佐天「学園都市に『鬼』が出るらしいよ!」(581)

【9月6日月曜日】

――朝 柵川中学

佐天「うーいーはーるっ!」バサッ

初春「キャッ! って、佐天さん、いい加減にしてください!」

佐天「今日は苺ちゃんかぁ。お主もなかなか良い趣味をしておるのぅ」

初春「もう、佐天さんは……」

佐天「ごめんごめん。ところでさ、もう聞いてるー?」

初春「え?何をですか?」

佐天「『鬼』のことだよ!知ってる? 最近学園都市に『鬼』が出るらしいよ!」

初春「もちろん知ってますよ。ジャッジメントでも問題になってますし」

佐天「やっぱり! ねえねえ! ほんとにいるのかな?」

初春「うーん、どうなんでしょう? でも、スキルアウトの人達の状態を見ると……」

佐天「五十人以上のメンバーが集まってるチームが一日にして壊滅したんだよね」

初春「はい。しかも、誰に聞いても、『鬼が出た』としか言わないらしいんですよ」

佐天「『鬼』か……なんか怖いけど、ちょっと気になるなぁ」

キーンコーンカーンコーン

初春「あ! 授業始まりますよ! 急ぎましょう!」

佐天「って、ちょっと、初春! 置いてかないでよー!」


――常盤台女子寮

黒子「お・ね・え・さ・まぁーん!」ガシッ

御坂「ちょっと! 朝っぱらから抱きつくな!」

黒子「いいじゃありませんの。スキンシップはコミュニケーションの一つですわよ」

御坂「アンタの場合、それが過剰すぎるのよ!」

黒子「!!!!! ああんっ! おねえさまの愛は痺れますのっ」

御坂「はぁ。ほんと、付き合ってられないわ」

黒子「ところでお姉さま。『鬼』の話ですが……」

御坂「『鬼』?ああ、昨日の黒子が言ってた事件ね。
   五十人以上のスキルアウトを一日で壊滅させるなんて、その『鬼』って何者かしら」

黒子「残念ながら、ジャッジメントでも、詳細はまだ掴んでおりませんの。
   ただ、五十人の屈強な男達に、あそこまでの恐怖を植え付けたのは事実ですわ」

御坂「ふーん。そんなに凄い能力者なのかな? 気になるわね」

黒子「お姉さま。いいですの?これはジャッジメントの仕事ですの。民間人のおねえさ――」

御坂「あー、はいはい。わかってるってば。ほら、早く行くわよ」

黒子「んもうっ! お姉さまったら……」




――学園都市 某研究施設
??「『鬼』……か。面白い。邪魔をするなら……」

――放課後 柵川中学

佐天「ねえねえ、初春! 今からセブンスミストに行かない? 新作入荷したらしいんだ」

初春「すみません。今日はジャッジメントの合同会議が入ってて……」

佐天「そっかぁ。それじゃ仕方ないね。あたし一人で新作を楽しんで来るかな」

初春「また週末にでも、御坂さんたちを誘って行きましょう」

佐天「うん、それじゃ、また明日!」

――セブンスミストへの道

 佐天は久し振りに聴く音楽に耳を傾けながら、セブンスミストへの道を歩いていた。

 シャカシャカシャカ♪

佐天「(一一一の新曲いいなー! って言っても、一ヶ月前の曲なのかぁ。
    この前の事件からあんまり音楽聴かなかったからなぁ)」

 しかし、楽しそうに音楽を聴きながら道を行く佐天のすぐ後ろに、三つの影があった。

男A「――おい、あの黒髪どうだ?」

男B「なかなか良いじゃねーか。中坊みてーだが、ガキが好きってのもいるしな」

男C「ああ。あれなら、結構良い値が付くかもしんねーなぁ」

男ABC「んじゃ、やるか」

ダダダダダッダダ!

ガシッ!


佐天「(えっ!? 何? 誰!?)」

佐天「いやあああああ! んーんーんー!(痴漢!? え、なにこれ!?)」

男B「ねーちゃん、静かにしろや。騒ぐと痛い目見るぜ」キラッ

佐天「んー!(な、ナイフ! え、なんで私が!? なんで!?)

男C「静かにしてれば、痛いことしねーからよー。おい、さっさと車のとこにいくぞ」

男B「おう。ほら、ねーちゃん、歩きな」

佐天「(あたし、どうなるの? ねえ、誰か助けてよ。初春、御坂さん、白井さん……)」

男A「おい! 早く中に入れろ!」

男B「わかってるっての! お前こそ車くらいこっちに回しておけよ!」バタンッ

男A「誰にも見られてねえよな?」

男C「ああ、問題ねえ」

男A「よし、出すぞ」

キュルルルル ドンッ! ブオンブオン ブォーン


――

 屈強な三人の男に連れ去られる佐天。誰もその姿を見ていないかと思われた。しかし……


  !?


ホジホジ フーッ

??「おいおい、マジかよ。ったく、この忙しいのによ……」

??「こんなの見ちまったら……」

??「見過ごせねーよなー……『漢』として……」

??「――いや、『……』としてなぁ!?」

――車中

男C「今日も楽勝だったな」

男B「ぼろい商売だぜ。適当に女攫ってけば金がもらえるんだからよ」

佐天「(どうしよう。私、このまま売られちゃうのかな)」

男A「おい、無駄口ばっかり叩いてないで、しっかり見張っとけよ」

男B「うるせえよ! このガキ、無能力者っぽいから大丈夫だって」

男C「ほとんど抵抗してこなかったしな。真面目な無能力者は楽で助かるぜ。ハハッ」

佐天「(無能力者……あたしに力があれば……こんな奴ら……
    って、そんな事考えても仕方ないよね。本当になんでこんなことに……)」

男B「なあなあ、そう言えばよ、山崎んとこのチームが潰されたってマジか?」

男C「昨日のあれか。なんでも『鬼』にやられたらしいぜ。笑っちまうよな」

男B「どうせクスリでもやってテンパってたんだろ? あいつらジャンキーばっかりだからよ」

男C「だろーな。ヘッ、何が『鬼』だ。笑っちまうぜ」

佐天「(鬼……もう幽霊でも鬼でも、何でも良いから……助けてっ!!!)」


 救いを求める佐天。しかし、その心の声を聞く人間は誰もいなかった。だが……


キキーッ! ドーンッ! ガシャン!

男ABC「うおおおお!」

佐天「んーんー!(ちょっと、何これ!何があったの!?)」

男B「おい、A! どうしたんだ!」

男A「原付が急ブレーキかけやがって、こっちにぶつかりやがった!」

男B「ああ!? なんだそれ……って、おい!」

男A「どうし――」


ガシャン! ベキベキベキッ!

男A「があああああっ! なんだ、なんだこれ!」

??「てめーら……中坊連れ込んで何してんだぁ!? こらぁ?」

男BC「なんだこいつ! Aを離しやがれ!」

??「離せだぁ? 良いぜ。離してやるよ」

ミシミシッ ガシャガシャガシャッ!

男A「あ、あ、あ、がああああああ!」

――ドーン!


男B「なっ……フロントガラスから、無理やり引っ張って……」

男C「外に……投げとばした!?」

??「お望み通り、離してやったぜ。んで、てめーらはどうして欲しいんだ?」

男B「な、なんだこいつは……能力者か!?」

男C「そんなことより、こいつやばいぞ! さっさと始末しねーと!」

バタンッ ダダッ

??「おー。わざわざ車から降りてくるたぁ、気合入ってんじゃねーか。でもよ……」

男B「うるせえ!死にやがれ!」

シュッ! シュッ!

??「たかだか光モン一つで俺に勝てるわけがねーんだよ!?」

バキッ! ゴスッ! ミシミシミシ バキッ!

男C「おい、B! ――お、お前、能力者か!?」

??「能力者だぁ? そんなの知ったこっちゃねーんだよ」

??「俺はなぁ、てめーらみてーに、女を拉致るようなクソヤロー共が気にいらねーんだよっ!」

ガシッ

男C「ひっ! ひぃっ!」


??「だからよぉ、『漢』として……『一教師』として……
   おめーらに『教育的指導』ってのをしてやるぜ!?」





鬼塚「――この、鬼塚英吉様がよぉ!?」




http://www.youtube.com/watch?v=iCZ2DR80Xb0&feature=related



―――GTO GAKUENTOSHI 7 DAYS WAR―――

【8月27日金曜日】
――吉祥学園屋上入り口

鬼塚「あーあー、夏休みももう終わりかぁ。
   入院したり湘南行ったりで結局何もできなかったぜ」

ピコピコ ザシュッ ザシュッ

鬼塚「九月になったら、まーたあのハゲ教頭の顔見なきゃなんねーんだよな」

ピコピコ ドンッ ドンッ ダダダダダダッ

鬼塚「DMC4も飽きたな……また吉川んとこから何かパクってくるか」ゴロン

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふーっ。あー、煙草もあと二本しかねーしよー。金もねーし。
   また冬月ちゃんに借りるとすっか……って、貸してくれるよな?」

鬼塚「ふわぁーあぁっと。眠ぃな。することもねーしなぁ。寝るか」

ぐがー がー すぴー がー


 不貞寝する鬼塚。だが、人気のない学校に響く音が……

――カツーン カツーン カツーン


     !?


……か先生

??「鬼塚先生」

鬼塚「ぁん?」

理事長「おはようございます。鬼塚先生」

鬼塚「ああ、理事長。おはようございます。よっと」

シュタッ

理事長「そのヘッドスプリング……相変わらず元気そうね」

鬼塚「そりゃ、この鬼塚英吉22歳独身は吉祥学園のヒーローですから!」

理事長「あらまあ。ふふっ」

鬼塚「そんなことより、どうしたんですか? 今日は職員会議とかないっすよね?」

理事長「ええ。今日は鬼塚先生に折り入って頼みがあって」

鬼塚「ちょっと、理事長! それは無理です!」

理事長「あら、なんでかしら?」

鬼塚「だって、理事長の頼みって、いつも面倒な事ばっかりじゃないっすか。
   終わってみたら、いつも怪我してるし、あのハゲに説教されるし、金はないし、
   夏だってのに、パツキンのチャンネーと出会いはないし、童貞捨てらんねーし……」

理事長「あら残念。今度の出張は女子『校』にも行ってもらおうと思ったのに……」

鬼塚「 『!?』 」

理事長「今回は学園だけの問題じゃないから、ボーナスだって出るのに……
    ほんと残念ねぇ。仕方ないから、袋田先生にでも頼もうかしら」

鬼塚「ちょっと待ってください理事長! 女子『高』ってマジっすか!?」

理事長「ええ、女子『校』よ。まあ、共学の学校にも回ってもらうことになりますけどね」

鬼塚「……ボーナスっていくらくらい出るんですか?」

ピピッ

鬼塚「指二本って……まさか二十万!?」

理事長「いいえ。二百万よ」

鬼塚「に、に、ににににににににひゃくまんだぁ!?」

理事長「ええ。今回は文部科学省の方からの依頼でもあるから、額が大きいのよ」

鬼塚「(二百万ありゃ、龍二と冬月ちゃんに借金返しても、まだ余るぞ……
    それに女子『高』?高校生ってこたぁ、ミニスカから出るあの太股……
    透けるブラジャーに、揺れるパイオツ……中坊とは違うあのカラダで……

    ??「あたし先生のことが……」パラッ
    鬼塚「お前、そんなに俺の事が……」ガッ
    ??「あんっ。先生、そんなとこ……あっ! だめっ!」

    ……なんてこともあるかもしんねーぞ!? ヒトナツの思い出作りってやつでよぉ。
    そしたら童貞も捨てて、女子高生の彼女とあんなことやこんなことを毎晩……)」

理事長「それじゃ、鬼塚先生は無理ってことで。袋田先生探さなきゃいけないわね」

鬼塚「――理事長、待ってください」

理事長「ん? 何かしら、鬼塚先生」

鬼塚「この不肖、鬼塚英吉。今まで理事長からのご依頼を断ったことがあったでしょうか?
   それに、文部科学省からの依頼ともなれば、吉祥学園のヒーローとして、
   いや、教育界のヒーロー鬼塚英吉として、是非その任務を遂行させて頂きますよ!」


理事長「あら、さすが鬼塚先生! 頼もしいわ。それじゃ、これ」

パサッ

鬼塚「ん? 学園都市視察計画?」

理事長「そうよ。詳しいことはそこに書いてあるから読んでおいてくださいね。それじゃ」

カツーン カツーン カツーン

鬼塚「って、ちょっと理事長!? まぁ、いいか。二百万に女子高生……
   夏休みの終わりにビッグチャンスの到来かぁ!? 俺もとうとう……」

   ??「鬼塚先生、あたしの初めて……もらって欲しいの」
   鬼塚「お前……大丈夫だ。優しくすっからよぉ……」
   ??「あんっ! 先生! 先生っ!」

鬼塚「童貞卒業だああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


――――


【9月5日日曜日 一日目】

――学園都市

 借金のカタに愛車を龍二に奪われた鬼塚は、電車とバスを乗り継いで、学園都市にやってきた。
 
鬼塚「ここが学園都市か……って!」

   !?

キャッキャッ チョットサテンサン!

鬼塚「青い縞々パンツ……ガキかよ……
   でも、着いた早々にパンチラを拝む事になるなんてよぉ……」ジーン

鬼塚「こりゃ、可愛い女子高生と、少し遅れた
   『ヒトナツのランデブー』って奴ができるかもしんねーなぁ?」

鬼塚「とりあえず、荷物が邪魔だから、宿舎ってとこに行くとすっか」


――宿舎

鬼塚「ここか……結構良いマンションじゃねーか」

ガチャ

鬼塚「お! ベッドもあるのかよ! ったく、理事長もこういう部屋用意してくんねーかな」

ドサッ バサバサ ゴソゴソ

鬼塚「荷物の整理も一応しとくか。適当に持ってきたけど、足りねーもんはねーよな……
   ん?おいおい。こんなもんまで持ってきちまったのかよ。
   って、こりゃ、綾波の限定フィギュアじゃねーか! なんでこんなとこに……
   適当に詰め込みすぎたな。まあ、困るこたぁねーか」

ガラッ キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。部屋ん中は禁煙だってのが、めんどくせーな。
   まあ、ベランダで一服ってのも乙なもんか」

鬼塚「よし。とりあえず、この街のチャンネーでも見に行くか!」


――街中

鬼塚「しっかしよぉ、なんか小奇麗な街じゃねーか」

ウィーンウィーンウィーン

鬼塚「うおっ! なんだこれ? 掃除してんのか? おいおい……
   すげー街だな。こいつは、エヴァの世界にもねーんじゃ……」

たゆんたゆん

鬼塚「 『!?』 」

たゆんたゆん たゆんたゆん

鬼塚「(なんだあれは……あの揺れ方……トロ子と同じくらいあんじゃねーか!?)」

……コノリセンパイ  ……ジュンカイノコースハ ……マイゴノレンラクガ

鬼塚「学園都市……こいつぁ、やばい匂いがするぜぇ!?」ジュルリ

――路地裏

鬼塚「ほー。表通りに比べて、路地裏は結構暗いじゃねーか」

キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。喫煙所がねーってなんだよ。灰皿くらい設置しといてくれよな。
   それにあの変な腕章つけた、チンチクリンのガキんちょ。
   偉そうな喋り方しやがって。何が『ここは禁煙区域ですの!』だ。
   ったく、煙草もおちおち吸えねーんじゃ、早速やる気がなくなってくるぜ」

キャー! ヤメテ! マテッテ オラオラ

鬼塚「ん? なんだ?」

バタバタッ ガンッ ニゲンジャネーヨ
  
女子「助けてください!」


   !?


鬼塚「(こりゃ、結構上玉じゃねーか! さっきの子とは言わないが良い乳して……)
   って、んな事考えてんじゃねーよ! どうした!?」

女子「あの人達が! 急に!」ハァハァ

鬼塚「なんだぁ?」


モヒカン「おいおい、逃げんなよ!って、なんだこいつ?」

ドレッド「あん?どうした?」

モヒカン「いやよぉ、追ってきたら、なんかこいつが居やがってよ」

ドレッド「金髪にピアス?って、今時Vバングかよ!ハッ、だせえ」

――ピキッ

モヒカン「YAZAWAってヤツを真似してんじゃねーの?いつの時代だよ」アハハハ


――ピキピキッ


鬼塚「おいおい、てめーら。さっきから黙って聞いてりゃ人のことだせーだのくせーだの……
   あげくの果てには、永ちゃんをバカにしやがってよぉ?」

モヒカン「あん? お前に用はねーんだよ。そっちのねーちゃん寄こせや」

ドンッ

鬼塚「おっ! てめー、俺押しのけようなんざ――」

モヒカン「おい! 早くこっちこいや!」

女子「いやぁぁぁあぁぁぁあぁ!!」


ガシッ!


