美琴「あれから3年……か」(428)

美琴「はやいもんねぇ、私ももう高校二年生かぁ」

 学園都市どころか、世界中を巻き込んだオカルトと科学の戦争があったのは、私が中学二年生の頃だった。
 あの頃の私はまだ弱くて、世界はどうにもならない事ばかりだと思っていたし、もっと私に力があれば……と、悔やんでばかりいた。
 でも本当は、力なんか無くたって、弱くたって、その気になればなんだって出来る。……そう教えてくれたあの人は、今はもう居ない。

 上条当麻はあの事件以来、行方不明になっていた。
 私も妹達に協力してもらい、ミサカネットワークを駆使して彼を探したが、その影さえも捕まえる事はできなかった。
 それでも私は諦めていない。
 あの人だったら、きっと何処までだって私を探しに来てくれると信じているから。


 あの事件が終わって。私はレベル5の第一位に昇格した。
 昇格したと言っても、第一位が学園都市を去り、第二位が死亡して、繰り上がりでなっただけだ。

 黒子なんかは「経緯はどうあれ、お姉さまは栄えある学園都市最強となられたのですもの、
もっと胸を張るべきですわ」なんて言うけれど、それでも一抹の罪悪感というか、
なんだかズルをしたような気分は、なかなか心から消え去ってくれない。

 やはり、性分なのだろう。実力でレベル5までのし上がってきた私にとって、
絶対的な壁としてそびえていた第二位と第一位が消えてしまった事で棚ボタ的に手に入れた
第一位の座をもてあまし、戸惑っているのだ。

 それとも、もしかすると焦っているのかもしれない。私がこうして第一位の座を持て余している間に、黒子はレベル5へと、昇格した。
 それも、かつての私と同じ、第三位だ。

「忌々しい《心理掌握(メンタルアウト)》……。あの女さえ居なければ私とお姉さまのツートップですのに……」

 とは黒子の言だが、相次ぐ失踪、死亡で数を減らし、補充を含めても今では5人のレベル5のうち、
3人が常盤台中学出身という状況こそが異常なのだ、これ以上は望むべくも無いだろう。

 そう思うのも、だんだんと黒子に追いつかれている私の焦燥感ゆえだろうか。
 そう考えるとなんだか自分がすごく嫌な女のような気がしてきて、少し鬱になる。
気晴らしに、今日は久しぶりに、初春さんや佐天さんと遊ぶのもいいかもしれない。

美琴「そうと決まれば、早速黒子に電話っと……」

prrrrrrrr……pi!

黒子『まぁまぁまぁまぁお姉さま! お姉さまの方からお電話を下さるなんて、ついに私の愛がお姉さまに伝わりましたのね!
 こうしては居られませんわ! 貴女、代わりに反省文を書いておいてくださいまし! 私は急用ができましたので』


風紀委員A『ちょ、ちょっと待ってください支部長! そんな事したら私が初春さんにどやされます』


黒子『それならば初春に丸投げしても結構ですの!』

風紀委員A『ちょっ! 支部長! 支部ty――』

美琴「あんたねぇ、支部長なんだからもう少し真面目に働いたらどうなの」

黒子「あら、お姉さま。 私にとってお姉さまにお会いする以上に重要な事なんて、この世広しと言えどもありませんわ」

美琴「て言うか、あんたまた反省文書かされてたの? そのうち支部長をクビになるわよ」

 そう、今私の前にテレポートしてきたツインテールの少女、白井黒子はレベル5への昇格を認められ、風紀委員第117支部の支部長に昇進していた。
初春さんも支部長補佐として、主に彼女の尻拭いをさせられている。なんとも不幸な事に。

黒子「あら、そんな事を言っていいんですの? せっかくお姉さまがご執心されているあの類人猿の目撃情報をお持ちしましたのに」

美琴「――!? ちょっと! それ本当なの?」


黒子「本当ですわ。と、言っても、まだ本人と確認が取れたわけではありませんので、あくまで『らしき』人物と言うだけですが」

美琴「それでもいいわ! 聞かせて!」

黒子「それでは話しやすい場所にでも移動しましょう、そうですわ、久しぶりにお姉さまのお部屋でも見たいですわね」

美琴「えっ? ちょっと待って今は――」

シュンッ

美琴「――ちらかって、て……」

黒子「あらまぁ、なんと言うか、女性の部屋にはとても見えませんの」

美琴「黒子……」

             ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・  
黒子「それにしても、上条当麻の住んでいた部屋をわざわざ借りるだなんて、なんだかストーカーチックですの」 

美琴「アンタに言われたくないわよ……」


黒子「まぁいいですわ、お姉さまもそろそろ焦れて来ているようですし、掃除は後でするとして先に上条当麻の目撃情報についてお話しますの」

黒子「上条当麻『らしき』人物が目撃されたのは三日前、第23学区の空港ですの」

黒子「その日第23学区の風紀委員支部に、空港内で引ったくりにあったとの通報がありましたの。
   連絡を受けた風紀委員は今から行ってももう逃げられた後だろうと、先回りして盗品の販売ルートや、
   近くを溜まり場にしているスキルアウトの情報を調べ始めたそうなのですが」

黒子「その連絡があって暫く経ってから、今度はさっきの引ったくり犯を捕まえたという連絡がありましたの。
   風紀委員が現場に赴くと、そこには縄で縛られたアワレな犯人達の姿が」

美琴「で、それとアイツに何の関係があるのよ」

黒子「そう急かさないでくださいまし。それで、風紀委員が被害者の女性に話を聞くと、ツンツン頭の青年が犯人を追いかけて取り返してくれたと」

美琴「それって!」


黒子「ええ、私もその話を聞いてピンときまして、その時の防犯カメラの映像や、その青年が乗っていたという飛行機の乗客名簿をちょろっと
   拝借しましたの……ご覧になられます?」

美琴「みる! 見せて!」

 私は黒子から携帯端末をひったくると食い入るように画面を凝視する。黒子はちょうどそのシーンのみを抜き出して編集してくれたらしい。
画面の下端から現れた男二人を追うように走ってきたのは、画質が粗くともはっきりと分かる、懐かしい後ろ姿。

美琴「当麻……」

 アイツは過去の記憶と比べると似つかわしくないほど洗練された動きで一人の男に近づくと、やはり流れるような動作で組み敷き、気絶させる。
が、そこに残りの一人の手から放たれた火球が迫る。

美琴「危ない!」

 つい画面に向かって叫んでしまったそのときだ。
 アイツが火球に向かって右手を伸ばす。すると最初からそこに何も無かったかのように火の玉が消えうせる。男が動揺し、動きを止めた次の瞬間、
その男はアイツの手により地面に叩きつけられていた。と、そこで映像は終わった。ほんの数秒の出来事だったし、はっきりと顔が映っていたわけでもない。
それでも、私にははっきりと分かった。目頭に、熱いものが浮かぶのを感じる。


