咲「うわぁあああああ!!!来ないでよっ!!」(175)

和「好きです。宮永さん。」

咲「えっ!」

和「私と付き合ってください!」

咲「うん…」


勢いだけで立てたらしい。

夕日が真っ赤に私たちを彩る。
そんな放課後のことでした。
私は今まで胸に秘めているだけだった想いを彼女に打ち明けました。
彼女は戸惑っていたようでしたが頬を染めて「うん…」と言ってくれました。

宮永さん。私があなたを守りますから…。

翌日

咲「原村さん!おはよー。」

そう言って手を振りながら走ってきたのは愛しのマイハニー、宮永さん。
その笑顔を私以外にも見せているのかと思うと、若干心が凍りました。

咲「どうしたの?原村さんボーッとして。大丈夫?」

はっ!私としたことが!宮永さんに心配をかけさせるとは!
ふ…不覚っ!
あ、でも宮永さんの上目遣いがぁあああ!も…萌え死にます…。
早く応答しないと。

和「私はもちろん大丈夫ですよ!さぁ行きましょう宮永さん。」

咲「うん!」

その笑顔に私はまた意識が飛ぶかと思いました。

京太郎「おはよー!和。あ、咲も。」

どこからか現れた須賀君。
もう。私と宮永さんの貴重な時間を奪わないでください!

咲「京ちゃん!おはよー。」

和「お…おはようございます。須賀君。」

なぜか一瞬、須賀君の顔が紅潮したように感じましたけど…気のせいでしょうか。
男の人が頬を赤らめようがどうでもいいので私は気がつかないふりをしました。
まぁ、須賀君は宮永さんを狙っているようには見えませんし、大丈夫でしょう…。

咲「ねぇ、京ちゃん。さっき咲も、って言ったでしょ?『も』は余計だよぅ!」

京太郎「悪い悪い。いや、和の美人オーラが凄すぎてな!あはは」

なんですか!この男…。最低ですね。
宮永さんのほうが私よりずっと輝いているというのに…。
まったく。見る目が無さすぎです!

咲「もう…京ちゃんったら。」

ぷくー、と子供のように頬を膨らませる宮永さん。
あぁ、可愛すぎますよぉおおおお!!

京太郎「でもさ、和はもちろん美人だけど、咲も可愛いよな!!」

和咲「え?!」

宮永さんの魅力についに気付いてしまったの?須賀君は…。

咲(き、京ちゃんが私のことを可愛いって…。可愛いって言ってくれた!嬉しいよ。)

咲(なんでなんだろ。原村さんと二人のときよりずっとドキドキしてる。)

宮永さんは顔を真っ赤にさせて、俯いてしまいました。
モジモジしてるようにも見えます。

咲「き、京ちゃん!ありがとう。嬉しい!」

私も見たことのない照れたような頬笑みを彼に向けた宮永さん。
悔しいです!

京太郎「じゃ、先行くわ。また、放課後な!」

宮永さんはボーっとした表情のまま、須賀君が駆けて行った道を見つめていました。

咲(京ちゃん…)


京太郎(フヒヒ。フラグ立ったな!)


教室

和「宮永さん、須賀君に気があるのでしょうか…」ブツブツ

女子A「ねぇねぇ、原村さん、また独り言いってるよ。」

女子B「うわー、超キモいんですけどww」

女子A「関わるとロクなことなさそうよね。」

女子B「まじありえねーしww」

和「宮永さんは私の嫁…宮永さん。ダイスキ。宮永さん…」ブツブツ

女子A「宮永…?嫁?なにコイツ、レズなの?!」

女子B「しかも相手は宮永かよwwあの子いい子なのに可哀想だなww」

タコス「のどちゃーん!おっはようだじぇ!」

女子たち「うわ、片岡かよ…。行こ行こ。」

和「あ、優希。おはようございます。」

タコス「のどちゃん…。噂なんて気にしなくていいんだじょ。」

和「噂…なんのことですか。」






タコス「気付いてないのか?」

和「え、ええ…。」

タコス(でも、言わないほうが…のどちゃんが傷つかないで済むかもしれない。)

