佐天「上条さん、か……クリスマスはどうするんだろう」(420)


・はじめに・
何が悲しくてこんな時期にスレタイにクリスマスなど付けねばならんのかと小一時間。

このスレは、前スレ佐天「上条さん、か……クリスマスはどうするんだろ?」 - SSまとめ速報
(http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1261738037/)の最終話を投下しようと試みたところ、28日の大規制に巻き込まれ>>1の携帯とパソコンからの投下が不可能になってしまい、
結局投下できなかった分を、パソコンだけ今になってやっと規制が解けたようなので投下してしまいたいというスレです。
ちなみに携帯の規制はまだ続いている。

もうね、今更過ぎになるのはもう覚悟してたんだよ。
でも、前スレ保守してくれてた人と自分の自己満足のために投下する。

なんでまあ、知らん人は知らんでヌルーしてください。
ゆっくりと朝まで投下していきます。

規制はホントに氏ね



………………
12月25日
天気・晴れ
降水確率10%
…………………


『…今日の天気は全国的に晴れで…雲は…』


佐天「…よし、晴れ」


良かったぁ…晴れだ…

今日曇ってたりしたらどうしようかと思った…

なんせ今日は…

大事な大事な…

佐天「…クリスマス!!」

こんな時に天気悪かったら最悪だった


『…気温は昨日よりも下がり…』

うわ、昨日よりも寒いのか…


…ま、まぁ…着込んでいけば…問題ないか

…えーっと

コートに、手袋……

マフラー…………

マフラー…は、ないか…

そっか…無いんだった

ミサカちゃん、大事にしてくれてるかな………


佐天「…そういえば、あれからミサカちゃんに会ってないな…」


どうしてるんだろ…?

またお腹空かせてるんじゃないかな…

…今度会ったら、何食べさせてあげようかな…

佐天「…ふふっ」

ミサカちゃんの喜ぶ顔が浮かんでくるなぁ…

…また、会えたらいいな


佐天「…さて」


約束の時間までまだ時間あるし…

…ちゃんと準備しとこっ……


――――――

――――――
――昼


…ああ、もう昼か


一方「…」

…結局、昨日も見つからなかったか…

…しっかし

馬鹿みてぇに晴れてやがるな…

誰も晴れてほしいなんて思ってねぇンだよ

クリスマスなんだったら

雪の一つぐらい降りやがれ…


一方「…はぁ」

…昨日、一日探し回って手がかりなし

居なくなった日のことを思い返してみても…

…特に思い当たるフシがねぇ…


あまりにも突然過ぎた

『突然』消えたとしかいえねぇ

…別に俺も、あいつに常に気を配ってるわけじゃねぇ

だからといって…例えば誰かが俺たちが寝てる間に近付いて来ているンなら…

その時点で俺は、気づいている

…なのに

俺が気付いた時には、あいつは居なくなっていた

人の気配も、何も感じなかったのに、だ…

あいつが勝手に俺の傍から離れて

勝手に一人でいなくなったンならまだいい…

…だが、そうもいかねぇだろ


『…嫌な予感がするの…』


…あいつは、予感してやがった

自分に何か悪いことが起きることを、何となくわかってたンだ


あいつの言ったことには、何の根拠もねぇが…

…この状況を予感してたってンなら、説明はつく

なら、あとは…

あいつの身に何が起こったか、だが…

一方「…連れ去られた、と考えるのが自然だな…」

あいつは一人で街中を歩けるほど、正常な方向感覚は持ってねぇ

放っておいたらすぐに迷う

…だが、俺の前に二日も姿を見せないなンてありえねぇ

あいつはどれだけ迷っても、それなりに時間が経てば、いつの間にか俺の後ろを歩いてやがる

…そんな奴だ…


一方「……」

いや…待て

そういやぁ、あいつ…

猫連れてなかったか?

もどってきた!!!


…確か…あの日…

散々…飼いたいだのなんだのって

ギャーギャー言って…

結局………そのまま…

猫と一緒に寝ていた…


一方「…なるほどな」

…あのクソガキ

だからあれほど飼うなって言ってンだろうが

…だが、確かに…それなら

なンとか説明がつく

何故あいつが突然消えたのか…

一方「…さて」

とりあえず…

今日も探しに行ってやっか…

―――――――
―――

―公園―


初春「……」


ああ、こんなにいい天気

雨が降ってほしかったな

雪じゃなくて、雨

全部、流してほしかった


よくわからない…昨日からずっと頭の中で飛び交う『言葉』と

この、胸の痛みを………


私には、やらなければいけないことがある…

だから、こんなところで立ち止まってるわけにはいかない…


初春「…」


手袋……私、なんで着けてるんだろ

こんなもの…いらないのに…

いらないから、昨日も捨てようと思ったのに…

……違う

寒いから、つけてるだけ

深い意味はない

そう、別に佐天さんからのプレゼントだから、つけてるわけじゃ……ない

そんなじゃ、ない

…私は、大丈夫だ

だから、行こう…


初春「…お仕事です」


重い足を、その方向に向けて―――

―――――
――――
―支部―


黒子「……」

朝から…ずっと調べていますが…

めぼしい場所が、見当たらない

昨夜はあれから闇雲に探し回りましたが…

よく考えれば、そんなことで見つかるような場所なら…

とっくに見つかってるはずですわね

…私も、頭に血がのぼり過ぎていたようです

失格ですわね…私とあろう者が…冷静さをかくなんて…

黒子「…しかし…」

いくら闇雲に探したとはいえ…

これほど見つからないものでしょうか…

おそらく、どこかの建物の地下ではないかと推測しているんですが…


仕方ありません


黒子「…確証の要素はありませんが…」


しらみ潰しに探して行くしか、なさそうですね

参りましょうか…


黒子「しかし、それにしても…いい天気ですわね」

まるで悪いことなど、何も起きていないと言わんばかりに…

憎たらしいほどの、青空ですわね…

…そういえば

思い返してみれば1ヶ月前の『あの日』は…

ひどい天気でしたのに…

…今日は……


黒子「………」


…まさか

まさか、とは思いますが…

彼女の…目的は…

いや、しかし…


黒子「…そう考えるには、まだ早い…ですかね」


ともかく今は…

お姉さまを探しましょう


願わくばこの太陽が…

その場所を照らしてくれることを願って…

――――――

――――

―?―


打止「それでね、ミサカはミサカはクリスマスがとっても楽しみで…」

打止「たくさん美味しい物食べたいって思ってるの!」

美琴「…そっか~。確かにクリスマスだしね」

こんな暗いところに閉じ込められてるのに…

ミサカちゃんは元気だなぁ…

暗くて姿が見えないけど…

確か…どこかで…会ったこと、あった…かな?

まぁ、そんなことはいいか…

…私、いつから寝てたんだろ…

…なんでこんなとこにいるんだっけ?

自分からここに来て寝てたわけでもないしな…

…って、それならこんな身動きとれないように体縛られてないわよ


打止「ねえねえ、あなたは、クリスマスに何かするの?」

美琴「私?あ、そういえば、プレゼント…買いに行こうと思ってたかな…」

打止「プレゼント?いいないいな!誰にあげるの?ってミサカはミサカは聞いてみたり」

美琴「えっ?…ま、まぁ……それは…友達とか…」

打止「…?」

美琴「…す…好きな……人に…」

打止「好きな人に?」

美琴「う、うん」

打止「やっぱりそうなんだぁ!」

美琴「え?」

打止「プレゼントって、自分の好きな人にあげるんでしょう?ミサカもミサカも、好きな人にプレゼントあげたいな!」

美琴「…そうだね。ミサカちゃんは、好きな人いるの?」

打止「うん。いるよ!…いつも意地悪だけど、ミサカのこと守ってくれる人とか…」

打止「…たこ焼き食べさせてくれて…」

打止「…ミサカにマフラーを巻いてくれた人とか!」

美琴「…!マフラー…?」

打止「うん!とってもとってもあったかいの!黒くて綺麗な長い髪のお姉ちゃんが私にくれたの!」

美琴「…黒くて…長い髪の…」

打止「うん!とっても優しい人だったよ!」

美琴「そっか……良かったね、マフラーもらえて」

打止「うん!ミサカはミサカはとっても嬉しかったの!」

美琴「…そっか」

…多分、マフラーを渡したのって…

……ふふっ

なんか、よくわからないけど…

運命、感じちゃうわね

美琴「…ねぇ、ミサカちゃん」

打止「ん?なーに?」

美琴「その、マフラー…大事に持っててあげてね?」


きっと、大切な…ものだから


―――夕方


・佐天自宅前・


佐天「…よし」

忘れ物は…無いよね

何度もチェックしたし…

うん、準備万端!

今日は…頑張るぞ


佐天「…でも、それにしても寒いなぁ」

結構厚着したはずなんだけど…

それでも、寒い…

なんでこんなに冬って寒いんだろう…


…そういえば、初春に

なんで冬が来るんだろうって聞いたら

それは地球に聞いてください、って言われたな…

確かに、私たちでどうにかなる問題じゃないよね

秋が終わったら、冬

それが終わったら春

その次は夏………

そうやって季節は自然に回っていくんだよね

『どうして春はまだ来ないんだろう…』

『初めに春と書いて初春という名前の私がヒントです』

ふふっ…そうだね、初春

初めに春が来るから…

最後の冬に回ってくるんだね…

じゃあ、この寒さも…受け入れないとね


佐天「よし、それじゃあ…行くか!」


「あ、佐天さん!」


佐天「…え?」


初春「こんにちわ、佐天さん」

佐天「初春…?どうしたの?」

初春「ああ、いえ…ちょっと…」


お話がありまして


―――――

―――

・○×地区・


黒子「…」


…まったく

しらみ潰しに探すとは言いましたが…

やはり、骨が折れますね…

ある程度の目安は付けて探しているつもりですが…

そう簡単には見つかってくれませんか…


黒子「……」


『結局あなたには何もできないんですよ』


黒子「…っ」


あの言葉…

あの表情…

お姉さまと見分けがつかないその容姿で…

私に言い放ったあの態度…

思い出す度に苦虫を何匹噛み殺せばいいか…

あの時、何も出来なかった自分に対するどうしようもない怒り

敵に…それもお姉さまを奪った敵に…

尻尾をまいて逃げるなど…


黒子「屈辱……ですわ」

このSSをはじめて読む人へ
佐天「上条さん、か……別に格好良いって訳じゃないのになぁ」part1
佐天「上条さん、か……別に格好良いって訳じゃないのになぁ」 - SSまとめ速報
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佐天「上条さん、か……クリスマスはどうするんだろ?」
佐天「上条さん、か……クリスマスはどうするんだろ?」 - SSまとめ速報
(http://sea-mew.jp/nox/modules/webarc/2ch/ss/1261738037-0.html)


…許しません

ここまで馬鹿にされて

黙っているほど、黒子は優しくありませんよ…


黒子「絶対に…絶対に見つけますわ…」


…待っていてください、お姉さま

必ず、黒子がお姉さまを助けだして差し上げますわ…


―――ザッ


黒子「……ん?」


あれは……

どこかで…

――――

・○×地区・


一方「…」


成果は、無しか…

こうも見つからねぇと

この世にあいつはもういねぇンじゃねーかと思っちまうな…


一方「…」


…あいつがいなくなって…

まともな事が起きる気がしねぇ…

…ったく…

何でこんなに…俺は焦ってるンだ…

いつも後ろにちょろちょろと付いてきている奴がいねぇだけで…

こんなにイライラするモンなのか…


『クリスマス、楽しみなの!』


…………。

今日がクリスマスだって…?

笑わせるぜ

あいつのいねぇクリスマスなンて…

あっていいと思ってンのか


一方「…テメェ一人で過ごさせねぇからな」


…クソガキ…

ここまできたら絶対に…

見つけてやるよ…


一方「……?」


なんだ…?

視線…?だが、敵意はない…


誰だ…?


「あなた…」


一方「…おまえは…」


黒子「…レベル5の一方通行…ですか」


一方「…」

・・・・・・・・


――――夕暮れ


スタスタスタ…

佐天「わぁ、もう暗くなってきたね」

初春「そうですね。日が暮れるのが早くなってきましたね」

佐天「やっぱ冬って感じだよね」

初春「そうですね…」

佐天「今朝起きた時なんてさ、びっくりするぐらい寒かったよね!」

初春「そうですね…」

佐天「私も結構厚着してきたんだけどさぁ…。外でたらもっと寒いしねぇ」

初春「そうですね…」

佐天「…初春?」

初春「…はい?」

佐天「どうしたの?なんか、さっきから元気ないみたいだけど…」

初春「あ、いえいえ。そんなことないですよ」


佐天「?…そう?」

初春「ええ……それより」

佐天「ああ、何か話があるんだっけ?」

初春「はい。まぁ、大したことじゃないんですけどね…」

佐天「そうなの?ていうか、今私達ってどこに向かって歩いてるの?」

初春「ああ、それと関係がある話なんですよ」

佐天「?」

初春「実は、こっちの方がイベントやってるとこまでの近道なんですよ」

佐天「…え?ああ、でも、確かに方角的にはそうか」

初春「はい。ちょっとあそこまで行くには距離がありますからね」

初春「私が事前に…佐天さんのために調べておいたんですよ」

佐天「本当に?わぁ、初春ありがとう!」

初春「いえいえ。私も家に居ても暇ですし、それにどうせなら最後まで応援させてください」

佐天「もう…そんなにしてくれなくても…。でも、ありがとう初春」


初春「お礼なんていいですって。…あ、それと」

初春「佐天さん、上条さんとの待ち合わせ場所って打ち合わせしました?」

佐天「…え?いや、クリスマスツリーの前で待ち合わせにしたけど?」

初春「あー、それはやめておいた方がいいです」

佐天「え?なんで?」

初春「だって考えてみてくださいよ。あのクリスマスツリーがメインのイベントなんですよ?」

初春「そんなとこ、人がたくさん集まってて、待ち合わせ場所には適してませんよ?」

佐天「あ……そっか」

初春「下手したらお互いに見つからないままイベント終わっちゃうかもしれませんよ?」

佐天「ええ!そ、それは困る…」

初春「でしょう?だから…その近くの時計台前に待ち合わせにすればいいと思うんですよ」

佐天「…あ、そういえばそんなのあったっけ…」

佐天「あ、でも、じゃあ今から上条さんに連絡を…」

初春「…その心配はいりません」

佐天「…?」


初春「もう私がさっき上条さんに連絡しておきましたよ。佐天さんが時計台前に待ち合わせ場所変えたいって言ってますって」

佐天「…う、初春…。あんた、私のマネージャーか何か?」

初春「ふふっ、似たような物ですね」

佐天「うぅ…なんか、ここまでしてもらってると、逆に悔しいな…」

初春「気にしなくていいですよ。なんせ私は…佐天さんの友達ですから」

佐天「…初春…」

初春「…友達を応援するのは、当然ですよ」

佐天「…ふふっ、ありがと」

初春「いえ…いいんですよ」

佐天「…あ、そういえば」

初春「?」

佐天「…その手袋、ちゃんと付けてくれてるんだね初春」

初春「…あ、ああ…はい。もちろんです」

佐天「ふふっ、嬉しいな。気に入ってくれた?」

初春「ええ…とても。なんせ、佐天さんにもらった物ですから」


佐天「もう、そんな嬉しいこと言わないでよぉ!照れるでしょう!」

初春「ふふふ、照れる佐天さん可愛いです。これが萌えというやつですね」

佐天「な、何言ってんのよ…」

初春「ふふっ……あ」

初春「…着きましたね」

佐天「え?」

初春「…ここを通っていけば…すぐに着けますよ」

佐天「…そう、なんだ…」

初春「ええ…」

初春「この路地を抜けた先に…目的地がありますから」

佐天「…そっか…でも、なんか暗いな…」

初春「大丈夫ですよ。すぐに目的地に着けますから」

佐天「そっか……わかった」

初春「はい、じゃあ…私はこれで…」

佐天「うん、ありがとね、初春」


初春「いえいえ、今日は楽しんできてください」

佐天「うん、じゃあ…またね、初春」

初春「はい……では、また……」

佐天「うん」

初春「…」


スタスタスタ……


初春「―――っ、佐天さん!」

佐天「…え!?な、なに、初春」

初春「…あの…」

佐天「…どうしたの?」

初春「……手袋」

佐天「…?」

初春「手袋……大事に、しますね」


佐天「…えへへ、うん。ありがとう」


スタスタスタ…


初春「………」

行って…しまった…

いや、こ、これでいいんですよ…

だって、そうすればいいって言われたし…

言われた……言われたから……


…でも

初春「……うっ」


また胸が痛い

張り裂けそうになる…


佐天さんと一緒にいたら余計に…痛かった…

なに……何なんだろう…この…痛み…

やめてよ…なんで、こんなに痛むの…?

これは…何…?


『ありがとう初春』


………っ

…痛い

…痛い…痛い…

どうしたら…

この胸の痛みが治まるんだろう…

――――――

――――

・路地・


…もう、夜になりましたか

早いものですね

青空が、星空に変わるのも


御坂妹「…さて」


どうやら、来てくださったようですね

大体、予定していた時間です

上手く誘導してくださったようですね

とても優秀です、初春様


ニャーン


御坂妹「…今宵は、クリスマス」


この満天の星空の下で…


精々、踊っていただきましょうか


佐天涙子様

・・・・・・・・・・

――――――
―――夜


・公園・


一方「…なるほど」

一方「つまり、テメェはあのクローンにどっかに監禁されてるレールガンを探してるわけか」

黒子「ええ。…そして、あなたは…打ち止めさんを探しているわけですね」

一方「…てことは、つまり…」

黒子「…ええ。おそらく、ご想像の通りかと…」

一方「…あのクソガキとレールガンが…同じ場所に監禁されてるってことだな?」

黒子「おそらく、二人ともあの『妹達』によって連れ去られ、捕えられているのでしょう」

一方「…あの糞クローン共―――」

―ザッ

黒子「!…待ってください!どこに行こうと言うのですか?」

一方「決まってンだろ。あのクローン共をぶち殺しに行くンだよ」

黒子「やめなさい!今はまだそれよりも、打ち止めさんとお姉さまを探すのが先です!」


一方「そんなモン、あいつらから居場所を聞き出せばいい話だろうが。…なんせ、あのクローン共を一万人ぶち殺してきたのは、この俺だぜ?」

黒子「…わかっています。あなたのその実力は認めますわ」

一方「…なら、何も問題は…」

黒子「大有りですわ」

一方「…あァ?」

黒子「貴方もご存知でしょう?…あの妹達が1人ではないことを」

一方「ンなことぁわかってる。数で攻めて来られようが、俺には関係ねぇ」

黒子「…なら、例えばその一万人のうちの何割かの妹達が、あなたと交戦したとしましょう」

黒子「…その間に、残りの妹達が、人質に捕っている打ち止めさんを傷付けることは…容易いことだと思いませんか?」

一方「……」

黒子「あなたが妹達を狙ってきたと知れば、直ぐ様あなたの『弱味』である、打ち止めさんに標的が移るでしょう」

黒子「それに、その肝心の人質の居場所がまだ特定できていない今、下手に動くことは禁物です」

一方「………チッ」

黒子「お気持ちはお察し致します。私も…同じですからね」


一方「…はぁ。…で?これからどうしようってんだ?」

黒子「…とにかく今は、落ち着いて行動をしていく必要があります」

黒子「なるべく…早く、そして慎重に…お姉さまと打ち止めさんの居場所を特定し、救出しなければ…」

一方「…それができるンなら、最初から苦労してねーよ」

黒子「そうですわね…。お互いに、今は手詰まりと言ったところですね…」

一方「……はぁ。しかしよ…」

黒子「…?」

一方「…あのクソガキは、『妹達』の行動を止められる最終手段で…」

一方「…レールガンはテメェらを監視するために入れ替わっていた……それは、わかる…」

一方「…確かにその二人を押さえてりゃ、あいつらが暴走するのは止められねぇかもしれねぇ…」

一方「だが、テメェの後輩を洗脳してるみてぇなことを言ってやがったンだろ?」

黒子「…ええ」

一方「そこが解せねぇな。…単に、誰かを集団でぶち殺したり、どっかの組織をぶち壊すってンなら、テメェの後輩を利用する意味がない」


一方「…その目的がわからねぇ」

黒子「…彼女は、私に『全てを犠牲にしてでも手に入れたい物がある』と言いました」

一方「…漠然としてるな」

黒子「そうですわね。…しかし…」

黒子「…思い当たる事が、無いということも…ありません」

一方「…何だ?」

黒子「…あまり推論で物を言いたくありませんが…」

黒子「以前に、似たようなことがあったんですよ…」


黒子「ちょうど一ヶ月前の、この公園でね」

一方「…何だと?」

黒子「…まさか…とは思っていたのですが…」

黒子「…しかし、そう考えると…裏付ける証拠は無いにしても、辻褄が合ってしまうんですよ」

一方「…焦れったいな…。さっさと話せ」

黒子「ふぅ。せっかちな方ですわね」

一方「……」

黒子「…わかりましたわ。時間も勿体ないですし、手早く話させていただきます」


――ここで起こった事件について

―――――

――――

―?―

美琴「―――はぁ!!」


ビリビリ……パチッ!


