ラウラ・ボーデヴィッヒは、


 人間に、なった。


 ――――彼女は極めて有能な教官だった。
 織斑千冬は、希望であった。

 ――――私はIS専門となった部隊の中で、再び最強の座に君臨した。
 織斑千冬は、戦士であった。


「どうして、そこまで強いのですか? ……どうすれば、強くなれますか」
「……私は強くない。私では、敵わなかった者がいる」
(……違う。
 ……どうして、そんな弱気な顔をするのですか。
 私が憧れる貴方は、強く、凛々しく、堂々としているのに……)
「……ガンダムと言う言葉を、知っているか?」
「…………いえ」
「そいつさ。私では、勝てなかった。……それで、このザマだ」

 ――――ガンダム。

(……許せない。
 教官にそんな運命を強要した者を……
 ガンダムを、私は認めない……!)

 ――――刹那・F・セイエイ。
 ――――ガンダムエクシアの、パイロット!


(力が欲しい……!)

「君は、より強い力が欲しいんだね?」

 頭の中に、男の声が反響する。
 高くもない。低くもない。くせもない。
 ――――感情は、あった。
 ほくそ笑んでいる。その嘲り、不愉快だ。しかし、構わない。例え無様であっても、力を手に入れる。

(……寄越せ、力を)

「……そうかい。素直なのは、嫌いじゃないよ」

(比類なき、最強を!)



 ラウラの叫びが、会場に木霊する。
 雷の様な放電現象が、シュヴァルツェア・レーゲンの着地点を中心に広がりだした。

 その衝撃で、砂塵が晴れる。
 姿を現したラウラは、しかし、予想と風貌を違えていた。

 ISが、溶けているのだ。
 粘土をこねているかのように、ぐねぐねと奇怪な動きを繰り返し、ラウラ・ボーデヴィッヒを取り込もうとしている。

「何……!?」

 その光景の異常性に、シャルルが声を漏らした。

(……ティエリア)
≪ああ、急ごう。……あれは、危険だ≫

 刹那も、シャルルと同じく、何かを感じていた。
 しかし、それは感覚的なものではない。
 形を持った、いやな予感。不安。
 ――――この世界に来てから一度として感知しなかった強い脳量子波を、ラウラが放っているのだ。


 ラウラの顔は、恐怖に引きつっているように見えた。
 初めて見せる、弱い表情。では、あれはラウラの意思とは無関係だとでも言うのだろうか。

 その様を見守るしかない二人をよそに、ISだった黒い固形が、ラウラの全てを包み込んだ。
 彼女の白い肌も、銀色の髪も、黒どろどろとしたそれに覆われている。

 そのうち、ISだったそれは、ヒトガタを作り始めた。
 未だバランスの狂った異形だが、しかし周囲の人間に嫌悪感を抱かせるには充分にグロテスクだ。

 学園側も予想外の出来事だったのか、サイレンが鳴り始め、焦った様子のアナウンスが入る。

『非常事態発令! トーナメントの全試合は中止!
 状況はレベルDと認定、鎮圧のため、統治部隊を送り込む。
 来賓、生徒はすぐに避難してください』

 観覧席のシェルターが閉まり、来賓席の人間が慌てて逃げ去っていく。
 それをものともせず、黒い粘着質のそれは、ついに成形を終えた。

 黒い、甲冑。
 シュヴァルツェア・レーゲンの剛健さは見る影もなく、ぬらりと光る体表が、言い知れぬおぞましさを感じさせた。
 その体長は、ISの二倍……先の襲撃者を彷彿とさせる外見だ。
 しかし、その造形は、どこか人間を――――それも、女性をイメージさせる。


 あれは、本当にラウラ・ボーデヴィッヒなのか?
 刹那は、そう疑わずにはいられなかった。

 事態を収拾すべく、教員がISを装備してやって来る。
 ……黒いISは、動かない。

 警戒のためか、教員がライフルを構えた。


 そして、吹き飛ばされる。
 アリーナの壁へ、緑色のISが叩きつけられた。


 突然の攻撃に、教員らは反射的に武器を構える。
 黒いISが装備しているのは、一振りの日本刀だけだ。
 距離を取れば、一方的になぶれるはず。
 そこへ、

『待て、銃を捨てろ!』

 通信機越しに、千冬の指示が下される。
 教員らは、素直にそれに従った。敵の前で警戒態勢を解くなど自殺行為だが、
 千冬がそんなことをさせるわけがないと、信頼しているのだ。

 皆が銃を地面に置いた途端、黒い巨人の動きが止まる。


(あの動き……敵対者にのみ反応しているのか?)

 刹那のそれはあくまで当て推量だが、そう推理することも出来た。
 しかし、真相は分からない。あの黒いISが、人語に対して応答するかどうかもわからないのだ。

(……ダブルオーライザーを出す)
≪了解……形態移行に移るぞ≫

 そこで刹那が取った選択肢は、トランザムバーストによる意思の伝達だった。
 あの中にラウラが残っているのなら、GN粒子を介して対話が行えるはずだ。

 刹那のISが発光、エクシアの装甲が、変形していく。
 白を中心としたカラーリングが、青を基調とした色彩へ。
 二つのGNドライヴが、肩へと配置される。
 セブンソードは、GNソードⅡとⅢへ形を変えた。

 光が収まり、刹那は早速トランザムのために操作を開始する。


「刹那、そのIS……」
「説明は後だ。今は、あの機体と対話を試みる」
「対話……?」

 事情を知らないシャルルや教員は面食らっているようだが、構っている暇は無い。
 二つのGNドライヴが、共鳴を開始した。

≪ツインドライヴ、同調……やれ、刹那!≫
「トランザム、バースト!」

 GN粒子と、ダブルオーライザーの機体が、赤く染まる。
 刹那を中心に、高濃度の粒子空間が形成された。



クアンタじゃないんだな

未来への水先案内人はこのグラハム・エーカーが引き受けた!

支援

作者はどこまで書くんだい?


>>523
ダブルオーライザーを出したかったので
>>524
少なくとも放送分(9話)まではやります


(私……私は……)

 ラウラの意識は、曖昧だった。
 それに合わせ、体もぼけっとしている。
 宇宙空間を漂っているような心地だった。

 何故、こんなことになっているのだろう。
 そう思ったが、ラウラはその疑問を放り投げてしまいそうになる。

 何だか、ものが考えられない。思考より、眠気が勝っているような状態だ。
 けれど、彼女は思う。何故? 何故だろう。

 やがて、ラウラは結論にたどり着いた。
 ――――感情だ。嫌だったから。

 ……感情。どんな感情だろうか。
 いや、感情?
 彼女の中の感情は、全て外に出て行ってしまったような気もするし、全部奥にしまいこんだような気もする。

 それはいい。とにかく嫌だったのだ。
 嫌。嫌だった。何が嫌だった?

