明久「姉さんと? 一緒に寝てるけど」(149)

明久「だって、家にはベッドが一つしか無いしね」

明久「始めは僕がソファで寝ようと思ったんだけど、
    姉さんが“それは駄目だ”って許してくれなくてさ」

明久「『良いですかアキくん、姉さんは貴方の生活を見るために来たのですよ?
    それなのに、姉さんのために余計な負担をかけるわけにはいきません』ってさ」

明久「だけどさ、いくら姉さんでも女の人をソファに寝かせて、
    男の僕がベッドで寝るのはどうかと思ったんだ」

一同「……」

明久「だから一緒に寝てる……って、どうして皆そんな目で見てるの?」

雄二「……おい、明久。今のはマジか?」

明久「何言ってるのさ。雄二は何回も家に来てるから、
    ベッドは一つしか無いのは知ってるでしょ?」

雄二「そりゃ知ってるが……」

明久「もう、言いたいことがあるならハッキリ言ってよ」

秀吉「ならば言うが明久。“あの”姉上殿と一緒に寝るというのは、
    ……色々と問題がありはせんかの?」

明久「う~ん、姉さんの寝相が悪いのが問題かなぁ」

土屋「…………詳しく」

明久「朝起きたら、姉さんに抱きつかれてたりするんだよね。
    さすがに苦しいから気をつけて欲しいんだけど、中々ね……」

一同「……」

明久「まるで人を抱き枕扱いだよ?
    夜中に目が覚めた時は何事かと思ったよ」

土屋「…………その時の体勢は……っ!?」

明久「? 普通に抱きしめられてたけど、それがどうしたの?
    胸が顔に当たってたけど、いくらなんでも姉さんじゃなぁ……」

土屋「…………羨ましい……っ!」

タパパパパパッ!

雄二「おい、気をしっかり持て! 傷は浅いぞ!」

秀吉「明久、お主一体何を考えておるのじゃ!?」

明久「ねえ、今のは僕が責められるような場面だったの!?
    っていうか、ムッツリーニこそ何を考えてるんだ!」

明久「あのね、いくらおっぱいが大きいとはいえ相手は姉さんだよ?
    羨ましいも何も、抱きしめられてて夜トイレに行けない事の方が問題だって」

土屋「…………胸に挟まれてか……っ!」

タパパパパパッ!

雄二「くそっ、救護班はまだか!? このままじゃ、
    教室が血の海になっちまうぞ!」

秀吉「輸血をしたとて、このままでは意味が無かろう!
    明久、お主は少し黙っておれ!」

明久「……なんだか凄く理不尽な気がするけど、わかったよ」

土屋「…………気にするな……続けろ」

タパパパパパッ!

明久「それは“殺してくれ”っていう意味なのかな。
    血の量を見るに、そうとしかとれないんだけど」

土屋「…………命など……惜しくない」

タパパパパパッ!

雄二「……とにかく、今の話は“あの二人”には絶対にするなよ。
    もしするとしたら、俺らの居ないところでやってくれ」

明久「あの二人って……姫路さんと美波の事?
    っていうか、どうして雄二達が居ちゃ駄目なのさ」

雄二「とばっちりはゴメンだからに決まってんだろ」

明久「?」

秀吉「明久に言っても無駄じゃろう。
    ワシら自身が気をつけねばなるまい」

明久「いや、なんだか相談中の所悪いんだけど、
    姫路さんと美波だったらさっきからずっと後ろに居たよ?」

姫路・美波「……」

雄二・秀吉「うおわああああっ!?」

土屋「…………続きはまだか」

姫路「――そうですね、私も続きが聞きたいです」

美波「――坂本も木下も、当然興味があるわよね」

雄二「いっ、いや! 俺はこれっぽっちも興味が無いな!
    お前もそうだろう、秀吉!?」

秀吉「うっ、うむ! ワシも全く聞きたくはないぞ!
    じゃから、お主達だけで続きを聞くといい!」

明久「二人共、遠慮することないのに」

雄二・秀吉「!」

雄二・秀吉(黙ってろこのバカ!)