美琴「……あー、やっぱダメかぁ」

打止「うーん、やっぱり難しい?」

美琴「うん……なんか上手くいかないわね…。というか…体が言うこと聞かないわ」

打止「…やっぱり、ずっと眠ってたみたいだったからね」

美琴「うーん、眠ってたっていうより、無理やり眠らされてたって感じだけどね…」

打止「何か覚えてたりするの?ここに来る前のこと」

美琴「…えーっと…確か……何だっけな……あ、そうだ」

美琴「猫を見つけたのよ!」

打止「猫を?」


美琴「そう。それでその猫追い掛けて路地に入ろうとして……」

美琴「……そっから、覚えてないわね」

打止「ミサカもミサカも猫見つけたよ!」

美琴「え?ミサカちゃんも?」

打止「うん!それで、一緒に寝てたんだけど…」

打止「途中で猫がどっか行っちゃったから探してたの…」

打止「それで…鳴き声がして……うぅ、そこから覚えてないの」

美琴「…そっか…」


…猫、か…

なんか、何日も眠らされてたせいで記憶が曖昧だなぁ…

能力も、あんまり集中できなくて上手くコントロールできないし…


美琴「…(それにしても)」

きっと今頃、黒子は探してくれてるんじゃないかな…

心配かけて…ゴメンね黒子

だから…自力で脱出したいところなんだけど…


美琴「(そうも、上手くいかないわね…)」

「監視役」が付いているみたいで、どうやら私達を外に出させる気はないらしい

…しかも、その監視役が…またまた面倒なのよね…

美琴「…ミサカちゃん」

打止「ん?なーに?」

美琴「ミサカちゃんは…私達を監視してる人のこと…知ってるんだよね?」

打止「……うん。知ってるの」

美琴「…そっか」


そう……『妹達』

私の……「妹」が、ここの監視役をしている


ということは…おそらく

私たちが閉じ込められているのはそういうことだろう

…でも

目的が……わからない

一体、どうして…


打止「…ねぇ、美琴」

美琴「ん?どうしたのミサカちゃん」

打止「そういえば、ね…」

打止「彼女…私にご飯を持ってきた時に、私に言っていたの」

美琴「…え…?」


打止「今から…」


クリスマスパーティーが始まるって

――――――――
――夜

―路地―


スタスタスタ…


佐天「……」

暗い……

やっぱり、暗い…

でも、確かにこっちの方が目的地に近いような気がする

確か、もっとビルの密集してるところを大回りに回っていかなきゃいけなかったと思うし

なるほど、確かに近道だ

でも、それにしても…


佐天「…寒いな」


…首元が…寒い

一番……暖まっていて欲しいところが

今はとても、寂しい

……手袋もしてきた

……コートも羽織ってきた

……毛糸の帽子も被ってきた

防寒対策としては…十分だろう

…でも

…やっぱり、首元にマフラーの感覚が無いと…

寒い…とても寒い

たったそれだけのことで、私を不安にさせる


佐天「…それに…」


なんだろう…


さっきから歩いてるけど…

あまり進んでいる気がしない

建物の隙間を歩いてるんだから、景色が代わり映えしないのは当たり前だけど…

なんだろう…この不安になる感じ…


佐天「…」


…ま、気のせいだよね

あんまり気にしすぎても、仕方ないし…

今日はせっかくのクリスマスなんだ

楽しまないと…


…ガサッ


佐天「…!」


ニャーン


佐天「なんだ……猫か」


こんなとこにも猫はいるんだな

ていうか、こんなとこだから居るのか…


ニャーン


佐天「……」

……そういえば

前にも、似たような場所で…

猫に会ったっけ…

確かあの時は……

初春が……


「こんばんわ」


佐天「…!」


私はこの時…



「こんなところで…何をなさっているんですか?」


…勘違いをしていた


「早く行かないと…待ち合わせに間に合わないのではないのですか?」


…彼と過ごす幸せなクリスマスが来るなんて


「メリークリスマス」


そんな、夢みたいな話が……あるわけがないことを


御坂妹「…佐天涙子様」


………猫の声が、消えた

―――

・公園・


黒子「――――ということが…あったんですよ」

一方「……なるほど」

一方「あの野郎とテメェの後輩が、か……」

一方「…レールガンも、たかが色恋沙汰でそこまでとはなァ…」

黒子「…あの時のお姉さまは……正直言って、異常でしたわ」

黒子「自分の周りにいる人が、どれほど傷つこうと…全く意に介さず」

黒子「…あまつさえ…」

黒子「…自らの後輩である佐天さんを…本気で葬り去ろうと考えていたのですから…」

一方「……それで」

一方「あのクローンも、レールガンと同じことを考えてやがると?」

黒子「…そうは言い切れませんが、手口が似ているんですよ。あの時と…ね」

一方「…遺伝子レベルで同じってわけか……めでてぇ話だな」


黒子「…ただの笑い話で済んでくれれば、こちらとしては……楽なんですがね」

一方「……」

黒子「…ふぅ。……私からの話は、以上ですわ」

一方「……おい」

黒子「……何でしょう?」

一方「…まぁ、テメェらの関係に、俺が首突っ込むのもおかしい話だが……」

一方「一応、聞いておくぜ?」

黒子「…はい?」

一方「…テメェは…」

一方「…そこまでわかっておいて……なぜ後輩を助けに行こうと思わない?」

黒子「……同じことですわ。私が妹達の前に立ちはだかったところで、お姉さまを人質に捕らわれていれば……」

一方「違うだろ」

黒子「…」


一方「テメェ一人じゃ、あいつに敵うわけねぇ。ンなことはわかってンだよ」

黒子「…」

一方「……だがよ」

一方「テメェの後輩が2度も同じ目に会おうとしてるって時に………何をテメェは暢気にレールガンを探してやがる?」

黒子「……」

一方「敵わねぇのが最初からわかってンなら、自分が狙われてることをテメェの後輩に知らせることぐらい、出来たンじゃねーのか?」

黒子「…」

一方「このままなら……同じ結果になることが、テメェならもう既に見えてるはずだろ」

一方「……なのにテメェは……」

一方「何故それをしようとしない?」

黒子「………」

黒子「……はぁ」

黒子「…思ってるより、優しい方なんですね、あなた」

一方「…あァ?」

黒子「ふふっ…すみません。馬鹿にしてるわけではありませんわ」


一方「……」

黒子「……ふぅ。いいでしょう、少し…話しましょうか……」

一方「…?」

黒子「…私には…」

黒子「…私には…最も恐れていることが…あります」

一方「……恐れていること?」

黒子「…ええ。それは……」

黒子「…私の後輩達が、傷付いてしまうことではなく…」

黒子「…お姉さまが、私の元からいなくなってしまうことでもない」

黒子「……ましてや……」

黒子「…自分の身が大事なわけでもない…」

一方「……」

黒子「…私が最も恐れていることは……」


黒子「自分のプライドを傷付けられて、このまま黙って引き下がること…ですわ」


一方「……」

黒子「…人でなしだと罵られても、構いません」

黒子「私は後輩を助けたい…。そして必ずお姉さまも助け出したい…」

黒子「……でも」

黒子「……ただ助けただけでは、気が済まないのですよ…」

黒子「私のこの……傷付けられたプライドが」

一方「……」

黒子「私の大事な仲間が、傷付いているこの状況でも…」

黒子「それだけは……譲れないんですよ」

一方「……」

黒子「傷付けられたプライドは…」

黒子「…10倍……いや……」

黒子「……100倍にして返さないと……気が済まないんです」


黒子「……そのためには」

黒子「敵の『王将』を詰ませるためには…」

黒子「たくさんの『歩兵』を前にしても、おくさないためには…」

黒子「…こちらも、それ相応の……駒が必要になるんですよ」

一方「……つまり、テメェは俺の事を利用するために、話しかけたわけか?」

黒子「ええ。…仲間にするのであれば、これほど都合のいい駒は……ありませんからね」

一方「……ククッ、ハハハ」

黒子「……」

一方「ムカつくやろうだな…俺が都合のいい駒ってか…ハハッ」

黒子「……」

一方「…しかも、テメェの仲間の危険よりも自分のプライドが大事だって?……こりゃ傑作だ」

黒子「ふふっ……お褒めいただいて光栄ですわ」

一方「ククッ……しかしテメェも、レールガンやクローンに負けてねぇぐらい……狂ってやがるな」

黒子「それは申し訳ございませんわ」


黒子「…しかし、『狂っていなければ』やってられないのですよ。同じく、『狂ったもの』と戦うには」

一方「毒を持って毒を制す……ってか?」

黒子「ふふっ、まぁそんなところでしょう」


黒子「……とにかく私は」

黒子「…自分の信念を、曲げる気はありませんわ」


一方「…はっ…気に入った」


一方「…いいぜ。乗ってやるよ……テメェのその…盤上に」

一方「使われるのは趣味じゃねーが……今回ばかりは協力してやンよ」

黒子「…ふふっ、ご協力ありがとうございます。…期待していますわ」

一方「……ハッ」

黒子「……ふふっ」


一方「……テメェのその信念とやら……見せてもらうぜ?……白井黒子」

黒子「そのためには精々あなたを利用させていただきますわよ?……一方通行」


一方「望むところだ」


黒子「こちらこそ」


では、参りましょうか

話しているうちに、大体わかりましたわ


…あの二人の、いる場所が

――――

・路地・


佐天「…御坂さんの……妹さん…ですか」

御坂妹「はい、その通りです。と、ミサカは答えます」

御坂妹「……まぁ、もっとも」

佐天「……?」

御坂妹「もう、次にお姉さまに会った時は……妹として見てくださるとは思いませんが」

佐天「……そう…なんですか…」

御坂妹「ああ、そんなことより佐天様」

佐天「…はい?」

御坂妹「今日はクリスマスですね」

佐天「…はい。そのサンタのコスチューム、似合ってますね」

御坂妹「ありがとうございます。ただ如何せん、防寒着としては説得力に欠けるのが玉に傷ですが…」

御坂妹「私も、この衣装は気に入っています」


佐天「…そうですか。でも、可愛いですね」

御坂妹「いえ、恐らくあなたが着ても同じようなものだと思います」

佐天「いやぁ、私そんなに短いスカート穿く勇気が…」

御坂妹「そうですか?むしろ、このコスチュームの魅力はこのミニスカートにあると思われるのですが」

佐天「確かに男の人にとったら、それは一番魅力的かもしれませんね。…何て言うか、足を魅せるためにあるというか…」

御坂妹「おお、わかっていらっしゃいますね。そう、ミニの魅力とは、そこから先にある絶対領域の向こう側ではなく、スカート下に伸びる美脚なのですよ。と、ミサカは熱弁します」

佐天「あはは…。でも、足も綺麗ですもんね…。えっと、御坂…妹さん」

御坂妹「……」

佐天「……?」

御坂妹「……妹」

佐天「…え?」

御坂妹「…妹、で結構です」

佐天「あ、えっと、じゃあ……妹さん」

御坂妹「…すみませんね。呼び方などどうでもいいとお思いでしょう?」


佐天「あ、いえ。それは、呼ばれる本人の意思だと……思います」

御坂妹「…そうですか。しかし、申し訳ありません」

御坂妹「…その名前だけは、もう他の人に呼ばれたくないのですよ」

佐天「…え?」

御坂妹「…彼以外には…呼ばれたくないのですよ」

佐天「……え…(彼って…)」

御坂妹「ああ、そういえば」

御坂妹「こんなところで私と立ち話などしていて大丈夫なのですか?」

佐天「あ……もうこんな時間か…」

御坂妹「待ち合わせをなさっているんでしょう?早く行った方が良いのでは?」

佐天「…あ、はい。そうですね…」


…あれ…なんで知ってるんだろ…?


御坂妹「ええ。それではご機嫌よう」

佐天「はい…あの、それじゃ……」


スタスタスタ…


…まぁ、いっか…

多分、誰かが話したんだろう

それより、早く行かないと……


バシュン!


佐天「…っ……!?」


…何…?


シュー……


佐天「…え?」


……弾…丸……?


「…ああ、すみません」


佐天「…………!?」


御坂妹「申し遅れておりました」


ガシャリ


御坂妹「私も、実はここで待ち合わせしていたんですよ」


ガシャン


御坂妹「……あなたと」


…そう言って……妹さんは……


ゆっくりと銃口を私に向けた

――――――
――――

美琴「……」


クリスマス、パーティー…

なかなか良い響きの単語だけど……

……こんな状況じゃ……

良い風には……思えそうに無いわね


打止「ねぇねぇ美琴」

美琴「…ん?なーにミサカちゃん」

打止「美琴は、クリスマスプレゼントを貰えるなら何が欲しい?ってミサカはミサカは聞いてみたり」

美琴「あー、プレゼントかぁ……うーん、あんまり考えてなかったなぁ」

打止「そうなの?」

美琴「うん。元々、あげることしか考えてなかったしね」

打止「へぇ~。美琴はえらいの!でも、ミサカはミサカもプレゼントあげたいって思ってるよ?」


美琴「そうだね、さっき言ってたもんね。プレゼントあげたい人がいるって」

打止「うん!…でもでも…」

美琴「…?」

打止「ミサカは…どちらかと言うと……プレゼント、貰う方がいいの」

美琴「…ああ、そうだね。まぁ、どちらかと言えば貰った方が嬉しいかな?」

打止「そうなの!ミサカはミサカはたくさんプレゼント欲しいの!」

美琴「うん、きっと大丈夫。ミサカちゃんなら、たくさんプレゼント貰えると思うよ?」

打止「そうかな?そうかな?サンタさんも、来てくれるかな?」

美琴「うん!きっと来てくれるよ。サンタさんが………」

………!

美琴「(…サンタ…?)」


何で……引っ掛かるんだろう

サンタクロース……

あれ?なんで……


『―…こ…にち……お姉さ……―』

『―…私は…違……ます…―』

『―…お姉さまほど……く…ない…―』


…あの路地で、会ったんだ。

…そして


『―…私の目的は……―』

…はっきりと、あの娘は…

私に、言ったんだ


打止「……美琴?」

美琴「……」

打止「ねぇ、美琴!どうしたの?」

美琴「―――あ」

美琴「うん、ごめん……えっと、何だっけ?」


打止「もぉ、ちゃんと聞いて欲しいの!サンタさんの話だよぉ」

美琴「あ……そうだね、サンタさんの話だったね…」

打止「来てくれるかな?ミサカのところにも、プレゼント持って来てくれるかな?」

美琴「…うん、そうだね。たぶん……来てくれると思うよ」

打止「ふふっ…楽しみなの!ってミサカはミサカは……」

美琴「……」

…はっきりと

確かにあの時、私が意識を失う前…

あの娘は、言った

サンタクロースの衣装を来て


『―…私の目的は…―』

『―…あの女から…彼を奪うことです…―』

美琴「……っ」


……佐天さんが……危ない…

――――
――


人が

人が銃を向けられたら、どうなるか

私は想像もしていなかった


黒く光るその先端が

鋭く、私を捉えている


たった…

たったそれだけのことで…

これほどまで私の体は震え…

声が奪われる物だとは、思わなかった

それはただの

ただの、純粋な…

極めて純粋な…『恐怖』


ガシャリ…


佐天「………」

御坂妹「ずっと…待っていたんですあなたのこと」

御坂妹「少々、お話したいこともありますしね」

佐天「………な…なん…で…すか…?」

御坂妹「…フフッ……佐天様」

御坂妹「銃器を向けられるのは…初めてですか?」

佐天「………」

御坂妹「…どうやら、そのようですね」

佐天「…っ」

御坂妹「…どうですか?」

佐天「……どう…って……」

御坂妹「怖いですか?」

佐天「……っ」


御坂妹「そうですね、怖いですね」

御坂妹「怖くて声も上手く出せないんですよね」

佐天「……!」

御坂妹「なにせ、このあなたに向けられている銃器一本で…」

御坂妹「あなたの存在など、簡単に吹き飛ばすことができますから」

佐天「……あ…あな…た…は…」

御坂妹「…何でしょう?」

佐天「…一体……何が、目的…なん……ですか…?」

御坂妹「……」

佐天「…私を…恨んでるんですか…?」

御坂妹「……ふふっ」

佐天「……?」

御坂妹「いえ……恨んでなど、いませんよ」


佐天「………え?」

御坂妹「私はただ…」

御坂妹「あなたの存在が邪魔なだけです」

佐天「…っ!だから……ど、どうして…」

御坂妹「…どうして、ですって?」

佐天「…え…」

御坂妹「人から大切な物を奪っておいて…」

御坂妹「随分なセリフですね」

佐天「……大切な…物?」

御坂妹「…私の」

御坂妹「…私の愛する……彼のことですよ」

佐天「……!!」


御坂妹「私は……あの方の傍に居たいという一心で、今まで彼のことをずっと考えてきました」

御坂妹「…それは私の理想であり、私の…全てだった」

佐天「……」

御坂妹「…それが…」

御坂妹「あなたという、たった一人の女に壊されてしまうなど…」

御坂妹「夢にも…思っていませんでした」

佐天「……っ」

…上条さんの…こと…?

…また……まただ…

…また私は…


御坂妹「…でも、心配いりません」

佐天「……え……?」

御坂妹「私はあなたのことは恨んでなど、いない」



御坂妹「なんせ、それも―――」

御坂妹「―――今日で終わりですから」

佐天「……!」

御坂妹「…私が……この手で終わらせて見せますから」

佐天「…うっ…」

…声、出てよ……!

声が…出ないと…何も…

何も…伝え、られない…!


佐天「…う……あっ…」


御坂妹「…無理なさらなくていいです」

佐天「……っ」

御坂妹「苦しいでしょう?恐怖で声が出せないこの状態は」

佐天「……うっ…」


御坂妹「…すぐに」

御坂妹「楽にしてあげますよ」

御坂妹「―――今すぐに」


ガサッ…


御坂妹「…!」


ニャーン…


御坂妹「……猫……ですか…」


御坂妹「…………」


…逃げられ、ましたか

…どうやら逃げ足はなかなかお早いようですね…佐天様


しかし―――まだ始まったばかりです


御坂妹「…もう少し」


楽しませていただきますよ?



――タッタッタッタッ……


佐天「…はぁ…はぁ…はぁ…」

走る……ただ走る

それしか、できない

振り返ることもできない

引き返すこともできない


佐天「…はぁ…はぁ…はぁ…」

ただ、離れたい

この……暗闇から

この……迫ってくる恐怖から

あの…

『ガシャリ』

という、重たい金属の音から

佐天「…はぁ…はぁ…」

…なんで…

…なんで…こんな…ことに…

…私が、上条さんを…奪った…?

…御坂さんの妹さんが……上条さんのことを…?


…でも、御坂さんの妹さんは…

…前、私に会った時は……1ヶ月前に、初めて会った時は……


『―…御武運を…―』


……そう言って、私と上条さんを二人っきりにしてくれた……

…あの時は、応援していてくれていたんじゃ……


バシュン!!


佐天「…っ!?」


「ああ、外しましたか」


佐天「……っ!」


御坂妹「頬をかすっただけですか……ミサカは残念に思います」

佐天「え……」

……!…血が…!


御坂妹「すみません」

御坂妹「次は、ちゃんと狙いますね」

佐天「……っ」

……いつの間に…追い付いて……!

早く……早く逃げないと…


「どこに行かれるのですか?」

佐天「!?」

「どうして逃げるんです?」


な……なんで…?

妹さんは今…後ろにいたんじゃ……


なんで…

いつの間に……正面に…?

「こっちですよ佐天様」

佐天「…え……?」

今度は…

右の方から………

「いえいえ、こちらです」

次は………左………

「よそ見していていいんですか?」

…前……

「無防備ですね」

上……?

「そんなことだから」

……右…


……ひだ……


「簡単に追い詰められてしまうんですよ」


佐天「……なん……で……」

御坂妹「…なんで、ですって?」

御坂妹「見たままですよ、佐天様」


佐天「……そんな……」


暗い暗い路地のいたるところから


ガシャリ


妹さんと、同じ姿の人達が

その重たい銃口を…


一斉に私に向けている


そんな、現実を……

受けれ入れらる訳が…ない……


妹達「いいえ、これが現実です」

佐天「…!」

妹達「あなたはもう、逃げられません」

佐天「………っ!」

妹達「とりあえず、諦めてください」

妹達「あなたにはもう」

妹達「希望はない」

佐天「……っ……」



嫌…

嫌……だ…

こんなの…

こんなの……あるわけ……


御坂妹「今、言った通りです」

佐天「………」

御坂妹「あなたに、逃げ場はなく」

御坂妹「生きる希望は、残されていません」

佐天「………」

御坂妹「…さて、あなたは…」

御坂妹「この…たくさんの『妹達』に囲まれた状況で…」

御坂妹「あなたは…まだ生きることを諦めませんか?」

佐天「……」

夢で、あってほしい


もう、息をすることも、難しい

やめてしまいたい

楽になりたい

そんな気持ちが

私に芽生え始めている


御坂妹「あなたには、申し訳ないと思っています」

佐天「……え?」

御坂妹「先程も言いましたが、あなた個人には、特に私は恨みはありません」

佐天「……」

御坂妹「あなたが、『あの方』と、付き合ってさえいなければ…」

御坂妹「あなたは、こんなことにならずに済んだのですよ」

佐天「………」

御坂妹「…ですから、佐天様」


佐天「………?」

御坂妹「取り引きを、しませんか?」

佐天「…え?」

御坂妹「取り引きです」

佐天「…何の…ことですか?」

御坂妹「もうお分かりだと思いますが…」

御坂妹「私達が今、あなたの命を奪うことは簡単です」

佐天「………っ」

御坂妹「今、この路地を含め……」

御坂妹「あなたを中心にして様々な地点から、あなたに銃器の照準が定まっています」

佐天「…!!」

御坂妹「詳細を言いましょうか?」

佐天「え………?」

御坂妹「まず……あなたの………」

御坂妹「右腕に362箇所」


佐天「…!?」

御坂妹「次に…」

御坂妹「左腕に322箇所」

佐天「……っ!!」

御坂妹「右足に560」

御坂妹「左足に690」

御坂妹「…胴体に、2000箇所」

佐天「……!!?」

御坂妹「そして……」


御坂妹「首から上に」

御坂妹「約1000箇所」

佐天「…あ……あぁっ…」


御坂妹「―――以上が、今現在あなたの体に定まっている照準の数です」


御坂妹「まぁ、もっとも…」

御坂妹「まだ、『私達』の半数程ですが」

佐天「………」

私の視界を埋め尽くす、銃器の照準を真っ直ぐにこちらに定めるサンタの衣装を着た人達

その何千もの照準が私の体に向かっている

これで……半数程度…?