 教官が、あんな顔をするのが嫌だった。嫌だ。それは嫌だろう。
 何故、そうなる? 教官を沈ませて、心に傷跡を残したのは誰だ?

 段々と筋道が立ってきたラウラの思考。
 そして浮かんだのは、一人の男の顔。

「刹那・F・セイエイ……!」
「……ラウラ・ボーデヴィッヒ」

 忽然と、この不思議な空間に出現した刹那へ向け、ラウラは敵意を露にする。
 教官に嫌な思いをさせるこいつが嫌いだったし、何より、ラウラは負けた。だから、余計に腹が立つ。

「……やはり、このISの中にいたのか」
「貴様、何を……!」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。お前と対話するために、俺はここへ来た」
「対話だと……!」
「ああ」
「私と教官の敵である貴様に、話すことなど……!」
「教官……織斑千冬か」

 何故、と言いかけて、ラウラは口をつぐむ。
 この場所は、どこか変だ。そんなつもりはないのに、自分の気持ちを、打ち明けてしまう。

これって例の裸空間だよな?

>>531
IS基準(ラウラだけ裸)か00基準(みんな全裸)かはご想像にお任せします


「教えてくれ、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
 織斑千冬と俺の間に、一体何があった」
「貴様……! 白を切るつもりか!
 大会の前日、教官を襲ったお前が……!」
「大会……?」
「第二回IS世界大会だ……!
 教官は決勝まで勝ち残ったが、試合前日に何者かの襲撃を受けて重症を負い、不戦敗に終わった……!」
「…………」

 そんな事情があったのか。刹那は、今始めて千冬の過去を知った。
 千冬は、あまり自分のことを話したがらない。
 ましてや、汚点になりかねないそんな話、語りたくはないだろう。

「その襲撃者の名を、私は知っている……!
 ガンダム……! 貴様と同じISを装着した男が、教官の不意を打った!」
「ガンダム……!?」

 刹那がこの地球を訪れたのは、つい先日のことである。
 時間跳躍の技術は、西暦2364年現在、未だ開発されていない。

「そのガンダムは、俺ではない」
「何を……!」
「ガンダムは、紛争を根絶するためにある。
 そのような世界を歪める行為を、ソレスタルビーイングは良しとしない」
「知ったことか!」
「お前は知らなければいけない。
 その怒りは、矛先を違えている。
 そのままでは憎しみが歪みとなり、やがて争いを生む……!」
「そうさせたのはお前だ! ガンダムと言う存在だ!」
「違う。俺たちは、未来を切り開くために戦っている」
「…………」

 刹那の低い声に、ラウラは押し黙った。 
 彼が嘘をついているわけではないと、直感的にわかったからだ。
 誰に説明されたわけではないが、ラウラはそう思った。この場所は、きっと、己の思いを伝えるためにある。

「……お前は戦いに執着しすぎている。悪意による戦いは、世界を歪めるだけでしかない……何が、お前をそうさせた」
「……私は」

 ラウラは、それだけ言って、黙った。
 しかし、刹那にはわかる。高濃度のGN粒子が散布されていれば、自然とわかるのだ。

「お前は……超兵なのか」
「……似ている。貴様の考えている、それとな」

 超兵と言う言葉の意味を、ラウラは知らない。
 だが、刹那の意思を通して、理解できる。
 それと同じ原理で、刹那もラウラの生まれを把握したのだ。

「戦うだけの人生……俺もそうだ」
「…………」
「だが今は、そうでない自分がいる」

 刹那の目は、まっすぐだ。
 その瞳を、ラウラはじっと見つめた。自分と同じ、金色の虹彩。

「お前は変われ。
 お前なら、破壊するだけではなく、分かり合うことが出来るはずだ」
「……私には」
「出来る。お前は変わるんだ。
 未来と向き合うために、自分自身を変革させろ」
「……私は、強くない。
 教官を失い、矜持すら砕かれて……何を頼りに生きればいいんだ」
「ならば、生きるために戦え。
 自分自身のために、未来を切り開け。その先に、必ず何かがある。
 お前はまだ生きている。……生きているんだ。命がある限り、人は変わっていける」

 刹那自身が、そうしたように。
 ラウラも、きっと変われるはずなのだ。


「……お前は、何故強くあろうとする。どうして、強い」
「俺は、託された……仲間の希望を、変革の意思を。だから、歩みは止めない。
 そのために俺は戦う。破壊するためではない、守るための戦いを成す」
「……守るための、戦い」

 ――――それはまるで、あの人のようだ。

「……オーバーロード……!?
 トランザムの限界時間か……」
「そうか……もう、終わるのだな」
「ああ。だが忘れるな、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
 お前は変われる……未来のために、変わるんだ」



「私は……」

 覚醒したラウラ・ボーデヴィッヒは、ベッドに体を横たえていた。
 節々が、痛む。鍛えられているこの体が、こうまで疲労するとは。

「……何が、起きたのですか」

 ベッドのそばで椅子に腰掛ける千冬に、ラウラは問いかけた。
 表情を崩さないまま、千冬は答える。

「……一応重要案件である上に、機密事項なのだが……VTシステムを知っているな?」
「ヴァルキリー・トレース・システム……」
「そう。IS条約で、その研究はおろか、開発、使用、全てが禁止されている。
 ……それが、お前のISに積まれていた。
 精神状態、蓄積ダメージ、そして何より、操縦者の意思。
 ……いや、願望か。それらが揃うと、発動するようになっていたらしい」
「……私が……望んだからですね……」

 ラウラは、ぎゅっとシーツを握った。


 弱ったその心を再び持ち直させるように、千冬は声を張る。

「ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「はっ……はいっ」
「お前は誰だ」
「私は……」

 質問の意図を探りかねて、ラウラは口をつぐんだ。
 それが狙いだったのだろう、千冬は構わず続ける。

「誰でもないなら丁度いい。
 お前はこれから、ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「えっ……」
「それから……お前は、私になれないぞ」

 そう言い残して、千冬は保健室から出て行く。
 扉が閉まる音がして、ラウラは力なく天井を見つめ。

 それから、笑った。腹の底から、笑っていた。



 騒動が収拾して、しばらく。
 シャルルと食卓を囲みながら、刹那は学園側からの通知に目を通していた。

「結局、トーナメントは中止だって。でも個人データを取りたいから、一回戦は全部やるそうだよ」
「中止……」
「ちょっと残念?」

 シャルルの問いに、首を横へ振る。
 進んで戦いたくはないが、一応学園側への売り込みは必要だ。
 複雑な事情が絡み合っていたが、ここは一応否定の意を示しておいた。

 そこへ、明るい声が介入してくる。

「セイエイ君、デュノア君、朗報ですよ!」

 姿を現したのは、クラス副担任の真耶だった。

「今日は大変でしたね~。でも、二人の労をねぎらう素晴らしい場所が、今日から解禁になったのです!」
「場所……?」

 シャルルが聞き返すと、真耶は待ってましたとばかりに大げさな動きをとり、言った。

「男子の、大浴場なんです!」



≪刹那、錆びる心配はない。ゆっくりとつかっておけ≫
(……ああ)

