~4F・情報処理室・AM2:05~
トコトコ
モノクマ「さーて、そろそろ五階を開放する段階に……あれ?」
モノクマ「なんだ? なんかドアノブがぬめってるような……」
ガチャ
江ノ島「ん~?」サワサワ
江ノ島「うわっ! なんだよこれ、気持ちわるっ! 青酸カリ!?」ペロッ
江ノ島「これは……ははぁん」
江ノ島「つーか誰よ。ここでオナったの。アタシがボトラーにチャレンジしてる時かしら」
江ノ島「数分前のカメラ映像を……」
~監視カメラの記録映像~
???『……ンッ、あっ……ふぅ、はぁ、ん……///』ズリズリ
江ノ島「あららら。これは」
~体育館・AM2:15~
十神「今回はいつもと様子が違うな」
葉隠「こんな夜中に呼び出すなんて……非常識だべ」
腐川「あ、あのクマに、常識なんて通用するわけないでしょ……」
朝比奈「ねむ~い……」
霧切「……」ソワソワ
苗木「どうしたの、霧切さん。具合でも悪いの?」
霧切「! い、いえ……すこし、眠れなくて……」
苗木「そっか……」
苗木(いつも冷静な霧切さんも、この状況にまいってるんだな。もう9人も犠牲になってしまったし……)
霧切「……」
モノクマ「集まったかオラァ! 年頃の青少年たちめが!」ヒョコ
葉隠「い、いきなりなんだべ」
モノクマ「先生は怒ってます! 怒ってなきゃ、こんな夜中に呼び出さないよ!」
十神「いいから、用件を言え」
モノクマ「ああ、はいはい。え~っとですねぇ」
モノクマ「この中に、卑猥な行為をした人間がいます」
苗木「卑猥な行為……?」
モノクマ「破廉恥極まりないことです! 言葉に出すのもはばかられます! 淫乱すぎます!」
朝比奈「淫乱……って(チラッ」
腐川「ちょ、なんで私を見るのよぉ……!」
十神「具体的に、誰が何をしたんだ」
モノクマ「え~っとですねぇ。誰がやったかは、まだ言えないんですが」
モノクマ「やった行為はですねぇ。その……/// 自慰です///」
朝比奈「じい? じいってなに?」
モノクマ「清楚ぶりやがってこのビッチスイマー! オナニーだよ! オナニー!」
モノクマ「学園内でオナニーしやがった変態がこの中にいるんだよ! プンプン!」
葉隠「が、学園で!?」
モノクマ「わざわざ学園でやるとか、どんだけマニアックなんだよ! 寄宿舎でヤッてくれよ!」
十神「そんなくだらないことで呼び出したのか」
モノクマ「くだらなくなんかないよ。ボクは怒ってるんだぞ。神聖な学び舎を汚した生徒に、教師として言っているんだ」
モノクマ「これこそお仕置きが必要だと思うわけだよ。校内でオナニーした生徒を放っておくわけにはいかないもんね」
苗木「そ、それはしかたないんじゃない、かな。えっと、そういうお年頃なんだし……さ」
モノクマ「苗木くんってさ、家族にばれないように精子を包んだティッシュをビニールで何重にも保護して捨ててそうだよね」
苗木「そ、そんなことどうでもだろ!?」
モノクマ「そうだ! そんなことはどうでもいい! 今は、学園でオナニーした極悪人の追求だ!」
モノクマ「そこで、学級裁判を開くことにしました」
十神「なに?」
葉隠「が、学級裁判って……」
腐川「な、なにを話しあうってのよ……!」
モノクマ「だから、『学園内でオナニーをした変態人間は誰か』ってことをだよ」
苗木「えっ、そんな、そんなことで裁判を開くなんて」
モノクマ「苗木くんってさ、オナニーしたあとはオシッコして尿道を洗浄しないと気が済まない性質だよね。きっと」
苗木「そ、そんなことはどうでもいいだろ!?」
モノクマ「そうだ! そんなことはどうでもいい! 今は学級裁判の話だ!」
モノクマ「ま、そういうことだからさ。後で裁判開くから。頑張って調査してよ」
モノクマ「詳細はモノクマファイルに書いてあるからさ。頑張ってね~」
苗木「……行っちゃった」
十神「自慰行為に及んだ屑人間を特定しろだと? くだらない」
腐川「ぐふっ、毎日自慰行為をしている屑人間でごめんなさぁい……///」
朝比奈「ねえ。じいって結局なんなの?」
葉隠「いや、それは流石に説明できないべ……」
苗木「とりあえず、モノクマファイルを見てみよう」
『現場は学園4F情報処理室前の廊下。第一発見者はモノクマ。AM2:05、ドアノブに粘性のある液が付着していた』