モヒカン「なんだ!? お前、人の事掴んでんじゃねーよ! 殺すぞ!」

ドレッド「あー! わかった! そいつ、正義の味方のつもりなんだよ」


プッ ギャハハハハ


モヒカン「正義の味方だぁ? うぜーから、さっさとやっちま――」

ヒュンッ! ガンッ! メリメリッ!

ドレッド「なっ……モヒカンの顔が、コンクリの壁にめりこんで……」

鬼塚「おい……ショッカーだか怪人二十面相だか知らねーけどよぉ……
   正義の味方の俺を差し置いて、そこの可愛いねーちゃんとイチャイチャ――
   
   じゃねぇ。
   
   無理矢理連れて行こうなんざ、百年はえーんだよ!」

ドレッド「この野郎、能力者か!? ぶっ殺してやる!」シャキンッ

鬼塚「警棒か……そんなおもちゃで、この鬼塚様のタマァ獲れると思ってんのかぁ?」

ボコッ ゲシッ バキッ!

ドレッド「うああああああああああ!! 骨が骨が骨があああああ!」

鬼塚「ケッ。どの街にもこういうザコはいやがるな。
   おい、ねーちゃん、大丈夫か?」

女子「は、はい! 助けてくれてありがとうございます。あっ!」


   !?


ガキンッ!


鬼塚「がっ!」 バタン

金髪パーマ「おいおい、なんだよこいつは……」

ザコA「どうしたんですか?」

ザコB「って、ドレッド君にモヒカン君がやられてるじゃないっすか!」

金髪パーマ「このVバングがやったみたいだな。邪魔しやがって」ペッ

ザコC「とりあえず、女連れてアジトに戻ります」

金髪パーマ「ああ。ついでにドレとモヒも回収してやれ」

ザコC「了解です!」

金髪パーマ「俺はもう少しこいつと遊んでいくぜ……ケケッ」

女子「いやぁ! やめて!」

ザコC「うるせえんだよ!」

ドカッ! バタン


金髪パーマ「あんまり傷つけんじゃねーぞ。商品なんだからよ」

ザコC「はい」

鬼塚「(……金属バットかなんかか? 痛ぇじゃねぇか……)」モゾモゾ

金髪パーマ「さぁて、久し振りに出張ったんだからな。サンドバッグになってもらうぜ!」


ブンッ!


――


――廃ビル

ザコA「リーダー! 女連れてきました!」

リーダー「おう。『箱』ん中に入れとけ。手錠忘れんじゃねえぞ」

ザコA「わかりました」

リーダー「ん? おめぇら、金パとモヒとドレはどこいったんだ?」

ザコB「それが、邪魔が入りまして……」

ザコC「モヒカン君とドレッド君は怪我したもんですから、治療を」

リーダー「邪魔されて怪我しただぁ? ザコが! 使えねぇ野郎だな。
     んで、金パはどうしてんだぁ? あいつもやられたのか?」
     
ザコB「いえ、金髪パーマさんは、邪魔した野郎に『ノック』入れてます」

リーダー「『千本ノック』か。あいつも飽きねぇなぁ。まあ、いい」

ザコB「そろそろ戻って来ると思います。今日は『足』持ってますし」


――ドドドドドッドッドッドッドッドッド ドルンッ

リーダー「戻ったようだな。俺んとこに来いって言ってこい」

ザコC「わかりました」

タッタッタッタ バキバキバキッ! メリメリッ!


――ドーン!


リーダー「あぁ!? なんだ!?」




鬼塚「よぉ。てめーら……ちょっくら家庭訪問させてもらうぜぇ!?」


リーダー「家庭訪問だ? 何言ってやがる! ジャッジメントか!?」

鬼塚「さっきから能力者だとか、ジャッジメントだとか、なんだよそれはよぉ?
   女ぁ拉致るわ、だせーだのくせーだの、頭が悪ぃだの好き放題……
   しかも俺様の頭を金属バットで殴りやがってよ。これ以上馬鹿になったらどうしてくれんだぁ!?
   てめーらやっぱりショッカーの怪人なんじゃねーのか?」
   
リーダー「わけわかんねえ事言ってんじゃねえ! ぶっ殺すぞ!」

鬼塚「あー、これだからザコはよぉ……みんな同じ台詞しか言わねーんだよな。
   中の人は楽かもしんねーけど、作者の手抜きがばれちまうぜ?」
   
リーダー「うるせえ! お前らぁ! 集合しろ! おい、B!『箱』の周りの奴も呼べ!」

 ザザザッザ ダッダッダ ドタドタドタ

リーダー「ヘッ! どうだ? 俺のチームは50人以上いるんだぜ?」

――ホジホジ フーッ

鬼塚「あのなぁ、たかだか50人くらいで――」

 バキッ!

リーダー「なっ!?」

鬼塚「そんなに調子こいてっとよぉ――」

 ドカッ! メリッ! バキッ!

ザコX「てめえ!!!」

 ブンッ ガシッ

鬼塚「このスキンヘッドのデブみたいによぉ――」

 ミシミシッ!

ザコX「がはっ」

鬼塚「『地獄』見る羽目になるぜぇ!?」

 バキバキバキッ!!!!

ウオオオオオ! カカレエエエエエ! コロスゾォ!?

――ドーン!

――バキバキッ!

ナンダコイツ バケモンカァ!? ゼンインデカカレ!

――ドコッボコッガキン! ミシミシミシ……バキッ!

鬼塚「おいおい。自慢のチームってのはこんなもんかぁ?」

リーダー「嘘だろ……? 50人以上いたのに……」

鬼塚「ほらほら! 早く逃げねーと、食っちまうぜぇ!?」バキッ

リーダー「はっ! まさか、『肉体強化』か!? おい、『あれ』を作動させろ!」

――ウウィーン キィーン キィィィィーーーーン

リーダー「能力者ならこれで……って、な、なんでだ!」

鬼塚「だからよぉ……能力者とかわかんねーんだけど、何なんだぁ?」

リーダー「お前、一体……何者なんだああああ!!」ブンブン

鬼塚「うおっ! いきなり光モン振り回すんじゃねーよ!」ガシッ

リーダー「ぐわっ! お前……がっ! 腕が……腕があああ」ミシミシミシミシ


――ボキッ! カランカランカラン

鬼塚「ったく。最近のガキはすぐに光モン出しやがる」カツーン

リーダー「腕がああああああああ!」

鬼塚「あー、クソ。頭痛ぇ……って、おい! 血ぃ出てるじゃねーか!」

リーダー「はぁはぁ……お前……一体何者なんだ……」

鬼塚「あぁ!? いいぜ……教えてやるよ」


キンッ シュボ パチン



鬼塚「湘南の鬼爆……その『鬼』の字だよ!?」ドカッ


――バタン


鬼塚「ふぅー。やっと片付いたか。ったくよぉ、初日からこれかよ。
   そういや、あの可愛いチャンネーはどこ行ったんだ?」
   
キョロキョロ

 廃ビルを一通り見渡した鬼塚は、奥の扉から外に出た。そこに、カーゴスペースに
 巨大なスピーカーを積んだ、真っ赤なワンボックスカーを見つけた。

鬼塚「だせぇ車だなぁ、おい。今時こんなの流行らねーぞ」

 車に近づく鬼塚。だが――

ザコA「お、お、お、お、お、おまえええええええええええ!!!」

鬼塚「うおっ! なんだこいつ! まだ残ってたのかって……お前、大丈夫か!?」

ザコA「おまおおまああああえええええええええええええええええ!!!!」

ダダダッ ガンッ!

鬼塚「って……なんだこいつはぁ!?すげー馬鹿力……!?
   こりゃ、ヘナチョコ龍二並のパンチじゃねーかよっ!?」


ザコA「ガガギグギギガッァグゲエッッッゲゲガアガガ!!!!」

鬼塚「こりゃ、ちぃっとばかし……やべーかもしんねーなぁ?
   この様子……クスリでもキマってんじゃねぇのか!?」
   
――ミシッ ミシッ ミシミシミシッ!
   
鬼塚「うらああああああああああああ!!!!!!」バキィッ!



――ドーンッ ドンッ ドンッ バタン


鬼塚「はぁはぁ……んだってんだ……危なかったぜ……」

――キィィィィーーーーン

鬼塚「あ? そういや耳障りな音もするしよぉ……このスピーカーか?
   って、うわっ! このワンボックス……今時ウィングつけてやがる」
   
ドンッ! ドンッ! バキバキバキッ! ――プシュー

鬼塚「静かになったぜ……で、女子高生、女子高生っと」


――ガシャン

 ワンボックスの横に回り、ドアを開けた鬼塚は、数人の女子高性を見つけた。

鬼塚「あー、ここにいたのか。ってみんな寝てるじゃねーかよ。大丈夫なのかぁ?
   手錠までつけられちまってよぉ。――おっ! この子!
   ピンクのレースじゃねーか!! 最近の女子高性はこんなのを……って!」
   
??「――ッジメントですの! って……なんですのこれは!」

鬼塚「やべっ! 誰か来やがった! 初日からこんな事やっちまって……
   理事長にチクられたら、ボーナス出なくなっちまうじゃねーか!
   さっさとフケねーとやべーな……」

   
ダッダッダッダ バタバタバタ 


鬼塚「(女子高性のパンチラ……もっと眺めてたかったのによぉ……
    しゃーねー。部屋に戻ったら、冴島からもらった女子高性モンでも見るか……)」

ダッダッダッダ

鬼塚「ああああ、クソ! こんなんなら、さっきの単車持ってくるんだったぜ!」


――

??「――わかった。所詮はスキルアウトだ。しかもあの程度のチームではな」

――デスノデ ――ヨテイヨリスコシダケ ――ヨロシクオネガイシマス

??「邪魔する奴は……」


   !?

   
   
??「始末しなければならないな」





【9月5日日曜日 一日目終了】

【9月6日月曜日 二日目】

――宿舎

鬼塚「よし。そろそろ行くとすっかな」

キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。昨日は散々な目に逢ったからな。今日こそ女子高性と……
   たしか、今日は……っと。公立の学校の見学だったよな。
   常盤台とかって女子『高』は木曜からかー。まあ、お楽しみは残しておくか」

――柵川中学 職員室

鬼塚「あのー? 吉祥学園から来た鬼塚ってモンなんすけど」

教員「あ! 鬼塚先生ですね! お話は伺ってます! なんでも非行問題の権威だとか」

鬼塚「け、け、権威ぃ!? ――は、はい! 私、鬼塚英吉22歳独身!
   今まで数々の非行生徒と心を通わせ、様々な問題を解決し――」
   
教員「まあまあ、そんなに固くならないでください。普段通りにしてくださいね」

鬼塚「はぁ、まあ、そういうことでしたら……
   っつーかさぁ、この街どうなってんすか? 真面目そうなガキばっかかと思ったら
   なんか変なガキのチームもあるし、能力者だとかジャージャーメンだとか……」
   
教員「ああ、風紀委員ですね。簡単に言ってしまえば、
   能力者の生徒達による風紀委員――自警団みたいなものですよ」


鬼塚「カーッ! なんだか、偉そうな名前なんですねぇ……
   んで、能力者っつーのは何なんすか? サイコメトラーEIJIみたいな? ははっ」

教員「サイコメトリーも能力の一つですね。というか、能力についてご存知ないんですか?」

鬼塚「って!! マジっすか!? マジでサイコメトラーがいるんすか!?」

教員「ええ、はい。能力についての資料はお渡ししてあるって聞いているんですが……」

鬼塚「あ、あー、はいはい! 資料ですね! はい!
   (やべーな。資料なんか最初の方読んだだけだからな……)」
   
教員「まったく、鬼塚先生は冗談がお上手なんですから」

鬼塚「あ、あはは……(おいおい、冗談じゃねーぞ。なんだよ超能力ってよぉ……)」

教員「とりあえず、今日はこの街に慣れて頂くために、街の説明と
   明日明後日は我が校で教鞭を取って頂く事になります」


鬼塚「はぁ。んで、普通に授業すればいいんすかね?」

教員「授業自体は、鬼塚先生のやり方でやって頂ければ結構です。
   ただ、放課後の方を重視して頂きたいと思いますので……」

鬼塚「(放課後!? おいおい、マジかよ!? 中坊と放課後の……
    さすが学園都市だ。中坊と教師の放課後課外授業を認めるとはよぉ!?)」

教員「あの、鬼塚先生?」

鬼塚「あ、はいはい! この教育界のヒーローこと、鬼塚英吉にお任せください! ハッハッハ!」

教員「よろしくお願いしますね(――ちょっと不安になってきた……)」

――夕方

教員「では、この街と学園の説明はこんなところです。明日からよろしくお願いしますね」

鬼塚「はい! 任せてください! (やべーな、ほとんど覚えちゃいねーや)」

キンッ シュボ パチン

鬼塚「ふぅー。一仕事終えた後の煙草は美味ぇなぁ。
   とりあえず、することもねーしなぁ……街でもぶらついてみっかな」

――イヤアアアアア!

鬼塚「あん? 何か叫び声のような……あっちか?」

 誰かの叫び声を聞いた気がした鬼塚は、路地裏を覗いて見た。
 すると、三人の男が、制服姿の女の子を無理矢理連れて行こうとしているところだった。

鬼塚「おいおい、あれは、ちぃっとばかし剣呑な雰囲気じゃねーか」

 男達の様子を怪しいと思った鬼塚は、その後を追った。
 そして、ワンボックスカーに連れ込まれる佐天を目撃し、再び事件に巻き込まれるのだった……


――
 
ホジホジ フーッ

鬼塚「おいおい、マジかよ。ったく、この忙しいのによ……(ビール飲みてぇな)」

鬼塚「こんなの見ちまったら……」

鬼塚「見過ごせねーよなー……『漢』として……」

鬼塚「――いや、『一教師』としてなぁ!?」


――


鬼塚「とは言ったものの、足がねーと見失っちまうぞ!?」

ブンブン ブン

鬼塚「お、いいところに。おい、ちょっとお前こいつ貸りるぞ!」

学生「え? って、ちょっと、うわっ!」バタン

鬼塚「ワリーな!」

ブンブンブン ブーーーーーーーーーーン

学生「ちょっと待て! 泥棒!」


――


ブィーーーーーーーーーーーン

鬼塚「しっかし、また誘拐かよ。どうなってやがんだこの街はよぉ!?」

鬼塚「おっと、あのワンボックスだな。どうすっかなぁ……
   とりあえず前に出て無理矢理止めちまえばいいよな」
   
ブンブン ブィーーーーーーーーーーーン


そして鬼塚は、佐天を連れ去ったワンボックスに体当たりをし、見事車を止める事に成功した。

――


ザザッ コチラアンチスキル ゲンジョウハ……

初春「佐天さん!」

佐天「あっ、初春!」

初春「良かった。無事だったんですね! 事故があったって連絡聞いて……
   佐天さんの名前が出た時は心臓が止まるかと思いましたよ」

佐天「あはは。初春ごめんよ。でも、もう大丈夫!」

黒子「一体どういう事ですの? なぜ佐天さんがこんな車に……
   それにあそこで怪我をしている彼ら。見たところスキルアウトのようですが」

佐天「実は、私誘拐されちゃって。えへっ」

初黒「えええええええっ!!!」


佐天「それで誰か助けてーって思ったら、車が止まって、男の人達が降りていって……」

黒子「ちょっと佐天さん! その説明じゃ要領が掴めませんの!
   もっと順を追って説明して頂きませんと、調査も何もできませんのよ」

初春「とりあえず、支部に戻って、そこで固法先輩も一緒に」

黒子「それがいいですわね。それでは、佐天さん。支部でゆっくり聞かせてもらいますのよ!」

佐天「あはは。ごめんなさい。それじゃあ、支部で――」

――

――第一七七支部

固法「はい、ホットミルク」

佐天「ありがとうございます! 固法先輩」

固法「とりあえず、事情はわかったんだけど、その男の人は一体何者かしら」

黒子「走っている車にバイクをぶつけて止めるなんて……野蛮過ぎますの」

初春「野蛮というより、人間技じゃないですよね。それにスキルアウトの人達を一瞬で……
   しかもフロントガラスを破るなんて、きっとゴリラのような人ですね」

佐天「私も見たわけじゃなくて、声が聞こえただけなんだよね。
   静かになって、ドアが開いたと思ったら、西日のせいで顔が見えなかったし……」

初春「でも、声は聞いたんですよね?」

佐天「うん。特徴のある喋り方だったし、もう一度声さえ聞けばわかると思うんだけど」

黒子「声だけですと、今のところ調べようがありませんの」


固法「とりあえず、今日のところはもう良いわ。佐天さんありがとう。
   初春さんも今日はもう上がっていいわよ。佐天さんを送ってあげて」

初春「はい! それじゃあ、お先に失礼しますね」

佐天「それじゃおつかれさまでしたー! ――初春、お腹減ったよー」

バタバタ

黒子「まったく……あんな事件に巻き込まれたばかりだっていうのに、
   佐天さんは本当に元気ですこと。まあ、落ち込まれてしまうのも困りますけど」

固法「たぶんみんなに心配かけないようにしてるんだと思うわ。
   この前の事件もあったしね……だから本当は今も怖くて仕方ないと思うの」

黒子「なるほど……だから初春を付けたのですのね。
   さすが固法先輩ですの。私、そこまで気がまわりませんでしたわ」

固法「よーし、それじゃ私たちは、例のスキルアウトの身辺調査をするわよ!」

黒子「はいですの!」

――

――鬼塚の宿舎

鬼塚「ったくよぉ……昨日といい、今日といい、この街はなんだぁ?
   最近じゃ、女の子拉致んのが流行ってんのか?あぶねー街だな」

 夕方、幹線道路で三人の男を片付けた後、鬼塚は車の中にいる少女に声をかけた。
 怯えていたが、怪我はないようだったため、自分で通報しろよと言って、
その場から立ち去った。「借りた原付」が壊れた以上、このままここにいたら問題になる。
そう判断して、現場から離れ、コンビニで弁当を買い、部屋に戻ったのだった。