 浴槽の中で、刹那はリラックスした体勢のまま風呂に入っていた。
 やろうと思えば人間と同じ体・感覚を復元できる以上、堪能しない手はない。

 しかし、こうも大きな風呂場に一人だと、どうにも寂しいものを感じる。
 せめてティエリアが体を持っていれば、いつも手間をかけてばかりな以上、よりくつろげただろうに。

≪僕のことは気にするな、感覚共有は行っている≫

 ティエリアの言に、そうか、と刹那は納得した。
 同一個体である以上、ティエリアと刹那の五感はリンクしている。
 やろうと思えば、ターミナルユニット内でも擬似的な入浴は可能なのだろう。

≪せっかくだ、もう少し――――≫
「お、お邪魔します……」
(敵襲……!?)
≪……何度も言うが、敵ではないぞ≫

 いきなり浴場へ介入してきた、第三者。今の声は、


「シャルル……!? 何故ここに!」
「僕が一緒だと……嫌?」
「そうではない。理由を――――」
「やっぱ、その……お風呂に入ってみようかな、って。迷惑なら、あがるよ?」
「……なら、俺は上がる」
「ああっ、待って! 話が、あるんだ……大事なことだから、刹那にも聞いてほしい」

 呼び止められて、刹那は動きを止めた。
 ゆっくりと、再びお湯に体を沈めると、シャルルへ背中を向けるよう方向を変える。

 シャルルはぎこちない足取りで浴槽に足を入れると、そっと刹那の近くで腰を下ろす。
 丁度、背中合わせの形になった。

「その……前に言ってたことなんだけど」
「……学園に残ると言う話か?」
「そう、それ。……僕ね、ここにいようと思う。刹那がいるから、僕はここにいたいと思えるんだよ?
 ……それに、ね? もう一つ、決めたんだ。僕の、在り方を」

 背中合わせのまま、シャルルは言葉を紡いでいく。


「在り方?」
「僕の事を、これから『シャルロット』って呼んでくれる?
 ……二人きりの時だけでいいから」
「シャルロット……本名か?」
「そう。僕の名前……お父さんがくれた、本当の名前」

 刹那は、本名を明かしていない。
 カマル・マジリフ――――その名は、ガンダムマイスターとなった時に捨てたのだ。
 だから、刹那は刹那のままだ。そのことを、刹那は今更口にするまいと決めた。

「……了解した。これからもよろしく頼む、シャルロット」
「……うん」

 シャルルは――――シャルロットは、小さな声で、けれどしっかりと返事をした。


あああああああああああああああああああああああああ

やっちまったああああああああああああああああ

      )、._人_人__,.イ.、._人_人_人人_人
/////<´ クアンタアアアアァァァ───ッ!!! > //////
///// ⌒ v'⌒ヽr -、_  ,r v'⌒ヽr ' ⌒ ⌒ヽr ' ⌒ / //// ///
// //////:::::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::、:.:.:.`丶、:::::::ヽ:\:.:.:.:`ー一ッ'/ ///
// / / //:::::::::::::::::/::.:./:l:.:.:.l:.::.:::::.:::.:.:‐-:.:.:_\:.:.:.ヽ:.ヽ―… ´ // ///
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、___/::.:}.:.:::./:.::l:./!:.ハ:.lヽ:.:.ヽ:.:.:.::.:.:.:ハ:.:ト、.:|:.:::`ヽ:::l;.::::', // /////
\:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.{:.:.::レ l:l ヘl  、:.:::l:.:.:.:.::../ |/ ヽ:!:.::.:.l:.}.::|l:::.:::| // /////
//>一'.:.:.:.:.:.}:.:.::l <__,ノ`ヽ!:.:./ヽ、_ ノ レ.'.:.::ハ:.::l // // /
//` ー┬:.;.:.:.ヘ:.:.ゝ、 (y○')`)ノイ (´(y○')ノ::./:/:/ /}:///////
//////{:/{:.:.;.ヾ、:.`=‐( (        ) )+ ‐彡::/::///// // //
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/// ://////ヽl:.::::.ゝ  ( (.||||! i: |||! !| | ) )  /::.:l.,ノ'^`// /// ////
////////////iハ:.l、:l + U | |||| !! !!||| : U   /八!// // ///////
// // ////////ゝ:::::::   | |||| !! !!|||l     ///// // ///////

ごめん、レイ……俺は、俺は……

しかもシャルの名前ってお父さんじゃなくてお母さん……



俺は……ガンダムに、なれない……


 翌日。

「…………今日は、皆さんに、転校生を紹介します」

 加減を悟ったのか、真耶は言いづらくも教師の職務を果たしていた。
 しかし、当の着任者はまったく意に介さず。

 つかつかと教壇の隣に歩み寄り、にっこりと笑みを浮かべて名乗った。

「シャルロット・デュノアです。みなさん、改めてよろしくお願いします!」

 束ねられた金髪、西洋人らしい碧眼、そして柔らかい物腰と声。
 一人の少女が、そこに立っていた。

 当然、皆から困惑の声が上がる。

「ええっとぉ……デュノア君は、デュノアさん、と言うことでした……」

 事態を収めようと思ったらしい真耶は、しかし全く収められていない。

「……は? つまりデュノア君って女?」
「おかしいと思った。美少年じゃなくて、美少女だったってわけね」
「セイエイ君、あんなに仲良かったのに知らないってことは……ちょっと待って、昨日は確か、男子が大浴場使ったわよね!」

 クラスの女子からしっちゃかめっちゃかに言葉を投げつけられて、刹那は対応に困った。
 シャルロットから入って来たわけだが、まさか、それを口にするわけにもいくまい。
 仕方が無いと、刹那は口をつぐんだまま耐えた。

 すると、遠くから、教室の後ろの方に飾ってあった花瓶が刹那に迫る。
 誰かが投げたのか、あるいは騒ぎで飛んできたのか。

 ともあれ、キャッチするべく刹那は身構えて――――

 窓から飛び込んできたラウラが、その花瓶を停止させた。
 見れば、ラウラはISをまとっている。
 それによるAIC、慣性停止能力。即ち絶対防御。

「ラウラ・ボーデヴィッヒ……!」

 予想外のエトランゼの出現に、刹那が小さく息を漏らす。
 ラウラの怪我は軽くないと言われて、例の事件以降、刹那は顔を合わせていないのだ。
 どう出る、と警戒する刹那の胸倉へ、ラウラは手を伸ばした。

 それを、刹那は避ける。
 足を後方へ移動させ、軸をずらして回避。

 またも、ラウラが右手を刹那に伸ばす。
 刹那は地面を蹴り、間合いを保って回避。

 再び、ラウラが右手を刹那に伸ばす。
 刹那はしゃがみ、高度を違えさせることで回避。

 そのまま、両者にらみ合う。
 それが数秒続いて、ラウラは告げた。

「……悪いようにはしない。じっとしていろ」


 そう言われて、刹那は立ち上がり、身動きをやめた。
 対話は、信じあうことから始まる。
 この前のトランザムバーストから、ラウラはどこか雰囲気を変えた。ならば、賭ける価値はある。