美琴「生きて……たんだ……。よかった……」

 私は黒子の携帯端末を抱きしめるようにその場に蹲った。黒子が狼狽するように私の背へと手をかけるが、
その柔らかい手の感触も、どこか別の世界の出来事のように感じられた。
 私はそのまま、黒子に抱かれるようにして暫く泣いていた。


黒子「落ち着きまして?」

美琴「ありがとう、黒子。なんだかごめんね」

黒子「謝らないでくださいまし、私が好きでやった事ですので」

美琴「うん……ありがとう」

黒子「ほらお姉さま、涙で化粧が崩れていますわよ、シャワーでも浴びてこられたほうがよろしいのでは?」

美琴「うん、そうする」

黒子「では私は部屋の掃除をさせていただきますわね」

美琴「うん……」


 お姉さまは可愛らしく頷くと、ベッドの上に散らばったままの着替えを適当に選び、風呂場へと入っていかれた。
私は溜息を一つつくと、まずは散らかったままのゴミを、ゴミ袋片手に分別し始める。

黒子「このままずっと、見つからなければ良かったのに……というのは、少々不謹慎ですわよね」

 許しを請うように、つぶやく。悔しいけれど、お姉さまがあの類人猿へと抱いている思いは、三年前から一向に変わっていない。
いや、本人が居なくなりより露骨になったと言ってもいいだろう。ともかくそれが、私には堪らなかった。

黒子「それでも、この三年間のお姉さまは、なんだか痛々しくて、だけれど脆くて、見ていられませんでしたわ」

 つぶやき、洗濯物を畳み始めようとした時だった。携帯に着信が入った。相手は初春だ。


黒子「はい、どうしましたの初春。反省文なら帰ってから書きますから、いちいち電話をかけてこずとも――」

初春『反省文もそうですけど、今は違います! 白井さん、今何処に?』

少し離席。
2、30分で帰ってきます。


黒子「お姉さまのお部屋ですの」

初春『それなら丁度良かったです! 今そのアパートの近くでスキルアウトが暴れています! 
    座標を送信するので、すぐに駆けつけてください!』

黒子「あら、警備員を待てとは言いませんのね」

初春『私、白井さんの事信じてますから! それに、学園都市に五人しかいないレベル5の第三位が、スキルアウト相手に負けるわけありません!』

黒子「うれしい事言ってくれるじゃありませんの。分かりました、すぐに急行しますの!」

黒子「お姉さま! 風紀委員のお仕事が入ってしまいましたので、失礼しますわ!」

 返事は無い。けれど、聞こえてはいるはずだ。私は携帯に送られてきた座標を参照する。この場所なら、直に跳べるはずだ。

黒子「風紀委員第117支部支部長、白井黒子。推して参りますの!」


シュンッ

黒子「風紀委員《ジャッジメント》ですのっ! 神妙にお縄を頂戴してくださいましっ!」

 スキルアウトの数は3、4……5人。これなら増援は必要ありませんの!

不良A「ンだこらァ! JCじゃねえか! 俺にゃあロリコン趣味はねぇんだ、さっさと消えな!」

不良B「風紀委員っつーからビビっちまったじゃねーかよ! JCはひっこんでな!」

不良C「お、おでは、じぇじぇ、じぇいしぃの方が、好き……だな」

黒子「……黙って聞いていればJCJCと……。私は――JKですのぉぉぉぉぉぉ!!!」

 投擲。投擲。投擲!投擲!!投擲!!!

 懐に隠しておいた鎖を、直接男同士を縛るように跳躍させる。下手をすれば男達の体が真っ二つだが、レベル5の私がそんなヘマをするはずもない。
手元に残しておいた鎖の端を引っ張るだけで、男達を取り巻く鎖はきつく締まり、彼らを拘束する――ハズだった!


不良D「ンな鎖……YO!」

バツンッ!

黒子「なっ!?」

不良D「オレサマの能力は《切断分子(ナノカッター)》! 皮膚表面の分子を高速で動かすことで、人間刃物の出来上がりってワケYO!」

不良D「あんまし使いすぎるとオレサマの皮膚がヤベェ事になっちまうけどYO! 触れたら斬れるんだ、一瞬アンタに触るだけでオレの勝ちだYO!」

黒子「あら、瞬間移動者を捕まえるのが簡単ではない事、ご存知でして?」

不良E「ミサカミコト」

黒子「えっ?」

不良E「僕の能力は読心能力(サイコメトリー)。と言っても相手が強く思っているモノしか読み取れないが。相手を動揺させるには、それが一番だろ?」

不良D「そして瞬間移動者は高度な精神集中が必YO! 心乱されたおまえは羽根を焼かれたイカロスちゃんだYO!」

黒子「しまった!」

 気を取られているうちに、男の手刀(ナノカッター)は目前まで迫ってきていた。
 瞬間移動を――駄目ですのっ! 集中がっ!

キィイン!

不良D「YO?」

???「少し居ない間に、能力者まで無法を働くようになっちまったのか? まぁ何にせよ、大の男が5人がかりで女の子を襲うなんて、感心できねぇ――なッ!」

ドゴッ!

 鈍い音、誰かが倒れ伏す音。恐る恐る目を開けた私の目に映ったのは、広い背中。

不良A「ンだぁ!? このおっさん!?」

???「おっさんじゃねぇ、まだ19だ!」

 真っ黒な髪に、ツンツン頭。どこからとも無く現れて、どんな場所にも首を突っ込む。見覚えに無い神父服こそ着ているが、私は、この男を知っている。

不良B「畜生……リュージがやられちまったら俺達逃げれねえじゃん!」

不良C「やだ、やだやだやだやだぁ!」

不良E「……何モンですか、アンタ」

???「ん? 俺か? 俺はイギリス清教第零聖堂区『必要悪の協会(ネセサリウス)』神父――」

上条「――上条当麻だ」 キリッ


 と、格好つけて名乗ってみたものの、コイツらにとっちゃぁチンプンカンプンだろう。
 風紀委員らしき女の子が瞬間移動で不良たちを送り届けたのを確認し、
 俺は少女の顔を覗き込もうとして――視界が逆転した。

上条「おろ?」

 少女に足払いを掛けられたと気づいた時にはもう遅い。俺は押し倒され、間接を極められていた。

上条「いたいいたいいたいいたいいたい!! なんで! なんでこうなるんですか!? 畜生! 不幸だぁぁぁぁぁぁ!!!」

黒子「不審者として拘束しますの」

上条「まてまて待ってくださいって! こんな服着てるけど不法侵入者なんかじゃねぇっての!」

黒子「………」

 言っても、俺を押さえつけている女の子は拘束を解こうとしない。なんとか首をねじり、おれは女の子の顔を見上げる。


上条「って、白井じゃねーか! オレオレ! 俺だって!」

黒子「私は残念ながら十字教徒ではありませんので、神父の知り合いは居ませんの」

上条「いや、こんな服着てるからわかんねーかも知んないけど! 俺だって! 上条当麻!」

 怪訝そうに俺を見つめる少女が、見当外れの答えでも聞いたように不機嫌な顔で答える。俺、なんか変な事言った?

