姉 「たとえばの話だよ?」(457)

弟 「ん? 何さ?」

姉 「えっと、例えば、もし仮の話で本当の事じゃないよ?」

弟 「くどいよ」

姉 「あの、たとえば仮に弟がさ」

弟 「……俺が?」

姉 「あの、弟が『姉萌え』だったとするじゃん?」

弟 「………」

姉 「するじゃん?」

弟 「……はい?」

姉 「だから弟が姉萌えだと仮定するの!」

弟 「アネモエ?」

姉 「うん、弟はお姉ちゃんが大好き萌え萌えなの」

姉 「……で、どうする?」

弟 「何をだ!?」

姉 「だから弟はお姉ちゃん大好きで、夜な夜なお姉ちゃんを思って自家発電に励んじゃう様な子なの!!」

弟 「俺にそんな特殊な性癖ねえよ!!」

姉 「だからたとえばの話だって! もし仮に! 仮にそうだとしたら!」

弟 「……仮にそうだとしたらって言われても」

姉 「仮に弟はお姉ちゃんが大好きで仕方なくて…」

弟 「………」

姉 「姉のパンツを盗んではクロッチ部分を丹念に舐めながらオカズにしちゃう子だとしてね」

弟 「それもう、ただの変態じゃねえか!? 何で段々ハードル上げてくんだよ!!」

姉 「愛ゆえに。愛ゆえの行動なら致し方なし」

弟 「致し方あるよ!」

姉 「お姉ちゃんは弟がそんな変態さんでも見捨てないから!」

弟 「だから俺は変態じゃない!」

姉 「犯罪者は初めは皆そう言うの」

弟 「変態から犯罪者に格上げすんな!」

姉 「じゃあ仮に弟が変態じゃないとして」

弟 「元から変態じゃないよ! 何でいつの間にか俺が変態なのが前提になってんだよ!」

姉 「ハイハイ、オトウトハヘンタイジャナイヨー。はいこれで良いね」

弟 「何で怪しげなイラン人みたいな発音なんだよ。余りに心がこもってなくて釈然としない」

姉 「で変態じゃないとして弟はお姉ちゃんを脳内でどんな風に毎晩犯してんの?」

弟 「だから何で話が全部そっち方向なんだよ!? んな事してないよ!」

姉 「お姉ちゃんは弟の思春期における歪んだ悩みを精一杯受け止めてあげたいのです」

弟 「俺なんかより姉ちゃんの方が余程歪んでるじゃねえか、諸々と」

姉 「で、やはり思春期と言えば恋の悩みや性の悩みじゃないですか」

弟 「確かにそれもあるかもしれないが一方的に決め付けないで欲しい」

姉 「だからお姉ちゃんがこうして一肌も二肌も脱いであげようという訳ですよ」

弟 「人はそれを余計な世話と言う」

姉 「だから毎晩お姉ちゃんは寝る前に弟の包茎が一肌剥けるように祈ってる訳ですよ」

弟 「寝る前にそんなもん祈るな!! 余計なお世話だ!! ってか何で知ってんだよ!?」

姉 「弟の皮剥きから筆下ろしまでが姉の義務だってミノさんが言ってた」

弟 「嘘吐け!」

姉 「ミノさんが言うなら仕方ないね」

弟 「仮にそんな事を本当に言ったら芸能界から追放されるぞ、あの黒いの」

姉 「お姉ちゃんとしては弟が心配で仕方ないわけですよ」

弟 「俺は姉ちゃんが心配で仕方がない、主に頭が」

姉 「やった!! 相思相愛だ!」

弟 「それは違う」

姉 「結婚したらカバディが出来るくらいの子供が欲しいな」

弟 「結婚出来ねえよ! それにカバディって何人必要だか知らねえよ!」

姉 「カバディはずっとカバディカバディと言い続けないと死ぬ恐ろしい競技なのです」

弟 「嘘吐け! どんな競技だよ!」

姉 「いや、これは本当」
弟 「……どうでも良いけど何でカバディの話をしてんだ俺たちは」

姉 「……あれ?」

弟 「姉ちゃんは一体何をしに来たんだよ……」

姉 「そう! そうです! 弟が夜な夜なお姉ちゃんのパンツで独り遊びしてると言う話をし」

弟 「違う!! そうだが違う!! 用がないならもう寝るからな!?」

姉 「………」

弟 「………」

姉 「……むぅ、けちんぼ。わかったよ」

弟 「……で、何?」

姉 「じゃあ、いくよ?」

弟 「いいから早くして」

姉 「これはたとえばの話で本当の事とは関係ないんだかんね?」

弟 「それも何度も聞いたから早く」

姉 「えっとね? もしお姉ちゃんに好きな人が居るとし」

弟 「ソイツ誰?」

姉 「いや、まだ話の途中だし、それに誰とかじゃなくてたとえばの話で」

弟 「いや、どうでも良いけどソイツに産まれてきた事を後悔させたいんだけど」

姉 「……へ?」

姉 「いや、あのね?」

弟 「いやいや、別に俺はどうだって良いんだよ? でも、うんソイツは死んだ方が良いマジで」

姉 「ねえ、ちょっと」

弟 「いや、地球の為に致し方ない。これは、うん」

姉 「もしもーし」

弟 「産まれてきた事を後悔する位は徹底的にやらなきゃダメだね。それが人類の為だ」

姉 「……あの~」

弟 「いや、俺は本当にどうでも良いんだよ? でも世の中には殺らなきゃいけないことがある、仕方ないね」

姉 「………」

弟 「……で、誰か好きなの?」

姉 「………」

姉 「だ、だからたとえばの話だって!」

弟 「そうなの?」

姉 「な、何度も言ったじゃん! うっかりさんだな弟は!」

弟 「そっか、うっかりしてた。ゴメンね?」

姉 「大丈夫! 大丈夫だから!」

弟 「でも、もし姉ちゃんに好きな人が出来たら俺に一番に教えてよ?」

姉 「……そ、そうだね」

弟 「俺も精一杯頑張るから、ね?」

姉 「あはは、弟が何を頑張るのかな……」

思った以上にネタが出てこんかった
すまんな

     ヾヽ
    γ_ ・l>   これでアイツラの呼び出し三回目
    ミ(ノノハヾ)    俺をへこます気ならば足んないぜ
  ヘレ∩゚ヮ゚∩ヽ 
 〈   .l l>炎ソ 〉 
 VWWく/__lへV  
      ∪    

     ヾヽ
    γ_ ・l>   お姉ちゃーん
    ミ(ノノハヾ)   
  ヘレ∩゚ヮ゚∩ヽ 
 〈   .l l>炎ソ 〉 
 VWWく/__lへV  
      ∪    

