美琴「えへへ~、当麻ダイスキ!」(322)
上条(なんでこんなことになっているんだ……)
美琴「えへへ~、当麻~当麻当麻~」
上条「あの~、御坂さん? さっきから一体なんの冗談でせうか?」
美琴「…………イヤ」
上条「ハイ?」
美琴「美琴、って読んでくれないとイヤ。返事しないもん」
上条「いやいやいや御坂さん、ここは人の目とかあるんでできればそういう羞恥プレイ的なのはさすがの上条さんも遠慮したいのだけど」
美琴「……ムー」
上条「うっ……、み、美琴」
美琴「なあに? 当麻♪」
上条(なんのバツゲームだこれはー! 今日も今日とて不幸だー!)
上条(とりあえずいつもの御坂じゃないってことはわかるんだけど……まさか、魔術師!)
美琴「当麻」
上条(いやいやいやそれはさすがにないですって。御坂にこんなことさせる意味がわかんねえし)
美琴「当麻、ねえ当麻ったら!」
上条(となるとあれか最近発売されたって土御門が言っていた新型ナノマシンの所為か? いや、それも……)
美琴「ムー、私を無視するなんて~。くらえっ!」
上条「うわっ! ……み、美琴さん? なななな何をやっているんでせうか?」
美琴「はひっへひひほはんへふの(何って耳を噛んでるの)」
上条「だからどうして俺の耳を美琴が噛んでいるのかって聞いているんですけどねえっ!」
美琴「なめなめ」
上条「みっ、耳を舐めるなあ!」
上条(柔らかい舌が熱くて耳舐めて中学生であばばば)
美琴「はむはむ~」
上条「甘噛みらめぇっ!」
上条(こここんなときはそ、素数をを数えて2、3、あー歯の感触がー)
美琴「えへへ~、当麻の耳の穴、綺麗にしてあげるね?」
上条「ギブ! もうギブ! なんかよくわからないけどすいませんでしたぁ!」
美琴「当麻が悪いのよ、私が呼んでいるのに無視するんだもの」
上条「はあ……ゴメンナサイ」
美琴「だから、私の声が聞こえない耳なんて食べちゃえ、って思ったの」
上条(あれー、これは上条さんが悪いのかなあ。どう考えてもこの子の脳みそが理論飛躍を行っているとしか思えないんでせうが)
美琴「アイス一個で許して上げている私の心の広さに感謝してね♪」
上条「その心の広さの裏には上条さんの財布が犠牲になっていることを忘れないでもらいたいんだが」
美琴「ん~♪ 甘くて美味しい~」
上条「うわー無視ですかそうですかつうか御坂はお嬢様なんだからアイスくらい自分で買えよな!」
美琴「今御坂って聞こえたような……。あ~あ~、私なんだか急にデラックスジャンボマキシマムチョコレートパフェが食べたくなってきたなぁ」
上条「美琴さんマジすいませんっしたぁっ!!」
上条(とにかくこのままじゃ俺の精神とお財布がもたない……。何とかしてこの場を脱しないと)
上条「あーっと、そういえばインデックスに餌を上げるの忘れてた!」
上条「悪いな美琴、今日はもうこのへんで――」
美琴「ダメ」
上条「あのー美琴さん? 腕組まれるとウチに帰れないんですけど」
美琴「帰らせないために腕組んでるんだもの、当たり前でしょ」
上条「あー、あと、その、なんというか」
美琴「なに?」
上条「いや、二の腕辺りに仄かに柔らかみを感じるのですがもしかしてこれは……」
美琴「うっ……、ち、小さいけど、その、当ててんの!」
上条「……」
上条(……………………………………………………これが、萌えか)
美琴「私がここまでしているんだから、その、あのシスターのところに行かないでよね」
上条「ハッ……。危うくインデックスのこと忘れるところだった」
美琴「ムー、やっぱり帰っちゃうの?」
上条「いやほら、美琴さんもペットの猫が空腹で待っているのを放っておけないでしょ? それと一緒だって」
美琴「でもあの子は女の子だし……」
上条「いやインデックスは女の子というか野良猫であって野良シスターで、べつにそういう感情は」
美琴「ないの? これっぽちも?」
上条「うっ……」
美琴「あるんだ」
上条「いやでもそれは健全な男としてなくてはならないものというか――」
上条(ああ俺は一体何をやっているんだー! 不幸だー!)
上条「というわけで、俺が家に帰るのは帰巣本能というわけだから……」
美琴「う~わかったわよ。帰っていいわよぅ」
上条(やっとわかってもらえたー! つーか三十分も説得していたのか俺)
美琴「じゃあ、そのかわりに……んっ!」
上条「ハイ?」
美琴「ん~~~~~~」
上条(御坂が、俺に向かって、唇を突き出している。よし、現実逃避のための事実確認完了。)
上条「えーーーーーっと」
美琴「ん~~~~~~」
上条(何だこの状況、どうする俺、どうする俺!)
美琴「ん~~~~~~……えいっ!」
上条「んっ!」
上条(ぬあーぬあーぬあー! チッスがぁあああ! 上条さんのファーストチッスが奪われたぁああ!)
美琴「もう、当麻が早くしないから、私からしちゃったじゃない!」
上条「うぅ……、もうお嫁に行けない……」
美琴「何バカなこと言ってんのよ。……それとも私が相手じゃ嫌だった?」
上条「うっ……」
上条(上目遣いで涙目とか! 卑怯だろ! 御坂、恐ろしい子!)
上条「い、いやじゃない……」
美琴「ホント?」
上条「というか美琴の方こそ、その、俺なんかが相手でよかったのか?」
美琴「うれしい! 私のこと気遣って言ってくれているんでしょ? だから当麻ってスキ!」
上条「美琴……」
上条(なんでだろう……、御坂がいつになく可愛く見える気がしてきたぞ)
美琴「それじゃあ、今日はお別れね」
上条「あっ、ああ……」
美琴「なあに、その顔? 今になって離れるのが嫌になっちゃった?」
上条「いや、そういうわけじゃ……」
美琴「そうなんだ、私は、当麻と離れるの寂しいな……」
上条「うっ……」
上条(まただ。なんだか急に……、クソッ、下手な魔術攻撃よりもタチが悪い。早くこの場を離れないと)
上条「それじゃあな、美琴」
美琴「うん! またねっ、当麻!」
上条(なんだったんだ今日の御坂は。まるで、別人みたいだった)
上条(新しいシスターズか? でも、あの計画はもうなくなったんだし)
上条(魔術……もなさそうだな。土御門もなにも言ってこないし、そうホイホイと学園都市も侵入を許す訳ないだろう)
上条(じゃあ誰かの超能力? 記憶や人格に影響を及ぼす能力っていうのを、たしか習った気が……)
上条(いや、アレでもアイツは学園都市第三位の御坂美琴だ。そんじょそこらの能力者に遅れをとるとは思えないな)
上条(まあ、あまり考えすぎることでもないか。……多少の役得はあったし)
上条「って、おわっ! 携帯か……。御坂から? さっきまで会っていただろうに」
上条「もしもし?」
美琴『あ、当麻? 言い忘れてたことがあるんだけど』
上条「言い忘れてたこと?」
美琴『うん! あのね』
美琴『当麻、ダイスキ!』
美琴『えっへへ~、それだけだから! じゃ!』
上条「………………………………………………………………………………」
上条(早くなんとかしよう。俺の理性が壊れる前に)
上条「ただいまー」
いん「あ、とうまーおなかへったー。おかえり」
上条「お前は挨拶よりも自分の空腹具合を優先させるのな」
いん「おなかへったおなかへったおなかへったー!」
いん「あんまりお腹が好き過ぎてスフィンクス食べちゃうところだったよ」
上条(三毛猫がかつてないほどに感謝のまなざしを俺に向けている! そんなにヤバかったのか)
上条「わかったから、おとなしく待ってろ。今すぐ作ってやるから」
いん「それにしてもとうま、こんびにに行くだけなのにずいぶんと時間かかったよね?」
上条「あーそれはー」
上条(コンビニから帰る途中たまたま見かけた御坂に声をかけたらあんな状態だった、なんて口が裂けても言えないな)
上条「いやーまあ、いろいろあってな」
いん「ふーん、まあどうせまた女のコのことでいろいろなんだろうけど」
上条「……」
いん「なにその間は、なんで目をそらすの、とうままたなの、またなんだよね、キシャーーー!」
上条「ぎゃあああああああああ!」
上条「って、あれ?」
上条(いつもの噛み砕きがこない? ん? 『噛み』ってなんかついさっき聞いた響き……)
いん「とうま……」
上条「は、はい?」
いん「わたし、とうまの耳を噛んだ覚え、ないんだよ」
上条「耳? ……あっ」
上条(あ、あの時、御坂に噛まれたんだった!)
