かなめ『ソースケはもう“ウルズ7”じゃないでしょーが』
宗介「む、そうだったな」
かなめ『……まあこれも一応“任務”だし?“ウルズ7”って呼ぶのも面白いわね
じゃあ“ウルズ7”。“任務”の内容を復唱しなさい』
宗介「“御坂美琴”の護衛であります。マム!」
かなめ「結構!」
―常盤台中学・学生寮―
黒子「護衛研修?誰かを護る研修ですの?」
美琴「その逆、“守られる研修”よ
SPの養成学校の学生の研修相手になるのよ」
黒子「面倒な研修ですのね。御生憎様
わたくし誰かに守られるような弱い女ではありませんのに」
美琴「私だってそうよ。実際に向こうの学校レベル0~2中心で
常盤台の生徒の方が強いってことは珍しくないんだけど…
何でも『淑女たるもの守られる側の経験も積んどけー』っていう常盤台の方針らしいわ」
黒子「はぁ…その護衛とやらの殿方のせいでお姉様との時間が割かれると思うと…
一体どんな人が来るんですの?」
美琴「まだ名前しかわからないわね
えーっと…私の護衛役は……」
美琴「相良宗介…って名前みたい」
アニメフルメタ派 ネタバレ注意
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
かなめ『――ってな感じでハッキングして御坂美琴の護衛役はソースケ担当に変更しておいたわ
いやー御坂美琴が常盤台の生徒でよかったわ。ソースケの通ってるガッコでこんなイベントがあるとは偶然ね』
宗介「そうだな……しかし学校側にハッキングとは随分と大胆な手を使ったな」
かなめ『文句言うなら得体も知れない依頼主に言いなさいよ!
いきなり女子中学生の顔写真だけ送って“この子を守れ”って依頼に無理があるってんの
おかげでまず御坂美琴を探すのに苦労したっつーの
でも前金も報酬金も高かったし?それなりに本気出さなきゃならないってわけ』
アル《警告――大金を撒餌にした罠の可能性が高いです
これが罠なら私たちはネズミ以下でしょう》
無機質な合成音声が響き渡る。
彼の名は――アル。以前は宗介の愛機“レーバテイン”に積まれていた高性能AIだ。
かなめ『――このぉ……!言わせておけば…!
アンタのトランザムと食費(電気代)に金がかかってるんでしょーが!!
じゃなきゃまだ学生なのに護衛会社なんて作らないわよ!』
そう、今のアルはASでも無ければ兵器ですらない。何の変哲もないスポーツカーに積まれているのだ。
これは他でもないアル本人の希望によるものであり、アルによって命を救われた宗介の感謝の印でもある。
アル《私の人工知能がより“人間”に近づくためには必要な経費です
私が言いたいのは依頼を蹴るのではなく――》
かなめ『ハイハイちゃんと警戒しろってことでしょ?わかってるわよ
いいソースケ?私はなんとか依頼主を探るからソースケは普通に護衛してて頂戴』
宗介「了解した」
アル《私は?》
かなめ『アンタは適当に屋外で待機!
いつでもソースケのバックアップ出来るようにお願いね』
アル《ラージャ。では軍曹が寂しくないように通信上にBGMでも――》
宗介「いらん。普通に待機していろ」
・ ・ ・
かなめ『いーいソースケ!普通によ?
ここには林水センパイいないんだから誰も尻拭いできないからね?』
宗介「ふっ……心配するな
護衛任務は最早俺にとっては得意分野だ
これも君のおかげだな」
かなめ『そ……それならいいけど』
宗介「では交信を終了する」
寮監「御坂。お前の護衛役が到着したので降りてこい
白井の護衛役はまだ先なので白井は待機しておけ」
美琴「はい」 黒子「はいですの」
美琴「じゃあ行ってくるわね」
黒子「いってらっしゃいまし」
―――
――
黒子「ふふふ……殿方がお姉様と一日中一緒だなんて認めませんの
この白井黒子……しっかりと“露払い”しなくては……っ!!」
美琴の降りたころ、ロビーには常盤台の学生とSP学校の学生が大勢いた。
護衛する方と護衛される方、どちらも緊張した様子でありどこか様子がぎこちない。
美琴(そりゃー女子中学生と男子高校生をいきなり合わせたらこうもなるっつーの)
護衛「わ、私は婚后様を護衛させてさせていただく――」
婚后「要りませんわそんな暑苦しい自己紹介
ああもう、聞いてませんわよこんな面倒くさい行事
だいたい!あなたのような『低能力者』に私のような『大能力者』の護衛が務まるとでも思って!?」
護衛「そ、それは――」
美琴(あーあー、婚后さんの護衛役の人も可哀想ねー
まっ、婚后さんの気持ちもわからなくはないわ。女子中に言い負かされるようなやつに護衛されるなんて……)
先生「御坂さん。こちらが担当の相良さんです」
美琴「はい」
目の前には引き締まった顔の男子生徒が行儀よく立っていた。
そして愛想のかけらもないへの字口を開く。
宗介「本日○八○○時より御坂殿の護衛の任に着きました。相良宗介です」
第一印象は――まあハンサムな男だなと思った。
しかしこの男には軟派な雰囲気は一切感じ取れない。
美琴(へえ……中々芯がありそうじゃん)
まず目が他の生徒と明らかに違う。
相手を臆せずに強く見ている、それでいてそのずっと先を見据えているような眼差し。
美琴「えーっと……アンタが私の護衛なのね
私は御坂美琴。よろしくね」
宗介「はっ。よろしくお願いします御坂殿」
握手などは一切せず、それ以上二人の会話は続かなかった。
護衛研修1日目は所謂“顔合わせ”でしかない。
聞いた話によると普段は男と接する機会がない常盤台の学生に対する研修も兼ねてるとか。
つまり護衛役とはコミュニケーションを取らねばならないのだ
しかし――
美琴(こ、コイツ無愛想すぎる……!)
さっきの自己紹介から美琴の部屋に戻る最中である今まで一言も口にしないのだ。
美琴(堂々としてるようでこいつシャイなんじゃいの!?気まずいっつーの!)
美琴「あ……あんた私に質問とかないの?」
宗介「?…特にありません」
美琴(しろよ!この空気ぶち壊せよ!っつーか何で私が気遣ってんの!?)
宗介「……っ!いや、1つありました」
美琴「な、何?何でも聞いていいわよ!」
宗介「御坂殿は、何者からか恨みを買った覚えはありませんか?」
美琴「はい……?」
ある――というかありまくる。
あまり門限を守るタイプでない美琴は街のヤンキーどもによく絡まれる。
その都度、真っ黒に焼いてさしあげたりするもんだから
恨みなんてものは大安売りのバーゲンセール状態で買い漁っているようなものだ。
それだけではない。
夏休みの間、美琴はいくつかの“闇”とも戦った。
その際に買ったであろうドス黒い恨みもないとは言い切れない。
美琴「な、何でそんなこと聞くわけ?」
宗介「護衛にあたって重要だからです。何か心当たりはありますか?」
美琴「そりゃあ……無いとは言い切れないけど話すようなことじゃないわよ!」
宗介「やはりありますか……何をしたんです?
統括理事の娘を誘拐して腹に爆弾でも括りつけて身代金の要求でも?」
美琴「は?」
宗介「それとも罪のない子供がいる孤児院に毒ガスを撒いたか……いや待てよ?
ま、まさか……っ!!汚れのない女子中学生をクスリ漬にして高額で……っ!?」
美琴「あ……アンタは私を何だと思ってるんだぁぁあああああああああ」
バヂバヂィ……っと学生寮の廊下に電光が走る。狙う先はもちろんこの妄想男――宗介である。
宗介「あ……危ないじゃないか」
美琴「いきなり愉快な妄想ぶちまけてるからでしょーが!!
つーか何?私がそういったサイコ野郎に見えるわけ!?
……ってアンタ今の避けたの……?」
宗介「……いえ、とっさに身を屈めはしましたが。避けることが出来たのは偶然です
今のは、能力ですか?」
美琴「能力に決まってんでしょ。アンタも学生なら能力ぐらい知ってんでしょ?
そういやアンタってレベルは?」
宗介「システムスキャンの結果でしたら……」
宗介「“レベル2”でした」
少し時を遡る。
レナード一派との戦争が終わった後も、宗介とかなめは元の生活には戻れなかった。
かなめが拉致される前のドンパチが原因だ。宗介に至っては戸籍偽装まで知れ渡ったので完全にお手上げ状態だった。
そんな中、救いの手を差し伸べたのは意外にも学園都市だった。
『千鳥かなめを“原石”として学園都市に招きたい』
“原石”とは能力開発を受けずに、生まれ持って能力を有する能力者のことを指す。
『吸血殺し』の能力を有する姫神秋沙という少女がこれに該当する。
一種の精神世界であるオムニ・スフィアからブラックテクノロジーを引き出し
その技術を自分のものに出来る『囁かれし者』であるかなめは学園都市から能力者として認定され学園都市に招かれることとなった。
そこでかなめは学園都市に“戸籍の無い相良宗介も学園都市に招いてくれ”を提示し、学園都市はこれを呑んだのだ。
その後、かなめは長点上機学園に、宗介はSPの養成学校に編入という形で学園都市に迎え入れられた。
学生であり、何の能力を持っていない宗介は当然能力開発を受けたという形になる。
――閑話休題。
美琴「へー。“異能力者”ねぇ……どんな能力なの?」
宗介「大したものではありません……むしろこんな能力あってもなくても何も変わらないです」
美琴「そんなこと言わずにさ、ちょっと見せてよ」
宗介「――こんなものです」
美琴「う~ん……ちょっと変わり種ねアンタ
でも確かに今のままでは……何なら私が教えようか?
知ってるだろうけど私これでも学園都市の第三位だし」
宗介「光栄です、御坂殿。しかし自分は能力に頼るつもりはありません」
……珍しいタイプね、と美琴は思う。
美琴「そんなことよりさ、その『御坂殿』ってのやめない?
アンタ私より年上なんだしさ、タメ口でいいわよ」
宗介「む……いえ、しかし――」
美琴「いいから!私が気まずいって言ってんの!」
宗介「そうか……了解した“美琴”。これからは丁寧語は無しだ」
美琴「ぶほぉっ!み、みみみみ美琴って4ランクぐらい友好度上げてんじゃないわよ!
