シャットアウラSS (63)


注意事項

・映画ネタバレ
・原作レイプ
・口調がおかしいかもしれない
・SSどころか小説すらはじめてなのでいろいろ至らない点はご容赦ください


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・鳴護アリサ

 高校一年生。レベル0で歌うことが大好きな少女。
 3年前からの記憶が無い。
 その正体は、オリオン号事件の際にシャットアウラの祈りが奇跡として具現化したもの。

 魔術サイドの連中からは「聖人」あるいはそれと同等の力を持っているとされ、監視されていた。

 「ARISA」として歌手活動をしており、路上ライブ時代から話題になっていたが、正式な歌手デビューともに人気が爆発。またたく間に時の人となった。

 エンデュミオンの事件の際、シャットアウラと融合している。

 当麻に対し慕情を抱いていた。

・シャットアウラ=セクウェンツィア

 学園都市に数ある私設治安維持特殊部隊の一つ、「黒鴉部隊」の隊長を務めている少女。
 能力はレベル4の「希土拡張(アースパレット)」。その能力のめずらしさから、霧が丘女学院に在籍している。

 身体強化のための処理が施されたボディースーツを常に着用していた。

 秩序を何よりも重んじる性格。
 オリオン号事件の被害者の一人で、その際に「音の高低とリズムを認識する機能」を損失してしまい、以来音楽は耳を汚す醜悪なノイズとして嫌っていた。

 父はディダロス=セクウェンツィア。オリオン号事件唯一の犠牲者。当時飛行機に乗っていた乗員乗客88名で、ディダロスが死亡したことにより正確な生存者は87名であったが、墜落途中に生まれたアリサが88人目として数えられてしまったため、勘違いした報道が先走り、世間が賑わっている中、「奇跡」という文句のため彼の存在はひた隠しにされてしまった。それにより、シャットアウラは「奇跡」という言葉を嫌悪している。

 エンデュミオンの事件の際、オリオン号事件の時の記憶を思い出し、アリサと再び一つに戻ることによって起こした歪曲で、「エンデュミオン崩壊が回避される」という奇跡を引き起こした。

 その後、彼女の行方は不明であったが、実は冥土返しの病院で保護されていた。

 年齢は、同一人物であるアリサが高校一年生であるため、おそらくそれと同一。


 学園都市を震撼させたエンデュミオンの一件から、十日が過ぎた。
 ここはとある病院の一室。
 黒髪の少女は、長い眠りから目を覚ました。

 彼女の名前はシャットアウラ=セクウェンツィア。
 学園都市に数ある私設治安維持特殊部隊の一つ、「黒鴉部隊」の隊長を務めていた。

「私は……助かったのか?」

 エンデュミオンは崩壊していない。窓の外の様子を見るに、それは明らかだった。
 さらに、自分までも助かってしまうとは、まさに——

「まさに奇跡だな」

 ハハ、と自嘲気味にシャットアウラは言った。
 「奇跡」という言葉は、シャットアウラが最も嫌悪する言葉だったのだ。
 しかし、あの日あの人達のお陰で、今は信じてもいいと思えるようになっている。

「——は、そうだ、今世界はどうなっている? エンデュミオン崩壊は回避できたみたいだが、レディリーは? 黒鴉部隊は? そして……上条当麻は?」

 次々に疑問が沸き起こった。
 シャットアウラは重い体を無理やり起こし、点滴スタンドにしがみつきながら、立ち上がった。
 体がこんなに重いなんて、と愚痴をこぼしながらも、その足は懸命に前へ踏み出していった。
 そして、扉の取っ手に手をかけようとした時、不意に扉が開いた。


「おやおや、目が覚めたんだね?」

 その正体は、カエル顔の医者だった。
 シャットアウラでさえ彼のことを知っている。「冥土帰し」の異名をとる、凄腕の医者だ。以前に隊員が世話になったが、その技術は眼を見張るものがあった。
 シャットアウラは冥土帰し止められ、後退していく。

「気持ちはわかるがね、君はあれから十日間も眠っていたんだよ。無理をしてはいけない」
「な、十日?!」

 シャットアウラは愕然とした。

「世界は平和だよ。あれから大覇星祭も無事に行われた。あの一件はまさに、奇跡、だったね」
「そ、そう……ですか……」
「少し待ってなさい。今食事を用意させよう。そして、リハビリだ」