 ゆっくりと、ラウラの右手が刹那の襟元を掴む。
 そのまま、手元へと引き寄せると、

 ラウラは、刹那にそっと口付けた。


(何……!?)
≪刹那!?≫

 予想の斜め上の行動に、刹那はただただ驚愕するばかりである。
 ネーナ・トリニティにも同じようなことをやられたが、まさか、こんな、いきなり。

 一呼吸の間、じっと唇を寄せていたラウラは勢いよく顔を離し、頬を赤く染め、

「こっ、この間の謝罪だ。
 それと、お前は私の嫁にする。隣で、私が変わっていくのを見届けてもらう! ……決定事項だ! 異論は認めん!」

 その堂々極まりないブライダル宣言に、教室へ動揺が走り、


「ええええええええええーーーーーーーっ!?」
「嘘おおおおおおおおおーーーーーーーっ!?」
「はあああああああああーーーーーーーっ!?」
「なんとぉーーーーーーーーーーーーーっ!?」
「オ・ノーレェェェェェーーーーーーーッ!!」

 学園中が、震撼した。



~次回予告~

 諸君、ついに訪れたぞ、熱く燃える夏……太陽の季節が!
 夏と言えば当然海……臨海学校だ!
 しかし、水中行動すら可能とは。汎用性が高すぎるぞ、ガンダム!

 明日は日曜日! 買出しに行く必要があると見た!
 フラッグファイターの諸君、急ぐぞ!
 ビーチバレーで、ガンダムとの決着をつける!

 盟友と編み出した我が奥義『グラハムスペシャル・アンドサーブ』、とくと見るがいい!
 次回、‘海は即ち乙女座の地’。体の端からにじみ出た欲望を、断ち切れ、ガンダム!

ここからは9話になります正直おまけみたいなものなのでおふざけ半分です
致命的な誤字をやらかした時点でもうアレですが、
設定の崩壊など認めるものか! と言うゲルマン忍者の皆さんはただちに撤退してください


 満月が、空の頂を制するころ。
 夜の帳が下りたこともあって、刹那は睡眠をとるべくベッドで横になっていた。

 実際、金属体である刹那に‘眠る'と言う行為は必要ないが、
 常に不眠不休で完全徹夜となると、精神的な負担が大きくなってしまう。

 ELSと融合しながらも人間の心を保ったままの刹那には、このような休息の時間が必要なのだ。
 それはティエリアも同じらしく、ターミナルユニットは現在省電力――――スリープモードに入っている。



 そこへ、誰かがやって来る。
 眠ったままの刹那へ、そろり、そろりと近づく者が一人。

 足音と気配を殺しながら、その人物は、ゆっくりとベッドのそばに到達し、布団に手をかけて、



 眉間に、拳銃を押し付けられた。


「何者だ」

 ギラつく警戒の目を向けながら、刹那は銃口を向けられてひるんだ相手をベッドの中に放り込み、
 ソレスタルビーイングで鍛えさせられた拘束術を用いて捕縛する。

 人間が押し付けられ、スプリングがきしむ音がした。



「何を求めてここに――――」
「……ご、強引だな」

 聞き覚えのある声に、刹那が疑念を抱く。
 何をしに来たと言うのか。
 掴んだ敵手の両腕はそのままに、刹那は自身がとっ捕まえた不審者の顔を確認する。

 その人物は、

「……ラウラ・ボーデヴィッヒ?」
「……ま、まあ……私も、やぶさかではないが」

 妙に恥ずかしがっている様子を見せる、‘全裸の’代表候補生であった。




「……質問は後だ。まずは服を着ろ」

 ラウラを開放してやりながら、刹那は口を開く。
 その言葉を受けて、ベッドの上に座りなおしたラウラは小首をかしげた。

「夫婦とは、互いに包み隠さぬものだと聞いたぞ」
「夫婦?」
「お前は私の嫁だ」

 要領を得ないラウラの言動に、刹那は思わず困惑する。
 こいつは、一体何を言っている?

「俺はお前と婚約した覚えが無い」
「婚約などしなくてもいい。……それに、日本では、気に入った相手を‘俺の嫁'とか‘自分の嫁'とか言うそうだが」
(……沙慈・クロスロードは、ルイス・ハレヴィのことを‘僕の嫁’と呼んではいなかったが)
≪当然だ。婚姻を結んでいないのだから≫

 睡眠を阻害されたからか、どことなく冷めた様子のティエリアが返答した。
 それを受けて、自身の知識が間違っていないことを確認すると、刹那は単語を吟味しながら続ける。


「だが、俺は男だ。嫁と言う呼称は相応しくない」
「問題は無い。私がそう呼びたいからそう呼んでいる」
「…………」

 きっぱりと言い切ったラウラに、刹那は言葉を失った。
 こう言った相手の説得は、スメラギ・李・ノリエガやロックオン・ストラトスが得意とすることだ。
 刹那自身、弁舌に秀でているわけでもない。

「…………私は、同じベッドで寝たいのだ。ダメか?」
「駄目だ」

 ラウラの懇願を、刹那は一刀両断する。
 ええっそんなぁと口にせずとも顔に書いてあるような悲しみを背負ったらしいラウラは、しょぼくれて下を向いた。

 しかし、刹那とて分別はある。
 男女七歳にして席を同じうせず、年頃の女性が男性と同衾するなど、大問題だ。
 そもそも、そう言った行為は両者の合意の上で行われるものである。

 ラウラが部屋へと帰るのを待つ刹那は、

しかし、私は原作を持っていない。ご期待にはお応えしかねる。
これからどうするかも未定だ。現状では何とも言えんな。


「…………」

 しかししょんぼりとした様子で打ちひしがれながらもベッドから降りないのを見て、
 この娘は意外と強情なのだな、と色々なものを諦めた。


「……ベッドならもう一つある。俺はそちらで寝る、それは自由に使っていい」

 譲歩として、刹那は今まで自身が使っていたベッドを明け渡し、そそくさともう一つの寝床へもぐりこむ。
 ラウラの気配が動かなくなったのを見て、まあベッドが別ならばいいかと適当に結論づけた刹那は、

