ほむら「あなたにConnect」 (135)
「部活とかやってた? 運動系? 文化系?」
ほむら「やってなかったわ」
ほむら(面倒だわ。この時間は本当に無駄でしかないわね。)
「髪きれいだね。シャンプーは何使ってるの?」
ほむら「別に。市販の物よ」
ほむら(あああああああああああああああああああああ)
ほむら(みょー!みょ!にょーーーーーっ!)
暁美ほむらは頭の中で遊んでいた。
そつなく自己紹介を終えた、転校初日の休み時間のことである。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1378728757
ほむら「少し気分が悪いわ。保健室に行かせてくれるかしら」
「それじゃ私が・・・」
ほむら「結構よ。係りの人にお願いするから」
ほむら「聞いてたわね。鹿目まどかさん。連れてってくれる? 保健室」
ほむら(まどかだ。生きてるるるるぅぅぅぅぅぅぅうううう!)
まどか「えっ、はい」
ほむら(にょみゅとっぴー。とくゅあゅへえぃれー!)
ほむら(何度目の案内なのかしら。)
ほむら「・・・」チラッ
まどか「・・・っ」
まどか(わたしから話しかけた方が良いのかな。)
まどか(目が怖いよ・・・。)
ほむら(どうして怯えてるのかしら。)
ほむら(美樹さやかとの接触は八時間後にしましょう。今回はルートLかルートRで・・・。)
まどか「あ、暁美さん? ついたよ」
ほむら「えっ」
まどか「保健室だよ。じゃあね!」ダッ
ほむら(明らかに避けられてる。)
ほむらは保健室で妄想を続けた。
一ヶ月もしないうちに、結局自分は居なくなってしまうのだから。
ほむら「忠告し忘れたけどまあいっか」
ほむら(初めてのパターン。ルートR´にしましょう。)
数日経った。
「暁美・・・さん。お昼食べません?」
「・・・」
「ユウカ、もう行こっ。アケミさんごめんね、話しかけちゃって」
統計どおり、一週間もしないうちに、腫れ物を触れるような扱いになっていた。
机に突っ伏して瞼を閉じる。硬くてひんやりとした感触が頬を支配した。
ほむら(もうすぐ巴マミが逝く頃ね。はやく放課後になるといいな)
教室では居場所がなく、寝たふりをしながら聞き耳を立てたり、
今までのループから反省点を搾り出して、時間を潰した。
数多の時間遡行には慣れていた。
――集団の中での孤独
こればっかりはやりきれない気持ちになる。
ほむら(おじいさんは山へ柴刈りに・・・おばあさんは川へ洗濯に行きました。)
ほむら(すると核爆弾が流れてきました。)
ほむら(核爆弾が出現! おばあさんの真空飛び膝蹴り!)
ほむら(核爆弾は9843474324237 箇所骨折した!)
ほむら(地球は滅亡した)
――他に浮かぶ暇つぶしといえば、妄想くらいである。
妄想は誰にも迷惑をかけないし、何度でもやりなおせる。
ほむら(おお、勇者よ! よくぞ来た! 褒美に死をやろう!)
ほむら(学校まだ終わらないの?)
たまに音楽も奏でてみる。勿論、頭の中で。
ほむら(ファ ミ ファ ソ ラ ファ ソ ラ ファ ソ ラ ドー ソ)
まどか「あ、暁美さん。良かったらお昼ごはん一緒にどうかな?」
ほむら「・・・」
ほむら(教室は騒がしいわ。孤独感が増すだけじゃない。保健室に行こう)
ほむら(めーをとじ たしかめるー♪)
まどか(暁美さん・・・。)
さやか「まどか、いい加減懲りたでしょ?」
まどか「う、うん。今日も無視されちゃった」
仁美「まどかさん。私達も屋上に行きましょうか。お昼休みが終わってしまいます」
まどか「二人とも、ごめんね」
さやか「いいよ。まどかは一度言い出したら引かないからね」
まどか「えー。そんなことないよ」
仁美「ふふ。そうでしょうか」
保健室。ほむらを受け入れてくれる唯一の居場所だった。
誰も居ないし、誰の目も届かない。
窓の外に広がる緑を眺めながら、とりとめのない空想を続けた。
ほむら(ここはよくある剣と魔法のファンタジーRPGの世界)
ほむら(そしてここはグンマーの見滝原)
ほむら(私は殺人鬼! 一日一人は殺さないと気が狂ってしまうのだ!)
ほむら(貴様もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!)
ほむら(死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!)
ほむらはやおら立ち上がった。
ベッドの軋む音に不快感を覚えながら、優雅に髪をかきあげる。
ほむら「飽きた」
既に二時間以上経過していた。
ほむら(飽きたー! 飽きたー!!)
ほむら(うぴー!)
ほむら(うぴー! うぴーーー!!)
ほむら(うぴー! うぴーーーーーー!!!!)
(うるさーーい!)
ほむら「だ、誰?」
(授業中です。ちょっと黙ってください。うぴーうぴーうるさいです。)
頭の中に声が響いた。
辺りを見渡してみるが、自分しかこの部屋に居ない。
ほむら「今のは何だろう」
ほむら「真面目に授業受けてるのは・・・まどかと巴マミだけよね?」
ほむら「まどかは優しい子だから・・・そうね。今の相手は――」
ほむらは頭の奥に意識を集中した。
ほむら(テレパシーが漏れてたのね、悪かったわ巴マミ。)
(巴さんじゃないです! あなたは誰ですか!)