タコス「な、なんでもないじぇ!のどちゃん、お昼は一緒に食べるじょ!」

和「あ、私は宮永さんと…。」

タコス「咲ちゃんと?」

和「ごめんなさい。あと、優希。部活の前にちょっとお話したいことがあるのでいいですか?」

タコス「話?いいじぇ!じゃあ、チャイムが鳴ったから席に戻るじぇ!」

和「えぇ。」

私は優希に宮永さんと付き合い始めたことを話すことにしました。

昼休み

咲(どうしよう。なぜか京ちゃんのことばっかり考えちゃうよ…)

咲(なんなんだろう、この気持ちは。)

和「宮永さん!今日はいっぱい作ってきましたからいっぱい食べてくださいね!」

咲「う…うん。とっても美味しそう。頂きます。」

私は違和感を感じましたが、宮永さんはその後もパクパクと食べ続けてくれてはいました。
このとき、もし気付いていたら、何かが変わっていたんでしょうか。


咲「美味しい。美味しいよ。原村さん…」

和「ありがとうございます。宮永さん。はっ!」

咲「?」

宮永さんの可愛らしいほっぺたには、ご飯粒が付いていました。
なんというベタな…!!

和「宮永さん」ぺロッ

咲「えっ、原村さんっ?!」

和「ご飯粒、付いてましたよ。」



咲「!!」

咲「あ、ありがとう。」ドキドキ

咲(えぇー!原村さんにもドキドキしてる…。どっちへの気持ちが本物なの?)

ぐへへへへ。宮永さん可愛いよぉおお!
その時の私は幸せに満たされていたはずなのに、なぜか一抹の不安が胸をよぎりました。
何なんでしょう…?


ごめん、パソコンがバグってた。


和「ふふ。宮永さん。大好きです。」

咲「私は…(なんですぐに私も好きだって言えないの?!)

和「?」

不自然に言葉を詰まらせた宮永さん。
どうしたんでしょう?

咲(でも、こんなに優しい原村さんを私は裏切れない。裏切れないよ…。)

咲(ずっとこのまま…きっと大丈夫だよね。)

放課後

私は優希と一緒に屋上に来ていました。
宮永さんと付き合っていることを親友である彼女には話しておこうと思ったからです。

タコス「のどちゃん!話って何だじぇ?」

和「あの、私、宮永さんと付き合ってるんです。」

タコス「!!」

タコス「そうなんだ…」

優希は目を見開いて驚いたような面持ちで私を見ていました。
そして一瞬寂しそうな表情をした後、私に笑いかけました。

タコス「友達に恋人が出来たのを祝福しない奴はいないじぇ!祝福しない奴はその人を本当に思ってるとは言えないと思うじょ。」

和「優希…。」

タコス「でも、これだけは約束してほしいじょ。これからも私と友達でいてくれること!」

優希はいつになく真剣な顔でその言葉を告げました。

和「もちろんですよ。私からもお願いしたいです。」

そして私に指を差し出しました。

タコス「約束。」

和「はい、約束です。」

タコス「うんっ!!ありがと!」

タコス「のどちゃん。咲ちゃんと末永くお幸せに、だじぇ!」

和「ありがとうございます、優希!」

宮永さんと末永く…うひうひひ。
私は良い親友を持ちました。

タコス(咲ちゃんはてっきり京太郎を好きだとばかり思ってたじょ。)

タコス(なんかイヤな予感がするじぇ。)

その頃部室では

ギィ

咲「こんにちはー。」

京太郎「あっ、咲。和は?(早くおっぱい見たいんだよ。)」

咲「えっ、京ちゃんだけ、なんでここに…」ドキッ

京太郎「おい、咲。仮にも俺は麻雀部員なんだぞ!」

京太郎「その態度はちょーっと失礼じゃないっすかね。咲さん!」

咲「うぅ。ごめん…」

咲(誰でもいいから早く来てよぅ。)

京太郎(咲が真っ赤になって俯いている…)

京太郎(今朝、冗談で可愛いって言ったけど、咲って本当に可愛いのかも!)ドキ

京太郎(なんだ、この気持ちは)ドキドキ

京太郎(和を見る時も確かにドキドキはしていた。でも、それはほとんどが和の胸と俺の妄想によるものだった気がする。)

京太郎(いや!有り得ないだろ!俺が咲にそんな感情抱くわけがない!)