明久「そんなに真剣な目で……。
    な~んだ、やっぱり二人も続きが聞きたいんじゃないか!」

雄二・秀吉「明久の目は節穴だ!」

姫路「――それで、玲さんとはベッドでどのように
    イチャイチャしてるんですか?」

明久「……姫路さん、なんだか目が怖いんだけど」

姫路「それは明久君の気のせいです。
    それに、もしも目が怖いとしたら誰のせいでしょうね♪」

明久「うわぁ、小首を傾げるっていう仕草なのに、
    なんでかわからないけど背後にライオンが見えるよ」

美波「――アキ、正直に答えなさい。
    もしも嘘をついたりなんかしたら……」

明久「!? なんだ……この嫌な予感は……!?
    あ、足が震える!? くそっ、どういう事なんだ!」

美波「アキ、本当の事を言ったら三本で許してあげる。
    だけど嘘をついたら五本になるから、覚悟しなさい」

明久「ねえ、その本数は何のカウントなの!?
    それに、本当でも嘘でも二本しか違わないじゃないか!」

美波「骨に決まってるじゃない」

明久「それは決まってないで欲しい!」

美波「本当の事を言ったら、首と右手は残してあげる」

姫路「美波ちゃんは優しいですね。
    利き手が使えないと不便ですし」

明久「嘘をついたら首の骨を折るって言ってるのに“優しい”!?
    それと、嘘をついたら姫路さんはもっと凄い事をする気だったの!?」

姫路「本当の事を包み隠さず言えば良いだけじゃないですか。
    ……それとも、まさか明久君は嘘をつく気ですか?」

美波「嘘をつかれたら……ショックで本数が増えちゃうかもしれないわね。
    だってほら、ウチって繊細だから」

明久「ははは、美波が繊細だって?
    繊細なのは胸だけじゃな背骨があああぁぁぁっ!!」

美波「何ですってえええっ!?」

雄二「あれはアルゼンチンバックブリーカーじゃなく、
    タワーブリッジか……?」

秀吉「相手を抱え上げるだけでなく、
    強靭な首の筋肉も必要になるというのに……!」

土屋「…………あと少し……あと少しで……っ!」

明久「いたたたた……!」

美波「さあ、正直に白状する気になった?」

明久「元から嘘をつく気なんてなかったって!
    ……でも、寝る時のことだから話す事なんてあまり無いよ?」

姫路「それでもですっ!」

明久「う、うん、わかった」

明久「それじゃあ、寝る前の話をするよ――」

     ・    ・    ・

明久『……ふわぁ~あ、もうこんな時間か。
    そろそろ寝ようかな』

玲『アキくん、シャワーは浴びたのですか?』

明久『いいや、まだだけど。
    今日はもう遅いし、明日の朝でも良いかな、って』

玲『わかりました。つまり、アキくんは姉さんに、
   一日でかいた汗――フェロモンを思う存分堪能させる気ですね』

明久『やっぱりシャワーを浴びないと気持ち悪くて眠れないよね。
    隅々まで洗って汚れ一つ無い体にしてくるよ』

玲『そうですか……とても残念です』

明久『姉さんは僕をけしかけるのが上手いなぁ。
    だから、本当に残念そうな顔をしてるのは全然見えないや』

     ・    ・    ・

明久『……う~ん、なんだかんだでシャワーを浴びると気持ち良いなぁ』

ザアアアーッ!

玲『アキくん、背中を流しますね』

明久『……僕は一人でシャワーを浴びてたはずだ。
    だから、後ろから声が聞こえるなんて事は有り得ない』

玲『アキくんの背中……大きくなりましたね』

明久『ひゃうっ!? せっ、背中を指でなぞられたけど気のせいだ!
    水しぶきのイタズラに決まってる! この水め!』

玲『それじゃあ失礼します』

ぽよんっ

明久『もう限界だ! どうして姉さんがここに居るのさ!?
    それに裸だったり胸を押し付けたりお願いだから動かないでえええっ!』

     ・    ・    ・

姫路・美波「ストップ」

明久「えっ? 二人共どうしたの?」

土屋「…………」

ダババババッ!

雄二「おい、何をしてる秀吉! とっととこの場を離れるぞ!」

秀吉「じゃが、ムッツリーニがまだ!」

雄二「アイツはもう手遅れだ! 捨てていくぞ!」

秀吉「その言葉を待っておった!」

雄二「明久、お前みたいなバカの事は忘れないぜ……!」

翔子「……待って雄二」

雄二「うぐおおおおっ!? 目っ、目があああっ!」

翔子「……この話、結婚生活の参考になる」

秀吉「何をしておる!? このままでは逃げ切れなくなるぞ!」

雄二「ひっ、秀吉! 教室の外はどっちだ!?
    何も……何も見えないから手を引いてくれ!」

秀吉「ええい、世話の焼ける!」

グッ!

