芳佳「サーニャちゃんって夜間哨戒中、オシッコとかどうしてるの?」 (158)

飛行機内

美緒「全く。呼び出されたと思えば、予算の削減とはな」

ミーナ「上層部にも困ったものね」

美緒「私たちばかりに活躍されて面白くないと言ったところか。人類の危機に随分と余裕があるな」

ミーナ「そうね……」

芳佳「あ。雨だ」

美緒「雨?何を言ってる。雲の上を航行中だぞ。雨など降るわけがない」

芳佳「でも、窓に雨粒が当たってますよ」

ミーナ「あら、ホントね」

『ら~らら~ら~♪』

芳佳「あれ。何か聞こえませんか?」

美緒「これはサーニャの歌だ。基地に近づいている証拠だな」

数日後 飛行機内

ミーナ「ふぅ……」

バルクホルン「お疲れのようだな、ミーナ」

ミーナ「こう何度も呼び出されてはね」

バルクホルン「私たちの戦果が気に食わないのか」

ミーナ「そうでしょうね。こんな状況でも面子は大事みたいよ」

バルクホルン「下らないな。そんなことでネウロイの脅威に立ち向かえるとは思えない」

ミーナ「同感よ」

『ら~らら~ら~♪』

ミーナ「サーニャさんの歌ね」

バルクホルン「久々に聞いたな」

ミーナ「あら?雨だわ」

バルクホルン「何を言っている。今は雲の上だぞ」

ミーナ「そ、そうよね。なら、この窓の水滴は……一体……」

食堂

リーネ「雨?」

芳佳「うん。雲の上なのにポタポタって窓に水が当たってたの」

リーネ「もっと高いところに雲があったとか?」

芳佳「えー?一面夜空だったよー?」

リーネ「そ、そうなんだ。ごめんね」

芳佳「ああ、ううん。謝ることじゃないけど」

美緒「宮藤。ちょっといいか?」

芳佳「あ、はーい。なんですか、坂本さん」

美緒「しばらく夜間戦闘を想定したシフトを組もうと思う。そこで、お前には夜間哨戒の任務についてもらいたい」

芳佳「私がですが?」

美緒「なに、サーニャとエイラも一緒だ。何も心配はない」

芳佳「わかりました!がんばります!」

美緒「何か分からないことがあればサーニャかエイラに聞くといい。どちらも夜間哨戒には長けているからな」

ミーティングルーム

ミーナ「最近、夜間にネウロイが出現するケースが増えていると各前線基地からの報告もあります。そこで私たちも夜間戦闘を想定したシフトを組むことにしました」

美緒「現在、ほぼサーニャ一人に夜間哨戒を任せている状態であるが、これからはサーニャだけでなく全員で協力していくこととする」

エーリカ「えぇー。メンドーだなぁ」

バルクホルン「文句を言うな。軍人たるもの、どんなときにでも対応してこそだ」

シャーリー「夜間哨戒かぁ。昼間とは勝手が違うからなぁ。常に集中してなきゃいけないし、疲れるんだよなぁ」

ルッキーニ「あたしやだぁ」

美緒「やだではない!!サーニャだけに負担を強いていいのか?」

ルッキーニ「それもいやだけどぉ」

美緒「なら、協力しろ」

エイラ「よかったな、サーニャ。しばらくは楽が出来るぞ」

サーニャ「う、うん……そうね……」

芳佳「うぅ……緊張するなぁ……」

リーネ「大丈夫だよ。夜間飛行に慣れている二人がついてるんだし」

サーニャ「……」

美緒「では、今週はサーニャ、エイラ、宮藤の三名が夜間哨戒につく。というわけで、3人は夜に備えてもう寝ろ」

エイラ「りょーかい。宮藤、いくぞ」

芳佳「い、今から寝るんですか!?」

エイラ「当たり前だろ。夜、寝ながら飛ぶ気か?」

芳佳「さっき起きたばかりなんですけど」

エイラ「暗いのにも慣れなきゃいけないし、早い時間に寝ることも覚えろ」

芳佳「で、できるかなぁ」

サーニャ「……」

芳佳「あ、サーニャちゃん。色々教えてね」

サーニャ「う、うん」

エイラ「宮藤、私には訊かないのかぁ?」グニッ

芳佳「ふぁ、ふぁい!ふぇいらふぁんにふぉききまふぅ!!」

エイラ「そうかそうか」

サーニャ「……」

夜 空中

芳佳「わ、わわ……わわ……」フラフラ

エイラ「宮藤、高度が下がってるぞ」

芳佳「だ、だって、暗いから怖くて……」

サーニャ「芳佳ちゃん。手、繋ぐ?」

芳佳「あ、うん!ありがとう、サーニャちゃん」ギュッ

エイラ「むぅ……。私も繋ぐ」

サーニャ「エイラ。私と繋いでも意味ない」

エイラ「あぅ……。わ、分かってる!!宮藤、ほら」

芳佳「エイラさんもありがとー!!」ギュッ

エイラ「これで安心だろ?行くぞ」

芳佳「うん!!」

サーニャ「あ……。ちょっと待って」

エイラ「どうした、サーニャ?ネウロイか?」

サーニャ「少し高度を上げるわ。二人はここにいて」ブゥゥゥン

芳佳「ネ、ネウロイ……!!」チャカ

エイラ「まぁ、待ってろって。高高度からサーニャが索敵してくれるから」

芳佳「いつもあんな高いところから?」

エイラ「そうだな。サーニャは大体あの位置からだな」

芳佳「すごーい……。寒くないのかなぁ……」

エイラ「サーニャは慣れてるから大丈夫だ」

芳佳「ナイトウィッチってすごいんですねぇ」

エイラ「まぁな」

芳佳「あれ?」

エイラ「どうした?」

芳佳「雨が……」

エイラ「雨?雲は下にあるぞ」

芳佳「でも、今、確かに頬に水が――」

サーニャ「お待たせ。異常はなかったわ」

エイラ「そうか。よし、次の哨戒ルートに行くか」

数時間後

エイラ「ふわぁぁ……。もうすぐ夜明けだなぁ」

サーニャ「うん……」

芳佳「……」モジモジ

エイラ「宮藤、しっかり姿勢を保て。高度が落ちてるぞ」

芳佳「は……はい……」モジモジ

エイラ「どうしたんだ?」

芳佳「あ、あの……ト、トイ……レ……」

エイラ「はぁ?」

芳佳「もう……ずっと……我慢してて……」モジモジ

エイラ「おまえな。出発前に済まさなかったのか?」

芳佳「ご、ごめんなさい……」モジモジ

サーニャ「芳佳ちゃん。もう時間だし、先に帰投してもいいよ?」

芳佳「いいの!?ありがとう!!サーニャちゃん!!それじゃあ、一足先に戻るね!!!」ブゥゥゥン!!!!

エイラ「全く。まぁ、初めてだし、その辺は慣れてなくて当然か」

サーニャの部屋

芳佳「今日はごめんなさい!!」

エイラ「別にいいよ。坂本少佐には怒られなかったか?」

芳佳「怒られました……」

エイラ「まぁ、先に帰ったら変だもんなぁ」

芳佳「うぅ……」

エイラ「次からはちゃんと済ませておくんだな」

芳佳「はい。気をつけます」

エイラ「よし」

サーニャ「……ねむい」

芳佳「でも、エイラさんもサーニャちゃんも普段はどうしてるの?オシッコしたくなったりしたら」

エイラ「普段はそんなことしないで済むようにしてるんだ。な、サーニャ?」

サーニャ「うん」

芳佳「でも、どーしても行きたくなったりしたときは?」

エイラ「別にバルクホルン大尉みたいにうるさく言うつもりはないけど、体調管理は基本中の基本だぞ?」

芳佳「あぁ……そうですよね……」

エイラ「まぁ、どうしても我慢できないときはその場でするしかないな」

芳佳「えぇ!?空の上でするの!?」

エイラ「我慢しても体に悪いからな」

芳佳「サーニャちゃんもそうなの!?」

サーニャ「……私は、そういうこと……しない……」

エイラ「こらぁ!!宮藤ぃ!!サーニャがそんなことしないのは見た目でわかるだろ!!」

芳佳「ご、ごめんなさい!!」

サーニャ「エイラ」

エイラ「とにかく。なるべくそういうことはしないようにするのが鉄則だな」

芳佳「そうなんだ……」

サーニャ「用を足しているときにネウロイと遭遇したら、大変だから」

芳佳「あぁ。そうだね。無防備だもんね」

サーニャ「うん」

エイラ「宮藤!!サーニャに変なこと訊くなぁ!!」

兵士1くっ…ここまでか…」

兵士2「ここは最終防衛ラインだから我々が踏ん張らないといけないのに…」

兵士3「申し上げます!中尉殿が…戦死いたしました…」

兵士1「!? くっ…」

兵士3「これでは士気が…仕方がありませんが突撃でもするしか」

兵士1(はぁーやる気出ないどうでもいいや)

サーニャ『ら~ららら~』

兵士2「ん?この歌は?」

兵士3「雲は出てないのに雨?」ソウガンキョウ スチャッ

兵士3「あれはウィッチ!リトヴャク氏の物と思われる水滴を確認!」

兵士1「うおおおぉぉぉ!!!行くぜ野郎共!!」

兵士達「「「おおおーーー!!!」」」

夜 空中

芳佳「星がきれー」

エイラ「これは夜間哨戒組の特権だな」

芳佳「うん」

サーニャ「……ちょっと。見てくる」ブゥゥゥン

芳佳「あ、サーニャちゃん!!」

エイラ「今日はいつもより早いな」

芳佳「ネウロイなら……」

エイラ「まぁ慌てるな。予測ではまだもう少しあとになるってミーナ中佐も――」

芳佳「あ……」

エイラ「……雨か?」

芳佳「雨ですよね?あ、また、頬に当たった」

エイラ「なんでだ?雲は下なのに……」

サーニャ「――お待たせ。異常はなかったみたい」

芳佳「サーニャちゃん、上のほうに雲とかあった?」

サーニャ「雲?」

エイラ「今、雨が顔に当たったんだ」

サーニャ「雲はなかったよ」

芳佳「だよね……」

サーニャ「いこ」

エイラ「そうだな。きっとどこかの水しぶきが上昇気流にのってここまできたんだろ」

芳佳「そんなことありえるんですか!?」

エイラ「まぁ、仮定の話だ」

芳佳「うーん……」

サーニャ「……」ブゥゥゥン

芳佳「サーニャちゃんはどう思う?」

サーニャ「興味ないから」

芳佳「そっかぁ」

エイラ「ほら、夜間哨戒に集中しろ。任務中だぞ」

芳佳「は、はい!!」

数日後 食堂

芳佳「あぁ……疲れたぁ……」

ペリーヌ「何を言っていますの。たかが1週間の夜間哨戒任務で」

芳佳「でも、夜間飛行はすっごく疲れるんですよぉ?」

ペリーヌ「そんなの当然ですわ。闇夜で視界が悪い分、神経を研ぎ澄ましていないといけないんですから」

芳佳「あ、それだけじゃないです」

ペリーヌ「他にもなにか?」

芳佳「オシッコとかいたくならないか不安で。それもストレスになってるみたいなんですよね」

ペリーヌ「くっ……!!貴方と言う人は……!!なんて下品な!!!」

芳佳「えー?結構大事なことですよぉ」

美緒「はっはっはっは。なんだ、宮藤。そんなことを気にしながら夜間飛行をしていたのか?」

芳佳「坂本さん」

ペリーヌ「さ、坂本少佐……」

美緒「飛びながら済ませればいいだろ。股の部分をずらしてな」

ペリーヌ「さささ、坂本少佐!?そんな!!あぁ!!だめですわー!!!」

美緒「ペリーヌ、何を興奮している?」

ペリーヌ「あ……申し訳ありません……」

芳佳「でも、エイラさんに怒られました。そんなことにならないように済ませておけーって」

美緒「まぁ、それが普通だな」

ペリーヌ「そうですわよ、宮藤さん!!そもそもそんな心配をしている内は、ダメダメですわね!!」

芳佳「なにもそこまで……」

美緒「宮藤、夜間哨戒の心得を先輩からよく聞いておけ」

芳佳「はい」

美緒「今日からはエイラと宮藤に代わって、シャーリーとバルクホルンだったか」

芳佳「そうですね。お二人とも先ほどサーニャちゃんの部屋に入っていくの見ました」

美緒「そうか。まぁ、あの二人なら問題はないだろう」

芳佳「あ、そうだ。坂本さん、夜間哨戒中、二度も雨が降ったんですけど」

美緒「雨?降ることもあるだろう」

芳佳「いえ。雲は確かに下にありました。サーニャちゃんも高高度には雲がなかったって」

美緒「ふむ……」

夜 格納庫

バルクホルン「早くしろ、シャーリー」

シャーリー「へいへい」

サーニャ「……」

美緒「待ってくれ」

バルクホルン「少佐。どうかしたのか?」

美緒「ああ。大したことでなければいいのだが、一応お前たちにの耳にも入れておこうと思ってな」

バルクホルン「なんだ?」

美緒「高高度で雨が降ったら、少しばかり周辺を調査してみてくれないか?」

シャーリー「雨?哨戒ルートは雲の上を飛ぶことになってるけど……」

美緒「だからだ。些細なことかもしれないが、宮藤とエイラは雨が降ったと言っている」

バルクホルン「ネウロイの可能性もあるか」

美緒「ああ」

バルクホルン「分かった。雨が降ったら周辺を警戒する。サーニャもそれでいいな?」

サーニャ「……了解しました」

空中

バルクホルン「今日は雲が多いな……」

シャーリー「上は一面の夜空だけどなぁー」ブゥゥゥン

バルクホルン「真面目にやれ」

シャーリー「いいじゃんか。サーニャだってネウロイの気配を探知してないんだし」

バルクホルン「備えよ常にだ」

シャーリー「これだからカールスラントの堅物は……」

バルクホルン「なんだと!?」

サーニャ「あ……」ブルッ

バルクホルン「どうした?」

サーニャ「高度を上げます。待っていてください」ブゥゥゥン

シャーリー「おーい!!一人で大丈夫かぁー!?」

バルクホルン「……サーニャに任せよう。夜間飛行に関してはサーニャのほうが手馴れている」

シャーリー「そうだけど……。あれ?」

バルクホルン「……これは。雨か!?まさか、本当に降って来るとは……!!サーニャ!!応答しろ!!高高度に雲は存在するか!?」

サーニャ『ら~らら~ら~♪』

バルクホルン「サーニャ!!歌っている場合ではない!!」

サーニャ『あ、はい。なんですか?』

バルクホルン「今、水滴が落ちてきた。そちらで雲は確認できるか?」

サーニャ『……いえ。ありません』

バルクホルン「そうか……」

シャーリー「ちょっとあたしも上に行ってみる」ブゥゥゥン!!!

バルクホルン「まて!!勝手な行動は慎め!!」ブゥゥゥン!!!


サーニャ「……ふぅ」

シャーリー「――サーニャ!!!」

サーニャ「は、はい!」ビクッ

シャーリー「ネウロイは感知してないか?」

サーニャ「いえ……反応はありません」

バルクホルン「そうか。雨とネウロイは関係ないのか……?」

翌朝 ミーティングルーム

美緒「降ったのか?」

バルクホルン「ああ。といっても一滴が頬に当たっただけだが」

シャーリー「あたしは二滴確認した」

美緒「ミーナ中佐。そちらはどうだ?」

ミーナ「気象データを見ても、現地の雲がどうだったのかは夜間哨戒に出ていた三人しかわからないわね」

バルクホルン「雲は一つもなかった。断言してもいい」

シャーリー「そうだな。高高度から見ても星空だけだったよ」

サーニャ「私も確認しました」

美緒「だろうな。そこまでの高度なら普通、雲は出来ない」

ミーナ「だけど、ネウロイの仕業だとしたら……」

美緒「バルクホルン、シャーリー、サーニャ。どんなに微細なことでも報告してくれ」

バルクホルン「了解した」

ミーナ「それでは三人ともお疲れ様。夜に備えてゆっくり休んでね」

シャーリー「ふぁぁ。寝ないと、倒れるもんなぁ……」

食堂

ルッキーニ「雨ぇ?」

美緒「そうだ。次、夜間哨戒に出る者も注意してくれ。以上だ」

リーネ「なんだか、大変なことになってきたね」

芳佳「そうだねぇ」

ルッキーニ「でも、どばーって降ってないんでしょ?それだったら誰かの唾とかじゃないの?」

芳佳「唾って……」

ルッキーニ「サーニャが上から吐いたり――」

エイラ「そんなわけないだろっ」

ペリーヌ「雲もなく降る謎の雨……。確かに坂本少佐が気にするのも頷けますわ」

リーネ「ネウロイの仕業なんでしょうか……?」

エーリカ「ネウロイのおしっことか」

ペリーヌ「そんなわけありませんでしょ!!!」

エーリカ「冗談だって」

芳佳「雨か……。どこから降ってくるんだろう……」

1週間後 夜 空中

リーネ「はぁ……。夜の空はまだなれないなぁ……」

ルッキーニ「そう?お星様いーっぱいで、いいじゃーん!!キラキラしててきれだしー!!」ブゥゥゥン

リーネ「ルッキーニちゃん。しっかり飛ばないと危ないよ」

ルッキーニ「だいじょーぶ、だいじょーぶぅー」

サーニャ「……」ブゥゥン

ルッキーニ「おぉ……」ブルッ

リーネ「どうしたの、ルッキーニちゃん?」

ルッキーニ「……オシッコ、したくなっちゃった」

リーネ「えぇ!?まだ基地には帰れないよ!?」

ルッキーニ「おしっこぉ……」モジモジ

リーネ「ど、どうしよう!?」オロオロ

サーニャ「……ここでするしかないと思う」

リーネ「えぇ!?ここで!?」

ルッキーニ「じゃあ……ここでしゅるぅ……」

ルッキーニ「はぁぁ……きもちいぃ~♪」

リーネ「うぅ……」

サーニャ「……」

ルッキーニ「ふぅ。すっきりっ!」

リーネ「よ、よかったね……」

サーニャ「どうだった?」

ルッキーニ「初めてしたけど、なんだか開放感があっていいね!」

サーニャ「うん。だよね」

ルッキーニ「なんだが、はまっちゃいそうぅ」

サーニャ「うふふ」

リーネ「そんなことしちゃダメー!!!」

ルッキーニ「えー?リーネもやってみればわかるよ。普通にトイレでするより、きもちいいってぇ」

リーネ「そんなことしちゃだめー!!」

サーニャ「あ。うん。今度からは基地で済ませてからきたほうがいいと思う」

ルッキーニ「えぇ?そうなの?」

翌朝 ミーティングルーム

リーネ「報告します。夜間哨戒中、異常はなにもありませんでした」

ミーナ「はい。ご苦労様」

美緒「サーニャとルッキーニはどうした?」

リーネ「もう部屋で寝ています」

美緒「仕方のない奴だな……」

ミーナ「リーネさんもゆっくり休んでね。今晩もあるから」

リーネ「はい」

美緒「リーネ。予測ではそろそろネウロイが出現するかもしれない。十分に気をつけろ」

リーネ「了解です」

ミーナ「あと、どんなに小さなことでも報告は怠らないようにね。お願いよ」

リーネ「あ……えと……それじゃあ……」

美緒「何かあるのか?」

リーネ「夜間哨戒中……その、ルッキーニちゃんが……空で用を足してしまって……」

ミーナ「そ、そういう報告はいりません」

食堂

バルクホルン「宮藤。水をもらえるか?」

芳佳「あ、はい。どうぞ、バルクホルンさん」

バルクホルン「ありがとう」ゴクゴクッ

シャーリー「ルッキーニが空で小便したんだって」

バルクホルン「ぶっ!?」

芳佳「バ、バルクホルンさん!?大丈夫ですか!?」

バルクホルン「ごほっ!!えほっ!!リベリアン!!急になんてことを言うんだ!!!」

シャーリー「細かいことも報告しろって言ってただろ」

バルクホルン「そんな報告はいらん!!考えればわかるだろ!!」

ペリーヌ「そうですわよ。時と場合を……いえ、そのようはことは聞いても黙っておくべきです」

シャーリー「こっちは報告義務を果たしただけなのに」

エーリカ「今のはトゥルーデが悪い」

バルクホルン「何故だ!!!」

芳佳「あの。ちょっといいですか?」

エイラ「どうした、宮藤?」

芳佳「あの大前提として出発前に済ませておくことは理解してますけど、どうしようもなくなったときはやっぱり空で済ませますよね?」

シャーリー「あぁ。まぁ、そうする他ないからね」

バルクホルン「ま、まぁ……な……」

エーリカ「宮藤、宮藤」

芳佳「なんですか?」

エーリカ「トゥルーデは昔、夜間哨戒でもら――」

バルクホルン「おぉい!!!エーリカぁ!!!」

エーリカ「なんだよぉ」

バルクホルン「あれは事故だとなんど言えばわかるんだ!!!」

エーリカ「その事故の所為で上からひっかけられのたの、私なんだけどぉ?」

バルクホルン「宮藤の前でそういうことをいうなぁー!!!」

シャーリー「なんだか、面白そうな話だなぁ?」

バルクホルン「忘れろ。昔のことだ」

芳佳「夜間哨戒中になにかあったんですか?参考にしたいんで教えてください、バルクホルンさん!!」

エーリカ「昔、私とトゥルーデ、あとナイトウィッチの先輩と一緒に夜間飛行訓練を兼ねた夜間哨戒に出たんだ」

シャーリー「今と状況が似てるな」

バルクホルン「おい!!やめろぉ!!」

エーリカ「で、飛び始めて1時間。トゥルーデの体に異変が……」

芳佳「ど、どうしたんですか!?」

エーリカ「こう両手で股間を押さえてモジモジし始めたんだ」

バルクホルン「いうなぁ!!!エーリカぁ!!!」

シャーリー「それから?」

エーリカ「そしてそのとき。急に眼下からネウロイがぐわーって現れたんだ。で、勿論、戦闘するために私たちは銃を構えた」

バルクホルン「やめろぉ……」

エイラ「なんか聞かないほうがいいのか?」

ペリーヌ「で、ですわね……」

エーリカ「私は銃をバババババ!!っと撃った。その瞬間、私の顔に生暖かい何かがかかったんだ」

芳佳「そ、それって……!!」

エーリカ「丁度、斜め前方に居たトゥルーデから流れ出た汚水だった。どうもネウロイ出現の驚きで開いちゃったみたいなんだ。いやー、あのときは参ったよぉ」

シャーリー「そんなのことが……」

バルクホルン「あのときは……どうすることもできなかった……」

芳佳「バルクホルンさんでもそういう失敗あるんですね」

バルクホルン「うぅ……」

シャーリー「僚機に迷惑をかけないためにも、事前に済ませておくのは肝要なんだな。うんうん」

バルクホルン「そういうことだ。宮藤、勉強になったか?」

芳佳「はい!なりました!!」

バルクホルン「……うぅ……ぅ」

エイラ「大尉、大丈夫か?」

バルクホルン「今は、一人にしてくれ……。すぐに気持ちを整理する……」

エイラ「お、おう」

芳佳「ハルトマンさんは空で我慢できなくなったことはないんですか?」

エーリカ「私はないよ。トゥルーデがいい反面教師になってくれたしねぇ」

バルクホルン「……それはよかった……私の犠牲も無駄ではなかったか……ふふ……」

ペリーヌ「大尉!!お気を確かに!!」

シャーリー「んじゃ、ルッキーニにもきちんと言っておかないとな」

エーリカ「それがいいね」

芳佳「じゃあ、サーニャちゃんはどうなんだろう?」

エイラ「おい、宮藤。サーニャはしないって結論でただろ?」

芳佳「でも、あのバルクホルンさんでも失敗したことがあるんですよ?サーニャちゃんだって1度ぐらいは……」

エイラ「それはあるかもしれないけど……。別にどうでもいいだろ、そんなこと」

芳佳「そ、そうですね」

バルクホルン「……ああ、そういえば先輩のナイトウィッチから哨戒中の処理については聞いたことがあるな」

エーリカ「おー。あったね」

芳佳「どうしてるんですか?」

エーリカ「その人は高いところから用を足すって言ってた」

シャーリー「はぁ?なんで?」

バルクホルン「高いところからするのが気持ちが良いと言っていたな。私には理解できなかったが」

ペリーヌ「そ、そんなの理解できるほうがおかしいですわ!!」

エーリカ「ナイトウィッチならみんなしてるって言ってたよね。ホントかどうかは知らないけど」

シャーリー「サーニャが高いところから……」

エイラ「やめろー!!想像すんなぁー!!!」

芳佳「あはは。いや、想像できないよ」

シャーリー「ああ、そうだな。サーニャがそんなことをしているとは思えないし」

エイラ「あ、あたりまえだろ!!まったくぅ!!」

バルクホルン「そもそもそんな事態にならないように、出発前には整えておく!!これは絶対だ!!!」

芳佳「はいっ!!」

エーリカ「……あぁ」

バルクホルン「どうした?」

エーリカ「ううん。なんでもない」

バルクホルン「……?」

シャーリー「でも、実際気持ちよさそうではあるよなぁ」

ペリーヌ「下品ですわ!!」

シャーリー「いや、しようとも思わないって」

芳佳「そうですよね。かなり勇気がいりますし……」

数日後 朝 ミーティングルーム

リーネ「報告します。ネウロイの反応はありませんでしたが、私とルッキーニ少尉が雨を確認しました。その際、周囲に雨雲はありませんでした」

美緒「……ついにリーネも確認したのか」

ミーナ「無視していいことではないわね……」

美緒「今日からはハルトマンとペリーヌか」

ミーナ「私から伝えておくわ」

美緒「頼む。リーネ、ほかに気になることはなかったか?」

リーネ「い、いえ……とくに……」

美緒「……何を隠している?」

リーネ「……」

美緒「答えろ」

リーネ「その……ルッキーニちゃんが空で用を……」

美緒「またか」

リーネ「空でするのが気持ちいいって……」

美緒「わかった。注意しておこう。リーネは少し休め。疲れただろう」

滑走路

ルッキーニ「うえぇぇぇーん!!!なんでぇぇー!!!」

シャーリー「当たり前だろ」

芳佳「あれ?ルッキーニちゃん、バケツ持ってどうしたの?もしかして罰?」

シャーリー「もしかしなくても罰だよ」

ルッキーニ「たしゅけてぇ、よしかぁぁ」

芳佳「な、なにしたの?」

シャーリー「リーネが報告しなかったから分からなかったみたいだけど、何度も夜間哨戒中に用を足してたんだって」

芳佳「えぇぇ!?だ、ダメだよ、ルッキーニちゃん!!」

ルッキーニ「だって……だって……」

シャーリー「快感になったんだってさ。癖になったらどうするんだよ」

ルッキーニ「ごめん……」

芳佳「そんなに気持ちよかったの?」

ルッキーニ「そうだよ?芳佳もやってみたらわかるって」

シャーリー「こら。ルッキーニ。流石に怒るぞ?」

食堂

リーネ「あ、芳佳ちゃんも聞いたんだ」

芳佳「うん。ホントにルッキーニちゃんは……」

リーネ「う、うん……してた……」

芳佳「気持ちいいの?」

リーネ「そ、そんなのわからないよ!!」

芳佳「ご、ごめん!!」

リーネ「でも、確かにルッキーニちゃんはとっても気持ちよさそうではあったけど」

芳佳「そうなんだ……」

リーネ「よ、芳佳ちゃん!?」

芳佳「な、なに!?」

リーネ「ダメだよ?しちゃ、ダメだよ!?」

芳佳「し、しないよ!!」

リーネ「約束だよ?!」

芳佳「うん!!約束する!!」

夜 空中

ペリーヌ「平和ですわね……。こうして夜空を眺めている限りは……」

エーリカ「そーだねー」

サーニャ「んっ……」ブルッ

エーリカ「サーニャ、どうかした?」

サーニャ「少し待っていてください」ブゥゥゥン

ペリーヌ「サーニャさん?もしかしてネウロイが……?」

エーリカ「雨が降るかな……」

ペリーヌ「え?」

エーリカ「……来た」

ペリーヌ「ほ、本当ですわ。今、ポツリと……」

エーリカ「ペリーヌはここで待機」ブゥゥゥン!!!

ペリーヌ「え!?こんな夜の空でですか!?」

エーリカ「ちょっと確認してくるだけだから!!」

ペリーヌ「そ、そんなぁ……ただでさえ夜間飛行は不安ですのに……」オロオロ

サーニャ「……ふぅ」

サーニャ「戻ろう……」

エーリカ「――ネウロイはいた?」

サーニャ「え!?」

エーリカ「何を驚いてるんだよ?」

サーニャ「い、いえ……」

エーリカ「サーニャ、あの――」

サーニャ「――ネウロイの反応を確認」

エーリカ「どこ?」

サーニャ「向こうです」

エーリカ「もっと分かりやすく」

サーニャ「すいません。南西、距離は2000。こちらに接近中」

エーリカ「ペリーヌ。ネウロイだってさぁー」

ペリーヌ『えぇ!?ど、どこからですの!?』

エーリカ「落ち着いて。とにかく合流しよう。まだ接触までは時間があるからね」

翌朝 ミーティングルーム

エーリカ「ふわぁぁ……」

ミーナ「眠そうね、ハルトマン中尉」

エーリカ「うん……つかれたよぉ」

ペリーヌ「昨夜、哨戒中にネウロイと交戦し、撃墜しました」

美緒「ああ。それは無線でハルトマンからも報告を受けた。ご苦労だったな」

サーニャ「いえ……」

ミーナ「それでほかにはなにかあった?」

ペリーヌ「雨が降りましたわ」

美緒「雨か……やはりネウロイと関係があったのか……?」

サーニャ「……」

エーリカ「多分ね」

ミーナ「そう……。でも、少量の水滴では見逃してしまう可能性のほうが高いわね」

美緒「そうだな。ネウロイ出現の前兆だとしても捉えるのは難しいな」

エーリカ「私も数滴頬に当たっただけだし、アテにはしないほうがいいとおもうなぁ。それにネウロイは倒しちゃったし、もう次からは水滴が落ちてくることもないんじゃない?」

ミーナ「そうねえ……」

美緒「ふむ。ハルトマンの意見も尤もだな」

ミーナ「夜間に出現する頻度も大幅に落ちてきているとの報告もあるし、もう少し様子を見てから通常のシフトに戻しましょうか」

美緒「それがいいな。いつまでも夜間哨戒に人員を割いているわけにはいかないからな」

ミーナ「それじゃ、3人はゆっくり休んで」

ペリーヌ「はい。失礼いたしました」

エーリカ「はやくねよーっと」

サーニャ「おやすみなさい」

美緒「ああ」

ミーナ「……雨の正体は分からないままね」

美緒「そうだな。気にはなるがこれ以上調査しても無駄かもしれんな」

ミーナ「サーニャさんに雨を注意してもらうことになるわね」

美緒「うむ。仕方ないか」

ミーナ「サーニャさんには1度、まとまったお休みをあげないとね」

美緒「その辺りはミーナが調整してくれ。私はそういうのは苦手だからな」

食堂

美緒「来週が夜間特化シフトの最終週となる。来週はエイラ、宮藤についてもらう。最後まで気を緩めるなよ」

芳佳「はいっ!」

エイラ「了解」

シャーリー「なんだ、意外と早かったなぁ」

バルクホルン「結局、ネウロイは一体しか現れなかったんだ。当然だろう」

ルッキーニ「えぇー。つまんなーい」

リーネ「どうして?最初は嫌がってたのに……」

ルッキーニ「だってぇ、夜間哨戒中はぁ――」

シャーリー「ルッキーニっ」

ルッキーニ「あ、あははは。ウソウソ。冗談だよぉ」

シャーリー「全く」

芳佳「あはは……。癖になったら大変ですもんね」

シャーリー「トイレでしなくなったら終わりだからな」

エイラ「なんの話してんだ……」

サーニャの部屋

ペリーヌ「すぅ……すぅ……」

サーニャ「……あの」

エーリカ「んー?」

サーニャ「……見てましたよね?」

エーリカ「なにをー?」

サーニャ「私が……その高高度から……」

エーリカ「昔、あるナイトウィッチも同じことしてたんだ」

サーニャ「……」

エーリカ「その人は割りとオープンに話してくれたよ。夜間哨戒につくナイトウィッチの特権だーなんて」

エーリカ「夜空を仰ぎながらズボンを下げて、一気に出す。それが快感になって、やめられなくなったって言ってた」

サーニャ「あぁ……あの……」

エーリカ「サーニャもそんな感じ?」

サーニャ「……は、はい。最初は……その……本当に我慢ができなくなって……してしまって……。それから少しずつ……気持ちよくなって……」

エーリカ「エスカレートして高高度からするようになったと。うんうん。まぁ、気持ちいいだろうねぇ。あんな上からするんなら」

サーニャ「……」

エーリカ「別にいいんじゃない?」

サーニャ「え?」

エーリカ「私はただ雨の正体を調べたかっただけだし。サーニャのやってることには興味ないもん」

サーニャ「……あの」

エーリカ「なに?」

サーニャ「これはいけないことだって、思ってたんですけど……問題はないんですか……?」

エーリカ「あるわけないじゃん」

サーニャ「え……」

エーリカ「私も満足するまで寝るときあるしねー。最高に気持ちいいから、二度寝三度寝とかさ。まぁ、いつもトゥルーデに起こされちゃうんだけど」

サーニャ「そうなんですか……」

エーリカ「ナイトウィッチならみんなしてるって話もあるし、サーニャだけが特別ってわけじゃないんじゃない?」

サーニャ「……よかった」

エーリカ「でも、みんながしたくなるってよっぽど気持ちいいんだろうなぁ」

サーニャ「はい。とっても。もう普通のトイレではできないほどに」

夜 空中

ペリーヌ「連夜ネウロイが出現ってことにはならないですわよね……?」

エーリカ「それはないでしょー」

サーニャ「んっ……」ブルッ

エーリカ「いってらっしゃい」

サーニャ「はいっ」ブゥゥゥン!!!

ペリーヌ「ま、また……!!」

エーリカ「大丈夫だって。それより、ちょっと先に行こうか」

ペリーヌ「え?サーニャさんを待ったほうが……」

エーリカ「まぁまぁ」グイッ

ペリーヌ「あぁ、ちょっと!!中尉、引っ張らないでください!!」

エーリカ「夜空はいいねー」

ペリーヌ「それは否定しませんが……」

サーニャ「――お待たせしました」

エーリカ「おかえりー。それじゃ、いこっか」

数日後 食堂

バルクホルン「結局、ハルトマンとペリーヌもネウロイ撃破後は一度も雨に遭遇していないのか」

ペリーヌ「ええ。やはりあのネウロイが撒き散らしていたなにかだったかと」

シャーリー「何かってなんだよ。気持ち悪いなぁ」

エーリカ「そーだねー。気味が悪いよー」

ルッキーニ「ネウロイの唾だったのかなぁ?」

リーネ「それもやだなぁ……」

バルクホルン「何はともあれ、あとは宮藤とエイラが1週間、何事もなく夜間哨戒任務を終えればはっきりすることだ」

シャーリー「今のところ体に異常もないし……気にするだけ無駄かな」

バルクホルン「私たちはあの飛沫を浴びてから二週間近く経過している。何か症状がでるとするなら、とっくに出ているだろうな」

リーネ「なら、害はないと考えてもいいんですよね」

シャーリー「安心はできないけどな。一年後、急に胸が苦しくなって……」

リーネ「ひっ……」

シャーリー「あははは。冗談だよ。不安なら定期的に健康診断をやっていればいいし、いざってときは宮藤に治してもらえばいい」

リーネ「そ、そうですね。はぁ……びっくりしたぁ」

サーニャの部屋

芳佳「サーニャちゃん、残り1週間だけどよろしく!」

サーニャ「うん」

エイラ「おい。もう寝るぞ」

芳佳「はぁい。あ、サーニャちゃん、一つ聞きたいことがあるんだけど」

サーニャ「なに?」

芳佳「……サーニャちゃんもやっぱり、夜間哨戒中に……オシッ――」

エイラ「やめろぉこらぁ!!」

芳佳「あぁ!!でも、やっぱり興味が!!」

エイラ「私もあるけど聞いていいことじゃ――」

サーニャ「……うん。実はあるよ」

芳佳「え?」

エイラ「な……?」

サーニャ「何度も……高いところから……してるわ。とても、気持ちがいいの」

エイラ「あ……え……?サー……ニャ……?」

芳佳「そうなの!?」

サーニャ「うん。もうやめられないくらい、病み付きになってて」

エイラ「サーニャ、嘘だよなぁ!?」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「私のサーニャがそんなことしてるわけ……!!」

サーニャ「ずっと悪いことだと思って、エイラにも黙っていたけど……でも、私はいつもしてるわ」

エイラ「サーニャ……」

サーニャ「夜間哨戒まで我慢することだってあるの。私は……そういう女の子だから……ごめんね」

エイラ「……」

芳佳「エイラさん、大丈夫ですか?」

サーニャ「ごめんね。エイラ」

エイラ「……いや。いいんだ」

芳佳「あ、あの。だって、サーニャさんはずっと寝ているわけですし、用を足す時間は夜間哨戒中ぐらいしか……」

エイラ「おやすみ……」

サーニャ「エイラ……」

夜 格納庫

芳佳「エイラさん、行きましょう」

エイラ「う、うん……」

サーニャ「……」

美緒「どうした。もう時間だぞ」

芳佳「い、今から行きます!!」

サーニャ「嫌なら……」

エイラ「嫌じゃない」

サーニャ「エイラ……」

エイラ「行く」

芳佳「エイラさん、よかった」

美緒「何かあったのか?」

芳佳「大丈夫です!!夜間哨戒に行って来ます!!!」ブゥゥゥン!!!

エイラ「……」ブゥゥン

サーニャ「行って来ます」ブゥゥゥン

空中

芳佳「わー。今日も星が綺麗ですねー」

サーニャ「うん」

エイラ「……そうだな」

芳佳「……」

サーニャ「あ……」ブルッ

芳佳「どうしたの、サーニャちゃん?」

サーニャ「……行ってくるね」

芳佳「そ、そうですか……」

エイラ「……ここで待ってる」

サーニャ「うん」ブゥゥン

芳佳「あの……」

エイラ「……」

芳佳「エ、エイラさん!!」

エイラ「な、なんだよ?」

サーニャ「……今日はもう少し高いところに」ブゥゥン

芳佳「サーニャちゃーん!!!」

サーニャ「え……」

エイラ「やめろぉ!!宮藤!!私はぁ!!!」

芳佳「行きましょう!!エイラさん!!!」グイグイ

エイラ「いや、私は行きたくないんだって!!!」

芳佳「嫌なところを見ちゃっただけで、サーニャちゃんを嫌いになっちゃだめです!!」

エイラ「宮藤……」

芳佳「このままじゃエイラさんとサーニャちゃんは目すらあわせなくなる。私はそう思うんです」

エイラ「……」

芳佳「サーニャちゃんだって、きっと勇気をだしたと思います。それはエイラさんに自分を知って欲しかったからじゃないですか?」

エイラ「そうなのか……」

芳佳「だから行きましょう。嫌いになる前に、もう一度だけ話しましょう!!」

エイラ「……サーニャ」

サーニャ「エイラ……」

芳佳「ほら……」

エイラ「あ……えと……」

サーニャ「……」

芳佳「私は下で待ってますから!!」ブゥゥン!!!

エイラ「宮藤!!おい!!!」

サーニャ「芳佳ちゃん……ありがとう……」

エイラ「サーニャ……あのさ……」

サーニャ「なに?」

エイラ「別にサーニャがそういうことしてたのはいいんだ。ただ、秘密にされていたことがあることが、つまらなかっただけで……だから……その……」

サーニャ「言えば、エイラに嫌われると思って……」

エイラ「そんなことで嫌いになるか!」

サーニャ「エイラ……ありがとう……。あ……もう……」ブルッ

エイラ「サーニャ……私もいいか……?」

サーニャ「え?」

エイラ「サーニャを虜にしたんなら、私も試してみたい……なって……」

芳佳(サーニャちゃんとエイラさん……大丈夫かな……)

『ら~らら~ら~♪』

芳佳「あ……歌が……」

『未来まで 続いてる レールの先 かすんでく 誘導灯 遮って 迷わすプリズム~♪』

『頼りないアンテナじゃ 出口も見つけられない 静寂に 暗闇に 飲み込まれそうなの~♪』

芳佳「二人が歌ってるんだ……。あはは……」

『震える~指を~♪ そっと絡めて~♪ 不安と勇気 お互いに~伝え合いたいよ~♪』

芳佳「やったぁ……よかったぁ……。わっ。なにか降ってきた」

『あなたの歌に わたしの ハーモニー重ねて~♪ 夜にはぐれないように~導いてっ♪』

『何千マイルの旅も 平気 ふたりなら~♪ どこまでも~響かせて~♪

芳佳「雨だ……」

『Sweet Duet~♪』

芳佳「二人とも幸せそう……」

芳佳「よかったですね、エイラさん」

芳佳「よかったね、サーニャちゃん」

エイラ「ふぅ……」

サーニャ「どうだった?」

エイラ「なんか、やめられないの分かるな」

サーニャ「でしょ?」

エイラ「えへへ……」

サーニャ「うふふ……」

『――ら……です……おう……』

サーニャ「あ、ちょっとまって」

エイラ「どうした?」

サーニャ「はい。こちら、サーニャ・V・リトヴャク」

『こちら、ハイデマリー・W・シュナウファーです』

サーニャ「どうも」

『あの……今、何を?歌が聞こえてきたのですが』

サーニャ「用を足していました」

『あ、そうですか』

翌朝 ミーティングルーム

ミーナ「先ほど、カールスラントのハイデマリー大尉から報告を受けました。大音量で歌が流れてきたので、何事かと思いサーニャさんに交信してみると……」

美緒「放尿していた、と返されたらしい。で、それが信じられないので調べて欲しいといわれた。……事実なのか?」

芳佳「あ、あの!! 何かの間違いです!!」

サーニャ「いいの。芳佳ちゃん」

芳佳「で、でも」

サーニャ「はい。事実です」

エイラ「夜空に向かって用を足した」

美緒「どんな体勢で……」

ミーナ「……ルッキーニ少尉にも注意したばかりだというのに」

美緒「……雨の正体もこれでわかったな」

ミーナ「そうね……」

芳佳「坂本さん。別に悪いことではないと思います!!だって生理現象ですし!!」

美緒「そういうわけにもいかん。ルッキーニに示しもつかないだろ」

ミーナ「そうね。きちんと罰を受けてもらいましょうか」

食堂

シャーリー「聞いたか?バルクホルン」

バルクホルン「サーニャとエイラのことか。未だに信じられないが、事実らしいな」

エーリカ「あーあ……」

バルクホルン「ハルトマン。何か知っていたのか?」

エーリカ「べっつに」

ペリーヌ「全くもう。一体、何を考えているのかしら!!」

ルッキーニ「でもでも。きもちいいんだもん。あれは仕方ないってぇ」

ペリーヌ「だからってしていいわけではありませんでしょ!?」

エーリカ「作戦に支障がないならいいじゃん」

バルクホルン「ナイトウィッチはやはり全員なのか……」

ルッキーニ「あたしもナイトウィッチに転身しようかにゃー」

シャーリー「絶対にダメだ」

ルッキーニ「えぇー!?」

シャーリー「ダメだったらダメだ。今、気持ち良いことに溺れるとろくな大人にならないぞ。そいうことは自制できるようになってからだ。いいな?」

滑走路

エイラ「大丈夫か、サーニャ?」

サーニャ「うん。平気だよ。エイラと一緒だから」

リーネ「芳佳ちゃん、本当なの?二人がその……」

芳佳「うん。だから、バケツ持って立たされてるの」

リーネ「……」

芳佳「でもね、とっても幸せそうだったんだよ!?」

リーネ「芳佳ちゃんはしてないよね?」

芳佳「まだしてない」

リーネ「絶対にダメだよ!?」

芳佳「うんうん!!しないよ!!絶対!!」

リーネ「するときは一緒だからね!?」

芳佳「え!?」

エイラ・サーニャ「「ら~らら~ら~♪ ふふっ」」


おしまい。

>>147
詳しく

>>152
多分これ

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