和「せ、生徒会へ行かないと…!」(201)

律「よっしゃあ、みんな揃ったな!じゃあさっそく……」

梓「練習しま」

唯「ティータイムだ~っ!」

紬「お~♪」

澪「うおおおおいっ!?今日は練習するって言っただろ!」

律「ティータイムの後にちゃんとやるって」

梓「信用できないです!」

紬「まあまあ……今日はケーキよ?」パカッ

唯「おお……何だか今日は一段と美味しそうだね……!」

律「こ、こいつは凄い……見てるだけで涎が……」ジュルリ

澪「う……」

紬「えっと、よくは知らないんだけど、一日10個くらいしか作られない限定ケーキなんだって」

律「ほっほう、そいつはレアだな。でもすぐ食べないと味が落ちるかもな~?」

唯「ええっ!?じゃあ早く食べないと!」

梓「練習した後でも変わりませんよ!ねえ澪先輩!」

澪「……」

梓「澪先輩?」

律「美味しそうだよなあのケーキ。澪も早く食べたいよな~?」

澪「……れ、」

唯「れ?」

澪「練習はティータイムの後でもいいかな。ははは……」

梓「澪せんぱーーーいっ!?」

律「よし、あとは梓だな」

梓「な、何ですか!私は懐柔されませんよ、今日こそは練習を」

律「唯、君に決めた!」

唯「ラジャー!」ダッ

律「いっけえ、からみつく攻撃だっ」

唯「あ~ずにゃんっ♪」ギュウッ

梓「にゃっ!?」

紬「あらあらまあまあ!」

唯「ひへへへへ、可愛いのうあずにゃんや」ナデナデ

梓「や、やめてください~!」ジタバタ

律「むっ、まだ抵抗するか!唯、しめつける攻撃でとどめだっ」

唯「あずにゃんにゃん♪」ギュー

梓「くっ、こんなことでえ……ふにゃあ///」

律「ふっふっふ、これで梓も陥落だな」

紬「さあお茶にしましょうか♪」

澪「早く食べよう!」

律「やれやれ、澪は食い意地が張ってんなあ」

澪「ち、違う!これはだな、早く食べて練習に移ろうという考えがあってのことで」

律「はいはい♪」

澪「くう……!」

唯「よ~しよしよし……」スリスリ

梓「にゃあ♪」ゴロゴロ

律「いつまでやってんだ」

……

律「うまっ!このケーキ美味しすぎる!」モグモグ

澪「うん、上品な甘さだな!ちょっとカロリーが心配だけど……」

唯「おいひい~♪」パクパク

梓「もう、クリームついてますよ?」フキフキ

唯「ん~、ありがとうあずにゃん!」

梓「どういたしまして」

紬「うふふ、喜んでもらえて良かったわ♪」

澪「いつも悪いな、ムギ」

紬「いいのよ、みんなに食べてもらったほうが私としても嬉しいし」

律「ムギはマジ天使」

ガチャッ

和「唯いる?」

唯「あっ、和ちゃ~ん♪」

澪「ん、何かあったのか?」

紬「いらっしゃいませ~♪」

律「ムギ、それ何か違う」

和「唯にノート貸してたでしょ?今日帰ってから使いたいから、返してもらおうと思って」

唯「ああ、あれかあ。ちょっと待って~」ゴソゴソ

梓「……もう軽音部が練習せずにお茶していても、何も言われないんですね」ホロリ

律「私たちは、『放課後ティータイム』だからな……!」ニカッ

梓「そんないい笑顔で自慢することじゃないでしょう!?」

澪「和、今日は生徒会はないのか?」

和「ええ、今日はほとんど仕事がなかったから。少し集まって解散したわ」

澪「そっか……毎日大変だな」

和「ふふ、もう慣れてるから大したことじゃないよ」

唯「あったあった!はい、和ちゃん貸してくれてありがと~」

和「どういたしまして。ちゃんと授業聞いてないとダメよ?」

唯「えへへ、面目ない」

和「じゃあ私はこれで……」

紬「あ、ちょっと待って。この後用事がないなら、和ちゃんも一緒にどうかしら?」

和「え?でも……」

唯「そうだよ!和ちゃんも一緒にお茶しようよ!」

律「遠慮するなって!」

澪「和ならいつでも大歓迎だよ」

梓「です」

和「……そうね、お邪魔しちゃおうかしら」