???「とうまー! 待って欲しいかも!」

上条「おいインデックス! IDだID! こいつに俺たちのID見せてやってくれ!」

禁書「ID? えっと……これ?」

 白井は俺を抑えたまま、覗き込むようにインデックスが差し出すIDカードを覗き込む。
 少しして、拘束が緩んだ。

支援
(´・ω・`)   n
⌒`γ´⌒`ヽ( E)
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(


黒子「結構ですの。失礼しましたわね、上条さん」

上条「いつつつ…… ったく、とんだ災難だったぜ。って、ようやく俺のこと思い出したか? 白井」

黒子「初めから気づいていましたわ……」

上条「え? じゃあなんで」

黒子「あーあーはいはい。そんな事はどうでもいいですの。で、三年間も行方不明だった貴方が、
   なぜまたノコノコと学園都市にやってきましたの?」

上条「あー、それなんだが。ウチの魔術師がまたぞろ何か企んで学園都市に侵入したらしいんだわ。それで、
   学園都市に詳しい俺とインデックスが派遣されたわけ」

黒子「侵入者? そんな報告は入ってきていませんが」

上条「きっと上のほうで情報が止まってるんだろうぜ。今の学園都市最高責任者の親船さんは学生思いだから、
   事を荒立てて、生徒を心配させたくないんだろ?」 


 俺の説明に、まだ何か不機嫌そうに顔をゆがめている白井。やっぱり、何か怒らせるようなことしたみたいだなぁ……

上条「ま、そんなわけだからさ、俺に会ったっての、あんまり他の奴に言ってほしくないんだわ」

黒子「えっ……」

上条「まぁお前に限って言いふらしたりはしないだろうけど、念のためな。そいじゃ、行くぞインデックス!」

禁書「はーい!」

黒子「ちょっ……」

 後ろに白井の声を受けるが、俺はあえて気づかない振りをする。
 ここで白井に会ってしまったのは、本当に失敗だった。俺はもう、ここにはいないのに。
 学園都市の上条当麻はもう居ない。
 上条当麻は、三年前に、死んだのだ。



第一章 《了》

設定的なもの

・御坂美琴 17歳
常盤台中学卒業後、エスカレーター式に常盤台高校に入学。
高校は全寮制ではないため、学園都市第一位の権力を使って上条が住んでいた寮に入る。
一応男子寮ではあるが、学園都市最強を襲えるような男は居ないので防犯はあるいみバッチリ。
そんなストーカーチックな事をしているが、第一位の権力を行使したのはそれっきりである。
性格は中学の頃より丸くなり、上条スキスキオーラを隠さなくなった。
能力は当時とそれほど変わっていないが、演算が早くなり、効率的に能力を使ったり、セーブできるようになった。
胸も結構成長している。  

・白井黒子 16歳
美琴と同じく常盤台高校に入学。
彼女は両親の許可が下りずに未だ常盤台学生寮暮らし。
高校一年生にして117支部の支部長を勤める。
能力は中学の頃より格段に成長し、1mmの誤差も無く物体をテレポートさせられるようになった。
もちろんスカートの下には矢も装備しているが、正確無比な空間転移で相手を縛る《投げ縄(チェインロープ)》を
主に使うようになった。
胸も身長も中学の頃から殆ど成長していないのが悩み



設定投下したら少し休憩にはいります。

・初春飾利 16歳
柵川中学卒業後、情報工学系の学校に入学。
レベルは1のままだが、その類稀なる情報処理能力を買われたのと、黒子の推薦で支部長補佐に。
今では当時と変わらず暴走する黒子のストッパーとして、支部を纏め上げている。
後輩からの尊敬も厚く、先輩からもウケの良い彼女が居るからこそ、黒子が支部長としてやっていけている。
因みに花は当時のままである。
ナンノコトデスカ?

・不良達
いつも5人で悪さをしている。
能力者はDとEだけだが、実質的なリーダーはA。
因みにEの能力はどう考えても皮膚がやばい事になってしまう
(素人考えではすげえ熱くなるんじゃないかな?)
ので、発動時間は一瞬。それも皮膚が再生するまでの最大7回まで。
(なんか人間の表皮は7層だったか8層ってきいた気がするから)

・上条当麻 19歳
必要悪の教会に所属。
幻想殺しは健在のようである

・インデックス
口調が地味に難しい。


3章まではかけてるんで、続き書いてきます。
おそらく4~5章構成?


おまいら佐天さん好きすぎワロタ
じゃあ頑張って出番増やしとくよ

姫神は18になると同時に俺のところに嫁いできたので出番はありません

風紀委員A 14歳
柵川中学2年。
風紀委員に入ってまだ日が浅い。
憧れの風紀委員である黒子が彼女の教育係となったものの、
黒子は真面目に教育する気がないため、初春が彼女の教育係をしているような状態。
レベル1の発火能力者で、夢は黒子のような風紀委員になる事。

因みに固法先輩は昇進して今は本部で風紀委員をしています。



というわけで続き投下。
第二章


 遠ざかって行く神父服と修道服を呆然と見送り、私はそのまま立ち尽くしていた。
 帰ってきたのだ、あのお姉さまが愛してやまない不愉快な男が。

 こうしてはいられない、早くお姉さまにお伝えして――

(上条「ま、そんなわけだからさ、俺に会ったっての、あんまり他の奴に言ってほしくないんだわ」)

(上条「まぁお前に限って言いふらしたりはしないだろうけど、念のためな」)

黒子「…………」

黒子「全く、厄介な男を好きになられたものですわねぇ、お姉さま」

 私は呟き、第117支部へと跳躍する。
 突然現れた私に、支部員達は全く驚かない。もう慣れっこだからだ。

初春「白井さん、お疲れ様です! お手柄でしたね!」



黒子「いえ、あれは……」

初春「あれは?」

黒子「なんでもありませんわ。久しぶりに暴れた所為か、少し疲れましたわ。今日は先に帰らせて

いただきますの」

初春「分かりました。報告書はこちらで書いておきますね」

黒子「ありがとうございますの。では……」

シュン

初春「あ……反省文……」


 私がシャワーを浴びて戻ると、黒子はもう居なかった。
 今日はもう少し一緒に居て欲しかったけど、風紀委員の仕事なら仕方が無い。

 さっきまで爪先立ちでしか歩けなかった部屋を、今はべた足で歩いてパソコンラックに向かう。
 PCを起動して、私はデスクトップにあるプログラムを開く。

00000 さんが入室しました

10032:こんばんは、お姉さま

12478:ノシ

19777:お久しぶりです

 これは私がプログラミングした、ミサカネットワークに私がアクセスできるようにするプログラムだ。
擬似的にチャットルームの形にしているのは、私の趣味だ。ちなみに私特有の微弱な生態電流がキーとなっているので、防犯対策はバッチリである。

 因みに「ミサカはミサカは~」という語尾は鬱陶しいので表示しないようにしてある。文章にすると見づらいのよ、アレ。無駄にレスが長くなるし。
 閑話休題。


00000:こんばんは

00000:いきなりだけど、三日前に23学区で起きた引ったくり事件について知ってる人いる?