鬼塚「確か、学校で聞いた話じゃ、スキルアウトがどうこうって言ってたよな。
   ヤンキーみてーなもんだって話だけど、ありゃやりすぎだな」

プシュッ ゴクゴク

鬼塚「ぷはぁー!運動の後のビールってのは、なんでこんなに美味ぇんだろうなぁ。
   しかし、あのヤンキー共をなんとかしろったってよ。情報もねーしな……
   まあ、とりあえず明日になったらガキ共に聞いてみっかな」


鬼塚「しかし、せっかく出張に来たんだから、何か美味いモンでも食いてぇな。
   こんなコンビニ弁当なんかじゃ、いつもと変わんねーしなぁ。
   早いとこ女子高生の彼女を作って、手作り弁当でも作ってもらうっきゃねーな!」

モグモグ ゴクゴク

鬼塚「んで、食後のデザートには……ぐふっぐふふっ」

――


――佐天の部屋

佐天「うーん、食べた食べた。余は満足じゃー」ポンポン

初春「もう、佐天さん。お行儀悪いですよ!お腹叩いたりして……」

佐天「いいじゃん。初春の作ってくれたご飯がおいしかったんだから!」

初春「はいはい。ありがとうございます」

佐天「あー! なんか適当だなぁ」

初春「そんな事ないです! 全く……」

佐天「……」

初春「佐天さん、どうかしました?」

佐天「え? あ、いや、なんでもな――」

初春「なんでもなく無いです! 佐天さん! 何か隠してますね?」

佐天「隠し事なんて無い無い! あたしと初春の間に隠し事なんてないよー」

初春「そんなこと言って……でも、何か言いたい事があるんじゃないですか?
   私には佐天さんの悩みとか辛いこととか、何でも言って欲しいんです」

佐天「初春……」

初春「だって、私たち、親友じゃないですか」

佐天「う、う、ういはるぅうぅぅぅう!!」

ガシッ

初春「ちょ、ちょっと佐天さん!? 急にどうしたんですか?」

佐天「本当はね、凄い怖かったの! 能力も無いから何もできないし……
   何もできなくて、どうなっちゃうんだろうってずっと思ってて……」

初春「……」

佐天「もしかして、もうみんなに会えないんじゃないかって……」

初春「佐天さん……もう大丈夫ですよ」

 初春は、泣きじゃくる佐天の頭を優しく撫でていた。
 そして佐天は、初春のその優しさに、ただただ涙が止まらなかった。
 
【9月6日 二日目終了】

【9月7日火曜日 三日目】

――宿舎

鬼塚「ふわぁぁあ・・・ねみーなぁ、おい。
   ったくよぉ、なんでこんな朝っぱらから起きなきゃなんねーんだ」

 普段は吉祥学園理事長が用意してくれた、「グレートなペントハウス」に住んでいる鬼塚は
かなり遅く起きても、遅刻することはほとんどない。いざとなれば、吉川や菊池達が起こしてくれる。
 しかし、今は学園都市が用意した宿舎だ。学校までは距離がある。
 
鬼塚「とりあえず、飯はコンビニで買えばいいよな」

 キンッ シュボ パチン

鬼塚「しっかしよぉ、これからガキの相手するとなると、気が重いぜ」

――


――通学路

佐天「うーいーはーるっ!」

バサッ

佐天「えっ! 短パン!」

初春「佐天さん甘いですよ・・・今日の一時間目は体育ですからね。
   さっき家に帰った時に履いてきたんですよ」

佐天「そうだった・・・すっかり忘れてたよ。――あ!」

初春「どうかしたんですか?」

佐天「体操服忘れちゃったーえへへ」


初春「えへへじゃないですよ!早く取りに戻らないと!」

佐天「もう、めんどくさいなぁ・・・
   それじゃ、ひとっ走り行ってきますか! 初春は先に行ってていいよー!」

初春「はーい。佐天さん遅刻しないようにしてくださいね」

佐天「わかってるって。じゃあ、また後でねー!」

トットットット――

初春「まったく佐天さんは・・・でも昨日の事を引き摺ってないみたいでよかったです」


――教室

教師「それじゃ、出欠取るぞー。えー」

アカイー ハーイ イズミー ハーイ ウイハルー・・・

初春「(佐天さん遅刻になっちゃいましたね・・・)」

教師「おい、初春いないのかー?」

初春「あ、はい! います!」

教師「ジャッジメントの仕事で疲れてるのかー? ボーっとしてちゃだめだぞ」

初春「す、すみません・・・」

ツギイクゾー エトウー ウイース カキザキー ヘーイ クボター・・・


初春「(怒られちゃいました・・・ん? メール? あ、佐天さんからだ)」

   『ういはるー・・・もうすぐで教室だけど、出席取り始めてる?』

初春「(『もうすぐ佐天の番で・・・って、今名前呼ばれましたよ・・・』送信、っと)

教師「いないのは佐天だけかー? 仕方ない奴だな・・・
   ところで、今日から二日間、『外部』から研修の先生がいらっしゃる。
   このクラスの副担任になってくださるから、みんなに紹介しよう。どうぞー」

ガラガラッ! ドン!

生徒A「うお!」


生徒B「って!? 金髪!?」

生徒C「スキルアウト!?」


――ザワザワザワ


ダンッ! シャッシャッシャッ! パンッ!

生徒「(ビクッ!)ちょ、こわい・・・」

 教室に入ってきた金髪は、黒板に大きく『GTO』と書いた。

鬼塚「おう、俺が今日からこのクラスの『フクタン』になる、
   グレートティーチャー鬼塚英吉だ! おめーらよろしくなぁ!?」

初春「(な、なんですか、この人は。どっから見てもスキルアウトじゃ・・・)

教師「あ、あの、鬼塚先生・・・生徒達が・・・」

鬼塚「ん? って、おめーらそんなにびびんなよ・・・」

教師「いや、そうは言っても、その格好は・・・」

鬼塚「ああ、これっすか? アロマーニっすよ、アロマーニ!
   アルマーニのパチモンなんすけどね。全然パチモンには見えないでしょ?」

生徒D「・・・ぷっ」

――アハハ ガヤガヤ ナニアレー オモシレーゾー


鬼塚「お、おめーら笑うんじゃねえ! これでもなぁなけなしの五千円でだなぁ……」

初春「(こんな先生で大丈夫かな・・・)」

鬼塚「っつーわけでよ、二日間だけどよろしくなぁ!」

――ガラガラッ!

佐天「佐天涙子、ただ今登校しました!」

鬼塚「……」

――シーン

佐天「え? あれ? ……って! スキルアウト!? きゃあああああ!」

――ブンッ! ドン!

鬼塚「ぐはっ! て、てめえ! このグレートティーチャーの鬼塚様に何しやがる!」

佐天「え? ティーチャーって……先生!? このチンピラが!?」

鬼塚「チンピラって、この野郎! って、あれ、おめーよぉ。昨日――」

教師「はいはい。佐天、遅刻だな。早く席につけよ」

佐天「あ、はい!」

教師「おいおい、おめー、このままじゃ――」

佐天「(あれ? この声って……)」

教師「よし、それじゃ、HRはこれで終わりだ。次の授業に遅れないようになー」

――ガヤガヤ ドタドタ

>>83
下から4行目ミス

× 

教師「おいおい、おめー、このままじゃ――」


○ 

鬼塚「おいおい、おめー、このままじゃ――」

佐天「(あれ? この声って……)」

教師「よし、それじゃ、HRはこれで終わりだ。次の授業に遅れないようになー」

――ガヤガヤ ドタドタ

――着替え中

初春「佐天さん、いきなり鞄投げるなんて驚きましたよ!」

佐天「えへへ、いやぁ、昨日のスキルアウトの仲間かと思って」

初春「私達もみんな驚きましたよ。だって金髪にピアスに白いスーツなんて・・・」

佐天「だよねー。でもさ、あの声、どこかで聞いたことあるような気がしてさ」

初春「えっ? どこで聞いたんですか?」

佐天「うーん、思い出せないんだよね」

初春「しっかりしてくださいよ」

佐天「あはは。ごめんごめんって、早く行かなきゃ!」

初春「あ、佐天さん、待ってくださいよ!」

バタバタバタ


――ガタガタ バンッ

鬼塚「ふっふっふ。あのクソガキ、鬼塚様をなめやがってよー?
   しっかりと水色のブラジャー拝ませてもらったぜぇ?しかし発育よかったな……
   次の着替えの時間もロッカーに入っておくとすっかな。
   いや、それより、ここにビデオを設置した方が……」

バタバタバタ

鬼塚「!? やべぇ、誰か来やがった! クソ! もう一回中に……」


――キョロキョロ

鬼塚「(なんだぁ? あいつ、何してやがんだ?)

??「これね……まったく、無能力者のくせに生意気なのよ!」

ブチッ! タッタッタ……


――ガタガタガタッ

鬼塚「行ったか。あぶなかったぜ……って、あいつ何してやがったんだぁ?」

なんか前にも途中まで見た様な気がするんだが建て直し?

>>92
建て直しよ

んで、現在続編書き溜め中
投下ペースが思った以上に早かったからストック尽きた

――一時間目 休み時間

佐天「ふぅ、疲れたぁ」

初春「一時間目からいきなり持久走だなんておかしいですよ……」

佐天「ほんとだよね。なんで一時間目に体育なんだろって、あれ?」

初春「ん?佐天さんどうかしたんですか?」

佐天「へっへー。初春、今日は新しいの履いてるんだねぇ。
   ピンクと黒のチェックなんて、初めて見ちゃったよー。おじさん嬉しいなぁ」
   
初春「ちょ、ちょっと! 佐天さん! 変なこと言わないでください!」

佐天「あはは、ごめんごめん。初春のそれがあまりにも可愛くてさぁ」

初春「もう知りません!」

佐天「ういはる、ごめんってばーって、え? あれ? ない!」

初春「もうひっかかりませんよ!」

佐天「違うの! あたしの鞄につけてた、ストラップがないの」

初春「え? もしかして、さっき鞄投げた時に落ちたんじゃ?」

佐天「ううん。着替える時にはあったのに……あれ? これあたしのストラップの紐だ!」

初春「見せてください。これは、引っ張って切れたみたいですね。
   どこかに引っ掛けたりしませんでした?」
   
佐天「いや、そんなはずは……あ、あそこに本体が落ちてる!」

初春「見つかってよかったじゃないですか。 千切れちゃったのは残念ですけど直せますよ!」

佐天「うん、そうだね。でも、なんかついてないなー。遅刻もしちゃうしさー」

初春「そんな時もありますって! さ、もうすぐ授業始まりますよ」


――キーンコーンカーンコーン

??「(――クソッ!)」


鬼塚「(気になって様子見に来たけどよ、ありゃもしかして……)

――昼休み

初春「佐天さん、お昼ご飯食べに行きましょう」

佐天「今日はお弁当持って来てないから学食だね」

初春「早く行かないと場所なくなっちゃいますよ!」

佐天「よーし、初春ダッシュでいくよー!」

初春「あ、走ったら怒られますよ! ちょっと、佐天さーん!」

バタバタバタバタ


??「(帰ってくるまでに、次はこれを……)」

――学食

鬼塚「うおおおおお! ここの学食うめぇじゃねーかよ!」

佐天「うわ……あのチンピラの周りだけ空いてるなんて」

初春「佐天さん、先生にそんなこと言っちゃだめですよ。
   あんな格好してても一応先生なんですから……」
   
佐天「仕方ないかぁ。せんせー、そこ良いですかー?」

鬼塚「あん? って、てめーは、今朝の鞄女じゃねーか! ここで会ったが百年目……」

佐天「えへ、今朝はすいません! だからここ良いですよね! 良いですね!」

初春「佐天さん、先生に失礼じゃないですか……」

佐天「いいっていいって! だって鬼塚先生だっけ? 
   見た目はあれでも、悪い人じゃなさそうだしさ!」

鬼塚「見た目があれってなんだよ!? ったく、しゃーねーなぁ。
   おっと、そのから揚げもらったぁぁぁぁ!!」

バシッ!


鬼塚「なっ! 俺の箸を止めるだとぉ!?」

佐天「ふっふっふ。鬼塚先生甘いですね。このあたしから、から揚げを奪おうなんて百年早いです!」

サッ!

佐天「お返しに、このししゃもフライはもらったぁ!」

鬼塚「てめぇ! 俺が最後まで残しておいたししゃもクンを……
   上等じゃねぇか! このししゃもの恨み…… 俺様のさかなクン神拳で!!!」
   
初春「ふたりとも! お願いですから騒がないでください! 恥ずかしいじゃないですか!」

――チョットー ナニアレー ミナイホウガイイヨー

鬼塚「な! おめーのせいだかんな!」

佐天「ごめんなさーい。まあ、いいじゃないですか。
   可愛い女子中学生二人と一緒にご飯が食べれるわけですし!」

鬼塚「ったくよぉ……(まあ、確かにこいつの乳はまあまあだったな)」


佐天「そう言えば、自己紹介まだでしたね。あたしは佐天涙子、レベル0はでーす!」

初春「初春飾利です。ジャッジメントをしてます」

鬼塚「佐天に初春か。(レベル0っつーのは、超能力が使えないってことだよな)
   んでよぉ、気になったんだが、初春の頭の上の花、なんだそれ? 生えてんのかぁ?」

初春「……え? なんのことですか?」

鬼佐「(一体なんなんだ・・・)」


佐天「ところで、先生。昨日なんですけど、もしかして、バイクで車に突っ込んだりしませんでした?