なんで、御坂さんの妹さんが…

こんなに、たくさんいるの…?

ただこれだけはわかる

間違いなく私は…

今、人生で一番『死』に最も近い場所に立たされている


無理だ

受け止めきれない現実が………多すぎる


もう、言葉が、出ない

出し方を、忘れてしまった


……壊れる

…こころ、が、壊れる………


御坂妹「まぁ、待ってください」

御坂妹「まだ、あなたを壊す気はありません」

佐天「………」

御坂妹「…ああ、ちなみに、あなたは気付いていらっしゃらなかったようなので、一応言っておきますが…」

佐天「……?」

御坂妹「ここ数日、あなたと話していた『お姉さま』は…」

御坂妹「本当の『お姉さま』では、ありません」

佐天「……!?」

御坂妹「本当の『お姉さま』は、私達によって人質として捕らわれています」

佐天「……!(人質?)」


御坂妹「…では、あなた方がここ最近接していた『お姉さま』は誰だったのか」

御坂妹「…それは、あなたの眼前にも見えているでしょう?」

御坂妹「このたくさんの…お姉さまとそっくりな妹達の中の一人が…」

御坂妹「あなたたちの前で、『お姉さま』を演じていたんですよ」

佐天「……なっ…なん…で…」

御坂妹「一つは、あなたたちの行動を監視するため」

佐天「…!」

御坂妹「もう一つは……まぁ、あなたがもし『生きていたら』、後ほど話しましょうか」

佐天「……!」

御坂妹「話が逸れてしまいましたね……。さて、佐天様」

佐天「……」

御坂妹「私と、取り引きをしませんか?」

佐天「………(取り引き?)」

御坂妹「その、取り引きに応じてもらえれば……」

御坂妹「私達はあなたを、生かしましょう」


佐天「…………え?」

御坂妹「聞こえませんでしたか?では、もう一度言いましょう」

御坂妹「あなたは、ある簡単な取り引きに応じるだけで、生きることができます」

佐天「………」

御坂妹「…お分かりいただけましたね?」

佐天「………」

御坂妹「…では」

御坂妹「取り引きの内容を説明します」

佐天「………」

御坂妹「とても、簡単です」


御坂妹「あなたが、あの方と別れてくださればいい」


佐天「……!!」

御坂妹「…たった、それだけです」

御坂妹「たったそれだけのことをやってくださるだけで、あなたはこの『路地裏の蜂の巣』から、抜け出す事ができます」


佐天「………っ」

御坂妹「いかがでしょう?」

御坂妹「悪い取り引きではないと思いますが?」

佐天「………」

嫌だ……

上条さんと、別れるなんて……嫌だ…

やっと、気持ちが…通じたのに…

別れるなんて……嫌だ……

御坂妹「…いいんですか?」

佐天「………」

御坂妹「もう一度申し上げますが、これはあなたにとって悪い取り引きではない」

御坂妹「むしろ…」

御坂妹「絶好のチャンスだと、ミサカは思いますが?」

佐天「……わ、私は…」


佐天「…別れたく……ない…」

御坂妹「……」

佐天「……上条さんと……別れたく……ありません」

御坂妹「……」

佐天「……私は……上条さんの……彼女、です」

佐天「……絶対、嫌です」

御坂妹「……はぁ」


ガチャ バシュン!


佐天「うっ…!!…あっ…!」

御坂妹「…痛いですか?」

佐天「……あぅ…うぅ……」

御坂妹「大丈夫、まだ右肩だけです」


佐天「……はぁ……はぁ……」

――痛い

痛い痛い痛い

肩が…肩を…撃たれた

…嫌だ…痛い…痛いよ…!


御坂妹「……あなたは」

御坂妹「何か、思い違いをなさっていませんか?」

佐天「……え……?」

御坂妹「何故、私が『悪い取り引きではない』と言っているか、わかりますか?」

佐天「……」

御坂妹「簡単ですよ?」

御坂妹「あなたは…この取り引きに応じなければ…」

御坂妹「文字通り、『蜂の巣』となってしまう」

佐天「……っ」


御坂妹「…しかし」

御坂妹「この取り引きに応じれば、生きることができます」

御坂妹「それが、何を意味するか?」

佐天「……」

御坂妹「考えてみてください」

御坂妹「死んでしまえば…」

御坂妹「彼の彼女であることもできないばかりか…」

御坂妹「二度と彼に会うことさえ出来ない」

佐天「…!!」

御坂妹「しかし、生きてさえいれば」

御坂妹「いつでも、彼に会うことができます」

佐天「……っ」

御坂妹「お分かりいただけましたか?」

御坂妹「…なら」

御坂妹「どちらを選択するかは、もうお決まりですね?」


佐天「……うっ……」

嫌だ……

別れたくない……

上条さんと別れたくない…

でも…

死にたくない…

死んでしまったら…会えなくなる…

…上条さんに……

…みんなに……

…会えなくなる……

その方が……嫌だ……

そんなの……嫌だ……


佐天「……わかり、ました…」


御坂妹「……」

佐天「…応じ…ます」

御坂妹「…そうですか。賢明な判断です」

佐天「………」

御坂妹「…では」

御坂妹「…携帯電話で、今すぐ彼に別れの電話をしていただけますか?」

佐天「……え?」

御坂妹「すみません。あなたを信用していないわけではないのですが…」

御坂妹「できれば私の………私達の目の前で、その事実を確認させていただきたいんですよ」

佐天「………」

御坂妹「…お願いできますか?」


佐天「……」

佐天「……わかりました」

御坂妹「ありがとうございます」

佐天「……」

御坂妹「では、お願いします」

佐天「………」


仕方ない……

仕方ないんだ…

もう、私には…これしかない…

これしか、ないんだ…

――――――
――――

――――

―○×地区


一方「……」

黒子「……」

一方「…で?」

黒子「……」

一方「結局…見つからねぇじゃねーか」

黒子「おかしいですわねぇ……多分、この辺だと思ったのですが…」

一方「テメェ……わかったとか言ってやがった癖に…」

黒子「仕方ありませんでしょう?私とて人間です。間違えることもありますわ」

一方「ハッ……そうかい。あれだけ自信満々に二人の居場所がわかったなんてほざいて、よくもまぁ、ンなことが抜かせるモンだな」

黒子「…じゃああなたは分かりますの?あの二人の居場所が」

一方「わからねーからテメェの言う通りに付いてきてやってンだろうが」


黒子「…ほう、ということは、あなたは私に付いてくることでしか、あの二人を探す自信が無いと言うわけですね?」

一方「……何だと?」

黒子「あら、何か違いますか?あなたは自分で探すことを放棄し、私にその責務を押し付け…」

黒子「さらには、見つからなかったら私のせいだと言わんばかりに、自分勝手な主張ばかりしていらっしゃるように思いますが?」

一方「…テメェ……喧嘩売ってやがンのか?」

黒子「いいえ。あなたに売れるような安っぽい喧嘩など、私は持ち合わせておりませんわ」

一方「……ほう。テメェはそんなに俺を怒らせたいらしいな…」

黒子「口で敵わないから次は暴力ですか?それは結構なことです」

黒子「…しかし、そんなことだから……」

黒子「……打ち止めさんを奪われてしまったのでは?」

一方「…!!……チッ」


スタスタスタ…


黒子「……一体、どこへ行くおつもりですの?」

一方「黙れ。…もうテメェとは行動しねぇ…」


一方「俺は……俺のやり方でやる」

黒子「…はぁ。…それで?一体あなた一人でどうすると言うのです?」

黒子「私はあなた一人だけで、あの二人の居場所が突き止められるとは思いませんが?」

一方「…ああ、その心配はねぇよ」

黒子「…は?」

一方「…もう……探すのはやめだ」

一方「俺は手っ取り早い方で……行かせてもらうぜ」

黒子「!…あなたまさか…」

一方「……クローン共をぶち殺しに行くンだよ」

黒子「なっ……何を言っていますの!?」

黒子「先ほども言ったでしょう?あなたが妹達を狙えば……人質に捕らわれている打ち止めさんが……」

一方「関係ねぇ」

黒子「…!」


一方「…確かに、人質に手を出されちまったら困るが…」

一方「…なら、その前に」

一方「…クローン共を全員、ぶち殺せばいい話だろ?」

黒子「…そんなことが…できるとお思いですか!!相手は数が違いすぎるんですよ?」

一方「ハッ……できる、できないの問題じゃねぇ」

一方「やるか、やらねぇかだよ」

黒子「……っ、この…!」

一方「…俺は自分のやり方であのクソガキを助け出す」

一方「…まぁ、精々テメェも、そのくだらねぇ信念とやらに従って…頑張ってみろよ」

黒子「…!!ま、待ちなさい!まだ話は…」

一方「…じゃあな」


タタタタッ…


黒子「…っ……」

――


?「………」


……サッ


?「(……二人のうち、一人がそちらに向かいました…)」

…タタタタッ

?「(……どうやら仲間割れを起こしたようです……)」

…タタタタッ

?「(………それではこちらも……)」

…サッ


?「(……人質の元に戻り…準備に入ります)」


…タタタタッ…


?「(………今、人質の元に到着しま……)」


「―――ご案内、ありがとうございますわ」


?「……!!」


黒子「そんなに急いでどこに行かれるのかと思い、付いてきてみたら…」

黒子「…わざわざ二人の居場所まで案内してくださるなんて」

黒子「感謝いたしますわ……妹様」

妹達「な………っ!」

黒子「あら、そんなに驚くことでしたの?」

妹達「……!?」

黒子「まさかあなた方…」

黒子「自分が監視していることを……」

黒子「……『私達』に、悟られていないとでも?」


妹達「……!」


「よく言うぜ…」

妹達「!!」


一方「テメェがそれに気付いたの……今さっきじゃねーか」

妹達「………!」

黒子「そう言うあなたこそ、私が言うまで気にも止めていなかったようですが?」

一方「ハッ……何となくは……わかってたに決まってンだろ」

黒子「負けず嫌いですのねぇ…」

一方「うるせぇ。こっちは下手な猿芝居に協力してやったンだ。少しは感謝しやがれ」

黒子「はいはい。…感謝していますわよ」

妹達「……芝居……!?」

黒子「……いやいや」

黒子「私もまさか、こんな初歩的なフェイクに引っ掛かってくれるとは思いませんでしたわ」

妹達「……っ」


黒子「あなた方が……私達を監視していることに気付く前に」

黒子「私はあることに気付きました」

黒子「…まぁ、気付いたと言うより……少し考えればわかることだったのですが」

妹達「…」

黒子「…人質をとっているなら、必然的にそれを監視する役の人間が必要」

黒子「…ではなぜ人質の監視役が必要か?」

黒子「それは私達みたいに人質の居場所を見つけようとする者がいるからですよ」

一方「当たり前のこと、だな」

妹達「…」

黒子「ええ……そして…」

黒子「人質を助け出そうとする者がいれば、必然的に…その助けようとする者自身を監視する役も必要になる」

妹達「……」

黒子「……つまり、あなた方は私達をずっと監視していた」

黒子「それもおそらく……」

黒子「最深の注意を払い、最小限の気配で、最低限私達の姿が確認できる距離を保ち、監視していた」


妹達「……!」

黒子「それはなぜか?」

黒子「もちろん」

黒子「…私達二人が……もしくは、二人のうちどちらか一人が、人質救出を断念し……」

黒子「……妹達へ直接攻撃しようとする意思を確認した時に、すぐにこの場所へ帰ってこれるように、ですわ」

妹達「…!」

黒子「……今日が晴れていて本当によかったですわ」

妹達「…?」

黒子「もし、雨や雪だったら…」

黒子「あなたたちのその……僅かな気配に、私は気付くことができなかったでしょうからね」

妹達「…!」

黒子「…私は、あなた方が私達を監視しているそのほんの僅かな気配を感じ…」

黒子「推測ではありましたが、ある作戦を立て、それを試しました」

黒子「一つは『仲間割れをしているように見せること』」

一方「もう一つは…『俺を妹達がいる方に向かわせること』」


妹達「…」

黒子「前者は簡単ですわ。私達が喧嘩別れをしたように、あなた達に見せ掛ければ良いだけですからね」

妹達「…」

黒子「…問題は後者。妹達が動いている以上、どこかで集団で活動しているということはわかっていましたが…」

黒子「…生憎、その場所は、私達は把握できていませんでした」

妹達「……なら、どうして…?」

黒子「それならば…」

黒子「……手近にいる『妹達』を狙えばいい」

妹達「……!」

黒子「…そう」

黒子「狙ったのはあなた達ですわ」

妹達「…」

一方「…テメェらは大体同じ場所で二つの組に分かれて俺たちを監視してたンだろ?」

一方「それは何となくわかった…」

妹達「…」


一方「なぜなら、俺と白井が別れて、そこから俺がその気配のする方に向かうと…」

一方「…ある気配は一目散に遠ざかり、ある気配は一度落ち着いてから、頃合いを見てゆっくりと動き始めた」

黒子「…その前者……素早くその場から立ち去ったであろう妹達は……真っ先にその殺気に対応するべく、集団のいる方向へ行った……」

一方「…それを俺が追いかけようとする。…つまり、テメェらには、俺がまるで妹達がいる集団へ襲撃しようとしているように見えたはずだ」

妹達「………」

黒子「…後者はそう考え、集団への襲撃のために用意しておいた人質の元へ向かい…」

黒子「…いつでも、その『弱味』を使えるように備えようとした」

黒子「…それが、私に追尾されていた……今のあなた方です」

妹達「………っ」

黒子「こうして、まんまとあなた方は二人を隠している場所を教えてしまった」

一方「ついでに……テメェらの集団がどの方向にいるのかも、わかっちまったしな」

妹達「……」


黒子「…さて、長話になりましたね」

黒子「…それでは、さっさとお二人を救出しに行きましょうか」

一方「ンなこたァ、言われなくてもわかってる。……さっさと行くぜ」

妹達「―――よろしいのですか?」

黒子「…?」

妹達「あなたはご存知でいらっしゃるでしょう」

妹達「私たちは、情報を共有できる」

妹達「…つまり…」

妹達「今、あなたたちが話していたことや、今のこの状況」

妹達「…全て、私達『妹達』にその情報が行き渡っていますが?」

黒子「……」

妹達「…そして…」

妹達「…ここに増援が来ることも、時間の問題かもしれませんよ?」

黒子「………」


黒子「………どれくらいですか?」

妹達「…え?」

黒子「それはどれくらいの人数ですか?」

妹達「……おそらく…200や300……」

黒子「あー、それではダメですね」

妹達「…………は?」

黒子「もう少し……」

黒子「もう少し…多くできませんでしょうか?」

妹達「な………何を言って…」

黒子「いやまぁ…別に、どちらでも構いませんの」

妹達「……??」

黒子「…向こうにいる戦力が、こちらに来てくださるのであれば…」

黒子「それはそれで、こちらとしては都合がいい」


妹達「………」

黒子「向こうの集団の戦力が削られるならそれもよし…」

黒子「…今、楽に人質を救出させてくれるのもよし」

黒子「……さぁ、果たして……」

黒子「…あなたたちにとっては、どちらの選択肢が良いのでしょうね?」

妹達「……っ……」


黒子「―――ああ、そういえば」

妹達「…?」

黒子「…あなたたちの情報は共有されるのでしたわね?」

妹達「…はい、そうですが?」

黒子「じゃあ、ちょうど良いですわ」


妹達「…?」

黒子「…昨日のあの方に、伝えて欲しいことがありますの」

妹達「……」


黒子「―――あなたは、精々後悔しなさい」

黒子「とんでもない物を、敵に回したことを」

妹達「……」

黒子「そして……」


―――私の後輩を、あまり舐めない方がいい

――――――
――――

――――


・路地・


佐天「……」

冷たい手で

冷たい携帯電話を取り出す

…三日前まで…クリスマスの誘いの電話をかけようと思って

なかなか押せなかった番号が、画面に表示される

いつもは、愛しく思えるその番号が

今は、とても……冷たく………恐い


御坂妹「…できれば、早くしていただけないでしょうか?」

佐天「…っ……はい…」


ピッ


プルルル
プルルル

佐天「……」

御坂妹「……」


ガチャ


上条『はいよ』

佐天「…っ、あ……か、上条さん」

御坂妹「……」

上条『おう、佐天さん。どうしたんだ?待ち合わせ時間、結構過ぎてるけど』

佐天「あっ、あの……すみません。…ちょっと…用事があって遅れています……」

上条『なんだそうなのか。てっきり俺はすっぽかされちまったのかと思ってたぜ』

佐天「あ、い、いえ……す、すみません」

上条『いやいや、いいっていいって。まぁ、暇すぎて先に出店でたこ焼き買っちまったけどな。ははは』


佐天「……そうですか」

上条『ああ、なかなか美味いぜ?このたこ焼き。なんせこれ、たこがでっかくてな……ってあっちぃ!ちょ、手に!手に熱々のたこ焼きが!』

佐天「…あっ、あの、大丈夫ですか…?」

上条『…ふぅ、ふぅ……。あー、熱かった。…ああ、不幸だ……』

佐天「…ふふっ」

……あれ?

なんで私、笑ってるんだろ?

上条『…まぁ、あれだ。とにかく、待ってるから。用事が忙しいようなら、ゆっくり来てくれてもいいぜ』

佐天「あ……え、えっと……あの…」

御坂妹「……」

佐天「……っ」

上条『ん?どうしたんだ佐天さん』

佐天「あ、いえ、あの…上条さん…その…」

上条『どうした?…あ、もしかしてあれか。俺が先にたこ焼き食ったりして、一人で楽しんでるから怒ってる?』


佐天「い、いえ!違います!そういうことじゃ……ないんです」

…早く……早く、言わないと……

上条『おお、そうか。いや、それならこの際白状しとくけど、実はたこ焼きだけじゃなくて焼きそばも食べちまったんだ。すまん、あれもなかなか美味しかった』

佐天「あ、いえ…全然いいですよ?」

早く…言わないと…!