飛ばしすぎよ飛ばしすぎ!」
宗介「??……では御坂、これからよろしく頼む」
美琴「ええ、こちらこそ」
今度こそしっかり、二人は握手を交わす。
しかしまあ……電撃を飛ばしてから仲良くなるとは皮肉なものね。
などと美琴は考える。思えば“あの馬鹿”と知り合ったきっかけもビリビリだ。
などと物思いをしていると自分の部屋に辿りついた。
美琴「ここが私の部屋よ。1つ後輩がルームメイトでいると思うけど――きゃあ!」
突然、宗介が美琴の肩を引き寄せた。
美琴「ちょ……ちょっとアンタ何してんのいきな――」
宗介「しっ!……静かにするんだ御坂。トラップだ」
美琴「と、トラップ?」
宗介「扉の隙間の部分を見てみろ」
美琴「???」
覗き込んでみると、確かに引っかかりの部分には糸のようなものが巻かれていた。
ドアノブを回すと糸が取れてトラップが発動する仕組みだろうか?
恐らく黒子が悪戯で仕掛けてたものだろう。さしずめ自分に近寄る男に鉄槌を加えてやると言ったところだろうか。
美琴「……ったくあの子ったら、私や寮監が引っかかる可能性を考えてないわね
それにしてもこんなものに気づくなんて、アンタも流石ね――って
アンタ何してんの?」
気づけは宗介は、実に手際よく作業を始めていた。
ドアの隙間には何やら粘土のようなものを練り込み
そこから伸ばした糸を離れたところまで丁寧に引っ張る。
宗介「下がるんだ御坂。これよりトラップを的確に“処理”する」
美琴「処理?」
宗介「これを被って俺の後ろに隠れるんだ」
どこからともなく“安全第一”と書かれたヘルメットを取りだし、美琴にかぶせる。
美琴は美琴で訳がわからないまま、一応宗介の指示に従ってみた。
宗介「耳を塞いで口を半開きにしろ御坂!これよりトラップを“爆破”する!!」
美琴「え!?……ちょっ!!?」
爆風と共にけたたましい轟音が学生寮に響き渡る。
美琴の部屋のドアは遠目で見ても無事ではないとわかるぐらいの姿になっていた。
宗介「ふぅ……危ないところだった」
美琴「あ、危ないのはアンタだぁぁああ」
バリバリィ!っと今度は宗介が避ける暇も与えず電撃を浴びせる。
宗介「い、痛いじゃないかちどr――御坂
このやり取りに既視感があるぞ」
美琴「知るかんなもん!っつーかいきなり爆破ってどういうオツムしてんのよアンタ!」
宗介「しかしどのようなトラップがあるかわからない以上、爆破するしか手段はなかった」
美琴「アンタってやつは……ちょっと凛々しいと思ってたら天然ボケなの!?
まったく万が一部屋に人がいたら……」
――待てよ?
寮監((御坂。お前の護衛役が到着したので降りてこい
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
白井の護衛役はまだ先なので白井は待機しておけ))
――まさか?
黒子「お……お姉……様」
美琴「く、黒子ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお」
宗介「む、怪我をしているのか?」
美琴「わ、わからない!でも爆風で吹っ飛ばされたみたい!
早く診てみないと……!」
宗介「その必要はない」
宗介はむっつりへの字口で黒子に近づき、懐から何かを取りだした。
あれは……
美琴「な、ナイフ!?」
宗介「治療して欲しければ洗いざらい吐くんだな
所属・目的・雇い主を言え」
そう言って宗介は黒子の右腕を背中に回しナイフを突き立てた。
けが人かもしれない少女に対してこの仕打ち。血も涙も無い男である。
宗介「生憎だが今日の俺は気が短い。
質問に答えなければ耳を切り落と――!?」
突然――宗介の視界が反転した。
宗介「!!?」
黒子「この……バイオレンス類人猿がぁああ!」
黒子の空間転移によって1.5mの高さから頭を下向きに落とされたのだ。
宗介は左手・肘・肩・背中と器用に受け流しながら着地する。
とっさに受け身も取ったがそれでも勢いは殺しきれず背中への衝撃は大きかった。
宗介(かはっ!……一体何が!?俺は投げられたのか?)
黒子「あ、あの高さから着地した!?ふふふ……では更なる地獄がお望みですのね!」
そう言って太ももから金属矢を取りだす。完全に臨戦態勢だ。
美琴「ちょ、ちょっとアンタら――」
寮監「そこまでだ!貴様ら!」
黒子・美琴「「!!?」」
黒子「りょ、寮監……!!」
寮監「この騒ぎは何だ?白井……?いや、そんなことはさておき
今“能力”を使ってたな……白井?」
黒子「そそそそそそそそそれはですね寮監。わたくしではなくこの殿方が……!」
寮監「言い残す言葉はそれでいいのか?」
寮監が黒子の首に手を回した途端ゴキッ!っと嫌な音が響く
それ以降黒子はピクリとも動かなくなった。
美琴「黒子ぉぉぉおおおおおおお!」
寮監「御坂……貴様にはこの事態の説明だ」
宗介「その説明は自分から」
寮監「ほう……」
――!!
宗介(この人は……!?)
寮監(この男……っ!!)
宗介・寮監((出来る……っ!!))
宗介「失礼ですが、あなたは?」
寮監「私か?私はこの学生寮の寮監だ。
ちなみに“コレ”は一応この寮生でな……私の監督下にある
では私の質問だ。……所属と名前は?」
――何だこのやりとり。と二人の間に流れる異様な空気を美琴は感じ取っていた
すると宗介は“休め”の姿勢を取り大きく口を開け
宗介「はっ!寮監閣下!
自分はSP養成学校所属、三年B組相良宗介であります!
階級は軍曹!得意分野は偵察とサボタージュであります!」
美琴「はい?」
今なんか後半がおかしかった。軍曹?あの新兵に怒鳴る人?
宗介「――失礼。後半は忘れてください……」
寮監「いや、いい軍曹。では軍曹、説明をしろ」
宗介「はっ!」
宗介「本日○八一五時
護衛対象御坂美琴及びその護衛相良宗介の両名は談笑しつつ御坂美琴の部屋に到着。
同刻、部屋の扉に異常を発見しました」
寮監「不審物か?」
宗介「肯定です。糸のようなものが括りつけてあることを確認しました。
――自分はこれをドアノブを引くと同時に発動する高脅威トラップだと判断。
しかし始業間近であったため検査を断念。もっとも確実な処理を行いました」
寮監「その処理方法とは?」
宗介「高性能爆薬による爆破処理です」
美琴(いや!その流れは無い!言ってやってくれ寮監、この戦争ボケ野郎にガツンと一言!)
寮監「…何!?爆破だと?」
宗介「はい。爆破です」
寮監「ベストとは言わないが……妥当な判断だ」
美琴「ズコー!」
宗介「どうしたんだ御坂?」
美琴「ずっこけてんのよ!それはもう古いリアクションしたくなるぐらい!
何で納得してるんですか寮監?こいつ私の部屋のドアを爆破したんですよ!?」
寮監「状況の破天荒さに惑わされてはいけない。正しい状況をよく見てみろ御坂
爆破で吹き飛んだのはドアとその周辺部。おまけにドアの横で待ち伏せしていたであろう白井だけだ」
美琴「え……あれ?本当だ」
部屋を覗いてみると部屋自身は多少煤がついている意外目立った損傷は無い
寮監「よほど上手く爆破しなければこうはならない。それでいて白井の作ったトラップは沈黙した
100点とは言わないが、これがもし本当の爆弾で迂闊に引けば御坂達が死ぬと考えると……まあ妥当な判断だろう
しかし爆破自身は非常識には変わらないのでそこはマイナスだ。それでいいな軍曹?」
宗介「了解です!寮監閣下!」
寮監「それにトラップをしかけたのは私の管理下である白井だ。
その点も考慮して、向こうの学校にはマイナスは伝えないようにする」
宗介「お心遣い感謝します!寮監閣下」
美琴(何でこの二人はこんなに息あってんのよ……)
こうして、宗介の護衛生活が始まった。
宗介「定期連絡。定期連絡。千鳥、聞こえるか?」
かなめ『聞こえるも何も聞いたわよ。アンタまた爆破したですって!?』
・ ・
宗介「……何故それを?…お前か?」
アル《護衛で忙しい軍曹に代わって定期連絡したまでです。まさかチクるなとでも?》
宗介「……まあいい。そうだ千鳥、確かに爆破した。だが――」
かなめ『――ちゃんと損害報告も聞いたわよ。出来るだけ抑えたみたいね』
宗介「ああ……やはり完全に大丈夫だとは言い切れないんでな」
かなめ『まあ、ちゃんと節度が分かってみたいだし?今回はいいわ』
宗介「それで、そっちの方はどうだ?」
かなめ『それがね、この依頼はアルが睨んだ通り何かあるっぽい
依頼者へのプロテクトが異常に硬すぎるのよ
どうする……降りるこの仕事?』
宗介「いや、ヤバい事件かもしれないなら尚更降りられない」
かなめ『いい子だった?』
宗介「ああ、危険な目には合わせたくない」
かなめ『……わかった。じゃあお姉さんも人頑張りしますか!
依頼主探すのは拉致あかないからとりあえずあの子が狙われそうな理由を探ってみるわ』
宗介「ああ、頼む」
―翌日―
護衛研修の二日目は街に出ての野外研修である。
野外研修と言ってもヤンキーのサクラを用意して護衛対象を襲われる
――などと言ったあからさまな仕掛けは容易しない。
この研修では“事件を如何に未然に防ぐか?”を問うのだ。
美琴(その点で言うと……コイツはすごいわね)
宗介の動きは、ありていに言えば隙が無い
例え10トントラックが突っ込んできても冷静に対処出来そうな振る舞いだ。
今、宗介と美琴は特に目的もなく街を歩いている。しかしその歩き方には違和感があった。
ランダムのように見えて、どこか一定の法則に従って動いているように感じる。
おおふタイプミスンテコッタイ/(^o^)\
×容易しない
○用意しない
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
美琴「この動き……もしかして狙撃とかを警戒してんの?」
宗介「!!?」
宗介が驚いたように目を見開いている。コイツのこんな顔が見れるとは思わなかった。
宗介「自然に見えるように動いていたつもりだったが……不自然だったか?