風呂入ってきます。

すいません。

再開します。
保守ありがとうです。

咲「は、原村さんや部長たち遅いねっ。」ドキドキ

京太郎「あ、あぁ、そうだな!」

咲(うわーん。京ちゃんの顔まともに見えないし、話が続かないよぅ。)ビクビクン

咲(いつもは普通に話せてたはずなのに…)

京太郎(うるさい、黙れ!俺の心臓!)バクンバクン

部室のドアの外。

久「あらあらぁ。二人とも照れちゃって。若いわねぇ。」

まこ「あんたと二つしか変わらんじゃろうが…。それよりなんで覗いとるんじゃ?」

久「だって、こういうのってドキドキして楽しいじゃない!」

久「それとも、まこはこういうの嫌いなのかしら?」

まこ「いやぁ、嫌いなら見とらんよ。」

半年後

私と宮永さんのお付き合いはまだ続いていました。
でも、ご飯粒ぺロリの件以来、何もそちら方面の進展はありませんでした。
私もさすがに、こちらから強姦未遂のことをするほど変態ではありません。
宮永さんはずっと優しく、そして美しい微笑みを向けてくれてはいました。

しかし、宮永さんの心はもう私のそばにはないような気がしました。
いや、もとから私の勘違いだけだったのかもしれません。

咲「京ちゃん!みんな。お茶入ったよ。」

優希「咲ちゃん、ありがとうだじぇー!」

京太郎「おお!やっぱ咲の入れるお茶は絶品だな!あちっ!」

咲「もう、京ちゃん、急ぎすぎだよ。はい、ハンカチ」デレデレ

久「?」

宮永さんがこれまた可愛らしいハンカチを火傷寸前の須賀君に差し出しました。
こちらから見てもいい匂いのしそうなハンカチです。クンカクンカしたいよぉおお。
須賀君が羨ましくなるなんて、どこまで落ちぶれたんでしょうか私は。

宮永さんが惹かれていると思われる相手、須賀京太郎。
彼も少しずつ宮永さんに惹かれていっているように見える。

でも、あまり言葉を交わしていなくても、今彼女と付き合っているのは自分なのだから
大丈夫という脆い安心感で私の心は保たれていました。

その感情を肯定せずにはいられませんでした。
これまで私はそれを糧にして日々を過ごし続けたのですから。

宮永さんとは、毎朝一緒に登下校するだけ。
それ以外は付き合う以前と何も変わりません。
たまに私から手を繋いで、宮永さんは顔を赤らめて、私はそんな彼女を見てウハウハしていただけ。

どうしたらいいのだろう。この行き場のない性欲を。
この思いを。

翌日

咲「原村さん。おはよう。」

和「おはよう…ございます。」

咲「うー、寒いね。」

ハァ、と吐き出された宮永さんの息も真っ白でした。
可愛らしいピンク色のマフラーを巻いている宮永さんはまるで必死に何かをこらえている
幼女のようで…はっきりいってそそられました。

和「そうですね。あっ、手袋貸しましょうか?」

咲「ううん、いいよ。ありがとうね。原村さん、気を遣ってくれて。」

困ったような微笑みで宮永さんは私に微笑みかけました。

咲「やっぱり、原村さんは優しいな。」ボソッ

和「え?なんて…?」

咲「あのさ、原村さん。」

和「?」

咲「昨日ね、部長に言われちゃったの…」

マフラーから覗く横顔が美しい。
彼女は意を決したように話し始めました。

宮永さんが話すにはこういうことだそうです。


昨日

久「咲、あなたははっきりしなければダメだと思うわ。」

咲「え?」

久「あなた、どちらが好きなの?和?それとも須賀君?」

咲「なんで、知ってるんですか?」

久「分かるわよ。大切な後輩だから。」

咲「…私は二人とも好きです。」

咲「だから京ちゃんはともかくとして、付き合っている原村さんは裏切れません!」

久「ふふ、咲は優しいのね。」

久「でもね、優しさは時には凶器なのよ。」

咲「?」

久「例え話をするわね。もし、あなたが虐められていたとする。」

久「でもそこにあなたを陰で支えてくれる人間が現れた。」

久「でも、その人は皆の前ではあなたに気付かないふりをする…。あなたはどう思う?」

咲「嫌です。助けないならもとから気にかけないでほしい。」

久「そうね。中途半端ほど憎たらしいものはないわ。半端に憎悪も愛情も芽生えるものね。」

久「咲、気付いているかしら?あなたが今二人にしていることはそれと変わらないことなのよ。」

久「須賀君は気付いてないかもしれないけれど、和はすごく傷ついているかもしれない。」

咲「私…曖昧な態度ばっかりで、どうにかなると思ってました。」

咲「最低です。本当に私、最低だと思います。」グスッ

久「ほらほら、咲、泣かないの。よしよし。」

咲「グスッ、ヒック」

久「今からでも大丈夫よ。自分の中で結論をはっきりさせるといいわ。」ポンポン

咲「はい。グスッ。部長、ありがとうございました!」

久「いえいえー。いつでも相談してね。」

久(咲、頑張れ!)

咲(やっぱり、部長は優しくて…頼りになるな。ありがとうございました。)

そんなことがあったんですか…。

咲「だからね。出してみたの。私なりの結論を。」

和「宮永さんの…結論。」

咲「うん!原村さん。今まで曖昧な態度をとってて本当にごめんなさい!」

いきなり謝られてしまいました。
必死に何度も頭を下げる宮永さんを見つめながら私はきちんと彼女に向き合いました。
なぜか、私を選んでくれるという確信があったからでしょうか。
彼女の今の気持ちが須賀君に向いていることを知りつつも諦められなかったからでしょうか。
どちらなのかさっぱり分かりませんでした。

咲「原村さん。私はね、京ちゃんのことが…好きっ!!」

まるで少女漫画のひとコマのように必死に自分の気持ちを告げる宮永さん。
アァ。聞イテシマッタ。

咲「原村さん…。ごめん。最初に告白を受けなければ原村さんを傷つけずに済んだのかな…。」

和「そんなことあるわけないじゃないですかっ!!」

和「私、嬉しかったんです!宮永さんが私の告白を受け入れてくれて、傍にいるだけで!」

咲「原村さん。ありがとう…!!」

このとき、表面上は上手くいったかのように見えました。
でも、このとき確かに私は自分の心が凍りつくのを感じました。

和(宮永さんは私のもの。宮永さんは私のもの。絶対渡さないっ)

その後、宮永さんは須賀君に告白して無事付き合い始めたそうです。
宮永さんの幸せそうな姿を見ると心が温まるけれど、それを他の誰かが作っているのだと思うと
ものすごく嫌悪感が沸きました。
特に麻雀部でのイチャラブぶりを見るたびに私の心は人間ではなくなってしまうような
気がしていました。

タコス(のどちゃん、苦しそうだじぇ。)

タコス(私も京太郎が好きだったが、それ以上にのどちゃんは咲ちゃんのことが好きだったんだな…。)

今日はひとりの帰り道。

ぽつ…ぽつ。

気がついたら雨が降り始めていたんです。
あんなに晴れていた空は曇りに変わり、小雨が降ってきました。
そう思っていたらまもなく曇天から大きな雨粒が降ってきました。
体に突き刺さる鋭利な刃物のようにその粒は私の心を貫くようでした。

この天気はまるで、私の半年間のようですね。
今日で終わりを告げた半年間。

寒い、寒い。

私は目を瞑って大人しく滝のような雨に打たれました。
折り畳み傘は常備してありますが、こんな土砂降りでは仮に差していたとしても
すぐに濡れてしまうでしょう。
それならば傘など差さずにこの雨を受けてみましょうか。
この雨は私を満たしてくれるかもしれないから。

今はこのままで…。

タコス「あそこにいるのは、のどちゃん!何してるんだ?傘も差さないで。」

タコス「おーい!のどちゃーん。透け透けだじょ!」

和「」ドサッ

タコス「え?!すごい熱だじょ!のどちゃん、大丈夫か?」

タコス「のどちゃんの家はここから近いはず。なら私にも運べる!」

和の家の前。

タコス「ほぼ引きずってきたけど…大丈夫だよね?」

ピーンポーン

タコス「のどちゃん。よっぽど辛かったんだな…。」

ここはどこでしょう。
ふわふわ暖かくて、まるで子供の頃に思い描いた世界みたいです。

和「あっ」パチッ

私が夢から覚めると、優希が心配そうな顔で私を覗きこんでいました。

タコス「のどちゃん、大丈夫かっ?!」

和「なんで…」

タコス「運んできたじょ!」

和「優希が…?!お陰さまで大丈夫です。」

タコス「そっかそっか。でも、熱が下がるまでゆっくり休むんだぞ!」ニコっ

和「はい」

優希が笑った。その顔はいつもと同じでホッとします。
いつも優希は私を支えてくれる。
中学校になかなか馴染めなかった私に声を掛けてくれたのは優希でした。
本当に優希は純粋でいい子。
かけがえのない親友といったところでしょうか。
私が宮永さんと付き合っていると言ったときにも笑顔で応援してくれましたし。

