「紙飛行機」 (10)

「楽しかったね!学校!」

そういって彼女は笑った。

「そうだな。」

「たまには遠回りして帰ろう?」

「そうだな。」

いつもと違った道を歩く。
ふと彼女を見ると、頬を膨らませこちらを見ていた。


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ねぇ、なんでそうだなしか言わないの?」

「会話が成立しているんだからいいだろう。」

「つまんないのっ!」

前よりさらに頬を膨らませているようだが、怒っているようには見えない。

「悪かったよ。」

素直に謝る。

「わかればいいのっ。」

また彼女は笑った。

「あっ、そうだ。聞きたいことがあるんだけど。」

何だろう。

「ここ、どこだろう?」

周りを見ると、見知らぬ風景が広がっていた。
少し話していただけなはずなのに、どこだここは。

「まったく見覚えがないな。」

通路のない広場のような場所。
周りは家に囲まれている。

異様だ。異様過ぎる。
歩いてきた道すらない。

「どこなんだここは」

彼女も焦り始めている。
落ち着こう。

空が青い。おや?

「紙飛行機?」

彼女もきずいたようだ。
紙飛行機は空を飛んでいる。

ジャンプしても届かず、落ちることなく飛んでいる。
目で追い続けて見ることにした。
  
くるくると弧を描き、目は紙飛行機を追っている。

「〜〜〜〜っ!!」

彼女の声だ。
言葉ではない声。

振り返ると、彼女はいなかった。
周りを見ると見覚えのある道。

「……」

何もいえない。声が出ない。
紙飛行機は私を置いてどこかへ飛んでゆく。

美しいと思えた青く澄んだ空が、今は憎くてたまらない。
何が起こったのかわからぬまま、おぼついた足取りで帰宅する。

部屋のベッドに倒れこみ、泣き続けた。

いつまで泣いただろう。明るかった空が、今は暗い。
目を閉じて、思いだす。

遠回りなんて、しなければよかった。
あの時、引き止めればよかったのだ。

後悔先に立たず、そんなことわざを思い出した。

ああ、もう遅いのか。

私は道を間違えた。

彼女はいない。

そんなことを考えながら、私は深い眠りについた。

〜fin〜

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