……俺もまだまだ未熟だな」
宗介が急にしゅんとなった。その仕草は飼い主に叱られた子犬のようでどこか可愛らしい。
美琴「い、いや自分で言うのもアレだけど私レベル5だからね
物事のパターンを頭で演算するのが癖になってんのよ
普通の人間なら気づかないと思う――いや絶対に気づかない
そのぐらい凄いわよアンタ。たまにネジ飛んでるけど」
宗介「……そうか。まあ俺は専門家だからな。これぐらい出来て当然だ」
『出来て当然』と言いつつもどこかドヤ顔である。
最初コイツは無愛想だと思ったが、案外ユーモアや茶目っ気のある人間なのかもしれない。
美琴「で?結局どこに向かってんの?」
宗介「特に決めてはいない。行きたいところはあるか?」
美琴「うーん……私もこれと言って――」
上条「おーい!御坂ぁ!」
: : : : : : .ヘヽ! : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\ V: : : : : : \
: : : : : : : 人| : : : : : : :ト、 : :.:\、: : : : : : : :.\: : : : ト、 V: : :\: : : :
: : : i: : : ;イ:.:|: : :i : : ト、! \ : :.:\ト、: : : : :ト、: :\ :.ヘ :\} : :}: : :\ー、
: : : | /: : : !: : ハ : :|_, ィ――-、 : \\: : | \_:_\:ヘ /: : : : :ヘ
: :-イ:/⌒ヽ. : : :メ:{ ┃ \:ゝ \! / \: : ト、:メ:/ :\ 、 : ヘ
: : : / ノヽ \ト、ゞゝ ┃ ! , - 、\! ./\二ニ=-\
|: : :{ (⌒ ) ヾ \ ┃ ,' /┃ ヽ. V: : : : : \ 美琴「!!?」
|: : : \ (. \___/ {. ┃ }./: : : : : : : : \
|: : : : : \__ \\\\ \┃__//.}: : ヘ、 : : : : : \
|: : : : : : : : :ヘ ij \\\/ノ: : : :ヘ\ : : : : :
| i: : : : : : : : :ヘ l |: :.:\: : :ヘ \: : ::
| |\: :\ : \:i\ `ー― '´\_ノ /: : : : :\: :ヘ. \ :
V \/\: :.\ \ /:\ : : : : :.\ヘ
宗介(!?敵か……!?)
上条「おっす。平日の昼間っから何してんだお前?」
宗介「………」
美琴「あ、あああああああアンタこそ何してんの!?学校は?」
宗介「………」
上条「俺?うちの学校は今日は短縮校時で午前で終わり
で、夕方には特売があるから早めに戦地入りしましょうって算段ですよ
あっ……もし暇なら御坂も手伝ってくれないか!?
お礼は絶対にする!何でもする!」
宗介「………」
美琴「お、おおおおおおお礼!?な、何でも!?で、でも………その……」
宗介「………」
上条「ん?……アレ?こちらの方はお知り合い?」
宗介「………」
宗介(!?敵か……!?――いや待て、常識的に考えたら友人だろう)
以前の自分なら容赦なくナイフを突き立てていただろうが、今の自分はもう違う。
俺はもう一般人の感覚を手に入れたんだ。
もう千鳥にはバカにされないぞ。
上条「おっす。平日の昼間っから何してんだお前?」
宗介(「平日の昼間にノコノコと顔出しやがって――」
――いや違う、これは額面通り学生である御坂が何故平日に街にいるか聞いているだけだろう)
美琴「あ、あああああああアンタこそ何してんの!?学校は?」
宗介(この御坂の慌てよう……まさか……!?)
上条「俺?うちの学校は今日は短縮校時で午前で終わり
で、夕方には特売があるから早めに戦地入りしましょうって算段ですよ
あっ……もし暇なら御坂も手伝ってくれないか!?
お礼は絶対にする!何でもする!」
宗介(戦地!?戦地と言ったか今!?――いや待て確か特売とも言ったな
以前に千鳥と特売に行ったが、なるほどあれを戦地と表現するか……いいセンスだ)
美琴「お、おおおおおおお礼!?な、何でも!?で、でも………その……」
宗介(!?御坂が赤面している……これは確か……こういう場合は…)
上条「ん?……アレ?こちらの方はお知り合い?」
宗介(ま、まさか……この男……御坂の……)
/l/;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;;/ // /;;i' /| ト、_;;;<,
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ , //;;;;;;/ // /;;/,/;l , |;;;;;;ヾ,、;;;`;、
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /i レ;;;;;;/ /;;i /|;/ i;;;;| |.ト、;;;;;;ヽ\|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;i /;;;;;;/ / /;;;;レ"i;;レ"|;;;| i; |;;小;;;;;;;;i '
;;;;;;;;;;;;;;;/ /;;;i/;;;;;;;/ /,,,=テニミ=,, i;;;l i;; i;;;;! ヾ;;;;i
;;;;;;;;;;;;;i /;;;;;;i;;;;;;;;/ / /i;;;/,,,,,,,,,'''=ミ;i /;;i;;;;;;;;i `リ
;;;;/ i;;i i;;;;;;;;;;;;;;;;i /i ,/.|/'~I;て,)~`.i ii`-/、;;iヾ;;;;i
;;イ^i;;;;i/;;;;;;;;;;;;;;;;;i i;;;i i i ト;;;;ノ : i;;iル'、 リ ヾi
")vl;;;/|/|;;;;;;;;;;;;;;i i/iレ' `-,,,,- l;;;;/ ,メ, ノ
(,_,|;;;i`!'-i;;;;;;;;;;;;;;;i'i ,リ // |\ レ' ` ,_
\i;i~l'-、i;;;;;/^i;;;/ " ' ~フ
\リ-、__ i;;;i レ' _ ノ
;;;;;ヘ, キi /
;;;;;;i キ ,r---,,」 宗介(ストーカーか……っ!!……そうだストーカーに違いない)
;;;;i、i `, ' )
;iv ` `, /
i i ` , !
! i ` , i
__ i ` - , _ノ
`- ,__ i ,---~''---''~
どうだクルツ、マオ。俺は他人の色恋沙汰まで把握出来るようになったぞ
次会ったらもう朴念仁だのトーヘンボクだの言わせない。
俺はまともな一般人になれたんだ。
美琴「こ、こここここここコイツは……その……」
宗介(あんなに気丈な御坂がこの慌てよう……やはりストーカーか……っ!!
下衆めっ……!)
宗介「……俺のことか?」
上条「あ、やっぱり御坂のお知り合いですか」
宗介「……知り合いなんてもんじゃない」
上条「え?」
宗介「俺達は“ただならぬ関係”だ……そうだろ美琴?」
美琴「ふにゃ……?な、なななななんて?」
上条「え~……っとつまりあなたは……?」
宗介「まだわからないのか?俺と美琴は恋人同士だ
愛し合ってる。フォーリンラブってやつだな」
上条・美琴「「!!?」」
美琴「な、ななななななな何言ってんのアンタ!?」
上条「へ~。御坂って年上が好きだったのか」
美琴「え!?ちょ……違っ……わないけど何か違う!!」
上条「あはは、照れんなって~!
彼氏いるんなら紹介してくれたっていいじゃないか水臭いな~」
美琴「え……」
何だこのリアクション。私に彼氏がいるって思ってもコイツにはその程度の――
宗介「紹介する必要はないぞ美琴」
上条「…はい?」
34
・ ・ ・ ・
宗介「美琴……こんな男に構わず昨日の夜の続きをしてくれ
・ ・
アレはよかった。まさか君にあんなテクニックがあるだなんて」
美琴「ちょ……真顔で何言ってんのアンタ!///
そんなこと言ったら勘違い――」
そう言って上条に目配せをする。そこには赤面した上条が
上条「あ~……何か話かけてスマン御坂
彼氏さんとその……楽しんでくれ!じゃ、じゃあ!」
美琴「ちょ…ちょっと!誤解!誤解だって!」
上条「すみませんでしたぁぁぁぁああああああああ」
踵を返すなり、上条は逃げるように走り去って行く。
すみません番号キニシナイでください
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
宗介「か、完璧だ」
以前隊にいた時にこんな会話があった。
マオ((――そんでね。あんまりにもしつこいから私はその男の前で電話するフリしたのよ
『もしもし?ベン?今日も寂しいから●●●に●●●●してぇ~』みたいなことをね
そしたらその男泣いて逃げて行ったわ。どうよこの話?))
クルツ((うわっ!ひっでぇ!))
ヤン((ぷぷぷっ……最高っす!))
マオ((要はね、ビッチになりゃいいのよ。そうすりゃ私に変な幻想抱いてる男は失望して逃げていく
我ながら完璧な作戦ね))
あの時は半信半疑であったがこうも効果があるとは……!
宗介「やったな御坂、これで君のストーカーは――御坂……?」
おかしい。御坂は下を向いたままワナワナと震えている。
昨日気づいたことだが、御坂美琴という少女はどこか千鳥かなめと似ている――同類と言ってもいいかもしれない
そして千鳥かなめが怒っている時の“溜め”の仕草はだいたいこういうものであった。
千鳥かなめの場合、この後、目視出来ないスピードでハリセンが飛んでくるのだが
発電能力者のレベル5である御坂美琴は……
・ ・
美琴「乙女の尊厳2つも奪っておいて何ドヤ顔してんじゃお前はぁぁぁあああああああああああああああ!!」
……効いた。死なない程度に手加減はしているだろうがそれでも電気銃並の電気をもらった
少し気絶していただろうか?街のど真ん中で倒れているのはわかる。だが動けない。
美琴は美琴で、さっきの少年を追ったのか、ここにはもういない。
宗介(しかし……)
・ ・
美琴((乙女の尊厳2つも奪っておいて何ドヤ顔してんじゃお前はぁぁぁあああああああああああああああ!!))
宗介(…2つ?)
宗介(しかしマズイな……護衛の最中にはぐれてしまった)
きっと待機していたアルが動いているだろう……断言できる
事前に相談したわけではないがアイツはアイツでそれぐらいの判断力はある。
宗介(だが…今は“身体”が車のあいつに出来る護衛なんてたかが知れてる……
早く俺が動かないと……)
???「痺れが残っているのでまだ動かないで下さい……」
宗介の目の前に1人の少女が屈んでいた。
宗介(……?誰だ?)
???「……とミサカは名も知らぬ少年に命令します」
目線を落とすと、太ももの間から縞模様の下着が視線に飛び込んできた。
それと同時に宗介は再び気を失った。
目を覚ますとそこは病室だった。
宗介「クソっ!あの後気絶したのか!通信機は!?」
案外近くに置いてあった荷物から通信機を取り、アルに連絡をする。
アル《無様ですね》
宗介「そういうのは後にしろ……御坂は大丈夫か?」
アル《ええ。問題ありません
強いて言えば先ほどの少年の誤解を解く作業に悪戦苦闘していました》
宗介「やつはストーカーじゃなかったのか……」
コンコン……と不意にノックが響いた。宗介の病室の扉からだ。
???「よろしいでしょうか?」
少女の声だ。どこかで聞いたことがある声だが気のせいだろうか?