秀吉「!? お、お主……何故そこから動こうとせんのじゃ!?」

雄二「……くくく……悪いな。もう、俺の脚は動かないんだ」

秀吉「ワシを道連れにする気か!? うっ、裏切り者めぇーっ!」

姫路「吉井明久君」

明久「ねえ、どうして急にフルネームで呼ぶの?」

姫路「吉井明久君。今の話におかしな所があります」

明久「フルネームなのは変わらないんだ……。
    おかしな所? 別にどこも無いような気がするけど……」

美波「本当にそう思う?
    ウチには、おかしな所しか無かった気がするわ」

明久「気のせいじゃないかな。
    だって、姉さんと一緒にシャワーを浴びたってだけだし」

明久「っ!?……なんてこった! 話の流れで、
    別に言わなくてもいいことまで言ってしまっていただと!?」

姫路・美波「……」

明久「……二人共、落ち着いて聞いて欲しい」

明久(そうだ……あれは、姉さんが勝手に入ってきたんだから、
    僕が悪い所なんて一つも無いじゃないか)

明久(それに、さすがにこの歳じゃおかしいけれど、
    姉と弟でシャワーを浴びるのはギリギリセーフなはず)

明久(よし! こうやってちゃんと説明すれば、
    二人だってきっとわかってくれるはずさ!)

明久「あれはね――」

土屋「…………胸の感触はどうだった……っ!?」

明久「――柔らかくてたっぷりとしていて物凄く気持ちよかった
    って何を言わせるのさムッツリーニいいいっ!」

土屋「…………羨ましすぎる……っ!」

タパパパパパッ!

姫路「――明久君、気持ち良かったですか?」

美波「――怒らないから正直に言っていいわよ」

明久「ほっ、本当に怒らない?」

姫路・美波「♪」ニコリ

明久「返事が無いのが気になるけど……うん、気持ちよかったよ」

姫路「美波ちゃん、右側は任せますね」

美波「瑞希、左側は頼んだわよ」

明久「姉さんの肌ってスベスベでさ。それがボディソープの泡で
    ヌルヌルって擦り付けられるから今までに無い――」

姫路・美波「ふんっ!」

明久「――痛みが僕の体を襲ってえええっ!!」

翔子「……雄二」

雄二「先に言っとくが、俺はシャワーは一人で浴びたい派なんだ。
    だから、絶対に風呂場に侵入してくるんじゃないぞ」

翔子「……わかった」

雄二「わかって貰えたようで嬉しいぜ」

翔子「……今晩……私は8時にお風呂に入る」

雄二「それがどうした。まさか、俺が風呂は一緒に入りたい派とでも?
    それに時間を言うだなんて、まさか侵入しに来いって言ってるのか?」

翔子「……雄二のエッチ///」

雄二「だれがそんな事をするなんて言った!?
    おいバカやめろ、期待の目で俺を見るんじゃねえ!」

姫路「まさか……一緒にお風呂に入ってるだなんてっ……!」

明久「ごめん姫路さん、もう一回言ってくれない?
    なんだか妙に声が聞こえにくくて」

美波「一緒にシャワーだなんておかしいわよ!」

明久「い……し……だ……し……い……?
    えっ? なんで急に“山本山”みたいな言葉を?」

土屋「…………耳を……やられたか」

秀吉「このままでは埒があかんな。
    明久よ、続きを話せ」パクパク

明久「あっ、今のは秀吉の可愛い口の動きでわかったよ」

秀吉「その形容は本当に必要じゃったのか!?」

明久「それじゃ、続きを話すね――」

     ・    ・    ・

明久『――まったく、姉さんは本当に非常識だ』

明久『いくら姉弟とはいえ、この歳で一緒にシャワーだなんて
    恥ずかしくないのかなぁ』

明久『……いや、姉さんの“恥ずかしい”は人とは大分ズレてるから、
    姉さんにそういうのを期待するのはやめにしよう』

明久『僕が気をつけつつ、姉さんに常識を教えていくしかない、か』

明久『……くそう、どうして僕はバカなんだ!』

ゴロゴロゴロゴロッ!

明久『どう頑張っても、姉さんをどうにかする方法が思い浮かばないっ!』

明久『お願い神様! いや、この際だから鉄人でも良い!
    誰か僕に良い方法を教えて!』

ゴロゴロゴロゴロッ!

