咲「麻雀なんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」(1000)

あの県予選団体戦大会から2週間後のとある日曜日。
ひとけのない校舎の廊下を、原村和は麻雀部の部室に向かって歩いていた。

和(今日は宮永さんが久しぶりに部活に来るらしいですね。楽しみです)


和「♪~」

やがて部室の前に着いた。
和はドアノブに手をかけようとしたが、部室の中から何かおかしな音が聞こえてきた。

和「?」

ゴリゴリゴリゴリ

和(何の音でしょうか)

和はおそるおそるドアを開けてみた。
すると生臭いにおいが鼻をついた。

和「うっ……何ですかこのにおい」

咲「あ、原村さん!」

和「み、宮永さん?………」

部室にいたのは咲だった。

咲「久しぶりだね~」

和「え、ええ……、………!!」

咲は右手にノコギリを持っていた。

そして咲の足下、床に横たわっているのは
首から血を流している染谷まこだった。

和「ひっ………!!!」

咲「どうしたの?」

和「なななななな………なにをやってるんですか!!!!」

咲「何って、見れば分かるでしょ。首を切ってるんだよ~」

そういうと咲は、ふたたびノコギリをまこの首にあてがい、
ゴリゴリと音を立てながら作業を再開した。

和「あ……あ……あ……」

咲「ふー、さすがに2人目は疲れるね~」

和「ふふふふふ2人目!?」

咲「うん。さっき部長の首も切ったんだー、ほら」

咲の指差した先、長机の上に久の生首がごろりと転がっていた。

和「きゃあああああああああああ!!!!」

咲「大丈夫だよ、あとで原村さんもやってあげるから!!」

和「いやああああああああ!!!」

咲はまこの首を切り落とした。

咲「ふー、やっと切れたよ~」

そしてその首を久の生首の横に並べた。

咲「あとは原村さんと優希ちゃんと京ちゃんか~、おもったより大変だな~」

和「みみみみみ宮永さんっ!」

咲「なに?原村さん」

和「あああああああああああなた、自分で何やってるか分かってるんですか!!!」

咲「あはは、自分でやってることが分からないほど馬鹿じゃないよう」

和「そそそそそうじゃなくて!!なんでこんなこと……!!!」

咲「麻雀部を消滅させるためだよ」

和「え!?」

咲「麻雀部を消滅させるためだよ」

和「麻雀部を消滅……?何言ってるんですか……?」

咲「だって、麻雀部なんてあったら嫌なんだもん」

和「な、なんでそんな……宮永さん、あんなに麻雀好きだったんじゃ……」

咲「それはもう昔の話だよ、今の私は麻雀なんて大っきらいだし、麻雀部にも消えてほしいの」

和「なっ……でもだからってこんなっ………こ、殺したり、しなくても……」

咲「え?だって生きてたらこの人たち麻雀やるでしょ?
  麻雀やる人間が同じ学校にいるなんて耐えられないよ~」

和「………っ」

和には咲が何を考えているのか、何を言っているのかまったく理解できなかった。

咲「だからごめんね、原村さんにも死んでほしいんだ」

咲はノコギリを構えた。

和「や、やめてください……………!!………私、もう麻雀やりませんから!!!!」

咲「え?」

和「そ、そうです、私もう麻雀やりません、それならいいんでしょ?ね」

これは殺されないための出まかせだった。
理由は分からないが、咲は麻雀をやる人間を殺している。
ならば麻雀を捨てさえすれば殺されないのでは?というのを一瞬の思いつきで口にしたのだ。

咲「んー、それならまあいいかな!さすがに原村さんを殺すのはちょっと抵抗あるしね~」

和「ふう……」

咲「じゃあそうだ、他の人殺すの手伝ってよ!私一人じゃ大変なんだ~」

和「え、ええっ!?」

殺人の手伝い。自らの手で人を殺すわけではないにしろ、
それに手を貸すというのは恐ろしいことだ。
しかし逆らったらなにをされるか分からない。

和「そ、そうですね……宮永さん一人じゃ大変でしょうし……お手伝いします」

咲「やった~!」

久の体は僕が料理して美味しくいただいておくの……ふふ……

しばらくすると京太郎がやってきた。

京太郎「うーっす。おお、咲、久し振り~」

咲「今だよ、原村さん」

京太郎「ん?」

咲の合図とともに和が物陰から飛び出し、京太郎を羽交い絞めにした。

京太郎「のののの和!!??な、なにを、やめろよ咲も見てるだろああ胸の感触がっておい和」

咲「そのまま押さえててね和ちゃん」

京太郎「え?」

咲はノコギリを取り出した。

京太郎「お?」

咲「えいっ」

咲はノコギリの刃を京太郎の首に当て、一気に引いた。
京太郎の首の皮膚が裂け、血がいきおいよく飛び出してきた。

京太郎「ぎゃああああああああ!!!」

僕「ねぇ咲ちゃん、こいつら食べちゃってもいい?」
咲「あー別にいいよ。片付けるのめんどいし」
僕「やったぁ……はぁはぁ…じゃあさっそく…久部長……ガブッ……んん…ぶちぃ!…ぐちゃ…ぐちょ…べちょっびちゃ…くちゃくちゃ…もぐもぐ……ごっくん……うまああああぁぁぁぁ!!」

京太郎「何をするんだ……咲……和……」

京太郎は首を押さえてうずくまった。

和「……」

咲「大丈夫だよ、すぐ楽になるから」

京太郎「な……」

京太郎は気を失った。
咲は京太郎を仰向けに寝かせ、胸の上に右脚を置いて押さえつけた。

咲「原村さん、頭のほう押さえといてくれない?」

和「え……ええ」

一瞬ためらったが、逆らえば殺されてしまうと思ったので
和はしゃがんで京太郎の生気の消えた顔を押さえた。

咲「よし、いくよ」

咲はノコギリでゴリゴリゴリゴリと首を切る。
ノコギリを往復させるたびに血が飛んで、咲や和にかかった。

和の目の前で、今まさに人体切断がおこなわれている。
それは今までに見たどんな映像よりもショッキングだった。

和「う……ううっ」

和は必死に吐き気に耐えた。

京太郎の首は10分ほどで切断された。

咲「ふう、やっと切れたよ。ありがとう、原村さん」

和「いえ………あの、お手洗い行ってきます」

咲「うん」



女子トイレ。

和「うええええええええええええっ!!」

和は何度も何度も吐いた。
自分が殺人に手を貸してしまったこと、目の前で京太郎の首が切り落とされたこと。
それらのことを考えると嘔吐が止まらなかった。

しばらくして落ち着くと、和は2週間前の県予選大会のことを思い返した。

キャプテン切断シーンwktk

和(宮永さんがこうなってしまったのは……やはりあの時の……)

県予選大会決勝。
咲は清澄高校の大将として戦っていた。
しかし、龍門渕高校・天江衣の圧倒的な力の前に惨敗してしまったのだ。
咲だけではなく、鶴賀の加治木ゆみ、風越の池田華菜も同様の結果だった。
まさに天江の完封勝利であった。

天江の打ち方は人智を超越していたといっても過言ではなかった。
咲も加治木も池田も、一度の反撃もできぬままズタボロにされてしまったのだ。

その天江の悪魔のような力が生み出す恐怖は、
モニターで試合を見ていた和にも伝わってきていた。
画面越しの和でさえも鳥肌を立て、体を震わせながら観戦していたのだから
生で天江と打っている3人の感じていた恐怖は筆舌に尽くしがたいものがあったに違いない。

大会の後、咲は家に引きこもってしまい、学校に来なくなってしまった。
聞けば加治木や池田も同じ状態であるということだった。

和(あの時の天江衣との戦い………神か悪魔かと見紛うような打ち方に圧倒されて、
  宮永さんはおかしくなってしまったのでしょうか)

和(私だって、あんな打ち方をされてボロボロに負けてしまえば、
  それ以降も麻雀を好きでいられる自信はありません……むしろトラウマになるかも)

和は手洗い場の水で口をゆすいだ。

和(でも、だからって)



優希「おー、のどちゃーん!」

和がトイレから出ると、優希と出くわした。

和「あ、優希……おはようございます」

優希「どうしたー、のどちゃん。元気ないじぇ」

和「そ、そんなことないですよ」

優希「あ、のどちゃんが読みたいって言ってた麻雀の本持ってきたじぇー」

和「あ……ありがとうございます」

優希は和に本を手渡した。

次の瞬間、どこからかナイフが飛んできて優希の後頭部に突き刺さった。

優希「ぐぇっ」

和「!?」

ナイフを投げたのは咲だった。

咲「何してるの?原村さん。もう麻雀は捨てるんじゃなかったの?」

和「え?あっ……」

和は慌てて手に持っていた本を床に捨てた。

和「違うんです、これは……」

咲「何が違うの?麻雀の本持ってたじゃない」

和「そのっ……」

咲はノコギリを引きずりながら、一歩一歩近づいてくる。

咲「やっぱり原村さんも麻雀好きなんだね。じゃあ殺さないとね!!」

和「ひっ……………!!!!」

和が最期に見たのは血がべっとりとついたノコギリを振りかざす咲の姿だった。

すぐ殺しすぎ

もっといたぶってからでないと…

あの県予選団体戦大会から2週間後のとある日曜日。
ひとけのない校舎の廊下を、東横桃子は麻雀部の部室に向かって歩いていた。

桃子(今日は加治木先輩が久しぶりに部活に来るらしいっすね。楽しみっす)



桃子「♪~」

やがて部室の前に着いた。
桃子がドアを開けると、加治木がひとり、パイプ椅子に腰かけていた。

加治木「おう」

桃子「加治木先輩!!お久しぶりっす!!」

桃子は加治木に抱きつきたい気持ちを抑えつつ、
加治木の横に椅子を並べて座った。

桃子「あの、もう大丈夫なんすか?」

加治木「ん?ああ、麻雀に負けたくらいでいつまでも休んでられないだろ」

桃子「はい……」

桃子(麻雀に負けたくらい………って言うけど、あの天江の麻雀は異常だった……
   私が天江と打ってたら、もう麻雀を見るのも嫌になってたかもしれないのに……
   加治木先輩は強い人っす)

加治木「ん?なんかいったか?」

桃子「いえ、なんでもないっす」

加治木「あとの3人はまだ来ないのか」

桃子「多分もうすぐ来るっす!みんな揃ったらまた麻雀打てるっすね!」

加治木「ああ」

桃子「あ、先輩、妹尾先輩が役覚えた~って喜んでたっすよ。
   それから蒲原先輩が……」

加治木「ああ」

嬉しそうに話す桃子の声を聞き流しながら、
加治木はポケットの中のナイフを確認した。

加治木(やらねばならない)

池田がキャプテンを……

加治木「桃子」

桃子「なんすか?先輩……っ」

加治木は唐突に桃子を抱きしめた。

桃子「先輩……!!??」

突然の出来事に桃子は驚いたが、
その感情はすぐに喜びに変わり、桃子も加治木を抱きしめ返した。

加治木はこうすれば桃子がおとなしくなると知っての行動だった。
左手を桃子の背中にまわしたままで右手でナイフを取り出した。

桃子はうっとりとした表情で目をつぶっていて、加治木の行動には気付かなかった。

加治木「桃子」

加治木は自分の体から桃子を離した。

桃子「せん………、……!!」

そして桃子が油断しているスキに、桃子の腹部にナイフを突き刺した。

おい やめろ

桃子「せん………ぱい………」

桃子は椅子から崩れ落ちた。

桃子「なんで………」

加治木「すまんな。私はこうしないといけないんだ」

桃子「な………」

加治木「麻雀部を消滅させる、自分の周りから麻雀という存在を抹消する
    そうしなければ私は一生麻雀の呪縛に苦しむことになる」

桃子「天江……ころ……も……の…………」

加治木「そうだ、天江衣……あの悪魔は私に……いや、私たちに
    麻雀への恐怖と悪夢と植え付け、私たちの心を粉々に打ち砕いたんだ……麻雀でな」

桃子「う………」

加治木「だから」

桃子「…麻雀を…」

桃子はこと切れた。

なぜか池田だけ自殺

加治木は桃子の死体を掃除ロッカーの中に押し込んだ。

しばらくして蒲原、妹尾、睦月の3人がやってきた。

蒲原「おーゆみちん、久々だナ」

妹尾「あの、もう大丈夫なんですか?」

加治木「ああ、心配かけてすまなかったな、2週間も休んでしまって」

蒲原「いや、仕方ないよ。あんな麻雀を見せられたら、誰だって……」

睦月「そうですよ、私だったらショックのあまり麻雀やめてしまいますよ」

加治木(やめるくらいで済めば良かったんだがな)

蒲原「なんかいったか?」

加治木「いや、なにも」

蒲原「まーいいや、全員そろったことだし、まずはゆみちんの快気祝いでも」

妹尾「いいですねー」

加治木(こいつらモモがステルスを発動していると思っているな)

加治木「すまん、そのまえにちょっと話がある」

蒲原「ん?」

加治木はそう言いながら、部室のドアの前に歩を進めた。
そして3人の方に向き直り、後ろ手にドアの鍵をかけた。
このドアは建てつけが悪く、一度鍵をかけると開けるのにはコツがいるのだ。

加治木「実はこの部屋にはモモがいない」

妹尾「あれ、そうだったんですか」

蒲原「わはは、てっきりステルス中かと思ってたヨ」

加治木「津山。そこの掃除ロッカーを開けてみろ」

睦月「え?はい」

睦月は何も考えず言われるままにロッカーを開けた。

すると、中から桃子の亡骸が倒れてきた。

睦月「う、うわっ…………!!!」

妹尾「え?え?え?」

加治木「私がやったんだ」

蒲原「えっ……」

3人はそこでやっと桃子の腹から血が流れていることに気がついた。

妹尾「うわわわ、ほほほほんとにしししししし死んで……」

睦月「な、ななななな」

蒲原「ゆみちん……どういうことだ?」

加治木「だから言っただろう、私がやったんだ」

蒲原「そうじゃない、なんでこんなことやったのか聞いてるんだ」

加治木「麻雀部をなくすためだよ!!!」

加治木はそういうとナイフを取り出し、
蒲原に飛びかかった。

蒲原「ゆみちん!!」

加治木「死ねええええええええええええ!!!!」

加治木のナイフが蒲原の胸を貫いた。

蒲原「がっ……」

加治木「ふっ……あとはお前らだ」

妹尾と睦月は部屋の隅で体を寄せ合いガタガタと震えている。

妹尾「な、な、なんでこんな………!!!」

加治木「お前らには分かるまいよ、この2週間、私がどんな気持ちで過ごしていたか」

妹尾「え……」

加治木「寝ても覚めてもあの試合の恐怖に苛まれるんだ。天江の幻覚に襲われ、悪夢にうなされ、
    麻雀牌を見ただけで……いや、思い浮かべただけで吐き気がする。
    ろくに眠れず、ごはんも食べられず、……
    あれだけの……天江の恐怖をお前らも味わえば私のようになるさ」

妹尾「でも、だからってそんな………!!!」

加治木「黙れ!!お前らに私の気持ちは分からないと言っているだろう!!」

妹尾「ひっ……!!!!」

2人が死体と化すまでに時間は要さなかった。

加治木は4人の死体に囲まれていた。

加治木(これで麻雀部は廃部だな。ふふっ)

一人で笑みをこぼしながら、携帯電話を取り出した。
メールの受信ボックスには、清澄高校・宮永咲からのメールがはいっていた。

加治木は咲とはあの大将戦でしか面識はなく、
試合後もすぐに離れ離れになったのだが、
どうやら人づてに加治木のアドレスを入手したらしい。

加治木と咲は引きこもっていた間、メールのやり取りをしていた。

そのなかで咲が提案してきたのだ。
「私たちが助かるためには、麻雀と天江衣の呪縛から解放されるしかない
 麻雀部を消滅させ、天江衣に復讐をしよう」と。

加治木は最初は反対した。
しかし、咲から届くメールを呼んでいるうちに、不思議な感情が湧いてきたのだった。
加治木の精神も限界に達していたせいかもしれないが、最終的に加治木は殺人計画に賛同したのだった。


加治木(やってよかった……麻雀部がなくなったと思うと、心の重荷が半分くらいなくなった気がする)

加治木(あとは……)

加治木は咲からメールで送られてきた計画を確認した。

加治木(部員の首を切り落とす。その首を持って清澄に集合……
    そして清澄に龍門渕高校のメンバーを呼び、天江衣を殺害する……か)

加治木は携帯を閉じた。

加治木(これが成功すれば、私はこの呪縛から解放されるんだ)

用務員室から盗み出したナタを取り出し、
加治木は首の切断作業に入った。

再び清澄高校。

咲「あっ、こんにちは、加治木さん!」

加治木「ああ」

加治木は4つの生首が入ったリュックを背負って、清澄高校にやってきていた。

加治木「ほら、生首だ」

咲「わ、素敵!さっそく並べましょう」

加治木「ああ…」

加治木は妙な気分になった。
こんな純粋そうな子が、あんな計画を思いつくなんて……。
いや、こんな子だからこそ狂ったときの反動が大きいのか?

