唯「澪ちゃん…なんで……」(370)


―部室


  チ~~~~~ン






律「バカやろう……」

紬「うっ……」

唯「澪ちゃん……なんで死んじゃったんだよ…」




律「………ん」

律「そういえば何でだっけ?」

唯「さぁ?…」

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唯「なんでだっけ…でもこの部室入った時から感じたんだよ」

唯「もう澪ちゃんは……」

紬「うぅっ…」シンシン

律「解ってるよ…けどその理由がはっきりしないんだよ」

律「澪は確かに……なのに不思議だ」

唯「なんか悩みとか……」

唯「………あっ…」

律「どうした」

唯「ほら…あの時」

唯「和ちゃんと一緒に帰った後のファミレス……」

律「和ぁ?」

紬「あ…ほら……」

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律『澪ってさ、案外眼鏡かけたら似合うんじゃん』

澪『え~…似合わないよ』



律『ちょっと和、眼鏡貸して』

澪『イヤいいって…!』

唯『ほら、似合うかも!』

律『さぁさぁ!』スッ

澪『お、こらッ……』

律紬唯和『………』ジィ~~

澪『ど、どうせ似合わないでしょ…』


律『……………ぷっ』

律『ギャーー似合わねぇえええーー!!!!wwwwwwwww』デコデコデコ

澪『…………………』

唯(マズいよりっちゃん…!)

紬(ど、どうしましょ…)ハラハラ

和(見えないわ…)

バキャーーン

律『でこっ!!』ガシャッ




澪『ッッ帰る!!!!!』

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唯「今思えば、やっぱりあれが引き金に……」

律「待て待て!!そんなんで死ぬか!?ふつう」

律「…それにそれ二週間も前じゃんか……」

紬「うーん………」

紬「もしかして、三日前のあれじゃあ……」

律「あ、あれって…?」

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―部室

澪「律、消しゴムかして」

律「いいよー」


澪『へぇ~……』

律『なんだよ…』

澪『律のって、“まとまるクン”じゃないんだ……』


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紬「…………ね?」

律「……!!?!?」

唯「取りあえずなんで死んじゃったのか調べてみない?」


律「まだ7時半か……HRで話あるだろうな……」

紬「信じられないわね…」


唯「………ねえ、まだ梓ちゃんは?」

律紬「え?」

唯「梓ちゃんだよ…朝練休むなんて珍しいね……」

律「梓ちゃんっておま…」

ガチャ

澪「おーっす……」

澪「…居ないよね……」

梓「…先輩、唯先輩達ならきっと大丈夫ですよ」


律「み、澪!?」

澪「………」

梓「…………先輩」

唯「澪ちゃん!梓ちゃん!?…なんで無視するの…?」

律(…………)

紬「これって……」

律「どういう事だ…」

唯「ねえ二人ってば!!」

律(……)


澪「分かってるよ。きっと皆なら、大丈夫だよね……」

梓「そうですよ!きっと直ぐに……」

律「おい…何のことだよ……」

澪「憂ちゃんも…心配だな…」

梓「…行きましょ。HR始まりますよ」

澪「うん…」

バタン





律「ムギ、どういう事だと思う…?」

紬「ちょっと頭が混乱して…」

律「澪は生きてた……というより」

律「なんで私達は“死んだ”なんて思ってたんだろ…」

唯「それに私達が見えてなかったみたい…」

紬「そう……」

唯「澪ちゃんも、梓ちゃんも…」


律「その梓ちゃんってのやめろよ……」

唯「え?」

律「…もういい。それより、あいつらの言ってた事が気になるな…」

紬「ダイジョウブ、とか…憂ちゃんのことも言ってたよね…」



律「ん?AZUSAは澪とフツウに会話してたな…」

唯「あ………もしかして……」

律「…なに」

唯「死んでるのって…私達なんじゃ……」

律紬 (あ―ッ!)


紬「でも、そんなような事は…」

律「そうだ!私は確かに昨日聡と話したんだ!!そんな事は―」

唯「だったら私も憂と話したよ」

律「間違いないな……唯、今から憂ちゃんの携帯に電話しろ」

唯「…なんで?」

律「いいから…」

唯「うん」パッピッコッ

prrrrrr・・


ピッ


憂『お姉ちゃん……?私イジメられてるかもしれない…』

唯「!?どういう事!?」

憂『みんながね……私のこと無視するの……』

憂『話しかけても誰も返事してくれなくて……』

律「どうしたんだ…?」

唯「憂……皆に無視されるって……」

律「(やっぱり……)…ちょっと貸して!」パリ

律「憂ちゃん!?田井中だけど!」

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―部室

律「ごめんね……抜けてもらっって」

憂「大丈夫ですよ…皆やっぱり気にも留めてなかったですし…」

律「もしかしたら…唯の言う通りかもしれない……」

紬「私達が…」

憂「何ですか?」

唯「いや~…私達死んでるかも、って……」

憂「…………ん?」


律「やっぱり……心当たりとかないか…」

紬「でもまだそうと決まった訳じゃないでしょ?」

紬「あの二人の言葉思い出して」

唯「じゃあさ…もう本当に死んじゃってるのか試してみることから始めようよ」

律「どうやって?」

唯「ベタに物で殴るとか…」

律「オイ言い出しっぺがやれよ」


唯「えぇ…じゃあ誰かにいたずらして反応を見るとか…」

律「憂ちゃん、HRで先生何も言ってなかったの?」

憂「特に、いつも通りでしたけど…」

律「なんか存在自体が空気扱いって感じだな…」

紬「でもあの二人は……」


律紬「うーん………」

律「取りあえずここに居てもしょうがないし、外出よう外」



「なあなあ」


―廊下


律「私達同士はこう―触れるじゃん」

律「周りの連中はどうなのかな?」

チーンコーンカーン・・・



唯「あ、授業終わったみたい」

律「ちょうどいいや、通りすがりにタッチしてみよう」

唯「なるほど!本当に死んじゃってたら触れないもんね」


わいわい


律(いくぞー)

生徒「……が憎めないよね~」

律(ちょっとゴメンよ…!)





ふぁさ…

律!



憂「きゃぁぁああ!!」

唯紬(あー……)(ダメか…)


律「……」

紬「駄目だったね……」

律「お前らもやって来いよ…」

律「私だけかも知んないしさ……」






唯紬憂「ダメでした…」

律「うわぁぁあああもう私ら死んだぁぁあああ!!!!」

唯「あでも…ってことは……」


唯「聡君もマズいんじゃ……」

律「ハッ……」




律「うわぁぁあああさとしぃぃぃいいい!!!」デコデコ

紬「りっちゃん……」

紬「でも、澪ちゃんや中野さんは何で私達の事覚えてた」

律「ぐずっ……あれ?」

唯「そうだよ!秋山さん達なら、何か知ってるかな!?」

律「…おい、お前ら……」

羽生さん……好きです。
今期王将戦、お体に気を付けて頑張って下さい。
では
おやすみなさい。来週NHK杯観るからね。


律「なんだよ…その呼び方…」

律「梓ちゃんとか、秋山さんとか!」

唯「どしたの…?別にいつも通りじゃん」

紬「うん……きっと少し疲れてるのよ」

律「はぁ…?」

憂「あの、それより私達って本当に…」

唯「それ、マズい事になったよねー…」


憂「どうします?これから」

律「うん…あ!そうだ聡!あいつも……」

律「…ムギは!?昨日誰かと話せたり」

紬「私は……」

紬「昨日は疲れててすぐ寝ちゃったから…誰とも」

唯「う、うい~~…」フランス

憂「大丈夫だよ……」

憂「律さん、聡君のところ行ってみませんか?」


律「そうだ……あいつもきっと私達みたく困ってる筈…」

紬「じゃあきっとお家に帰ってるかも…」

唯「りっちゃん!行こう」

律「うん…」

律「憂ちゃん大丈夫?」

憂「はい、もちろん」

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―田井中家



紬「りっちゃんの家初めて…!」

唯「人の家ってわくわくするよねえ!」



憂「アハハ……」

律「いいんだよ…それより」

律「…………まだ帰ってないな」

憂「え…」


律「靴がない…」

憂「あ、いつもの」

律「そう……おい、二人とも帰るぞ」

唯「えぇ!?せっかくだから上がりたい!」

律「何言ってんだこんな時に」

唯「ねえムギちゃんも上がりたいでしょ~」

紬「私は~…」

唯「上がろ上がろ~♪」

律「」イィラッッ


律「憂ちゃん、ちょっと外してくれる?」

憂「すみません……」ガラッ






シドッッ



唯「あ…ぅ……」アリアリ

律「出るぞ」

紬「うん…」

律「憂ちゃんおまた」ガラッ

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律「とは言ったものの…」

紬「どうするの?これから…」
律(…!)

唯「どーすーるのー」イライラ

律「なあ……」

紬「なに?」

律「お前達……家来た事あるだろ」


紬「?さっきので初めてだけど」

唯「りっちゃん、さっきから何かオカシイよ…」

律「ほら!私が風邪ひいた時!お見舞い!」

唯「ホラ…カゼ…オミマイ……?」

律(名前の事といい…間違いない…)

紬「大丈夫かしら…」

律(こいつら記憶がどんどん……!?)

唯「あ…和ちゃんは……?」



律「そうか…こうなると和も無事かどうか……」

唯「早く学校戻ろうよ!」

律「行こう皆」

紬「…………」

憂「あの…私…」

律「なに?」

憂「いえ……なんでも」

律「…?おい、ムギも」

紬「え…うん、行こ……」

律(………)

羽生さん暫く封じ手


―銭湯 ~湯の和~





カコーーン





律「あぁ~…いい湯だな…」

唯「皆で来るの初めてだね~」

紬「私皆でお風呂に来るの夢だったのぉ♪」

律「憂ちゃん湯加減どう、熱くない?」

憂「大丈夫ですよ、気持ちいいです」

律唯紬憂「ふぅ~・・・・・」


―学校 教室前


律(開けるよ……)

唯(うん…)

紬(……)

律(し、失礼しま)

唯(ねえ…)

律(な、なんだよ…)

唯(勝手にドア開けたらマズくない?)

律(なに言ってんだ、確かめるだけだろ…)


唯(いや…勝手にドア開いたら皆びっくりするんじゃないかな……)

律(でもここからじゃよく見えないし…)

唯「そもそもこんなコソコソする必要ないじゃん。どうせ聞こえないんだし」

律(…………)






律「……仕方ない、授業終わるまで待つか…」

唯「うん」


― 一階、踊り場


律「和大丈夫かな」

唯「うん…それよりこれからどうするか考えようよ」

紬憂「……………」

律(………)

律「ちょっと私トイレ…唯も来る?」

唯「私は大丈夫だよ」

律「……来る?」

唯「え…大丈夫だって」

律「来 る……?」


唯「うん、行く……」

律「じゃあ私達トイレ…ムギと憂ちゃんはここで待ってて」

憂「あ、はい」

紬「…わかった」

律「じゃいこ、唯」




 ―トイレ


唯「どしたの……りっちゃん」

律「唯、やっぱあの二人…」

唯「なに…」




―踊り場

憂「あの……紬さん」

紬「なに?」

憂「和って人、二年生の人ですか?」

紬「いや…私の知らない人みたい」

紬「二人の知り合いなのに、私だけ知らないの寂しくて…」

憂「…………」







律「間違いない…紬や憂ちゃんは記憶が……」

唯「なんで…」

律「(お前もだけど……)それと憂ちゃんも引っかかる」

律「あの子、澪がいないこと気にしてなかっただろ…」

律「いつも一緒にいるのに気遣った…というより」

唯「秋山さんの事も…」

律「…………。だろうな」


律(まずいな……このペースだと…)

律(けど憂ちゃんや唯達はお互いを覚えてる…)



律「…取りあえず戻るか」

唯「うん…」

ガタガタガタ ・・・

唯「あ、なんか騒がしくなったね」

律「終わったか……よし、確かめるぞ」



―教室


澪(おかしい……皆唯達のこと知らないだなんて)

澪(まるで私一人おかしいみたいな反応…)



「 澪? 」

澪「あ?あぁ…ごめん何?」

和「どうしたの?世界の終わりみたいな顔して」

澪「はは…そんなに暗かったな…」

和「うん。あんまり思い詰めちゃダメ。悩みがあるなら、相談しなよ」

澪「うん…けど平気」

澪(…梓は、大丈夫かな)

おせーよ


―定食屋~和の極み~



「いらっしゃいませー!!」




店主「はいどうぞ~!」

律「いやー腹減った!皆なに食べる?」

唯「おじさん、私この焼き魚定食!」

紬「じゃあ私この秋飯スペシャル~華の乱~、憂ちゃんは?」

憂「私はお姉ちゃんと同じのお願いします」

律「おっちゃん!私この爆弾そぼろ飯ね!」

店主「はいよ!」



律「澪と何か話してるな……」
唯「ってことは……」

憂「無事みたいですね」

紬「………」

唯「あとは聡君の無事だけだね…」

律「………なあ、今日一日澪の後ついて行ってみない?」

紬「それは…!」

唯「悪いよそんなの!」

律「確かに気が引けるけど…状況が状況だしさ……」

律「なにより情報が足りなさ過ぎるよ」



律「嫌なら無理にしなくてもいいけど…」

憂「あの…私は?…」

律「あ…じゃあさ憂ちゃん、梓をお願いできる…?」

憂「梓ちゃんですか……」

律「(あ、覚えてるぞ…!)ダメかな?」

憂「あ…分かりました」

律「ムギは…どうする?事が事だから…無理しなくても…」

紬「やるっ」ムギュ

律「そ…そうか」


俺は見ているぞ…


律「じゃあこれからは二手に、私と唯は澪、ムギと憂ちゃんは梓を頼むな」

憂「はい」

紬 「はい!」

律「動くのは昼休みと放課後くらいかな」

唯「結局私もやるんじゃん……ねえそれより私お腹が…」ズゴーーー

律「まさか腹減ったのか!?死んでるのに?」


律「じゃあ取りあえずどっかで飯……って勝手に盗って食うのはまずいか…」

律「しょうがね…家来いよ…」

唯「本当に!?ッッしゃ」



紬 ニコニコ

憂「紬さん楽しそうですねー…」

紬「だって、皆で後付けるなんて探偵みたいで楽しそう!」

紬「こういうのユメダッタノー♪」

憂「はは……はぁ…」


律「じゃ皆ウチ行くぞー」

ふらっと羽生さん家行ってきます

羽生「あうあう~こんな時間に来ては困るですぅ~えっ…人違いですか?」


―田井中家



律「結局また来ちゃったけど…」

唯「さっ、早く入ろうよー」

律「はいはい…」

ガラッ

律 !

唯「どしたの?」

律「聡が帰ってる……」

紬「あっ、じゃあ…」

律「うん、よし……」



律「おーい聡ー、姉ちゃん帰ったぞー」






唯「…居ないのかな?」

律「靴はあるのに……ま、入るか…」

唯「オジャマします!」

律「…さ、入って」

紬憂「あ、お邪魔します…」


スタスタ

律「聡いないのかー…?」

唯「っていうかさ」

律「何?」

唯「弟くん、サトシっていうんだ…?」

律「は……!?オマエ何言って…!」

律「聡!!」

バシュン!ピピーッ

聡「………」ピコピコ

律「おい聡……」

紬「……やっぱり聞こえてないみたいね…」


憂「あ…でも無事、ってことですよね」

律「…………」

紬「よかったのよね、りっちゃん…」

唯「そうそう、何でもないってことだよ!」

聡「あー…キャプチャー失敗」カチャカチャ

律「………出るぞ」

唯「え……いやまだ本当の目的が」

律「いいから出るんだよ!!」

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唯「りっちゃん…急にどうしたの…?」ビクビク

律「よく考えればおかしいだろ……」

紬「なにが?…」

律「今日の朝、聡とは私はなんでもなかった……」

唯「それだったら私も憂も別に…」

律「そこだ…」

律「今朝まで同じ状況だった。なのに私と聡、唯と憂ちゃんとは今状況が違う……」

唯「だからそれは、憂も…だからでしょ……?」


律「違うな」

律「今朝、私と聡はいつもと変わらず話せた…」

唯「……うん」

律「つまり……状況は“今朝”から変わったんだ……何もかも…………!」



唯 紬 憂 「「  」」



律「あ、あ……れ……?」

唯「…りっちゃん……」



そ ん な こ と   最 初 か ら わ か っ て る よ ・・・

律「……………へへっ…」

羽生さん、取りあえず第一局は終わったよ
お疲れさまです名人

羽生「あうあう~王手飛車取りは酷いですぅ~…えっ…違うんですか~?」


「先生、どうですか?」

「もう時間も残り少なくなってきたからねえ……」

「だいぶ乱れてますね…」

「そう、現にプログラムにない…というか完全に関係ないものまで見てるわよ…」

「銭湯とか全く関係ないですもんねー…」



「後何分?」

「28分と30秒です」

「なるほどねえ……どうりでイメージが歪んでるわけ」

「こういう事ってよくあるんですか?」

「最新式よ?ウチも導入してみたはいいものの…」

「まあ、不測の事態は付きモノですよ。何ごとも、何せ人間ですし」

「ふふ…それじゃ困るんだけどねぇ」


「この子達ももうすぐ……ですか」

「設定上この子にとって関係の薄い人間や、思い入れの少ない人から順にね…」

「何だが、少し良心が痛むと言いますか…」

「そんな事で大丈夫なの?“消える”とは考えずに、ただ元に戻すと思えばいいの」

「……はい、そうですね」

「じゃあ、また少し様子見しましょう」

「あ、はい」




―思えば、中学の頃からか…



私は人付き合いが苦手だった

周りに合わせてふざけた振りしても、笑った振りしても
心の中はいつも退屈だった…
気付けばグループの後ろを付いて歩くだけ

皆変に私に気を使うだけ
冗談言っても、私顔が笑ってないし…

ただ寂しかっただけかもしれない
誰かに構って欲しかっただけで…

そんな中律だけは本当に楽しそうに笑ってた……

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― 中3、春

律『おーい澪、帰ろうぜ』

澪『あ、うん』

『律ー!帰ろうよー』

律『おーう!今行くって!』

律『ほら、早く行くぞ!』

澪『いや…私いいよ、あの人達あんまりよく知らないし……』

律『何言ってんだよ、紹介してやるから、さ!』

澪『え……でもな…』


「何やってんのー、はやく~!」

律「ほら早く行くぞ!」グイ

澪「ちょっと!…」

律「こいつ、二組の澪!一緒に帰ろうってさ、ほら」バン

澪「あ…よ、よろしくね…ハハ」

「澪ね、じゃ一緒に帰ろ!」

澪「うんっ」

律「なぁこれからどこ行く?」

「え~、あ!駅前にサー○ィワン出来たの知ってる!?」

律「マジで!?よっしゃ行こう行こう!」

澪「……………」


律は他クラスにも友達が多かった…
当然だ。元気で明るくて、私とはまるで正反対なのだから…

学校帰りに皆でどこか行こう、とか、私はそういうノリは苦手だった……


律「澪も来るだろ!?」

澪「あぁ、うん…」

律「ノリ悪いなー…あ、もしかしてダイエット中か?」ニヤニヤ

澪「ち、違うよ!行くよっ」

律「じゃ、皆行こうぜ」



― サーティ○ン

律「おぉー…これがテレビでよく見る……!」

「律、その言い方オバサンくさいよw」

律「うるせぇ!それより何にする?さすが種類が多いな~」


ダメだ……こういう会話が私にはできない…
出来るのは、こうやって最後尾からその光景をみて微笑むだけ…

律の場合、本当に微笑ましいのだけど…

律「澪は何にする?」

澪「えっ?……そうだな…」


澪「そうだな……」

澪「じゃあチョコカレーと、マシュマロ豆乳のダブルで…」

「わ~…凄いの選ぶね澪…」

「じゃあ私は…」


期待していた反応とは違った…

ただ一人を除いて


律「ギャーー馬鹿だ馬鹿!!wwww絶対それ全部食えよー!?」ケラケラ

澪「あ…あったり前だろ!」ポン






「おいしかったねー」

「また来よっか!」

澪「………うぷ…」

律「おい大丈夫かよ…あんなゲテモノ食うから……」

「じゃあ律、私達行くね」

律「おー、じゃあな!おい、澪」

澪「……うっ、じゃあ…」

「………うん、じゃあね」


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―帰り道


澪「うぅ…お腹痛…」

律「ホント大丈夫かよ……」

澪「律……帰ったらメールしてよ?」

律「するから…もう今日は早く帰って休めよ」

澪「うん…」

律「くくっ……けど澪、ホントにあれ全部食うんだもんなぁ」

澪「全部食べるって…言ったからな……」

律「…………」


―翌日、学校、廊下


スタスタ

「―あ」ピタ

澪「あ…」

「き、昨日は楽しかったね……澪…」

澪「う、うん…」

「ま、また行こうね!」

澪「そうだね…ハハ」

「えっと…じゃあね」

澪「………うん」

なんだよ……あの感じ…



―放課後



澪(トイレトイレ……)

「あー、あの子ね…澪っていう」

澪 !! ピタ

「なんか暗いんだよねー…ノリ悪いし」

「でも律と仲良さそうだったよ」

「あー幼馴染みらしいよ…あれ」

澪「ッ……………」



律「あっ、お前ら何してんの?なんの話?」

澪(律……!)


「あのさ……澪はもう遊びに誘わなくてよくない?」

律「は?何で?」

「だって暗いじゃん…」

「そうそう、一緒にいてもなんかさ…向こうも無理してんじゃない?…」

澪(…………)

律「じゃあいいよ、お前らが嫌ならそれで」

「え…」

律「それだけの事じゃん」

律「お前らはもう澪と関わらない、それでいいんだろ?ならそうすれば」

「律…」

澪(…………)

羽生さんは盤に向き合った瞬間から詰みが見えていると云う
ちょっと羽生さんのベッド入ってくる……!


律「とにかく私からうまく言っておく。だからこの話はもう終わりっ」

「…………」

律「じゃあ今日は私もう帰るから、じゃあな」

「うん…じゃあね…」





律(今日は澪と二人で帰るんだ)シタシタ

律「あ……」

澪「……………」

律「…………聞いてた…?」

澪「別に…」ダッ

律「おっ、おい待てよ!」ズギャオッ



―廊下



律「………なあ」

澪「帰れよ……あの人達と」

律「…私は澪と帰るよ」

澪「フ…同情……」

律「違えよ」

澪「違うもんか!!」

澪「いつも独りで可哀想とか、構ってあげようとか!」

澪「昔から、ずっとそう思ってるんだろ!!」




シュッ ←足払い




澪「いたっ」ドサッ

律「馬鹿やろう!!!!!」

澪 !!

律「そんな気持ちで!!……そんな気持ちで…!」

律「そんな気持ちで今まで私と友達やってたのかッッ!!!」

澪「………!!」

律「私は悲しいぞ……」

律「友達っていうのは……いや…親友っていうのは……!!」

律「…そんなんじゃないだろ………」ポロポロ

澪「………律…」





澪「ごめん……私間違ってた…」

律「そうだよ…」

律「可哀想とか…そんなんで付き合う訳ないじゃんか……」

律「私はただ、好きだから一緒居るだけだよっ」ニコ

澪「……うん…」

律「さっ…一緒に帰ろ!」

澪「…うん!」

ありがとう律……
好きって言ってくれて
友達の意味が少しだけ解ったような気がするよ…







「どうですか?」

「一瞬乱れた部分もあるけど……」

「精神的にはまた安定してきたわ」

「これがこの子の今後に活かせればいいんですけど…」

「そうねえ……今年から高校生だっけ?」

「そうみたいです」

「多感な時期よね~…若いって羨ましいわ……」

「何言ってるんですかw」


―午前11時

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唯「ねえ……私達どうなっちゃうの…?」

律「さぁな……」

憂「皆……私達の事、忘れちゃったんですかね…」

唯律紬「……………」

律「忘れる………か…」

律「なあ、この状態が幽霊ってやつかな?」サッサッ

唯紬憂「……………」

律「ごめん……」


ドキッ羽生さんだらけの入浴大k…



律「また負けた……」

紬「3二金がぴったり」

唯「うわ、りっちゃん弱すぎ…」

律「うっせぇ!“最強羽生将棋”でちゃんと勉強したんだ」

唯「それゲームじゃん……古いし」

律「もう羽生の頭脳全集買うか…」

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―12時半、学校



律「とりあえず―」

唯「昼休みの時間だね……これから秋山さんの後付けるの?」

律「……そう、まずは私達の身に何が起きたのか調べないと…」

律「憂ちゃん、梓の方よろしくね」

憂「あの……ちょっと分からないです…」

律「えっ?」


憂「何だが分からなくなっちゃって……」

律「お、落ち着いて…」

唯「うい、大丈夫?」

憂「……お姉ちゃん…」

律「……!」

律「……ねえ、梓は…?梓って子…」

憂「あずさ…?すみません、ちょっと…」


律(おい…マジかよ………)

紬「ねえ…」

律「な、なに?」

紬「その子がどうかしたの?…」

律「ムギ……おい唯!?」

唯「なに?」

律「何じゃないだろ!梓だよ!お前は覚えてるだろ……?」

唯「えっ…覚えてるも何も知らないよ」

律「ウソだろ……」




どうすればいいんだ…どうすれば……
…何故私だけ記憶がはっきりしてる……?

梓…澪…和……
無くなっていく記憶

とにかく……澪の周辺だけでも調べないと
理由を……早く何とかしないと皆が………!

憂「あの、律さん」




「後何分?」

「えっと、4分と15秒です」

「残り時間3分になったら、予定通りアレお願いね」

「分かりました」

「この子も心の準備、しておかないとだからね…」

「ちょっとびっくりするでしょうね……」

「問題ないわよ、直ぐにこっちに戻るんだから」

「あのー…」ガチャ

「ん?梓ちゃん、どうしたの?」


梓「少し姉の様子が気になって……」

「大丈夫よ、少しイメージが乱れる部分もあるけどね。今は安定してるわ」

梓「どんなの見てるんだろ…」

「気になる?けど規約で見せられないの、ごめんね」

「あ!梓ちゃんも今度試してみる?今ならサービスしちゃうわよ~ん」

梓「い、いや…私は………」

「先生、困ってるじゃないですか…!」ボソ

梓「じ、じゃあ私はこれで……」

バタン




「やっぱり似てますね。姉妹だと」

「そうねえ……って、そろそろよ。アレ準備して」

「あ、はい」

(……やっぱり、プログラムのイメージにノイズが入り始めてるわね…)

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律「どうしたの……?憂ちゃん……」

憂「私……今全部知っちゃいました…」



律「え……?」

唯「ねえ憂、どういう事…?知ったってなにを……」

紬「教えて、憂ちゃん」

憂「紬さん……」

憂「紬さん、いつも姉に楽しいティータイムを提供してくれてありがとうございます」

紬「え…?」

憂「お姉ちゃんはいつも『明日のお菓子は何かなー♪』とか…」

憂「…『今日はムギちゃん美味しい紅茶を淹れてくれたんだよー!』とか……」

憂「嬉しそうに…とっても嬉しそうに……」

律「憂ちゃん……?」


憂「たくさんの笑顔を作って下さって、本当に妹として感謝してるんです」

紬「憂ちゃん…」

憂「お姉ちゃん……ありがとね」

唯「憂……何言って…?」

憂「ねえ、小さい頃のクリスマスの日、覚えてる?」

唯「クリスマス…」

憂「ふふ…クション破って中身出しちゃったんだよね」

唯「あ…あの時…」

律(…………)


憂「その後お父さんとお母さんに凄く怒られて…」

唯「えへへ……憂に喜んでほしくてさ…」

憂「……今までの思い出が全部なくなっちゃうなんて事…絶対ないよね……」

唯「……憂、なんで泣いて…」

律(…!…)

憂「私のお姉ちゃんでいてくれてありがとう……」

憂「じゃあね……お姉ちゃん」

大好きでした…

律「憂ちゃん!!」






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唯「…………」

律「憂ちゃん…?まさか消え……」

律「…おい唯!!」

唯「へ?……」

律「なにボーッとしてんだよ!!憂ちゃんが…!」

唯「ウイ…チャン…?」

唯「何のこと言ってんの?りっちゃん…」

紬「さぁ…」


律「おい!!今見ただろ!!!」ガッ

唯 「なに!?」

律「憂ちゃんが消えちゃったの!!お前見ただろ!!!」

唯「もうさっきから何言ってんの!?痛いよ……」

律「ふざけんな!!お前憂ちゃんの姉だろ!!?今まで一緒に暮らしてきたんだろ!!!?」

唯「ねえ……なんなの…」ビクビク

律「お前妹のことまでッ……!!」

紬「…………」



律(けど憂ちゃんはなんで……)

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「じゃあ始めて」

「はい…」


―学校


澪(皆大丈夫かな…)

澪(唯もムギも律も……)


グニャアア・・・


澪(うっ……!?頭イタ……)

澪(歪んでる……?物が全部…!)

アタマ痛たぁぁぁぁ…







唯「ねえりっちゃん…澪ちゃんの教室行くの…?」

律「そーだよ…当たり前だろ…」スタスタ

唯「ねえ…何で怒ってるの…?」

律「怒ってねえよ……」スタスタ

律(とにかく…今はこの状況をなんとかするんだ……)

律(急がないと、にかくヤバい……)

律(憂ちゃん………)



―教室

紬「ここね…秋山さん」

律「…………」

唯「居るかな……」





紬「いないみたい……」

唯「どうするの…?」

律「……他急いで探すぞ」

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梓「どうしたんですか?先輩」


澪「梓、私全部解ったんだ……」





「これでようやく一歩お目覚めね」

「そうですね」

「後なん…」

「2分です」

「…一人関係の薄い子が消えたわね」

「可哀想ですよね……最後に自分の運命を知るわけですし」

「“プログラム”としての運命ね…」

「この子、ちゃんと皆にお別れの挨拶できてるでしょうか……」

「その心の余裕があればね…」

「そろそろ梓ちゃん呼んどく?」

「あ、そうですね」

今宵、羽生竜王誕生の夢を見る…
明日必ず終局します

とある棋界の逆転奇手―ハブマジック―

ごたごたで現在帰路
面目ないですが地味にぽつぽつと


梓「解った…?なにがですか」

澪「もう少しでこの世界も終わるんだ」

梓「…は……?」

澪「信じられないのは分かる。私だって信じたくないよ…」

澪「けど思い出しちゃったんだ。全部…」

梓「ちょっと……何言ってるか全然解んねーです……」


澪「この世界が歪み始めてる…」

澪「梓……もう気付いてるんだろ?」

澪「自分が…仕組まれた存在であることにッッ…………!!」バキバキ

梓「ッ………!」

梓「……そうですよ…。出来れば気付かれずに“あっち”に行って欲しかったです」

澪「………」

梓「でもよかったです。こっちではお別れですが…」

梓「あっちではあなたの妹なんですから」



澪「ああ……」

澪「後輩としての梓と出会ってからの一年……絶対忘れないよ」

梓「私はもう消えちゃいますが……」

梓「あっちに行っても、元気に暮らして下さい」





律「居た!!」

澪梓 !

澪「律!!…に二人も!?」

唯紬「いや、ダレ……?」



澪「そっか…私のこともう忘れちゃったのか……」

律「っていうかお前私達のこと見えて……!」

梓「先輩は全てを思いだしたそうです」

律「オモイダス…?」

梓「そっか……澪先輩と特に関係が深い先輩3人はまだ……」

梓「本来の使命、自分の宿命に気付いてないんですね…」


澪「………」

律「お、おい澪…梓の奴何言ってんだよ……ワケわかんないっての…」

唯「そうだよ……さっきからあの子、何言って…」

唯「あっ、アタマいた………」

紬「私も……なんだか…」

律「おいどうした……!?」

澪「気付き始めたんだ……」

梓「もうすぐ終わるんですね………」


唯「そんな……皆そうだったの……?」

唯「みんなみんな、澪ちゃんの……」ポロポロ

澪「……そう」

紬「嘘よこんなの…」

梓「本当です……私達は全て……」

プログラムされた仮想世界に仕組まれた存在
“データそのもの”に過ぎません

梓「つまり…………」

梓「私達は、澪先輩の見てる夢そのものなんですよ……。思い出しました?」




律「唯…ムギ……こいつ何ワケわかんないこと」

唯「りっちゃん、もう終わりなんだよ…」

律「だから…なにが」

紬「聞いたでしょ……私達は別に死んでなんかなかった…」

唯「ただ“最初から”存在しなかったんだよ……」

律「なにを……」

梓「まだ分からないんですか………」

梓「私達も律先輩も、この仮想世界にプログラムされた―」

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澪「ん………」

梓「あ、お姉ちゃん起きましたよ!?」



―山中クリニック


さわ子「お帰りなさい」ニコ

澪「…………」

さわ子「どうだった?『人生円滑サポートシミュレーションシステム』は?」

和「先生、その名前なんとか短くできないんですか……」

さわ子「助手が口出ししなさんな~」

梓「お姉ちゃん大丈夫…?」

澪「梓……うん、大丈夫」

さわ子「今年から高校生なんでしょ?今回のシミュレーションは役に立ちそうかしら」


和「凄い技術ですよね、たった二時間で二年分の仮想体験が出来るんですから」

梓「この機械でですかぁ……」

さわ子「今回澪ちゃんには、高校入学から、二年時の冬までを体験してもらったけど」

さわ子「大切なお友達はできたかな?」

澪「はい…あの先生、こんなこと訊くのも野暮かと思うんですけど……」

さわ子「なに?」



澪「あの世界で出会った皆は……やっぱり消えてしまうんでしょうか…」

和「………」

さわ子「消える、とは考えない方がいいわ」

さわ子「確かに、今まで二年間一緒だった人だろうから、心苦しいのは解るわ」

澪「…………」

さわ子「だからこそ、最後に皆にさよならを言ってほしかったの…」

澪「…それで最後に現実の記憶を……」

さわ子「まっそういうワケね…」



さわ子「でもその様子なら高校生活も心配なさそうね」

和「秋山さん、きっと直ぐに大切なお友達が見つかりますよ」

澪(和………いや、真鍋さんか…)

梓「お姉ちゃん、あんまり心配する必要なかったんだよ…」

澪「…あの、最後に一ついいですか?」



澪「律………いやあのカチューシャの子は…」

澪(って、こんな事言っても分かるわけないか……)

さわ子「……真鍋さん…」

和「…はい…やっぱり…」

澪「?」

澪「あの、どうかしましたか……?」

さわ子「でるのよ…………」

澪「え?」



さわ子「ウチにはこれと同じマシンが他にもたくさんあるけど……」

さわ子「このBー05番、澪ちゃんが今回使ったこれね…」

さわ子「使ったクランケの方が皆言うのよ……」

さわ子「“カチューシャをした女の子が”って……名前は…」




「田井中律」




澪「……!」

さわ子「そうでしょ?」

澪「……はい…」



さわ子「どうやらこの機械で行うシミュレーションには、必ず『田井中律』と呼ばれる女の子が存在するみたいなの」

和「皆さん、終わった後に必ず言うんですよ、リツ、リツ、って…」

梓「なんか怖いですね……」

さわ子「きっと体験者に強い影響を残すんでしょうね……」

澪「リツ、…タイナカリツ……」

澪「ただの…プログラム……」


幼馴染みのタイナカリツ・・・

小学校時代のタイナカリツ

中学時代のタイナカリツ

高校生のタイナカリツ

バンドを一緒に組んだリツ

バイトをしたリツ…

合宿をしたリツ…

ライブを皆でした…………タ イ ナ カ リ ツ







梓「お姉ちゃん、そろそろ帰ろっか」

…全てはプログラム

和「秋山さん……?」

何度も、何度も違う人の…

さわ子「大丈夫?」

大切な人になってきた……律

梓「ねえ、聞いてるの?」

皆消えていく中……

たった一人で何度も何度も

仮想世界に生きる田井中律……






梓「お姉ちゃん!!」

澪「………!」

梓「ねぇ大丈夫……?」

澪「ごめん……大丈夫だよ」

和(無理もないですよね…本人にしたら何年も向こうに居たわけですから……)

さわ子(そりゃま、まだ少しは混乱するわよ…)

澪「じゃあ私、帰りますね」


さわ子「あ…はい、それじゃあ、今後に活かせるように祈ってるわ」

澪「はい…ありがとうございました」

さわ子「高校生活、頑張ってね」

澪「はい」

梓「じゃ、行こっ」

澪「…うん」

バタン


「次の方どうぞ」

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―季節、春

「じゃあねー」「バイバーイ」




「―なぁなぁ!」

少女「え……私…?」

「君いっつも一人で帰んないでさ、今日は私と一緒に帰ろうぜ!」

少女「あなたは…確か三組のクラスの……」

「あ、名前?」

「私は律、田井中律!よろしくね」



          ―END―

終局です
ダラダラと指してしまいすみませんでした
言いたかったことは、とにかく羽生さん永世七冠目指して頑張ってください。
ということです。ここまで観戦ありがとうございました

>>343
あの機械で別の患者によって作られた作られた夢の中で、
またりっちゃんは活躍している・りっちゃんは無限なの?って言いたかったんだごめん

>>344
その通りですよ。記憶を再構築された状態で、他人の夢を永遠ループします

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