唯「わ~い♪和ちゃんこっちこっち」

和「はいはい」

紬「和ちゃんも紅茶でいい?」

和「ええ。ありがとう、ムギ」

律「さあケーキも遠慮なく食べたまえ」

澪「何でお前が偉そうにしているんだよ……」

和「ふふ、頂くわ」

紬「召し上がれ♪」

和「あ……んっ」パクッ

和「……」モグモグ

紬「どう?」

和「うん、美味し……っ!?」

唯「!」

澪「和?どうかしたのか?」

和「……何でもないわ。すごく美味しいわね、このケーキ」

紬「よかった~」

律「ふふん、味わって食べたまえよ和君?」

梓「だから何で律先輩が偉そうにしてるんですか……」

唯「……」

和「……」

澪「どうした和。今度はボーっとしてるけど……」

和「えっ!?な、何でもないわ」

律「あまりにもケーキが美味しくてトリップしてたんだよな?」

梓「まさか。唯先輩や律先輩じゃあるまいし」

律「中野~!お前最近、微妙に口悪いぞっ」グニー

梓「ひゃめへふははいよ~」

和「んっ」パクッ

和「……っ」

紬「和ちゃん、本当に大丈夫?何だか辛そうだけど……」

和「え、ええ。だいじょ――」

唯「……和ちゃん、虫歯だね?」

和「っ!?」ビクッ

律「えっ、虫歯?」

澪「なるほど、それでケーキを食べる度に顔をしかめてたのか」

和「な、なななななな」

紬「な?」

和「なな何言ってるのよ、そんな訳ないじゃない」カタカタ

律「カップが震えてるぞー」

梓(あの和先輩がこんなに取り乱すなんて……)

唯「……和ちゃん」

和「な、何かしら?」

唯「歯医者さん、行かないと」

和「!!!」

紬「そうね、虫歯は早く治さないと」

律「美味しいもん食べられなくなるのは辛いからなー」

和「わ、私……」

澪「和?どうした?」

和「生徒会へ行かないと!」ガタッ

唯「逃がすかあっ!」ガバッ

和「きゃあっ!?」

律「お、おい唯!?」

梓「ゆ、唯先輩!いきなりどうしたんですかっ」

唯「いいから!みんなも和ちゃんを取り押さえて!」

紬「えっ?ええ?」

澪「……」ポカーン

和「は、離して!離しなさい唯!私は生徒会へ行かないといけないの!」ジタバタ

唯「ダメだよ和ちゃん……!今日はもう解散したんでしょ!?」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会へ行くね!」

唯「意味が分からないよ!」

律「えっと、まあ……これ以上暴れられても困るし和を取り押さえよう」

澪「そ、そうだな」

和「こ、これが巷で噂の四面楚歌……!」

紬「ゴメンね、和ちゃん」ムギュッ

梓「ご、ゴメンなさいっ」

和「うう……」

……

和「……」

唯「ふう、やっと取り押さえれたよ」

和「く……殺しなさい」

律「いや、訳分からん」

梓「えっと……それより気になることがあるんですけど」

紬「どうして和ちゃんはいきなり暴れ出したの?」

和「……」

唯「う~ん、これは秘密だったんだけど、皆には見られちゃったからね……いいよね、和ちゃん?」

和「……」

唯「まあ見ての通りだけど、和ちゃんは歯医者が嫌いなんだよ」

澪「え?た、確かに歯医者が好きなんて人はいないだろうけどさ……」

律「あの反応はちょっと……度が過ぎてないか?」

唯「和ちゃんは歯医者がすっごく嫌いなんだよ」

梓「そ、そうなんですか……」

紬「でもどうして?私も歯医者さんは嫌いだけど……」

和「……どうしてもこうしてもないわ。歯医者、それはリリンが生み出した最悪の文化よ」

和「あの独特の匂い、雰囲気、音、悲鳴、泣き声……あそこは、現代の地獄だわ」

和「こうしてそ、想像しただけでも……」ガタガタ

律「和?」

和「いやああああああっ!お願い唯、私を生徒会へ行かせて!私とあなたの仲じゃない!」

唯「ダメだよ~。和ちゃんを歯医者に連れて行くのは私の使命!」フンス!