 しかし、ラウラが再びこちらのベッドに入り込もうとしているのに気づいて、跳ね起きた。


「あっ…………」
「…………」

 無言で抗議の視線を送ると、ラウラは重い足取りでベッドに戻る。
 それを見届けて、刹那は身を横たえると、目を閉じた。



 二分後。

 ベッドに人が近づくのを感じ取り、刹那は上体を起こした。

「…………」
「…………」

 すごすごと、ラウラは退散していく。




 三分後。

「…………」
「…………」





 四分後。

「…………」
「…………」


 五分後。
 間隔を開けながらも全くこりる様子の無いラウラに、刹那はいい加減諦観の念を抱いた。
 ベッドの半分を開けてやり、自身は奥側に移動する。

 刹那が自らそうしたことに気づいたラウラは、ぱっと笑顔の花を開かせると、
 意気揚々とベッドに介入してきた。

 刹那の背中へくっつくと、ラウラは満足したのか、数分の後に寝息を立て始める。


 まるで子供だ、と刹那は思った。
 刹那と閨を同じにして一歩抜きん出ようとしているのではなく、誰かが傍にいることに安堵を覚えているように見える。
 それは、親がいなければ不安で眠ることもままならない、幼い子供に似ていた。

(……そうか)

 ラウラ・ボーデヴィッヒは、軍事施設の出身である。
 トランザムバーストで意思疎通を行った際の記憶から推察するに、きっと、彼女に親は無いのだろう。
 遺伝子提供者はいるが、きっと、彼女を理解し、支え、面倒を見る者は、いなかったと見ていい。
 だからこそ、彼女は狭い自らの世界に訪れた新風、千冬に憧れを抱いたのだろうが。

 ――――親が、無い。
 その事実に、刹那は己の中で重いものがこみ上げるのを感じた。

 自らの手を、血で汚したあの日。
 拳銃を手に、人を殺したあの日。
 悲鳴と助けを踏みにじり、悪意で自分を歪めたあの日。

 払拭しがたい、傷であった。


 自らの手で親の存在を断った刹那と、生まれたその日から親をなくしたラウラ。
 二人はどこか似ているように見えて、全く違う。
 けれど、同じような何かを抱えていた。

 振動で起きないようにラウラの手を優しく離してやって、刹那は起き上がる。
 彼女の寝顔は、穏やかだった。いい夢を、見ていればよいが。
 そっと、髪を撫でてやる。さらさらとした銀髪が、窓から差し込む月光を弾いていた。

 ――――今日ぐらいは、一緒でもいいだろう。
 ラウラの寝顔にどこか安心を感じた刹那は、そう決めた。


 一応言っておくが、刹那のそれは恋愛感情ではなく父性である。
 実年齢七十三歳のおじいさんである刹那は、未だ女性の心理をいまいちわかっていなかった。


「少年、朝だ。日光が清清しいぞ、そろそろ起きたまえ」
「刹那さん? 朝ごはん、食べないんですか?」

 ノックの音とくぐもった声で、刹那は目を覚ました。
 いつの間にか、眠りに落ちてしまったようだ。
 隣を見やると、ラウラは未だ夢の中である。

 ベッドから出ようとして、刹那はふとひっかかりを感じた。
 ラウラが、腕にひっしとしがみついているのである。
 眠っているにも関わらず、その力は強い。流石は超兵――厳密には違うが――だ。
 刹那の腕力なら外せないことはないだろうが、女性が相手となっては、強引に引っぺがすのも気が引けた。

 そんな事情は知りもしない生徒の面々は、ドアをもう一度ノック。

「少年? 返事をしろ、少年。まだ眠っているのか?」
「そろそろ起きないと、遅刻しちゃいますよ」
「……もしや、体調不良でベッドから起き上がれないのかもしれん。
 これは強硬手段もやむなしだ、ドアを開けるぞ」
「いいんですか、そんなことしちゃって?」
「男の誓いに、訂正は無い。……失礼」

 ドアを解除したらしい(あくまで)『女子生徒の集団』が、部屋に入ってくる。
 彼女らの目に入ったのは、寝巻き姿の刹那と、その刹那と同じベッドで眠る‘全裸の’ラウラ。

「なっ……破廉恥だぞ、少年!」
「そんな……おかしいよ、おかしいですよ、こんな!」
「何なんだよこれは、男女がベッドでギシギシやってさ!
 父さん……僕どうすればいいんだ!」
「信じるんだ……自分が成すべきと思ったことを!
 ここは男子の部屋……女子は、ここから出て行けぇーっ!」

 いや、お前も女子だろ。刹那は少年のような茶髪の少女を見てそう思った。 
 その騒ぎで意識を半覚醒させたらしいラウラは緩慢な動作で起き上がり、寝ぼけ眼をこすると、

「むぅ……無作法なやつだな。夫婦の寝室に」
「夫婦……!?」
「なんとぉーっ!」
「十五で結婚なんか、出来るものかよ!」
「嘘なんじゃないか! 自分で自分を騙して、分かったようなこと言って! あなたは、何も見えていないんだ!」
「正しさが人を救うとは限らないぞ……刹那は私の嫁だ」
「君は女の子だ! 嫁なんか作れない! そうやって自分の見たいものだけ見て、すべてを否定して!」
「あんたは一体、何なんだぁーっ!」

 何の論争をしてるんだこいつらは、と呆れつつも、刹那はこの状況をどう突破したものか頭をひねった。



 モノレール、車内。
 時代的には進んだ技術のためか、内部のデザインもなかなか洗練されている。
 ただ、それはあくまで一般的な観点からの話であって、刹那からすれば、やや前時代的ではあったが。

 そんな中、刹那とシャルロットは二人掛の椅子に、並び合って座っていた。
 目的は、買い物。それも、衣類を、である。

「でも刹那、どうして僕だけ誘ってくれたの?」
「臨海学校が近い。俺も水着を購入する必要があった」
「それで、僕も?」
「ああ。女子用のそれを持っていない、と前に言っていただろう?」
「そう言えば、そうだったような」

 顎に手を添えて、シャルロットは過去の思い出を振り返っているらしい。
 ふむふむと声を漏らすシャルロットに、刹那が続ける。

「見立てを頼みたかったのもある。俺はこう言った事柄に疎い。……シャルロットならば信頼できる」
「あ、今……」

 シャルロット。
 刹那にそう呼ばれて、シャルロットは何だか気恥ずかしくなった。
 少しくすぐったいけれど、嬉しい。

「どうした?」
「うっ、ううん。任せてよ」

 誤魔化しの笑みを浮かべながら、シャルロットは頷いた。


 駅に到着して、二人はモノレールから降りると、目的地に向かって歩き出す。


 その姿を、遠方から隠れて見守る影があった。

(あれ……もしかして、デートじゃありませんの?)

 自販機を盾にするようにしつつ、刹那とシャルロットを目で追っているのは、イギリスの代表候補生――――セシリア・オルコットその人だ。
 何やら刹那が外に出かけると言う話を耳にして、ばれないよう尾行してきたはいいものの……

(くうう……まさか、デュノアさんが女の子だったなんて……
 しかも刹那さんといやに親しげですし、まさか、既にただならぬ関係なのでは……!?)
「楽しそうだな」

 嫉妬心と興味で心をたぎらせるセシリアの背に、声がかかる。
 どこかで聞いた声、振り返れば、そこにいたのはドイツの代表候補生、自称刹那を嫁にした女、ラウラ・ボーデヴィッヒ。

「ラウラさん!」
「そう警戒するな……今のところ、お前に危害を加えるつもりはない」
「信じられるものですか!」
「……すまなかった」

 突然頭を下げるラウラに、セシリアは間の抜けた声を上げそうになった。
 意図を探りかねて呆然とするセシリアへ、説明するべく、ラウラは口を働かせる。

これは毎週やってくれるのか?