上条「いや、インデックス! これは、その、犬に噛まれて!」
いん「犬がこんなに丸っこい歯形しているの?」
上条「ああ、そ、それは……」
いん「とうま、わたしに何か隠してる? またなにか危険なこと、それとも……」
上条「インデックス……」
いん「とうま……。わたしが邪魔だったら、すぐに追い出してくれていいんだよ?」
上条「なっ!」
上条「いきなり何いってんだよインデックス!」
いん「わたしはおかしなこと言ってないんだよ」
上条「俺がお前を邪魔だと思う訳ないだろ」
いん「今は、ね……。でも、とうまもそのうち気づくよ、わたしが言っていること」
上条「インデックス……」
いん「だから、ね。その時までは……いっぱいごはん食べさせてもらうんだから!」
上条「は?」
いん「なにやってんのとうま。ほら、さっさと手を動かして! 働かざるもの食うべからずなんだよ!」
上条「いやその理屈だと一番食べてはいけないのはインデックスさんだと思うのだけど……あれ?」
上条(なんだったんださっきのシリアスな空気は。幻想?)
いん「とうまー! はーやーくー!」
上条「ああもう、わかったわかったよわかりました!」
上条(たっく、昨日は御坂といいインデックスといいおかしな一日だったな)
上条(まあ、インデックスの方はメシ食ったらいつも通りだったけど)
上条(問題は……)
美琴「あ! 当麻だー!」
上条「ゲッ、みさ……じゃなくて、美琴! なんでこんなとこにいるんだよ!」
美琴「なんでって、そんなの決まってるじゃない。当麻のこと、待ってたのよ」
上条「はい?」
美琴「だーかーらー、一緒に学校いきましょうって言っているの!」
上条「いやそもそも学校違う……っていうか、美琴の学校は全寮制じゃなかったのか?」
美琴「抜け出してきたわよ」
上条「えぇー、いやいや、それはマズイと上条さんは思うわけですが」
美琴「大丈夫よ、怒られるのは私なんだし。説教くらいで当麻に会えるんだったら安いものだわ」
上条「いや、そのセリフは大変嬉しいんだが……」
美琴「うぅ……、当麻と一緒に学校へ行くの、夢だったのよ」
上条「うっ」
美琴「それとも、当麻は私と並んで歩くのはいや?」
上条「ううっ」
上条「わ、かりました……」
美琴「ホント? やったぁ! 当麻と登校♪ 当麻と登校♪」
上条「なんか、流されっぱなしな気がするんですけど……」
上条(でも、まあ)
美琴「んふふ~♪ うっれしいなっ!」
上条(この笑顔がみられるなら安いもの、か)
美琴「うわ~! ここが当麻の学校なのね!」
上条「まー、そうだな」
美琴「ふ~ん、意外と普通ねえ」
上条「意外と、って一体どんな想像してたんだ」
美琴「当麻の通う学校だから……生徒の大半が問題を抱えた女の子、とか?」
上条「なんだソレ……。そんなわけないだろ」
美琴「そう? あながち間違いでもない気がするんだけどなー」
上条「それより美琴さんはいつまで付いてくるつもりでせうか」
美琴「ん? 今日一日」
上条「……はい?」
美琴「だからぁ、今日はずっと当麻と一緒、って決めたの」
上条「……そんなこと聞いてないんですが?」
美琴「当たり前じゃない、今決めたんだもの」
上条「マジか……」
美琴「さぁ! そうと決まったら、当麻の教室へいきましょう!」
上条「はぁ……おはよーっす」
青髪「おっはーかみやん! 今日も今日とて不幸オーラバリバリ全開やねえ」
土御門「そうだにゃー。ついでに言うと独り身オーラもバッチりぜよ」
美琴「へー、ここが当麻の教室なんだ。うわー!」
青髪・土御門「「愛と嫉妬のクロスボンバー!!」」
上条「ぐへぁっ!」
美琴「と、当麻!?」
青髪「見損なったで! かみやん! いくら女の子に餓えてたからって、犯罪に手を染めるなんて!」
土御門「それも常盤台というお嬢様学校! 女の子だけじゃなくお金にも飢えていたんだにゃー」
美琴「ちょ、ちょっとアンタたち! 私の当麻になにしてんのよ!」
青髪「かーっ! おまけに名前で呼ばせて私のもの発言とは!」
土御門「もうそこまで調教しちまったのか……! 畜生かみやん鬼畜すぎるぜい!」
青髪「しかし俺たちはそんなかみやんを見放さない!」
土御門「友として、男として、かみやんには激しく同意せざるを得ない!」
青髪「ダークサイドに堕ちてしまったかみやんを救うのが、友人である俺たちの務め!」
土御門「そして、なによりうらやましい!」
美琴「アンタたち……」
美琴「いい加減にしろーーーーーーーーーー!」
青髪・土御門「「にぎゃぁああああああああああああああああ」」
青髪「なーんだ、べつにかみやんが攫ってきたわけじゃあらへんわけね」
土御門「いやー、俺たちは最初っからかみやんの無実を信じていたぜよ」
上条「その割にはずいぶんとキツイ一撃を食らった気がするけどな」
青髪「まあ、それはほぼ十割嫉妬やね」
上条「嫉妬?」
土御門「当たり前だにゃー。昨日までコッチ側にいたかみやんがいきなりこんな可愛い彼女を引き連れてくるんだぜ」
青髪「そりゃ嫉妬もするっちゅうねん」
上条「あのな……」
美琴「かわいい彼女……うふふ♪」
上条「……ったく」
青髪「それで? 彼女さんはどないするん? まさか高校の授業受けるわけにも行かんやろ」
美琴「んーそうねー。本当はずっと当麻の傍にいたいけど」
上条「なっ……」
青髪「ひゅーひゅー、いや熱くてかなわんねえ」
上条(青髪、あとでヌッ殺す)
美琴「学校の様子も気になるし、一度戻るわ」
青髪「えーかえっちゃうん? そしたらかわいい女子成分が子萌センセくらいしかなくなってまうやん!」
美琴「そ、そう? そんなことないですよ……。ほ、ほら、あそこの髪の長い人とか、すっごい美人!」
青髪「ああ、吹寄? あかんあかん、アイツはデコ型人間兵器やから。おっぱいミサイルとか素でできるヤツやから」
上条「青髪……お前、自分から死亡フラグを」
青髪「ハイ?」
吹寄「だぁれが、デコ型人間兵器ですってぇ?」
青髪「ひ、ひぇええ! お、おたすけぇえええええ!」
上条(俺が殺る必要はなくなったな……南無)
復活していたのか……
今日の夜まで残っていたら続き書きます。
保守よろしく!