鬼塚「!? ちょっと待て」

ガシッ

佐天「んーんーんー(何するんですか!?)」


鬼塚「(馬鹿野郎! こんなとこでそんな話するんじゃねーよ!
    誰かに聞かれて、もしチクられたりでもしたら、ボーナスでなくなっちまうだろーが!)」
    
佐天「(ボーナス?)」

初春「あ、あの! 二人とも場所変えませんか? 周りの目が……」

――サッキカラウルサイネ ナニアノキンパツ ヘンタイカシラ

鬼塚「だぁぁぁぁ! わかったわかった! おめーらちょっと付き合えや」

――校庭裏庭

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅー。食後は一服しねーとなぁ」

初春「先生、ここは禁煙ですよ!」

鬼塚「まーまー。固ぇことは言うなって。んで、佐天、何が聞きてーんだ?」

佐天「あの、もしかして昨日バイクで車止めて、スキルアウトの人達を……」

鬼塚「見てたんかぁ? ったく、しゃーねーなぁ。 おめーら誰にも言うんじゃねーぞ?」

佐初「は、はい」

鬼塚「なんかよぉ、昨日の学校の帰りに、女の子が拉致られるとこ見たから、
   こいつはいけねーなーってんで、ちぃっとばかし、通行人からバイク借りてよぉ……」
   

佐天「やっぱり! 助けてくれたのは先生だっただ!」

鬼塚「ば! ばか! おめー、でかい声出すんじゃねーよ! ばれるだろーが!」

初春「なんでですか? 佐天さんを助けてくれたんですし、むしろ知られたらヒーローですよ?」

鬼塚「だから言っただろーが。通行人からバイク借りたってよー。
   んでも、そいつぶっ壊しちまったから、ばれたら弁償しなきゃなんねーだろ?」
   
佐天「そんなことで……」

鬼塚「ただでさえ、金がねーってのに、これ以上借金作ってどうすんだよ!」

初春「……」

佐天「わかりました! とりあえず、バイクの件は内緒にしておきますね!」

初春「ちょっと、佐天さん!?」

佐天「まあまあ、初春。いいじゃないの。助けてくれたんだしさ!」

鬼塚「おー、おめーわかってんじゃねーか!」

佐天「へっへー。助けてくれてありがとうございました!」

初春「もう……あの、鬼塚先生、詳しい話を聞きたいんですが」

鬼塚「詳しい話っつっても、車止めて、ガキ共ぶん殴って、そんで終わりだよ」

初春「……」

――キーンコーンカーンコーン


佐天「あ、予鈴だ!」

初春「もう……鬼塚先生、またゆっくり話聞かせてくださいね!」

鬼塚「おうよ。おめーら、さっさといかねーと遅刻すんぞ?」

バタバタバタッ

鬼塚「ったくよぉ……次の授業は六時間目だし、昼寝でもすっかな」

ゴロン

鬼塚「(しかし、あのガキがなぁ。無能力者がどうこうとかって言ってたけどよ……)」


――

腹減ったりしてきた

本編になかなか進まんですまん


――5時間目

バタバタバタッ

初春「ふぅ。間に合いましたー」

佐天「ギリギリセーフだったねーって、あれ?」

初春「どうしたんですか?」

佐天「ちょっと! なんであたしの机の中にゴミが入ってるの!?」

初春「ええええ!?」

マコ「涙子、ちょっとどうしたのー?って、何それ! ソースまみれじゃん!」

佐天「なんで……」

初春「酷い…教科書もソースや食べかすで……」

佐天「誰!? 誰がこんなことやったの!?」

 静まり返る教室。佐天の叫びを唖然とした表情で見守る者、哀れみの視線を向ける者、
そ知らぬ顔で教科書を眺めている者。教室の中には、三種類の人間しかいなかった。


佐天「ねぇ! 誰なの! 誰がやったの!?」

教師「おい、なんだなんだ。どうかしたのか?」

初春「あ、先生! 佐天さんの、佐天さんの教科書が――」

佐天「初春! あ、いえ、なんでもないんです! ちょっとお弁当こぼしちゃって……あはは」

教師「もう授業始まってるんだぞ。早く片付けろ」

佐天「すみません。すぐ片付けまーす! じゃあ、ちょっと雑巾を……」

マコ「私も手伝うよ」

初春「私もです!」

佐天「あ、マコちんも初春も大丈夫だから。授業受けてて」

タッタッタッタ

初春「佐天さん……」


――

ジャージャー ギュッ ボタボタッ

佐天「なんで……今朝のストラップもまさか……でも、なんであたしが……」

ゴシゴシ ギュッ

佐天「あはは、雑巾絞るのってこんなに大変だったっけな……」

グスッ 

佐天「あれ、なんでだろ。涙が……」

鬼塚「おめーよぉ、雑巾絞るんだったらこんくらいしねーとよ」

サッ ギュッ ビリビリビリビリビリ

鬼塚「って、破っちまったじゃねーか!」

佐天「鬼塚先生……」

鬼塚「なんだぁ? なーに泣いてやがんだよ。可愛い女子中学生が台無しだぜ?」

――グスッ

佐天「……なんでもないです! ちょっと、目にゴミが入っちゃって。
    あ、先生雑巾破っちゃって……もう! 返してください!」
    
サッ

鬼塚「あ、コラ! わざわざ俺様が絞ってやったのにって、おい、待てよ!」

佐天「あはは! 先生! ありがとねー!」

パタパタパタパタッ

鬼塚「……佐天か。元気な奴じゃねーか。ったくよぉ、どうなってやがんだぁ?」


 教室に戻った佐天は、周りの生徒達の視線を痛い程感じながら、机の周りを片付けていた。

――5時間目 休み時間

初春「佐天さん……」

佐天「あ、初春」

初春「大丈夫ですか? 教科書とかもこんなになっちゃって……」

佐天「あ、うん。 とりあえず、次の社会のは大丈夫みたいだし」

アケミ「ちょっと、涙子ー! どうしたってのさ?」

佐天「ああ、うん。ちょっとね」

マコ「うーん、一体誰なんだろう」

初春「こんな酷いことする人が、クラスにいるなんて……」

マコ「私達は昼休みは校庭で食べてたから……」

むー「ねぇ! みんな昼休みに涙子の机に来た人知らない?」

――シーン

佐天「むーちゃん、大丈夫だから!」

むー「涙子ぉ・・・」

佐天「あはは! まあ、誰かが間違ったのかもしれないしさ! 大丈夫!」

初春「(間違えるなんて……これはどう考えても悪戯のレベルを超えてますよ)

??「(クソ……なんで平気なの? なんで、なんで、なんで、なんで……
     なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでえええええ)」


――6時間目

鬼塚「おらぁ! おめーら、鬼塚様の授業だ! ありがたく聞きやがれ!」

ザワザワザワ ナニアレー ヤッパリヘンー

鬼塚「うるぁ! うるせーんだよ!」

ガンッ!

初春「て、テレビ?」

鬼塚「おう、おめーらのためによぉ、『外部』から取っておきの教材を持ってきたぜ?」

佐天「はーい、先生! 今日はビデオ学習なんですかー?」

鬼塚「おうよ。おめーらに今から『本当の社会科』の授業って奴を教えてやんぜ?
   わざわざ俺のDVDプレイヤー持ってきたんだぜ。こいつを繋げてっと」

ゴソゴソ ウィーン

鬼塚「おーし、今から流すDVDをよーく見やがれ。これが『外部の社会』って奴だ!」


   ??「あんっ! だめ! 先生そんなところは……」
   ??「いいじゃないか。そこをしっかり見せなきゃ……」
   ??「でも、いくら身体測定だからって、こんなところまで……あんっ!」
   ??「ふっふっふ。これが大人の身体測定なんだよ……」

   
   
   
   
――『!?』



鬼塚「うおおおおおお! これは、昨日俺が見てた『制服天国~真夜中の身体測定~』じゃねぇか!
    おめーら、見んなよ! 見るんじゃねぇぇええええ!」
    
――キャー ナニアレー ムシュウセイジャネーカー コレハ

佐天「え、え、え、え」

初春「(あ、お花が! お花が!!!!!)


鬼塚「やべえ! ちょ、スイッチどこだ! おい、見んじゃねーぞ!」

――プツン


鬼塚「あー、おめーら、今のはなかったことにしてくれ。(これはさすがにマズかったぜ……)
    とりあえず、仕切り直しっつーことでよ。こいつを見せようと思ってたんだ」


――ブォン ブォン パラリラパリラ ファンファンファン

   ??「うるせーぞぉ!? おまわりがなんぼのもんじゃぁ! ぶっ殺せぇ!」

   ??「おめーらぁ! マッポにビビってんじゃねーゾォ!?」

――ウオオオオ コロセエエエエエ ヒキニクニシテヤンゾォ


佐天「あの、先生、これって……」

鬼塚「ああん? 警察24時~湘南1000日抗争編~に決まってんだろ!
    あ、この、白い特攻服<トップク>着てるのが俺だぜ? すげーだろ!」

初春「……(私のお花が……あんっ……だめぇ……)」

佐天「……(どうしよう、さっきの身体測定が頭から離れない)」

鬼塚「どーよ? 『外部』には族<ゾッキー>っつーのがいてよぉ。
   最近は少なくなっちまったけど、こうやって、毎晩、深夜の国道でな、
   寂しがり屋の暴走天使<ミッドナイトエンジェル>がよぉ……」

生徒一同「(早く終わらないかな……)」

――

鬼塚「っつーわけで、今日の授業は終わりだ!
    明日の社会科は、仁義無き抗争~三多摩連合結成~を見せてやっからよ!」

トットットット


鬼塚「おっと、忘れてた! 帰りのHRは俺の担当だったわ。
    えーと、クラス委員! なんかあっか?」

クラス委員「あ、いえ、特には……」

鬼塚「おー、そうか。んじゃ、俺から有難いお言葉を授けてやっからよぉ。
   耳の穴かっぽじって聞けよ?」
   

――スゥッ


鬼塚「文句あんなら、こそこそしてねーで、表ん出やがれ!
   正面切って文句の一つも言えねーんなら、この鬼塚様が相手になってやんぜぇ!?」
   
――シーン


鬼塚「っつーわけだ。気ぃつけて帰れよー」


――ナニイマノ エー スゴイドナリゴエ コワカッター


佐天「(鬼塚先生……今のって、あたしのために……)」

初春「凄かったですね……あ、佐天さん、帰りにクレープ食べに行きましょうよ!」

佐天「あ、うん!」

タッタッタッタ


――

??「(あのクソ教師が……コロスコロスコロスコロス!!!!!)」

――放課後

佐天「しっかし、あの鬼塚って先生、なんか凄いよねー」

初春「凄いどころの騒ぎじゃないですよ! (おかげで私のお花から……)」

佐天「ん? 何か言った?」

初春「あ、な、なんでもないです! ところで、昨日の事件も鬼塚先生が……」

佐天「ああ、そうだったね。でも今日話してみて、あの先生ならやりかねないって思ったよ」

初春「そうですね。私もあの先生なら、何をしてもおかしくないって思っちゃいました」

佐天「そうだね。あはは、あの先生見てるとおかしくって、なんか元気出るなぁ」

初春「しかし、教育委員会とかで問題にならないんですかね……」

寝れないんだけど

佐天「『外部』から研修に来るって言うくらいだから、結構凄い先生だったりして」

初春「自分で『グレートティーチャー』なんて言ってますもんね……」

佐天「なんか、あの先生の授業のおかげで、嫌な事が全部吹っ飛んじゃったよ!」

初春「そうですか、佐天さんが元気になってよかったです」

佐天「初春めー、可愛いこと言ってくれるなぁ」

初春「えへへ(でも、本当に一体誰が……)」

佐天「ん、あれって、おーい!」

初春「あれ、どうしたんですか?」

>>149
寝ろw

7DAYS WARだぞ?いつまで続くのか俺にも想像つかない

――放課後の教室

??「しかし、今日のあれでも懲りないなんて……」

??「あんな奴殺せばいいのよ!コロス殺すコロス!」

??「変態教師とも仲良くしやがって……」

??「何が正面切ってかかってこいよ!」

??「いいのよ。五人もいれば、なんとでもなるわ。あの教師も明日でいなくなるしね」

??「どうせいなくなるんだから、見向きもしないわよ。あはは」

 彼女達は、一旦教室を出た後、わざわざ戻ってくるように打ち合わせていた。
放課後の教室には、五人の女子生徒の声が、微かに響く。そして……


鬼塚「……(やっぱりロッカーの中は狭ぇな)」

――

御坂「へぇ。それじゃ、その鬼塚って先生が佐天さんを助けてくれたんだ」

佐天「そうなんですよ! ちょっと変な人なんですけどね」

初春「金髪でピアスしてて、白いアルマーニのスーツを着てて」

佐天「違う違う、アロマーニだよ! アルマーニの偽者の」

御坂「あはは! 何それ! 本当に変な先生ねぇ」

初春「ですよね。 授業でも変なビデオを見せてくるし……」

御坂「変なビデオ?」

佐天「いや、なんでもないんです! あはは……
   (ちょっと、初春! 御坂さんに内容言ったら倒れちゃうよ!)」
   
初春「(あ、そうでしたね……)ところで、白井さんは?」

御坂「黒子はジャッジメントの仕事があるとかって言ってたわね」

佐天「仕事かぁ。そう言えば、初春は大丈夫なの?」

>>151
できれば最後までつづけてくだちぃ

初春「ええ、白井さんから『今日は私達だけで大丈夫ですの』ってメールが」

御坂「へぇー。黒子が休んでいいなんて珍しいわね(二人に気を使ったのかしら?)」

初春「ほんとですよ! いつもなら『初春、いいですの? ジャッジメントというのは……』なんて」

佐天「あはは! 今の似てるー! もう一回やってよ!」

初春「『そもそも初春は、ジャッジメントとしての――

黒子「自覚が全く足りませんの! 罰として毎朝ロードワークですの」

初春「し、し、し、し、白井さーん!?」

御坂「あれ、黒子、今日は支部で調べ物するんじゃなかったの?」

黒子「その予定だったんですが、嫌な予感がしましたの。それでパトロールに。
    そしたらまぁ、こんなところで初春が私のモノマネをしてるじゃありませんか。
    それも私を差し置いて、お姉さまとクレープを食べるなんて!これは……」
    
佐天「まあまあ、白井さん。昨日の事件の情報を提供するってことで勘弁してください」

黒子「昨日の事件の情報ですの? ちょっと詳しく聞かせてくださいな」

>>154
今日中に完結は確実に無理
勢いこんで立てたは良いが、ありえんくらい長くなった

というわけで続き書き溜め

――


黒子「なるほど。その鬼塚という教員が、佐天さんを救ったと」

佐天「バイクの事は内緒にしといてください! この通り!」

黒子「仕方ありませんの。大事の前の小事とも言いますし、この際目を瞑りますの」

佐天「白井さん、ありがとう!」

黒子「いえいえ、そんなことより、気になる話がありますの」

御坂「気になる話?」

黒子「はい、最近、どうも『外部』から流れてきた、ある『物』がありますの」

御坂「ある物?」

黒子「はいですの。どうやら『自分だけの現実』を鮮明に創り出すための物だと」

佐天「え! それってレベルアッパーみたいな?」


黒子「いいえ、全く違いますの。『天使の手』<エンジェルブロウ>と呼ばれてるみたいですが、
    実際はただの錠剤――麻薬ですの。それもかなり強力な依存性を発揮するらしく」

初春「白井さんは、それを調べてたんですか? 言ってくれたら私も協力しました!」

黒子「今回は、固法先輩とペアを組んで行きましたから、それには及びませんの。
    取引現場を押さえて、事情聴取だけですので、初春の頭脳は必要ありませんでしたの」

佐天「あはは、力仕事だったわけですね……」

御坂「(まったく、黒子ったら、あんな言い方して強がっちゃって)」

佐天「天使の手かぁ。可愛い名前だからって、つい使っちゃいそうですね」

黒子「ええ。名前のせいか、女子中学生にも広まり始めてるみたいですの。
   使用したからと言って、レベルが上がるという訳ではありません。
   ただ、使用している時は、本当にレベルが上がった気になるらしいですが」
   
御坂「薬物による幻覚……そして、強い依存性。広まると厄介ね」

黒子「仰る通りですの。ですから皆さん、もし何か気付いたことがあったら、
    すぐにジャッジメントまで通報して頂きたいんですの。特にお姉さま!」

御坂「あー、はいはい。わかってるわよ。私だってそんなに厄介な事に首を――」

黒子「いいえ。お姉さまはいつもいつもそう言って、結局は――」

佐天「始まったね……」

初春「始まりましたね……」

御坂「もう! あ! そろそろ最終下校時刻だ! 帰らなきゃ!
   ってことで、佐天さん、初春さんまたねー!」
   
バタバタバタッ

黒子「あ、おねえさまぁーん! 待ってくださいですのぉ!」

シュンッ

佐天「……帰ろっか」

初春「……そうですね」

――鬼塚の宿舎

鬼塚「ふぃー。ひとっ風呂浴びた後のビールは最高だぜぇ」

ゴキュゴキュ

鬼塚「ぷはーっ! しっかしよぉ、あのガキ共は何企んでやがんだぁ?
   悪ふざけにしちゃ、度越してやがんぜ……しかも、この錠剤のマーク……」

グッ パラパラパラ

鬼塚「一時、三多摩で流行ってた『デモンズアッパー』じゃねーか?」


ガラガラッ キンッ シュボ パチン

鬼塚「静かな夜だってーのに、なんか起きてる気がするぜ……この街によぉ!?」



【9月7日火曜日 三日目終了】

とりあえず、ストックは完全に尽きた

4日目の構想は完成してるから、あとは書き出すだけ
5日目・6日目・7日目は広げた話をどう収拾するか模索中

【9月8日水曜日 4日目】

――佐天の部屋

佐天「ううん……もう朝かぁ。今日はいつもよりちょっと早いかな」

チュンチュン

佐天「雀は朝から元気だなー。私も元気を出して頑張るかな!」

ゴソゴソ トットット

佐天「とりあえず、お弁当でも作るかな」

トントン グツグツ ジャッジャー

佐天「んー、あ! そうだ! せっかくだから……ふふっ」


――鬼塚の宿舎

鬼塚「くわぁぁぁあっと。今日も朝からかったりーなー」

ガラガラッ キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぃー。ベランダでの一服も慣れてきたな……
    しっかしよぉ、この街のヤンキーの件といい、佐天の件といい、一体何なんだ」
    
