夏奈「藤岡がプロポーズしてくれない……」(443)

春香「えっ?」

夏奈「あたし、もう25だよ……」

春香「いや、えっ?」

夏奈「10年近く一緒に遊んでるのにさ……」

春香「いやいや、えっ?」

夏奈「あいつ、あたしのこと好きじゃないのかな……」

春香「いやいやいやいや」

春香「えっ?」

夏奈「えっ」

春香「あの、一応聞いておくわよ?」

春香「付き合ってたの、あなたたち?」

夏奈「えっ」

夏奈「なんだ、まさか別の女と……」

春香「あ、そうじゃないの」

春香「むしろね、藤岡くん、よく十年も諦めずに夏奈にアプローチかけてるなあ」

春香「と、千秋といつも話してたの」

春香「もしかして両想いだったの?」

夏奈「なにをいまさら」

春香「えっ?」

夏奈「えっ」

春香「あの、キスは?」

夏奈「したことないぞ?」

春香「デートは?」

夏奈「誘ってくれたことない」

春香「本人から直接好きだと言われたことは」

夏奈「ない」

春香「……あのね、夏奈、ちょっと正座しなさい?」

夏奈「なんだなんだ!」

夏奈「急に正座って」

春香「あの春香、ちょっと残念だけど」

春香「それ多分、プロポーズどころか付き合っているという状態とは言えないと思うの」

夏奈「な!ハルカなんてことを!」

春香「黙って聞きなさい?」

夏奈「……はい」

春香「本人同士の問題だから私が言うのはいけないと思ってたけど」

春香「彼、多分いまだに片思い状態だと思ってるわよ」

夏奈「そんなバカな!」

春香「バカな話なの」

春香「だって、いつも告白しようとしては変な勘違いされて最後はあなたに殴られてるもの」

春香「いつも藤岡くんがベランダで泣いてるのを見てると心が痛くて…」

夏奈「……な、ななな」

春香「まずは『好きだ』の三文字を聞いただけで『隙だらけだ!』と自動変換するのをやめることからね」

夏奈「そんなバカな!」

夏奈「全部私のせいだと言うのか……」

春香「いや、まあ押しが弱すぎる彼にも責任はあるとは思うけど……」

春香「やんわりとこのことを聞いてみたら、『俺は南と飯が食えるだけで幸せなんです』とか言うし」

春香「この十年でこんな感じで告白らしい告白をしたのが二回しかないらしいし」

夏奈「二回!」

夏奈「二回も!?」

春香「……そうね、二回も、ね」

春香「あのね、私たちはいいのよ?」

春香「彼に今すぐこの家に入ってもらっても」

春香「だって、藤岡くん、あなたの分の食費とか洋服代まで払ってくれてるもの」

夏奈「そうだったのか!?」

春香「いや、だってあなた働かないから……」

夏奈「し、知らなかった……」

春香「こんなに尽くしてるのに本人に気づかれてないなんて…」

春香「あのね、夏奈」

春香「もし藤岡くんが別の女の子を好きになっちゃったり」

春香「仕事の事情で遠くにいっちゃったりしたらどうするつもりだったの?」

夏奈「心配しなくてもその可能性はない!」

春香「その自信は一体どこから…」

春香「あのね、夏奈」

春香「今だから言うけど」

春香「一時期、千秋が彼のことを好きだったってことに気づいてた?」

夏奈「……」

夏奈「ええええええええええええええええええええ!?」

春香「いや、もう5年も前のことよ?」

春香「あの娘、すっごい悩んでたんだから」

春香「毎晩、あの娘泣きながら私のところに相談にきてね」

春香「最後は『あのバカを支えられるのは藤岡しかいないから』って諦めたのよ」

夏奈「え、ええっ」

夏奈「なんか最近千秋の奴、あいつの膝に乗らなくなったなあと思ったけど、そういうことだったのか…」

春香「多分、あなたより彼のことを好きになるのは早かったんじゃないかしら?」

夏奈「ご、ごめんよう!ごめんよう!千秋!」

春香「反省した?」

夏奈「反省した」

春香「いや、まあ反省した?と聞くのもちょっと変な気がするけど」

夏奈「反省した!」

春香「はいはい」

春香「とにかく、今日も藤岡くんはうちに来るのよね?」

夏奈「おう」