美琴「ムー、でもこのクラス本当に美人が多いわね……」
美琴「当麻はカッコいいから……心配だわ」
上条「いや、べつに心配になることなんてとくにないだろう」
青髪「ここでこう言ってのけるのが、かみやんがかみやんたる所以やなー」
上条「なんだソレ?」
空気「つまり。君は自分のことを知らなさ過ぎる。ということ」
上条「うわっ! い、いたのか姫神……全然気付かなかった」
空気「いいの。どうせわたしは陰の女だから。でも陰はいつもつかず離れない」
美琴「ムッ」
上条「あのー姫神さん? 何を言っているかわからないうえに、俺の背中にしがみつくのやめてもらえませんかねえ? ぶっちゃけ凶悪な何かが当たっているので……」
美琴「そうよ! とっとと当麻から離れなさいよ! 当麻が迷惑してるでしょ!」
空気「迷惑だった。君がそういうなら降りるけど」
上条「いやー、べつにそれほど迷惑というほどでもないような気がしないでもないでせうが」
美琴「キッ!」
上条「姫神さん頼むから降りてください、イヤまじで。じゃないとビリビリしちゃうから」
上条(なんか最近俺弱いなぁ……)
空気「嫌」
上条「嫌ってアナタ人命かかってるんですけどっ!」
美琴「さ、さっさと離れなさいよ!」
空気「……」
美琴「無視すんなっ!」
美琴「いいわよ、こうなったら……えい!」
空気「……っ!」
上条「いやいや美琴さん、アナタまでなんで俺にしがみついてんでせうか、それも前に」
美琴「ど、どう?」
上条「どう、ってなにが?」
美琴「だから……その、胸、とか……」
上条「あー、胸?」
美琴「なんなのよその反応はなんなのよその反応はなんなのよその反応は!」
空気「……フッ」
美琴「アンタも勝ち誇った顔すんなー!」
空気「質量の差。それは越えられない壁」
美琴「うぅ……悔しいけど、たしかに今は超えられないわ」
美琴「なら、愛情でカバーよっ! んっ!」
上条「っ!」
空気「な」
上条(なにキスとかしてんですか御坂サーン!)
美琴「んっ、ちゅ、んんっ……」
上条(わー舌って柔らかいんですねー。なんかいい匂いもするしー)
美琴「んっ、んむっ、ちゅ……っふぁ」
美琴「え、えへへ……激しいの、しちゃったぁ」
一同「・・・・・・」
上条「な、なに、しているんだ……御坂サン」
美琴「だから、愛情でカバーするって言ったでしょ!」
上条「だからってこれは――ぁだだだだだっ!」
空気「ズルイ。私も」
上条「やめてやめて姫神さん、上条さんの首は180度は曲がりませーんっ!」
「おい、殺っちまうか?」「そうだな。これ以上、ヤツをのさばらせておくわけにも……」
上条「そしてそこのクラスメイト! なに勝手に上条さん暗殺計画なんぞを画策しているんだー!」
美琴「あっ! ちょっとぉ、当麻にヒドイことしないで!」
空気「そっちこそ。いきなり唇を奪うなんて。彼が可哀想」
美琴「べ、べつに初めてじゃないんだからいいでしょ!」
姫神「な。なんてこと」
「聞いたか?」「初めてじゃない……だと……」「あのヤロウ彼女じゃないとか言っておいて」「殺すだけじゃ生ぬるいな」
上条「やめてー! 御坂さんはこれ以上火に油を注がないでー!」
ロリ「本当にウチのクラスは賑やかですねー、ってみんななにやってるんですか!」
ロリ「姫神ちゃんは上条ちゃんの首を離して! それからアナタは『超電磁砲』ちゃんですよね、こんなところにいないで早く学校に戻りなさい!」
美琴・空気「「ハ、ハイ」」
上条(おおっ、小萌先生の剣幕があの二人を引っぺはがしたぞ)
ロリ「あとみんなは上条ちゃんに能力向けるくらいだったらちゃんと勉強しなさーい!」
一同「「チッ」」
上条(そしてあの殺気立っていた奴らまで……)
上条「天使だ、エンジェルだ。小萌先生から後光がしているように見える……」
ロリ「それから上条ちゃん?」
上条「は、はい!」
ロリ「なにがあったかよくわからないですけど、十中八九上条ちゃんが悪いので、あとで課題をたっっぷり用意しますから楽しみにしてくださいね♪」
上条「え、いや、それはあまりにも理不尽というもんだと思うのでせうが……」
ロリ「なにか?」
上条「いえ、なんでもありません……」
上条(なんで朝からこんな目に……。やっぱり不幸だー!)
上条「ああ、やっと昼休みだ……」
上条(御坂もなんとか帰ってくれたし姫神も暴走したのを謝ってくれて、なんとか落ち着いたな)
上条「もうクタクタ……午後の授業はサボりたいぜ」
土御門「なあ、かみやん」
上条「ん? 何だ土御門か、どうした?」
土御門「今朝のあのコ、御坂美琴だよな」
上条「なんで知って、ってああ、レベル5だもんな。知らない方が珍しいか」
土御門「いや、それもあるんだが舞花からよく話を聞くからな」
上条「そうか、アイツも常盤台だったっけ」
土御門「けっこう話を聞いているうちに俺なりの御坂美琴像が出来ていたんだが……正直、アレは大分ちがったぞ?」
上条「そうなんだよなー。なんでだかわからないけど、突然ああなっちまったんだよ」
土御門「そうか……」
上条「なあ、土御門。新しい魔術師が学園都市にやってきて御坂に魔術をかけた、ってことはないか?」
土御門「いや、そんな情報は入ってない」
上条「そうかー、じゃあ一体……」
土御門「心当たりが無くもないな」
上条「マジか!」
土御門「ああ。と言っても本当に関係があるかはわからないがな……」
上条「なんでもいい、とりあえずアイツがああなった原因を知りたい!」
土御門「……なあ、かみやん。一つ聞くが、お前は一体どうしたいんだ?」
上条「どう、したい?」
土御門「中学生とはいえ美少女のお嬢様が自分に対して積極的にアプローチを仕掛けてきているんだぞ。男としては実によろこばしいシチュエーションじゃないか」
上条「いや、それは……アイツの意思じゃないかもしれないだろ。誰かに操られているとか」
土御門「そうじゃなかったら?」
上条「そう、じゃない……」
土御門「彼女は元からかみやんに対してそういう感情を持っていて、それが何かのきっかけで表に出ただけだとしたら」
土御門「かみやんは彼女にどう答えるんだ?」
上条「俺の、答え……」
土御門「今までかみやんは自分の意志で大切なものを守ってきた。ただし、その行動に優劣はない」
土御門「かみやんの大切は全部が平等に大切なものだった」
土御門「けれどもし、かみやんが彼女の思いに応えるなら、そこに平等は存在しない」
土御門「なにを無くしても、彼女だけは守りぬくという覚悟をしなくてはならなくなるぞ」
上条「……俺は」
上条(御坂のことを……)
土御門「なんてにゃー」
上条「……土御門」
土御門「俺としたことがついつい柄にもないこと言っちまったぜい」
土御門「まあ、あれだ。とりあえず今はじっくりと中学生美少女とのプレイを堪能しているといいんだにゃー。アレ、言ってってなんだかむかついてきたぞ?」
上条「あ、あのなぁ」
土御門「とりあえず、後でその心当たりを連れて行くから、せいぜいらぶらぶちゅっちゅしてろよな」
上条「そんなことするかよ」
土御門「あっ、コスチュームでプレイしたときはいつでも言ってくれれば貸すぜい」
上条「それこそするわけねえだろ!」
土御門「今ならちょうど『堕天使メイド2キャストオフver』があるのに」
上条「何だそのあからさまに卑猥な名称をしたコスチュームは……」
土御門「しょうがないから今度ねーちんにでもきさせるかにゃー」
上条(ああ、また神裂はイジられるんだな……男の子的にはグッジョブとしか言えないけど)
土御門「そういえばーかみやん」
上条「ん? まだなんか用か?」
土御門「いや、わからないわからない言ってるけど彼女に直接理由聞いてみたん?」
上条「あっ」
上条(そうだよなー。なにかおかしいところがあったんなら本人に聞くのが一番手っ取り早っつうの。我ながらマヌケだった)
上条「とは言っても、そもそも会いたいからって会えるわけでもないよな」
上条「いつも偶然会った、感じだからなあ。ちゃんとアイツに会うのはどうすれば……」
??「だ~れだっ!」
上条「のわっ!」
上条(な、何だいきなり夜になったぞ。学園都市はとうとう天気まで操るようになったのか!)