澪「前から和を連れて行ってるのか?」

唯「うん、和ちゃんのお母さんに頼まれてね。和ちゃんの虫歯は中学以来なんだけど、拒否反応がひどくなってて驚いたよ……」

梓「和先輩がこれほど取り乱すのも驚きですけど、虫歯になるというのも何だかイメージと合いませんね」

唯「いや~、和ちゃんも毎日三回しっかりと歯磨きしてるみたいなんだけどね……」

紬「じゃあ和ちゃんは、体質的に虫歯になりやすいのかも」

和「うう……何で私ばっかり……」シクシク

唯「よし、じゃあ行こっか和ちゃん」

澪「予約とかしなくていいのか?」

唯「だいじょぶだいじょぶ。ほら和ちゃん、立って」

和「そうなんだ、じゃあ私」

唯「生徒会には行かなくていいからね?」

和「私は」

唯「帰っちゃダメだよ?」

和「……」

唯「逃げようとしてもダメだよ?」

和「くう……唯のくせに」

梓「……何だか面白いですね」

律「ああ、まさか和にこんな面白い一面があったとは……」

澪「聡明な和のイメージが……」

紬「あら、歯医者を怖がる和ちゃんも可愛くない?」

唯「さあ行くよ。みんな、悪いけど今日は先に帰るね」

律「あ、ああ。え~と、頑張れよ?」

和「いやああああああああああああっ!」ズルズル

……

翌日!

唯「おはよ~」

律「おっす唯!」

澪「今日は早いんだな」

唯「うん、ちょっとやることがあったからね」

澪「やること?」

唯「和ちゃんのことで少しね。それより和ちゃんはもう来てる?」

律「ああ。昨日のあの様子が嘘みたいに落ち着いてたな」

澪「治療うまくいったのか?」

唯「まさか。まだ検査してもらって話を聞いただけだよ。本格的な治療は今日からだね」

澪「そ、そうか……大変だな」

唯「うん。たぶん今日は昨日よりさらに必死になって逃げようとするだろうから、協力してね?」

律「昨日よりさらに……!?でも、そんな風には見えないけどなあ。今もムギと談笑してるっぽいし……」

唯「甘いよりっちゃん、あれは私を油断させるための演技だね」

澪「そ、そんなことまで分かるのか……」

唯「当然。伊達に幼なじみやってないよ」

律「しっかしあの和がなあ……未だに信じられん」

澪「私も……」

唯「とにかく、決戦は放課後!油断しないでね、二人とも!」

律「へいへい、了解」

……

さわ子「……ということで、連絡事項は以上です」

唯(もうすぐ放課後……和ちゃんは確実に動くはず)

律(な、何だこの緊張感は)

さわ子「ちょっと早いけど、この辺でホームルームを終わるわね」

和「……」

澪(和、落ち着いてるなあ。やっぱり唯の考え過ぎじゃないか?)

紬(うふふ……)

さわ子「それじゃあ真鍋さん、号令を……」

和「そうなんだ、じゃあ私生徒会行くね!」ダッ

さわ子「え?」

ガチャッ、バタン!

唯「しまった!まさか放課後になる直前に仕掛けてくるなんて……!みんな、追うよ!」

律「お、おうっ」

澪「えっと……ごめんなさい!」

紬「お先に失礼しま~す♪」

ダダダ…

さわ子「……」ポカーン

さわ子「あ、あの子たち……」

和「……っ!」タタタッ

律「の、和って脚速いんだなっ!」

澪「お、追いつけない……!」

唯「はあ、はあ……」

紬「唯ちゃん、大丈夫?」

唯「だ、大丈夫大丈夫……。それより、みんな分かれて和ちゃんを追って!このままじゃ逃げられちゃう!」

律「分かった!」ダッ

澪「じゃあ私はこっちから回り込むな!」タッ

紬「また後で会いましょう!」バッ

唯「うん!」

唯「……逃がさないよ、和ちゃん」

唯「先回りして、捕まえる!」ダッ

……

和「ふう、ここまで来れば……」

唯「安心できるのかな?」

和「なっ、唯!?」

唯「和ちゃん、どこ行くの?今日も歯医者だって言ったよね?」ニコッ

和「だ、だから生徒会に……」

唯「今日も生徒会活動はないって聞いたけど?それにこの先の階段を降りると玄関しかないよ?」

和「う……そ、それは……」

唯「……」ジリッ

和「く……!」

和(落ち着きなさい私。追いつかれたのは想定外だったけど、唯相手なら……)

唯「言っておくけど、私一人じゃないからね?」

律「ふい~、まさか唯が和を追い詰めるなんてな」

和「律!?」

澪「まあ和のことは唯が一番分かってるってことじゃないか?」

紬「さすが幼なじみね!」

和「み、澪にムギまで……」

唯「バックアップには憂やあずにゃんもいるよ~♪」

和「そ、そんな……」ガクッ

澪「唯にしては、恐ろしく用意周到だな」

唯「あ~、澪ちゃんひどい!私だってやる時はやるのです!」フンス!