春香「……何をすべきかわかってるわよね?」

夏奈「えっ?何を?」

                   _ _     .'  , .. ∧_∧
          ∧  _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ '     (    )
         , -'' ̄    __――=', ・,‘ r⌒>  _/ /
        /   -―  ̄ ̄   ̄"'" .   ’ | y'⌒  ⌒i
       /   ノ                 |  /  ノ |
      /  , イ )                 , ー'  /´ヾ_ノ
      /   _, \               / ,  ノ

春香「グーが出たわ」

春香「この28年間、ついぞ使ってこなかったグーがでたわよ」

夏奈「いたひ……」

春香「あのね、今日こそあなたたちは両思いになるの」

春香「付き合うの、婚約するの」

春香「今日中に!」

夏奈「そ、それは………恥ずかしい………」

春香「……婚期逃すわよ?」

夏奈「そ、それは……」

夏奈「婚期の話をするなら」

夏奈「春香だって……」

春香「ニッコリ」

夏奈「すんませんした」

春香「私はね、とにかくあなたと千秋が先に幸せになってくれればいいの」

春香「藤岡くんだったら私も千秋もなんの文句もないし」

夏奈「春香……」

夏奈「自分の婚期は……」

                   _ _     .'  , .. ∧_∧
          ∧  _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ '     (    )
         , -'' ̄    __――=', ・,‘ r⌒>  _/ /
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       /   ノ                 |  /  ノ |
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      /   _, \               / ,  ノ

春香「ほどほどにしとかないと次は黄金の左が飛ぶわよ」

夏奈「すんませんした」

春香「し、仕事が忙しいのよ」

春香「会計士の仕事で忙しくて男のことなんか……」

夏奈「あー、はい、そっすね」

春香「飛ぶわよ?」

夏奈「すんませんした」

春香「とにかく、今日中にあなたか話を切り出すのよ?」

春香「千秋と私で口裏を合わせて」

春香「あなたと彼の二人きりの二人きりの時間を作るから」

夏奈「お、おぅ……」

春香「わかった?」

夏奈「……あの、春香、私、大丈夫かな?」

春香「もう、どうしたの急に弱気になって」

夏奈「いや、私、藤岡に愛想つかされたり、してないかなあって……」

夏奈「ずっと酷いことしてたんだろ、藤岡に」

春香「まあ、ね」

春香「今日でチャラになるわよ」

夏奈「でも……それに、ほら、私働いてないし……」

春香「ああ、それは働けとしか……」

夏奈「春香ぁ!」

春香「あーよしよし、泣かない泣かない」

ピンポーン

夏奈「ビクッ」

春香「あら、そういえばもうこんな時間なのね?」

夏奈「藤岡、藤岡なのか!?」

春香「いつものことじゃない」

夏奈「だって……」

春香「もう急にモジモジして」

夏奈「だってえ……」

春香「あなた今何歳?」

夏奈「えっと……」

春香「ほら、両手だけじゃなく、足の指も使って」

夏奈「25歳……」

春香「大人なんだからちゃんとしなさい」

夏奈「あうあうあう」

ピンポーン

春香「ほら、出なさい」

夏奈「わ、私がぁ!?」

春香「そういう日なんだから」

夏奈「そ、そういう日って……」

夏奈「わ、わかったよ……」

夏奈「……はぁ」

夏奈「……」

ピンポーンピンポーン!