12478:ミサカは何も

19777:ミサカも

10032:ミサカも知りませんね……と言いたいところですが、さすがお姉さま。情報が早い。

00000:知っているの!?

10032:あの人に似た人物のことでしょう?

00000:何で言わなかったのよ!

10032:きちんと調べてからお伝えしようと思っていたので。

00000:御託はいいわ。それで、何か分かったの?


10032:いえ、何も。だからお伝えできなかったのです。

00000:は?

10032:意図的に情報が封鎖されています。かなり上のほうでセキュリティが掛かっているみたいですね。理事長クラスの権限でないと閲覧できないようになっています。

10032:その中で、かろうじて手に入れられた情報……いや、《欠片(ワード)》と言った方がいいですね。

00000:もったいぶってないで、早く教えなさい!

10032:《幻想創造》

00000:え?

10032:《幻想創造(イマジンクリエイター)》と、この計画は呼ばれているようです。


禁書「とうま、本当に良かったの?」

上条「んあ? 何がだよ」

禁書「短髪とか小萌とか、他にも会いたい人、いたでしょ?」

上条「……いいんだ。せっかく無理を言って親船さんに情報規制をしてもらったのに、俺がバラしちゃ意味ねぇだろ」

禁書「でもとうま、ツインテールには話してた。それって、事情を聞いて欲しいってことかも」

上条「お前には適わねぇよ、インデックス」


 そうだ。俺は確かにこの学園都市を懐かしんでいる。
 でもそれも一時的なモノに過ぎない。

 俺はあくまで必要悪の教会の神父だ。オカルトが科学サイドに干渉することは許されない。
 あの試験管の中に入っていたいけ好かない逆さ男を倒して、一時的に戦争は終わった。

 しかし、いくら最高責任者が変わっても、あの魔術と科学の戦争はいつ再び起こるかわからない。
 オカルトと超能力は、絶対的に不干渉でなくてはならないのだ。

 魔術と科学が交差する事は、絶対にあってはいけない。
 物語を始めては、いけないのだ。

禁書「そろそろ、着くかも」

上条「ああ、俺も長く学園都市に住んでたけど、此処に来たのは、あの時が初めてだった」

 ここは第一学区。かつて窓の無いビルがそびえていた、学園都市を統括する場所だ。


佐天「へえ、じゃあ帰ってきているかも知れないんですね、その人」

美琴「そうなの、佐天さんは何か知らない?」

佐天「またまた御坂さん、私を誰だと思ってるんですか? 
   学園都市内カースト最下層をぶっちぎりで爆走中の《超時空無能力者(レベル0)》佐天涙子ちゃんですよ!」

美琴「……言っててむなしくない?」

佐天「むなしいです……」

美琴「ま、こんな話しててもしょうがないし、今日は思いっきり遊ぶわよ!」

佐天「初春も白井さんもいませんけどね」

美琴「佐天さん、少し見ないうちに嫌な子になってる?」

佐天「なはは、冗談ですよ冗談。どうします? セブンスミストにでも行きますか?」



美琴「んー、そうね。最近またブラがきつくなってきちゃって……」

佐天「かー! うらやましい! 私なんて中学の頃から全く成長してませんよ!」

美琴「佐天さんは中学の頃から結構あったじゃないのよ……」

佐天「中学生の頃は結構自信あったんですけどねー、私の行ってる学校、どうやら頭の栄養が殆ど胸に行ってる子ばっかりで……」

美琴「……もうこの話は止めましょう」

佐天「そ、そうですね…… そんじゃまぁ、気を取り直して! レッツ ゴー!」


 今日も元気だパフェがうまい!
 と、言う事で。買い物が終わった私達はいつものファミレスに来ていた。
 いやぁ、買った買った。この買い物袋を持って帰ればまず間違いなく今食べているパフェのカロリーは消費できるね!

佐天「それにしても御坂さん、下着の趣味、変わりました?」

美琴「ブッ!」

佐天「うひゃっ! ばっちぃ!」

美琴「ご、ごめん。でも佐天さんがいきなり……」

佐天「あはは、でも前まではゲコ太のプリントされてるのとか、可愛いのばっかり穿いてたじゃないですか」

美琴「あ、あんなの高校生にまでなって穿いてたら問題よ……」

佐天「おや? 本当ですか? 実は家の中でだけとか、そういうの着てません?」

美琴「き、着てないっつーの!」


佐天「本当ですかぁ? ホラ、私の目を見て答えてください」

美琴「あう……」

佐天「さぁ、吐いちゃってくださいよ、そっちの方が楽ですよ」

美琴「ぱ、パジャマとかは………って! 何言わせんのよ!」

佐天「あはははは! やっぱり!」

美琴「別にいいでしょ! 誰も見てないところでくらい」

佐天「あはははははは!」
 
美琴「ちょっ! 笑いすぎよ! ……ふふっ あはは」

佐天&美琴「あはははははは!」

 周りの目が痛い。けど、私達は笑い続けた。
 何が面白かったのかはもう忘れちゃったけど、でも、面白いんだからいいじゃん。


佐天「御坂さん、やっと笑ってくれましたね」

美琴「えっ?」

佐天「御坂さんってば、今日ずっと悩んでるみたいでしたもん。こんな風に眉間にしわ寄せて」

美琴「さすがにそんな顔はしてない……と思う」

佐天「ふふ、冗談ですよ。でも、笑って少しはすっきりしたんじゃないですか?」

美琴「…………うん」

佐天「良かったぁ、そうじゃなかったら、私ただの変な人でしたよぉ」

美琴「佐天さん……ありがと」

 そう言って笑う御坂さんの顔は、まだどこか暗い。けれど、私に出来るのはこのくらいだ。いや、こんな事だって出来るんだ。
レベル0だって、人を笑わせるくらいできる。相談に乗ってあげたり、慰めたり、一緒に遊んだり。
 みんはレベル5って言うとなんだか腰が引けちゃうみたいだけれど、私は知ってる。レベル5だって、常盤台のお嬢様だって、ただの一人の女の子なのだ。

佐天「あはは、どういたしましてー。それじゃあどういたしましてついでに、ここの会計も……」

美琴「調子に乗らない!」

 あはははははと、私は笑った。御坂さんも笑った。私達は店員に店を追い出されるまで、ずっと二人で笑っていた。


黒子「初春、調べてほしい事がありますの」

 白井さんはそう言って、私の専用デスク(殆どが大量のディスプレイとキーボード、その他周辺機器で占拠されている)にやってきた。

初春「はい、なにをですか白井さん」

黒子「先日の引ったくり事件、覚えてらっしゃいます?」

初春「ああ、あの民間人が取り押さえたってやつですか?」

黒子「そうですの。その日から2、3日前までの学園都着の便で、イギリスからの乗客が乗っていた便は何本ですの?」

初春「えっと、ちょっとまってください……出ました。9便ですね」

黒子「その中でイギリス清教に関わりのある人物を洗い出して欲しいんですの」


初春「はぁ、まぁいいですけど……」

黒子「なんですの?」

初春「忘れたとは言わせませんよ。この前の報告書に反省文。それにこれを調べるのだって結構なグレーゾーンなんですからね。
   パフェ一つじゃ済みませんよ」

黒子「はぁ……分かりましたわ。今度学び舎の園にあるケーキ屋に連れて行ってあげますから、好きなだけ注文なさいな」

初春「やったぁ! 俄然やる気が出てきましたよ!」

 一般人は立ち入る事すら許されない学び舎の園のケーキ!
 上流階級の臭いに、わたしはもう辛抱タマラン状態です!
 