律「いつもそれくらいやれればな~?」

唯「もう、りっちゃんまで……」

律「ははっ、冗談だって!」

和「……」ジリッ

紬「和ちゃん、この隙に逃げようなんて思ってないよね?」

和「!?」ビクッ

紬「うふふ♪」

和「うう……」

和(完全に追い込まれたわ……。チェックメイト寸前ね)

和(でも私は諦めない!諦めたらそこで試合終了よ……歯医者さんには、絶対に行きたくないっ)

唯「さて。じゃあ和ちゃん、歯医者さんに行こう!」

和「嫌よ」

律「……」

澪「……」

紬「……」

唯「和ちゃん、この状況を見て。もう逃げるのは無理だよ……ほら、行こう」

和「却下よ」

唯「……」

和「……」

唯「和ちゃん、」

和「断るわ」

唯「むう~!だから断れないってば」

和「絶対に断るわ」

唯「絶対に断れない!」

和「もう一度言うけど、絶対に断るわ」

唯「もう一度だけ言うけど、絶対に断れないよ!」

和「……」

唯「さあ、早く行かないと」

和「逃げ――!」バッ

唯「させない!」

律「無理だって。いくら和でも四人に囲まれたらもう……

和「窓から飛び降り――」

澪「ここ一階じゃないから、やめたほうがいいと思う」

和「ムギの頭を撫でる!」ナデナデ

紬「わあ……///」

唯「何で!?」

和「くるっと回ってワン!」

律「往生際が悪いぞ和!」

和「私のターン!」

唯「そうやっていつも勝手に先攻を取るのやめようよ……」

和「ずっと私のターン!」

澪「自分勝手すぎるよ和!」

和「伝説の木の下で、ずっと待ってる」

紬「は、はいっ///」

和「まだよ――!」

律「もうやめろ!和のライフはもうゼロだっ!」

和「それでも――!」

唯「はいはい、そろそろ行こうね~?」ガシッ

和「いやあああああ!歯医者怖いいいいいっ!」ジタバタ

和「歯科医……奴らはサドよ!人が苦しむ姿を見て喜ぶ、生粋の変態なんだわっ!」

和「そんなのの巣窟に行くなんて無理無理っ!」ブンブン

紬「昨日よりさらに凄い暴れっぷりね」

澪「和……」ホロリ

律「いやあ、和って実はかなり面白い奴なんじゃないか?」

唯「和ちゃん、私がついてるから落ち着いて!」

和「お願い唯ぃ……見逃してぇ……」ウルウル

唯「う……///」

紬「の、和ちゃんの上目遣い&涙目!」ハアハア

律「ムギも落ち着け」

唯「だ、ダメだよ!虫歯は早く治さないと!」

和「……どうしても、だめ?」ウルウル

唯「めっ!和ちゃんのためなんだよっ!」

和「そう……」シュン

澪(和可愛い……)

律(何という萌えキャラ)

唯「えっと、じゃあ」

和「……なら、最後の手段を使うしかないようね」

紬「え……?」

ゴウッ!

律「なっ!?」

澪「な、何これ!?」

和「……」シュウシュウ

唯「の、和……ちゃん?その光は、何?」

紬(こ、このオーラは……!)ビリビリ

和「唯が悪いのよ?私を、本気にさせるから……!」ヒュッ

律「は、はや……うっ!?」

ドンッ!

律「か、あ……?」ドサッ

澪「律?りつううううっ!」

和「人の心配をしている場合かしら?」

澪「っ!?」

紬「澪ちゃん危ない!はあっ!」ヒュッ

ガンッ!

紬「やった……?」

和「残念ね、効かないわ」

紬「そ、そんな……きゃあっ!?」ドサッ

和「澪も、ね」

澪「うああっ!?」ドサッ

唯「み、みんな……」ガタガタ

和「唯、あとはあなただけよ」スッ

唯「ひいっ!?い、嫌あっ!来ないでえっ!」

和「……」

――――カクゴ。
和が覚醒した、一般的に『気』と呼ばれる力。
体内に流れる電気を操り、増幅し、様々な現象を引き起こす。
和のカクゴは、身体能力を爆発的に増強する力を持つ。
パワーもスピードも、今や和は人知を超えた領域に到達していた。

和「……」ザッ

唯「あ、ああ……」ガタガタ

一歩一歩、和は唯へと近づく。
大気が、震える。
呼吸をすることすら、ままならない。
その圧倒的な威圧感を前にした唯は、逃げることはおろか……動くことさえ出来なかった。