『モノクマのテイスティングにより、人体から放出されたものであると特定済み。自慰行為の産物と思われる』
『液の状態から見て、犯行時刻は発見されたAM2:05の直前である可能性が高い』
苗木「AM2:05ってことは、10分前ぐらいだね」
十神「つまり、この中の誰かが自慰行為という猿並みの行動に及び、その後放送を聞き、平然と体育館へやってきたというわけか」
葉隠「さ、猿以下は言いすぎだべ」
十神「この場合のクロは『自慰行為に及んだ屑』だろう? そのクロはどうなるんだ?」
モノクマ「ああ、そこを説明してなかったね」ヒョコ
葉隠「おわっ」
腐川「きゅ、急に出てこないでよ……!」
モノクマ「さすがに殺すのはかわいそうだから、軽いオシオキにするよ。優しいね~!」
苗木「軽いオシオキ?」
モノクマ「自慰行為の動画を全国に配信します」
葉隠「全然軽くないべ!」
苗木「そ、それは死ぬよりも辛いんじゃ……」
モノクマ「逆に、正しいクロを指摘できなかったら、シロ全員の恥ずかしい写真を全国にばらまいちゃおうかな」
朝比奈「え~!?」
モノクマ「うぷぷ! 穴があったら入りたくならないように、頑張ってね! それじゃ!」
十神「気にのらんが、プライベートを荒らされるのは気に食わん。参加するしかないか」
苗木「うん……あれ? そういえば、霧切さんは?」
朝比奈「あ、そういえば……」
葉隠「霧切っちだったら、モノクマが来てすぐ、体育館から出て行ったべ」
苗木「え? そうなの?」
腐川「そ、それ、怪しいんじゃない? もしかして、証拠を隠滅するために……」
霧切「逆よ」
葉隠「おわっ!」
苗木「き、霧切さん! どこ行ってたの?」
霧切「生徒手帳のモノクマファイルが更新されていたから、一足先に現場を調べに行っていたのよ」
霧切「これが証拠品。一部回収してきたわ」
苗木「そ、そのビニール袋に入っているのは……?」
霧切「精液、でしょうね」
葉隠「整然と答える霧切っち、おそろしい女だべ……」
霧切「調べたければ自由にどうぞ」スッ
十神「触れたくも無い」
腐川「ち、近くに寄せないで……!」
葉隠「お、俺も遠慮するべ……」
朝比奈「えーっと、私も、ちょっとやめておこうかな」
霧切「……」
苗木「ぼ、僕は調べさせてもらうよ! せっかく霧切さんが回収してきてくれたんだし」
霧切「……はい」
苗木「あ、ありがとう……に、匂いは……イカ臭い。色は、白いね。ネバッとしてるかな」
十神「ふん。つまり、精液だな」
苗木「うん……」
十神「はやく捨てろ」
苗木「ああ、うん。僕が捨てておくよ。霧切さん」
霧切「……そう」
十神「精液ということがわかった。俺は現場を調べに行く」
腐川「わ、私も一緒に……」
葉隠「俺も行くか~」
朝比奈「あ、私も。苗木たちは?」
苗木「僕は厨房でこれを捨ててからいくよ。生ごみ、だと思うし」
霧切「なら私は……」
朝比奈「そっか、じゃあ霧切ちゃん、一緒に行こ」
霧切「……そうね」
~厨房~
苗木(しかし霧切さんは凄いな。精液を回収してくるなんて、女子らしくないというか……)
苗木「……ん?」
苗木(流しが濡れてる。こんな夜中に、誰かが使ったのかな)
苗木「ゴミ箱は……あそこか」
パコッ
苗木「こんなことしてないで、僕もはやく現場に行こう」
ダッ
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|ー | l ー- l
/⌒ヽ | | l l
l l | | | 0 |
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l _! | !__,! ‐ 一 | l ヽ、
/⌒ヽ l ‐ \ |, ノ⌒) () l 〉-‐ l
l〉 )ヽ、 ヽノ (ノO (ノ (つ ヽ、 | ノ) |
/ 人 ヽ、 (⌒) ヽノ (ノ |
l ヽ、\, )丿 / ノ/ o l
ヽ ノ \,/ / (ノ () ヽ l
\ / / (⌒ヽ |
ヽ、 / / l しノ |
ヽ、 / / | l
ヽ、 l /
ヽ、 | /
ヽ l /
~4F・情報処理室~
苗木「ふう、ここまでくるのは大変だな……エレベーターつけてくれればいいのに」
苗木「このドアノブに精液が……たしかに、ネバっとした液体がついてる」
十神「……気にならないか、苗木」
苗木「え? なにが?」
十神「なぜ犯人は、ドアノブに液をかけたんだ? なんのメリットがある」
苗木「ええっと、それは……わからない、かな」
葉隠「性癖ってのは、複雑だべ」
霧切「葉隠くんの言うとおりだわ。他人の性癖を理解し、納得するのは、無理な話よ」
苗木「そういうものかな」
十神「ふん。まあ、容疑者はふたりだ。その異常者がどちらか、すぐにわかる」
苗木「え? どういうこと?」
十神「精液ということは、犯人は男。俺でないとしたら、苗木か葉隠だろう」
腐川「どっちなのよ……!」
苗木「ぼ、僕じゃないよ」
葉隠「お、俺でもないべ」
十神「白状するわけがない、か。ふん。まあせいぜい怯えていろ」
苗木(まいったなぁ……疑われてるのか……)
朝比奈「……」
苗木「あれ、朝比奈さん。かがみこんで、どうしたの?」
朝比奈「あ、苗木。これ、なんだろう」
苗木「これ?」
朝比奈「ほら、ドアのしたのほうに、細長い模様がついてるでしょ?」
苗木「あ、ほんとだ。……ん?」
苗木(これは……模様じゃない。ドアノブについてるのと同じ、精液だ。ここまで飛んだのかな)
苗木(だけど、不自然なつきかただな。急に途切れてるし)
苗木「……そういえば」
苗木(このドアの下についてる精液と、ノブについてる精液は同じものだろうけど……)
苗木「……量が少ないような……それに色も……」
朝比奈「なにかわかったの?」
苗木「ん? ああ、いや。ちょっとね」スクッ
苗木「気になることがあるから、少しここを離れるよ。じゃあ」
霧切「あっ……」
朝比奈「な、苗木っ。指先にぬめっとしたのがついちゃってるよ!」
苗木「え? わっ! ばっちぃなぁ……」
苗木「……」ヌメヌメ
朝比奈「なんでこねてるの……?」
苗木「いや、ちょっと……」
苗木(やっぱり……)
霧切「……」
~厨房~
ガサガサ
苗木「やっぱり、情報処理室についていた液と、霧切さんが回収してきてくれた液、ちょっと違うなぁ」
苗木「……うーん、量の問題か? 現場に残された液は色が薄く見えたような……」
苗木(それに、このビニール袋……)
苗木「冷蔵庫を調べてみるか……」
ガチャ
苗木(……あっ、このビニール袋。精液が入ってるのと同じやつだ)
苗木「……」
ガサガサ
苗木「イカが入ってる……」
苗木(ゴミ箱の中をもう少し調べてみよう……)
ガサゴソ
苗木「やっぱり」
苗木(新聞紙に包まれたイカが捨てられてる)
苗木(それに、一緒に捨てられているのは……卵の黄身かな。黄身だけ捨てるなんて……)
苗木「……まさか! ……いや、だとすると……」
苗木(ちょっと探してみるか……)
~書庫~
苗木「うーん」
苗木(微妙な高さだからなぁ……厚い本とかかもしれないと思ったんだけど……)
苗木「ん? ここにある建築の本……」
苗木(ここの棚の一部分だけ、ホコリがたまってないな)
苗木「……!」
苗木「……ついてる……じゃあやっぱり」
モノクマ『ピンポンパンポーン。はい。ちょっと短いけど時間でーす。学級裁判を開きます』
苗木「もう時間か……。まあ、殺人じゃなく、オナニーだからしょうがないか」
~裁判場~
モノクマ「うぷぷ! 学園内でオナニーした変態は誰なんだろうね!」
十神「目星はついている。苗木か葉隠だ」
葉隠「だから、なんでそう決めつけるんだべ!?」
十神「俺ではない。女たちでもない。なら、おまえたちしか考えられんだろ」
朝比奈「なんで十神じゃないって言えるのさ!」
腐川「び、白夜様が違うと言っているのだから、違うに決まってるでしょぉ……!」
苗木「そ、それは根拠にならないと思うな……」
霧切「十神くん。あの精液が貴方のものではないと、証明してほしいのだけれど」
十神「証明など無理だ。現場に残っていた精液を鑑定する方法が無い。他に目ぼしいものなど無かっただろう」
朝比奈「じゃあ意味ないじゃん! 必死に苗木たちへ目を向けようとしてるみたいで怪しいよ!」
十神「俺じゃない」
腐川「そうよ! 百夜様は自慰なんてしないんだから!」
朝比奈「どうしてわかるのさ!」
腐川「だって百夜様は、毎回夢精してるんだから!」
十神「!? おい腐川!」
葉隠「夢精って……」
苗木「ど、どうして腐川さんがそれを知ってるの?」
腐川「わ、私、いつも白夜様の洗濯物を確認しているの……パンツにカピカピしたものがついているのを何度か確認したわ」
十神「おまえ……!」
腐川「昨日だってついていたわ!」
十神「もうやめろ!!!」
霧切「本当なの?」
朝比奈「むせいってなに?」
腐川「夜中にドアに張り付いて中の音をうかがったりしてたけど、自慰をするような音も声も聞こえてこなかったわ……」
腐川「白夜様は、自分を慰めるようなことなんてしないのよ……! だから毎回夢精してしまって……!」
十神「もう、やめてくれ……!」
霧切「御曹司としてのプライドかしら」
十神「そうだ! 悪いか!? 自慰などという情けない行為をするくらいなら、俺は夢精を選ぶぞ!」
葉隠「夢精のほうが情けないべ……」
苗木「パンツを汚してまでオナニーをしなかった十神君が、わざわざ学園内でオナニーするわけがない……ってことか」
朝比奈「う~ん、よくわからないけど、それが本当なら十神じゃないってことなんだね」
腐川「そうよ! 朝集まるのに遅れているのだって、パンツを洗うためなんだから!」
十神「もう黙れ!!!」
霧切「十神くんが犯人である可能性が低いとしたら、目を向けるべきは、やはりこのふたりのようね」
苗木「……!」
葉隠「お、俺じゃねえって言ってるべ!?」
霧切「さっきも言ったけど、それを証明してちょうだい」
葉隠「しょ、証明って言ったって……!」
苗木「……」
腐川「……ど、どっちなのよ! このままだと、選べないじゃない……!」
霧切「ふたりが黙っているのなら、私が独自に回収した証拠品を提示するわ」
苗木「証拠があるの!?」
十神「あるのなら早く出せ」
霧切「あまり褒められた方法ではなかったから出したくなかったのだけれど、仕方ないわ」
霧切「葉隠くんの部屋のゴミ箱から回収した『精液をくるんだティッシュ』よ」
葉隠「ひぇえぇぇぇぇぇ!!!!」
朝日奈の漢字の間違い率異常
葉隠「ちょ! いつのまに!? っつーか、鍵が無いのにどうやって入ったんだべ!?」
霧切「4Fへ調査に行ったとき、懐から拝借させてもらったわ。ティッシュはまだ湿っていた。昨日、したのね」
葉隠「スリだべ! 犯罪だべ! 屈辱だべ!」
霧切「ちなみに、苗木くんの部屋も調べたわ」
苗木「えええ!? 僕も!? うわっ、本当に無いよ!」
霧切「残念ながら、苗木くんの部屋から『精液をくるんだティッシュ』は発見できなかったわ」
苗木「ざ、残念って……」
十神「ふん。ということは、犯人は苗木である可能性が高いわけか」
苗木「!? ちょ、なんでそうなるのさ!」
霧切「簡単な話よ。一度自慰をした人間が、夜中にまた起き出して自慰をする可能性は低いということ」
苗木「そ、そんなの根拠にはならないよ!」
>>99
/)
///)
/,.=゙''"/ 人人人人人人人人人人人人
i f ,.r='"-‐'つ____ < >
/ _,.-‐'~/__, , ‐-\ < 細けぇこ・・・ん? >
,i ,二ニ (●). (●) \ < >
ノ il゙フ (__人__) \ YYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY
,イ「ト、 ,!,!|  ̄` |
/ iトヾヽ_/ィ"\ /
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i'i. ヽ. -‐、 ! !-! ‐- ヽ. 〉、 l
/ _ ノ.ヽ. `' (ノo(ヽ?/ ヽノ (ノ |
ヽ. ,`ヽ,ソ )ノ ノ/o |
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ヽ. ' | (⌒ヽ |
ヽ. | しノ /
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十神「たしかに、決定打にはならないな。だが、自慰に及んだばかりの葉隠と、自慰をした痕跡が自室に無い苗木……」
十神「どちらが学園内で自慰をした可能性が高いか……答えは明白だ」
苗木(違う僕じゃない! 僕は朝なんだ! 朝にオナニーをするんだ! 夜中にするなんて……!)