 それにしてもこんな仕事をケーキなんかで請け負ってしまう私も私だ。
 でも、白井さんはああ見えてしっかりした人だ。この仕事にも、何か大事な意味があるのだろう。今は教えてくれないけれど、
きっと白井さんは話すべき時が来たらきちんと話してくれる。そういう人なのだ、彼女は。


黒子「では、頼みましたわよ、初春」

初春「おまかせください!」

黒子「それでは私は私で調べなければいけない事がありますので、失礼しますわ」

初春「白井さん!」

 気づけば、呼び止めていた。

黒子「はい?」

初春「無茶は、しないでくださいね……」

黒子「分かっていますわ……ありがとう、初春」

 そう言って、白井さんはどこかへとテレポートした。
 あんなに信頼するって言っても、やっぱり、心配なものは心配なのだ。


 だって、私の大親友で、尊敬する《風紀委員(ジャッジメント)》なんだから。



第2章 了

人物紹介挟んで休憩です。
と言っても今回は長くなる予定。
落ちる前にはきっと来るよ!

・佐天涙子 16歳
中学卒業後、上条と同じ学校に入学。
担任は我らが小萌先生で、アニメオリジナルキャラの重福さんも同じクラス。
(ゆかりんかわいいよゆかりん)
未だにレベル0だが、コンプレックスは解消した模様。
今はきままなJKライフを楽しんでいる。
初春や黒子、美琴とは時々集まってお茶したり遊びに行ったりしている。
レベルは0だけれど、超電磁砲のメンツでは一番精神的に大人。


・10032号 17歳
日々のたゆまぬ努力によって巨乳になった。
レベルは推定3のまま。
現在は冥途帰しの元で看護師見習いをしている。
ナースと巨乳が合わさり最強に見える。

・その他のミサカ
世界中に散らばって治安維持活動とか頑張ってる。
最近彼女達の間で流行っているのが、感覚共有による擬似世界旅行。
やっぱり乙女である。

sssp://img.2ch.net/ico/yakimochi.gif
佐天さんはあれですよ、御髪の髪飾りがリミッターになっていて
知り合いがいるところでは能力レベルが下がるという二重封印。

第三章はじまるよー



 私は夜の学園都市を駆けていた。
 と言っても、断続的にテレポートをしながら進んでいるだけだ。

 もう5月とは言え、まだ夜の風は肌寒い。
 カーディガンでも着てこればよかったですの。と、風を押しのけ跳躍するたびに思う。

 だけど、お姉さまはあの日からずっと、こんな冷たい風の中に、自分の心を置いていたのだ。
 それはなんて、想像するだに寒気がする事だろう。
 
黒子「まったく、あの類人猿、今度こそお姉さまの前に引きずり出して、土下座させてやりますの!」

 私は手元の携帯端末を覗き込む。学園都市の地図が描かれたそこには、消えては違う場所に再び

現れるを繰り返す三角と、のろのろと進む丸が表示されていた。
 
黒子「こんな事もあろうかと、拘束したときに発信機を付けておいて正解でしたの。
    でも、こんな事なら盗聴器もつけて置くんでしたわ。アレについて、早くあの男を問いたださないと……」


 私の現在地を知らせる三角形が、徐々にあの男を現す円形へと近づいていく。
 あと数回全力で跳躍すれば追いつくはず。

 私はそれを確認すると、一旦小休止に入った。
 無茶な連続テレポートで、私の精神もかなり疲労している。自分の疲れや負傷をきちんと把握できてこその風紀委員だ。

 と、そのタイミングを見計らったかのように私の携帯が着信を告げる。初春だ。

黒子「もしもし? もしかしてもう調べがつきましたの?」

初春『……はい。ですが……』

黒子「どうしましたの?」

初春『白井さん。もしこの人物を追っているなら、すぐに引き返してください』

黒子「? 一体何が……」


初春『イギリス清教と関係のある人物は一人だけでした』

黒子「そうですの、さすが初春ですわ。この短時間でよくそこまで」

初春『すみません、労いは後で結構ですので、今は私の話を』

黒子「やけに急いでいますわね」

初春『その人物は過去にイギリス精教に所属していた神父なのですが……』

 と、そこで初春は何かを恐れるように言葉を切る。そして、ゆっくりと語った。

初春『連続殺人を犯して逮捕されています。それがつい一週間前に保釈金を払い釈放。学園都市行きの便に乗っています』


黒子「なんですって……」

初春『保釈金の支払い元はイギリス清教『必要悪の教会』の部署《禁書図書館(ライブラリ)》。
    そして保釈された元神父の……名前は抹消されていて分からなかったのですが、二つ名は分かりました』

初春『その人物は《創造(クリエイト)》と呼ばれていたそうです』 


 「あーあー、そこまで調べがついちまってんのか。厄介だなぁ」


 ぞくり、と。背筋が粟立つ感覚。気づけば私は反射的に鉄矢を声の方向に転移させていた。

初春『白井さん!?』

黒子「貴方……いったい」

初春『白井さん! どうしたんですか白井さん!? 白井さ――」

 強制的通話を切り、私はその声へと向き直る。
 しかし、気配はすれども姿は見えず。ただ声だけが聞こえてきた。



 「困ったなぁ、そこまで知られちゃ、お前をただで帰すわけにはいかねぇや」

黒子「貴方が、あの類人猿神父が追っていたという魔術師ですの?」

 「……まぁ、そんな所かな」

黒子「姿を現したらどうですの? こそこそしていては、男が廃りましてよ」

 「そっか、それじゃあそうするか」

 唐突に背後に気配。
 私は気配を振り返ろうとして――後頭部へと衝撃をうけた。

黒子「あぐっ……」

 薄れる意識のなか、私が見上げる視界に、ようやく男の姿が映る。
 
黒子「あなた……は……          」
 
 そして私は言葉を発する事も出来ぬまま、意識を手放した。



美琴「黒子が行方不明?」

初春「はい、何かを調べに行くと言ったきり……昨日の夜に一応電話は繋がったんですけど、突然不自然な切れ方をしたと思ったら、それっきりで」

美琴「何かって……まさか空港の引ったくり事件関連?」

初春「あ、はい。白井さんは私にその時の乗客リストを洗うように言って、その時の電話も、調べた結果を報告するものでした」

美琴「……ちょっと、その話詳しく聞かせて」

 私は初春さんから説明を受けると、思考するために風紀委員支部のソファへと身を沈める。

 《創造(クリエイト)》
 《幻想創造(イマジンクリエイター)》
 《禁書図書館(ライブラリ)》
 《必要悪の教会(ネセサリウス)》
 そして《幻想殺し(イマジンブレイカー)》