上条『それにしても、すっげー賑わってるぜこっち。なんかさ、クリスマスカードかなんかをツリーに吊るすんだってさ』

佐天「……」

早く…

上条『星形のやつでさ。んでなんかみんなそれをツリーに吊るしていってるみたいだぜ』

言わないと…

佐天「…そうですか…」

言わないと……


佐天「………」

別れの言葉、早く言わないと…

みんなに、会えなくなる…

佐天「上条さん…」

上条『…ん?』

佐天「…お話が、あります…」

上条『…?』

御坂妹「……」

佐天「あの…」

佐天「私…」


…仕方ないんだ…


佐天「……私…」

上条『………』


会えなくなるより、ずっと良いから


佐天「…上条さん、私」

上条『佐天さん』

佐天「……え?」

上条『もうすぐ…さ』

佐天「………は、はい?」

上条『ツリーの点灯式があるんだってよ』

佐天「………え?」

上条『あのでっけークリスマスツリーがな、綺麗に輝くらしいんだ』

佐天「……」

上条『あとどれぐらいだっけな……20分ぐらいかな』

上条『一斉にクリスマスツリーが点灯するんだってさ』

佐天「……」

上条『だからさ、佐天さん』


上条『待ってるからな』

佐天「…!」

上条『一緒に見ようぜ』

佐天「……上条…さん…」

上条『それまでにはできれば…来てほしいかな?』

佐天「………」

言わなきゃ、いけない

私には、選択肢なんて、それしか…ない

だから…


佐天「上条さん」

上条『…なんだ?佐天さん』

佐天「私………」

(あなたと、別れます)


佐天「私、その……」

(あなたと、別れます)

佐天「あなたと……」

(あなたと、別れます)

佐天「上条さんと……」


『―…一緒に見ようぜ…―』


佐天「…………」


佐天「――――私」


佐天「上条さんが、大好きです」

佐天「だから」

佐天「これからも、よろしくお願いします」

御坂妹「――――!?」


上条『…ははっ、なんだよ急に。びっくりするじゃねーか』

佐天「ふふっ、すみません。」

上条『わかってるよ。俺こそ……よろしくな』

佐天「はい!…あの、もう少し、待っててくれますか?」

上条『ああ、いいぜ。リンゴ飴でも買って食べとくわ』

佐天「ふふっ、はい。じゃあ、またあとで」

上条『おう、じゃあ、またあとでな!』


プツッ

パタン


佐天「…ふぅ」

御坂妹「……佐天様」


佐天「…はい?」

御坂妹「…一体、どういうことでしょうか?」

佐天「…そういう、ことです」

御坂妹「……」

佐天「私は…」

佐天「私は、どちらの選択肢も選ばない」

御坂妹「………」

佐天「私は………あなたの言いなりには、ならない」

御坂妹「……」

佐天「生きることも、上条さんのことも、みんなとの生活も…」

佐天「…私が」

佐天「あなたから、勝ち取って見せます」


御坂妹「…そうですか」

御坂妹「では・・・交渉、決裂ですね」

――――――
―――

―倉庫地下―


妹達「……こちらです」

黒子「……こんな、ところに…」

一方「……こりゃあ、見つからねーわけだ」

黒子「…これは、あなた方が用意したものですか?」

妹達「はい。あのお二人を幽閉するために、本来なら地下5階まである階を、3階までで完全に封鎖しておりました」

一方「…それで、テメェらだけが地下5階までいけるこの別ルートを通って、あいつらに接触していたわけか?」

妹達「はい。その通りです。と、ミサカは答えます」

黒子「……しかし、私が調査した時にはこの倉庫は既に地下3階までしかないとデータで表示されていましたが…」

妹達「データの改ざん作業は一昨日には済んでいましたから」

黒子「…はぁ。抜かりないですわねぇ」

一方「面倒くせぇことしやがって」


妹達「…こちらも」

妹達「それだけ、あなた方に対して本気だったということです」

黒子「…ふふっ、まぁ、それぐらいしてもらわないと、確かにこちらも潰しがいがありませんものね」

一方「全くだな」

妹達「……」

妹達「…着きました」



妹達「どうぞ、お二人はこの中です」

黒子「…っ、お姉さま!!」

美琴「……え?…黒子?」

黒子「お姉さま!大丈夫でしたの?怪我はないですの?ああああ縛られているではありませんのぉー!」

美琴「ちょ、ちょっと黒子!落ち着いて!とりあえず縄ほどいて!」

黒子「ほどきます!今すぐほどきますわ!……あ、でも、待ってください。お姉さまが身動きが出来ないこの状況………チャンスでは!?(性的な意味で)」

美琴「この期に及んで何言ってんだあんたは!早くほどきなさい!」


黒子「…ぐふふふ……よいではありませんかぁ~。久しぶりの再開ですから…」

美琴「……あんたって…奴は……」ビリビリ

黒子「うわ、ちょっ、お姉さま!?じょ、冗談ですわよ~。そんなまさかこんなところでビリビリ……ああああああん!!」

美琴「どうでもいいから、は・や・く解放しなさい!!」

黒子「ああ……でも久しぶりの感覚ぅ…」

美琴「…あ。ていうかちゃんと電気出せるようになってる」

黒子「……私、実験台でしたの?」


一方「……」

打止「……」

一方「…おい、クソガキ」

打止「……」

一方「いつまで寝てやがンだ」

打止「……」


一方「…今日が、テメェの言ってたクリスマスってやつだぜ」

打止「……」

一方「……おい」

打止「……」

一方「…いつまでもシカトしてんじゃねぇぞ」

打止「……うるさいの」

一方「あァ?テメェ…せっかく助けに来てやったのになンだその…」

打止「…か……ったの」

一方「…?」

打止「…寂しかったの」

一方「……」

打止「…来るのが…遅いの……」

一方「…」

打止「……ごめんなさい」

一方「…」


打止「…ミサカがミサカが猫飼いたいって言って……それで…その猫を追い掛けてしまったから……」

一方「…」

打止「……ミサカの……ミサカのせいなの」

打止「本当に……ごめんなさい」

一方「……」

打止「……」

一方「……」

打止「…あ、あの……やっぱり、まだ怒って…」

一方「猫ってよ」

打止「…?」

一方「猫って……なかなか良いモンだよな」

打止「……え?」

一方「そりゃあ、仕方ねーわ」

一方「俺も、多分追い掛けちまうだろうしな」

打止「…!」


一方「…行くぞ」

打止「……あ」

一方「…クリスマス、楽しみにしてたんだろ?」

打止「!」

一方「さっさと、行くぜ」

打止「………うんっ!」


美琴「あ、ミサカちゃん…」

打止「美琴!」

美琴「やっと……顔が、見れたわね」

打止「うん!ありがとう美琴!美琴のおかげでミサカはミサカは頑張れたの!」

美琴「…うん……私も、ありがとう」

美琴「(ミサカちゃんがしてるマフラー……やっぱり……そうだったんだね)」

打止「…?」

黒子「……さて」


黒子「人質も無事救出したことですし…」

黒子「早く行きましょうか」

美琴「そうね……早くしないと、佐天さんが危ないわ!」

打止「そうなの!あの人が危ないの!」

黒子「…そうですか。やはり、彼女の狙いは……」

美琴「うん。……やっぱり……血は争えないみたい」

一方「ははっ…たいそう迷惑なこった。姉妹揃って、たかが色恋沙汰で人殺ししようなんてなァ。ハハハッ」

美琴「……」

黒子「…あなた」

一方「…なンだよ」

黒子「次にそれを言ったら許しませんわよ?」

一方「…はァ?何言ってやがンだよ。俺は事実を…」

黒子「いいんですの?私、言ってしまいますわよ?」

一方「…何を…」


黒子「…あなたが打ち止めさんのことを心配し過ぎて……」

一方「なっ…テメェ!それ以上言うな!」

打止「…?」

黒子「あら、よろしいんですの?」

一方「…………チッ」

黒子「ふふっ……では、参りましょうか」


「お待ちください」


ガシャ
ガシャリガシャリ


黒子「……!?」

一方「こいつら…」

美琴「…っ」

打止「……!」


妹達「申し遅れていましたが…」

妹達「あなたたちがこれから向かおうとしている『集団』には…」

妹達「『私達』の、半数程度の人数しかいません」

黒子「……」

妹達「…ですから」

妹達「あなたたちがここに来た時に備えて…」

妹達「『予備』はたくさん用意させていただいておりました」

黒子「…!」

一方「…はっ、関係ねぇな」

一方「さっきも言っただろ?数でかかってこようが同じことだってよ」

妹達「…確かに、あなた一人に対してなら、そうなりますが…」

妹達「…では」

一方「…?」

妹達「…果たしてあなたの守りたい物を守りながら、この人数を相手にできますか?」

一方「……!」


妹達「そして…」

妹達「この部屋は狭い」

妹達「入り口しか出口がないこの場所の……その入り口さえ塞いでしまえば…」

妹達「あなたたちの実力がどれほどの物であっても…」

妹達「…全員、全くの無事では済みませんよ?」

黒子「……」

妹達「さぁ、どうなさいますか?」

美琴「…あんたたち…!」

美琴「もう、やめなさい!」

妹達「……」

美琴「こんなことしても……何もならないわ」

美琴「それは、私自身が……一番、よくわかってる」

美琴「……だから……もう、やめて」

妹達「…」


妹達「…申し訳ございません」

美琴「…!」

妹達「例え、お姉さまのお願いでも…」

妹達「今回ばかりは、引き下がるわけにはいきません」

美琴「そんな…!」

妹達「お姉さまは、甘すぎるのです」

美琴「…!」

妹達「…本当に自分の好きな人のためなら…」

妹達「…その人のために、全てを犠牲にしてでも」

妹達「その目標に向かって、突き進むべきでした」

美琴「…」

妹達「お姉さまは優しすぎた…」

妹達「だから、逃したのですよ」

妹達「彼を……手に入れるチャンスを」

美琴「…!」


妹達「私達は、お姉さまとは違う」

妹達「お姉さまとは……覚悟が違うのですよ」

美琴「……っ」


黒子「―――そんなこと」

黒子「当たり前ですわ」

美琴「!……黒子?」

黒子「あなた方なんかと、私のお姉さまを、一緒にしないでいただきたいですわ」

妹達「……」

黒子「お姉さまは、確かに優しすぎるところがあります」

黒子「他の人よりあまり器用な方でもありませんし、素直でもありません」

黒子「…でも」

黒子「そこがお姉さまの良いところであり、魅力なのですよ」

美琴「…黒子…」

妹達「……」


黒子「…私の…お姉さまのことを……わかったような口を聞くんじゃない!」

妹達「……わかりました」

妹達「そのことは、謝りましょう」

黒子「……」

妹達「…では…その違いを見ていただくために…」

妹達「あなた方には……ここで、死んでもらいます」

美琴「…!」

黒子「…結局、こうなるのですわね」

一方「チッ……くだらねぇことに巻き込まれちまったモンだな」

打止「戦うの!私達も一緒に……戦うの!」

一方「…はっ、わかってらァ」

妹達「…それでは…」

妹達「開始します」


黒子「…!」

――――

・路地・

バシュン!


佐天「…ぐっ…!」

御坂妹「そんな携帯電話など、もうあなたには必要ありませんよね」

佐天「……っ」

御坂妹「まったく…」

御坂妹「あなたもなかなか、物分かりの悪い方ですね」

佐天「……」

御坂妹「素直に取り引きに応じていれば…」

御坂妹「……また、あの方と話す機会もあったかもしれませんのに」

佐天「……」

御坂妹「ああ、そういえばあなたは…」

御坂妹「私から勝ち取って見せるとおっしゃいましたが…」

御坂妹「一体、私から何を勝ち取るおつもりですか?」


佐天「……」

御坂妹「…ご覧のように、あなたの視界には今も尚、妹達が銃口をあなたに向けています」

佐天「……」

御坂妹「そして、逃げ場もない」

佐天「……」

御坂妹「ちなみに…」

御坂妹「あなたはご存知でないようなので、一応言っておきますが…」

佐天「…?」

御坂妹「あなたの先輩にあたります、『白井黒子』様が、実は私達の企みにいち早く気付き…」

御坂妹「監禁していたお姉さまの居場所も突き止め、人質を解放したようです」

佐天「…!!白井さんが…!?」

御坂妹「彼女は、あなたやお姉さまを助けるために…尽力なさっていたようですよ?」

佐天「白井さん…」

御坂妹「しかし」

佐天「…え?」


御坂妹「とても残念なことに……」

御坂妹「今頃、無事には…済んでいないでしょうね」

佐天「…なっ…」

御坂妹「…なにせ…」

御坂妹「お姉さま達の監禁していた場所には…」

御坂妹「ここにいない『妹達』が、待ち構えていますからね」

佐天「……!!」

御坂妹「あの方はとても聡明な方でした」

御坂妹「私としても…もう一度、お話がしてみたかったんですけどね……残念です」

佐天「…っ」

御坂妹「…というわけで…」

御坂妹「あなたを助けようとしていた人達も、ここには来ないでしょう」

御坂妹「それを知った上で……あなた一人で、私から何か勝ち取るなんてことができるとお思いでしょうか?」

佐天「……っ…」

上条さんくんじゃね?