上条「って、何やってんだ美琴」
美琴「ありゃ、あっさりバレちゃった? きっと愛の力だね!」
上条「いや、普通に声でわかるだろ。つうか今の古くないか? 今ドキ少女漫画でもあんなベタなの見ないぞ」
美琴「いいじゃない、やってみたかったんだし」
上条「さいですか……」
美琴「それより朝はゴメンね。当麻に迷惑かけちゃったみたいで。怒ってる?」
上条「まあ迷惑っちゃあ迷惑だったけど、アレくらい日常茶飯事だからなあ。だからべつに怒ったりはしないけど」
美琴「そ、そんなっ当麻は毎日誰かとキスしてるの!」
上条「えっ、い、いやあんなんは今日が初めてというか美琴が初めてというか」
美琴「なんてねっ。嘘だよっ」
上条「は、はい?」
美琴「えへへ~、当麻を困らせてみたかったんだぁ。いっつも私ばっかり当麻に振り回されているんだもん、たまにはね?」
上条「ア、アハハ。そうっすか」
美琴「でも、うれしいなっ♪」
上条「な、なにが?」
美琴「当麻の初めてが私で私の初めてが当麻だった、ってこと。えへへ~、ニヤケちゃう」
上条(……あー、ヤバいなあ)
上条(さっさと御坂を元に戻さないと、俺はコイツのことを……)
美琴「ねえ、それじゃあどこに行く?」
上条「え、あ、ああ。俺はべつにどこでもいいけど。つうかいつの間にか一緒に遊ぶことが前提になっているんですね。そして財布が今月の食費がががが」
美琴「もう、しょうがないわね。遊び代は割り勘でいいわよ」
上条「あー、それはさすがに男としてどうかと思うのでちゃんと俺が払うよ。甲斐性なしは男の恥なんだって」
美琴「男って変なところで意地張りたがるのね。あっ、じゃあアソコにしましょう!」
美琴「そうと決まれば時間は無駄にできないわね。ほら、さっさと行くわよ!」
上条「うわっ! ちょ、腕引っ張るなって!」
美琴「あははっ!」
上条「で、公園ね……」
美琴「どう? ここならお金かからないし、それなりに楽しめるでしょう?」
上条「まあ、確かにそうですけどねー」
上条(中学生に財布の心配されて公園に来ちゃう俺ってどうなのよって考えたりしちゃうんだよなあ)
上条(でもここなら落ち着いて話ができるかもしれないな)
上条「なあ、美琴」
美琴「うん? なあに当麻」
上条「その、お前、今日はなんだかおかしくないか?」
美琴「そう? どの辺りが?」
上条「いや、どの辺りがって……」
上条(全部、としか言いようがないだろ)
上条「えーっと、急に色々積極的になったり、とか」
美琴「えー、そうかなあ? 全然、普通だと思うけど」
上条「いや、たぶん絶対間違いなく昨日辺りから変だと思うだが」
美琴「んー? あっ、わかった!」
上条「本当か!?」
美琴「それはきっと、当麻のことが好きだからだ!」
上条「………………」
美琴「なんだか頭がスーッとして、余計なこと考えないでひたすら当麻が好きって気持ちだけがあるのよ。だからだと思う――って、当麻顔赤いよ? もしかして照れてる?」
上条「いや、そんなことは、ないですよ?」
上条(あーもう照れてるよ照れまくりだよ照れ照れですよ。チクショウなんだこの生き物かわいいなあくそう)
上条(かわいい……かわいいって思っているのか、御坂のことを)
美琴「うふふっ、照れてる当麻はかわいいなー」
上条「おお男にかわいいとか使ってるんじゃねえよ! 俺がキモイだろ!」
美琴「そうやって日本語がおかしくなるところもかわいいわよ♪」
上条(なんだこれはー! なんの羞恥プレイだー! 誰でもいいから助けてくれー!)
ガキ「あっ、ビリビリのおねーちゃん!」
上条「ん?」
美琴「キミはこの前の……」
上条「知り合いか?」
美琴「うん。ちょっとね」
ガキ「あれーこの前のおねーちゃん達は?」
美琴「んーいつも一緒にいるわけじゃないからなあ」
ガキ「あっ、そっかー。おねーちゃん今日は彼氏と一緒にいるんだね!」
美琴「えっ、そ、そう見える?」
ガキ「そうじゃないの?」
上条「いや、俺たちはただ」
美琴「そうだよデートしてるんだ♪ よくわかったねー」
ガキ「だって、ふたりともすっごい仲良さそうだもの」
美琴「え、えへへへ。そうかなぁ? あ、そうだ! ねえアイス食べたくない?」
ガキ「うん! 食べたい!」
美琴「じゃあ、お姉さんが奢ってあげるね」
ガキ「ホント!」
美琴「うん。ご褒美にねっ」
ガキ「ご褒美? ボク、何かした?」
美琴「イイの、イイの。それじゃあ当麻ちょっと行ってくるね!」
上条「え、あ、ああ」
上条(口を挟む暇もなかったな……)
上条「彼氏、か……」
上条(俺はどうしたいんだろうな)
??「少なくともさっきまでの光景を見たら百人が百人ともお二人が付き合っていると思わずにはいられないでしょう、とミサカは客観的見地から意見を述べてみます」
上条「うわっ! 御坂妹、いつからそこに!」
御坂妹「いつからと言われてもそもそも最初にこの公園にいたのはミサカであってよってその質問に答えることは難しいです、とミサカはミサカに気づかずに二人の世界を構築していたことに対して若干の恨みを込めつつ皮肉ってみます」
上条「そ、そうなのか……。それは気づかなくて悪かったな」
御坂妹「いえそれよりもお姉様があんなことになった原因はわかったのですか、とミサカは話を先に進めることにします」
上条「いや、まだわかんないんだ……ってなんで御坂妹がそのことを知っているんだ!」
御坂妹「それは……」
美琴「当麻ー! って、あれ? アンタ……」
上条「お、美琴。あの子供はどうしたんだ?」
美琴「うん。帰したわよ。それより、その子……」
御坂妹「お姉様お久しぶりです、とミサカは頭を下げます」
美琴「……」
上条「ん? どうした、美琴」
美琴「……ん…さい」
上条「え?」
美琴「――っ!」
上条「ああっ! オイ、どこ行くんだ美琴ッ!」
御坂妹「追ってください、とミサカは正しい判断を迅速に下します」
上条「おう、わかった! 一緒に行くぞ!」
御坂妹「いいえ行くのは貴方一人です朴念仁、とミサカは貴方の鈍さに驚きを隠さないで言ってのけます」
上条「は? 言っている意味がわから」
御坂妹「言いから早く来なさい、とミサカは若干キャラを崩してでも送り出します」
上条「いやでも二人で追った方が」
御坂妹「早くしないと上位個体とその保護者をここに呼びつけますよ、とミサカはわかりにくく脅してみます」
上条「ああ、しゃあねえ! 後で絶対説明してもらうからなっ!」
上条「クッソ、もうあんな遠くに……おい! 御坂、待やがれっ!」
御坂妹「ふうやっと行きましたか、とミサカは緊急事態であろうと適切に役割をこなした自分を若干誇りつつ二人の背中を見つめます」
御坂妹「……」
御坂妹「お姉様をよろしくお願いします、とミサカは胸にかすかな痛みを覚えつつ二人を見送ります」
すいません。明日早いのでそろそろ寝ます。
おそらくお昼には戻ってくると思いますので、それまで保守お願いします。
上条「おいっ! 御坂、待てって! なんで逃げてんだよ!」
上条「あーもうクソ、意外に速いじゃねえか中学生!」
??「キシャー!」
上条「って、おわっ! あぶねっ!」
上条(いきなり目の前に人が飛んできたぞ!?)