加治木「それより、この計画の件なんだけど」

咲「ああ、加治木さんってすごいですよねー、こんな計画を思いついちゃうなんて」

加治木「え?」

咲「え?」

加治木「え?あれ考えたのは宮永さんじゃないのか?」

咲「いえ、加治木さんがメールで送ってきて……」

加治木「え?いやでも……」

その時、麻雀部のドアがノックされた。

咲「はぁい」

池田「あの……風越の……池田です……」

咲「はーい、どうぞぉ」

咲がそう言うと、血生臭いにおいのリュックを背負った池田が入ってきた。
池田は頬がこけ、目の下にクマができていて、かなりやつれているようだった。
何かに怯えているかのように、目をせわしなくキョロキョロさせている。

池田はリュックを机の上に下ろし、咲がそれをひらいた。
大会に出ていた風越メンバー4人の生首が入っており、咲は嬉々としてその生首を並べはじめた。

加治木(………)

そのせいでメールの話は打ち切りになったが、加治木は
咲の記憶が混乱しているのだろう…と考えて、納得することにした。

咲「ふう、これで準備は整ったねー」

加治木「あとは龍門渕の到着を待つだけだな」

池田「うん……」

加治木「そういえば…風越の麻雀部はかなり大規模なんだろう?
    ほかの部員たちを殺すのは大変だったんじゃないのか?」

池田は無言でポケットから小さなビンを取り出した。

咲「ふーん、毒なんて使ったんだ~。よく考えたらナイフで刺すよりそっちの方が効率いいね」

池田「へへ……」






清澄高校・校門前

透華「ここが清澄高校ですわね」

一「え、ここ高校なの?小さいから小学校かと思っちゃったよ」

智紀「……これが標準的な高校の規模」

うわああああ、って池田の殺人シーン見せろよ、ここでもスルーだし

純「とにかくいこうぜ。せっかく全国大会進出祝いをしてくれるっていうんだし」

透華「なんでわざわざここまで来なくちゃいけないのかしら……
   私たちのお祝いなんですから、龍門渕でやればよろしいのに」

一「距離的に4校の中心に位置しているのがこの清澄らしいよ」

智紀「そう、鶴賀や風越からは龍門渕は遠すぎる」

透華「そういうことですの?でも、祝われる側がわざわざ出向くなんて納得いきませんわね」

一「まあまあ」

純「ところで衣は?」

透華「ああ、衣なら遅刻ですわ」

智紀「いつものこと」

純「ったくー、毎度毎度だらしねーなー」

そんなことを話しながら、4人は清澄高校麻雀部室へと歩いていった。

とーか、お逃げになってえええええええええええ

一行は部室に到着した。

透華「ここですわね」

一「なんか変なにおいしない?」

純「そうか?」

透華はドアをノックした。

透華「龍門渕透華ですわ。早く開けてくださいまし」

しかし返事はなかった。

一「いないのかな」

純「時間間違えたとか」

智紀「いや、この時間であってる」

透華「なんですの?バカにしてますわ、まったく。とにかく入りましょ」

透華はドアを開けた。

部室はカーテンが閉まっていて薄暗かった。

透華「ほんとに誰もいませんわね」

4人は部屋の中に入っていった。

一「うぇー、やっぱりなんか変なにおいするよ」

純「そう言われれば、かすかに……」

智紀「なまぐさい、におい……」

透華「ひっ!!こ、これ……血ではなくって!?」

透華が床を指さした。
確かにそこには赤黒いものが広範囲にわたってべったりと付着している。

一「うわっ……!」

智紀「確かに血液……」

するとその時、机の下から咲、加治木、池田の3人が飛び出してきた。

純「な、なんだ!?」

咲はナイフで純の脇腹を一刺し。
そしてさらに、ひるんだすきに胸にも突き刺した。

純「ぐ……はっ」

加治木はナタで智紀の腹をぶった切った。
こちらは即死だった。
声をあげる間もなく智紀は倒れた。

池田は一に襲いかかったが避けられた。

一「なななな、なんなんだ!?」

透華「純!!智紀!!」

咲「ふぅ……天江衣は来てないんだね」

加治木「まあそのほうがやりやすい」

透華「な、何をするんですの貴方たち!!!」

咲「何をするって、殺すんだよ」

透華「えっ!?」

咲「麻雀部を皆殺しにするんだよ」

酷過ぎる

咲「これも全部あなたたちのせいだよ」

透華「えっ?」

咲「あなたたちが天江衣を使ったからこんなになっちゃったんだよ」

加治木「我々は天江衣によって精神をズタボロに切り裂かれた」

池田「わ……わたしぁ……もぅまあじゃんなんて………みたくなぃ…し…」

咲「だから麻雀部を潰すんだよ」

加治木「我々の麻雀部も、そして貴様らも」

咲「私たちがこんなに苦しんでるのに、あなたたちだけのうのうと全国に行くなんて。
  それも私たちを苦しめる麻雀で」

加治木「だから」

池田「おまぇたちもぉ……ころすし……」

透華「な、なにを言ってるのかさっぱりですわ!」

一「透華、この人達おかしいよ……!!」

                 O
                o

            ,,ggllllllllllllllgg,,

           ,,lilillllllllllllllllllllllllllllk
          ,,lili[^^^    ゚゚llllllllll._
         gllll゚゜       ^)llll[

         llll[,,ggggg。 pgllllpx.l][
         〈[^],,,,,,],,"  .。ggpr 〈[
         ..l[  ゛゛゜      |  <夢・・・・か・・・
         ..l[   ,,、  g_   [!    良かったぁ

          _ll、 y^^"ヾ"`、(  」゜
 ムクッ      .lk_ メll[]];;59f  _g゜
            ]g      ,,pl゚゛
            r'⌒と、j   ヽ   
           ノ ,.ィ'  `ヽ. /
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          く.,_`^''ー-、_,,..ノ/
            `~`''ー--‐'

咲「私たちはおかしくなんかない………おかしいのは貴様らと天江衣だ!!」

透華「ひぃっ」

咲「殺してやる、殺してやる………!!」

咲の表情はさっきまでとは一変していた。
咲は傍らにあった椅子を手に取り、頭の上に持ち上げた。

咲「潰れろ龍門渕ぃ!!」

咲はそれを一気に振り下ろした。
透華の脳天に直撃した。

透華「ぐはっ」

咲「麻雀をやってる奴は死ね!!麻雀部はつぶれてしまえ!!!」

そういいながら、何度も何度も椅子を透華の頭に叩きつける。

咲「麻雀なんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」

透華「ぎゃああああああああっ!!」

透華は頭から血を噴き出し、動かなくなった。

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          く.,_`^''ー-、_,,..ノ/
            `~`''ー--‐'

一「透華……透華ああああああっ!!!」

加治木「おいおい、頭がボロボロじゃないか。それじゃ生首にしても見栄えが悪くなるぞ」

咲「はあはあ……はあはあ……ごめんね……勢いでやっちゃった……」

一「透華……透華っ……おまえら……よくも透華を……!!!」

咲「ふふふ、大丈夫だよ、あなたもすぐに透華さんのところに送ってあげるから!」

一「うるさい!!透華を……透華を返せええええええええっ!!」

加治木「ふんっ」

咲に飛びかかろうとする一の首に、
加治木はナタをつきつけた。

咲「ナイスだよ加治木さん」

一「こんなもの……!!どうせ僕のことも殺すんだろう!!ならそこの茶髪を道連れにしてやる!!」

一はナタを掴み、どけようとしたが、
加治木の力が強く微動だにしなかった。

咲はナイフを取り出した。

咲「無駄な抵抗はやめてよ、面倒だから」

咲「ほら、透華さんに会わせてあげるから」

一「うううっ………うわあああああっ!!!」

一はやけになって暴れはじめた。
しかしそれも一瞬のことで、すぐに咲のナイフが一の動きを止めた。

一「う……ぐ………とう…か………」

加治木「ふう、これで全員仕留めたか」

咲「あとは天江衣がくるのを待つだけだね」

加治木「それまでに首を切り落とさないとな……」

咲「池田さんやっといてよ、なんにも役に立ってないんだし」

池田「……」

ハギヨシ「衣お嬢様。ここが清澄高校でございます」

衣「ふーん、ここか~。ちんけな高校だな~」

池田が必死に龍門渕メンバーの首を切り、咲と加治木がジュースを飲んでいる頃
やっと天江衣が清澄に到着した。

衣「透華達はもう来ているのだろう?」

ハギヨシ「はい、みなさまもうお着きになっていると思います」

衣「なら早く行かないとな~、あまり待たせるのもまずかろう」

ハギヨシ「ハイ」







池田「ぜんぶきれた………」

加治木「ああ、じゃあ並べておいてくれ」

池田「……」

キュイーン

??「WAWAWA忘れ物~」

??「!」

??「ごゆっくりぃぃぃーーー」

バタッ

咲「ねえねえ加治木さん、天江衣が来たよ」

咲は窓から外を眺めながら言った。

加治木「付き人も一緒だな」

咲「付き人はソッコーで殺すとして、天江衣はどうしようか?」

加治木「そうだな、薬でも嗅がせて眠らせるか……」





衣「狭い高校だな~、ほんとうに校舎か?物置じゃないのか?」

ハギヨシ「校舎でございます、衣お嬢様」

衣「部室はどっちだ?」

ハギヨシ「こちらでございます、衣お嬢様」

衣「疲れたぞハギヨシ」

ハギヨシ「もう少しでございます、衣お嬢様」

>>94
加治木「逃がすか谷口ィ!!!! 」

谷口「やっ槍ッ!!!! ぐそおおおおおおおおおおお」

ハギヨシ「ここですね」

衣「そうか、早く入ろう」

ハギヨシは軽くノックし、ドアを開けた。

すると次の瞬間、ナイフをハギヨシの顔面めがけて飛来、直撃した。

ハギヨシ「がっ………」

衣「ハギヨシ!?」

いきなりの出来事に衣が混乱していると、
横から飛び出してきた加治木によってハンカチを口に押し当てられた。
なにかの薬が含まれていたようで、衣は意識が遠のいていくのを感じた。

衣ちゃんどうなっちゃうん・・・?

衣が目覚めると、ベッドの上に横たえられていた。
起き上がろうとしたが身動きが取れない。
手足が縛られているようだ。

咲「あ、起きたんだ」

加治木「おはよう」

衣「な、なんだこれは!おまえら何する気だ!今すぐ解けええっ!」

咲「うふふふふ、その前に見てほしいものがあるんだ」

衣「な、なんだ」

咲は衣を取り囲むように置いてある布を、一気に払い取った。

衣「ぬぁっ……!!」

その下から出てきたのは17個の生首だった。

衣「ななななななんだこれっ!!!」

咲「あなたのせいだよ、あなたのせいでこれだけの人が死んじゃったの」

衣「はぁ!?」

盛 り 上 が っ て ま い り ま し た

咲「あなたの麻雀のせいなんだよ。あなたの麻雀が私たちに麻雀への恐怖を植え付けたんだよ」

衣「でもっ、だからって……っ」

加治木「我々はもはや麻雀部を破壊し、貴様を殺さないかぎりは貴様の幻影から逃れることはできない。
    死んでもらうぞ、天江衣」

衣「ばかなことはやめろ!!お前たちが弱いのが原因だろう!!私のせいじゃない!!」

そんな衣の声は無視された。

咲「ねえ、どうやって殺す?」

加治木「そうだな……麻雀で死んでもらおうか」

咲「良い考えだね!」

咲はそう言うと麻雀牌が入った箱を取り出した。

咲「加治木さん、おねがい!」

加治木は衣の口をむりやりひらいた。

衣「あがっ、が……」

咲「いっくよー」

  \::|, '´ /´ / .l∧ \                   /
.../  //´_ \       l.\     (;>△<)     /   , -:::''''':::-::、
/ /./rO(_)ヘ  〃ー- ._l::  \             /  /ヾ-^ヾ::::::::::: V..\
/ / {:::O:::/    r(__):、 l:  / l\ .         /  /\ヽ/ ^~''∨ヾ\:::\
/, イ{  `ー      {::O0::} l: /  l \∧∧∧∧/   /;;/;; /  _ノ   ヽ、_  \:i::ヽ
{/ レ >、  L _‐- 、 `U ´ .l: /   l <  池 ス>  //:イ::::::o゚⌒  ⌒゚o:::::::;i::i;;ヾ
   /`丶、_ ¨     _ .ィ:/      < 予 田 |> /;;;;/ ii   (__人__)    |:::i::i:
  / Y ヽ | / ̄/', /レ|::/ヽ/ < 感 タ  パ> { ::/ケ\   ` ⌒´   /ダ;;;ゞ
──────────────< !!! イ  | >──────────────
 .l//´/レ  /  / /  / i i!<   ム   >   /:.:.:/.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:/ヽ、:.:.`ヽ
 l/ //ノ( .l /  /  /川ソ:、i <   の  >   /:.:./:.:.:.:.:/:.:.:.///    ヽ::::::::',.
 l  .// :⌒ l,/ ヽ} { ll:: :: :ヾ  l  ∨∨∨∨    /:.:./:.:.:.:./≧/ /'      ヾ:::::::i'.
 |  l l {rヾ、 ヽ }}  ヾl{L-==i  |       |     /:.:./:.:.:.:./:.:./=_         } }:::l
ll| l l  ヽ }ヾ 丶リ /' :: :: ::: ::l ./      |  _/::://::::f7:::::/   `丶-   -‐' /::::l
/l l l          :: :: ::: ::/ ./       |__r{ ri `\/::::::レ::::/           /:::::::l.
l l l l        ァ ミ--/ /        |{ヾ ', し´ ̄ ̄ l:::/   ̄`ヾ    ≠C /:::::::l
..l l l.l     、  ゞノj / l;/       |/`` `      l:/\      丶   /::l:::::::l
 .l l  {\ヽ       /l /          |  ',       .l:l  \  ----  .ィ j::l:::::::l
  l l  `ヽ j´     ./  l  , '          |   ,      l:l  / ヽ、__. < / \:::リ


咲は衣の口に麻雀牌を流し込んだ。

衣「んぐ、んんんんんっ!!」

咲「吐かせちゃダメだよ加治木さん、ちゃんと飲み込ませてね」

加治木「ああ」

加治木は牌でいっぱいになった口を閉じさせ、上から手のひらで押さえつけた。

加治木「さあ、飲み込めよ。お前の好きな麻雀牌だぞ?」

衣「うぐっ、ぐっ……ぐうっ」

衣は目に涙を浮かべ、体を震わせながら牌を少しずつ飲み込んでいった。

咲「わあ、ほんとに飲み込んでる!気持ち悪いね~」

加治木「もういいかな」

加治木が手を離すと、衣が飲み込んだ牌が
胃液とともに逆流し、吐き出されてしまった。

咲「うわっ!もう、吐かないでよ!」

加治木「汚いな天江……無様だな」

衣「うっ……うええええっ……」

咲「そうだ。ねえ、私たちまだ謝ってもらってないよ」

加治木「そういえばそうだな」

咲「ねえ、天江衣さん、私たちに謝ってよ。もとはといえばあなたが悪いんだからさ」

衣「う、うう……ごめんな…さい……」

衣はさっきの仕打ちのおかげですっかり弱気になっていた。

咲「そんな謝り方で誠意が伝わると思ってるの?」

衣「うう…じゃあなんて……」

咲「そんなことくらい自分で考えてよ!!」

咲は、衣のまだ幼さの残る腕にナイフを突き立てた。

衣「ぎゃああああああっ!!」

白い肌が赤く染まっていく。

加治木「さあ、早く謝れ天江」

咲「そうだよ、もっと痛いことしちゃうよ?
  まー最終的には殺すんだけどね」

最後は残った三人で殺し合いか

衣「わだっ…わたしのっ……麻雀のせいでっ………みなさんに……ひくっ………
  怖がらせてっ……それで……もうしわけありまぜんでじたっ……わだしが……
  わるいんですっ………うううっ………」

衣は腕の痛みに耐えつつ、泣きじゃくりながらも必死に謝った。
咲と加治木はそれを冷めた目で見降ろしていた。

咲「ねえ、許せる?加治木さん」

加治木「そんな言葉の上だけの謝罪ではな……気持ちがこもっていないな!!」

加治木は反対側の腕にナイフを突き刺した。

衣「ぎやああああああああああああっ!!!」

咲「体で謝ってほしいよね」

加治木「そうだな」

衣「かか、か、か、からだ……で……?」

咲はナイフで衣の制服を切り裂いた。
制服の下から子供のような肉づきの体が出てきた。

咲「そう、体で」

ラストは残った3人でサンマだろ

咲「私は『ごめん』で、加治木さんが『なさい』ね」

加治木「ああ」

衣「えっ?えっ?」

咲と加治木は衣のおなかにナイフの刃をあてがった。

衣「ひっ……!!」

そのまま2人は皮膚をナイフで裂いていく。

衣「ひっ、いぎゃあああっ!!!」

咲「暴れないでよ!!」

加治木「なかなか難しいな、人の皮膚に文字を彫るというのは」

咲「でも上手だよ加治木さん」

衣「ひぃぃぃいい、痛い、痛いよおおおおお!!
  助けてハギヨシいいいいいいい!!!透華ああああああああっ!!!」

咲「うるさい!!!」

こうして生まれたのが習字である

ハギヨシ
そろそろ死んだフリはやめなよ

咲「池田さん!!天江衣の口押さえといて!!」

池田「あ、うん……」

今まで見ているだけだった池田はよろよろと立ちあがり、
衣の口を押さえた。

衣「むぐー!!むむー!!」

加治木「やっと静かになったな」

咲「ふう、できた!」

加治木「こっちもできたぞ」

衣のお腹には赤く「ごめんなさい」と大きく彫りこまれていた。

咲「ま、仕方ないからこれを謝罪の代わりにしてあげるよ」

加治木「まあ殺すのとは別だがな」

加治木は池田にナイフを渡した。

咲「じゃあ、そろそろ死んでもらうね」

衣「ううう、うあああっ!!」

どうでもいいが首の数おかしくね?
風越だけで17は軽く行くよね?

咲「うふふふふ、天江衣を殺せば」

加治木「そう、私たちは呪縛から解放される」

池田「はあ、はあ」

衣「うわあああああっ、やめてえええええええええっ!!!
  なんでもするからああああああああ!!!!やめてええええええええええええええええ!!!」

咲「まだこんな声出せるほど元気なんだ」

加治木「どうでもいい。やるぞ」

咲「うん、じゃあいっせーのせ、でやろうか」

加治木「ああ」

3人はナイフを振り上げた。

咲「いっせーのーせ!!」

衣「いやあああああああああああああああああああああ!!!!!」

同時に振り下ろされた3本のナイフが衣の胸に突き刺さった。

>>135
池田が持ってきたのは大会に出たメンバーの分のみってことで

衣「ぐ………あっ………」

衣は一瞬痙攣したのち、胸から血を噴き出して動かなくなった。

加治木「やったのか……やりとげたのか」

咲「やった……やったんだよ私たち!!!あははははははは!!!!あはははははははは!!!!」

池田「うううううううっ、ううううううううううう……」

咲「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!あはははははははははは!!!!」

咲は高らかに笑いだし、池田はうずくまって泣きはじめた。

咲「うふふふふふっ、うふふふっ、これで私たちは自由なんだ……あははっ、うふっ」

加治木「ああ、そうだ」

咲「うふっ、うふふふふふ」

そのとき、バーンという音が響いた。
と同時に、先ほどまで高笑いしていた咲の声がやみ、さらに咲は床に倒れた。
咲の額には穴があいていた。

加治木「なっ……なんだ!?」

まさか主人公が死ぬとは

萩原か

俺が放った銃弾は、咲めがけて一直線に飛んでいった。

加治木「おい!大丈夫か!?」

しかし咲の返事はなかった。

加治木「お前なにものd」

バーーーーーーーーーーーーーーーーーン

加治木の額を銃弾が貫いた。

俺「いくぞ、華菜」


俺と池田は幸せに暮らしましたとさ


~fin~

部室の入り口に立ち、拳銃を構えていたのは。

加治木「お前は……藤田プロ!?」

藤田「ああそうだ。県予選大会以来だな。加治木」

加治木「い、一体何を……」

加治木は藤田の拳銃と、倒れている咲を交互に見比べた。

藤田「しかしよくやってくれたよ、おまえたち3人は」

加治木「何っ?」

その藤田の言葉を聞いて、なぜか加治木の脳裏にあの会話が蘇った。

「それより、この計画の件なんだけど」
「ああ、加治木さんってすごいですよねー、こんな計画を思いついちゃうなんて」
「え?」
「え?」
「え?あれ考えたのは宮永さんじゃないのか?」
「いえ、加治木さんがメールで送ってきて……」
「え?いやでも……」

加治木「まさか、貴様!!」

藤田「ふん、勘が鋭いな。流石と言ったところか」

藤田相手だと池田に勝ち目はないなwww

加治木「貴様が我々3人の名を騙り、我々3人をそそのかしたのか」

藤田「半分正解だな。メールを送ったのは私だけじゃないさ。
   この計画を考えたのは全国のプロ麻雀士連合だ」

加治木「なにっ!?」

藤田「我々は天江衣が邪魔だったんだよ。あいつはやがてプロになるだろう。
   あの悪魔のような力を持った子がプロになればどうなる?」

加治木「………………貴様らプロの地位が脅かされるということか」

藤田「そういうことだ。プロなんてのは自分の地位がもっとも大事なんだよ。
   あんなやつがプロになってもらっては困るんだ。そこで、全会一致で天江衣の抹殺が決定された」

加治木「それに我々を利用したというのか!!」

藤田「ふふ、怒ることはないだろう、むしろ喜んでほしいくらいだ。
   あのままならお前たちは死ぬまで天江衣の幻影におびえ続けなければならなかった」

加治木「………他の麻雀部員まで殺させたのはなぜだ」

藤田「同じ理由だよ、この県には全国トップクラスの実力が集中しすぎている。
   麻雀界のバランスを崩しかねないからな」

加治木「……っ」

確かに正論だ

衣ぐらい超人的に強いやつがいたほうがプロ麻雀界も盛り上がるだろ
しかも外見もいいと来てるし
ただでさえマイナーな麻雀プロなんだから
客寄せパンダは必要なのにもったいない

加治木「そして、我々も殺すのか……」

藤田「そうだ。オトナは汚いが、自分で手を汚すのが大嫌いなんだ。
   だからお前たちに罪をかぶってもらう」

加治木「……」

藤田「納得はできないだろうがな」

加治木「……」

藤田「反抗しないのか」

加治木「…………悪いのは結局自分だからな。
    感情に任せて人を殺したのも自分だ。天江に負けてしまったのも自分だ。
    麻雀部も潰して、天江への復讐も達成した。
    貴様のネタばらしも戸惑いはしたが…………まあ悪いのは自分だ。
    今はもう悔いはない。殺せ」

藤田「良い心がけだ」

藤田は加治木のこめかみに銃口を押しつけ、引き金を引いた。
ついでに池田も撃ち殺した。

この事件はニュースで大々的に取り上げられた。
「麻雀部を襲った悲劇!!」「女子高生による史上最悪の大量猟奇殺人!!」
などの見出しによって、連日連夜報道され、人々の話題もこれで持ちきりになった。

キャスター「………そして、この事件は犯人の3人の少女が自殺して終わったわけですが」

コメンテイター「そうですな……なんとも痛ましいというか……言葉では語れないほどですな
        被害者は100人弱……これを3人の女子高生が殺害したわけです」

キャスター「そうですね……この事件が麻雀界に与えた影響も凄まじいものがあるかと思いますが、
     どうですか?藤田プロ」

藤田「そうですね……天江衣を筆頭に、あの県は本当にレベルが高かったのです。
   それが一気に失われたとなっては……麻雀界の衰退も免れることができませんが……
   しかし、我々のようなプロが、こんなときだからこそ麻雀界を支えなばならないと思っております」

キャスター「ありがとうございました、藤田プロ。それでは、次のニュース……」





        裂 -Saki-

          完

池田なにもせず!