 そういって冥土帰しはシャットアウラをベッドに座らせたあと、退室していった。

「そうか……十日も眠っていたのか……、通りで体が重いはずだ」

 シャットアウラの体は、痩せていた。もともと細身ではあったが、それでも見てわかるほどに。

「これでは仕事に支障が……」

 と言いかけた所で、はたと気づいた。
 あれだけのことがあったのだ。黒鴉部隊が現在も機能していると思えない。
 私達を雇っていたオービット・ポータルも、もう終わりだろう。
 隊員たちがどうなったかは気になるが、今は連絡の手段がない。


 しばらくして、食事を持った看護婦が現れた。
 シャットアウラは礼を言い、看護婦が退室するのを見届けると、思わずがっついてしまう。
 なにせ腹が減っていたのだ。久々の食事。ついつい行儀を忘れてしまう。
 もう食べ終わってしまった。病院食でもとても美味しく感じた。
 思えば三年前のあの日以来、食事をまともに取っていなかった。いつも片手間だった。
 もう、戦わなくていいのか。これからは、普通の女の子として生きていけるのだろうか。
 いろんなことを考えていると、どこからか音楽が聞こえた。ピアノの音だ。今は、音楽を認識できるようになったらしい。
 それを聴きながら、シャットアウラの目からは涙がこぼれていた。

「ああ、音楽とは、素晴らしいものなんだな」

 シャットアウラは、その音楽が途切れるまで、目を閉じて、聴きいっていた。



 あのあと、リハビリを済ませた。
 もともと鍛えていた甲斐あってか、すぐに日常に支障がない程度には回復した。
 もう退院しても問題無いだろうが、冥土帰しのすすめで、今日は病院に泊まることになった。

 夜。病室に一人。久しぶりにシャワーを浴びたシャットアウラはベッドに横たわり、天井を見つめていた。
 明日には退院する。それからどうしようか。やはり、上条当麻のもとへ出向かって、改めて謝罪と礼を言うべきか。
 そんなことを考えていると、ふいに声が聞こえた。まるで頭のなかに直接話しかけているような、テレパスのような感覚だった。

(誰だ?)

 シャットアウラはテレパスの使い手ではないが、思考内で話しかけてみる。
 声は段々鮮明になっていき、聞き取れるようになった。
 この声、覚えがある。シャットアウラはさらに問うた。

(お前……まさか鳴護アリサか?)

 鳴護アリサ。エンデュミオンの一件の際に、シャットアウラと融合した少女。
 その正体は三年前のオリオン号事件の際、シャットアウラの祈りが奇跡として具現化した存在であり、あの日、すべてを思い出した二人は、再び一つとなっていた。

(やっと……やっと話せたね)
(な、なぜ、どういうことだ?)

 シャットアウラは困惑した。

(ずっと話しかけてたんだよ。気づいてもらえたのは、さっきみたいだけど)
(ずっと? そうか、すまない。あれから常に何か考えてたからな気が回らなかった)
(ううん、いいの。わたしこそ、勝手にシャットアウラちゃんの体に居座っちゃってごめんね)
(な、何を言うか。お前は私なんだ。謝ることじゃない)
(ふふ、ありがとう。シャットアウラちゃんて、思ってたよりずっと優しい人だったんだね)
「な……!」

 シャットアウラはいきなり褒められて恥ずかしさのあまり赤面して声を上げてしまう。

(本当は、このまま黙っていようかなと思ってたんだけど、もう一度だけ当麻くんに会いたくて……)
(当麻……上条当麻か)
(お話できないっていうのはわかってるんだけど、あれから無事なのか、一目だけでも見たくて)
(そうか……分かった。私も近々会いに行こうと思っていたんだ。どうせやることもないし、明日にでも行こう)
(……いいの?)
(何を遠慮することがあるか。お前は私なんだ)
(シャットアウラちゃん、さっきとおんなじ事言ってる)
(う、うるさい、ほら、さっさと寝るぞ)
(ふふふ、はぁい、おやすみなさい)
(ああ、おやすみ)

 それから意識が閉じるまで、シャットアウラはこの現象についてずっと考えていた。
 そしてこう推測した。
 おそらく、元々は一人の人間とはいえ、三年近くも別々に過ごしていたんだ。その自我が、残ってしまっているのだろう、と。
 だがシャットアウラは、むしろ感謝していた。本当は、とても不安だったのだ。そんなときに、誰かが一緒にいてくれることのなんと幸福なことか。
 シャットアウラは穏やかな笑みを浮かべながら、眠りについた。

今回はここまでです。2,3日に一回ずつくらいで投下していきます。良かったら見てください


シャットアウラは好きなキャラだし期待してる

こんばんわ。結構溜まったので投下していきます。


「はあ?! イタリア?!」

 翌日、シャットアウラは上条の所在を聞いて、声をあげていた。

「間が悪かったね、ちょうど昨日からだよ」
「そんな……」

 おもわず唖然としてしまう。

(し、しかたないよ、シャットアウラちゃん。また今度にしよう?)

 自分の中の鳴護アリサがそう語りかけた。その声はやはり、落胆しているようだった。
 が、こればかりは仕方ない。

 シャットアウラは退院許可を得て、一旦自宅に帰ることにした。

 久しぶりに入る家は、少し埃臭かった。
 ベッドにテーブル、テレビ、パソコン。必要最低限なものしか揃えていない殺風景な部屋だが、やはり言い知れぬ安心感があった。

(わあ、ここがシャットアウラちゃんの部屋かあ)
(あ、あまり言及しないでくれ。寂しい感じなのはわかってる)
(べつに、そんなつもりはないんだけど……)
(それで、このあとはどうしようか)
(このあと?)
(上条当麻にも会えなくなったからな。どこか行きたいところがあるなら、連れて行ってもいい)
(ほんと? うーん、どうしよっかなあ)

 アリサはしばらく考えにふけり、シャットアウラはテレビの画面をぼうっと見ていた。
 数分後、アリサは「あ!」と何かひらめいたように声を上げた。
 テレパスのような感覚とはいえ、いきなり声を上げられると驚いてしまう。
 シャットアウラは平静を保ちつつも、アリサの声に意識を向けた。

(な、なんだ? 何か思いついたのか?)
(うん、あのね、カラオケとかどうかな!)
(……は?)
(シャットアウラちゃん、この前一緒に歌った時とっても上手だったもの)
(い、いや、私は歌は……それに音楽はあまり好きじゃないというか)
(嘘。昨日ピアノ聴いて泣いてたじゃない)
「む?! ゴホ、ゴホ……」

 恥ずかしいところを持ち上げられて、思わずむせこんでしまった。

(お、お前見てたのか?!)
(見ていたっていうか、わたしはあなたなんだよ?)
(うぐ……)

 シャットアウラは恥ずかしさに耐え切れずしばらく悶えるが、しばらくして覚悟を決めたように言った。

(わ、分かった。行こう、カラオケに)
(ほんと?!)
(ああ、行きたいところがあるなら連れて行ってやると言ったしな)
(わぁい、ありがとうシャットアウラちゃん!)
(あ、でも持ち合わせがないな。まずは金を下ろしに行こう)


(わ、わぁ?! すごい金額!)

 ATMに表示されている銀行残高を見て、アリサは驚愕の声を上げた。

(そうか? あまり使ってないしな。ところで、カラオケというのはいくら位かかるんだ?)
(うーん、一人なら千円あれば十分だと思うけど)
(随分安いな。まあ、いくらか余分に持っていったほうが無難か)

 ATMを操作してお金を取り出し、銀行を後に。
 第七学区を出歩くことがあまりないシャットアウラは、アリサの案内を頼りに、街を歩いた。
 闇に近い側に身を寄せていたシャットアウラにとって、街はあまりにも平和だった。
 あれはなんの店だろう、あれはどういった食べ物なんだろう、そんなふうに一面を眺めながら、そういえばあの日まではこうして店を眺めて歩くことすらしていなかったな、と思いふけっていた。

(シャットアウラちゃん、ここだよ!)