ほむら(こっちのセリフよ。頭の奥で叫ばないで!)
(むっ。当てられたので後ほど。)
ほむら「テレパシー・・・? どうすれば声が消えるのかしら」
ほむら(本日は晴天なりー・・・。返事は無いわね。)
ほむら「気味が悪いわ・・・魔法少女・・・?」
ほむら「あの口調。巴マミに確認しなくてよさそうな、でも――」
ほむら『うぴーーー! うぴーーーーーー!!!!』
マミ『突然叫ばないで! びっくりするじゃない!!』
マミ『ああ・・・っ違うんです、先生違うんです・・・』
さやか『Zzz』
まどか『すぴーZzz』
ほむら「うん。テレパシーじゃなさそうね」
帰宅してから何度も頭の中に語りかけた。
ほむら(はあーい! 誰か居る?)
ほむら「・・・ちっ」
ほむら(居ないのかよ)
ほむら(あの子は誰なんだろう)
その日は何をしても声は聞こえなかった。
翌朝。
学生達はコロニーを形成してのろのろと歩いている。
ほむらは集団を避けながら、早足で学校に向かっていた。
ほむら(勿論、妄想しながらだけど。顔には出してないわよ。)
ほむら(もしもーし、応答せよCQCQ)
返事はなかった。
ほむら「はぁ・・・まさかとは思うけど」
ほむら(うぴー!)
(突然何ですか?)
通じた。聞き覚えのある声が頭の中に反響する。
ほむら(昨日の子?)
(ああ! 昨日の人ですね。わたしに何をしたんですか?)
ほむら(その様子だと、あなたも初めての経験みたいだけど)
(はい。てっきりテレパシーだと思ってたんですけど、違う種類なんでしょうか)
ほむら(そうみたいね。・・・魔法少女?)
(・・・はい。魔法少女をやっています。暁美ほむらです。あなたは?)
ほむら「ヤキが回ってきたのかしら」
ほむら(私も暁美ほむらよ・・・。ねえ、二重人格って奴よね?)
(ついに精神病ですか。今日は通院の日なのでお薬貰いましょう。)
ほむら(通院? あなたは――?)
(――はい? 勿論、そうですよ。)
ほむらの予想通りだった。
別の時間軸の暁美ほむらだ。
並行世界のほむらに違いなかった。日付を聞いた。一致していた。
赤い眼鏡をかけていて三つ編み。魔女化の事実は知っている。
確証はないが、お互いに相手を探していると、頭に繋がるようだった。
ほむら(魔女の仕業と思いたいけど、こんな経験は初めて。)
メガほむ(他の人にも繋がるんでしょうか。)
ほむら(お互いに試して見ましょう。まだ二重人格の線は消えてないわ。)
メガほむ(わかりました。)
ほむら(明日は巴マミが危ないから気をつけて。)
メガほむ(・・・はい。)
夜中。巴マミは噴水の近くに座っていた。
ほむらは、隣に腰掛けて目を閉じた。
まどかに忠告し忘れた。だから、この時間軸はとっくに諦めている。
ほんの少しだけ、最期くらい、巴マミの声を聞いておきたかった。
マミ「暁美ほむらさん。数々の妨害工作、もう言い逃れできないわよ」
ほむら「もともと言い訳する気は無いわ。この世界はもう見捨てたの」
マミ「この世界? 電波が入ってるのかしら」
ほむら「統計を確かにするための捨て回というやつね」
マミ「あなたとは仲良くやっていけそうにないわ」
ほむら「そういうと思ったわ。全部手のひらの上。統計で動いてるのよ」
マミ「あの、その、あれも統計なの?」
ほむら「は?」
マミは顔を赤らめて、もじもじと体を縮めながら上目遣いで
マミ「うぴー・・・」
マミは啼いた。
ほむら(帰ろう。)
マミ「あっ・・・ちょっと」
ほむら「ごめんなさい」
ほむら「ムリ」
マミ(は・・・恥ずかしいっっ。)
マミ「なんであんなこと言っちゃったんだろう」
マミ(うぴー・・・)
(はあーい! こんにちは。どちら様?)
マミ(え・・・え!?)
(ああ、驚かせてごめんなさいね。世の中って不思議よね。あなたもそう思わない?)
マミ「だ・・・誰」
返事はなかった。
マミ(・・・誰?)
(ふふ。その声、あなたはとても驚いている。そうでしょう?)
マミ(あ、あなたはどちら様?)
(その前によく聞いて。今日の日付と時刻を教えてくれる?)
マミは液晶端末を取り出して、質問に答えた。
(うんうん。やっぱり、私とあなたの時間にずれがあるわ。でね、少し忠告――)
マミ(――気をつけます。)
(合言葉を唱えれば、頭の中で会話できるの。誰に繋がるかわからないけどね。)
(じゃね。またお話ができることを願ってるわ。)
マミ(わかりました。)
マミ「なんだったんだろう。怖い」
マミ「でも、透き通った声・・・気持ちが落ち着くわね」
ほむら「走って帰ったのは久しぶり」
ほむら「そして巴マミと決裂。まあアレは助からないでしょう」
翌日の夕方。病院に魔女の結界。
巴マミは血まみれで発見された。
さやかは魔法少女になっていた。
ほむら「巴マミが生きてる・・・。まどかが契約していない。意外ね・・・」
ほむら「喜んで良いのか複雑な気分。もう少し様子を見ましょう」
家に帰って一息ついた後、『ほむら』のことが気になった。
ほむら(うぴー!)
メガほむ(はい・・・。暁美さんですか。)
ほむら(夜分失礼するわ、『あなた』のマミはどうだった?)
メガほむ(助けられませんでした。話すら聞いてもらえませんでした。)
ほむら(そう。仕方ないわね。でもいい経験になったでしょ。)
メガほむ(そんなこと言わないで下さい! もう怒りました!)
メガほむ(うぴーっ!)
ほむら「接続が切れた・・・。ちょっと無神経だったかな」
そうだった。二重人格の疑問はまだ残ってる。
ほむらは再び接続を試みた。
ほむら(うぴー)
(おはよう。あなたはどちら様?)
『ほむら』ではなかった。大人びた女性の声が響いた。
ほむら「おおっ、一般人にも繋がるのね。謎システム凄い」
ほむら(は、初めまして。)
(初めまして。ふふ、ちょっと緊張してるでしょ?)
ほむら(はい。まるで二重人格みたいで慣れないんです。)
(頭の中での会話は結構疲れるからね。大丈夫、二重人格じゃないわよ。)
岩清水のように、とても透き通っていて、はっきりとした声が頭の中に注がれた。
まるでアナウンサーさんか声優さんのような、耳に心地よい声色だった。
ほむら(おはよう・・・? 今は真夜中ですよ。)
(ちょっと時間がずれているみたいね。今は何月何日?)
ほむらが日付と時刻を答えると、声の主は嬉しそうに頷いた。
(十時間後・・・の私と会話してるってところかしら。ところでお名前は?)
ほむら(暁美ほむらです。十四歳。)
(へえ、燃え上がれって感じでかっこいいわね! モテるんじゃない? あははっ。)
ほむら(そんなことないですよ・・・。いつも一人ぼっちで泣いてばかり。)
ほむら(・・・ところであなたはどちら様?)
斎藤(あーごめんね。先に名乗るべきだったわ。私は斎藤――よくある名前よね。)
斎藤(あなたより三つ年上よ。ふふっ。)
ほむら(時間がずれているなんて奇妙ですね。)
斎藤(私も初めてこのシステムに気づいたときは驚いたわ。でも慣れればこんなものよ。)
ほむら(良かったら、またお話しても良いですか?)
斎藤(もっちろん。いつでも連絡頂戴!)
ほむら(それじゃ接続切りますね。)
斎藤(合言葉と私の声を思い出してねっ! きっと届くから。)
ほむら「大分慣れてきたわ。感覚で操作できそうね」
ほむら「ううん、眠くなってきた。巴マミが死んだ時間軸の私に謝ろう」
ほむら(うぴー)
返事は無かった。
斎藤って誰なんだろうね()
声優っぽい声に17歳
いい息抜きになった
また明日
私の伏線をご覧あれ、としか言えないわ
最後まで読んだらわかると思うぴーー
あー知ってる人いるもんだね
大本はそれ、少しひねったけど
乙
うぴーと唱えても誰も返事くれない……
斎藤さん10時間後とかいうレベルじゃなく全部知ってるじゃないですか
test
ほむらは病院に向かった。
血まみれのマミが戦力になりえるかどうか、ではない。
何故生き残ったのか気になった。
まどか「あ、暁美さん・・・。魔法少女だったんだね」
ほむら「キュゥべえに聞いたのね。巴マミのお見舞い?」
まどか「うん。あのね、暁美さん。どうしてマミさんを助けてくれなかったの?」
ほむら「ほむらでいいわ。そうね、捨て回だから、ってところかしら」
ほむら(一緒に居たからといって、巴マミが助かるとは限らないし)
まどか「さやかちゃんって知ってるよね。さやかちゃんがね魔法少女に・・・」
ほむら「そう。後釜はいるってことね、良かったじゃない」
まどか「ほむらちゃんもさやかちゃん達と仲良くしてくれないかなって」
ほむら(参ったわね。断る理由が見つからないわ)
ほむら「時間を頂戴。巴マミに会ってから少し考えるから」
まどか「わ、わたし一階で待ってるからね! きっと仲良くできるよね?」
ほむら「さあ、どうかしら」
まどかは顔を覆って走った。涙は隠しきれていなかった。
ほむら「小ざっぱりした部屋ね」
マミ「・・・・・・」
ほむら「魔力で何とかなりそう・・・だけど」
マミの容態は決してよいものではない。
ほむら(まどか、泣いてたわね。)
ほむらは声をかける事無く、ソウルジェムの穢れだけを取り除いて部屋を出た。
廊下の壁にもたれかかって考えた。
ほむら(斎藤さんならどうするのかな。)
ほむら(えっと。うぴー!)
斎藤(はあーい! その声は・・・ほむらちゃんね? 早速相談事かしらっ。)
ほむら(はい。ちょっと人間関係で――)
――――――――――――――――――
――――――――――――
―――――――
斎藤(なるほどね。そのまどかちゃんとも一緒に居るべきよっ。)
斎藤(仲良きことは美しき哉だっけ? まっそんな感じね!)
斎藤さんの言うとおり、ほむらはまどかと一緒に帰宅した。
少しココロの距離が縮まった気がする。
まどかの頬が夕日に照らされた。
涙が一筋、流れていた。
まどか「ご、ゴメンね。わたし、涙もろいんだ」
ほむら「気にしないで。それじゃあ、また明日」
まどか「うん! また明日!」
ほむら「斎藤さん。ありがとう――少し希望が見えた」
ほむらは斎藤さんと話をするようになった。
ちょっとしたやり取りから、他人に話しづらい相談まで。
斎藤さんは、ほむらを受け止めてくれた。一緒に悩んでくれた。
慈愛に満ちた彼女の声は、ほむらの心を癒してくれた。
言うまでも無く、斎藤さんはただの女子高生だ。
魔法少女の話題は持ち出さない。だから自然と人間関係の話になる。
今日は何月何日の何時? という質問は毎回聞かれた。
うぴー! 同様、大切な決まり事のようだった。
斎藤(――それで、今日は何か相談事かな?)
ほむら(恋の相談なんですけど)
斎藤(でええぇえぇえっっ? ほむらちゃんに春が来たっっ!!)
ほむら(私じゃないですよ。友達の女の子ですっ!)
斎藤(へえ。あのほむらちゃんに友達ねえ。大切にしなさいよ?)
ほむら(わかってます! で、斎藤さんは恋愛とか――)
斎藤(ふっふっふ。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。)
斎藤(私はモッテモテなのよ。どんな質問でも的確に答えてア・ゲ・ル❤)
ほむら(実は、友達が幼馴染に恋してるんです。)
斎藤(うんうん。青春ね。)
ほむら(でも、その友達の親友も同じ子に恋をしてて――)
斎藤(三角関係? うわあ、面倒なことに巻き込まれたわね。)
ほむら(恋愛マスターの斎藤さんに最強の答えを聞きたいんです!)
斎藤(私は告白を断るのが専門なんだけど。)
ほむら(あっれ・・・?)
斎藤(超美人だから断り方には馴れてるの。自慢よ? でも告白は・・・ねえ)
ほむら(斎藤さんには恋人が居るんですか。)
斎藤(意中の子はいたんだケドネ。最後まで告白できなかったなあ。)
斎藤さんは珍しく声を震わせていた。
ほむらも相談を受ける側になった。
ほむら(杏子に抹茶味は禁物よ。だってあの子、貧乏舌ですもの。)
メガほむ(なるほど。美樹さんには酒盗、佐倉さんにはアルフォートですね。)
ほむら(マミにはアルコールタオルよ。次の時間軸にもつれ込んだらそうしてね。)
メガほむ(はい。ありがとうございました。うぴー。)
ほむら(うぴー。)
学校。日中はつらかった。
休み時間はとりわけ心を抉った。
ほむら(やっぱり私には友達ができないのかしら)
ほむら(ううん。うぴーに頼っちゃ駄目。)
ほむら(美樹さやかや佐倉杏子とも敵対してないのは斎藤さんの助言あってこそ。)
ほむら(でも、できるだけ自分で解決しなきゃ!)
ほむら「あの。良かったら。一緒に・・・お話なんて、どうかしら」
「暁美さん? 珍しいね。いいよ、こっち来なよ」
ほむら「ありがとう。一度、話して、みたかった・・・のよ」
ほむらは幸福な気分に包まれた。
ほとんど知らない人に声をかける。とても大きな一歩だった。
ほむら(いつの日か、たくさんの友達と過ごせると嬉しいわ。)
少し出かけてきます。帰宅後完結させ・・・たい。
総団子とカナ 謎変換に苦しみました
ほむら「少し前向きになれた」
ほむら「少し自信が持てた」
ほむら「少し成長した」
今日も、うぴーーーー!!
『ほむら』と話をしていた。
ほむら(お互い、大変な時期よね。)
メガほむ(はい。でも今までよりずっと、ずーーっとマシです。)
メガほむ(佐倉さんと鹿目さんは元気にしてますよ。声、聞きます?)
ほむら(いいえ、大丈夫よ。あなたは私みたいに失敗を重ねないでね・・・。)
メガほむ(ほむらさんは・・・上手くいっているようで何よりです。)
ほむら(でも、ワルプルギスの夜は強いわ。四人がかりで倒せるかどうか。)
――そうだ。聞きたいことがあったんだ。
ほむら(あなたは斎藤さんって知ってる?)
メガほむ(たまに繋がりますよ。女子高生の人ですよね?)
ほむら(なんだ、知ってたのね。)
メガほむ(斎藤さんと初めて話せたとき、とても驚いたんですよ。)
メガほむ(不思議な人ですよね。どこか声優さんのように澄んだ声で。)
ほむら(斎藤さんって、人間が出来ていて、愛情深い女性でしょう?)
ほむら(私ね、ああいう素敵な人になりたいの。なれるかな。)
メガほむ(素敵な人!? 嬉しい。きっと喜んでますよ。斎藤さん。)
メガほむ(ほむらさんは努力家です。クールで、わたしより積極的です。)
メガほむ(でもほむらさんは、ちょっとだけ自己犠牲が足りないです。)
ほむら(自己犠牲か。もっと色々足りてない気もするけど――)
メガほむ(いいえ。ほむらさんなら大丈夫。明後日も絶対、大丈夫。)
ほむら(あなたもきっと。素敵な未来が待っているわ。)
メガほむ(・・・お互い頑張りましょうね。)
ほむら(ええ。お互い頑張りましょう。)
ほむら(うぴー。)
メガほむ(死なないでね・・・。うぴーー。)
翌日
ワルプルギスの夜前日
ほむら「巴マミは精神が安定してない。佐倉杏子はとても疲れている」
ほむら「美樹さやかは空元気よね。まどかは――私の家に来なかった」
ほむら「捨てループだと思っていたのだけど、案外上手くいったわね・・・」
ほむら「本当に上手くいったのかしら・・・」
ほむら「胸騒ぎがするわ」
ほむら「メガネをかけてる、あの『ほむら』も今頃緊張してるのかしら」
ほむら「私より経験は浅いはずなのに、どこかしっかりした子だった」
ほむら「斎藤さんとも明日でお別れ?」
ほむら「それとも次の時間軸でも会えるのか・・・心配だわ」
ほむら(って、ループする前提じゃ駄目じゃないっ。)
ほむらは斎藤さんの声を聞きたかった。
子守唄代わりにして寝たかった。
ほむら(うぴー・・・)
斎藤(はあーい! ほむらちゃん? 元気無いけど・・・どうかした?)
斎藤さんの声は、澄きとおっていた。
絹糸のようになめらかで、明快で、清々しい声だった。
ほむら(その、声が聞きたくて。斎藤さんの声、安心できるから。)
斎藤(・・・。今日の日付と時刻を・・・教えてくれる?)
ほむら(×月15日の23:28です。)
斎藤(そっかあ。今日が15日なんだー・・・。)
ほむら(斎藤さん?)
斎藤(あっ、なんでもないよ。気にしないで。)
頭の中に響く声は、いつも澄んでいた。
なのに、今だけは、後味の悪い余韻が残った。
ほむら「変な感覚が頭から離れないわ」
斎藤(23:28――うん。間違いない。)
斎藤(ほむらちゃんは、あのほむらちゃんなんだよね。)
斎藤(ほむらちゃん。好きな子いる?)
ほむら(いえ。別にいないです。)
斎藤(ほむらちゃんなら、そう言うと思った。駄目だよ、正直にならないと)
ほむら(え?)
斎藤(きっと後悔する。よく考えなさい。)
斎藤(明日、学校じゃないの? 早く寝たらどうかしら?)
今日の斎藤さんは様子がおかしい。
何か、困っているみたいだった。
頭の奥から聞こえる声に、焦りが滲み出ていた。
ほむら(斎藤さん? 今、忙しいんですか?)
斎藤(ううん。そうではないのよ。)
斎藤(ほむらちゃん。編入は先月の25日だよね?)
ほむら(はい。)
斎藤(今日は15日だよね?)
ほむら(はい。)
斎藤(友達、できた?)
ほむら(斎藤さんのお陰で、何人かできました。)
斎藤(自信、持てるようになった?)
ほむら(はい。少しだけ。)
斎藤(成長、できたと思う?)
ほむら(はい。前向きになれました。)
斎藤(ありがとう。今日は、もう寝なさい。)
ほむら(・・・お休みなさい。)
斎藤(明日。辛いことがあっても挫けないでね。)
返事をしようと思った。でも繋がらなかった。
ほむら「明日? そっか。斎藤さんは十時間後の世界に生きてるのよね」
ほむら「ワルプルギスの夜は過ぎてる・・・」
ほむら(きっと、斎藤さんは友達か、家族に不幸があったんだ。)
ほむら「・・・」
ほむら「斎藤さん、見滝原の人だったの!?」
ほむら「東京の人だと思ってた。聞き覚えのある声だし、有名人かなぁなんて」
ほむら(うぴー。うぴー。うぴーーーー。)
ほむら(ううん。誰にも通じないわね)
ほむら「7時に避難勧告。9時集合よね」
ほむら「おやすみなさい」
枕を抱きかかえて目を瞑った。
ほむら「胸がバクバクする・・・」
午前1時を過ぎていた。薬を飲んで、ほむらは無理やり眠った。
屋根に小石が降る音が聞こえる。
バンバンと、誰かが忙しなく窓を叩いている。
ほむら(すーい、すーい、すいぎょうざ。)
ほむら(すーい・・・。何か音がする・・・)
ほむら「・・・うるさいわねぇ」
目覚めた。家中が揺れている。
気づいた――小石でも嫌がらせでもなかった。
ほむら「まだ、外は真っ暗なのに・・・」
ソウルジェムが街の危険を伝えていた。
ワルプルギスの夜が来ている。
今までの統計より、ずっと早い。
ほむら「嘘! 嘘でしょ!」
ほむら「みんなが・・・みんなを助けないと!」
暗闇の中をほむらは走り続けた。
見滝原の中心は変わり果てていた。
ほむら「遠くのビルが見える。もう、根こそぎ・・・」
ほむら(彼女達に統計を教えてしまった。)
ほむら( 『嘘の時間』を教えてしまった。)
ほむら「戦いの痕が残ってる・・・」
ほむら(きっと個々に戦っているんだわ・・・。)
ほむら(間に合って! お願いよ。)
ほむら(遅かった・・・。)
さやか「――」
マミ「――」
ほむら「美樹さやか・・・ごめんなさい。恋愛相談の役に立てなかった」
ほむら「巴マミ・・・ごめんなさい。私はあなたの運命を変えようとすらしなかった」
走った。ワルプルギスの夜の何キロも後ろを走った。
ほむら「佐倉杏子・・・が見つからない」
走り続けた。捜し続けた。
ぴしっ。
小気味悪い音がした。踏みつけた物を拾い上げる。
ほむら「あっ・・・杏子の髪飾り・・・っ」
ほむら「いやぁ。もういやだよ。こんなの・・・」
ほむら(ごめんなさい。ごめんなさい。)
ほむら(私が信頼関係を築かなかったばかりに・・・)
ほむら(私はなんてバカなんだろう)
ほむら「ぁ・・・」
ほむら「まどかっ、まどかは無事なの!?」
がむしゃらに走り出した。
崩壊した街並みが視界から過ぎ去っていく。
メガほむに発したセリフが脳裏に浮かんだ。
――あなたもきっと。素敵な未来が待っているわ。
ほむら「どの口が! どの口が言うのよ!!」
ほむら「優越感を感じてたんだわ!」
ほむら「別次元のほむらよりも優れてると思い込んでた!!」
ほむら「ごめんなさい! ごめんなさい!」
遠そうで、近い距離。
瓦礫の上に、女の子がいた。
ほむら(良かった。生きてる。まどかが生きてる。)
彼女のそばだけ空間が違っていた。
風が吹き荒むなか、まっすぐ、姿勢よくたたずんでいた。
「まどか」
「ほむらちゃん」
両腕を掴んだ。
もう、絶対に離したくなかった。
まどか「ごめんね。こんなことになっちゃって」
ほむら「全部私のせいなの。みんなを信じなかった。データを信じてた」
ほむら「私は、どこまでも利己的で、愚かなの。最低の人間よ」
まどか「辛かったんだね。ごめんね。もっと早く気づいてあげたかった」
ほむら「ごめんなさい。もう、駄目。まどかを悲しませてしまった」
ほむら「言葉に出来ない。この気持ち、言葉に出来ないの・・・」
まどか「ほむらちゃん。大丈夫だよ、安心して。わたし――」
まどか「魔法少女になるから」
まどか「ほむらちゃんのココロ。きっと伝えてあげるよ」
ほむら「まどか・・・。止めないわ」
ほむら「あなたの好きに、思うままに叶えて頂戴」
まどか「本当に、ごめんね」
まどかの足元に白い生き物が現れた。
QB「さあ、鹿目まどか――その魂を代価にして何を願う」
終わらなかったよ
お休みなさい
歌詞ってどこまで使って良いんだっけ?
>>94から投下
ほむら「まどか・・・。止めないわ」
ほむら「あなたの好きに、思うままに叶えて頂戴」
まどか「本当に、ごめんね」
まどかの足元に白い生き物が現れた。
QB「さあ、鹿目まどか――その魂を代価にして何を願う」
まどか「Connect」
QB「?」
まどか「ほむらちゃんの苦しみを知ってもらいたい、わかってもらいたい」
まどか「ほむらちゃんのココロが伝わるように――」
まどかは光に包まれた。
まどか「ほむらちゃん。こんな願いしか浮かばなくてごめんね」
ほむら「Connect――素敵な響きよ。とてもあなたらしいわ」
まどか「えへへ」
まどか「うん。いつの日か、また逢いたいな」
ほむら「ごめんなさい。そして、ありがとう」
まどか「最期の大仕事だね」
ワルプルギスの夜は、まどかの一撃で蒸発した。
QB「凄まじい威力だ。出力を見誤り過ぎだよ」
まどか「あは・・・すごい濁ってきた」
まどか「ほむらちゃん。もっと遊びたかった。お出かけしたかった」
ほむら「ごめんね、まどか。みんな、みんな私のせいで」
まどか「平気だよ。もう、こんな悲劇はおきないから。泣かないで」
まどかの変身が解けた。
崩れ落ちる体をほむらは必死で支えた。
まどか「わたしね、夢の中でほむらちゃんに会ったんだ」
まどか「わたしたち、どこかであったこと、あるのかな」
ほむら「嬉しい。覚えていたのね。嬉しい」
まどか「あれ・・・。笑われちゃうかなって思ってたんだけど」
ほむらは力いっぱい抱きしめた。
まどかも力いっぱい抱きしめた。
ほむら「私は、未来から、まどかを救いに来たのよ」
ほむら「何度も何度も繰り返して、あなたを助けることだけ考えて」
まどか「いまのいままで、だまってたの?」
ほむら「・・・うん」
まどか「ずるいよ。ほむらちゃん」
まどか「かっこよすぎるよ」
見つめあった。
今の二人に、言葉なんていらなかった。
陽が昇ってきた。夜明けの時間だ。
ほむら「綺麗だね」
まどか「そうだね」
二人の頬は濡れている。
二人ともわかっていた。ソウルジェムはもう限界だった。
ほむらはトリガーを引いた。
まどかは崩れ落ちた。
ほむらは、嗚咽を上げて、見届けた。
まどかは、満足そうに微笑んでいた。
「まどか・・・」
幸せをかき集めたような、純真無垢な笑みだった。
───────────────────
ほむら「私に宿った新しい力。Connect――か」
ほむら「ああ、そうだったのね。ずっと見守ってくれたんだ」
大災害から3日過ぎていた。
ほむらは唱えた。
(うぴーーーーーーーーーーーーーーーー)
斎藤(はあーい! その声はほむらちゃん?)
ほむら(斎藤さん。あなた、結構回りくどい性格してるのね。)
斎藤(どうしたの? キャラ変えた?)
ほむら(とても辛いことがあった。でも挫ける気は更々ないわ。)
斎藤(えっと、今日の日付を教えてくれない?)
ほむら(――Connect)
斎藤(・・・。)
斎藤(Connect・・・か。)
斎藤(ええ、そうよ。あなたの想像通り。)
ほむら(未来の私・・・。)
斎藤(・・・お疲れ様。正確には、別時間軸の、未来の暁美ほむらよ。)
斎藤(あなたも、私と同じ結末を辿ってしまったのね。)
ほむら(十時間後の世界に住んでるのは・・・。)
斎藤(『嘘の時間』を教えたのよ。私は三年後のあなたよ?)
ほむら(三年後から助言を・・・。だから毎度、時間を聞いてきたのね。)
斎藤(惜しい。私は沢山の暁美ほむらに助言をし続けているの。)
斎藤(『ほむら』だけじゃない。必要だと思った子にもConnectしているわ。)
斎藤(私は、多くの私を救ってきた。だから記憶がごちゃごちゃしてるの。)
ほむら(うぴーっ♩ は関係なかったの?)
斎藤(勿論、関係あるわ。私がConnectであなたに接続して、うぴー♬を待ってたの。)
ほむら(うぴーー♫ は重要な要素ってこと?)
斎藤(まどかの願いは、私のココロを私達に伝えること。)
斎藤(受信先のココロを開いてもらう唯一の手段が、うぴーー♮なの。不便でしょ?)
うぴー
ほむら(そうは思わない。――ロマンチックよ。)
ここまで聞いて疑問が浮かんだ。
自分は、別時間の眼鏡をかけている『ほむら』にうぴーを使っていたじゃないか。
ほむら(あれ? 私は、まどかが契約する前からConnectできてるのだけど。)
斎藤(あれは私の演技よ。私がConnectしていたの。)
斎藤(メガほむってボロがすぐ出そうでハラハラしたわ。てへっ。)
ほむら(え・・・ええ!?)
――私ね、ああいう素敵な人になりたいの。なれるかな。
――素敵な人!? 嬉しい。きっと喜んでますよ。斎藤さん。
斎藤(ほら、微妙にボロ出ちゃってたけど。)
ほむら(演じ分け・・・? 私に、助言の練習をさせていたのね。)
斎藤(同じ結末にならないように手を貸した。私とよく似たルートだったから。)
斎藤(でも、わかってた。あなたは、あまりにも私に似ていたから)
斎藤(だから、あなたは私と同じになるんだって――何となく気づいていたの。)
ほむら(私はきっとこの世界で生き続けるのでしょうね。)
ほむら(ほんの少しの自己犠牲。やっと『ほむら』の言ってたことがわかった。)
斎藤(実はあの子、私が初めて救った子を再現したのよ?)
斎藤(Connectを得た後、真っ先に使ったわ。身を砕いて援護したの。)
斎藤(むしゃくしゃして、異次元のメガほむは全員救ってあげたもんね!)
ほむら(そんなに熱心なら、脳内再生も余裕だったでしょ。)
斎藤(暇つぶしに、妄想を続けていた甲斐があったわ。)
ほむら(私とあなたは本当に似てるのね。怖いくらい。)
斎藤(・・・。)
ほむら(・・・。)
斎藤(あなたも・・・まどかに告白できなかった・・・の?)
斎藤さんの声は上ずっていた。
彼女もまた、年相応の女の子だった。
ほむら(大丈夫・・・。私とまどかは目と目で通じ合う間柄なの。)
ほむら(まどかは全部受け止めてくれた。あの笑顔は私の中に刻まれている。)
斎藤(・・・羨ましいわ。私と脳内メガほむの助言は不要だったのかしら・・・。)
ほむら(あなた無しでは不可能だった。ありがとう。暁美ほむらさん。)
斎藤(!!)
斎藤(いいえ、こちらこそ。私の助言で救われる人を見れて、嬉しい。)
斎藤(私と違う未来を描いてくれて、とっても嬉しい。)
ほむらは深呼吸をした。
きっと、斎藤さんも深呼吸をしていた。
ほむら(良かったら、またお話しても良いですか?)
斎藤(もっちろん。いつでも連絡頂戴!)
ほむら(それじゃ接続切りますね。)
斎藤(合言葉と私の声を思い出してねっ!)
斎藤(――絶対、届くから。)
ほむら「私も斎藤さんみたいな、素敵な人になるわ」
この世界にとどまることを選んだ。
別次元のほむらに押し寄せる、闇を振り払うために。
Connectの使い方は自然とわかっていた。
ほむら「目を閉じて確かめる」
頭の中に浮かぶ世界。地道にケーブルを繋いでいった。
斎藤さんとは少し違った未来。
ケーブルの色はカラフルだった。
桃、紫、青、黄、赤・・・無数の、鮮やかな色が、頭の中に浮かんだ。
ほむら「斎藤さんのケーブルは単色。だから時間を聞かないと区別がつかなかったのね」
ほむら「並行世界の私達、結構な人数に接続したけど・・・」
ほむら(はあーい! 誰か居る?)
ほむら「・・・ちっ」
ほむら(居ないのかよ)
何日かすると、探していた声が聞こえてきた。
(うぴぃ。Zzz)
ほむら(はあーい。こんにちは。どちら様?)
(Zzz)
ほむら(上手く行かないものね。)
(Zzz)
ほむら「ふわぁぁ」
ほむら(ラ ド ミ!! ラ ド ミ!! ド ド ラ!! ファ#ファ#レ#)
ほむら(ラ ド ミ!! ラ ド ミ!! ド ド ラ!! ファ#ファ#レ#)
ほむら(こころはぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! はしりだしたぁぁぁぁぁ!!!!)
ほむら(ラーーファ ソ ラァァァァ!!!! レ ラ ソ ファ ソォォォイイイ!!!!)
(うぴっ。寝すぎたっ。)
ほむら「きた!」
ほむら(はあーい。こんにちは。どちら様?)
(えっ、えっ! ななな、何!?)
通じた。聞き覚えのある声が頭の中に反響する。
ほむら(その声――まどか?)
(ほ、ほむらちゃん?)
ほむら(正確には別次元の暁美ほむらよ。今日は何日かわかる?)
(えっとね――)
鹿目まどかに繋がった。目を閉じて確かめる。ケーブルの色は銀色だった。
時空は超えていない。でも、時空を超えた初めての出会い。
ほむらは銀の世界を見届けた。
ほむら(やりました。まどかは契約してしまったけど、きっと『ほむら』も幸せよ。)
斎藤(うんうん。私の教え方が良かったのねっ。この調子で頑張りましょ!)
ほむら(斎藤さんは一々時間を聞かないといけなくて大変ですね!)
斎藤(あーっ。色付きのケーブルだって限りはあるでしょ。)
ほむら(斎藤さんより楽ですけどね。まどかに感謝しなきゃ。)
斎藤(私のまどかが居なかったら、あなたは絶望してたわよ。)
ほむら(感謝してます。でも私のまどかが一番可愛いわ。)
斎藤(聞き捨てならないわね。私のまどかが究極よ! うぴーー!!)
ほむら(うぴーーーーー!!!)
斎藤さんと一緒に、彷徨い続けるほむらを救済した。
両手では数え切れないほどの世界が救われた。
滅びた世界もあったけれど、みんなを信じた。
滅びるとわかっていても、みんなを信じ続けた。
三年が経った。
午前1時。
ほむら「むにゃむにゃ」
(うぴー!)
ほむら「・・・うぅん」
(うぴー! うぴーーー!!)
ほむら「えっ、何これ。うるさすぎるわよ」
(うぴー! うぴーーーーーー!!!!)
ほむら「今までにない経験だわ! 大物にもほどがあるわよ!」
ほむら(うるさーーい!)
ほむら「・・・。何かココロに引っかかるわね」
目を閉じた。ケーブルは虹色だった。
初めて見る色だった。
そして時間を確かめる。
10時間引くと、虹色の世界にいるほむらは、間違いなく授業中だ。
ほむら「まさかとは思うけど・・・」
ほむら(授業中よ。ちょっと黙って! うぴーうぴーうるさすぎるのよ!!)
(テレパシーが漏れてたのね、悪かったわ巴マミ。)
ほむら「まるで、三年前の私――。そっか。そうなのか」
ほむら「でも眠気には勝てないわ。適当に流しておこう」
ほむら「Zzzzz」
翌日
ほむら「今日は、平和だったわね」
ほむら「みんな上手くいってると嬉しいけど」
次の日の朝
ほむら「すぴぃ。」
(うぴーーー!!!!!!!!!!!)
ほむら「朝から何なの?」
ほむら「はっ! 虹色のケーブルから聞こえるわ」
ほむら「こほんっ」
顔を洗って、姿勢を正した。
だって、この『ほむら』はきっと――
まどかに忠告し忘れて、保健室へ逃げた暁美ほむらなんだ。
ほむら(おはよう。あなたはどちら様?)
(は、初めまして。)
ほむら(初めまして。ふふ、ちょっと緊張してるでしょ?)
(はい。まるで二重人格みたいで慣れないんです。)
ほむら(頭の中での会話は結構疲れるからね。大丈夫、二重人格じゃないわよ。)
弱弱しくて、今にも涸れてしまいそうな声が頭の中に注がれた。
懐かしい声。昔の自分を思い出した。
(おはよう・・・? 今は真夜中ですよ。)
ほむら(ちょっと時間がずれているみたいね。今は何月何日?)
コネクトした相手は日付と時刻を答えた。
ほむら「三年・・・と、十時間前の私ってことね」
ほむら「この『ほむら』はどんな未来を描くのかしら」
ほむら(十時間後・・・の私と会話してるってところかしら。ところでお名前は?)
(暁美ほむらです。十四歳。)
頭の奥に、間違いなく、こだました。
ほむら(へえ、燃え上がれって感じでかっこいいわね!)
ほむら(モテるんじゃない? あははっ。)
(そんなことないですよ・・・。いつも一人ぼっちで泣いてばかり。)
(・・・ところであなたはどちら様?)
ほむら(あーごめんね。先に名乗るべきだったわ)
ほむら「きっと私よりも素敵な未来を描いてくれるはず」
ほむら「楽しみにしているわ」
だから嘘をついた。
ほむら(私は斎藤――)
ほむら(よくある名前よね。)
喜びも悲しみも、わけあえば強まる想い
この声が届くのなら
きっと奇跡はおこせるだろう
ほむら「あなたにConnect」 終わり
最後までお読みいただき、ありがとうございました
わかりにくい点があれば気軽にどうぞ
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乙ですうぴー!
こっちは丁度終わったとこだったのか
宣伝スレを見て読ませてもらったけど「2レスごと」とは別のベクトルで面白かったです
……まああっちは腹抱えて大笑いする素の面白さでしたがwwww
酉検索してみたら良かった話が色々引っかかったので次回作も期待してます
乙一!
考えたらまどマギ世界とCalling Youの世界とは、テレパシー的なものの存在と別時間軸の主人公が出てくるという、物語の根幹的なものに似たところがあって話の進行に違和感なかったですね。
主人公の大切な人はやっぱり死んでしまうんですね。
あと、斎藤さんで吹いた。声優じゃねーかwww
このSSまとめへのコメント
パラレルワールドについて考えると切なくなる
いつか皆に幸あれ