                        ,,....::::::::':::ヽ
          ____,......::::'''::::::::::::''、´::::::::::::::::::::::l
 ミ川川川川彡 l::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::\::::、:::::::::::::::::::l

.ミ       彡 l::::::::::::/:::/::ハ:::lヽ::::::::::::::\:::::、:::::::::::/  / ̄ ̄ \
三 来  華 三 l:::::::〈::::/、( ゙、! ヽノ\::::::ヽ:::::::、:::/  | ど  と |
三 世  菜 三  l::〈:::::〉    u     >、:::ヽ:::::::\  | っ  こ |
三 が  ち 三  /:::::〉\_       ィ´=ミ、::::ヽ::::::o:O.○..こ  ろ |
三 あ  ゃ 三 /::::/:!/,"::ヾ'    "lO:::::ハ }} :::::、::::::::::\| い が |
三 る   ん 三:::::/::::::l l:l:::::lj     し::ノ;ノ '"';::::lヽ::::::::::::| !     |
三 し   に 三::/:::::::::i `=" '   `¨ ⊂⊃ソ;:l丿:::l丶:\___/
三  ぃ  は 三/::::::::::::ゝ⊃  <^ .-v  u ,--イ|ハ::::|  \|
三 !    三|/{/\|`  _  `ー‐'  _ i';/|:::/リ  `
彡      三 にゃー    ¨T:::'   L-、___

彡川川川川ミ       __ノ´rノ r‐‐‐/    ̄,, ̄ヽ
            / ̄   |―‐‐/     ,,'' イヾ丿

           /\'',,.     |  /    ,, ''/   \
                              ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                              d⌒) ./| _ノ  __ノ

>>176

  /::::::::::::::::::::::::::iハ:|ヽ| `                 /                ,....-‐' /    |:::|
. /::::::::::::::::::::::::::::i、|    ヽ                  /            /:::::::::::/     !::::゙、
. i::::::::::::::::::::::::::: | ヾ  ,.ノ i               /            /::::::::::::/      ゙、::::::ヽ
. |::::::::::::::::  ........!   / イ! \            /           ∠´::::::::,..-‐'         ゙、::::::::\
 i..:::::::::::::::::::::::::::ヽ   ´   〈             /             ̄            \::::::::゙、
. )::::::::::::::::::/`ヽヾ     イ´\          /                              \:::::::i
 i::::::::::::::::::::丶____   __.ノ  ̄| |>      /                                \:|
 |::::∧::::、>、;::i:;|_♭_ノノo\  || ト、    /
../:ノ ヽ:::゙、 \ー--‐',.-.ヽヽ\ | |.ケユ_  /

     ヽi、  \二ー-、_ ゙、゙//ヽ__゙、/ !_ __m、            _
      | ヽ   \ー-ァ'./  ̄KTーテフノイュ==,=======ニニし'

       |   ゙、   ,.->イ 、 .ノ ゙、V    ̄,'´ ̄
        |    \ // |  \  ゙、 /\ /
      ゙、    ヾ' └┬-ヽ / <\ヽ〉

       ゙、      /ユ、/  `ー /

         ゙、____ノ/ 「 /       / ゙、
            |-'\ /.|   / ハ ゙、
            |i   \ i.| /i ./  ゙、 ゙、
            |゙、     ー'  |,イ   i  ゙、

あなた・・・永遠回帰って知ってる・・・・・・?
わからなかったらググりな

最初は

黒幕→久
発狂→咲、桃子、透華
で、他の麻雀部員の人肉で食事作って食べようという話を考えていたが
まとまらなかったのでやめた

>>183
その四人はレアものじゃな

ワカメとかはただの肉団子

咲「ねえねえ原村さん、パンツはいてる?」

和「いえ、はいてませんけど」

咲「えー、今日は身体測定の日だよ!」

和「えっ……」

咲「いやあ、実は私もいつもみたいにパンツはかずに来ちゃってさぁ……」

和「そうだったんですか……でもどうしましょう、
  パンツがないと下半身裸のままで体育館に並ばされますよ!」

咲「そ、そうなんだよ~、今日は体育もないからブルマーもないし……」

和「誰か余計にパンツ持ってる人いないでしょうか……」









風呂入ろ

咲「そうだ!保健室に借りに行こう!」

和「そうですね、じゃあ早速」



保健室。

咲「先生、パンツ余ってませんか…?」

先生「あら、あと一着しかないのよ」

和「い、一着……」

先生「じゃんけんで決めてくれる?」

咲「じゃんけん……よし、原村さん、恨みっこなしだよ!」

和「わかってますよ!最初はグー!」

咲「じゃんけんぽん!」

咲「あ……」

和「勝っちゃいました」

先生「じゃあ、はい、パンツ」

和はしばらくパンツを見つめて何か考えているようだったが、

和「やっぱりいいです。私がここでパンツを借りれば、宮永さんだけパンツなしになってしまいますから。
  私も宮永さんと一緒に、パンツなしで身体測定を受けます」

咲「原村さん…!」

先生「あら、そう」


ガラッ
優希「せんせー!パンツ貸してほしいじぇー!」

先生「いいわよ、ちょうど一着余ってたの」

優希「ありがとだじぇー」どたばた

咲「……」

和「」

そうこうしているうちに朝休み、朝のHRが終わり、
クラスメイトたちは体育館へと移動を開始した。

咲「ついに来てしまったよ、このときが……」

和「覚悟を決めましょう、宮永さん」

咲「うん……」



体育館。
周りの同級生たちは制服を脱ぎ始めていた。

和「私たちも脱ぎましょう」

咲「でもやっぱり恥ずかしいよぉ……」

和「私がついてますから、ね」

咲「うぅ……」

咲と和はセーラー服を脱いだ。

2人はついに下着姿になった。
ただし身に付けているのはブラジャーのみで、パンツはない。

同級生「あれwwwww2人ともパンツ忘れたのwwwwww」

同級生「あははwwwwwwセクスィーだねえwwwwwwww」

咲「あ…あはは……」

和「耐えましょう、宮永さん!」

咲「ごめん原村さん、私ちょっとおトイレ行ってくる!」

和「あ、はい」

咲はトイレの方へと駆け出していった。
下半身裸のままで。

和は咲と一緒にトイレに行けば良かったと後悔した。
今の和はパンツ有りの人々の中で、ただ一人のパンツ無しである。
和はさっき以上に人々の視線を感じていた。

和(うう……どうして1人になると恥ずかしさが増すんでしょう)



女子トイレ。

咲「ふうー、すっきりした……あれっ」

咲はトイレットペーパーを取ろうとしたが、芯しか残っていなかった。

咲「うそー、まずいな」

他の個室も見てみたが、どこにもトイレットペーパーはなかった。

咲「こ、これじゃ拭けないよう……」

咲(なんとか手で拭いたけどばれないよね……)

咲「ただいま、原村さん」

和「お、おかえりなさい宮永さん」

咲「やっぱり恥ずかしいね……」

和「ええ」
 (でも宮永さんのこんなあられもない姿を見られるなんてうヒヒ)

同級生「なんかくさくね?」

同級生「アンモニア臭がするー」

咲「!!!」

同級生「宮永さんでしょ~?」

同級生「そういえばさっきトイレ行ってたよね~」にやにや

同級生「ちゃんと拭かなかったんじゃない?」にやにや

咲「う…う……うわあああああっ!!」

咲はそう叫びながら体育館の外へと駆け出して行ってしまった。

和「み、宮永さん!!」

同級生「ぷっ、なにあれー」

咲「うううっ……うっ」

咲は体育館横の生垣に隠れて泣いていた。
股間丸出しで。

和「宮永さん……ここにいたんですか」

咲「は、原村さん……?どうして……」

ブラジャーだけを身に着けた和が、生垣の端から現れた。

和「どうしてじゃありませんよ。大事な友達が泣きながら走って行ったら、誰だって追いかけますよ……」

咲「原村さん……!!うううっ……」

和は咲を抱きしめた。

和(許さない……宮永さんを泣かした人々を……)

股間丸出しの和の眼は復讐に燃えていた。

結局身体測定が終わるまで2人は生垣に隠れていた。
そして人がいなくなった頃合いを見計らって、服を取りに体育館に戻った。

咲は心に深い傷を負ったようで、見るからに憂鬱そうだった。

和(大丈夫ですよ宮永さん……私に任せてください)

翌日の1時間目は体育だった。
昨日あんなことがあったのに、咲は普通に学校に来ていた。

体操服に着替え終わった咲は、

咲「原村さん、グラウンドいこう」

と和を誘ったが、断られてしまった。

和「いえ、私はまだやることがあるので……先に行っててください」

咲「?…うん、わかった」

他の同級生がすべて出ていったことを確認し、和は作戦を行動に移した。

和(ふふふ……宮永さんを泣かせた罰です……)

和「股間丸出しで何が悪いんだよ………あぁ?」

咲「シンゴーシンゴー」

和がグラウンドに着いたのはチャイムが鳴るのと同時にだった。

咲「遅いよ、原村さん」

和「ごめんなさい、ちょっと時間かかっちゃって」

先生「はーい、2人一組になって準備運動しなさーい」

咲「一緒にやろ、原村さん」

和「はいっ」

先生「なんだー片岡はまた一人かー先生と組むかー」

優希「……」

咲「パスの練習しよう、原村さん」

和「ええ、いいですよ」

そこにボールが転がってきた。

同級生「あ、ごめーん」

咲は拾って投げ返してやった。

同級生「うわーアンモニアに触られちゃったあー(笑)」
同級生「マジ汚ーい(笑)」

咲「………」

和(宮永さん……大丈夫です……
  この授業が終われば、みんな自らの愚かさに気付くはずです……)

体育の授業が終了し、
生徒たちは教室へと戻っていった。

同級生「ふーつかれたー」
同級生「あせかいちゃったー」
同級生「あつー」

和(ふふ……もうすぐ……もうすぐです……)

同級生の一人が、着替えようとして机の上の制服に手を伸ばした。
と、そこで異変に気がついた。

同級生「あれ?スカートがない!!」
同級生「あっ、私もスカートがない」
同級生「私もだ!」

そう、和の計画とは全員分のスカートを隠し、同級生たちを下半身裸で過ごさせることだったのだ。

和(ふふふ、宮永さん、もうすぐあいつらの恥ずかしい姿を拝めますよ……!!!)

同級生「しかたないからブルマのままでいいか……」
同級生「そうね」

和(あれ?)

同級生「つうかスカート盗ったの誰だよ」
同級生「もしかして……宮永さん?」
同級生「マジ?昨日の仕返しのつもり?」

咲「ち、違うよ!だって私のスカートもなくなってるもん!!」

和(しまった)

同級生「え、じゃあ誰よ」
同級生「スカート持ってる奴……」
同級生「あ!原村さんがスカート持ってるよ!!!」

和(あああああああああ)

同級生「原村さん!あなたがやったの!?」
同級生「どういうことよ!原村さん!」

咲「は、原村さん………」

和「ぶ……ぶ……」

咲「ぶ?」

和「ブルマなんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」


        裂 -Saki- 第2話「熱烈歓迎ぶるまーらんど」

                  完

優希「タコスうまー」

和「食べすぎですよ、優希」

咲「優希ちゃんまた太ったんじゃない?いま何キロ?」

優希「3ヶ月前の身体測定では85キロだったじぇ」

咲「3ヶ月前より明らかに太ってるよ!今一度計ってみた方がいいよ」

和「下手すると100キロ超えてるかも……」

優希「まさかー、そんなに増えてるわけないじぇーもぐもぐ」

咲「優希ちゃん、制服がはち切れそうだよ……」

和「椅子もメリメリ言ってますよ」

優希「みんな心配性だじぇ」

京太郎「おーい、タコス買ってきたぞー」

優希「おお、よくやったぞ犬~」

京太郎「この『ウルトラこってり肉詰めタコス特大サイズ』でよかったのか?」

優希「そうだじぇー、これ食べてないと落ち着かないんだじぇ」

優希は袋から両手に収まりきらないほど大きなタコスを取り出した。
生地にはやたらと大量の具が詰まっていて、異常なほどカロリーが高そうだ。

和「優希!そんなもの食べてるから太るんです!」

優希「太ってないじぇ!なー、犬!」

京太郎「ああ、別に変ってないと思うが」

咲「変わってるよ!!ほら、これが入学当初の写真!!」

咲が見せた携帯の画面には、今のブタのような優希とは似ても似つかぬ、
小柄で愛らしい優希が映っていた。

京太郎「誰これ、優希の妹?」

咲「優希ちゃん本人だよ!」

京太郎「えっ、こんなだったっけ!?」

咲「そうだよー、このまま太りつづけたらヤバイよ」

和「優希、保健室に体重を量りに行きましょう」

優希「えー、仕方ないなー………どっこいしょ、と」

優希が椅子から降りると、床がミシッという音を立ててかすかにへこんだ。

優希「もぐもぐ」

和「タコスを食べるのをやめなさい!」

優希「いやだじぇ!これがないと生きていけないんだじぇ!!」

咲「もー、じゃあタコスは食べたままでいいから、いくよ」

優希「わかったじぇ」どっすどっす

優希「ふうふう、みんな歩くの早いじぇ、ふうふう」どっすどっす

咲「優希ちゃん足音が象みたいだよ」

優希「疲れたじぇ、ちょっと休憩」

和「休憩って、まだ部室から5メートルしか進んでませんよ!」

優希「もう歩けないじぇ……もぐもぐ」

和「食べちゃいけませんっ!!」

咲「こんな距離も歩けないなら、どうやって学校来てるの?」

優希「犬の自転車に台車つないで引っ張ってもらってるじぇ」

咲「京ちゃん……」

京太郎「エヘ☆」

和「ほら、立ってください!行きますよ!」

和は必死に優希の手を引っ張ったが、優希は微動だにしない。

咲「私も手伝うよ、京ちゃんは背中から押して」

京太郎「よしきた」

3人がかりでようやく優希は動き始めた。

優希「みんな頑張って引っ張ってくれ~」

京太郎「うんとこしょ、どっこいしょ」

咲「そういえば小学校で大きなカブって習ったけど、これは大きなデ
和「言って良いことと悪いことがありますよ宮永さん」

30分かけて、やっと4人は保健室についた。

京太郎「はー、疲れた……」

和「なんで保健室くるのにこんな苦労しないといけないんですか……」

優希「ほんとだじぇ」

和「なんで優希が一番汗かいてるんですか」

咲「まあまあ、早く体重量ろうよ。先生、体重計かしてくださーい」

先生「ええ、どうぞ」

優希「体重計か~、女の子にとっては強敵だじぇ」

和「この期に及んで女の子ヅラしても惨めなだけですよ」

咲「さ、乗って、優希ちゃん」

優希「うん」

優希が体重計に乗ると、画面の数字はすさまじい勢いで増えていった。

やがて数字の上昇は止まった。

咲「うわっ……」

和「これは……」

京太郎「おおう……」

優希「な~、私のお腹に隠れちゃって画面が見えないんだけど、何キロなんだー?」

咲「驚かないでね優希ちゃん……」

優希「うん」

咲「……108キロ」

優希「ひゃ、ひゃくはち!?やったじぇ、のどちゃんのおっぱいサイズに勝ったじぇ~」

和「喜ぶことじゃありませーんっ!!!」

咲「先生~、女子高生が108キロって……マズイですよね……」

先生「マズイなんてもんじゃないわね、命にかかわるわ」

優希「そんな~」もぐもぐ

和「危機感ないでしょ…」

咲「よし、優希ちゃんダイエット作戦を敢行しよう!!」

京太郎「そうだな、まずはタコス禁止」

和「あと運動すること!学校も自力で来るように」

優希「えー、そんなことしたら死んじゃうじぇー、無理だじぇー」

咲「無理なんて言っちゃダメだよ!ほら、このころのスリムな体に戻ろっ!」

咲は先ほどの入学当初の画像を見せた。

優希「ん?これ小学校のときの私?」

咲「……」

部室に戻るのも一苦労だった。
さっきは階段を降りてきたが、今度は上がらねばならない。

京太郎「はあ、はあ、もう無理だっ……」

3階への階段の途中で京太郎がギブアップした。

咲「だめ、手を離さないで京ちゃん!」

和「私たちだけじゃ支えきれない……っ!!」

優希「もぐもぐ」

京太郎「くそっ……こなくそおおおおおおっ!!」

京太郎は最後の力を振り絞って立ち上がった。
そして落ちかけていた優希を支え上げた。

咲「京ちゃん……っ!!」

和「部室までもう少しです!!頑張りましょう!!」

京太郎「おう!!」

優希「もぐもぐ」

あらゆる困難と試練を乗り越え、ついに4人は部室にたどり着いた。

咲「はあはあはあはあ……疲れた……」

和「これじゃ私たちの方が先に痩せそうですね……」

京太郎「で、なんで優希が一番汗かいてんだよ」

優希「だって今日は暑いじぇ。クーラーの温度12度にしていい?」

京太郎「あほかっ!」

咲「まったく…こ……これだからデ
和「それは言っちゃいけません宮永さん、気持ちはわかりますが」


ガチャ
久「やー、今日も暑いわねー。クーラー12度にしちゃおうかしらー、なーんて」

和「部長、何持ってるんですか?」

久「ああ、家庭科でケーキ作ったのよー。食べる?」

優希「いただくじぇ!!!」

京太郎「おまえはだめ!!」

久「生クリームをふんだんに使ったケーキよ。
  カロリー高いから食べすぎると太っちゃうかも~」

優希「ノープロブレムだじぇ!!」

咲「あ、部長、優希ちゃんにはあげないでください。これ以上太ると危ないんで……」

久「え?あー、そういえば優希太ったわねー。入学したころはもっとちっこくて可愛かったのに」

和「そういえば、とかいうレベルじゃないですよ」

久「じゃあ優希の分はなしね」

優希「うぇえええ、酷いじぇぇぇぇ」

和「ごめんなさい優希、これもあなたのためなの」

久「じゃあ4人で食べましょうか」

咲「わーい」

優希「うううううっ…」

咲「うーん、おいしーっ!」

和「部長、お料理上手なんですねー」

京太郎「ほんとだ、こりゃうまいや」

久「うふふふふふー、もっと褒めて褒めて」

優希「……」

咲「おいしー」もぐもぐ

和「お店で売れるレベルですよー」ぱくぱく

優希「……」

京太郎「生クリームの甘さと、いちごの甘酸っぱさがマッチしていて、とってもおいしいです!」

優希「う……うがあああああああああああああああっ!!!!」

咲「うわぁ!」

優希「うがああああああああああ!!!!」

優希はテーブルをひっくり返した。

久「な、なにするの、優希!」

咲「そうだよ、せっかく食べてたのに」

優希「うるさいうるさいうるさい!!私が食べられないケーキなんて……」

優希は泣いているようだったが、咲たちには涙と汗の区別がつかなかった。

優希「ケーキなんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」

そう叫ぶと、優希はドッスンドッスンドッスンドッスンという地響きとともに走り去ってしまった。

和「優希……」

和「私たち、優希に酷いことをしたかもしれません」

京太郎「ああ、食欲の怪物と化した優希の前でケーキを食うなんて……」

咲「食べるのを我慢する練習のつもりだったんだけどな」

久「とにかく優希を追いかけるわよ」

咲「はいっ」

優希はそれほど遠くまでは行っていないと思われたが、
学校中を探し回っても見つからなかった。

それどころか夜になっても家に帰っていない、と学校に連絡が入り、
警察や教師も動員しての本格的な捜索が開始された。

咲「どこいったんだろ……優希ちゃん」

和「わかりません……でも、すぐに見つかりますよ」

咲「うん……」

ところがどっこい、優希は何日経っても見つからなかったのである。

優希の逃亡から1週間が経過していた。

咲「はあ……優希ちゃんまだ見つからないのかなぁ」

和「……」

京太郎「……」

こうなると最悪の事態が頭をよぎってしまう。
しかしそれを口に出すものはいなかった。

同級生「ねー知ってるー?近所の養豚場でブタが食べられてたんだってー」
同級生「えーなにそれー」
同級生「なんか正体は分かんないんだけど、ゴリラみたいな巨大な怪物が養豚場から出るのを見たって」
同級生「そういえばうちの親戚の畑も巨大な怪物に食い荒らされたって」

咲「巨大な怪物が……ブタや畑を食い荒らした……?」

和「それってもしかして……」

咲「優希ちゃん!!」
和「優希!!」

京太郎「ちょっと待て、そんな怪物と優希を何の迷いもなく結びつけるってお前らひでーよ」

咲と和はこのことを教師や警察に伝え、
次の優希の襲撃地点を予測した。

警察「今までの被害範囲から考えると……」
警察「この畑は違うな……」

厳密な予測と計算の結果、学校近くの畜産農家という結果となった。
ここはヤギやウシなども飼っており、今までの被害の状況からみても
ここを優希が襲撃する可能性が高かった。

警察「よし、あとは我々が張り込みをする」
警察「きみたちは帰っていなさい」

咲「いえ、優希ちゃんは私たちの友達です!」

和「私たちも協力させてください!」

警察「君たち……ふっ、仕方ないな」

咲「ありがとうございます!!」

京太郎「……」

警察「よし、決戦は今日の深夜だ!」

深夜。
清澄高校のまわりは山や田んぼが広がるド田舎であり、外灯もろくになかった。
だから夜は非常に暗い。

咲と和は、警察と一緒に牛小屋とヤギ小屋の間で待ち伏せていた。

咲「来るかな、優希ちゃん」

和「信じて待つしかありません……」

ひたすら静かだった。
月の明かりが綺麗すぎて逆に不気味だった。

咲「……」

とそのとき、植え込みの中から巨大な人間のようなものが飛び出してきた!!

警察「きた!!」
警察「捕獲部隊いけえ!」
警察「はっ!」

咲「優希ちゃああああああんっ!!」

和「優希いいいいいいい!!」

優希「さ……さきちゃん……のどちゃん……?」

和「優希……!」

優希「の、のどちゃああん!!うわああああん」

二回りほど大きくなった優希が和と咲のもとに駆け寄った。
優希が一歩踏み出すたびに小さな地震が起こり、ウシやヤギが鳴きはじめた。

咲「優希ちゃん……」

優希「ううう、会いたかったじぇ……」

咲と和を抱きしめる優希。その姿はさながら映画キングコングの一場面のようだった。

和「優希、失踪してから何処にいたんですか……?なぜ家に帰っていなかったんですか?」

優希「家へ帰ろうと思ったらいつもの通学路が工事中で……
   で、回り道して帰るためには橋を渡らないといけないんだけど、
   その橋は私が乗ったら潰れそうで乗れなかったんだじぇ。
   そのあとは食欲の赴くまま、山にはいったり田畑を荒らしたり牛や豚を食べたりしてたじぇ……」

和「そうだったんですか……まあとにかく無事で良かったです……」

警察「よ、良かった……のか!?」

良くないだろwww

その後、優希は部活に復帰した。
道路工事も終わり、優希は家へ帰れるようにもなった。

和は自分の行いを反省した。

和「やっぱりダイエットを強制するのは良くないですね……
  自分のしたいようにするのが一番なんですよ」

咲「そうだね、その通りだよ、原村さん」

こうして優希の暴飲暴食を止める者はいなくなり、
優希は日に日にぶくぶく太っていった。

優希「いえーい、ついに300キロ突破したじぇー!!」

和「わー、すごいです優希。ほら、今日はロールケーキを持ってきましたよ」

咲「フライドチキンもあるよー」

優希「わーい!!」

京太郎「い、いいのかよこれでぇぇぇぇぇぇ!!!」


        裂 -Saki- 第3話「Glossy:XXL」

                 完

鶴賀学園。

加治木「うっす」

妹尾「こんにちは、先輩」

津山「こんちはっす」

蒲原「よっ」

桃子「こんにちはー、先輩!」

加治木「モモはまだ来てないのか?」

桃子「ここにいるっすよ、先輩」

加治木「来てないみたいだな」

桃子「あれ?」

期待

蒲原「まー、モモちんの場合は居ても居なくてもわかんないけどナ」

加治木「そういう言い方はやめろ。ま、今日は4人での活動かな」

桃子「え?いや、だから私はここにいるっすよ、加治木先輩、おーい」

加治木「妹尾、麻雀卓の用意してくれー」

妹尾「はーい」

桃子「せんぱーい?おーい、せんぱーい」

桃子は加治木の肩を揺さぶろうとした。
が、その手は加治木の体をすりぬけてしまった。

桃子「え……何これ」

蒲原「さてやるか」じゃらじゃら

加治木「ちょっとは強くなったのか、妹尾」じゃらじゃら

妹尾「ど、努力はしてますよ努力は」

桃子「……」

桃子は机に触ってみた。
今度はちゃんと触れることができた。

桃子「モノにはさわれるのか」

そしてもう一度、加治木へと手を伸ばした。
しかし、またしてもその手は加治木の体をすり抜けてしまった。

桃子「……」

蒲原や睦月にも触れてみたが、同様だった。

麻雀牌にも触れてみたが、人体と同じようにすり抜けてしまった。

桃子「触れられるものと触れられないものがあるのかな……?」


妹尾「この牌はいらないかなー……」

蒲原「わっはっは、ロン!」

妹尾「あちゃー……」

加治木「はは、手加減してやれよ蒲原」


桃子「……」

その日はずっと、桃子抜きで部活は進んだ。

加治木「そろそろ帰るか」

蒲原「もう暗くなっちゃったな」

睦月「桃子さん来ませんでしたね」

加治木「まあ、4人でぶっ続けで麻雀できたんだしいいじゃないか」

桃子(先輩……私がいなくても良いんすか……)

加治木「さ、帰るぞ。忘れ物するなよ」

妹尾「はーい」

桃子「……」

桃子が部屋の中にいるにもかかわらず、電気は消され、ドアの鍵をかけられた。
ドアをすり抜けて外に出られたので、問題はなかったが。

桃子「でも、どうして、こんなことに……?」

桃子「ただいま……」

母親「おかえり、桃子」

桃子「……」

母親には視認してもらえるようだった。

母親「どうしたの?」

桃子「な、なんでもない……」

母親「早く晩御飯食べなさい」

桃子「うん……」

翌日。
どうやら桃子のことが完全に見えなくなっている、触れられなくなっているのは、
部活のメンバーだけだ、ということが分かってきた。

桃子(朝に立ち寄ったコンビニでは普通に買い物できたし……
   先生も出席取ってくれたし、授業中に指名もされた……
   じゃあなんで、部活のメンバーだけが……)


放課後、桃子は部室に行った。
ドアを開けようとしたが触れられなかったので、すりぬけて入った。

部室の中には妹尾と蒲原がいた。
やはり桃子には気付いていないようだった。

桃子(この2人、幼馴染なんだっけ)

桃子は長椅子に腰かけ、悪趣味とは思いながらも
2人の会話に耳を傾けた。

たわいない世間話ばかりだったが、
妹尾が桃子の話をしはじめた。

妹尾「今日は桃子さんくるんですかねー」

蒲原「んー?どうだろな」

妹尾「まあ個人的にはあんまり来てほしくないんですけどね」

蒲原「わっはっは、同感だな」

桃子「えっ……?」

桃子は心臓が縮むような感覚を覚えた。

蒲原「面倒くさいんだよな~モモちんは」

妹尾「いるかいないか分かんないですしね~」

蒲原「そーそー。つーかなんかチョーシ乗ってるよなーあいつ」

妹尾「あ~、麻雀強いの鼻にかけてますよね」

蒲原「わっはっは、あいつの実力なんてたかが知れてるのにな~。
   強いのはステルス能力のおかげだろ、っていう」

妹尾「てゆーか卑怯じゃないんですか~?ステルスって~」

蒲原「卑怯も卑怯、大卑怯だな。存在自体が卑怯なんだよあいつは」

桃子「……………!!!!」

桃子は頭に血が昇っていた。
何も考えられなくなっていた。
胃の中でなにかがぐるぐる渦巻いているようだった。

桃子は衝動的に、テーブルの上のハサミを掴もうとした。
しかし、手はあっけなくすりぬけてしまった。

桃子(…くそ、くそっ………!!)

人との交流を避けてきた桃子にとって、
こんなに感情的にさせられたのは、
そしてこんなに人の悪意に晒されたのは初めてのことだった。

桃子「うううううっ……」

桃子は泣いた。

ガチャ
睦月「こんにちはー」

蒲原「おう、こんにちはー」

妹尾「やあ睦月ちゃん」

睦月「あ、佳織、今日の古典の課題なんだけどさ」

睦月が話題を変えたため、桃子への悪口はそこで打ちとめられた。

しばらくすると加治木もやってきた。

加治木「おっす」

蒲原「おーっす」

桃子「ううっ……ぐすっ……加治木先輩……っ」

加治木「モモは今日も休みか?」

蒲原「そうみたいだな」

桃子「ここにいるっすよぉ……」

しかし桃子の声が加治木に届くことはなかった。

加治木「じゃあ今日も4人で麻雀やるか。妹尾、麻雀卓出してくれ」

妹尾「はーい」

桃子「うう……」

桃子はずっと4人の麻雀を見ていた。

加治木の顔を見ていられるだけでいい……そう思っていたが、
他人と楽しげに笑い合う加治木を見るのは、少々つらかった。

そして、さっきの蒲原や妹尾の言葉が、頭の中で何度も響いていた。

加治木「ふふ、さらに出来るようになったな、妹尾」じゃらじゃら

妹尾「そ、そんなことないですよぉ~」じゃらじゃら

蒲原「いやいや、褒め言葉は素直に受け取っとくもんだヨ」じゃらじゃら

睦月「確かに佳織は強くなってるしな」じゃらじゃら

妹尾「え、えへへ……」

桃子(なんだよっ……あんたなんかより……私の方がっ……
   陰で他人の悪口しか言えないクズのくせに………!!)

そんなふうに考えてみても、ただイライラと悔しさが増すだけだった。

その日も最後まで存在を認識されることはなかった。
部屋の隅でうずくまって、4人を眺めているだけだった。

時折ちょっかいを出してみるが、モノにも人にも触ることはできなかった。
桃子は触れられるものと触れられないものの違いを見出していた。

桃子(牌やはさみを動かせば、他の人には勝手に動いたように見えて驚かれる。
   そして私の存在が認識される。だから触れられない。
   いすや机は動かそうとしたりしない限り、触れられる……)


その日は6時半ごろに解散となった。

加治木「さーて、帰るぞ」

桃子「……」

桃子はあることを思いついていた。
どうせ見えないのなら、加治木の家までついていこうと思ったのだ。
単なるストーカーのように思われるかもしれないが、
桃子は心のよりどころとして加治木を求めていたのだ。

加治木は自宅に到着した。
桃子も一緒だ。

加治木は懐から鍵を取り出してドアを開けた。
家の中は真っ暗だった。

桃子(ご両親は共働きなんすかね)

加治木は廊下や階段の明かりを点けながら、自室へと上がっていった。



加治木「ふぅ」

加治木は勉強机のうえにカバンを下ろし、ベッドに腰かけて一息ついた。

桃子(加治木先輩の部屋、シンプルっすね)

部屋にあるのはベッド、勉強机、クローゼット、CDラジカセ、そして麻雀の本や文芸書が入った本棚のみだった。
女子高生というより独身男性の部屋と言った方がしっくりくる。

加治木「……」

加治木はしばらく宙を眺めていたが、おもむろに立ち上がり、
1階へと降りていった。
桃子も後を追う。

加治木は台所に行った。

冷蔵庫からラップが掛けられたお皿を取り出し、
電子レンジで温めた。

加治木「……」

桃子(なんかさびしいっすね)

加治木「……」

加治木はテレビのニュースを見ながら、黙々と食べ続けた。
端から見ている桃子には寂しい光景なのかもしれないが、一人での食事なんてこんなものだろう。

加治木「ふう」

食事を終えた加治木は、冷蔵庫を開けた。
そして、一切れのケーキを取り出した。

桃子(あ)

桃子はようやく思い出した。

桃子(今日は加治木先輩の誕生日だったんだ)

桃子(なぜ忘れていたんだろう)

加治木はケーキにフォークを刺した。
その表情は、やはりどこか寂しげであった。

桃子(そうだ、家に先輩への誕生日プレゼントを用意してたんだ……
   今から取りに戻れば……でも)

取りに戻っても、加治木が受け取ってくれるかは分からない。
それに。

桃子(それに、いま加治木先輩から離れたら……加治木先輩の存在も忘れてしまうような気がする)

なんとなくだが、確信は持てないが、そんな気がした。

加治木はケーキを食べ終わり、シンクで食器を洗いはじめた。
ベテラン主婦かと思うような慣れた手つきだ。

桃子(ずっと一人だったんすね、先輩も)

加治木だって誕生日くらいは家族と一緒に過ごしたかったに違いない。
無言で食器を洗う加治木の表情は、遠い昔を懐かしむようであった。

加治木が食器を洗い終わると、加治木の携帯が鳴った。

加治木「はい、もしもし」

「ああ、ゆみ?ごめんね帰れなくて」

加治木「……いや、いいよ別に」

桃子(お母さんっすかね)

「冷蔵庫のケーキ食べといてね、置いとくと傷むから」

加治木「うん」

「じゃあ、今日も帰り遅くなるから」

加治木「…うん」

そこで電話は切られた。

桃子(誕生日おめでとう、くらい言ってあげればいいのに)

加治木も同じことを思ったようで、
顔に浮かぶ寂しさが一段と増していた。

加治木は部屋に戻った。
そしてベッドに倒れこみ、枕元の写真立てを手に取った。

桃子(……?)

桃子が写真を覗き込むと、それは加治木と桃子が2人で出かけた時に撮った写真だった。

桃子(か、加治木先輩……!)

加治木「モモ」

桃子「は、はいいっ!!」

いきなり名前を呼ばれて桃子は驚いたが、
どうやら加治木の独りごとだったようだ。

加治木はずっと写真を見つめていた。

桃子(先輩………)

桃子「先輩、誕生日おめでとうございます」

しかし、その声は当然ながら加治木には届かなかった。

桃子(先輩……っ)

加治木は切ない表情を浮かべたまま、
写真を元の場所に戻した。

桃子(ううっ、ごめんなさい先輩……お誕生日も祝えないなんて……後輩失格っすよ……)

加治木は寝転がったまま携帯を取り出し、
なにか操作したあと耳にあてた。
どこかに電話をかけるようだった。

すると、桃子の携帯が鳴った。

桃子(うわっ!)

桃子の着信音は加治木には聞こえていないようだった。

桃子(そっか、携帯を使えば良かったんだ!!)

急いで携帯を取り出し、通話ボタンを押そうとする桃子。

桃子(あれ?)

しかし、桃子の指は無情にも通話ボタンをすりぬけてしまった。

桃子(うそ!なんで、なんで……)

自問を繰り返したが、答えは分かりきっていた。
自分の存在を認識されないように、である。
押すの無理なら携帯は持てるんだから通話部分になにか物や、角に押し付ければ……
とも考えたが結果は同じことだろう。
桃子はどうやっても加治木と会話することはできないのだ。

桃子(いやだ……なんで、なんでこんな……!!)

もう2度と、加治木と笑い合うことも、麻雀を打つことも、
一緒に食事をすることも、触れ合うこともできない。

桃子(いやだっ、もっともっと……一緒にいたい……!!)

人との関わりを避けてきた桃子が、初めて心の底から仲良くなりたいと思った相手。
その加治木ゆみと、もう2度と。

桃子(先輩……先輩……!!!)

桃子は絶望に打ちひしがれた。

桃子(こんな……こんなことになるくらいなら………!!!)

桃子「ステルス能力なんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」

さてハッピーエンドにするかバッドエンドにするか

そう叫んでみたところで何かが変わるわけでもなかった。

桃子「うっ……ううっ……ぐすっ……」

加治木「はぁ」

加治木は電話を切り、溜息をついて起き上がった。
そしてクローゼットから着替えを取り出して、部屋から出ていった。
どうやら風呂に入りにいくようだ。

桃子(……)



桃子は部屋に残ることにした。
どうやって加治木に自分の存在をアピールするか、
アピールが通じなくともせめて「誕生日おめでとう」くらいは伝える方法を模索するためだった。

桃子(メールは……)

両親には送れるようだったが、加治木ほか部活のメンバーには送れなかった。

桃子(じゃあ、書き置きは)

ペンと紙を手に取ることは出来たが、文字は残せなかった。

桃子(そうだっ)

自分の部屋に用意してある、加治木への誕生日プレゼント。
あれを持ってきて、この部屋に置いておこう……。

成功するかは分からなかった。
賭けだった。
しかし、他に方法も思いつかなかった。

だが桃子は加治木から離れることに不安を抱いていた。
桃子の中からも加治木という存在が消えてしまうような気がしたのだ。
自宅まで帰っている途中で、加治木のことが分からなくなるかもしれない……。

桃子(いや……でも……やるしかないっす……!)

桃子は加治木の部屋から飛び出し、階段を駆け下り、
玄関横に止めてあった自転車にまたがった。

桃子(待っていてください、先輩……!)

桃子は夜道を自転車で爆走した。

桃子(加治木先輩、加治木先輩、加治木先輩………!!!)

加治木の存在を忘れないように、何度も何度も加治木のことを想った。

1年の教室に乗り込んできて、桃子を見つけ出してくれたこと。

はじめて一緒に麻雀を打ったときのこと。

はじめて休日に2人きりで出かけたこと。

県予選大会で、ともに鶴賀のために戦ったこと。

しかし、それらの思い出もだんだん薄れていってしまった。

桃子(先輩……先輩……!!)


桃子は自宅に着いた。
こんな遅くに帰って、親に怒られるかもしれない……と思ったが、
今はそんなことを考えている時ではなかった。

桃子はドアを開けようとしたが、
指がドアをすりぬけてしまった。

桃子(……あれっ?)

桃子(うそ)

桃子のことを認識できないのは、部活メンバーだけだったはずだ。
ドアを動かせなくなったということは、すなわち家族にも桃子の存在を認識できなくなったということだ。

桃子(うそ、うそ……そんな!)

桃子はパニックに陥ったが、すぐにやるべきことを思い出し、
ドアをすり抜けて自分の部屋へと駆け上がった。



桃子(はあ、はあ……)

勉強机の上に、それは置いてあった。
加治木への誕生日プレゼント。
少ない小遣いをためて買った、金色のネックレス。

これに触れられなければ、すべてが無駄になる。

桃子は包装紙に包まれたプレゼントに手を伸ばした。

桃子のてのひらに包装紙の感触が伝わった。

桃子(やった!)

しかし、そこで気がついた。
桃子の体が透けているのだ。

桃子(えっ……)

まさか、……という思いが頭をよぎる。

桃子(他人から認識されなくなるだけじゃなく、本当に、物理的に消滅してしまうの?)

桃子は恐ろしくなった。
だがすぐにその恐怖心を振り払い、プレゼントを手に取って再び駆け出す。

桃子は壁もドアもすりぬけて外に出て、
かごにプレゼントを入れ、
自転車を全力でこぎはじめる。

桃子(先輩……私はもうすぐ消えちゃうかもしれません)

加治木のもとへ、一直線に。

桃子(でも……これだけは……伝えますから!)

加治木の家に着いたのは20分後のことだった。
門灯に照らされた桃子の体は、また一段と透けていた。

桃子(先輩……!)

疲れ切った脚を無理やり動かし、桃子は加治木のもとへと向かう。

ドアをすり抜け、階段を昇る。
そうしているうちにも、桃子の体は少しずつ透けていく。

よろめきながら、加治木の部屋に入る桃子。

加治木は本を読みながら、ドライヤーで髪を乾かしていた。

桃子(先輩……)

桃子は手にしているプレゼントを、そっと勉強机の上に置いた。
加治木は気付いていないようだった。

桃子(やっぱり……だめなの……?)

桃子の体はさらに透けていった。
自分でも、どこまでが自分自身なのか分からなくなっているほどだった。

桃子(先輩……先輩……)

桃子(私のこと…まだ覚えてますか、先輩……)

桃子(先輩、私……先輩に伝えたいことがあったんです……)

桃子(私の言葉はもう届かないけど……)

桃子(せめて……)

桃子(せん…ぱ……)




加治木「ん?」

加治木はなにかが聞こえたような気がして、顔を上げた。

しかし、そこには何もなかった。

加治木「……」

ごめん野球娘見てた

それなりに面白い
いやされる

加治木「あれ?」

ふと机の上を見ると、なにか綺麗な包装紙に包まれたものが置いてあった。
……ような気がしたが、すぐにかき消えてしまった。

加治木「気のせい、か……?」

加治木(………いや…………でも……………………)

加治木の心から、何かとても大切なものが失われたようだった。
しかし同時に、素晴らしい贈り物をもらったような気分だった。

加治木(なんだろう、なにか、懐かしいような……)

そして、さっきまでの寂しさが少し薄らいでいた。

加治木(誰だか知らないけど……ありがとう…)

そうして、加治木の独りきりの誕生日の夜は更けていった。
でも加治木は、今年の誕生日は独りじゃなかった……そんな気がしていた。


        裂 -Saki- 第4話「残酷なステルスの中で」

                 完

さーて来週の裂はー

もうネタが思いつかん
ネタをくれ

じゃあ池田




風越女子高校。

深堀「はー、今日も疲れた」

吉留「何か知らないけどストレスたまるよねー」

深堀「こんなときはアレに限るな。早く部室に行こう」

吉留「そうね」



部室の前にはかなり長い行列ができていた。

深堀「混んでるな」

吉留「仕方ないよ」

二人は列に加わった。

しばらくすると列も進み、ついに深堀の番が来た。

深堀「今日も殴らせてもらうよ」

そこには、ロープで縛られた池田が天井から吊るされていた。

深堀は体をひねり、拳を振り上げ、

深堀「池田ァ!!」

の掛け声とともに、池田の顔面を殴り飛ばした。

池田「ぎゃあああああっ!!」

福路「67ぎゃあですね」

横に立っていた福路が伝えた。

深堀「ふう、まあこんなものか」

深堀は満足げな表情を浮かべ、部室から出ていった。
次は吉留の番である。

福路「ヒーリングするからちょっと待ってね」

福路が右目を開けると、ほのかに青色の光が浮かび上がり、
さきほど深堀に殴られたところのアザが消えていった。

福路「じゃあどうぞー」

吉留「すうーっ」

吉留は息を大きく吸い込み、拳を振りかざす。

吉留「池田ァァァァァァ!!!!」

池田「ぎゃあああああああああああああっ!!」

福路「89ぎゃあ、ね」

吉留「ふぅ」



池田を殴ってスッキリした吉留は、部室の外で待つ深堀のもとへと行った。

深堀「どうだった」

吉留「89ぎゃあ」

深堀「惜しかったな、90なら商品貰えたのに」

吉留「うん、もっと強く殴るようにしなきゃね」

深堀「それはそうといつになったら部活始まるんだろう」

吉留「また列伸びてるね…」

深堀「ほんとにいつもより人多いな」

吉留「3年生は今日模試の結果が返ってきたらしいから、そのせいかも」

深堀「ああ」

吉留「でもこんなに多いと、部長のMPなくなっちゃうかもね」

深堀「心配だな」



その心配は的中した。

福路「あら……?もうMPが無くなっちゃったわ。
   ごめんなさい華菜、ヒーリング使えないわ……」

池田「そ、そんな……」

福路「あと50人くらいいるけど……大丈夫よね、華菜」

池田「そ、そんな……」

福路「次の方どうぞー」

生徒「池田ァ!!」

池田「ぎゃああああああああああ!!!」

数十分後、ようやく行列はなくなった。
50人に殴られ、池田の体はボロボロだった。

池田「あば……あばばばば……」

福路「ごめんなさい華菜……!私がちゃんとMP回復用のアイテムを持っていれば……」ぐすぐす

池田「部長が……泣くことなんて……ないですよ……」

福路「それもそうね」

池田「えっ!?」

福路「私はそろそろ用事があるから帰るわね。
   華菜は保健室ででも手当てしてもらって。じゃあね」

池田「ぶ、ぶちょおおお……」

コーチ「池田ぁぁぁぁぁぁ!!!」

池田「ひいっ!!」

コーチ「ちょっと話がある」

福路の呼び方って部長じゃなくてキャプテンだったっけ

コーチ「明日は土曜日だが、暇か!?」

池田「は、はい……暇です」

コーチ「実は女子プロレス部からお前を貸してほしいといわれているんだ」

池田「え?」

コーチ「あの『ぎゃあ』っていう単位で選手の力を具体的に示したいとかで」

池田「はあ……」

コーチ「じゃあ明日、よろしく頼んだぞ。バっくれたらどうなるか分かってるだろうな!?」

池田「ひっ……だ、大丈夫です……」

コーチ「福路にも連絡は入れてあるから。じゃあな」

池田「は、はい……」

部活でプロレスっておかしいよね
アマレスだよね



翌日。

福路「ここがアマレス部の部室ね」

池田「うう、いやだ……」

福路「大丈夫よ華菜、今日は薬草を持ってきたから、MPが尽きる心配はないわ」

池田「ヒーリングされればいいってもんじゃないんですよぉ……」


福路は部室のドアを開けた。

福路「おじゃまします。麻雀部の福路と池田です」

部長「おお、来てくれたか。じゃあ早速練習に参加してくれ」

アマレス部の部長は女子高生とは思えないほど筋肉質で、そのへんの男よりも男らしかった。

福路「はい、喜んで参加させていただきます」

池田(喜べない……帰りたい……)

池田はリング上に上がらされた。

福路「頑張ってー華菜ー」

池田(技かけられるのはいやだけど……キャプテンの期待にはこたえたい……)

アマレス部員1「じゃあ私から行くよ」

池田「は、はい……」

アマレス部員1「逆エビ固めえええええええええ!!!」

池田「えっちょっと待ってそれアマレスの技じゃ……
   …ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

福路「あら、120ぎゃあ。新記録だわ」

アマレス部員1「ふう、120か」

アマレス部員2「じゃあ次は私だな」

福路「あ、ちょっと待って、ヒーリングしなきゃ……」

アマレス部員2「エルボードロオオオオオオオオオオオオップ!!!!!」

池田「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

福路「143ぎゃあですね」

アマレス部員3「よし、じゃあ次は私だ」

福路「ヒーリングは……まあいいわね、昨日だって50人に殴られても平気だったから」

アマレス部員3「ボディィィィィィソバァァァァァァァァァァット!!!!」

池田「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!!」

福路「108ぎゃあですね」

アマレス部員3「ちっ、ちょっと弱かったか」

アマレス部員4「ようし、次は私だ!」

池田「いやあああ!!キャプテン助けてええええええええ!!!」

アマレス部員4「シャイニング踵落としいいいいいいいいいいいいい!!!」

池田「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

福路「すごい!!170ぎゃあ!!」


その日、池田は一日中、ろくにヒーリングも受けられないまま、
技をかけられ続けたのであった。

翌週の月曜日。

コーチ「池田。お前はもう麻雀部でサンドバックをやらなくてもいいぞ」

池田「ほ、ほんとですか!?」

コーチ「ああ。その代わり、今日から毎日アマレス部に行ってもらう。
    お前、アマレス部でかなり役に立ったそうじゃないか」

池田「え……えええええええええ!!??」

福路「さあ、行きましょう華菜!アマレスが私たちを待ってるわ!!」

池田「そんなあああああっ!」

コーチ「頑張れ池田!!」


        裂 -Saki- 第5話「四角いリングで待ってるよ」

                 完

寝る
目が覚めて残ってたらまた何か書く

おはよう
第5話にスレタイのセリフを入れるのを忘れていた

透華「破産しましたわ」

一「え?」

透華「うふふ……龍門渕家は……破産しましたわ……」

一「ええええええええええっ!!!ななな、なんで!?」

透華「この不景気のせいで……父の会社が……うふふふ」

一「し、しっかりして透華!!」

透華「まあ高校のほうは……公的な援助で解体は免れましたけど……
   もう私は一文なしですのよ……」

一「お、お父様とお母様は!?」

透華「借金取りから逃げ回って行方知れずですわ……」

一「そんな……」

透華「そう……この家ももう私たちのものじゃありませんのよ」

一「衣とか、ハギヨシとか、他のメイドさんたちはどうしたの?」

透華「みんな実家に帰りましたわ。あなたも早くお帰りなさい」

一「だめだよ、そんな……僕まで帰っちゃったら…透華が一人っきりになっちゃうじゃないか!」

透華「は、一……!!」

一「透華と僕の2人なら、これからもやっていけるよ!」

透華「うう……ありがとうですわ、一……!!」

一「お屋敷も追い出されちゃったし、まずは今日の宿を確保しないとね」

透華「宿?ああ、ホテルのことですわね。それなら行きつけの……」

一「いやいや透華、僕らお金ないんだから、そんなとこに泊まれないよ」

透華「おかね?おかねってなんですの?」

一「も、もしかして透華、お金を知らない……?買い物するときに使うでしょ?」

透華「何言ってますの?買い物にはカードを使いますのよ、ほらこれ」

と言いながら透華は金色のクレジットカードを取り出した。

一「…破産したんだからもう使えないよ、それ」

2人はお金がないので段ボールや新聞紙を集め、
河川敷で寝ることにした。

透華「おなかがすきましたわ……」

一「はい透華、コンビニ裏で拾ってきたよ。消費期限切れてるけど」

透華「何も食べないよりはましですわね……いただきます」

一「いただきまーす」

透華と一は冷めきったコンビニ弁当に箸をつけた。

透華「コンビニ弁当なんて初めて食べましたわ……」

一「お味はどう?」

透華「美味しいですわ……食べるって幸せなことでしたのね」

翌朝。

透華「ふう、よく眠れましたわ」

一「さ、ごはん取りに行こう」

透華「ええ」

2人は近所のコンビニへと出向いた。
しかしそこには既にたくさんのホームレスが集まっていた。

一「……」

2人はホームレスたちの雰囲気に気圧されて、廃棄食品を取りに行くことができずにいた。
しばらくしてホームレスがはけたころには、もう何も残されていなかった。

透華「一……」

一「うう、仕方ない……違うコンビニに行こう」

しかしどこのコンビニに行っても結果は同じだった。

透華「………おなかがすきましたわ」

一「はあ、廃棄を食べるのは無理かあ」

透華「お金を使えれば……ご飯を買えますのに」

一「やっぱりお金か……そうだ!」

透華「なんですの?一」

一「僕の手品で稼げばいいんだよ!」

そういうと一は、服の中に仕込んでいた手品用具を
ばらばらと地面の上にぶちまけた。

透華「さーさーどうぞご覧あれ!
   期待の新人マジシャン、国広一の路上ワンマンショーですわよ~!」

駅前の大通りは平日昼間だというのに人が多く、
透華の明るい呼び込みも手伝ってどんどん見物人が増えていった。

一「はい、ではこのシルクハットの中にボールを入れま~す。
  入ってるのはボールだけですね~?」

一は帽子の中身を客の方に見せる。
確かにボールしか入っていない。

一「ところが3つ数えると~、3、2、1、ほら!万国旗に早変わり~」

そういって帽子の中から万国旗をするすると引っ張り出していく。
その鮮やかな手つきに、見物客から大きな拍手が巻き起こった。

透華(グッジョブですわ、一!)

ショーが終わり、一は河川敷の段ボールに座って
客から貰ったお金を数えていた。

一「えーと、1枚、2枚……」

透華はお金が分からなかったので数えられなかった。

透華「いくら集まりましたの?」

一「すごい!7000円も集まったよ!」

透華「7000円ってどのくらいですの?」

一「1個500円のコンビニ弁当が14個は買えるよ!」

透華「まあ、そんなに?しばらく食べるのには困りませんわね!」

次の日も、また次の日も、
一と透華は手品のショーを開き、生活費を稼いでいった。

日に日に見物客は増え、それにつれて収益は増していき、
余ったお金で新しい手品用具を揃え、ショーはどんどん面白くなっていった。
そしてさらに客が増えていくのだった。

一「ふぅー、今日も儲かったね~」

透華「そ、そうですわね」

一「ん?どうしたの?」

透華「いえ、な、なんでもありませんわ」

透華は一に対して引け目を感じていた。
実際に手品をして稼いでいるのは一だけで、透華は呼び込みしかしていない。
しかも一のショーが軌道に乗った今となっては、呼び込みなどしなくても客は勝手に集まってきて、
透華の存在は不要と言っても良いくらいだった。

一「食事にしようか。透華、から揚げ弁当とチキン南蛮弁当、どっちがいい?」

透華「は、一が先に選んでくださいまし…」

と、そこに一人の男がやってきた。

男「ちょっとよろしいですか?」

一「はい?」

男「国広一さん、ですよね」

一「はい、そうですけど」

男「私、こういうものですが」

そういって男は名刺を差し出した。
名前の横には、某テレビ局のニュース番組の名前が書いてあった。

一「……?」

男「実はですね、私どもの番組で一さんを取材させていただけないかと思いまして」

一「え、ほ、本当ですか?」

男「はい、ぜひとも」

一「あ、こちらこそよろしくおねがいします!」

男「はい、分かりました。打ち合わせなどありますので、
  明日のショーが終わり次第お迎えにあがります」

一「はいっ!」

透華「……」

男は帰っていった。

一「す、すごいよ透華!テレビだって!」

透華「そ、そうですわね」

一「これでもっと有名になれる!お金だってもっと稼げるようになるかも!!」

透華「え、ええ……」

一「どうしたの?透華」

透華「………」

透華は考えた。
自分は一に頼りっきりだった。
実際に手品をしてお金を稼いでいたのは一であり、
なにもしてない自分はただ一の稼ぎを食い潰すだけだった。
自分は一と一緒に居ても邪魔になるだけだ。
一はひとりで生きていくことができるのだ。
自分などいなくても……いや、いないほうがいい。

一「テレビ、一緒に出ようね、透華!」

透華「一…」

一「ん?」

透華「テレビには……一だけで出なさい」

一「え?なんで?一緒に出ようよ」

ただ純粋で無邪気な好意からの一の言葉が
今の透華には痛かった。

透華「とにかく、私は良いから」

一「えー、どうしたの?透華、目立ちたがりだったじゃない」

透華「い、いいから」

一「もー、どうしたのさ、一緒にテレビでようよー!」

透華「いいって言ってるでしょ!!」

一「びくっ」

透華は思わず怒鳴ってしまった。
一瞬で我に返り後悔したが、時すでに遅く、
一は怯えたような、信じられないといったような顔で透華を見つめていた。

透華「と、とにかく……そういうことだからっ」

透華はそう言い残し、一と反対の方を向いて、段ボールにくるまって寝転がった。
早く寝てしまおうと思ったが、一のすすり泣く声がいつまでも聞こえていたため、
なかなか眠ることができなかった。

翌日。
透華の呼び込みはなかったが、一が駅前でショーの準備をしていると
自然と客が集まってきた。

一(透華……)

透華がいないと調子が狂う……と考えていたが、
別にそんなことはなくいつものように順調にショーは進んでいった。

一(むしろ透華がいた方が調子狂ったかも)

一は昨夜のことを思い返していた。

一(なんでいきなり怒鳴ったりしたんだろ)

ショーが終わり、道具を片づけ、お金を回収する。
いつもの動作を黙々とやっていると、昨日の男がやってきた。

男「こんにちは、国広一さん」

一「あ、どうも…」

男「じゃあ行きましょう」

一「はい…」

テレビ局。

男「で、これこれこういう感じで……撮影を……インタビューが……
  最後はスタジオで……」

一「はい……はい……」





透華「一は今頃テレビ局ですわね………はぁ」

透華は段ボールを半分だけまとめて、ひもで縛り、それを背負った。

透華「さよなら一……私も自立しなきゃいけない時ですわ。
   あなたはこれから存分にテレビという大舞台で輝いてくださいまし」

河川敷。

一「ふう、ただいま透華。お弁当買ってきた、よ……?」

一はすぐに異変に気付いた。
段ボールが半分無くなっているのだ。

一「と、透……華……」

一は考えるよりも先に走り出していた。

一「透華!透華ーっ!!!」

河川敷を駆け回り、街中を探し、
ホームレスたちにも訪ねて回ったが、透華の行方は分からなかった。

一「透華、透華……どこにいっちゃったの!?」

翌日。
さっそく撮影が行われることになった。

一「………」

男「どうかしましたか?」

一「……あ、いえ……」

男「…何があったかは知りませんけど、撮影の時はいつものようにお願いしますね」

一「はい、分かってます」


ショーが始まり、撮影が開始される。
先ほどまでの落ち込みが嘘のような明るい表情で、
楽しげに手品を披露していく。

男(ほう……感情をコントロールできるとは、プロとしての素質もばっちりだな)

やがてショーは終わった。
スタッフが数人の観客にインタビューをしていた。

一「ふう」

男「おつかれさまです」

次は一へのインタビューが始まった。

手品を始めたきっかけは? これまでで一番楽しかったのは?
……などなど、当たり障りのない一問一答が繰り返された。

男「じゃあ、3週間後に放送されますので。そのときはスタジオに来ていただいて、
  生放送で手品を披露していただくということで」

一「はい」

撮影が終わり、一は元の河川敷へと戻った。
旅館やホテルに泊まれるくらいのお金は貯まっていたが、
一はここで透華を待つことを選んだ。

しかし、いつまでたっても透華は戻ってこなかった。

一「透華……」


そして3週間が過ぎた。

テレビ局。

男「では、VTRを流し終わった後に出てもらいますので。
  リハーサル通りにお願いします」

一「はい」

男「これで有名になれば他のテレビ局からも引っ張りだこですよ」

一「……」

テレビに出て、有名になる。
それはずっと夢に描いてきたことで、
叶うのはとても嬉しい。
だが。

一(透…華……)




純「今日だっけ、一がテレビに出るの」

智紀「テレビ欄に書いてある。『天才アマチュア美少女マジシャン、その素顔に迫る』って」

衣「一も出世したなー」

スタジオでVTRが流された。
一の手品の様子、観客と、そして一へのインタビュー、
最後に締めくくりのナレーションがついて映像は終わった。

司会「では登場していただきましょー、国広一さんです!」

一はゲストや観客からの拍手に迎えられ、スタジオへと入っていった。
BGMが流れ、それにあわせて一は得意の手品を始める。

帽子から万国旗を出し、トランプの柄を変え、ハンカチを消し去るたびに、
拍手喝采が一を包みこむ。




純「ほう、上手くなったな一のやつ」

智紀「もとから上手」

衣「麻雀は私の方が強いよ」



そして一の手品が終わった。

司会「いやーすごかったですねー」

一「あはは、ありがとうございます」

司会「テレビに出るのは初めてらしいけど、大丈夫だった?」

一「はい、いつもと同じ感覚でやれました」

司会「そうかーすごいねー。では最後に、視聴者の皆さんにひとことお願いします!」

カメラが一のアップを捉える。

一「…………」

司会「ん?は、一さん?」

一「……………透華」

司会「ん?」

一「透華!透華、見てるでしょ?」




純「ん?」

智紀「一体何を」

衣「とーか?誰だっけそれ」

一「透華!僕には透華は必要なんだ!!帰ってきてよ、透華!!」

司会「は、一さん、ちょっと……」

一「透華!僕、待ってるから!!また、一緒に、一緒に……一緒に過ごしたいよ、透華!!
  なんで突然いなくなっちゃったの、透華!!帰ってきてよおおおおっ!!!」

最後の方は涙声になっていた。
一はカメラに向かってそれだけ言い終えると、走ってスタジオから出ていってしまった。

司会「いやははは、なかなか熱い子でしたね……では次のコーナー……」




男「おい!待たないか!!」がしっ

一「なんですかっ!!」

男「せっかくの放送を台無しにしやがって……
  こんな問題起こして、どうなるか分かってるのか?
  お前みたいなやつはもうどこのテレビ局からも呼ばれないぞ」

一「もうそんなのどうだっていい!!僕には透華のほうが大事なんだっ!!」

一は男の手を振りほどき、叫びながら走り去った。

一「テレビ局なんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」

河川敷。
夕焼けのオレンジを反射する川面を眺めながら、
一はひとり段ボールの上に座っていた。

一(透華……ちゃんと見てくれてたかな……)

一はひたすら待ち続けた。
透華を信じていた。
信じる以外の選択肢などあるはずがなかった。

やがて日が落ち、星が瞬き始めた。

一(おなかすいた……コンビニ行こう)

そう思って立ち上がると、
視界の奥になにやら見覚えのある人影が現れた。

一(ん…?あれは……)

その人影は、だんだんと一の方に近づいてきた。

一(まさか……)

そのまさかだった。

一「透華!!」

やべっ
サブタイトルが思いつかねえ

透華「は、一……」

一「透華ーっ!!どこ行ってたんだよ、ばかーっ!!」

透華「ば、ばかはあなたですわ!!テレビであんなことっ……!!」

一「だって透華に会いたかったんだよ!!だいたいなんでいなくなっちゃったのさ!!」

透華「そ、それはっ……私なんて何もできませんし……一の邪魔になると思ったから」

一「じゃ、邪魔だなんて……そんなこと思うわけないだろっ!
  僕は透華と一緒に居られさえすれば、それでいいんだからっ……!!」

透華「は、一……!!」

一「透華……また一緒に、2人で生きていこう。ね?
  テレビデビューもパーになっちゃったし、またゼロからのスタートだけどさ」

透華「ええ……あらためてよろしくね、一……!」

一「うん!」


        裂 -Saki- 第6話「THE 夢のヒットマジシャン」

                 完

全部ハッピーエンドだよ

和「はあ、ついに胸のサイズが100cmの大台を突破してしまいました……」

2か月前に買ったブラジャーをゴミ箱に捨て、
さらに一回り大きなブラジャーを着ける和。

和「いったいどうしてここまで大きくなってしまったんでしょうか……」

セーラー服を着ると、明らかに胸の部分だけが盛り上がっている。
制服というのは体のラインが分かりにくいはずなのに、これは異常である。

和「はぁー……」

通学路で咲と会った。

和「おはようございます、宮永さん」

咲「おはよう、原村さん」

咲の顔は正面を向いているが、目線だけが胸へと向かっている。

和(胸見てるのばればれですよ宮永さん……)

しかし気付かないふりをするのがマナーであり、巨乳の宿命である。

咲「今日は遅かったんだね」

和「ええ、ちょっと寝坊しちゃって……」

咲「あ、そーだ、昨日のテレビでさー」

2人でのんびりと会話をしながら歩いていたが、

咲「あ、大変!あと3分で遅刻だよー!急がなきゃ」

和「走りましょう」

咲「うん!」

走りはじめた和の胸はゆっさゆっさと大きく揺れる。
同じように遅刻せぬよう走っている生徒たちの眼は男女問わず和の胸に釘付けになり、
転んだりぶつかったりする人が続出した。

和「ふうー、なんとか間に合いましたね」

咲「そうだねえ……ふう、あつー」

和「そういえば2時間目の体育は水泳でしたね」

咲「あーそっか、プールか、やったー」

水泳。和にとってはもっとも忌むべき授業であった。
理由は言わずもがな。

咲「楽しみだねー、プール」

和「そ、そうですね、あはは……」

1時間目が終わり、地獄の2時間目がやってきた。

先に着替え終わり、プールサイドに集まっていた男子どもは
女子の、特に原村和の到着を今か今かと待ちわびていた。

そしてついにスクール水着姿の女子たちがプールサイドに姿を現した。
和はほかの女子の陰に隠れ、必死に男子どもの視線から逃れようとした。

和「ううっ…」

咲「どうしたの原村さん」

和「な、なんでもないです……あ、そこ動かないでください」

咲「え?うん」

男子「宮永ぁー!!右に50cmほどずれてくれー!!」

和「だめ!!動かないでください!!」

咲「え?え?」

和の胸はスクール水着に収まりきらず、今にも溢れだしそうだった。
女子たちの羨望と嫉妬の眼差しが和の胸に向けられる。

和(はずかしい……)

先生「はーいみんなー。今日は野田先生が休みだから、男子と混合で授業をやるわよ~」

和「ぶーっ!!」

男子たちから歓声が湧き起った。

先生「名簿順で4人ずつになって、8コースに分かれてリレーをしてもらいます。
   泳ぎ方は自由よ」

和(名簿順……確か私の前後は男子ばっかりだったはずっ)

咲「頑張ろうね原村さん!手加減はなしだよ!」

和「え、ええ……」

先生によってグループ分けされ、
和は男子3人のグループに放り込まれた。
彼らの視線は和の胸に集中している。

和(た、耐えるんですよ、私……)

先生「じゃ、名簿の番号が小さい順から泳ぐのよ」

その順番で行くと和が泳ぐのは3番目だった。
最初の男子が飛び込み台に立った。

先生「じゃあいくわよー、よーいスタート!」

生徒たちが飛び込み、8つのコースから同時に水しぶきが上がった。
ある者はクロールで、またある者は平泳ぎで、水面を滑るように進んでいく。

和のチームの男子はトップで帰ってきた。

男子「よし、いくぜ」

2人目の男子が飛び込む。

和(次は私ですね……)

やがて2人目の男子が帰ってきた。

和はいきおいよく飛び込んだ。

綺麗なフォームのクロールで泳ぐ和。
この時点では異変にまだ気づいていなかった。

25メートル地点で折り返し、スタート地点に戻ろうとした……その瞬間、
足がつってしまった。

和「うっ……!!」

脚を動かすことができず、ひたすらもがく。

和「た、助けて……!!」

それを見た両隣のコースの男子が、和を助けに来た。

男子「だいじょうぶか……うわお」
男子「おお……っ」

やたらとにやけた男子二人に抱えられ、和はプールサイドに上がった。
その瞬間、周囲からどよめきが起こった。

和「え」

和の胸は飛び込みの衝撃で丸出しになっていたのであった。

和「いやあああああああああああああ!!!!」

和はすさまじい勢いで立ちあがり、
プールから走り去ってしまった。

男子「走れるのかよ」

咲「原村さん!」

その後を追いかける咲。




和は体育館横の生垣に隠れて泣いていた。

咲(あれ?こんな状況が前にもあったような)

と咲は思ったが、勘違いだと思うことにした。

咲「原村さん」

和「うう、宮永さん……」

咲は和のとなりに腰かけた。

和「宮永さん……私、この胸のせいでずっと苦労してきたんです……
  小学校中学校のときも、ずっとこの胸のせいで目立ってしまって……
  男子からも女子からも、大人の人からも、ずっと変な目で見られ続けて……」

和は涙ながらに話しはじめた。

和「高校に入ってからは、さらに大きくなって……入学当初から10cmも増えて……
  もうどうしたらいいのか……」

咲「原村さん、私は原村さんの胸、好きだよ……
  大きくて、あったかくて……お母さんみたいで」

和「宮永さん……」

咲「恥ずかしがることなんてないよ、胸が大きいのは原村さんの魅力なんだもの。
  もっと自信持って、ね」

和「うう、宮永さん……ありがとうございます……」

咲(ふふふふふふ)

咲の妙な微笑みに、和は気付かなかった。

放課後の部室。

咲「原村さん、紅茶が入ったよ」

和「ありがとうございます、宮永さん」

先からコップを手渡され、和は紅茶を飲んだ。

和「おいしいです」

咲(ふふふふふふふ)

和「どうかしましたか?」

咲「いや、なんでもないよ」

和「ふふ、変な宮永さん……………あの、今朝はありがとうございました、慰めてくれて」

咲「ううん、いいんだよあれくらい。友達だもん」

和「宮永さん……」

咲(ふふふふふふふふ)

夏休みに入っても大会が近いこともあって
毎日のように部活があった。


そして8月も終わり、9月になる頃には、
和の胸はさらに成長していた。

和「ひゃ、ひゃ、ひゃ、ひゃ」

店員「120cm……!?」

新しい下着を買うために、和は婦人衣料品売り場でサイズを測ってもらっていたのだが、
その予想斜め上の数字に、店員も和も驚きを隠せなかった。

和「あ、ありますか?この大きさのブラジャー……」

店員「いえ、当店では取り扱っておりません……特注でなら、お作りできますが……
   値段が少々お高くなってしまいます」

和「はぁ、仕方ないですね……おねがいします……」

部室。

和「ふぅ……」

優希「のどちゃんまたおっぱい増えてるじぇー」

久「あらほんと。ちょっと私にも分けなさいよ」

和「ははは……」

久「ていうかそんなに大きいと肩こるんじゃない?」

和「そうですね……最近酷くて……そのせいで頭痛も」

これもまた巨乳の宿命である。

久「大変ねー」

咲(ふふふふふふふふふ、順調に成長してるみたいだね、原村さん……)

優希「咲ちゃん、紅茶まだかー?」

咲「あ、今持ってくねー」

そう言いながら咲は和のコップに白い粉を注いだ。

咲「はいどうぞー」

優希「わーい」

久「咲の入れた紅茶は美味しいわねー」

和「ほんとですねー」

咲(ふふふふふ……もっともっと大きくなぁれ……ふふふふふふ)


和の胸の異常な成長は咲が紅茶に入れていた薬のせいであった。
その紅茶を飲み続けた和は、冬になる頃にはさらに胸が大きくなっていた。

150cmを突破したころ、和は倒れ、入院することになった。

病院。

医者「ううむ、原因はホルモンの異常分泌だな……
   とりあえずしばらく入院して、薬で治療すればいちおう成長は止まる……」

和の体にはまさしくスイカのような胸が二つ。

医者「整形手術をおこなって、その胸を切除することもできるが」

和「ほほほ、ほんとですか!?」

医者「ああ、普通の大きさに戻してあげよう」

和「嬉しいです!!私、こんな胸なんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!
  ってずっと思ってたんです」

医者「ははは、そりゃよかった。じゃあまず検査と診断があるから、
   手術は10日後ね」

和「はい!!」



そして手術の結果、和の胸は普通のサイズに戻ったのであった。

1ヶ月後、部室。

優希「退院おめでとうだじぇー、のどちゃーん!」

久「もう大丈夫なの?」

和「はい、ご心配おかけしました」

咲「の、の、の、の、の………和ちゃん………」

和「そうしたんですか?宮永さん」

咲「その胸!小さくなってる!!!」

和「ああ、手術で切除したんです」

咲「な、なんで!?今までの私の努力が水の泡じゃない!!!」

久「努力?」

咲「ずっと原村さんの胸を大きくしようと、紅茶に薬を入れてたのに!!!」

和「え?み、宮永さん……?」

久「く、薬?胸を大きくする薬なんてあるの?」

咲「はい、これです!!」

咲は20cmほどの大きさのビンを取りだした。
中には白い粉が詰まっている。

咲「中国の湖北省から取り寄せた秘薬中の秘薬!!
  毎日飲み続ければ化け物のような胸を得られるのです!!」

和「………」

咲「私は原村さんの大きな胸が好きだったのに!!
  だから薬を飲ませ続けたのに!!それなのに小さくしちゃうなんて!!」

和「………宮永さん」

和は笑顔で語りかけた。
そして、ゆっくりと咲に歩み寄る。

咲「どうしたの原村さん、あ、また飲んでくれる気になった?」

和「うふふ」

和は咲の手からビンを奪い取った。

和「私がどれだけ大変な思いをしたか分かってるんですかああああああああああ!!!」

そう叫びながら、和はビンの中身を咲の口に流し込む。

咲「うわわ、げほ、ごほ」

和「全部飲みなさい!!優希、部長!!宮永さんを押さえてください!!!」

その迫力に気圧され、優希と久は言われるがままに咲を押さえつけ、
口を開けさせた。

咲「んぐー!!」

和「あはははは!!私の苦しみ、思い知るがいいんです!!」

白い粉は一粒残らず咲の腹に収まってしまった。
これにより咲の胸が和以上に急成長を遂げるのだが、それはまた別の話。


        裂 -Saki- 第7話「B1oooocm'」

                 完

そろそろネタが尽きてきた

優希「タコスうまいじぇー」

咲「ねえ優希ちゃん」

優希「ん?」

咲「その『じぇ』ていうの気持ち悪いからやめてくれない?」

優希「……?」

咲「ね、原村さん」

和「そうですねー、ちょっと気持ち悪いですね」

優希「え……」







既出ネタな気がするがまあいいや
晩飯食ってくる

咲「耳障りなんだよね~、その語尾」

和「そうですよ、やめてくれませんか?」

優希「え、そ、そんな……急に言われても無理だじぇ」

咲「あー!また言った~」

和「うーん、口で言っても分からないなら体で教えるしかありませんね……」

優希「か、からだで?」

和は掃除用具入れからモップを取り出した。

和「『じぇ』って言うたびに、このモップで殴ります」

優希「え、ええええええっ!?」

和「早速さっきのぶん」

和は優希の頭にモップの柄を振り下ろした。

優希「ぎゃーっ!!痛いじぇー!!」

和「また言いましたね!!」

さらにもう一撃。

咲「和ちゃん、私にもやらせて~」

和「いいですよ」

和はモップを手渡した。
咲は優希が『じぇ』と言うのを目を輝かせて期待している。

優希「…………」

咲「なんか喋ってよ~、つまんないよ」

優希「…………」

和「優希……確かに変な口癖をやめなさい、とは言いましたよ。
  でも、ずっと黙ってるだけじゃ根本的な解決にならないでしょう?
  普段の会話の中で、口癖を抑えるために練習することが重要なんです」

咲「喋らないと殴るよ」

優希「で、でも何をしゃべればいいんだじぇ……」

ボカッという音を立てて優希の頭にモップが命中した。

優希「ぎゃーっ!!」

和「私とお話ししましょう、優希。お昼ごはんは何を食べましたか?」

優希「うう、タコスだじぇ」

ボカッ

優希「ぎゃーっ!!」

和「おいしかったですか?」

優希「ううっ……おいしかったじぇ」

ボカッ

優希「ぎゃーっ!!」

和「タコス好きなんですね」

優希「…う…す、好きだ……じぇ」

ボカッ

優希「ぎゃーっ!!」




福路「55ぎゃあね…」
池田「どうしたんですかキャプテン」
福路「なんでもないわ」

ちょっと風呂入ってくる

書くか

咲「あはは、タンコブでボッコボコだよ、優希ちゃん」

和「それに血も垂れてきてますよ」

優希「ふ、二人とも酷いじぇ……」

ボカッ

優希「ぎゃーっ!!」

和「宮永さん宮永さん、そろそろ代わってください」

咲「え~あと1回だけ~」

優希「ううううう……」

ガチャ
京太郎「うぃーっす」

咲「あ、京ちゃん」

優希「助けてくれ、犬~!二人が酷いんだじぇー!!」

京太郎に縋りつこうとする優希の後頭部にモップの柄が叩きつけられた。

優希「ぎゃああああ!!!」

優希「犬ー!!助けて~!!!」

京太郎「…前から言いたかったんだけどさ、お前、人を犬呼ばわりするのやめろよな」

優希「えっ……」

京太郎「えっ、じゃねえよ。むかつくっつてんだよ!!」

京太郎は優希の腹を蹴り上げた。

優希「ぐはっ……」

無様にも床に転がる優希。
腹に打撃を受けたために呼吸がままならないようだ。

優希「かはっ……かはーっ」

咲「うわっ、気持ち悪ーい」

和「あまり調子に乗るからいけないんですよ、優希」

京太郎「そうだぞ。バカはバカらしく大人しくしてりゃいいんだよ」

優希「ぐすっ…うううっ……」

和「ほら優希、口癖治す特訓しますよ!!」

優希「も、もういやだじぇ……」

ボカッ
今度は顔面に直撃した。
優希は鼻血を吹いて倒れた。

優希「ぎゃあああ!!」

ガチャ
久「やっ」

咲「あ、こんにちは部長」

久「ん……?なんかこの部屋くさくない?」

京太郎「ああ、優希が持ってるタコスの匂いですよ」

久「あ、そう……優希、これからタコスの持ち込み禁止ね」

優希「そ、そんなぁ~!」

久「タコス捨てるわよ」

久は優希のカバンから大量のタコスを取り出し、
ゴミ箱に放り込んだ。

優希「ああああああ!!タコスがあああああああ!!!」

久「タコスくさいのよ。みんな迷惑なの。分かるでしょ?」

優希「だからって捨てることないじぇ!!」

ボカッ

優希「ぎゃーっ!!」

京太郎「きめえ叫び声あげてんじゃねえ!!」

ドスッ

優希「ぎいあああああああああああああああああ!!!!」




福路「すごい……100ぎゃあだわ……」
池田「キャプテン?」

翌日、部室。

咲「優希ちゃん来ないねー」

和「今日もボコボコにしてあげようと思ったんですけどね」

ガチャ
久「咲、和。大変よ」

京太郎「どうしたんですか?」

久「優希が部活を辞めちゃったの。さっき担任から退部届を渡されたわ」

咲「あ、そうなんですか。良かったじゃないですか」

久「良くないわよ、これじゃ人数が足りなくて試合に出られないでしょ?」

咲「あ、そっか」

久「みんなで優希のところに行くわよ」

和「はいっ」

京太郎「はい」

教室。

咲「優希ちゃん、いる?」

優希「ひっ……!」

京太郎「おい優希!!どうしていきなり部活を辞めたりしたんだ!!」

和「そうですよ!!試合に出られなくなったじゃないですか!!」

優希「だ、だって……みんなが、いじめるから……」

久「優希、これはいじめじゃないわ。教育よ」

優希「教育……?」

久「そう、教育。あなたの口癖は気持ち悪いし、人を犬って呼ぶのも良くないわ。
  あと部室でタコスの悪臭を撒き散らすのもね。ついでに、先輩にタメ口使うのもおかしいわね。
  つまりあなたは精神面で欠陥をいくつも抱えたゴミクズ人間なのよ。
  それを真人間になれるように私たちが教育してあげてるってわけ。分かる?」

優希「でも……痛いのは……いや……だじぇ……」

咲「また言った!」

ボカッ

優希「ぎゃあっ!!」

久「さあ、部室に来なさい!教育を再開するわ!」

優希「ひいいいいいい!!!」


部室。

咲「ほら!!部長と会話して!!」

優希「うう…」

久「優希、好きな食べ物は?」

優希「タコスだじぇ……」

バキッドカッボコッ
3方向からパンチが飛んできた。

優希「ぎええええ!!!」

咲「『じぇ』って言うなってば!!」

久「先輩には敬語を使いなさい!!」

和「タコスのことは忘れなさい!!」

京太郎「強くなれよ、優希……」

久「ほら、優希!好きな食べ物は!?」

優希「うううう……さくらんぼ…だじぇ……」

ドカッボコッ

優希「ひいいい!!」

久「もう1回!好きな食べ物は!?」

優希「さ、さくらんぼ……ですっ!!」

久「もう1回!」

優希「さくらんぼですっ!!」

久「ワンモア!!」

優希「さくらんぼですっ!!」

久「ふう、やっと治ったじぇ」

京太郎「よくやったじぇ、優希」

咲「あれ?」

和「みんな語尾に『じぇ』がついてるじぇ」

久「あ、あれ?なんか変だじぇ」

咲「なんだか無性にタコスを食べたくなってきたじぇ」

和「犬、タコス買ってくるじぇ」

京太郎「な、なんで俺が買いに行かなきゃいけないんだじぇ」

優希「なんか変なことになっちゃった……まあいっか」

こうして麻雀部室は、つねにタコスのにおいと
『じぇ』という口癖で満たされることになったのであった。


        裂 -Saki- 第8話「タコス天使にかこまれちゃう」

                 完

おっとまたスレタイのセリフを入れるの忘れた

そしてネタがない
ネタくれ

じゃあ衣で



深夜11時。
夜中だというのに駅前に人通りは絶えず、
チャラチャラした服装の若者や塾帰りの中学生、
残業終わりのサラリーマンなどなど、多種多様の人々が行きかっていた。

その雑踏の中、ぽつんと立っている一人の少女、天江衣。

その童顔や低い背丈など、外見だけ見れば小学生のようだが、
いちおう立派な高校生だった。

衣「ふー、まだこないのかなー」

とそのとき、衣の肩を一人の男が叩いた。

男「衣ちゃん?」

衣「おまえ野田という男か?」

男「ああ、そうだ。海底クラブの会員証もある」

衣「確かに野田だな。じゃあ早速行こうじゃないか」

男「ああ」

2人は連れ立って歩いていった。
駅裏のホテル街へと。



ホテル内。

衣「良い部屋だな」

男「衣ちゃんのためなら奮発するよ」

衣「ふふ、いい心がけだ。私は先にシャワーを浴びてくる」

男「ああ」

シャワーを浴び終え、衣はバスローブ姿でベッドに寝転がっていた。
今は男がシャワーを浴びている。

衣「……」

衣は1年前の県予選大会のことを思い返していた。

衣(あの時……)

あの時、衣は龍門渕の大将として、清澄、鶴賀、風越と戦った。
決勝まで勝ち上がってきたとはいえ、衣の超人的な打ち方に敵うはずもなく、
3校は一度も反撃できずに衣の前に敗れ去った。

衣(あの時、私は……勝ち過ぎて、しまったんだ)

大会が終わった後、3校の大将・宮永、加治木、池田が精神に傷を負い、
部屋から出てこられなくなっている、という噂がささやかれた。
清澄や鶴賀の生徒の証言からそれが事実だと分かり、衣と龍門渕に世間の非難が集中したのだ。

しかし>>1は暇人なんだな
時間の使い方もったいないぞ

衣は部活を辞めさせられ、麻雀界からも衣の存在は抹消されてしまった。
表向きの理由としては世間からの非難のためだったが、本当はプロ麻雀連合が
神や悪魔にも匹敵するほどの打ち手を闇に葬り去るためだった。
衣がいてはプロの地位が危うい、そう判断したのだ。

衣にとって麻雀を失うということは生きる意味を無くしたに等しかった。

衣(私には麻雀しかなかったのに)

それからの衣は非行に走った。
自らを潰した社会への抵抗のつもりか、
麻雀ができないことのストレスの解消のためなのかは
周りの人間には判断がつかなかった。

酒もやった。
煙草も吸った。
男遊びも覚えた。

そして、ロリータ専門売春店「海底クラブ」にスカウトされた。

>>701
うるさいうるさい

衣はスカウトを受け入れ、海底クラブに登録した。
店自体は非合法のものだったが、かなり稼いでいるらしく、
衣のもとにも毎月高額の金が入ってきた。

衣は2か月で店のトップに上り詰めた。
並の小学生より幼く可愛らしい容姿、肉体、
それでいて生意気な口調、というのが男心を掴んだらしい。

今では金持ちのプラチナ会員を夜な夜な相手にする毎日を送っている。

男「ふう、シャワー浴びてきたよ、衣ちゃん」

衣「遅い!いつまで待たせる気だ」

男「ごめんごめん。さあ、始めようか」

衣「んっ」

男は衣の肩を抱き、首筋に唇を這わせた。

首筋を舐めながら、少しずつ衣のバスローブをはだけさせてゆく。

衣「ん…」

男「はぁ、はぁ」

男は頭をあげ、一瞬衣と視線を交わしたのち、
唇を重ね合わせた。

衣「ん…んんっ」

男「ぬぶちゅーれろれろ」

舌と舌を絡め合いながら、
衣の全くと言っていいほど膨らみのない胸に
男は優しく触れた。

衣「ふぁっ」

男「可愛いねぇ衣ちゃん……」

衣「んぁっ……あ……」

男の指が敏感な部分を刺激するたびに、甘い声が漏れる。

男「そろそろ舐めてくれよ」

そう言って男はパンツを脱ぎ、ガチガチのイチモツを露わにした。

衣「んふ…もうこんなになっているのか」

衣は竿に指を這わせ、亀頭を舐めあげる。

男「おぅふ……良いよ衣ちゃん、上手くなったね……」

衣「ふふ、お前に喜んでもらうためだよ」ぺろぺろ

男「はは、嬉しいね……おおぅ」

衣はその小さな口にペニスを咥えこんだ。

衣が頭を上下させるたびに
じゅぽじゅぽと卑猥な音が響く。

男「おお……!!おおう……!!ああぁぁぁお……!!」

男は奇声を上げながら悶えている。

衣「ほんはにひほひいいは?」(そんなに気持ちいいか?)

男「おおぅふ……最高……最高だよ衣ちゃん……
  そろそろストップしてくれ……これ以上はもう……」

衣「まったく、だらしないな」

衣は口をペニスから離した。
唾液が糸を引いている。

男「はあはあ、そろそろ本番と行こう」

衣「ああ」

衣は仰向けに寝転がった。

男「じゃあ入れるよ~衣ちゃん」

衣「うん……」

毛も生えていない綺麗な割れ目に、
男はペニスの先をあてがった。

衣「んっ…」

そしてそのまま、一気に挿入した。

衣「ああっ!!」

男「おあぅふ!!」

普通の女子高生よりもずっと小さな衣の膣は、
容赦なく男のペニスを締め付ける。

男「おあああぅ、相変わらずスゴイ締め付けだよ衣ちゃん」

男は勢いよくピストン運動を開始した。

衣「あ、あ、ああああっ!!」

男「い、い、いくううううううう!!!」

男は膣からペニスを引き抜き、衣の胸に射精した。

衣(相変わらず馬鹿みたいに早漏だな……)

男「はあ、はあ……良かったよ、衣ちゃん」

衣「そうか、喜んでくれて私も嬉しいよ」

男「…なあ衣ちゃん、明日の土曜日、暇かい?もしよかったら……」

衣「すまないが、お客とのプライベートでの付き合いは禁じられているんだ」

男「そうなんだ…がっかりだな」

衣「ま、朝までならここで一緒にいてやっても良いぞ」

男「そ、そうかい?」

衣「ああ」

こうして夜は更けていった。

翌日、夜。
衣は海底クラブの店長に呼び出された。
店長は韓国人ということらしいが、日本語はペラペラだった。

店長「衣ちゃーん、日曜、火曜、水曜、木曜はシフト入ってなかったよね」

衣「ああ、入ってないぞ」

店長「今度から、火曜と水曜も働いてもらえないかな~、なんて」

衣「え、なぜだ?そんなに客が増えたのか?」

店長「いや~そうじゃないよ、隣に新しいお店できたでしょ?嶺上クラブっていう。
   そっちに客を取られちゃっててね~、衣ちゃんにも頑張ってもらおうと思って」

衣「はあ、まあ、別にいいが……」

店長「やってくれる?ありがと~」

衣「いや、私にできるのはこれくらいだからな…」

その日もいつもの駅前で、昨日とは違うオジサンに連れられ、
ホテルに入り、情事を済ませた。

オジサン「いや~、やっぱり衣ちゃんが一番だね」

衣「2番や3番がいるのか?」

オジサン「ああ、最近できた嶺上クラブっていうお店の、トップの子なんだけどね。
     茶髪の可愛らしい高校生の子なんだ。宮永とか言ったっけか」

衣「宮永……?宮永、咲……?」

オジサン「ああ、確かそんな名前だったねえ。知り合いかい?」

衣「いやまあ、ちょっとな……」

オジサン「ふうん」

衣(宮永咲………貴様も堕ちるところまで堕ちたか………
  どうしよう?…会ってみるか?…いや、今さらそんなことをしても無駄か……)

翌日、日曜日。

衣(ふぁ~、今日は久々の休みだな)

目覚めたのは夜の7時だった。
衣は海底クラブに勤めるようになってから、完全に昼夜逆転の生活を送っていた。

衣(休みと言っても特にやることないんだよな~……ゲームも飽きたし……
  ………そうだ)

衣は宮永咲を見に行くことにした。
同姓同名なのか本人なのか、今どんな感じなのかを確認したかった。

衣(よし、行ってみるか)

衣はカロリーメイトを齧りながら、
ボロアパートのドアに鍵をかけた。
そして、夜の街へと繰り出していった。

衣は海底クラブの前の生垣に身をひそめた。
今まで気づかなかったが、海底クラブの横に
「嶺上クラブ」と小さく書かれた看板がかかった店があった。

衣は息をひそめて待ち続けた。

衣(まあ別に今日出勤してなくてもいい、どうせ他にやることもないし待っていよう)

と思ったのもつかの間、すぐに一人の少女が店から出てきた。
青と白のセーラー服に身を包んだ茶髪の少女。見覚えがあった。

衣(あいつだ)

しかし、衣の場所からでは咲の様子ははっきりとは分からなかった。

衣(もっと近づかないとな)

衣は電柱や塀に身を隠しながら、少しずつ距離を縮めていった。

咲は駅前に向かっていた。
衣がいつもいる場所とはすこしずれた所だった。

衣は咲の5mほど後ろを尾行していた。
かなり近かったが、咲は衣にまったく気付いていないようだった。

やがて咲は、街路樹の下に立っていた、高級そうなスーツの男に声をかけた。
彼が今日の咲の客なのだろう。

と、その時。
その男が衣に気付いたようだった。
彼は海底クラブの常連客だったのである。

男「おお、衣ちゃんじゃないか。どうしたんだ」

衣(やばっ)

その声で、咲は衣の方に振り返った。

衣はそこでやっとまともに咲の顔を見た。
大会の時よりも痩せていて、肌は青白く、
目からは生気が全くといっていいほど感じられなかった。

衣(な、なんだあれ……生きてるのか)

咲「天江………衣………?」

男「ああ、海底クラブの子だ」

咲「天江衣………天江衣………天江衣………」

男「咲ちゃん?」

咲「あああああああああああまえころもおおおおおおおおおおおああああああああああ!!!!!」

男「咲ちゃん!?」

咲は衣に向かって猛スピードで駆け出した。

衣「ひっ!?」

衣は避ける間もなく、咲によって道路に押し倒され、
首に手をかけられた。

咲「天江衣おおおおおおおおおお!!!貴様だ!!!貴様が全部!!!!」

衣「ぐ……ぐくっ……」

咲「貴様が壊したんだ!!!全部!!!私を!!!貴様が!!!貴様なんか!!!」

衣「う、ううううっ……」

咲「貴様なんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」

衣「ぐ……っ」

衣の意識が飛びかけた瞬間、男が咲を引きはがしてくれた。

男「いったいどうしたんだ、咲ちゃん!?」

咲「はあ、はあっ……」

衣「ううっ……」

そこに、巡回中の警察官が、騒ぎを聞きつけてやってきた。

警官「こら、何をしている?」
警官「ちょっとこっちへ来なさい!!」

男「う…」

咲「はあ、ふう……」

これがきっかけになって、嶺上クラブと海底クラブは違法な売春店として摘発されてしまった。
店長や店で働いていた女の子、そして客たちもみんな逮捕されてしまった。
さらに、警察の調べで咲は麻薬漬けになっていたことが分かり、特別な病院へと送られてしまったのであった。

数日後。

衣「はあ……」

衣はとある河川敷をとぼとぼと歩いていた。

あの駅前の騒ぎで警察に見つかる前に逃げ出すことはできたが、
アパートにいては警察がやってくるだろうから、帰ることはできなかった。
そのため衣は、着のみ着のままで野宿生活を送らざるを得なかった。

衣(これからどうすればいいんだろ……)

衣は川面に視線を落とした。
この川は割と深く、流れも速い。
ここで自殺者が出たという話もよく聞く。

衣「………はぁ」

死のうかな……と思ったが、
実行する勇気などなかった。

衣「はあ、おなかすいた」

衣「……」

とその時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

透華「衣?衣ですの?」

一「あ、ほんとだ!衣だ!」

衣「と、透華?それに、一」

2人は衣のもとに駆け寄ってきた。

一「ど、どうしたんだ、服ボロボロじゃないか」

透華「あなた、麻雀部を追放されてからどこにいましたの?
   まったく連絡も取れなかったから、心配しましたのよ」

衣「まあ、それは……色々だ、色々。それより2人はここで何をしているんだ」

透華「ああ、私たちは、龍門渕家が破産して一文なしになっちゃいましたから」

一「僕と透華で、手品をやって日銭を稼いでるんだ。ま、透華は助手なんだけどね」

透華「もう、一言余計ですわ。すぐに一みたいに上手くなってみせますわ」

一「はは、頼もしいな」

衣「……」

一「で、衣は今までどうしてたの?」

透華「あまりいい生活をしていたようには見えませんわね」

衣「ふん、おまえたちにそんなことを言われたくはない。
  私はもう行くから」

一「え?ちょっと、衣……」

衣(私は警察に追われる身……私と一緒にいたら、2人に迷惑がかかる)

衣は2人が呼び止めるのも聞かず、
土手を駆け上ってひたすら走った。



やがて日は沈み、あたりは暗くなった。

衣(はあ、ほんとにおなかすいた……昨日から何も食べてないよ……ん?)

衣は、いつのまにか畑に来ているということに気がついた。

衣(も、もしかしたら何か食べられる野菜が……)

衣は畑にこっそり忍び込んだ。
あたりは暗く、見つかることもないだろう。

衣(食べられる物……食べられる物……)

しかし今は収穫期ではなく、およそ食べられそうな野菜はほとんどなかった。

衣(あ、あそこにトマトがある!)

赤く実ったトマトに手を伸ばした衣。
しかし、同時にトマトを取ろうとした者がいた。

それはゴリラのような生き物だった。

衣「う、うわああああっ!!」

優希「な、誰だじぇ、おまえは」

衣「うわ!喋ったぁ!」

優希「そりゃ喋るじぇ、人間だもん」

衣「え?」

衣「人間…?」

優希「そうだじぇ、ちょっとばかしポッチャリ体系なだけだじぇ」

衣「ぽっちゃり……」

優希「そのトマトはおまえにやるじぇ。おまえも食うに困ってるんだろ?」

衣「え、あ、ありがとう……」

優希「いいってことよ」

そういうと優希はのそのそと歩きだし、
畑に埋まっているまだろくに成長していない野菜を片っ端から掘り起こして
自らの口に押し込んだ。

衣「すごいな、逞しい人だな。野宿生活を送るにはあれくらいしないとダメなのかもしれないな」

そう考えながら、衣はトマトを齧った。

やがて畑の作物をすべて食いつくした優希と衣は、
山沿いの暗い夜道を行くあてもなく歩いていた。

優希「おまえ、どうして野宿生活してんだ?」

衣「私にはもう、帰る場所がないからな……どこにも……」

優希「そんな悲しいこと言うもんじゃないじぇ」

衣「本当だから仕方ない。おまえにはあるのか?帰る場所」

優希「私にもないじぇ」

衣「そっか……ふぇっ、へくしゅっ!」

優希「どした、寒いのかー?」

衣「ん、ちょっと」

優希「じゃあこれをやるじぇ」

優希は20枚ほどの青い布を取り出した。

衣「これは……?」

優希「スカートだじぇ。今朝拾ったんだじぇ」

衣「なぜスカート……?」

優希「それはわかんないけど、まあとりあえずこれで寒さはしのげるじぇ」

衣「ああ、じゃあ一応もらっておこう。感謝するぞ」

優希「うん。じゃあ、私はあっちの牛小屋の牛を食べてくるから、ここでお別れだじぇ」

衣「そうか、元気でな、キングコング」

優希「おう」

優希は地響きとともに暗闇の中に去っていった。


衣は道路横の山道に入り、スカートにくるまって寝ることにした。

衣(あったかい……)

久々に感じた温もりのおかげで、衣はすぐに寝入ってしまった。

翌日、日が昇るとともに衣は目を覚ました。

衣「ふぁ……朝か……」

また今日も、行くあてもなく彷徨いつづける一日が始まる。
どこへ行けばいいのか、どこに居ればいいのか、衣には分からなかった。

衣(私の帰るべき場所は……どこ?)