宗介「開いている」
???「失礼します……とミサカは礼儀正しく入室します」
宗介「なっ!?」
宗介の目の前には、お茶の乗ったトレイを持つ御坂美琴がいた。
宗介「み、御坂……!?君が何故ここに?」
ミサカ「!!……お姉様のお知り合いでしたか。とミサカは自身の行いに後悔しつつ打開策を思案します」
お姉様?こいつは御坂美琴の妹なのか?
――いや違う。御坂美琴の経歴には目を通したが妹なんてものは存在しない。
それに目の前の『ミサカ』と名乗る少女は何から何まで異様だった。
まず体幹が不気味なぐらい安定している。そして仕草の1つ1つにまるで隙が無い。
目の前の少女は御坂美琴のような平和な世界に身を置いていては仕上がらない完成度をしている。
宗介(こいつは……むしろ俺の知ってる世界の――)
そう断定した宗介の行動は早い。素早くナイフを取り出しミサカと名乗る少女に肉迫。
痺れが残っているのか多少動きにキレが戻ってないが――問題無い。
――!?
視界には病院の天井が広がる。一体自分は何をしたのだろうか?
宗介(確か俺は“ミサカ”の腕を取ろうとして――)
思い出した。ミサカの手首を掴んだ途端、逆に投げられたのだ。
その人間離れした体術に全く対応できなかった。まともに受け身も取れずに頭から落ちたらしい。
ミサカはと言うと――右手でトレイを器用に支えて目を丸くしている。お茶は一切こぼれていない。
ミサカ「な、何するんですか?……とミサカは警戒しつつ尋ねます」
どうやら向こうに交戦の意思は無いようだ。拘束して尋問するつもりだったが
手負いの今は分が悪いようだ。
宗介「お前は一体何者だ……?何故御坂美琴になりすましている?」
ミサカ「み、ミサカは……」
ミサカと名乗る少女は、初めて少女らしい感情のある表情を浮かべた
――罰が悪いと言った様子だろうか?ひどく狼狽している。
ミサカ「あ、あなたの素性が分からない以上、お答えできません――とミサカは回答します」
ミサカ「逆にミサカから質問をします
あなたは傭兵ですか?――とミサカは自己の見解を吐露します」
宗介「……答える義務は無いな」
ミサカ「では、更なるミサカの見解を述べます
あなたはソ連出身ですね?――とミサカはかなりの自信を持って問いかけます」
宗介「……!?」
ミサカ「先ほどの動きはソ連の暗殺術と酷似している点がいくつかありました――とミサカは捕捉説明します
ただ正規軍ではないようです、あなたの動きは正規軍というよりはゲリラ兵に近いです。
ミサカの鼻腔に伝わる硝煙の臭いからすると――得意分野は爆破でしょうか?とミサカは曖昧な質問を投げかけます」
宗介「なっ…」
ミサカが連ねる宗介の特徴は、当たらずしも遠からずと行ったところだろうか
恐るべき分析能力だ。たったこれだけのやり取りでここまでわかるものなのだろうか?
ミサカ「そして何より得意なのが……ASですね?無駄な筋肉がついていない長い手足、細い体とは対照的にがっちりした首回り
異常に厚い手首や肘の肩の皮――どれも熟練したAS乗りの特徴です……とミサカは今度は確信を持って問いかけます」
宗介「お前は一体――何ものなんだ?」
ミサカ「……何ものなのでしょう?ミサカにもわかりません
強いて言えば……ミサカ達は今それを見つけている最中です」
宗介「……?」
ミサカ「そんなことより……お茶にしませんか?とミサカは場の雰囲気を和ませることを試みます」
宗介「俺への尋問はいいのか?」
自分は何を言っているのだろう?本来ならばこちらから尋問しなくてはいけないのに
何故か目の前の少女にはペースを奪われてしまう
ミサカ「割とどうでもいいです――あなたはそんなに悪い人には見えないので
それよりASの話を聞かせてくれませんか?とミサカはあなたへお願いします」
宗介「ASの?そんな話に興味があるのか?」
ミサカ「はい。知識は豊富なのですが……実際に載ったことはありませんので
――とミサカは自己のニワカっぷりをアピールしてみます」
ヤバい……怒りにまかせてビリビリさせたままあの馬鹿護衛を放置したままであった。
“あの馬鹿”の誤解を解いた後、ついうっかり特売にまで付き合ってしまった。
美琴「出来るものならここいらであの馬鹿の家に行って料理の1つでも振る舞いたかったけど……」
買い物も終わったところであの馬鹿護衛のことを思い出してしまったのだ。
ここがビリビリした現場だが……
美琴「やっぱいないわね……ってアレは初春さん?」
黒子と同じジャッジメントの初春飾利が何やら物騒な顔をして佇んでいた。
初春「あっ!御坂さーん!戻ってきたんですね」
美琴「???」
初春「ちゃんと彼を病院へ送りましたか?彼大丈夫そうです?」
話がイマイチ読めない。
美琴「え~っと……何かあったの?」
初春「も~さっき説明したじゃないですか~
男子高校生がエレクトロマスターと思わしき能力者から攻撃を受けて気絶していたんですよ~」
美琴「へ、へぇ~……」
初春「で、通報があった場所に駆けつけてみたら御坂さんがその高校生を病院に連れて行くところだったんで
被害者本人への調査はあきらめてサボろう――じゃなくて聞き込みでもしようかな~なんて……」
美琴「ちょ…ちょっと待って!?」
初春「さ、サボろうとしてませんよ!?」
美琴「違う!その前!私が送ったってとこ!」
初春「ええ!?……いつものあの病院へ送っていくって御坂さんが言ったじゃないですか
――って御坂さん!?急に走ってどこ行くんですか!?」
美琴「ちょ…ちょっと急用思い出した!ありがとう初春さん!」
さ、最悪だ。あの馬鹿護衛はよりによって“あの娘達の誰か”に介抱されたのか
早くあの馬鹿護衛が目覚める前にあの娘を遠ざけないと――後々厄介なことになりそうだ
美琴「ああもう!こっからだと車使わないと遠いじゃないの!」
ブッブー!と突然のクラクションに美琴が振り返る。
そこにはバカでかいスポーツカーが停まっており、一人でに助手席の扉が開いた。
アル《おめでとうございます。あなたは私が走り初めてから10000人目のすれ違った通行人です
記念にどこへでも送って差し上げましょう》
美琴「自動操縦のトランザム!?つーか何よその胡散臭すぎるキャンペーン!?」
アル《胡散臭くなどありません。どうです?乗りますか?乗りませんか?》
美琴「口答えするなんて高性能なAIね。いいわよ乗ってあげるわよ!
第七学区の病院まで至急!マッハよマッハ!」
アル《ラージャ。マッハは無理ですが》
美琴「着いた!全速力ありがとうトランザムさん」
アル《ネガティヴ。私の名前はトランザムではなく、アルです。以後お見知りおきを》
美琴「???…とにかくありがとうアル!」
全力で病院へ駆け込む。病院のロビーには見知った顔の医者がコーヒーを飲んで休憩していた。
美琴「ゲコ……じゃなくてお医者さん!お久しぶりです!」
冥土返し「やあ遅かったね?相良宗介くんだろ?」
美琴「そう!そいつ!そいつ何号室?」
冥土返し「123号だよ。いやーびっくりしたんだよ?感電した患者を一万きゅ――」
美琴「123ね!?ありがとう!」
―123号室・相良宗介―
美琴「ここね!!」
美琴は勢いよく扉を開けた。
――そこには、信じられない光景が広がっていた。
ミサカ「それなら……完全に第三世代の方が有利なのでは?
とミサカは率直な疑問を投げかけます」
宗介「いや、そうとも言い切れない。完全電気駆動の第三世代ASと違い
動力のトルクを伝える『流体継手』を持つ第二世代ASは単純な腕相撲では第三世代に勝る」
ミサカ「しかしそれは実戦には何の役も立たないのでは?――とミサカは的確な突っ込みを入れます」
宗介「ものは考えようだ。例えば大規模な荷重がサベージとM9にかかったらどうなると思う?
落石でも建物の倒壊でもなんでもいい」
ミサカ「……屁理屈です。仮に大荷重を持ちあげられたとしても
装甲のスペックはM9に利があるのでその戦術では落石自身のダメージでサベージがお陀仏です
とミサカはそのナンセンスな戦術を批判します」
宗介「確かに装甲のスペックはM9の方が上だ。しかしそれはあくまで耐弾性能に関する話だ。
M9の電磁筋肉は超アラミド繊維のような構造を持つことで防弾ベストのような機能を有しているが
複雑な人型骨格では建造物として考えると案外脆い一面がある。
その点、あのずんぐりむっくりな流線形のボディであるサベージは、単純に建造物として堅牢だ」
美琴が病室を開けると、何ともまあマニアックな話が繰り広げられているではないか。
美琴「何なの……この和みよう?」
まだ出会って二日だが、この馬鹿護衛がこんなに流も暢に喋るとは思っていなかった。
自分のクローン……妹にしても同じだ。あの子達の目ってのはこんなにも生き生きしていただろうか?
ミサカ「あなたのASの知識量には感服します。
まだロールアウトされていないM9についてまで詳しいなんて驚きです
とミサカは羨望の眼差しであなたを見つめます」
宗介「……技術誌と専門誌を読み漁ってるのでな。ハリス社の『アームスレイブ・マンスリー』は購読を勧める。
それに君の知識にも感心した。まさかロックウェル社のMSO-12の開発秘話が聞けるとは」
ミサカ「あ、それについてはまだ少し情報が
実はジオトロン社とロス&ハンブルトン社も操縦システム開発に動きが――」
宗介「な、何!?ジオトロン社はここ最近おとなしかったがまさか――」
美琴「い・い・加・減・に・しろぉおおおおおおおおおおおお」
宗介・ミサカ「「!!?」」
美琴「なにシカトぶっこいてオタッキーな会話繰り広げてるのアンタらは!?
私を無視すんじゃねーっつーの!!」
宗介「み、御坂か!?」
確かに盛り上がりすぎた。何をやっているのだ俺は
この怪しすぎるミサカに尋問する前にまずは会話によって打ち解けようとしたのだが……
ミサカ「お、お姉様……申し訳ありません。その…み、ミサカは……」
ミサカは明らかに狼狽し、上目遣いで美琴に謝っている。
美琴「う、うん?な、何か今日はしおらしいわねアンタ……調子狂うじゃないの」
宗介「ま、待て御坂!このミサカは本当に君の妹なのか!?