タコス「あのさ、のどちゃん。」

和「?」

タコス「私は、勉強も出来ないし、騒ぐくらいしか能がないけど…」

タコス「親友が悩んでるっていうことぐらいは分かってるつもりだじぇ。」

タコス「あと、親友が悩んでたら話を聞いてあげるくらいのことはできると思うし…」

優希は髪をいじりながら照れくさそうに言いました。

タコス「だから、頼りないかもしれないけど、良かったら話してみてってこと。」

タコス「もちろん強要はしないじぇ。話すか話さないかはのどちゃんが決めること。」

タコス「ねっ。」


タコス「もしかして、咲ちゃんか?」

和「…」

愛しい宮永さんの名前に思わず涙腺が緩みそうになりました。

タコス「のどちゃん、泣きたかったら泣いてもいいんだじょ?」

私は布団を頭まで被り、その中で涙を必死に拭って起き上りました。
そして笑顔をつくって言いました。

和「大丈夫です。」

すると優希は困惑したような顔をしつつも、微笑んでくれました。
きっと察してくれたんだと思います。

タコス「のどちゃん。あんまり思いつめないで欲しいじょ。」

タコス「いつでも聞くからね。のどちゃんの辛いこと。」

すごく優しい笑顔で優希は言いました。
それでさえも偽善にしか見えない私には優希に話を聞いてもらう資格なんてありませんでした。

和「優希、本当に今日はありがとうございました。」

自分が微笑んでいるのか、本当に笑みをつくれているのかさえ分かりませんでした。

タコス「じゃあな、のどちゃん。お大事にだじぇ。」

友達っていいものなのかもしれませんね。
支えあえるって素晴らしいことだと、以前の私なら思っていたでしょう。
でも、優希がいて本当に良かったということは感覚的に分かりました。

和「はい、気をつけて帰ってくださいね。心配かけてすみませんでした。」

でもごめんなさい。
きっと今の私は、優希を絶望させる方向へと失速しているんです。

加速じゃなくて?

>>124ありがとう。すまん


宮永さんを追いかけるたびに分からなくなるんです。
自分の気持ちも、感情の制御の仕方も。
初恋だから、なんて関係ない。
ただ、私はそれをコントロール出来るほど大人でなかっただけ。

ねぇ、宮永さん。

宮永さんは私といて、一瞬でも楽しいと思ってくれましたか?

一瞬でも私のことを好きでしたか?

ねぇ、宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。
宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。
宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。
宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。
宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。
宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。宮永さん。

みやながさん。

ダイスキだからサヨウナラ。

翌日部活前

和「宮永さん。」

咲「原村さん!優希ちゃんから聞いたよ!熱は大丈夫なの?!」

和「ええ。お陰さまですっかり。」

事実、私の熱はすっかり下がり、頭はすっきりと冴えていました。
ですが不思議ですよね。
清澄に登校するまでの道のりを全く覚えていなかったんですよ。
どうやってここに来たのか知る権利すらないというんですか、私には。

咲「でも、話って何?私、教室まで京ちゃんを迎えにいかなくちゃ。」

その名前を出すな。

和「須賀君はお掃除当番ですか?」

咲「うん!よく分かったね。」

当たり前です。
須賀君と優希が掃除当番であるこの日しか、あなたとふたりっきりになれないんですから。

咲「それで話って…」

ちらちらと時計を見る宮永さん。
心配しなくてもいいんですよ。
あなたはもう、そんなこと気にする必要なくなるんですから。

和「まだ、分からないんですか。宮永さん素敵です!」

和「私があなたを呼び出した本当の理由を教えてあげましょうか?」

和「宮永さんを永遠に私だけの人にするためですよ、ふふ」

私が笑うと、宮永さんは驚いたような顔で私から離れました。
私は逆にもっと宮永さんに近づいていきます。

簡単なことだったんです。
相手が離れていったら、私がそれを補って余りあるくらいに相手に近づけばいいだけだったんですよ。

宮永さんからしたら不気味に違いありません。
でも、私はそれでも宮永さんとの距離を縮めることをやめませんでした。
もし、ここで止めたら、私と宮永さんの糸は完全に断ち切られてしまうから。

