咲「あれ?お姉ちゃんがお酒飲んでる」 (51)

照「…飲んじゃいけない?もう二十歳なのに」

咲「だって…今日は、お友達と飲みに行ったんでしょ?」

照「うん。でも、そっちでは飲んでない」

咲「え?なんで飲まなかったの?」

照「車で行ったから」

咲「車で行ったら飲めないでしょー?」

照「飲みたくなかったから、車で行った」

咲「??」

咲「じゃあ、なんで今飲んでるの?」

照「お酒は好きだよ」

照「甘いものもたくさんあるし、醉う感覚も嫌いじゃない」

咲「へぇ…」

照「ただ、私、あんまり強くないみたいで」

照「外で飲むのは控えてる」

咲「そうなんだ…。大変だね」

照「まぁ、うん」

咲「うーん、でも、お姉ちゃんが酔っ払うところって想像できないなぁ」

咲「控えるほどってことは、相当酒癖が悪いのかな?」

照「悪いというか、意識がなくなる」

咲「えぇっ!?それって大丈夫なの!?今も飲まない方がいいんじゃ…」

照「大丈夫、突然なくなるわけじゃない」

咲「そうなの…?」

照「自分では、酔ってるなって分かるんだけど、顔に出ないから、強いと思われるみたいで」

咲「うん…」

照「断りきれない私も悪いんだけど」

照「あっと思ったら意識と記憶が」

咲「うわぁ…それはたしかに外で飲まないほうがいいかもね…」

照「一度、お持ち帰り、されかけたらしい」

咲「えっ」

照「いつもどおり意識がなくなってる私を介抱してくれた人がいて」

咲(いつもどおりなんだ…)

照「心配だから今日は家に連れて帰ります。って言うからじゃあその人に任せようかってなったんだけど」

照「聞いてみたら家が随分遠いから、友達が悪いし家まで送っていくよっていつもどおりの流れになって」

照「それなのに妙にその人が粘るから、おかしいな、と思って友達が問い詰めたら」

咲「そういう目的だったんだ…」

照「らしい。全く記憶にないけど」

咲「全然知らなかったよ…」

照「まぁ。私も覚えてないから」

咲「……」

照「……」

咲「……お姉ちゃん」

照「なに?」

咲「心配だから、外では飲まないで」ギュッ

照「うん。だからこうしてる」

咲「あっ…」

照「……」ゴクッ

照「…それに、咲にならお持ち帰りされてもいい」

咲「あはは、同じ家だからね」

照「違う」

照「咲のベッドに」

咲「えっ///」

照「……」マガオ

咲「……」

咲「…酔ってる?」

照「…うん」

咲「なんだぁ」

照「……」

咲「本当に顔に出ないんだね」

咲「でも、いつもより饒舌な感じも…」

照「咲も飲む?」

咲「え?なにを?」

照「お酒」

咲「飲まないよー。未成年だもん」

照「じゃあ…」スタスタ

咲「…?」

照「…気分だけでも」コトン

咲「カシスオレンジ…?」

照「うん。ノンアルコールの」

咲「あぁ。なるほど」

照「最近のそういうのはよくできてるから」

照「本物を飲んだ気分になる」

咲「へぇー」

照「付き合って」

咲「え///」

照「晩酌に」

咲「え?あっ、うん」

咲「」カシュッ

照「…乾杯」コツン

咲「か、かんぱい」コツン

照「……」ゴクゴク

咲「……」コクコク

照「…どう?」

咲「あんまり、甘くないね」

照「そう?」

咲「色とか、すごく綺麗だから、なにかもっとこう…キラキラした感じというか」

咲「うーん、おいしくなくはないけど、イメージと違かったなぁ」

照「…なんとなく分かる気がする」

咲「お姉ちゃんも?」

照「うん。ビールとか、大人は美味しそうに飲むから、初めて飲むときはすごく楽しみだったのに」

照「苦くて、最後まで飲めなかった」

咲「えっ、お姉ちゃんが?」

照「…どういう意味?」

咲「いや、お姉ちゃんが食べ物とか、飲み物とか、残すイメージがなくて」

照「そんなことないよ。残すときもある」

照「でも、味がダメで残すのは初めてだったかもしれない」

咲「そんなになんだぁ…」

照「今でも美味しいとは思えない」

咲「うーん、もう二十歳過ぎてもお酒を飲まなくていい気がしてきたよ…」

照「…でも、おいしくないお酒ばっかりじゃない」

照「ミドリって言うメロンのお酒はかき氷シロップみたいな味。ピーチツリーっていう桃のお酒をオレンジジュースで割るとすごく甘くてとろっとしてるし、リンゴのお酒を紅茶で割ったら、もうこれは絵本の世界の飲み物なんじゃないかって味してるし…」

咲「うわわ!どうしたの?急にそんな熱弁して」

照「…だから、そんなこと言わないで」

咲「……」

照「……」

咲「…酔ってるの?」

照「…うん」

咲「…本当に顔に出ないね」

照「それ、さっきも言ってた」

咲「そうだっけ?」

照「ん。咲、酔ってるんじゃない?」

咲「まさかぁ」

照「残念」ゴクッ

咲「…お姉ちゃん」

照「なに?」

咲「なにか、食べないの?はやくお酒が回っちゃうよ?」

照「あぁ、忘れてた。なにか持ってくる」


照「…はい」

咲「アーモンドチョコレート…」

照「うん」

咲「甘さに甘さを重ねていく感じなんだね…」

照「それがいい」

咲「……」モグモグ

照「……」ゴクッ

咲「…そういえば、お姉ちゃんは何飲んでるの?」

照「コーヒーのお酒」

咲「へー大人っぽいね」

照「ものすごく甘いよ」

咲「そうなの?」

照「そこがいいんだけど」

咲「コーヒーゼリーみたいな感じ?」

照「を、10倍くらい甘くして濃くした感じ、かな」

咲「へーおいしそう…」

照「飲んでみる?」

咲「だから、未成年だってー!」

照「…咲は真面目だね」

咲「もーどうしてそんなに私に飲ませようとするの?」

照「うーん…」

咲「……」

照「…咲が酔ってるところ、見たい」

照「咲はきっと私に似てお酒に弱いから」

咲「そ、そうかな?」

照「でも、私に似てなくてきっと顔に出る」

咲「言ってることがバラバラだよー」

照「顔、赤くして、呂律が回らなくなったりしたら、可愛すぎて心配になる」

照「誰かに、お持ち帰りでもされたらどうしよう…」

咲「お姉ちゃんに言われたくないよ…」

照「でも、こんな風に醉うのはお姉ちゃんの前だけだよ?とか言われたら…」

照「私、死ぬのかな…さよなら咲」

咲「そ、そんなこと考えてたの?///」

照「ううん、今、思いついてドキドキしてきた」

咲「…酔ってるね」

照「…うん」

咲「……」

照「……」ゴクッ

咲「…お姉ちゃんそろそろ…」

照「咲、飲もう」

咲「え、もう遅いし…」

照「いや、これから先の話。明日でもいいし、咲が二十歳を過ぎてからでもいい」

照「今日は、今までで一番楽しいお酒だった」

咲「そ、そう…?」

咲(いまひとつ伝わってこなかったけど…)

照「…外で飲みたくないのには、もうひとつ理由があって」

咲「?」

照「私、醉うと本音が出るタイプだと思う」

咲「……」

照「……」

咲「え」

咲「そ、それって…///さっきのは全部…」

照「でも、私には照魔鏡があるから、全部話しちゃうわけにはいかないでしょ?」

咲「あ…」

照「有名なプロ雀士の弱点とかね」

咲「…そうだね」

照「他人が知らないことまで知ってるってことは、話しちゃいけないことも多いってことで」

照「自然と口は堅くなっていったけど」

照「その反動…なのか、アルコールが入ると思ったことがすぐに口に出そうになる」

照「その感覚は好きなんだよ。自分らしい気がして」

照「でも、外で飲むと気が休まらない」

咲「そうだったんだ…」

照「今まで、一人で飲んでれば、なんとなく楽しかったけど」

照「咲と一緒だと、何倍も楽しかった」

照「ありがとう」

咲「う、うん!私でよかったら、またいつでも付き合うよ!」

照「ん。じゃあ、今日はそろそろ寝よっか」

咲「あ…」

照「…どうかした?」

咲「…やっぱり、もうちょっとお話しよ?」

照「……」

咲「あ、明日はお休みだし!」

照「…うん。分かった」ストン

咲「ごめんね。今の話を聞いたらなんとなく、寝ちゃうのがもったいない気がして」

照「…そう」ゴクッ

咲「うん…あ」

照「あ、飲むもの無くなった?」

咲「うん」

照「持ってくる」

咲「ありがとう、お姉ちゃん」

照「ん」フラー

咲(あ、ふらふらしてる)

照「はい。定番の梅酒」コトン

咲「のソーダ…」

照「ノンアルコールの」

咲「それって、ただの梅ソーダじゃない?」

照「私もそう思う」

咲「あはは、いただきます」

照「あと、食べるものも無くなってたから」コト

咲「なにこれ!綺麗だね」

照「でしょ?」

咲「なんていう食べ物なの?」

照「ヌガー」

咲「ヌガー?」

照「東京っぽいでしょ?響きが」トクイゲ

咲「うん。見たことない!」

照「フランスのお菓子らしいけど。食べてみて」

咲「」モグモグ

照「…どう?」

咲「…なんだろう…綿菓子の香りを強くして煮詰めたみたいな…」

咲「果てしなく甘いね」

照「そこがいい」

咲「…なかなか食べなれない食感」モグモグ

照「でも癖になってくる」

咲「…たしかに」ゴクン

咲「もういっこいい?」

照「うん。好きなだけ食べて」

咲「……」モグモグ

照「…私も食べよ」

咲「…今日は新しく知ることがいっぱいあるなぁ」モグモグ

照「ヌガーのこと?」モグモグ

咲「ヌガーもそうだけど、なんていうか、私、お姉ちゃんのことを全然知らないなぁって思った」

照「…ずっと、離れてたから」

咲「それも、あるけど」

照「けど?」

咲「なんていうか、また一緒に暮らしても、どう話していいか分からないっていうか…」

照「あー…」

咲「昔より無口だし…」

照「そうだよね…」

咲「だから、さっきの話、聞けて嬉しかった」

照「さっきの話?」

咲「照魔鏡のこと」

照「あぁ…」

咲「お姉ちゃんが無口な理由が分かった気がした」

照「いや、でもただの言い訳かもしれない…私が逃げてたのかも…」

咲「そんなことないよ。お姉ちゃんは優しいからだよ」

照「そ、そう?」

咲「そうだよ」

咲「……」

照「……」ゴクゴク

咲「……」

照「……」ゴクッ

咲「…私には話してよかったの?」

照「え?」

咲「なんでもない」

照「……」

咲「……」

照「…無性に話したくなって」

咲「!聞こえてたんだ…」

照「だって咲、酔っぱらいだと思って私の言うこと信用してなかったでしょ?」

咲「っ!それは…」

照「まぁ酔ってるのは事実だけど」ゴクッ

照「でも、嘘はひとつも言ってな…」

咲「しょ、照魔鏡ってどんなことまで見えるの!?」

照「…声、大きいよ咲」

咲「ご、ごめん…」

照「酔ってるんじゃない?」

咲「もういいよーその流れは」

照「…んーそうだね。基本的にはその人の麻雀の打ち方しか見えないけど」

照「その打ち方に何か強いこだわりがあるなら、その背景も見えるときがある」

咲「背景?」

照「咲にとっての嶺上開花。みたいな」

咲「あー…」

照「その人の大切な思い出みたいなものまで見えてしまうことがあって、たまに居心地が悪くなる」

照「私はただ、その人と対局しただけなのに」

照「踏み入りすぎた気分になる」

咲「例えば…?」

照「いや…」

咲「誰にも言わないよ」

照「でも…」

咲「……」

照「……」

咲「…ごめんね」

咲「ただなんとなく、言ったらすっきりするかなぁと思っただけなんだ。気にしないで」

照「咲…」

照「じゃあ今までで一番気まずかったことだけ…話していい?」

咲「うん…」

照「北九州の、白水哩と鶴田姫子の和了りの関係性は、有名な話だけど」

照「あれは、先に白水が縛りをかけて、それを達成したときに果たされる」

照「そんな絆はどこからきたのか…」

咲「……」

照「それは二人に肉体関係があるから」

咲「えっ…」

照「…秘密だよ」

咲「お姉ちゃん、それって…」

照「?」

咲「みんな知ってるよ?」

照「…え?」

咲「もちろんマスコミとかには言ってないけど」

咲「そういう話に興味がない和ちゃんでも、聞いたことあるって言ってたよ?」

咲「本人たちもあんまり隠す気がないんじゃないかなーって」

照「えー…」

咲「……」

照「……」

咲「い、いや、でも、いきなり対局した人のそんな事情まで知っちゃったらびっくりすると思う!」

照「……」ゴクッ

咲「私だったら黙ってなきゃって思うと思うし」

照「……」ゴクゴク

咲「…そういうこともあるよ、ね?」

照「……」ゴクッ

咲「ちょっ、飲みすぎだよ!?」

照「……」ピタッ

咲「…お姉ちゃん?」

照「…分かってたつもりになってただけなのかなぁ」

咲「そ、そんなことないよ」

照「阿知賀の人もドラを切ったし」

咲「?」

照「結局なにも分かってないのに」

照「分かった気になってしまうのがつらい」

咲「お姉ちゃん…?」

照「咲の気持ちも」

咲「…え?」

照「分かってるつもりで分からない」

咲「え?え?話についていけな…」

照「咲は私のことが大好きでしょ…」

咲「!?!?」

照「でも、その好きが分からない…」

咲「ま、待って待って。それは照魔鏡で?」

照「ううん。態度で」

咲「……」

咲「…!///」カァッ

照「…ねぇ教えて?」

照「咲の気持ちが知りたい」

照「家族としての好きでも、それ以上でも」

照「それ以上だったら嬉しいけど」

咲「そ、そんなこと急に言われても…///」

照「はぐらかすの?」

咲「ちがうけど…」

照「」ゴクゴクゴク

咲「だから飲みすぎ…んぐっ!?」

照「ん…んむっ」

咲「ん〜〜〜〜!!!!?」

照「ぷはぁ…」

咲(///甘…)ゴクン

照「…咲も酔ったら、話してくれるの?」

咲「……」

照「教えてよ」

咲「……」パクパク

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