苗木(って言いたいけど、恥ずかしくてなかなか言い出せないし……証明する方法が無い……)
葉隠「苗木っち! 観念するべ! オナニー暴露されてまで辿り着いた真相だべ!」
苗木「違うんだ……」
十神「では証明してみせろ。あの『精液』がお前のものでないことを」
苗木「それは違うよ!」
十神「なんだ。なにが違うと言うんだ」
苗木「そもそも……あの『精液』は、本当に精液だったのかな」
十神「なに?」
朝比奈「ど、どういうこと?」
苗木「ここに、霧切さんが現場から持ってきてくれた、『精液』がある」
葉隠「うわっ! 持ってきたのかよ!」
腐川「は、はやく捨てないさいよ!」
苗木「気になることがあって、また回収してきたんだ」
霧切「その『精液』に、何があるというの?」
苗木「うん。この、『精液』なんだけど……」
ガサガサ
苗木「……」
ペロッ
十神「な、舐めただと!?」
葉隠「ひぇぇ! 変態だべ!!!」
腐川「も、もう苗木で決まりじゃない!? 自分の精液を舐めるぐらいだもの!」
苗木「待ってよ。そうじゃないんだ」
苗木「この『精液』は、精液じゃないんだよ」
十神「精液が精液ではない……だと?」
苗木「うん。とりあえず、みんな舐めてみてよ」
腐川「い、嫌に決まってるじゃない……!」
葉隠「冗談じゃないべ……」
苗木「これは精液じゃないんだって! それを証明したいんだ」
霧切「……」
十神「……ふん、いいだろう」
葉隠「え!? マジかよ!」
十神「新たな手掛かりだ。確認しないわけにはいかんだろう? このままでは埒が明かない。貸せ」
ペロッ
十神「……なるほどな」
腐川「び、白夜様が舐めるなら……私も……!」
朝比奈「じゃ、じゃあ私も」
葉隠「こ、これは流れ的に舐めなきゃならないのかぁ……? よ、よぅし、舐めてやるべ……!」
ペロッ
朝比奈「あれ、ちょっと甘い」
葉隠「せ、精液ってこんなに美味しかったのか!? 盲点だべ!」
十神「そうではない。これはダミーだ。そうだな、苗木」
苗木「うん、そうなんだ。それは、偽物の……つくられた精液だったんだよ」
葉隠「に、偽物ぉ?」
苗木「僕が厨房へ、その精液を捨てに行ったとき、ゴミ箱に新聞紙に包まれた卵黄を見つけたんだ」
苗木「犯人は、それらを材料にダミーの精液をつくったんだよ」
苗木「卵の白身を泡立てないようにかき混ぜ、コンデンスミルクを加えて色をつける」
苗木「最後にウーロン茶を少量加えると、本物そっくりの精液ができるんだ」
苗木「今言った材料は、厨房の冷蔵庫に入っていたよ」
葉隠「な、なんでそんなこと知ってるんだべ」
苗木「え? え~っと……」
苗木(AV関連で知ったなんて言えないな……)
苗木「まあ、偶然知ってたっていうか……アハハ」
十神「この精液が偽物だとすると、事態は変わってくるな」
朝比奈「そうだよ! この裁判自体、無意味なんじゃない?」
十神「いや、そうではない。モノクマファイルには『人体から放出されたものであると特定済み』と書かれている」
十神「自慰行為が行われたことは、間違いないわけだ」
葉隠「そ、そんなの、モノクマが間違えたんだべ?」
モノクマ「ムッカー! ボクの舌を舐めるなよぉ! あれはたしかに体液だった! 嘘だったらハリセンボン飲んでやる!」
腐川「ど、どういうこと? あの精液は偽物だったんじゃないの……?」
苗木「つまり、犯人が偽装したってことなんだ」
葉隠「ぎ、偽装? なんでそんなこと」
十神「簡単なことだ。ドアノブに付着した液を精液だと思わせたかった。その理由はひとつ」
十神「犯人は、女だということだ。モノクマが発見したのは精液ではなく、膣分泌液だったのだろう」
モノクマ「うぷぷ」
十神「嫌悪感から現場に残された液の直視を避けていたからな。俺としたことが、判断を誤ったか」
朝比奈「わ、私のじゃないよ!?」
腐川「わ、私も違いますぅ……」
霧切「……」
葉隠「つ、つまり、犯人は愛液がついたドアノブの上に、その偽物の精液を塗ったってことか?」
朝比奈「その精液を、霧切さんが回収してきたんだね……!(あいえきってなんだろう)」
苗木「それは……たぶん無理だと思うんだ」
朝比奈「え? どうして?」
苗木「どうしてって……」
十神「時間の問題か」
苗木「う、うん。AM2:05にモノクマが発見したときは、まだドアノブには愛液が付着している状態だった」
苗木「モノクマの呼び出しがかかったのがAM2:10ごろ。その後、モノクマが体育館に現れたのがAM2:15」