和「さようなら、唯」

唯へとゆっくり近づいてくる、和の手。
神々しいまでの眩き光を纏ったその手は、一瞬で相手の意識を刈り取ってしまう恐るべき凶器なのだ。
自分の最期を感じ取った唯は、その目をゆっくりと閉じる。
親友のあんな姿を見たくない――そう思ったからだ。

唯「……」

和の手が自分に触れるその一瞬を待つ。
死の間際とはこういうものなのだろうか――唯には和が自分に触れるまでの刹那の時間が、ひどく長いものに感じた。
しかし。

唯「……?」

しかし、いくらなんでも長すぎないか?
そう思った唯は、固く閉じた自らの目を開いてみることにした。
するとそこには、

梓「唯、先輩……!」

憂「お姉ちゃんには、手は出させない!」

自分をかばうように和の攻撃を受け止める、愛する後輩と妹の姿があった。

唯「ふ、二人とも!?どうして……」

和「邪魔よ」

ゴウッ!

梓「あうっ!?」

唯「あずにゃん!?」

憂「くう……オーラで衝撃波を発生させるなんて……!」ビリビリ

和「やめておきなさい、憂。いくらあなたでも、カクゴを使えない以上私には勝てないわ」

唯「か、カクゴって……何……?」

和「……カクゴは、死の恐怖を幾度も味わってなお、命をかける覚悟がある者のみが使える力」

憂「隙ありっ!」シュッ

和「……」パシッ

憂「くっ……!」

和「無駄よ。私は歯医者という絶対的な死の恐怖により、カクゴに目覚めた。本物の命をかける覚悟がない者には、絶対に負けないわ」

ドンッ!

憂「ぐううううっ!」

唯「ういいいいっ!?」

憂「お、お姉ちゃ……逃げ、て……」ドサッ

唯「そ、そんな!憂、ういいっ!」

和「……逃がすと、思う?」

唯「の、のどかちゃ……」

和「今度こそ終わりよ。もう誰も邪魔する者はいないわ」

唯「……」

その時、唯の目に映っていたのは自らを攻撃せんとする和の姿……ではなく。
唯を守ろうとして倒れた梓と憂、そして自分に協力してくれた仲間たちの姿だった。

唯(そうだ。私が、私がやらないと……!)

唯(ここで倒れるわけにはいかない。みんなのためにも……覚悟を、決めるんだ)

唯(命をかけて和ちゃんを歯医者に連れて行くと!)

唯「う、ああああああああっ!」

ゴウッ!

和「なっ!?こ、これは……まさか!?」

ドンッ!

和「かはっ……まさか唯が、裏カクゴを、使う……なんて……」

唯「はあ、はあ……」

和「私の、負けよ……」ドサッ

和「……という展開になるに違いないわ!」

律「長いよっ!」

紬「少年漫画みたいな展開ね~♪」

澪「しかも打ち切り臭がプンプンするな……」

律「カクゴって……。つか、和は最後にやられてんじゃん!」

唯「いつまでもグダグダしてても仕方ないよ、和ちゃん」

和「はっ!?」

律「どうしたんだ?」

和「あはは、変な夢を見てたわ。全く、私が虫歯になるなんてあるわけないわよね~?」

唯「……」

澪「現実逃避が酷くなってきたな……」

律「お~い、そのネタはもう澪がやったぞ~?」

和「うう……」

紬「……ねえ和ちゃん、そんなに嫌?」

和「え?ええ……」

紬「でも、これは必要なことよ。虫歯は放っておいても治らないし、早めに治療を受けないと」

和「分かってる、けど……」

紬「……」ギュッ

和「あ……」

紬「怖くない。怖くないよ。大丈夫、私たちみんながついてるから……」

和「む、ムギ……?」

紬「歯医者さん、行きましょ?」

和「……うんっ」

唯「……」ブー

澪「はは、全部ムギに持っていかれたな」

律「おい唯、そんなに拗ねるなって」

唯「……拗ねてないもん」プイッ

紬「さあ行きましょうか!」

歯医者!