ガサガサ ゴソゴソ モソモソ

鬼塚「まぁ、今日はとりあえずジーパンでいいよな。一応初日はスーツ着たしよ」

ガチャン

鬼塚「さぁてと、今日も一発、ビッと決めるとすっか!」

ダッダッダッダ

――朝 通学路

初春「佐天さん、おはようございます」

佐天「あ、初春おはよー!」

初春「佐天さん、なんだかご機嫌ですね?」

佐天「ん? そう見えるかなぁ?」

初春「はい、なんだか今日は楽しそうですよ」

佐天「んー、別にそんなこともないんだけどなぁ」

初春「そうですか? あ、鬼塚先生ですよ」

鬼塚「よぉ、おめーら。 今日も朝からかったりーな」

佐天「おはよーございます! 先生そんな事言っちゃダメですよ」

鬼塚「あぁ? だってよー、おめー、中坊の相手なんざやってらんねーんだよ」

初春「先生、そういう事言ったら元も子もないんじゃ……」

佐天「もう。それじゃ、先生にプレゼントってことで、う・い・は・るっ!」

バサッ

鬼塚「おおぉ!? 淡いグリーンに白い水玉!?」

初春「きゃああああ! ちょっと、佐天さん! 先生の前でなんてひどいです!」

佐天「あはは。いいじゃん減るもんじゃないんだからさ!」

初春「そういう問題じゃありません! あ、逃げないでください! ちょっと!」

佐天「せんせー、それじゃ、また後でねー!」

鬼塚「おー、おめーら気ぃつけろよー(うーん、マンダム!)」


??「フフ。あの子、しっかりやったかしら?」

??「やったと思うぜ? だって、あれだけ殺すコロスって言ってたんだしよ。ハハッ」

――昇降口

佐天「ねぇ、初春……」

初春「佐天さん、落ち着いてください。これは、きっと……」


 昇降口で黙り込む佐天だが、その顔は青く、そして、瞳からは涙が溢れていた。
怒りなのか悲しみなのか、体は小刻みに震えていた。
 初春は、佐天の顔と、下駄箱に書かれた文字――
 
  「無能力者」「犯罪者」「死ね」「ゴミ」
  
 を交互に眺め、自分が何をすればいいのか、一所懸命に考えようとしていた。


マコ「ちょっと! ねえ、これって!」

佐天「マコちん……あはは、なんだろうね。あたし、やっぱりダメなのかなぁ」

初春「佐天さん……」


佐天「無能力者で、レベルアッパーなんか使って、結局みんなに迷惑かけるだけかけて……
    やっぱりゴミなのかな。あたしなんてやっぱり……」
    
初春「佐天さん! 佐天さんはゴミなんかじゃありません!
    前にも言いましたよね? 佐天さんは私の親友だって!」

マコ「そうだよ! それに、涙子だけが悪いわけじゃないじゃん!
    私だってレベルアッパー使ったんだし。それに罰も補習も受けて……」
    
佐天「違うよ! マコちんもあけみもむーちゃんも……みんなあたしが巻き込んで……
    だから、だから、全部あたしが、あたしが悪いの!」

マコ「ちょっと、涙子!?」

初春「あ、佐天さん! 待ってください!」

――


鬼塚「あん? なんだか昇降口の方が騒がしいじゃねーかって、おい、佐天?」

 佐天は、鬼塚の呼びかけが全く聞こえなかったかのように、校外へと走り去った。
鬼塚はそんな佐天を眺めつつ、昇降口の様子を伺った。そこに初春の姿を見つけ、声をかけた。

鬼塚「おい、初春よー。この騒ぎは一体って、なんだぁこいつはよぉ!?」

初春「鬼塚先生! 佐天さんが、佐天さんが!」

鬼塚「あ? 佐天? これ、佐天の下駄箱か?」

初春「はい、それで、佐天さん走って……」

鬼塚「あー、よくわかんねーけど、とりあえず、初春!
    こいつを速攻で消しておけや! おい、そっちのお前、名前わかんねーけど、お前もやれ!」

初春「え、でも佐天さんが」

鬼塚「佐天の事は俺に任せておけ。おめーらは、これ片付けたら教室行けよ。
    授業に遅れんじゃねーぞ? 一応俺もフクタンだからよぉ。 んじゃ」

初春「鬼塚先生待ってくだ――鬼塚先生……佐天さんのこと、よろしくお願いします」

――

 走った。脇腹の痛みは随分前に感じなくなってしまい、今はただ、肺の苦しさを感じている。
 佐天は、学校から自宅へと向かう道を、ただひたすら、走り続け、途中で力尽きた。
そして、今は街路樹の陰でしゃがみこみ、零れる落ちる涙と嗚咽を、ひたすら抑えようとしていた。

――テン!

――サテン!

鬼塚「おい、コラァ! 佐天! どこにいやがんだぁ!?」

佐天「お、に、づか……先生?」

鬼塚「お、こんなとこにいやがったのか! おめー、朝っぱらから走らせんなよ!」

佐天「せん、せい。あたし、あたし……」

鬼塚「おう、なんだ? 言ってみろや」

佐天「あたし、やっぱりゴミなのかな?」

鬼塚「あぁん? なんだそれは?」

佐天「だって、無能力者で、レベルアッパー使って、犯罪者で、ゴミで……
    でも頑張ろうって思って……でも、もう、どうしたらいいかわかんないよ!」

鬼塚「佐天……よっしゃ、とりあえず、ちぃっとばかし、俺に付き合えや」

佐天「え?」

鬼塚「四の五の言わねーで俺に着いてこいってんだよ!」

佐天「ちょ、ちょっと、先生!?」


――学校

ガヤガヤ ヒソヒソ ネーネー エー アレハナイネー

初春「……(佐天さん……)」

コソコソ ヒソヒソ

生徒A「なぁ、今朝の昇降口見たか?」

生徒B「あー、見た見た。佐天の下駄箱だろ? あれすげーな」

生徒A「犯罪者なんて書かれてよー。あれだろ、レベルアッパー」

生徒C「あいつもレベルアッパー使ってたのか。だから犯罪者ね。納得」

生徒B「無能力者だとレベルアッパーとか、ああいうのに頼らなきゃ生きていけないのかね」

初春「佐天さんは、そんな人じゃありません! 佐天さんを悪く言う人は私が許しません!」

――シーン

初春「佐天さんは、佐天さんは……」

ガラッ

教師「おい、初春どうした? 出席取るから席につけよー」

初春「すみません……(先生、あの騒ぎ知ってるはずなのに……)」

教師「よーし、って、また佐天だけがいないのか。あいつ今日も遅刻か?」

??「先生。佐天さん、今朝走って学校から出て行きましたー」

ガバッ!

初春「(今の……あの人が!? 確かあの人は、一日から引っ越してきた……)」

教師「なんだそれは? 抜け出したっていうのか? まったくあいつは……」

初春「(まさか……いや、そんな。あの人と佐天さんは何の関係も無いはず)」

教師「まあ、とりあえず、お前らは佐天のように遅刻ばっかりするんじゃないぞ」

――トコトコトコトコ

初春「(確か、溝口さん……一応、調べて見る必要がありそうですね)」

――街中

??「はぁはぁはぁ……(どうしよう、寝坊しちゃった)」

バタバタバタ

??「あれ? もしかして、あれって佐天さん? こんな時間にあんなところに……」


シュンッ

――店内


佐天「あの、先生?」

鬼塚「大盛りつゆだく二つ頼むわ」

店員「大盛りつゆだく二丁!」

佐天「いや、先生…」

鬼塚「何があったかは、とりあえずおいといて、まずは飯だ! おめーも、食えよ!?」

佐天「いや、あたしは朝ご飯食べてーー」

鬼塚「そんなん知ったこっちゃねーよ! 俺が奢ってやるってんだから、黙って食え!」

佐天「はぁ……(仕方ない、食べよう……)」

――

佐天「うーん、もう食べれない……」

鬼塚「おー、食った食った。ごちそーさん」

店員「ありがとーございましたー」

鬼塚「よし、んじゃ、コーヒーでも飲むか」

佐天「え? 先生、学校は?」

鬼塚「おいおい、学校抜け出しといて今更そりゃねーだろ。
ここまできたんだから、最後まで付き合えよ。不良少女よぉ?」

佐天「……」

??「どこに行くんだろう……まさか、二人で!? いや、そんなことあるはずが……」

――公園

佐天「コーヒーって、缶コーヒーなんですか?」

鬼塚「うるせーな。金がねーんだからしゃーねーだろ!」

ポイッ

佐天「はぁ、ありがとうございます」

鬼塚「しかし、学校サボって公園で一服って良いもんだよな」

佐天「え?」

鬼塚「俺はよぉ、昔っからバカばっかりやってたからよ。ガキん頃から「クズ」だのなんやの、
    それはもう、社会のダニみてーに言われてたもんだ。まぁ、族だったしな」

佐天「……」

鬼塚「マッポのお世話になったことなんて、てめーらが想像つかないくらいあんぞ?」


佐天「それでよく先生になれましたね」

鬼塚「おうよ。それも、教師になろうって思ったのが、女子高生の嫁さん欲しいからだぜ?」

佐天「えええ! さすがにそれはちょっと……」

鬼塚「教師になったと思ったら中坊の担任だし、ハゲ教頭にいっつも説教されるしよ。
    クソガキ共も言うこと聞かねーし、保護者様はうぜーし、給料も安いし、出会いもねーし」
    
佐天「それなのに先生続けてるんですか?」

鬼塚「そーなんだよ。なんつーかよぉ、ガキ共と話してっといっつも思うんだけどな。
    俺もガキ共も変わんねーんだよ。俺がガキだってだけじゃねーぞ?勘違いすんなよ」
    
佐天「……」

鬼塚「ガキだろうが、大人だろうが、かったりー時はあるし、サボりたくなる時もある。
    寂しい時もありゃ、悲しい時もある。泣きたくなる時だってあんだろーよ」

佐天「……はい」


鬼塚「んでもよぉ、俺みてーにクズクズって言われ続けたような奴でもよ。
    ダチ公ってのがいるんだよ。やべーってなった時に手差し伸べてくれるようなさ」

佐天「わかります。鬼塚先生、友達いっぱい居そうですしね」

鬼塚「おめーだってそうだろ? 初春とか、名前わかんねーけど他の奴らとかよ」

佐天「はい」

鬼塚「成績がわりぃだの、能力がどーのこーのとかよ。確かに自分に足りねーもんが
    どーしようもなく欲しくなったりするし、挫折っつーのも経験することはあんぜ?」

佐天「……はい(グスッ)」

鬼塚「なんつーか、俺は頭わりぃから、上手い事言えねーんだけどよ。
    今を精一杯楽しめばいいんじゃねーのか?」

佐天「……は、い(グスッ)」

鬼塚「惨めな気持ちになったら、そんなもんはよぉ……ぶっ壊しちまえばいいじゃねーか」

佐天「……そ、う、です、ね(グスッグスッ)」

鬼塚「つれー時はよぉ、ダチ公に頼ればいいじゃねーか。そうやってダチの絆っつーのが強くなるんだよ」

佐天「……うっ、うぅぅ」

鬼塚「俺も一応教師っつー肩書きあるけどよ、俺は教師なんつーガラじゃねーんだよ。
    おめーにはいきなり鞄で殴られたしな。教師と生徒っつーより、ダチっつーかよ?」

佐天「う、う、うわぁぁあっぁぁ! 先生! 先生!」



 ずっと我慢していた涙が、とめどなく押し寄せてきた。
 初春、マコちん、むーちゃん、アケミ……佐天は、自分の大切な友達の顔を思い浮かべ、
 抑えつけていた自分の感情を思い切り、誰にも遠慮せずに吐き出した。
 レベルアッパーを使った時のこと、友達を巻き込んだこと、友達に救われたこと……
 そして、昨日の出来事と、今朝の昇降口に書かれた言葉のことを……

 
 
 

――

佐天「先生、ごめんなさい」

鬼塚「あん? 何がだ?」

佐天「泣いたり、叫んだり、愚痴言ったりしちゃって……」

鬼塚「んなもん気にすることじゃねーよ。これが俺の仕事ってやつだからよ」

佐天「あれ? もしかして、先生照れてます?」

鬼塚「ばっ、馬鹿野郎! なんで俺が中坊なんざに照れなきゃなんねーんだよ!」

佐天「あはは! やっぱり照れてる!」

鬼塚「ったくよぉ、これだからガキっつーのはめんどくせーんだよなぁ」

佐天「先生」

鬼塚「あぁ?」

佐天「ありがとう!」

鬼塚「……へっ。おうよ」

佐天「んー! 今から行けば、四時間目には余裕で間に合うかな」

鬼塚「おめー、まさか学校行くのか?」

佐天「何言ってるんですか! あたりまえじゃないですか!」

鬼塚「おいおい、めんどくせーから、もう今日はサボっちまおうぜ」

佐天「だめです! 先生がそんなこと言っちゃダメですよ!」

鬼塚「てめーが最初に学校フケたんじゃねーか! って、そうだ」

佐天「ん? どうしたんですか?」

鬼塚「いやよ、お前『デモンズアッパー』って知ってるか?」

佐天「なんですかそれ? 物騒な名前ですけど……」

鬼塚「なんかよ、この街のヤンキー共が最近使ってるドラッグでよ」

佐天「ドラッグ……『エンジェルブロウ』なら聞いたことありますけど」

鬼塚「エンジェルだぁ? それってよ、羽と拳の絵が描いてねーか?」

佐天「さぁ、見たことないし……あ、でも、白井さんに聞けばわかるかも」

鬼塚「白井さん? クラスにそんな奴いたっけな」

佐天「いや、ジャッジメントをしてて、初春の同僚なんですよ」

鬼塚「ほー。そいつに聞けばわかるか。ちぃっと、放課後にでも会わせてくれや」

佐天「え、良いですけど、先生どうしたんですか?」

鬼塚「……まあ、なんつーか、『ヤボ用』っつーやつでな」

佐天「そうですか……でも、エンジェルブロウかぁ。『自分だけの現実』を強化する魔法の薬……
    本当に自分だけの現実が見やすくなるなら……躓いてる人なら使っちゃうかもしれませんね」
    
鬼塚「その『自分だけの現実』っつーのが、いまいちわかんねーんだけどよー。
    まあ、んでも、そんなもんに頼らなくても、佐天はもう大丈夫だろ?」
    
佐天「はい!」

鬼塚「そーかよ。んじゃ、まぁ、とりあえず学校にでも――」

??「あの! 待ってください!」


鬼塚「あぁ? なんだ? どっから声が聞こえるんだ?」

??「あ、すみません……」

シュンッ

佐天「じ、重福さん!?」

鬼塚「うおおお! いきなり現れやがったぞ! 透明人間か!?」

重福「あの、いえ、私の能力は『視覚阻害』<ダミーチェック>なので、
    自分の存在感を消すというか、気付かれないようにすると言うか……」

鬼塚「ああ、なんかよくわかんねーんだけど、わかった。
    んで、その『惰眠ちゃらちゃら』のえーと、重福だっけ? どうしたんだ?」
    
重福「あの、私、その……佐天さんごめんなさい!」

佐天「へ?」

重福「街で佐天さんを見かけて、隣にこの人が居て、もしかして何かあるんじゃって思って……
    ついてきて、それで、あの、話を聞いてしまって……」
    

佐天「聞いてたの!? あちゃー、かっこ悪いところ見られちゃったなぁ。てへへ」

重福「かっこ悪いなんて全然思いません! やっぱり佐天さんは凄いです!
    補習の時もそうでしたけど、今日だって、そこの先生と話してるの聞いて……」
    
鬼塚「(あれ? 俺ってもしかして邪魔者っつやつかぁ?)」

重福「やっぱり、佐天さんは強い人です! だから、だから……」

佐天「重福さん……大丈夫だよ。あたしは負けないよ!」

重福「佐天さん……」

佐天「よーし、それじゃ学校に行きますか! あ、重福さんもサボっちゃダメだよ?」

重福「はい! あの、またお手紙書きますね…… ではっ!」

パタパタパタパタ

鬼塚「なんか、よくわかんねーけど、お前の知り合いかぁ?」

佐天「うん。重福さん。あたしと一緒でレベルアッパー使って……」

鬼塚「そーかよ。なんか、随分と尊敬されてるみてーじゃねーか」

佐天「あ、あはは……」

鬼塚「……でも、ああやって慕ってくれてる奴がいるんだからよ。
    おめーはクズなんかじゃねーよ。それだけは俺様が保証してやらぁ!」

佐天「ありがとうございます……あたし、負けません!」

鬼塚「おうよ! 気合いれて、ビッと決めてこいや!」

佐天「はい! って、先生、そっち学校じゃないですよ! こっちこっち!」

鬼塚「あ、おめー引っ張るな! おい、このアロハ高ぇーんだぞ! って、おい!」

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅー。しゃーねーなぁ(……一応元気にはなったみてーだけど、どうなっかな)」