君に妹などいなかったはずでは――」
美琴「い、妹と言えば妹よ。訳はちゃんと話すから……その……何て言えばいいか」
ミサカ「み、ミサカは退室します。本日やることがあるので……とミサカは逃げるように病室を後にします」
そう言ってミサカはとぼとぼと退室する。その姿は隙だらけであり
どう見ても普通の女の子だった。
宗介「ま、待てミサカ!」
ミサカ「?」
宗介「礼と謝罪をしていなかった。病院の件、助かった。
そして先ほどの無礼を謝罪する」
ミサカ「いえ、ミサカも無礼はしましたし……ASの話、楽しかったです
……とミサカは率直な感想を述べます」
宗介「ああ、俺も楽しかった。まだ話足りないぐらいだ。また機会があれば」
ミサカ「……はい」
美琴「ちょっと待って!
アンタ……“何番”?」
19090号「み、ミサカは……19090号です」
美琴「そう……ごめんね。見た目では他の子と見分けつかないや」
19090号「それが普通です、とミサカは――」
美琴「でも……これからアンタだけは見分けつくかも」
御坂がミサカに微笑む。
退出した時のミサカはさっきまでの狼狽していた様子は消えていた。
美琴「さて、アンタには何て話せばいいのかしら……?」
宗介「やはり……妹ではないのか?」
・ ・ ・ ・ ・
美琴「妹と言えば妹よ。あの子――ううん、あの子たちの呼び方は“妹達”」
耳を疑うような話だ。
ミズホ機構へのDNAマップの提供・量産能力者計画・欠陥電気…そして絶対能力進化
先ほどまでのミサカはその美琴のクローンの19090体目だというのだ。
宗介「馬鹿げている…!」
美琴「そう、馬鹿げた計画なのよ。でもそれももう終わったわ
どっかの馬鹿が計画止めてくれたおかげでね」
宗介「?」
美琴「とにかく、計画は終わったの。それでもまだ1万人近い妹達は生きている
ほとんどの子は外部の学園都市協力機関に移ったけどね
学園都市内にも5人ぐらい残ってたはず。あの子はその一人ね」
宗介「そうか」
美琴「私がこの話をアンタにしたのは、私に“妹”がいるなんてことを他言しないで欲しいから
特に常盤台の関係者にはわね」
それは自らの体裁のためだろうか……それはそうだ
自分のクローンがうじゃうじゃいるなんて気味の悪い話、誰だって知られたく――
美琴「――だって……騒ぎになればあの子たちが学園都市に居づらくなるじゃない?
何だかんだ言っても……あの子たちは私の“妹”なのよ」
美琴「……なに目を丸くして愉快な顔してんのよアンタ?」
宗介「――失礼。俺は君を誤解していた」
美琴「誤解?」
宗介「ああ、何て言えばいいだろうか……とにかく君はいい女だ」
美琴「ちょっ……いきなり何言ってんのよ///」
宗介「?……思ったままを言ったまでだが?
それに君にも謝らないと行けなかったな。さっきは君の友人に無礼をしてすまなかった
それに君の尊厳も――」
美琴「ああ、い、いいわよあのことはもう!誤解も解けたし」
宗介「そうか……?それと君にもう一つ話がある」
美琴「話?」
宗介「そう、俺が君を護衛する本当の理由だ」
美琴「護衛会社?アンタ学生じゃないの?」
宗介「ああ、学生だがこれでも苦学生なのでな。副業として護衛会社を設立した
長点上機にいる相棒と……もう一人妙な相棒
とにかく3人で経営している」
アル《妙な相棒とは私のことでしょうか?》
宗介「アル……勝手に通信をするなとあれほど――」
美琴「アルって……さっきのトランザム?」
宗介「……!!」
アル《私がミス御坂をここに送り届けました》
美琴「なるほど。見るからに怪しいと思ってたらアンタ繋がりだったわけね
で?アンタら護衛会社が何で私なんかを護衛に?誰の依頼?」
宗介「それが……依頼主がわからないんだ。これを」
そう言って宗介が1枚の写真を取り出す
美琴「私の……写真……?」
宗介「ああ、送り主も不明でこの写真と『この子をしばらく護衛するように』という文面のみ
君が有名人だったのは幸運だったが、今思えばこれは……」
美琴「あの子たちの可能性があると?」
宗介「そうだ。それなら名前を言わなかったのにも納得がいく
どうだ御坂?妹達とやらには狙うだけの価値があったりするのか?」
美琴「あの子たち単体には……失礼ではあるけど能力的な商品価値はないわ
あるとすれば……あの子たち全体の“価値”」
宗介「??」
美琴「ミサカネットワークって言ってね。あの子たちは自分の脳波を電波として飛ばして
1つの巨大なネットワークを形成しているの。そこでは情報を共有が可能ってわけ
クローン体と学習装置で整理された『同一の脳波』だからこそ出来る芸当よ」
“情報の共有”という部分に宗介は引っかかった。
このシステム、根本的な部分は違えどどこかオムニ・スフィアに通じる部分がある
宗介(まさか……アマルガムの残党か?)
美琴「ただ妹達全員を護衛してるんじゃキリがないわよ
あの子たちもそれなりに強いし……半端なやつじゃそう簡単に手を出せないはずなんだけど」
宗介「何か特別な個体はいないのか?」
美琴「いる……でもその個体は私達よりも幼い姿なのよ
いろいろ引っかかるけど……これってやっぱり私絡みなんじゃ……」
冥土返し「特別……と言っていいかわからないけど、変わった個体ならいるよ?」
宗介「?あなたは?」
冥土返し「失礼、僕はこの病院の医者だよ。そして妹達の主治医でもある
部屋に立ち寄ったら興味深い話が聞こえてしまってね?」
美琴「変わった個体とは?」
冥土返し「そこの患者さんをここに連れてきた……19090号だよ?」
宗介・美琴「「!!?」」
冥土返し「彼女は最初から少し変わっていた。あんまりこういう言い方をすると他の子達に失礼だが
19090号は他の子たちと比べて明らかに感情が豊かなのさ」
美琴「感情が……確かに他の子と比べて照れ屋に見えたわ」
冥土返し「それだけじゃない。彼女は感情を手に入れることで他の個体にないことを始めてね?」
宗介「他にないこと?」
冥土返し「ダイエットさ。他の個体に内緒でだよ?」
宗介「は?」
美琴「他の個体に内緒って……ネットワークは?」
冥土返し「そう、彼女はネットワークから切り離した“プライベート”の領域を手に入れたんだ
もっとも、他の子たちも最近個性が出つつあるからこういった領域は増えるだろうけどね?」
宗介「しかし……何故そのミサカだけ感情が豊かなのです?
番号から察するに最終ロットじゃない。彼女を境目に感情が豊かになったのならまだ話はわかるが……」
冥土返し「そこは僕もわからないんだよ。彼女が学習装置で感情を入力されたのが8月19日
……君はこの日に何か覚えはある?」
美琴「その日は……確か絶対能力進化計画の関連施設を潰した日
初めて施設側から大規模な応戦があった日だからよく覚えてる」
冥土返し「ふむ……混乱もあいまって学習装置に誤作動でもあったのかね?」
宗介「話はさっぱり読めんが、そんな話はミサカに聞けばいいんじゃないのか?」
美琴「……それもそうね」
冥土返し「彼女なら今日が定期健診だから――」
看護師「――先生!一人が……!ミサカ19090号さんが見当たりません!!」
冥土返し「落ち着いて……ね?他の妹達なら場所がわかるんじゃないかな?」
看護師「それが……!ネットワークでも見つけられないみたいです!」
美琴「ま、まさか……!?」
宗介「考えたくはないが……このような場合
案外“最悪のパターン”というものが起こったりするものだ…!」
美琴「先生!あの子の部屋に案内して!あの子確か用事があるっぽいこと言ってたわ
何か記録が残ってるかも!」
冥土返し「本当かい?君、案内してあげて」
看護師「は、はい!こちらです」
―――
――
看護師「ここです!で、でもロックが……!」
宗介「どけ、ここは安全かつ確実に爆h(ry」
美琴「アンタは黙ってなさい!私が開けるわよ!」
ピピー。プシュー!
宗介「あ、開いただと?今君は何を?」
美琴「あん?電子ロックなんて私の前じゃ紙屑同然よ
本来能力ってもんは工夫すりゃなんだって出来るわよ」
宗介「……工夫か」
美琴「それより何か情報を探す!」
宗介「了解した」
19090号の部屋は綺麗に片付いている。そんな中で1つの電子端末を探し出すのは容易だった。
美琴「情報ロック解除!プライベート覗いてごめんね」
宗介「何かあるか?」
美琴「……あった!!これは…!?」
お前に感情を与えた布束砥信は預かっている。彼女の命が惜しければお前の感情が生まれた場所に来い。
ネットワークは使うな。一人で来い。
宗介「布束……?知っている名か?」
美琴「そんな……!!あのギョロ目が……あの子に感情を?
布束ってのは学習装置の開発・監修をした長点上機学園の学生であり科学者よ」
宗介「長点上機?少し待て、相棒に確認を取ってみる」
美琴「相棒?」
かなめ『ええ……そうよ!布束さんは私と同じクラス
でもずっと行方不明らしいのよ』
宗介「……!行方不明になった日はわかるか!?」
かなめ『アンチスキルの報告によると……“8月19日”!』
美琴「……そんな」
繋がったかもしれない。自分が病理解析研究所を襲撃し、学園都市の暗部と交戦したあの日
布束はその日から行方不明になっているのだ。これは偶然とは考えにくい。
宗介「では君が暴れた混乱に乗じて彼女に感情を入力したと?」
美琴「理由はわからないけど……そう考えて間違いないわね
あのギョロ目も……戦っていたなんて」
宗介「悔やむのはやってからだ!病理解析研究所に急ぐぞ!」
美琴「待って!あの日襲撃する予定だった研究所はもう一個あるの!
Sプロセッサ社の脳神経応用分析所!あの子がどちらで学習装置の調整を受けたかわからないわ」
宗介「くそっ……他のミサカはわからないのか?」
10032号『結論から言うと、わかりません。あの時期のミサカたちはいろんな研究所を転々としていたため
番号が近くても研究所がバラバラでした――とミサカは懇切丁寧に説明します。
付け加えますと、そのころから19090号の“プライベート”は始まっており
ネットワーク上の情報収集も困難です――とミサカは補足説明をします』
美琴「ダメか……二手に分かれましょう!」
宗介「駄目だ!君は危険すぎる!」
美琴「私はあんたなんかよりよっぽど強いわよ!
あの子を助けたいの!?助けたくないの!?」
宗介「くっ……アル!」
アル《何でしょう?》
宗介「俺を脳神経応用分析所に、御坂を病理解析研究所に送れ!