黒子「チッ……アレを避けるとはどういう反射神経してやがりますの」
上条「お前は、たしか御坂の後輩の……」
黒子「フン! 暴漢に名乗る名前なんてありませんわ!」
上条「暴漢、ってなんでそんなこと言われなきゃならねえんだよ」
黒子「あら、どうせ嫌がるお姉様に卑猥なことを迫っているところだったんでしょう? 羨ましい……」
上条「いやいやいや、違うって、俺はアイツが逃げたから追っていただけで」
黒子「ホラご覧なさい。お姉様に逃げられるよな何かをしでかしたんでしょう。あのお姉様が逃げる……一体どんなことを強要したんですの! 詳しく話しなさい!」
上条「それはおかしくねえ? なんで話聞きたがっているんだよ」
黒子「そんなの、お姉様とのプレイ……もとい、コミュニケーションの参考にするに決まっていますわ」
上条「なんか、お前いろいろと手遅れだな……」
上条「ああ、もうこんなことやっている内に御坂見失っちまうし」
黒子「まったく本当に貴方は何をしたんですの? お姉様の様子がおかしいのはやっぱり貴方が原因せいじゃありません?」
黒子「まったく本当に貴方は何をしたんですの? お姉様の様子がおかしいのはやっぱり貴方が原因じゃありません?」
上条「お前も御坂の様子がおかしいことに気づいていたのか!」
黒子「当たり前ですわ。ワタクシが一日のどれだけお姉様を見ていると思っているかしら?」
上条「その発言が大分アレなのは気になるけど……。どんなふうにおかしかったんだ?」
黒子「あのお姉様が、お姉様が……」
黒子「ワタクシのことを素直に気遣ってくれるなんて!」
上条「そ、それはおかしいのか?」
黒子「貴方もまだまだ甘いですわね。お姉様は素直じゃないお方、だから普段の雑な扱いの中にひっそりと込められた労いを噛み締めるのが、ワタクシの日々の楽しみでしたのに」
黒子「それをあんな全面に押し出されたら……ワタクシは二十四時間感動し続けなくてはなりませんわ」
上条「あー、とりあえず御坂が変で、お前は変態だというのはわかった」
黒子「とにかくっ! お姉様がああなった原因に本当に心当たりはありませんの? このままじゃワタクシ、いつ理性が振りきれてもおかしくないですわよ!」
上条「話を聞く限りお前に理性なんてものは元からない気がするが……まあ、確かに。あの状態がいつまでも続くのは、さすがに俺もマズイな」
黒子「……ハッ! ちょ、ちょっと待つですの。ワタクシでアレということは……もしや貴方はもっと凄い目に」
上条「えっ、ア、アハハ~。さてなんのことでせうか」
黒子「こ、このっ……」
黒子「類人猿がぁああああああああ!」
上条「ま、待て確かに色々あって役得だなあとか御坂かわいいじゃねえかとか思ったりしましたけど、決して上条さんは悪くはないんです悪いのは神様なんですだから武器を身構えるのはやめて!」
黒子「死にさらせぇえええええええええええええええええ!」
上条「うわあああああ、不幸だー!」
上条「うう、まったくひどい目に遇いましたよ。触らぬ変態にたたりなしだな」
上条「御坂も見失っちまったし……、しょうがない家に帰るか」
??「とー、ってミサカはミサカは慣性の力で腰めがけてダイブしてみたり!」
上条「ぐふぉ!」
上条「な、何だいきなり……って、お前はたしか」
打ち「ラストオーダーだよ、ってミサカはミサカは可愛らしく小首を傾げながら挨拶してみたり」
上条「ああ、そうだそうだ。御坂妹の上位個体な。元気してたか?」
打ち「うん、でもあの人に黙って抜け出したからすぐに元気がなくなるの、ってミサカはミサカはあとで来るお説教に身を震えさせてみたり」
上条「抜け出したのか? でも一体なんで?」
打ち「オリジナルと貴方に用があったんだけど、オリジナルが見つからないから貴方に全部託していっちゃおう、ってミサカはミサカはぶっちゃけめんどくさくなってみたり」
上条「いや、そこはめんどくさがるなよ……。で、なんの用だ?」
打ち「正直あとは時間が解決してくれるんだけど、それでもミサカは限られた時間の中で貴方にきちっと決断してもらおうと思ったの、ってミサカはミサカはわざと表現を曖昧にして本題を濁してみたり」
上条「いや、言っている意味がよくわからないんだが。それは御坂がああなったことと関係あるのか?」
打ち「関係あるっていうかまさに事態の根源なの、ってミサカはミサカは肯定してみたり」
上条「根源? なあ、何を言って……」
打ち「原因はオリジナルあるんだけどその原因を作ったのは貴方の態度が原因だから、本当に解決できるのは貴方だけなんだよ、ってミサカはミサカはわざと迂遠して言ってみたり」
上条「なあ、もう少しわかりやすく説明してくれないか?」
打ち「これ以上はミサカは言えないかも、ってミサカはミサカは要求を拒否してみたり。どうしても聞きたいんだったらミサカより別のミサカに聞いてみるのが言いかも、ってミサカはミサカは別の道を示してみたり」
上条「別の御坂、って御坂妹のことか? やっぱり、アイツはなにか知っているんだな」
打ち「というより今回のことはミサカよりもそっちのミサカの方が真相に近いから、ってミサカはミサカはそろそろ帰らなきゃだから話を打ち切ってみたり」
上条「あ、ああ。色々とありがとうな」
打ち「貴方がミサカたちにしてくれたことに比べればこれくらいは些細な恩返しなの、ってミサカはミサカは謙虚さをアピールしてみたり」
打ち「それに……」
打ち「あの人を変えた貴方が、どう変わっていくのか、ミサカはミサカは興味があったり」
上条「俺が、変わる」
打ち「それじゃあそろそろあの人が騒ぎ出す頃だから、ってミサカはミサカは過保護なあの人が色々やっちゃう前にお別れを告げてみたり」
上条「ああ、それじゃあな」
上条「俺は……なにか変わるのか?」
上条(土御門にも、似たようなことを言われたな)
上条(俺の変化。それはやっぱり、御坂への気持ち、だろうな)
上条(御坂の気持ちは、たぶん本当に俺を好いてくれていると思う)
上条(だけど、それは……)
上条「あーもう! 我ながらめんどくせえ!」
上条「そもそも普段あんまり考えなしで動いてるからなあ、俺」
上条「はぁ……、魔術や超能力ならこの右手で殴れば解決するんだけどなぁ」
上条「ただいまー」
いん「おかえりー当麻お客様だよ」
御坂妹「おかえりなさい、とミサカは新妻のように出迎えの挨拶を述べます」
上条「おわっ! 御坂妹、来てたのか」
いん「ねえとうまー、この短髪は短髪なのに話がわかるんだよ」
御坂妹「ミサカはお姉様と違って素直なので、素直に猫と戯れたいと所望しました、とミサカ叶わぬ願望を愚痴っています」
上条「なるほど、三毛猫がマージンになっているわけね」
御坂妹「それよりもお姉様はどうしたんですか、とミサカは一応の確認をとってみます」
上条「ああー、いやスマン。それが見失っちまって」
御坂妹「上位個体からの連絡で知っていましたけど、まさか中学生に捲かれるとは、とミサカは失望のため息をつきます」
上条「うぅ……すんません」
御坂妹「謝る相手はミサカではないですよ、とミサカはわかりやすく諭してみせます」
上条「御坂にか? でも俺はアイツが逃げた理由もわからないんだが……」
御坂妹「だからそれを今から説明するのです、とミサカは一部始終を説明することにします」
上条「一部始終って、御坂がああなった理由もか?」