美琴「……まさか、ね」

 情報は少なすぎるのに《欠片(ワード)》が多すぎる。
 この断片から真実を導き出せるのは、きっと推理小説の探偵だけだ。

美琴「やっぱり私は、ウジウジ悩むより動く方が性に合うわ!」

初春「御坂さん?」

美琴「初春さん、黒子の携帯が発してた最後の位置情報を教えて」

初春「ということはつまり……」

美琴「ええ、黒子を探しに行くわ。ついでにその《創造》って奴と、アイツの事もね!」

初春「……分かりました。でも必ず、白井さんを連れて帰ってくると約束してください」

美琴「何言ってんのよ、私は学園都市のレベル5の第一位よ?」

初春「すみません。そうですよね、御坂さんなら白井さんを連れて絶対無事に帰ってくるって、私信じています」

初春「だから御坂さん。私の親友の事を、どうかよろしくお願いします」


上条「くそっ……なんだってこんな事に!」

禁書「落ち着いてよとうま。イライラしたって、何も始まらないよ」

上条「分かってる。分かっちゃいるが……なんで白井までこんな目に!」

禁書「とうまの所為じゃないよ。だから私たちは、私たちにできることをしよう」

上条「すまねぇな、インデックス」

禁書「ううん、いいんだよ。だってとうまは私の事を救ってくれたもの。今度は私がとうまを救ってあげる番なんだよ」

上条「ありがとう……インデックス」

禁書「それじゃあ始めよう。《幻想創造》計画を」



第三章 了

といったところで次は最終章です。
終わるまでは寝ないよ!
もう少しだけまっててね!

おまたせ
じゃあちょっとずつ投下するわ。

sssp://img.2ch.net/ico/yakimochi.gif

           /ヽ  ,. . .-‐…‐- . .          >    >
        {_/)'⌒ヽ: : : : : : : : : 〉`: 、       >  ジ  >
        {>:´∧;;;;;/. : : : : : : : : : : : : :ヽ       >  ャ  >
      /: : : /;;;;;;Y: : : : : : : : : : : : : : : : : : .___   >  ッ  >
.   /: : : :/丁⌒: : :∧ : : /: /` }: : : : : :ハ;;;;;;}   > ジ  >
   /: : : :/: : :{: : 八: :{:>x/| /   |:i : : :}: : : };;;∧  >  メ  >
.  /: : :/} : : :八Y⌒jY´んハ从  从-‐ノ: : :/Y: : :.  > ン  >
 /: : / /: :/: : : V(.  弋ツ    心Yイ : ∧ノ: : ハ >  ト  >
 !: : :!//i: : : : : 个i ''''     , {ツ /彡く: ハ: : : :i > で  >
 }: : :ヽ  / : : : i: :´{入   _     /: : : ∧: i i: : : | > す >
〃. : : : ∨: : : :/l: :/⌒ヽ、  `  イ: : : :/ }: リ: : :ノ > の >
: : :/\: : V : /ノ:/     VT爪_八: : : { 彡. : イ{  > ! >
: :( /: \:} /: :/{     rv\j  { >‐=ミー=彡ヘ: ヽ ⌒V\|
`)' ){: (  ): : :{八   /ヘJ ̄≒ {_/ /   \j: : 八: :}
 (  ー=ミ  彡'  ト、 / / 〔o〕 ニ `トしヘ. _ \{ j ノ
   r=彡' ー=ァ |\{.///  . -‐、‐=ァ′  ヽ  \(
   `フ   (   |   \_/  x个彳)   ∧   \
             ヽ   | _/ ∨ {\  /、ヽ     ヽ
            ヽ  ー-ヘ.ヽ   ∨j   ヽ{__>  . _}
            〉    \   \
               /       \   \
           /           \   \
            〈               j\   \
          / ー--==ニニ=く  \



 私は黒子との通信が途絶えたという場所に来ていた。
 そこは第一学区の人の気配を感じさせないビル郡のひしめく裏路地で、今は廃墟となった『窓のないビル』のほど近くだった。

美琴「つっても、それらしいものなんて全然……ん?」

 私がふと目を留めたのは壁とゴミ箱の間に隠れるように置かれた物

美琴「――!? こ、これはっ!」

 私はもつれる足を引きずるように、倒れこむような形でそれを掴み取った。

美琴「世界で50体しか作られていないというシリアルナンバー入り限定版ゲコ太ストラップ!! どうしてこんなところに!」

 ああ、あの夢にまで見た限定版紳士ゲコ太! こんな所に打ち捨てられているなんて、なんて可哀想なのかしら! 

美琴「……そう! これは保護! 保護よ! 一時的預かるだけ! 別にネコババしようなんてこれっぽっちも……ん?」

 ふと、異変に気づく。このゲコ太……どこかが……。


美琴「あぁっ……!」

 なんて事!? そういうことだったのね!?

美琴「背中がっ! ほつれてっ……破れてる! だから捨てられてしまったのね! かわいそうなゲコ太……分かったわ。
    この子は私が責任をもって治療します。うん、だから一緒に帰ろっ! ゲ~コ太っ……あれ?」

 ふと、その破れ目に、何か異質な感触を感じ取り、私はその部分を探る。
 すると、そこから出てきたのは小さな紙切れだ。

美琴「なに?これ……」

 小さい紙には細かい字で数桁の数字が書かれている。
 ちょっとまて、これをどこかで見た事があるような……




黒子「うっ……ここは」

???「ようやく目が覚めたか。目ぇ覚まさなかったらどうしようかと思った」

黒子「っ!! テレポートできない?」

???「あぁ、その手錠は俺の能力を解析して作ったモンだから、それに触れている間は超能力は使えないぜ」
                                            ・ ・ ・ ・ ・ 
黒子「……落ちるところまで落ちましたわね。正直見損ないましたわよ、上条当麻」

上条「そう怖い顔すんなって、こっちの計画が終わったら、すぐに解放してやる」

黒子「はんっ! 信用できませんわ。レディの事を後ろから殴るような類人猿の言葉なんて」
                                        ・ ・ ・ ・
上条「そう怒るなよ白井。あっちのおっさんだけじゃなく、お前までそんな目に遭わせちまって、俺も心苦しいんだ」

 言われ、私は上条当麻の視線の先に目をやる。
 そこにいたのは、手錠で縛られた、くたびれた神父服の中年だった。

黒子「彼が……《創造(クリエイト)》ですのね」


上条「おお! すげぇなお前。そこまで調べが付いてたなんて、上条さんもびっくりですよ!」

黒子「ただのあてずっぽうですわ。では、なにやら企んでいた魔術師も捕まえた事ですし、さっさとイギリスに帰ってくださりませんこと?」

上条「ああ、なんだお前、アレを信じてたのか。すまねぇな白井、アレ嘘なんだわ」

黒子「皮肉ですのよっ! 全く、鈍いところは相変わらずですのね……」

上条「……? まぁいいや。そいじゃあお前はそこで見ててくれよ。幻想の創造を」

禁書「第7から第19章までの解読は終了。いつでも始められるよ、とうま」

黒子「《幻想創造(イマジンクリエイター)》……世界の理を書き換える気ですのね」

上条「おいおい、マジですか? 白井、おまえどこまで知ってるんだ?」

黒子「あら、アレは貴方が残したんでしょう? ご丁寧に、あの時貴方が盗み見た方法と同じ隠し方をして」

上条「なんだ……あの部屋白井が入ったのか。常盤台のお嬢様があの部屋で暮らすのは苦痛じゃないか?」

黒子「……えさま……ですの」

上条「あ?」


黒子「お姉さまですのよっ! あの部屋に住んでいるのは! 貴方がこの街を去ってから、三年間も待ち続けていたんですのよ! 
それなのに貴方は!」

上条「あちゃぁ、よりにもよってビリビリかぁ……でもま、アイツがここに辿り着いてないって事は、御坂はアレを見てないんだろ?
 良かったよ、アイツにまで苦しい思いをさせずに済んで」

黒子「それならもう遅いですわ……私がお姉さまの部屋を掃除したときに見てしまったあの資料……
いえ、手記と言うべきですわね。あのゲコ太人形の中に入っていたノートの事は、もう私が伝えてしまいましたもの」

上条「――!? てめぇ! なんて事を!」

黒子「それだけではありませんわ、私自身に付けた発信機の周波数も、お姉さまなら気づいている頃ですの」

上条「――くそっ!」

禁書「とうま、それなら早く始めた方がいいかも。あの元魔術師が持ち逃げした禁書《創造(クリエイト)》の解析も、もう終わったよ」

上条「ああ、長かった。まさか刑務所の中に隠されるなんて、俺も思っていなかったからな。それどころか、学園都市にまで逃げ出すなんて。
釈放してやった恩を仇で返すとは、上条さんは呆れて物もいえませんよ」

黒子「あの手記に書かれていたのは元学園都市最高責任者にして、元史上最強の魔術師、アレイスター・クロウリーのプランでしたわね。
その名も《幻想創造計画》」

黒子「私に魔術的なことは分かりませんし、そもそも手記に書かれていたのは短い《断片(センテンス)》ばかり。これは私の想像に過ぎませんが……」

黒子「貴方、魔術師を根絶やしにしようとしていますのね!」


上条「根絶やしなんて人聞きの悪い。俺はただ、みんなが笑って暮らせるような、最高のハッピーエンドを見たいだけなんだ」

黒子「はん! 何がハッピーエンドですか。貴方がしている事によって、世界のバランスは完全に崩壊する!」

上条「……戦争はさ、なんで無くならないかわかるか? 白井」

白井「突然なんですの? 気でも違えまして?」

上条「そいつはな、いがみ合う両者が力を持っているから起こるんだよ。だから、片方の力を根こそぎ奪い取ってしまえばいい」

白井「詭弁ですわ!」

上条「でも真実だ。魔術がなくなってしまえば、魔術と科学の戦争は永久に起こらない」



上条「かつてアレイスターは魔術師への復讐のためこの計画を立て、俺を作り、インデックスを作った。
    そして俺は、ハッピーエンドのためにこの計画を完成させる!」

黒子「魔術という理を書いた『最初の魔道書』《創造(クリエイト)》を逆算し、その核をこの世に顕現させ、
    それを貴方の右手で破壊する事で、魔法自体をこの世から消してしまう! 神を殺す気ですの!? 上条当麻!」

上条「そうだ。この世が神なんていうくだらないモンのルールで縛られてるっていうなら!まずはその幻想をぶち殺す!」



  「ふっざけんじゃないわよ!」


上条「――まさか!?」

禁書「私は先に顕現儀式を開始するよ! とうまはそれまで時間を稼いで!」

上条「分かった……ったく、昔っから俺につっかかってきやがって、そんなに俺のことが嫌いかよ、ビリビリ!」

黒子「お姉さま!」

美琴「黒子、アレあんたの風紀委員用データバンクのIDとパスだったわね。だめよあんな大事なもの、そこらへんにほっといちゃ。
    ましてやあんな情報まで入れとくなんて。拾ったのが私でよかったわね」

黒子「あんなブサイクなストラップ。拾うのはお姉さまくらいだと思っていましたから」

美琴「言ってくれるじゃないの。それと私の部屋の人形を勝手に解らしてくれた償いは、パフェ一つ位じゃ済まないわよ!」

黒子「それでは学び舎の園のケーキではどうですの? 久しぶりに食べたいと、先日おっしゃっていたではありませんか」

美琴「よっしゃぁ! 契約成立!」


上条「いつまで漫才続けてる気だ? まぁ俺はこのままタイムアップでもいいんだが」

美琴「久しぶりね! どうやら私の可愛い後輩をさんざん苛めてくれたみたいじゃないの!」

上条「そいつは悪かったなぁ、それについては謝るよ。でも……本当にツいてねぇなぁ」

美琴「はっ! この御坂美琴さまに見つかったアンタは、やっぱり不幸だったってワケね!」

上条「いやいや、ホントにツいてねぇよ……お前」

美琴「――!?」

 疾駆。その言葉が最もふさわしかった。
 まるでテレポートしたかの如く、上条は美琴に肉薄していた。


美琴「っつ――!」

 美琴は上条の拳を紙一重で避け、電撃の槍を繰り出す。

上条「きかねぇ!」

美琴「分かってるわよ!」

 しかし右手のみで対処しなくてはならない上条は、その場に留まらされる。
 そこに、砂鉄を固めた刃があの時のスキルアウトとは比べ物にならない速度、威力、数で上条を完全に包囲する。

上条「チッ!」

 しかしそれを、今度は右手に頼ることなく、見切ったようにステップのみでかわすと、今度こそ上条は美琴を捕らえていた。

上条「わりぃな、少しの間寝ててくれ」

 まるでダンプカーが直撃したかのような轟音が響き、美琴の体は頼りない紙くずのように吹き飛ぶ。

黒子「お姉さま!」

上条「土御門直伝の体術に、天草式の格闘術を取り入れたモンだ。これで暫くは動けねぇだろ……悪いな、美琴。こんな事になっちまって」

美琴「こんな時に……名前で呼ぶんじゃねぇわよォォォ!」

 ガクガクと、足は震えていた。腕はもう、上がりそうにない。胃液は今にも喉をせり上がってきそうだ。
それでも、御坂美琴は立ち上がった。頼りない足取りで一歩、一歩と地を踏みしめる。

上条「頼むよ、もう立ち上がらないでくれ! これ以上俺に人を傷つけさせないでくれ!」

美琴「っざけんじゃ……ないわよ。アンタだって、あの時、私相手に何度でも立ち上がって来た癖に……勝手な事ばっかり、言ってんじゃ……ねぇっての」

上条「そうか。それなら、お前が何度でも立ち上がるって言うのなら、まずはその幻想を――」

美琴「――ぶち殺すって? やってみなぁ!」

 叫び、美琴はポケットから何の変哲もないメダルを取り出す。

美琴「これが私のぉ! 全力全開!」

 弾き、

上条「うおおおおおおおおお!!」

 放った!


 灼熱色に輝く赤線は、真っ直ぐに上条へと向かい――その横を通り過ぎた。

上条「無理すんなよ、お前の十八番も、完全に外れてるじゃねえか」

黒子「いいえ、外れてなんていませんの」

 瞬間、上条の両腕がロックされ、彼は立ち止まる。

上条「なっ!? 鎖?」

黒子「外れてなんて居ませんわ。私の手錠を狙った超電磁砲はしっかりと私の束縛を解いてくださいましたもの」

上条「なっ! あの高威力の超電磁砲を手錠ごと受けたら、お前の両手が吹き飛んじまうぞ!」

美琴「あら、この3年間私も遊んでたわけじゃないのよ? 手加減だって、上手になったんだから」

上条「だからって! そんな危険な!」

黒子「あら、学園都市第一位にとって、それくらいの芸当朝飯前ですわ」

上条「くそっ!この鎖、はずれねぇ!」

美琴「そんじゃぁ歯ぁくいしばれ最弱! 私の最強は、ちょっとじゃないくらい痛ぇぞゴラァァァ!」


 ドゴッ…… 



禁書「はぁ、あと少しで顕現が終わりそうだったのに」

白井「大人しくお縄につきなさいですの」

禁書「分かってるよ。この計画は、元々とうまがいないと成立しないんだから」

白井「あら、やけに聞きワケがいいんですのね」

禁書「んー、まぁね。だってこれは元々、とうまのために手伝ってたわけだし」

白井「え?」

禁書「でも……もうきっと、とうまにこの計画は必要ないんだよ」


上条「俺は……俺はなんつーことをしちまったんだ」

上条「笑顔だ、ハッピーエンドだなんて言って、結局やってることはアレイスターと何もかわらねぇじゃねぇか」

美琴「そうえ、とんだ大馬鹿よ、あんた」

上条「すまねぇな、ビリビリ。お前にこんな事させちまって」

美琴「ミ・サ・カ・ミ・コ・ト! ビリビリじゃなくて、ちゃんと名前で呼んで」

上条「すまない、御坂」

美琴「名・前・で・呼・ん・で!」

上条「み、美琴……? アレ? なんか怒ってます?」

美琴「怒ってるわよ、すっごくねぇ……」



上条「ひ、ひぃ!?」

美琴「……でも、全部許してあげる。本当はアンタも……当麻も怖かったんだよね? 許して、ほしかったんだよね」

上条「…………」

美琴「だって、そういうことでしょ? じゃなきゃ、誰が入るかも分からないアパートに、わざわざ大事な資料を残したりしないわよ」

上条「お前……」

美琴「だから、私は許してあげる。アンタが迷惑かけた人たちにも、一緒に謝ってあげる」

上条「なんで、そこまで……」

美琴「待ってたから……」

上条「え?」

美琴「三年も、待ってたから……ずっと、アンタの事が――」

美琴「――スキ、だったから」



美琴「当麻はいつだって、誰かのために動いてた。今回だって、自分が悪役になって、それでも考えてたのは他人の事だった。
    私は、そんな当麻が、ずっとずっと、大スキだから」

上条「みこ……と」

美琴「ねぇ、目閉じて」

上条「え?」

美琴「はやく!」

上条「あ、ああ……これで、いいか?」

美琴「…………」

上条「おい美琴! いったいなにしょうって――んんっ!」

黒子「な、な、ななななななななぁっ!? …………」



 私のファーストキスは、血と、涙の味がしたのだった。


エピローグ


黒子「トホホ……とんでもない出費ですの」

美琴「あー、喰った喰った。いやぁ、やっぱここのケーキ美味しいわねぇ」

初春「それも白井さんのオゴリというのがまた美味しさを引き立てますね!」

佐天「いやぁ、白井さん。ご馳走様ー」

黒子「お姉さまも初春も、食べすぎデスの……って、なんで佐天さんの分まで私が払わなくてはいけませんの!?」

佐天「いいじゃんいいじゃん! 細かい事はきにしない気にしない!」

黒子「細かくありませんの! 貴女が一番食べてらっしゃったじゃありませんの!」

佐天「えー? しっらないなぁ、そんな事」

黒子「太りますわよ……」

佐天「なにぃ!?」


 じゃれあう黒子と佐天さんを見て、私はつい笑みがこぼれてしまう。


 当麻とインデックスはイギリスに帰った。
 今回迷惑をかけた人たちに、一人ずつ、謝りに行くらしい。
 私も付いていくといったのだが、そこは男のケジメがどうとかって。

 でもその代わりに、当麻は私に約束してくれた。
 今回の罪を償い終わったら、かならず学園都市に、私を迎えに来てくれるって。

 だから私は待つことにした。
 何年でも、何年でも、私は待ち続けるだろう。


 愛しい、あの人との約束のために……


         美琴「あれから3年……か」 END

>>308

白い魔導服着たあの子が…

ところで突然関係ない話なんだが>>1は王国民なのか?

付き合ってくれたみなさま、有難う御座いました。
まぁ確かに最後は尻切れ感がありましたが、そこは「小説は竜頭蛇尾に!」という事で。

何か>>1に言っときたい事ある?

>>358
今度はもうちょっと長くてもいいかも

漫画版禁書買おうかなって思ってるんだけど小説に沿ってる?

漫画は露骨な美琴ルートの圧力を感じるんだよ

>>351
お察しの通り、なのは厨です

>>361
うはwwwおkwwww俺に死ねというのかwwwまだ原稿おわってないのにwwww

>>363
ダークサイドに堕ちた上条さんということで

>>369
インなんちゃらさん乙



あんま全レスじみた事やってもしょうがないし、俺はねます。
みんな、付き合ってくれて有難う!愛してる!

>>358
アレイスターが住んでた窓の無いビルは7学区だと思うんですが

>>372

………… ホラ、1と7って似てるだろ?

sssp://img.2ch.net/ico/yakimochi.gif
乙乙ですし

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom