モバP「あの子バドミントン」 (29)


白坂小梅「…」

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小梅「…」コソコソ

小梅「……」


ガチャ


小梅「」ビクッ

小梅「あ…えと…えと……」

小梅(と、…とりあえず、ソファの後ろ側に…)コソコソ



P「?」

P「あれ…人の気配がすると思ったんだが…気のせいか」

小梅(…)ホッ…

P「…ま、気にしても仕方ないな。仕事しよう」ウン

小梅「……」


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喜多見柚「あれー?」

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P「?」

柚「Pサン、ここに置いてたアタシのラケット知らない?」

P「ラケット? ああ、バドミントンのか」

柚「そうそう。むー…あれー…さっき置いたハズなんだけどなぁ…」

P「どこかへ忘れて来たんじゃないのか?」

柚「そう言われると…ちゃんと持って帰って来た自信ないカモ…」

P「おっちょこちょいだな」

柚「そう? てへ。照れちゃうなー」

P「べつに褒めてないからな」


柚「えへへっ。それともひょっとして、アタシとバドミントンがしたくてPサンが勝手に持ち出したとか!」

P「違います」

柚「照れなくてもいいのにー♪」ペチペチ

P「照れてないです」

柚「でもそれなら、アタシも一緒に持ち出さなきゃだよっ! なーんて…てへへ♪」ペーチペチペチ

P「話を聞いてください」

安斎都「はい! 話は聞かせてもらいました!」バーン

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P「うおう」

柚「おおう」


都「事件あるところに探偵あり! 探偵アイドル安斎都、ただいま参上です!」

P「それは探偵登場の口上として正しいのか?」

柚「駄洒落カナ?」

P「違います」

都「気持ちが大事なんですよ!」

P「探偵としてそれは正しいのか?」

柚「うんうんなんだか分かるカモ!」

P(分かるのか)


都「ところで柚さん。なにか失くし物をされたとか」

柚「そうなんだー。ここにラケットを置いてたはずなんだけどね」

都「消えたラケット! これは事件ですね!」

P「どこかへ忘れて来たことを消えたとは言わないけどな」

柚「うー。でもちゃんと持って帰って来たハズなんだケドなー…」

都「ふむ」


都「持って帰って――ということは、つまり一度どこかへ持ち出したと」

柚「へ?」

P「ほう」

柚「う、うん。今朝は一度公園に行ったから……そうだよ」コク

都「なるほどです。だとすると――」

都「プロデューサーさんの言う通り、どこかへ忘れて来てしまったのだとすれば、まずはその公園へ行ってみるべきでしょう」

P「おー、ちょっと探偵ぽい…。冷静に聞けば当たり前のことしか言っていないけど」

都「聴衆に説得力ある推理を披露する力もまた、名探偵の条件ですよ♪」

柚「おおー」パチパチ

都「ふっ…真実はすでに都のもの! 早速公園に向かうとしましょう!」

柚「はーい」

都「はい!」

P「気をつけて」

柚「えっ」

都「え?」

P「え?」


柚「Pサンも一緒に行くよ?」

P「なぜ断定する」

都「おやおや~探偵の私が足を使い、助手のプロデューサーさんが安楽椅子に座して待つとはこれ一体」

P「ただのオフィスチェアだぞ、これ」

柚「ねーねー一緒に行こうよー」グイグイ

都「助手は探偵の側に常に控えているものです!」グイグイ

P(…仕事…)グイグイ


ガチャ


新田美波「おはようございます。…?」

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美波「ふふっ。なんだか盛り上がっていますね」

P「おう。おはよう」グイグイ

柚「行こうよー」

都「行きましょうよー」

美波「なんのお話ですか?」パタパタ

P「…」

美波「?」パタパタ

美波「あっ…ごめんなさい。歩いて来たばかりなので…暑くて、つい…//」

P「あ、いや、こ、こちらこそ。ごめんなさい」

美波「い、いえいえ。全然気にしてないですから…そんなに畏まらないで…」

柚「むっつりだ!」

P「うるさいやい」

美波「……はぁっ…暑いなっ…」パタパタ…

P「…………」

都「身近な人物が真犯人だというのも推理物の定番ですが」

P「なにもしねえよ」

柚「変態だ!」

P「うるさい」ペチ

柚「ふぎゃ」


都「実は柚さんのラケットが何者かに持ち去られてしまったのです」

P(それが本当ならたしかに事件なんだが…)ハハ…

美波「ええ? そ、それは大変ね…。…ちなみに、ラケットというと…」

柚「バドミントンのラケットだよ」

美波「そっか。ふふ、ラクロスのラケットなら私持って来たんだけど」ニュ

都「おおっな、長いですね」

柚「当たり前だけど、バドミントンのとは全然違うねー」ビョンビョン

美波「うん。ラクロスも楽しいよ」

柚「へー」ブンブン

P「振り回すなよ」

柚「ねえ美波サン。これから公園に行ってみるんだけど、ついでにアタシにラクロス教えて! …って、だめかなー?」

美波「へ? …ふふ」

美波「ううん、いいよ。お仕事もあるから…ちょっとだけね」クス

柚「わーいっアリガトっ! へへっ」ニパッ

美波「ふふ」ニコニコ

都「……おや。まるで事件が解決したかのような、円満な雰囲気になってしまいました…」

P「柚はポジティブだからな」


都「しかし! 人知れず闇に葬られようとしている真実を救い出すのもまた探偵の務めです!」

P「頑張れ」

都「はい! 私、足で稼ぎますよっ」ホッ

P(地味だ)