夏奈「ビクッ!」

夏奈「はあ……」

ガチャッ

千秋「おねえさまぁ!」

ガバッ

夏奈「ぎゃあああああああああああ!」

千秋「……えっ?」

夏奈「………っ!」

千秋「なんだお前か」

千秋「珍しいな、お前が出てくるなんて」

夏奈「………」

千秋「なんだ、どうした石のように固まって?」

夏奈「お、おまえ、おぼえてろよ……」

千秋「おぼえてろって……」

藤岡「あ、春香さん、今戻りました」

春香「あら、千秋、藤岡くん、お帰りなさい」

春香「いつもごめんね、千秋を大学から車で送ってもらって」

藤岡「あ、いえ、この時期は女の子一人では夜道が危ないんで」

藤岡「ちょうど仕事帰りですし」

千秋「もう22だぞ!」

藤岡「まだ22でしょ」

千秋「むう……」

藤岡「……どうした南、固まって?」

夏奈「な、ん、で、も、な、い」

藤岡「……?」

藤岡「そう」

夏奈「パクパクパクパク」

春香「……やれやれ」

藤岡「おーい、南」

夏奈「………」

藤岡「みーなーみー」

夏奈「………」

藤岡「……ほんとに大丈夫か、南?」

夏奈「……ふ、ふじおかは」

夏奈「だんなさまみたいだな!!!」

夏奈「……」

一同「………」

藤岡「あ、えっ……」

藤岡「あ、ありがとう……」

夏奈「……春香ぁ!」

春香「ちょっと頭が痛く……」

千秋「???」

千秋「えーと、ハルカ姉さま」

千秋「あのバカに一体なにが……」

春香「ああ、あのね」

ゴニョゴニョ

千秋「えっ!?」

春香「そういうことなの」

千秋「どういう反応をすればいいか……」

春香「あら?」

春香「私たちにできることは見守ることだけよ?」

千秋「なんでそんなに楽しそうなのですか、ハルカ姉さま?」

春香「うふふ」

春香「もう楽しまなければ損だと気づいたの」

千秋「はあ……」

藤岡「南?」

藤岡「ほら、こんなとこで突っ立ってると本当に風邪引くぞ」

ギュッ

夏奈「ひゃああああああああっ!」

藤岡「!?」

夏奈「手、手ぇにぎんなあ!」

バッ!