玲『――アキくん、ベッドの上で暴れるのはやめなさい』

明久『あっ、姉さん……。
    いや、ちょっと僕には解けない難しい問題があってさ』

玲『アキくんはバカだから、それは仕方ありません。
  大事なのは、結果が出るまで努力する事ですよ』

明久『結果が出ないと意味が無い……んだよね』

玲『はい』

明久『それじゃあ聞くけど、姉さんが僕にイチャつくのをやめさせたり、
    常識を覚えるために僕が出来る事って何かな?』

玲『アキくん、世の中には無駄な努力というものも存在するのですよ』

明久『その気は一切無いって宣言だよね、それって……』

玲『それに、もう寝る時間です。
  考え事があるなら明日にしなさい』

明久『はーい』

玲『……』

明久『? どうしたの姉さん、ベッドの横に突っ立って。
    そのまま寝る気なら、僕は別に止めないけど』

玲『アキくん。歯を食い縛って下さい』

明久『ごっ、ごめんなさいっ! ちゃんと言うから!
    お願いだから拳を打ち下ろすのは勘弁してくださいっ!』

明久『――どうぞ、いらっしゃい』

玲『はい、お邪魔しますね』

     ・    ・    ・

雄二「――ほう、大胆じゃないか」

明久「僕だって命は惜しいからね。
    生きるためなら、布団をめくって姉さんを招き入れるさ」

秀吉「のう、まさかそれは毎晩されるやり取りなのか?
    明久の言い方だと、そうとしかとれんのじゃが」

明久「姉さんがそうしろって言うんだよ。
    正直、なんであんな事をやらなくちゃいけないかわかんないんだ」

姫路「だったら、明久君は玲さんが“死ね”と言ったら死ぬんですか!?」

明久「はいはーい、姫路さんは何を言ってるのかなー」

美波「アキのバカっ! 死んじゃえばいいのよ!」

明久「はいはーい、美波も言ってる事が厳しいよー」

雄二「まあ、命がかかってるなら仕方ないんじゃないか?」

姫路「でっ、でもっ……!」

美波「あっ、あのやり取りはっ……!」

雄二「そんなに羨ましいなら、お前らもそうしろって言えば良いと思うぞ。
    何せ、コイツはバカだから意味もわからずやると思うしな」

姫路「わ、私が……明久君に……?」

美波「う、ウチが……アキに……?」

姫路・美波「……」

     ・    ・    ・

明久『そろそろ寝ようか』

姫路『はっ、はいっ!』

明久『? どうしたの? ベッドに入らなきゃ眠れないよ?』

姫路『そ、それは……そうですけど……』

明久『しょうがないなぁ』

明久『――瑞希、いらっしゃい』

姫路『おっ、お邪魔します……///』

     ・    ・    ・

明久『そろそろ寝ようか』

美波『そっ、そうねっ!』

明久『? どうしたの? ベッドに入らなきゃ眠れないよ?』

美波『そ、それは……そうだけど……』

明久『しょうがないなぁ』

明久『――美波、いらっしゃい』

美波『おっ、お邪魔します……///』

俺『そろそろ寝ようか』

秀吉『そっ、そうじゃの!』

俺『? どうしたの? ベッドに入らなきゃ眠れないよ?』

秀吉『そ、それは……そうじゃが……』

俺『しょうがないなぁ』

俺『――秀吉、いらっしゃい』

秀吉『おっ、お邪魔します……///』

     ・    ・    ・

姫路・美波「~~~っ///」

明久「もう、いくら僕でも二人にはそんな事言わないって!
    雄二も変な事言わないでほしいな、まったく!」

雄二「ま、そりゃそうか。お前にそんな真似が出来るわきゃないわな」

姫路・美波「あぅ……」

明久「女の子にそんなの言う訳ないでしょ。
    僕が言ってるのは、相手が姉さんだからであってだね」

雄二「だったら秀吉はどうなんだ?」

明久「えっ? そりゃあ――」

秀吉「!? やめろ明久――!」

     ・    ・    ・

秀吉『明久よ、今日はおとなしく寝るのかの?』

明久『秀吉がそうしたいならそうするよ』

秀吉『……意地悪を言うでない』

明久『あはは、拗ねてる秀吉も可愛いなぁ』

秀吉『お主はそう言えば済むと思って……』

秀吉『――明久、来て欲しいのじゃ……』

明久『うん、行くよ……秀吉……』

     ・    ・    ・

秀吉「やめろと言うておろうが!」

明久「ごっ、ごめん秀吉……優しくするから」

秀吉「お主は・何を・優しく・するつもりなのじゃ!?
    それに、ワシだけ他とは違いすぎやせんかの!?」

明久「だって、秀吉は可愛いし……。
    それと、女の子があんまり大声でそんな事を言っちゃ駄目だ」

秀吉「ワシは男なのじゃが!?」

翔子「……」

雄二「……おい、翔子。どうしてここで俺を見て――」

     ・    ・    ・

雄二『おい、翔子。俺は服を着て来いって言ったか?』

翔子『……これは下着』

雄二『あぁ、確かにそれは下着だな。
    Aクラスの人間には似合わない、いらやしい下着だ』

翔子『……っ///』

雄二『もう一度聞くぞ。俺は服を着て来いって言ったか?』

翔子『……』

スルッ…

雄二『そうだ、それで良い。
    そのままベッドの上で足を広げt』

雄二「スト――ップ! これ以上はやめろマジで!」

翔子「……私の夢に割り込まないで」

雄二「あんな想像をされて割り込まない奴があるか!
    っつーか、あれがお前の夢か!? 俺に何をさせる気だ!」

翔子「……違う」

雄二「……何が違うってんだ」

翔子「……雄二はさせる側///」

雄二「そういう事を言ってんじゃねえんだよおおおっ!」

明久「雄二って……そういう趣味があったんだね」

土屋「…………悪くない」

タパパパパパッ!

雄二「お前ら人の話を聞いてたのか!?」

明久「――とにかく、話はこれで終わりかな。
    僕って、布団に入ったらすぐ寝ちゃうんだよね」

雄二「ああ、そうだな。バカだから仕方ない」

明久「雄二は霧島さんを寝かせないつもりだから、
    いつまでも起きてられるんだね、死ねよ」

翔子「……雄二……私は激しくても構わない」

雄二「明久……」

明久「何……?」

雄二「そういう振り……マジでやめてくれ……」

明久「それは……雄二次第かな……」

雄二「そうか……」

姫路「だけど……想像以上でした」

美波「ねえアキ……他には、何か変わったところは無いの?」

明久「他に? そうだなぁ……」

姫路・美波「……」ゴクリ

明久「あ、そうだ。関係ないかも知れないけど、
    最近首筋に変なアザみたいなのが出来るんだね」

一同「!?」

明久「それに……ちょっと大きな声じゃ言えないけど、
    なんだか朝起きたら乳首がヒリヒリしたりするし」

一同「!?」

久保「そ、それはどういうことだい吉井君っ!?」

明久「いや、僕にもよくわからないんだ――って久保君!?」

雄二「おい明久……お前それは……」

姫路「そっ、そのアザを見せてくださいっ!」

明久「えっ? こ、これだけど……」

美波「っ!? じゃ、じゃあ次は胸の方を見せて!」

明久「美波、今とんでもない事を言ってるってわかってる?」

秀吉「……まさか、まだ他にあったりはせんであろうな?」

明久「えっ? えっと……妙に疲れてるのに、
    なんだか爽やかだったり元気が無かったり……って何を言わせるのさ!」

一同「……」

明久「うわぁ、皆の目がまるでゴミを見るような目になってる」

なんで明久ってこんなにもてるんだよ
俺にも一人ぐらいよこせ

アッー!!

姫路・美波「明久君(アキ)っ!」

明久「はっ、はいっ! 何でしょうか!?」

姫路「すぐにでも、玲さんと一緒に寝るのをやめるべきですっ!」

美波「このままじゃ、物凄く大変なことになるわよっ!?」

明久「えっ、えっ? た、大変って……どんな?」

雄二「お前はそれに関して気にするな。
    いくら俺でも、他人の家庭をぶち壊す趣味は無い」

明久「そこまで大事になるかもしれないの!?
    だったら、尚更知っておかなきゃまずい気がするけど」

雄二「とにかく、今日お前んちに行くからな。
    玲さんと話をせにゃならん」

明久「? うん、わかった……」

バカテスト 地理

【第一問】

以下の問いに答えなさい
『市役所・区役所(特別区)をあらわす地図記号を答えなさい』

姫路瑞希の答え
『◎』

教師のコメント
そのとおりです。

土屋康太の答え
『♂♀』

教師のコメント
それは特別ではなく性別です。

     ・    ・    ・

玲「――どうしたのですか? 皆さんお揃いで」

姫路「玲さんっ! 明久君と一緒に寝てるって、ほ、本当ですか!?」

玲「? はい、そうですが……それが何か?」

美波「えっと、ウチはそれはさすがにマズいと思うんです」

玲「マズい、でしょうか?
   具体的にはどのように?」

美波「ぐっ、具体的に……!?///」

明久「くっ……やっぱり姉さんは一筋縄じゃいかないか……!」

玲「私としては、マズい事は何一つ無いと思っています」

秀吉「しかし、いくら姉弟だからとはいえのう……」

玲「姉弟だから、ですよ」

秀吉「む?」

玲「確かに、家族でない人間同士がこの歳で同衾するとなったら、
  そこには色々と問題があるでしょう」

明久「やだなあ姉さん、今は雑巾の話はしてないよ。
    それに、掃除をするのに問題なんてあるはずないじゃないか」

雄二「明久、お前はちょっと黙ってろ」

翔子「……私と雄二は夫婦だから……問題は無い」

雄二「翔子ー、出来ればずっと黙ってろー」

玲「しかし、私とアキくんはあくまでも姉弟なのです。
   姉と弟が一緒に寝たからといって、何が問題なのでしょうか?」

姫路「そ、それは……」

美波「あ、玲さんは、アキのことを一人の男として愛してるんですよねっ!?」

明久「お願い美波! 答えを聞きたくないから、
    そういう確認をするのはやめて! 土下座するから!」

玲「確かに、私はアキくんを一人の男として愛しています。
  けれど、肉体関係はあくまでも姉と弟です」

明久「姉さんは今すぐ僕の見事な土下座を見るべきだ!
    っていうか、肉体関係じゃなく家族関係でしょ!?」

玲「肉体の関係だから、間違いは無いでしょう」

明久「……あれ? 言われてみればそんな気も……」

雄二「いやいや、明らかにおかしいだろ」

玲「それに、一緒に寝るのは理由があります」

玲「――まず、ベッドが一つしか無いのが一つ。
  これに関しては、恐らくアキくんに話を聞いているでしょう」

姫路「明久くんをソファで寝かせるわけにはいかない……っていうのと」

美波「アキが、姉さんとはいえ女の人をソファで寝かせるわけにはいかない、
    っていうやつですよね」

玲「はい、その通りです。アキくんに一人の女扱いされた時、
  姉さんは喜びに打ち震えるのを必死で耐えていました」

明久「うん、今の台詞のほとんどは必要ないよね」

玲「いいえ、姉さんはアキくんに知っていて貰いたかったのです。
   良い機会でしたので、教えておくことにしました」

明久「う~ん、何の話だったっけ?
    あぁ、今日の夕飯は何にしようかなぁ」

玲「アキくん。目をつぶって少し顎を上げなさい」

明久「姉さんは僕に何をする気なの!?」

玲「? チュウに決まっているじゃありませんか」

明久「決まってない! 決まってないよ!
    さも当然のように言われても困るから!」

玲「――とにかく、今のが私とアキくんが一緒に寝る理由の一つです。
   この理由に関して、何か質問はありますか?」

姫路「いえ……ありません」

美波「ウチも……ないです」

明久「はーい!」

玲「はい、アキくん」

明久「姉さんはいつまでここで暮らすつも痛いっ!