美波「? えっと、じゃあ…私も足で稼いで手伝うね」

P(ちょっと意味が変わった気がが)

美波「…? ふふっ」

美波「ね…プロデューサーさん」ニコ

P(なぜこのタイミングで俺に微笑みかける)

柚「やっぱりむっつ――」

P「違う」ガシ

柚「もが」

都「さすがの私でも脳内で起きた事件は手に負えません…」

P「脳内で起きる事件ってなんだ、おい」

美波「??」


P「ほ、ほら。公園行くんだろ? 行くなら早く行こう。美波の言う通り仕事もあるし」

都「おや。先ほどまでとは言っていることが違うような…。いかなる心境の変化か、気になりますね」

P「気にしなくていいから」

柚「もがもがもー」

P「よし」

都「また一つ真実が闇に葬られた音がしました」

P「気のせいだから」

美波「プロデューサーさんも、一緒にラクロスしませんか?」

P「うん。たまには運動もいいかもな」

美波「はいっ。運動、いいですよねっ」

P「…おう」

都「…? プロデューサーさん、お腹の調子でも悪いんですか」

P「そ、そうそう。そうだから。早く行こう」

美波「行きましょう」

都「そうですね」

柚「もががー」



小梅「…………」コソコソ









P「そう言えば」

柚「ン?」

P「柚は今朝、一人で公園に行ったのか?」

柚「ち、違うよ?」

P「…そうだよな」

柚「もう。アタシにだって、一緒に公園に行く友達くらいいるよっ」

P「悪い悪い」

都「どうかしましたか?」

P「…いや」

P「連れがいたのなら、そいつにも話を聞いた方がいいと思って」

都「…! それはっ…」

都「さすが我が助手です! なんという推理力!」グッ

P「いやもっと早く気づけよ。…人のこと言えないけど…」

柚「おおー」パチパチ

美波「おー」パチパチ

P「そこー当事者はお前だぞー」

柚「てへ」

美波「て、てへ?」

P「美波はしなくていいから。というか真似しちゃだめだから」

美波「へ…?」アーン…

P(それもうテヘペロじゃなくなってるから!)


P「そ、それで」

柚「…Pサン、なんだか前かがみでぷるぷるしてるけど…大丈夫?」

P「そこは触れないでください」

柚「う、うん。分かった」

P「ありがとう」

P「それで、柚は一体だれと公園に行ったんだ?」

柚「あの子とだよ」

P「…」

都「あの子?」

美波「…って、えっと、もしかして」

柚「うん。へへー、最近、あの子と朝バドミントンするのが日課なんだっ♪」

P「…」

P(だれかと一緒に行ったと言っていいのか、これ)ボソ

都(か、限りなく黒に近い灰色ですね)ボソボソ


美波「上手なの?」

柚「うんっ。ひょっとしなくても、アタシより上手かも!」

美波「そうなんだ」ニコ

P「…」

都「…」

P「まあ…楽しそうだし、いいんだが」

都「そうですね」

P「…しかしあの子に話を聞くわけにもいかないからな」

都「というか無理でしょう」

P「そもそもあの子がラケットを持っている可能性もまずないしな」

都「それこそ大事件です」

P「ラケットは宙に浮くのかな?」

都「…幽霊用のラケットがあったりするんじゃないです?」


P「いや待てよ。あの子とってことは、小梅も一緒だったんじゃないか?」

都「! おお! これは事件解決の鍵となる閃きの予感です!」

P「…。さっきから推理しているのは俺ばかりだな」

都「…。探偵の推理は探偵のもの、助手の推理は探偵の推理の肥やしです」

P「完全に迷探偵の発言だぞ、それ」

柚「小梅チャンは一緒じゃなかったよ」

P「あれ」

都「使えない助手ですね」チッ

P「聞こえてるぞ」ゴリゴリ

都「あ、あの…虫眼鏡は、決してこめかみを責める道具などではなくてですね…」イタイデス…


柚「小梅チャン、なんだか元気なかったから」

P「? 会ったことは会ったのか」

柚「うん。誘ったんだけどねー。断られちゃった」

P「そうなのか」

美波「…小梅ちゃん、日差しも、暑いのも、苦手ですもんね」

P「…うん…」

P「…」フム

都「?」


美波「私は…汗をかくのも好きなんだけどな。気持ちいいよね」

柚「うんうん。運動はいいよねー」ニパー

P「…」

P「…ちょっと、先に公園に行っててくれ」

柚「へ?」

都「なにか急用でも?」

P「ちょっとトイレ」

都「…ふむ」ジト

P「は、腹が痛いだけだからな」ガシ

柚「もがっ」

柚「ま、もがもがもが!」(訳:ま、まだなにも言ってないよぅ!)

P「大体予想はつくから」

美波(…会話が成立してる…)スゴイ

P「じゃ、またあとで」

都「はい。プロデューサーさん…、いえ、助手。またあとで」

P「…。おう」

柚「早く済ませて来てね!」

P「おう。…トイレをな」タタッ

美波「??」








タタッ…


P「…」

P(たしかに小梅は暑いのが苦手だ。日光も)

P(でもきっと、柚があの子と一緒にバドミントンしようって誘ったなら断るはずがない、…と思う)

P(それと消えたラケットだ)

P「……、…都に毒されたかな。これじゃ本当に探偵の真似ごとだ」ハハ



P「…」

P(俺の推理が間違っていなければ――)



――ガチャ


小梅「」ビクッ

P「…や、小梅。おはよう」

小梅「……っ」

小梅「…は、はい。…プロデューサーさん……お、…おはよう、ございます……」

P「うん」

小梅「…」ギュ

P「…」


P「あのさ」

小梅「…は、はい…」

P「実は柚に、一緒にバドミントンしようって、誘われたんだけど」

小梅「……、は、はい」

P「…」

P「俺…しばらく運動なんてしてなくてさ。へったくそなんだよ。ラリーなんてとてもとても」

小梅「…」

P「……。だから、一緒に柚に教えてもらわないか?」

小梅「…え…?」


P「どうだ?」

小梅「…」

小梅「……」ギュ

小梅「…えへへ…。ぷ、プロデューサーさんが、そう言うなら…し、仕方ない……です」

P「そっか。ありがとう」

小梅「い、いえ…」フルフル

P「…」

P(まあ…隠れて練習していた分、小梅はもう俺より上手かもしれないけど)


P「よし。じゃあ行くか。みんな待ってるぞ」

小梅「は、はい」

P「そうだ。外暑いし、帽子、被ってくか」

小梅「あ、…」フルフル

小梅「これが……あるので、大丈夫…です」パサ

P「?」

小梅「…えへ。ゆ、…柚さんに、もらった……パーカー…です」

P「…そっか。二人は仲良しだな」

小梅「はい」

小梅「…あ、でも……」

P「ん?」

小梅「二人じゃなくて…三人、です…」ニコ

P「…」ゾクッ

P「そ、そうだったな」

小梅「は、はい…♪」ニコニコ

P「…」ハハ…

P(…まあ、涼しくなって、いいか。うん。そういうことにしておこう)








柚「はー!」ブンッ

美波「ナイスパスー」パシ

美波「都ちゃん、えいっ」ヒュ

都「わ、とと…」ガシッ

都「むー。なかなか難しいですね…」コロコロ…

柚「ホントだねー。でも楽しいかもっ」

美波「ね?」



P「盛り上がってるな」

小梅「……で、ですね」

小梅「…」

P「小梅?」

小梅「…」

小梅「い、行って、来ます…」タタッ…

P(お、自分から…)


柚「?」

柚「あっ小梅チャン! おはよう! って今日はもう一回会ってたね! てへへ」

小梅「は、はい」

小梅「……あっ…あの、柚さん」

柚「なに?」

小梅「…あの、これ……」

柚「アタシのラケットだね。小梅チャンが見つけてくれたの!? ありがとっ」ニパー

小梅「…あ…じ、じゃなくて、その」ゴニョ

柚「ふふっ。えい」ポン

小梅「…わ…」ガシガシ

柚「ね。せっかくお外に来たんだし…一緒にバドミントン、しよっか」

小梅「……」

小梅「は、はい…。お、お願いします……」ペコ

柚「えへへ、こちらこそ! あっもちろんあの子も一緒にねっ」

小梅「は、はい」



P「…」

都「…これは」

都「ひょっとしてひょっとしなくても、今回の事件、初めから名探偵の出る幕はなかった――というわけですか」

P「かもな」

都「なーんだ。つまんないなー」ムスッ

都「…。まあ…いろいろと丸く収まったようですから、よしとしましょう」

P「そうだな」

都「はい」


柚「じゃーダブルスしよっか! 美波サンはあの子とペアでっ」

美波「え、え? う、うん、分からないけど、分かったよ?」

柚「小梅チャン、頑張ろっ」

小梅「はい」コク

P「おーい。その前にちょっとは休憩しろよ。水分補給と、汗もちゃんと拭いてな。ほら」パサ

美波「あ…ん、…プロデューサーさん…ありがとうございます」ニコ

P「…」

P「お、おう」

都「一見事件が解決したように見えるが! …というフリもありがちですよね」

P「だからなにもしないって」

都「どうだか」

美波「??」



柚「へへっ。天気がよくて、みんなで外で遊べて、楽しいねっ」

小梅「……は、はい。楽しい、です」ニコ



・・・・おしまい

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