「……刹那から、対話は友好と和平によって成されると教えられた。
 私のしたことは、今更消しようが無い。
 ……許してくれなくともいい。ただ、謝りたかった」
「…………」

 本当に、その罪悪感を晴らす言葉が思いつかないのだろう。
 優れないその表情から、セシリアはラウラが本気であることを悟った。

「……別に、構いませんわ。気にしてはおりませんもの」
「…………」
「それより、貴方と刹那さんはどのような関係ですの? この前は、キ、キスもしてらっしゃいましたし」
「刹那は……私の、嫁だ」
「はっ?」

 呆気に取られるセシリアをさておき、ラウラは一歩前に進み出ると、

「話は後だ。……すまないが、私は急ぎの用がある」
「急ぎの用?」
「あの二人に混ざる」

 平然とそう答えたラウラを、セシリアは慌てた様子で引き止めた。

「おっ、お待ちください! 未知数の敵と戦うのなら、情報収集を行ってからにするべきですわ!
 ここは追跡の後、二人がどのような状態にあるのかを見極めるべきです!」
「……なるほど。一理あるな」

 納得したらしいラウラは、セシリアと一時的に共同戦線を結んだ。


本編みてても思ったんだが混ざるってどういう事だ

>>701
どうすべか
>>703
「こんなところで会うとは、何と言う偶然。
 そう言えば私も水着がないんだ、一緒に見てくれないか」と武力介入

あとせっさんが人をあだ名で呼ぶのは原作から乖離していると自覚していますが
ISのストーリーを基準にしているのでご了承ください


 大型のショッピングモールに到達した二人は、会話を交わしつつ歩を進めていく。

「シャルロット」
「うん? なあに、刹那」
「既に、女性であることは周知の事実のはずだ。
 周囲の人間からからシャルロットの名前で呼ばれても――――」
「えっ……」
「シャルロット?」
「う、ううん、何でもない。続けて?」

 話の途中で見るからに落胆したシャルロットに、刹那は自身の言動が理由なのだと理解して、原因を探り始める。
 名称の変更。これか。シャルロットの名を、学園の人間には呼ばれたくないのか?
 いや、まさか。自己紹介でそう名乗っているし、何よりシャルロットは彼女の本名。拒む理由は薄い。


 ならば、刹那自身に何か要因があるのか。
 今のところ、刹那は彼女をシャルロットと呼んでいるが、

 ――――まさか。

(……ティエリア、一つ確認したい)

 自身の思考を確たるものとすべく、相棒へ相談をもちかける。
 意見を述べた刹那に、ティエリアは肯定の意を示した。
 それを受けて、刹那は話を再開する。

「周囲の人間も、お前のことをシャルロットと呼ぶようになるだろう。
 だから、何か別の呼び名を考えたい」
「えっ?」
「デュノア社の人間を除けば、打ち明けてくれたのは俺が始めてだったな。
 それの、記念だ」
「いっ、いいの?」
「ああ。構わない」

 こう言った気遣いは、ロックオンかミレイナの仕事だとは思うのだが。
 七十三歳になって一応の心配りを習得した刹那は、どうにかシャルロットの機微を掴むことに成功していた。

 さて、あだ名か。
 命名という行為自体、刹那にはあまり経験がないが、有る程度のルールがあることぐらいは承知している。
 原型を留めつつ、あくまで呼びやすく親しみやすく、あまり別の意味を持たないようにすること。
 なかなかハードルは高いが、

≪あくまで人名だ。名前の発音から考えて、短縮するのが最善だろう≫

 ティエリアのアドバイスを参考に、刹那は数秒逡巡した。イノベイターとなった彼の脳内演算力は、高い。

「……シャル、はどうだ」
「……シャル。うん、いいよ、すごくいいよ!」

 確かめるように呟いて、シャルロット――――シャルは喜びを込めた声を上げた。

(シャル……シャルかぁ……これって、ちょっとは特別な存在、ってことだよね?)

 舞い上がっている彼女だが、名前の大切さは、刹那にもわかるところである。

そういえば、メタルせっさんって不死なの?少なくとも寿命では死にそうにないよな

>>724
不老。でもチリ一つ残さず消滅させられたら死ぬ。
しかし別個体のELSがいればデータを元に復元できる。でもこの世界にはELSがいないので消滅=死

にしてもさっきの失敗が未だに響いている……ソランでいいんだよね、うん


 前述の通り、彼の本名は刹那・F・セイエイではない。
 ソラン・イブラヒム――――その名を、親から授かっていた。
 ……その親を、刹那は躊躇いなく殺したが。

 だから、今の彼はガンダムマイスターの刹那・F・セイエイなのだ。
 その名前に、刹那は愛着があったし、何より、既に逝ってしまった者たちは、きっと彼のことを刹那・F・セイエイと記憶しているだろう。
 だから、刹那は刹那だ。背負ってきたもののために、彼は刹那・F・セイエイであり続ける。
 きっと、これからも。


 ショッピングモールの内装は、なかなかに小洒落れていた。
 西洋の雰囲気と評するべきだろうか、建造物のデザインや質感、そして店の様相も、日本のそれとは一味違っている。

 だが。それよりも、刹那は気になることがあった。

(……つけられている?)

 後方から、刹那を追う気配があるのだ。
 しかし、その姿は見えない。気のせいだろうと見過ごしてしまいかねないほどに、存在感が希薄である。

 ソレスタルビーイングの一員として様々な訓練を受けた刹那の目で、捉えられぬほどの潜伏技術。
 人が多すぎて、脳量子波での探知も活かせない。

「刹那?」

 前を行くシャルが、刹那に振り返る。
 歩調を速め、シャルと並ぶと、刹那はボリュームを絞った声でシャルに告げた。

(「……何者かに尾行されている」)
(「尾行……?」)
(「ああ。正体まではわからないが、確かだ」)

 釣られて、シャルルが後ろを向く。
 いけない、そんな行動をしては、感づいたことを気取られてしまう。

(「シャル、止め――――」)
(「……わかったよ、その、尾行してる人たちの正体」)
(「何?」)
(「こっちへ」)

 刹那の手を取り、シャルは早歩きで右手の店に入る。
 季節柄もあってか、そこは丁度水着の専門店だった。きっと、秋が来れば撤退し、違う店が顔を出すのだろう。

 つかつかと歩き、シャルルは水着を一枚手にすると、店員の目をかいくぐって刹那を試着室に押し込み、自身もそこに入る。
 脱いだ靴を回収しながら、周囲に聞こえないよう音量を下げたまま、刹那はシャルに問いかけた。

