幼「ネコマンダーの方が良かったよ」(272)

男「よーし、荷物の確認っと」ゴソゴソ

男「今日のデート成功させて、幼に告白するぞ…昨日お参りしたからきっと大丈夫だ!」

幼「お、おとこぉ…」コンコン バサッ

男「ん、窓からとは珍しいな…あれ?」

男「なんで下着姿で服抱いてんの?いやそれよりも」

幼「ううっ…」カァァ バサッ

男「俺の部屋は幼の部屋から入れるほど近くないはず…」

幼「ひっく…」ジワッ バサッ

男「なんで窓の外にいるの!空飛べるの!?」

男「その翼と尻尾はなんなんだ!?昨日は無かったよな!?」

幼「ご、ごめんね…部屋に入れて…」ポロポロ バサッ

男「わ、分かった!」ガラッ

幼「ありがと…」ポロポロ

書き忘れましたが注意
ネット環境やらなんやらの都合で更新ペースが非常に遅いです
行き詰まった他のと同時進行なので更に遅いです

男「とりあえず毛布どうぞ…俺ので良ければ」

幼「あり、が…とう」ポロポロ

男「泣いてるとこ悪いが聞かせてくれ、何があった?落ち着いてからで良いから」

幼「えぐっ…ひっく…あのね」

回想

幼『ふぁ…良く寝られたし、昨日お参りしたから今日はばっちりだね』

幼『早く着替えて用意をしなくちゃ…ん?』

幼『なんか背中とお尻のあたりに違和感が…』ヌギッ

幼『え?えええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?』

幼『なにこの翼!』バサッ

幼『なにこの尻尾!』ブンッ

幼『わたしいつの間に人間やめちゃったの!?』

幼「ドラコケンタウロスっぽい!角ないけど!イグニールみたいな感じだけど!」

幼『どどどどうしよう!とりあえず着替えて』

幼『…翼も尻尾も邪魔で着れない!』

幼『コートを…今日暖かいから着てたら変だし下着にコートって変質者だよ!』

幼『家族に相談…できない!みんな留守だよ!』

幼『じゃあ友達に…こんなカッコで外に出れないよ!』ジタバタ

幼『電話で…もう時間無いよ待ち合わせ遅刻しちゃうよ!』オロオロ

幼『こうなったらお隣の男の家に直接…ダメだ玄関から出たくない!見られたら恥ずかしくて死んじゃうよ!見つからなくても嫌だけど!』バタバタ

幼『えーとえーと、せめて男以外に見つからないで部屋まで行くには…』バサッ フワッ

幼『浮いた…ならイチかバチか、飛んで窓から行く!見つかりませんように!』バサッ

男「なるほど。朝起きたら翼と尻尾が生えてて、とりあえず服着ようとしたら着れなくて」

男「相談できる人も家にいないから慌ててジタバタしてたら時間がなくなり」

男「なんか空飛べたから服持って飛んできたと」

幼「…説明ありがと」

男「さっきは怒鳴ってごめんな、誰かに見つからなかったか?」

幼「たぶん大丈夫。わ、私こそ変なカッコで窓から入ってごめんね。ビックリしたよね…」カアァァ

男「あ、慌ててたんだから仕方無いさ」カァァ

幼「ごめんね、情けない幼馴染みでごめんね」ポロポロ

男「そんなこと無いから泣かないで…誰だって慌てるよ。服を着られるようにすれば良いんだな」ヨシヨシ

幼『…お願いします』グスッ

男「尻尾や耳が生えるお話は読んだことあるけど…」

男「猫犬狐はともかくドラゴンは初めてだな」

幼「私もだよ」

男「たいていの場合、尻尾はズボンやスカートの上から出したり背中にしまったり。耳は帽子やフードで隠すんだが…」

男「幼は翼だし、尻尾もちょっと大きいし…俺には服に穴を開けるしか思い付かないんだが……」

男「その服穴開けて大丈夫か?大事な服だったりする?」

幼「今日のお出かけ用に選んだ服だけど…良いよ。いつまでもこんなカッコでいられないし」

男「ろくな解決策が無くて申し訳ない…」

幼「謝らないでよ、私なんか何も思い付かなかったんだから…あ」

男「どうした?」

幼「サイズ測って、穴開けて欲しいんだけど…私は不器用で上手くできないから…」カアァァァァ

男「」

幼「またお粗末なものをお見せしますが…」シュン

男「いや別にお粗末じゃ…変なとこ触ったらフルボッコにしてくれて構わないからな」カァァ

幼「そ、そんなことしないよ」オロオロ

男「嫌なことされたら我慢しないでな。道具取ってくるよ」ガチャ

幼「あ、あのさ、トイレ貸して欲しいんだけど、いい?」

男「もちろん。今みんな家にいないから見つかる心配はしなくて良いからね」

男「トイレまでそれ羽織ってって良いよ」

幼「あ、ありがとね、行ってきます」タッタッタッ

男(まだ彼女でもない幼の下着姿を見ることになるとは…)

男「エロいこと考えないで、これ以上泣かせないことだけ考えないと…デート前に絶縁されてしまう」ブンブン

幼「やっぱり座りにくいなあ…」

幼「デート、行きたかったな」

幼「尻尾と翼が生えた女と街を歩くなんて嫌だよね、周りから変な目で見られちゃうもん」

幼「せっかく誘ってくれたのに、台無しにしちゃったなぁ」ジワッ

幼「もっと仲良くなるチャンスだったのに、楽しみにしてたのに」グスッ

幼「ごめん…ごめんね」ポロポロ

幼「うぇっ、ひくっ、泣き止まなきゃ…男をまた困らせちゃう」ポロポロ

幼「そろそろ戻んなきゃ」ゴシゴシ

幼(まだ彼氏じゃない男に下着姿を晒すなんて…)

幼「自分で測れないし、手伝わせてるんだから我慢しないと…隠す毛布も貸してくれたし」ドキドキ

幼「男はまだ戻ってないや。今のうちに背中が出るように毛布巻いとこ…下着姿で男の毛布って、傍から見たら変態そのものだよね私…」カァァ

幼「男の毛布…いつもよりいい臭いがする。鼻も良くなったのかな」クンクン

男「お待たせ(背中が見えてる…)…なんで毛布の臭い嗅いでんの?臭かった…?」シュン

幼「うわあああぁ!」ビクッ

幼「ごごごごめんなさい!別にくさくなくて!なんか鼻が良くなったみたいで気になって!」

男「そ、そっか。飛べるだけじゃなくてそんなパワーアップもしたのか」(やっぱ臭かったのかな…)

幼「それはもう!毛布に関しては感謝してます!隠すのに丁度良かったです!」(いいにおいでボーッとしてて気がつかなかった…)カァァ

男「えーと、道具持ってきたから測って良いかな…あんまり見ないようにはする」

幼「よ、よろしくお願いします!」

男(落ち着け、変なとこ触んないように気を付けるんだ)「よし、まずは翼を…」

幼「んっ…」ピクッ バサッ

幼「ごめん、ちょっと背中が気になっちゃって…翼は平気だよ」

男「す、すまない…よしこれでOKだ。次は尻尾を」(お尻に…当たらないように…)サワッ

幼「ひぅっ!」ビクッ ブオンッ!

男「ぐあぁぁあ!」バシンッ!

男「ぐもっ!」ドゴォォォン!

幼「お…おとこおぉぉぉぉ!ごめんなさい!尻尾はなんともないんだけどお、お尻に当たってその…わたし…」オロオロ

男「だ、大丈夫だ、ちょっと顔が「ぐもっ」てなったけど大丈夫だ」

幼「力も強くなったなんて知らなくて…ごめんなさい!」

男「謝るのはこっちだ…変なとこ触って…申し訳ない」カァァァ

男「……よし終わり。あとは切って…」(余計なことは考えるな、変なことしたら色々終わりだ)

幼(男が私の服を…あうう…)カァァァァァ

男「…完成!俺は部屋から出るから着れたら言ってくれ」(なんとか乗りきった…)ガチャ

幼「ありがとう…ほんとにありがとう」ジワッ

男「き、気にするな、可愛い幼馴染みの頼みだしな」バタン

幼(可愛い、こんな姿でも可愛いって…嬉しいな。切れ端は回収してと)「よし、できたよー」

男「着れたか、よかったよかった…」ガチャ

幼「なに…?どしたの?」

男「す…すげえ似合ってんな服!来たときは抱き抱えてたから分からなかったけど、似合ってる!」

男「こんなこと言っちゃ悪いとは思うが…翼と尻尾も良い!」

男「いつも可愛いけど…今日は可愛くてカッコいい!」

幼「お、お褒めに預かり、恐縮です」カアァァァァ

男「あれ……しまった!」クルッ

幼「どしたの?急に後ろ向いて」

男「尻尾はともかく、翼って根本より先の方が大きいよな」

幼「そうだけど」

男「今、背中見えてるんだよな…」カァァァ

幼「あ…ほ、ほんとだ…」カァァァ

男「ど、どうしよう」

幼「えと…見ていいから、継ぎはぎでいいから、この切り取ったの使って塞いで欲しいな…」カァァァァァ

男「本当にごめんな…」カァァァ

幼「い、良いの。自分じゃできないから仕方無いよ」

男(きれいな背中だ、針刺さないように気を付けないと…)

幼(下着で押し掛けちゃったから今さらだけど、やっぱり恥ずかしいよ…)

男(ドラコの服って後ろどうなってるんだろう?)

幼(ドボルベルクみたいな先の大きい尻尾だったらパンツも…あ…、はけないのかな…)カァァァ

男「さて、服は着れたし穴も塞いだが…どうすれば元に戻るんだろう」

幼「ロックマンエグゼ6のクロスみたいに弱点の攻撃で解除とか?見た目はクロスビーストだけどさ」

男「ドラゴンじゃないけど、どっちかと言えばファルザーだな。ドラゴンの弱点てなんだろ…ポケモンみたく氷、ドラゴンそのもの、妖精とかか?」

幼「用意できないね…冷凍庫の氷で攻撃ってのも変だよね」

男「もしそれで戻れたとしても幼に氷ぶつけんのはやだ。罪悪感が半端じゃない」

幼「MPとか時間切れで戻るとか?」

男「どうやって確認するんだろう」

幼「えいっ、やあっ、はああああぁ!…気合いを込めても戻んない…」カァァ

男「変身でも無いのか…さすがに引っ張って取れたりはしないよな」

幼「それはないよ…触られた感触あるし。すごく鱗だよ」サワサワ

幼「触っても良いよ…?翼と尻尾は触られてもなんともないから」

男「で、では失礼して…ほんとだ鱗だ。すごく丈夫そう」サワ

幼「さっきはごめんね。おもいっきり尻尾でひっぱたいて」

男「自業自得だから気にしないで…ドラゴンテールってよくあれで済むよな、強制交代させられるほど吹っ飛ぶのに」

幼「ホントにごめんね…鱗いる?」

男「むろみさんか?いやイグニールっぽい尻尾だからフェアリーテイルか…」

男「じゃなくて、仮にも体の一部なんだから人にあげちゃいけません」

幼「そ、そうだね…よく考えるとなんかグロテスクだね…」

男「いい武具ができそうだな…クリムゾンルークとか」

幼「や、やめてよ、ガンランスの素材にしないで!」

男「3DSのポーチとか」

幼「私はリオレウスじゃないから!今の体だと冗談に聞こえないよ!!」

男「すまんつい…なぜガンランスに大量の尻尾を要求されるか気になって」

幼「なんで今…形が丁度いいのかな。ちょっといじって機械詰めれば出来上がり」

男「工房の手抜きですねわかります」ジー

幼「視線が怖い…私のでやらないでね…」

男「やらないよ…万が一やりそうになったらドラゴンダイブでもフリーフォールでもげきりんでも一思いにやってくれ」

幼「尻尾であの威力だから死んじゃうよ……私はポケモンじゃないよ!」プンスカ

男「ごめんなさい…もう言わないから許してください」

幼「いいよ、私が叩いたから仕返しだよね。おあいこなのに怒ってごめんね?」

男「いや、俺が子供でしたごめんなさい…しかし、どうやったら戻れるんだろうな…せめて原因が分かれば」

幼「正確な原因は分かんないけど心当たりなら…あるかも」

男「あるのか。何でもいいから、教えてくれないか?」

幼「あるんだけど、は、恥ずかしくて、言えないよ」カァァァ

男「そっか。なら仕方ないか」

幼「でも……あんな姿を晒しちゃったし、恥ずかしいのなんて今更だし、この際だから言うね」

幼「怒らないで聞いてね。わ、私は」

幼「私は…男のことが、好きなの」

幼「ちっちゃい頃から、ずっと好き」

幼「本当は、デートのあとで言いたかったけど…大好きです」

幼「昨日の帰りに小さい神社に寄ったとき、私はこうお願いしたよね?」

幼「明日のお出掛けが楽しいものでありますように。…口ではそう言ったけど、本当のお願いは違うの」

幼「男が嫌じゃなければ、いつまでも二人で、幸せでいられますように」

幼「お願いして、無理矢理彼女になっても意味がないと思ったから、告白が上手くいったあとの幸せを願ったの」

幼「それでね、ふられて、離れちゃうのが怖くなってきて…一緒にぷよぷよやってるときに考えてたの」

幼「ナツとハッピー…サラマンダーとネコマンダーみたいに、一緒に空を飛ぶような関係で、相棒…恋人じゃなくていいから、もっと遠くてもいいから」

幼「せめて、側にいられたらなあって」

幼「たぶんそれが原因。ちょっと変な叶い方しちゃったんだと思うんだ」

幼「その後に、エクシード…猫になるのは嫌かなーっ、て思っちゃったから」

幼「ネコマンダーの方が良かったよ。服のことで悩まなくて済んだから」

幼「今みたいに一部だけなっても、猫耳尻尾と出し入れ自由な翼で迷惑かけなかったのに」

幼「下着姿で押し掛けて、泣いて、測らせて、尻尾で叩いて、穴開けさせて、穴塞がせて」

幼「デート台無しにして…こんな姿になってから告白して」

幼「迷惑だよね…普通の人間の女の子に告白されたかったよね」

幼「こんなことになるなら…昨日言っとけばよかったなぁ」ジワッ

幼「うっ…うっ…うぇぇぇん」ポロポロ

男「幼…」

幼「わたしが…未練がましいこと考えたのが悪いんだ、罰が当たったんだ」ポロポロ

幼「ふ、ふられ、ても、側にいたい、なんて」ポロポロ

幼「都合良すぎるよね、ふった女と一緒に、いたい人なんて、飛びたい人なんて、いないよね」ポロポロ

幼「しかもわたし、泣き虫で、あわてんぼうで、不器用で」ポロポロ

幼「おとこに、頼ってばかりで、なにもできなくて」ポロポロ

幼「恋愛の対象として、ふさわしぐないよ、つりあわないよ」ポロポロ

幼「づりあうように、がんばっでみたけど、今日のでぜんぶ…だめになっちゃった」ポロポロ

幼「もっと可愛いのみせだかったのに、あんまり可愛くない、下着をみせちゃった」ポロポロ

幼「すこじでも、可愛いと思ってほじぐって、お化粧も頑張ってだのに、すっぴんをみせちゃった」ポロポロ

幼「お料理も食べてほじくて、下手だけど、練習じでだのに、あわてて、あたまがいっぱいで、おべんとう…つくってこなかった」ポロポロ

男「幼…ごめんなさい」

幼「はは…ふられちゃった…当たり前だよね」ポロポロ

幼「こんな半竜半人の告白なんて、受け入れたくないよね」ポロポロ

幼「そうじゃなくても、きのう告白しても、だめだったよね」ポロポロ

幼「困ったらすぐになきついて、しょっちゅう家にあがりこんで」ポロポロ

幼「おとこのゲームしたり漫画よんだり…うっとうしかったよね」ポロポロ

幼「ひとりでいたいときもあったよね、ほかの友達と遊びたいときもあったよね」ポロポロ

幼「それでもおとこは…わたしにやさしくしてくれた。だから甘えちゃって、わたしのこと好きになってくれるかもって、かんちがいしちゃった」ポロポロ

幼「うう…うわあぁぁぁん!!はづごいだったのに…」ポロポロ

幼「ひっぐ、おどごに、ふられ、ちゃった…」ポロポロ

幼「ずっとずっと、ずきだったのに…だいじだったのに…おわっちゃった」ポロポロ

幼「えぐっ…ないたって、どうにもなんないのに…」ポロポロ

幼「よげいに、ぎらわれるだけなのにぃ…」ポロポロ

幼「めいわくなのに…」ポロポロ

幼「なみだが、どまら、ないよ…」ポロポロ

幼「これいじょう、いちゃだめだ…泣いてるの、見せちゃ駄目だ」グシグシ

幼「さよなら…おとこ」バサッ

男「幼!待ってくれ!」ガシッ

幼「や、やめてよ!また、勘違いしちゃうよ…」グスッ

男「勘違いじゃない、どこへ行くんだ!」

幼「めいわくだから、ここからでていく…」

男「ちっとも迷惑じゃないからやめろ」

幼「そんなことないよ…めいわくだよ!」

男「だとしたら、今出てかれる方が迷惑だ。俺とのデートはどうすんだ?目の前ですっぽかすのか?」

幼「そ、それは、いきたいけど、いけないんだよ!」

男「なんでだよ!服は着たろ!恥ずかしくないだろ!!」

幼「翼と尻尾生えてるんだよ?猫ならともかくドラゴンだよ?一緒に歩けないよ…」

男「ちっとも恥ずかしくないしおかしくない。文句言うやつは許さん。俺は好きだぞ、その翼と尻尾」

幼「窓から侵入したんだよ?下着姿ではしたないよ…」

男「慌ててたんだから仕方ないよ。むしろ頼ってくれて嬉しかったぞ」

幼「かわいくない下着を見せちゃったんだよ?ピンクの子供っぽいの」

男「今日のも可愛いと思うよ。嫌なら可愛いのつけて来てよ、待ってるから」

幼「すっぴんで来ちゃったんだよ?寝起きの顔のままで」

男「いつかは見ることになるんだから良いじゃないか。見れて嬉しかったぞ、可愛いし。気に入らないなら化粧終わるまで待ってる」

幼「お弁当無いんだよ?下手で口にあわないだろうけど…」

男「また今度で良いよ、お前のくれるものならたとえ不味くても大歓迎だ。ダメなら今すぐ作ってくれ」

幼「貸してくれた毛布を…嗅いだんだよ?いいにおいだなーって」カァァァァ

男「それは…恥ずかしい。が、お前がいい臭いだと思ってくれるなら幸せだ。どんどん嗅ぐと良い。足りないなら…一緒に寝るか?」カァァァ

幼「え…あと、えっと、えっと」オロオロ

男「ちょっとストップ。俺の話を聞いてくれ」

男「さっきのごめんなさいは、告白の返事じゃないんだ」

男「幼の今の姿は、俺のせいなんだ…」

幼「えっ…どういうこと?」

男「そんなわけないと思ってたけど、今の話で確信したんだ……」

男「俺は昨日…明日晴れますように、とか言いつつ別のお願いをした」

男「幼が彼女になってくれたら、幸せにしたい、二人でなりたいって」

男「でも、振られて、気まずくなるのが怖くなって…幼とぷよぷよしてるときに考えてたんだ」

男「ファンタジーな力が…ナツやレット、ドラコみたいな、ドラゴンの力、非現実的な力が手に入れば…相談する相手として、一緒にいる口実にはなるかなって」

男「子供だよな、高2がこれで良いのかってんだ。しかもその後、自分が困るのは嫌だなーっ、て思うんだから臆病者だ」

男「臆病者の妄想が…、幼の願いと混ざって、幼に翼と尻尾が生えたんだと思う」

男「俺が臆病じゃなかったら、昨日告白できて、幼の姿は変わらなくて、今頃デートしてた、笑っていられた」ジワ

男「俺が臆病なせいで、お前が泣くことになるなんて…」グスッ

幼「おとこ…」

男「ちくしょう!なんでこうなるんだ!わかってたら妄想なんてしなかった!」ポロポロ

男「未練がましいこと考えなかった!幼に振られた時のことなんて!」ポロポロ

男「考えても、中二チックな妄想じゃなくて、潔く身を引くことを考えた!」ポロポロ

男「くそっ…今更悔やんでも遅いのに!」ポロポロ

男「俺が幼を泣かせたんだ…笑ってて欲しかったのに」ポロポロ

男「せっかくデートに誘えたのに、喜んでくれたのに」ポロポロ

男「俺の妄想のせいで、ぜんぶ台無しだ」ポロポロ

男「幼は、俺なんかのことを好きでいてくれたのに…気を惹こうと、頑張ってくれてたのに」ポロポロ

男「ぶち壊しちまった…しかも、自分のせいじゃないと思い込もうとした、逃げ出した」ポロポロ

男「謝っても許される訳ないけど…ごめんなさい」ポロポロ

幼「な、泣かないで……えっと、男も、わたしのことが好きなの?」

男「泣かせといて、こんなこと言う資格はないが…大好きです、ずっと前から」ポロポロ

幼「そっか…両想いだったんだね。えへへ…」

幼「嬉しいな…男もデートだと思ってくれてたんだ、私の片想いじゃなかったんだ」

幼「下着とか、お化粧とか、お料理とか、無駄じゃなかったんだ。初恋も、終わってないんだ」

幼「罰が当たったんじゃなくて、男が私といたくて、望んでくれた姿だったんだ」

幼「そう考えると…元の姿に戻れなくても良いかも」

幼「夢みたいだな…これで恋人に、なれるんだよね。夢じゃないよね、嘘じゃないよね」

男「ああ、現実だ、本当だ」ポロポロ

幼「もう…キスしても良くなったんだよね、どうやって確かめれば良いかな…」カァァァ

男(してもらうか…ダメだ。両想いなんだ、キスぐらいこっちからできる)グシグシ

男「幼…」

ちゅっ

幼「んっ…」ボッ

男「あちっ!……今のって」

幼「…え?」カァァァ

男「まさか…炎のブレスを使うドラゴンばかり思い浮かべたから…」

幼「わたし…火を吐いちゃったの…?」カァァァ

男「すまん…」

幼「は、はじめてのキスで、おとこからしてくれて、びっくりして、嬉しくて、恥ずかしくて、わ、わたし」カァァァ ジワッ

幼「ご、ごめんなさぁぁい!」ポロポロ

男「な、泣かないでくれ、いきなりキスした俺が悪いんだ!イグニール似の翼と尻尾で炎は想定できたハズなのに!」オロオロ

幼「初めてのキスなのに台無しにしちゃったよぉ…熱い口づけ(温度的な意味で)だよぉ…」ポロポロ

男「自虐やめて!キスなんて好きなだけしてあげるから!というか俺がしたい!」

幼「最初のなのにぃ…大事なファーストキスなのにぃ」ポロポロ

男「何回もする内の一回だよ!気にしないで!」

幼「それなら…えいっ!」ギュッ

男(抱きつかれた!)