    ねっ、姉さんっ! 二の腕をつまむのは地味に痛いから……っ!」

玲「質問は無いようですね」

雄二「それじゃあ、他の理由は?
    理由の一つってことは、まだあるんだろ?」

玲「はい、勿論あります」

玲「アキくんと姉さんが一緒に寝るのは――
  姉さんが、アキくんを世界中の誰よりも愛しているからです」

明久「姉さんの視線に込められた愛情は家族に対するものだよね!
    いやぁ、家族の絆って本当に素晴らしいなー!」

玲「アキくん」

明久「僕は認めない……っ! 認めたくないんだ……っ!
    姉がとんでもない変態だなんて事実は……!」

玲「愛の形は人それぞれですよ」

明久「便利な言葉だよねぇ、人それぞれって!」

玲「これだけ愛しているのですから、
   むしろ一緒に寝ない方が不自然だと思います」

翔子「……納得した」

明久「くそっ、霧島さんが裏切った!
    雄二、どうしてくれるのさ!?」

雄二「俺に言うんじゃねえ!
    むしろ、お前こそどうしてくれる!?」

翔子「……///」

雄二「アイツを見ろ! 翔子のヤツ、
    俺と一緒に寝るのが当然だと思い込んでやがるぞ!?」

明久「ここで愛されてるってノロケか!
    はっ! どうやら命は惜しくないようだね!」

土屋「…………トドメは任せろ」

雄二「俺にどうしろってんだよチクショオオオッ!」

姫路「でっ、でもでもっ! 明久君は体調が悪くなってますし!」

美波「みっ、瑞希の言う通りだわ! このままじゃ良くないです!」

玲「体調不良、ですか?」

美波「く、首筋にアザが出来たり……」

玲「虫刺されです。悪い虫ではありませんので安心してください。
   コレに関しては、私が保証します」

姫路「その、ちっ……ち……くび……がヒリヒリしたりっ///」

玲「寝ている間にアキくんが無意識でいじっているんでしょう。
   我が弟ながら、本当にいやらしくて嬉し涙が出てきます」

明久「そんな事しないってば! それにどうして嬉し涙が!?」

姫路「確かに……それはありえます」

明久「姫路さんはそれで納得しちゃうの!?
    僕のイメージって姫路さんの中ではどうなってるんだ!」

明久「正気を取り戻して姫路さん!」

姫路「! は、はいっ! アキちゃんのために頑張ります!」

明久「よーし、全然正気じゃない気がするぞ」

姫路「それじゃあ玲さんっ! 明久君が、
    疲れてたり爽やかだったり元気が無いのはよくないと思います!」

明久「やっぱり正気じゃなかった!
    姫路さん、女の子がそんな事言っちゃ駄目だってば!」

玲「不純異性交遊対策です。
   アキくんも、出しておけばおかしな真似はしないでしょう」

明久「姉さんは僕に何を出させてるの!?
    ――いや、待って! 言っちゃ駄目だ! ストップ!」

玲「思春期特有の何かです」

明久「ふぅ……ギリギリセーフ……!」

雄二「……いや、完全にアウトだろ」

秀吉「――お主ら、大変じゃ!」

一同「?」

秀吉「あれを見よっ!」

土屋「…………燃え尽きた……真っ白な灰に」

タパパパパパッ!

明久「……なんだろう……ムッツリーニが、
    何かをやりとげた男の中の男に見える……」

雄二「……ああ……命を燃やし尽くして、
    もう戦う理由も無くなったと言わんばかりだ……」

明久・雄二「白じゃなくて赤だけど」

うちのブラウン管テレビだと
姫路「吉井君…」なんだけれど
液晶だと姫路さんの一人称「明久君…」になるのか?

買い換えないとダメかな

玲「――とにかく、そういう訳ですので」

雄二「――いや、アンタと明久は別々に寝るべきだ」

玲「……何故ですか?」

姫路「えっ、どうしてですか?」

美波「なんでよ?」

雄二「おい、お前ら……」

明久「どうしてさ、雄二」

雄二「お前はせめてこっち側にいろ! このバカ!」

雄二「おい、明久」

明久「何さ、雄二」

雄二(――今回は協力してやる。
    でないと、俺もまずい事になるからな)

明久(――雄二がまずいことに?)

雄二(あぁ、そうだ。このままだと、
    翔子が俺と一緒に寝るために何をするかわからんからな)

明久(そりゃあ、霧島さんは雄二を世界で一番愛してるだろうからね)

雄二(……わかってくれたか)