御坂妹「全部です、とミサカは理解の遅さに呆れながら話をはじめます」
上条「悪かったな、バカで」
いん「とうま、なんかまたトラブル? それも短髪絡みの」
上条「あー、まあ、なんというか」
御坂妹「その通りですので部外者は話し聞かない方が言いですよ、とミサカは暗に退室を求めてみます」
上条「なっ! おい、御坂妹。そんな言い方は」
いん「……そっか」
上条「あれ? インデックスさん? いつもみたいに『またなのー!』とか叫んで噛み付いてきたりしないんでせうか?」
いん「とうま、わたしだっていつまでもとうまに甘えているわけにはいかないんだよ」
上条「い、インデックス?」
いん「そう、だいじょうぶ。この街には小萌も舞花も氷華もいるから」
いん「この街にいる限り、会おうと思えば会えるから」
いん「インデックスは、当麻がいなくてももうだいじょうぶなんだよ」
上条「なっ……なにを言って」
いん「もともと、なくなっちゃうはずのものが、少しだけ長く続いたんだよ……っく」
いん「だから、だい、じょうぶっ……なんだよっ」
いん「とうま……、バイバイ……!」
上条「インデックス!!」
御坂妹「追わないでください、とミサカは貴方の前に立ちふさがります」
上条「どいてくれ! インデックスが出ていっちまったんだぞ! 追わないわけにはいかないだろ!」
御坂妹「いいえ、止めます、とミサカは身体を張ってでも貴方を止めるつもりでいます」
上条「なんでだ! 御坂の時は追えって言っただろう!」
御坂妹「だから選択です、貴方には選んでもらわなければなりません、あの子かお姉様か、そのためにまず説明を聞いてもらいます、とミサカは貴方に取捨選択を迫ります」
上条「何だよそれ! そんなの誰も望んじゃいねえだろ!」
上条「泣いてたんだぞ、インデックスは! よくわからないけど、悲しんでいるヤツがいるんだ! そんなん許せるわけねえだろ!」
御坂妹「それはこっちのセリフです、とミサカは怒りを抑えて告げてみます」
上条「……なっ」
御坂妹「よくわからないとか言わないでください、貴方の正義が人を傷つけるということも知ってください、とミサカはわからず屋に言い聞かせてみます」
御坂妹「いつまでも子供のように自分の正しさだけを周りに押し付けようとしないでください、とミサカは今ばかりは心を鬼にしてみます」
上条「御坂妹……」
上条(なんだろう、いつもの御坂妹らしくないぞ……)
御坂妹「だから、お願いします、お姉様がどうしてあんな風になったのか、それを聞いてから決めてください、とミサカは懇切丁寧にお願いします」
上条「……わかったよ」
上条「全部、聞いてやる知ってやる決めてやる。御坂になにがあったのか、インデックスはどうしたのか、俺はどうするべきなのか……」
御坂妹「ありがとうございます、とミサカは頭を下げます」
御坂妹「そもそもミサカ達はミサカネットワークという脳波リンクで二十四時間つながっています、とミサカは改めて説明します」
上条「ああ、アレだろ。ラストオーダーがコンソールになっているっていう奴」
御坂妹「それらはミサカ達の能力『欠陥電気』が生成しているものなのですが、これはクローン体ゆえの同じ脳波長と学習装置によって整理された脳構造によって可能となるものです、
そのため第三者が無理やりログインしようとすると脳が焼き切れてしまいます、とミサカは辞書のようにスラスラと講釈します」
上条「そ、そうなのか……」
上条(回線があっても繋ぐ機器が合わなければ壊れてしまう、ってことかな?)
御坂妹「とある医者はその波長を合わせることでミサカ達の演算能力を使用する機器を開発しましたが、それでもネットワークを情報として使うことはできません、とミサカはカエル顔と白い人を思い浮かべてみます」
上条「あー、そのネットーワークが今回のことと何の関係が?」
御坂妹「理論上、同じ波形を一定に保つことができればネットワークの使用は可能になります、とミサカはとある可能性を示唆して言ってみます」
御坂妹「そしてこれを可能とするのはミサカ達と同じ脳波計でなおかつそれらを制御できるほどの能力の持ち主ということです、とミサカはわかりやすくある人の事を言ってみます」
上条「ある人って……まさか」
御坂妹「そうです、私たちのオリジナルでありレベル5のお姉様は理論上ネットワークにアクセスすることが可能になります、そしてお姉様はとある一件で脳波ネットワークの存在を知っていました、とミサカは番外の話を持ち出してみます」
上条「……御坂がそのネットワークに繋げることはわかったけど、それでどうしてああなるんだ?」
御坂妹「どれだけお姉様が優秀でも、一万人近い脳の情報を整理するのは学習装置なしでは不可能で、さきほど言ったように焼き切れてしまいます、とミサカはミサカ達の凄さをさりげにアピールしてみます」
上条「そうか、それで脳が焼けて――」
御坂妹「そんな事になっていたら今頃お姉様は死んでいます、とミサカはあまりの馬鹿さ加減に軽くめまいを覚えます」
上条「う、うぐっ……」
御坂妹「お姉様は優秀ですから、そうなる直前、情報が流れ込んでくる前に接続を切っています、とミサカはお姉様がスレスレのことをしていたんだと伝えて心配を誘います」
御坂妹「ですが、一部の情報は漏れてしまい、お姉様の脳の大部分はその処理に追われ、今のお姉様は余計なものを考えることができなくなってしまっています、とミサカはようやく要点を述べます」
上条「考えることができない?」
御坂妹「見栄や意地、悩みなど、そういうものがとっぱらわれたら、めちゃくちゃ素直になりました、とミサカはぶっちゃけます」
上条「めちゃくちゃ素直……そうか、じゃあやっぱり今のミサカは誰かに操られているとかではなくて」
御坂妹「むしろ百パーセントしたいがままやりたい放題です、とミサカは自分で言いながらそれってどうなんだと思ってみます」
上条「まあ、な……」
上条(したいがまま、って言う事はアレが御坂の望んでいることなわけか)
上条「って、そもそもアイツはなんでネットワークに接続なんてしたんだ? それに、お前から逃げたのも……」
御坂妹「ここまで言ってわからないとは本当に朴念仁というか、頭が鈍いとしか思えないですね、とミサカは率直な意見を述べてみます」
上条「な、なんでそこまで言われなきゃいけないんでせうか」
御坂妹「本当にわからないんですか、とミサカは信じられない思いで目を丸くします」
上条「い、いや……」
御坂妹「ハァ……これではお姉様やあの子が苦労するわけですね、とミサカは同じ立場の者として同情します」
御坂妹「お姉様が素直になってからの態度、アレが本心だというのなら、その原因も自ずと察しがつきそうなものですが、とミサカはほとほと呆れきっています」
上条「あの態度って、御坂が俺のことを想ってくれているってことか? そ、それはなんとなくわかったけど、それと……」
御坂妹「じれったいので言ってしまうと、御坂も貴方に対して恋愛感情を持っています、とミサカは煮え切らない貴方にスッパリと想いを告げます」
上条「は、えぇ? な、なんですとー!」
御坂妹「お姉様はそのことにうっすらと感づいて、御坂ネットワークを介して御坂の本心を探ろうとしたのでしょう、とミサカは推測しています」
上条「え、ええええええええええええええええええええ」
御坂妹「先程逃げたのはそうしてしまった後ろめたさから逃げ出したのでしょう、とミサカは確信を持って断言します」
上条「いや、ちょ、それより御坂妹が、って」
御坂妹「ここまで言えば、さっきあのコが逃げた理由もわからないですか、とミサカはほぼ答えを教えているに等しい質問をします」
上条「い、インデックスも? いや、そんなまさか……」
いん『インデックスはとうまの事が大好きだったんだよ?』
上条「そう、なのか? だとしたら俺は」
美琴『えへへ~、当麻ダイスキ!』
上条「俺は……」
御坂妹「わかってくれましたか? ミサカが決断してくださいと言った意味、とミサカは確認します」
上条「つまり、俺が誰の想いを受け入れるか、ということか」
御坂妹「ようやく理解してくれましたか、とミサカは安堵します」
上条「でもさっき二人って言ったよな? それは……」
御坂妹「お姉様とシスターの子のことです、とミサカは自分を除いていってみます」
御坂妹「ミサカは所詮作られた命、ですからこうして生きているだけで満足しているのでこれ以上の高望みはしません」
上条「そんなことは!」
御坂妹「とミサカは建前を並べます」
御坂妹「本当は、なんとなくですが誰があなたの心にいるのかわかったからです、だから追わせましたし、呼び止めました、とミサカは女の勘を働かせてみます」
上条「御坂妹……」
御坂妹「さて、全部説明したのでどうぞ追ってください、とミサカはあえて誰を、とは言いません」
上条「でも、俺は……」
上条「お前も、アイツも……悲しませたくない」
御坂妹「……貴方のそういうところは尊敬できますし、そういうところに惹かれました、ですが」
御坂妹「今優しくされてもミサカもあの子も惨めになるだけです、とミサカは拒絶します」
上条「それは……」
御坂妹「それでも優しくあるというのなら、早くここから出ていってください、とミサカはできるだけ、冷静に告げます」
上条「っく……。わりい御坂妹、それからインデックス」
御坂妹「行って、くださいっ、と……ミサカは……ぐすっ」
上条(俺が泣かせたんだよな……)
上条(インデックスも、御坂妹も、俺のせいで)
上条「クソッ! なんで、なんでこんなことに!」
土御門「おー、かみやん。いい感じに打ちのめされてるねえ」
上条「つ、土御門」
土御門「その様子だと俺の言ったとおりになったみたいだにゃー。選んだのは超電磁砲か?」
上条「くっ……なんのようだよ」
土御門「いやあ、なあに。ただ先輩からのちょっとしたアドバイスだ」
上条「先輩、って」
土御門「なあ、かみやん。俺たちは神様じゃないんだぜい」
土御門「俺たちの手に抱えられるものは限られている。あれもこれもと守るわけにはいかないんだよ」
土御門「だからかみやん、シンプルにいこうぜい」
土御門「たった一つの大切なもの守りぬくんだ」
土御門「俺たちには命をかけて、他のもの全て捨てでも守りたいものがあるんだよ」
土御門「どれだけ犠牲にしても、たったひとつだけ残っていればイイんだよ」
上条「でも、俺は……」
土御門「っ! いい加減にしろよな!」
上条「……土御門」
土御門「全部守りたい? みんながハッピーエンドがいい? ふざけんなっ!」
土御門「どれだけ振り絞っても、大切な一つだって守れない時があるんだ!」
土御門「しっかりしやがれ上条当麻!」
土御門「お前の右手はたった一つの現実も掴めないのかっ!」
上条「土御門……」
土御門「……悪い。熱くなっちまったぜい」
土御門「だけどな、かみやん。俺には眩しかったんだよ」
土御門「みんなを守る、なんて言ってのけてしまうヒーローが……」
上条「いや、お前が正しいよ土御門」
土御門「かみやん……」
上条「約束したんだよ、ある魔術師と」
上条「アイツを守るって」
上条「なのに俺は、みんなを守っているつもりだったんだ」
上条「みんなの中に、アイツを入れていただけなんだ」
上条「こんなんじゃ、あの魔術師のほうがよっぽどアイツの傍にいるべきだったよ」
土御門「かみやん、それは……」
上条「わかってる。そんなこと言ったって、もうしょうがねえ」
上条「だから、もう一度誓ってやる」
上条「俺は、アイツを、御坂美琴を守りぬく」
上条「美琴が、俺の大切なたった一つだ」
土御門「それでこそ、かみやんだぜい」
上条「ありがとうな、土御門。お陰で目がさめたよ」
土御門「なあに、いいってことよ。それより今のセリフを聞かせるのは俺じゃないんじゃないかにゃー?」
上条「ああ、そうだな。アイツのところへ行かなくちゃ――って」
土御門「おおう? どうしたそんなところで立ち止まって」
上条「いや、よく考えたら御坂さんいまどこにいるのかなーって」
土御門「何だ、そんなことか。ホレ、彼女の居場所だ」
上条「ああ、ありがとう。ってなんでお前がこんなもん知ってんだよ!」
土御門「あれ? 言わなかったかにゃー? そもそもあの公園に御坂妹を連れて行ったのは俺だぜい」
上条「はい?」
土御門「心あたりがある、って言っただろう」
土御門「先日ミサカネットワークに異変があったっていう報告を受けていたからもしや、と思って接触させてみたら案の定当たりだったわけよ」
上条「あ、ああさいですか」
上条(どこから報告受けた、とか聞かない方がいいんだろうなー、こいつの場合)
上条「ま、なんにせよ助かったよ。サンキュー」
土御門「じゃあな、かみやん。避妊はしっかりやれよ!」
上条「ぶっ! んなことするかっ!」
上条「えっと、たぶんこの辺なんだが……」
上条「って、なんだか見たことある景色だなあ」
上条「……ああ、そうか。大覇星祭の罰ゲームの時の待ち合わせ場所がこのへんだったな」
上条(つうか今思えばあれってデートのお誘いだったのか? だとしたらずいぶんとヒドイことしたなー、と今ごろ反省)
上条「謝れればいいけどな、っと見つけた。おーい! 美琴ー!」
美琴「……あっ! 当麻!」
美琴「おっそいじゃない! なんでもっと早くこないのよ!」
上条「だったら逃げなきゃいいのでは……」
美琴「それは、その……。ちょっとあのコの前には居づらくて」
上条(どうやら御坂妹の予想は当たりらしいな。だったら……俺も腹を決めるか)
上条「……って、ここで黒焦げになっている輩は?」
美琴「当麻を待っている間に寄ってきた害虫よ。私には当麻がいるって言っているのに、しつこいから焼いちゃった」
上条「や、焼いちゃったね。アハハ……」
上条(なんか俺が守る必要ないんじゃないかなーこの子)
美琴「まあ、いいや♪ その分、当麻が楽しませてくれるでしょう? さっ、行こう!」
上条「あ、っとその前に美琴!」
美琴「ん? なあに、当麻」
上条「あーそのー、ちょっと、話があるんだがいいか?」
美琴「話? なんの?」
上条「まあ、その色々だな。お前のこととか、あと……その」
美琴「ん?」
上条「と、とりあえず、もっと静かな場所にいこうぜ!」
美琴「べつにここで話せばいいんじゃない?」
上条「いや、だからここではできない話とかがあるんだよ!」
美琴「それって……もしかして」
上条「ああ、もう! ほら、いくぞ!」
美琴「あっ……うん♪」
美琴「話って何かな~♪ 話って何かな~♪」
上条(うわー、絶対気付いてるよ。どうしましょうこんな状況、恋愛初心者の上条さんにはハードル高すぎですよ!)