その後は二か所の中間距離で応援の要請があるまで待機しろ」
アル《ラージャ》
宗介「……これでいいか御坂?」
美琴「ええ、完璧よ」
病理解析研究所。ここは8月19日に美琴が襲撃した研究所であり今は廃墟と化している
宗介「ここでいいか?」
美琴「十分よ。ここは私が調べるからアンタは脳神経応用分析所に急いで!」
宗介「了解した」
―――
――
美琴「それじゃあ……!!」
美琴は自身の能力を極限まで広げ、施設の内部の状況を詮索する。
美琴(施設の動力が何箇所か生きてる!?前に調べた時には完全に死んでいたのに!?)
いきなり当たりだろうか?――いや、私たちの動きを察知してのフェイクかもしれない
美琴「まあ、どの道全部ブッ潰してお終いよこんなもん!!」
脳神経応用分析所。美琴が向かった病理解析研究所に負けず劣らずの巨大な研究機関があり
大型のトレーラーを何台も収容出来るであろうと思えるぐらいの空間が広がっている。
宗介「アル。指示通り中間地点で待機だ」
アル《ラージャ。“例の装備”……使うのですか?》
宗介「当然だ。元々こういう任務のために開発したものだ
出し惜しみする理由は無い」
アル《そうですか、ではご武運を》
アルを見送り、施設をうかがう。
宗介(いるな)
施設から伝わるピリピリした空気を宗介は肌で感じ取った。
フェイクであれ、本命であれ、戦闘は避けられないだろう――そう確信が持てる
宗介「まさかこんなに早く改良型を使うことになるとはな」
そう言って宗介はおもむろに装備を整える。
そして――
,>-、_ `ー、;;;;;;|::... `ヽ,
/:::..{ ̄`ヽ,_ | }_ノ ̄`、 ヽ
./:::...,ri |::`~' 〕 _,,,-一! :i i
{:::....{;;;\_ノ} ´~|:.{ `、 i :i l
!:...(_);;;;;;ノ.:i |:r!、_ハi ..::} :i
_}_::...`ー´、ノ |:|;;;;ノ.:! i::.....:::ノ :i
´"''~゙゛、、,r-一ー、 !、;;;;/ i ゙゛ ::ノ
/: 'v´ ̄`ヽ 、L_;;;-ー´
\/ {::. `,゛ `,
::../\ '、::.. ,i::.. ノ i ボン太くん「ふもっふ!」
::::::,-一、.. `ー-一´`ー-一'´ /
:::/;;;;;;;;;;;`ー、_:::::::::::..._ノ_::::::_ノ´
!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;へ;;};;;;;;`i;;;;;;;;;;;;;}\
宗介改め最新型パワードスーツ“ボン太くん”は戦場へと赴くのであった。
暇だ――とスキルアウトの少年は思う。
現在地は脳神経応用分析所内。外部から来たという真っ黒な組織から与えられた任務は簡単だった
「この写真の女以外は通すな、通ろうとすれば誰であろうと射殺しろ」
スキルアウトA「おーおー相も変わらずおっかない街だねぇここは」
などと軽口をたたくが、内心びびっている。
スキルアウトA「でもまあ……さっきのお譲ちゃんは通ったし……もう誰も来ないよな?
でもあれだよなァ……こういうときに限ってカツッって足音がして……そいつに俺は殺され――」
プニュ……
スキルアウトA「ひぃぃぃいぃ!?……ってアレ?」
プニュッ……プニュッ……プニュッ……プニュッ……
スキルアウトA「何だこの足音……?」
ボン太くん「ふぅぅぅうもっふ!!」
スキルアウトA「はい?」
脳神経応用分析所、最深部。
ここはミサカ19090号から最終ロットまでが生産された場所である。
今ここにいるのは3名。ミサカ19090号と取引相手のコート男
そして人質である布束砥信だ。
19090号「や、約束通りミサカは一人で来ました」
コート男「よくできましただな。ようこそミサカ19090号」
スーツの男は30代半ばの東洋人と言ったところだろうか?
日本人かもしれない。
19090号「……あなたは何故ミサカを狙うのですか?
――とミサカは犯行の動機を探ります」
コート男「そうだな……では昔話をしようか」
19090号「???」
コート男「昔昔、あるところに悪い組織がありました
戦争を裏から手引きし、その収益でお金設けをする悪い組織です」
19090号「???」
コート男「そんな中、世界に1つの正義の味方が現れました――笑っちゃうよな?
その正義の味方はいかなる国家にも属さない、軍事による平和維持活動を主とする
対テロ極秘傭兵組織です」
19090号「――“ミスリル”……」
コート男「おお!流石にミスリルの噂ぐらいは聞いたことあるのか。感心感心
そんなミスリルもな、悪い組織――アマルガムからすれば実は大した組織ではなかった
アマルガムと比べると組織は小さかったし、技術力も1段劣っていた
だがな、予想以上に頑張るあいつらに目を向けすぎてな?内側の“毒”に気付けなかったんだよ」
19090号「クーデター……?」
コート男「そう、幹部の一人が暴走してた。今まで民主主義だったアマルガムの指揮系統を独裁国家にまとめ上げた
――しかしその野望も崩壊したミスリルの残党に叩き潰された。
今まで通り民主主義制度を取り入れていたアマルガムなら幹部の一人がやられたぐらいでは痛くもなかったが
今回はそうもいかなかった。お陰で大変だったよ。崩壊したアマルガムを何とか形だけでも取り戻すのは」
19090号「それがミサカにどう繋がるんですか?」
コート男「おっと。前置きが長くてすまなかった。重大な話はここからさ
今のアマルガムは何とか形だけは取り戻した。だが1つ大きく足りないものがある
――技術力さ。クーデターを起こした若造が持つ知識が生命線だったんでね
そいつが死んだら新たな知識が生み出せなくなる……これは非常に痛い」
19090号「そういう話でしたらミサカは力不足です。そのような知識は持ち得ていません」
コート男「俺達が欲しいのは正確に言えばその“ネットワーク”さ」
19090号「!?」
コート男「その死んだ男が持っていた知識の拠り所がね
上手くは説明出来ないんだが君たちのネットワークに酷似している部分があるんだよ
それに目をつけさせてもらった」
コート男「そういったネットワークに接続出来る人間を俺達は『ささやかれし者』と呼んでいてね
実はこの素養がある人間を強制的に目覚めさせる技術はほぼ確立しているんだよ
なに、単にクスリ漬するだけさ。簡単だろ?」
19090号「み、ミサカにもその素養があると?」
コート男「詳しくはわからない。素養があるかもしれないし、やってみたら駄目かもしれない
でもやってみないとわからないだろ?やってみる価値はある。俺はチャレンジャーなんだ
ただクスリ漬には条件があってね――有る程度知識・感情が成熟した人間じゃないと効かないんだよ」
19090号「それでミサカを?」
コート男「そうだ。稀に生まれてすぐに目覚める変わり種もいるが
普通なら思春期を過ぎた高校生ぐらいが目安だ。そして君にも
……いや、妹達の中で君が唯一条件を満たしている」
急激に、コート男の顔が冷酷なものになった。
自分に対してモルモット以上の価値を見出していない――そんな表情
きっとクスリ漬が失敗しても、大して気にも掛けずに次のプランに進むような男であろう。
怖い――とミサカ19090号の顔が恐怖に歪む
コート男「あはは!そうさ!その顔さ!その顔こそ感情の表れ!妹達の中で君しか持っていないものだよ」
書くのはええなってか書き溜めしてるのか
>>192 実はもう描き終えてまっする
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コート男「まさかこんな女が本当に撒餌になるとはなぁ
学園都市もこの作戦には珍しく協力的でな?安くで売ってくれたよ」
布束「な……何故あなたが……ここに来たの?」
そこで布束が初めて口を開く。布束はひどく衰弱しているのが一目でわかるような姿になっていた。
19090号「あなたは……ミサカたちに外の世界を教えてくれました。
ミサカには……感情を教えてくれました。ミサカは……あなたを見捨てない!」
そう言って19090号は隠し持っていたサブマシンガンと取り出し
フルオート射撃でコート男に鉛玉をばらまく
19090号「護衛も付けずにミサカを対峙したことを後悔してください。と、ミサカは――っ!?」
コート男「何、対策はしているさ」
あれだけの銃弾を浴びて、有りえないことにコート男は傷1つついていない。
コート男「このコートな、鞭のように銃弾を弾くことが出来る『アクティブな』防弾衣なんだよ
そして、もちろんだが護衛は付けている」
コート男がそう言うと、フードを被った2人の大男が頭上から降りてきた。
コート男「超小型AS<アラストル>、抵抗はするなよ?なるべく五体満足で持ち帰りたいんでな」
コート男「自己紹介が遅れた。俺はアマルガム幹部の一人『ミスタAu』だ
前任者の息子にあたる」
布束「に、…逃げて。こいつらの科学力は普通じゃない……!」
19090号「で、でも……み、ミサカは……」
ミスタAu「チェックメイトさ。大人しく投降――」
ピリリリリ!乾いた空気にミスタAuの携帯電話が鳴り響いた。
ミスタAu「……どうした?」
スキルアウト『ぬいぐるみが……ぬいぐるみが……ぁぁぁあああああああああああ』
ミスタAu「???」
『ぬいぐるみ!?ぬいぐるみが散弾銃を……!!ぁあああああ』
『な、何だアレは?……かわいい?ぬぉおおおおおおおおおおおおお』
『やめて……!そこは!そこだけは……大事な……―――ひゃぅんっ!!』
何が起きている?侵入者にせよ情報が不明瞭すぎる。人数は?装備は?侵入者の特徴は?
そこがはっきりしないせいか指揮系統は完全に混乱状態だ。
19090号「……何が……?」
アラストルA《侵入者。最終エリアを突破した模様》
ミスタAu「ちっ!ってことは――」
ガタン!と正面の扉が吹き飛ばされた――その先には侵入者の姿が……
,>-、_ `ー、;;;;;;|::... `ヽ,
/:::..{ ̄`ヽ,_ | }_ノ ̄`、 ヽ
./:::...,ri |::`~' 〕 _,,,-一! :i i
{:::....{;;;\_ノ} ´~|:.{ `、 i :i l
!:...(_);;;;;;ノ.:i |:r!、_ハi ..::} :i
_}_::...`ー´、ノ |:|;;;;ノ.:! i::.....:::ノ :i
´"''~゙゛、、,r-一ー、 !、;;;;/ i ゙゛ ::ノ
/: 'v´ ̄`ヽ 、L_;;;-ー´
\/ {::. `,゛ `, ボン太くん「ふもっふ!」
::../\ '、::.. ,i::.. ノ i
::::::,-一、.. `ー-一´`ー-一'´ /
ミスタAu「あ……あれは!……ボン太くん!?」
前にニュースで見たことがある。マイアミ市警が暴徒鎮圧およびアジト襲撃用に購入した特殊スーツ。
何でも『目標の戦力を確実に削ぐためのパワードスーツ』という名目らしいが
そのニュースを見た時は「馬鹿げている」としか思わなかった。
だがしかし、ミスタAuが雇った指揮系統は見事混乱。
的確な指示を出す間もなくあっという間に制圧された。
たった一人のボン太くんに対してこのザマだ。
ミスタAu「やってくれたな……ボン太くん」
ボン太「ふも!ふもふもふもっもふも!ふんもー!」
ミスタAu「くそっ……何を言ってるかわからん」
途端、ボン太は飛びだし、アラストルに肉迫した。
狙うはアラストルの関節部。
ズドン!と鈍い音が響き、一体のアラストルは崩れ落ちた。
ボン太「ふもっふ!」(クリアー!)
こいつ……<アラストル>の弱点を熟知しているだと!?
アラストルはたいていの歩兵の携行火器には耐えうる堅牢な作りをしている
だが、人型である以上、宿命的に関節部は弱い作りになっているのだ
しかし問題はそこではない――
ミスタAu「アラストル!こいつは敵だ!応戦しろ!!」
アラストルB《ラージャ》
――やられた!高性能なAIを持つ<アラストル>には視認によってターゲットの有害・無害を判別する。
それがどうだ。あの人畜無害なボン太くんのフォルムは“無害”と判断されたのだ。
<アラストル>が本気を出せばあんなパワードスーツでは一ひねりだ。
ここは<アラストル>に任せて一旦引き、体勢を――
その時、もう一体の<アラストル>までもが足から崩れ落ちたのだ。
19090号「ミサカをフリーにしていたのは失敗ですね――とミサカは戦術レベルでのミスを指摘します」
ああミスった死にたい
×高性能なAIを持つ<アラストル>には視認によってターゲットの有害・無害を判別する
○高性能なAIを持つ<アラストル>は視認によってターゲットの有害・無害を判別する
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
何てことだ。信じられない。歩兵レベルの戦闘では最強を誇る<アラストル>がこんなにも一瞬に!?
ミスタAu「クソっ!」
布束「に…逃げるわ!」
19090号「逃がしま――」
ボン太くん「ふもぉぉおおおおおおおおおおおおふぅぅううううううううう」
19090号がミスタAuを追おうとしたとき、ボン太くんが鬼の形相で(表情なんて変わらないのだが)迫ってきた。
何となくだが、『伏せろ』と言っているような気がする。
ふと倒れた<アラストル>と呼ばれる小型ASを見ると、どこか様子がおかしい
19090号「ま、まさか自爆――」
研究所の最深奥で轟音がこだまする。
布束とミサカ19090号の上にはボン太くんがしっかりと覆いかぶさっていたため、幸運にも怪我はない
19090号「あ……あなたは!?」
宗介「危ないところだったな、ミサカ。しかし……ボン太くんはもう使えないか」
ボン太くんのスーツは既にぼろ雑巾状態だ
宗介「ふむ、防御面を強化していたのが幸いだったな」
19090号「あなたは……何故あれが自爆するとわかったのですか?
それ以前に……何故ここに?とミサカは怪訝そうに尋ねます」
宗介「“ミスリル”という組織を聞いたことはあるだろうが……俺はそこの元傭兵だ。
そしてあれは<アラストル>と言って“アマルガム”という敵対組織が所持していた超小型ASだ
何回か交戦したことがある。何故ここに来たかって?それは隣の布束砥信に聞けばわかる
――そうだろ?」
布束「……じゃあ……あなたが“ジンダイエージェント”のボディーガード?」
宗介「そうだ。その様子だと……俺のところに依頼するのも一苦労だっただろう」
布束「私にはもう……これぐらいしか出来なかったから」
ミスタAuは怒りのあまり発狂しそうであった
・ ・ ・ ・
おのれ、またお前か――ミスリルの犬!
ミスタAu「相良宗介っ!」
ミスリルで唯一のラムダドライバ搭載機のAS乗り。
アマルガムの崩壊はこいつが起点だったと言っても過言ではない。
こいつさえいなければ――ミスリル潰しに躍起になって内部の“毒”に気づかないなんてことにはならなかった
こいつさえいなければ――ニケーロでミスタAgを確実に仕留められるはずだった
ミスタAu「相良宗介ェ!」
まさか“コイツ”まで使うことになるとは……だがこれでアイツも終わりだ
相良宗介は潰し、ミサカ19090号はいただく。邪魔者を潰してアマルガムは復興
こんなにもいいシナリオは無い。
ミスタAu「行け。どんな手を使ってでも相良宗介は抹殺しろ」
スキルアウトのようなチンピラではなく、殺しのプロである傭兵達が動きだす。
ズゥゥン!と地響きが地下にこだまする。
宗介(ま、まさか……)
宗介「話は後にした方がよさそうだな。脱出しよう。アイツが体勢を立て直したら厄介だ
今ならまだ間に合う」
――仮にだが、“アレ”が出てきたら俺達はもう終わりだ
先ほどの爆発で、宗介の通信機は壊れてしまった。これでもうアルや美琴とは連絡が取れない。
そう思いを巡らせ、宗介たちは急いで研究所から脱出を試みる。
地下から出ると大型のトレーナーが出入りするコンテナに辿りつく――そこには
Rk-92、サベージが8機。
宗介(やはりASか……っ!!)
移動中にミサカからアマルガムのことを聞いたため、ある程度は予想出来た。
サベージが1機、2機とエンジンを始動する。
宗介(まだ間に合う……!)
ボン太くんによって得られた敵の指揮系統の麻痺はまだ抜けておらず
サベージに載る搭乗兵はまだ出そろっていない
宗介「ミサカ!俺がASを一機奪う!君は布束の――何をしている?」
19090号「お姉様から絶対能力進化の話は聞いたらしいですね?
……とミサカは確認を取ります」
宗介「それがどうした!?」
クラウチングスタートに似たポーズをしたサベージを
宗介は一瞬で背部まで登りながら答えた。
19090号「ミサカ達は…それぞれの個体には実験方針が定められています
このミサカの実験目的は――」
宗介同様、19090号も一瞬でサベージの背部に登る。
19090号「『対アーム・スレイブとの戦闘対処方法~リーヴェニ編~』です
……とミサカはドヤ顔でRk-92にもぐり込みます」
傭兵「早く動け!!……頼むから早く動け!」
アマルガムの傭兵は焦っていた。指揮系統の混乱を突かれ、味方のサベージが二機も奪われた。
奪われた2機より早く乗り込んだ6機であるが、それでも傭兵たちは焦っている。
――あの2人の起動が恐ろしいぐらいに正確で、早すぎるのだ。
データリンクしているのでその様子が手に取るようにわかる。
傭兵「クソ!あいつらロボットかよ!?」
起動手順がほとんどマニュアルな第二世代ASは、とにかく起動が遅い
それにも関わらず、敵の2機は精密機械のように起動手順をクリアし、一番早くに乗り込んだこの機体に追いつきそうなスピードだ。
傭兵「動いた!」
間に合った。自分と同時に起動した味方が1機。急げば2機を仕留められる。
通信する時間すら惜しい……!僚機も同じ思いらしく一目散に奪われた<サベージ>へ攻撃する
がしかし
刹那の差で敵の2機も駆動ロックを解除し、単分子カッターをギリギリで避けた。
傭兵「なn――!?」
宗介は「何!?」と言う暇すら与えない。
宗介の<サベージ>はクラウチングスタートから更に沈んだ姿勢での<サベージ>の足に取り組み
そのまま足をへし折る。
宗介「焦りすぎだ。三流以下だな」
そのまま冷静に敵の駆動部に単分子カッターを差し込む――これでもう<サベージ>は動けない。
宗介(ミサカは……!)
ミサカに視線を向けると、ミサカも宗介とほぼ同様の手順で敵を沈黙させていた。
と同時に2機のサベージが動き出す。もたついていたもう2機もそろそろ動き始めるだろう。
だが宗介は焦らない。
宗介「俺と君の技能なら、突破も容易だ」
19090号『同意見です。と、ミサカは妙な高揚感を堪えつつ返答します』
宗介「こういうときは、どういう風に戦闘を始めるか知っているか?」
19090号『……?』
傭兵A『……あ、あいつら化物だ』
傭兵B『火器を使え!冷静に囲めば楽勝だ!』
傭兵C『よ……よし!』
傭兵D『囲め!囲め!』
宗介「……だそうだ?」
19090号『こちらも準備オーケーです』
宗介「…では行くぞミサカ」
19090号『はい』
宗介「いつでも!」
19090号『どこでも』
宗介・19090号「「ロックンロール!!」」
病理解析研究所。
美琴「うっし!終わり!まさかASまで出てくるとはねぇ
人間サイズのわけわからんロボは自爆するわで面倒臭いこと……
アルに電話しなきゃ」
美琴が倒した敵は<サベージ>4機に<アラストル>2機
その他雑魚大勢だった。
美琴「アル!?こっちははずれだったわ
あんたの相棒から連絡あった?」
アル《いいえ、ではあちらが――》
美琴「間違いなく戦闘になってるでしょーね
ASもいるだろうからあっちヤバイわよ
急いで私を迎えに来て頂戴」
アル《ラージャ》
9090号『クリアー』
宗介「こっちも終わったところだ」
4機のサベージはものの数分で沈黙した。
宗介「布束、俺のサベージの手に乗ってくれ。少々揺れるが我慢しろ」
布束『わかったわ』
嫌な予感がする。先ほどのミスタAuという男はおそらく幹部クラス。
そのような男が<サベージ>や<アラストル>程度で終わるとは思えない
宗介「急ぐぞミサカ!」
19090号『はい――っ!?熱源反応です!
目標は十二時の――』
突然、19090号の乗る<サベージ>の周りの空間が大きく歪み
やがて<サベージ>を飲み込む
宗介「み、ミサカぁぁぁぁああ!!」
ミスタAu『心配するな。コックピットは避けている
死なれては困るしな』
宗介の眼前に、白銀のASが現れた
そのASは――
宗介「やはりヴェノムか……!!」
うううわああああああ
×9090号
○19090号 お亡くなりになったミサカを出してしまった……
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
状況は最悪だ。
ミサカの<サベージ>は大破。戦えるのは俺の<サベージ>一機のみ
しかし相手はあの“ヴェノム”。『ラムダドライバ』を登載しているのだ
ミスタAu『そーら』
ミスタAuの“ヴェノム”が指パッチンのような仕草をする
――ここにいてはマズイ!
