苗木「キミの欲しいものって、何かな?」 (37)
※苗セレのみ短編
※R18とかはないっす
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セレス「わたくしの欲しいものですか?」
苗木「うん、何でもいいんだ。服でも、装飾品でも、セレスさんが今欲しいものを教えてほしいんだ」
セレス「構いませんけど、そんなことを訊いてどうなさるのです?」
苗木「えっ……いや、あの、えっと……そ、そうだ!アンケートだよ。今度、"超高校級の新聞部"の学級新聞を手伝うことになってさ」
セレス「アンケート?」
苗木「うん。『超高校級の女子達が、今一番欲しいものはコレだっ!』って企画なんだけど、それで、みんなに訊いてまわってるところなんだ」
苗木「(言えない。ホントはもうすぐセレスさんの誕生日だから、プレゼントを何にしようか本人に訊こうとしてるなんて、言えない)」
セレス「なるほど…そういうことですか。ですが、わたくしの意見が果たして参考になるかどうか……うふふ」
苗木「なんでもいいんだ。セレスさんが今欲しいものって、何かな?」
セレス「そうですわね……苗木君もご存知の通り、わたくしにはギャンブルで稼いだ資産があるので、お金で買えないものはほとんどありませんわ」
苗木「そ、それはそうだね」
苗木「(だからこそ、セレスさんに何をあげたら喜んでもらえるか、わからなくてこうして訊いてるわけだし……)」
セレス「そんなわたくしが今一番欲しいもの……強いて言うなら、そうですわね……」
セレス「"城"、でしょうか」
苗木「……"城"!?」
セレス「ええ、城ですわ」
苗木「城ってあの……大阪城とか姫路城とかの?」
セレス「間違ってはいませんが、わたくしが欲しいのはノイシュバンシュタイン城や、リンダーホーフ城のような西洋のお城ですわ」
苗木「お、お城……」
セレス「参考になりましたか?」
苗木「う、うん……とっても参考になったよ!ありがとう!」
セレス「苗木君のお役に立てたようで何よりですわ」
苗木「(城なんて……無理だよ……)」
セレス「どうかされましたか?顔色が悪いようですが……」
苗木「へっ!?いやいや、そんなことないよ、だ、大丈夫だから!」
苗木「あ、そうだもうひとつだけ。……えっと、身近なもので欲しいものってある?」
セレス「身近なもの、ですか」
苗木「うん、あれば、でいいんだけど」
セレス「そうですわね……」
苗木「(これならなんとか、ボクでも用意できそうなプレゼントがあるかもしれない……)」
苗木「(いや、セレスさんにとって身近なものだから、もしかしたらボクなんかじゃ買えないようなものかも……)」
セレス「あ、思いつきましたわ。身近にあって、わたくしが今欲しいもの」
苗木「ほんと!?」
セレス「ええ。お聞きになりますか?」
苗木「もちろん!」
セレス「うふふ、では教えて差し上げますわ」
セレス「……わたくし、苗木君が欲しいですわ」
…To be continued?
もうちょっとだけ続くんじゃ
飯食ってからの
食ったべ
続きだべ
こっから先だけ先に書き溜めたから地の文があるべ。
苦手なら戻るべ。
ここまでのあらすじ
セレス「I need you」
苗木「What?」
セレス「……わたくし、苗木君が欲しいですわ」
セレスティア・ルーデンベルクは、確かにそう言った。
目の前にいる苗木誠に。
苗木「えっ…?」
予想外の答えだったのか、苗木は間の抜けた声を漏らす。
ほんの一瞬だけ茫然としていた彼だが、すぐに頭をフル回転させて、発言の意図を掴もうとする。
だが、答えが出る前にセレスは二の句を告げていた。
セレス「聞こえませんでしたか? でしたらもう一度、申し上げますわ…」
ルビーのような彼女の紅色の瞳は、いつになく真剣な眼差しだ。
困惑した様子の苗木をまっすぐ見つめながら、もう一度セレスは言う。
セレス「わたくし、苗木君が欲しいですわ」
先ほどと同じ、彼女の告白。
心なしか今度は、一つ一つの言葉に力が篭っているようだった。
けれど、その言葉を受け取った苗木には、彼女の意図が分からなかった。
セレスティア・ルーデンベルクという少女には、謎が多い。
彼女が"超高校級のギャンブラー"であり、ゴシックロリータファッションとロイヤルミルクティーをこよなく好むこと以外は、全てが謎に包まれている。
たとえそれが希望ヶ峰学園の同級生であったとしても、彼女の秘密のヴェールの裏側は、誰にもわからない。
秘密を着飾る事で女は美しくなる、というの言葉がこれほど相応しい少女も他にはいないだろう。
だからこそ、苗木誠にはセレスの意図がわからない。
苗木の全てが欲しい、という言葉を額面通り受け取るならば、それは愛の告白に他ならない。
しかし、相手は嘘と駆け引きを最も得意とする"超高校級のギャンブラー"なのだ。
わたくしのお腹の子は、貴方の子です、と冗談にならない冗談を真顔で言い、苗木をからかうのがセレスだ。
今の告白もその類に漏れず、突拍子もない"嘘"なのか、それとも本心からの言葉なのかが苗木にはわからなかった。
あるいは、彼女がよく雑用を押し付けている山田一二三のような、便利な付き人としての苗木誠が欲しいと意味なのだろうか。
実際、苗木は以前、彼女の下僕――ナイトになる権利を与えられていたし、もしそうだとしたら今は断るべきだろう、と苗木は思う。
苗木「いや、ちゃんと聞こえてるよ! だからそれってどういう…」
どういう意味なのさ、と訊こうとする苗木だったが、セレスはぴしゃりと言い放ち、それを阻んだ。
セレス「どういうも何も、言葉の通りですわ」
よろしいですか、と妖艶な笑みを浮かべながら、苗木に近寄ってくるセレス。
色鮮やかな唇の紅が、陶器のような白く美しい肌とコントラストを成す。
彼女の仕草のひとつひとつが、まるで芸術品のような人を惹きつける魔力を持っていた。
思わず息を飲む苗木。
セレス「苗木誠という人間の…頭のアンテナからつま先の足指まで、全てが欲しいですわ」
苗木「これは別にアンテナじゃないんだけど…じゃなくて!」
苗木「ボクが欲しい、って具体的にはどういう意味さ?」
けれど、セレスは勘の悪い眼前の男を、小馬鹿にしたように言ってのける。
セレス「あら…苗木君ともあろう御方が、おわかりでないのですか?」
小悪魔のようにふふふ、嗤うセレス。
苗木「そりゃそうでしょ。今の発言だけで意図を汲み取れるのは、エスパーくらいだよ!」
エスパー、という単語を口にして、苗木はある同級生を一瞬思い浮かべる。
確かに彼女であれば、セレスの本心を見抜けるかもしれないが、残念ながら(?)今は苗木とセレスの二人きりだ。
相対するセレスは、ため息をつきながら言う。
セレス「はあ……か弱い乙女の口から、そのような事を語らせるなんて…苗木君は鬼畜ですわ」
苗木「き、鬼畜って…」
セレス「よろしいですか? わたくしは……」
セレス「……その……」
セレス「……」
言いかけて黙り込んでしまうセレス。
苗木は首を傾げながら、彼女の言葉を借りて問いかける。
苗木「…その?」
聞こえたのは、掠れるような小さな声。
見えたのは、目を瞑り、小さな身体を震わせる少女の姿。
それはセレスティア・ルーデンベルクが見せた、乙女の恥じらいであったと、この時の苗木は気づいていない。
セレス「……おりますわ」
かろうじて、最後の部分だけが聞き取れた苗木。
当然ながら意味がわからず、さらに問いかける。
苗木「ごめんセレスさん……聞き取れなかったから、もう一度言ってもらえるかな?」
セレス「えっ……も、もう一度ですか!?」
セレス「…………わ、わかりましたわ」
今度は、苗木の耳にもしっかりと届く声だった。
絞り出すような、けれど、心の篭った、覇気のある声。
セレス「…わたくしは、好いておりますわ……苗木君、あなたの事を」
苗木「…………えっ」
セレス「で、ですから……あなたの全てが欲しいのです。こ、ここまで言えば……おわかり…ですか?」
いつものポーカーフェイスが嘘のように、頬を赤らめ、言葉を濁すセレス。
恥じらう乙女の姿に、"超高校級の鈍感"な苗木にも、ようやくセレスの"想い"が理解できたらしい。
苗木「それって、もしかして……プロポーズ――」
苗木はそこまで口にするが、羞恥の臨界点を超えたセレスの怒号が、それを遮る。
セレス「いいから黙って人生ごと全部寄越せっつってんだろうがァァ!!」
指を立てながら吠えるセレス。
それは、いざプロポーズという言葉を口に出された事への、彼女なりの照れ隠しだったのかもしれない。
取り乱した彼女は、すぐに我に帰るものの、そこにはいつもの毅然とした"超高校級のギャンブラー"の姿はなく、しどろもどろな少女がいた。
セレス「あっ……ご、ごめんなさい……あの…だから………その……えっと……」
赤面するセレスをじっと見つめながら、苗木は黙っている。
やがて、何かを決心したように言う。
苗木「…………いいよ」
決して大きな声ではなかったが、意思のこもった、力強い肯定の言葉。
セレス「えっ!?」
それは、セレスにとっては予想外だったらしく、いまだかつて見せたことがないほど、彼女は驚いていた。
苗木「セレスさんがそれを望むなら…ボクは、ボクのすべてをキミにあげるよ」
セレス「ほ、ほんとう……ですの?」
苗木「もちろんさ。でも、ボクなんかで本当にいいの?」
セレス「……苗木君じゃないと、ダメですわ」
苗木「そっか…嬉しい。すごく嬉しいよ!ずっと、ボクはセレスさんが好きだった」
苗木「けれど、告白する勇気もないし、ボクなんかじゃきっとフられると思って……ずっと黙ってたんだ」
セレス「それは……わたくしも同じですわ」
苗木「同じ?」
セレス「ええ。せっかくわたくしがヒントを差し上げていたのに、苗木君は気づいて下さらないんですもの。……てっきり他の方を好いておられるのかと思いましたわ」
苗木「ヒント?」
苗木「(それって、もしかして……)」
ーー閃きアナグラムーー
C ラ ン ク
そうか、わかったぞ!
苗木「もしかして、前に話してくれた"ランク"のこと?」
セレス「ええ。苗木君は、この学園で唯一のCランクの人間。わたくしのナイトとして頑張ればそれ以上も夢ではない、と……こんなことをお話したのは、後にも先にも苗木君だけですわ」
苗木「あれ?あの時は学園の外には他にもたくさんのナイトがいるって言ってなかったっけ?」
セレス「嘘ですわ」
苗木「嘘だったの!」
セレス「うふふ。ですから、わたくしは苗木君が欲しいのですわ。……わたくしの、セレスティア・ルーデンベルクの最初で最後のナイトとしての、苗木君が」
セレス「……改めて聞きますわ。苗木君、わたくしのナイトに……なって下さいますか?」
セレスは、右手を苗木の方へと差し出す。
その行為が意味することを、苗木は"幸運"にも知っていた。
苗木「……もちろん。セレスさん、ボクがキミを守るよ……何があっても」
誓約の言葉を口にしながら、苗木は両の手でセレスの手を握る。
包み込むように、優しく。
そして、手の甲にそっと唇を重ねた。
こうして苗木クンは、セレスさんの"超高校級のナイト"になったとさ。
めでたしめでたし。
ってオレは全然めでたくねーよ!
まさに絶望的ィイイイイイ!!!
おしまい
告白する過程が書きたかっただけなんですわ……
苗木「うーん、なんだか……こうやって改まると、なんというか……少し恥ずかしい、ような」
セレス「うふふ、今はいつも通りでよろしいのですよ。心配なさらなくても、わたくしのナイトとして、ゆっくり教育して差し上げますわ」
苗木「あはは、それは楽しみだよ。けど、お手柔らかにお願いするよ」
セレス「どうでしょう?わたくしの教育は厳しいですわよ?……わたくしのために、頑張ってくださいね」
苗木「セレスさんのため、と言われちゃうと……頑張れそうな気がするよ!」
セレス「あら、お上手ですわね。うふふ……」
苗木「あのさ、セレスさん」
セレス「あら、なんでしょうか?」
苗木「別に今日はボクの誕生日でも、なんでもないんだけどさ」
苗木「……ボクにも一つ、欲しいものがあるんだ」
セレス「…な、なんでしょう? ツマラナイものだったら怒りますわよ?」
苗木「それはもちろん――」
苗木「セレスさん、キミのすべてさ」
こんどこそおしまい
このSSまとめへのコメント
やっぱ苗セレssは素晴らしいのが多くて満足感たっぷり!!