藤岡「わっ、ご、ごめん!」

ダッダッダッ

夏奈「はぁはぁはぁ……」

夏奈「どうしよう、春香ぁ……」

夏奈「はずかしくてとけちゃう……」

春香「うふふ、ね、面白いでしょ?」

千秋「確かに……」

春香「あのね、夏奈」

春香「こんなとこで恥ずかしがってどうするの?」

春香「……今日はこれからもっと恥ずかしいことするんでしょ?」

夏奈「ええっ!?」

ダッダッダッ

夏奈「ふ、藤岡っ!」

夏奈「私には、はずかしいことするのかっ!?」

藤岡「ええっ!?」

藤岡「はははははははずかしいこと!?」

藤岡「そんなおれたち、まだ、えっ、ちょ、お、おれ……」

藤岡「おおおお、おれ、お、おれお、お、おれたち……」

藤岡「は、春香さん!」

春香「あはは」

春香「可愛いなあ、この子たち」

千秋「さすがだ、ハルカ姉さま……」

夏奈「こ、こたえろぉ!」

夏奈「す、するのか、しないのかっ!」

藤岡「したい!」

藤岡「いや、しない!」

夏奈「そうか!」

夏奈「はいれ!」

藤岡「え、あ、うん……」

バタンッ

藤岡「お、おじゃまします……」

春香「あら、そんなに気を使わなくても『ただいま』でいいのよ?」

春香「藤岡くん、もううちの家族みたいなもんなんだから」

夏奈「そ、そうだぞ!」

夏奈「春香の言うとおりだ!」

夏奈「『ただいま』と言え、藤岡!」

藤岡「きょ、強制!?」

藤岡「えと……た、ただいま」

夏奈「……ボッ!」

藤岡「ちょっ、南!?」

春香「ほら、夏奈、顔真っ赤にしないで」

春香「『ただいま』といわれたら『おかえりなさい』でしょ」

夏奈「コクコクコクコク」

夏奈「お、お、お、お……」

夏奈「おかえりなさい……」

夏奈「………あなた」

藤岡「えっ?」

夏奈「……ふ」

夏奈「藤岡あああああああああああっ!」

藤岡「ちょ、痛い痛い痛い痛い!」

春香「もう、あなたたち、玄関で暴れちゃだめよ」

春香「もういい歳でしょ?」

二人「すんません」

春香「二人ともいま何歳?」

二人「えっと……」

春香「ほら、足の指も使って」

二人「……25歳」

春香「……可愛いなあ」

千秋「いや、これは可愛いというか……」

春香「まあ、いいわ」

春香「藤岡くんもおなかすいたでしょ?」

春香「じゃあ、千秋、準備しましょうか?」

千秋「はい、姉さま」

夏奈「ちょっと!」

夏奈「藤岡と二人きりにするのか!?」

春香「あら、二人きりは嫌?」

夏奈「!?」

夏奈「!?」

夏奈「ブルブルブルブル!」

夏奈「嫌とは言ってないけど……」

藤岡「あの南?」

藤岡「もしかして俺と二人きりになるの、嫌だったりするか?」

夏奈「ち、ちがうぞ!」

夏奈「……い、嫌なわけないだろぉ」

藤岡「そ、そうか?」

藤岡「な、ならいいんだ……」

二人「……///」

春香「じゃあ、千秋と準備してくるから」

春香「お茶を入れたからそれを召し上がって待っててね?」

藤岡「あ、はい」

藤岡「じゃあお言葉に甘えて」

春香「どうぞ」

夏奈「……コクコク」

春香「あ、そうだ」

春香「藤岡くんってお赤飯は食べれたっけ?」

夏奈「ブバッ!?」

藤岡「ちょっ、南っ!?」

二人「………」

夏奈(藤岡と二人きり……)

藤岡(南と二人きり……)

二人(な、何を話そう……)

夏奈(と、とりあえず夕食の話を……)

夏奈(ええと、赤飯、赤飯だな……)

夏奈(よし!)

夏奈「あの、藤岡?」

藤岡「な、なに?」

夏奈「お、お、おまえは、お、お……」

夏奈「おまめさんはすきか!?」

藤岡「おまめさん!?」

藤岡「………好きだっ!」

夏奈「そうかっ!」

二人「……///」

夏奈(……もしかして、いますごい質問をしちゃったか?)

藤岡(す、凄い質問をされた……)

夏奈(いやらしいおんなだと思われたらどうしよう……)

藤岡(いやらしい男だと思われたらどうしよう……)

二人(どうしよう……)

二人「……///」

夏奈「……ふ、ふじおか!」

藤岡「はいっ!」

夏奈「えと、スーツあつくないか?」

夏奈「ほら、きたままだし……」

藤岡「あ、うん、そういえば」

藤岡「脱いでもいい?」

夏奈「も、もちろん!」

藤岡「じゃあ、お言葉に甘えて……」

ぬぎぬぎ

夏奈(藤岡のYシャツ姿……したがすけてる……)

夏奈(よくみると、けっこう鍛えてるんだな……)

夏奈(………)

夏奈「わああああああああああっ!」

夏奈「……な、なにをかんがえとるのだ!わたしは!」

藤岡「どうした南!?」

藤岡「あ、そうだ」

藤岡「皺になると困るから、スーツをかけるハンガーを借りていい?」

夏奈「えっ?」

夏奈「あっ、いや、いいぞ!」

夏奈「ほら貸せ!私がかけてきてやる!」

藤岡「え、いいのか?」

藤岡「じゃあ、お言葉に甘えて」

藤岡「ありがとな、南」

夏奈「……」

夏奈「……ふじおかぁ!」

藤岡「痛い、痛い!だから殴るなっ!」

ガラララッ

夏奈「ふうっ」

夏奈「……うう、さんざんだ」

夏奈「はあ、もうどうにでもなれ……」

夏奈「ええと、そのまえにハンガー、ハンガー、と」

夏奈「……ハンガーってなんだっけ?」

夏奈「はあ……どうしろというんだ……」

夏奈「……」

夏奈「藤岡のスーツか……」

夏奈「……」

ギュッ

夏奈「あったかい……」

夏奈「……クンカクンカ」

夏奈「……あせのにおいがする」

夏奈「クンカクンカ」

ガララッ!