苗木「呼び出しのアナウンスがかかってすぐに皆集まって、体育館に移動してから誰もその場を離れなかった」
苗木「霧切さんが現場へ証拠品を回収しにいったのは、モノクマが現れてすぐだったよね。その間も皆、体育館にいた」
苗木「つまり、もしこの中の誰かが、霧切さんが回収する前に偽の精液をドアノブに塗るとしたら……」
苗木「AM2:05~AM2:10までの約5分間しかないんだ」
苗木「ダミーの精液をつくるのは簡単だけど……それをつくって4Fへ塗りに行く時間なんて無いはずだよ」
十神「しかし苗木。ダミーの精液が事前につくられたものだとしたらどうだ?」
十神「持っていたダミーの精液をドアノブに塗って戻ってくるだけなら時間は十分足りるだろう?」
苗木「僕がこれを厨房へ捨てにいったとき、黄身はまだ乾いていなかった。それに、流し台も濡れていたんだ」
苗木「あの状況を考えると、ダミーの精液がつくられたのはごく最近だと考えられるよ」
苗木「そもそも、証拠を隠滅したかったのなら、ダミーをつくって偽装なんかしないで、拭き取ればいいんだ」
苗木「その方が確実だし楽なのに、そうしなかったってことは、ダミーを使わざるを得ない事態に陥ったからなんじゃないかな」
葉隠「な、なるほど……」
朝比奈「……えっと、じゃあ誰がその偽物をドアノブに塗ったの?」
腐川「そ、そうよ……不可能なら、誰がどうやって塗ったっていうのよ」
苗木「そうじゃないんだよ。そもそも……塗られていなかったんだ」
葉隠「塗られていなかった?」
十神「ふん。つまり、現場の状況は俺たちが見るまで何ひとつ、変わっていなかったということだ」
朝比奈「え? え?」
十神「誰も触れていない。誰も、証拠品など持ち帰っていなかった。そうだろう、霧切」
霧切「……」
苗木(霧切さん……)
葉隠「どういうことだべ?」
苗木「つまり……霧切さんは、体育館を出て、そのまま厨房へ向かい、そこでダミーの精液をつくって戻ってきたんだ」
苗木「あたかも、4Fまで行き、そこで精液を回収してきたかのように、見せかけてね……」
苗木「そうだよね。霧切さん」
霧切「……いいがかりよ。そもそも、苗木くんが持ってきたそのダミーの精液、本当に私が持ってきたものかしら」
霧切「苗木くんはダミーのつくりかたを知っているのよね?」
霧切「だとしたら、学級裁判までの時間を利用してつくり、ここへ持ってきた可能性もあるじゃない」
霧切「本物の精液を捨て、私がつかったビニール袋と同じものを利用してね」
苗木「だとしても、おかしいんだよ。霧切さん」
霧切「どうして?」
苗木「このダミーの精液にはある欠点があるんだ。それは匂いだよ」
苗木「精液特有のイカ臭さが、卵白とミルクとウーロン茶だけでは出ないんだ」
苗木「そこで、犯人は……霧切さんは考えた。冷蔵庫の中を物色してね」
苗木「これだよ。『イカの入ったビニール袋』」
葉隠「あっ、霧切が持ってきたやつと同じやつだべ!」
苗木「そう。これは元々、イカが入っていたんだ。霧切さんは、このビニール袋に染みついた匂いを利用しようと考えた」
苗木「ゴミ箱には、卵黄のほかに、イカも捨てられていたよ。きっと、ダミーが入れられた袋に入っていたものだ」
苗木「もし、霧切さんが回収してきた精液が本物だったとして……どうしてわざわざイカの入った袋をつかったのさ」
苗木「中身まで捨てて……普通じゃないよ」
霧切「そうしたかったから、としか言いようがないわ。決定的な証拠にはならないわね」
霧切「苗木くんが私を犯人に仕立て上げるために、本物の精液を捨ててダミーをつくった可能性は捨てきれない」
苗木「……なら、出すよ。決定的な証拠を」
霧切「……!?」
苗木「この、『建築の本』。これが決定的な証拠なんだ」
腐川「はぁ? け、建築の本……?」
朝比奈「なんでそんなものが証拠になるの?」
十神「説明しろ。苗木」
苗木「そもそも、どうして霧切さんはドアノブに体液をかけていったんだと思う?」
葉隠「それは、変態だったからとしか」
苗木「うん。たしかに変態……だったかもしれないけど、ドアノブにかけたくてかけたわけじゃないんだ」
苗木「結果として、ノブに残ってしまったんだよ」
朝比奈「残っちゃった? どうして?」
苗木「角オナだよ」
霧切「……」
苗木「霧切さんは、ドアノブに陰部をこすりつけて興奮していたんだ。おそらく、生の状態で」
霧切「な、苗木くん、それ以上は」
苗木「だから、ノブに愛液が残ってしまったんだよ。べったりとね」