和「宮永さん!私、とっても苦しかったんですよ?」

そう、私は囁きかけるように小さく呟きました。

咲「な…なんでっ」

ふふ、可愛いです。宮永さん。
あなたはまだ自分の犯した罪の大きさを自覚してないんですね。
あなたは重大な過ちを犯したんですよ。
まずは私の告白を最初の段階で断らなかったこと。
あと、私を恋に落とさせたこと。

それはあなたにとって、とても不幸なことだったのです。
なぜなら私は我儘らしいから。

和「宮永さんの…せいですよ。」

咲「ごめんなさい!ごめんなさいっ!」

必死に謝る宮永さん。

でも、一瞬だけ見えたその目は私を蔑むような目。
やめて、そんな目で私を見ないでください。

もう終わったことだと、私との糸を断ち切らないで下さいよ。

咲「でも、私は言った!原村さんのことは好きだけど、京ちゃんの方が好きだって言った!」

咲「だから私はあなたときっぱり別れた!」

咲「それで清算じゃなかったの…?」

震えながら言葉を紡ぐ宮永さんに私は無性に腹が立ちました。

和「あなたは遅すぎたんですよ。」

和「あなたは私のことだけしか考えられないようになればいい!!」

咲「私は『もの』じゃないよ!」

和「だから今ここで、『もの』にするんですよ。ふふっ。」

自分でも信じられない位の低い声が出たせいでしょうか。
宮永さんはまたガクガク震え始めました。
ふふ。小便を我慢してる子供みたいですね。

ガクガク震えている宮永さんがあまりにも可哀想だったので、私は強引に宮永さんの唇
を奪いました。
宮永さんは必死に抵抗しましたが、私はそれを一生懸命抑えつけました。
ふふ、胸の差ですよ。

私のファースト・キスでした。
唇を離した後の宮永さんの顔はほんのりと赤く染まっていて、本当に可愛かったです。
その顔を隣でずっとみていたかったです。
一瞬だけ、手を繋いで帰っていた時のことが頭をよぎり、不覚にも涙が零れそうになりました。

前の私たちに戻れたならば、その時はきっと今とは違う未来になっていましたよね。

宮永さん。

和「分かりましたか?だから私に殺されてください。」

咲「いや。いや。」ブルブル

和「痛くないようにしますから。」

咲「だったら刃物をむけないでよぅ。」

和「みやながさん。だいすきです。」

私は宮永さんに包丁を突き立てようとしました。
ですが、彼女は咄嗟に私を蹴飛ばしました。
もちろん包丁も飛ばされてしまいました。

和「なにするんですか。」

咲「それはこっちの台詞だよぅ。」シュ!

宮永さんは私の包丁を広い、振りかぶり始めました。

和「ふふ、甘いですね、宮永さん。」

咲「え?」

和「まだ、あるんです。包丁は。」

和「覚悟してくださいねっ!!宮永さん!」

どうしましょう。私は宮永さんを、初恋の人を刺せないかもしれない。
彼女をこの世から消して私のものにするなんて無理かもしれない。

和「行きます!!」

咲「うわぁあああああ!!!来ないでよっ!!」

咄嗟に身構えた宮永さんの刃は見事に私の首に直撃しました。

プシャアアアアアアアアア

私が最後に見たのは初恋の人の歪んだ笑み?それとも鮮血だけだったでしょうか?

咲「あぁあああああああ!原村さんっ!!」

咲「ど…どうしよう。動転してたよ。」

血まみれ。まさに彼女の姿はその一言で表せました。

ギィ…

タコス「さ…咲ちゃん!!何を!!」

咲「優希ちゃん!私は悪くない!悪いのは原村さんだったの!」

タコス「部長!部長を呼んでこなきゃ!」

咲「う、うう。」

ふふ、これで宮永さんは私のことを一生忘れないでしょう。
一件落着です!

宮永さん。

私があなたを愛したようにあなたにも私を愛してほしかった。
欲を言えば。
でも今はそんなこと望みません。
いつかこっちの世界へ来て、傍にいてくれるだけでいいのです。

愛してます、と一言言っても伝わらない愛をまたあなたに注ぐので、どうか蔑みの
目線を向けないでください。
そういうプレイなら全然アリですけど。

今度は幸せな恋が出来ますように。

永遠の愛を手に入れられますように。

ほんとにだいすき。

あいしてる。

ね、宮永さん?

聞こえてますか。

おしまい

おしまい!
ねむい。

かじゅ大好きだぁあああ!!!

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