夏奈「わああああああっ!」

千秋「……なにをやっとるのだ?」

すまねえ、頭が半端なく痛くなってきた……
ちょっと離脱します……
明日の夕方ごろには確実に戻るので、お待ちを

夏奈「な、なにしにきたああああああああああ!」

千秋「栓抜きを取りに……」

千秋「いや、待て、質問を質問で返すな」

夏奈「う、うるさい!」

夏奈「せ、栓抜きがなんでタンスの部屋にあるんだよ!」

千秋「さあ?誰かが置き忘れたんじゃないか?」

夏奈「うう…」

千秋「で、何をしていたのだ?」

夏奈「……あうあうあうあう」

千秋「?」

千秋「なんなんだ一体……」

夏奈「あ、あの千秋……」

千秋「なんだ?」

夏奈「ハンガーとってくれ……」

千秋「目の前にあるだろ」

夏奈「え、これ?」

千秋「いやそれだが」

夏奈「……」

びよーん

千秋「こら!形を変えるな!」

夏奈「やれやれ……」

千秋「こっちがやれやれだ……」

夏奈「はあ……」

千秋「なんだ、お前ため息をついて」

夏奈「なあ、千秋」

夏奈「私、いいおよめさんになれるかなあ」

千秋「……キモっ」

夏奈「キモい言うな!」

ガラガラ

藤岡「あ」

藤岡「ありがとうな、南」

藤岡「随分遅かったけど、どうした?」

夏奈「自分の将来を悩んでた」

藤岡「は?」

夏奈「いやいや、なんでもないなんでもない」

夏奈「気にするな、気にしなくていいんだぞ?」

藤岡「はあ……」

藤岡「……」

夏奈「……」

藤岡「あの、テレビでもつける?」

夏奈「お、おう!」


藤岡「……」

夏奈「……」

藤岡「ええと……」

藤岡「なにもやってないな、この時間」

夏奈「お、おう……」

藤岡「ドラマでも観る?」

夏奈「ふ、藤岡が選ぶならなんでも」

藤岡「そう言われてもなあ」

ポチッ

テレビ「いや、だめえ、だんなさまぁ」

プチッ

藤岡「ちょっ、おま」

夏奈「……」

夏奈「……あの」

夏奈「藤岡って何の仕事してるんだっけ?」

藤岡「あれ?」

藤岡「言ってなかったっけ?」

夏奈「聞いたことがなかったし……」

藤岡「ああ、そうだっけ」

藤岡「ええと、南に分かるように説明するには……」

夏奈「ア、アホの子みたいにいうな!」

藤岡「会社の営業」

夏奈「えいぎょう?」

藤岡「ああ、なんというか」

藤岡「お世話になる人に挨拶周りするのが仕事」

夏奈「おせわになる人にあいさつまわり!?」

夏奈「お、お前凄い仕事してるんだな?」

藤岡「いや、凄くはないと思うけど……」

夏奈「あいさつまわりって、もしかして釘バットでか?」

藤岡「あの、どういう想像をしてるの?」

藤岡「いや、そんなんじゃなくて」

藤岡「よろしくおねがいします、とかそういうのだから」

夏奈「よ、夜露死苦!?」

夏奈「ぽろぽろ」

藤岡「ちょ、南、なに泣き出してるの!?」

夏奈「ふ、ふじおかぁ」

夏奈「あんまり私をしんぱいさせるなぁ……」

藤岡「あ、いや、多分そんな南が考えてるようなことは一切してないから!」

藤岡「ほら」