霧切「……っ」
苗木「でも、陰部をこすりつけるには、ノブは少し高いよね。そこで、これを利用したんだ」
十神「その本を足場にしたということか」
苗木「うん。朝比奈さんが見つけてくれた、ドアの細長い模様。あれは霧切さんの『愛液』だったんだよ」
朝比奈「えっ……そうだったの?」
苗木「下の方が不自然に切れていたからもしかしたらと思ったら……書庫で見つけたこの本の表紙にもついていたよ」
苗木「たぶん、愛液がドアに付着し、そのまま足場にしていた本にまで垂れていってしまったんだ」
霧切「……ぐっ」
霧切「そ、その本を利用したのが私だという証拠はあるのかしら……それが無い限り、私は」
苗木「さっき『ダミーを使わざるを得ない事態』って言ったけどそのせいで相当、焦っていたと思う」
苗木「モノクマファイルには犯行時刻は『AM2:05の直前である可能性が高い』書いてあったよね」
苗木「きっと、霧切さんはモノクマにオナニーを見られそうになったんだ」
苗木「だから、この本についた愛液と……この、薄くついた『ブーツの跡』に気づかなかったんだ」
霧切「!?」
苗木「足跡を残すなんて、初歩的なミスをしてしまったんだよ。霧切さん」
霧切「……!」
苗木「霧切さん。君が履いているブーツの裏と、この本の表紙についた模様。一致するんじゃないかな」
霧切「……」
苗木「霧切さん……?」
霧切「そ、それは……」
苗木「よし。クライマックス推理だ。霧切さんのやったことを時系列順に説明していくよ」
霧切「ま、待って!」
苗木「まず、AM2:00ごろ、霧切さんは情報処理室の前にやってきた」
苗木「そこで、本を足場にし、ドアノブで角オナを始めたんだ」
苗木「どうして、そんな無謀なことをしようと思ったのか、それはわからないけど」
苗木「角オナに熱中した霧切さんは、やがて絶頂を迎えた。そして、陰部から溢れた愛液がドアノブを……」
苗木「一部が、ドアの下に垂れ、同時に本の表紙を汚したんだ」
苗木「当初は、愛液を拭き取り、そのまま帰る予定だったんだと思う。だけど、そこで最悪な事態が発生したんだ」
苗木「モノクマがその場に近づいてきたんだ。慌てた霧切さんは、愛液を拭くことができないまま、その場を離れた」
苗木「そして、本を書庫に戻し、寄宿舎へ戻ってきたところでモノクマの呼び出しアナウンスを聞いたんだ」
苗木「霧切さんは何故自分たちが呼び出されたのか、考えを巡らせた」
苗木「そして、電子生徒手帳のモノクマファイルが更新されているのを発見し、事態を察知したんだ」
苗木「自分の行為を追及される。そう考えた霧切さんは、体育館を抜け出し、厨房へ向かった。ダミーをつくるためだ」
苗木「その場の材料でダミーをつくった霧切さんは、それが学園4Fで回収してきた精液だと僕らに思わせ、犯人が男性だと偽装したんだ」
苗木「そうだよね!!! 霧切さん!!! 違うと言うなら、この本に残った足跡とブーツの裏を、合わせてみてよ!」
霧切「……! も、もう。言い逃れはできないようね……」
朝比奈「そんな……まさか霧切ちゃんが……」
葉隠「信じられないべ!」
十神「ふん……」
苗木「どうして、どうしてこんなことを……!」
霧切「私は、特殊な性癖を持っているのよ。それは、苗木くんが言った通り、『ドアノブでの角オナ』なの」
葉隠「ど、ドアノブじゃないとダメなのかよ?」
霧切「ええ。それに、絶妙な角度と、形と、あらゆる要素が合わさったドアノブ」
十神「それが、情報処理室のドアノブだったということか」
霧切「我慢しようとしたわ。だけど、この学園生活でたまっていた性欲は、もう抑えきれなかった」
霧切「深夜に4Fへ行き、鍵のかかったドアを何度も叩いたわ。それで、モノクマがやってくるか確認して……」
霧切「モノクマはやってこなかった。監視が解けているのだと、歓喜したわ。ぬか喜びだったようだけれど」
苗木「その時、モノクマは何をしていたんだ?」
モノクマ「え~っと、ボト……ムズを観てたんだ。うん」
霧切「絶頂を迎えた直後、モノクマが近づいてくるのに気付いて、慌ててその場を離れたわ」
霧切「あの時の私は正常ではなかったのかもしれない……身体も火照っていたし」
霧切「後は苗木くんの言う通りよ。自慰を知られる屈辱を考えると……さすがに……」
霧切「見苦しい真似をしたと思っているわ。ごめんなさい」
苗木「霧切さん……」
霧切「……さあ、もう投票の時間でいいでしょう。モノクマ」
モノクマ「はいはーい! それじゃあ、クロだと思う人に投票しちゃってください!」
モノクマ「大正解! クロは霧切さんでした~!」
モノクマ「それでは、オシオキ! 開始しますよ~うぷぷ」
モノクマ「このためにわざわざ動画投稿サイトに会員登録したんだからね! 有料だよ! 有料!」
モノクマ「まあそれはいいとして、はい! 霧切響子の角オナ映像! 『オナってみた!』 配信!」
カチッ
霧切『……ンッ、あっ……ふぅ、はぁ、ん……///』
霧切『…………っく、ン、ア……やっ……///』
霧切『ふぅあ……! アア、ン、アアッ……///』
霧切『アアア、ン、ッくぅ、アアアアァァァァァァッ///』
モノクマ「うっはー! 再生回数うなぎのぼりだよ! 初投稿作品としては上出来だね!」
霧切「……」
朝比奈「き、霧切ちゃん……」
苗木「霧切さん……」
霧切「グスン……」
~翌日・食堂~
朝比奈「やっぱり、霧切ちゃんこないねぇ」
葉隠「無理も無いべ……俺だったら自殺してる……って、まさか!?」
苗木「き、霧切さんはそんなことをする人じゃないよ!」
十神「どちらにせよ、再起不能ではあるだろうがな」
葉隠「十神っちだって、夢精をばらされたべ」
十神「もう言うな!!!」
苗木「……ぼ、僕、霧切さんの部屋に行ってくる!」
ダッ
コンコン
苗木「霧切さん! な、苗木だけど! ちょっと話を……」
ガチャ
霧切「……なに?」
苗木「あ、えっと……その、中に入れてくれるかな」
苗木(目が赤い……泣いてたのかな)
霧切「……どうぞ」
バタン
苗木「……」
霧切「それで、何をしにきたのかしら。私を笑いにきたの?」
苗木「そ、そんなわけないじゃないか」
霧切「だったら、なに?」
苗木「えっと、そんな、落ち込まないで……なんて、無理だよね……」
霧切「当たり前でしょう? 私は貴方に……全国に醜態をさらしたのよ……」
苗木「そんな、醜態だなんて……」
霧切「醜かったでしょう?」
苗木「そ、それは……」
霧切「本当、最低よね……あんな愚かで、浅ましい行為を……」
苗木「違う……」
霧切「私なんて……最低で……」
苗木「それは違うよ!!!」
霧切「! ……」
霧切「同情ならいらないわ……」
苗木「同情なんかじゃないよ!」
苗木「ぼ、僕……その、霧切さんのオナニーを観て、興奮、したんだ」
苗木「頑張って、一生懸命ドアノブにこすり付ける霧切さんは、なんというか可愛くて」
苗木「とても、魅力的だった……!」
霧切「な、な、なにを……! あなた何を言っているかわかっているの……!?」
苗木「わかってるよっ。へ、変態みたいなことを言っていることぐらい……!」
苗木「だけど、見苦しくなんてなかった。醜いなんて、とんでもない。最高だったよ」
霧切「な、苗木くん……」
苗木「あと、えーっと……その、ごめん。変なこと言って……か、帰るよ」
スクッ
霧切「あ……」
苗木「じゃあ。元気出してね、霧切さん」
霧切「まって……待って!」
苗木「霧切……さん?」
ギュッ
霧切「ご、ごめんなさい……急に抱き付いたりして……」
苗木「え、ま、まあ、いいけど……うん」
霧切「……さっき、さっき言ったこと、本当、なのかしら」
苗木「本当だよ。興奮したんだ。あれをオカズに……いや、それは言わないほうがいいかな、アハハ……」
霧切「私も……」
苗木「え?」
霧切「私も……オカズに……していたの……」
苗木「え?」
霧切「あ、あなた……を……」
苗木「……き、霧切さん……!」
苗木『霧切さん……!』
霧切「なによ……。は、恥ずかしいから、今言ったことは忘れなさい……』
苗木『え、む、無理だよ……なんか、嬉しいし』
霧切『忘れて』ムギュウウ
苗木『いててててっ』
江ノ島「あっれー! これで霧切が自殺してくれると思ったんだけど~」
江ノ島「なーんでラブコメになってんのよ」
江ノ島「苗木クンうっざー! ったく、毎度毎度台無しにしてくれるよねー」
江ノ島「ま、いっかー。急遽取り入れたイレギュラーだったし、次の計画では苗木クンが死ぬわけだし」
江ノ島「ウププ。オナニーを全国公開される以上の苦しみと絶望を味あわせてやるっての」
江ノ島「うぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷぷ」
江ノ島「なんか性欲たまってきたし、絶望をオカズにオナニーしよっと」
~END~
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