――

とりあえず、現状ではここまで

4日目の前半がやっと終わったってところ
なんか、書いてるうちにどんどん長くなってきた

重福さんは好きすぎて出した。いらん子だけど後悔はしてない


書き溜めに戻ります


――三時間目 休み時間

初春「よかった、資料室には誰もいませんね。 今のうちに情報を集めないと……」

カタカタカタッ

初春「とりあえずプロクシーをいくつか……セーシェル、ナイジェリア、ホンジュラス……」

カタカタカタッ

初春「よし、これで……アクセスできましたね。後は、溝口、溝口……」

初春「確か今月からうちの学校に来て……やっぱり、学校のデータベースではダメですね。
    バンクの情報しかないですね。さすがに学校からアクセスするのは気が引けますけど……」

カタカタカタッ カタッ カタカタタタタカタッ

初春「溝口吹火(すいか)、文字通り『発火能力者』<パイロキネシスト>、レベルは……3!?」

初春「この学校の一年生でレベル3だなんて……あれ、これは!?」


――同時刻 柵川中学校門

鬼塚「佐天、平気か?」

佐天「先生、あたしを誰だと思ってるんですか? 万年レベル0の佐天涙子さんですよ!
    こんなイジメだかなんだか知りませんけど、あたしは負けないですよ!」
    
鬼塚「おー、えらく気合入ってんじゃねーかぁ?」

佐天「当たり前ですよ!それに……あたしは一人じゃないですから!」

タッタッタッタ

佐天「あ、先生! お昼休み、一緒にご飯食べましょうね!」

鬼塚「あー? 気が向いたらなー。――まあ、あいつは大丈夫だよな」


――四時間目 教室

初春「(佐天さん、戻って来ませんね……メールでもした方が……)」

教師「で、ここのxに代入するのは……」

初春「(集めた情報も佐天さんに教えてあげなきゃいけないですし……)」

ガラガラッ

佐天「佐天涙子ただいま登校しました! 思いっきり遅刻してすみません!」

ザワザワザワザワ エー スゲー ゲンキスギジャネ

初春「さ、佐天さん!」

佐天「へっへー、初春ごめんよー。心配かけちゃったね。マコちん達もごめんよ」

マコ「ううん、涙子……良かった」

教師「おい、佐天。遅刻してきたのに、随分態度が大きいな。廊下に立っておくか?」

佐天「あ、すみませんでした!」

タッタッタ

教師「あー、佐天、連日遅刻だから、今日は裏庭の掃除だな」

佐天「げっ! はーい……(まあ、いっか)」

初春「(佐天さん、私も手伝いますからね)」

佐天「(さっすが初春! あたしの親友だね!)」

初春「(もう、本当に調子がいいんだから……あ、あとですね)」

教師「おい、佐天、初春! 静かにしろ! うるさくするなら、その頭のは――」

初春「すみませんでした。ところで『頭のは』って何のことですか?」

教師「……わかればいい(やはり、自覚はないのか?)で、yに入る数は……」


溝口「(なんで、なんであいつはあんなに明るいの!?なんでなんでなんでなんで……)」


――昼休み

マコ「涙子大丈夫だった?」

佐天「マコちん、ごめんねー! 初春から聞いたよ。下駄箱掃除してくれたんだって?」

マコ「うん、そんなことより……」

佐天「あはは! 大丈夫大丈夫! あたしは元気だけが取り柄だからね!」

マコ「涙子……あ、みんなでお昼ご飯どう?」

佐天「あ、ごめーん。鬼塚先生と食べる約束してるんだ」

マコ「え! あのスキルアウト教師と!?」

佐天「ああ見えて、結構良いところあるんだよね。それじゃ」

タッタッタ

初春「あ、佐天さん、待ってください! 私も話があって」

ダダダダッダ

アケミ「あらら、涙子ったらすぐ元気になったわね」

マコ「ほんと、よかった」

むー「じゃあ、私達は寂しく三人でご飯にいきますか!」

トットット


溝口「(くそ……こうなったら、直接……)」


――校庭

鬼塚「あー、腹減ったぜぇ……」

佐天「おーにーづーか、せんせー!

鬼塚「おー! おめー、おせーじゃねーかよ?」

佐天「ごめんごめん! お詫びに、涙子さんお手製弁当をプレゼント!」

鬼塚「うおおおおお! マジかよ! これ全部食って良いのか?」

佐天「うん、今朝作りすぎたから、この前のお礼も兼ねて先生の分も用意してあげました!」

鬼塚「おめー、いや、佐天様! ありがたく頂戴します!」

佐天「うんうん、素直でよろしい。あ、ういはるー!」

初春「ちょっと、佐天、さん、置いてかないで、くださいよ……」

佐天「あはは、ごめんごめん。お詫びに初春にもあたしのから揚げをプレゼントだ!」


初春「わー、佐天さんどうしたんですか? いつもより豪華な、んっ――」

佐天「余計な事は言わなくていいの! ところで先生おいしい?」

鬼塚「んまんん(うまいぜ)、んんんんん(黙って食わせろ)」

佐天「先生、がっつきすぎだよー」

初春「(鬼塚先生。佐天さんのこと、しっかりと……ありがとうございます)」

モグモグ モグモグ ゴクゴク

鬼塚「ぷはーっ! 食った食った! 佐天、おめー料理うめーじゃねーか!」

佐天「えへへ、そうですかー?」

鬼塚「おうよ。こりゃ良い嫁さんになっかもしんねーなぁ」

佐天「そんな事言っても何も出ませんよーだ」

初春「あ、そうだ、佐天さん、ちょっとお話が……鬼塚先生も良いですか?」

佐天「んー? 初春どうしたんだね?」

鬼塚「なんだぁ?」

初春「実はですね――」


――

鬼塚「ほー、そういう事だったわけか。だからあのガキは体育の授業ん時に」

初春「え? 先生、体育の授業の時に溝口さん見たんですか!?」

鬼塚「おうよ、ロッカーん中でよぉ――」

佐天「ロッカーの中?」

鬼塚「あ、いや、まあ、とりあえず話はわかったぜ」

佐天「なんか怪しいなぁ……先生、まさかロッカーの中に入って覗きしてたんじゃ……」

鬼塚「ばっ、馬鹿野郎! おめー、俺がそんなことするわけじゃ……」

初春「なんだか先生焦ってますよね」

鬼塚「おめーら俺を疑うなんてひでーじゃねーか! それに俺はロリコンじゃねーぞ!
    ったく、誰が佐天の水色のブラ見て喜ぶんだよ!」
    
佐天「あれ、あたし昨日水色の……」

――キーンコーンカーンコーン



鬼塚「あ、予鈴じゃねーか! おらぁ! おめーら遅刻すんじゃねーぞぉ!?」

ダダダダッダッダダッダ

佐天「今のって、どう考えても……」

初春「見てますね……とりあえず、教室に戻りましょう」

佐天「ほんっっと、先生って最低! まったく、見たいなら見たいって言えば……」

初春「え?」

佐天「あ、いや、見たいなら、あたしがいくらでも初春のスカートを捲るよって!」

初春「やめてください!」

トットットット


――

――放課後

教師「それじゃ、佐天は裏庭の掃除をしといてくれ」

佐天「はーい」

教師「では、みんな気をつけて帰れよー」

ワイワイ ガヤガヤ バタバタ

佐天「はぁ。面倒だけど仕方ないか……」

初春「佐天さん、私も手伝いますから! 大丈夫です、すぐ終わりますよ」

佐天「さっすが初春! ありがとね!」

初春「いえいえ」

マコ「涙子、ういはるん。ごめんね。私達だけ先に帰っちゃって」

佐天「大丈夫だってば! 今日は三人とも塾なんでしょ? ほらほら早く行ってきな!」

マコ「うん、ありがとね。 それじゃあ、また明日!」

トットットット

佐天「よーし! じゃあ、さっさと終わらせてクレープでも食べにいきますか!」

初春「おー!」




溝口「(フフッ……あとはみんなに連絡すればいいわね)」


――裏庭

佐天「うーん、なかなか終わらないね」

初春「思った、以上に、大変、ですね……」

佐天「初春もういいよ。凄く疲れてるみたいだしさ」

初春「そ、そんなことはありません! ほらほら! こんなに元気!」

佐天「まったくもう、初春も強情なんだから」

初春「佐天さん程じゃありませんよ」

佐天「あはは」

??「随分と楽しそうだねぇ。俺達も混ぜてくれねぇかなぁ?」

佐天「えっ?」


 談笑しながら、初春と二人で、裏庭の掃除と草むしりをしていた佐天だったが、
 その背中に声をかけてきた男達……そして、そこには溝口の姿があった。

溝口「無能力者の佐天さん。お掃除姿がよく似合ってるわね」

佐天「溝口さん……」

溝口「本当に見てて腹が立ってくるわね」

佐天「昨日のストラップも、教科書も、今朝の下駄箱も……全部あんただったのね?」

溝口「よくわかってるわね。そうよ、私よ? 何か悪いことでもした?」

初春「悪いに決まってるじゃないですか!」

溝口「あらあら、低能力者のクセにジャッジメントなんてやってる初春さん」

初春「!!!!」

溝口「本当にあんた達見てると吐き気がするわ。無能力者に低能力者のくせに……
    一人は犯罪者で無能のクセに反省もせずに能天気な顔してる。
    もう一人は真面目にジャッジメントなんてね」

初春「能力が低くて真面目で何が悪いんですか! それに佐天さんだって――」


佐天「初春! いいの。溝口さんが言ってる通り、確かに私はレベルアッパーを使った。
    でも! あんなものに手を出しても意味がないって気付いたの!
    あたしには、仲間がいる! それに能力が無くったって――」

溝口「その態度が気に入らないって言ってるのよ!!!!!」

ドーン!!! チリチリチリ

初春「発火能力!」

溝口「そうよ。私はあんた達と違ってレベル3なの!それなのに、それなのにぃぃぃぃぃい!!!」

佐天「常盤台中学に在籍してたレベル3。表向きは、病気療養のために自主退学……
    でも、実際はレベルアッパー事件と日頃からの素行不良により退学勧告……」

溝口「なんでそれを! この学校のデータベースには登録されてないはずなのに!」

初春「それでも、バンクにはしっかり載ってましたよ!」

溝口「なっ……」


佐天「ねぇ、溝口さん。あたしもレベルアッパー使ったからわかるの。
    レベルが上がらない辛さ、寂しさ……だから、こんな事はもうやめようよ?」

溝口「うるさい! あんたに何がわかるの!? 私はねぇ、常盤台の生徒なのよ!
    それなのに、たかがレベルアッパー使った程度で……何がスキルアウトよ?
    スキルアウトの連中と遊んで何が悪いわけ? それで退学? なんで私が?」
    
佐天「溝口さん……」

溝口「退学させられて、こんなクソ学校に来てみたら、同じクラスに無能力者がいる?
    もうね、我慢できなかったのよ! しかも無能力者のクセに調子に乗って……」
    
初春「そんな、そんなことで」

溝口「あんたらみたいなクソ真面目な低能力者に何がわかるっていうの?
    一回落ちこぼれたら、ずっとゴミ扱いされるのよ!
    それなのにあんたらは……あんたらはぁぁぁあぁああ!!!」

のび太とバーローが面白すぎて腹筋が辛い

書き溜めてくる

>>258
>佐天「常盤台中学に在籍してたレベル3。表向きは、病気療養のために自主退学……
>    でも、実際はレベルアッパー事件と日頃からの素行不良により退学勧告……」



ここってういはるじゃないの?

>>263
鬼塚と一緒に飯食ってる時に説明済っつーことでよろしく

ドーン! ドーン!


佐天「きゃっ!」

初春「佐天さん!」

溝口「ほらほら、無能力者なんて汚く転がればいいのよ!」

三年男子「おいおい、溝口やりすぎじゃね?」

三年女子「いいんじゃない? 無能力者なんだし」

二年男子「俺らと同類のくせに調子こきやがってよ」

一年男子「俺なんかクラスでハブられてっつーのに……」

初春「やめてください!!!」

溝口「あ?」

初春「じゃ、ジャッジメントです! あなた達の身柄を拘束します!」

 初春はポケットの中からジャッジメントの腕章を取り出し、身に着けた。
 それで少しでも彼女達を怯ませることができればと、混乱した頭で考えた結果だった。
 

二年男子「だから、低脳の分際でジャッジメントとか言ってんじゃねーよ!」

ガスッ!

初春「がッ!」

二年男子「こいつ、ジャッジメントのくせに蹴りの一発で悶えてるぜ?」

三年男子「おいおい、マジかよ?」

三年女子「うは、超うけるんですけどー」

佐天「う、初春!!!!」

初春「さ、て、ん、さ、ん……に、げて、くだ、さ、い……」

溝口「ああ? 鬱陶しいな……まずはあんたをやってあげるわ」

佐天「やめて!」

 倒れている初春と、溝口の間に立ちふさがる佐天。
 足はガクガク震え、瞳には涙を浮かべている。それでも、両腕を広げ立ちふさがっている。
 
溝口「あんたさぁ、いい加減にしてくんない? どいてよ。もうね、我慢できないわ」

佐天「嫌だ! 初春が、あたしの親友がこんなにされて黙って見てられるわけないじゃん!」

溝口「無能力者に何ができるの?」

佐天「能力なんかなくったって、あたしには、あたしには仲間がいる!
    いつだって支えてくれる仲間がいる! それを見捨てるなんてできるわけない!」

溝口「あっそぉ。それじゃ――」


佐天「(あたしが初春を……でも、あたしだけじゃ……誰か、誰か……先生!!!!)


   !?


ドカン! バキッ! ゴキゴキゴキッ!

溝口「何よこれ!」

鬼塚「よぉ、佐天、かっこいいじゃねーかよ?」

佐天「せ、ん、せ、い?」

二年女子「何よ、何よあんた!」

鬼塚「あのなぁ、女を殴るのは趣味じゃねーんだけどよぉ」

ビシッ

二年女子「ぁべしっ!」

鬼塚「とりあえず、少しだけ寝といてくれや」

溝口「あんた……」

鬼塚「ガキが火遊びしてっとよぉ、おねしょしちまうぜぇ?」

溝口「何言ってんのよ!」

ブンッ! ドーン!

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!

鬼塚「うお! こりゃマジかよ…… こいつが能力ってやつかぁ!?」

初春「せん、せい……その人は、パイロキネシストです……火を操って……」

溝口「何よ、何よあんた! なんで邪魔するの!」

鬼塚「うおおおおぉぉぉ! マジで熱ぃじゃねーかよ! ちょ、こんなんどうやって」

溝口「消えろ! 消えろ!」

鬼塚「消えろってよ、おめーは……あぶねっ! あのなぁ……」

ドンッ! ドンッ! ドンッ!

鬼塚「生徒におしおきすんのはよ、教師の仕事っつーやつなんだよ!」

溝口「何が、何が教師よ! 教師なんて、何かあればすぐに人をゴミみたいに!
    結局何もできない無能力者が教師なんかやってるんだろ!」
    
鬼塚「だぁぁ! こりゃ、埒が明かねぇぞ? 当たったらさすがにやべーだろーな」

溝口「はぁっはぁっ! もういいわ、あんたが逃げるんなら、こいつらに――」

鬼塚「おい、てめぇ! 待ちやが――」

佐天「きゃぁぁぁぁぁ!」

ちょっと飯とか行ってくる

また適当に投下する

 溝口は、掌に具現化した火球を、うずくまっている初春と佐天目掛けて投げつけた。
 目の前に迫り来る火球。まるでスローモーションのように、火球の動きが見える。
 
佐天「(もうだめだ……!)」

 そう思い、目を閉じるその瞬間。派手な色彩が視界の隅に写った。
 そして――火球がぶつかった衝撃による爆風、そして音が耳から頭の中に響いた。
 
溝口「あは、あはは、はははははははは! 二人仲良く黒焦げよ!
    これで良くても入院ね。もしかしたら死んでるかしら? ははは!」

 高らかに笑う溝口。舞い上がった埃、そして煙が薄くなっていく――


溝口「な、そんな、バカな……」

鬼塚「痛ぇじゃねぇか、このバカヤローが……
    こんなもん人にぶつけやがってよぉ、死んだらどうしてくれんだ? あぁ?」

溝口「ま、まさか、なんで! なんであれを受けて無事なのよ!」

鬼塚「全然無事なんかじゃねーよ。背中はヒリヒリするどころか、感覚があんまりねーぞ?
    ったくよぉ、お気に入りのアロハだったのに、ボロボロになっちまってよー」
    
初春「せ、先生? 佐天さん?」

佐天「初春? あたし達無事に…… え、先生!?」

鬼塚「よぉ、おめーら、無事かぁ? ったくよ、最近のガキ共はみんな無茶しやがるぜ……」

溝口「ウソよ。ウソよウソウソウソウソウソ!!!!!! 私はレベル3よ?
    こんな無能力者達なんか、一瞬で黒焦げに……なんでよ!」

鬼塚「けっ。これがレベル3ってやつか? 大したことねーなぁ」

溝口「な……」

鬼塚「それとも、手加減でもしてたか?」

溝口「そ、そんなわけが……」

鬼塚「じゃあ、なんで俺が平気で立ってられるんだ?
    無意識の内に手加減してたんじゃねーのか? 本当はこんな事したくねーってよぉ?」
    
溝口「うそよ! そんなことあるわけがない! 私は私は……」

ガサガサ

溝口「これが、これさえあれば……」

鬼塚「おい、てめー! その白いのは、まさか――」

溝口「エンジェルブロウ……これさえ、これさえあればあぁぁあああぁ!」

ガサゴソ バリバリバリ!

やめてー

鬼塚「バカヤロー! そんなに一気に入れたら――」

溝口「ッガアガガッゲッガガガガギギッギギガガザザダジャジャジャ」

鬼塚「おい、こりゃ、いくらなんでもやりすぎだろーが……」

佐天「あれが……エンジェルブロウの効果?」

初春「自分だけの現実を強化する……ウソですよ。だってあれじゃ……」

鬼塚「おい、おめーら、ちぃっとばかし下がっとけよ」

佐天「は、はい! 初春立てる? ほら、こっちに――」

溝口「コロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!!!!」

ボッ ドン! ボッ ブン! ドン!

鬼塚「あーあー、完全にキマっちまってやがんなぁ……
    なぁ、知ってっか? デモンズアッパーっつーのはよ、
    幻覚を見せると同時に、身体ぁめちゃめちゃ強くすんだよ。
    でもなぁ、思考力は飛んじまうんだよ?」

溝口「ガがガガガがアアアアァアァァァアアアアァァ」


ボッ ドン! ボッ ブン! ドン!

鬼塚「だからよぉ、てめーのその火は、当たんねーんだよぉ!?」

ダッダダダッダッダ ガシッ!

鬼塚「もう、いい。寝て起きたら、抜けてると思うからよ……」

バキッ!

溝口「がはっ……」

バタン

溝口がクズ過ぎワロタw
元の立場(所属校とレベル)が違えば、同じ事(レベルアッパー)やっても扱いがちがうのが当たり前。
んで勝手に逆恨み&八つ当たりの挙句、殺人未遂(しかもその気有り)に薬中、
救い用ヌェーwww


鬼塚「ふぅ……おい、佐天! 初春!」

佐天「は、はい!」

鬼塚「ちぃっと、救急車呼んでくれや。あー、ちなみに、二台頼む、わ……」

バタン!

初春「鬼塚先生!?」

佐天「ちょっと、先生しっかりしてください! 先生!」

鬼塚「(あー、さすがに、こいつは……だ、め、だ――)」

――


――鬼塚は夢を見ていた。

 真夜中の国道、生温い風。
 耳をつんざくような爆音、先を行くテールランプ。
 湘南、ではない。三多摩。龍二と二人で流れた先でも結局『族』だった。
 白い三多摩連合の特攻服。特攻一番機。
 ロケットカウル。三段シート。木刀。
 視線の先からはヘッドライトの嵐。
 先を行くテールランプが点滅した。ブレーキランプの合図。そして――
 
鬼塚「うおぉぉぉっ! ぶっ殺せぇええぇええええ!!!!」

ガバッ!

佐天「きゃぁあぁっ!」

鬼塚より格ゲー強い内気な子って名前なんだっけ


ガラガラガラッ

初春「さ、佐天さん! どうかしたんですか!? って……」

鬼塚「はぁはぁはぁ……」

佐天「先生? 先生が起きた!」

初春「あ! 私、お医者さん呼んできますね!」

バタバタバタッ

佐天「先生……心配したよ……ほんと、本当に……(ぐすっ)」

鬼塚「おー、佐天、大丈夫だったかぁ?
    それより、ここはどこだ? っつーか、煙草持ってねーか? 」

>>303
鬼塚「おめーが言ってんのは、『吉川ノボル』のことかぁ?
    あのヤロー、童貞で包茎でオタクでゲーマーでいじめられっ子のチビのくせに
    杏とイチャイチャしやがってよぉ? いつかぶっ殺してやんぜ!?」

佐天「ここは病院です…… 先生、さっき倒れて……それで……(ぐすっ)」

鬼塚「あー! わかったわかった! だから泣くなって。んで、煙草ねーか?」

佐天「持ってるわけないじゃないですか! このバカ鬼塚!」

ボフッ!

鬼塚「ちょ、おま、おい、やめろ! こっちは怪我人なんだぞ! って痛ぇ!」

佐天「人がせっかく!(ガスッ) 心配!(ボフッ) してるのに!(バンバンバン!)
    なんで、第一声が『煙草持ってねーか?』なの! 持ってるわけないし!」

鬼塚「おめー、ちょっと、いや、いくら枕でも……痛ぇ! おい!」

佐天「バカ! アホ! ヘンタイ! 死んじゃえば良かったのに!」

ボフッ! ボフッ!

??「やれやれ、あれだけの怪我をしたって言うのに、随分と元気なんだね?」

>>307
杏じゃなくて杏子だカスが

>>309
鬼塚「てめー、人の間違いにイチイチ突っ込むんじゃねぇ!」

初春「佐天さん! 鬼塚先生! お医者の先生を連れてきましたよ」

鬼塚「医者だぁ? って、カエルじゃねーか!?」

佐天「ちょっと、先生、それはさすがに失礼ですよ」

医師「はっはっは。随分と元気の良い先生だね? 調子はどうだね?」

鬼塚「あー、痛いんすけど、それよりも、このガキにやられた傷が……うぅっ」

佐天「ちょっと! 先生!」

医師「その様子なら大丈夫みたいだね? 本当にその身体はどうなってるんだい?」

鬼塚「なんすか? どっか悪いんすか?」

医師「悪いどころか、良すぎて異常とも言えるね。脅威的な回復力だよ」

鬼塚「まぁ、身体が資本っつーか――」

佐天「単細胞なんで細胞分裂が得意なんですよねー?」

鬼塚「おー、そうなんだっ、て、てめぇ!(こいつ、なんで俺のあだ名を知ってやがるんだ?)」

医師「以前からかなりの大怪我を繰り返してるね? 銃創や刃傷もたくさんあるみたいだね」

鬼塚「まー、教師っつーんは、たまにはヤクザとも闘わなきゃなんねー事もありますからねぇ」

医師「そうかい。まぁ、それだけ元気があるなら、いつでも退院していいよ」

鬼塚「お! それじゃ、こんなところはさっさと……って、あれ」

医師「ああ、そうだ。まだ麻酔効いてるかもしれないから、もう少し横になってた方がいいね」

鬼塚「そうっすか。んじゃ、適当に帰らせてもらいますんで」

医師「また何かあったら来なさい。じゃ」

トコトコトコトコ

鬼塚「麻酔っつーのはどんくらいで切れるもんなんかねぇ……」

初春「どうなんでしょうか」

佐天「それよりも、先生、一晩くらい入院してた方が……」

鬼塚「入院なんてめんどくせーよ! それに明日は――」

ガラガラッ

??「失礼しますの」

鬼塚「はいはい、どーぞぉ」

初春「白井さん!」

黒子「あら、初春。あなたもここにいたんですの」

初春「はい、さっき先生を呼んで、一緒に戻ってきたんです」

黒子「そうでしたの。ところでそちらの……」

鬼塚「あん? って、お前、この前のチンチクリンじゃねーか!」

黒子「んまぁ! 人の事をいきなりチンチクリン呼ばわりなんて――」

佐天「まあまあ、白井さん。落ち着いて(チンチクリン……確かに)」

黒子「失礼、取り乱しましたの」

鬼塚「んでよー、何の用だ? 煙草なら吸ってねーぞ。持ってねーしな」

黒子「そんな事ではありませんわ。今回の事件の事でお話を伺いに参りましたの」

鬼塚「あー、そういうことか。ってこたぁ、ジャッジメントってやつかぁ?」

黒子「ご存知でしたら話が早いですの。で、今回の事件ですが……」

佐天「あ、とりあえず、私からお話しますね」


――


黒子「なるほど。そういう事でしたの」

初春「ええ。それで鬼塚先生が庇ってくれて……」

黒子「こちらの殿方は、見かけによらず良い方ですのね。
    人を見かけで判断してはいけないとは、よく言ったものですわ」
    
鬼塚「おめーよぉ……んで、あの溝口ってガキはどうなるんだ?」

黒子「とりあえずアンチスキルが引き取りましたの。
    これからしばらくは取り調べなどをして、それから施設に行くと思いますの」
    
鬼塚「そうか……ったく、後味わりぃなぁ、おい」

黒子「仕方ありませんわ。これだけの事件を起こしたのですから。
    直接的な被害者があなただけだったなんて、本当に奇跡だとしか思えませんの」

佐天「……」

黒子「しかし、常盤台から転校したとは言え、元生徒があんな事をするなんて……
    まったく恥さらしもいいとこですの。常盤台のジャッジメントとしても――」

佐天「あの、白井さん!」

黒子「なんですの?」

佐天「あの……溝口さんのこと、よく調べてあげてください!
    きっとあんな風になっちゃうには理由があったと思うんです!」

黒子「佐天さん……」

佐天「きっと、夢を持って、頑張って、常盤台に入って、でも退学して……
    あたし、なんとなくですけど、辛かったのかなって……」

黒子「ですが、これだけの事件を起こして、しかもそちらの先生も――」

鬼塚「あー、俺のこの傷はよぉ、あれだ。なんつーか、ガス爆発みてーな?
    そうそう、そんな感じだったわけよ! だからあいつは関係ないぜ?」
    
佐天「鬼塚先生……」

黒子「あなた、それだけやられておきながら庇うというんですか?」

鬼塚「庇うも何もよ、俺はイタズラが過ぎたガキに説教かましただけだぜ?
    んで、たまたまガス爆発に逢っちまったっつーわけよ」

黒子「……まったく、あきれましたの。そんな嘘が通じるはずがありませんの」

初春「白井さん! 私からもお願いします!」

黒子「――ですが、加害者の身辺状況をしっかり調査するのも私達の仕事ですわ」

佐天「白井さんっ!」

黒子「本当に、あなた方には参りましたの」


ガラガラッ

??「失礼するよ」

鬼塚「おいおい、やけに来客が多いじゃねーか」

??「これは失礼。まさか知らない方の病室だったとは思わなかった」

初春「木山先生!」

木山「ああ。君達の声が聞こえたもんでね。つい、入ってしまったんだ」

黒子「あらまぁ、これは木山先生。今日はボランティアの日ですの?」

木山「ああ。水曜日はここで生徒達に授業をする日だからね。それで今回はどうして病院なんかに?」

鬼塚「(おい、佐天! このちょっと疲れてるけど、良い感じのねーちゃんは誰だ?)」

佐天「(ああ、木山先生です。えっとこの人は……)」

木山「そちらの男性。突然お邪魔してすまない。見たところ怪我をされているようだが」

鬼塚「え!? あー、はいはい。 そんな事は全然気にしなくていいっすよ! はい!」

佐天「……」


木山「そうか。私は木山だ。大脳生理学の研究者だ。専攻はAIM拡散力場。
    今は、週に三回程、この病院の院内学級で先生をしているんだ」
    
鬼塚「おお! 木山先生ってわけですね! 俺は鬼塚英吉22歳独身!
    生涯一教師として、今回はこの街に研修に来てるんですよ!」

佐天「……まあ、ただの変態教師なんですけどね」

鬼塚「お、おめー! いきなり変なこと言うんじゃねぇ! 誤解しちまうだろーが!
    あ、あはは! 木山先生すいません。 まったく、こいつは……」

佐天「本当のことでーす。ふんっ」

プイッ

初春「(佐天さん、もしかして……)」

黒子「(あらあら。なんですの、最近はこのような類人猿が流行りなんですの?)」

木山「フフ。どうやら君は立派な教師のようだな」

鬼塚「え? まじっすか! やっぱりわかりますかねー、この俺のオーラってのが」

佐天「はいはい」

木山「生徒とこれだけ心を通わせている教師が、ダメな教師なはずがないさ」

鬼塚「……やめてくださいよ。そういうマジなのは、俺にはあんまり似合わねーんすよ」

木山「フッ。君は面白いな。同じ教師として、なかなか興味深い」


ガラガラッ

??「入りますよ」

鬼塚「あー? ったく、なんだぁ、おい?」

??「鬼塚先生、この度は本当にご苦労さまでした」

鬼塚「あぁ? って、アンタ、柵川中学の教頭!?」

教頭「ええ、覚えててもらいましたか」

鬼塚「あ、はぁ、まあ(こりゃやべーな、どう言い訳すっかな……)」

教頭「いやー、さすが鬼塚先生! 本校の非行グループを一日で片付けるなんて!
    わざわざ来て頂いた甲斐があったと言うものですよ! はっはっは」

鬼塚「……」

教頭「いやぁ、これでやっと内の学校も綺麗になりますよ。
    本当にあのクズ共のおかげで、うちの評判が悪かったですからねぇ」

佐天「なっ!ちょっと――」

鬼塚「いやぁ、教頭先生! そこまで褒めて頂けるなんて光栄ですね! よいしょっと」

フラフラッ

鬼塚「おっと」

佐天「ちょっと先生、まだ寝てなきゃ!」

教頭「鬼塚先生大丈夫なんですか? ゆっくり寝ててくださいよ」

鬼塚「いやー、そうも言ってらんねーんですよ……」


バキィッ!

教頭「グヘッ!」

一同「えっ!?」

教頭「な、なにをするんだね! 君、私に何をしたかわかってるのか!?」

鬼塚「わかってるよ。ったくよぉ、どこの学校も教頭って奴はこんな奴なのかぁ!?
    さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって……」

トコトコ

教頭「ヒッ! な、なにをする! うわっ! やめ――ぐ、ぐるじぃ……」

鬼塚「生徒の事を『クズ』だなんて言う教師がいるから――」

教頭「や、や、やめ――」

鬼塚「つれぇ思いするガキ共がいるんだろーがぁ!?」

バキバキッ!