(「シャル?」)
(「向こうもこっちを見失ったはず……ここでやりすごそう」)
(「……了解。お前を信じる」)

 いつになく真剣なシャルの瞳に、冗談でないことを認識すると、刹那は息を潜めて壁にもたれかかる。
 シャルも、動きを止めて外の状況を探っているようだ。

 そこへ、

「お客様? どうかなさいましたか?」

 店員の、声がかかった。

(「うそっ!? ど、どうしよう、刹那!」)
(「俺はカーテンの影に身を隠す。恥ずかしいから半開きと言うことにすれば、多少はフォローが利くはずだ」)
(「わっ、わかった。……ってことはここで着替えなきゃいけないんじゃ……!」)
(「……危険だが、俺が外に出る」)
(「だっ、駄目だよそれじゃあ! 見つかっちゃう!」)
(「他に方法がない」)
(「でっ、でも……ああもう、わかった! 着替える!」)
(「しかしそれでは……!」)
(「もう迷ってられない!」)

 上着に手をかけ、一息に脱いだシャルから、刹那は目をそらした。

 音を立てないよう後ろを振り向き、刹那は意識を外にやるべくティエリアとのコミュニケーションを開始する。

(ティエリア、今日の天気は?)
≪晴れ時々曇り、降水確率二十パーセント。気温・湿度共に高くもなく低くもない。過ごしやすい一日と言えるだろう≫
(すまない、助かる。……明日の天気は?)
≪晴れ、降水確率十パーセント。気温と湿度は今日より高くなる≫
(そうか)

 ティエリアの天気予報に集中しつつ、刹那はシャルの着替えを待つ。
 刹那が四日後の天気を聞くと同時、シャルは水着に着替え終わったようだ。

(「お、終わったよ。どう、かな……?」)

 上下共に黄色のビキニだが、下にはパレオが巻かれている。
 髪の色と合わせたのだろう。統一感があり、すっきりとした印象だ。

(「よく似合っている」)
(「えへへ……」)
(「だが、急がなければ怪しまれる。悪いが……」)
(「あっ、ご、ごめん!」)

 カーテンを半分ほど開き、刹那が身を置くスペースを作りながら、シャルルは店員の前に姿を晒した。
 シャルよりも前に入った者がずっとそこを利用していたと思っていたのだろう、店員は自身の勘違いを詫びて、そそくさと退散していった。

(「……シャル、タイミングは任せる」)
(「うん……オッケー、今!」)
(「了解!」)

 シャルの声にあわせ、刹那が試着室から飛び出し、男性用水着のコーナーへ移動する。
 それを見届けてから、シャルは制服を着用しなおした。




 水着店を後にして、セシリアとラウラはとぼとぼとショッピングモール内を歩いていた。

「……結局刹那さんは見失ってしまいましたし……これからどうしましょう」
「……私は水着を買う必要がある。失礼する」

 短くまとめて、ラウラは目当ての店に足を向ける。

「なら、私も一緒に――――」

 それに気づいたセシリアが誘いをもちかけるものの、
 ラウラは首を横に振った。

「いや、すまない。一人で決めたいのだ」
「そうですか……なら、私は寮に戻っていますわ」

 最後にため息をこぼして、セシリアはモノレールの乗り場へときびすを返す。
 その背を見送り、ラウラは先ほどの――――水着専門店に入店する。
 女性用のそれらが並ぶ地点まで向かうと、ラウラはポケットから長方形のデバイスを取り出した。
 指先でちょいちょいと操作すると、電話と同じように耳に当てる。
 数回のコールの後、繋がった音を耳にして、ラウラは通話を開始した。

「クラリッサ、私だ。緊急事態発生」
『ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長。何か問題が起きたのですか?』

 相手は、ラウラの率いる隊、『黒ウサギ部隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)』の副隊長、クラリッサ・ハルフォーフ。

「う、うむ。例の、刹那・F・セイエイのことなのだが」
『ああ、隊長が好意を寄せていると言う、彼ですか』
「そうだ。お前が教えてくれたところの、いわゆる私の嫁だ。
 ……実は今度、臨海学校と言うものに行くことになったのだが」

 前置きをそこそこに、ラウラは本題を切り出す。

「どのような水着を選べばよいか、選択基準がわからん。そちらの指示を仰ぎたいのだが」
『了解しました。この黒ウサギ部隊は、常に隊長と共にあります。
 ……ちなみに、現在隊長が所有しておられる装備は?』
「学校指定の水着が、一着のみだ」
『ぐぅっ……! 何をバカなことを!
 確か、IS学園は旧型スクール水着でしたね。それも、悪くはないでしょう。
 だがっ……しかしそれでは……!』
「それでは?」
『イロモノの域を出ない!』

 ちなみにこのクラリッサ大尉、日本のアニメや漫画を愛好しているためか、しばしば間違った知識をラウラに植えつけることがある。
 そこに一切の悪意はないのだが。

「ならば、どうする……?」

 何故か焦った様子のラウラへ、クラリッサは余裕の笑いで返すと、

『私に秘策があります』

 そう、返答したのだった。




 臨海学校当日。

「今十一時で~す!
 夕方までは自由行動、夕食に遅れないように旅館に戻ること。いいですね~!?」
「「「「は~い!」」」」
「任務了解」

 真耶の指示に、生徒全員が元気よく了承の返事をして、それぞれ思い思いの行動に移る。

「少年、少しいいか」

 声に振り向くと、そこに立っていたのは金髪の……少、女?
 ともかく、乙女座が一人立っていた。
 手にしているのは、バレー用のボールだ。

「私は、君との果し合いを所望する!」
「果し合い……?」
「そうだ、青い海、白い雲、そして快晴の天気!
 あえて言おう、絶好のビーチバレー日和であると!」
「ビーチバレー……!」
「嫌とは言わせんよ。私にも意地がある」
「……わかった。その挑戦を受けよう」
「ちょっと、刹那さん!?」

 何やら愛を越え憎しみを超越し宿命となった勝負に臨もうとする刹那は、ふと名前を呼ばれた。
 声の主は、青いビキニとパレオ姿の――奇しくも色以外がシャルと同じの水着を着用した――セシリア・オルコット。
 小脇にビーチパラソルとシートを抱えつつ、ふくれっ面で刹那を見やっている。

「バスの中で私と約束したのを忘れましたの?」

 約束。確か、サンオイルを塗ると約束をしていた。
 先ほどから姿が見えなかった――荷物を取りにいっていたのだろう――ため、遅れるのだろうと踏んでいたのだ。

「水入り……いや、先約か。
 男の誓いに訂正は無い。彼女を優先したまえ」
「……すまない」
「どうと言うことはないさ。しかし私は我慢弱い。急げよ、少年」
「……了解」