御坂妹「…ああ、それと」

佐天「…?」

御坂妹「この際ですから言っておきますが…」

御坂妹「お姉さまと一緒に監禁されている人物が、もう一人います」

佐天「…え?」

御坂妹「…それは」

御坂妹「私たちのこの行いを止めることのできる最終手段…」

御坂妹「…『ラストオーダー』です」

佐天「…!(この人達を止める…最終手段!?)」

御坂妹「その子は、私たちがこのように独自の判断で暴走を始めた時…」

御坂妹「それを止める最終手段として作られた……20001番目の『妹達』です」

佐天「…!」

御坂妹「…最後に、もう一つ」

佐天「…?」

御坂妹「あなたは…あのマフラーを手放してしまったようですね」


佐天「…!」

御坂妹「あなたにとってあのマフラーがどれだけ重要だったか、また、あなたにとってどれだけ希望であったか…」

御坂妹「私は把握していたつもりですが…」

御坂妹「どうして、手放してしまったんでしょうね?」

佐天「…っ」

御坂妹「それも…」

御坂妹「まさか、その……『ラストオーダー』に渡してしまうなんて」

佐天「なっ……まさか…」

御坂妹「ええ、そうです」

御坂妹「あなたがマフラーを渡した相手は…私達を止める最終手段ラストオーダー」

御坂妹「つまり……あなたは、その小さな希望すらも、自ら二度と手に入らない場所に『置いてきてしまった』」

佐天「……っ」

御坂妹「残念です」

御坂妹「非常に、残念です」

御坂妹「あなたは、あの方が選んだ女性です」


御坂妹「あなたが私から勝ち取って見せると言った時は、少しは楽しませていただけると思ったのですが……」

御坂妹「今やあなたは、まともに私と会話出来ずにいる」

御坂妹「とても、残念です」

佐天「……」

御坂妹「それでは……」

御坂妹「そろそろお別れの時間ですね」

御坂妹「さような…」

佐天「―――妹さん」

御坂妹「…?」

佐天「……1つ…提案が、あります」

御坂妹「……提案?」

佐天「…はい」

御坂妹「今更、命乞いなら受け付けませんが?」

佐天「……違います」

御坂妹「…」


佐天「…私には」

佐天「…確かに、もう、希望はない」

佐天「正直、こんな状況で……私が今、生きていること事態が不思議なぐらいです」

御坂妹「……」

佐天「…ですから…」

佐天「…命乞いはしません」

御坂妹「……」

佐天「ただ…」

佐天「最後に…私と…」

佐天「…賭けを、しませんか?」

御坂妹「………賭け?」

佐天「…ええ」

佐天「あなたも言った通り……今の私には、あなたから勝ち取れる物なんて……1万分の1もありません」

佐天「つまり、私があなたに勝てる可能性は……0%です」

御坂妹「…そうなるように仕組んだのは私達ですが?」


佐天「…はい。わかっています」

佐天「ですから、これは私からのただの、提案です…」

御坂妹「……」

佐天「……」

御坂妹「…一応、聞いておきましょうか」

佐天「…ありがとうございます」

御坂妹「…」

佐天「…妹さん」

佐天「…この近くで、クリスマスツリーのイベントをやっていることを、ご存知ですか?」

御坂妹「…はい。あの方と、行かれる予定であったのでしょう?」

佐天「はい。…実は、そのクリスマスツリーが…」

佐天「あと、20分で、一斉に点灯するそうなんですよ」

御坂妹「……それで」

御坂妹「あなたはそれまでにそのクリスマスツリーに辿り着けたらあなたの勝ちにして欲しいと?」

佐天「…あなたたちが、私に道を開けてくださることが……前提ですけどね」


御坂妹「ふふ」

御坂妹「何を言ってるんですか?」

佐天「……」

御坂妹「…私達が、あなたをこの路地から簡単に出すとでも?」

御坂妹「冗談を言うのも程々にしてください」

佐天「……そうですよね」

御坂妹「当たり前です」

佐天「…やっぱその提案は、さすがにダメでしたか…」

御坂妹「…?」

佐天「…確かに、図々し過ぎますよね」

御坂妹「……」

佐天「…妹さん」

御坂妹「……はい?」

佐天「…じゃあ、こういうのは、どうでしょうか?」


御坂妹「……?」

佐天「……あと、20分の間に…」

佐天「―――雪が、降ったら」

御坂妹「……」

佐天「雪が降ったら………私の、勝ちというのは?」

御坂妹「……」

佐天「……今日の…降水確率は…10%です」

佐天「ですから……」

佐天「勝率0%の私に…」

佐天「…その10%だけ、私にくださいませんか?」

御坂妹「……」

佐天「20分の間に……」

佐天「私は、その10%の希望だけを持って……あなたたちから生きる方法を探します」

佐天「…もちろん、この状況で、20分もあなたたちから生きれることは、1%もないでしょう」

佐天「…それに、雪も、降らないかもしれない」


御坂妹「…」

佐天「……しかし」

佐天「…現に私は、あなたとこうして話している」

佐天「まだ、生きている」

御坂妹「……」

佐天「…なら」

佐天「…その、1と0の間にある可能性に……賭けてもいい」

佐天「そこが……私の希望です」

御坂妹「……それは」

佐天「……?」

御坂妹「あなたの今言ったことは、賭けにはならないのではないですか?」

佐天「……」

御坂妹「確かに、あなたはまだ生きている」

御坂妹「でも、勘違いしないでいただきたいのです」

御坂妹「あなたはただ、私達に『生かされている』だけであって」


御坂妹「『生きている』のではない」

御坂妹「その気になれば、今この瞬間にでもあなたの存在を消し去ることが可能ですが?」

佐天「―――でも」

佐天「まだ、わからない」

御坂妹「……」

佐天「現に、あなたは…」

佐天「その今すぐにでも出来ることを、私にしようとしない」

御坂妹「……」

佐天「…それで、どうでしょうか?」

佐天「私の賭けに……乗ってくださいますか?」

御坂妹「……」

佐天「……もし、承諾していただけないのでしたら、今すぐ私を…」

御坂妹「…いいでしょう」

佐天「…!!」


御坂妹「…ただ」

御坂妹「条件を、私からも提案させてください」

佐天「……条件?」

御坂妹「…あなたの言う通り…」

御坂妹「私はあなたを今すぐに殺せるというのに…」

御坂妹「私はそれをしようとしない」

佐天「……」

御坂妹「それはなぜか?」

佐天「……」

御坂妹「単純に」

御坂妹「―――楽しくないんですよ」

御坂妹「あなたを簡単に殺してしまっては」

佐天「……」

御坂妹「私は、あなたに少し期待していました」

御坂妹「あの方が選ぶほどの方です」


御坂妹「よほど、魅力的な方で……そして……」

御坂妹「…私を楽しませてくれる方なのではないか、と」

佐天「……」

御坂妹「…それが…」

御坂妹「蓋を開けてみれば、このざまです」

御坂妹「はっきり言って……あなたには期待を裏切った責任を取ってもらいたいものだと思いましたね」

佐天「…はは……すみません」

御坂妹「しかし、だからこそ…」

御坂妹「あなたの提案は、なかなか魅力的だと思いました」

佐天「……」

御坂妹「…ちょうど退屈していたところです」

御坂妹「少しばかり、そういった遊びをしてもいいでしょう」

佐天「……」

御坂妹「そして、先ほど申し上げました条件ですが…」


御坂妹「……あなたが言った事柄に、追加事項を設けていただきたい」

佐天「……」

御坂妹「…私は」

御坂妹「いえ、私達は、あなたに道を開けましょう」

佐天「……え?」

御坂妹「そして、あなたにはクリスマスツリーが点灯するまでに…」

御坂妹「そこまで、辿り着いていただきます」

佐天「…それだと、私に分が良くなるんじゃ…」

御坂妹「…ええ、このままでしたらね」

佐天「……?」

御坂妹「…ですから」

御坂妹「…今から…20分間のうち……」

御坂妹「5分経つごとに…」

御坂妹「――――あなたの体を一部ずつ、狙撃させていただきます」

佐天「……!!?」


御坂妹「…まず」

御坂妹「5分後にあなたの左腕」

佐天「…!」

御坂妹「…そしてその5分後に…」

御坂妹「…あなたの右足」

佐天「……っ」

御坂妹「その5分後に、左足」

御坂妹「…そして…」

御坂妹「その5分後……つまり、20分経過しても、あなたがこの路地から抜けられず、クリスマスツリーにたどり着けなかった場合……」

御坂妹「あなたの、頭部」

佐天「………!!」

御坂妹「順々に、狙撃させていただきます」

佐天「………」

御坂妹「あなたの勝利条件は…」

御坂妹「20分以内にクリスマスツリーに辿り着く、もしくは、その間に雪が降るかです」


御坂妹「…あなたが勝てば、私はあなたを生かし…」

御坂妹「…あの方のことも、諦めましょう」

佐天「……!」

御坂妹「…しかし」

御坂妹「私が勝ったら…」

御坂妹「潔く、諦めてください」

御坂妹「彼のこと、そして……生きることを」

佐天「………っ」

御坂妹「いかがでしょう?」

御坂妹「悪い条件ではないと思いますが?」

御坂妹「むしろ、あなたの言う『希望』を、私は広げて差しあげたつもりですが?」

佐天「……っ」

佐天「………わかりました」

御坂妹「……」

佐天「…受けましょう、その条件で」


御坂妹「…フフッ、それでこそ、です」

御坂妹「それでこそ……勝負のしがいがあります」

佐天「…ええ。そうですね」

佐天「しかし…」

佐天「私は……負けるつもりはありませんよ?」

御坂妹「そうですか。まぁ、精々頑張ってくださいね」

佐天「……」


――白井さん

あなたが戦っていることを、私は知りませんでした

本当に、ごめんなさい


私のせいで………

……でも、だからこそ

私だけ、戦わないなんてことは、できない

もう逃げちゃ、行けないんだ

私は

私は……辿り着いてみせる

彼の……待つ場所へ


佐天「…行きます」

御坂妹「ええ、では……」


―――ご武運を―――

ごめん、仕事行ってた
保守ありがとう 
今から投下する

できれば朝までに全部投下してしまいたい

・・・・・・・・・

―倉庫外―


一方「……」

美琴「……」

打止「……」

一方「…おい」

美琴「……」

一方「いつまでも駄々こねてンじゃねーぞ」

美琴「……」

一方「…テメェの知り合い、助けに行かなくていいのか?」

美琴「……」


一方「…はぁ」

一方「面倒くせーな…」

美琴「…行けるわけ、ない」

一方「……はぁ。いつまで言って…」

美琴「…だって、黒子はまだ…あの地下にいるのよ!?」

一方「……」

美琴「…あの子だけ残して…」

美琴「……行けるわけ…ないじゃない…!」

一方「……」


―数分前―


黒子『…一方通行、お姉さま』

一方『…何だ』

美琴『…黒子?』


黒子『…あなたたち二人は打ち止めさんを連れて、まずあの妹達を正面突破してください』

一方『……了解』

美琴『…オッケー』

黒子『あなたも、二人の傍を離れないでくださいね?』

打止『…わかった』

黒子『…そして、真っ先に地上へのルートに向かってください』

一方『へいへい』

美琴『了解』

黒子『…よし』

黒子『それでは、行ってください』

美琴『…ちょ、ちょっと待って黒子』

黒子『…何ですかお姉さま』

美琴『…あんたは、どうするの…?』

黒子『…私は』


黒子『お姉さま達の後ろを走り…』

黒子『…お姉さま達が地上へのルートに入った直後に、その入口を塞ぎます』

美琴『…それは、あんたも一緒に出るのよね?』

黒子『…いえ』

黒子『私は、地下に残ります』

美琴『…!?な、何言って…』

黒子『心配なさらないでください』

黒子『少し……やらなければならないことがありますので』

美琴『…でも…』

一方『はっ、囮にでもなろうってか?』

黒子『ええ、なかなか察しがいいではありませんか』

美琴『そんなっ、囮なんて必要ないじゃない!』

美琴『あんたも一緒に逃げれば…!』


黒子『…お姉さま』

黒子『私の目的はお姉さま達の救出です』

美琴『…それは、わかってるけど…』

黒子『…ですから』

黒子『…あなたたちがここで無事でなければ意味がないのですよ』

美琴『……っ、私は別に…』

黒子『私はここで妹達を止めます』

黒子『その間に、お姉さま達は先に佐天さんの救出に向かってください』

美琴『……でも…』

黒子『こんなことをお願いできるのは、お姉さま達しかいないんです』

黒子『お願いします』

美琴『……』


一方『いいじゃねーか、そいつには便利な能力があるんだ…いつでも逃げられるだろ』

黒子『ふふっ、よく分かってるじゃありませんか』

黒子『……あとから』

黒子『後から、行きますから』

美琴『……』

美琴『…わかった』

黒子『…時間がありません』

黒子『行きましょう』


妹達『――作戦会議は終わりですか?』


黒子『…ええ、待っててくださってありがとうございます』

妹達『いえいえ…』

妹達『それに、いくら作戦を練ろうと、同じことでしょうからね』

黒子『…そうですか…では…』

黒子『―――参ります』


――ザッ


一方『――どけェ!』

美琴『―――はぁぁ!!』

妹達『――――っ』

・・・・・・・・・

―――――――


一方「…それで」

一方「結局俺たちはこうやって外に出てきてるわけだ」

一方「…さっさと行くぜ」

美琴「…でも、黒子はまだ出てきてない」

一方「……じゃあテメェは、あいつの行いを無駄にすンのか?」

一方「あいつ一人……地下に残って囮になってンだ」

一方「ここで俺達が行かなきゃ……あいつのやったことが報われねぇだろ」

美琴「…っ、そんなこと、わかってるわよ!」

一方「……」

美琴「…でも…」

美琴「…あの子に助けられておいて、それで、放って行くなんてこと…」

打止「…美琴」

美琴「……え?」


打止「ミサカはミサカは……行った方がいいと思うの」

美琴「……!」

打止「…私達はマフラーを届けに行かなくちゃいけない」

打止「だから、こんなところで立ち止まってるわけにはいかないって、ミサカはミサカは言ってみたり」

美琴「…っ…でも…」

一方「信用してねーのか?」

美琴「……え?」

一方「テメェは…あいつのことを信用してねーのか?」

美琴「……それは……」

一方「…あいつはテメェが監禁されてから、躍起になってテメェを探し歩いてたそうだぜ?」

美琴「……っ」

一方「そンなあいつにテメェは助られたンだ」

一方「そいつのことを、信用してやらねーでどうすンだ?」

美琴「……」


一方「……まぁ、いいけどな」

一方「…テメェがいかねーってンなら別に俺はいいぜ」

美琴「……」

一方「……だが俺は、今回の件に関してはあいつの駒だ」

一方「…言われた通り、あいつの知り合いを助けに行くぜ」

美琴「……」

打止「美琴……」

一方「……おい、クソガキ。行くぞ」

打止「…でも、美琴は…」

一方「…知らねーよ」

一方「テメェのことを助けようとした奴の事さえ信用してやらねー奴のことだ」

一方「…ンな奴のことなンざ、どうでもいい」

美琴「……っ」


一方「…じゃあな」

一方「テメェはいつまでもそこでそうやってろ」

一方「…俺たちは先に行…」

美琴「……わかったわよ」

一方「……」

美琴「…あんたに言われるのはムカつくけど…」

美琴「…確かに、あの子のことを信用してやれないんじゃ……ダメよね」

打止「…美琴!」

美琴「…うん。行こう」

美琴「…佐天さんを助けに」

一方「……はっ、最初からそう言えバカ野郎」

美琴「…うっさいわね。さっさと行くわよ」

打止「そうなの。ぐずぐずしてないでさっさと案内すればいいって、ミサカはミサカはあなたに指図してみたり」

一方「…なンで急にテメェら上から目線なンだ?」


美琴「いいから早く!妹達の集団が活動してる方向知ってるの、あんただけなんでしょ?」

一方「…はぁ。わーったよ」

一方「…さっさと、片付けに行こうぜ」

美琴「…うん」

美琴「…(黒子…)」

あんたを私が信用しないなんて……ありえないよね

ごめん……こいつに言われるまで、私、あんたの努力を無駄にするとこだった

先に行ってるから…後から絶対来なさいよ?


待ってるからね?黒子―――

・・・・・・

―――――

―倉庫地下5階―


黒子「…はぁ…はぁ…」

妹達「……」

黒子「…はぁ…はぁ…」

妹達「よろしかったのですか?」

黒子「…はぁ…はぁ…」

妹達「…他の人達を助けたのはいいですが…」

妹達「…あなたはこうやって囮になって、わざわざ出口を塞いでまで私達を足止めしている」

黒子「……はぁ…はぁ…」

妹達「…さっさと、一緒に脱出すればいいものを…。そんなことをするから…」

妹達「紙一重でかわしてるいるとはいえ、私達からの攻撃を集中して受け止めなければいけない」

妹達「…一体あなたは…何がしたいのですか?」

黒子「……ふふっ」


妹達「……」

黒子「…おかしな…ことを、聞きますのね」

妹達「……」

黒子「…私の目的は、人質の救出……ですわ」

黒子「その目的は……もう…達成、されています…から」

妹達「…だから、もうここで私達に殺されていいと?」

黒子「…生憎、もうテレポートするだけの体力も、残っていませんの」

妹達「……そうですか」

黒子「ええ……でも」

妹達「…?」

黒子「……あなたたちに……」

黒子「…このまま殺されてしまうというのも……なかなか、癪ですわね」

妹達「…それは仕方ないのでは?」

妹達「第一、自分がお招きになった結果でしょう?……それに、もう限界では?」


黒子「…ええ、そうですね」

妹達「なら…もう」

黒子「―――それでも」

黒子「簡単には……殺されるわけには、いきませんわね」

妹達「……」

黒子「…約束、してしまいましたからね……『後から行く』と」

妹達「……」

黒子「…許してもらえそうに、ないのですよ……お姉さまに」

妹達「……だからといって」

妹達「……私達があなたを殺さないとでも?」

黒子「…ふふっ。最初から見逃してくださると言うのなら…」

黒子「…こんなに、苦労せずに済みましたわ」

妹達「…そうですか」

妹達「―――それは、残念です」


ガシャリ

黒子「……」

妹達「少々、お喋りが過ぎましたね」

黒子「……」

妹達「…もうそろそろ、楽にしてあげましょう」

黒子「……」

妹達「…あなたと話せて、良かったです」

黒子「……」

妹達「私達はあなたを始末した後、逃げ出した人質を探し、また捕らえます」

妹達「…いや…」

妹達「…もう、捕らえるだけでは済まないでしょうね」

黒子「……」

妹達「そういうわけで、申し訳ございません」

妹達「こちらも、立て込んでいますので…」

妹達「早急に目の前の件を片付けなければいけません」


黒子「……」

妹達「…では」

妹達「…さような」


ゴゴゴゴゴ…!


妹達「…なっ……地震……!?」

黒子「……」

妹達「……これは…」

黒子「…ふふっ」

妹達「…!」

黒子「…聞こえませんでしたか?」

黒子「なら、もう一度、言っておきます」

黒子「私は、簡単には殺されない」

妹達「…!!まさか、建物を…」


黒子「…おかげで、随分と力を使い果たしてしまいましたが…」

黒子「お察しの通り、少々、この地下5階までの…至るところの柱に…」

黒子「亀裂を入れさせていただきました」

妹達「…!!」

黒子「……させませんわよ」

妹達「…!」

黒子「…せっかく、助けた人質です」

黒子「…あなた方の…好きにはさせませんわ」


ゴゴゴゴゴ…!


黒子「…これで」

黒子「ここにいる妹達は全て、生き埋めですわね」

妹達「…っ…」

黒子「それにしても全く…」

黒子「…骨が折れる…仕事でしたわねぇ…」


妹達「…あなたは…」

黒子「…何でしょう?」

妹達「あなたには、ここまでする理由が…あるのですか?」

黒子「……」

妹達「…あなたの…目的のためなら手段を選ばないあなたのその考えは…」

妹達「…正直に申し上げまして、私達以上に…」

妹達「…狂っている…」

黒子「……」

妹達「…そんなあなたなら、もう少し…何か別の手段を持って…」

妹達「私達を…止めようとすることも……出来たのではないのですか?」

黒子「……はぁ」

黒子「何を今更言い出すのかと思えば…」

妹達「……」

黒子「…私が、狂っているですって?」

黒子「そんなの…当たり前でしょう」


妹達「……」

黒子「私は…」

黒子「あなた方にお姉さまを、奪われた時から…」

黒子「偽物のお姉さまと数日過ごしてしまったという事実を知ったその時から…」

黒子「…既に、狂ってしまっていたんですよ」

妹達「……」

黒子「それに…」

黒子「私は、あなたたちとは違う」


ゴゴゴゴゴ…!


黒子「……情報が共有されているなら、私が昨日の夜、言ったことを覚えていらっしゃいますよね?」


妹達「……」

黒子「―――あなたが」

黒子「私の周りの人を傷付け続けると言うなら……」

黒子「私は…」

黒子「みんなを守る、盾になります、と」

妹達「……!」

黒子「…これが、私の答えであり、あなたたちとの違いですわ」

妹達「……」

黒子「あなたたちと違って…私には、守らなければいけないものが、たくさんあります」

黒子「…まぁ、言うだけ言って…実行しないのも…格好が付きませんしね」

妹達「……っ」


ゴゴゴゴゴ…!!


ゴゴゴゴゴ…!!


黒子「…さて」

黒子「お喋りが過ぎましたね…」

黒子「…時間です」

妹達「…っ…」

黒子「…それでは、みなさん」

妹達「…!」


黒子「―――ご機嫌よう」


ドゴォォォン!!!!


――倉庫、崩壊――

―――――

―路地―


御坂妹「―――――!」


…そうですか

向こうにいる妹達は、やられましたか…

そう簡単には、やられる数では無かったと思ったのですが…

…やってくれますね、白井様

…やはりあなたは、昨日の夜に始末しておくべきだったかもしれませんね

まぁ、今となってはもう遅い…

……仕方ありませんね

少々予定は狂いましたが…

今は、目の前のゲームを楽しみましょう


御坂妹「しかし、こちらはなかなか…面白くなりそうです」

さぁ、もうすぐ…開始から5分が経ちます

――…

佐天「…はぁ…はぁ…はぁ」

暗い…

暗くてあまり前が……先が見えない

うっかりすると、壁にぶつかりそうになる

佐天「…はぁ…はぁ…」


でも、止まれない

この路地を抜けない限り…

私に、勝ち目は無いんだ

雪は……おそらく、降ってくれそうにない

ここ最近で……雪が降った記憶なんて無いから…


佐天「…はぁ…っ…」

それにしても…何なんだこの路地…

すぐに…抜けられると思ってたのに…

なんで…なんでこんなに…

迷路みたいに…入り組んで…

佐天「……っ」

まずい……

時間がない…!

早く、出ないと…!


バシュン!


佐天「あっ……がっ…!」

左……腕……!

…もう、5分経ったの…?

うそ……でしょ……


佐天「…うっ……うぅ…」

痛い……

こんな……こんなことが…

5分経つごとに…ずっと続くっていうの…?

佐天「………うっ…うぅ…」

痛い……

一体、どこから……

…さっきまで居たたくさんの妹達は、私の視界にはもういない

しかしそれは

目の前から居なくなっただけで…

実際は、『居る』

私には見えない

でも、私でも感じとることができる

ずっと、至るところから、私を見ているという気配を…


佐天「…はぁ…はぁ…うっ…」


……負けない

絶対、諦めちゃダメなんだ

みんな……私のせいで…巻き込んでしまった

ここで、私が諦めたら…

みんなに申し訳が…立たない…!


佐天「………行こう」


辿り着いてみせる

相手が何人だろうと……

私にも……勝てる可能性は…ある

とにかく一度、目指すべき場所を確認しよう

方角が間違ってるのかもしれない


…私がこの路地に入るときは…

確か…あっちの方角だったはず

…あれ、でもこっちだっけ…

いや、でも……あっち……

やば……わからない…

佐天「……はぁ…はぁ…」

出血も……そろそろ洒落にならなくなってきた

時々、足がふらつく…

まずい……こんなところで…

立ち止まってるわけには…いかないのに…

それに

次に、狙撃されるのは…

………右足

それは、まずい

足を撃たれたら、走れなくなる


それだけは、まずい…

私の希望が、どんどん小さくなっていく…

とにかく、早く……行かないと……


ニャーン


佐天「………!」

猫…?


ニャーン タタタタタ…


佐天「……」

何でだろう、付いてきてって、言ってるような気がした…

佐天「…よし」

あの猫に……付いていこう

どうせ…もう、方角もよくわからないんだ

がむしゃらに進んでいくしかない…


佐天「……はぁ……はぁ…」

…猫……猫……

確か、こっちの方に……


ニャーン


佐天「……居た!」

よし、こっちだ……

…もう、右肩と左腕を撃たれて、上手く上がらないけど

それでも、まだ……走れる…!

佐天「…はぁ…はぁ…はぁ」

なんだろう…あの猫

不思議だな…

猫なんていつもなら、歩み寄っただけでも、凄い速さで逃げちゃうから…


追いかけても、追い付けるはず、無いんだけど…

まるで、あの猫は…

私が追い付くのを待ってくれているような…

それに、この路地に来たときは猫の声を聞いた時は…

不吉な予感しかしなかったのに…

今は、私が追いかけてる

…変な感じだ…


佐天「…はぁ…はぁ…」


でも

さすがに、体力が持たなくなってきた…

私は陸上の長距離選手じゃないし、そんな体力は持ち合わせていない

…それに、両腕からの出血

加えて、視界には映らない、何千もの私を狙う殺気


体力だけじゃない…

精神が、持つかどうかわからない

正直、走ってないと、正気を保てそうにない

立ち止まったら、分かってしまう

自分が、どんな現実に立たされているか…


佐天「……」


……こんな時

こんな時、上条さんが居てくれたら

あの人が居てくれたら…

また、1ヶ月前みたいに、助けてくれるんだろうか

私と同じ、レベル0だけど…

イマジン……なんとかっていうのを持ってて

凄く…強い


私の……憧れの……人だ

また、あの右手で、私を救ってくれるんだろうか

この…悪夢みたいなゲームを…

終わらせてくれるんだろうか…


佐天「……はぁ……はぁ…」


そんな…

ありもしない、幻想

油断すると、またその現実から離れたくなる

……はは、ダメだなぁ私

結局、1ヶ月前と…何も変わってないや

すぐに、助けてもらおうとする

すぐに、人を頼ろうとする


そんなだから…

白井さんが戦っていたことも、御坂さんが捕まっていたことも……

ミサカちゃんが……捕まっていたことも……知らずに…

…能天気に、クリスマスを過ごそうなんて、考えてしまうんだ

佐天「……っ……」

……悔しい

いつも私は、後悔した後に気付く

きっと、これは罰なんだろうな

みんなを巻き込んでしまった…罰だ

だから、この痛みは……受け入れよう

佐天「……」

……なんか私、ドMっぽいな

気のせいか……


ニャーン


佐天「……ん?」

あれ…は……

佐天「…灯りが……!」

間違いない!あそこだ!

やっと、やっとこの路地から出れる!

あとはこのままあの方向に走っていけば……


バシュン!!


佐天「――――っ!!?」


右足………!?

…撃たれた……!?


嘘だ…

嘘だ……こんなところで…!

もう、灯りが見え始めてるのに………!!

こんなところで………!


「残念、でしたね」

佐天「………っ!!」

御坂妹「もう灯りが見え始めているのに…」

御坂妹「残念なことに、10分過ぎてしまいました」

佐天「……うっ…うぅ…」

御坂妹「それにしてもよくここまで来れましたね」

御坂妹「あなたの為にこんな入り組んだ迷路のような場所を選んでいたのですが…」

御坂妹「なかなかの運のいい方だったようですね」


佐天「……うっ……」

…こんな…ところで…

倒れてちゃ……いけない…

御坂妹「…おや?両腕と片足が使い物にならない状態で、よく立ち上がろうと思いますね」

佐天「…はぁ…はぁ…まだ…」

佐天「…まだ…時間は……うっ……ありますから…」

御坂妹「……」

佐天「……すみません……はぁ…はぁ…あなたと…話してる時間は…無いんで…失礼します……はぁ…」

御坂妹「…ええ。それは失礼しました」

御坂妹「陰ながら、ご健闘をお祈りしています」

佐天「……はぁ…はぁ…」

…ぶっちゃけ…

あまり、虚勢を張るほど、余裕がない

言葉を発する度に、撃たれた傷口が痛む…


もう、走れないから…

壁に肩を擦り寄せながら前に進む

しかし、この体勢も…

正直、苦痛以外の何物でもない

一歩、踏み出す度に激痛

また一歩、踏み出す度に激痛

…もう、痛みに涙を流すことも忘れた

ただ、今はもう

僅かに見える灯りを…目指すしかない…


佐天「……うっ……はぁ……はぁ…」


視界が、ぼやけ始めた

遠くに見える灯りがぼやけて、もやもやとした模様に変わる


明らかに、血が足りなくなって来ている

おそらく、この路地の地面に落とした私の血液は…

普段の私なら、とっくに倒れ込んでいるであろう血の量になっている


死が

死が、近づく


希望の光に向かって歩いている私…

その後ろから迫ってくる、絶望の闇

タイムリミットが、そのまま私に終わりを告げる

あと、数分という時間が

今の私の、命の時間だ

佐天「…はぁ…はぁ……っ」

逃げる

必死で、逃げる


その暗闇から 絶望から

何千人という殺人鬼が

銃器を片手に私をじっと、見ている

そんな、夢でもお目にかかれないような

望みが、絶たれた世界から


佐天「…はぁ……もう……少し……っ…」


少しずつ、少しずつ

ぼやけた灯りが、段々大きくなってくる

その灯りに、近づこうと急ぐあまり

右肩から

左腕から

右足から

容赦なく溢れでる、血


一歩進む度に体の隅々まで駆け巡る、激痛

意識が飛びそうになるのを、必死でこらえる

弱音をはきそうになる度に

みんなの顔が浮かぶ

それが唯一、私の足をなんとか前に進めてくれている

残った左足を支えに

前へ、前へ進む


もうすぐ、辿り…着ける

彼の、待つ場所に……


…――


御坂妹「なかなか、頑張りますね」

…最初にこの路地に入ってきた彼女は

あまりに弱々しく

あまりにつまらない

まったく、壊しがいがない

なんだ、くだらない

そういった印象しかありませんでした

…同時に

腹も立ってきました

こんな、つまらない、くだらない、何の取り柄もない女に…

あの方を奪われてしまったことに

少しは、私に何か抵抗してくるのかと思えば…

会話はまともに出来ない

あげく、逃げてばかり

まぁ、最初から逃がすつもりはありませんでしたから、その点は別にいいのですが…


それにしたって、あの様

幻滅もいいところでした

いずれにせよ殺す予定でしたが…

私も呆れて、もう面倒になってきたので、さっさと殺そうと考えたぐらいでしたが…


御坂妹「…しかし、今の彼女は……なかなか興味深い」


『私と…賭けをしませんか?』

…あの時の、彼女の瞳

何千人の妹達に銃器を向けられた状況で

真っ直ぐに、私を見据えて言い放った言葉

…ゾクリとしました

まるで、何か新しい玩具を見つけたような感覚

…これはいい


…これはなかなか良い

絶対的な闇の世界で

その瞳だけが、小さく輝く

……面白い

それでこそ、壊しがいがある

暗闇の中で必死に生きようとする光

それを、葬り去る瞬間こそが

私の、至高の幸福の瞬間

………胸が、踊る

早く、その瞬間が来ないか、待ち遠しい限りです


御坂妹「……と、ミサカは思います」


白井様

あなたのお知り合いはなかなか面白い

しかし、申し訳ございませんが…勝つのは私です


御坂妹「……さて、もうすぐ……もう片方の足の時間です」


早いものですね、5分経つのも

うっかり考え事をする暇もありません

しかし、それはそれで良い

早く、見てみたいですからね

…僅かな希望にすがろうとする者の表情が…

…絶対の絶望にうちひしがれた時の表情を…


御坂妹「……ふふっ」


――さて、行きましょうか


バシュン!!