教頭「ぶぇっ……」

鬼塚「教師っつーのは、生徒の味方だろーがよぉ! あぁ!?」

佐天「ちょ、ちょっと先生! やめて!」

黒子「これ以上やってはいけませんの! 傷害罪になりますのよ!」

教頭「ひ、ひぃ!」

ダダダッダダッダ

鬼塚「クソが! 胸クソわりぃぜ」

初春「鬼塚先生……」

??「おいおい、一体何の騒ぎじゃん?」

鬼塚「あぁ? 次は誰だよ!?」

??「随分と威勢がいいじゃん?」

黒子「あなたは、アンチスキルの――」

黄泉川「黄泉川じゃん。鬼塚先生だっけ? よろしくじゃん」

鬼塚「あー、はいはい、よろしくさんーって!」

ばいんばいん ばいんばいん

鬼塚「(おいおい、なんだよこりゃ! ありえねーだろあのデカさはよぉ!?)」

黒子「ところでアンチスキルの方がどうしたんですの? 報告は私達から――」

黄泉川「ああ、明日ゆっくり聞くじゃんよ。ただ、こっちも一応顔だけ出しとこうと思ったじゃん」

黒子「そうでしたの」

黄泉川「ってわけで、詳しい話はまたの機会にってことで、鬼塚先生、お大事にするじゃん」

鬼塚「あ、はーい、どうも! 次の機会はゆっくり酒でも飲みながら!」

タッタッタッタ

鬼塚「ふぅ。これでもう誰もこねーよな?」

黒子「ええ、予想外ばかりでしたが、関係しそうな方は、これで全部だと思いますの」

鬼塚「それじゃ、帰るとすっかな! おい、佐天、初春!」

佐天「……」

初春「は、はい!(ちょっと、佐天さん!)」

鬼塚「ありがとよ」

佐天「え? あはは、いやー、そんな」

初春「いえいえ、こちらこそありがとうございました!」

鬼塚「ゆっくり挨拶できなかったけど、柵川中学とはお別れだ」

初春「あ、そうでしたね」

鬼塚「まあ、まだしばらくこっちにいっからよ。また会うだろ!」

佐天「先生、痴漢とかして捕まらないでくださいよ!」

鬼塚「な! おめー、コノヤロー! おっと」

フラフラ ガシッ

木山「まだ少しふらついているな。私の車で送ろう」

鬼塚「おぉ! いいんすか!? いやー、ありがとうございます!」

佐天「木山先生! その人変態ですから気をつけてくださいね!」

木山「ああ。大丈夫だ。私の起伏の無い身体に劣情を催す男性など――」

黒子「まったく、騒々しいったらありませんの」

――



木山「その怪我では、少し乗り難いかもしれないが、載ってくれたまえ」

鬼塚「って! こいつぁ……ガヤルドじゃねぇかよ!!!!!!!」

木山「ああ。君は車に詳しいのかい?」

鬼塚「詳しいも何も、ランボルギーニなんて、俺らにとっちゃヒーローっつーか……」

木山「そうか。なら、その怪我が治ったら運転してみると良い。
    この車も、たまには私以外の人間が運転した方が、癖がわかりやすくなる」

鬼塚「うおおおおぉおぉ! マジっすか!? こんな怪我ささっと治しちまいますよ!」

木山「それは良かった。この車も喜ぶ」

キュルルル ゴウン! ドドッドッドッドッドッド ウォンウォンッ ブォォォ――


木山「そういえば、さっきのあれだが」

鬼塚「さっきのあれってなんすか?」

木山「教師が生徒の事をってやつだ」

鬼塚「あー、いやぁ、なんつーか、あーいった教師ってガキの頃から嫌いなんすよね」

木山「そうかい。だが、あの言葉、きっとあの場にいた子達に響いたと思う。
    もちろん私の心にも響いた。忘れないでおこうと思う」

鬼塚「いや、そんな、ははっ、照れるじゃないっすか」


――

――佐天の部屋

佐天「いやぁ、本当にいろいろあったなぁ……」

 佐天は月曜日からの出来事を頭の中で反芻した。
 誘拐され、鬼塚に助けらた。
 ストラップを千切られ、鬼塚と昼食を食べ、机の中にゴミを詰め込まれた。
 下駄箱に落書きをされ、学校から抜け出し、鬼塚に捕まった。
 無理矢理牛丼を食べさせられ、公園で重福さんに会って、学校に戻って……
 そして――

佐天「溝口さん達、どうなっちゃうのかな……」

佐天「もしかしたら、私がああなっていたのかな……」

――「じ、ジャッジメントです!」

佐天「初春、かっこよかったな……一生懸命あたしの事を守ろうとしてくれて……」

――「よぉ、佐天、かっこいいじゃねーかよ?」

佐天「鬼塚先生……あー!! もう!! むかつく!!!」

ボスッ! ボスッ! ボスッ!


――鬼塚の宿舎

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅ……さすがの俺も今日は疲れたぜ」

ゴクゴク

鬼塚「しかしよぉ、なんかやべー匂いがプンプンしてきやがったぜ……」

――「英吉さん!」

鬼塚「あんな夢を見るなんて、ちぃっとばかし、暴れ過ぎかもしれねーなぁ。
    とりあえず、今日は何も考えずにさっさと寝るか!
    ――んで、あの巨乳とスレンダーな木山先生の夢でも見るかな……」


【9月8日水曜日 4日目終了】

とりあえず、やっと4日目終了
自分が書きたい小ネタ詰め込みすぎて長くなった

ってわけで、5日目以降もなんとかします

【9月9日木曜日 5日目】

――同日未明 第10学区某所


 ミッドナイトブルーの空。日が昇るまでまだ二時間以上あった。
 アンチスキルによる『ストレンジ』掃討作戦により、眠ったように静かになった街。
 猥雑な雰囲気と、危険な香りがするこの場所には、何かに誘われるように、
 また新たなスキルアウト達が集まってきていた……


男A「長谷部さん、例のブツ、受け取ってきました」

長谷部「おう。捌く奴らに回しとけよ? あと、帳簿っつーのつけとけよ」

男A「わかってます。しかし、あいつら何者なんですかね?」

長谷部「さあな……でも、俺らにブツと道具流してくれてんだからよ。敵じゃねーなだろ?」

男A「そうですよね。なんか気になっちまったもんですから」

長谷部「まあ、何かあれば、フケちまえば問題ねーだろ」

男A[ははっ、そうですね」

――ガン! ダッダッダ! オラァ!

長谷部「あ? なんだ!?」

男A「ちょっと見てきます!」


――バリンッ! バタバタバタッ ガンッ!


男A「ぐはぁっ!」

ドーン!

??「おいおい、ここなら静かだと思ってたら、随分騒々しい奴らがいるじゃねぇか?」

長谷部「おい!? お前、何だ!」

??「あ? お前に名乗る理由はないぜ」

長谷部「何スカしてやがんだ!? おい、全員集まれ!」

バタバタッ ダッダッダッダ

長谷部「おい、なんでこんだけしか来ねぇんだ!? 聞こえないのか! おい!」

??「無駄だと思うぜ…… 表にいた奴らは随分と眠そうだったからな」

長谷部「なっ……」

??「で、ちょっと聞きたいんだが」

長谷部「な、なんだ!?」

??「表にあった趣味の悪い車だけどよ。あれ、『キャパシティダウン』だろ?」

長谷部「てめぇ! なんでそれを!」

??「見覚えがあってよ。あれ、どこで手に入れたんだ?」

長谷部「うるせぇ! おい、おめーらやるぞ!」

??「やれやれ……結局こうなるのか」

ドカッ! バキッ! ボコッ!

長谷部「うぅ……」

??「これじゃ聞こうにも聞けないな……」

ドサッ

??「このソファ、落ち着くな……ん? なんだこれ? 錠剤……?」


長谷部「お、まえ、なにも、の、だ?」

??「だから名乗る理由は無いって言っただろ? それより、この錠剤はなんだ?」

長谷部「そ、それは……」

??「悪いけど、意地でも聞かせてもらうぜ」

――


キンッ シュボッ ポイッ ――ボッ! パチパチッ メラメラメラ

??「随分派手なキャンプファイアーになったな。しかし、こんな物がなんで……」


――朝 鬼塚の宿舎

トントントン グツグツ トントン

鬼塚「……ん? なんか良い匂いがするじゃねーか」

モソモソ

鬼塚「ふわぁぁぁっと。なんだぁ?」

佐天「あ! 鬼塚先生おはようございます!」

鬼塚「さ、佐天じゃねーか!?」

佐天「そうですよー。鍵かかってなかったから勝手に入っちゃいました。へへへ」

鬼塚「へへへってお前――」

佐天「って、いやぁぁぁぁあぁぁ!!!」

ブンッ カキンッ


鬼塚「ぐはっ! てめー、いきなり鍋の蓋投げるんじゃねぇ!」

佐天「先生のバカ! ズボンくらいしっかり履いてよ!」

鬼塚「あぁ? って、俺の像さんがハミ出て――」

佐天「実況する前にさっさと履け! このバカ鬼塚!」

鬼塚「いやぁ、わりーわりー。 普段からパンツ一丁で寝てるもんだからよぉ」

佐天「まったく…… ほら、顔洗ってきてください。ご飯できてますから」

鬼塚「お、おう。よっこらっしょっと」

パタパタパタパタ

佐天「(先生の見ちゃった……なんか、この前のビデオと形が違うなぁ。弟のと同じ?)」

鬼塚「うぃーっと。さっぱりしたぜ」

佐天「あ、ほらほら、座って座って」

鬼塚「お! こいつは美味そうじゃねーか! 朝から焼き魚とか何年ぶりだぁ?」

佐天「はい、ご飯どうぞ。どんどん食べてくださいね」

鬼塚「んじゃ、いただきまーす!」

ガツガツガツガツ モグモグ ゴクゴク ガツガツガツ

鬼塚「おかわり!」

佐天「ちょっと、早すぎですよ! しっかり噛んで食べてください」

鬼塚「わりーわりー。腹減ってたからよ。お、サンキュ」

ガツガツガツガツ

佐天「まったくもう……」

――


鬼塚「あー! 食った食った! いやぁ、佐天の飯はマジで美味ぇな」

佐天「へっへっへ。朝から涙子さんのご飯を食べれるなんて、この幸せ者め!」

鬼塚「自分で言うんじゃねーよ。 っつーかよ、なんでおめーがここにいるんだ?」

佐天「え? って、ほら、先生怪我してたし、ご飯とかも作りそうになかったから……」

鬼塚「おー、そうかそうか。そいつはありがとよ」

佐天「いえいえ(木山先生がいるかどうか見に来たなんて言えないよね……)」

鬼塚「それよりよ、学校行かなくていいんか?」

佐天「えっ? あっ! もうこんな時間!」

鬼塚「おめー、さすがに三日連続で遅刻なんてしてたら、担任うるせーぞ?」

佐天「急がなきゃ! あ、先生、洗い物くらい自分でしてくださいね! 
    食器はまた取りに来ますから! それじゃ、いってきます!」
    
鬼塚「おうよ、気ぃつけて行ってこいや」

佐天「はーい!」

バタバタバタバタッ

鬼塚「ったくよぉ、朝っぱらから起こしやがって……今日は午後からだってのによー」

ガラガラッ キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぅ。お、走ってる走ってる。まあ、美味い飯食えたし、良いとすっか」


――

ちょいと中断

――同時刻 常盤台女子寮

御坂「そうだったの……でも、まぁ、佐天さんも初春さんも無事でよかったわ」

黒子「ほんとですの。全く毎度毎度事件に巻き込まれるなんて……
    佐天さんは仕方ないとしても、やはり、初春に関しては、ジャッジメントとしての自覚が――」
    
御坂「はいはい。まあ、今回はレベル3の『発火能力者』でしょ?
    さすがに初春さん達だけじゃ、なかなか厳しかったかもしれないわね」

黒子「ええ、それ以外にも、スキルアウトに出入りしている方たちが何名か」

御坂「スキルアウト、か……」

黒子「しかし、スキルアウト予備軍は良いとしても、あのレベル3の発火能力者。
    あれを相手にしてちょっとした怪我だけなんて、あの殿方、本当に類人猿かもしれませんの」
    
御坂「ああ、鬼塚先生だっけ? 私も一度見てみたいな」


黒子「いけませんの! あんな野蛮で下品で粗暴な原人を、お姉さまに視界に入れるなど……
    神が許しても、私が許しませんわ! もし、あの野蛮人が何かしたらと思うと――」
    
御坂「わかった、わかった。まあ、変な事してきても、私にもこれがあるからね」

ビリッ ビリビリッ

黒子「そうですわね。お姉さまなら、あんな類人猿なんか相手になりませんの。
    それより、急がないと遅刻してしまいますのよ!」
    
御坂「あっ、ちょっと黒子お願い!」

黒子「んもう、おねえさまったら、こんな時ばかり私を頼って……」

シュンッ


――


鬼塚「食器も洗っておいたし、これで文句は言われねーよな。
    しかし、佐天のやつ、急に懐きだしやがってよ。せめて高校生ならよぉ……」

ゴソゴソ

鬼塚「ま、んな事言っててもしゃーねーし、今日はお待ちかねの女子高だしよ」

バタバタ ガタン

鬼塚「時間もまだまだあるから、とりあえず街でナンパでもしてくるか」

タッタッタ


――

ω ちっちゃい上に皮かぶり

――街中

鬼塚「ナンパっつっても、さすがにほとんどが学生だけあるなぁ……
    人があんまり出歩いてねーじゃねーかよ! ったく、昼寝でもしとけばよかったぜ……」

トコトコトコトコ

鬼塚「ったく、こんなんじゃ、どこに行っても女なんかつかまんねーんじゃ――」

??「あのっ!」

鬼塚「あ? なんか聞こえたような……」

??「こっちだよ!って、ミサカはミサカはあなたの服を引っ張ってみたり」

鬼塚「なんだぁ? このちびっ子は? おめー迷子か?」

ミサカ「迷子なんかじゃないよ!むしろ迷子なのはあの人の方だって、ミサカはミサカは――」


鬼塚「あー、ミサカちゃんっつーのか? んで、あの人ってのはどんな奴なんだぁ?」

ミサカ「えっと、真っ白な髪で、頭に包帯ぐるぐる巻きで、杖をついてて、
    もやしみたいにひょろひょろしてるんだよって、ミサカはミサカは説明してみたり」

鬼塚「真っ白な髪で、もやしだぁ? じーちゃんかばーちゃんでも探してるのか?」

ミサカ「違うんだよ、って、ミサカはミサカは否定してみる」

鬼塚「(よくわかんねーガキだなぁ)あー、そうだなぁ、あれだ、おまわりさんにでも――」

??「クソガキィ! なんでこんなとこにいやがンだァ!?」

ミサカ「あ、やっと見つけたって、ミサカはミサカは――」

鬼塚「あ? そいつがお前の言ってた、真っ白なもやしって奴か?」


ミサカ「そうなの、って、ミサ――あべしっ」

もやし「テメェ、人の事をもやしとか言ってンじゃねェ! ブチ殺されたいのかァ?」

ミサカ「あなたこそ勝手に病院抜け出したりなんてして、って、ミサカは――」

もやし「あァ? ンなこたァ俺の勝手だろォが! ったく、ほら、帰るぞ」

ミサカ「はーい、って、ミサカはミサカはあなたの手を引っ張ってみたり」

鬼塚「なんだってんだ……」

――

表記もやしかよ

>>434
鬼塚は、名前らしき情報は「もやし」しか知らないからね

ただ、これだけは言っておくが、一方通行は好き


――喫煙所

キンッ シュボッ パチン

鬼塚「ふぃー。やーっと喫煙所を見つけたぜ。クソ、まだ10時じゃねーかよ」

??「失礼」

鬼塚「あ? 何か用か?(って、なんだ、この赤髪? この暑い中コートなんか着やがって)」

赤髪「煙草を一本もらえないか? 手持ちを切らしてしまってね」

鬼塚「かまわねーけどよ、ほら」

赤髪「ありがとう。すぅ……ふぅー」

鬼塚「っつーかよぉ、そのコート、熱くねーのか?」

赤髪「いや、そういうのはあまり感じないんだ」

鬼塚「ほー、そうなんか。 ところでよー、この時間帯に可愛いねーちゃんいそうな場所知らねーか?」

赤髪「可愛い……なかなか難しいな」

鬼塚「そうかー。ナンパしようと思ってんだけどよー、全然人いねーんだよ!」

赤髪「なるほど……それならば一つだけアドバイスをしておこう」

鬼塚「あん?」

赤髪「片足のないジーンズを履いた女には気をつけるといい。
    ナンパ目的なんて不謹慎な理由で声をかけると……斬られるよ?」

鬼塚「なっ、斬られるって、おいおい、尋常じゃねーぞ?」

赤髪「そう。尋常じゃない。そして、この街はそういう街なのさ。
    それじゃ、煙草ありがとう。助かったよ。また、縁があればどこかで……」
    
鬼塚「おー、おめーも日射病に気ぃつけろよー(変な奴だったな……)」

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