保守は嬉しいけれど
ネタが思ったより浮かばなかったのですよ

保守のお礼に一生懸命考えるけど速度は期待しないでね

姉 「――って事が昨日あってね」

幼 「……はあ、左様で」

姉 「何でちゃんと話を最後まで聞いてくれないんだろ」

幼 「もっと心配すべき点が他に有りますよね?」

姉 「私が思うに、弟はお姉ちゃんの言うことをもっとしっかり聞くべきだと思うんですよ!」

幼 「私が思うに、お姉さんは私の言うことをもっとしっかり聞くべきだと思いますよ?」

姉 「弟ったらいつの間にあんな子になっちゃったんだろ」

幼 「元から大体あんな感じだと思いますけど」

姉 「反抗期なのかなあ?」

幼 「お姉さん、私と対話するつもり有りますか? 反抗期ですか?」

姉 「弟も昔は私の言うことをしっかり聞く良い子だったのになあ」

幼 「有りませんよね? お姉さんは私と意志疎通するつもりが更々有りませんよね?」

姉 「何が原因なのかな?」

幼 「何が原因でお姉さんは私の言うことを聞いてくれないんですか? イジメですか?」

姉 「昔は『お姉ちゃん大好き!』って言って傍から離れなかったくらいお姉ちゃんっ子だったのに」

幼 「私もう帰って良いですか? 必要ないですよね? もう帰りますから」

姉 「………」

幼 「………」

姉 「何だか幼馴染みちゃん冷たくない?」

幼 「……私は寧ろ人間が出来すぎてるなと我ながら感心してるくらいですが?」

姉 「……じゃあ聞くけど、幼馴染みちゃんから見て弟のどこが変かな? 悩みありそう?」

幼 「どこもかしこも全部変ですが、悩みはなさそうですね」

姉 「それじゃ参考にならないよ」

幼 「それはそうですけど」

姉 「……うーん、やっぱり反抗期なのかな?」

幼 「強いて言えば世の中の倫理や世間体に対する反抗期かもしれませんね」

姉 「弟がこのまま不良になったらどうしよう……」

幼 「既に色々不良だと思いますけどね、特に脳ミソ辺りが」

姉 「……じゃあ幼馴染みちゃんはどうしたら良いと思う?」

幼 「うーん、私は『どうしようもない』と思いますが」

姉 「………」

幼 「だってそうでしょう」

姉 「じゃ、じゃあ幼馴染みちゃんならこういう時どうする?」

幼 「私なら何にもしませんね。だって、良いじゃないですかコレで?」

姉 「もう! 意地悪ばっかり言わないでよぉ」

幼 「そう言うわけじゃないですけど」

姉 「むぅ……」

幼 「……うーん、それじゃあ、逆にお姉さんはどうしたいんですか?」

姉 「えっ、私……?」

幼 「そうです。お姉さんは弟をどうしたいんですか?」

姉 「……それって関係あるの?」

幼 「お姉さんがどうするかって話なんですから、関係あるに決まってるじゃないですか」

姉 「えっと……」

幼 「じゃあ、例えば弟がお姉さんの言うことをちゃんと聞くようにしたいんですか?」

姉 「いや、そう言うわけじゃ……」

幼 「そうですよね。弟はお姉さんの言うことを十分過ぎるくらいよく聞いてますもんね」

幼 「じゃあ、お姉さんは何がしたいんですか?」

姉 「私は弟が人の道を踏み外さないようにしたいだけで……」

幼 「人の道を外すってのはどういう事ですか?」

姉 「……それは」

幼 「例えば姉の好きな人を夜道に襲ったりするような事ですか?」

姉 「……えっと」

幼 「それとも、もっと根本的な所の問題についてですか? 例えば」

姉 「……たとえば」

幼 「そう例えば、弟が自らの姉に対して抱いてる気持ちを何とかしたい、とかね」

姉 「………」

幼 「お姉さんも、弟がアナタに対して家族愛にしては異常な感情を持ってるって判ってるんですね」

姉 「………」

幼 「どうなんですか? はっきりして下さい」

姉 「……薄々とは」

幼 「何が『薄々と』ですか? あんな分かりやすいのに。薄々としか判ってないわけないでしょう?」

姉 「それは……」

幼 「ただ弟自身は自分の気持ちに気付いてないみたいですがアレは別です。アレは特別製のバカですから」

姉 「………」

幼 「弟は特別製のバカで変態だから仕方ないです。まあ、だから余計厄介で始末が悪いですけどね」

姉 「………」

幼 「……はぁ。もう大体分かりましたよ」

姉 「……?」

幼 「今回のお姉さんの話の意図する所は何となく解りました」

姉 「え……?」

幼 「最初はからかってるのかと思いましたが要するに挑発ですね」

姉 「別に挑発なんか……」

幼 「言い方は何であれ、私を怒らせて事態を解決しようとしてるじゃないですか」

姉 「………」

幼 「それって挑発じゃないですか。じゃなかったら何なんですか」

姉 「……ごめん」

幼 「まあ、不本意ですが今回はその挑発に乗ってあげます」

姉 「……?」

幼 「本当に気に食わないですけど怒ったのも事実ですしね」

姉 「………」

幼 「何より自分で関係を壊そうとしないお姉さんの狡さにも腹が立ちますが、それももう別に良いです」

姉 「………」

幼 「せっかく『譲る』って言ってるんだからそれで全部勘弁しときます」

姉 「……ごめん」

幼 「それに今まで『どうせ駄目だ』とか思ってた自分が馬鹿らしくなりましたし」

姉 「………」

幼 「そんな小心な自分に腹が立ったってのもありますし、ね」

姉 「……幼ちゃん、ありがと」

幼 「だから、もういいですって」

姉 「………」

幼 「実は何だかんだ挑発にしろ背中を押してくれた事にほんの少しは感謝してるんですから」

姉 「でも……」

幼 「いいんです。それに何だか今からする事を考えると楽しみにもなってきましたし」

姉 「でも……」

幼 「だからいいんですって」

姉 「でも、幼ちゃん?」

幼 「……さっきから、『でも、でも』って何ですか?」

姉 「あの、幼ちゃんの顔が、何て言うか、すごく――悪い事を企んでる様に見えるよ?」

幼 「………」

姉 「……なんかちょっと怖い」

幼 「これは慈愛に満ちた笑顔です。凄く大きなお世話ですから、ほっといて下さい」

げんかいなだ

     ヾヽ
    γ_ ・l>   きーたえーしーつーばさー
    ミ(ノノハヾ)    たーくまーしーきー
  ヘレ∩゚ヮ゚∩ヽ 
 〈   .l l>炎ソ 〉 
 VWWく/__lへV  
      ∪    

     ヾヽ
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    ミ(ノノハヾ)   
  ヘレ∩゚ヮ゚∩ヽ 
 〈   .l l>炎ソ 〉 
 VWWく/__lへV  
      ∪    

幼 「って事で弟は今日から私の恋人だから」

弟 「何だ、藪から棒に。 『って事で』ってどういう事だ」

幼 「弟と私は前世から定められた運命の恋人って事だよ?」

弟 「何だそのスピリチュアルな理由は!?」

幼 「まさに愛が時空を越えた瞬間であった」

弟 「それは何に対する解説でお前の立ち位置はどこなんだ?」

幼 「ようやく見つけたわ、私の愛しい人……」

弟 「ようやくも何も物心つく前から知り合いだろうが!」

幼 「産まれた時から一緒なんてスゴくロマンチック……」

弟 「……どうでもいいから早く幼馴染みの分の進路調査表出してよ」

幼 「……弟はそんなに私の事が気になるの?」

弟 「回収させられてる俺が帰れないからだよ!」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「第一志望は弟のお嫁さんっと」

弟 「確実に呼び出し食らうだろうけど、そこに俺を巻き込むな」

幼 「もう! 今はこんなものどうだって良いんですよ!」

弟 「どうでも良くねーよ。俺が帰れないだろうが」

幼 「今はこんな紙切れより私の弟への愛の告白の方がよっぽど大事!」

弟 「自分の将来の事なんだからもう少し真剣に考えようぜ?」

幼 「真剣に考えたからこうやって真面目に告白してるんじゃん」

弟 「とてもじゃないけど真面目には見えないが」

幼 「ヒドイ! 私はこんなに本気なのにっ!?」

弟 「本気なつもりなら、まず余白の部分に落書きするのを止めなさい」

幼 「第二志望は弟との出来ちゃった結婚にしてやる!」

弟 「やめろこの野郎!」

幼 「あっ、シャーペン盗るな! 返して!」

弟 「……まったくもう」

幼 「危うくコレが弟の独り遊び用の道具になる所だった」

弟 「ならねーよ!!」

幼 「………」

弟 「幼馴染みは俺を困らせるのが楽しいのか?」

幼 「ん? そりゃスゴく楽しいよ?」

弟 「シレッと本音を言いやがったな、コイツ」

幼 「……でもね?」

弟 「……ん?」

幼 「……でも、今は結構真面目、かな?」

弟 「……え?」

幼 「不真面目に告白なんて私には出来ないよ。私は弟の事――好き、だよ」

弟 「………」

幼 「………」

弟 「それも本音か?」

幼 「……うん。コレは本音で本気。嘘なってつかないよ」

弟 「……そう、か」

幼 「……弟はどうなの?」

弟 「………」

幼 「弟は、私の事、好き?」

弟 「……どうだろう」

幼 「………」

弟 「いや、嫌いじゃないよ? 嫌いじゃないし寧ろ、好き、だと思う。でも……」

幼 「……でも?」

弟 「でも、何かよくわかんない」

幼 「わかんない……?」

弟 「……そう。ごめん、俺はよくわかんない、そういうの」

幼 「………」

幼 「……私だって、よくわかんないよ」

弟 「……えっ?」

幼 「そりゃ、そうだよ。だって他の人たちが思う『普通の』好き、がどんなものなのか、」

幼 「他の人が言う『好き』と私の『好き』が同じかどうかなんてわからないもん」

弟 「それはそうかも知れないけど……」

幼 「もしかしたら今の気持ちは勘違いで、後になってもっと違うものだって気付くかもしれない」

弟 「………」

幼 「もしかしたら、それによって将来後悔するかもしれない」

弟 「………」

幼 「けど、だから私は『今やりたいこと』をやりたい」

幼 「やらずに後悔する方が嫌だからって事じゃない」

弟 「………」

幼 「私は今やりたいことをやりたい、たったそれだけ」

弟 「………」

幼 「だから私は弟が『欲しい』と思って、今はそれを叶えたい」

弟 「………」

幼 「それが今の私にとっての告白で、私にとっての好きって気持ち」

弟 「………」

幼 「……それが今の私にとっての『ホント』だから」

弟 「そっか」

幼 「うん。そう――だから」

弟 「だから……?」

幼 「……だから私は弟の心が欲しい」

弟 「………」

幼 「だから教えて欲しい、弟にとって私が弟の思う『好き』かどうかを」

弟 「………」

幼 「だから教えて欲しい、私がアナタの全てを奪えるか、を」

弟 「……それは」

幼 「……それは?」

弟 「………」

幼 「よくわからない? じゃあ、質問を変えるね」

弟 「………」

幼 「それじゃ、弟が一番好きな人は誰?」

弟 「………」

幼 「……それもよくわかんない? それとも『それが』よくわかんない?」

弟 「………」

幼 「……うーん、ならもっと分かりやすいのにしようか」

弟 「………」

幼 「えっとね? アナタの心の中に私よりも、もっと好きな人はいる?」

弟 「………」

幼 「アナタの心の中で私よりも好きな人が思い浮かぶ?」

弟 「………」

幼 「別に私に遠慮はしなくて良い。寧ろ遠慮したり嘘吐いたらぶん殴るから」

弟 「………」

幼 「………」

弟 「……居ないよ」

幼 「……ん?」

弟 「居ないよ。思い浮かばない。今、俺は幼馴染みより好きなヤツは思い浮かばないよ」

幼 「………」

弟 「だって! だって幼馴染みは結構可愛いし! 頭もそれなりに良いし!」

幼 「………」

弟 「話してると楽しいし! 意地悪だけど優しいし! それに何より」

幼 「何より……?」

弟 「何より、俺の事をそれだけ『好き』って思ってくれてるんだ」

幼 「………」

弟 「……嫌いな訳がない。嫌いになる訳がないじゃないか!」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「……そう」

弟 「……そう。そうだよ」

幼 「………」

弟 「そうだよ、俺なんかに幼馴染みは勿体なさ過ぎるくらいだ」

幼 「………」

弟 「俺がフラレる事があっても俺が振るなんてある訳ないじゃないか……」

幼 「……そう。なら問題ないね」

弟 「……問題ない、幼馴染みは俺が好きで俺は幼馴染みが好き」

幼 「………」

弟 「……何も問題ない――何も問題ないじゃないか」

幼 「………」

幼 「……そっか。なら私たちもう恋人同士、だね」

弟 「……ああ」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「えっと、腐れ縁からランクアップかな?」

弟 「腐れ縁からジャンプアップだ」

幼 「……でも、こうしてると今までと何も変わらないのにね」

弟 「まあ、ついさっきからだから、ね」

幼 「これから少しづつ変わって行くのかな?」

弟 「うん、そうかもしれないね」

幼 「……変わっていけば良いね」

弟 「……うん、そうだと良い、ね」

幼 「じゃあ、これからよろしくね、弟?」

弟 「うん。こちらこそよろしくな」

幼 「うん!」

弟 「………」

幼 「………」

弟 「……何だか照れ臭いな」

幼 「……ん、そだね」

弟 「………」

幼 「……ん? あっ、忘れてた!」

弟 「ん? どうし」

幼 「せいっ!」

弟 「痛っ!? 正拳突き!? 何なの、初っぱなからDVなの!?」

幼 「これで良し」

弟 「良くないよ!? 何でいきなり殴るんだよ!?」

幼 「……フンだっ、理由は自分で考えろバーカ」

ねるねるねるね

大まかなストーリーは出来てるけど上手く書き出せない
悪いけどもう少し待ってね

弟 「じゃあ、ここで」

幼 「ん、じゃあ、また明日ね」

弟 「うん、また明日」

幼 「………」

弟 「どうしたの?」

幼 「えっと、今日は家まで送ってくれて、その、ありがと……」

弟 「ん? 何でまたあらたまって? たまに一緒に帰る時と変わらないじゃん」

幼 「……それはそうだけどさ、気分の問題だよ」

弟 「……そういうもん?」

幼 「そういうもんです」

弟 「うーん、って言うか単に帰り道の途中なだけなんだけどなぁ」

幼 「……もう! 何で弟はそんなことばっかり言うかな」

弟 「ごめん、ごめん。冗談だよ」

幼 「……全然冗談に聞こえなかったけど?」

弟 「信用ないな」

幼 「当たり前です。鈍チンKYな弟なんか信用あるわけないでしょ」

弟 「これは手酷い」

幼 「でも……」

弟 「ん?」

幼 「でも、そんなお馬鹿な弟の事を好きになるなんて世界中探しても殆んど居ないんだから」

弟 「………」

幼 「だから! ……だから、大事にしてよね」

弟 「うん、わかってる」

幼 「………」

弟 「……じゃあ、俺、帰るから」

幼 「うん。気を付けて帰ってね」

弟 「気を付けるも何も家はすぐそこだけどな?」

幼 「わかってる。でも」

弟 「気分の問題、か?」

幼 「そう言うこと。じゃあ、おやすみ、弟」

弟 「ん、おやすみ。また明日な」

幼 「うん、また明日……」

弟 「………」

弟 「ただいまぁ」

姉 「………」

弟 「……ん? 姉ちゃん未だ帰ってないのかな?」

姉 「………」

弟 「でも、靴はあるしな」

姉 「……静かな湖畔の公衆トイレ♪」

弟 「ん? トイレに入ってるのか?」

姉 「中から悲しい声がする~♪」

弟 「……何だこの歌?」

姉 「紙~、紙~、紙がないよ~」

弟 「………」

姉 「………」

弟 「さて、宿題でもするかな」

姉 「ちょっと!? ねえ、お姉ちゃん今すっごいピンチだよ!? 助けてよ!!」

弟 「ご機嫌に何をトイレで歌ってんのさ」

姉 「ご機嫌じゃないよ! こっちは30分もトイレに閉じ込められてんだよ!?」

弟 「長い付き合いだけど姉ちゃんがそんなにトイレが好きだったとは知らなかったよ」

姉 「違うよ! 好きで入ってんじゃないよ!! 紙がないんだよ、紙が!!」

弟 「紙くらい有るか確認してから入れよ……」


姉 「ちょっと今日は緊急だったの! やむを得ない事情だったの!」

弟 「……左様で」

姉 「いいから紙頂戴よ! キブミートイレットペーパー、プリーズ!」

弟 「……はいはい」

姉 「……ふぅ、久々のシャバの空気はウマイぜ」

弟 「トイレの中に比べればどこの空気だってウマイだろうよ」

姉 「……むぅ」

弟 「……お馬鹿な姉を持つと弟は苦労するねぇ」

姉 「しょうがないじゃん紙がなかったんだから」

弟 「……家に誰も居ないなら紙くらい自分で取りに行きなよ」

姉 「時間的にてっきり弟が帰ってくるだろうと思ってたのに全然帰って来なかったんだよ!」

弟 「……他人をあてにした上、俺のせいにしてキレないでよ」

姉 「うるさいうるさい! 乙女が恥を忍んでトイレの中から助けを求めてんだから察してよ!」

弟 「あれで恥を忍んでたつもりか」

姉 「……ふんっ、だ!」

弟 「はいはい、遅くなってごめんね」

姉 「………」

弟 「そんな毎日毎日同じ時間に帰って来れるわけじゃないんだから我慢してよ?」

姉 「……むぅ。それにしても今日は遅かったね。何かあったの?」

弟 「……いや、ちょっと、ね?」

姉 「ん?」

弟 「………」

姉 「……どうかしたの?」

弟 「いや、幼馴染みが、ね」

姉 「……幼ちゃん?」

弟 「うん。今日提出の進路調査表を出すのをごねてさ、その回収に時間がかかったんだ」

姉 「……それだけ?」

弟 「うん、それだけ――それだけだよ……」

姉 「そっか」

弟 「………」

姉 「………」

弟 「そう、それだけ。それだけなんだ……」

姉 「弟……?」

弟 「そう、その時ね! その時にさ、幼馴染みは俺を困らせるのがスゴく楽しいとか言うんだ!」

姉 「………」

弟 「アレだって! アレだって俺を困らせるためにやったんだよ、きっと!」

姉 「………」

弟 「アイツは絶対Sだよ。ドSだよ。俺をイジメるのが楽しいなんて趣味が悪いよね!」

姉 「やめなさい、弟――らしくないよ」

弟 「……っ」

姉 「……どうしたの、何かあったの?」

弟 「……何でもないよ。何にもないんだ」

姉 「………」

弟 「今日はそれ以外に変わった事は何にもなかった」

姉 「……そっか」

弟 「……うん」

姉 「………」

弟 「でも、ちょっと色んな事にイライラしちゃったのかな」

姉 「………」

弟 「今日は少し変かもしれないや、俺」

姉 「……そっか。そうだね。そういう日もあるよね」

弟 「……うん。だから今日はもう寝るよ。晩御飯も要らない」

姉 「わかった、ゆっくり休んで」

弟 「……うん」

弟 「……ねえ、姉ちゃん? 寝る前に一つだけ」

姉 「ん? なあに?」

弟 「……あのさ、俺わかったんだ。俺、俺はね……」

姉 「……うん」

弟 「……姉ちゃん、姉ちゃんはスゴく、馬鹿な事ばっかりするしさ」

姉 「………」

弟 「ちょっかいばっかりかけてきて鬱陶しいしさ、正直迷惑って思うこともいっぱいあるけどさ……」

姉 「……やめて」

弟 「けどさ! けど、わかったんだ。俺はさ! 俺は多分、多分だけど……」

姉 「やめて、弟」

弟 「多分だけど! 多分だけど俺さ、俺は、姉ちゃんが、姉ちゃんを、姉ち」

姉 「弟っ!!」

弟 「聞いてよ、俺さ……」

姉 「弟、やめて」

弟 「……俺は」

姉 「弟は疲れてて少し変になってるんだよ」

弟 「……俺」

姉 「イライラしたり、心にもないことを言ったりするのもさ」

弟 「………」

姉 「自分の気持ちがおかしくなってるのも、なのにそれに気付かないのも」

弟 「………」

姉 「全部疲れてるせいだよ。気のせいだよ、それは全部。だから……」

弟 「………」

姉 「だから、一晩グッスリ寝て、元気になって」

弟 「………」

姉 「全部、全部忘れよ? 寝ればきっと、良くなるから」

弟 「………」

姉 「きっと、良くなるから……」

弟 「………」

弟 「姉ちゃん……」

姉 「ね? もう寝な?」

弟 「………」

姉 「私も――お姉ちゃんも、もう寝ちゃうから」

弟 「………」

姉 「寝たら、お姉ちゃんもこの事全部忘れちゃうから」

弟 「………」

姉 「だから。だから、もう寝ようよ。明日の朝には元気になってるから」

弟 「………」

姉 「……朝には二人とも元気になってるから、ね?」

弟 「……うん」

姉 「弟はお姉ちゃんの言うことが聞ける良い子だね」

弟 「………」

姉 「おやすみ、弟」

弟 「……おやすみなさい、姉ちゃん」

おやすみなさい

私事で申し訳ないんだが明日引っ越しがある関係で今日は書けないかもしれない
保守してもらってんのに悪いな

昨日はすまんね
粗大ゴミ出してしばらく手空きになったから少し書くよ

弟 「………」

姉 「あ! おはよう、弟!」

弟 「……おはよ」

姉 「もうお姉ちゃんお腹ペコペコだよ。早く朝ごはんお願いね!」

弟 「………」

姉 「弟ー? 早くしないとただでさえスリムなお姉ちゃんの体がスケルトンになっちゃうよー?」

弟 「……ならないよ」

姉 「ふへへ♪ でも早くね?」

弟 「……うん。タマゴはどうする?」

姉 「ボイルドで! 」

弟 「ボイルドってゆで玉子?」

姉 「そう。今日はちょっと大人にハードボイルドな気分なのさ」

弟 「ハイハイ、固茹でね。カッコつけんな」

姉 「弟の作ったゆで玉子は美味しいです!」

弟 「そりゃ、良かった」

姉 「弟はゆで玉子作りの世界一だね」

弟 「固ゆで玉子なんて誰が作っても同じだよ」

姉 「いやいや、弟はゆで玉子作りの天才だよ。お姉ちゃんが認めるんだから間違いない」

弟 「ゆで玉子が上手でも嬉しくないし、認めんの姉ちゃんかよ」

姉 「謙遜しないで良いよ。素晴らしい腕前だ」

弟 「そう言いながら、こっそり姉ちゃんのサラダのブロッコリーを俺のに移すのはやめなさい」

姉 「これは違うよ!」

弟 「違わないよ。そう言いながら今も移し変えてるじゃん」

姉 「これは違うよ! これは食べ物じゃないよ! 見た目が明らかに作り物だよ!」

弟 「ブロッコリーに対してなんという暴言を吐くんだ。栄養価も高いんだよ?」

姉 「栄養価が高いから何なのさ!」

弟 「だから黙って素直に食べなさいって言ってるの」

姉 「見た目が変、味も変、匂いは臭い、そして存在がキモい。よって食べ物じゃない。よって嫌だ。証明終了」

弟 「そんな事言ってたらブロッコマンがブチ切れるぞ?」

予定外の早さで引っ越し業者襲来

カーテンのなくなった窓からは雪が降ってるのがよく見える
次は夜行バスの時間まで暇だから再開

姉 「わかりました、食べれば良いんでしょ! 食べれば!」

弟 「そう、食べれば良いの」

姉 「フンッだ!」

弟 「まったくもう」

姉 「………」

弟 「ん?」

姉 「あれ? 玄関のチャイムだ。こんな朝から誰だろ?」

弟 「………」

姉 「ちょっと見てくるね」

弟 「いや、いい。多分俺の用事だから。俺もう学校行くね」

姉 「………」

弟 「………」

姉 「そう。じゃあ、行ってらっしゃい」

弟 「……うん、行ってきます。ブロッコリーはちゃんと食べろよ」

幼 「あっ、おはよ、弟」

弟 「うん。幼馴染み、おはよう」

幼 「へへ♪ 今日は寒いね?」

弟 「うん、寒いね」

幼 「ほら! 吐く息がこんなに白くなる!」

弟 「うん、そうだね」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「今日、急に迎えに行って驚いた?」

弟 「……うん、そうだね」

幼 「そっか」

弟 「………」

幼 「……弟?」

弟 「………」

幼 「弟? どうかしたの?」

弟 「別にどうもしないよ」

幼 「………」

弟 「いや、本当に何でもないんだよ? 本当に!」

幼 「でも」

弟 「本当に何にもなかったんだ。全然何にも、これっぽっちも変わらない」

幼 「………」

弟 「朝起きて、本当に今まで通り。今までと同じ朝だったんだ」

幼 「………」

弟 「……全部が今までと同じなんだよ」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「そう。何か元気なさそうに見えたからさ」

弟 「……そうかな?」

幼 「うん。今だって元気なさそうに見えるもん」

弟 「そっか。でも、それは多分ね」

幼 「多分?」

弟 「多分、寝ても疲れが取れなかったせいじゃないかな」

幼 「ん? 弟、よく眠れないの?」

弟 「ううん。大丈夫だよ。でも」

幼 「でも?」

弟 「でも、これは多分寝てもあんまり効果はないだろうなって思う」

幼 「?」

弟 「本当は疲れてもいないのかもしれないし、ね」

幼 「いったい、どっちなの?」

弟 「どっちなんだろうね」

幼 「もう、こっちが聞いてんのに」

弟 「………」

幼 「それにしても何だかよくわかんない話だね」

弟 「ごめん」

幼 「別に良いよ。何言ってるのかよくわかんないけど何となくわかったから」

弟 「へ? どっちだよ?」

幼 「だから! 私は優秀だから見ただけで何でもわかっちゃうんだよ、ワトソン君?」

弟 「……エスパーじゃあるまいし」

幼 「まあ、確かにこの卓越した頭脳は最早超能力の域に達してるかもね」

弟 「自信満々だな」

幼 「あっ、信じてないな?」

弟 「イヤイヤ、シンジテルシンジテル」

幼 「そんな怪しいトルクメニスタン人みたいな口調で言われても納得できない!」

弟 「お前はトルクメニスタンの何をもってイメージしたんだ」

幼 「とにかく! 本当にわかっちゃうんだから!」

弟 「ハイハイ」

幼 「……本当に何でわかっちゃうんだろうなあ、私」

弟 「ん? 何か言った?」

幼 「何でもないよーだ! 『弟のバカ!』って言っただけ!」

弟 「バカってお前、小学生じゃあるまいし」

幼 「事実じゃんバカ弟。この鈍感KY変態バカ弟め」

弟 「何か増えてる!?」

幼 「適切な表現に手直しいたしました」

弟 「どこが適切なんだ!? それは流石に酷すぎるぞ!! 謝れ!」

幼 「あー、いけなーい。このままじゃちこくしちゃう。はしらないとー」

弟 「何、その棒読み!? 第一、まだ時間はあるし!」

幼 「しゅわっち!!」

弟 「あっ、こら!? 走るな! 逃げるな! 置いてくな!」

幼 「あ! 因みに弟よりも私が先に学校に着いたら今日のお昼は弟の奢りね!」

弟 「何それ!? 汚い!」

弟 「……幼馴染みのヤツめ、炒飯、チャーシュー麺、餃子とかエゲツないコンボ」

幼 「ねえ、弟?」

弟 「って言うか足速すぎんだろ。何だよアレ? チートか?」

幼 「ねえ、授業終わったよ? 帰らないの?」

弟 「だいたい食い過ぎだよな、アレ。太るぞ」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「そーれっ!!」

弟 「痛いっ!?」

幼 「岡さん! いきますわよ!!」

弟 「ちょっと幼馴染み!? テニスラケットのフレーム部分で撲るのは正直洒落にならん!!」

幼 「オホホ! 私は幼馴染みさんなどではなくてよ! お蝶夫人とお呼び!!」

弟 「体痛い……」

幼 「はっ!? 私は今までいったい何を!?」

弟 「……お蝶夫人と言う名のSM女王様が降臨なさってましたが」

幼 「あら? 嫌だわ。私って霊媒体質なのかしら?」

弟 「都合の良い霊しか降りてきそうにないな」

幼 「で、そんな事より、帰らないの?」

弟 「コイツ話題変えやがった」

幼 「いいから! ねえ、帰らないの?」

弟 「……俺はもう燃え尽きた。燃え尽きたぜ、真っ白にな」

幼 「ん?」

弟 「特に財布の中身が地獄の業火に焼かれちまった」

幼 「はあ? 何をバカな事言ってんの? いいから早く帰ろ?」

弟 「………」

幼 「ねえってば!」

弟 「………」

幼 「さっきから何やってんの?」

弟 「ただでさえ少ない英世さんやら一葉さんに対する黙祷の儀を執り行ってるのです」

幼 「はい?」

弟 「幼馴染みの食欲のために犠牲になった偉人達をこうして悼んでるのです」

幼 「私のお陰で英世さんは一人から四人に増えたじゃん? やったじゃん」

弟 「代わりに一葉女史が居なくなっちゃっただろうが!」

幼 「英世と一葉二人だけのイケない関係から、男四人で組つ解れつの関係になって健全じゃん?」

弟 「全然健全じゃないじゃん、それ!」

よるとことやることがあるからここらでバイバイ

弟 「………」

幼 「いつまで黙祷を捧げてんの? 早く帰ろうよ」

弟 「………」

幼 「あー、はいはい私が悪かったから。今度はもう少し控え目に食べるから」

弟 「また、俺に集るつもりかお前は」

幼 「可愛い彼女にそれくらい奢ってくれても良いじゃん」

弟 「可愛い彼女はそんな風に彼氏に集らないしあんなに食べません」

幼 「よく学びよく遊びよく食べる。その上、スリムで可愛くて最高じゃない?」

弟 「そのせいで俺の財布も幼馴染みの胸みたいになろうとダイエットしてるけどな」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「すごく魅力的だよNE?」

弟 「痛い!? すごく暴力的DEATHよ!?」

幼 「何でそんな意地悪な事ばっかり言うかな、弟は?」

弟 「姉ちゃんと幼馴染みの強力ツートップに鍛えられたからだよ」

幼 「また、そんな事言うし」

弟 「仕方ないだろ?」

幼 「仕方なくないよ!」

弟 「俺は根っこから捻れ曲がってるんだ。俺のこの性格はどうしようもないよ」

幼 「まったくもう! 直そうって気合いが足りないよ」

弟 「………」

幼 「……弟?」

弟 「うん、そうかもね……」

幼 「……どうかしたの、弟?」

弟 「………」

幼 「………」

弟 「幼馴染みは、さ」

幼 「ん?」

弟 「幼馴染みは何で――何で俺の事なんか好きになったんだ?」

幼 「……え?」

弟 「何でお前はこんな俺を好きだと言ってくれるんだ?」

幼 「……どういう事?」

弟 「だってさ、俺って意地悪いしさ、優柔不断だし、空気だって読めないし」

幼 「うん」

弟 「運動も並だし、別段器用でもないし、理屈っぽいし」

幼 「うん」

弟 「勉強はそりゃ普通よりは出来るけど幼馴染みの方が成績良いし」

幼 「うん」

弟 「幼馴染みは何に惚れたの? 顔か? イケメンだからか?」

幼 「いや、その顔でイケメンはないわ」

弟 「……言いにくい事をズバッと言うな」

幼 「本当の事ですから」

弟 「う……」

幼 「………」

弟 「で、でも、じゃあ、何で? 客観的に考えて俺よりスゴいヤツなんて幾らでも居るよ?」

幼 「……そうだね」

気持ちよく寝落ちをかましてたら引っ越し業者の電話で起こされたでござるの巻

幼 「うーん」

弟 「………」

幼 「何でかなあ?」

弟 「俺が聞いてんのに聞き返されても知らないよ」

幼 「そうなんだけど、うーん……」

弟 「………」

幼 「うん、よくわかんないや」

弟 「………」

幼 「てへっ☆」

弟 「可愛い子ぶるな! わかんないのかよ!」

幼 「うん、わかんないよ」

弟 「小さい頃に助けて貰ったからとか、そんなんもないのか?」

幼 「ないない。助けてあげた事はあってもヘタレ弟に助けて貰うことはないでしょ」

弟 「そりゃ、そうだけど! 俺も記憶にないけど! 何かあるじゃん、普通!」

幼 「それはドラマの見すぎじゃない? 普通はあんまりそんな事は起きないよ」

弟 「で、でも。ほら何か、何かないのか?」

幼 「うーん。思い付かないな。いつの間にか好きだったから」

弟 「………」

幼 「………」

弟 「……そんなんで良いのかよ」

幼 「良いんじゃない? よく言うじゃん、『好きになるのに理由は要らない』って」

弟 「………」

幼 「ね?」

弟 「……でもさ」

幼 「ん?」

弟 「でも理由のない気持ちなんて、嘘かもしれない。そんなの嘘と違わない」

幼 「……え?」

弟 「だってさ! だって、それじゃ簡単に自分の気持ちを勘違いしちゃうよ」

幼 「そうかな?」

弟 「そうだよ! 裏付けのない気持ちを『ホンモノ』だなんて俺じゃ言えない」

幼 「………」

弟 「もしかしたら。もしかしたら、そう思い込んでるだけかも知れない」

幼 「………」

弟 「本当はもっと違う気持ちなのに、そうだと思い込んで演技してるだけかもしれない」

幼 「………」

弟 「例えばそれは同情や憐憫、義務感だったり」

幼 「………」

弟 「或いはその『好きである』って行動に酔いしれてるのかもしれない」

幼 「………」

弟 「それなら、それくらいなら、俺はお金や顔で選ばれたりする方がマトモだと思う」

幼 「………」

弟 「だってそこの気持ちに少なくとも嘘はないから。自分も人も誰も騙さないから」

幼 「………」

弟 「……俺はそう考えちゃうんだ」

幼 「………」

弟 「好きだと思っても、それを証明するものなんて何もない」

幼 「………」

弟 「それってすごく怖い事じゃないか。好きな気持ちの根源がわからないなら」

幼 「………」

弟 「俺はこの気持ちの何を信じてやれば良いんだ」

幼 「………」

弟 「俺のこの気持ちの何を信じてやれば良いんだ!」

幼 「………」

弟 「だいたい人を好きな気持ちって何なの?」

幼 「………」

弟 「それって友情や家族愛、性欲や独占欲と何が違うの?」

幼 「………」

弟 「好きな食べ物だって年齢と共に変わるのに、何で変化していく相手をいつまでも好きで居られるの?」

幼 「………」

弟 「好きな気持ちはいつまでも変わらない、そんなのは綺麗事だ」

幼 「………」

弟 「はじめの気持ちと後の気持ちは絶対変わる。それをいつまでも同じなんてのは嘘だよ……」

幼 「………」

弟 「俺はこの気持ちが嘘になるなんて嫌だよ」

幼 「………」

弟 「俺のこの気持ちが嘘だなんてのは嫌なんだ……」

幼 「……弟はさ」

弟 「………」

幼 「弟は私にどうして欲しいの?」

弟 「………」

幼 「弟は私にそれを肯定して欲しいの?」

弟 「………」

幼 「肯定して、好きである気持ちなんて勘違いだって」

弟 「………」

幼 「私の気持ちも貴方の気持ちもみんな勘違いだからって、そう言って欲しいの?」

弟 「………」

幼 「……それとも」

弟 「………」

幼 「それとも弟はそれを否定して欲しいの?」

弟 「………」

幼 「否定して、弟の気持ちはホンモノで、何も怖がる事なんてないんだと」

弟 「………」

幼 「弟のその気持ちは正しいんだと、それを肯定して欲しいの?」

弟 「………」

幼 「……狡いよ、弟は」

弟 「………」

幼 「私のこの気持ちは嘘じゃないから肯定なんて出来ない」

弟 「………」

幼 「誰が何と言おうと私の気持ちは絶対に嘘じゃない」

弟 「………」

幼 「でも、否定したら弟はきっと何処かに行っちゃう」

弟 「………」

幼 「弟は私に否定して欲しくてそんな事言ってるんだもん」

弟 「………」

幼 「間違いなんてないんだって、その人を好きな気持ちが本当だって言って欲しくて」

弟 「………」

幼 「私に! 私から! そう言って欲しいだけじゃない!」

弟 「………」

幼 「……絶対に両方してあげないから」

弟 「………」

幼 「私は貴方が本当に好きで」

弟 「………」

幼 「私は貴方が本当に欲しいから」

弟 「………」

幼 「絶対にどっちもしてやるもんか。肯定も否定もしてやるもんか!」

弟 「………」

幼 「……私が貰うって言ったんだから」

弟 「……え?」

幼 「私が手に入れるって決めたんだから!」

弟 「………」

幼 「絶対に諦めてあげない!」

弟 「………」

幼 「私は貴方の事を絶対に諦めてなんてあげない!」

弟 「………」

幼 「だから」

弟 「………」

幼 「だから」

弟 「……だから?」

幼 「だからもう少し待ってよ……」

弟 「………」

幼 「私をもっと好きにさせて見せるから」

弟 「………」

幼 「私の事をあの人より好きだって言わせてみせるから」

弟 「………」

幼 「……だから! お願いだから、もう少しだけ待っててよ、弟」

また夜に

弟 「………」

姉 「おとうと」

弟 「………」

姉 「弟」

弟 「………」

姉 「ねえ、弟ったら!!」

弟 「へ? どうしたの? そんな大きな声出して」

姉 「『どうしたの?』じゃないよ! 何度も呼んでるのに」

弟 「えっ? そうだっけ?」

姉 「そうだよ! 立ったまま死んでるのかと思ってお姉ちゃんちょっと心配しました!」

弟 「あー、ごめんごめん――で、何? どうかした?」

姉 「えっ? 何が?」

弟 「『何が?』って何? 姉ちゃんは何で俺の事を呼んでたの?」

姉 「ん? そりゃ、暇だから呼んだだけだよ?」

弟 「………」

姉 「………」

弟 「は?」

姉 「だから、『ちょっと呼んでみただけ♪』ってヤツだよ」

弟 「………」

姉 「お姉ちゃんは暇なのです。構え。遊べ」

弟 「ふざけんな!」

姉 「ウサギさんは寂しいと死んじゃうけどお姉ちゃんは暇だと死んじゃうよ?」

弟 「んなもん知るか!」

姉 「姉の死因は暇死。弟がもっと構ってやってればこんな不幸な事は起こらなかったのに……」

弟 「そんな暇なら晩御飯作る手伝いくらいしろ! お前なんぞ飯抜きじゃ!!」

姉 「それは、ご無体な!?」

弟 「………」

幼 「おとうと?」

弟 「………」

幼 「弟ー」

弟 「………」

幼 「ねえ、弟ってば!!」

弟 「ん? どうしたの? 因みに俺は金はないぞ?」

幼 「もう! 誰もそんな事聞いてないでしょ!」

弟 「えっ? そうなの?」

幼 「……弟はいったい私の事を何だと思ってるかな」

弟 「そりゃ、食欲が服着て歩いてるような女だと思ってるよ」

幼 「………」

弟 「あっ。駄目だよ? 美術の石膏は撲る為のものじゃないよ? それは犯罪の臭いがするよ?」

幼 「大丈夫――死なない程度に殺すから問題ない!!」

弟 「大問題だよ!?」

幼 「これくらいで勘弁しといてあげよう」

弟 「適切な加減をありがとうございます……」

幼 「うーん、こっちが先に壊れるとは思わなかった。まだ乾燥が足らなかったかな?」

弟 「俺の生命力が単に鈍器の強度を上回っただけか」

幼 「そうだね石膏の半分が私の優しさで出来てたお陰だね」

弟 「バファ○ンかよ。その優しさを少しでも俺に回してよ」

幼 「うん。だからその為に弟の所に来たんじゃん」
弟 「………」

幼 「………」

弟 「昼飯を集りに来た挙げ句に鈍器で人を襲うのがお前の優しさなのか?」

幼 「だから違うって言ってるでしょ! 話を最後まで聞け!」

弟 「これは」

幼 「……どう、かな?」

弟 「お弁当が二つも」

幼 「うん。今朝私が早起きして作ったんだよ」

弟 「………」

幼 「えへへ」

弟 「……相変わらずよく食べるな幼馴染みは」

幼 「違うよ!! 片方は弟のに決まってるでしょ!?」

弟 「えっ? そうなの?」

幼 「そうだよ!? 当たり前でしょ!」

弟 「いや、当たり前と言い切れないあたりが幼馴染みの恐いところだ」

幼 「………」

弟 「………」

幼 「実はまださっきの石膏の残りがあってね、今度のはもうちょい硬いから」

弟 「ごめんなさい! 嘘です! 冗談です!」

弟 「た、ただいま」

姉 「あ、おかえりなさ――ってどうしたの?」

弟 「ううぅ」

姉 「何だか顔色が悪いって言うか、どす黒いよ?」

弟 「ちょっと昼に奇怪なモノを食べたせいでなんか気分が……」

姉 「えっ? 食あたり? 大丈夫なの?」

弟 「一緒に食べた幼馴染みがピンピンしてたから毒ではないと思うんだけど……」

姉 「そうなの?」

弟 「でも、仮に俺が明日の朝に遺体で発見されたら幼馴染みのヤツに『怨みながら死んだ』と伝えといて」

姉 「幼ちゃんを?」

弟 「うん。俺だけ逝くのは納得出来ない。アイツも道連れだ」

姉 「………」

幼 「あっ! 弟、おはよ」

弟 「………」

幼 「何? どうしたの? 何を警戒してるの?」

弟 「いや、別に……」

幼 「ん? 何か変な弟」

弟 「……ところでつかぬ事を伺うけど今日の昼飯は弁当じゃないよな?」

幼 「え? 今日もお弁当だよ?」

弟 「………」

幼 「あっ、弟の分もちゃんとあるから安心してね?」

弟 「………」

幼 「どうしたの?」

弟 「俺今日はもう早退するから」

幼 「へ?」

弟 「本日は一身上の都合により早退します!! 探さないで下さい!」

幼 「早退するって、まだ学校にも着いてないのに?」

弟 「うるさい! 俺に構うな! 俺はまだ死にたくないんだ!!」

幼 「ちょっと弟!?」

弟 「………」

幼 「まったくもう」

弟 「何でお前そんなに足が速いんだよ!?」

幼 「昔から弟が逃げるから、それを追って鉄槌を下す必要があって鍛えられたんだよ」

弟 「ハンターとして昔から俺が鍛練してしまっていたのか……」

幼 「そんな事はどうでも良いから早く学校に行くよ?」

弟 「嫌だ! 行かない! 体が死にたくないって拒絶してる!」

幼 「何を訳のわからないこと言ってるの? 早く行くよ?」

弟 「って、おい!? 腕に抱きつくな!!」

幼 「へへ♪ こうしないと弟が逃げちゃうから仕方ないの!」

弟 「え、いや、ちょっと!? 朝の通学路でこれは結構恥ずかしいですよ!?」

幼 「ダメ、逃がさない――逃がさないから絶対に、ね」

弟 「ただいま」

姉 「おかえり、今日は大丈夫そうだね」

弟 「いや、驚く事に最近はマトモなんだ。マトモな不味さなんだ」

姉 「へ?」

弟 「初日のように食糧と認めがたい不味さではなくて普通に不味かったんだ」

姉 「それは貶してるの?」

弟 「誉めてるんだよ。無脊椎動物が類人猿になったくらいの進化の仕方だよ」

姉 「あんまり誉めてるようには聞こえないけど」

弟 「いや、大したモンだ。幼馴染みの弁当には可能性がある」

姉 「……え?」

弟 「本人の食い意地がはってるだけあるな。食いしん坊万歳!」

姉 「弟はお昼ご飯に幼ちゃんのお弁当を食べてるの?」

弟 「え? ……あ、言ってなかったっけ」

姉 「………」

弟 「ごめん」

姉 「え? ううん! 何で弟が謝るの?」

弟 「………」

姉 「謝るんだったらお姉ちゃんよりも作ってくれてるのに文句ばっかり言ってるの幼ちゃんにでしょ?」

弟 「………」

姉 「そっか! そっか! 弟は良いな、幼ちゃんの手料理が食べられて!」

弟 「そんなに美味しくないから大して良くないよ」

姉 「また、そういうこと言う! 弟はもっと幼ちゃんに感謝するべきだよ!」

弟 「……うん、わかってる」

姉 「良いな良いな」

弟 「うん」

姉 「私も羨ましいな」

弟 「今度幼馴染みに姉ちゃんの分も作るように頼んでみるよ」

姉 「……え? あ、ううん! 良いの!」

弟 「遠慮しなくても幼馴染みなら多分喜んで作ってくれるよ?」

姉 「そういう事じゃ――ん? そうだ!」

弟 「どうしたの?」

姉 「今日はいつも晩御飯を作ってくれてる弟の代わりに私が作ってあげるよ」

弟 「え? でも、それじゃ……」

姉 「大丈夫大丈夫! 多分なんとかなるから! 任せて!!」

弟 「いや、そういうことじゃ……」

姉 「いいから、いいから♪ さ~て! 今日は何を作ろうかなぁ?」

弟 「………」

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