夏奈「チーン!」

藤岡「なんか今日の南やっぱり変だぞ」

夏奈「へ、変?」

藤岡「いや、いつもだったらもっと、なんというか……」

夏奈「なんというか?」

藤岡「もっと凄いというか、もっと荒々しいというか」

藤岡「あ、いや今日の南、元気がないというか」

夏奈「え?」

藤岡「本当体調が悪かったり、熱があるなら無理せずに……」

夏奈「な、なにをいうか!」

夏奈「私はいつだってお熱だぞ!」

夏奈「みくびるな藤岡!私はお熱なんだぞー!」

藤岡「ああ、うん?」

藤岡「……あの、なにに?」

夏奈「あ、いや……」

夏奈「なんでもないっす……」

藤岡「そう」

二人「……」

二人(………)

夏奈(……くっそー)

夏奈(やっぱ私からじゃ切り出せないじゃないかー!)

夏奈(お、男だろ、藤岡!)

夏奈(お前が切り出せよー……)

藤岡「……あの、南」

夏奈「!?」

藤岡「今日、南と会ってからずっと言っておきたいことがあって」

夏奈「な、なんだ」

夏奈(きたか!ついにくるのか!)

夏奈(隙だらけじゃない、「好き」だぞ、わかってるな私)

夏奈(す、すき、すきすきすー、すき……)

夏奈(ううう、頭が……)

藤岡「あの、怒らないで聞いてくれよ?」

夏奈「な!」

夏奈「怒るわけないだろ!」

夏奈「ほら、なんでもこい!」

夏奈「バンと来い!バンと!」

藤岡「お、おう!」

藤岡「あの、南……」

夏奈「なんだ、藤岡……」

二人「どきどき」

藤岡「南……」

藤岡「俺……」

藤岡「さっきから、ずっと南の枝毛がきになって……」

夏奈「アホーーーーーーっ!」

藤岡「ぎゃー!」

藤岡「痛い痛いって!」

夏奈「ばか!ばか!おおばかものっ!

藤岡「怒らないって言ったじゃないか!」

夏奈「言ったけど……」

夏奈「さすがにそれは怒るぞ!」

藤岡「いや、だって、気になるからしょうがないじゃないか」

夏奈「……ふ、ふじおか」

夏奈「ふ、ふえ……」

夏奈「ふああああああああああん!」

藤岡「!?」

藤岡「どうしたんだよ、南!」

藤岡「あの、おなかでも痛くなったか?」

夏奈「ばかっ!」

藤岡「いや、痛いって!」

夏奈「あほっ!まぬけ!へんとーせん!」

藤岡「ええと、唐変木?」

夏奈「う、うわああああん」

藤岡「あいたたたたたたた!」

藤岡「ああもう……」

藤岡「南っ!」

ピタッ

夏奈「あう……?」

藤岡「はぁ……」

藤岡「ちょっと目を閉じて?」

夏奈「な……」

夏奈「なんだ、なにするつもりだ……」

夏奈「いやしいことするのか!するのか!このすかぽんたす!」

藤岡「すかぽんたん?」

夏奈「そ、それだ…」

藤岡「とにかく、ほら、目を閉じて」

夏奈「うう」

夏奈「こうか?」

藤岡「そう」

藤岡「で、次は手を広げて、出してきて?」

夏奈「こう?」

夏奈「こうか!」

バッ!

藤岡「……あの、バンザイじゃないよ?」

夏奈「そうか!」

藤岡「……」

ぎゅっ

夏奈(おお、これ藤岡の手か?)