ちゅっ………ボッ

男「あつっ!」ぐもっ

幼「ま…また失敗したぁ!うわあぁぁん!!」ポロポロ

男「落ち着いて!ちょっと熱かっただけ!気にしてないから!」アタフタ

数分後
幼「取り乱してごめんなさい…」

男「落ち着いてくれてなによりです」

幼「あのさ…キスしてもらってあれなんだけど…本当に私で良いの?迷惑かけてばっかりだよ?」

男「もちろん…というか幼以外考えられない。ずっと前から好きだったって言ったじゃないか」

幼「えへへ…ありがと」

男「幼こそ俺で良かったのか?辛い思いをさせた元凶だぞ?現実逃避の妄想で」

幼「うん。現実逃避はお互い様だし、私もさっき言ったよ。男が望んでくれた姿なら大歓迎だよ」

男「…ありがとうな」

幼「予定は狂っちゃったけど、告白は成功、一件落着…」

男「どうした?」

幼「彼女になれたけど……この姿じゃデートできないなあ…」シュン

幼「まわりから変な目で見られちゃうよ、一緒にいる男も……」

男「俺は気にしないよ。そういうのは追い払うから大丈夫だよ」

幼「男が気にしなくても私が嫌。それで男が危ない目にあったらもっと嫌だよ…」

幼「キスもブレスが暴発して失敗続きだし…わたし、彼女になっても足引っ張ってるよ…」ジワッ

男「何か方法を考えるから泣かないで……………思いついた!外でデートする方法!」

幼「誰にも翼や尻尾がバレずにデートできるの?」

男「お前に負担をかけるし、こんなことさせるのは申し訳ないが…できる!」

幼「どうやって?今日は暖かいからコートを着て隠すのは無理だよ?」

男「あのさ…俺と空を飛んで欲しいんだ」

幼「え…?空を?」

男「空には誰もいないだろ?高く飛べば見つからないよ。地上がダメでも空なら大丈夫だ」

幼「でも、二人で飛べるだけの力が私にあるかな…」

男「さっきの尻尾の一撃と、飛んでここまで来たので分かったんだが、今の幼は力が強くなってる。普段の幼の力で叩かれても吹っ飛んだりしないし」

幼「い、言わないで。どっちも下着だったの思い出して…恥ずかしいんだから」カァァァ ボッ

男「すまない…ほっぺから炎出てるぞ」

幼「あう…」ボォォォ

男「お前の一緒に飛びたいって願いと、俺のドラゴンの力が欲しいって妄想が混ざってできた姿だから…ナツの強さとハッピーの飛行が一緒になってるんだと思う」

男「女の子、それも彼女に頼むべきじゃない、情けない頼みなんだろうけど…お願いします!」

男「ぜひ、俺と空を飛んで下さい!俺とデートして下さい!」

幼「……はい、喜んで」ニコッ

幼「私、頑張るからね。落とさないように頑張るから」フンス

男「ありがとう。重かったら落としてくれて良いからな?」

幼「そんなことしないよ!冗談でもそんなこと言わないで!」

幼「もし落ちるようなことがあったら私が下になって落ちるから!私が守るから!」

男「頼もしいな…疲れたなら無理しないで降りて良いからな?」

幼「うん!準備してくるね!」

グゥー

幼「ごめん。朝ごはん食べてなくて…」カァァァァァ

男「すぐ食べられるものあったかな…生魚とガスコンロならあるけど」

幼「私はエクシードでもドラゴンスレイヤーでもないよ!火は食べられるか興味がない訳じゃないけど…」

男「炭火って美味しいのかな?」

幼「美味しくても炎は食べたくないよ!」

幼「いじわるするなら、次のキスで火竜の咆哮をおみまいするよ!さっきみたいなのじゃなくて最大火力で!」プンスカ

男「ごめんなさい!冗談ですシャレにならないです、死んでしまいます」

幼「私のも冗談だよ、そんなキスしないから安心して。今度するときは火を吐かないように頑張るからね」

男「ホントにごめんな…今から何か作るから待ってて」

幼「私も手伝うよ」フワッ

男「ありがと。羽ばたかなくても飛べるのか」

幼「ホントだ。来るときはバサバサしてたよね」

男「わりとでかい音してたよな。よく他の人に見つからなかったな」

幼「男が騒ぎ出したときは焦ったんだよ?」

男「泣いてたな…ごめん。でもあんなカッコで来たら驚くよ……」

幼「お、思い返すと、恥ずかしいことこの上ないです…」カァァァァ

男「簡単なのしかできないけど良い?」

幼「うん。私はフレンチトースト好きだよ」

男「何でわかるの?」

幼「男が何か作ってくれるときは、私の好みに合わせて甘いものを作ることが多いから」

幼「あとは、私が一人で食べるのを嫌がって男にも食べさせるから…かな。男はもうごはん食べたみたいだし、食べさせられるならおやつみたいなものの方が良いでしょ?」

男「すごいな…見事に当たってる」パチパチ

幼「伊達に幼馴染み…彼女やってないからね」

男「ははは…まず材料用意しなくちゃな」

幼「あ、砂糖の入れ物空っぽだよ?」

男「袋が棚の上の方にあったはず。俺が取ろうか?」

幼「私が取るよ!」

幼「普段届かない場所もこの通り!」ビュンッ!

男「おお!」

幼「いたっ!」ゴツン!

男「あらら、天井にぶつかったか」

幼「痛い…」

男「勢いよく飛びすぎだよ」ナデナデ

幼「えへ…高いところにあるものはいつも男が取ってくれるから、自分で取れるのが嬉しくてつい…」カァァァ

男「空飛んで天井にぶつかるのって漫画ではよくあるよな。現実で見るのは初めてだけど」

幼「ごめんね、気を付けるから…で、デートはやめないで…」ジワッ

男「止めない止めない!絶対止めないから!俺は幼を信じてる!」アタフタ

幼「ありがと…」グスッ

男(くそっ、無理矢理にでも自分で取れば、幼が気に病むこと無かったのに!もう泣かせるもんか!)

幼(男はああ言ってくれてるけど、ほんとに気を付けなきゃ。飛んでるときに落ちたらまず助からない…私が男の命を預かるんだから)

男「よし、材料揃ったし作るぞー!」

幼「あいさー!」

男(今のハッピーのマネ可愛いな)「卵とか砂糖とか牛乳を混ぜてと…」

幼(スルーされた!似てると思ったのに…)シュン

男「パンを浸して…後は焼けば良いんだな」

幼「あ、試したいことがあるから私がやるよ。フライパン貸して?」

男「ありがと、はい」(何するんだろう)

幼「今度こそ役に立ってみせるよ。右手でフライパンを持って、左手から炎を…」ゴオッ

幼「できた。火力を調節して…これで焼くよ!」ボォォォォ

男「凄いぞ幼!ガスコンロ要らないな!外でも料理ができそうだ!」

幼「えへへ…これで将来、家計が楽になるね」ボソッ

男「そんな先のことまで考えてくれてるなんて…彼氏冥利に尽きるな」ジーン

幼「!?」カァァァァァ

幼「あ、あの、その、今の、き、聞こえて」ゴォォォォォ!

男「お、幼!やめて、強すぎる!危ない!!」

幼「え…うわあぁぁ!あ、えと、ご、ごめんなさい!」ボシュッ

男「おお…びっくりしたー…火傷したり服に燃え移ったりしてない?」

幼「う、うん、私は平気だよ。左手以外からも炎出しちゃったけど、自分の服が燃えたり火傷したりはしないみたい」ドキドキ

男「良かった…幼が無事で」

幼「でもフライパンとトーストが…」プスプス

男「フライパンはまた買えば良いし、トーストも作り直せば良いんだよ」

幼「で、でも、わたし、さっき失敗して、気を付けようって思ったばかりなのに、また失敗して、め、迷惑かけて」オロオロ

幼「ただ、聞かれて、恥ずかしかっただけで、男の家、火事にしちゃうとこだった」オロオロ

幼「ごめんね、ほんとうにごめんね、へたくそでごめんね」オロオロ

男「気にしないで良いよ、本物のナツだってうっかりルーシィの本燃やしてたし。今日初めて使った幼が失敗してもおかしくないよ」

男「ハッピーだって墜落するじゃん。だから気にしなくて良いって。な?」

幼「で、でも、漫画じゃないんだよ?今回は良かったけど、こんなことを繰り返してたら、お、男が死んじゃうよ」オロオロ

幼「さっき天井にぶつかったのだって、飛んでるときに同じようなことが起きたら、地面に落ちて、助からないよ」ジワッ

幼「やだよぉ…私のせいでおとこが死んじゃったらいやだよ…」ポロポロ

幼「ごめんね、こんなんで将来とか、け、結婚とか考えて。自分勝手だよね、男の彼女になれただけでも奇跡だよね、こんなお荷物」ポロポロ

男「さっきからそうだけど自分を卑下しすぎ。俺はそんな大した人間じゃないよ」

男「こっちこそごめんな、ドラゴンの力を押し付けて。俺がなるはずだったのに、こんなに扱いが難しいなんて考えないで妄想して」ギュッ

幼「あっ…」

男「恥ずかしくなるようなこと言ってごめんな。幼が、俺と結婚することを考えてくれてたのが嬉しくて、つい言っちまった。俺はそんな先のこと考えてなかったから」ポンポン

男「どうやったら付き合ってもらえるか、どう告白すれば良いかばかり考えてたから、いざ付き合ってみても、幼みたいにはできなかったんだ。とりあえず今が楽しければ良いかなって」サスサス

男「俺は幼に笑ってて欲しいから空のデートに誘ったんだ。そんなふうに泣いて欲しくないんだ」ヨシヨシ

男「だから…落ち着くまでこうしてるから、泣くのはこれだけにしてくれな?」ナデナデ

幼「う…うぅ、うぁ…ひっく」ポロポロ

幼「うえぇぇん!うわあぁぁぁん!!」ポロポロ

男「よしよし、落ち着いたらトースト作り直して…準備してデートしような」

幼「うん…うん…!」ポロポロ

しばらくして…
男「ちょっとは落ち着いた?」

幼「うん…ありがとう。ごめんね、泣いてばっかりで」

男「いいよ。…おにおんだったら、もっと男らしいこと言えて、こんなに泣かせずに済んだのかな」

幼「私のことドラゴンむすめって呼んだり食べられそうになりたいの?私はやだよ。名前で呼ばれたいし、食べたりなんかしないよ」

男「あのまんざいデモか。そんな呼び方しないし、幼でも…さすがに食べられたくはないな。あの後、どんぐりガエルはドラコから逃げられたのかな」

幼「かわいそうだよね…さかな王子のデモでもどんぐり扱いだったよね」

男「本人いわくどんぐりじゃなくてカエルだとか。…そのぐらい普通に喋れればもう良いかな」スッ

幼「あ…」シュン

男「ん、まだ泣き足りない?」

幼「えっと、男に抱き締めてもらうと、なんか落ち着くから、ちょっと名残惜しいかなーって…いいにおい、するし」カァァ

幼「さっき二回目のキスの時に…私、抱きついちゃったけど、男からしてくれたの初めてで、その、嬉しかったよ」カァァァ

男「ど、どういたしまして…えと、また後でじゃダメか?」カァァァ

男「デートのときできるし…空では俺は何もできないから、だ、抱きつくなり、キスするなり、好きにしていいぞ」カァァァァ

幼「できれば男からして欲しいんだけど…ありがと。えへへ、男も顔赤くなってる」カァァ

男「そりゃ…俺だってこういうこと言うの恥ずかしいさ」カァァァァ

幼「さっきはもっと恥ずかしいこと言ってたのに?今日の下着も可愛いとか一緒に寝るかとか」クスクス

男「そ、それは、幼が可愛いの見せたかったとか言って泣くからじゃないか!」

幼「え…じゃああのときの言葉は、泣いてるから慰めで言っただけなの?」

幼「ホントは私の下着を見て、こどもだって、においを嗅いだって聞いて、気持ち悪いって思ったの?」シュン

男「まてまて、そういう意味じゃないって!幼の方が先に恥ずかしいこと言ってるじゃんって意味だから!あれは本心だから!確かに恥ずかしいセリフだけど……」カァァァァァ

幼「よ、良かった…」ホッ

男「そんなにほっとするとこかな?今の」

幼「彼女になれて、振られて離れちゃう怖さはなくなったけど、嫌われて…別れ話を切り出されるんじゃないかって不安がでてきて」

男「別れ話?…あはははは!」ケラケラ

幼「わ、笑わないでよ。私にとっては大事なんだよ…」

男「ありえないよ。今までずーっと好きで、実は両想いだった幼馴染み…しかもめちゃくちゃ可愛い子が、向こうから告白してきてさ」

男「こっちの情けない告白を受け入れて付き合ってくれてさ、既に将来の家計のことまで考えてくれてるんだぞ」

男「最高だよ。別れる理由なんてどこにも無いじゃないか。死ぬまで…死んでも一緒にいたいね」

男「仮に別れる奴がいたとしたら…そいつはこの上なく罰当たりな奴だな」

男「俺は幼と一生一緒にいるよ。誰が反対しようが絶対に。もちろん…幼がそうしたければ、だけど」

幼「ほ、ホントに?私と結婚してくれるの?ずっと一緒にいてくれる?」

男「もちろん。すぐには無理だけど…俺と結婚して下さい」

幼「え、えへへ…ふつつかものですが、よろしくお願いします」カァァァ

男「こちらこそ。…付き合い始めた日に結婚の約束することになるとは思わなかったよ」

幼「わ、私も。しかもデートする前に…私の夢、リーチどころかもうビンゴだよ」

男「夢って?」

幼「お、男のお嫁さんになること」カァァ

男「安い夢だなー、こんな簡単に叶っちゃうんだもんな」

幼「や、安くないよ、長かったんだよ!ずっと頑張ってきたんだよ!」

男「まあ今日まで告白すら出来なかった俺の言えたことじゃないか」ケラケラ

幼「お、男の夢はなんなの!私のより大きいの?」カァァァ

男「当然。幼と結婚して、子供と孫と仲良く暮らすことだよ」

幼「こ、こども…まご」プシュー

男「ありゃ、炎じゃなくて煙が出そうな顔に」

幼「えへへへ…男の子供と孫なら、可愛いよね、きっと。私のなんかより」プシュー

男「遠回しに俺のことディスってるの?俺の子は幼の子だろ?」

幼「あう、あうう…そんなつもりじゃ」ボォォォ!

幼「…あれ?ちょっと待ってよ、そんな先のこと考えられなかったって言ったよね?おかしいよ」

男「今できた夢だもん。さっきまでの夢は幼の彼氏になることだし」

幼「お、おとこの夢のが、ちっちゃいじゃん!」

男「今日まで告白できなかった臆病な俺にとっては普通じゃないか?でも今は俺の夢の方が大きいし」

幼「じゃ、じゃあ私は、ひ、曾孫も仲良く暮らすにする!」

男「えー…そんなのずるい。まるで子供じゃないか」

幼「お、男が先にやったんだから男の方がこどもだよ!私がやってもずるくないよ!」グゥー

男「……えっと」ポリポリ

幼「うぅ、またお腹が…」カァァァァァ

男「思いっきり脱線しちゃって忘れてたな…ごめん。そろそろ再開しようか」

幼「うん…」ボォォォォ

男「今度は俺がフライパン持つから、幼には炎を任せていい?」

幼「だ、大丈夫?さっきみたいに出ちゃったら男の腕大火傷だよ?コンロにしようよ」オロオロ

男「大丈夫。ルーシィだって…ナツの寝言の火竜の鉄拳を顔に受けても、屋根を突き破って飛んでっただけで燃えなかったし」

幼「だから漫画じゃないんだよ…弱そうに見えてもルーシィは防御力あるし、あれはギャグシーンだよ」

男「まあそうなんだけど…大丈夫だよ、信じてる。将来のお嫁さん志望の、大事な彼女だし」カァァ

幼「う、うん。ありがと。火傷させないように頑張るね」カァァァ

男「よし、良いぞ」

幼「火竜の…鉄拳!」ゴオッ!

男「上手いぞ!今度は最初からちょうど良い火力だ!」

男「あとはそれを維持してくれれば良いんだが…お腹空いてるのにごめんな。疲れるよな?」

幼「ううん、平気だよ。そんなことより、一緒に料理できて嬉しいよ。炎は私に任せて、男はフライパンに集中して?」ニコッ

男「そう言ってもらえると助かるよ…了解!」

幼「あのさ、もうちょっと作ってもいいかな?」

男「多くないか?そんなに食べられるかな」

幼「デート中に食べる分も作っておきたくて。お弁当作る時間もったいないし、飛んでるときに普通のお弁当は食べにくいから…」

幼「ごめんね?堂々と手を抜いちゃって…」

男「気にしないよ。また今度お願いして良い?」

幼「こ、今度と言わず、今日の晩御飯は私が作るよ!」

男「やった!ありがとう!」

幼「あんまり期待しないでね、下手だから。不味かったら不味いって言ってね」モジモジ

男「そう言われても…やっぱり期待しちゃうなー、初めてだし」

幼「えへ…ご期待に添えるよう頑張ります」カァァ

幼「ふう…これで全部焼けたね」ニコッ

男「お疲れ様。最初の方に焼いたのを持ってく用にバスケットに詰めて、焼きたての食べよっか」

幼「うん!食器用意するね!」バサッ

男「お皿は棚に、ナイフとかフォークはそこの引き出しにあるよ。俺はトースト詰めとくから」

幼「ありがと!」フワッ

男「うん…今度はぶつけなくて済みそうだな」

幼「お待たせ、持ってきたよ!」

男「ありがと。俺も詰め終わったし、お皿に乗せるよ」

幼「美味しそうだね」

男「先にテーブルに持ってっといて。ポットのお湯でココア淹れるから」

幼「ありがとう。待ってるね」

幼「ふう…これで全部焼けたね」ニコッ

男「お疲れ様。最初の方に焼いたのを持ってく用にバスケットに詰めて、焼きたての食べよっか」

幼「うん!食器用意するね!」バサッ

男「お皿は棚に、ナイフとかフォークはそこの引き出しにあるよ。俺はトースト詰めとくから」

幼「ありがと!」フワッ

男「うん…今度はぶつけなくて済みそうだな」

幼「お待たせ、持ってきたよ!」

男「ありがと。俺も詰め終わったし、お皿に乗せるよ」

幼「美味しそうだね」

男「先にテーブルに持ってっといて。ポットのお湯でココア淹れるから」

幼「ありがとう。待ってるね」

男「お待たせー。よし、冷めないうちに食べようか」

幼「いただきます」
男「いただきまーす」

幼「うん、甘くて美味しい!男は味付け上手だね」パクパク

男「それは良かった」フーフー

幼「ココアも私好み、甘めに作ってあって美味しいよ。…あれ、まだ食べないの?」

男「ちょっと熱くて…口に入れられそうに無いんだよ」フーフー

幼「そっか、私は熱に強くなって平気なんだ…ごめんね。先に食べちゃって」

男「幼の方がお腹空いてるんだから良いんだよ」

幼「でもやっぱり一緒が良いよ……そうだ」

男「どしたの?」

幼「私が吹いて冷まして、食べさせてあげるよ」カァァ

男「えーと、それはつまり」カァ

幼「あ、あーんして、食べさせてあげたいの」カァァァ

幼「だ、だめかな。漫画とかで見る度に、いつか男にしてあげられたらなって、思ってたんだけど」モジモジ

幼「子供っぽいのは分かってるんだけど、その、憧れてて…せっかく付き合えて、結婚の約束までしてもらったんだから、もっと彼女らしいことしてあげたいの」モジモジ

男「だ……ダメな訳無いじゃないか。最高だよ。是非お願いします」

幼「や、やったあ…ありがと」パァァ

男「お礼を言うのはこっちだよ。俺も憧れてたんだよなー、そういうことしてもらうの」

幼「い、言ってくれればいくらでもするよ」モジモジ

男「恥ずかしがりの幼からこんなセリフが聞ける日が来るとは…神様、有り難う御座います」ジーン

幼「そそ、そんなに感動しなくても………恥ずかしがりなのは認めます」カァァァ

幼「よし、いくよ。ふ、ふー、ふー」ボッ ボッ

男「ちょっとごめん、今だけは炎やめて。かえって熱くなってるから」

幼「ごめんね、緊張しちゃって。今度はちゃんとやるよ。ふーっ、ふーっ」フーフー

幼「そろそろいいかな…あ、あーん」カァァァ

男「あーん」

パクッ

男「うん、いつものより美味い。幼にあーんしてもらったからかな」モグモグ

幼「あ、ありがと…もう一回するね」カァァァ

男「いや、ちょっと待って」フーフー

男「ほら、口開けて。あーん」

幼「え?わ、私にもしてくれるの?」

男「俺はしてもらって嬉しかったから、幼にもしてあげたいんだけど…必要無い?」

幼「そ、そんなことないよ、私もあーんして欲しい!」

男「んじゃやるよ。はい、あーん」

幼「あ、あーん」カァァ

パク

男「どう?」

幼「お、おいしいよ。えへへへ」カァァァ

幼「あのね、焼くときに手から炎を出したのには2つ理由があるの」

幼「1つ目は、炎を活用できるかのテストで、2つ目は…ちゃんとしたキスをするための、炎のコントロールの練習なの」カァァ

男「まだ気にしてたの?結婚の約束もしたし、時間はいくらでもあるんだからそんなに急がなくても」

幼「だからこそ気にするんだよ。婚約者とキスもまともにしたことないなんて…」シュン

男「そういう考え方もあるか…ごめん、無神経だった」

幼「男が謝ることじゃないよ。男は悪くないよ…」シュン

男「ああもう、泣きそうな顔しないで、笑って笑って」

幼「う…うう…ごめん、無理かも」ジワッ

男「だったら…これしかないな」ガタッ

幼「こ、こっちにきてどうす…んむっ!?」

ちゅっ

幼「ん……んんっ」

ボッ……ボッ……ボッ

幼(あ、あれ、まだ続けるの?)

男「……ぷはっ。いきなりキスしてごめんな、嫌だったよな」

幼「嫌じゃないけど……大丈夫なの?」オロオロ

男「何がさ?」

幼「あ、あんなに長くキスして」オロオロ

男「あー、とっても甘かったな」

幼「わ、私も……そうじゃなくて!火を吐いちゃったんだよ?なんで口を離さないの!」プンスカ

男「なんで途中でやめなきゃいけないのさ?俺は幼とキスしたいんだよ」

幼「私だってしたいよ!でも危ないんだよ!しかも三回も吐くまでキスして!」プンスカ

男「三回かー。まあ前よりは上手くなったかな。一歩前進だ。良かった良かった」

幼「良くない!男の唇が火傷しちゃうよ!」プンスカ

男「俺の唇の心配を……そんなにキスがしたかったのか」ジーン

幼「あ…そ、そうじゃなくて!」カァァ

男「ああ、やっぱ嫌だったんだ…ごめんな」シュン

幼「ああああ、ちがっ、ちがくて、したい、したいんだけど!そうじゃなくて!」カァァァァァ

男「分かってるよ、心配してくれてありがとな」ナデナデ

男「ちゃんとキスできないの気にして涙目で、あのままじゃ泣きそうだったから…長めのキスが出来れば良いのかと思ったんだ。途中で口を離したら逆効果だろ?」

男「確かに熱かったけど、火が出るまでの間隔も最初の二回より長くなったし、温度も若干低かった気がする」

男「練習の成果は出てるぞ。だから焦らなくて良いんだよ」

幼「男…そんなに考えてくれてたの…?体を張ってまで私のために…」ジワッ

男「幼が頑張ってるんだから熱いのぐらい我慢しなきゃな。それよりまた涙目だ、意味無いじゃないか」

幼「おとこぉ!」ダキッ

男「うぉっ!?」

幼「ありがとう…ほんとうにありがとう!」ポロポロ

男「泣かない泣かない、トースト冷めちゃうから食べようよ」

幼「違うよ、嬉しいんだよ!冷めてもまた私が温めるよ!」ポロポロ

男「そりゃどうも…嬉し涙でも泣き止んで。またあーんしてあげるし、して欲しいから」

幼「うん!」シュバッ

男「はやっ!」

男「はい、あーん」

幼「あ、あーん」パク

幼「わ、私の番だね。あーん」

男「あーん」パクッ





男「ごちそうさまでした」
幼「ごちそうさまでした」

幼「結局…残り全部、あーんして食べちゃったね」

男「ああ…美味しかったな」

幼「うん…デートの時もお願いして良い?」カァァ

男「もちろん。食器片付けるよ」

幼「私も手伝うよ」

男「ありがとう。でもこの量なら一人で十分だから、幼は準備してきて良いよ」

幼「ありがと。ならお言葉に甘えて…一旦帰ってお化粧してくるね」バサッ

幼「玄関は閉まってるし、カギ持ってないから…男の部屋の窓から帰るしかないね」

幼「おじゃましました」ガラッ

幼「人に見つかると面倒なことになりそうだし、羽ばたかないで……もう着いちゃった。ただいま」ガラッ

幼「お話の中でしか見たこと無いけど、窓から行き来できるのっていいな。これも憧れだっんだよ」

幼「憧れ…今日はいくつも実現しちゃったな」

幼「両想いになって、付き合って、キスして、結婚の約束して、一緒にお料理して、…両想いは知らなかっただけで前からだっけ」

幼「それで、これから一緒に空を飛んでデート…」

幼「えへへ…えへへへ。今まで生きてて、一番幸せなんじゃないかな、わたし」

幼「んー…だめだ。どうしても顔がにやけちゃう」ニヘ

幼「男は笑ってて欲しいって言ってくれたけど、この笑い方はちょっと下品かな…戻る前になんとかしないと」ニヘ

幼「顔洗って歯を磨いて、髪直してちょっとお化粧して、もう一回トイレも行っておかないと…やることいっぱい。早くデート行けるように急がなきゃ」ニヘ

男「片付け終わったし、早く荷物の用意しないとな」

男「…トーストのバスケットと財布と携帯だけで良いか。余計なもの持ってくと幼が大変そうだし」

男「普通のデートなら俺が荷物を持ってやれるけど、今回は俺が荷物だもんな。少しでも軽くしないと」

男「まだ半日そこらなのに、いろいろあったな…」

男「幼が窓の外からやってきて、服いじって、元に戻る方法考えて、告白されて、キスして、婚約して」

男「空でデート…なんなんだ今日は。幸せすぎて忘れたくても忘れらんないぞ」

男「でも、泣いてる幼を慰めるためとはいえ…普段恥ずかしくて言えないようなこと、めっちゃ言ったなぁ」カァァァ

男「あー…ダメダメ、顔赤くしてる場合じゃない。付き合ってから初めてのデートだから、二人で思いっきり楽しまなきゃな」ブンブン

幼「男、準備終わったよ。入って良い?」コンコン

男「俺もちょうど終わったとこ。カギは開いてるから入って」

幼「お邪魔します」ガラッ

男「おー、薄く化粧するだけでずいぶん変わるんだな。髪も直って可愛いくなったぞ」

幼「ありがと。結構練習してたんだよ。あんまり厚くやると、かえって変になっちゃうから」ニヘッ

男「……」カァァァ

幼「どうしたの?急に黙って顔赤くしちゃって」

男「いつもはしないような笑い方で…ちょっとビックリして」カァァァ

幼「えっ…やだ、ごめんね。嬉しくてにやけちゃった。直してきたはずなのに…」カァァァ

男「いや、直さなくて良いよ。その…すっごく可愛いから」カァァ

幼「そ、そうかな?下品じゃない?」カァァ

男「うん、全然下品じゃない。むしろそうやって笑って欲しい」

幼「男……ありがとね」ニヘ

男「空を飛ぶ前に確認することってある?」

幼「操作方法かな。アナログパットで移動、タッチペンで照準を合わせて、Lボタンで射撃します」

男「スペシャルアタックは下画面の青い玉をタッチするんですね…って、パルテナの空中戦か!」

幼「えへへへ、冗談だよ。特に無いから心配しないで」ニコッ

男「幼が冗談言うのって珍しいな。さっきの炎ブレスのキスとかも」

幼「ごめんね。ホントに嬉しくて、テンションが上がっちゃってるみたい」テレッ

男「まあテンションが上がるのは分かる。空を飛ぶなんて普通は経験できないからなー」

幼「だ、大好きな男と一緒だから余計に…はしゃいじゃってごめんね」カァァ

男「謝らないで…それも分かるから。幼ほど表に出ないみたいだけど、俺もそうだし…」カァァ

幼「えへへ。それじゃ、後ろから…失礼します」ギュッ

男「……あ、あのさ、好きにして良いって言っといて悪いんだけど…もうちょっと離れてくれないか?」

幼「ごめんね。こんなに密着しちゃ…嫌だったよね」シュン

男「い、いや、くっつかれるのは歓迎なんだけど、その…」カァァ

男「背中に胸が当たってるのが気になって…いいのかなって」カァァァ

幼「えっ……あ、ご、ごめんなさい!」カァァァァァ

幼「あの、気付かなくて…私の胸なんか触っても、嬉しくなかったよね…」シュン

男「いや、べ、別にそんなことないよ、柔らかかったし……嬉しかったよ」カァァァ

幼「よかった…男が喜んでくれて。わたしね、胸がちっちゃいのがコンプレックスだったんだよ…」カァァァ

男「………え?ちっちゃい?」

幼「うん…ちっちゃいから、抱きいても感触なんて分からないと思ったの」カァァァ

男「基準は分からないけど…大きい方だと思うぞ?」

幼「褒めてくれてありがと。でも目標には遠く及ばないんだよ…」シュン

男(目標高すぎないか?十分巨乳じゃないかな…)

幼「ルーシィが理想なんだけど…」カァァ

男「ああ、なるほどルーシィかー…なんでルーシィ?」

幼「お、男はフェアリーテイル好きでしょ?胸の大きい女の子多いし、男もあれぐらい大きいのが好きなんだと思ったの。17歳だから歳近いし、ちょうどいいと思って…」カァァ

男「頑張ってくれてたのは嬉しいんだけど、さすがに無理あるよ…」

幼「そ、そうだよね。私には男好みの胸なんて無理だよね…」シュン

男「そんなことないぞ。い、一番好きな大きさは…その…幼の胸だから」カァァァ

幼「そ、そうなの?…ありがと。えへへへ…やったあ」テレッ

男(大きさは気にしないよとか、小さい方が好きだよって言い方だと悲しむだろうしな。ちっちゃいって気にしてたし…幼の笑顔のためなら恥ずかしいのぐらい耐えなきゃな)

幼(コンプレックスだったけど、男が一番好きだって褒めてくれた…嬉しくて、またにやけて変な顔になってないかな?)

幼「ごめんね、脱線させちゃって。今度は当たらないように、少し離して抱えるからね」

男「そうしてもらえると助かるよ。…あとさ、外に出てから出発しないか?窓から出ると戸締まりできないから」

幼「あっ、そうだね、早く行きたくて忘れてたよ。私も戸締まりしてなかったから、先に庭で待ってて欲しいんだけど…」シュン

男「気にしないで。俺も閉め忘れが無いか確認するから、幼も戸締まりしてきて良いよ」

幼「ありがと。すぐ戻ってくるからね!」フワッ

男「よし、俺も確認し始めるか。デート中に気になって、楽しめなかったなんてことが無いようにしないと」

幼「お待たせ。もう忘れ物は無いかな?」

男「戸締まりしたし、おやつのバスケットも持った。完璧だ」

幼「それなら、もう一度失礼して…お腹のあたりを持つね」ガシッ

男「よし、いつでも良いぞ」

幼「待って。私も早く行きたいんだけど…最後に、ちゃんと二人で飛べるかテストするよ」バサッ

フワフワ

男「大丈夫みたいだな…重くないか?」

幼「全然重くないよ。男の言った通り、すっごく力が強くなってるみたい」

男「よかった…それじゃ、確認も完了したことだし、お願いするよ」

幼「うん、飛ぶのは私に任せてよ。初の空中デートへ…しゅっぱーつ!!」バシュン!

幼「とりあえずまっすぐ上昇するよ!」

男「分かった!それにしても…けっこう速く飛ぶんだな。もう家が小さく見えるぞ」

幼「人に見つかると騒ぎになっちゃいそうだからね。私はこの速さでも平気だけど…大丈夫?苦しくない?」

男「平気平気、風が涼しくて気持ちいいぞ!」

幼「よかった。もう少し上がったら横に向きを変えるね」

男「あ、横向きになる前に少し止まって欲しいんだけど」

幼「どうしたの?」

男「せっかくだし、空からの景色と、幼とツーショットの写真撮っときたいんだ。初デートの記念に」

男「俺の携帯で撮って、後で幼に送るからさ…ダメ?」

幼「だ、だめじゃないよ!私もツーショット…撮って欲しいな」カァァァ

男「ありがとな、幼」

幼「こ、こちらこそ…」カァァァ

幼「それじゃ…止まるよ」

男「ありがとう。先に景色を撮るぞ」カシャッ

男「おお…わりとキレイに撮れるな。はい幼、これで見えるか?」

幼「ありがとね。…うん、とっても上手に撮れてるよ」ニコッ

男「どうも。次はツーショットいくぞ。このままじゃ撮れないから、幼は俺の顔の横から顔出してくれ」

幼「うん」ピトッ

男「えっ…あの、えと…頬擦りしたまま撮っていいの?」カァァァ

幼「顔、離さないとだめ?幼馴染みで、普通の写真はいっぱいあるから、こ、恋人というか将来の夫婦というか…そんな感じの写真が欲しくて」カァァ

ピッ

幼「その、だからといってキスしてる写真が欲しいかというと…欲しいんだけど、まだ火を吐いちゃうし、恥ずかしくて撮れないし…こ、これも恥ずかしいけど、せっかくなら今までより仲良く見える方が」カァァァァ

カシャッ

幼「よくって………え?今の、とっ…たの?」

男「うん…撮っちゃった。はい」

幼「あ…こ、これ今の私の顔なの?」カァァ

幼「すごく、まっかっか…」カァァァァァァァ

男「よし、保存しとこう」ピッ

幼「い、いやあぁぁ!やめてよ!そんなのじゃなくて、もっと可愛く撮ったの保存してよ!」バサバサバサ!

男「やめて暴れないで落ちちゃうから!」

幼「撮り直してよ!もっと可愛く笑うから!」ジタバタ

男「分かった、撮り直すよ……でもこの写真も、真っ赤で凄く可愛いと思うんだけど」

幼「可愛くないよ!そんなの残されたら恥ずかしいよ!消してよ!」ジタバタ

男「すまん、幼の頼みでも今回だけは聞けない。大事な思い出だし、待受にするよ」

幼「やめてよ!誰かに見られたらどうするの!」カァァァァ

男「それもそうだな…思い出は見せびらかすものじゃないか。ロックのかかるフォルダに入れとくよ」

幼「それなら安心だね…そういう問題じゃないよ!!」ジタバタ

幼「消してくれないなら、今回だけは力ずくで取って消しちゃうからね!」プンスカ

男「良いけど…両手が塞がってるのにどうやって?」

幼「両手で抱えないと男が落ちちゃうけど…抱きついて尻尾を使えば、片手が空くから携帯を取れるよ!」ギュッ

男「そんな手があったか。でも腕を伸ばせば!」

幼「と、届かない…それなら最後の手段!」

グルンッ

男「うおっ!?」

幼「奪取成功、私の勝ちだよ!」パシッ

男「向かい合わせになるように回すなんてずるいぞ…」

幼「男がいじわるするからだよ…消させてもらうね」

幼「あれ?データフォルダに無いよ?撮ったばかりなのに…」

幼「も、もしかして、もうロックされて……消せないの…?」ワナワナ

幼「そ、そんなぁ…」ポロポロ

幼「ひどいよ………本当に恥ずかしいのに、あんな不意打ちの、真っ赤な顔を残すなんて…あんまりだよ…」ポロポロ

男「ご、ごめん!!ちょっとふざけただけなんだ!泣かすつもりは無かったんだ!」オロオロ

幼「ほ、ほんと?いつもあんなにいじわるしないのに…いつもなら、力ずくでって言ったあたりでやめてくれるのに、やめてくれなかったよ…」ポロポロ

男「それは…初めてのデートでテンションがおかしくなって、幼とじゃれるのが楽しくて…ちょっと意地悪してみたくなっちゃって…」

男「ごめんな。泣いて欲しくないとか言ったくせに、自分で泣かせて。振られる心配するのは俺の方だったな…俺のこと嫌いなったよな?婚約も告白も、取り消していいよ」シュン

幼「そ、そこまでは言ってないよ。元はといえば、私が頬擦りしてるの撮って欲しいって言ったのが悪いんだし」オロオロ

男「幼は優しすぎるよな…本当にごめんな」

幼「わ、私こそ。ちょっといじわるされただけで泣いてごめんね」

男「それじゃ、ちゃんと消すから見ててくれよ」

幼「うん、ありがとね。今度はもっとちゃんとしたのを…あれ?」

幼「私の顔も赤いけど、男の顔もまっかっかだ」

男「そ、そりゃそうだろ。彼女に初めて頬擦りされて、平常心でいられるやつなんていないよ…」カァァァ

幼「あのさ…やっぱり消して撮り直さなくて良いよ?」

男「えっ!?なんで?あんなに消したがってたのに」

幼「さっきは慌ててて、私だけが真っ赤になってると勘違いしてたんだよ。男も真っ赤だし…私も可愛いと思うよ?真っ赤な顔の男」

男「そ、そうか?…あんまり嬉しくないな」カァァァ

幼「初めてなんだし、二人とも恥ずかしいんだし、仕方ないよね」ニコッ

男「えっと……幼の機嫌が直ってくれてなによりです」カァァァ

幼「……でも、待受にするのはやめてね。二人で、秘密にしようね」カァァァ

男「わ、わかった、ありがと」カァァァ

幼「記念写真は撮れたから体勢を戻して横向きに飛ぶけど、行きたいとこあれば先に聞くよ」

男「あー…強いて言うなら、神社に行きたいな」

幼「昨日の神社?」

男「うん。林の中だから見つかる心配もあまりないし、もう一回お願いしたら元に戻れるかもしれないしさ。一通り飛び終わってからでいいんだ」

幼「気を遣ってくれてありがと。でももう良いんだよ、このままの姿でも。男が一緒にいてくれれば」

男「えっ?お安いご用だけど…それで良いのか?」

幼「うん。元に戻りたい理由は、男とデートができなくなっちゃったことと、一人で生きられなくなったことだったんだよ」

幼「男とのデートが楽しみ過ぎたおかげで…あまり気にしなくて済んだんだけどね」テレッ

幼「翼と尻尾が邪魔で、自分で着替えられなくなったでしょ?」

幼「今日は土曜だからいいけど、月曜から学校に行かないといけないから、体育の時とかに困っちゃうんだよ」

幼「それに、学校に行くとみんなにこの姿を見られるでしょ?」

幼「化け物とか怪物とか呼ばれていじめられたり、翼や尻尾を乱暴に扱われたりして…孤立しちゃうと思うんだ」

幼「そうなるとさ…私一人じゃ耐えられないんだよ。男にさよならって言った時も、行くあても無く出ていこうとしたから…」

幼「男が止めてくれなかったら、きっとどこかで……一人ぼっちで死んでたよ」

幼「でも今は違うよ。大好きな男が一緒にいてくれるから」

幼「男は、私が服を着替えるときに手伝ってくれる?」

男「女子更衣室に入るのはさすがに無理だけど…手伝うよ」

幼「私がいじめられても、隣にいてくれる?」

男「いるだけじゃなくて全力で守るよ。俺の力じゃ、助けになるか分からないけど」

幼「こんな姿でも、たいしたことしてあげられないけど、迷惑かけるけど…私をお嫁さんにしてくれる?」

男「もちろん。その姿は俺のせいだけど…どんな姿だろうと俺は幼が好きだ。一緒にいたい」

幼「えへへ、ありがと」ニコッ

幼「ほらね、男がいてくれれば全部解決なんだよ。この姿でも笑って生きていけるよ」

幼「男には悪いんだけど…初めは少し心配だったんだ」

幼「いつもは優しい男でも、下着で押し掛けて家に入れてくれるかな?エッチなことされないかな?気持ち悪がらないで仲良くしてくれるかな?って」

幼「でも心配するだけ無駄だったよ。部屋に入れてくれて、毛布で隠させてくれた。服を着せてくれて、元に戻る方法も考えてくれた」

幼「振られたって勘違いして出ていこうとした時も引き止めてくれて、何度も泣いた私を慰めてくれた」

幼「もう無理だと思ってたけど、付き合ってくれて、デートしてくれて…結婚するって約束までしてくれた」

幼「最初から信じきれなくて、ごめんね。しつこいかもしれないけど……なにからなにまで、本当にありがとう。これからも迷惑かけるけど、よろしくお願いします」ペコリ

男「こちらこそ。及ばないところだらけだけど、よろしくお願いします」ペコリ

幼「えっと……あっ、ただ迷惑かけっぱなしじゃないよ!私を庇って男がいじめられたら、その時は私が助けるから!」アタフタ

幼「男のためなら滅竜奥義だって朝飯前だよ!役に立てるように魔法の練習もするよ!」フンス

幼「着替えを手伝わせても遅刻はさせないよ!一緒に空を飛んで学校に行くよ!朝御飯もお弁当も晩御飯も作るし、寝坊しないように朝起こしに行くよ!」フンス

男「幼…ずいぶん頼もしくなったな。今朝とは大違いだ」

男「今までなら「ほんとに私で良かったの?着替えを手伝わせるし、いじめられるんだよ?結婚の約束して後悔してない?」とか言って泣いただろうに」

幼「うう…その通りだけど…恋は女の子を強くするんだよ。好きだから、一緒にいてくれるから強くなれたんだよ」カァァァ

男「どういたしまして。泣かなかったのは進歩だけど、心配性なのは変わらないな」

男「いじめられたりなんかしないよ。目立つ方じゃないけど人気者だし、俺以外にも力になってくれる人はいっぱいいるよ」

幼「そ、そうかな…今まで仲良くしてても、急に冷たくなる人っていない?」

男「少なくとも幼の知り合いは良い人ばかりだから…心配ないと思うぞ」

男「あとさ…迷惑って何度も言ってたけどとんでもない」

男「可愛いくて優しくて頑張り屋で…なにより人の心配をすることができる、そんな理想の女の子の彼氏になれたんだ。着替えの手伝いや庇うぐらい、迷惑のうちに入らないよ」

幼「り、理想の…」カァ

男「今日だって何度も俺に謝ってきたし…自分が困ってる時に他の人の心配をするのって難しいんだぞ?」

幼「男の…理想の女の子…」カァァ

男「友に聞かせたら羨ましがるだろうな。「下着を見た上に付き合って結婚の約束!?ふざけんな!いくら仲良し幼馴染みでも…んなことあってたまるか!」」

幼「えへ…」カァァァ

男「「あーんしてくれて、晩飯作ってくれて、一緒に空を飛んでくれただと…」」

幼「えへへ…」カァァァァ

男「「羨ましいぞ!そんなハイスペック世話焼き彼女!俺も神社行ってドラゴン娘の彼女下さいって頼んでくる!!」とか」

幼「えへへへ!」グルンッ

男「言っちゃっておっ?なんで急に」

幼「えへへへへ!」ゴォォォォ!

男「回すんわぁぁぁぁ!?」

幼「ぐーの、ね!」

幼「どこかへ連れてって!ブリキの馬に乗って…二人で」

幼「GO!GO!Let's go!ロマンス!」バシュン!

幼「片思いのドールは、言葉にできないから…切ない」

幼「GO!GO!Let's go!ロマンス!」バシュン!

男(フェアリーテイルのエンディング歌い出した!)

男(歌に合わせてめちゃくちゃな軌道で加速するし…終わるまで止まらないつもりなのか?)

幼「涙が出ちゃう…弱虫だね。あなたのこと…想う度に。月の…夜は…いつも…うさぎを探してる!」バシュン!

男(歌は上手いし可愛いけど…速い!怖い!酔っちゃう!)

幼「ぐーのね出ないくらいに、魔法かけられたみたい。ずっと、夢から覚めないの。恋は独り言」

幼「ぐーのね出ないくらいに、コテンパンに好きなんです。どんな呪文を唱えたら、伝わるのでしょう?完璧…ぐーのね!」

男(よし終わった…耐えきったぞ…)ゲッソリ

幼「いきなり抱きしめて!架空の王子様…お願い」

男(嘘だろ…まだ続くのか?エンディング版じゃなくてフルで歌うのか…?)

幼「GO!GO! Let's go!LOVE!LOVE!」バシュン!

幼「おもちゃのダイヤモンド、キラキラ輝くまで…見つめて」

幼「GO!GO! Let's go!LOVE!LOVE!」バシュン!

男(おぉ…まだ速くなる…)

幼「遠くにいても…待ち続ける。あなたのキス…届く日まで。星の…光…照らす…ハートのラビリンス!」グオングオン!

男(まわる…目が回る…)

幼「ぐーのねあのねそれでね、胸が締め付けられても。なぜか、とてもしあわせなの。恋はファンタジー」

幼「ぐーのねあのねそれでね、魔女に薬飲まされて。蛙や豚になったって、あなたあきらめない。素敵な…ぐーのね!」ギュルルル!

男(錐揉み回転まで…すまん幼、もうだめだ…)ガクッ

幼「ぐーのねも出ねえぜ!」

幼「……ふう、ごめんね。急に歌いたくなっちゃって…」カァァァ

男「」グッタリ

幼「えっ…あれっ?なんかぐったりしてる……」

幼「マーフィー君じゃないんだから、そんなにぐったりしなくても良いんだよ?ぐったりランキングにランクインしちゃうよ?」ユサユサ

男「」グッタリ

幼「動かない……冗談じゃなくて、本当にぐったりしてるの…?」プルプル

男「おさな、ゆすらないで………やっと止まってくれ」

幼「うわぁぁぁぁぁ!!」ポロポロ

男「」ビクッ

幼「ごめんなさい!ごめんなさい!」ポロポロ

幼「褒めてくれて嬉しくて!理想の女の子だって!迷惑のうちに入らないって!」ポロポロ

幼「聞かせたら羨ましがるって!だから舞い上がっちゃって、照れ隠しで思い切り速く飛んじゃって!」ポロポロ

幼「歌うのに夢中で…気付かなくてっ…ごめんなさい…」ポロポロ

幼「迷惑かけっぱなしじゃないよって、言ったばかりなのに……」ポロポロ

幼「やっぱり私、男に迷惑かけっぱなしだよ…」ポロポロ

幼「助けて、もらったのに…飛ぶのは任せてって、言ったくせに…」ポロポロ

男「デート中に泣くのは…自虐はやめて……」

幼「お…起きてたの…?」ポロポロ

男「酔って気持ち悪くなって……速すぎてちょっと…気絶しちゃっただけだから、自虐は止めてくれな」

幼「ごめんなさい、わたし…彼女としても、幼馴染みとしても失格だよ。男を苦しめてるのに、気付こうとしなかった……ずっと一緒に飛んでたのに」ギュッ

男「あまり気に病まないで…初フライトだし。ただ、今度はもう少し…ゆっくり飛んでくれな?」

幼「うん…ごめんね。ごめんね…」ポロポロ

数分後
幼「そろそろ…気持ち悪いの、治った?」

男「背中をさすってくれたおかげで、だいぶ良くなったよ。ありがとな」

幼「どういたしまして。滅茶苦茶な飛び方して、酔わせちゃってごめんね。トーストもどこかに落としちゃってごめんね…」シュン

男「もういいんだよ気にしなくて。俺は気にしてないし、はやくデートの続きがしたいな」

幼「ありがと。…そうだね、せっかくのデートだもんね」

男「そうそう。二人で思いっきり楽しまなきゃ」

幼「改めて聞くけど…行きたいとこの希望ある?」

男「うーん…やっぱり、最後に神社に行ってくれれば、他は幼の好きにして良いよ」

男「俺たち二人とも、恋人になれたら二人で幸せになりたいってお願いだったし、ちゃんと恋人になれましたって報告しときたいんだ」

男「もう既に幸せだけど…これからもお願いしますって」

幼「なるほど…良いアイデアだね。私もそうするよ」ニコッ

男「ありがとな。まだ聞いてなかったけど、幼は行きたいとこあるのか?」

幼「私はね……特にないかな。男と一緒に飛べるだけで幸せだし」

幼「だから、行きたい場所じゃなくて、したいことでも良い?」

男「もちろん。好きにして良いって言ったしな」

幼「ありがと。それなら…二人でのんびり過ごすのはどうかな?」

幼「けっこう遠くまで来ちゃったし、神社に向かってゆっくり飛びながら、いっぱいお喋りして」

幼「夕方になったら神社に降りて、報告してから晩御飯の材料のお買い物をしたいな」

男「それいいな。じゃあ二人で、空でのんびりしよう」

幼「ありがと。それじゃ出発するよ」

男「いいぞー」

バサッ スィーッ

幼「えっと…これぐらいのスピードで良いかな?」

男「うん。ゆったりしててちょうど良い速さだ」

幼「ありがと」ニコッ

幼「さっきの歌は、実は幼友ちゃんのアイデアなんだよ」

男「どういうこと?」

幼「デートで緊張して告白できなかったら、完璧ぐーのねを歌ってみたら?伝わらなくても、男君が知ってる歌だからごまかせるよって」

男「直接言えないなら歌詞で気持ちを伝えろ、失敗したらアニメの話で誤魔化せってことか。幼友さん、良いアドバイスしてくれたんだね」

幼「うん。今日着てる服も選ぶの手伝ってくれたの。歌も、私の気持ち…そのものだよ」カァァァ

男「それじゃ、俺は王子様なのか?」

幼「私にいつも優しくしてくれる男は、私の王子さまだよ」カァァ

男「ありがとう。でも実在するから架空の王子様じゃないな」

幼「遠いってことを表現してるんじゃないかな?他の言葉で言うなら……絵の中の救世主?」

男「ガンダムAGEか…三つの運命が、歴史になる」

幼「私の夢は曾孫まで仲良くだから、最低四つは歴史にしたいな」

男「一緒に長生きしないとな」

幼「うん、一緒に長生きしようね」

幼「話を戻すけど…もし良かったら、男にも歌って欲しいな…私への気持ち」カァァァ

男「いいけど……できれば今じゃない方がいいな。歌うのに最適なシチュエーションがあるんだ」

幼「どんなとき?」

男「幼が泣いてるときとか、不安になってるとき。聞けばきっと元気になれる歌だからさ」

幼「それなら、男がその歌を歌ってくれる時まで楽しみに待ってるよ」ニコッ

男「嬉しいけど、なんか複雑だな…元気づける歌を期待されるってのは」

幼「えへへへ…泣かないように頑張るけど、泣いちゃったときはお願いね?」テレ

男「了解。俺は幼と違って歌うの下手だけど頑張るよ」

幼「そんなことないよ。男は歌うの下手じゃないし、私は大好きだよ?男の歌を聴くの」

男「ありがと」ニコ

男「幼が、俺のこと好きだって思い始めたのっていつ?」

幼「えっ…えええっ!?」ボォォォッ

男「えと、今の音は…ほっぺからの炎?」

幼「…うん。変な声出してごめんね、いきなりで、びっくりしちゃって」カァァ

男「突然変なこと聞いてごめん。なんか久しぶりだね、それ」

幼「たしかに…デートし始めてからは、顔が真っ赤になっても炎は出てないや」

男「どんどん上達してるみたいだな…本物顔負けの成長速度だよ、きっと」

幼「えへへ」テレテレ

男「この調子でいけば、紅蓮爆雷刃とか、グレートファイヤー…死んじゃうから使わないで欲しいけど、神竜一声もできたりしてな」

幼「男はやっぱりそういうのに…漫画の必殺技に憧れる?」

男「えっと…憧れてる。自分でも、子供っぽいとは思うけど…」カァァ

幼「ということは…やっぱり見てみたい?」

男「うん、実際に見てみたい…できれば、使ってみたい……です」カァァァ

幼「それなら、私が見せてあげるよ。男が見たい技で…私にできるやつなら」

男「いっ、いや、いいよ別に。幼は俺のおもちゃじゃないんだし、そんなことさせられないよ」オロオロ

幼「いいんだよ。私がやるって言ってるんだから」

男「でも…」

幼「いいの。男は私のお願いをみんな聞いてくれたから。私も、男のお願いを叶えてあげたいんだよ」

男「恥ずかしい写真を消してってお願いは、聞かなかった上にロックまでかけたけど…」

幼「私とじゃれたかったって、正直に言ってくれたから…もう気にしてないよ」カァァ

幼「私も、男とじゃれるの、たのしいもん……」カァァァァ

男「えっ…?さっきは嫌がって怒って…泣いてたと思うんだけど…」

幼「あれはちょっとやりすぎ。好きな人に、あんなにいじわるされたら悲しいよ…」シュン

幼「私は泣き虫だから…もうちょっと優しく、冗談で済む程度にじゃれあうのが好きなの…」カァァァ

幼「ロックに気付くまでのやりとり、実は…けっこう楽しかったんだよ……」カァァァ

男「そ、そうだったのか…」カァァ

幼「変かな?私から男にじゃれつくことってあまりないから…周りからは、いじわるされるのが好きなんだと思われるかな?」モジモジ

男「別に…変じゃないと思う。もし幼が変なら、俺はもっと変だろうし」カァァァ

幼「か、変わり者同士で、お似合いのカップル…かな?」カァァァ

男「ああ……でぇきてるぅ、とか言われまくるレベルだ」カァァァァ

幼「うぅっ…ハッピーの真似して、ま、巻き舌風に言わないで!余計に恥ずかしくなるよ!」カァァァァ

男「幼もハッピーの真似したじゃん。あいさー!って」

幼「えっ?あれ…気付いてたの…?」カァァ

男「気付くに決まってるじゃないか。俺は毎週マガジン買って読んで、単行本も集めてるし。主人公の相棒のセリフだぞ?」ケラケラ

男「スルーしたけどすごく似てたし、可愛かったよ」

幼「ありがと…でも褒めるならそのときに褒めてよ!自分では似てると思ってたけど、実は気付かれないほど下手なんだってちょっぴり落ち込んじゃったよ!」

男「ごめんごめん。今度からそうする。でもあんまり褒めると暴走するから…ほどほどにしとくよ」

幼「もうしない!急加速したり歌ったり回ったりしないから…思いっきり褒めてよ。男が褒めてくれないとさみしいよ…」シュン

男「どうしよっかなー…」

幼「男が褒めてくれないなら…必殺技見せるのやめる。空飛ぶのもやめて今すぐ帰るよ」プイッ

男「ごっごめん、ごめんな、ごめんなさい!幼の使う必殺技見たいです!デートもまだやめたくありません!」

幼「どうしようかな。前半がちょっとふざけてる気がするし。コドラココドラボスゴドラみたいに繋げただけ…コドラとココドラは順番逆だっけ」

男「そんなぁ…」シュン

幼「あっ…、言い過ぎたよ、ごめんね。謝ってくれたからもういいよ。…私も男に必殺技見せてあげたいし、デートももっと続けたいな」

男「いや、幼が謝ることないって…ごめんな」

幼「えへへ…」テレテレ
男「…あはは」テレテレ

男「やっぱこれだな、俺たちのじゃれあいって」ケラケラ

幼「そうだね。男がふざけて、私がむきになって言い返して」クスクス

男「本気で怒る前に俺が謝って、幼もなぜか謝って」

幼「男がもう一回謝る。こんなに分かるようになるまで繰り返してるのに、不思議と飽きないんだよね」 

男「この当たり前のやり取りが無くなるのが怖くて、今まで告白できなかったんだろうな、俺達」

幼「うん、私達は振られるのが怖かったんだよ。告白しなくても、いつか無くなっちゃうのに」

男「来年は就職とか進学とかあるもんな…ただの幼馴染みのままだったら、嫌でも離ればなれになっちまう」

幼「進路決める前に告白出来て良かったよ。お嫁さんの内定もらえたし」ニヘッ

男「それ、もう取り消しできないし、しないけど良いか?」

幼「もちろん。就職したら生涯現役で、絶対に退職しないよ!」

男「ありがとう。今更だけどさ…両想いなら、もっと早く告白すりゃ良かったよ。高校に入学してすぐとかに。もう行事ど終わっちまったし…恋人として、一緒に楽しみたかったな」シュン

幼「来年楽しめばいいよ。それに、今年も文化祭と冬休み、ハロウィンや誕生日やクリスマスや大晦日…一緒に楽しめる行事はまだ残ってるよ」

男「そうだけど…修学旅行終わったじゃん」

幼「うん、初めての沖縄、楽しかったよね。男と恋人どうしなら、もっと楽しかっただろうけど…」カァァ

男「ああ、そうだな。それでな…」

幼「なにか嫌なことがあったの?…だったらごめんなさい、同じ班なのに気付けなくて」

男「いや、幼のせいじゃないよ。…こういう行事って、告白のチャンスだよな?」

幼「そうだね。そういう話をしてる女子はたくさんいたよ。私も、そろそろ男君に告白すれば?って言われたんだけど…恥ずかしくて、できなかったよ」カァァァ

男「女子もか…男子もそんな感じでさ、俺もやるぞ!って思ったんだよ」

男「でもって、修学旅行の間、いつ呼び出して、どう告白しようかずっと悩んでて…楽しみきれなかったのが心残りなんだ…」

幼「えっと……ごめんね?私が告白してれば、三日目ぐらいはモヤモヤしなくて済んだよね?」

男「いや、だから幼は悪くないって…もういいんだよ。一回きりだし、ちょっともったいなかったってだけだから」

幼「……だったら、いつか二人で沖縄に行こうよ」

幼「修学旅行で楽しめなかった分のやり直しと、新しい思い出作りに」

幼「男とデートするのに使うお金を削って貯金して、今を楽しめなかったら意味が無いから…だいぶ先になっちゃうけど」

幼「結婚するまでを目標にゆっくり貯金して、旅行しようよ」

男「…それじゃ修学旅行のやり直しじゃなくて、新婚旅行じゃないか?」

幼「えっ、新婚?……ホントだ…気付かなかったよ」カァァ

幼「だったら…新婚旅行のついでにできるように、新婚旅行で沖縄に行けばいいよ」

幼「空を飛べるようになったから、普通は見られない上からの景色を、いくらでも見せてあげるよ。きっと凄く綺麗だよ」

幼「今だって綺麗だもん、男と一緒に見る景色。でも高く飛んだら迷惑かな?飛行機の飛ぶコースにいたら邪魔だよね?」

男「…そうだな、速いから避けるのも難しいだろうし…」

幼「低めに飛ぶと、観光地だから怒られちゃうかな?海の上も…今度は船の邪魔をしちゃいそうだね」

幼「うーん…空からの景色を見せてあげるのは難しいね。私が言い出したのに、できそうになくてごめんね」

幼「でも、空が飛べなくても…二人で楽しめる、素敵な計画をたてようね。一生に一度なんだから、最高の旅行にしようね」

幼「いろんなとこ見てまわったり、美味しいもの食べたり、水着を着て海で遊んだり…えへへへ。今からもう待ちきれないよ」ワクワク

男「ああ…」

幼「…男?もしかして、泣いてるの?」

男「そう、だけど…な、なんで分かったんだ?」グスッ

幼「堪えてるみたいだけど、涙声になってるから…」

幼「勝手に行き先を決めたり、ついでとか言ってごめんね。元気付けてあげたかっただけで、悪気は無かったんだよ…」シュン

男「謝らなくていいよ、悲しいんじゃなくて…嬉しくて泣いてるんだから」グスッ

幼「よかった…嫌で泣いてるんじゃなくて。ちょっとでも喜んでくれて嬉しいよ」ホッ

男「ちょっとどころじゃなくて、凄く嬉しいよ。……ごめんな、俺のわがままに付き合わせて。せっかくの新婚旅行なのに…幼だって他に、行きたいとこがあるはずなのに…」グスッ

幼「気にしないで。私だって男にわがまま言ったし、また沖縄に行きたいと思ってたし…それに、男と一緒なら、どこに行っても楽しいよ」

幼「行き先より、一緒に楽しむことが大事なんだよ。男がしょんぼりしてたら、私も悲しいよ」

幼「男は私に、笑ってて欲しいって言ってくれたよね。私も、男に笑ってて欲しいな」ニコッ

男「おさ、なぁ…ありがとう…」ポロポロ

幼「どういたしまして。人のこと言えないけど…嬉し涙でも泣き止んでよ。必殺技、しっかり見て欲しいから」

男「わかった!」グシグシ

幼「泣き止むのはやいよ!やっぱり人のこと言えないけど…はやいよ!」

幼「このままじゃ見づらいから姿勢を変えるね」

男「お願いするよ」

幼「まず男を回して向かい合わせに」グルン

男「まずは?続きがあるの?」

幼「うん。私も回るよ」グルンッ

男「えっ…こ、この体勢は、なんというか…」

幼「二人っきりだから良いよね?必殺技の間だけだから…」モジモジ

男「良いけど誰にも言わないでくれな…彼女にたかいたかいされたなんて知れたら……」カァァァ

幼「言わないよ。やってる方も、意外と恥ずかしいし…」カァァァ

男「そ、そうか?」カァァァァ

幼「えへへへ…たかいたかーい」ニコニコ

男「幼…けっこう楽しんでない?」

幼「そ、そんなことは!………あるかも。ごめんなさい…」カァァ

幼「で、でも…男の顔を見れて嬉しいんだよ。普通に横向きに飛ぶと、後頭部しか見えなくてさみしいもん…」カァァァ

男「確かに。俺も幼の顔見れて嬉しいしな。…写真の時以来だな、お互いの顔見るのは」

幼「分かってくれてありがと。……別にデートに不満があるわけじゃないからね?」

男「分かってるよ。でもたかいたかいは恥ずかしいよ。赤ちゃんじゃないんだし…」カァァ

幼「あ、後で私にもたかいたかいしていいよ。それで許してくれる…よね?」カァァ

男「別に怒っちゃいないよ。それに…いくら幼が軽くても難しくないか?俺あんまり力強くないし」

幼「なら、お、お姫様抱っこ!これならそんなに高く持ち上げなくていいから、できるよね?」

男「それも結構大変そうじゃないか。もし俺が落としたら怪我するぞ。良いのか?」

幼「いいよ。男は私を落とさないで…お姫様抱っこしてくれるって、信じてるから」カァァァ

男「…わかったよ。お姫様抱っこで許すよ」

幼「えへへ、よかった。ありがと!」ニヘッ

男「…………ん?あれ?「代わりにして良い」から「して欲しい」に変わってないか?」

幼「……うん。これも男としたくて、憧れてたの。ほんとに、子供っぽい彼女でごめんね…」カァァァ

男「そうか…俺も必殺技見せてもらうから良いよ。降りてから、二人っきりでしような」

幼「…おねがいします」カァァァァ

男「さて、見やすい体勢にしてもらったし、必殺技やってもらっていいかな?」

幼「う、うん…行くよ!まずはこれ、ファイヤーブレス!」

ボォォ!

幼「次は威力を上げて…バーニングブレス!!」

ボオオオ!!

幼「ちょっと種類を変えて、炎竜旱天!」

ゴォォォ!

幼「あって当然だけど…火竜の咆哮!」

ゴォッ!

幼「…うん、うまくできたみたい。どうだった?まだへたくそかな?」

男「そんなことない!凄い、凄いぞ幼、カッコよかった!最高だよ!」パチパチ

幼「そ、そう?えへへへへ」テレテレ

男「満足したよ。見せてくれてあれがとな」

幼「えっ、もう?」

幼「早くない?ブレスだけじゃ物足りないと思ったんだけど…」

男「たしかに他のも見たいけど、俺を上に投げるとかしなきゃできないし…幼にあんまり無理させられないよ」

幼「ありがとね。でも、必殺技じゃないけど、もう少しだけあるんだよ。背中から出すから見ててね」ゴォッ

男「おっ、ヒノアラシっぽいな」

幼「あたり。尻尾があるから、ヒトカゲの真似もできそうだよ。どう?似てるかな?」ボッ

男「うん、そっくり。ちょっとやってみせるだけで、小さい子供や俺にモテること間違いなしだ」

幼「お、男にだけモテればいいよ。……ありがと」カァァァ

幼「今できそうな技はだいたいできたから、元の体勢に戻すよ」

男「いいのか?このままデートしてもいいんだぞ?」

幼「いいの?」

男「向き合ってた方が喋りやすいし、そのほうがデートしてて楽しいしな」

男「それに、たかいたかいするの楽しいんだろ?せっかく二人っきりなんだし…もっと、してもいいんだぞ?」カァァ

幼「男…ありがと。お言葉に、甘えさせてもらうね」カァァ

幼「えへへ…たかいたかーい。たかいたかーい」ニコニコ

男「あははっ、なんというか…恋人じゃなくて、子供と母親みたいだな。子供がでかすぎるけど」ケラケラ

幼「いつか本当にお母さんになるんだから、今から練習しとかないとね」

男「幼はいいお母さんになれそうだな」

幼「そのときは、男がお父さんだからね」ニコニコ

男「そうだな」

幼「あの、その…えっと、だっことかおんぶの練習は…わわ、私でしてね。重いし、大きいけど…」モジモジ

男「えっ、えーと…幼は重くなんかないよ。……ありがとな。俺も頑張るからな」カァァァ

幼「えっと……そういえば、まだ質問に答えてなかったね」

男「質問…あー、あれか」

幼「その、答えだけど…」モジモジ

男「いや、俺が聞いたんだから先に言うよ。小学校三年生の時のバレンタインだ」

幼「…えっ?男も、なの?」

男「えっ?も?」

幼「うん。私も、その日に初めて好きだって思って、ずっと好きだったんだよ」

幼「そのときは、恋愛的な意味で好きかは分からなかったけどね」

男「俺もだよ。ちっちゃいころから一緒にいたけど…惚れたのも一緒だったんだな、俺達」

幼「そうみたいだね…なんか素敵だね」

男「ああ、結ばれるべくして、ようやく結ばれたって感じ」

幼「今でもよく覚えてるよ。嬉しかったなぁ…」

幼『男くん、お待たせ!』

男『幼ちゃん、おはよー』

幼『おはよう。ごめんね、遅れちゃって。寒いのに外で待たせちゃった…』シュン

幼(チョコをランドセルに入れ忘れたのに玄関で気付いて、あわてて準備し直したなんて言えないよ…)

男『平気だよ。まだ時間はいっぱいあるし、ジャンバーも手袋も、帽子もマフラーもあるもん』

男『雪とか氷で滑って転ばないように、ゆっくり行こうね』

幼『あ、ありがとう、男くん』ニコッ

幼(今日も優しい…ありがとうって、ちゃんとチョコを渡さないと)

男『今日の授業楽しみだね』

幼『そうだね、実験楽しみだね』

幼(いきなりは恥ずかしいな…少しおはなししてから、チョコの話をしようかな)モジモジ








数十分経過

男『それでね…』

幼『うんうん…』

幼(ど、どうしよう、あげないと、学校についちゃうよ)モジモジ

男『学校が見えてきたね、幼ちゃん』

幼『あ、ああ、あのね』モジモジ

幼(は、はやく、はやくしないと)

男『どうしたの?』

幼『お、男くん今日は』

友『あっ!男くん、幼ちゃん』タタタッ

幼友『まって、だめだよ友くん!』

ツルッ ズテッ

友『いててて…おはようっ!』

幼友『もう、だめって言ったのに……幼ちゃん、男くん、おはよう』

幼『お、おはよう』(ま、まにあわなかった)

男『おはよー。友くん、走っちゃだめだよ、危ないよ』

友『ホントだね…でも平気だよ、へへへっ』ニコッ

幼(あげられなかった…休み時間にあげよう)シュン

休み時間

友『マフラーとかの毛糸をほんのちょっとだけ、ちぎってストーブのそばに…』

ウイタゾー! スゴーイ!
ボクヤリタイー ワタシモー

男『すごいなー、僕もやってみよう。幼ちゃんもやる?』

幼『えと…じゃあ、ちょっとだけ』モジモジ

ワイワイガヤガヤ

幼(なかなか二人っきりになれない…)

次の休み時間

コレアゲル アリガトー!

幼(他の女の子は、まわりを気にしないでチョコあげてる…すごいなぁ)モジモジ

男『トイレ行ってくるね』

友『次の男くんの番まで進めとくぞー』

幼(一人になった!でも、トイレに行くときに食べ物もらっても困るよね…)シュン

幼(このままあげられないと、お母さんに手伝ってもらって作ったのに、無駄になっちゃうよ)オロオロ

幼『うっ…うう』ポロポロ

幼友『ど、どうしたの幼ちゃん?具合悪いの?先生呼ぶ?』

幼『幼友ちゃん、違うの。あのね…』ポロポロ

幼友『なるほど…二人っきりの時にチョコをあげたいのね』ヨシヨシ

幼『うん…でも、朝はできなかったし、二人っきりになれても、できないかも…』グスッ

幼友『弱気になっちゃだめ。ありがとうって、ちゃんと伝えなきゃ。頑張って作ったんでしょ?』

幼友『お隣さんだから、男くんの家のポストに入れるのはどう?』

幼『ポストに?』

幼友『幼ちゃんのって分かるようにお手紙と一緒に入れれば、きっと喜ぶよ』

幼『あ!この可愛いメモ帳に書くのはどうかな?』

幼友『いいアイデアだよ!真っ白な自由帳より、きっと喜ぶよ!』

幼『えへへ…ありがとう!幼友ちゃん!』ニコニコ

幼友『お手紙書くの、私も手伝っていい?』

幼『うん!』

放課後

幼『お、男くん、今日は幼友ちゃんと遊ぶから、先に帰っていい?』モジモジ

男『いいよー』

友『だったら、僕たちは校庭で遊んでから帰ろうよ、男くん』

男『うん。また明日ね、幼ちゃん』

幼『う、うん。またね』







幼友『幼ちゃん、いよいよだね』

幼『そうだね…幼友ちゃんの作戦通り、男くんより先に帰って、ポストにチョコを入れるよ』ドキドキ

幼『幼友ちゃん、お手紙書くのと、先に帰るの、手伝ってくれてありがとう』

幼友『どういたしまして。頑張ってね幼ちゃん!また明日!』

幼『うん、また明日ね、幼友ちゃん!』

帰り道

幼『のんびり歩いても間に合うはずだけど…』

幼『ポストに入れるとこを見られちゃったら作戦の意味が無いから…ちょっとだけ走ろうかな』

幼『チョコも、男くんの家についたらすぐにポストに入れられるように、手で持った方がいいかも』ガサガサ

幼『よし、これでOK。急がなきゃ』タッタッタッ

幼『…男くん、喜んでくれるかな?』タッタッタッ

幼『お母さんに手伝ってもらったし、二つ作って味見もして、美味しかったから、大丈夫だとは思うけど…』タッタッタッ

幼『少しでも喜んでくれて、ありがとうって気持ち、伝えられたらいいな』タッタッタッ

幼『この角を曲がれば、もうすぐだね』タッタッタッ

幼『うん、男くんの家が見えてきた。あと少し』ピチャッ

ツルッ

幼『きゃあっ!』ステン

ぐしゃ パキッ



幼『うぅ…冷たい…いたいよぉ』ウルウル

幼『………え?かっ、紙袋が手の下に』

幼『とけた雪で濡れて、ぐしゃぐしゃだ…』

幼『ま、まさか……なな、中の、お手紙と…チョコも』ワナワナ

ガサッ

幼『……』プルプル

幼『あっ、ああぁ…そ、そんなぁ…』ポロポロ

幼『水が染み込んで、お手紙…読めなくなっちゃった』ポロポロ

幼『チョコも、きれいにできてたのに、割れちゃった…』ポロポロ

幼『こんなの、男くんにあげても、喜んでくれないよ。ありがとうって、伝わらないよ』ポロポロ

幼『手紙も、チョコも渡せなかったって言ったら、幼友ちゃん、がっかりしちゃうよ』ポロポロ

幼『お母さんも…せっかく、手伝ってくれたのに…』ポロポロ

幼『どうしよう…どうやって謝ればいいのか、わかんないよ…』ポロポロ

友『じゃあ、また明日ー!』

男『うん、また明日ね!』









男『友くんたちと雪遊びするの楽しかったなー。明日は幼ちゃんと幼友ちゃんも一緒だといいなあ』

男『そういえば、昨日も用事があるからって、先に帰ってたなー、幼ちゃんたち』

男『バレンタインのチョコ作ってたのかな?貰ったって言ってる子もいたし』

男『もしそうだったら、幼ちゃんたちは誰にあげるんだろう…あれ?』

男『あの、公園のブランコに乗ってるの…幼ちゃん?』

男『幼ちゃーん!』

幼『えっ…お…男くん…?』ポロポロ

男『どうしたの?一人みたいだけど…幼友ちゃんと遊んでたんじゃなかったっけ?』トコトコ

幼『っ…』ポロポロ

男『そろそろ帰らないと、寒いから風邪ひいちゃ…えっ?幼ちゃん、泣いてるの?』

男『だ、だいじょうぶ?どうしたの?もしかして僕のせい?』オロオロ

幼『ふっ…ふっ…』ポロポロ

幼『ふええええん!』ポロポロ

男『お、幼ちゃん!?』オロオロ

幼『お、おどごぐん、ごめんなざい!ごめんなざい!』ポロポロ

男『な、なんで謝るの?僕なにもされてないよ、落ち着いて』オロオロ

幼『うわあああん!』ポロポロ

幼『ひぐっ…えっぐ』ポロポロ

男『落ち着いた?幼ちゃん』

幼『うん…ひっく…ありがとう』ポロポロ

男『ゆっくりでいいから、何があったのか教えてくれる?』

幼『うん……あ、あのね、今日、バレンタインなの、知ってる?』ポロポロ

男『知ってるよ。女の子が、男の子にチョコをあげる日だよね』

幼『うん…それでね、幼稚園に入る前からずっと、男くんにはお世話になってるから…あげようと思って、お母さんにお願いして、一緒に作ったの』ポロポロ

男『ほんとに?僕にチョコくれるの?』ワクワク

幼『うん…でもね…あげられなく、なっちゃったの』ポロポロ

男『なんで?』

幼『いま、私が持ってる…袋に、入ってるの』ポロポロ

ぐしゃっ…

男『濡れてるね…』

幼『朝、恥ずかしくてあげられなくて、学校でも、恥ずかしかったから…幼友ちゃんのアイデアで、お手紙書いて』ポロポロ

幼『男くんの家のっ、ポ、ポストに、入れようって……だから、幼友ちゃんと遊ぶってことにして、先に帰ったん、だけど』ポロポロ

幼『男くんが、早く帰ってきたら、入れるとこ見られちゃうって…あせって、走っちゃって』ポロポロ

幼『家のちかくで、転んで…だめに、しちゃったの』ポロポロ

幼『それで、どうしていいかわかんなくて…ここで、泣いてたの』ポロポロ

男『そうだったんだ…開けてみても、いい?』

幼『いいよ…お手紙もチョコも、ぐしゃぐしゃ、だけど』ポロポロ

幼『ごめんね、男くん。』ポロポロ

幼『一緒に学校にいってくれて、忘れ物したとき、貸してくれて、一緒に遊んでくれて…今日だって、遅れた私を、待っててくれたのに…』ポロポロ

幼『いつもありがとうって気持ち、伝えたくて…ハートのチョコ、あげたかったのに…』ポロポロ

幼『一年に一度なのに…ぐしゃぐしゃにして、割って、台無しにしちゃった…ごめんね』ポロポロ

男『謝らなくていいよ、幼ちゃん。幼ちゃん悪くないよ。雪のせいだもん』

幼『で、でも…男くんが、滑らないようにって、言ってくれたのに…守らなかった、わたしのせいだよ。友くんが転んだの、見てたのに…』ポロポロ

幼『幼友ちゃんと、お母さんにも謝らなきゃ…』ポロポロ

幼『でも、どれだけ悩んでも…どうやって謝ればいいのか、わからないまんまだから…帰れないよ…』ポロポロ

男『幼ちゃん、帰れないなんてことないよ』

幼『だ、だけど…』ポロポロ

男『こうすればいいよ。いただきます』パクッ

幼『お、男くん、食べてくれるの?』グスッ

男『もぐもぐ……うん。僕のためのチョコなんだから、僕が食べるのはおかしくないよね?』

幼『そ、そうだけど…ぐしゃぐしゃで、濡れてるのに…』ポロポロ

男『紙袋とお手紙は濡れてるけど…チョコは透明な袋に入ってるから平気だよ』

幼『で、でも、濡れてなくても、割れてるんだよ?ハートじゃないんだよ?』ポロポロ

男『それはちょっと残念だけど、割れただけで受け取らないなんてもったいないよ。頑張って作ってくれたのに』

幼『なんで、わかるの?』ポロポロ

男『売ってるやつより、すっごく美味しいもん。ありがとね、幼ちゃん。ホワイトデーに、ちゃんとお返しするよ』

幼『男くん…ありがとう』ポロポロ

男『泣いてないで、幼ちゃんも一緒に食べようよ。その方が僕も美味しいよ』ニコッ

幼『……うん!』ニコッ

男「俺もバッチリ覚えてるよ。凄く嬉しかった。お礼のためだけに、あんなに必死になってくれるんだから」

幼「だ、だって…初めてのバレンタインだし、数年分まとめての、お礼だったから…」カァァ

男「そのあとのバレンタインもわりと必死になってなかったっけ?いつもソワソワしてたし」

幼「い、言わせないでよ…好きです、本命ですって、伝えようとしてたからだよ」カァァァ

幼「恥ずかしくて言えないし、手紙にも書けないから、毎年ハートの形のあげたのに、気づいてくれないんだもん…」モジモジ

男「鈍くてごめんな。初めて貰ったときにハートだったから、「好き」じゃなくて「ありがとう」の形なのかと思ってたんだ」

幼「や、やっぱり…最初はそのつもりだったから、間違ってはいないんだけど…言葉にしないと、好きって伝わらないね」

男「だな。でも来年はもう平気だぞ。両想いだって分かってるから」

幼「うん。来年はありがとうだけじゃなくて、大好きって気持ちも受け取ってね」

男「もちろん。俺も同じ気持ちを込めて返すからな。ちなみにどんな形の作る予定?」

幼「来年もハートの形かな?違うの食べたいってリクエストあれば頑張るけど」

男「いや、ハートのをお願いするよ。「好き」と「ありがとう」の形だしな」

幼「ありがと、楽しみにしててね」ニヘッ

男「言われなくても楽しみにしてるよ。幼のくれるチョコ、毎年美味しいし」

幼「えへへ…それなら、来年からはもっと美味しく食べてもらえるように、シチュエーションにもこだわってみようかな」

幼「ちょうど思い出話もしたとこだし…初めてのバレンタインの再現とかどう?」

幼「転んでチョコを割ったり、泣き出して困らせたりするのまで再現しない…と思うから、安心して」

男「そんな心配してないよ。俺達もう高二だろ?小三のときみたいにはならないよ」

幼「それでも私ならやりかねないというか…公園につくのを待ちきれなくて、また走っちゃうと思うんだ」カァァ

男「大丈夫、今度は一緒だから。転びそうになったら助けるよ」

幼「それ…今からお願いしといてもいい?」

幼「ちゃんとハートの形であげたいから、念のため。…いいよね?」

男「もちろんだ。バレンタイン以外でも助けるよ」

男「あ…でも飛べば転ばないから、俺が助ける必要はないか?」

幼「あるよ。地上にいるときは、男と一緒に歩きたいし」カァァァ

幼「男だってデートしてるときは、一緒に歩いた方が楽しいよね?」

幼「それに、私だけ凍った道とか段差を浮いて避けちゃうのって、ちょっとずるいと思うんだ」

男「いや、別にずるくはないような。デートは漫画によくある修行じゃないんだし、そういう使い方はありだと思うぞ」

男「まあでも…デートとしてはたしかに変だよな。二人で一緒に歩いた方がデートらしいし」

男「飛べば転ばないって言い出したのは俺だけど、やっぱり俺もそうしたいし」カァァ

幼「ありがとね、もちろんそうするよ。降りたら二人で一緒に歩こうね」ニコッ

幼「でも…バレンタインチョコのシチュエーションとしてはいいかも、空を飛ぶの」

幼「転ばないためにちょっと浮くんじゃなくて…今みたいに向い合わせで飛んで、チョコの食べさせっこをするの」

幼「思い出の再現とは違っちゃうけど…どうかな?」

男「凄くいいよ、そのアイデア。ブランコも捨てがたいけど…ほぼ確実に誰にも邪魔されないし、誰の邪魔もしないで二人っきり。ブランコはそうもいかないしな」

幼「「ほぼ」ってどういうこと?」

男「チョコ目当てで襲ってくる鳥がいるかもしれないってこと」

幼「大丈夫だよ、もしいても私が魔法でなんとかするから。男には指一本触れさせないよ」フンス

男「そうしてくれると助かるよ。もし襲われたらお願いな。なんか情けないけど…」

幼「そんなことないよ、困ったときはお互い様でしょ?」

男「ありがとな、ただ…」

幼「ただ?」

男「それ、どうやるんだ?」

男「幼の手、両方塞がってるからあーんできないだろ?」

男「写真の時みたいに尻尾と片腕で抱きつかれると、近すぎて食べさせづらくなりそうだし」

幼「それは…」カァァ

男「…考えてなかった?」

幼「ごめん…ちょっと待っててね、今考えるから」

幼「……………あっ」

男「思い付いた?」

幼「うん。でも…流石に男でも引いちゃうよ…このやり方」カァァァ

男「絶対引いたりバカにしたりしないって約束する。だから、教えて欲しいな」

幼「ありがと…あのさ、ポッキーってお菓子あるよね?」

男「うん」

幼「普通は一人で、チョコついてる方から、かじってたべるでしょ?」

幼「でも…二人で両側から食べることも、できるよね。漫画の中でしか、見たことないけど」カァァァ

幼「つっ…つまり、私がチョコをくわえて、キスするような感じで…あーんって、しようかなって」カァァァァ

幼「なんかその…いちゃいちゃしすぎというか、恥ずかしい食べ方だね…ごめんね」カァァァ

男「謝らなくていいよ、いちゃいちゃしたいと思うのは変なことじゃないし…俺はそれで良いぞ」カァァ

幼「…いいの?普通にキスしたり食べさせっこするより、すっごく恥ずかしいよ?」カァァ

男「それは否定しないけど…幼と二人っきりなら大丈夫、なんとか耐えてみる」カァァァ

男「それに、今日するかもしれなかったしな」

幼「今日…?あっ、もしかして、フレンチトースト?」

男「あたり。それに、そういうことを好きな女の子とできるってのは、男からしたら…嬉しいんだぞ?」ポリポリ

幼「そうなの?」

男「少なくとも、俺にとっては」カァァァ

幼「じゃあ、そ、そうするね」モジモジ

男「よ、よろしくな」カァァ

幼「うん…あっ」

男「どうした?まだなにか不安?」

幼「キスする度に炎が漏れてるから…男の口に届く前に、とけちゃうよ」

男「もう平気じゃないか?」

幼「どうして?」

男「料理も飛行も炎ブレスもできたし、おまけに背中や尻尾からも炎を出せたから」

幼「でも…口だけじゃなくて顔からも炎が出ちゃってるし…」

幼「たぶん、恥ずかしいと思ったときに出るから、食べさせるときにも勢いよく出て、チョコをとかしちゃうよ」

男「恥ずかしいとでる炎か…怒りじゃないけどこれも感情の炎なのかな?」

幼「な、なんかかっこわるい…恥ずかしの剣みたいに呼んじゃ嫌だからね」カァァ

男「分かった、恥ずかしの炎とか呼ばないよ」

幼「も、もう呼んでる!嫌だって言ったのに!」カァァァ

男「すまん、もう呼ばないから…でもそれもデート中に一回だけで、しかも結構不意打ちだったし…もうびっくりしないと出ないんじゃないか?」

幼「そうかな…」

男「…試してみるか?」

>>147
誤字の訂正
剣→拳

幼「たっ、試すって…キス?」カァァ

男「うん。チョコくわえるよりは恥ずかしくないし…これに成功すれば、もう不安にならなくて済むだろ?」カァァ

幼「う、うん…ありがと」カァァァ

幼「えっと…私、目を閉じてるからお願いね」

男「……」

幼「……い、いつでも、いいよ?」ドキドキ

幼「でも…出来るだけ、はやくしてね。目を閉じてキスを待つの、すっごく緊張するから」ドキドキ

男「ごめんな。あのさ…俺、動けないから幼からキスして欲しいんだけど…」

幼「えっ?……あっ、そ、そうだったね」カァァァ

男「本当は俺からすべきなんだろうけど…すまん」

幼「ううん、そんなことないよ。じゃあ、私がキスするね」

男「ああ、頼む」

幼(うう…わたしったら、恥ずかしいからって慌てすぎだよ…飛ぶ前に男、言ってたのに…)カァァァ

幼「め、目は閉じててね」

男「わかった」

幼「恥ずかしいから、途中で開けたりしないでね?」

男「大丈夫だよ。こんなときにそんないじわるしないから」

幼「ありがと。い、いくよ」

幼「すー…はー…」

男「そんなに緊張する?」

幼「う、うん…」カァァ

幼「今まで3回中2回は男からキスしてくれたし、自分からしたときは男に励まされて、勢いがあったけど今は無いし…」モジモジ

男「だったら、勢いつけようか?」

幼「ありがと、でもいらないよ。初めて炎が出ない、ちゃんとしたキスができるかもしれないから…」

幼「あ、ある意味…これもファーストキス、だから…今度は自分の力でしたいの」モジモジ

男「…なるほど。じゃあなにもしないよ。待ってる」

幼「ホントにありがとね。でも…ひとつだけ協力してね」

ギュッ

幼「えへへ…落ち着いてキスできるように、ちょっとだけ、抱きつかせてね」

男「ああ、わかった…」ドキドキ(3回目でもやっぱり緊張するな…)

幼「空飛んでると涼しいけど、こうしてると…あったかいね」カァァ

男「…そうだな」カァァ

幼「うん…やっぱり、男とくっついてると落ち着くなぁ…」

男「ど、どうも」カァァ

幼「でも…確かに落ち着くんだけど、なにか違うような…そんな感じがするの…」

幼「一方的に抱きつくんじゃなくて…慰めてもらったときみたいに、男に抱き締めてもらわないと、ダメなのかな…?」ドキドキ

男「えと…そうした方がいいのか?」ドキドキ

幼「た、たぶん…」ドキドキ

男「なら…そうするぞ」ギュッ

幼「ん…」

男「…どうだ?」

幼「……やっぱり、男に抱き締めてもらった方が落ち着くよ。ありがと」ニヘッ

男「ど、どういたしまして」

幼「でも…なんなのかな、キスとは別の恥ずかしさがあるよ…」カァァァァ

男「だろうな…俺もだよ」カァァァ

幼「抱きつくのも、抱き締められるのも初めてじゃないのに…」

男「そうだな。でも抱き合うのは…初めてだったよな」

幼「そっか…だからこんなにドキドキするんだね」

男「まあ、初めてじゃなくても、ドキドキするだろうけどな」

幼「だよね、そんな簡単に慣れちゃうものじゃないよね」

幼「…えっと、だいぶ待たせちゃったし、ひとつだけとか言っといて、ふたつも協力してもらっちゃったけど…」

幼「そろそろ…キス、するね」モジモジ

男「…うん」

ちゅっ

幼「…………ぷは」

幼「で、できたね…熱くないキス」ドキドキ

男「完璧だったな。おめでとう、幼」ニコッ

幼「えへへへ…ありがとね、男」テレテレ

男「こちらこそ。最高のシチュエーションで、最高のキスをありがとな」

幼「どういたしまして。…もう一度、目をつぶってもらっていい?」

男「?…いいぞ」

ちゅ

男「なっ…」カァァァ

幼「……今まで火傷させちゃったおわびと、き、キスのお礼だよ、おとこ」カァァァ

幼「口でするキスのお礼がほっぺにキスじゃ変だし、なんかベタだけど…その、男にしてみたかったというか…」モジモジ

男「……」

幼「どしたの?」

男「不意打ちはずるいぞ、おさな…」カァァァァ

幼「…ごめんね」クスッ

幼「それじゃ、ちょっぴりさみしいけど…抱き合うのはおしまいにして、デートの続きをしよ?」

男「そ、そうだな」スッ

幼「ありがと。私も離れ………」

男「どうした?」

幼「あのさ、どうやったらたかいたかいに戻れるか分かる?」

男「えっ?」

幼「その…抱きつくときは、近づいてから、片腕ずつ男の背中に回せば良かったんだけど」オロオロ

幼「戻すときはその逆じゃダメなのに、今気付いたんだよ」オロオロ

男「そうか?まず背中に回した腕を片方離して」

男「離した方で俺の脇腹を掴んで持ちあげ………あっ!」

幼「…分かってくれた?」

男「やっと分かった…ホントにありがとな、幼」

男「片方の脇腹だけを、ものすごく強く掴まないといけないから、やらないでくれたんだろ?」

幼「うん…」コク

幼「だって、そんなことしたら、楽しくデートどころじゃなくなっちゃうから…」シュン

幼「他のやり方、何か考えなくちゃ。男が痛くなくて、落ちたりもしない新しいのを」

男「……いや、前にやったのを使えば出来そうな気がする」

幼「えっ?今までに同じことしてたっけ?」

男「ちょっと違うけど…ほら、携帯の取り合いしたときにも抱きついただろ?「尻尾を使えば片手が空く」って」

男「それで、じゃれあった後に元の持ち方に戻したよな。あれと同じでいいんじゃないか?」

幼「あっ……えっと、尻尾を使っておさえて、少しずつ両手を脇腹に持ってくればいいんだよね?」

男「そうそう。たしかそんな感じだったよ」

幼「……やった私が思い付かないなんて、お恥ずかしい限りです…」カァァァ

男「仕方無いよ。俺だって持ち上げる方に意識がいってて、脇腹に大ダメージな方法に行き着いたし」

男「それにあのときは縦だったし、後ろから抱きついてたもんな。思い付かなくても不思議じゃないよ」

幼「…フォローありがと。じゃあ、そのやり方で体勢を戻すね」ニコ

幼「まず尻尾で支えて」ギュ

幼「そーっと……つかんで」ガシ

幼「尻尾は離して、持ち上げ…」

ズルッ

男「ぬおっ!」ドサッ
幼「きゃあっ!」ガクンッ

男「ちょ、やばい、落ち」ズズズ

幼「わ!わわ、わわわわわわっ!」ガシッ

男「…お…おお………助かった…」ドキドキ

幼「はっ、はあ…よかったぁ…間に合った…」ギュウウウウ

男「本当に…ありがとうございました…」ドキドキ

幼「ごめんなさい…本当にごめんなさい…」バクバク

幼「だ、大丈夫…?ケガとかない?」バクバク

男「幼が抱き止めてくれたから大丈夫、なんともないよ」ドキドキ

男「…ほんのちょっと苦しいけど」

幼「…………」ギュウウウ

幼「…ごめんね」カァァァァ

男「謝らなくていいよ。幼のおかげで助かったんだし」

幼「あ、えと…今のはそっちじゃないよ。怖い思いさせたのも謝んなきゃだけど…」

幼「その…私の方が、怖くなってきちゃったの…」カァァァ

幼「おかしいよね…怖い思いしたのは男なのに…」カァァァァ

幼「あと少し遅かったら……地面につくまでに助けられなかったらって、考えちゃって」プルプル

幼「こんなにふるえて、やっぱり情けないね…わたし」プルプル

男「情けなくなんかないよ」ポンポン

男「それだけ俺のこと、大切に思ってくれてるってことだろ?」

幼「あ、当たり前だよ!何度でも言うけど、大好きで…代わりなんて、いないもん」グスッ

幼「だけど…いくら男が良くても、私ばっかり何回もこうやって男にくっついて、慰めてもらうのは、さすがにダメじゃないかなって」

男「…………」ギュッ

幼「男…?」

男「えー、えっとな、急に幼が物凄く恋しくなって、抱きつきたくなったんだけど…やっぱり、いきなりはダメだよな?」カァァァ

幼「……」

男(さ、さすがに無理あるか…贔屓目に見てもわざとらし過ぎるし)

幼「よ、よしよーし」ナデナデ

男「えっ?」キョトン

幼「えっ?」キョトン

幼「あ、あれ?なんか違った?落ちないように尻尾でもおさえてから撫でたんだけど…子供扱いしてるみたいで嫌だったとか?」

男「そうじゃなくて。いきなり抱きついたこととか、わざとらしく甘えたこととか…怒ってないのか?」

幼「怒ってないというか…むしろ喜んでるよ」

幼「わざとでも、男に甘えられるの、初めてなんだもん」

幼「今までは付き合って無かったたから、抱きついたりはしなかったけど…いつも甘えのは私だったから」

幼「だから嬉しくて。せっかくだから、思いっきり甘えさせてあげようかなって思ったの」

幼「私が甘えられるように気を遣ってくれたのに、無駄にしちゃったけど…」

男「いやいや、幼が喜んでくれてなによりです」

幼「そう?えへへ、ありがと」ナデナデ

幼「結局また助けられちゃったし、お礼に私も何かしないとね」ナデナデ

男「別にいいぞ、気にしなくて」

幼「だめ。それだと私の気が済まないよ」ナデナデ

幼「今できそうなことだと曲芸飛行とか…また危ない目にあわせちゃうからダメだよね。火炎ブレスは誉めてくれたけど、さっきやっちゃったし」ナデナデ

幼「降りてからできることだと、晩御飯はお弁当の代わりだし」ナデナデ

幼「うーん……」ナデナデ

男「えーと、幼?」

幼「なにかリクエスト?できるだけ応えるよ」ナデナデ

男「その、いつまで撫でるのかなー、と」カァァ

男「ついでに、これだけ何度も長いこと抱きつかれると、さすがに…また胸も気になるというか…」

幼「なでる…胸……あっ、あわ、あわわわ!」カァァァッ

バッ!

幼「えとと、その、胸に関してはその、不可抗力で!体の構造上仕方ないわけで!」ブンブン

幼「気になるってのは聞いたけど、嫌がらせでも色仕掛けとかそういうのでもなくて、そんなことする度胸も私にはなくて!」バサバサ

幼「それと、恥ずかしいから、できればそういうことは言わないでほしくて!」ジタバタ

幼「撫でてたのはあの、流れというか、やっぱりこれも楽しかったというか!」アワアワ

幼「ちょっとお姉ちゃんぶってみたかったというか…そんなわけで」オロオロ

幼「…そんなわけで。えっとその…とにかく、ごめんね」モジモジ

男「いやこちらこそ…無駄に疲れさせてごめんな」

幼「はあ…はあ…」

男「でもやっぱり気には…なるな。そのサイズだと」チラ

幼「…えっち」カァァァァ

男「うぐっ、返す言葉がない…胸ばかり何度も気にしてすみませんでした」

幼「そんなに気にしなくていいよ、2回だけだし、私だって借りた毛布のにおい嗅いだりしたし…だからお互い様だよ」カァァ

男「いやでも、それはもういいってことになったし」

男「今だから白状するけど………幼の胸を気にしたのは、今に始まったことじゃないんだ…」

幼「そうなの?」

男「はい…中学ぐらいからです。申し訳ない…」シュン

幼「……ぜ、ぜんぜん気づかなかった…」カァァァ

幼「でで、でもさ、私だってにおい嗅いだの、今日がはじめてじゃないよ?何回か、遊びにいったときこっそり部屋のにおいを」カァァァァ

ガシッ

幼「かい……っ?」ピタッ

男「どうかしたのか?」

幼「な、なにかが私の服をひっぱってる」

男「え?まわりには俺たち以外に誰もいないけど…」

幼「そうだよね…でも本当なんだよ」

男「背中に虫とかがくっついたのか…?」

幼「お、おとこ、こわいこと言わないで」プルプル

男「ごめん…背中に付いてるなら、はばたいたらとれないかな?」

幼「下に落としちゃって平気かな…」

男「それが空でくっついたなら、空飛べるんじゃないか?なくても落ちる前に助ければいいし」

幼「簡単に言うね…でもこのままじゃだめだし…ごめんなさい!」バサバサッ!

バサバサッ!バサバサバサ!

男「どうだ?」

幼「………だめ。離れたと思ったそばから、また引っ張られてるよ」

幼「しかも…当たったときの感触が、人の肌みたいだった」

男「肌?」

幼「う、うん、どうしよう、なんかまずいよね、お化けとかかな」プルプル

男「いったん落ち着いて、お化けに触れるわけないだろ?」

幼「ででで、でも私尻尾とか生えたし、あり得ない話じゃないよ、ひとごとじゃないよ」プルプル

幼「よくわかんない世界に、ひ、引きずり込まれたりするのかな…?絶対嫌だよ、まだ死にたくない、もっと一緒にいたい」プルプル

男「大丈夫、大丈夫だから落ち着け!保証は無いけど!」

男「翼がダメでも、尻尾でなら」

幼「そ、そっか、やってみるよ!」ブオオオン!

男「軽く弾いてやれば大…あっ」

幼「いったぁぁ!」バシィン!

男「幼っ!背中大丈夫か!?すごい音したぞ?」アセアセ

幼「あ、あんまり大丈夫じゃない…すごく痛い」ヒリヒリ

男「ごめんな、尻尾でなんて言ったせいで」

幼「ううん…慌てちゃった私が悪いんだよ」ヒリヒリ

幼「私にひっぱたかれた男はこんなに痛かったんだ…自業自得だね。ごめんなさい」ヒリヒリ

男「そんなこともういいから。背中さすろうか?」

幼「おねがい…そ~っとね?」ヒリヒリ

男「わかってるよ…これでいいか?」サスサス

幼「へへ…ちょっと楽になったかも」ニヘッ

男「後で見せてくれよ、痣とかできてたら大変だし」

幼「だ、大丈夫だよそんな…えっ、見るの?」

男「?……ああっ!ごめん!ち、ちがうから!」

男「胸の件が許されたから便乗とか、そういうエロいことが目的じゃなくて…ええと!」アセアセ

幼「お、おちついて。怒ったんじゃないよ。手当てしてくれようとしたんでしょ?」

男「ん、ああ、そうだけど」

幼「なら全然慌てなくていいよ。…ただその、エッチなことじゃなくても…やっぱり見られるの、恥ずかしいから……つい」カァァァ

男「それでいいんだよ。心配だからって、女の子に服脱げって言った俺が悪かったんだから」

幼「ううん、悪いことじゃないよ。私が男の立場なら同じことするよ」

幼「それに、帰ったら着替えるときにまた、穴を開けてもらう都合もあるから」モジモジ

幼「…そのときに、痣になってないか、背中も見てほしいな」カァァァァ

男「そ、そうだな…そういえばそうだった」カァァァァ

幼「もしかして、それに気づかないで穴を塞いでくれたの?」

男「いや、変なこと考えないようにしたり針刺さないようにするので頭一杯で…」

幼「…そっか。変に疑ってごめん。ありがとね」ニコッ

幼「ねえ、さっきの、もういなくなったのかな?」

男「うーん…俺はさすってて特になにも触ってないけど」

幼「じゃあ、もう動き始めていい?」

男「もういいのか?」

幼「うん。もう怖くないし、まだちょっと痛いけど大丈夫だから」

幼「ただ、もうしばらく背中はさすってて欲しいな。結局抱きついたままで悪いけど」カァァ

男「了解。それでいいよ」サスサス

幼「ありが…ひっ!」ビクッ

男「ど、どうした?また来たのか?」

幼「おお、男のうしろ、なんか歪んでる!」

男「後ろ?この体勢だと上か………うわっ!なんだこれ!?」

男「なんかぐにゃーっとしてる!なにもないはずなのに!」

幼「で、でしょ?もしかして、これがさっきの感触の正体なの?」

男「いや、きっとこれ自体は違う」

ぐにゃ~

男「こんな感じにどんどん歪んでって」

ぐにゃにゃー

男「穴みたいになって」

にょきっ

男「そうそう、こんな風に手が出てきてこいつが…」

幼「………おとこ」

男「えっと……」







男「とりあえず逃げてください!!」
幼「合点承知です!!」バシュン!!

男「ごめんな幼!のんきに解説しちまって!」

幼「大丈夫だよ!私も見てて動けなかったし!」バシュウウン

幼「それより男、どこまで逃げればいいかな?」

男「そうだな…掴む以外に何してくるか分からないし、とりあえず見えなくなるまで逃げればいいと思う!」

幼「見えなくなるまで…頑張らなきゃ!」バサバサッ

男「ホントにごめん、無理させて」

幼「平気だよ。私言ったもん。男には指一本触れさせないって!」

幼「相手は鳥じゃないけど、やるときはやらないと!」バシュン!

男「ありがとう…頼りにしてるぞ」

幼「うん、任せてよ!…あっ!男は大丈夫?まただいぶ速くなっちゃってるけど」

男「まだ平気、もう少しスピード上げてもいいぞ!」

幼「ありがと。もし具合悪くなったら我慢しないで言ってね?」バシュン!

男「分かった、お言葉に甘えさせてもらうよ」

数分後

幼「ふう…このぐらい逃げれば良いよね?」ピタッ

男「お疲れ様、おかげで助かったよ」

幼「えへへ…これでまたデートの続きができるね」

男「だな。とりあえず一度下におりようか?」

幼「そうだね。私ちょっと喉乾いちゃったし、ジュースでも買って飲も?」

男「良いな、ちょうど俺もげっ!」

幼「もげ?どうかしたの?」

男「あのな、非常に言いにくいんだが…」

幼「ま、まさか…また…」プルプル

男「そ、そのまさかだ」

男「幼の後ろ!またあの手だ!」

幼「きゃあぁぁぁぁ!」バサバサバサッ!

幼「な、なんで?どうしてまた!?」バサバサ

男「分からないけど…ああいうのってワープとかできるんじゃないか?カービィのラスボスとかでよくある、空中に空いた穴から攻撃してくるやつみたいに!」

幼「つまり、今こうやって逃げてるのは無駄ってこと?」バサバサ

男「いや、そうと決まったわけじゃない。同じやつが複数いるパターンかもしれない」

幼「そっか、それなら…なんとか逃げ切れるかも!」バサバサ

男「とりあえず、次出てきたらどっちのパターンか俺が確認してみるか」

幼「どうやってやるの…って言ってるそばから!」キキッ!

男「うわっ!」ビクッ

幼「ご、ごめんね!急に前に出てきたから!」

男「気にしないで!とりあえずおりゃ!」ポイッ

手「」パシッ

幼「えっ?今なに投げたの?」

男「財布!」

幼「お財布かぁ……お財布!?」

幼「だめだよお財布投げちゃ!取り返さなきゃ!」

男「気持ちは嬉しいけど…いらない!」

幼「えっ?どうして?」

男「後で説明する!今は逃げて!」

幼「う、うん」バシュ




男「急かしてごめん」

幼「いいよ。でもあれはどういうことなの?」

男「いわゆる目印。次に出てきたときも持ってたらワープ、持ってなかったら別のやつ。わりといいアイデア…だよな?」

幼「うーん…こんなこと言うのよくないけど、穴のなかにしまわれたり、取ってくれなかったらどうするつもりだったの?」

男「それはちょっと…どうにもできないからかなり分の悪い賭けだった」

幼「それに、お金以外にも大事なもの、例えば家の鍵とか入ってるんじゃないの?他のもの投げちゃダメなの?」オロオロ

男「ダメじゃないけど、あとは携帯しか持ってないし…携帯は投げるわけにはいかなかったんだよ」

男「ほら、あの…写真入ってるし」ポリポリ

男「二人で記念に撮ったのに俺が勝手に捨てるわけにはいかないし…いや、頼まれても捨てたくなんかないけどさ」

男「あれだけ幼に恥ずかしい思いさせて撮ったんだ、撮り直しもきかないし…大事にしないと」カァァ

幼「そ、そうだね…ありがとう」カァァァ

男「あ、そうだ。あの写真、今幼の携帯に送ってもいいか?」

幼「いいけど…後でいいんじゃないかな、なんで今なの?」

男「そうすればほら、次何かあったときに思い切り投げられるだろ?他のデータは諦めつくし」

幼「ちょっと、また大事なもの投げちゃう気なの?」

男「非常事態だし、俺には他の攻撃手段も逃げる手伝いもできないからな、いざとなったら投げるよ」

幼「…だめ」ムスッ

男「えっ?」

幼「えっ?じゃないよ。だめなものはだめ」

男「な、なんで?」

幼「私に任せてって言ったじゃん。男が心配しなくてもなんとかするよ」

男「で、でも」

幼「言いたいことは分かるよ?私一人じゃ怖くて動けなかったし、お財布で敵の数を見極めるなんて出来なかったって」

幼「男だって、黙って見てられなかった、私に頼りっきりでいられなかったってわかるよ」

幼「でもそうやって男ばっかり、なにか犠牲にしようなんてずるいよ、私だってお財布や携帯ぐらい捨てられるよ。非常事態だもん」

男「そんな、犠牲だなんて。そんな大層なものじゃ」

幼「あるよ。今日の元々のデートの計画聞いたとき、嬉しかったのと一緒にビックリしたから」

幼「電車で移動してからちょっとお店見て回って、それから夜までずーっと遊園地で、晩ご飯食べて帰ろうって!」

幼「お財布にいくら入ってたの?あの辺は普段行くようなお店より高いから、きっとたくさん入ってたよね?」

男「え、えっと…」

幼「男のことだし、私の分も払えるように、ちょっと甘いもの食べるようにって多めに見積もって」

幼「とっておいたお年玉とかも使って3、4万ぐらいは用意してると思うんだけど」

男「なんて的中率。みんなあたりです…」

幼「ごめんね」ギュッ

幼「ピンチだっていうのに、お金の心配ばかりしてるようにしか聞こえないし、ちょっとむきになっちゃった」

幼「でもね、私は男のことが心配なの。私を助けるのに他の大事なものをどんどん捨てようとするのを見てられなかったの」

幼「そのうち、投げるものがなくなったら自分で飛び込むとか言い出しそうなんだもん」

男「あ、それありそう」

幼「ほらね?先に言っとくけど、絶対だめだからね。助けてくれるのは嬉しいけど」

男「わかってるよ。…でも幼も言いそうだよな、下になって落ちるとか言ってたし」

幼「もう言わないよ。絶対に落ちないし落とさないから。二人で無事にデート終わらせて帰るんだから」

男「手は?」

幼「も、もちろん繋いで」カァァ

男「なら、なおさら早く抜け出さないとな」

ぬーっ

幼「うん…あ、また出てきたよ。ちょっと遠いね」

男「…まるで俺たちの話が一区切りつくの、待ってたかのようなタイミングだな」ウーン

幼「そうかな?とりあえず、お財布は持ってるね」

男「じゃあ相手は一体か…あれ、一体って数えていいのか?」

幼「えっと、一本…一匹、一人…他はしっくりこないと思うな」

男「じゃあ一体ってことにしといて…逃げられそう?ワープするパターンだったけど」

幼「穴が開いてから、出てくるまでちょっと間があるみたいだし、捕まらないのはなんとかなりそう」

幼「抜け出すのはちょっと時間かかっちゃいそう。一応奥の手も考えてるけど」

男「奥の手あるのか…ならいけるな?」

幼「飛ぶのは任せてよ!…ただ、一つだけお願いしていい?」

男「なにを?」

幼「その……できれば、さっき話した歌、歌って欲しいんだけど…」モジモジ

男「…えーと、私への気持ちを歌って欲しい、ってやつ?」

幼「うん。待ってるって言っといて悪いんだけど…今歌ってくれたら、上手くいきそうな気がするの」

幼「ナツって感情の起伏で炎が強くなるでしょ?それがベースの私の炎も、恥ずかしかったりで失敗してたし」

幼「今もおもいっきり抱きついてて、幸せとか緊張とか安心で、頭も心もいっぱいいっぱいなんだけど…」

幼「その歌を聞いたら、もっといっぱいで…えっと、うまく言えないんだけど、凄い力が出せそうな気がするの」

男「なるほど…確かにいい案かもしれない」

幼「ね?いい…よね?」

男「良いけど…いざ歌うとなると、ちょっと自信無いな」

男「少なくとも俺にとっていい歌なのは間違いない。けど、幼が期待してるのと違ったら逆効果だ」

男「あと、やっぱり下手だし、幸せやらで一杯にするのはちょっと…難しいぞ」

幼「なんでもいいよ、どんな歌でも。私に歌ってくれるなら」ニコ

幼「それで私はいっぱいになるから。何を歌うとか、上手とか下手とか関係ないよ」

男「じゃあかえって責任重大だ。変な歌詰めちゃわないようにしないと」

幼「えっ、そういう意味じゃないんだけど…」

幼「もしかして逆効果だった?」

男「いや、ちゃんと伝わってる。あんまり気負わないで歌うよ」

男「でも俺にとって、失敗できないのは本当だぞ」

男「幼のパワーアップもそうだけど、幼に頼まれたし、先に歌聞かせてもらったからな」

男「ここでヘマする訳にはいかないんだ」

幼「平気だよ、きっと。ううん、間違いなく」

男「根拠は?」

幼「うーん、強いて言うなら…」

幼「私がネコマンダーじゃないから!!」バシュン!

幼「このまま手に接近して、ギリギリで避けて逃げるから、すれ違ったら歌い始めてね」バシュウウ

男「分かった。俺もちょっと用意する」ピッ

幼「携帯?もしかして、歌を流すの?」

男「ああ。どうせ歌うなら、音もあった方が良いよな?その方が盛り上がると思うし」

幼「うん。私もそう思うよ」(今度歌うときがあったら、私もそうしようかな)



手「」チョイチョイ

男「そろそろだな、幼」

幼「そろそろだね、男」

男「それじゃ……飛ぶのはよろしくな!」ピッ!
幼「男こそ。サポートお願いね!」ゴォォォ!

~♪

幼(この出だしは…!)ピーン!

男「聞こえるか?この俺の声が」

男「感じるか?俺の息吹を」

幼(やっぱりそうだ、キングゲイナーのエンディングだ)バシュン!

男「どんなに遠く離れていても」

男「いつでも俺はお前の側にいる」

男「だからお前はもう一人じゃない」

男「走り出すんだ、お前は明日への道を」

男「たとえどんな嵐でも、二人でなら乗り越えられる」

男「たたきつける、どしゃぶりの中を」

男「俺はお前と走る」


幼(これ、全部、私に…)

男「聞こえるか?この俺の声が」

男「感じるか?俺の息吹を」

男「聞こえるか?You Can you get my song」

男「感じるか?You Can you feel my soul」

~♪

男(これで半分ぐらいか)

男(これだけ近いと、余計に恥ずかしい…あんな風に歌える幼はすごいと思う)カァァァッ

男(反応が気になるけど、あごの方からだと顔はよく見えないな…)





幼「このあとって確か…えへへ」カァァ…

男(でも、それなりに喜んでくれてるみたいだ)ホッ

男(感想は後で聞こう。まずは歌いきる!)

男「苦しくてつらい悲しい夜は」

男「眼を閉じ心の声で呼べば」

男「抱きしめてやる壊れた希望を」

男「立ち上がれ、お前ならできる筈さ」

男「泣きたい時が来たなら、この胸の中で泣くがいい」

男「お前が傷つき、倒れたときは」

男「俺がお前を守る!」

男「聞こえるか?この俺の声が」

男「感じるか?俺の息吹を」

男「聞こえるか?You Can you get my song!」

男「感じるか?You Can you feel my soul!」

男(よし、特に間違えたりしないで歌えた…はず)

男「幼、どう?」

幼「えへへへー…なに?」ニヘーッ

男「いや…やっぱいいかな」

幼「え、なにそれ?気になるよ」

男「歌どうだった?って聞こうと思ってたんだけど…」

男「その「にへーっ」て顔見れば大体分かるから、やっぱりいいやって」

幼「そ、そんなに?そんな顔してる?」

男「漫画みたいに、オノマトペが見えそうなぐらいには」

幼「あぅ…お願いだから、写真とったりしないでね?」カァァァ

男「わかった、心の中だけにとどめとく」

幼「そ、それでおねがいします」カァァァァ

男「それにしても、ホントに凄いな。ワープしてくるのに、完全に振り切ったみたいに出てこない」

男「まだ油断はできないけど、そんなに効果あった?」

幼「うん、すごかった。まさに燃えてきたぞ!って感じだったよ」

幼「魔法抜きでもあ、あんなかっこいい歌詞チョイスされたら、張り切るしかないよ」テレッ

男「かっこいい歌詞か…理想入っちゃってるし、かっこつけすぎてると思ったんだけど」

幼「そんなことは………」

幼「うーん…」

男「やっぱりか」ガクッ

幼「違うよ、ゲインはキャラが合わないかなってだけで、かっこ悪くないよ」

幼「実際、抱き締めてくれたし、そのまま泣かせてくれたし」

幼「順番が逆だから有言実行って言うのかはわかんないけど、かっこよかったよ」ニコ

男「そっ、そうか、ありがと」テレ

幼「こちらこそ」ニコニコ

幼「さてと…また出てくる前に、下に逃げたほうがいいよね」

男「そうした方が良いな。向きはどうする?このままか足からか。それとも俺が下の方がいい?」

幼「えーと…頭から行くのってどうかな?あんまりスピードを落とさないで逃げられるし」

幼「ちょっと怖いかもしれないけど…もちろん、できるだけ危なくないようにするから」

男「いいぞ、今度も幼に全部任せる」

男「どうしてもって時は、少しぐらい危なくても構わないぞ」

幼「ありがと。その…しっかりつかまっててね」

男「えっと………抱きつけばいいのか?」

幼「う、うん、お願い」

男「……よし、これでいいかな?」ギュッ

幼「うん、いいよ。念のため…尻尾も、巻き付けとくね」ギュッ

男「…」カァァ
幼「…」カァァァッ

男「やっぱり…これ、恥ずかしいな。尻尾までついてるから余計に」カァァァ

幼「ごめんね。もう少し飛ぶのに慣れるまで、おりるのはこれで我慢してね」カァァァ

男「我慢だなんてそんな。むしろ、毎回これで降りて欲しいぐらいだけど…」テレ

幼「そう言ってくれると嬉しい………けど」テレッ

幼「これだと人のいないとこにしか、降りれないよ?」

幼「さすがにその、いくら結婚するっていっても、抱き合ったまま人前に出るのはちょっと…無理かも」モジモジ

男「……ごめん。やっぱり、できるだけ早く慣れてもらってもいいか?」カァァァ

幼「うん、頑張ってみる。今回は神社の近く、林の中に降りるから大丈夫だよ」

男「神社?もうそんな近くか?」

幼「頑張って逃げ回ったからかな、もう見えてきてるよ」チラ

男「本当だ」

幼「それじゃあ、そろそろ降りるよ。準備はいいよね?」

男「いつでもどうぞ」

幼「ありがとう。いちにのさん、で行くよ」

幼「いち…にの…」ゴォォォ…

幼「さん!」ギュオン!
男「おおおっ!」ギュオン!

幼「このまま斜めに、林まで一直線に行くよ!」ゴォォォォ!

男「分かった!」

男「…にしてもすごい迫力だな。家を出た時もすごかったけど、やっぱり上りとは違う」

男「まるで、ジェットコースターみたいだ!」

幼「そう?私はそんな感じしないんだけど」

男「自分で飛んでるからか?」

幼「そうかも。…もしかして、怖かったりする?」

男「いや、全然」

幼「そっか。私もおんなじだよ」ニコ

幼「男と一緒だもん。もし、ジェットコースターみたいだとしても怖くないよ」

男「そう言われると、なんか…照れるな」テレ

男「よし、なら…一緒に本物に乗らないか?」

幼「えっ」

男「今日は絶叫系は避けて、幼の好きなのだけまわろうかと思ってたんだけど、空飛ぶので慣れられそうだしさ」

幼「え…えーと…それはちょっと、遠慮させて欲しいかな…」

幼「やっぱりほら、自分で飛ぶのとは違うだろうし…抱き合うわけにもいかないし」アセアセ

男「それもそうか。俺だって、今みたいに全く怖くないとは言い切れないもんな」

男「隣で、手繋いで乗るとか、一緒に怖がるのもやってみたかったけど…幼が嫌なら止めるよ」

幼「!」

幼「やっ、やっぱりのる、乗る!」フンス

男「幼、無理しなくていいんだぞ?」

幼「無理してないよ、飛んで慣れるから、一緒に乗って!」フンス

男「でも今飛ぶのとは違うって」

幼「違っても良いよ!抱き合わなくても平気だから、隣で手を繋いでくれればそれで!」

幼「だ、だから一緒に乗って、止めないで…お願い」オロオロ

男「わ、分かったから、乗るよ、乗るから落ち着いて」

幼「よかった…ごめんね男、魅力的な提案で…つい」カァァァ

男「えーと、ジェットコースターが?」

幼「…分かってるのにいじわるは良くないよ」ムッ

男「ごめんな、明日はちゃんと手を繋いで乗るから、それで許してくれるか?」

幼「うん、ゆる…あした?……明日!?」

幼「ホントに?ホントに明日行くの?」ギュオッ!

男「そ、そのつもり。楽しみにしてくれてたみたいだし、幼の都合がつけば」

幼「都合なんてそんな、全然問題ないよ!もし付き合えたら、続けてデートできたらいいなって空けといたから!」バシュン!

幼「ジェットコースターもちょっと自信ないけど、今日中に慣れるようにするよ!」バビュゥン!

男「それはよかった…だけど幼、ちょっと速い」

幼「あっ…ごめん、またやっちゃった…大丈夫?」シュオン…

男「だ、大丈夫…ちょっとだけだから」

幼「よかった…ところで男、お財布ごと使ってくれたのに、まだ遊園地行くお金あるの?」

男「…えっと、まだとっといたのがあったはず」

幼「本当?」

男「い、いちおう…」

幼「あんまり無理すると後で大変だよ?」

男「しかし、期待させといて今更「お金ないからやっぱり無しで」とかやるわけには」

幼「なら私が出す?1日分ぐらい平気だよ」

男「それはいくらなんでもカッコ悪すぎる!彼女に奢らせる遊園地デートとか!」

幼「私に見栄はらなくて良いよ。助けてもらったお礼ってことで」

男「うーん……逃げてもらってるし、それでもなぁ」

幼「それなら保留でいいよ。明日じゃなくていいから、二人とも用意ができたら行こ?」

男「…助かるよ」

男「結局ぬか喜びさせちゃったな…ごめん」

幼「そんなの気にしないで。むしろ楽しみが増えて嬉しいから」

幼「明日は明日で他のことすればいいんだよ」

男「じゃあ…何したい?幼に決めて欲しい」

幼「いいの?…それなら、今日みたいに飛んでみるとか、お弁当持ってちょっと遠くまでピクニックとか」

幼「雨降ったりしたら、家の中でゲームしたり、漫画読んだりお菓子食べたりして過ごすのもいいかなあ」

男「良いな。でも後半は普段家でするのと一緒だな」

幼「そうだけど…付き合ってると、また違った楽しさがあるんじゃないかな」

男「そうだな。例えば、膝の上に幼が座るとか?」

幼「それやってみたい。…それで、一緒にゲームしたら楽しそう」

男「膝枕とか」

幼「それもいいかも。……耳のなか見られるのは、ちょっと恥ずかしいけど、掻いたり掻いてもらったり…」モジモジ

幼「…あれ?なんで膝ばっかりなの?タイタス?」

男「ビームニーキック!…ごめん、ただの偶然。あと憧れ」カァァ

男「変かな?…その、幼の膝に、頭乗っけたら気持ち良さそうだなとか、考えるの」カァァ

男「…いや、やっぱ変なんだろうけどさ。結構変態じみてる」

幼「べ、べつに変でもなんでもないよ?私も男の膝、座るのも枕にするのも、気持ち良さそうだなー…って思うよ」モジモジ

幼「それだけで変態呼ばわりされるなら、私なんて…今日したことだけで、幼友ちゃんたちになんて言われるか分かんないよ…」シュン

幼「ほとんど裸で毛布にくるまったり、その毛布のにおい嗅いじゃったり、付き合って初日で抱きついたり抱き締め合ったり」

幼「食べさせっこもしたし、キスだってもう5回もしちゃったし、ほとんど口移しみたいなチョコの食べさせっこの提案も私だし…」

幼「…も、もう、思い出すだけでホントに頭、爆発しちゃいそうだよ……」カァァァァァ

男「……それ、毛布渡したの俺だし、キスも俺からのが多い…」カァァァァァ

幼「提案なんだけど…幼友ちゃんとか友くん、他の人にも、付き合い始めたって報告するとき…今言ったあたりはぼかして伝えない?」

男「そうしよう…いくら友でも、羨ましいだけじゃ済まなそうだ…ツーショットとか、たかいたかいも、あとはあーんも内緒でいいか?」

幼「うん…あと、お姫様抱っことかも追加で…」カァァァァァ

男「説明するの大変そうだな…」

幼「そこはうまく合わせようね…」

幼「でも、きっと二人とも、喜んでくれるよね」

男「それは間違いないよ、やたら協力的だったし」

幼「えへへ、今度はサポートする側で頑張らないと」フンス

男「サポート…」

幼「どうしたの?なにかおかしなこと言った?」

男「いや、幼友さんって好きな人いるのかなって」

幼「あっ……えっ、えっと…」

幼「ご、ごめん!内緒にして!男にも言わないって約束なの!これ以上聞かないで!」アセアサ

男「わ、分かったよ。ごめん、変に詮索してすまなかった」

幼「ありがと…言ってくれなかったら、うっかり喋っちゃうとこ…」ホッ


い…


幼「ん…男、なにか聞こえなかった?」

男「いや、何も」

幼「空耳かな。「い」って聞こえたんだよ」

ーい…

おーい…

幼「あれ?「おーい」って呼ばれてるみたいだけど…誰もいないよね?」キョロキョロ

男「いないな。あとやっぱり俺には聞こえないな」

幼「気付かないだけで、耳も良くなってたのかな?」

男「熱に強く、鼻も良くなってたし、あり得るな」

幼「あと…この声、幼友ちゃんの声にそっくりな気がするんだけど」

男「おお、噂をすればってやつ…なのか?」

幼「まだ分からないよ。ホントに幼友ちゃんの声が聞こえてたとしても…下から聞こえる、って感じじゃないよ」

男「ということは…」

男「幼友さんも空を飛んでる!…かもしれない」

幼「ま、まさか…流石にないと思うよ。…ないよね?」

幼「昨日今日で二人も空飛べるようになるなんて流石に…ね?」

男「どうだろう。幼友さんも何かにお願いしたのかもしれないよ」

男「空を飛べるようになるんじゃなくて、空飛ぶ乗り物ってのもありそうだし」

幼「絨毯とか車とか?」

男「汽車とか船もよくあるな」

男「そういう、飛んでるのか乗り物なのか分かる音はまだ聞こえないのか?」

幼「うん、ちょっとまだ…」


おーい…
パカラッパカラッ…

幼「…馬の足音みたい」

男「まさかの馬車か」

幼「馬だけかもしれないよ。翼の生えた…真っ白なペガサスとか」

男「ペガサスか…いいなあ。仕組みはともかく、格好いい蹄の音を響かせながら空を駆け抜けてみたい」

幼「ペガサスの蹄と、ドラゴンの羽ばたく音とどっちがいい?」

男「当然ドラゴン1択。力強くて格好よくて…なにより可愛い」

幼「ありがと」ニコ

幼「まだ姿は見えないけど、合図とかした方が良いかな?男と私はここにいるよって」バサッ バサッ

男「返事がないのに呼び続けるのって大変だしな。良いと思うぞ」

男「万が一幼友さんじゃなくても、幼なら逃げられるもんな」

幼「うん。それじゃあ、早速合図してみるね」バサッ

幼「ちょっと止まって…縦になるね」

幼「えいっ」バサッ

男「羽ばたき1回でまっすぐになったな」グルンッ

幼「1回で決まると、なんとなく気持ちいいね」

男「分かる気がする。合図はどう出すんだ?」

幼「奥の手を使おうと思ってるけど、うまくいくかな…」

幼「すぅー……」

ぷくっ

男「ほっぺをふくらますってことは…ブレスか?」

幼「んん」(うん)コク

男「…ちょっとつついてみても」

幼「んんんん!」(だめだめ!)ブンブン

男「わ、悪い、可愛くて珍しかったからつい…危ないし良くないよな。ほんとごめん」

幼「んー…」(もう…)カァァ

幼(上を向いて、男に当たらないようにできるだけ細めに…それでいて強く)

ボッ ボッ ボッ

ゴォォォォ…

男「空に炎が留まって…これが手から逃げるのに使わなかった奥の手?」

幼「そうだよ。下からじゃ成功したか分からないから、ちょっと離れて横から見てみるね」バサッ

スイーッ

男「これは……凄い」


男 & 幼


男「初めてでよくこんな綺麗に書けたな。遠くてもよく見えそうだ」

幼「炎や魔法で文字を書くシーンはよくあるから、そういうのをイメージしてみたの。上手くできて良かったよ」

幼「でもちょっとだけ…&がちっちゃいのが残念かな」

男「そうか?そうでもないような」

男「幼が気になるなら、上から塗りつぶせばいいんじゃないか?同じ炎だしさ」

幼「なるほど。えと…咆哮!」ゴォォ!

ボボボボボ…



ジャーン!
男*?*

幼「こ、こんな感じで…どうかな?」モジモジ

男「い、いいんじゃないか。とりあえず好かれてるのは伝わってくるし」カァァァ

幼「え、えへへへ、とりあえずじゃなくて、ちゃんと好きだよ?」テレテレ

男「も、もちろん分かってるよ」

幼「へへ、その証拠に……この上に、傘を書いてもいいよ」

男「相合傘…にしてはえらく大がかりだな…」

幼「で、でもいいよね、からかわれて書かれるんじゃなくて、本人が書くなら」カァァ

男「…そうだな。でもな幼」

男「こんなでかく書いたら下(地上)から丸見え…じゃないか?」カァァァ

幼「」

>>209
文字化けの為訂正、()の中がハートの記号でした
ボボボボボ…



ジャーン!
男(ハート)幼

幼「こ、こんな感じで…どうかな?」モジモジ

男「い、いいんじゃないか。とりあえず好かれてるのは伝わってくるし」カァァァ

幼「え、えへへへ、とりあえずじゃなくて、ちゃんと好きだよ?」テレテレ

男「も、もちろん分かってるよ」

幼「へへ、その証拠に……この上に、傘を書いてもいいよ」

男「相合傘…にしてはえらく大がかりだな…」

幼「で、でもいいよね、からかわれて書かれるんじゃなくて、本人が書くなら」カァァ

男「…そうだな。でもな幼」

男「こんなでかく書いたら下(地上)から丸見え…じゃないか?」カァァァ

幼「」

幼「…どうしよ。幼友ちゃんに見られることしか考えてなかったよ」

幼「すぐ消えないように強く書いたから、このままほっといて…」

今日のニュースです。空に炎の巨大なハートマークが…

幼「とかなったらどうしよう」オロオロ

男「落ち着いて、すぐ消せば大丈夫だから」

男「えーっと…炎でも、悪い夢でも食べちゃえば平気だ!」

幼「そ、そうだね、いだだきます」

幼「すぅー…すぅー……すーっ……!」

幼「はぁ…はぁ…無理だよ。やっぱり自分で出した炎は食べられないよ…あと私はまんまるピンクじゃないよ!」

男「そうだった…じゃあ風、風で消そう。翼でバサッと!」

幼「こうかな、えいっ!とう!やあっ!」バサバサバサ

幼「ぜ、ぜんぜん消えないよ…」

男「なら…えーとえーと」オロオロ

幼「おちついて男。男まで慌てたらどうにもできないよ」オロオロ

男「そ、そうだけど…さすがにニュースはやばいぞ」

幼「う、うん。でも食べるのもダメ、風も威力が足りなくてダメとなると…」

男「炎をぶつけて相殺は…幼の炎同士くっついて余計大きくなりそうだし…」

男「直接触るのは…間違いなく俺が焼ける」

幼「なにか…ハートと名前を見えなくするには…」

幼「見えなく…そうだ!」ピーン!

幼「ちょっと下にまわって」

幼「文字の要領で壁を作れば!」ゴッ!

メラメラ

男「やった!これならもう下からは見られないな!」

幼「実はこっちも手から逃げる奥の手のひとつだったの。「やめてください」って書いても駄目だったとき用で」

男「得体の知れない相手に言葉と壁か。炎で直接攻撃しないとこが幼らしいな」

幼「これだけだとまだ丸見えだから、横も壁作っとくね」ボッ

幼「炎の箱になっちゃったけど…一応成功だよね?」

男「名前もハートも見えないから成功だな」

男「まあ…ちょっとしたニュースにはなるかもしれないけど」

幼「それなら…いいかな?幼友ちゃんにも中身は言わないでくれる?」

男「もちろん。まだ読まれてなければいいんだけど…」

幼友「あのー…」

男「んっ?」
幼「えっ?」

幼「よ、幼友ちゃん!?いつからいたの!?」

幼友「文字の要領で壁を作れば、のあたりから。」

男「それなら声かけてくれれば…」

幼友「いやー…完全に二人の世界だったからね」

幼「うう…そ、そういえば、馬の足音がしなかったんだけど」

男「あっ、言われてみればそうだな。炎にかかりっきりとはいえ、姿も見えないままだったし」

幼友「足音聞こえてたの?ちょっと馬車の機能で消しちゃった」

男「消したって…ホントに?」

幼友「ホント」シュン

パッ

幼友「ね?」

幼「なんでもありだね…今日は」

幼友「幼ちゃんこそ。似合ってるよ。抱きついて飛んだり、以外と実用的だね」

幼「えへへ…男も似合ってるって言ってくれたよ。ありがと」カァァ

幼「でもなんで姿を消したの?」

幼友「それは…」

幼友「幼ちゃんと男くんの名前を見つけてそっちに走り出したとたんに&がハートに変われば…ね?」

幼「えっ」

幼友「幼ちゃんほぼチョコぐらいしかハート使わないし…ちょっと不思議に思ってさ」

幼友「本当は良くないとは思ったよ?遠くの音を拾う機能使ってみたらさ」

幼友「とりあえずじゃなくてちゃんと好き、上に傘を書いてもいい」

幼友「幼友ちゃんに見られることしか考えてなかった、って聞こえてきたから、近寄りにくくててつい」

幼友「…二人がふつーにデートして、真面目にやってるの、盗み聞きしながら、姿と音を消して近づいたの」

…ポフッ

男「幼?」

幼「ごめんね…ちょっと顔、隠させて」

幼「自分で書いといて、丸見えなの指摘されて、消そうとあたふたしてるまぬけなとこ、一部始終見られて、聞かれちゃったから…」グスッ

男「別に間抜けじゃないよ、箱を思い付いたの幼じゃないか」ポンポン

幼友「ホントにゴメン幼ちゃん!男くんも!わざとじゃないの!本人なのか気になっただけなの」

幼友「何年もずっと好きだったんだもん、あのぐらい普通だよ普通!空にハート書くぐらい!」

幼友「私だってやる!幼ちゃんにも見せるよ!…彼氏が出来たら!」

幼友「絶対誰にも言わないし茶化さないから、4人だけの秘密にするから許して!」

男「4人?奥に誰かいるのか?」

幼友「いるよ…一応。ちょっと中で操作も兼ねて待機させてる」

幼友「男くんと幼ちゃん本人だって分かったから、出てもらおうかと思ったけど…」

幼友「状況悪化しそうだしなー…どうしよう」ポリポリ

「誰が状況を悪化させるって!?」

幼友「残念ながら、友が…」

友「ちょっとひどいぞ。俺だって友達だぞ?もうちょい信用してほしいな」

幼「と、友くんもいたんだ…」

友「おう。わりいな二人とも、デートの邪魔しちまって…すまなかった。そしておめでとう!」

友「予定とはだいぶ違ったみたいだけど、ちゃんと付き合えたようでホントに良かった!」

男「ありがとう…って、なんで分かるんだ?」

友「そりゃ、兄弟でもないのに抱き合ってりゃな。マリオとルイージの再開じゃあるまいし」

友「ましてや男、お前が付き合ってもない女の子にそういうことできるとは思えないからな」

男「よ、よくご存じで」カァァ

友「まあ、伊達に長いこと友達やってないからな」ケラケラ

友「それにしても羨ましいな…なあ幼友」

幼友「なんとなく嫌な予感がするセリフだけど…何が?」

友「失礼な、ああやって抱き合うのがだよ」

友「好きな女の子が、恥ずかしがって顔をぽふっと押し付けてくる…いいよな」

幼友「そ、そうだね」(あれ、視点が男子側だけど……意外と普通?)

友「…特に幼ちゃんを抱ける男!俺はお前が素直に羨ましいぞ!」

友「長年の想いが成就、抱き合ってハッピーエンド、いやスタート…もあるけど!」

友「幼ちゃんはお前よりちょっと小さくて、丁度いい身長差だし」

友「いつの間にか空まで飛べるようになったおかげで、暑くても涼しいとこまでいって抱き締め放題だし」

幼友(あ、やっぱり普通じゃない気がしてきた)

友「そしてなにより胸、すなわちおっぱい!」キラキラ

友「そのほどよく大きなおっぱい…もちろん触れるつもりも直に見るつもりもないが、きっとブラジャーの上からでも柔らかい!」

幼友「ちょっ!ちょっと友ストップ!そのへんで」アセアセ

友「止めるな幼友、まだ始まったとこだ!……横から見ていても分かるぞ。その絶妙な押され加減、サイズだけでなく弾力にも富んでいるのは間違いない」

友「そのぽよん?たゆん?ぷるん?どんな音が適当かは本人と男のみが知る、間違いなく触り心地最高のおっぱい…それを胸に、ぎゅーっ!!っと押し付けられるんだろ?きっと飛んでる間ずっと!」キラキラ

友「想像するだけでたまんねえよ!なあ、そうだよな男。抱き合うのサイコーだよな?」キラキラ

男「お、落ち着け友!」アセアセ

友「お前は落ち着けてるか?好きな子のおっぱいが!自分の胸に押し付けられるんだぞ?ブレストトゥブレストだぞ!?」

男「分かるよ言いたいことは!確かに柔らかくて抱き心地はいいし、胸だって気になる!まだ慣れなくてすっごいドキドキする!」フンス

友「そこは素直におっぱいと」
男「いやだから!」

男「…女子の、しかも本人がいるとこで、そういう話はやめてくれよ…」カァァァ





幼「あぅ…ううう」プシュゥゥゥ

友「あ」

男「幼に押し付けるつもりは一切なかったんだ。今こうしてるのだって、スピードを出しても俺が落ちないように、恥ずかしいの我慢してくれてたんだよ」

幼友「ほら、やっぱり悪化した…」ムス

友「お、幼ちゃん…悪い、実際に見る機会ってそうないし、つい…」ペコ

幼「だだ、だいじょぶだよ。抱き付いてるのも、押し付けちゃってるのも、事実だもん…」プシュゥゥゥ

友「マジでか?全然大丈夫そうに見えないけど」

幼友「当たり前でしょ。友に気をつかってるだけ!抱き付いてるだけでおっぱいだのおっぱいだの言われたら、嫌に決まってるよ!」ムスッ

友「だよな…でもなんで幼友がおっぱいおっぱいって怒ってるんだ?」

幼友「知らないよ!」プンスカ

友「張本人なのに!?」ガーン

幼友「友には教えない!」スクッ

タッタッタ

友「あっちょっ、なぜ奥に」

友(つい我を忘れてはしゃいじまった。完全に怒らせたな、これは)

友「はぁ…立ち話ならぬ飛び話もこの辺にして、上がるか?借り物の馬車に、変な空気だけど」

男「お邪魔するよ。幼、顔上げられるか?」

幼「まだ無理かも…誘導してもらってもいい?」

男「いいよ。まずちょっと上昇して…そのままゆっくり右に……よしストップ」

男「降りていいよ。長いことお疲れ様」

幼「男こそ…お疲れ様。おかげでとっても楽しかったよ」

男「まあ、まだデートは終わりじゃないけどな。買い物もあるし」

幼「うん。そっちもよろしくね」

ストッ

幼「…あっ」フラッ

男「おっと」ギュ

男「大丈夫か?実は無理して飛んでたんじゃないか?」

幼「ううん、ちょっと喉は乾いてたけど…そんなはずは」クタッ

友「いやー…どう見てもくたびれて…はっ!もしかして俺が茶化し続けたから、恥ずかしさで急激に消耗した?」ピーン!

男「そんなまさか」

友「でもさっきまで元気そうに見えたぞ?本人だってそんなはずないって」

男「確かに…幼、どこが具合悪いか分かるか?」

幼「あ…あのね…」

幼「なんだか、きもちわるくて…乗り物酔い…みたいに…」クタ

幼「うまく、立ってられないの。吐き気もしてきて…」クタ…

幼「ただでさえ顔、うずめてたのに…もたれかかっちゃってごめんね…」

男「くっ…俺こそごめんな!ジェットコースターの話でも平気だったから油断してた!」

男「気にしないで寄りかかってくれ。じゃないと落ちるぞ!」

幼「ありがと…馬車から落ちたら、地面につく前に…おさまらないかな。そしたら飛んで戻れるのに」

男「それは無理ありすぎるよ…酔うのが速いからってすぐ治る訳じゃないし」

男「…友、訳は後で説明するから、幼を寝かせる場所を用意してくれないか?」

友「任せとけ!」ダッ

馬車の中、個室
幼友「はあ…友もわるいとこあったけど、まただよ」

幼友「男子だし、大きいおっぱいに憧れるのも、分かってあげなきゃいけないのに」

幼友「嫉妬しておもいきり怒鳴っちゃった…」シュン

ボフッ

幼友「しかもあれじゃ、幼ちゃんの胸にいちゃもんつけてるみたいじゃん…私の貧乳は幼ちゃんのせいじゃないのに」フニ

幼友「男くんも、ワケわかんなかっただろうし…」

幼友「っ…」ポロ

幼友「……ちゃんと謝ろう。それでもって、仲直りしよう」

幼友「そしたら、幼ちゃんみたいに…」

友「幼友!」ガンガン!

友「幼友!!いるか!?」ガンガン!

幼友「とっ、友?」ビクッ

幼友「どうしたのそんな慌てて」

友「幼ちゃんが酔った!かなり重症だ!ベッドに寝かせるのに、その部屋を使わせてくれ!」

友「もうひとつの部屋はいかにも男部屋っぽくて、落ち着かなそうなんだ」

友「さっきは悪かった…後でちゃんと謝るから今は開けてくれ!俺と口を聞きたくなんてないだろうけど…緊急なんだ、頼む!」

幼友「りょ、了解、すぐどく ね!」バッ!

男「さて、どう運ぶかな…このままだっこと、おんぶどっちがいい?」

幼「男の、好きな方で」

男「じゃあこのままだっこで」グッ

男「よし、中いくぞ」

幼「うん……お願いね」

スタスタ

男「あれ…?なんか広くないか?」

幼「ほんとうだ…外から見たときより、大きいね」

男「ドアいくつもあるし…サイズと中身が釣り合ってないな」

友「きたか、こっちの部屋だ!」

男「わかった、今いく!」

友「ここに寝かせてあげてくれ」

男「おおっ、ベッドがあるのか」

幼友「あ、待って男くん、これも飲ませてあげて。気休めだけど、酔い止め見つけたから」

男「いろいろ積んであるんだな…でも助かるよ」ポフ

男「はい幼、悪いけど寝る前に口開けてくれな」

幼「うん…」アーン

ゴクン

幼「ん…みんな、ありがとう」

幼友「気にしなくていいって、仕方ないよ酔っちゃったんだもの」

友「そうそう、到着するまで寝ててくれればいいから」

幼「うん…」ポフ

男「ちょっと寝づらそうだな、特に尻尾が」

幼「平気だよ、ちょっとぐらい…二人でお願いしたんだもん」

幼友「二人でお願いって?」

男「えっと、実は…」

数分後
男「…という訳なんだ」

友「おぉ…二人とも」

幼友「大変だったんだねー…」

幼「うん、泣いちゃったりもしたけど…もう平気だよ」

幼友「見てれば分かるよ。二人で辛いことみんな乗り越えたって…乗り物酔い以外は」

友「でもってスピード婚約までして、人生バラ色だなホント…乗り物酔い以外は」

幼「うん……」グターッ

男「ごめん…」シュン

幼「おちこまないで…遊園地の乗り物や助手席に乗れなくても…かわりにこれがあるから…」バサ…

幼「火だって吐け…うぷ」

男「幼、今それはまずいと思う」

幼「そ…そうだね…違うものはいちゃいそう…」

友「酔ってるとこ悪いけど、俺たちもわりと大変だったんだぜ?」

幼友「そうそう。友ったら、すごい勢いで来るんだもん」クスクス

友「仕方ないだろ…まさかあんなもん降ってくるとは思わねーし」

幼友「そーだね。ちょっと二人にも見せてあげよっか」クスクス

友「そりゃいいな、ちょっと待ってろよ」ダダッ

男(あんなもん…?)

エートドコオイタッケ…アッタアッタ!
ツイデニバシャウゴカシテト…

友「はいよっと、これだこれ」

男「えっ…」

幼「これは…」

グチャーッ

友「なんと!空から降ってきたのは…パンっぽいのと容器っぽいやつ!」

友「外歩いてたらいきなり降ってきたんだ。地面に当たってぐっちゃぐっちゃだけど…たぶんパンとカゴだ」

男「えと…友、当たったりは…」ビクビク

友「してない。というか当たったら今ここにいないだろうし」

幼「…」プルプル

友「でも危なかったなー…あと5歩前にいたら直撃して頭割れてたかもな」

幼「…」ブルブル

幼友「降ってくるもののチョイスはおかしいけど、そこは助かったね、本当…あれ?」

幼「う……うっ…うええええ」ポロポロ

幼友「幼ちゃんっ、そんなに具合悪いの?吐きそう?」オロ

男「…友、幼友さん…それもちょっと訳ありで…」ペコリ

友「なんだ、おやつのバスケットだったのか。呪いとか天罰とかだと思って大慌てしちまったよ」ケラケラ

幼「友くん、ごめんなさい…」ポロポロ

男「友、ほんとにごめん…」シュン

友「もういいって。当たってないんだしさ。それより大変だったのはその後だ、な?」

幼友「うん、私のとこに「幼友ヘルプ!俺呪われてる!」って友がきて、図書館行ったりネットで調べたり、いろいろやって」

幼友「最終的に「困ったときの神頼み!」って神社にいったの」

幼友「そしたら…」

回想

友『こんなの降ってきました、もう何も降ってきませんように!』チャリーン

幼友『私からも…友のとこに、何も降ってきませんように』チャリーン

友『あっ、これだと雨とか雪も俺のとこだけ避けるのか?』

幼友『神様ってそんなに融通きかないの?…まあいいんじゃない?それはそれで』

友『よくねえ…相合傘のチャンスがなくなる!』

幼友『またそんなことを……ほら、かわりに友が傘になれるでしょ?』

友『おおなるほど!やっぱ頭いいな幼友!』

幼友『そ、それほどでも』テレ

『ああぁぁああ!』

友『おわっ』ビクッ
幼友『わっ』ビクッ

少女『そそそそそれは!もしや空から降ってきましたか!?』

幼友『そ、そうだけど…あなたは?』

少女『もしかして…ちょっと失礼します』

友『見るのはいいけど、人の質問には』

少女『この焼け加減甘い香り…とても美味しそ…じゃなくて』クンクン

少女『…感じます!間違いないです!』

友『…聞いてないっぽいな』

少女『こうなったら…この手しか…』グッ

幼友『ど、どうしたの?』

少女『突然ですがお二人にお願いします!空を飛ぶ男の人と女の人の二人組を探して連れてきてください!』

友『へ?』

少女『お願いします!緊急なんです!』ペコッ

友『ちょい待て、まるで意味がわからないぞ。どうしてコレを嗅ぐとこからそうなる?』

少女『待てません!答えるのも後です!はいこれどうぞ!』

ズドン!

幼友『きゃっ!!なにこれ!?』

少女『空飛ぶ馬車です!お貸しします!いろいろついてて安全なんで乗ってください!』

友『いやだからなぜ?そしてどこから出たんだ馬車』

少女『後で説明します!全部まるっと!ですから!』スッ

ブワッ

友『うわ、なんか浮いた!』
幼友『えっ、ちょっと待って、スカートでそれは』アセアセ

少女『のっけてからワープホール!』グニャ

少女『…に向かってレッツゴー!』ビシッ!

パカッ!

幼友『ワープってなに?どこに?』

友『ちょっ走るな、変なのに突っ込む!ぶつか』


スッ


パカラッパカラッ

友『っ…てない…しかも景色が』

幼友『完全に空の上、だよね』

友『どうなってんだ…?』



幼友「こんな流れで、訳もわからないまま馬車ごと空に放り出されたんだよ」

幼友「それからは知っての通り。見当たらないからおーいって呼びかけながら馬車を走らせて、しばらくして幼ちゃんの炎を見つけたの」

友「突如現れる謎の少女と空飛ぶ馬車、いきなりワープさせられる俺たち…な?わりと大変だろ?」

幼「わりとってレベルじゃないんじゃないかな?」

男「そうだな。何ヵ所かひっかかるとこもあるし」

男「友たちがあった子が、空にいる俺と幼を探してることとか。幼が飛べるようになったのは今朝なのに」

友「そういや…ここにいる四人しか知らないんだよな」

幼「うん。男も私も、家族は留守にしてて、デート中はずっと飛んでたよ」

幼友「潰れたバスケットとフレンチトーストを見て、空から落ちてきたって分かるのも変な話だよね」

友「分かるわけねえよな、見た目やにおいで「感じます」や「間違いないです」もおかしいぞ」

男「本当になにか感じ取ったなら、まるで魔法だな。何もないとこから馬車が出るのもそれっぽいし。見た目よりやけに中が広いし」

幼友「魔法…幼ちゃんとなにか関係あるのかな、あの子」

幼「そうかも」

幼「うーん、でも心当たりないなあ…空飛ぶ馬車を持ってる女の子なんて」

男「誰にもないよ。そもそも実在するなんて知らなかった」

幼友「完全に空想上の乗り物だもんね。今ではもう現実だけど」

友「なんにしても、男と幼ちゃん連れてって、事情を知ってる女の子に聞くしかないな」

幼「うん。友くん、操縦お願いね」

友「大丈夫だ幼ちゃん、もう神社に向かわせてる」

男「さっき動かしてって言ってたな…どうやって動かしてるんだ?」

友「操作はボタンで、操縦席があるんだぜ、これ」

友「ステルスだの集音だの加速減速だの、パッと見て分かるようなボタンがズラーッと並んでたな」

男「ほんとに不思議だな、この馬車」

幼友「便利なんだか不便なんだかわからないね」

友「な。ちなみに今は「出発地点に戻る」ってボタン押してある」

男「なるほどそれで神社に…あれっ?」

幼友「どうしたの男くん?」

男「神社ってこの馬車より下にあるはずだよな?」

友「当たり前だろ、今空飛んでだぜ?」

男「だよな…じゃあなんで降りてるのにちっとも傾かないんだ?」

友「そういや…ボタン押してすぐ戻って来たから外はみてないけど、押す前も今も普通に立ってられるな」

幼「乗り物酔い防止機能とかあるのかな?あんまり揺れないし」

幼「乗って10秒しないで酔った私が言っても、説得力ないけど…」

男「気にしなくていいよ、その辺ナツだし…ちょっと窓の外見てみるか」チラッ

男「えーと…普通だな。特に降りる様子もない」

幼友「どれどれ…ホントだ、さっき走ってたのと変わらない」

男「本当に出発地点に戻る、なんてボタン押したのか?」

友「間違いない、ちゃんと押してきた…はずなんだけどなぁ」

幼友「しっかりしてよ、変なとこ行っちゃって戻れなかったらどうするの?」

友「それは大丈夫だろ、いろいろついてて安全!て言ってたし」

友「ほら、最短距離じゃなくて元来た道を戻るボタンだったとかな」

幼友「さっきのワープホール?のとこまで戻るのね」

友「そーいうこと」

友「ま、一応確認してくるよ。ついでに説明書とかも探してみる」

ガチャ バタン



男「馬車の説明書…この馬車ならあってもおかしくないか」

幼「…ねえ、男」チョンチョン

男「どうした?また吐き気がするとか?」

幼「ううん、そうじゃないんだけど……一緒に見に行かなくていいの?」

男「いい。見たいけど、幼をおいてく訳にはいかないから」

男「後で持ち主の女の子に頼んで見せてもらうよ。最初から浮いたままで入れば、幼も酔わないでいけそうだし」

幼「その気遣いは嬉しいけど…男は今すぐ見に行きたいんじゃない?」

男「珍しい乗り物だし、できれば動いてるうちに見たいとは思うけど…」

幼「行ってきていいよ。幼友ちゃん、私と残ってくれる?」

幼友「うん、いいよー」

幼「ほら、幼友ちゃんがいてくれるから平気だよ」

男「いいのか?おんぶとかで運んでもいいんだぞ?」

幼「…ありがと、でも遠慮しとくよ。さっきだっこしてもらったばっかりだし」

幼「もしも男の背中に吐いちゃったら、後悔しきれないもん」

幼「だから、私はここにいるよ」

男「そうか…ありがとうな、ちょっと行ってくるよ」

幼「行ってらっしゃい」ニコ

男「幼友さん、幼のことお願いするよ」

幼友「任せといて!彼氏の代わりはバッチリやっとくから」グッ

男「えっ」

幼友「ん、んーゴホン…はい幼、気を紛らわすのにキスしてみようか…ん」

幼「あっ、ちょっとストップ、やめ」オロオロ

男「ちょ、それ俺の真似?似てない、というかやられちゃ困るんだけど!」アセアセ

幼友「二人とも…冗談だって。普通に見てるから、友のとこ行ってあげて」クス

男「笑えないよ…でも了解、今度こそ行ってきます」

ガチャ バタン



幼「ふう…」

幼友「ふふ…やっぱいいなぁー幼ちゃん」

幼「な、何が?」

幼友「男くんとラブラブで」

幼「ふえっ!?」ドキッ

幼「ら、ラブラブって…」カァァッ

幼友「今だって、男くんが行きたいの察して行かせてあげたり、男くんも一緒に行こうとしたり」

幼友「二人してあんなに動揺しちゃったり…ねえ?」

幼「ああ、あたりまえだよ。めったに乗れるものじゃないし…」

幼「いくら幼友ちゃんでも…男以外の人にキスとか、して欲しくないよ」カァァァ

幼友「わあすっごい。当たり前だよ、いただきましたー」

幼「い、今のはそっちにじゃなくて…」アセアセ

幼友「分かってるって、茶化してゴメンね」

幼友「でも、羨ましいのはホント。私もそうなりたいな」

幼「なれるよ。私だって一応、男より先に告白できたもん」

幼友「そうかなー…とりあえず、約束は予定通りに」

幼「うん。今度は私の番。ちゃんと…あっ…」

幼「そうだった……ごめん幼友ちゃん、私、謝らなきゃいけないことがあるの」シュン

幼友「謝るって何を?もしかしてここで破棄?」

幼「ち、違うよ、手伝うけど…その、ばれちゃったの」

幼友「え…ま、まさかおお幼ちゃん」ダラダラ

幼友「友に、私が友のこと、好きなの、バラしちゃった、の…?」ダラダラ

幼「ううん、男に今度は、私がサポートする番って言っちゃって…」フルフル

幼「あと、相手まではばれてなくて…内緒にしてって、お願いはしたけど…」

幼友「なっ…なんだー、脅かさないでよー…」ホッ

幼「ごめんね。約束破って、紛らわしくて…」

幼友「いいよ。こっちこそさっきはゴメン!困ってるとこにいきなり怒鳴って」

幼「いいよ、気にしてないし…止めようとしてくれたの、嬉しかったよ」

幼友「ありがとー…はあ、よかったー…さっき怒鳴ったの、友に謝れなくなるとこだったよ」

幼友「それこそ質の悪い嫉妬、焼きもち、ツンデレおつ…とか思われそうだし」

幼友「昔っから怒ってばっかだったからなぁ、友のこと」

幼「友くん、よく走って転んでたもんね」

幼友「そうそう、濡れてようが凍ってようが、構わず走って」

幼友「ちょっとしたイタズラしたり、最近はさっきみたくおっぱいがどうのとか話をふってきたり…」

幼友「ほっとけないなって思ってたのに…いつの間にか、みんな好きになるなんてね」クスッ

幼「えっと…エッチな話してくるとこも?」カァァ

幼友「もち。ただ、私が対象にならないのが引っ掛かるけどね」

幼「本人の前では、流石に遠慮してるんじゃないかな…」

幼友「どうだか。幼ちゃん困らせるぐらいなら、私のネタにしてくれればいいのに」

幼友「まあ…」ジーッ

幼「?」

幼友「幼ちゃんのせいじゃないけど、そのぐらいのが近くにあると、平たい私のは霞むかぁー…」ツンツン

幼「きゃ!つ、つつかないで!」ビクッ

幼友「あ、つい…さわり心地良さそうで、流れで触っちゃった」

幼「な、流れで触るのはやめてよ」カァァ

幼友「ゴメンなさい。でも、ホントにさわり心地良かったよ?」

幼友「…私はせいぜい「ふに」止まりなのに、幼ちゃんのおっぱいは「むにゅっ」て感じで…やっぱり霞んでも仕方ないのかなぁ」ショボン

幼「幼友ちゃん…」

幼友「…いやいや!このまま弱気じゃまた同じ、いつまでも叱るだけの存在で終わっちゃう!」ブンブン

幼友「よーし!私もペタンコなりに、友に意識させて!」フニフニ

幼友「そっからガンガンアプローチして、幼ちゃんばりにイチャイチャしてみせる!」フニフニ

幼友「そのためにはまずちゃんと謝る!幼ちゃん、応援よろしくね!」フニフニ
 
幼「う、うん…意気込みは良いけど…胸に手は当てなくていいと思うよ?」

幼友「じゃあ、こう?うおおぉぉぉ!」ムニュムニュ!

幼「わっ、だからってわた、私の胸っ、揉まないで!抵抗、できないから!」カァァァッ

ちょっと前、廊下

男「えーと…キッチン…トイレ…バスルーム」

男「衣装部屋に個室…本当に広いな。ドアだらけだ」

男「しかもプールって…観光地のホテルかなんかなのか?操縦席はどこに……」

【コックピット】

男「あれか、やっぱり分かりやすいな」

男「友ー、ここにいるのか?」コンコン

友「おう、いるぞ。どうかしたか?」

男「幼友さんいるから平気って、幼が送り出してくれたんだ」

男「おんぶするかって聞いたけど断られたよ、吐いちゃったら嫌だって」

友「幼ちゃんらしいな。またおっぱいでいじられたくないのもあるだろうけど」

男「お前が言うのか?それ」

友「マジですまん、反省してる。幼友にも後で謝るって言っといた。緊急だったしな」

友「許してもらえるかは、微妙なとこだけどなぁ」

男「…?見た感じ普通に喋れてたじゃないか」

友「あれはほら、俺が悪くした雰囲気のフォローだろ?実はまだお怒りだったり」

男「なるほど…でも大丈夫だよきっと、謝れば許してくれるさ」

友「その根拠は?」

男「許せないほど怒ってたら、「友のとこ行ってあげて」なんて言わないだろ?」

友「そんなこと言ってたのか?」

男「言ってた。だから大丈夫だって」

友「そか…若干信用されてない感あるけど安心した。サンキュな」

友「じゃあ、安心ついでに幼ちゃんの下着の色でも聞かせてもらおーかな?」

男「ちょっと待てじゃあじゃない、反省したんじゃなかったのか?」

友「それは「本人の前でエロいネタをふること」だ。ここに幼ちゃんはいない!」キリッ

男「きりっとしてもかっこよくないし、その彼氏はいてもいいのか…そしてなぜ知ってると思うんだ」

友「翼を出す穴、お前が開けたんだろ?」

男「幼が自分で開けたんだぞ。そ、それから俺の部屋に飛んできたんだ」ギクッ

友「それにしちゃ隙間がすくないなー。あのでっかい翼を通す穴、見ないで継ぎはぎしたのかなー?」

男「ぐっ」(その辺触れないで説明したはずなのに…)

友「どうやら図星のようだな。さあ白状しろ男…健全な男子なら友達の彼女だろうと気になる!ドラゴなじみ巨乳彼女婚約者幼ちゃんの下着の色は!」

男「人の彼女の見た目を二次元キャラの属性かなんかみたいに言うなよ!……見たのは事実だけど、それは絶対に教えない!」

男「そんなことより馬車だ。行き先は合ってたのか?」

友「人の旺盛な知識欲をそんなことって…合ってた合ってた。説明書というかマニュアルのボタンもあった。あったあった」シュン

男「エスカルゴンの裸ぐらいどうでもいいよ…あと本来の目的がそんなあっさりって」

友「だって幼ちゃんのパンツとブラジャー…いいなーいいなー」

男「気持ちは…分からなくないがお前、自分の彼女の下着を他のやつにばらしたいと思うか?」

友「いないからわかんねーよーだ」イジイジ

男「…つくればいいだろ、俺にもできたんだぞ」

友「簡単に言うなよ、お前1発だったけど、俺が何度玉砕したと思ってんだ?」

男「えー…と…三回?」

友「やめろ、言うな、あの瞬間が思い出される…」キラキラ

男「すまん…」

友「ああ、誰もかれも「友達としてはいいけど、そういう目では見れない」なんだぜ…」キラキラ

男「…」

友「やっぱりあれか…?オープンなスケベはダメなのか…」キラキラ

友「表面は良くても、深くは付き合えない宿命を背負ってるのか…?」キラキラ

男「今までの振られかた聞く限り、そうだろうな…」

友「そっか…いいなあむっつりは…」キラキラ

男「むっつり言うなよ。…じゃあ幼友さんはどうなんだ」

友「ないかな?」

男「急に素に戻ったな」

友「幼友はほら、付き合い長いからそういう目で見れないというか…姉弟って感じで見ちまうな。幼友からも同じだろ」

男「そういうもんか?」

友「そういうもん…とは限らないか。お前と幼ちゃんは逆にそういう目で見てく感じだよな」

男「表現はちょっとあれだが確かに」

友「なんの差だろうな」

男「それぞれの性格とか?」

友「ん、ずーっとイチャイチャするお前ら、ずーっと追っかけっこする俺たち…なっとく」

男「納得はいいけどずーっとイチャイチャは違うような」

友「いやいや、してただろ昔から」

男「してないよ、してみたいと思ってただけで」

友「あ、今日からが本番って訳か?」ニヤ

男「ま、まあ…そういうこと」カァ

友「そうかそうか、羨ましい限りだぜ。頑張れよ」ニヤニヤ

男「あ、ああ」カァァ

友「ま、この話も本題も終わりにしておまけに入ろうか」

男「からかったとたんに元気に…らしいけど。本題はお前があっさり終わらせちゃったけどな」

友「そう言うなよ、楽しみだったろ?どれ押すどれ押す?」

男「うーん…」

男「とりあえずマニュアル見るかな」ポチ

ピコッ

男「ロボットのコクピットみたいだな、モニターに出てくるあたりが」

友「それ、出てくるとこまでは良いけど、マニュアルってわりにろくに何も書いてないぞ」

男「そうなのか?「この馬車は基本的に、ボタンに書いてある文字から受けるイメージ通りに動きます。他はペガサスと車体が自動でなんとかします。おわり」」

男「…おわり?これだけ?」

友「これだけらしい」

男「本当に何も書いてないのか…何のためにボタン1つ使ったんだろう」

男「でも、初めて乗った友が俺達を見つけたんだから、これでもマニュアルとして十分…なのかな?」

友「かもな。どのボタン押しても、思い通りに動いてるし。イメージ通りにってのもマジだったりして」

友「例えばこの、機内食ってボタン」

友「俺と男でそれぞれ違うものが出たりとか」ポチ

男「あるかもな」ポチ

ポンッポンッ!

友「お、出た出た。和食寄りメニューだ。お茶ついてる」

男「俺のは洋食か。飲み物は無いな」

友「本当にイメージした通りだ、すげえな」

男「そうだ。せっかくだから幼の分も」ポチ

ポンッ

男「降りて酔いがおさまってから食べるように軽めのを用意しとこう」

友「今度はデザートつきか」

男「あとは…出てこなかった飲み物だけで出せるか」ポチ

ポンッ

男「おお!ペットボトルの水だけでもいいんだな」

友「すっげー!操縦以外も自由自在か!」

友「そんなら……次はこれとかどうだ?治療ボタン!」

男「治療って、もしかして幼の乗り物酔いを?」

友「その通り!病気やケガじゃないけど…いけそうだろ?」

男「友…ありがとう。早速幼を連れて来る!」

友「あ、待てよ男、連れてこなくてもいけるんじゃねえか?」

男「それもそうか」

友「よーし、幼ちゃんのいる個室をイメージして…ポチッとな!」ポチ

キュイイイン!

そのころの個室

幼「ほ…ほんとにもうやめてね?絶対だよ…?」グッタリ

幼友「はい…男くんにも触らせたこと無いのに、すみませんでした」

幼「そそ、そういうことじゃなくて…反省してるの?」カァァァ

幼友「はい…謝罪も反省もいたしま…ん?」

キラキラ…

幼友「お、幼ちゃん?謝るから、魔法は勘弁してくれない?」

幼「え?私は何も…」キラキラ

幼友「そうなの?光ってるから、てっきり魔法で爆発炎上でもするのかと」

幼「爆発炎上!?」ガバッ!

幼「ば、馬車壊れちゃうよ、一度降りなきゃ!」ビュン!

幼友「ちょっと、いくら飛べても今降りちゃ危ないって」ガシッ

ズテン!

幼友「わわわわわ!?」ズザザザザ

幼「幼友ちゃん!?」キキッ

幼友「あたたた…尻尾掴んでも止まらないとは…すごいパワーだね」

幼「ご、ごめんね!ケガしてない?」オロオロ

幼友「えーと…大丈夫みたい…」キラキラ

幼「え?」
幼友「ん?」キラキラ

友「さーて、そろそろ効果出たころかな」

バシュウウン

友「おっ、この音はもしや」

男「幼が飛んでる時のだ。ばっちり治ったみたいだな」

友「やったな」




幼「大変だよ!どうしよう」キキッ

男「あれ?どうしたんだそんな慌てて」

幼「乗り物酔いはなぜか急に治ったけど、幼友ちゃんがこんなことになっちゃって」オロオロ

幼友「どーも」キラキラ

男「なんか光ってるけど…友、何考えて押したんだ?」

友「部屋の中のケガ人病人などに反応する治癒魔法とか」

男「ああ、それでか」

男「そんなに慌てなくていいよ、このボタンの効果だから」

幼友「どれどれ…なるほど治療ね」

友「幼友が光ってるのはよくわかんねえけどな。どっかケガでもしてたのか?」

幼「それ、多分私のせい…」

友「え?」

幼「慌てて飛び出して、床の上を引きずっちゃって…ごめんなさい」シュン

幼友「いいって。尻尾つかんだの私だし、慌てたのも私が爆発するとか言ったからだし」

幼友「ついでにばっちり治してもらってもうきれーさっぱり。だから私に謝らないで、二人にお礼言ってあげて?」

幼「…ありがと。友くんも男も、ありがとね」ニコ

男「押したのも見つけたのも友なんだけどな…」ポリポリ

友「いいじゃねえか、お前も幼ちゃん連れてこようとしたり、弁当用意したりしたろ?」

友「ちょい違うけど、素直にどういたしましてでいいんだって」

幼「そうだよ男。ところでお弁当って?」

男「治療ボタンの前に試しに出したやつ。これは俺と友が出したやつで、これがその後に幼の分で出したやつ」

幼友「美味しそうじゃん。私下ろして二人で食べなよ、お昼食べてないんでしょ?」

幼「うん。幼友ちゃんと友くんは食べないの?」

友「俺たちもう昼飯食べたからな」

幼友「そういうこと」

幼「そうなんだ。それじゃ下ろすね、幼友ちゃん」

幼友「うん。運んでくれてありがとっ」スタ

幼「どういたしまして。男、お言葉に甘えてお弁当食べよ?」

男「そうだな。俺もお腹空いたし。はい」

幼「ありがと。いただきます」

男「いただきます」

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