ここ数日、そんなことばかり考えていた。
麻雀も失った。住んでいたアパートにも帰れなくなった。お店は潰れた……。
そして、行きつく結論はいつも同じ。

衣(私の居場所なんてどこにもない)

何度も死ぬことを考えた。
かといって死ぬ勇気があるわけでもない。
だから、衣はひたすら彷徨いつづけるしかなかった。

衣(もういやだよ)

衣(はあ)

衣はスカートをまとめて、抱え上げた。
20枚もあると結構重たい。

衣が道路に出ると、一台の黒い車が止まっていた。
このあたりではめったにお目にかかれない、外国の高級車だ。

と、その車の窓ガラスがひらき、
中から見知らぬ男が顔を出した。

男「アマエコロモさん?」

衣「えっ……?な、なんで私の名前……」

男「ふふん、やはりね。あなたのことはちょっと調べさせてもらったんですヨ」

衣(な、な、なんだこいつ。見るからに怪しいし、日本語の発音も何かおかしい)

男「3人の選手を壊して麻雀界から追放され、売春で稼ぐも警察に摘発され、今は放浪の身……
  …ああ、別に警察に突き出そうってわけじゃないですヨ。
  そんなホームレスみたいな生活をしてる貴方に、居場所を与えてあげようと思ってきたんです」

衣「い……居場所?」

男「そう」

衣は一瞬ためらったが、結局その車に乗り込んだ。
このままでは野垂れ死にが関の山だし、もうどうとでもなればいいと思ったのだ。

衣が後部座席に座ると、男は車を発進させた。

衣「なあ、お前は何者なんだ」

男「私?私は中国の湖北省と言うところで薬を作っているものですヨ。
  まあそれは表向きの姿で、ほんとはちょっと危ない組織の幹部だったりするんですがね」

衣「ふうん。薬ってどんな薬だ?」

男「ふふん、そうですねえ、コロモさんには胸が大きくなる薬なんてお勧めですかねえ」

衣「バカなことを言うな」

男「ふふん」

衣「ところで、どこへ向かっているんだ」

男「それはまだお教えできませんが、きっと喜んでいただけますヨ。
  あ、そうそう、朝ごはん食べます?さっきコンビニで買ってきたんですヨ」

男は助手席に置いてあったコンビニの袋を手渡した。

衣「なんか変な薬とか入れてないだろうな」

男「大丈夫ですヨ」

車は何度も細い道を曲がり、薄暗い通りへと入っていった。
そして、ある小さなビルの前で止まった。

男「着きましたヨ」

衣「ここは……?」

男「雀荘です。裏のね」

衣「じゃ、雀荘……!」

男「んふふ、目が輝きだしてきましたね。
  じゃあ早速行きましょうか」

衣「うん!早く行こう!」

男がドアを開けると、ジャラジャラと牌を混ぜる音や、牌を打つ音が聞こえてきた。

衣(麻雀……麻雀!!)

男「んふ、気に入っていただけたようですね」

男と衣は雀卓の間を通り、部屋の奥へと進んだ。
麻雀を打っているのはいかにも危なそうな男ばかりであった。

一番奥には高級そうなスーツを着た老人が、
これまた高級そうな椅子に腰かけてタバコを吸っていた。

男は老人に何事か話しかけた。
中国語のようで、衣にはなにを話しているのかは分からなかった。

10秒ほどで会話は終わり、男は衣のほうに向きなおった。

男「コロモさん、あなたには麻雀の代打ちをしてもらいます」

衣「代打ち…」

男「そうです。相手は我々とモメてる組織でしてね、ちょっと黙らせてやってほしいんですヨ。
  コロモさんの実力なら充分勝てる相手です。おねがいします」

衣「ああ、そんなのお安い御用だ」

衣は麻雀を打てるなら、それでよかった。

男「そうですか、そういってくれると助かりますヨ。じゃあ、こちらへ」

男は扉を開け、衣とともに部屋に入った。
そこには雀卓が2つ並んでおり、いかにもマフィアっぽい男たちが席についていた。

しかし、その場にそぐわぬ人間が一人いた。

衣「お、お前……」

加治木「天江?天江か?」

衣「どうして、ここに……?」

衣は身構えた。
以前の咲のようなことになるかもしれないと思ったのだ。
しかし加治木は落ち着いていた。

加治木「私も誘われたんだよ、その人に」

衣「え……」

加治木「ここでならあなたが望む麻雀を打てる、と言われてな」

衣「おまえが望む麻雀?」

加治木「ああ、おまえを倒せるような麻雀だ」

衣「なっ……」

加治木「あのときは酷い負け方をしたが、今度やる時は私が勝つからな」

衣「……」

なにか変だ。衣に負けてから精神が壊れて引きこもっていたと聞いたが、
普通の状態に戻っているようだ。

衣「お前、私に負けて引きこもってたんじゃないのか?」

加治木「ああ、流石にあの時は精神がおかしくなりそうだった。
    でも、私を励ましてくれた人がいたんだ」

衣「励ましてくれた人?」

加治木「ああ……なぜかその人のことは思い出せないが、確かに存在した。
    そして、私を暗闇からすくってくれたんだ」

衣「……」

加治木「それで私は、いつまでもこうしているのはよくない……と思って、
    医者と一緒にリハビリを受けて、少しずつ回復した」

衣「ふうん……」

加治木「ふふ、人に話しても信じてもらえる話ではないがな。
    さあ、席につけ、天江衣。このヤクザどもを叩きつぶすぞ」

衣「……うん!」

ヤクザA「あんまり調子に乗るんじゃないじぇ!」
ヤクザB「女子高生なんかに負けるわけないじぇ!」
ヤクザC「ぶっつぶしてやるじぇ!」

加治木「うわっ、気持ち悪い喋り方」

衣「どこかで聞いたような……」

ヤクザD「さあ、始めるじぇ!」

加治木「ああ、望むところだ」

衣「うん」

衣は牌を手に取った。懐かしい感触だった。
それは、こここそが衣の居場所なのだということを教えてくれているようだった。

衣(麻雀……)

衣(それこそが……)

衣(私の居場所……!)

こうして衣と加治木は、
裏社会でのトップ雀士へと成長していくのであった。








アマレス部員「どおりゃあああ!!」

池田「ぎゃああああああああああああ!!」

福路「96ぎゃあですね」


        裂 -Saki- 第9話「コロモノナリユキナリッ」

                 完

ざっと読み返したけど支離滅裂だな
まあいいや

ネタを出してくれ

和が部屋でネット麻雀を打っていると、どこからか声が聞こえてきた。

「おい、和」

和「え?」

「おい、聞いてんのか」

和「え?だ、誰ですか?」

「俺だよ、おまえが抱っこしてる奴だよ」

和「えっ……」

そう言われ、和は視線を落とした。

「そうだよ俺だよ。エトペンだよ」

和「えええええええっ!?」

和「え、え、え、エトペン!?どうして……」

和はエトペンを正面に向かい合う高さまで持ちあげた。

エトペン「あ、どうしてか分からないけど、いきなり喋れるようになってて……
     おまえが昔から俺に話しかけてたからかな」

和「ううん、大事にしてるモノには魂が宿る、とか言いますが」

エトペン「ああ、じゃあそれかも知れんな」

和「アバウトですね……」

エトペン「自分でもよく分かんないし」

和「でもまあ、喋れるようになったのは何か理由があるのかもしれませんね」

エトペン「そうかもな。ところで和」

和「ん?」

エトペン「おまえまたおっぱい大きくなっただろ」

和は無言でエトペンを両側からぎゅうう、と圧迫した。

エトペン「痛い痛い!ごめんもういわねーってば」

和はエトペンを再び膝にのせた。

エトペン「ところでなんで俺はエトペンっていう名前なんだ」

和「あなたは『エトペリカになりたかったペンギン』という絵本の主人公なんです。
  それで、エトペン」

エトペン「ふうん、ペンギンねえ」

和「ペンギンです」

エトペン「……」

和「どうかしましたか?」

エトペン「ここにはペンギンはいないのか?」

和「ペンギンというのは南極に住んでるものなんですよ」

エトペン「ふうん」

和「ペンギンに会いたいですか?」

エトペン「ああ、会ってみたいな」

和「そうだ、じゃあユーチューブで……」

和はユーチューブをひらき、ペンギンと入力した。
そして動物園で飼育されている皇帝ペンギンの動画をひらいた。

エトペン「ほう、これがペンギン」

和「ふふ、エトペンとは似ても似つかないくらいスリムですね」

エトペン「うるせえ……」

エトペンは和の軽口に言い返しながらも、
動画に見入っていた。

エトペン「………ペンギン……」

やがて動画は終わった。

エトペン「なあ、他にももっと見せてくれ」

和「え?もう、仕方ないですね」

和は違う動画を開いてやった。
それが終わるとエトペンはまた新しい動画をせがみ、
また和がひらいてやるというのが夜遅くまで繰り返された。


エトペン「おい和、次の……」

和「すう……」

和は眠気に耐えられず、寝入ってしまった。

エトペン「………」

和「はっ」

和が目を覚ましたのは明け方だった。
イスに座ったまま眠ってしまったので、体の節々が痛む。

和「う……あれ、エトペンは?」

あたりを見回してみても、エトペンはいなかった。
その代りに、パソコンの画面にはメモ帳がひらいており、
そこに書き置きが残されていた。

和「本物のペンギンを…見に行きます……そして友達になってきます………
  おまえは俺がいなくても大丈夫……それは俺がよく知ってる……」

窓を見ると少し開いていた。
ちょうどエトペンが出られるくらいの隙間だった。

和「エトペン!」

和は椅子から立ち上がり、駆け出した。

和は勢いよく玄関の扉を開け、外へと飛び出した。

と、そこにエトペンが転がっていた。

和「え、エトペン……もう、びっくりさせないでください……」

エトペンはうんともすんとも言わなかった。
もう喋ったり動いたりはできないようだった。

和は部屋に戻り、エトペンを抱きながらベッドで再び眠りについた。



とある日曜日、水族館。

咲「あれ、和ちゃん、エトペン持ってきたの?」

和「ええ、エトペンに本物のペンギンを見せてあげようと思って」

咲「ふうん」

和(ふふ……ほら、見えますか、エトペン)

和はペンギンの水槽の前でエトペンを掲げた。


        裂 -Saki- 第10話「Penguin zone」

                 完

和とエトペンの絡みが見たくて書いた

吉留「ねえねえ、キャプテンって片目開けたらヒーリング魔法使えるよね」

深堀「ああ」

吉留「じゃあ文堂さんが両目開けたら、どんな魔法使えるのかな」

深堀「それは盲点だった」

吉留「なにか恐ろしいチカラが封印されているのかも」

深堀「がぜん気になってきた」

吉留「よし、突き止めてみよう」

深堀「おう」

吉留「ぶーんどーさーん」

文堂「なんですか?先輩」

深堀「目を開けてくれないかと思って」

文堂「…………えっ……!?」

吉留(こ、この不自然すぎる反応!)

深堀(すさまじく怪しい)

吉留「ねえ、ちょっとだけでいいから」

文堂「む、無理ですよ先輩!」

深堀「なぜ無理なんだ」

吉留「まさか、目を開けたら魔法が発動したりして」

文堂「ぎくっ!!」

深堀「図星か」

吉留「深堀さん!!」

深堀「よしきた!」

その合図とともに深堀は文堂を羽交い絞めにした。

文堂「なっ…!?は、離してください!!」

吉留「ふふ、風越のドムこと深堀さんに捕らえられて逃げられた者はいないんだよ」

深堀「諦めろ文堂」

文堂「だ、だめですよ先輩いいいいいっ!!」

吉留の手が文堂の顔を押さえつけ、
そして人差し指と親指で文堂の眼をひらいた。

その瞬間、文堂の眼から虹色のまばゆい光があふれだした。

吉留「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」
深堀「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」

福路「230ぎゃあ!新記録だわ!!」

吉留「はっ」

深堀「あれ……私たち、いったい何を……」

吉留「あれ?何してたんだっけ……」

深堀「そうだ、部室に行くところだったんだ」

吉留「ああ、池田さん殴るんだったね」

5話冒頭に戻る。




文堂「ふう……私の記憶消去魔法……
   その存在がバレなくて良かった」

福路「ふふ、まあこの調子でいけば永遠にバレることはないでしょうね」


        裂 -Saki- 第11話「見えない魔法の探し方」

                 完

蒲原「わっはっは」

加治木「おい蒲原、その笑い方は下品だぞ」

蒲原「え?」

妹尾「そうですよ、もっとおしとやかに笑うべきです」

加治木「妹尾の言うとおりだ。ほら、やってみろ」

蒲原「わ……はは…」

加治木「ボリュームを下げただけじゃないか」

妹尾「大口をひらくのがよくないんですよ」

加治木「そうだな、もっと口をすぼめろ」

蒲原「わ、ぅわっふぁっふぁ」

加治木「タコみたいな口になってるぞ」

妹尾「『わっはっは』っていうのも変えるべきですよ」

加治木「そうだな、うっふっふにしてみたらどうだ」

蒲原「えー……」

加治木「いいからやってみろ」

蒲原「うっふっふ」

加治木「おお、完璧じゃないか」

蒲原「うっふっふ」

妹尾「素晴らしいです先輩!」

蒲原「うっふっふ」

加治木「呑み込みが早くて助かるよ」

蒲原「うっふっふ」

ガチャ
桃子「こんちはーっす」

加治木「おう、モモ」

蒲原「うっふっふ」

桃子「あれ?蒲原先輩は来てないんすか?」

加治木「そこにいるぞ」

蒲原「うっふっふ」

桃子「え?いないっすよ」

蒲原「わっはっは」

桃子「あ、いた。どこにいたんすか?」

蒲原「うっふっふ」

桃子「あれ?またいなくなったっすよ!!」

蒲原「わっはっは」

桃子「あ、出てきたっす」

蒲原「うっふっふ」

桃子「あ!消えたっす!」

加治木「………」

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>>952
作った奴ヒマ人だな

加治木「これは……どういうことだ……」

妹尾「そうか!『わっはっは』は蒲原先輩のアイデンティティーなんですよ!
   それを失うのは自身の存在をなくすと同義!」

加治木「なんだと!?」

蒲原「わっはっは」

桃子「あ、また現れたっす」

加治木「蒲原……もう『わっはっは』のままでいいぞ……」

妹尾「いや、でもこれは使えるかもしれませんよ。桃子さんに続くステルス能力として!」

蒲原「うっふっふ」

加治木「あれ?今度はモモがいなくなったぞ……」

妹尾「そうか!ステルス能力こそ桃子さんのアイデンティティー!
   それを蒲原先輩に取られたということは!」

加治木「あーもう、めんどくさいなうちの部員は!」


        裂 -Saki- 第12話「ステルス・カ・ン・バラード」

                 完

純「智紀、おまえパソコンでいっつも何やってんだ?」

智紀「……」

純「……? なんだこりゃ」

智紀「ネットゲーム」

純「ふうん、インターネットのゲームか」

智紀「うん」

純「へぇ」

ガチャ
一「やー今日も暑いね」

純「おう」

一「ともきーは今日もパソコンでデータ収集?熱心だね~」

純「違う違う、ネットゲームとやらをしてるんだってさ」

一「ね、ネトゲー!?」

智紀「うん」

一「どれくらいやってるの?」

智紀「一日中」

一「それはもしかしてネトゲ中毒というやつでは……」

純「ねとげちゅうどく?」

一「ネトゲにはまりすぎて現実世界の生活が崩壊しちゃうことだよ」

純「智紀は別に崩壊なんてしてないだろ、学校にもちゃんと来てるし」

一「学校に来てまでネトゲやってる時点で充分崩壊してるよ!!
  とにかく智紀、ネトゲばっかりやってちゃダメだよ」

智紀「良いじゃない別に」

一「よくないよっ!ほら、パソコンを貸して!!」

智紀「うがーっ!!」

一「ひぃぃっ!!」

純「と、智紀が切れた」

ガチャ
透華「どうしたんですの?騒がしいですわよ」

一「透華~、ともきーがネトゲ中毒になっちゃったんだよぉー」

透華「ネトゲ?」

透華はパソコンの画面を覗き込んだ。

透華「ふうん、なかなか面白そうですわね」

智紀「おもしろい」

透華「なんていうタイトルですの?」

智紀「ストライク・ウィッチマン」

透華「ふうん」

一「ダメだ透華!ネトゲに手を出しちゃ!!」

一週間後。

透華「智紀、一緒に狩りに行きますわよ」

智紀「ええ」

一「とととと、透華までネトゲ中毒に……」

純「こいつぁちょっと危ないな」

透華「あ、レアアイテムですわ!」

一「ねー、部活しようよー……」

透華「うるさいですわ!」

智紀「うがーっ!!」

一「うがーっ!!」

純「うおっ、一も切れた」

一「うがああああああああっ!!!」

智紀「うがああああああああ!!!」

一「うがあああああああああああああ!!!」

智紀「うがああああああああああああああ!!!」

一「うがあああああああああああああああああああ!!!」

一は智紀のパソコンを蹴り飛ばした。

智紀「あああああああっ!!」

一「はあ、はあ、はあ」

パソコンは机から転げ落ち、壊れてしまった。

一「ふう……ネトゲ中毒者には荒良治が一番だよ」

眠気ぱねぇ

智紀「透華!パソコンを……そのパソコンを貸しなさい」

透華「何を言うの智紀!!いま狩りの最中なんですのよ!!」

智紀「うがああああ!!!」

透華「きゃああああ!!!なにするんですの!!!」

智紀と透華はとっくみあいの喧嘩になった。

智紀「うがあああ!!」

透華「うがあああ!!」

純「これが……」

一「そう、ネトゲ中毒の末期症状だよ……」

純「そうか、怖いものなんだな、ネトゲって……」

一「うん……」


        裂 -Saki- 第13話「抜け出せません…ですわ!」

                 完

まこ「おお、とうとうワシの出番か~」

久「もう残りレス数少ないから無理よ」

まこ「なんじゃと!?」


        裂 -Saki- 第14話「刹那のまこよ」

                 完

咲「ねえ、優希ちゃんのスカートについてるイタチみたいなのってなんなの?」

優希「これは無限タコス生成機だじぇ」

咲「え!?」

優希「出でよタコス!!」

そう言うと、スカートのイタチ(?)は光を放ち、タコスを生み出した。

咲「す、すごい……!!」

優希「でもこのタコスはすさまじくマズイんだじぇ」もぐもぐ

咲「え、いいの?それで……」

優希「タコスなら何だって構わないじぇ!!」


        裂 -Saki- 第15話「タコス、咲きました!」

                 完

咲「これでOP、ED、キャラソンの全タイトルを制覇できたね」

和「ぎりぎりでしたね」


        裂 -Saki- 第16話「一話にひとつ」

                 完

これで終わり!
我ながらアホなことをした!!

お付き合いいただきましてありがとうございました

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