玲「不純な同性交遊は許しますよ」

翔子「……雄二、浮気は許さない」

明久・雄二「断じて違うっ! 誰がこんなバカとっ!」

雄二「……――とにかく、二人が一緒に寝ることで害が出てる。
    さすがにそれを見過ごすのはまずい」

玲「害……ですか?」

雄二「あぁ、そうさ。なあ明久、夜中目を覚ました時、
    玲さんが抱きついててトイレに行けないんだよな?」

明久「えっ……うん。肝臓が破裂するかと思ったよ」

雄二「それを言うなら膀胱だろ。
    とにかく、これはさすがにまずいと思わないか?」

玲「そうですね。では、オムツを買っておくとしましょう」

明久「姉さんは僕にそれをどうしろと!?」

玲「アキくん。姉さんは、アキくんのオムツを換えるのは嫌ではありませんよ。
   むしろ、望む所と言った方が良いでしょう」

明久「僕はこの歳でオムツを換えられるなんて嫌だよ!
    確かに僕はバカかもしれないけど、ボケは進んじゃいないって!」

雄二「明久はボケてるようなもんだが、
    さすがにこの歳の野郎がオムツってのは、立派な大人って言えるのか?」

玲「……それでは、寝る前にトイレに行くのを義務付けます」

雄二「トイレの躾をされるのが立派な大人……か」

玲「……確かに、それは違いますね」

明久「良いぞ雄二!」

雄二「さらに、不純異性交遊対策ってのは諸刃の剣だな」

一同「?」

明久「雄二、それはどういう意味さ?」

雄二「玲さん。アンタがその対策をし続ける限り、
    明久とアンタがそういった関係になる可能性は低い」

明久「ねえ、それはどういった関係なの!?」

玲「! 成る程……アキくんが私を女として意識しても、
  何かを実行する前に理性がそれを抑え付けてしまう、と?」

雄二「ご明察」

明久「良くないぞ雄二! いや、姉さんは納得しそうだけど、
    この方向で話が進むのはなんだか凄く良くない!」

雄二「明久、バカのお前にもわかるように例えてやるよ」

明久「ありがとう雄二、バカの雄二の例えでもわかるよう頑張るよ」

玲「……」

雄二「……例えばだ、ゲームで相手が大技ばっかり出してきたら?」

明久「そりゃあ、最初の内は驚くかもしれないけど、
    その内慣れてきてなんともなくなる……かな」

玲「アキくん、今すぐベッドを買いに行きますよ」

明久「えっ!? なんだか凄く決断が早くない!?」

玲「――確かに、愛し合う二人はくっついて寝るべきです。
   しかし、それだけでは駄目という事に気付きました」

明久「それじゃあ……別々に寝てくれるの?」

玲「その方が、アキくんと姉さんのためになるようですし」

明久「姉さんのためってのがイマイチわからないけど……。
    とにかく、これで助かったよ」

玲「助かった……とは?」

明久「いくら相手が姉さんでも、
    毎晩一緒に寝てたらさすがにちょっとは胸とか触ってみようかってk」

玲「ベッドを買うのは中止です」

明久「姉さん、今すぐベッドを買いに行こう!
    二人で出かけるなんて、まるでデートみたいだね!」

玲「……デートと言われたら仕方ありません。
   “新しいベッド”を買いに行きましょうか」

明久「ん? なんだか気になる単語があったけど……まあいいか!」

吉井玲先生の 特別保健体育試験

こちらでは私、吉井玲が学校のテストとは異なる形式の問題を出していきたいと思います。
正解が一つに限られる画一的なものではなく、
もっと自由に幅広い回答が可能な出題形式です。
決して個人的な調査を目的としているわけではありませんが、
質問には正直に答えてください。


姉さんのどんな所に、異性としての魅力を感じるでしょうか?
理性を忘れてしまいそうになる姉としての部分でも構いません。

吉井明久の答え
『(回答者が逃走したため白紙)』

吉井玲のコメント
(吉井玲が追走したため白紙)

     ・    ・    ・

雄二「――それで、結局ベッドは買ったのか?」

秀吉「うむ。二人共物凄い勢いじゃったから、
    こちらは退散するのでやっとだったぞ」

明久「ごめんごめん。姉さんが考えを変えない内に、
    って思ったらさ」

雄二「まあ、それもそうか」

土屋「…………明久、後悔するなよ」

明久「ははは、後悔なんてするわけないじゃないか。
    この歳になって姉さんと寝てる方がおかしかったんだって」

明久「よくよく考えてみたら、昨日までの僕はどうかしてたね。
    だって、姉さんと寝るのが普通だって思ってたもん」

雄二「それ程玲さんの誘導が上手かったか、
    お前があまりにもバカだったかはわからんがな」

姫路「それで、ベッドは今日来るんですか?」

明久「うん。確かそのはずだよ」

美波「アキ、良かったじゃない」

明久「ありがとう、これも皆のおかげだよ!」

明久「よーし、今日は久々に一人でゆっくり眠れるぞー!」

     ・    ・    ・

明久「……――なんて思ってた昼間の僕を殴りたい!
    何も考えてなかっただろう、バカ面のこの僕を!」

玲「アキくん、それはいつものことですよ」

明久「姉さん、聞いても良いかな?」

玲「はい、構いませんよ」

明久「これが、昨日新しく買ったベッドだよね?」

玲「はい、そうですよ。見ればわかるでしょう」

明久「……それでさ――」

明久「――どうして新しいベッドが、今まで僕のベッドがあった位置にあるの?
    っていうか、僕のベッドはどこに行ったの?」

玲「アキくんは何を言ってるんですか」

明久「ごめん、説明して貰えないと僕の頭じゃ理解出来ないんだ」

玲「はぁ……仕方ありませんね」

明久「とりあえず……僕のベッドはどこに?」

玲「処分しました」

明久「処分した!? どうしてそんな事するのさ!」

玲「全く、新しいベッドを買ったからに決まってるじゃありませんか」

明久「ここで僕が呆れられるのはおかしいと思うんだ」

玲「要は、害を取り除けば良い訳です」

明久「……つまり?」

玲「アキくんには、同じベッドで寝つつも、
  触れようとしなければ触れられない位置に居る姉さんにムラムラして貰います」

明久「何を言ってるのかな姉さんは!
    ははは、僕にはサッパリ理解出来ないよ!」

玲「そのためにベッドは大きいものにしましたし、
   何をするにしてもマットレスが柔らかいので安心です」

明久「何故だろう……状況が良くなったように見えて、
    実はまるで改善されてない気がする……!」

玲「それに、姉さんが我慢出来なくなっても同じベッドなので平気です」

明久「やっぱり……やっぱり姉さんは非常識だ!」


玲「――アキくん、これからも一緒に寝ましょうね」


おわり

こんなくだらないもん最後まで読んでくれてありがとう
おやすみ

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