 ふいにアリサに呼ばれて、シャットアウラは我に返った。
 危うくカラオケ店を通り過ぎるところだった。
 随分視覚的にうるさい店だな、と思いながら、店に入る。

「いらっしゃいませ。ご利用はお一人様ですか?」
「あ、ああ」
「プランはいかが致しましょう」
「プラン?」

 シャットアウラはカラオケ店に入るのが初めてなため、何もわからずに困惑してしまっていた。
 そこに、アリサがフォローを入れる。

(シャットアウラちゃん、二時間ドリンクバーでいいんじゃないかな?)
「じゃあそれで」
「はい?」
「あっ、いや、二時間ドリンクバーで」
「かしこまりました。それでは、お部屋は17番になります」
「ど,どうも……」

 店員から伝票とマイクが入ったかご、ドリンクのコップを受け取ると、適当な飲み物を入れて、そそくさと17番部屋に入っていった。

 部屋はいかにも少人数用の手狭い感じだった。
 なんとなく気恥ずかしいので、ドアから覗かれない位置にシャットアウラは座った。

(それで、どうすればいいんだ?)
(そこにある機械で歌いたい曲を選択して送信するんだよ)
(こ、こうか)

 慣れない手つきで機械を操作して、とりあえず記憶に残っている曲を選択した。

(も、もりのくまさんってシャットアウラちゃん……)
(し、仕方ないだろう! 思いつくのがこれしかなかったんだ! 慣らしだ、慣らし)

 皆無といっていいほど歌に触れて来なかったシャットアウラには、歌に関する知識は殆ど無い。
 そして、経験も——。

 データが送信されると画面が切り替わり、可愛らしい音楽が流れる。
 それに相反して繰り出される強烈な歌声は、もちろん、シャットアウラのものだった。

「あるうぅひいい! もりのぉなかああ! くまさんにぃいいい! であああったああ!」
(ちょ、シャットアウラちゃんストー—ップ!)
「はなさああ……なんだ」
(なんだじゃないでしょ! 言っちゃ悪いけど、音痴なんてレベルじゃないよ!?)
「」
(リズムも走り過ぎだし! ほら、画面に写ってる字幕の色が変わっていくでしょ? あれに合わせて歌うの!)
「あ、ああ」
(わたしも一緒に歌うから、さんはい!)
「くまさあんんのお」
(音量ももっと抑えて!)
「……ゆうこーとーにゃ、おじょーおーさーん、おにげーなーさい」
(そうそう、上手上手)
「そ、そうか?」
(うん、その調子でいこ!)

 その後なんとか歌いきり、カラオケの採点機能で表示された結果を見たシャットアウラは椅子に手をついた。

 『採点結果:30点。全体的にリズムと音程が合っていません。頑張りましょう』

(す、すごい、30点なんて初めて見たよ……この機会、どんなに適当に歌ってたって60点はもらえちゃうのに……)
「もう……帰りたい……」
(ま、まだまだこれからだよ! 頑張って練習したらすぐ上手くなれるって! わたしも教えてあげるから!)
「どうせ私には才能が無いんだ……」
(そ、それにしてもおかしいなあ。あの時はあんなに上手く歌えてたのに)
「あの歌は、私が作ったものでもあるし、お前に合わせて歌っていたから……」
(……もしかして! シャットアウラちゃん、「ARISA」で歌手検索してみてよ!)
「ARISA……? わ、わかった」

 言われるがまま、機械を操作して検索をかける。
 ヒットした歌手候補を見て、アリサは嬉しそうな声を上げた。

(わたしの歌がはいってる! すごい! カラオケで歌えるようになってるなんて!)
「ああ、そういえばお前、歌手をやっていたんだったか」
(すごーい、ほんとにプロって感じ! あ、でも5曲しか入ってないんだ。まあ、OVERは歌詞発表してなかったしね)
「……で、どうしろと」
(あ、だからね、わたしの歌ならシャットアウラちゃん歌えるんじゃないかな? あの時と一緒で)
「……そうか、なるほど」

 とりあえず、適当に選曲してみる。
 マイクを手に取って立ち上がると、画面が切り替わり曲が始まろうとしている
 すると、シャットアウラの雰囲気が変わった。

上げたほうがいいかな

「今夜は星が綺麗ね だからきっと——」

 いける! シャットアウラは確かな手応えを感じていた。
 アリサも、わぁ、と声を漏らす。

「届く————!」

 それから、無我夢中で歌った。音の高低やリズムどころではない、歌ったことがないはずなのに、歌詞でさえも自然に浮かんで発している。エンデュミオンであの時アリサと歌った時の感覚と同じだった。
 アリサすらも聴き入っていた。ドアの外で、立ち聞きしている人もいた。
 シャットアウラの歌声は、アリサにも劣らぬ、まさしく「奇跡の歌声」だった。

 『採点結果:98点。堂々たる素晴らしい歌いっぷりです』

 歌い終わって採点結果を見たシャットアウラは、そのまま椅子に崩れた。
 まさに全身全霊で歌っていたのだ。

(すごいよシャットアウラちゃん! あんなに歌えるなんて!)
「自分でも驚いている」

 シャットアウラはいまいち放心状態であった。
 テーブルに置いてあるジュースを一気に飲み干して落ち着くと、なにやら外が騒がしいのに気づいた。
 シャットアウラはドアを開けて様子を覗くと、部屋の前に人集りができていた。
 その人達はシャットアウラにむかって称賛の拍手を送っていた。

 シャットアウラは恥ずかしくなって勢いよくドアを閉めた。


 シャットアウラはいまいち放心状態であった。
 テーブルに置いてあるジュースを一気に飲み干して落ち着くと、なにやら外が騒がしいのに気づいた。
 シャットアウラはドアを開けて様子を覗くと、部屋の前に人集りができていた。
 その人達はシャットアウラにむかって称賛の拍手を送っていた。

 シャットアウラは恥ずかしくなって勢いよくドアを閉めた。しかし、内心まんざらでもなかった。

(これだよ)
「?」
(歌に想いを乗せて一生懸命歌うとね、それがみんなに届いて、みんなが感動してくれて、今みたいに心からの拍手と歓声を送ってくれるの。これがわたし、やめられなくって歌ってたんだよね)
「……ああ、分かる気がするよ」
(シャットアウラちゃん)
「なんだ?」
(歌って、いいものでしょ?)
「……そうだな」

 シャットアウラは再びドアを開くと、観衆に頭を下げて礼を言った。
 それからもしばらく拍手は止まなかったが、やがて次第に騒ぎは収まり、皆それぞれの部屋へと戻っていった。

「……さ、歌おうか!」

 ドアを閉めて、シャットアウラは再びマイクを取ると、残りの曲を片っ端から送信して、夢中で歌った。
 結局、二時間の予定を返上して、日が暮れるまで時間延長を繰り返していた。


 携帯の着信に気がついたのは、カラオケ店を出てからだった。
 相手は病院……つまり冥土帰しからである。
 シャットアウラは急いで電話をかけ、冥土帰しに出てもらうように頼んだ。

「ああ、もしもし、私だよ。なんだか随分ひどい声をしているね。カラオケにでも行ってたのかい?」
「ああ、いえ……それでなんの要件で私に?」
「そうそう、上条当麻くんだがね、日本に帰ってきているよ。本当は昼のうちに帰ってきていたんだがね。君に連絡がつかなかったんだ」

 ぐあ、とシャットアウラは衝撃を受けた。
 まさかカラオケをして連絡を逃すなんて。

「今日はもう遅いから会うのは明日にしなさい。それじゃあ、忙しいので切るよ」
「はい、ありがとうございました」

 連絡を切り、携帯をしまうと、シャットアウラは所在無さげにアリサに話しかけた。

(すまない、せっかく会えそうだったのに、チャンスを潰してしまった)
(いいのいいの。当麻くんには明日にだって会えるし、シャットアウラちゃんが歌を気に入ってくれて嬉しいよ。それにしてもよく何時間もわたしの曲ばかり歌ってたね)
(まぁ、他に知ってる曲もなかったしな。それに……)
(それに?)
(とてもいい曲だったから)
(シャットアウラちゃん……)
(さ、今日は帰ろう。あ、その前に夜食を買わなくては)
(せっかくだから外食にしようよ—。わたし、Joseph'sのカルボナーラが食べたいな)
(お前、食事できるのか?)
(私はシャットアウラちゃんだから、シャットアウラちゃんが口にしたものの味が伝わるんだよ。まだ病院食しか食べてないじゃない。もっと美味しいものが食べたいな)
(それって、私が食べたいものを食べられないじゃないか。……ま、いいか。特に好きなものがあるわけじゃないし)
(やった! シャットアウラちゃん大好き!)

 こうしてふたりは、その後ファミレスで食事を済ませた後、帰宅して眠りについた。

今日はここまで。春休みで結構暇なので今週中には完結しちゃうかもです。おやすみなさい。

乙?この調子早く投稿してくれ?舞ってる

>>8 >>20 >>21 >>22
ありがとうございます。ちなみに僕はアリサ派です。

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