夏奈(あったかい……)

夏奈「ん?」

夏奈「なんか、手の上に乗ってる」

夏奈「この感じ……」

夏奈「ひよこか!」

藤岡「いや、まあ、大きさ的にはそうだけど……」

藤岡「……よし」

藤岡「目を開けていいよ、南」

夏奈「……あ、あけていいのか?」

藤岡「もちろん」

夏奈「あの、変なことされてないよな、私?」

藤岡「なんかされた感じがする?」

夏奈「いや……」

藤岡「それとも、そんなに俺って信用ない?」

夏奈「まさか!」

藤岡「じゃあ、大丈夫じゃないか」

夏奈「ううう……」

夏奈「………」

夏奈「これは……箱?」

夏奈「ええと」

夏奈「これがどうかしたのか?」

藤岡「あはは」

藤岡「……ちょっと傷つくな」

夏奈「え、ご、ごめん!」

夏奈「でも、この箱に一体何が……」

夏奈「……なんかからんからんする」

藤岡「ふ、振るのはちょっと勘弁してくれ!」

夏奈「おおう」

夏奈「あの、これ開けていいのか?」

藤岡「もちろん」

夏奈「……本当に開けていいのか?」

藤岡「もちろんだって」

夏奈「……」

夏奈「……っ」

パカッ

夏奈「……」

夏奈「これは……」

連投規制食らったから携帯から書く

夏奈「……あの」

夏奈「ほんとに?」

藤岡「見ての通り」

夏奈「だって、こんなの…」

夏奈「私にもさすがにこれはわかるぞ」

夏奈「…これって、指輪だよな」

藤岡「これでも勘違いされたら……」

藤岡「俺、今度こそ南を諦めようと思ってるから」

夏奈「……」

藤岡「答えを聞かせてくれるかな?」

夏奈「……あの、藤岡」

夏奈「私、がさつで、料理もできないし、無職だし…」

夏奈「おとこごころっていうの?」

夏奈「そういうのもまるでわからないし…」

夏奈「…きっと私よりいい女なんてたくさんいると思うぞ」

藤岡「…うーん」

藤岡「あんまりわかんないよ、そういうの」

夏奈「あの、私も、いま、わけがわかんなくてさ」

夏奈「これって…」

藤岡「ほら、南には言葉にしたらダメだと思ったから」

藤岡「ちゃんと形にしようと思って」

夏奈「あ、あう…」

藤岡「あの」

藤岡「もし、これで俺の気持ちが伝わったならさ」

藤岡「南の口から聞かせてほしい」

夏奈「私の口から?」

藤岡「俺の口からじゃ、もしかしたら届かないのかもしれないからさ」

夏奈「私の…口から…」

夏奈「えと、聞きたい?」
藤岡「……うん」

二人「……」

夏奈「…あの」

夏奈「いつからかはちゃんとおもいだせないけどさ」

夏奈「……藤岡は、いつから私のこと好きだった?」

藤岡「はじめて会ったときから」

夏奈「……じゃあ、私もはじめて藤岡にあったときから」

夏奈「私、藤岡のことが」

夏奈「す、す…」

夏奈「す……」

夏奈「すき……」

ガララッ!

千秋「おいばかども、出来たぞ」

千秋「食器出すの手伝え」

夏奈「すきだらけじゃああああああ!」

藤岡「ぎゃああああああ!」

……

春香「……という顛末で」

アツコ「はあ……」

アツコ「おあついことで」

春香「まあ、今回はお互い気持ちは通じあえたみたいだし」

春香「結果オーライ、というとこかな」

アツコ「でもお互いまだ『好きだー』って言えてないんでしょ?」

春香「うん、禁止ワードになってる」

アツコ「めんどくさいなあ」

春香「あはは」

春香「まあ、人生ここからが長いから。」

春香「これからずっと一緒にやってくわけだし」

春香「チャンスはいくらでもあるでしょ」

アツコ「ふぅん」

アツコ「本人たちが幸せならそれでいいけど」

アツコ「ところで、聞くけど」

アツコ「あんた、結婚は……」

春香「……」

春香「…左が飛ぶわよ?」

アツコとマキまちがってる予感

>>336
さ、最後の最後の〆で大チョンボを……



あ、これで終わりです

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