佐天「――――ああっ!!」

…唯一の支えだった左足

そこに、撃ち込まれた弾丸

支えを失って、私は前のめりに倒れ込む


佐天「…あ……ああっ…」

御坂妹「……15分、経過しました」

佐天「…うっ…うぅ…はぁ……はぁ…」

御坂妹「苦しいでしょう?」

御坂妹「…両腕、両足に弾丸で穴を開けられると」

佐天「…っ」

御坂妹「そろそろ、限界なのでは?」

御坂妹「出血量も……なかなかの量になっていますが?」

佐天「……うっ……」ガサッ


御坂妹「……」

佐天「……うぅ…くっ…」

御坂妹「…ふふっ」

御坂妹「その体で…這ってまで行こうと言うのですか?」

佐天「……うっ……はぁ…」

御坂妹「いいでしょう。まだ、あと5分あります」

御坂妹「頭を撃ち抜かれるその瞬間まで…」

御坂妹「精々、頑張ってくださいね」

佐天「……っ……」

…もう少し

…もう少し…なんだ

もう、前に光は見えてるんだ

…あそこに辿り着かないと…

どちらにしろ…もう、終わりだから


佐天「…うっ…っ…くっ…」

這ってでも……行く

支える足に力が入らなくとも…

前に……進む

灯りが射し込む出口と

暗闇が支配する路地

その、ちょうど境界線

私は、そんな位置にいる

それはまさに…生きるか、死ぬかの、境界線

この境界線の上で、私はどちらに転ぶか

神様が、選んでくれるはずだ

御坂妹「…1分経過」

佐天「……っ!」

私の後ろで、悪魔のサンタクロースが笑う

容赦なくタイムリミットまでのカウントダウンを告げる


佐天「……っ…うっ…」

時間が迫る

全ての終わりが、迫る

佐天「…ま…まだ……まだだ…」

ここで前に進むことを諦めたら、そこで終わりだ

まだ、終わっていない

残り、数十メートル先

少しずつ、少しずつ

明るいゴールテープが、見えてくる

もう少し…もう少し…

佐天「……くっ…うぅ…」

いつもの何十倍もの重さに感じる体を、引きずる

もう痛過ぎて、逆に痛みなんてどうでもよくなってくる

感覚が麻痺してきたようだ

そのわりに血は流れたまま


目の前が、さっきよりも霞む

意識があるのかどうかも、定かではない

佐天「……はぁ…っ…」

御坂妹「……2分20秒」

佐天「……っ」

くそっ………

時間が…こんなにも止まってほしいと願ったことはない

そんなこと、不可能なのはわかってる

だから、私から進んでいくしかない…

私から、掴みとるしかない…!

佐天「……くぅ……っ」

…そして

これほど雪が降ってほしいと願ったことはない

今日の朝は、天気予報を見て…

良い天気だから、喜んでいた自分がいたけど…


今は…

今すぐ……私の頭上から、雪が降ってほしいと…切に願う

凍えるこの寒さが

空から降る雨を雪に変え…

私の元に届いてほしい…

10%の降水確率が

今…当たってくれないだろうか…

御坂妹「……3分」

……現実は厳しい

本来なら、優しいプレゼントを届けてくれるはずのサンタクロースは…

私にとびきり『不都合』な…

最悪のプレゼントをしてくれようとしている

なんて、クリスマスだ

サンタクロースが殺人鬼だったなんて…笑えなさすぎる冗談だ


佐天「……っ…」

あと、20メートル

この…たちの悪すぎるゲームを終わらせるために、私が進まなきゃいけない…距離だ

ずるずると、体を這わせる

周りから見れば、よっぽどみっともない格好だろう

力の入らない両腕の肘を付けて…

不器用に前に進もうとするその姿は。

佐天「……はぁ……うっ……はぁ…」

御坂妹「……3分30秒」

残り、15メートル

まさかこんな距離に、1分30秒もかかるだろうか

そんなわけないって、普段の私なら笑い飛ばしていたことだろう

こんな……まさかこんな…

両腕と両足に弾丸を貫通させられた体で…

その距離を進んでいくなんて、思ってもいなかったから


佐天「…っ…はぁ…」

もうすぐ…もう少しで、みんなに、会える

また、会える

そう思えば、まだ、進める

絶対、間に合わせる

勝つんだ…この、ゲームに…

御坂妹「……4分」

残り、10メートル

希望までの道程は、長い

もう、やるしかない

一分後に、私は笑って勝つことができるか

それとも、頭を撃ち抜かれて負けるのか

そんなの、わからない

私が前に進み続ける限りは…

まだ、わからない…!


御坂妹「……4分15秒」

もう少し…!

もう少しで、取り戻せる…!

失いかけた……大切なものを…!

佐天「…うっ…ああ…!」

言うことをきかない体を、無理やり前に推し進める

もう光が、目の前にある…!

すぐそこに、私の希望が…ある

御坂妹「……4分40秒」

悪魔が囁く

佐天「……はぁあああ!」

必死で、もがく

御坂妹「……4分45秒」

悪魔が囁く


佐天「……うあああ!」

必死で、叫ぶ

御坂妹「……4分50秒」

悪魔が囁く

佐天「―――――!」

もう叫び声にもならない

御坂妹「――――」

悪魔の囁きも、聞こえない

ゴールが手の届くところにある

あと少し、体を引きずれば届く距離

光が私を照らす

手の届く距離に、目の前に、希望がある

そんな…


そんな、場面で


「――――タイムリミットです」


終わりを告げた


「残念でしたね。もう少しだったのに」


しかし、告げたのは悪魔ではなく…


「本当に、残念です」


光を遮り、私の目の前に立ちはだかったのは…


初春「こんなこと、私にさせないでくださいよ」


私の額に銃口を向ける

親友の姿だった

――――――――
・・・・・・

・クリスマスツリーイベント出店前


上条「……うーん」

たこ焼きは食ったし、焼きそばも食った

りんご飴もまぁ、なかなか美味かったな

…次は、何食うかなぁ…

上条「……しかしなぁ」

あんまり食っちまったら、佐天さん来たときに申し訳ないか…

…にしても遅いな、佐天さん

何やってんだろ

用事ってなんだ?なんか家の用事か?

まぁ、もうすぐ着くみたいなこと言ってたし…別にいいか

上条「……もう、ツリー点灯しちまったか」

一緒に見ようって、言ったんだがな…


まぁ、仕方ない

今はとりあえず、気長に待ってるしかなさそうだ

上条「……」


『私は』

『上条さんが、大好きです』


上条「……」

……急に、どうしたってんだ?

まぁ、別にそう言ってくれるのは嬉しいは嬉しいんだが…

どうにも、調子狂っちまうな

なんか良いことでもあったか?

上条「……」

もしくは…その、逆か……なんてな

クリスマスに限って、んな不幸な目にはあわんだろう

俺じゃあるまいしな


上条「……はは。俺が考え事なんてしても、しゃーねーか」

上条「あんまり、難しいこと考えんのも、柄じゃねーしな」

上条「…うし、佐天さん用に…たこ焼きでも買いに行きますか」

もうすぐ、来るだろうしな

…あ、でも、なんか食ってきてるか?

腹一杯なのにたこ焼きってのも、なかなか酷だよなぁ…

上条「うーん……まぁ、いいか」

そん時はそん時だ

俺も一緒に食えばいい話だしな

うっし、買いに行くか…


プルルル プルルル


上条「…ん?…電話か…」

ピッ

上条「…もしもし――――」

保守サンクス
投下します

今度こそ最後の(ry


考えないようにしていた事がある

この路地に、入った原因を

本当は、心の中では、わかっていたことで

本当は、心の中では、気づいていたことで

それでも

信じようと、思っていたこと

まさか、二度と、1ヶ月前のように

自分の親友が

自分を裏切るようなことをするわけないって、思っていた

佐天「…どう……して……」

初春「……」

佐天「…うい…はる……」

初春「…佐天さんのせいですよ」

佐天「……!」

初春「あなたのせいです、佐天さん」


御坂妹「どうも、佐天さん」

佐天「…!」

御坂妹「あなたの勇姿、なかなかの見物でした」

御坂妹「私も、少し感動いたしました」

佐天「…っ…、あなた……ういはる…を……!」

御坂妹「…ああ、そのことですか」

御坂妹「すみません。申し遅れていました」

佐天「……な、にを…」

御坂妹「今日の、特別ゲストです」

佐天「…ゲスト…?」

御坂妹「ええ」

御坂妹「あなたに、最後に止めをさしてくださる―――大切なゲストですよ」

佐天「……!」

御坂妹「いかがですか?」

御坂妹「自分の親友に…銃口を向けられる気持ちは」


初春「……」

佐天「……っ…!」

御坂妹「あなたは、どんな気持ちでした?」

佐天「え………?」

御坂妹「…私達に」

御坂妹「数千人の妹達に、銃口を向けられた時の気持ちは、どうでしたか?」

佐天「…っ」

御坂妹「きっと、想像もしていなかった恐怖を覚えたんではないでしょうか?」

佐天「……っ!!」

御坂妹「……さて」

御坂妹「ここで、問題です」

佐天「……?」

御坂妹「…とある一人の女学生が」

御坂妹「…とある路地に連れて来られました」

佐天「……!」


御坂妹「そこには…」

御坂妹「たくさんの猫と…」

御坂妹「たくさんの…銃器を持った人間がいました」

佐天「…!!」

御坂妹「そしてその銃口を…」

御坂妹「――――一斉に、その女学生に向けました」

佐天「……っ…!!」

御坂妹「…果たして」

御坂妹「そんな状況に陥った純粋無垢な女学生が…」

御坂妹「まともな精神状態を保てたでしょうか?」

佐天「…あな…た…っ!初春に……っ!」

御坂妹「勘違いなさらないでくださいね?」

佐天「え……?」

御坂妹「…初春様は」

御坂妹「ご自分の意思で、あなたの前に立ち塞がっている」


佐天「そんな…わけ…!」

御坂妹「…あなたも今、初春様の口から聞いたでしょう?」

御坂妹「『あなたのせいだ』と」

佐天「……っ!それは…あなたが…っ」

御坂妹「…初春様はずっと、苦しんでいらしたんですよ」

佐天「…え?」

御坂妹「自分の友人が幸せになっていくのに対し…」

御坂妹「自分はその友人のせいで、不幸な事態に巻き込まれていく」

佐天「……!!」

御坂妹「…ですからね」

御坂妹「少し、初春様とそのことで、お話したんですよ」

佐天「……話……?」

御坂妹「…二日前の夜」

御坂妹「あなたがあの路地に到着する……前にね」

佐天「―――!!」

――――――
・23日夜、ペットショップ前路地・


ガシャリ

初春「……う…うぅ…!」

御坂妹「そんなに怯えないでください、初春様」

初春「…な……なに…を」

御坂妹「心配しないで下さい」

御坂妹「私は…私たちはあなたの味方です」

初春「……え……?」

御坂妹「今日は、あなたと少しお話をしたいと思っただけです」

初春「…なっ……なにを……?」

御坂妹「いえ、そんな大したことじゃありません」

御坂妹「あなたの友達の、…佐天涙子様のことです」

初春「……佐天……さん?」

御坂妹「ええ」


御坂妹「私、あの方に少し恨みがございまして…」

初春「……うらみ……?」

御坂妹「はい」

御坂妹「…私の、大切なものが…彼女に奪われてしまったのですよ」

初春「…大切な……もの?」

御坂妹「とても、大切なものです」

初春「……………?」

御坂妹「彼女に、『彼』を、奪われてしまったんですよ」

初春「……!(彼って…)」

御坂妹「あなたも、ご存知でしょう?」

初春「…!」

御坂妹「…上条、当麻様です」

初春「…………」

御坂妹「ですからね、初春様」

御坂妹「少しばかり、私に協力してはいただけないでしょうか?」


初春「………」

御坂妹「あなたが私に協力してくれると言うのなら、あなたの身の安全は…」

初春「……嫌…です」

御坂妹「……」

初春「…それ…だけは」

初春「…絶対に、嫌…です」

御坂妹「…どうしてでしょう?」

初春「…わたし……は」

初春「…佐天さんと…約束……して、ますから…」

御坂妹「……」

初春「…もう…」

初春「…二度と……うらぎら…ない……って…」

御坂妹「……」


初春「……私は……いちど…」

初春「……佐天さん…を……裏切って…しまって…」

初春「…たく…さん……彼女を……傷付け……ました」

御坂妹「……」

初春「…だ、だから…」

初春「……私は……二度と……親友を……裏切ったり…しない……!」

御坂妹「……」

御坂妹「…そうですか」

初春「………」

御坂妹「…仕方ありませんね」

ガシャリ

初春「―――――っ!?」


バババババババッ!!!!!


初春「――――――!!!」


……シュー…


御坂妹「…恐いでしょう?」

御坂妹「何千もの銃弾が、あなたの周りを駆け回る様は」

初春「―――――」ガクガク

御坂妹「…言葉も、出ませんか」

御坂妹「仕方ありませんよね」

初春「―――――」ガクガク

御坂妹「…ねぇ、初春様」

初春「―――…?」

御坂妹「…どうして」

御坂妹「どうして、こんな目に遭うんでしょうね?」

初春「………」

御坂妹「…考えたことは、ありませんか?」

初春「………」


御坂妹「あなたは、何もしていない」

御坂妹「あなたは、何も関係ない」

御坂妹「ただ、ただ…」

御坂妹「佐天様と、友達であるというだけで」

御坂妹「…あなたは、こんな目に遭っている」

初春「………!」

御坂妹「そう考えたことは……ありませんか?」

初春「……そ……それ…は…」

御坂妹「…だって、おかしいでしょう?」

御坂妹「…あなたは、ただ『巻き込まれた』だけなんですよ?」

初春「……構い…ません…」

御坂妹「……」


初春「……わたし…は、そんなこと……覚悟の……上で…」

初春「……佐天…さんの……傍に……いるんです…」

初春「……あなたの……言うこと……なんか……!」

御坂妹「……はぁ」


ガシャリ

バババババ!!!!!


初春「ひっ――――――!!!」

御坂妹「……」

初春「……うっ……うぅ…」

御坂妹「どうしましょう」

御坂妹「次は、当ててしまいそうです」

初春「―――――!!」

御坂妹「あなたが協力しないのが悪いんですよ、初春様」


御坂妹「だから私達は、あなたを次の瞬間に殺してしまう」

初春「―――――い、嫌――――」

御坂妹「……ね?」

初春「――――!?」

御坂妹「…こんなことに、なるでしょう?」

初春「―――…」

御坂妹「…いいですか、初春様」

初春「へ………?」

御坂妹「…あなたの友達の佐天様は、あなたのことをこう思っています」

御坂妹「『初春は可哀想だ』と」

初春「………!」

御坂妹「『私のせいで巻き込んでしまってごめんなさい』」

御坂妹「『でも』」

御坂妹「『私の幸せは初春のおかげで成り立ってるから、感謝してる』」

初春「………っ」


御坂妹「良かったじゃないですか」

御坂妹「あなたのお友達の佐天様は、あなたのおかげで幸せだそうですよ?」

初春「………」

御坂妹「あなたが…」

御坂妹「あなたが…………『不幸でいてくれるから』」

初春「……!」

御坂妹「そのおかげで、私は、幸せになれる」

初春「………」

御坂妹「良いものですね、友情って」

御坂妹「とても美しく……そして……」

御坂妹「とても、不公平」

初春「………っ」

御坂妹「良いんじゃないですか?」

初春「え……?」


御坂妹「あなたに、覚悟があるというなら…」

御坂妹「もう何も話すことも、考えることもない」

御坂妹「ただ…」

御坂妹「『佐天さんのために』殺されるだけ」

初春「…………っ!」

御坂妹「私は、構いませんよ?」

御坂妹「ただ、私はわからない」

御坂妹「こんなに友達思いで、こんなに頑張っている」

御坂妹「…そんな、あなたが」

御坂妹「たった一人の女の幸せの為に、その人生を棒に振ってしまいそうになっている」

初春「……!!」

御坂妹「…まぁ」

御坂妹「あなたがこの先ずっと、そうやって生きていくというなら、私は構いません」

初春「……っ」

御坂妹「――それでは、お話はこれで終わりにしましょうか」


初春「………」

御坂妹「あなたは、今から死にます」

初春「………」

御坂妹「それは、あなたの友達の佐天さんの、幸せのため」

初春「………」

御坂妹「そのためだけに、あなたは今から、数千の銃弾を体に受け…」

御坂妹「…その体に数千もの穴を空けて、絶命します」

初春「………」

御坂妹「私としては、とても残念です」

初春「………」

御坂妹「あなたの力になりたいと、願っていましたからね」

初春「……」

御坂妹「でも、仕方ありません」

御坂妹「あなたに、そんなにも死ぬ覚悟があるというのなら、仕方ありません」

初春「………」


御坂妹「……では」

御坂妹「―――参ります」


ガシャリ


初春「………い……や……」

御坂妹「……何でしょう?」

初春「……嫌……だ…」

御坂妹「……何がですか?」

初春「……死ぬ、のは……嫌だ……」

御坂妹「…しかし、それはあなたが決めたことなのでは?」

初春「……嫌…だ…死ぬ…の…嫌…」

御坂妹「困りましたね。…それでは、あなたのお友達の佐天様が幸せになれませんよ?」

御坂妹「あなたが……こうして不幸に巻き込まれ続けない限り」

初春「………嫌……だ……そんなの……」


初春「……なんで……わた…しが……佐天さんの……ために……」

御坂妹「……佐天様は、あなたが死んでくれたら、幸せだそうですよ?」

初春「……なん……ですって…?」

御坂妹「あなたがこうして悪い事件に巻き込まれている間…」

御坂妹「あなたのお友達の佐天様は、暢気にクリスマスの予定を考えてるみたいですね」

初春「……………」

御坂妹「…どうします?」

初春「………」

御坂妹「…このまま死にますか?」

初春「……い……嫌…」

御坂妹「それとも」

御坂妹「私と協力して……佐天さんに仕返しをしますか?」

初春「………仕返し…?」

御坂妹「ええ」

御坂妹「私なら……今のあなたを救うことができます」


御坂妹「…あなたのその胸にずっと溜め込んでいた…」

御坂妹「―――怒りを、恨みを、憎しみを」

御坂妹「綺麗さっぱり、吐き出させてあげられます」

初春「………本当…ですか……?」

御坂妹「ええ」

御坂妹「―――『約束』します」

初春「……ふふっ……ふふっ……」

初春「…仕返し……佐天さんに……ふふふ」

初春「……やったぁ……やっと……」

初春「……やっと……仕返しが、できる……」

御坂妹「……ふふっ」

初春「……もう、我慢……しくて……いいんですよね……?」

御坂妹「…ええ。そんなもの…必要はありません」

御坂妹「あとは、私に任せてください」

御坂妹「…あなたにとって、最高の舞台を用意しますから―――」

―――

・路地・


佐天「―――――!!?」

御坂妹「…以上が、私と初春様が話した内容であり…」

御坂妹「私達が交わした『約束』です」

佐天「……う、嘘だ……」

佐天「そんな……そんなことが……」

御坂妹「…嘘?」

御坂妹「私は初春様に嘘など一言も言った覚えはありませんが?」

佐天「…っ」

御坂妹「事実でしょう」


御坂妹「1ヶ月前にしろ、今にしろ…」

御坂妹「…あなたのせいで、初春様に迷惑がかかっていることは」

佐天「……そ、れは……っ」

御坂妹「…まぁ」

御坂妹「そんなに疑うのであれば」

御坂妹「本人に聞いてみてはいかがですか?」

佐天「…っ」

初春「……」

佐天「…初……春…」

初春「……」


初春の目にはもう、光がなかった

―――――――

―――

・路地前・


一方「……おそらく、この辺か」

美琴「……ここに、佐天さんが…?」

一方「さぁな…」

一方「ただ、方角からして、ここしか考えられねーな」

打止「…早く行こう!」

美琴「…そうだね」

一方「…わかってらァ」


「…あら、追い付いてしまいましたね」


一方「……!」

美琴「……!」

打止「……あなたは」

「……『後で行く』と言いましたでしょう…」


黒子「……ねぇ、お姉さま」

美琴「黒子……っ!!」

黒子「ふふっ、そんな驚かれなくてもいいじゃないですか」

美琴「……だって…」

黒子「…心配しなくていいと、言ったでしょう?」

一方「…はっ、ンなボロボロな様で何言ってやがンだテメェは」

黒子「……うるさい人ですわねぇ。人がせっかくお姉さまとの再会を喜んでいると言うのに」

打止「無事で良かった!ってミサカはミサカはとびきりの笑顔で言ってみたり」

黒子「……ふふっ、ありがとうございます」


美琴「…黒子、それより早く佐天さんを…!」

黒子「ええ……時間がありませんわ」

黒子「…さっさと、行きましょう」


…王手をかけに

――――


佐天「…初春…?」

初春「すみません、佐天さん」

佐天「…え…?」

初春「…あなたの声を聞くと、イライラします」

佐天「………!?」

初春「考えてみたら、簡単なことだったんですよ」

初春「…私がどうして、いつも不利な役割ばかりになってしまうのか」

佐天「……っ」

初春「あなたです」

初春「あなたですよ、佐天さん」

初春「私の人生を、滅茶苦茶にしようとしているのは」

佐天「…っ、ち、違……」

初春「…何が、違うんですか?」


佐天「……そ、それは…」

初春「ほら、言えない」

初春「人を馬鹿にするのもいい加減にしてください」

佐天「……っ、初春、違うの…」

佐天「わ…私は……初春が不幸に…なるから…幸せなんて……思ってない…!」

初春「でも」

初春「現に、そうなっている」

佐天「…………っ!」

初春「もう、疲れました」

佐天「…」

初春「嫌なんですよ、もう」

初春「あなたに関わるのは」

佐天「…う…い…はる…」

初春「だから…」

初春「さようなら、佐天さん」


佐天「……っ」

何も

何も、言い返せない

結局は、何も考えていない

何も、わかっていない

初春が、どうしてそんな目に遭ってしまうのか

…私の

私の、せいだ

私のせいなのに……

私のせいで、初春を傷つけているのに…

初春を……そんな目に遭わせたくない…なんて

…都合が、良すぎた

ただの、私の勝手な思い込みで

そのせいで、初春を追い詰める


佐天「…うっ……うぅっ…」

初春「…何、泣いてるんですか?」

佐天「…ひぐっ……うっ…うぅ……」

初春「泣きたいのはこっちですよ」

初春「…そうでしょう?佐天さん」

佐天「…うっ…うぅ…」


一人の親友も守ることが出来ない

守るどころか…

自分で、追い詰めて、傷付けて…


佐天「……うぅ…っ……」

初春「……」

佐天「……はぁ……はぁ…」


そんな私に…出来ることは…


初春「……」

佐天「……はぁ…はぁ…」

初春「……」

佐天「………はぁ…」

初春「…やっと、泣き止みましたか」

佐天「……」

初春「…私は」

初春「あなたとの、このくだらない関係を…」

初春「…今、断ち切ります」

佐天「……」

初春「…なかなか」

初春「楽しかったですよ。あなたと過ごした日々」

佐天「……」

初春「それ以上に、不愉快な気持ちがたくさんありましたがね」

佐天「……」


ガシャ

初春「……お別れです」

佐天「……」

初春「…最後に…何か言い残すことは?」

佐天「……」

初春「…何も、ありませんか?」

佐天「……」

初春「…わかりました」

初春「…では…」

佐天「……が……と…」

初春「……?」

佐天「ありがとう、初春」

初春「……は?」

佐天「…ありがとう、初春」

初春「…何を…言ってるんですか?」


佐天「…ありがとう」

初春「……だから、何を……!」

佐天「…手袋」

初春「……え?」

佐天「…手袋、付けててくれて、ありがとう」

初春「…………!」

佐天「私ね、初春」

佐天「…もう、初春に…何もかける言葉がないの」

初春「………?」

佐天「……でも、嬉しいの」

初春「……え?」

佐天「…その手袋、付けて…」

佐天「…その引き金を引いてもらえることが」

初春「……っ」


佐天「…私にとって、もう、それだけで十分なの」

初春「……これは………寒いから……付けてるだけで……!」

佐天「……うん、ありがとう」

初春「……っ」

佐天「…もう、私は十分に幸せになったよ」

初春「……」

佐天「…だから、初春にも、分けてあげたい」

初春「…っ、勝手な…ことを…!」

佐天「…だからさ」

佐天「…その引き金を引いて、初春が幸せになれるんだったら…」

佐天「…私は、喜んでそれを受け入れようと思う」

初春「……っ!」

佐天「…だって私は」

佐天「…初春の、親友だから」

初春「……っ!」


佐天「…親友の幸せを願わないやつが、親友なんて……言えないでしょう?」

初春「………っ」

佐天「…親友を信頼できないやつが、親友なんて…言えないでしょう?」

初春「……め……て」

佐天「…だから、初春」

初春「……や……め…て…」

佐天「……私を―――」

初春「…やめて!!」

佐天「…!」

初春「…やめて、ください」

初春「…これ以上、あなたと、話していたら…」

初春「…頭が……痛い…」

佐天「……」

初春「…何が……何が、信頼、ですか…」


黒子『―…私たちは、あなたを信頼しています…―』

初春「……そんな……安っぽい……言葉……っ!」

黒子『―…ですから、あなたも…―』

初春「……そんな……そんな……」

黒子『―…私達を…―』

初春「………こと……ば……」

「――――初春様」

初春「…!」

御坂妹「…どうかなさいましたか?」

初春「……あ……」

御坂妹「…何か、躊躇うことでもあるのですか?」

初春「…………い、いえ」

御坂妹「…そうでしょう?」

御坂妹「あなたの目の前には今…絶好のチャンスがあります」

初春「……はい」


御坂妹「……なら……やることは、わかっていらっしゃいますよね?」

初春「………はい」

佐天「…っ、初春…!」

御坂妹「―――おっと」

佐天「…!」

御坂妹「…あなたには…もう何も言える権利はないはずですが?」

佐天「………っ!」

御坂妹「あなたは、勝負に負けた」

御坂妹「あなたが提案した、賭けにね」

佐天「……っ」

御坂妹「…ですから」

御坂妹「…潔く、負けた罰を……受けとるべきでは?」

佐天「………」

御坂妹「……ふふっ……それでいい」

佐天「……」


御坂妹「では、初春様」

御坂妹「…お願いします」

初春「…はい」

佐天「……!」


「―――やめなさい初春」


初春「え――――?」

佐天「――――!」

御坂妹「………!」


「…もう、やめなさい。初春」


初春「……あ…ああ…」

佐天「……あなたは……」

御坂妹「………白井……黒子……!」


黒子「……ふぅ」

黒子「……なんとか、間に合ったみたいですね」

佐天「……白井……さん」

黒子「…佐天さん」

佐天「……無事……だったん…ですね」

黒子「ふふっ……私が、簡単にやられるわけないでしょう?」

佐天「…ふふっ…そう、ですね………良かった……」

黒子「……佐天さん」

佐天「……?」

黒子「…本当に、すみません」

佐天「……え?」

黒子「…少し………少し、来るのが…遅れました」

佐天「……そ、そんな…」

黒子「……あなたを、そんなに傷付ける前に…」

黒子「……もっと早くに、来るべきでした」


黒子「……本当に、すみません」

佐天「……良いんです…!わ、私のことは…!私は、私は…白井さんを…巻き込んで…」

黒子「……ええ、そうですね」

佐天「……え?」

黒子「…巻き込まれましたよ、あなたに」

佐天「……っ、じゃあ……私を……恨んで…」

黒子「ふふっ…」

佐天「……?」

黒子「何を言っていらっしゃるんですか?」

佐天「…え…?…だ、だって……私の…せいで…」

黒子「ええ、あなたの『おかげ』で」

黒子「私は、随分と楽しませていただいていますよ?」

佐天「…え……?」

黒子「…佐天さん。……あなたは、何か勘違いをしていらっしゃいませんか?」

佐天「……?」


黒子「…あなたは、私の大切な友達です」

黒子「…そんなあなたが、そんな姿になるまで、頑張っていらっしゃる」

佐天「……!」

黒子「…これを……この私が、放っておくとお思いですか?」

佐天「……で、でも…」

黒子「だ・か・ら、勘違いしちゃダメですって」

佐天「……え?」

黒子「…正確には、あなたが、巻き込んだのではない」

佐天「……?」

黒子「…私が、自ら巻き込まれていっただけの話ですよ」

黒子「…馬鹿みたいに、首を突っ込んでいるだけの話ですわ」

佐天「……!」

黒子「だから、あなたが気に病むことは、何もない」

佐天「……でも……」

黒子「…ふふっ、納得いきませんか?」


黒子「…なら」

佐天「……?」

黒子「…これが片付いたら……パフェでも奢っていただきましょう」

佐天「……!」

黒子「それで…ちゃらですわ」

黒子「いいですね?佐天さん」

佐天「……は…はい!」

黒子「……ふふっ、よろしい」


初春「……白井…さん…?」

黒子「……あら、初春」

黒子「どうしたのですか?そんな物騒な物を持って」

初春「……こ…これ…は…」

黒子「…まったく…似合っていませんわよ?」

初春「……え……?」


黒子「あなたには、そんなもの、似合いません」

黒子「…違いますか?初春」

初春「……わ……わたしは……」

黒子「…そんなものを佐天さんに向けて、何をしていらっしゃるのですか?」

初春「…っ、私は…これで…」

黒子「…それで撃てば、何か変わるのですか?」

初春「……!」

黒子「…いいでしょう」

黒子「それで、何かがあなたにとって良い方向に行くと言うのなら…」

黒子「…試しに、引き金を引いてみてはどうですか?」

初春「………っ」

佐天「……」

黒子「巻き込まれるのが、嫌なんでしょう?」

黒子「佐天さんの友達だからという理由だけで、嫌な事態に巻き込まれるのが」

初春「………」


黒子「…確かに、嫌ですよね」

初春「………」

黒子「…でも、だからこそ……あなた方は、友達なんですよ」

初春「……!」

黒子「…辛いことを、分けあえ……楽しいことを、分かち合い…」

黒子「…その繋がりがあるからこそ……二人の世界がある」

黒子「…私は、友達とはそういう物だと思いますね」

初春「……っ!」

佐天「…白井さん……」

黒子「…ねぇ、初春」

黒子「…それで、いかがいたしますか?」

初春「……わ、私は……」

黒子「…その上で、まだ佐天さんを…」

佐天「…!白井さん!危ない!!」

黒子「――――!」


バシュン!!!

黒子「―――っと、危ないですわね」

御坂妹「……」

黒子「…ああ、そういえば……居らっしゃったんですね、あなたも」

御坂妹「……久しぶりの再会なのに、随分な挨拶ですね……白井様」

黒子「あなたこそ……なかなかのご挨拶ですわね」

御坂妹「邪魔しないでいただけますか?」

御坂妹「初春様は今、自分の意思でそこに立っていらっしゃるんです」

御坂妹「ですから、あなたに邪魔をする権利などない」

黒子「…ふふっ……何を言っていらっしゃるのですか?」

御坂妹「……私は、事実を……」

黒子「それは、おかしいですわねぇ…」

御坂妹「……?」

黒子「…本当に、初春の意思で、初春が佐天さんを殺そうとしているなら…」

黒子「……既に、初春は佐天さんの頭を撃ち抜いていても良いのでは?」


御坂妹「……」

黒子「なんせ、躊躇う意味がわかりませんからね」

黒子「自分が本当に殺したいと思うなら…」

黒子「さっさと引き金なんか引いてしまえば良いのに」

御坂妹「……死に損ないが、言いますね」

黒子「いえいえ……生き勝っただけの話ですわ」

御坂妹「…建物が崩壊して、生きていらっしゃるとは驚きです」

黒子「……ふふっ。お褒めいただき光栄ですわ……サンタさん」

御坂妹「…いえいえ…。…しかし、どうして生きていらっしゃるので?」

黒子「…どうして?」

黒子「そんなもの、あなた方が教えてくださったではありませんか」

御坂妹「……!?」

黒子「…なら、聞きますが」

黒子「…妹達は……あの倉庫にいた、妹達は…」

黒子「…一体、どこから来ていらしたんですか?」


御坂妹「…それは…」

黒子「…私達が入っていった別ルートでは…」

黒子「あの数の妹達が短時間で地下に一斉に来るのは不可能」

黒子「…なら、一体どこから?」

御坂妹「…っ、…まさか」

黒子「私がこうして生きているのは…」

黒子「…妹達の通ってきた『道』を、通ってきただけですわ」

御坂妹「…!」

黒子「…どうせ、隠れているだろうことはわかっていましたからね」

黒子「…それに、人質を救出しにきた私達を襲撃するのであれば……」

黒子「…人質が居る場所から近ければ近い方が良い」

黒子「…なら、後は一体どこから出てきたのか」

御坂妹「……」

黒子「…建物の崩壊が始まった直後、妹達は、不自然な行動に出始めました」

黒子「…おそらく、自分達がこの崩壊から巻き込まれない場所に、避難しようと考えたんでしょう」


黒子「…しかし、私達が来たときにはそんな場所は見当たらなかった」

黒子「…ですから……その妹達の行動が、彼女達の通ってきたもう一つの別ルートの存在を意味した」

御坂妹「……」

黒子「…私は、妹達に言いました」

黒子「『もう、テレポートするだけの体力も残っていない』と」

御坂妹「…!」

黒子「律儀に信じていただけて、こちらとしてもやり易かったですね」

御坂妹「……あれだけやって……まだ、妹達が出てきたもう一つのルートまで先にテレポートできたと?」

黒子「…ええ。…まぁ、実際ギリギリでしたけどね」

御坂妹「……っ」

黒子「先回りして、その道を塞ぐ作業もなかなか骨が折れましたが…」

黒子「…驚いたのは、そのルートが、地下5階の下……つまり、地下6階に存在したということ」

御坂妹「……」

黒子「しかも…」

黒子「そこを通っていけば、辿り着く先が……あなたがいる、この路地の近くであった」


御坂妹「……」

黒子「よくもまぁ…あんな手の凝った独自のルートを、作り出したものですね」

御坂妹「……」

黒子「……それで」

黒子「そのあなたの言う『死に損ない』が、こうしてわざわざ来てあげているのです」

黒子「…そろそろ、あなたの野望も…終わりにしてはいかがですか?」

御坂妹「―――寝言を」


ガシャ ガシャリ ガシャ

御坂妹「…あなたの能力も、そろそろ限界でしょう?」

黒子「……妹達の集団……ですか」

御坂妹「…仕方ありません」

御坂妹「…あなたから、排除しましょう」

黒子「……」

佐天「…白井さん!」


御坂妹「……よく、ここまで来てくれました」

黒子「……」

御坂妹「またあなたとお話ができて…感謝しています」

黒子「……」

御坂妹「……それでは……さようなら」

佐天「……白井さ……!!」


バババババババッ!!!!!


御坂妹「……」

御坂妹「…残念、でしたね」

御坂妹「惜しい人を、亡くしました」

佐天「…っ、白井…さん……」

初春「………っ」

御坂妹「…あなた方に悲しんでいる暇はありませんよ?」

佐天「…っ」


御坂妹「…さぁ、早く続きを―――」


「―――まず、一手」


御坂妹「――――!?」


「学園都市……第一位の能力者」


黒子「―――一方通行」


一方「…ったく」


御坂妹「――――!?」

一方「…なンで俺がこンな役回りばっかりしなきゃなンねーンだ?」

佐天「……銃弾を……止めた……?」

御坂妹「……っ、あなたは……」

一方「…よう……クローン共」

御坂妹「……っ」


黒子「全く…危ないじゃありませんか」

黒子「もっと早く出てきてもらわないと困りますわ」

佐天「……白井さん!」

一方「テメェ……なンならもっと遅めに出てきてやってもよかったんだぞ?」

黒子「…あら、そうですか。私一人を銃弾から守れないなんて…使えない駒ですわね」

一方「守ったろーがテメェ!…大体テメェが長ったらしく喋ってやがるから、タイミングがなァ…!」

黒子「次は言い訳ですか。…はぁ、これだから白髪は」

一方「白髪は関係ねぇーだろ!つーかテメェいい加減にしろよ!」

黒子「ああもう、うるさいですわねぇ」

黒子「…そんなことより」

黒子「…目の前の問題をさっさと片付けてしまいませんか?」

一方「…けっ、切り替えの早ぇーやつ…」

御坂妹「……」

黒子「…さて、いかがいたしましょう?」

御坂妹「……っ」


黒子「あなたは、ご存知でしょう?…私と彼が、共闘していたこと」

御坂妹「……」

一方「…ま、テメェらがあのクソガキを拉致なンてしてなけりゃ…」

一方「…ンなことにはならなかっただろうがな」

御坂妹「……」

黒子「…そう、それが、あなたの最大のミスだった」

黒子「打ち止めさんはあなた方を止める最後の手段であり…」

黒子「…それは一方通行の『弱み』として、彼の行動を制限できた」

御坂妹「……」

黒子「そこを押さえたいのはわかりますが……少々、その『副作用』が大きすぎたようですね」

御坂妹「……っ」

黒子「…さて…そろそろ、良いでしょう」


黒子「―――初春」

初春「…っ」ビクッ


黒子「…あなただけではないのですよ」

初春「…え…?」

黒子「あなただけが、巻き込まれているわけではない」

初春「…あ…」

黒子「ご覧のように…」

黒子「こんな…私達と関係のないような人も、巻き込まれているんですよ」

黒子「ふふっ、迷惑な話でしょう?」

一方「…全くだ」

初春「……」

黒子「…でも……私は、この関係を絶ちたいとまでは考えません」

初春「…え…?」

黒子「…人間同士の関係の『輪』というのは……繋がっているからこそ、出来るものです」

黒子「…その輪を通して、私達はお互いの存在を感じながら、生きているのです」

初春「……」


黒子「…そしてそこには……『信頼』がある」

初春「……!!」

黒子「…お互いに信頼が成り立っているからこそ、私達は繋がっている」

黒子「…だから、その繋がりの中で、誰かが災厄に巻き込まれたとしたなら…」

黒子「…必然的に、私達にも、その影響は出てしまうものだと思うのですよ」

初春「……信…頼……」

黒子「…ええ」

黒子「あなたは、あの時私が言った言葉を…どうやら覚えてくださっているようですね」

初春「……え?」

黒子「…私達は、あなたを信頼しています、と」

黒子「…そう言ったのですよ、初春」

初春「……うっ……」

黒子「…苦しいでしょう?」

初春「…う……うぅ」

黒子「『信頼』と言う言葉は、重たいでしょう?」


初春「…っ…」

黒子「あなたがその苦しさから逃れるために、その引き金を引くことは…簡単でしょうね」

初春「…っ…う……」

黒子「…けど」

黒子「…あなたと私達のこれまでの繋がりの中の生活は……もう、戻ってこなくなるんですよ」

初春「……っ!」

黒子「…ねぇ、初春」

初春「……」

黒子「もう一度、言いましょう」

初春「……っ」

黒子「私は…」

黒子「私達は、あなたを信頼しています」

黒子「決して、裏切ったりすることはありません」

黒子「だからあなたも、私達を信頼してください」

初春「――――…」


黒子「さぁ、初春」


黒子「―――帰ってきなさい」

初春「………」

佐天「……初…春…?」

初春「………佐天…さん」

佐天「………」

初春「…私」


初春「…佐天さん達の……傍に……居たい……!」


佐天「…初春…!」

初春「………私、もう……戻れないって……」

初春「……こんなことしても…何も……残らないのに……」

初春「…私……私………うっ……うぅ…」

佐天「……いいの、初春」


初春「…うぅ…ひぐっ…うっ」

佐天「…初春が…また私の傍に居てくれるって言ってくれただけで…」

佐天「…私はもう……十分だから」

初春「……佐天…さん…?」

佐天「…私の方が……初春にたくさん謝らなきゃいけないし………本当に、辛かった」

初春「…うっ…」

佐天「…でも、もう『ごめんなさい』は、無しにしたいの」

初春「……佐天さん…っ」

佐天「初春…」

佐天「ありがとう、戻ってきてくれて」

佐天「そして……お帰りなさい」

初春「……うっ……ただいま、佐天さん!」ガバッ

佐天「…わっ、ちょっと初春!…痛いよ!」

初春「あ、ごごごめんなさい。…って、佐天さん、どうしたんですか!!ボロボロじゃないですか!」

佐天「ははは……今頃気付いたんだ」


初春「わわっ、血が!血が!血が出てますよ!きゅ、救急車!救急車!」

佐天「ちょ、初春!落ち着いて!今そんな時じゃ…」


ガシャリ

黒子「――――っ!」

妹達「………」サッ

佐天「………!!」

初春「………!!」

黒子「…っ、しまっ…」

御坂妹「…良いですね。なかなか感動的で」

佐天「……っ」

御坂妹「それで?いつまでそんな友達ごっこを続けるおつもりですか?」

黒子「…油断しましたね……いつの間に妹達を…」

御坂妹「…いつの間に?その質問はおかしいですね」

黒子「……っ!」


御坂妹「あなた達のまわりには、何人の妹達がいると思ってるんですか?」

御坂妹「正確には…『いつでも』の間違いですよ、白井様」

御坂妹「あなた達の不意をつくことなど、『いつでも』出来る」

黒子「……っ」

一方「…はっ、ちょこまかと動きやがるなァ…」

一方「…なら、テメェら一人一人ぶっ殺して行けばいい話だろ?」

黒子「…待ちなさい」

一方「…あァ?」

黒子「…あなたが今動けば、すぐに初春と佐天さんに危害が及びます」

一方「……ンなもン、俺には関係……」

黒子「……」

一方「……はぁ。わーったよ」

御坂妹「……ふふっ、残念ですね」

御坂妹「ここまで来て、あなたの後輩が殺されようとしているのに、何もできない」

黒子「……」


御坂妹「もう、これで終わりに―――」

黒子「あなたは」

御坂妹「……はい?」

黒子「…自分が追い詰められていることを、まだ自覚されていないのですか?」

御坂妹「……何を言っていらっしゃるのですか?」

御坂妹「私が追い詰められている?…逆でしょう?」

黒子「言ってる意味がわからないということは、つまり、そういうことなのでしょうね」

御坂妹「……何を…言って」

妹達「―――うあああ!!」

御坂妹「………!?」

黒子「…まだわからないですか?」

御坂妹「!……あの……電気は……」

黒子「―――2手、3手」


ビリリ


黒子「学園都市、第三位のレベル5の能力者」


黒子「…『超電磁砲』こと…」


黒子「…御坂美琴」


美琴「……お待たせ」

佐天「…御坂さん!!」

白井「御坂さん!」

黒子「――――そして」

御坂妹「……!?」


トコトコ…


黒子「…20001番目の妹達…」

黒子「…ラストオーダー」


打止「…メリークリスマス」


佐天「ミサカちゃん!」

御坂妹「……っ」

美琴「……さてと」

佐天「…御坂さん…」

美琴「…佐天さん!…ひどい怪我じゃない!」

佐天「あ…あはは。ちょっと、色々ありまして…」

美琴「…佐天さん…私…」

佐天「…?」

美琴「…私ね……あなたに、仮がある」

佐天「……」

美琴「…とっても大きな、仮がね」

佐天「……」

美琴「だから…ちょっと待っててね」

美琴「…利子付きで…返してあげるから」


御坂妹「……お姉さま」

美琴「……」

御坂妹「……怒っていらっしゃるようですね」

美琴「…ふふっ」

御坂妹「……?」

美琴「あんた……何言ってるの?」

美琴「…私は、怒ってなんかないわ」

御坂妹「……え?」

美琴「…私はただ、監禁されて………知り合いをこれだけ傷つけられて……」


美琴「―――ぶちギレてるだけよ」


御坂妹「……!」

美琴「…あんたたちがやってしまったことは、私にも責任がある」

美琴「だから……しっかりとお仕置きをしないとね」ビリリ


御坂妹「…っ」

御坂妹「しかしながら……お姉さま」

美琴「…何?」

御坂妹「…そういうお姉さまも、私と同じようなことをなさったのでは?」

美琴「……」

御坂妹「……1ヶ月前、ここにいる佐天様を抹殺しようとしたのは…」

御坂妹「…他でもない、あなたでしょう?」

美琴「……」

御坂妹「そんなお姉さまなら、私がどんな気持ちか……わかっていただけるのではないですか?」

美琴「……」

御坂妹「あの方を奪われてしまった気持ちが…」

御坂妹「どうしようもない憎い気持ちが……あの時のお姉さまにもあったでしょう?」

美琴「……」

御坂妹「…なら、お姉さまと私は同じ……」

佐天「―――違う!」


御坂妹「…!」

佐天「…御坂さんは…あなたとは、違う…!」

美琴「……佐天さん?」

佐天「…確かに…あなたがやってることと、御坂さんがやったことは、同じようなことかもしれません」

佐天「…初春を惑わし…利用したり……私を、殺そうとしたことや……その動機も」

美琴「……っ」

御坂妹「……」

佐天「……でも御坂さんは、私に一人で向かってきました」

御坂妹「……」

佐天「…あなたみたいに複数で…集団で私を殺そうなんて、考えていない」

美琴「…佐天さん…」

御坂妹「……」

佐天「…1ヶ月前は…最終的には私と御坂さんとの、勝負でした」

佐天「…でも…あなたのは、勝負ですらない」

佐天「ただの一方的な暴力で解決しようとする……猟奇的な考えしかしてない」


御坂妹「……黙ってもらえますか?」

御坂妹「人を殺すのに、やり方など関係ありませんよ。…それに…」

御坂妹「あなたのような人に、とやかく言われる筋合いはない」

佐天「…それでも…あなたは御坂さんとは…違う」

御坂妹「…黙れと……!」ガシャリ

打止「…待って」

御坂妹「…!」

打止「…怒っちゃ、いけないと思うってミサカはミサカは言ってみたり」

佐天「…ミサカちゃん…」

打止「…久しぶりだね、お姉ちゃん」

佐天「…良かった…無事だったんだね」

打止「うん!ミサカはミサカは大丈夫!…それより、あなたの方が…」

佐天「…あ、私は…心配しなくていいよ。もう、血も止まったし…」

打止「……」

打止「……マフラー」


佐天「…え?」

打止「……返すね?」

佐天「…え…ミサカちゃ…」

打止「…よいしょ……これでよし」

打止「…やっぱり、このマフラーはあなたが着けてた方が似合うの」

佐天「…ミサカちゃん……ありがとう」

打止「ううん。いいの……ただ」

佐天「……?」

打止「…ミサカはまた、たこ焼き食べさせて欲しいの」

佐天「…!」

打止「…一緒に、また食べたいの」

佐天「…うん。約束…したもんね」

打止「えへへっ、ありがとう」

黒子「出費がかさみますわね、佐天さん」

佐天「あはは……望むところです」


黒子「…ふふっ……さて」

黒子「…何か言いたいことでもありますか?」

御坂妹「……」

黒子「…ご覧のように…こちらには、レベル5の能力者が二人と……ラストオーダー」

黒子「そして、あなたが最後に使おうとしていた初春も、取り返しました」

御坂妹「……」

黒子「…負けです」

黒子「あなたの、負けですよ……妹達」

御坂妹「……ふっ」

黒子「……」

御坂妹「…私の負けですって?」

御坂妹「冗談を言うのはやめてください」

黒子「……」


ザッ

打止「…うわっ」

妹達「動かないでください」

佐天「…!ミサカちゃ…」

妹達「…あなたもです」ガシャ

佐天「……!」

一方「……チッ」

美琴「…(レールガンで…)」

御坂妹「―――お姉さま」

美琴「…!」

御坂妹「申し訳ありません。あなたにも動かれるとやっかいですので、そこでじっとしていてもらえますか?」

美琴「……っ」

御坂妹「……同じことの繰り返しですよ、白井様」

黒子「……」


御坂妹「…あなたは私達の負けだと言いますが…」

御坂妹「…いくら強い駒を用意したところで、その駒自体は取れなくとも…」

御坂妹「…その駒の『弱味』はいつでもこちらで握ることができる」

黒子「……」

御坂妹「私達が追い込まれることなど…ありえないんですよ」

黒子「………そうですか。それは仕方ありませんね」

御坂妹「……」

黒子「では、先に一つご確認しておきたいことがございますので、よろしいですか?」

御坂妹「…何でしょう?」

黒子「……1ヶ月前」

黒子「…お姉さまに、『マフラーをプレゼントすればいい』と言ったのは………あなたですか?」

佐天「(…え…)」

美琴「……!」


御坂妹「…………そうですが」

黒子「なるほど……では…」

黒子「……あの殿方に『カップル優待券』を渡したのも、あなたですね?」

佐天「……!?」

美琴「……!!」

黒子「…佐天さんに聞いた話では…上条当麻がその券を入手したのは…」

黒子「…『道を歩いていたら、誰か知らない人に渡された』ということです」

御坂妹「……」

黒子「…お姉さまによれば、あの券はなかなか手に入らないものだったようですが…」

黒子「…そんなものを、わざわざ道を歩く見ず知らずの人に、果たして貰える物なのでしょうか」

御坂妹「……」

黒子「…なら、その券を渡した人物というのは…」

黒子「もしかしたら、何か意図があって、上条当麻にその券を渡したんじゃないかと思いましてね」

御坂妹「……ふふっ、お得意の推測ですか?」

黒子「……」


御坂妹「………私が、渡しましたよ」

佐天「…!」
美琴「…!」

御坂妹「何故だかわかりますか?…佐天様とお姉さま様」

美琴「……あんた、まさか…」

御坂妹「…私は…上条当麻様のお気持ちが、わかっていました」

美琴「…!」

御坂妹「あの方の傍にいるうちに、段々とわかってしまったのですよ…」

御坂妹「…その好意が、佐天様に向いているということが」

佐天「…!」

御坂妹「一度は…諦めかけたんですがね」

御坂妹「しかし、どうしても……その好意が私に向かないことが……嫌になりました」

御坂妹「……そこで、同じようにあの方に好意を持っているであろう、お姉さまを……利用した」

佐天「なっ…!」

美琴「……!」


御坂妹「…正確にはお姉さまには私はこう言ったはずですよね?」

御坂妹「『マフラーをプレゼントして、受け取ってもらえなかった場合は、選んでもらえばいい』と」

御坂妹「『彼にもし、1ヶ月以内に好きな人が出来れば……その人にマフラーを渡し…』」

御坂妹「『…もし、それが出来なければ……マフラーを返してもらって、お姉さまを選んでもらえばいい』と」

美琴「……」

御坂妹「結果は、最初からわかっていましたからね」

御坂妹「…あの方は、きっと佐天様にマフラーを渡すだろう、と」

美琴「……っ」

御坂妹「…そして、お姉さまは、あるファミレスの券を手に入れた」

御坂妹「…それが、例の限定の『優待券』」

佐天「…!」

御坂妹「…当然、渡すであろう相手は決まっている」

御坂妹「…しかし…当然、彼が断るであろうこともわかっていました」

美琴「……」

御坂妹「なぜなら…私が彼に……既に券を渡していたからです」


佐天「……!」

黒子「……それは、あなたの正体がバレないように渡したのですか?」

御坂妹「ええ…変装は結構得意なもので」

御坂妹「…そしてその券と、マフラーを持った彼が行き着く先……そこに、佐天様がいるのも、わかっていました」

佐天「……!」

御坂妹「…もう、お分かりですよね?」

御坂妹「そこからは、負の連鎖の繰り返しです」

御坂妹「…マフラーを佐天様に渡したこと、佐天さんと一緒に優待券を使ったこと…」

御坂妹「…それに対してのお姉さまの佐天様への嫉妬。そして、嫉妬から憎悪に、憎悪から殺意に…」

御坂妹「…あのように、お姉さまが狂ってしまわれることも……わかっていました」

佐天「……!!」

美琴「……あん…た…っ」

御坂妹「…お姉さまには…佐天様をあのまま消し去っていただこうと思っていたのですよ」

佐天「…!」

御坂妹「…お姉さまが佐天様を亡き者にしてしまえば……あの方がそれを知れば、お姉さまのことを、あの方は当然許すことはないでしょう」


美琴「……」

御坂妹「…そうすれば、後は傷心の彼を、私が奪ってしまえば…」

御坂妹「…私の望みは、叶えられたんですよ」

佐天「…なんて…こと…」

美琴「…っ」

御坂妹「しかし…佐天様は生きていた。…それは、予想外でした」

佐天「……」

御坂妹「…腹が立ちました」

御坂妹「…計画通り行けば、もう存在すらしていない佐天様は生きていて……更には、お姉さまと和解までしてしまった」

御坂妹「…そして、当然のように、彼と付き合い始めた」

佐天「……」

御坂妹「…こんな事実を知って……私が…黙っているとでもお思いですか?」

黒子「…それであなたは、今日のこの日までに……お姉さまや打ち止めさんの監禁…」

黒子「…佐天さんと最も身近にいる友達の初春の洗脳といった計画を企て……自分の手で、佐天さんを抹殺しようとしたと?」

御坂妹「…正解です」


御坂妹「…ああ、それと。お姉さまを今回監禁していたもう一つの理由ですが…」

黒子「……?」

御坂妹「…元々私は……佐天さんだけでなく、お姉さまといったライバル全てを…」

御坂妹「―――順に抹殺して行こうと考えていた」

黒子「な…!」

美琴「……!!」
佐天「…!!」

御坂妹「…もちろん、入れ替わったのはあなた達を監視するという目的がありましたが…そんなもの、後付けに過ぎません」

御坂妹「そしていずれは……その関係者であるあなた方も、同じように始末しようと考えていましたしね」

黒子「……とことん、狂ってますわね」

御坂妹「…ふふっ、言ったでしょう?」

御坂妹「私には、全てを犠牲にしてでも手に入れたい物があると」

黒子「……そんなことを……あの方が、許すとお思いですか?」

御坂妹「……最初から許して貰おうとなど、思っていません」

御坂妹「…どちらにしろ、あなた方にはここで死んでいただきますから」


黒子「……はぁ」

黒子「あの時のお姉さまと同様…。あなたも、冷静に考えられる精神を既にお持ちになっていらっしゃらないようですね」

御坂妹「……いいえ、私は冷静です。冷静に考えた上で言っているだけのこと」

御坂妹「…今さら…これ以上何を…」

黒子「…み……です」

御坂妹「……はい?」

黒子「『詰み』です」

黒子「言ったでしょう?『駒』は、揃っていると」

御坂妹「…何が…」

黒子「『王将』を詰むための布石は…もう既に打ってあります」

御坂妹「……今さら何を言って…」

黒子「一つ一つ、自分の駒の行く先を読み…一つ一つ、その駒を進めていく」

御坂妹「……」

黒子「そして…、じわじわと……尚且つ、確実に…」

黒子「…相手に悟られないように、動きを奪う」


御坂妹「…何をおっしゃっているのですか?」

黒子「ふふっ、いえいえ…。ただ……困っているのですよ」

御坂妹「……?」

黒子「…いつまで経っても……自分が完全に詰まれていることを、認めようとしない、わがままな『王将』がいらっしゃるので」

御坂妹「…っ、なにを」

黒子「あなたの敗因を言っておきます」

御坂妹「――――?」

黒子「…たかが」

黒子「『たかが一万人程度』で……私達に勝とうなどと、考えたことですよ」

御坂妹「…なっ…」


黒子「―――最後の一手です」

御坂妹「――――!」


「…こんなとこでクリスマス会か?」


―――『王将』を詰ませる


「…ったく、こっちは彼女に待ちぼうけ食らってよ…」


―――最後の一手


「一人でたこ焼き買ってるって言うのに…」


―――その駒


「…俺を差し置いてクリスマスパーティーとは…」


―――その名を


上条「…随分な扱いじゃねーか」


黒子「―――『幻想殺し』の…上条当麻と申します」


御坂妹「―――!!」

佐天「―――上条さん!!」

美琴「あんた…!」

一方「…テメェ…」

初春「……上条さんっ」

打止「やっと来たの!」


上条「おう、皆さんお揃いで」

上条「…それにしても、えらい大所帯だな、このパーティー会場は」

佐天「上条さん…!」

上条「佐天さん……これまた、ひでぇ怪我じゃねーか」

佐天「…あ、いえ…大丈………あ……れ…?」フラッ

上条「…おっと」ポスッ

初春「佐天さん!」

佐天「…あ…………」クタッ


初春「佐天さん!!佐天さん!!」

黒子「大丈夫…眠っただけですわ。直に救護もきます」

上条「おまえな……携帯で俺を呼び出したかと思えば……佐天さんはこの様だし…」

上条「……おまけに、悪い話も立ち聞きしちまったし…」

上条「…一体どういうことだ?」

黒子「…そういうこと、ですわ」

上条「……はぁ。言うと思ったけどな」

一方「……テメェ」

上条「…おう、おまえか。何してんだこんなとこで」

一方「俺はテメ…」

打止「私達はそのお姉ちゃんを助けに来たの!!ってミサカはミサカは言ってみたり!」

上条「…へぇ。そうか」

打止「うん」

上条「…ありがとな」ナデナデ

打止「…えへへ」


一方「……おい」

上条「ん?なんだ?おまえも頭撫でて欲しいのか?」

一方「…っざけンなテメェ!誰のせいで俺たちが…」

上条「…悪かったよ」

一方「…っ」

上条「…ホントに、すまなかった」

一方「……はっ。謝って済むンなら、俺はこンなに苦労してねーよ」

上条「…はは、いやいや…それにしても…」

一方「……?」

上条「……あほ毛か…」

打止「…?」

上条「……なるほど、ね……やっぱ、俺にも関係あることだったんだよな…」


美琴「……あんた」

上条「…ようビリビリ。久しぶりじゃねーか」


美琴「……来るのが、遅いわよ…」

上条「……知らなかったか?主役は遅れて現れるもんだぜ」

美琴「……っ、あんた」

上条「…わかってるよ」

美琴「……」

上条「……わかってる」

上条「……だから、ちょっと待ってろ。…すぐ、片付けるからよ」

美琴「……バカ」


御坂妹「……」

上条「……よう」

御坂妹「……」

上条「…クリスマス、楽しんでるか?」

御坂妹「……はい」

上条「そりゃあ良かった」


御坂妹「……聞いていたんでしょう?」

上条「…何のことだ?」

御坂妹「…私が…お姉さまを利用したこと」

上条「……」

御坂妹「…初春様を利用して佐天様を、2度も殺そうとしたこと」

上条「……」

御坂妹「…聞いていたんでしょう?」

上条「……」

御坂妹「……あなたは、私を……」

上条「…ははっ」

御坂妹「……!」

上条「馬鹿だなぁ、おまえは」

御坂妹「……」

上条「――くだらねぇテメェの妄想で勝手に進んだ話になんざ、俺は興味ねぇーんだよ」


御坂妹「……!」

上条「んなことより……さっさと始めようぜ」

御坂妹「…え…?」

上条「何ボーッとしてんだ?」

御坂妹「……?」

上条「―――戦えよ」

御坂妹「―――!」

上条「俺と、戦え」

御坂妹「……何を…!」

上条「テメェこそなんだ?散々俺の知り合いを妹達とぐるになってボロボロにしたくせに…」

上条「…俺とはやれないってか?」

御坂妹「…当たり前です…あなたは私の…」

上条「…ふざけんな」

御坂妹「…!」

上条「今、俺はテメェの大好きな喧嘩をわざわざ買ってやってんだよ」


御坂妹「…っ」

上条「さぁ―――その銃で、俺の心臓を貫いてみろよ」

御坂妹「……っ!!」

上条「やってみせろよ」

上条「……佐天さんの体にやったように」

御坂妹「……それ…は…っ」


上条「―――やれってんだろうがァ!!」


御坂妹「―――!!!」

上条「……」

御坂妹「……っ、……うっ……」

上条「……」

御坂妹「……できま……せん」

上条「……」

御坂妹「……あなたを撃つことは……できない…」


御坂妹「……それだけは……でき……ない…」

上条「……」

御坂妹「……っ…」

上条「……あー、すっきりした」

御坂妹「………え?」

上条「…なぁ、聞いてくれよ」

御坂妹「……?」

上条「…今日さ、クリスマスなんだぜ?」

御坂妹「……」

上条「…なのに、待ち合わせの時間を過ぎても佐天さんは来ねぇし……たこ焼きが手に落ちて熱いし…」

上条「…なんでか佐天さんから電話で今さら愛の告白されるし……ツリーは点灯しちまうし…」

上条「…なんか路地の方に来いとか、意味のわからん電話来るし…」

御坂妹「……」

上条「…んで、着いてみたら……大勢の妹達に囲まれて…」

上条「…青白い顔した佐天さんが…クリスマスパーティーやってんだ」


上条「…全くよ…。…彼氏放ったらかして、何やってんのかねぇ……このお嬢さんは」

佐天「………スー…スー…」

御坂妹「……」

上条「…情けねぇんだよ」

御坂妹「…え?」

上条「……こうなる前に、助けてやれねぇ自分が」

御坂妹「……」

上条「…前も、同じなんだよな」

上条「…俺の知らない所で、みんな傷付いてて…気付いた時には、もう遅い」

御坂妹「……」

上条「…もう、やめにしてーんだよ。……こんなくだらねぇ……馬鹿みてぇな話を」

御坂妹「……」

御坂妹「…あなたは」

上条「…ん?」

御坂妹「どうして…彼女を選んだのですか?」


御坂妹「…正直に申し上げまして、あなたが誰か一人を自分の恋人として選んだことが、驚きです」

上条「……」

御坂妹「今まで誰の好意にも見向きもしなかったあなたが……なぜ、佐天様のような方をお選びになったのか」

御坂妹「…私は、それだけが…わかりません」

上条「……」

御坂妹「…お答え下さい」

御坂妹「…その答えを聞かない限り、私は納得することができません」

御坂妹「…あなたに……佐天様でなければいかなかった理由…」

御坂妹「…お答えいただけなければ、私はまた同じことを……繰り返してしまう」

上条「……はぁ」

上条「…また、くだらねぇことを言いやがるな」

御坂妹「……」

上条「…俺が選んだとか選らばなかったとか……んなことは、さして重要なことじゃねーよ」

御坂妹「……」

上条「ただ…俺には佐天さんが必要だっただけだよ」


上条「そこに理由なんてないし、選んだも何もない」

上条「最初から……決まってただけだよ」

御坂妹「……」

上条「納得できねーだろ?」

御坂妹「……」

上条「美琴にも言ったが…最初からおまえを納得させられるなんて、俺は思ってない」

上条「…それでもなお、お前が俺の周りの知り合いを傷付け続けるってんなら…」

上条「…俺はそのたびに、こうやってテメェの前に立ち塞がってやるよ」

上条「何度でも何度でも…な」

御坂妹「……で、でも…」

上条「―――その幻想を」

上条「……なーんてな」ポンッ

御坂妹「…!」

上条「…頭撫でられると、落ち着くだろ?」ナデナデ

御坂妹「……!」


上条「…あったけーだろ?」

御坂妹「……」

上条「…今回だけ……今回だけ、許してやる」

御坂妹「……っ」

上条「…だから、もう、こんなことしちゃ……ダメだぜ?」

御坂妹「………っ」


…フワ …フワ


御坂妹「――――!」

…なにか…降ってきてる…?

空から……まさか…

これ…は……


………雪……?


…フワ …フワ


……この白さ……この輝き…

たった10%しかない降水確率で……降ったと言うのですか…?

…そんな……そんなことが……


上条「……綺麗だな」

御坂妹「……!」

上条「……本当に、綺麗だ」

御坂妹「……」


……そうですか

…なんとなく……なんとなく、わかった気がします

あなたが、彼女を選んだ理由が…


御坂妹「……私は」

上条「……?」

御坂妹「私達は……もう、今後あなたたちに危害を加えるようなことはしません」

御坂妹「……と、ミサカは……あなたと、そして……」

佐天「……スー……スー…」

御坂妹「……あなたに、約束します」

上条「……ああ」

上条「……ありがとな」

御坂妹「………はい」


御坂妹「……」


……佐天様

あなたは、この雪の白さに似ている

あなたのその…白くて淀みの無い気持ち

彼が、見とれるような、そんな……この雪の白さに……


佐天「……スー……スー…」

御坂妹「ふふっ…」

御坂妹「……佐天様」


あなたの、勝ちです




とりあえずこれで終わりです

投下が長くなってしまったり、諸々の違和感など…マジで申し訳ないです。これから精進します

でもスレ立てた時、支援や保守してくれもらえるなんて思ってなかったから、本当に嬉しかった

ありがとう。色々反省点は多いが、また縁があればよろしく頼む

そんでは、ここまでありがとう

乙サンクス

後日談か…。あんま考えてなかったな。

多分、今から書いてもそのころにはスレ落ちてるんじゃないかな

保守してもらうのも悪いし。つか、落としてくれw

あと、この作品の次回作は今のところ考えてない。
一度、お正月にちなんで姫神ヤンデレ化しようかと思ったが、それも過ぎ去った思い出

今は全く別のほのぼのギャグSSを執筆中

んでは今から仕事なんで、失礼しますー

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