和「うう、うううう……」ガタガタ

澪「お、おい……和は大丈夫なのか?顔が真っ青だぞ」

律「待合室に入ってからどんどん酷くなっていくな……」

紬「和ちゃん……」

和「唯、唯はどこ?目の前が真っ暗で何も見えない……!」ガタガタ

唯「ここだよ、和ちゃん」ギュッ

和「唯ぃ……!」ギュー

紬「あらあら♪」

律「結局は唯に頼るんだな、和も」

澪「ああ、そうだな」

和「唯、唯……。愛しているわ、キスしましょう?」

唯「それはダメだよ、和ちゃん。大体キスしたら虫歯が伝染するなんて迷信だって言ったでしょ?仲間を増やそうとしちゃダメ」

和「うう……」

律「……まあ、錯乱状態からは脱していないみたいだけどな」

澪「は、はは……」

マナベサーン、ドウゾー

和「!!!」ビクウッ

律「おっ、和の番か」

紬「さすがにこの人数じゃ中には入れないわね……」

唯「うん。私と和ちゃんだけで行って来るよ」

和「ゆいぃ……」ウルウル

澪「しっかりな、二人とも!」

唯「あはは、大げさだよ~。ほら行こう、和ちゃん」

和「う、うん……。手、握っててね?」

唯「もちろん♪」ギュッ

律「……」

澪「……」

紬「……」

律「何か、微笑ましいな」

澪「うん……」

紬「いいものが見れたわ~♪」

律「じゃあ和のことは唯に任せて」

澪「私たちは学校に戻るか。梓を待たせっぱなしにしちゃってるし」

紬「そうね、戻りましょうか」

……

和「昨日は、お騒がせしました……」

澪「の、和!そんなに頭下げなくていいから!」

律「私は面白いもの見れたから楽しかったぜ?」

和「うう……思い出すだけでも顔から火が出そう……///」

唯「和ちゃ~ん、気にしなくていいって!」

紬「そうよ!可愛かったわ!」

和「やめて、恥ずかし過ぎるわ……私、歯医者のことになると頭が混乱しちゃって……」

律「うん、昨日の和はまさに混乱状態という言葉にふさわしかったな」

澪「はは……もう歯は大丈夫なのか?」

和「ええ、おかげ様で。発見が早かったし、一箇所だけだったからすぐ済んだわ」

紬「あら、じゃあ今日もティータイムに来ない?またケーキいっぱい持ってきたの~♪」

和「え?でも……」

唯「和ちゃんもおいでよ~。ねっ?」

律「前も言ったけど……」

澪「和ならいつでも大歓迎だよ」

和「……」

和「クスッ、そうね。前回は歯が痛くて味わえなかったから、もう一度参加させてもらおうかしら?」

……

和「うん、美味しい!」

唯「幸せ~……」モグモグ

紬「今度こそ喜んでもらえて良かったわ~♪」

澪「うう、美味しいけど太りそう……」

律「しかしフォークを動かす手は止まらない。こうして澪のお腹のお肉は、着々と成長を遂げてい

くのであった……」

澪「うっさいバカ律っ!」

梓「……」

和「この紅茶も美味しいわね……ムギ、良かったら淹れ方を教えてもらえないかしら?」

紬「もちろん!これはね、まず……」

澪「どうせ、どうせ私は太っていく運命なんだ……」ズーン

律「わ、悪かったってば!澪は太ってないよ!栄養は全部胸に行ってるよ、ほらっ」ムニュッ

澪「ひゃあああっ!?///」

梓「……」

唯「あれ?あずにゃん食べてないねえ、どうかしたの?」ヒョコッ

梓「にゃあっ!?ゆ、唯先輩……」

唯「ケーキ美味しいよ~♪私が食べさせてあげる!」

梓「ええっ!?」

唯「はい、あ~ん♪」

梓「うう……」

唯「……食べてくれないの?」ウルウル

梓「た、食べますっ!」

唯「じゃあ……あ~~~ん♪」

梓「あ、あ~……///」

律「あらら、またあいつら部室でいちゃついてやがる」

和「ふふっ、いいじゃない。仲良きことは美しき、よ」

紬「いいわあ……」ウットリ

梓「んっ」パクッ

梓「……つっ!」ピクンッ

律「あ、あれ?」

澪「今の反応……何だか最近見たような……」

唯「あず、にゃん……?」

梓「あ、あの!今のは、えっと」

紬「梓ちゃん……?」

和「……」ビクビク

梓「あの、私、そのぅ……せ、」

唯「せ?」

梓「せ、生徒会へ行かないと……!」


終わり♪

和ちゃんマジ和ちゃん
もっと和ちゃんは活躍すべき

眠いからこの辺で。深夜に見てくれてありがとう、早く寝ろ
書いてる人いたけど、カクゴの元ネタはジャンプのSWOTです

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