美琴「ねえねえ、そろそろ人が少なくなってきたからこのあたりでいいんじゃない♪」
上条「あ、ああ。そうだな……」
上条(いや、ムリムリ無理ですって。だってなんだか語尾にハートマーク見えるし。今の御坂だったらいきなり押し倒してもおかしくないっ!)
美琴「それでっ! それでっ! 話ってなあに?」
上条「あー、えーとだなあ」
上条(しかたない、ここは一回あっちの方を話してからにしよう)
上条「えっと、美琴は、今の自分がちょっとおかしいってことに気づいているか?」
美琴「……なにそれ、そんな話するためにこんなところまで呼び出したの」
上条(うわー! 明らかに不機嫌になってますよ! 選択ミスったぁ!)
上条「いや、ほら、物事には順序ってもんがあるだろ。だから、本題はべつにあるから」
美琴「ふーん? そういうものなのね。わかったわよ……」
上条(な、なんとか凌いだぁ)
美琴「で、私がおかしいかですって? うーん……そういえばちょと病気っぽいかも」
上条「えっ? 病気?」
上条(なんだソレ? そんなこと聞いてないぞ!)
美琴「うん! 病名は……恋の病!」
上条「……………………………………………………………………………」
上条(美琴……。お前はこんなことをいつも考えていたのかよ……)
上条「いや、そうじゃなくて。というかその状態がそうなんだけど……」
美琴「うー、なんのよぅ。はっきり言ってよ」
上条「じゃあ、言うけどな。美琴、お前ミサカネットワークにアクセスしなかったか?」
美琴「したわよ?」
上条(即答……、ってそうか余計な思考プロセスは省かれてるんだったな)
美琴「それがなに?」
上条「いや、それのせいでな今のお前はちょっとおかしくなっているんだ」
美琴「ん? どこがおかしいのよ」
上条「簡単に言うと素直になっている」
美琴「す、なお?」
上条「えっと、だから……美琴は俺のことどう思っている?」
美琴「好きよ? 大好き愛してる」
上条「うっ……」
上条(さすがに直球でそこまで言われると理性がやばいな。素数素数……)
美琴「それのどこがおかしいの?」
上条「いや、だから。普段のお前はそんなこと絶対に言わないんだって」
上条「現にお前がそうなるまで、俺は美琴の気持ちに気づけなかったし……俺だって」
美琴「俺だって……って」
上条「お前が好きだっていうことに気づかなかったかもな」
上条(言ったー! ついに言ってやりましたよ! 男上条当麻やりましたー!)
美琴「それで、好きって……」
上条「あれ?」
上条(なんだか予想していた反応と違いますよ?)
上条「っと、わりい。電話だわ」
上条「ハイもしもし、上条だけど」
御坂妹『言い忘れていたことがあるので伝えますね、とミサカは貴方の家に電話から事伝します』
上条「言い忘れたこと?」
御坂妹『はい、お姉様のことですが、おそらく今日いっぱいで情報処理が完了すると思われます、とミサカは一万人の計算結果を伝えます』
上条「おーそうかー、悪いなワザワザ」
御坂妹『いえ、それではごゆっくりどうぞ、とミサカは今日中に散ってしまうお姉様の貞操を偲びながら電話を切ります』
上条「お前もかよ!」
上条「まったく……。ああ、美琴よかったな。今日中には元に戻るそうだぞ」
美琴「今日中……」
上条「いやー、一時はどうなることかと思いましたけど、丸く収まりそうでよかったよかった」
美琴「……ない」
上条「はい?」
美琴「よくなんてないじゃないっ……」
上条「は、はい? あれ、美琴さんなんで泣いているんでせうかー!」
美琴「だって、今日が終わったら、私は素直になれないっ」
美琴「そしたら、当麻に嫌われちゃう!」
上条「え? いやいや、一体全体なにがどうしてそんな結論に行き着くんだよ!」
美琴「だ、だって……当麻がっ、好きになったのはっ……ひっく……今の私、だからぁっ」
美琴「もとの、私だったらっ……きっと、きらわれちゃうのよぉ……」
上条「あー」
上条(そうか。そういうことか)
上条(俺と、同じことだ……)
上条「なあ、美琴」
美琴「っく……うぇ?」
上条「実は、俺はもうひとつお前に言わなきゃいけないことがあるんだ」
上条「俺は、記憶喪失なんだ」
美琴「ふぇっ……?」
上条「だから、美琴が好いてくれている俺は、俺じゃないのかもしれない」
上条「俺が俺でなくても、美琴は好きでいてくれるか?」
美琴「そんなのっ……あたり、まえじゃないっ……」
上条「そうか」
上条「じゃあ、俺もだ」
美琴「……当麻」
上条「素直だろうが素直じゃなかろが関係ない」
上条「俺が好きになったのは御坂美琴なんだから」
上条「もし俺のこの想いが幻のものだっていうんだったら」
上条「その幻想は、絶対に壊れたりしねえ!」
上条「だから、安心して元に戻ってくれよな」
上条「やっぱりいつものビリビリ食らわないと、なんか調子悪いからな」
美琴「当麻……とうまぁ……」
美琴「うわぁあああああああああああああああん!」
美琴「おっそいわよ! 私がどれだけ待ったと思っているの!」
上条「いやいや、そもそも放課後になっていきなり命令メールを出してくれたのはどこのどなたで――ひぃ!」
美琴「なんかいったぁ?」
上条「そ、そうやってすぐにビリビリさせるのはよくないんじゃないかと上条さんは思うのでせうが!」
美琴「うっさいわねえ。アンタがくらいたいって言ったんでしょうが」
上条「いや、そんな昔のことをいつまでもいうのはよくないんじゃないかなー、ってすいません言いましたけどできればやめてください!」
美琴「まったく……、そんなことより今日はあの子たちと遊ぶんだからチャッチャとしなさいよ」
上条「え? なにそれ、俺はまったく聞いてないんでせうが」
美琴「あったりまえでしょ? 言ったらアンタ絶対財布持ってこないじゃない」
上条「当たり前だ! お前はあの人間バキュームの凄さを知らないから言えるんだって!」
美琴「まったく、男ならそれぐらいの甲斐性は見せなさいよ」
上条「甲斐性を見せるために死にたくないんですけど……」
美琴「しょうがないわねえ。じゃあ、私の分は後払いでいいわよ」
上条「あ、後払いですか? き、期限は……」
美琴「んーどうしようかしらねえ?」
上条「こ、今月は本当に厳しんでそこんとこよろしくお願いします!」
美琴「じゃあ、ずっとね!」
上条「ハ、ハイ?」
美琴「ずっと、ず~っと、期限なんだから。じっくり返してね」
上条「あ、あの~美琴さん? それてもしや……」
美琴「ほ、ほら、さっさと行かないとその分財布の中身が軽くなるわよ!」
上条「あっ、おい! ちょっと待てって! 美琴!」
美琴「えへへ~、当麻ダイスキ!」~完~
最後のグダグダっぷりにびっくりしつつ、付き合ってくださってありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません