「たのもォーっ!」 杏「はい?」 (21)

杏「え、何? 討ち入り? それとも道場破り?」

「違います! えっと、こちらがCGプロでよろしいんですよね」

杏「うん、合ってるよ。どちら様?」

「ボクは765プロの菊地真と申します」


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杏「あ~、そういえば何かで見た事あるかも。で、他の事務所の人がウチに何の用?」

真「とりあえず、広報担当の方をお呼びして欲しいのですが」

杏「そこらへんは大体プロデューサーの管轄だね。今は生憎だけど外出中だよ」

真「そうですか・・・」

杏「そのうち戻ってくると思うから、時間に余裕があるなら待つといいよ」

真「そうさせていただきます。あ、こちら菓子折りです」

杏「変なところで礼儀正しいんだね・・・もらうけど」

杏「で、プロデューサーに何の用事? さっきの勢いからするとあまり穏やかじゃなさそうだけど」

真「それはですね、先日、こちらのプロダクションとお仕事をさせていただいたんですけど」

聖來「ふむふむ」

真「こちらを見て下さい」

http://i.imgur.com/C6UFDaW.gif

杏「広報のヤツだね。何も問題なさそうだけど?」

真「やっぱりそういう反応になるんですね・・・ボクの苗字は土へんの方の菊地で、さんずいの方の菊池じゃありません!」カキカキ

杏「あ~、なるほどなるほど。そういえば相手さんの名前を間違ったとかで騒いでいたね」

杏「でも、ちゃんと直したって言ってたよ?」

真「確かに直っていましたが、ボクが直談判したいのは間違えた事実についてです。流石に仕事相手の名前を間違えるのはどうかと」

杏「そうだね・・・杏の場合はたまに杏子って書かれるけど、文字数の違いですぐ気付くし」カキカキ

真「・・・」

杏「まあ、間違ってるとあまりいい気はしないかもね」

真「そうですよね! 共感できる人がいて良かった!」

杏「そういえば、ウチの事務所にもよく間違われる人が何人かいるね」

真「少数精鋭のウチと違って人数も多いですしね」

彩華「あやか、帰ってきましたぁ」

杏「お帰り、彩華さん」

彩華「こちらの方はどちら様ですかぁ~?」

真「765プロの菊地真と申します」

杏「そうだ、彩華さんも苗字が結構間違われやすいよね」

彩華「そうなんですよぉ~。あやかの苗字は岸部って書くんですけど、岸辺って書かれがちなんですぅ~」カキカキ

真「ボクと似たような悩みですね」

彩華「でも、間違われる度に注意してあげるのも一つの楽しみなんですぅ」

杏「どういう事?」

彩華「あやか、愛され体質だから一度メッ、ってしれあげればちゃんと直してくれるんですぅ~」

真「そ、そうですか」

杏「体質関係あるのかな・・・」

彩華「そうすると、ほんわかして皆のテンションがアゲられるんですぅ。なので、あやかはパパとママからもらったこの苗字が好きなんですぅ♪」

真「なんとも前向きですね・・・ボクもそのくらいに考えればいいのかな」

杏「彩華さんは前向き過ぎるかもしれないけどね」

ガチャ

智絵里「ただいま・・・」

杏「お帰り、智絵理」

真「お邪魔しています」

智絵里「え、えっと・・・どちら様ですか?」

真「765の菊地真です」

杏「ごめんね、この娘ちょっと引っ込み思案でさ」

真「大丈夫です。ボクの身近にも似たような雰囲気の人がいますし」

杏「ところで智絵理ー、漢字これで合ってるっけ?」カキカキ

智絵里「えっと・・・里に王へんはくっつきません・・・」

杏「あちゃ、ごめん智絵里」

智絵里「いえ・・・いいんです・・・。酷い時は智恵理って・・・二文字間違えられる事もあります・・・」カキカキ

真「違和感がないのでうっかり間違える、といった感じでしょうか」

智絵里「携帯の予測変換でも・・・デフォルトでは智恵理しか入ってませんでしたから・・・」

杏「んーと・・・ホントだ」ポチポチ

智絵里「でも、Pさn・・・プロデューサーさんがちゃんと覚えてくれたし・・・辞書登録もしてくれたので大丈夫ですっ」

杏「それならいいんだけどね」

ガチャ

晶葉「帰ったぞ」

杏「あ、晶葉だー」

真「こんにちは」

晶葉「君は確か765のアイドルだったか。写真で見た通り引き締まったいい体つきをしているな」

真「えっと・・・ありがとうございます」

杏「晶葉は名前の漢字間違えられたりする?」

晶葉「割と多いな。読みから秋葉と間違えられる場合と、漢字の形から昌葉と間違えられる場合がある」カキカキ

真「やっぱり似た漢字があると間違われがちですよね」

晶葉「前者の場合は苗字が有名な地名なのが影響しているかもしれんな」

杏「池袋に秋葉原ねぇ」

晶葉「まあ、天才の私ならいずれ皆がその名を覚える存在になれるだろう。君も印税生活を目指すなら努力を怠らない方がいいぞ双葉杏」

杏「はいはい」

真「アハハ・・・」

ガチャ

聖「お疲れ様・・・です」

杏「お疲れ、聖」

真「どうも」

杏「今、名前の書き間違えについて話してるんだけど、聖は流石に名前を間違えて書かれる事はないでしょ?」

聖「漢字は大丈夫・・・だけど読みが・・・たまに間違われます・・・」

杏「ああ・・・聖をひじりって読むって知らないパターンだね」

聖「あまり気にはしませんけど・・・」

杏「読み間違いは結構多そうだね」

真「ウチの事務所のメンバーは皆ストレートな読みなのでそういう事はありませんね。漢字の間違いはボク以外にも何人かいますが」

杏「そうだね、ウチだと茄子と書いてナスじゃなくてカコと読むパターンとか」カキカキ

真「なるほど・・・なかなかレベルの高い名前ですね」

杏「本人もネタにしてるし、実際に幸運の女神みたいな感じで売り出してるしね」

聖「イヴさんも・・・バ行のブでイブって書かれがち・・・」カキカキ

杏「まあ、外国の読みを日本語にあてはめてるわけだし、そこはしょうがないかもね」

真「携帯だとウに濁点の方って打ちづらいですしね」

ガチャ

清良「はーい、ただいま戻りました☆」

愛海「清良さん、もう悪さしないからやめて~・・・」

杏「二人ともお帰り」

真「すごい、なんか言葉では表せない状況になってる」

杏「そういえば、この二人も読み間違いが多いよね」

清良「きよらにあつみ。だけどせいらやあいみ、まなみって呼ばれがちですね」

愛海「あたしは間違われるのをネタに揉めるからイタタタタ清良さん本当にくる、し、い」

真「ほっといていいんですか?」

杏「まあ、いつものことだから」

聖來「セイラはアタシだよ」

杏「いたの?」

聖來「うん、最初の方からずっと。アタシの名前は漢字が思い出せないパターンが多いかな」

杏「確かにこの字は普段使わないもんね」カキカ・・・キ?

聖來「旧字だから仕方ないね」ウン、ソウソウ

ガチャ

雪菜「ただいま♪」

杏「あ、この手の話題のラスボス来た」

雪菜「私がラスボスですか?」

杏「えっと、この漢字がこの娘の名前なんだけど、読める?」カキカキ

真「いむら・・・ゆきなさんでしょうか?」

雪菜「ああ・・・そういうことですか」

杏「お察しの通りだよ、せつな」

真「これで雪菜さんですか・・・確かに何も知らされていないとちょっと厳しいですね」

雪菜「その反応、慣れてますから・・・でも、お陰で逆に覚えてもらえますし、名前に似合うように綺麗になりたいって思えるから平気ですよ」

真「素晴らしい・・・ボクも見習って頑張ります」

杏「確か蘭子が読みを聞いて一瞬ときめいていたね」

ガチャ

ちひろ「杏ちゃん、留守番ご苦労様で・・・あら、お客様ですか」

真「はい。こちらのプロデューサーさんに用事があって、しばらくお邪魔させてもらってます」

ちひろ「プロデューサーさんなら今日はもう戻ってきませんよ」

杏「え!? うっわ、本当にゴメン」

真「いえ、なかなか有意義な時間が過ごせたので構いませんよ」

ちひろ「何のお話をしていたんですか?」

真「実は・・・」カクカクシカジカ

ちひろ「やっぱり菊地さんがいらっしゃるとなるとその件ですよね・・・この度はこちらの不注意で、本当に申し訳ありません」

真「いえ、冷静に考えると、ちょっと苗字を間違われたくらいで直談判に来るのはやりすぎかなってそろそろ思い始めてきましたし」

杏「そういえば、ちひろさんの苗字の読みは何かって事務所内で一時期話題になっていたよね」

ちひろ「はい、特に機会がなかったのでお伝えせずにいたら・・・確か総選挙の時にこっそり名簿に名前を入れようとした時にバレたんでしたっけ」

杏「流石に事務員をアイドル達の総選挙に参加させるのは無理があるよ」

真「こちらの事務員さんもなかなかおちゃめな方ですね。では、ボクはそろそろおいとまさせていただきます」

杏「今日は本当にゴメンね」

真「大丈夫ですって。じゃあ、これで」

ガチャ

ちひろ「ふう、心が広い方で助かりました」

杏「こういう面で考えると、ありすみたいなひらがなの名前って間違えようがなくていいんじゃないかな」

ちひろ「本人に言ったらまた中身のない論破を仕掛けてきますよ」

杏「適当にハイハイうなずいておけばいいんでしょ」

ちひろ「もう少しプライドを持ちましょうよ・・・」

杏「杏は動かない事が最優先だからね。動かなくていいならあまり気にしないよ」

ガチャ

きらり「杏ちゃん、みっけ☆」

杏「言ったそばからー!!」

きらり「杏ちゃんに似合うカワイイお洋服のフェアがやってたから、杏ちゃんを探してたんだにぃ☆」

杏「き、きらり? 杏は別に洋服に不満はないk、あの、抱えないで、ちょ、いやああぁぁぁぁ!!」ニョワアアァァァァ!!

ちひろ「きらりちゃんの場合は名前もそうですけどまず見た目のインパクトが強すぎて、一度見たら間違えようがありませんね・・・」

後日

真「小鳥さん、ボク気付きました!」

小鳥「ピヨ?」

真「最初から、事務所内の全てのパソコンの辞書の予測変換から菊池を消しておけばいいと思いませんか!? さあやりましょう! 今すぐ!」

小鳥「この鬼畜!」


おわり

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