 刹那と乙女座の会話の最中に、セシリアはシートを敷き、パラソルを広げると、その上に寝そべって、
 サンオイルの瓶を横に置いた。

「さあ刹那さん、お願いしますわ」
「わかった」

 瓶の蓋を取り、オイルを手に空ける。両手で暖めてから、ゆっくりと丁寧に、セシリアの肌に手を滑らせた。

「んっ……」

 セシリアから、悩ましげな声が上がる。
 構わず、刹那は続けた。


「あっ……」

 繰り返すたびに、セシリアは乱れていく。ような気がする。
 その様を見守る他の女子生徒は、小さく息を吐き出しながらも目を離さない。

「うわぁ~、気持ちよさそ~」
「こっ、こっちまで、ドキドキしちゃう……」
「セシリア、後であたしにもサンオイル貸してよね!」

 ギャラリーのあおりを受けてか、セシリアの息が荒くなる。
 腑に落ちない何かを感じながらも、刹那はただ手を動かし、背中へとサンオイルを塗り終えた。

「ミッションの八十パーセントを達成……これで終了か」
「いえ、せっかくですし、手の届かないところは、全部お願いしますぅ……」
「……ミッションプランを変更……フェイズ2へ移行する。俺はどこまでやればいい?」
「足と、その……お尻も……」
「くぅっ……堪忍袋の緒が切れた! 許さんぞ代表候補生!」

 そこで、乙女座が咆えた!

「破廉恥であるぞ! その上約束を違えるか!」
「いえ、そんな……これも約束のうち……」
「増援を!」
「はっ?」
「女ァ!」

 乙女座の要請に答え、おでこを出した少年が介入する。
 後ろで結われた辮髪(べんぱつ)から見るに中国人なのだろうが、現地の人間だろうか。

「弱いものが海に来るな! ……サリィ!」
「はいはい」

 呼ばれて、少年の後ろから女性が姿を現した。
 ロールした金髪から見るに、セシリアと同郷かもしれない。

「ごめんなさいね、あの人たち、我慢弱いから。ここは抑えてあげて」
「はっ、はあ……」

 登場してきて場を収めようとする大人の女性に、セシリアはただ頷くほかない。

「私が代わりをやるから。ダメ?」
「いっ、いえいえ、大変光栄ですわ!」
「よし、行くぞ少年! 今から我々が進むのは勝負の世界……修羅の道だ!」

 刹那の手を引き、乙女座は砂浜を行く。



 バレーボール会場。

「さて、もしよろしければ、皆様方にこのビーチバレーをご説明させて頂きましょう」

 いつの間にやら音頭を取る審判――――赤いスーツの男の席が置かれ、刹那はバレーボールに臨んでいた。

「ルールは簡単、二体二、二十一点選手の三セットマッチ。
 戦って、戦って、戦って抜いて、スポーツマンシップに溢れた試合にして頂きたいものです」
「干渉、手助け、一切不要……と言いたいところだがな。相方を頼むぞ」
「任務、了解」
「それでは、ビーチレバレーファイトォ、レディーッ」
「お前が俺のパートナーか……よろしく頼む」
「ああ。……流派東方不敗は王者の風。例えビーチバレーであろうと、全力で行くぞ」
「ゴォーッ!」


こいつらは男なのか女なのか
それが問題だ

>>789
通りすがりとかIS学園の生徒とか海の家のアルバイトとか
あとまじこいは個人的にすごい面白かった


 あっちも人間、チャンスはあるはずだ……その希望の言葉は、しかし圧倒的な実力の前でかき消された。

「武士道とは……!」
「俺の……俺のミスだ……!」
「いいファイトだった。またやろう」
「これが……ビーチバレーだと言うのか……!?」

 刹那は、戦慄した。
 あの超人的な高速戦闘が、ビーチバレー……?

「少年、君の勝ちだ」
「ああ……」

 乙女座の視線を受けて、刹那は思わず目をそらした。
 まあ、トスなりレシーブなりを担当したものの、刹那側が大勝を収めた理由は、やはりあの赤い外套の男に他ならない。
 
「……今度は、純粋な手合わせを望みたいところだ」
「……了解した。お前が納得するまで、俺は戦い続けよう」
「その旨をよしとする。……感謝するぞ、少年」

 爽やかにそう言い残し、乙女座は会場を後にした。



な、なんだこれなんだこれ

>>793
悪ふざけ てへっ

「刹那、ここにいたんだ!」

 遠方から、シャルが歩いてくる。
 刹那を探していたのだろうか。

 手を振って返そうとして、刹那は、
 彼女の隣に全身にバスタオルを巻いた奇怪かつ面妖な生物がいることに気づいて、思わず動きを止めた。

 先日と同じ水着を着用しているシャルに比べてやけに重装備なそれは、
 傍から見れば妖怪か何かに写るだろう。

「……ラウラ、何をしている?」
「あ、わかるんだ」

 なんとなく、息遣いのようなものでわかる。そう言っても納得されないだろうと自ら結論に至ったので、刹那は頷くに留めておいた。
 そんな刹那を横目に、シャルはラウラの肩へそっと手を置いて、

「ほら、刹那に見せたら? 大丈夫だよ」
「だっ、大丈夫かどうかは私が決める」

 震えた声のラウラに、シャルは耳元へ口を寄せつつささやいた。

(「せっかく水着に着替えたんだから、刹那に見てもらわないと」)
(「まっ、待て。私にも、心の準備と言うものがあって……」)
(「ふぅ~ん。だったら、僕だけ刹那と海で遊んじゃうけど……いいのかなぁ~?」)
(「そっ、それはダメだ! ……ええい!」)

 踏ん切りがついたのか、ラウラは自らバスタオルを外す。
 空中へ白い布が舞い、中から姿を現した。

 黒の、フリルがついたビキニタイプの水着。やや面積が小さい。
 それに加えて、ラウラ自身、髪型も変えていた。左右で縛ってあるのだ。ツインテールというやつか。

「わっ、笑いたければ、笑うがいい……」

 そっぽを見ながら、ラウラは縮こまった。
 自信がないのだろう、もじもじと、落ち着きなく人差し指同士を合わせている。

「おかしなところなんてないよね、刹那?」
「ああ……いいと思う」
「そっ、そうか。悪くないか。……嬉しいぞ」

 照れて、ラウラが下を向く。
 それと同時、クラスの女子が声を張り上げていた。

「セイエイ君、ビーチバレーやろうよ!」

 もう一度か、と思わないでもないが、先ほどの試合、刹那は何もしていない。
 せっかくだ、と、刹那は二人に目をやり、

「人数は同じだ。……いけるか?」

 二人が首肯したのを確認して、刹那は駆け出した。
 この臨海学校、いい思い出になりそうだ。


と言うわけで「俺たちの満足は、これからだ!」END。

あと>>780あたりでビーチバレーがちょいちょいバレーボールになってるけど見逃して

いやあ、長かった
付き合ってくれた人たちに、感謝を。ありがとうございます。

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