とっさに宗介は崩れ落ちるように回避運動を取り
そのままミサカの乗る<サベージ>のところまで転がろうとするが……左腕がない
右腕にいた布束は衝撃で気絶しているようだ。
宗介(ラムダドライバにやられたか……!)
ラムダドライバは千鳥のような“囁かれし者”がもたらしたブラックテクノロジーの中でも
特に厄介な代物だ。通常の火器は力場によって一切受け付けず
その力場を攻撃にも展開できるあまりにも無体な兵器……!
19090号『い、今の……攻撃は?』
ボロボロになった<サベージ>から19090号が出てくる。
深手ではないながらも傷を負っている。
つか白金?
まさかコダール?
>>239 通常のコダールです。notエリゴール
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ミスタAu『チェックメイトだな相良ぁああ!?大人しく19090号を渡せ』
宗介「交渉が下手だな、小物。エモノの前で舌なめずりなど三流のすることだ」
ミスタAu『お前こそ下手な挑発だ。時間稼ぎしてこの状況が打開できるとでも?』
ミスタAuが言うことは正しかった。通信機がない以上、アルや御坂の援護も期待できない
あいつの操縦兵としての技能は三流だろうが、ラムダドライバを使う相手にはせめてM9クラスの僚機が2機は欲しい
何か?何かいい手立てはないか?
美琴((本来能力ってもんは工夫すりゃなんだって出来るわよ))
能力――!!しかしたかが“レベル2”の俺に何が出来る!?
ほかの能力者と言えばミサカが……待てよ?
宗介「俺も……工夫してやる……!!」
アル《エレクトロマスター?軍曹がですか?》
美琴「そうよ。聞いてなかったの?」
アル《はい》
美琴「あいつ変り種でね。レベル2のクセにASの2倍ぐらいの主力持ってるのよ」
アル《ほう…それにしてはレベルが低いように感じますが》
美琴「体内でしか使えないのよあいつ。せっかくの出力が無駄なのよね
出せるのはせいぜい電波程度ってとこねー」
――っ!!
アル《……!?何でしょう?》
美琴「え?」
アル《いえ、何か声が聞こえたような……》
宗介《アル!!解るか?ネットワークは繋げるか!?》
アル《!!?》
繋げた!俺にも工夫が出来た!
俺にはいるじゃないか――『同じ脳波を持つ』たった1人の相棒が……!
宗介《アル!今状況を――》
・ ・ ・ ・
アル《いえ、同期完了!状況は絶望的ですね軍曹》
アルの言葉とともに、宗介とアルの情報は溶け合った。
一瞬にして互いの状況が把握できる不思議な感覚
アル《私の提案は……言わなくてもわかりますね?》
宗介《ああ……!》
宗介「試してやるさ!」
ミスタAu『あん?死ねよ相良』
ミスタAuの操るヴェノムは、再度ラムダドライバを発動。
圧倒的な力の渦が、宗介の載る<サベージ>を包み込んだ
以前テッサがこう話していた。
この世には一種の精神世界であるオムニスフィアが存在し
オムニスフィアは物質世界と相互干渉をする。
普通の人間も微弱ながら分子構造が揺れる程度の力場を生成しているのだ
この干渉は、脳を持ち神経系を持つ人間にしか扱うことが出来ない
ラムダドライバは、人型を模したASに擬似脳・擬似神経を搭載し
そこに『大電力』を付加することによって微弱な力場を莫大な力の渦に変換したものであると
――つまり
ミスタAu『む、無傷だと!?』
19090号『こ……この力は……!?』
アル《成功したようですね。軍曹》
成功した……!!
アルはラムダドライバの基礎理論と美琴から聞き出した俺の出力から一つの仮定を導き出した
今のサガラ軍曹は――ラムダドライバが生身で使えると
アルと同期したことにより、宗介は説明を受けるまでもなくそれを実行に移すことが出来た
ミスタAu『さ、サベージがラムダドライバだと!?あり得ん!!
それにこの力……』
宗介の<サベージ>が一歩近づく
ミスタAu『ひぃ……!!』
宗介「怖いか?やはり三流だな」
ミスタAu『く、来るな!来るな!来るなぁぁああああ』
ミスタAuが力場をぶつけてくるが痛くもかゆくもない
当然だ、単純計算で出力が倍も違うのだから
ミスタAu『サベージでラムダドライバなんて…お前一体何者なんだぁぁああ!?』
宗介「知りたいか?」
右手で保護していた布束をそっと下ろし、今度はその拳を握る
宗介「SP養成学校3年B組所属」
ミスタAu『やめろ……』
宗介「および護衛会社“ジンダイエージェント”副社長権実行役」
ミスタAu『来るな……!』
宗介「現在御坂美琴の護衛係の……!」
ミスタAu『うぁああああああああああああああああ』
宗介「相良宗介だぁぁああああああああああああああああ」
宗介の駆る<サベージ>が拳を突き出す
すると見えない力の奔流がヴェノムを食い破る。
――ヴェノムの防御用力場など、紙屑同然であった。
どうもおかしい……!
“アマルガムらしき組織と接触”というアルからの報告を受けたかなめは
学園都市のセキリュティにハッキングしてみた
かなめ「まるで素通りじゃない……!」
学園都市そのものに違和感を覚えたかなめは、都市の中枢部へのハッキングを試みる
するとどうだろうか?まるでセキュリティなんてあってないようなものではないか
かなめ「手招きされているようで気持ち悪いわね……」
そこでかなめは一通のメッセージのようなファイルを受け取った
かなめ「……喧嘩売ってんのこいつ」
差出人は――アレイスター・クロウリー
検体名 相良宗介
能力名 虚弦斥力(ラムダ・ドライバ)
強度 レベル5
序列 学園都市“第八位”
かなめは頭を抱えた……そう、これは全て仕組まれた罠だ
アレイスターにとって、アマルガムの残党は罠の一つに過ぎないのだろう
――いや、そもそも自分だちが招待された時点で罠にハマっていたのかもしれない
かなめ「……この落とし前…きっちりつけてやるんだから……!!」
美琴「え~っと……あんたエレクトロマスターよね?」
宗介「肯定だ」
美琴「電気の何をどう使ったらこうなるわけ!?後学のために参考したい気分よ!!」
美琴の指がさす先には、酷い有様だった
大地はえぐれ、ASは跡形もなく消え去っている
宗介「たぶん……発電能力者なら誰もが使える力だ。多少コツはいるが
君が使えば……学園都市が消滅するんじゃないか?」
美琴「さっぱりわからないわよそんな力!」
ピーポーピーポー!
19090号「アンチスキルが来るみたいですね」
布束「そりゃあこれだけ暴れれば…」
宗介「話は後にした方が良さそうだな、全員アルに乗り込め!
アル!逃げるぞ」
アル《ラージャ》
―窓のないビル―
かなめ「どういうつもり?アレイスター・クロウリー」
アレイスター「いきなり食ってかかるんだな……噂どおり気丈な子だ」
かなめ「世間話してもしょうがないから直接聞くわ。あんたふざけてんの?」
アレイスター「虚弦斥力(ラムダドライバ)という名前が不服かい?
……そうだな、では精神世界(オムニ・スフィア)なんて名前はどうだい?」
かなめ「何でも知ってますよって面ね……あんたには一つだけ言っておくわ」
アレイスター「?」
かなめ「あんたねぇ!中学のころ同じクラスにいた女にそっくり!
何でもかんでもわかってますよな面して黒幕気取りな陰気野郎よ!この下衆!」
アレイスター「おやおや、傷つくな」
かなめ「私たちが怯むと思ったら大違いよ!私たちは徹底的に戦う!
そしてあんたの陰気な計画とやらは大失敗に終わらせてやるわ!それだけ言いに来たわ」
アレイスター「ふふふ、楽しみにしているよ」
かなめは言うだけ言い捨てて、空間転移能力者の力を借りて部屋を後にした
アレイスター「手に入れた……科学でも魔術でもない虚の力を……」
なんかのび太がレベル5になるSSと微妙に似てるような気がするよ
―翌日―
19090号「昨日はお世話になりました。……とミサカはお礼を言います」
宗介「いや、正直君の力がなければ危うい場面もいくつもあった
お互い様だ……それから別件だが……これから君は当てはあるのか?」
19090号「??」
宗介「聞けば君は自分が何者かを探しているらしいじゃないか」
19090号「え、っと……その……み、ミサカは…」
宗介「その……君が嫌じゃなければ……俺と家族にならないか?」
19090号「!!?」
19090号「え、ええええええ!?何を言ってるんですか!?ってミサカは混乱しながら問いかけます
っていうかいきなりぷぷぷ、プロ……!?そんなフラグもなしに!?ってミサカはミサカは
――ああこれは上位個体です…ってミサカは…」
絶賛混乱中の19090号を尻目に、宗介はしれっと続ける
宗介「そうだ。俺の娘にならないか?
何なら姉でも妹でも、立場は何だっていい」
19090号「……はい?」
宗介「俺は結婚を約束した人がいる。そいつは頼りになる相棒でもある
そして今回の作戦で俺は思った。」
19090号「……何をです?」
宗介「俺は君になら背中を預けられる。初めての作戦でそう思ったのは君が始めてだ
そこで君には身寄りがないと冥土返しに聞いて……
千鳥と、俺と、アルと、君で一緒に護衛会社をやろうじゃないか
きっと楽しい毎日になる。……嫌か?」
19090号「いえ…!」
19090号「……よろしくお願いします」
―fine―
こんな夜中にお付き合いいただきありがとうございます
後半を大幅に削ったため、改行規制食らったり物語が矛盾したりといろいろgdgdしてしまいました
申し訳ありません
お疲れ、素晴らしかった
好きなASを一つ挙げて
削った……だと……?
どんな部分を削ってどんな矛盾が生じたんだ?
>>321
三流の手前に第三世代ASであるシャドゥとの戦闘
ミサカと連携して倒すという構想だったが
どうもOMFの焼き増しで冗長だったから削った
その際生じた矛盾は気がつけば布束握り潰してた
ドラッヒェって燃える~だっけ?
覚えてねぇwwww
もしやラムダ・ドライバは上条さんのryスレで途中まで書いてた人か?
>>326
NO
つーか続き書くの?
なんか続けるっぽいような伏線漂ってるけど
ミストラルⅡとかブッシュネルのほうが第二世代型で優れてるはずなのに、作中での活躍はサベージが一番多いのはなぜだ・・
あくまで第二世代型では
>>338
そりゃあサベージがベストセラーだからではなかろうか
優れた特機よりも安心性が重視されてるんだと思う
上条「てめぇらずっとm(ズドン!
宗助「勝った」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません