ベルトルト「僕のために生きてよ、ユミル」(250)

・ベルユミ
・最新話までのネタバレあるよ
・だらだら話しているだけ

ユミル「さてベルトルさん」

ベルトルト「何だいユミル」

ユミル「ここはどこだろうな?」

ベルトルト「河原だね」

ユミル「記憶が確かなら、私は担架に乗っかったまま超大型巨人に噛まれて死んだんだが」

ベルトルト「ああ、あれはミカサが思いっきりうなじを削いできたからびっくりしてつい」

ユミル「……ミカサは凄いな」

ベルトルト「ゼノフォンも喜んでるだろうね」

ユミル「エンジェルもな」

ベルトルト「アンヘルだよ、ユミル」

ユミル「わかってるさ」

ベルトルト「彼らがいなければ僕は生きていたかもしれないのに」

ユミル「ベルトルさんたちは人類を衰退させたいのか」

ベルトルト「正確には全滅させたいんだよ。のっぴきならない事情でね」

ベルトルト「ところでユミル、僕たちはどうすればいいんだろう」

ユミル「私を殺した奴がそれを言うのか」

ベルトルト「いやだって、ここにはユミルしかいないし」

ユミル「そんなあっけらかんとされても困る」

ベルトルト「過ぎたことは仕方ないよ」

ユミル「どうしてベルトルさんが普通でいられたのかわかった気がする」

ベルトルト「いやあそんな」

ユミル「褒めてない」

ベルトルト「君だって普通に生活していたじゃないか」

ユミル「まあな。人生楽しく生きなきゃ」

ベルトルト「もう死んだけどね」

ユミル「だからそれをベルトルさんが言うなって」

ベルトルト「過ぎたことだよ」

ユミル「さっきの訂正、ベルトルさんどっかおかしいわ」

ベルトルト「照れるなあ」

ユミル「貶しているんだ」

ベルトルト「仲良くいこうよユミル」

ユミル「私はベルトルさんに殺されたし、過去に私はベルトルさんの友達を食ってるんだぞ?



ベルトルト「この場で嘆いたって何も変わらないよ」

ユミル「それもそうだけど」

ベルトルト「楽しくいきたいんだ」

ユミル「そういうものなのか」

ベルトルト「そういうものだったんだ」

ユミル「話を元に戻すぞ。ここはどこだ?」

ベルトルト「河原だね」

ユミル「流れは緩やかなくせして深そうな川が流れているな」

ベルトルト「渡るのはきつそうだ」

ユミル「ベルトルさんが巨人になれば一瞬で解決だな」

ベルトルト「巨人になれないけどね」

ユミル「体力的に?」

ベルトルト「精神的に。だいぶ疲れたんだよ」

ユミル「そうは見えないな、いつものベルトルさんだ」

ベルトルト「わけのわからない現実に押しつぶされそうになって、君が起きるちょっと前まで

号泣していたんだ」

ユミル「ああ、だから私の服は濡れていたのか。唾液かと思った」

ベルトルト「僕の唾液腺はそんな器用な真似は出来ない」

ユミル「ならいいんだ。唾液ならどうやって洗おうか考えてた」

ベルトルト「川の水で洗えばいいじゃないか」

ユミル「どうやってこの足と手で洗えっていうんだ」

ベルトルト「僕がやろうか。その間君は上半身真っ裸で石の上に横たわることになるけど」

ユミル「そう言われて誰が頼むと思う」

ベルトルト「ここには君と僕しかいないよ」

ユミル「誰かいたら助けを求めてるさ。死んでるけど」

ベルトルト「死んでいるんだ。だからちょっとぐらい真っ裸になっても問題ないと思う」

ユミル「羞恥心と一緒に墓に入ることも許されないというのか」

ベルトルト「あ、君の死体ってどうなってるんだろうね」

ユミル「女神様が回収してくれているって信じてるぞ」

ベルトルト「僕の蒸気で蒸し焼きになってなきゃいいね」

ユミル「うぇ、想像してしまった」

ベルトルト「ごめん。青ざめさせるつもりはなかったんだ」

ユミル「私は蒸した後に焼かれるんだな?」

ベルトルト「あ、その話続けちゃう?」

ユミル「油……落ちるだろうな」

ベルトルト「ヘルシーだね」

ユミル「ああ。低カロリー高タンパク」

ベルトルト「兵士がみんなミカサみたいに強かったら巨人は食品になったかもしれない」

ユミル「恐ろしい未来だな。そしてベルトルさんは筋張ってそうだ」

ベルトルト「なぜだろう、大根や卵と一緒に煮込まれる自分の肉が想像出来る」

ユミル「体を震わせないでくれ。私にまで揺れが伝わる」

ベルトルト「君は僕の体を椅子代わりにしているんだったね」

ユミル「起きたときからこうだった」

ベルトルト「ほら、傷になってる部分が痛いかなって」

ユミル「細やかな気遣いをしてくれて嬉しいよ」

ベルトルト「棒読みだ」

ユミル「優しくされたって困るだろう」

ベルトルト「僕はいつでも優しくされたいタイプだよ」

ユミル「……何度目かわからないけど話を戻すぞ。ここはどこだ?」

ベルトルト「僕の記憶にはこんな場所はないな。ユミルは?」

ユミル「実を言うとベルトルさんの歳の4倍くらいの時間を外で過ごしたけど、私も知らない



ベルトルト「座学でやったよね、人間が強い痛みに襲われたとき脳は麻薬物質を出すって」

ユミル「その麻薬物質で幻覚を見てるとでも言いたいのか?」

ベルトルト「最初はそう思った、けどそれだと君がいる意味がわからない」

ユミル「私だっておよそ2m級の同期生の夢を見ながら死ぬ趣味はないからな」

ベルトルト「約じゃないんだ」

ユミル「約だと百に聞こえるかもしれないだろう?102mはデカすぎる」

ベルトルト「僕の2倍近く」

ユミル「コケた時点で人類壊滅間違いなし」

ベルトルト「それだけ大きかったらミカサにうなじ削がれなかったかなあ」

ユミル「眼球あたりの攻撃に切り替えてきそうだ。ミカサだし」

ベルトルト「想像しちゃった」

ユミル「超大型巨人のレンズ体を突き刺さる超硬質ブレード。抉れる眼球」

ベルトルト「そうなったら僕はゼノフォンを一生恨むよ」

ユミル「ゼノフォンは悪くない」

ベルトルト「誰かに怒りをぶつけたいことってあるじゃん?」

ユミル「それを逆恨みって言うんだ」

ベルトルト「まあ結局出来なくて夜中に一人で膝を抱えることになるんだけどね」

ユミル「ベルトルさん、悲しいことや心配なことがあったら誰かに話していいんだぞ」

ベルトルト「だからユミルに話しているんだ」

ユミル「よしわかった。ひたすら悩め自分を助けられるのは自分だけだ」

ベルトルト「ユミルったら酷いや」

ベルトルト「川、渡ってみちゃう?」

ユミル「川を越えたってミカサが追ってこない保障はないけどいいのかベルトルさん」

ベルトルト「そういう気持ちで言ったんじゃないよ。ずっとここにいたって何も出来ない」

ユミル「話してるだけだしな」

ベルトルト「僕にいたっては君を膝の上に乗っけているだけだね」

ユミル「降ろしてもいい。足疲れただろうし」

ベルトルト「でもここにいるのは僕の責任だし」

ユミル「正しい。正しいんだけどそんな言葉が今のベルトルさんから出てきたことにびっくりだ」

ベルトルト「もちろん川を渡るときも僕が君を抱えていく」

ユミル「途中で手を離して私だけ海に、なんてやめてくれよ」

ベルトルト「川の流れの弱さと僕の腕力を信じてくれ」

ユミル「何でそんなに力強く言えるのかわからないよ」

ユミル「……あ」

ベルトルト「どうしたんだいユミル」

ユミル「ちょっと思い出したことがあって」

ベルトルト「言ってみて」

ユミル「東のそのまた東では、死んだ後に川を渡らなくちゃいけないらしい」

ベルトルト「そんな苦行を死体に求めるんだね」

ユミル「物理的にじゃない。魂が川を渡って死の世界に行くんだ」

ベルトルト「じゃあこの川の向こうは死んだ人の世界?」

ユミル「東の話を信じるなら」

ベルトルト「僕が行ったらさあ、大勢の人に殺しやがってこのクソが!って言われない?」

ユミル「事実だろ受け止めろ」

ベルトルト「やだな、怖いな。ユミル、一緒にいてよ」

ユミル「ベルトルさんが急に回してきた腕を離さない限りは一緒だ。私が望もうと望まざろうと」

ベルトルト「良かった」

ユミル「良くない」

ユミル「この川よりこっちは此岸、生きている世界。向こうは彼岸、死の世界。ここは真ん中」

ベルトルト「わざわざ死ぬために川を渡る人はいるんだろうか」

ユミル「さっきまでのベルトルさんが該当する」

ベルトルト「だってその話を知らなかったから」

ユミル「言わなかったからな」

ベルトルト「もう少しその話をしてよ。それから決めよう」

ユミル「このチキン」

ベルトルト「そうかな」

ユミル「いつも汗かいてる気がする」

ベルトルト「ライナー関係で僕は毎日きつい思いをしてきたんだ」

ユミル「あの巨体ゴリラに年がら年中汗をかかされてきたってことか」

ベルトルト「待って。その表現は違うと思う。誤解しか生まない」

ユミル「事実なのに?」

ベルトルト「事実ではあるけど、その言葉には事実以外の何かも内包されているんだ」

ユミル「川の話だったな」

ベルトルト「根本的な部分の否定をさせないで話を進めるつもりだね」

ユミル「そうじゃないといつまで経っても終わらないからな」

ベルトルト「僕と君の人生が?」

ユミル「それはもう終わっている」

ベルトルト「ミカサめ……」

ユミル「ギリィって感じの顔をしているところすまないが、私の死因はベルトルさんだよ」

ベルトルト「君を噛んだ感触と軟骨入りつくね棒を噛んだ感じはとてもよく似ていた」

ユミル「どうしようの先私は軟骨入りつくね棒を食べられなくなった」

ベルトルト「死後の世界に居酒屋はあるのかな?」

ユミル「あったら今すぐスピリタスを持ってきてもらいたい。目の前にいる男を焼くんだ」

ベルトルト「そうなったら僕は君に抱き着いてやろう」

ユミル「私に何の恨みがあるっていうんだ」

ベルトルト「それについてはさっき君が言った通りだよ」

ユミル「川の向こうに行った後の話をしよう」

ベルトルト「死後の世界とやらには何が待っているの?僕への罵声?」

ユミル「どうしてベルトルさんは局所的にネガティブになるんだろう」

ベルトルト「エレン一人の話だけで密かに鬱になっていた僕だよ?」

ユミル「威張られても」

ベルトルト「えっへん」

ユミル「死んだ後はいかつい顔をしたおっさんに自分の罪を告白しなくちゃいけない」

ユミル「そうとうクレイジーらしくてな、嘘をつくと舌を引っこ抜かれるんだ」

ベルトルト「どうしよう。正しく自分の罪をカウント出来る自信がないよ」

ユミル「私も何件窃盗を繰り返したのかわからない」

ベルトルト「そんなことをしていたの」

ユミル「生きるために必死だったんだ。セカンドライフをエンジョイしたかった」

ベルトルト「そう言ったら許してもらえるんだろうか」

ユミル「無理だな」

ベルトルト「そっか」

ベルトルト「おっさんに罪を告白した後は?枕投げでもするの?」

ユミル「修学旅行気分は捨てよう」

ベルトルト「そして最後にはおっさんの苦労話でも聞けるのかと」

ユミル「聞きたいのか?」

ベルトルト「いやあんまり」

ユミル「私もだ」

ベルトルト「ここに来て初めて君と意見が一致したような気がする」

ユミル「あまりめでたいことだと思えないのはどうしてだろう」

ベルトルト「僕が軟骨入りつくね棒の話をしたせいかな?」

ユミル「私は優しからそういうことにしておいてやろう」

ベルトルト「ありがとう」

ユミル「罪を告白したら、極楽か地獄に送られる。私たちは地獄行きだろう」

ベルトルト「ユミルも一緒ならいいや」

ユミル「仲良く針山や熱湯の風呂に突っ込まれるのか」

ベルトルト「一人じゃないからいいんだよ」

ユミル「この川が東の話と同じものなら、渡った後に待ち構えているのはクレイジーなおっさんと地獄だ」

ユミル「知ってもなお川を渡るって思えるなら私は止めない」

ベルトルト「君は地獄に行きたくなさそうだったけどいいの?」

ユミル「ベルトルさんが手を離すなら、私はここでずっと寝ているよ」

ユミル「でも連れて行くっていうのなら、私は付いていく」

ベルトルト「どうしてそう考えるのか聞いてもいい?」

ユミル「一人は寂しいんだろう?」

ベルトルト「そうだね。僕だけしかいないって考えると途端に膝が震えてしまう」

ユミル「今は大丈夫みたいだが」

ベルトルト「君が膝の上にいるから我慢しているんだ」

ユミル「ベルトルさんは私を殺しても不思議じゃないのに、どうしてそんなに優しくするんだ?」

ベルトルト「残念ながらもう殺してしまっているんだよ」

ユミル「忘れてた」

ベルトルト「出来れば忘れたままでいて欲しかった」

ベルトルト「ねえユミル、一つ思ったことがあるんだ」

ユミル「積極的に発言していこう」

ベルトルト「実はこっちが彼岸なんじゃないかな?」

ユミル「知らず知らずの内にこの川を渡ったっていうのか」

ベルトルト「それか最初からここにいたのかもしれない」

ユミル「じゃあ私たちは完全に死んでしまったと」

ベルトルト「残念?」

ユミル「いや、生き返りたいなんて気持ちはどこかにいってしまった」

ユミル「私はクリスタが健やかに自分のやりたいように生きていればそれでいいよ」

ベルトルト「まるで母親のようだ」

ユミル「どうしてだか放っておけなかったんだ。強制的に手放す羽目になってしまったけど」

ベルトルト「ねえ、君とクリスタはどんな関係だったの」

ユミル「一方的に約束を押し付けただけの仲だよ」

ベルトルト「そうは見えなかったな」

ベルトルト「君はクリスタが何なのかを知っていた?」

ユミル「さあ。本名だってさっき知ったばかりなんだ」

ベルトルト「ヒストリア、だったっけ」

ユミル「ああ。出来れば大人しく内地に行ってくれると助かる」

ベルトルト「それはどうだろう」

ユミル「何かあるっていうのか?」

ベルトルト「ライナーが単騎でエレンかクリスタをさらって僕らの故郷に帰っているかも」

ベルトルト「……ごめん、今の無し」

ユミル「ミカサ、全力でベルトルさんを削ぎに来てたもんなあ」

ベルトルト「どうしてあんなにエレンは愛されているのだろう」

ユミル「愛じゃなくて執着かもしれない」

ベルトルト「どちらにしろ、そんな強い感情を抱いてもらうなんて羨ましい」

ユミル「ベルトルさんは常日頃多くの人類から殺意を持たれてるだろうさ」

ベルトルト「事実だからこそもうちょっと柔らかい言い方をしてほしかったな」

ユミル「ここが死後の世界だとしたら、ベルトルさんはどうしたい?」

ベルトルト「もう少し君と話していたい」

ユミル「おっさんとガチトークのための心の準備は時間がかかるもんな」

ベルトルト「それ以外の理由もあるんだ、今は言えないけど」

ユミル「死んでも言えないことってあるのか」

ベルトルト「あるよ。きっと今の感情を言葉にしたら僕は真っ赤になってしまう」

ユミル「いつも顔を青くしていたベルトルさんが頬を赤らめるのか」

ベルトルト「そんなに困った顔をしていたかな」

ユミル「ライナーとアニを見ていたときの顔を見せてやりたいよ」

ベルトルト「ライナーはもしかしたらこの近くにいるかもね」

ユミル「ミカサだもんな」

ベルトルト「彼女がもうちょっと遅く生まれていてくれたらなあ」

ユミル「なかなかうまくはいかないもんだ」

ベルトルト「それかミカサが巨人だったら……今のも無しで」

ユミル「話すって言ったけど、話題が無いな」

ベルトルト「じゃあ仮定の話をしよう」

ユミル「むなしくなるだけだぞ」

ベルトルト「希望に溢れた話を最後にしてみたいんだ」

ユミル「そこまで言うのなら聞こう」

ベルトルト「僕が君をさらって、ライナーがエレンをさらって、故郷に戻れたら」

ユミル「ストップ。私には絶望しか見えない」

ベルトルト「そうかな。君を含むちょっとの犠牲で僕たちは人類を滅ぼす必要が無くなるんだ」

ユミル「あんなに一人は寂しいって言って、私には一人でここに来させるのか?」

ベルトルト「そ、そんなことはないよ」

ユミル「わかりやすく焦るな」

ベルトルト「そうなったら僕も一緒にこっちに来てあげるよ」

ユミル「エレンもびっくりな死に急ぎ野郎発言をありがとうよ」

ベルトルト「本当だって。君を一人にさせるって考えると悲しくなってしまう」

ユミル「その優しさを生前から発揮して欲しかったよ」

ベルトルト「人類は滅ばない。君の好きなクリスタは死なない。万々歳だ」

ユミル「その部分だけをどうにか手に入れられないものか」

ベルトルト「上手くはいかないんだよ。僕と君の尊い死によって人類は本物の安寧を手に入れる」

ユミル「もう一度誰かの為に死んでやるつもりはない」

ベルトルト「僕に噛まれたのは?」

ユミル「あれは人類がミカサという兵器を手に入れてしまったからこそ起きた不幸な事件だ」

ベルトルト「エレンが開拓地に行っていればなあ」

ユミル「鍬を持ったミカサに追いかけられるのか」

ベルトルト「怖いね」

ユミル「農具は射程が短いのにな」

ベルトルト「アッカーマンに続いた結果がこれだよ」

ユミル「そういえば私の他にもう一人口に入れようとしていたけど、そいつは?」

ベルトルト「ぽろっとこぼしちゃった」

ユミル「お行儀は悪いけど、驚いてしまったんだから仕方ないな」

今日はここまで

凄く期待
アッカーマンに続いた~ ってサンホラネタかな?

ユミル「ここが彼岸だったとしたら、わからないことが一つあるんだ」

ベルトルト「何だろう」

ユミル「川に渡るときには舟に乗る必要があったんだ」

ベルトルト「辺りを見回してもそんなものは見えないね、石と川しかない」

ユミル「それとベルトルさんだけだ」

ベルトルト「君と僕で二人っきり」

ユミル「なんて恐ろしい響きだろう。ベルトルさんの顔がピンクになっているのがまた恐ろしい」

ベルトルト「思春期男子の事情ってやつだよ」

ユミル「深く追求するのはやめておこう」

ユミル「その舟に乗るにはお金が必要なんだ」

ベルトルト「高い?」

ユミル「子供の小遣いでも出せる額だよ。今の私は持っていないけど」

ベルトルト「僕もお金は持ってないや。じゃあここが此岸なら、僕たちはいかついおっさんに会えないんだね?」

ユミル「まあ最後まで聞けよ」

ユミル「金を出せなかった場合、向こう岸にいるらしいババアに服を剥ぎ取られるんだ」

ベルトルト「こんなところまで来て僕たちは追い剥ぎに遭うのか」

ユミル「そしてジジイに服の重さを計られる。それが罪の重さになるんだってよ」

ベルトルト「非科学的だ」

ユミル「質量保存あたりの法則をまるっきり無視している私たちが言える台詞じゃない」

ベルトルト「ユミルの真っ裸を他の人が見ることになるのか。ちょっと興奮する」

ユミル「今は思春期男子を捨てて兵士に戻ろう。戦士でもいいから」

ベルトルト「ってことは地獄は全裸祭り?」

ユミル「それこそが正に地獄だな」

ベルトルト「ちょっと行く気が失せてきた」

ユミル「服を着ていなかった場合は生皮を剥がれるんだ」

ベルトルト「僕、巨人化して行ったらどうなるの?最強じゃない?」

ユミル「眼球だな」

ベルトルト「ねえユミル、さっきから僕の目に攻撃が加わることを望むの、やめてほしいな」

ユミル「恨みがこれくらいで晴らせるなら安いものだろ」

ユミル「私たちは裸でもなければベルトルさん状態でもない」

ベルトルト「まだ此岸にいるってことかな」

ユミル「それかババアとジジイを倒してしまったんだ。無意識の内に」

ベルトルト「生皮を剥ぐ老人を倒せる気がしないよ。ここには立体機動装置もブレードもない」

ユミル「じゃあベルトルさんが巨人になったんだろ」

ベルトルト「急に僕の潜在能力を信じるような発言やめようよ」

ベルトルト「それに僕は君が起きるまで泣いていたって言ったろ?」

ユミル「律儀に私を抱きかかえたままな」

ベルトルト「離してなるものかと思ったよ」

ユミル「そんなに私は愛されていたのか」

ベルトルト「…………」

ユミル「冗談だってベルトルさん。無言にならないでくれ」

ベルトルト「君は時折僕を酷く困惑させる」

ユミル「からかって悪かったって」

ベルトルト「思春期男子を弄ぶなんて酷いよ」

ベルトルト「……ミカサがね、とっても怖かったんだ」

ユミル「エレン関係になるとミカサは狂戦士のようになる」

ベルトルト「彼女は僕を僕として認識しなかった。人類の敵として、あの黒い目で僕を見てきたんだ」

ユミル「僕僕うるさい奴だな」

ベルトルト「きっとミカサはエレンのために死ぬことが出来るんだ」

ユミル「あそこまで想われるのには色んな事情があったんだろう」

ベルトルト「そしてエレンを生かすためならミカサはどんなことでもやってのけるだろう」

ベルトルト「その意志の強さが僕には怖い。思い出しただけで泣いてしまいそうだ」

ユミル「泣いてもいいぞ。見なかったふりをしてやる」

ベルトルト「君の首筋に液体が落ちたとしてもそれは涙だから」

ユミル「涙以外のものが落ちてこられると困るな」

ベルトルト「鼻水とか?」

ユミル「涙なら拭いてやるけどそこまでは面倒見きれない」

ベルトルト「今だから言うけどね、ユミル」

ユミル「何だ?」

ベルトルト「君はとっても優しい人だ」

ユミル「その優しい人をうっかり噛んでしまった感想が軟骨入りつくね棒か」

ベルトルト「ごめんね」

ユミル「謝らなくていい。私だって誰かを軟骨入りつくね棒感覚で食べたんだ」

ベルトルト「そういう点では僕たちは似ているんだね」

ユミル「間接的に殺した人数はベルトルさんの方が3ケタくらい多いだろうけど」

ベルトルト「いつかは許される日が来るのかな?」

ユミル「お前の膝の上の女は、もうそろそろ忘れてやってもいいって思ってるぞ」

ベルトルト「その人は特別優しいんだろう。でも他はそうはいかない」

ユミル「優しかったのは一回目の話だよ」

ベルトルト「一回目?」

ユミル「大勢の人間の幸福のために死んでやった過去があるんだ」

ユミル「今考えれば、ただの自己満足だったかもしれないけれど」

ベルトルト「それから君はずっと一人で?」

ユミル「旅っていうのは一人でするものさ」

ベルトルト「その話を聞いてもいい?」

ユミル「曖昧なことしか言えないぞ。だいぶ多くのことを忘れてしまった」

ベルトルト「その忘却が君を救ったのなら、詳しく知ることが出来なくても構わないよ」

ユミル「昔の私はちょっとした有名人でな、ユミル様なんて呼ばれてた時期もあった」

ベルトルト「ユミル様」

ユミル「やめろ、ぞわぞわする」

ユミル「様付けで呼ばれていた頃の私は、お前たちで言うのっぴきならない事情とやらで死ぬことを選んだ」

ベルトルト「辛かった?」

ユミル「さあな。あのときの気持ちなんてすぐに忘れてしまった」

ユミル「最大公約数の幸せを手に入れるために死ぬことを選ぶのは辛かったろうけど実感は無いんだ」

ベルトルト「僕が死んだことで誰かが幸せになったんだろうか」

ユミル「あまり考えない方がいい。ただでさえベルトルさんのメンタルは危ういんだから」

ベルトルト「まだ泣いてないよ」

ユミル「涙声だぞ」

ベルトルト「目から液体が流れるまでは泣いてないってことにしてくれ」

ユミル「そこまでこだわる理由がわからないけど乗ってやろう」

ベルトルト「ありがとう」

ユミル「死んだ後、何でだかは今でもわからないが私はセカンドライフを得た」

ユミル「しばらくの間は自我っていうものを失ったままの放浪生活だったけど、嫌なものじゃなかった」

ベルトルト「その嫌じゃない期間の間に僕は友人を失うのかな」

ユミル「たぶんな。悪いけどその記憶だって曖昧なんだ」

ベルトルト「エレンが正気を失っていたように?」

ユミル「あの後のミカサは酷かったな」

ベルトルト「僕はどうして彼女が人類最強を名乗らないのかわからない」

ユミル「もっと強い兵士がいるからだろ」

ベルトルト「どうして人間はこんなに強くなってしまったんだい」

ユミル「よくもまあそんなメンタルで人類を壊滅させにきたな」

ベルトルト「泣いてない。鼻水だ」

ユミル「嘘なら許してやる、本当なら今すぐ離れろ」

ベルトルト「離れてやるもんか」

ユミル「泣いているんだな」

ベルトルト「…………」

ユミル「無言で腕の力を強めるな。ちょっと痛い」

ベルトルト「あっ、ごめん」

ユミル「みんなが幸せになれる世界なら良かったのに」

ベルトルト「君はクリスタさえ幸せならそれでいいとばかり」

ユミル「一番優先すべきはクリスタだよ。クリスタが幸せなら、もっと幸せな人間を増やしたいだけだ」

ベルトルト「君をユミル様と呼んでいた人たちは、きっと君の死をとても悲しんだろうね」

ユミル「わからないな。死んでしまっていたから」

ベルトルト「なぜだろう、今の君の死は僕の心を強く痛めつけるんだ」

ユミル「とんでもない状況にいるからな、同情や哀れみを違う感情だと勘違いしているんだろう」

ユミル「よくあることだ。気にしなくていい」

ベルトルト「だとしても僕はこの気持ちに飲み込まれてしまいそうだ」

ベルトルト「辛いよユミル。泣きたいよ」

ユミル「安心しろベルトルさん。もう泣いている」

ベルトルト「僕はどうしてこんなことになったのかな」

ユミル「それはミカサに聞かないとわからない」

ベルトルト「僕はどこにいるのかな」

ユミル「場所はわからないから言ってやれないが、私の後ろにいることは確かだ」

ベルトルト「お願いだユミル、僕のことを見て」

ユミル「片手片足じゃ向きを変えることすらハードワークだ」

ベルトルト「痛くしたらごめんね」

ユミル「全身の骨が粉砕される痛みに比べたら、泣いているベルトルさんに掴まれるぐらいなんてことないさ」

ベルトルト「僕の目の前に君がいる」

ユミル「さっきまでもいたよ。ちょっと顔を合わせていなかっただけ」

ベルトルト「君の目に僕が映っている」

ユミル「ここまできて視線を逸らすほど酷い人間じゃないんだ、実は」

ユミル「ほら、拭いてやるよ」

ベルトルト「どうしてそんなに優しいの」

ユミル「優しくされたいタイプなんだろう?」

ベルトルト「そうだよ。僕は誰かに優しくしてほしくてたまらない」

ユミル「眼球にダメージを食らうのも嫌なんだろう?」

ベルトルト「うん。多くの人を傷つけたけど、それでも僕は救われたかった」

ユミル「事情があったんだろう?」

ベルトルト「痛いよ、胸が痛くてたまらないよ」

ユミル「撫でてやる。私で悪いけど」

ベルトルト「どうして死んでいるのにこんなにも痛いんだろう、苦しいんだろう」

ユミル「生きてきたからだよ。方向性はどうであれ、頑張ったから辛いんだ」

ベルトルト「報われたかった。三人で故郷に帰りたかった」

ユミル「大変だったな、頑張ったな」

ベルトルト「君が僕の仲間だったら良かったのに」

ユミル「敵同士だったとしても、今なら隣にいてやれるからいいだろ」

とりあえずここまで

>>27
アルヴァレスに続いてもゲーフェンバウアーに続いてもサンホラ世界は報われない不思議

SSを書いたのはこれが初めてなんだ
名前の挙がっている方々とは関係ないよ。ごめんね

>>1
おもしろい!続ききたいしてる!
でも軟骨入りつくねしか焼き鳥食べれない自分は
このスレに出会って食べられなくなってしまった・・・

ユミル「……落ち着いたか?」

ベルトルト「僕は人生で初めて過呼吸になったよ」

ユミル「泣きすぎだ」

ベルトルト「君があんなことをして治してくれたのは一生忘れないよ」

ユミル「一生はもう終わっている」

ベルトルト「終わらせたのは僕だったね」

ユミル「それとミカサだな……なあベルトルさん、頼みがある」

ベルトルト「何だろう。恥ずかしいことじゃなければ聞くよ」

ユミル「誰かさんの体液まみれになってしまった顔を洗いたいんだ、連れて行ってくれ」

ベルトルト「わかったよ。ちょっと掴まってて」

ベルトルト「……君は軽いねユミル」

ユミル「足と手の分が差し引かれてるからだよ。ありがとうなベルトルさん」

ベルトルト「顔を洗うの手伝おうか?」

ユミル「そこまで面倒見てもらうつもりはないさ」

ユミル「私はどうにかするからベルトルさんは自分の顔でも洗ってな」

ベルトルト「わかったけど、本当に気を付けてね」

ユミル「落ちたってこの流れなら大丈夫だろう」

ベルトルト「ユミル、それ以上言うとなんだか現実になりそうだからやめよう」

ユミル「川の水は冷たいな」

ベルトルト「うわっ、本当だ。冷たい通り越して痛い」

ユミル「片手だとろくにすくえない」

ベルトルト「顔を近づけるなら本当に気を付けてよ」

ユミル「ベルトルさんは急に私を心配するようになったな」

ベルトルト「一緒にいるって言ったじゃないか」

ユミル「あれはそういう意味だったのか?」

ベルトルト「もう死んでしまってるんだ。好きにしたって誰も文句は言わない」

ユミル「私が嫌だって言うことを考えていないんだな」

ベルトルト「だって君は優しいから」

急に水音が響いた。今までユミルが座っていた場所には誰もいない。

だから言ったんだ!僕はバランスを崩してしまったらしい彼女に手を伸ばした。

彼女の右手が存在すれば掴めた。けれど再生していなかったから、僕の手は何も得られなかった。

「ユミル!!」

弱いと思っていた川の流れは早くて、視界からすぐに彼女の体が消える。

そんな、ねえ、待ってよ。僕と一緒に居て、優しくしてくれるんじゃないの?

「ユミル!助けるから!!」

流れと同じ向きに泳いでいるはずなのにユミルと僕の距離はだんだん開いていく。

ぷかぷかと浮いていた彼女の体は急に沈んだ。岩か何かに引っかかってくれたのだろうか。

水を飲むのを覚悟で僕は頭を川に沈めた。急に冷えたせいか頭が痛くなる。

痛みに耐えて目を開いた先にはユミルがいた。

「ユミル!」

口からは泡しか出なかった。それでもユミルは声に気づいてくれたみたいで目を開く。

「      」

彼女がなんて言ったのか僕はわからなかった。目の前が真っ暗になった。

暗い。背中が固い。妙な圧迫感を感じる。目を開いても光一つ入ってこない。

幸いにして体は動くらしい。手で体のすぐ近くにある何かを触った。板があるみたいだ。

板を蹴ってみる。音が空間に響いた。ああ、箱のようなものに入れられている。

どうしてこんなところにいるんだ。いったい何をしたっていうんだ。

これが地獄なんだろうか。与えられた罰だとでも言うのか。

こんなに狭い場所なら一人しか入れないじゃないか。結局あの約束は守れなかったわけだ。

……約束? 誰と、いつ、どこでそんなことをしただろう。思い出せない。

「……っく、ひっく……」

誰かの泣き声が聞こえる。か弱いソプラノの響きが心地いい。

だんだん暖まっていく空気と声のせいで眠くなってきた。このまま寝たら、きっと幸せだ。

「ねえ…ねえ……!」

力の無い何かが箱を叩く。この衝撃くらいじゃ睡魔は戻っていきやしないけど。

「行かないで……」

背中が熱い。暖かいを超えた温度と、少女の声が一気に頭を覚醒させた。

「クリスタ!!」

ユミル「要するに私の火葬の真っ最中だったんだな?」

クリスタ「そ、そーだよ、ゆみる死んじゃっだど思っだんだもん……!」

ユミル「私の女神、お願いだから泣かないでくれ」

クリスタ「無理だよお、ぐすっ」

ユミル「ほらよしよし、いつの間にか着ていたやけに豪華な服の袖で拭いてやろう」

クリスタ「分隊長だぢは、解剖じだいって言ってたんだけどねえ、ちゃんと埋葬してあげだがっだの」

クリスタ「なんどか聞いてもらってね、これから焼こうとしてたらね、ユミルの声がね」

ユミル「落ち着けクリスタ、喋り方がミカサみたいになっている」

ミカサ「私はそこまで分節した喋り方はしない」

ユミル「無自覚かこの人間兵器」

クリスタ「た、助けてくれたのミカサなんだからそんなこと言っちゃ駄目だよ」

ミカサ「気にしなくていい。たまたま通りかかっただけだから」

ユミル「外から見れば結構ごつい棺をブレードで斬ってしまうなんて」

ミカサ「クリスタが燃え盛る炎の中に突入していたから急がないとと思った」

ユミル「次代の人類最強はお前だな」

ミカサ「ユミル、あなたは絶命したはずだった」

ユミル「お前にうなじを削がれたベルトルさんに全身粉砕されたとこまでは覚えている」

ミカサ「そう。あの後、エレンをさらったライナーの鼻腔に私は刃を思いっきり刺した」

ミカサ「ベルトルトのこともあってかライナーは人の姿に戻って、今は地下に閉じ込めている」

クリスタ「準備が整い次第、尋問に入る予定なの。それまではミカサが……」

ミカサ「私が定期的に脚を切り落としている。体力を回復させるわけにはいかない」

ユミル「お前、怖くないのか」

ミカサ「私が一番怖いのはエレンを失うこと。ライナーはエレンの命を脅かした。なら私はライナーを痛めつけよう」

ミカサ「……もう時間だ、行かなくてはいけない。あとのことはクリスタ、あなたに任せる」

クリスタ「わかった。ミカサ、気を付けてね」

ミカサ「クリスタとユミルも」

ユミル「……さて、これから私はどうすればいんだ?」

クリスタ「ベルトルトの遺体を解剖している分隊長が戻ってくるまではここにいるのがいいと思う」

ユミル「ベルトルさんを解剖?」

クリスタ「ユミルの分まで詳しく調べるんだって」

ユミル「なあクリスタ、それってどこでやってるんだ?」

クリスタ「ライナーがいるのと同じ地下だよ」

ユミル「ミカサを追えばそこに行けるんだな?」

クリスタ「待ってユミル!どこに行くの?!」

ユミル「会わなくちゃいけない気がするんだ。あの泣き虫野郎に」

クリスタ「何を言ってるの?いったいどうしたって言うの?あなたは生き返ったばかりなのよ!」

ユミル「わからない。理由を知るために行くんだ」

クリスタ「なら私も行く!」

ユミル「無理しなくてもいいんだぞ」

クリスタ「もう目の前から誰かが消えてしまうなんて嫌なの!」

ユミル「心配かけてごめんな」

クリスタ「ねえユミル、そう思うならちょっと走る速度を落としてよ!」

ユミル「元死体の走りについていけないクリスタちゃんは本当に調査兵団でやっていけるのかね」

クリスタ「やっていくよ。ちゃんと生きていくってあなたと約束したもの!」

ユミル「それならいいんだ」

クリスタ「ユミルが生き返ったならもしかしてって思ったけど」

ハンジ「本当に残念でならない。ねえ、生きたままでもいいからちょっと解剖されてみない?」

ユミル「脅かすのはやめてあげてくれ。これ以上強く抱き締められたら肋骨が折れて内臓に突き刺さる」

ベルトルト「ユミル、良かった、ユミル……!」

ユミル「二度も骨を粉砕されるなんてごめんだ、お願いだから離してくれないかベルトルさん」

ハンジ「ねえヒストリア」

クリスタ「何でしょう分隊長」

ハンジ「随分とベルトルト・フーバーはユミルのことを好いているみたいだったけど、そういう関係だったの?」

クリスタ「違うと思います。だってユミル、本気で嫌がってるみたいですし」

ユミル「いいからっ!離せっつってんだろ!この2m級巨人!!」

ベルトルト「離さないよ!君は気を付けてって言ったのにどうして川を流れていったんだ!」

ユミル「悪いけど何のことだかさっぱりだ!ただでさえ内臓スクランブルエッグで体調が悪いのに圧迫するな!」

ベルトルト「体調が何だよ、僕たちは一回一緒に死んだ仲じゃないか!!」

ユミル「正確に言うなら私はあんたに、あんたはミカサに殺された仲だろうよ!」

ハンジ「ヒストリア、あれ止められる?」

クリスタ「ちょっと難しいです」

ベルトルト「君はあの河原でのことを覚えていないのかい?!」

ユミル「河原ぁ?」

ベルトルト「涙を拭いてくれたり、きっききき、キスしてくれたりしたじゃないか!」

ユミル「おいベルトルさん、ついに頭イカれちまったのか?」

ユミル「河原なんて行った覚えが無いし、あれはキスじゃなくて過呼吸の治療だ!……あ?」

ベルトルト「中途半端に忘れないで思い出してよ!君はユミル様って呼ばれてたんだろ?」

ユミル「なんでそれをあんたが知ってる」

ベルトルト「君が話してくれたんだ。他にも知ってるよ。例えば外にいたこととか、意外と年上だとか」

ユミル「……その会話の中で、私はスピリタスの話をしたか?」

ベルトルト「したよ。僕にかけて炎上させてやるんだろ?」

ユミル「なあベルトルさん、私とあんたの頭がおかしいのか?あれは本当にあったことなのか?」

ユミル「断片しか思い出せないけど、私はあんたと色んなことを話した記憶があるんだ」

ベルトルト「嬉しいことね、全部本当にあったことなんだよ」

ハンジ「ヒストリア、何言ってるかわかる?」

クリスタ「わからないです。でも分隊長、解剖はやめにしてもらえませんか」

ハンジ「ユミルはともかく、ベルトルトについてはちゃんと約束出来るかわからない」

ハンジ「彼にはユミル以上に色んなことが付き纏う。彼の行ったことは大罪だからね」

クリスタ「わかってます。私だってたくさんの気持ちがぐるぐるしています」

ハンジ「でも、それでもさ。目の前で泣いている子供を無理矢理どうにかすることはしたくない」

クリスタ「ありがとうございます」

ハンジ「二人が泣き止んだら何か温かい飲み物を持って来させよう」

クリスタ「分隊長は優しいんですね」

ハンジ「そんなことはないよ。二人にはこの後、地下に行ってもらわなくちゃ」

ハンジ「まあ、泣き止むまでには時間がかかりそうだし、その間に色んな話をしたって構わないだろうけど」

クリスタ「私もユミルと色んな話をしたいです。どうしてベルトルトと抱き合ってるのかも聞かなくちゃ」

ハンジ「たくさんのことを聞こう。知らないことよりも怖いことってないと思わないかい?」

クリスタ「秘めるべきことなんて出来るだけ少ない方がいいんですよね、きっと」

たぶん今日はここまで

>>46
焼き鳥が食べられないなら豚串を食べればいいと思うよ

ミカサ「4回目ともなるとどちらも慣れるみたい」

ライナー「誤解だ。俺はこの痛みに慣れていない」

ミカサ「止血の工程が素早くなったように思えるのだけど」

ライナー「しないと死ぬだろ」

ミカサ「さあ。もしかしたらあなたもユミルのように生き返るかも」

ライナー「……は?」

ミカサ「さっきのこと。火葬予定のユミルが復活した」

ライナー「おいミカサ、いくら俺がおかしいからってそれはないだろ」

ミカサ「あなたに嘘を言ったって何も生まれない」

ライナー「妙な期待を持たせてから絶望させるんだろ?」

ミカサ「そんなことをする意味が人類にも、私にもない」

ライナー「お前は俺を憎んでいるはずだ」

ミカサ「個人の感情をここに持ちだすつもりはない。エレンの得にならないから」

ライナー「お前はどこまでもエレンなんだな」

ミカサ「当然。エレンは私の存在意義」

ミカサ「じゃあライナー、あなたの足が生えてきた頃にまた会おう」

ライナー「次は首をすっぱり落としてくれよ」

ミカサ「それは出来ない。あなたから聞かなくてはいけないことが山のようにある」

ライナー「そうか。残念だな」

ミカサ「素直に諦めてほしい」

ライナー「……おいミカサ、何か聞こえないか?」

ミカサ「足音が3人分くらい」

ライナー「憲兵団か?」

ミカサ「来るなら調査兵団か駐屯兵団だと思うけど」

ライナー「遂に拷問が始まるんだな」

ミカサ「違う。あなたが受けるのは尋問」

ライナー「この状態が既に拷問だとは思わないか?」

ミカサ「これは安全措置。素直に受け入れてくれると助かる」

ライナー「出来るか」

クリスタ「ミカサ、もう切っちゃった?!」

ライナー「クリスタ!」

ミカサ「見ての通り、足はカットしてしまった。今から持って行くところ」

クリスタ「あっちゃあ……」

ユミル「人間の骨ってそんなに綺麗に切れるのか?」

ミカサ「ちょっとしたコツがある。後でユミルにも教えよう」

ユミル「遠慮しておく」

ライナー「おい、今の声はユミルか?」

ミカサ「さっきもそう言ったはず」

ユミル「牢屋に入っているせいで私のことが見えないのか」

ライナー「お前、ベルトルトの口の中でぐちゃぐちゃになっただろ」

ユミル「そこまでは私だって覚えているよ。その先は曖昧だけど」

ユミル「河原の話とやらの詳細はベルトルさんに聞いてほしい」

ライナー「ベルトルトはミカサにうなじを削がれただろ!」

ベルトルト「……やあ、ライナー」

クリスタ「ねえ、姿が見えるところまで行ってあげたらどうかな?」

ミカサ「ベルトルトも生き返ったの」

ユミル「ああ。何でかは知らんけどな」

ライナー「ちょっと待て、どうしてお前らはそんなに冷静なんだ」

ライナー「それともこれは俺の都合のいい妄想か?」

ミカサ「私で良ければこれが事実だと証明するために腕でも落とそうか」

クリスタ「やめてあげてミカサ」

ベルトルト「信じられないかもしれないけど、生きているよ」

ライナー「ありえない事実の連続で吐きそうだ」

ユミル「クリスタの見えないところでやれよ」

ミカサ「こんな地下に3人は何をしに来たの?」

ライナー「ミカサ、お前の心臓は鋼か何かで出来ているのか」

ユミル「閉じ込められにきてやったんだ」

ライナー「ユミル、お前もだ」

クリスタ「二人とも痛くない?大丈夫?」

ユミル「こういうのは痛いくらいじゃないと意味がないぞ」

ベルトルト「だからってさっきのミカサみたいにハムを作る勢いで拘束されるのは困る」

ユミル「ベルトルさんの肉は筋が多そうだな」

ベルトルト「その会話は既にやっているんだよ、ユミル」

ユミル「思い出せていない」

クリスタ「ユミルはきっとすぐに出られると思うよ」

ベルトルト「僕は?」

クリスタ「……頑張ってね」

ベルトルト「どうしよう。女神が顔を合わせてくれない」

ユミル「安心しろ。それでも女神は光り輝いてくれる」

ライナー「お前たち急に仲が良くなったみたいだけど何があったんだ?」

クリスタ「河原に行ってきたらしいの」

ユミル「私はあんまり覚えてないけどな」

ベルトルト「ユミルを膝に乗っけてお話をしたんだ」

クリスタ「ねえ、そのことについて私も聞いていいかな?」

ユミル「お前は戻れクリスタ。もう遅いんだろ?」

クリスタ「……わかった。でも、もうどこにも行かないでね」

ユミル「素敵な愛の告白をどうも」

クリスタ「三人とも、おやすみなさい」

ベルトルト「気を付けて」

ライナー「クリスタ」

クリスタ「なあに、ライナー」

ライナー「……またな」

クリスタ「うん。数時間後に、また」

ユミル「そこでじっと突っ立ってたミカサ、お前も戻っていい」

ミカサ「あなたがそう言うのなら。けれど何かあったら声をかけてほしい」

ミカサ「ハムにでもソーセージにでも何にでも加工してあげよう」

ユミル「料理上手のアピールか?」

ミカサ「柔らかい表現を追求しているだけ」

ライナー「ミカサも行ったか」

ベルトルト「階段を上って行ったよ」

ライナー「ミカサは怖いな」

ベルトルト「そうだね、とっても怖いよ」

ベルトルト「でもユミルが言うのは、もっと強い人がいるんだって」

ライナー「アニは追い詰められて結晶化したらしい。お前は一度殺された」

ライナー「もう敵うわけないだろ、違うか?」

ベルトルト「人類がジリ貧だなんて嘘だったね」

ライナー「これからお前はどうしたい」

ベルトルト「僕はこれ以上、誰かを殺すことはしたくない」

ベルトルト「人類全滅もエレン誘拐も出来そうにないし、なにより大切なものが出来てしまった」

ライナー「クリスタか」

ベルトルト「君もユミルもどうしてクリスタを推してくるんだい」

ライナー「女神に惹かれるのは当然だろ」

ベルトルト「君はクリスタ教を作って入信すれば幸せになれそうだ」

ライナー「大切なものっていうのはアニか?」

ベルトルト「君とアニは最初から僕の大切なものに含まれている」

ライナー「そうか」

ベルトルト「でも、悪いけど2人よりも大切なんだ」

ライナー「今の俺の感動を返してくれ」

ベルトルト「ごめんね。ちょっと難しいかな」

ライナー「おい、そこまで深刻そうに言わなくてもいい」

ベルトルト「君たちといるのは好きだよ。心が温かくなるんだ」

ライナー「恥ずかしいことを言うな」

ベルトルト「僕がなんとか3年間を過ごせたのは君たちのお陰だ」

ライナー「俺はなんとかならなかった」

ベルトルト「そのことについては後でじっくり話をしよう」

ライナー「時間はたっぷりある。ミカサの拷問タイム以外なら自由だ」

ベルトルト「君もアニもミカサにとてつもないトラウマを抱いていそうだね」

ライナー「うなじを削がれたお前が一番ケロっとしていることが不思議だよ」

ベルトルト「ありえないくらい泣いたし話も聞いてもらったんだ」

ベルトルト「そのせいでユミルの顔は僕の涙でぐちゃぐちゃになったけど」

ライナー「お前たちは人が定期的に血抜きされている間に何をしてたんだ」

ベルトルト「軟骨入りつくね棒とかアンヘルとゼノフォンの話かな」

ライナー「ユミルは全部知ってしまったのか?」

ベルトルト「僕たちが人を滅ぼしたかったことは教えてしまった」

ベルトルト「でもどちらかというとユミルの話を聞くことが多かった」

ライナー「ユミルも巨人になれるんだよな」

ベルトルト「彼女にも秘密があるんだ。僕たちみたいに」

ライナー「膝の上に乗せていたっていうのは」

ベルトルト「足と手がいつまでも再生されなかったから」

ライナー「今はくっついているのにか」

ベルトルト「あの河原ではいつまで待っても戻らなかったんだよ」

ライナー「お前たちがどこに行っていたのか全くわからない」

ベルトルト「僕にもわからないし、ユミルも正しい答えは知らないはずだ」

ライナー「そのユミルはもう寝てしまったのか?」

ベルトルト「みたいだね。きっと疲れたんだ」

ライナー「火葬からの復活か」

ベルトルト「もうちょっと遅かったら危ないところだった」

ベルトルト「そうなってしまっていたら、僕の頭はおかしくなってしまったと思う」

ライナー「大切なものってまさか」

ベルトルト「君たちが温かい人なら、彼女は冷たい人だ」

ベルトルト「だけどね、どうしてだか離れられないんだ。優しいから」

ライナー「そうは見えない」

ベルトルト「しょっぱいものを食べた後の甘いものはとっても美味しいのと同じだよ」

ライナー「いきなりわかりやすくなった」

ベルトルト「ありがとう」

ライナー「褒めちゃいない。……俺は寝る、頭がぼんやりしてきた」

ベルトルト「血不足かな?」

ライナー「たぶん違う。俺もありえないことが連続で襲い掛かってきて疲れた」

とりあえずここまで

ベルトルト「……ライナーはもう寝たのか。早いなあ」

ベルトルト「僕も寝なきゃいけないんだけど、目を閉じたら幾千の怨言が浮かぶ」

ベルトルト「自虐プレイをするほど僕は被虐趣味だったのだろうか」

ユミル「ベルトルさんうるさい」

ベルトルト「おはようユミル、たぶんまだ夜だけど」

ユミル「おはようベルトルさん。お願いだから寝かせてくれ」

ベルトルト「嫌だよ。僕は眠れないんだ。恋バナでもしよう」

ユミル「だから修学旅行気分は捨てろって」

ベルトルト「枕が変わるとどうしても駄目で」

ユミル「ベルトルさんには枕なんて用意されてないだろ」

ベルトルト「君のところにはあるんだね、格差社会だ」

ユミル「残念だったな」

ベルトルト「残念だよ。君は僕を置いてふかふかの枕を使って眠るんだ」

ユミル「夢を壊して申し訳ないけど、この枕は湿ってる」

ベルトルト「ならいいや」

ベルトルト「眠れないとだんだん不安になってくるよね」

ユミル「羊でも数えてやろう」

ベルトルト「嬉しいんだけど、数を聞くだけで目の前に死体が浮かぶんだ」

ユミル「本当に、どうしてそんなメンタルで人類を滅ぼそうと思ったんだ」

ベルトルト「なせば成るかなあって」

ユミル「その結果が仲良く地下牢だ」

ベルトルト「ミカサが劇的に素敵にエレンを助けたからね」

ユミル「実はミカサのことがちょっとだけ好きだろ」

ベルトルト「きっかけをくれた点では感謝しているよ」

ユミル「人類駆逐を諦めることへのか?」

ベルトルト「それもだけど、僕と君が話すきっかけをくれた」

ユミル「未だに全部思い出せないけど」

ベルトルト「二人だけの秘密だね」

ユミル「眠れなくって不安な男がどうしてそんな明るく話せるのか疑問だよ」

ベルトルト「背負っていた重い荷物を投げ捨てられたから」

ユミル「それは誰かに背負わされたものなんだろ?」

ベルトルト「この手で為した時点でそれは僕のものだよ」

ユミル「責任感が強いんだな」

ベルトルト「過去の話だよ。今の僕は自分が救われることしか考えていない」

ユミル「それの何が悪いんだ」

ベルトルト「自分勝手じゃないか」

ユミル「自分のために生きて死ぬことを求めて何が悪い」

ベルトルト「君だって誰かのために死んでいったんだろう」

ベルトルト「最後の溺死は君が悪かったけど」

ユミル「待ってくれベルトルさん、その話はまだ知らない」

ベルトルト「側にいてくれるって約束してすぐに君は消えてしまった」

ユミル「チープな恋愛劇みたいだな」

ベルトルト「劇なら最後は大団円だ。そうだったらいいのに」

ユミル「私は登場人物が地下牢で語り合う演劇は見たくないな」

ユミル「それにベルトルさん、一つ二つ問題がある」

ベルトルト「僕は君がどうやったら死なないかって問題にしか向き合う気はないよ」

ユミル「そういう恥ずかしい告白はもっと可愛い子にするんだな」

ベルトルト「君の死亡回避の話を君以外にしてどうするっていうんだ」

ユミル「私のことなんて忘れた方がいいんだ」

ユミル「見ればわかるだろうけど、ヒロインをやれるような面と心を持っちゃいない」

ベルトルト「そんなことないと思うけど、それなら君が主役をやればいい」

ユミル「冗談だろ?」

ベルトルト「僕がヒロインを引き受ける」

ユミル「新手の悪夢だ」

ベルトルト「目立たないけど成績優秀、バッチリだ」

ユミル「主役より20センチ近くデカいヒロインか」

ベルトルト「時折35倍近く大きくなるけどよろしくね」

ユミル「星だって口に含めそうだな」

ベルトルト「万一叶ったら、君にも星をあげよう」

ユミル「ベルトルさん、寝ろ」

ベルトルト「出来たら苦労はしていないよ」

ユミル「子守歌を歌ってやるから」

ベルトルト「それも今度にしてもらう」

ユミル「眠りたいんじゃなかったのか」

ベルトルト「恋バナはしたいよ」

ユミル「思春期真っ盛りの女子じゃないんだからよ」

ベルトルト「男子だってそういう話をしてるよ。どの子が可愛いとか」

ユミル「クリスタ一強」

ベルトルト「君たちがもしも兵士じゃなかったら、今頃クリスタ教が流行ってるだろうね」

ユミル「ライナーも信じそうだな」

ベルトルト「彼の心の拠り所がクリスタになるのは同郷として複雑な気持ちだ」

ユミル「全てはクリスタが輝かしいからだな」

ベルトルト「君の心を掴んで離さない方法を僕も知りたいよ」

ユミル「まずは美少女になってもらおう」

ベルトルト「君はこれからもクリスタのために生きるのかい」

ユミル「クリスタが望むならそうするつもりだけど、ちゃんと生きるって決めてくれたようだから」

ユミル「私は退場してしまってもいいかもしれない」

ベルトルト「まるで自立していく子を見送る親のようだ」

ユミル「こうなってしまった以上、近くに居れば迷惑がかかるかもしれないしな」

ベルトルト「クリスタは悲しむよ」

ユミル「確かに言われたんだよ、もうどこにも行かないでって」

ベルトルト「ライナーは君と立場を交換出来るなら何だってするだろうね」

ユミル「でもちゃんと返事をしていないんだ」

ベルトルト「自立させたいから?」

ユミル「……約束をしなければ破ったことにはならない」

ベルトルト「君にしては弱気なんだね」

ユミル「いつかは私のことも忘れて幸せに暮らせばいいんだ」

ベルトルト「クリスタと君の幸せは定義からして違うかも」

ユミル「細部は違っても大まかな流れは一緒だろう?」

ベルトルト「細かい部分こそがクリスタにとっては重要かもしれない」

ユミル「それをどうにかするのは私の仕事じゃない」

ユミル「いつか出会うであろう旦那に任せればいいんだよ」

ベルトルト「ライナーはどうかな?」

ユミル「……永遠に検討中のままにさせてくれ」

ベルトルト「酷い言い様だ」

ユミル「メンタル面がお前たちは弱いんだよ」

ベルトルト「誰もがミカサみたいになれると思ったら大間違いだ」

ユミル「ミカサにはわかりやすい弱点があるじゃないか」

ベルトルト「彼女が強くなればなるほど弱点は突きにくくなっていく」

ユミル「強くなった結果が超大型巨人と鎧の巨人討伐」

ベルトルト「一気に昇進しそうだね。憲兵団入りも夢じゃない」

ユミル「訓練兵団の時点で憲兵団行きは余裕だったけどな」

ベルトルト「それは言わない約束だよ」

ベルトルト「ねえユミル」

ユミル「何だベルトルさん、大人しく寝るつもりになったか」

ベルトルト「違うよ。聞きたいことがあるんだ」

ユミル「話せることなら言ってやろう」

ベルトルト「君は誰かのために一度目の人生を終わらせた」

ユミル「あのときの最善はそれだった」

ベルトルト「二度目はクリスタのために人生を終わらせた」

ユミル「そう思うのは勝手だが、それをクリスタの前で言うんじゃないぞ」

ベルトルト「僕から見たらこうなんだよ」

ユミル「それでもだ、言わなくていいことはある」

ベルトルト「わかった。言わないよ」

ユミル「ならいい。続きを聞こう」

ベルトルト「この人生は君にとって三度目になるね」

ユミル「ああ。危うく焼かれて失いそうになったけど生きている以上は三回目だ」

ベルトルト「ねえ、三度目の人生は僕のために生きてよ、ユミル」

ユミル「……は?」

ベルトルト「先回りして言っておくけど頭がおかしくなったわけじゃない」

ユミル「悪趣味だな」

ベルトルト「騙そうとかからかおうって思っているわけでもない」

ユミル「本気で言っているんじゃないだろう?」

ベルトルト「真剣だよ。僕の心臓は緊張のせいで破裂する寸前だ」

ユミル「そのまま弾け飛べ」

ベルトルト「僕だってせっかくのセカンドライフは楽しくいきたい」

ユミル「それに私は必要ないだろう」

ベルトルト「いいや、君がいるだけで楽しいんだ」

ユミル「落ち着こうベルトルさん、私たちは妙な経験をした」

ユミル「その結果テンションが上がってしまっただけなんだ。明日の朝には後悔する」

ベルトルト「秘密の共有者だからとか殺し殺された仲だからってだけじゃない」

ベルトルト「僕は君と一緒にいたい」

ユミル「生き返った以上はライナーがいる。ベルトルさんは一人じゃない」

ベルトルト「奇跡が起こって壁中の人に愛されたとしても、君がいないと僕は寂しい」

ユミル「欲張りが過ぎるとは思わないか」

ベルトルト「大丈夫だよ。実際の僕はかなりの人から殺気を抱かれ続けている」

ベルトルト「それでも楽しく生きたいからこの我儘を通したい」

ユミル「……物好きな男だ」

ベルトルト「褒め言葉だね、ありがとう」

ユミル「一つ条件を付けさせてもらおう」

ベルトルト「何だろう」

ユミル「大団円だよ。壁の中の人間全員がお前を愛されるような大団円を見せてくれ」

ベルトルト「そうなったら「私は必要ないだろ」って逃げたりしない?」

ユミル「逃げないさ。約束してやる」

ベルトルト「どうしようユミル、僕の涙腺が故障しそうだ」

ユミル「気が早いんだよベルトルさんは。出来るって保障はどこにもないのに」

ユミル「それに今は涙を拭いてやれないんだから、涙はいつかの未来にとっておけ」

今日はここまで

プロポーズみたいな台詞は言えるのに「好き」って言えないベルトルさん


途中の星の下りはもしかしてキャンディーヌかな?

続きも楽しみにしてる

ベルトルト「生憎僕にはセンスが無いんだけど」

ユミル「そんなものを培うような環境じゃなかったからな」

ベルトルト「あえてタイトルを付けるなら、ミカサ無双」

ユミル「ばっさばっさ薙ぎ倒していった」

ベルトルト「東洋人はみんなああなの?」

ユミル「ミカサは混血だぞ」

ベルトルト「だとしても東洋人怖いよ」

ユミル「……ああ、敵方に突入していったときのあれは怖かったなあ」

ベルトルト「エレンも凄かった」

ユミル「ミカサが地面に叩き付けられてからの覚醒は殺気に満ち溢れていた」

ベルトルト「そしてアルミンは預言者かい?」

ユミル「友情努力勝利もびっくりな三人だな」

ベルトルト「僕の故郷だいぶ酷いことになってるんだけど」

ユミル「生きてるんだからやり直せるだろ」

ベルトルト「二回も死んだ人の台詞は重いね」

ベルトルト「ウォール教の人、トラウマ抱えただろうね」

ユミル「ウトガルドの少し前から病んでたみたいだぞ」

ベルトルト「気持ちはなんとなくわかるよ」

ユミル「ベルトルさんの言葉もなかなかにヘビーだよ」

ベルトルト「君は僕を照れさせる天才だね」

ユミル「褒められているのか貶されているのか」

ベルトルト「褒めているよ、君はかっこいい」

ベルトルト「君の民の前での言葉は今思い出しても鳥肌が立つ」

ユミル「やめろ、恥ずかしい」

ベルトルト「私は宣言しよう、この名前に誓って」

ユミル「えいっ」

ベルトルト「そんな可愛い声で…鳩尾に蹴り入れないでよ……」

ユミル「そこのベルトルさんの腹があったから」

ベルトルト「君はクリスタがそこに居たら撫でるのかい?」

ユミル「もちろん」

ベルトルト「クリスタも凄かったね。vs実家のとき」

ユミル「人形のようなクリスタちゃんから飛び出る暴言の数々」

ベルトルト「そういえば彼女のことはヒストリアと呼ぶべきなんだろうか」

ユミル「どっちでもいいってクリスタは言ってたな」

ベルトルト「彼女はレイス家を継ぐことになるのかな」

ユミル「クリスタが決めることだ」

ベルトルト「そうなればもっと内地は暮らしやすくなるかもね」

ユミル「工業都市の連中はもういい暮らしとやらのために変なことを始めている」

ベルトルト「エレクトリ…なんだっけ」

ユミル「電気だ。氷爆石や油を使わなくても灯りをともすことが出来る」

ベルトルト「もう武器開発に本気を出す気は無いのかな?」

ユミル「馬鹿言うな、もっと進化していくに決まってるだろ」

ベルトルト「人は争うものだから?」

ユミル「いいや、知的欲求の果ては存在しないんだ」

ベルトルト「アルミンは水を得た魚のようになっていたね」

ユミル「いつかは空を飛べる装置を作るんだってさ」

ベルトルト「立体機動装置で十分じゃない?」

ユミル「もっと大人数で使えるようなものだ。ああ、説明が難しいな」

ベルトルト「本人に会えればいいんだけど」

ユミル「まだ無理だろ」

ベルトルト「心境的にも物理的にも」

ユミル「作戦途中は笑えるくらいビジネスライクだったな」

ベルトルト「ちょくちょく挿まれる敬語に僕の心は削られていった」

ユミル「いいだろ。同時進行でアニの結晶も削られていったんだから」

ベルトルト「まさか本当に物理で攻略されるとは」

ユミル「煮る焼く落とす割る、色々やったな」

ベルトルト「まさかライナーの腹筋付近のアレを使って削ることになるとは」

ユミル「巨人には巨人だよねって言ってたなあのメガネの分隊長」

ベルトルト「ミカサが鼻にブレードを突っ込んで動きを止めさせて人類最強が削ぐ」

ユミル「痛そうだったな」

ベルトルト「君の想像よりもきっと痛いよ」

ユミル「アニの心も痛んだだろうな」

ベルトルト「起きたら目の前には奇行種の人類と人類最強」

ユミル「掘削の道具は自分の同郷の体の組織」

ベルトルト「屈辱的だったって」

ユミル「そこから壁補修のハードワークが始まったからな」

ベルトルト「君たちは巨人のことをなんだと思っているんだい」

ユミル「壁の材料」

ベルトルト「その通りだった」

ユミル「安寧クラッシャー」

ベルトルト「響きだけならかっこいい」

ユミル「やっぱりベルトルさんはセンス無いんだな」

ベルトルト「ミカサ無双」

ユミル「伝記にすれば売れるか」

ベルトルト「文筆業はアルミンに任せることにするよ」

ベルトルト「それに僕は壁の中に積極的に進撃出来ないからね」

ユミル「追い出されたんだもんなあ」

ベルトルト「実は放逐の他にもう一つ選択肢があったんだけど」

ユミル「初耳だ」

ベルトルト「人類最強かミカサの半径10m以内で生活すること」

ユミル「地獄か」

ベルトルト「その話を聞いたとき、いかついおっさんとガチトークの方がいいなって思った」

ユミル「人類最強には人類の奇行種が、ミカサにはエレンがセットで」

ベルトルト「アニとライナーはもうちょっと緩い決まりが与えられた」

ユミル「アニは実家に、ライナーは最前線に行きつつ」

ベルトルト「ちょいちょい工業都市に寄って武器の原材料に」

ユミル「シガンシナ出身の駐屯兵と憲兵団の監視の中、あなたの体を優しく剥ぎ取り!」

ベルトルト「人類強かすぎるよ」

ユミル「生きるのに精一杯なだけさ」

ユミル「話しながら好き勝手に歩いてきたけど、なあベルトルさん」

ベルトルト「何だいユミル」

ユミル「ここはどこだろうな」

ベルトルト「河原だね」

ユミル「そうだな。私たちは海を目指していたはずだけど」

ベルトルト「鰊とやらを食べてみたいって僕が言ったから」

ユミル「私はどうも骨が多くて好きじゃない」

ベルトルト「僕が骨を取ってあげようか」

ユミル「食べる機会が出来たら頼むよ」

ベルトルト「でも確かにフォークだと食べにくいよね」

ユミル「ハシを使っても食べにくいぞ」

ベルトルト「橋?」

ユミル「違う。食器だ。二本の棒を使う」

ベルトルト「棒だけでいいのかい?」

ユミル「見た目の割に優秀なんだ。後で作ってやる」

ベルトルト「期待してる」

ユミル「その期待に応えるためには川じゃなくて海に行かないと」

ベルトルト「下っていけばいつかはたどり着くんだろ?」

ユミル「多くの場合は正解だが、たまに例外もある」

ベルトルト「この川は正解だよ、きっと」

ユミル「ならいいんだ」

ベルトルト「あの河原と違って歩きやすいからいいね」

ユミル「石まみれの場所で野宿するのはなあ」

ベルトルト「疲れたら僕を椅子代わりにすればいい」

ユミル「照れてしまうだろう」

ベルトルト「君が?僕に?奇跡のようだ」

ユミル「喜ぶなはしゃぐな抱き上げるなジャンプをするな!」

ベルトルト「嬉しいことがあったら全力でいくって決めたんだ」

ユミル「ここで勝負を決める?」

ベルトルト「やめて、お願い。やめて」

ベルトルト「やめてくれないとこのまま抱きかかえて海まで行く」

ユミル「やめろよベルトルさん、コケたときどうなるんだ」

ベルトルト「巨人化?」

ユミル「蒸し焼きにされるのは勘弁だ」

ベルトルト「仕方ないから下ろしてあげよう」

ユミル「当然の処置だ。その不満げな顔をやめろ」

ベルトルト「じゃあ手を繋いで」

ユミル「ベルトルさんは安いな」

ベルトルト「一緒に歩いて行こう」

ユミル「寂しい気持ちがなくなるまでは付いて行ってやる」

ベルトルト「僕は酷く寂しがり屋なんだ。だから一生僕といることになるよ」

ユミル「そうだったのか」

ベルトルト「そうなんだ、実はね」

ユミル「ずっと前から知ってたさ」

ベルトルト「海に着いたらその近くに家を建てよう」

ユミル「別にベルトルさんがいればすぐ帰れるだろ?」

ベルトルト「本気を出せば数時間走るだけで壁に着くけど、そうじゃなくて」

ベルトルト「君と僕の住む家を作るってことに意味があるんだ」

ユミル「同居か」

ベルトルト「同棲だよ。一生一緒にいるんだから」

ユミル「なあ、それを承諾するには必要な言葉があると思わないか?」

ベルトルト「君は頭がいいんだから察してよ!」

ユミル「言葉にしてくれなくちゃわからないってものもあるのさ」

ユミル「男なら腹を括ってみせてくれ、ベルトルさん」

ベルトルト「オーケー、わかったよ。わかった。海に着くまでに覚悟を決める」

ユミル「ロマンチックな言葉で泣かせてみせてくれ」

ベルトルト「頑張るよ。君の涙腺を崩壊させてみるような台詞を用意する」

ベルトルト「そうしたら、次は僕が君の涙を拭いてみせるから」


おわり

無事に終わりました
読んでくださった方はありがとう

少し間が空くけどこの二人が軟骨入りつくね棒を食べに行く話も書きたい

>>88
(結婚しよ)

ライナーの腹筋付近のアレ…?

ともあれ面白かった。ここ最近の楽しみだったよ。
続きにも期待してる。乙。

おまけ

ユミル「せっかくシガンシナまで来たっていうのに」

ベルトルト「まあ、仕方ないよ。働かなくちゃ食べていけない」

ユミル「クリスタ」

ベルトルト「内地でお仕事」

ユミル「アニ」

ベルトルト「実家と故郷の補修工事」

ユミル「ライナー」

ベルトルト「工業都市までお出かけ」

ユミル「エレン」

ベルトルト「壁外で残党狩り中」

ユミル「ミカサ」

ベルトルト「エレンに同行」

ユミル「アルミン」

ベルトルト「ライナー剥ぎ取り」

ユミル「ジャン」

ベルトルト「エレンとミカサたちの指揮補佐」

ユミル「サシャ」

ベルトルト「地元の村近くの残党狩り」

ユミル「コニー」

ベルトルト「サシャの手伝い」

ユミル「……」

ベルトルト「……」

ユミル「その他同期も駐屯兵団調査兵団として活躍中ってか」

ベルトルト「見事にみんなばらばらだね」

ユミル「確かジャンが頑張って調整してたはずじゃ」

ベルトルト「ギリギリまで粘ってくれたらしいんだけど」

ユミル「壁外調査が決まって自分が出られないって決まった後もな」

ベルトルト「いい指揮官になるだろうね」

ユミル「管理職気質だな」

ベルトルト「最後の方はあの伝書鳩、サシャの方に行かないでジャンの方に戻ったらしいよ」

ユミル「ちゃんとサシャが躾けたのにそんなことが起きるのか」

ベルトルト「あまりにも僕らとジャンの間を飛ばせすぎたからね」

ユミル「悪いことをした」

ベルトルト「というわけで、今日は僕と君の二人っきりです」

ユミル「いつもと一緒じゃないか」

ベルトルト「街の中で君と二人っていうのがいいんだよ」

ユミル「でも二人だけで居酒屋行ってもあんまり楽しくないぞ?」

ベルトルト「君はどれだけアルコールを摂取したいの」

ユミル「肉も食べたい」

ベルトルト「僕たち基本海産物と野菜で生きてるからね」

ユミル「もうそろそろ鶏でも飼うか」

ベルトルト「鶏卵が食べられるようになるのはいいことだ」

ユミル「主食も考えないと」

ベルトルト「僕は米がいいなあ」

ユミル「今まで通り芋でいいだろ芋で」

ベルトルト「芋と魚の組み合わせには飽きてきた」

ユミル「我儘め」

ベルトルト「米か麦を強く希望します」

ユミル「考えておく。今日はとりあえず小麦粉買って帰るか」

ベルトルト「服も買い足しておきたいな。肌着足りないんだろ?」

ユミル「あー、香辛料も切れかかってる」

ベルトルト「昼間の内に買っていこうか」

ユミル「ああ。金ならあるし」

ベルトルト「……テングサって、凄いね」

ユミル「冗談半分で市に出したら予想外に売れたな」

ベルトルト「自給自足回避。やったね」

ユミル「なんとも言い難いあの食感」

ベルトルト「海産物という珍しさ」

ユミル「食べられるようになるまで面倒なのになあ」

ベルトルト「社会の歯車から解放されたと思ったのはたった一瞬」

ユミル「現金無きゃやってけないだろ」

ベルトルト「テングサブームが下火になったら乾物を売り出そう」

ユミル「生産者生活にも慣れてきたなあ」

ベルトルト「最近サシャたちと話が合うようになってきたんだ」

ユミル「それはちょっと危ない」

ベルトルト「海には真っ先に塩を狙うに商会が来ると思ったんだけど」

ユミル「家の近くの海にはベルトルさんがいる噂が立ってるから来ないんだろ」

ベルトルト「こんなに大人しい巨人になんてことを言うんだ」

ユミル「大人しいの概念が私とベルトルさんでは違うみたいだ」

ベルトルト「夜だって大人しいよ」

ユミル「借りてきた狼みたいだな」

ベルトルト「ユミルったらこんな街中で大胆」

ユミル「頬を赤らめるなよ」

ベルトルト「思春期は継続中なんだよ」

ユミル「とりあえず買い物行くぞ」

ベルトルト「ねえユミル、お腹空いてない?」

ユミル「空いてない」

ベルトルト「僕はお腹が空いた」

ユミル「さっきからずっとベルトルさんが見つめいる屋台以外で何か買おう」

ベルトルト「でも軟骨入りつくね棒が僕を呼んでいるんだ」

ユミル「食べるなら一人で食べろ」

ベルトルト「ユミルも食べようよ」

ユミル「トラウマだって言ってるだろ」

ベルトルト「美味しいのに」

ユミル「美味しさはずっと前から知っているんだよ、それでも避けたくなる理由があるんだ」

ベルトルト「好き嫌いは良くないって言うじゃないか」

ユミル「私は大人だからいい」

ベルトルト「大きくなれないよ」

ユミル「これ以上大きくなってたまるか」

ベルトルト「すみません、この軟骨入りつくね棒二つー」

ユミル「あっ」

ベルトルト「トッピング?えっと、一つは月見で、もう一つははおろし梅を」

ユミル「立ち食いするのに難易度高いものを」

ベルトルト「だって君はどっちも好きだろ」

ユミル「あー、なんかベルトルさんといると調子狂う」

ベルトルト「そんな今更な」

ユミル「っと、ほら、きたぞ」

ベルトルト「はいユミル、どうぞ。あーん」

ユミル「こんな熱々なものをあーんされても。串ごと寄越せ」

ベルトルト「じゃあ月見あげるよ。半分残しておいてね。交換しよ」

ユミル「はいはい。いただきます」

ベルトルト「僕もいただきます。……あつ」

ユミル「大根こぼれそうだから気をつけろ」

ベルトルト「そうなったらひょいってしてぱくってして」

ユミル「大根おろしは米粒やパンと住んでる世界が違うだろ」

ベルトルト「あっつ、美味しいけどあっついこれ」

ユミル「ちゃんと冷まさないから。……うん、美味しいわ。複雑な心境だけど」

ベルトルト「うん、美味しいね。骨軟らかいし」

ユミル「硬い骨に軟骨って名前は付けないだろうさ」

ベルトルト「君の骨は歯茎にくるんだ」

ユミル「全身軟骨まみれの女と同居したいのなら考えてやらんこともない」

ベルトルト「そう言ってこの間はタコを獲ってきたね」

ユミル「美味しかっただろ?」

ベルトルト「いくら喧嘩したからって起きたらベッドにタコはちょっと」

ユミル「誰かさんが人を家から追い出そうとするから」

ベルトルト「君は犯罪者扱いされてない。君が望めば戻れるって言っただけだよ」

ユミル「この体は人を食べた。それをあいつらには教えてやってないだけ」

ベルトルト「軟骨入りつくね棒の気分で?」

ユミル「ああ。あんたと私は一緒だ、ベルトルさん」

ベルトルト「君って人は!君って人は!!」

ユミル「食べ物を振るな行儀が悪い。大根おろしと梅が吹っ飛んだ」

ベルトルト「もう!大好き!」

ユミル「はいはいどうも」

ベルトルト「軟骨入りつくね棒よりも君の方が美味しいよ」

ユミル「それは食事的な意味だよな?他意は無いよな?」

ベルトルト「聞きたい?」

ユミル「家に帰ってからにしよう」

ベルトルト「ねえユミル、僕は気付いたことがある」

ユミル「何だ?」

ベルトルト「君があの家に帰るって言うとき、僕はとっても嬉しくなるんだ」

ユミル「……そうか」

ベルトルト「それともう一つ。おろし梅全部食べちゃった」

ユミル「途中からただの軟骨入りつくね棒になってたけど」

ベルトルト「それは君が興奮させるから」

ユミル「なんだか理解し合えてない気がするけどいいや、そんなに食べたかったのなら私の分もやるよ」

ベルトルト「ありがとう。君は素敵な人だ」

ユミル「これ食べ終わったら買い物して酒飲んで帰って寝るか」

ベルトルト「デートみたいだね」

ユミル「最初は同期会のはずだったんだけどなあ」

ベルトルト「酔った頭でちゃんと壁は超えられるかな」

ユミル「上りさえいけたなら、下りはアルミンが用意してくれた避難装置で楽勝だ」

ベルトルト「人が壁の外に出ることを避難って呼ぶ日が来るなんて」

ユミル「世界は変わっていくものだ」

ベルトルト「超大型巨人はテングサの商売を始めるし」

ユミル「私には苗字が出来てしまったし」

ベルトルト「アルミンは敬語を使わなくなってくれたし」

ユミル「変わるもんだなあ」

ベルトルト「君の一番は僕になったし」

ユミル「自意識過剰め」

ベルトルト「え、違うの?」

ユミル「否定はしない。肯定もしない」

ベルトルト「そっか。えへへ」

ユミル「クリスタが言うと可愛いけどベルトルさんが言うと…なんか……」

ベルトルト「そんな目で僕を見ないでよ傷つく」

ユミル「おーよしよし」

ベルトルト「気持ちがこもってない」

ユミル「込めてないから」

ベルトルト「つんけんするのが君の愛情表現だと知らなかったときの僕なら泣いてたよ」

ユミル「お前はクリスタと自分の扱いの差を一度比べてみろ」

ベルトルト「美少女になったらもっと甘やかしてくれるってこと?」

ユミル「一回医者に行け」

ベルトルト「大丈夫だよ、僕怪我しても治っちゃう」

ユミル「今ばかりはその体質が恨めしい。この超大型巨人め」

ベルトルト「痛い。ローキック痛い。一撃が鋭い。痛い」

ユミル「食べ終わったな?」

ベルトルト「うん。君は律儀に半分残してくれたんだね」

ユミル「頼んだ本人がそういうこと言うな」

ベルトルト「君は僕のことが好きなんだなあって」

ユミル「嫌いな人間と住むほど自虐的な趣味はしてない」

ベルトルト「知ってるよ」

ユミル「ならいいんだ」

ベルトルト「次にここに来たときは、みんなと会えるといいね」

ユミル「次はクリスタ重視でスケジュールを組もう」

ベルトルト「クリスタを大好きな君を愛している僕は、クリスタも好きなことになるのかな」

ベルトルト「あれ、ユミルの顔も真っ赤…ちょ、うなじはやめて、まじやめて!!」

ユミル「相変わらず恥ずかしい男だなベルトルさんは。ほら、行くぞ」

ベルトルト「ねえねえユミル、顔まだ赤いよ」

ユミル「気が変わった置いて行く」

ベルトルト「君はそうしないし、万一そうなったらどこまでも追いかけるよ」

ユミル「ベルトルさんの愛は重いなあ」

ベルトルト「体格差1.1倍から最大で4倍の僕に勝てるかな?」

ユミル「私も最大化しなくちゃいけないんだなその計算だと」

ベルトルト「君が1.7mのままだと潰しちゃうかもしれないし」

ユミル「しかし思い出してみると状態のベルトルさんは意外とスローペースだったような」

ベルトルト「本気出したら早いし」

ユミル「ここで本気を出されたら困るから、今のところは腕でも組むか」

ベルトルト「君と一緒で良かった」

ユミル「何も泣くことはないだろ」

ベルトルト「まだ泣いてない。雫が頬を伝うまではノーカン」

ユミル「懐かしいことを言ってきて」

ベルトルト「鼻水も出てないし」

ユミル「今の私はどうにかなってしまったらしくて、鼻水でも拭いてやれるけど」

ユミル「ひとまずは涙目で視界がぼやけてそうなベルトルさんを引っ張っていってやることにするよ」

おまけの話一つ目終わり
軟骨入りつくね棒は美味しい

>>108
鎧の巨人の腹筋回りにあるホームベースの形をした部分を考えていた
頑張って定規かあたりを差し込んでぐいって力かけたら取れる気がする

おまけ2

癖になるから気を付けてと医務官に言われたのが遠い昔に思える。

何がきっかけかはわからない。夜中に起きた僕は泣いていた。

ぼたぼたと布団に涙が落ちては滲みる。辛い。苦しい。消えてしまいたい。

必死に息を吸って、吸って、吸って、まだ足りない。気付いたときには酸素過剰になっていた。

「っは、ぁ、あっ」

ベッド横に用意してあった紙袋を掴もうとしたら勢い余って落下した。

鈍い音からノータイムで扉の開く音。足しか見えないけどミカサが入ってきたとわかる。

「ユミルを呼ぶ。待ってて」

「まっ、て」

止める間もなく彼女は部屋を飛び出す。数十秒後には寝ていたはずのユミルが連れてこられるのだろう。

足音がだんだん鈍く聞こえるようになる。視界に白いもやがかかる。気持ち悪い。

こんなに苦しいのに死ねないなんてあり得ないだろ。神様って奴はなんて酷いんだ。

「連れてきた」

土下座に近い形で床に座り込んでいる僕の隣に、ミカサに連れられたユミルが座った。

「落ち着いたら教えて。部屋の外にいる」

替え刃同士が当たって生まれる金属音と共にミカサは廊下へ向かう。

扉が閉じる音を確認してから僕はユミルに抱き着いた。

これからすることはミカサだって知っているのに、必要の無いプライドはまだ残っているらしい。

「落ち着いて、ちゃんと息を吐いて。ベルトルさんなら出来るだろ?」

ユミルの手が僕の背を撫ぜる。ゆっくりとした動きに合わせるように息を吐いてもすぐに肺は空気を求める。

「……紙袋を使うよりも私を呼べよ」

床に転げ落ちた紙袋を見つけたのだろう。ユミルの声が少しだけ低くなる。

「だっ、て、ゆみう、寝てる、っ」

「ミカサなんて容赦なく起こすぞ」

少しだけ笑って、ユミルはまた僕の背中を撫でてくれる。

過呼吸を起こす度にミカサ経由でユミルを叩き起こすわけにはいかない。

だから自分でどうにかしなきゃいけないのに、どうやら二酸化炭素は僕のことが嫌いのようだ。

「ベルトルさんは仕方ないな」

背中に当てられていた手が僕の後頭部を支えるように掴む。

床と見詰め合っていたはずなのに、今は目の前にユミルの顔があった。

反射的に目を閉じる。それでも彼女の顔がもっと近づいてくるのがわかった。

「……んっ」

僕の唇にやわらかいものが触れる。舌が口腔に侵入するのはたった一瞬。

「ふぁ、あ」

意味のない言葉が僕の口から漏れる。それを押し出すように生温い空気が入ってくる。

何度も繰り返してきたことだ。僕は彼女の吐いた息を受け入れて飲み込む。

「上手になった」

これが直接の治療にはならないと、ユミルも僕も知っている。

それでも僕の呼吸が落ち着くのは本当だからやめるわけにはいかない。

ぼやけていた視界がだんだんとクリアになる。ユミルの顔はいつかと同じ様に僕の涙で濡れていた。

「治まったか」

「うん、もう大丈夫」

ユミル「ミカサ、終わった」

ミカサ「わかった。じゃあ戻ろう」

ベルトルト「僕が言えることじゃないけど、ミカサはいつ寝てるの?」

ミカサ「昼に。ちゃんと休んでいるので気にしなくていい」

ミカサ「顔色がサシャがうっかり腐らせてしまった備蓄の肉のよう」

ベルトルト「ミカサ、その表現は辛いものがある」

ミカサ「なら骨付き肉に変更しようか」

ユミル「戦闘力の10分の1くらいを言語力に振っておけよ」

ミカサ「善処する。私には足りないことがまだまだあるみたい」

ベルトルト「戦闘能力が高すぎるんだ」

ミカサ「あなたを紙袋で殺しかけたのもそのせいだろうか」

ユミル「ああ、ペーパーバッグはお前じゃなくても殺せるから大丈夫だ」

ベルトルト「僕の命は大丈夫じゃなかったよ。走馬灯が12歳くらいまで見えた」

ミカサ「次からは5歳くらいで止めるように気を付ける」

ユミル「ぜひそうしてやってくれ」

ミカサ「呼吸しているのに酸欠になるなんて不思議な気分」

ユミル「空気と酸素はイコールじゃないからだ。袋の中に酸素が無ければ酸欠になる」

ベルトルト「僕の口に紙袋を押し当てたまま動かないからミカサは僕を遂に殺すのかと思った」

ミカサ「座学のときああしろと教わった」

ユミル「適度に調節できるならいいけどな、お前は0か1かの人間だから」

ベルトルト「僕のためにやってくれてるからありがたいことはありがたいんだけど」

ミカサ「ペーパーバッグが危険なものなら、やはりユミルを呼んだ方がいい」

ミカサ「それに今日は紙袋を拾おうとしてベッドから落ちたようだし」

ユミル「へぇ。それは初耳だなあベルトルさん」

ベルトルト「今日はたまたまだよ、毎回ユミルを起こすわけにはいかないし」

ミカサ「ユミルを起こすのは私だから問題ないと思う」

ベルトルト「いや、うん。そうなんだけどそうじゃなくってね」

ユミル「隣の部屋で監視されてるのはベルトルさんの過呼吸の都合もあるんだ」

ミカサ「その通り。だから気にしなくていい」

ベルトルト「でも情けないじゃないか。毎回どうしてるかミカサも知ってるだろ?」

ミカサ「もちろん。最初の5回くらいは同じ部屋にいて見ていたから」

ユミル「そういう趣味があったなんてなあ」

ミカサ「ベルトルトへの信頼度がマイナスだっただけ」

ミカサ「今は気を使って室外に出るくらいには信頼している」

ベルトルト「その割に右手はずっと剣の柄にかかっているよね」

ミカサ「今の体調なら万が一の時も右手だけで沈める自信がある」

ユミル「ドアを取っ払っていつもブレードを握っていた時期よりはいいだろ」

ベルトルト「うん。そうだね」

ミカサ「プライバシーというものを尊重してみた」

ベルトルト「ミカサは僕のことが嫌いなのか好きなのかよくわからないよ」

ミカサ「私もよくわかっていないから大丈夫」

ユミル「ちょっと威張る感じで言うセリフじゃねーぞミカサ」

ミカサ「好き嫌いといった自分の感情よりもエレンとアルミンの方が大切だから」

ベルトルト「待って、急に話を重くしないで」

ミカサ「だから今はそれ以上の考えを持つことが出来ない」

ユミル「あっはっは!ベルトルさんが振られたみたいになってる!」

ベルトルト「ユミル、やめて。僕泣きそう」

ミカサ「ベルトルトに抱くのも好きとか嫌いとか、そういったものとは違う気持ち」

ユミル「てっきりお前はエレンが好きなんだと思っていたよ」

ミカサ「家族としてなら。でもアルミンは家族じゃないけど好き。私にはこの違いがわからない」

ベルトルト「難しいよね。わかるよ」

ミカサ「サシャには牛肉だけどロースやサーロインのように名称が変わることと同じだと言われた」

ユミル「余計ややこしくなるから忘れろ」

ミカサ「私はサガリが好き」

ベルトルト「僕は鶏肉の方が好きだな」

ユミル「この話続けるなら私は帰るぞ」

ベルトルト「話題に関わらず君は寝た方がいいよ。起こしてごめんね」

ユミル「気にするな。じゃあおやすみ」

ミカサ「おやすみなさい、ユミル」

ベルトルト「……ミカサ、さっきの話なんだけど」

ミカサ「鶏肉?」

ベルトルト「もうちょっと戻って」

ミカサ「走馬灯?」

ベルトルト「戻りすぎだよ。好きとか嫌いとかって話ね」

ミカサ「私はこの話を上手に出来ない。ユミルを呼ぶ?」

ベルトルト「ユミルについてのことをユミルの前でするってとんだ羞恥プレイだよ」

ミカサ「なら呼ばない」

ベルトルト「良かった」

ミカサ「それで、ベルトルトはユミルが好きなの?」

ベルトルト「この子ったらいきなり剛速球を投げてきた」

ミカサ「表現力に欠けがあっても話の流れくらいは読める」

ベルトルト「うん。僕はきっとユミルが好きなんだ。大切なものの中に入っている」

ミカサ「大切なものがあるのは良いこと。人類的にも都合がいい」

ベルトルト「本音をぶっちゃけたね」

ミカサ「それで何が問題なの?好きならそう言えばいい」

ベルトルト「人殺しの化け物が人並みの幸せを手に入れようだなんてどうかと思うんだ」

ベルトルト「ユミルが一緒にいるときに感じる楽しさを享受する権利は僕にはないのかもしれない」

ミカサ「誰かがそう言った?」

ベルトルト「寝ていたり、ぼーっとしているときに頭の中で罵倒する声が聞こえる」

ミカサ「あなたは医師にかかる必要があるけど、他に問題はない」

ミカサ「ユミルに拒否されない限りは好きにしていいと思う」

ベルトルト「拒否されることも怖いし、今までの大切なものが無くなってしまうことも怖い」

ミカサ「そう言い訳して、キスだけする関係は正直不潔」

ベルトルト「もっと罵ってくれて構わない」

ミカサ「私に…加虐趣味はない……」

ベルトルト「違うんだミカサ、そうじゃなくて」

ミカサ「大切なものはたくさんあっていいし、ユミルは私と違って優しいからきっと受け入れてくれる」

ベルトルト「それは君が人間だからだよ」

ミカサ「私はあなたとライナーを定期的に削いできた」

ベルトルト「もうちょっと優しいやり方の模索をお願いしたかったな」

ミカサ「だから知っている。あなたは人間と同じ様に血が噴き出る」

ベルトルト「巨人の体でも血は出るよ」

ミカサ「……それを言われると困ってしまう」

ベルトルト「ごめんねミカサ、意地悪なことを言ってしまった」

ミカサ「ユミルー!」

ベルトルト「えっちょっ」

ユミル「なんだよ。もう半分以上寝てたぞ」

ベルトルト「来るの早いね」

ユミル「隣の部屋だからな。で、どうしたミカサ」

ミカサ「ベルトルトがあなたに話があるらしい。けれど私は睡魔に負けてしまう予定なので仮眠する」

ユミル「お前溌溂と喋ってるじゃないか」

ミカサ「突発性の睡魔だから。では失礼する」

ユミル「……なんだったんだ?」

ベルトルト「僕に発破を掛けたついでに谷底へ突き落したんだ」

ユミル「肉の部位で盛り上がってたんじゃないのかよ」

ベルトルト「一瞬だけ走馬灯と肉の話も出来たんだ、ほんのちょっとね」

ベルトルト「……あの、ね。驚かないで聞いてほしいんだけど」

ユミル「ベルトルさんが今にも死にそうな表情をしてるからとっくに驚いてるよ」

ベルトルト「僕は君が好きです」

ユミル「え、知ってた」

ベルトルト「は?」

ユミル「いつだったかの過呼吸の後に呻きながらユミル大好きーってさ」

ベルトルト「僕は過去の僕に負けたってこと?体中の血液が逆流しそうなくらい緊張したのに!」

ベルトルト「ミカサ、ちょっと首削いで!人生やり直してくる!!」

ミカサ「私は寝ている。ぐーぐー」

ベルトルト「この世界は残酷だ……」

ミカサ「人の台詞を盗らないでもらいたい」

ユミル「お前ら扉越しに楽しそうだな」

ベルトルト「あーもー!とにかく君が好きです!」

ユミル「だから知ってるって」

ベルトルト「君が僕の好きな人であるように、君も僕を好きになってほしい!」

ユミル「私は結構ベルトルさんのことが好きだぞ。知らなかったのか?」

ベルトルト「し、知らなかった」

ユミル「好きじゃない男に何度もキスをする趣味は無いさ。紙袋でも渡してるよ」

ベルトルト「幸せすぎて死んでしまいそうだ」

ミカサ「それは困る。あなたにも人類の安寧のために戦ってもら……あっ、ぐーぐー」

ユミル「ミカサ、慣れないことしなくていいぞ。やりにくいから部屋入れ」

ミカサ「でも妹か弟が欲しければ寝室には入ってはいけないって言われてきたから」

ベルトルト「今はその場面じゃないから大丈夫だよミカサ」

ミカサ「あと、眠い」

ユミル「少しくらい寝ておけ。その間にベルトルさんが暴走したら私が噛み殺しておく」

ベルトルト「そんなことしないよ。出来ないよ。僕は世界で一番幸せな人間だ」

ユミル「そうだな。ベルトルさんは人間だ」

ベルトルト「ミカサの保証付きだよ」

ユミル「安心していいのか疑えばいいのか」

ベルトルト「そして君も人間だ」

ユミル「それに関しちゃ核心を持てないんだけど、そういうことにしておこう」

ベルトルト「君は僕のために生きてくれるって言ったよね」

ユミル「条件付きだけどな」

ベルトルト「なら僕は君のために生きるよ、条件無しで」

ユミル「私が心の狭い人間に聞こえるじゃないか」

ベルトルト「ユミルはそれでいいんだ。僕の頑張る糧になるし」

ユミル「じゃあそうしておこう」

ベルトルト「明日からは大人しく眠れる気がする」

ユミル「良かったな。ミカサの仕事が減る」

ベルトルト「だけどたまには夜に会いたいな」

ユミル「そんなのはベルトルさんが大団円を見せてくれた後にいくらでも出来るだろ」

ベルトルト「そうだったね。うん、楽しみだ」

おまけの話二つ目終わり
あまりだらだらと続けるのもどうかと思うので次ぐらいでちゃんと終わらせる


ミカサの両親www

おまけ3

ベルトルト「僕と君が一緒に生活するようになって結構経ったね」

ユミル「ボロボロになったベルトルさんの故郷が機能するようになるくらいには」

ベルトルト「喧嘩もしたね」

ユミル「ジェネレーションギャップって大きな壁だよなあ」

ベルトルト「でも最後には理解し合えてきた」

ユミル「他人と暮らすってそういう過程が必要だろ」

ベルトルト「喧嘩の後にクリスタのとこに3週間近く行っていたときは寂しかった」

ユミル「話さなきゃいけないことが沢山あったんだ」

ベルトルト「訓練兵のときに女子トイレは迷宮だって学んだけど内地もそうだなんて」

ユミル「シーナまでがまず遠いだろ」

ベルトルト「僕が送っていけたら良かったのに」

ユミル「ベルトルさん、巨人化能力は運送のためにあるわけじゃない」

ベルトルト「僕の特技ってそれくらいだし」

ユミル「他にもあるさ。私は知ってる」

ベルトルト「照れる」

ユミル「褒めてるから思う存分照れてくれ」

ベルトルト「自己申告するけど、僕の顔は茹でたタコみたいになってる」

ユミル「私には見えないんだ。こんなに近くにいるのに」

ベルトルト「少し動いただけで鼻がぶつかるくらいなのにね」

ユミル「今日は月が雲に隠れてる」

ベルトルト「ランプも消してしまったから寝室は真っ暗だ」

ユミル「ドキドキするだろ」

ベルトルト「僕の心臓は君といるだけでドキドキして壊れそうだよ」

ユミル「生命活動の一種じゃなくて?」

ベルトルト「一人でいるときよりも鼓動が速くなる」

ユミル「怯えさせるようなことは控えているつもりだけど」

ベルトルト「僕の伝えたいことと噛み合っていないのが残念だな」

ベルトルト「でもできればその努力はこれからも続けてほしい」

ユミル「わかった」

ユミル「それで、だ。いくら鈍いベルトルさんでもこれから何をするかはわかるよな?」

ベルトルト「僕はそんなに鈍くないよ。少なくともエレンよりは」

ユミル「エレンは次元が違う」

ベルトルト「ミカサは大変だろうね」

ユミル「アルミンも」

ベルトルト「……言わなくちゃ駄目?」

ユミル「ベルトルさんの口から聞きたい」

ベルトルト「僕の筆おろしタイム」

ユミル「子作りしましょ」

ベルトルト「ダイレクトすぎるよユミル」

ユミル「これくらいストレートじゃないとベルトルさんは気付かないってライナーが」

ベルトルト「なんてことだ。同じ人から二度も裏切られるなんて」

ユミル「アルコールを入れたら一発だった」

ベルトルト「ちょろすぎるよライナー」

ユミル「アルコールは偉大だな」

ベルトルト「もっとライナーの話をしようよ」

ユミル「逃がさないぞベルトルさん」

ベルトルト「君がホールドしているせいで僕の頭に胸が当たってるんだ」

ユミル「ベルトルさんのベルトルさんがスタンドアップするの待ち」

ベルトルト「おっぱい押し当てられて起立しないXYは不能かホモだよ」

ユミル「ベルトルさんはどっちだ?」

ベルトルト「3つ目のチキンでお願い」

ユミル「そうか」

ベルトルト「キスだけでも緊張して頭が沸騰しちゃう僕だよ」

ユミル「籍まで入れたのに」

ベルトルト「君の名前で商売するのには苗字が必要なだけでしょ?」

ユミル「それだけならクリスタのをもらっただろうよ」

ベルトルト「本当に?」

ユミル「ここで嘘をついたら私にいいことありそうか?」

ベルトルト「僕が三日三晩くらい泣き続けるくらいしかないね」

ユミル「あんたは信じるとか一緒だとか言いながらもどっかで疑ってるんだ」

ベルトルト「今があまりにも幸せすぎて怖いんだ」

ユミル「ここにいる私は偽物か?」

ベルトルト「僕の幻覚かも。ミカサに斬られたあの時からずっと夢を見てる」

ユミル「想像力豊かなんだな」

ベルトルト「現実の僕は土の中で微生物に分解されてる真っ最中」

ユミル「似たことが起きる寸前で私とベルトルさんは起きたんだよ」

ベルトルト「いつかの朝にはこの生活が消えてしまうのかも」

ユミル「だからいつも寝つきが悪いのか」

ベルトルト「朝が来るのが恐ろしくてたまらない」

ユミル「無職じゃないんだから」

ベルトルト「僕の脳内はこんな心配事とユミルで占められてるよ」

ユミル「割合は?」

ベルトルト「3:7」

ユミル「気に食わない」

ユミル「人には何度もあんな恥ずかしいことを言っておいてたったの7割かよ」

ベルトルト「悩み事も君との生活もどっちも僕のキャパを超えてる」

ユミル「過去に経験があればもっとうまく立ち回れたろうに」

ベルトルト「君以外と暮らそうとは思わないよ」

ユミル「それは困る。私は子孫を残す気満々だ」

ベルトルト「どうしてそんなに行動的なの」

ユミル「誰かさんへの愛が限界点を突破したから」

ベルトルト「…………ユミル」

ユミル「声震えてるぞ」

ベルトルト「君は男前すぎる」

ユミル「ミカサほどじゃない」

ベルトルト「ミカサは僕たちと住む世界が違う」

ユミル「異世界と異次元の住人同士であそこはうまくやっていってるんだろうさ」

ベルトルト「それに付いていけるアルミンは凄いや」

ベルトルト「……後悔しない?」

ユミル「襲われている側の台詞には聞こえないなあ」

ベルトルト「たぶん僕は悩むことからは抜け出せないよ」

ユミル「私だって毎食の献立、とっても悩んでるんだぞ」

ベルトルト「歴史に残る大惨事の原因だし」

ユミル「その原因にトラウマ植えつけたのは私だったな」

ベルトルト「一回死んでるし」

ユミル「私の半分だ」

ベルトルト「どんなこともマイナスに受け取ってしまう」

ユミル「考えを放棄するよりマシさ」

ベルトルト「僕の全てを君に捧げても幸せには出来ないかも」

ユミル「じゃあ私が2人分頑張るか」

ベルトルト「頭撫でないで、泣きそう」

ユミル「ベルトルさんは泣いてばっかりだなー」

ベルトルト「君が僕の泣いてる場面を見つけるのが得意なだけだよ」

ユミル「これから子作りするのに大丈夫かチキンさん」

ベルトルト「ねえ」

ユミル「ん?」

ベルトルト「もしかしての話だけど」

ユミル「どうしたよ」

ベルトルト「地上最強の子ができたりしないよね?」

ユミル「現人類最強とミカサの子供じゃないんだから」

ベルトルト「ミカサが聞いたら怒るよ」

ユミル「エレンが聞いても怒るぞ」

ベルトルト「あ、遂にそうなったんだ」

ユミル「ミカサ曰く長かった、だって」

ベルトルト「家族からのスタートなんだってね」

ユミル「結婚したらまた家族になるけどな」

ベルトルト「どこで聞いてきたの?」

ユミル「ライナー。そのライナーはアルミンから」

ベルトルト「まだ工業都市にいるんだ」

ユミル「就職しそうな勢いだな」

ベルトルト「原材料として?」

ユミル「力の要る仕事の手伝いをしてたらしいぞ」

ベルトルト「剥ぎ取りの後に?」

ユミル「多分そうだろ」

ベルトルト「労基を教えてあげたい」

ユミル「心配しなくても原材料の役割はもう終わったみたいだ」

ベルトルト「全部剥いだの?」

ユミル「必要な量を削いだからもういいらしい。変わらず元気だったよ」

ベルトルト「そうなんだ。良かった」

ユミル「メンタルも変わらず、強化されてない」

ベルトルト「自分は強化の材料になっていたのにね」

ユミル「そのライナーは私らの子供におじさんと呼ばれたいって」

ベルトルト「他人事だと思って。地上最強になったらどうするんだ」

ユミル「遺伝子的に無理だろ」

ベルトルト「ミカサがいるから?」

ユミル「ミカサがいなくても、ベルトルさんは私が内臓スクランブルエッグになるまでを知ってるじゃないか」

ユミル「ポテンシャルがどこぞの超大型とは違うんだよ」

ベルトルト「君の歯は肉食動物寄りだしね」

ユミル「どうしてそんなことを覚えてるんだ」

ベルトルト「特徴的だった」

ユミル「そうかい」

ベルトルト「君は強いよ」

ユミル「いちいち内臓をぐちゃぐちゃにするつもりは無い」

ベルトルト「体も心も強いよ。羨ましい」

ユミル「どんなに強くても金髪の子供は産めないけどな」

ベルトルト「えっ」

ユミル「いや、ベルトルさんの両親によってはなくもない……?」

ベルトルト「どこで聞いたの」

ユミル「座学でやったろ」

ベルトルト「そっちじゃなくて」

ユミル「どっち?」

ベルトルト「金髪がどうとかって話」

ユミル「酔っぱらった金髪ゴリラから」

ベルトルト「皮を削ぎ取ってやりたい」

ユミル「バイオレンスだな」

ベルトルト「子供の頃の話だからね」

ユミル「その年で「どうして僕の髪だけ黒いの?」って言われたら困るわ」

ベルトルト「そっち?」

ユミル「他に何があるんだよ」

ベルトルト「知らないならいいんだ」

ユミル「まあ知ってるけど」

ベルトルト「君は意地悪だ!」

ユミル「クリスタにもよく言われた」

ベルトルト「天国行きを否定されてたけど君はクリスタに何したの」

ユミル「雪山でダズが死にかけているのを見ながら少々」

ベルトルト「クリスタはほわほわしただけの子じゃないよね」

ユミル「あれでいて頑固だし押しの強いところがある」

ユミル「ちなみにクリスタからは男の子と女の子どっちも産んでとお願いされた」

ベルトルト「迷宮に棲む魔物はクリスタだったか」

ユミル「あんな天使をよくそんな言葉で表現できるな」

ベルトルト「女の子の話ってえげつないよね」

ユミル「女子寮に3年もいたらそりゃ」

ベルトルト「せめて一番は僕に話してほしかった」

ユミル「ベルトルさんに迫るための下準備を本人に言っても面白くない」

ベルトルト「詳しく聞かせて」

ユミル「きっとベルトルさんは子供が出来たら出来たで悩むだろう」

ベルトルト「出産どこでどうするの」

ユミル「学校とか」

ベルトルト「兵士になりたいって言われたら僕泣くかも」

ユミル「将来どうやって生活していくのかとか」

ベルトルト「あと戸籍」

ユミル「そういうのを全部クリスタにお願いしてどうにかしてもらった」

ベルトルト「貴族の力って凄いね」

ユミル「クリスタは私の管理責任者でもあるからな。笑えるくらいちょろかった」

ベルトルト「じゃあどうして3週間も行ってたの?」

ユミル「アルコールって素敵な液体だよな」

ベルトルト「そして偉大だね。君の心を掴んで離さない」

ユミル「これから2年近くは飲めなくなるわけだし」

ベルトルト「クリスタのお願いを聞くならもっと長くなる」

ユミル「ようやくやる気になったか」

ベルトルト「手加減とか出来ないよ」

ユミル「普通は優しくするよって言うもんだ」

ベルトルト「経験無いんだ」

ユミル「どこからどう見ても非童貞には見えない」

ベルトルト「緊張してるし、君のおっぱいやわらかいし」

ユミル「硬い乳を揉みたかったらライナーのところに行け」

ベルトルト「嫌だよ。筋肉とはまた違うんだ」

ユミル「私にはよくわからない」

ベルトルト「牛で言うならサーロインとスネだよ」

ユミル「またサシャみたいなことを」

ベルトルト「どっちかっていうとミカサの受け売り」

ユミル「鶏肉が好きなんじゃなかったのか?」

ベルトルト「チキンからの卒業。ばいばい草食系こんにちは肉食系」

ユミル「目覚めさせてはいけなかったのかもしれないなあこの流れは」

ベルトルト「手遅れだよユミル」

ベルトルト「君の唇はやわらかいから好き」

ユミル「筆おろしされる男がいきなりベロチューか」

ベルトルト「ランプ点けてもいい?」

ユミル「絶対に嫌だ」

ベルトルト「天井のシミのカウント出来ないよ?」

ユミル「さっきまでの純粋なベルトルさん戻ってきて」

ベルトルト「それでも僕はおっぱいを離さない!」

ユミル「悩み事はどこに行ったんだ」

ベルトルト「脳みそと一緒に沸騰かな?」

ユミル「どうして私はこんな男と生きようと思ったのか」

ベルトルト「優しくは出来ないけど、大切にはするから」

ユミル「この場面以外で言われたかった」

ベルトルト「照れるからまた今度ね」

ユミル「いやこの体勢より恥ずかしいことなんて滅多に無いような」

ベルトルト「未経験だからよくわからないよ。じゃあ、いただきます」

三つ目終わり

乙!
時系列が知りたい

朝起きるとユミルがいなかった。

こんな早くから海に出ているのかと思ったけど、靴は玄関に置いたままだ。

裸足で出かけたのか。そう思って僕も外に出てみたけど彼女はどこにもいなかった。

またいつかみたいにクリスタのところにでも行ってるんだろう。

せめて書置きを残してもらうようにしようと思って家を見ると、無かった。

「……え?」

家が無い。気付いた瞬間視界が急にぐるりと回る。

水に油を入れてかき混ぜたようにぎらぎらと光る。気持ち悪い。

よし、夢だこれ。絶対夢だ。昨日アルコール飲みすぎたんだ。

ベッドに戻ろう。あ、でもベッドなんてどこにも見当たらない。じゃあ地面でいいや。

醒めたらユミルが隣で寝てますように。朝ごはんはお茶漬けがいいです。

人に恨み言を言われるよりもユミルがいない夢の方が僕の心に与えるダメージは高い。

そんなことを彼女に言えばまた頬を赤く染めてくれるだろうか。楽しみだ。

「おやすみなさーい」

* * * * * *

ライナー「起きろベルトルト、起きろ!」

ベルトルト「ゆみるがやさしくおこしてくれないからぱす」

エレン「何言ってるんだこいつ」

ユミル「寝ぼけてるんだろ」

ベルトルト「あれユミル、おはよう。朝ごはんもう用意しちゃった?」

エレン「ライナーだけじゃなくてベルトルトも頭おかしいのかよ」

ベルトルト「何でエレンとライナーがいるの。あ、ユミルが呼んだ?」

ユミル「おい本当に大丈夫か」

ライナー「大丈夫じゃないかもしれん」

エレン「お前もイカれてるしな」

ユミル「エレン、ちょっと頭叩いてみ。直るかも」

ベルトルト「そこ、僕を家電扱いしないの」

エレン「カデン……?」

ライナー「落ち着けベルトルト、現状説明するから」

ベルトルト「説明もなにも。君らが僕らの家に遊びに来たんだろ?」

エレン「どこの誰が遊びに来るだけで両腕失うっていうんだよ」

ベルトルト「ライナーが雑な運び方したんだろうね」

ライナー「それは正しいんだけど間違いまみれだぞ」

ユミル「ライナーさんよ、このノリだとアニもおかしいんじゃないのか?」

エレン「俺たちはこんな奴らに襲われたっていうのか」

ベルトルト「エレンは婚前旅行の下見?」

エレン「……ライナー、こいつ落としていいか」

ライナー「待ってくれ。これでも大切な仲間なんだ」

ユミル「今からでもエレン使って脱出する方に変えようかな」

ベルトルト「ユミル、目の前で他の男の話題されるとちょっと悲しいよ」

ユミル「おい寄るな触るな抱き上げるな気持ち悪い」

ベルトルト「だからってその怪我のまま木の上にいさせるわけには……木の上?」

ライナー「そこから遡って説明すべきか?」

ベルトルト「久々にこんな高さから地面見たよ。こわ」

エレン「は?さっき巨人化してなんやかんやしただろ」

ベルトルト「あー、あの時期か。僕がミカサに削がれたときの」

ライナー「本当に大丈夫かお前」

ベルトルト「おっけーおっけー。どうせ夢だし大丈夫だよ」

ユミル「エレン、こいつ全力で蹴ってくれ」

エレン「ユミルを膝の上からどかしてやれよ」

ベルトルト「いくら夢の中だからってお嫁さんを手放すわけにはいかない」

ライナー「ここで戦士の顔を取り戻すのはやめてくれないか」

エレン「蹴りたい顔面」

ユミル「待て待て待て待て誰が誰の嫁だって?!」

ベルトルト「ユミルは僕の嫁」

ライナー「クリスタは俺の嫁」

エレン「なあ、どっちを先に蹴ればいいと思う?」

ユミル「ベルトルト!」

ベルトルト「こんなつんけんしてた時期がユミルにもあったなー今もつんけんだけど」

ユミル「どうしよう背後で恐ろしい台詞が聞こえる泣きたい助けてクリスタ」

エレン「待ってろよ今蹴り落とすから」

ライナー「立体機動装置あるから無駄だろ」

ユミル「一発で気絶させるんだ!」

エレン「ってか止めないのかライナー」

ライナー「……いや、俺もちょっと気持ち悪いかなって」

ユミル「その台詞さっきのあんたにお返しするよ」

エレン「気持ち悪かったよなー?」

ユミル「いくら疲れたからって自意識過剰はいけないよなー?」

ベルトルト「僕も構って」

ユミル「甘えてくるなよ怖いんだよ!」

ベルトルト「全力で甘えるって決めたから」

ユミル「私の同意は!」

ベルトルト「過去に取ってる」

エレン「……本当にお前たちは俺の誘拐を実現出来るんだろうか」

ライナー「心配になってきた。故郷に早く帰りたい」

ユミル「エレンまだか?!」

エレン「だってベルトルトがお前離さないんだもん」

ユミル「もう私ごとでいいからこの惨劇を終わらせよう」

ベルトルト「絶対に離さない!夢の中で思う存分いちゃつくんだ!!」

エレン「あと今のベルトルトに接触したくないんだもん」

ライナー「俺もやだ」

ユミル「私だって嫌に決まってるだろ!……あー、クリスタに会いたい」

ベルトルト「仕方ないなあ、僕が起きたら内地旅行の計画立てるからさ」

エレン「あいつはどうやったら治るんだ?」

ライナー「こんなことが起きたのは初めてだからわからん」

エレン「頭殴ればいいのか?」

ベルトルト「だから僕は家電じゃないって」

エレン「カデンって何だよライナー」

ライナー「……代々家に伝わりしもの」

エレン「仮にも兄貴分なんだから知らないときは知らないって言う勇気を持ってくれ」

エレン「あと責任取ってあのベルトルトどうにかしてやって」

ユミル「もーやだ…クリスタぁ……」

ベルトルト「だから内地に遊びに行ったら会えるって」

ユミル「この状況でよくそんなことが言えるな!私の未来には死亡フラグしかないのに!」

ベルトルト「夢の中の君はそうでも現実は違うから安心して」

ユミル「出来るわけないだろ!そもそもこれは現実だ!!」

ベルトルト「僕の夢だよ。ちょっと悪夢がパターン変えてきただけで」

ユミル「ベルトルトまじで狂ってる」

エレン「ほらどうにかしてやれよ兄貴分」

ライナー「無理」

エレン「逃げるのか」

ライナー「出来ることなら全力疾走してるさ」

ユミル「助けてクリスタ」

ベルトルト「そんなに会いたいなら行っちゃう?僕の背中乗っていいよ?」

ライナー「待てベルトルト!」

エレン「あれこれ俺たち戻れるんじゃね?」

ユミル「お前の背中とか無理」

エレン「待てユミル!生理的嫌悪と戦ってくれ!」

ユミル「だってさっきからこいつ私の腰とか太もも撫でてくる」

ライナー「おいベルトルト」

エレン「無理言ってごめんな。無事に戻れたら憲兵団に突き出そうな?」

ベルトルト「夢の中で自分の妻にセクハラして何が悪いんだ!」

ユミル「妻じゃねーし」

ライナー「夢じゃねーし」

エレン「悪くない要素が一つもねーし」

ベルトルト「この世界は残酷だ」

エレン「人の幼馴染の名台詞になんてことを」

ベルトルト「別にわざわざ行かなくてもミカサが僕のうなじ削ぐと思うけどね」

ライナー「は?」

ベルトルト「その衝撃でユミルは僕に噛み潰されて二人仲良く三途の川行き」

ユミル「……お前、その川の名前どこで聞いた?」

ベルトルト「だから現実の君だって。未だに全部思い出してくれてないけど」

エレン「こいつが何言ってるかわからないのって俺が馬鹿なせい?」

ライナー「大丈夫だ俺もわからん」

ユミル「なんでそんなこと知ってるんだよ」

ベルトルト「君から教えてもらったの。もー、夢の中だってのにうまくいかないなあ」

エレン「おい、お前らの故郷の前に病院行かないか?」

ライナー「状況がこうでなかったらその案を飲んだんだが」

エレン「早めの受診が人を救うんだって、お前ら人じゃないけど」

ライナー「ぶっ殺すんじゃなかったのか」

エレン「健康体になった後で見るも無残な死体を二つ作ってやる」

ユミル「ベルトルさん、今の話を最初からしてくれ」

ベルトルト「三途の川の?」

ユミル「そうじゃなくて瀕死に至るまでの過程だよ」

ベルトルト「君は僕の夢の中にいるのに知らないの?」

エレン「だから夢じゃないって」

ライナー「ベルトルト…本当に疲れてるんだな……」

ユミル「外野うるさい。ベルトルさんはさっさと話せ」

ベルトルト「わかったよ。壁の上で巨人化して君を口に入れようとした僕はミカサに削がれた」

ベルトルト「驚いた拍子に僕は君を噛み砕いた。もう一人は落としてしまった。はい終わり」

エレン「ベルトルトの妄想のミカサ強い」

ライナー「現実じゃなくって良かった」

ユミル「そうだとしたらこのベルトルトの面倒見なくて良かったんだぞ?」

ライナー「…………」

ベルトルト「待ってライナー、黙らないで」

ライナー「故郷に戻ったら、然るべき機関に行こうな」

ベルトルト「僕の深層心理がたまには病院で健康診断を受けろと言ってるのかなこれは」

ライナー「こんな妄想するくらい辛い思いさせて悪い」

ベルトルト「夢とはいえライナーに謝られると心が痛む」

ユミル「だから夢じゃないんだよ」

エレン「現実だからなこれ。いい加減にしろ」

ベルトルト「海の近くで家建てて生計どうにか成り立つようになって今更夢って言われても」

ユミル「考えろ、4人中3人が現実だって言ってるんだ」

ベルトルト「いや夢だったとしても今からあの世界を作ればいいのか……?」

エレン「どうしようベルトルトが本格的にヤバい」

ライナー「俺がいけなかったんだ……」

ユミル「立体機動装置さえ奪えれば私ら帰れそうだな」

エレン「ユミルが背後から完全ホールドさえされてなきゃな」

ユミル「私を置いて行ってもいいんだぞ」

エレン「出来ねぇよ。戻るときは一緒だ」

ベルトルト「でも僕の想像力であんな妄想出来るわけないし」

ライナー「お前のイマジネーションは常人のそれを遥かに超えてるよ」

ベルトルト「僕おやすみなさーいって言ったし」

エレン「このまま現実逃避させておいたらどうだろう?」

ユミル「夢のフリをして油断させるか?」

ライナー「そこ、内緒の会話はもっと離れたところでしろ」

エレン「あの腰巾着と夫婦設定らしいし、色仕掛けでもしてみようぜ」

ユミル「絶対に!嫌だ!!」

エレン「さっきまでと比べたらなんかちょろそうだからいけるって」

ユミル「私の立場になってちょっと考えてみ?やりたいか?」

エレン「嫌だ」

ユミル「私だって嫌だよ」

ベルトルト「ねえねえエレンばっかりじゃなくて僕にも構ってよ」

ユミル「ベルトルさんは黙ってろ出来れば息も止めろ」

エレン「このままミカサたちが来るのを待つか?」

ユミル「さっきの話を聞く限りそれが一番だよなあ」

ライナー「いくらミカサでも俺たちに勝てるはずがない」

ベルトルト「それはどうかな?」

ユミル「人の肩に顔をのっけるな!」

ベルトルト「24回」

ライナー「それがどうした」

ベルトルト「ミカサ・アッカーマンがライナー・ブラウンの膝から下を切り落とした回数」

ライナー「お前の中で俺はどうなってるんだ」

ベルトルト「彼女は君を地下牢に閉じ込めるためにこれだけの回数、君を斬った」

ライナー「想像の話だろ?お前俺になんか恨みあったりする?」

ベルトルト「彼女は僕と君の討伐を成功させて特別な賞まで貰ってる」

ベルトルト「あの少女は僕たちの想像以上に強いんだよ、ライナー」

エレン「ミカサ強いな」

ユミル「頑張って嫁さんにするんだぞエレン」

エレン「いや、そんなんじゃねーし!ただちょっと褒めただけで……」

ベルトルト「今はこんなこと言ってるけど数年後に結婚するからね」

ユミル「ミカサ・イェーガーか」

エレン「ちょっとやめろよ!エレン・アッカーマンかもしれないだろ!」

ベルトルト「婿入りしちゃう系?」

エレン「そこら辺はこだわらないからミカサの好きなようにやらせるよ」

ユミル「式には呼べよ。余興くらいしてやるから」

エレン「気が早いんだよユミルは!」

ライナー「待ってくれ、なんか俺疎外感。さっきまで三人で連携取れてたよな?」

ユミル「チッ」

エレン「今は俺の恋バナタイムだろ?」

ライナー「わかったぞお前たち時間潰すつもりだな!だから盛り上がってるんだろ!」

ベルトルト「わかった、後でライナーが腹筋削がれる話もしてあげるから」

ライナー「なんで俺のはそんなにバイオレンスなんだよ」

ベルトルト「分隊長とアルミンのせい」

ライナー「いいかベルトルト、もうふざけるのは終わりだ。ここを離れる」

エレン「空気読めよライナー」

ユミル「私らが無事奪還されるフラグ立ってたろ?」

ベルトルト「どうせミカサには負けるって」

ライナー「本当にいい加減にしてくれ!とりあえずユミル下ろせ」

ベルトルト「はいユミル、片足無いんだから気を付けてね」

ユミル「ありがとよベルトルさん。でも必要以上に私に触れるな。」

エレン「おいユミルも俺もこんなんでどうやって移動するんだよ」

ライナー「俺とベルトルトで背負う」

エレン「やだ」

ユミル「私も」

ライナー「お前らこの時間で仲良くなりすぎだろ……」

ベルトルト「じゃあ僕がユミルで!」

ライナー「わかったから、本当にちょっと黙ろうな?」

ベルトルト「ほら背中乗って」

ユミル「あーもー、上手くいけると思ったんだけどなあ」

エレン「空中で首の血管絞めてやろうぜ」

ライナー「だからそういう話は聞こえない場所で!いいのかそのテンションで……」

ユミル「片足片手だとなかなかに辛いものが…」

ベルトルト「気を付けてね。君は落ちやすいんだから」

ユミル「あ」

エレン「滑って落ちた」

ベルトルト「ちょっ、ユミル!!」

ライナー「おいベルトルト!」

エレン「おー、無事にベルトルトが落下してったユミルをキャッチ」

ライナー「したのはいいけど木に激突したよな?」

エレン「パッと見気絶してるけど」

ライナー「マジかよ」

エレン「おーい、大丈夫かー?!」

ユミル「ベルトルさんが気絶したぞー!いえい!」

エレン「よっしゃー!」

ライナー「俺のいない場所でやろうな。本当に。お願いだから」

エレン「後はミカサ待ちだなー!」

ライナー「わざとかよ」

ユミル「そんな危険なこと出来るわけねーだろー!」

エレン「偶然だよなー?!」

ユミル「ああー!」

ライナー「人間って追い詰められるとこんなにもコンビネーションを発揮できるのか」

エレン「死の淵にいる人間舐めるなよ」

ライナー「エレン、目怖い。マジ怖い」

エレン「ベルトルトが起きるまでは休憩な」

ライナー「遠足みたいなこと言うなよ」

* * * * * *

起きるとベッドの中だった。台所の方から食器の当たる音がする。

「ユミル」

「何かあったか?」

名前を呼べばエプロン姿の彼女が現れた。良かった、あれはやっぱり夢だったんだ。

「呼んだだけー」

「まだ寝ぼけてるのかよ」

夢の中とは比べものにならないくらいやわらかい笑みを彼女は浮かべる。

こうやって笑う彼女の隣に居られる自分はきっと幸せ者なんだろう。

「さっきはうるさかったんだぞ。アルコール抜けてないのか?」

「もう大丈夫だよ。寝たら治った」

「これからは私と同じペースで飲むなよ」

「君が飲んでるのを見るとすごく美味しそうに見えるんだよねえ」

時計は昼を少し過ぎている。お腹が空いているのでお茶漬けをリクエストしてみると、

「さっき食べたばっかりだろ?」

と怪訝そうに言われた。え、なにそれ僕知らない。

* * * * * *

ベルトルト「……僕とユミルが結婚していた」

エレン「そこはみんな知ってるんだよ、ほら早く続き」

ベルトルト「朝ごはん作ってもらった。ありえないくらい優しかった」

ユミル「お前は私のことを何だと思ってるんだよ」

ライナー「だからお前疲れてるんだって」

ベルトルト「水貰って、ベッドの中でごろごろしながら質問責めした」

エレン「何やってんだよ。まあいいやとりあえず続き」

ベルトルト「色々あって僕らの故郷壊滅してたよ。ついでに僕は放逐されてた」

ライナー「そういうリアルなこと言うのやめろよ」

ベルトルト「ライナーは工業都市に就職して、アニは故郷に戻ったらしい」

ユミル「さっきの妄想と似た傾向だな」

ベルトルト「君たちさっきから僕が妄想癖みたいなこと言うけど違うからね?!」

エレン「さっきまで凄かったんだぞ。ユミルは僕の嫁って」

ライナー「そんなにユミルのこと好きなら生かす方向で進めようか?」

ベルトルト「そうじゃなかったはずなんだけどさあ……」

ベルトルト「僕が…ベッドからいつまで経っても出ないからって……ユミルが………」

ユミル「私が何だよ?」

ベルトルト「布団捲ってほっぺにちゅー……」

エレン「恋に落ちたな」

ミカサ「エレン」

ライナー「恐ろしい女だなユミル」

ユミル「やめろ私のことみたいじゃないか!違うからな!!」

ベルトルト「君を見ても動悸がやばいんだよ!青少年舐めんな!」

ミカサ「エレン?」

ライナー「さっきからミカサの声が……うわ!!」

エレン「あ、ミカサ」

ミカサ「迎えに来た。とりあえず、削ぐ」

エレン「ベルトルトには少し優しくしてやってくれ。傷ついてるんだ」

ミカサ「わかった。努力しよう」

四つ目終わり

>>189
本編+おまけ2→放逐→おまけ1、3、4
こんな感じ

ベルトルトがちょっとパラレルワールドに行っただけだよ。盆だし
暑くてむしゃくしゃしてやった、反省はしていない

ベルトルト「君はここにいるんだよね」

ユミル「いきなり抱き着いてきてどうしたよ」

ベルトルト「これは僕の妄想なんかじゃない」

ユミル「やっと現実だって受け入れてくれたか。長かった」

ベルトルト「さっきも言ったけど、夢を見たんだ」

ユミル「私が朝出かけていたのは本当だぞ」

ベルトルト「出来るだけ書き置きを残してほしいな」

ユミル「私がこの家以外のどこに行くって言うんだ?」

ベルトルト「クリスタ」

ユミル「…………あー」

ベルトルト「否定しようよそこは」

ユミル「過去にやってるから」

ベルトルト「これからは一言でいいから出かけるって知らせてね」

ユミル「そうするよ」

ベルトルト「ありがとう」

ベルトルト「夢の中の世界は君じゃない君がいた」

ユミル「そりゃこの私とベルトルさんの想像の中の私は違うだろう」

ベルトルト「巨大樹の上で君は足を滑らせて落ちて行った」

ユミル「ベルトルさんは私を殺すのが得意だなあ」

ベルトルト「助けに行ったけど、君をこの腕で抱くことが出来たかわからないんだ」

ユミル「それは別れましょうって言ってるのか?」

ベルトルト「逆だよ。夢の中だとしても君を失いたくない」

ユミル「そういう恥ずかしい台詞はどこで覚えてくるのか」

ベルトルト「君の全部が欲しい」

ユミル「これ以上やれるものはないぞ」

ベルトルト「僕らは死んだ後に川を渡るけど、僕は君と一緒に渡りたい」

ユミル「ベルトルさんが死んだら私も死ねってか?」

ベルトルト「君に求めるつもりは無い。でもきっと君が死んだら僕も死ぬよ」

ユミル「自殺したら天国に行けねえぞ」

ベルトルト「君も僕も仲良く地獄行きって決まってるさ」

ユミル「……私は死んでやれるとは言えない」

ベルトルト「その場合は僕が川のこっち側で待ってるよ」

ユミル「無理矢理川を渡らされたら?」

ベルトルト「爺も婆も君のためなら倒してやる」

ユミル「巨人化すれば最強だもんな」

ベルトルト「そうだね。向こうでも巨人になれたらいい」

ユミル「地獄でイカした生活は送れるのか?」

ベルトルト「君と一緒ならどこでだって幸せだよ」

ユミル「海の見える小さな家だって?」

ベルトルト「ここ以上に僕が居たいと思う場所はない」

ユミル「ちんたら建てた甲斐があったな」

ベルトルト「何度か仮設の小屋でいいかなって思ったけどね」

ユミル「台所とか家電運んでくるのも面倒だったな」

ベルトルト「巨人で良かったなってあのときに初めて思ったかも」

ユミル「ベッド運ぶのが一番面倒だった」

ベルトルト「あれだけの時間をかけたのに今更夢ですなんて神様も言わないよ」

ユミル「ウォール教は言うかもしれないなあ」

ベルトルト「優しく慰めてよ。僕傷ついてるんだ」

ユミル「私だっていきなり殺されたんだぞ?」

ベルトルト「もし現実なら二度目だね」

ユミル「どうやって責任を取ってもらえばいいのかわからない」

ベルトルト「僕の全部は君に捧げてるから」

ユミル「頭を胸に当てるな」

ベルトルト「挟んでくれたっていいんだよ」

ユミル「断る」

ベルトルト「君は着痩せするタイプだって知ってるんだから!」

ユミル「そりゃ知ってるだろうさ」

ベルトルト「押し当てられたからね!」

ユミル「筆おろしのときにな」

ベルトルト「あれ以来、君は攻めの姿勢を見せてくれない」

ユミル「そう毎日毎日やってられるか」

ベルトルト「疲れるの?」

ユミル「誰かさんが色んな体勢でハッスルするから」

ベルトルト「なんて奴だ」

ユミル「ああ、とんでもない奴だ」

ベルトルト「今度はねちっこく行ってみよう」

ユミル「思春期もそろそろ卒業だろ?」

ベルトルト「青年期だって性欲は付き纏うよ」

ユミル「たまには自分で処理してもいいんだぞ?」

ベルトルト「君の名前連呼してもいい?」

ユミル「パス」

ベルトルト「えー、駄目なの?」

ユミル「最初のシリアスな感じに戻ろうか」

ベルトルト「心はまだまだ青少年なのでお断りします」

ユミル「私は誰かさんがずっと悩んでたって付き合うさ。例え夢の中で殺されても」

ベルトルト「惚れた弱み?」

ユミル「放っておけないタイプの男に捕まってしまった」

ベルトルト「一生離さない」

ユミル「最初のころの初々しさを取り戻してみるつもりは」

ベルトルト「ない」

ユミル「これが人類の敵の台詞なんだもんなあ」

ベルトルト「過去の話だよ。僕はもう公式には存在しないんだ」

ユミル「生き返りたいのか?」

ベルトルト「まさか。ミカサに斬られず呼吸させてもらっているだけで幸せ」

ユミル「私がいればもっと幸せだ、良かったなベルトルさん」

ベルトルト「人間は慣れる生き物だって言うけど」

ユミル「辛いことは意外とすぐに慣れるんだってな」

ベルトルト「この幸せは一生慣れないと思う」

ユミル「いつでも新鮮な気持ちでいられるってことか」

ベルトルト「そっか、そういう考えもあるんだね」

ユミル「そしていつまでも同じ飯を美味しいって言ってくれる」

ベルトルト「君のご飯はいつでも美味しいよ?」

ユミル「たまには言葉にしてくれるとモチベーション上がる」

ベルトルト「わかった。今日の晩御飯はうるさいくらいに美味しいって言う」

ユミル「適度でいい」

ベルトルト「加減がわからなくなるのが僕の悪いとこだよ」

ユミル「もうちょっと手を抜いたっていいんだぞ」

ベルトルト「いつでも君に全力投球」

ユミル「大半がデッドボールになってる」

ベルトルト「愛が溢れてしまったせいだね、仕方ないね」

ユミル「溢れたと言えば言わなくちゃいけないことがあったんだ」

ベルトルト「何だろう」

ユミル「子供、出来た」

ベルトルト「はい?」

ユミル「妊娠した」

ベルトルト「この地上で最強の子供を?」

ユミル「それは産んで十数年経たないとわからないなあ」

ベルトルト「……本当に?」

ユミル「赤ん坊の時点で強さなんてわからないだろう」

ベルトルト「いや最強とかじゃなくて……君のお腹に、赤ちゃん?」

ユミル「ああ。朝はそのことでクリスタに鳩を飛ばしてて」

ベルトルト「ユミル!」

ユミル「急に肩を掴むなよ」

ベルトルト「何で赤ちゃんがいるのに僕に朝ごはんなんて作ったんだ」

ユミル「ベッドの中で膝抱えて酔っぱらってたから胃に何か入れないとって」

ベルトルト「そういうこと全部僕がやるからユミル寝てて」

ユミル「ベルトルさん、気が早い」

ベルトルト「僕のことは足置き場か何かだと思っていいから」

ユミル「急なドM宣言はやめてもらいたいんだが」

ベルトルト「僕何すればいい?家事とか商売とか掃除とか神に祈るとか?」

ユミル「最後は産むときだけでいい」

ベルトルト「朝昼晩と祈れば神様もノイローゼになって上手くいくかも」

ユミル「何がどうなったら上手くいくと思うんだ」

ベルトルト「どうして君はそんなに冷静なの!」

ユミル「ちょうどいい時期だろ。家は出来た、生活も安定してる、金にも余裕がある」

ユミル「子供の戸籍やら何やらは済んでるし、ベルトルさんも泣かなくなってきた」

ベルトルト「夜泣きする子供みたいな形容された」

ユミル「事実だろ?」

ベルトルト「うん」

ユミル「だからいいんだ。全力でこいつを育てることが出来る」

ベルトルト「過去に僕は君以外と暮らす気は無いっていったよね、取り消す」

ベルトルト「幸せにするよ。僕はこの子と君のために生きる」

ユミル「今からそんなに気ぃ張っても身が持たないぞ」

ベルトルト「持たせるよ意地でも。男の子だもん」

ユミル「……まあこんな通り、ちょっとテンションの浮き沈みの激しい父親だけど頑張ろうな」

ベルトルト「いつごろ産まれるの?産着とか、ミルクとか、他には何が必要なの?」

ユミル「半年以上先の話だよ。本当に落ち着けって」

ベルトルト「君はどうしてそんなにクールなんだよお腹の中に違う生命体がいるんだよ?」

ユミル「子作りするってちゃんと宣言しただろ」

ベルトルト「いやしたけど!されたけど!!」

ユミル「生でやっても結構かかるもんだな」

ベルトルト「女の子がそういう言葉遣いしちゃ駄目です!」

ユミル「女の子って年は70年くらい前に卒業したぞ」

ベルトルト「生まれてくる子が女の子だったらお淑やかに育てるんだ」

ユミル「無理だろ」

ベルトルト「彼氏連れて来たらどうしよう」

ユミル「何年後の話だよ」

ベルトルト「巨人化出来なきゃ駄目って言おうかな」

ユミル「行かず後家にするつもりか」

ユミル「どれだけ心配を先取りするつもりだよ」

ベルトルト「下手な男に捕まったらどうするの?」

ユミル「男の子かもしれないって考えはないのか」

ベルトルト「大丈夫、男の子だったら強く育てよう」

ユミル「物理的に?」

ベルトルト「メンタル面をまずは重視しようかな」

ユミル「おいお前、出来れば男の子で来いよ」

ベルトルト「女の子で君似だったら誘拐されちゃうかも」

ユミル「我が家はお隣さんまで数百キロ単位だぞ」

ベルトルト「そうなった場合僕は暴走すればいい?」

ユミル「誘拐されそうになったとき返り討ちに出来るよう育てよう」

ベルトルト「ミカサを先生として呼ぶべきか、いやここはアニ……?」

ユミル「お前、本当に男の子だといいなあ。ま、女の子でもきっと楽しいさ」

ベルトルト「ねえユミル、ミカサのレンタル料って一時間いくらだとおもう?!」

ユミル「ベルトルさん、うるさい」

* * * * * *

『――レイス家で行われた会談には、イェーガー夫妻の他多くの出席者が……』

「ん、なんか母さんの声聞こえた」

「昨日のニュースか。父さんたち帰ってくるのもうそろそろかな?」

「……何でクリスタさんなのにヒストリアさんなんだろ」

「父さんたちは内地で美味しそうな飯食ってるのに俺は魚?」

「いや俺魚好きだけどさあ、こうたまにはガッツリ食べたいって言うか」

「ラジオだと料理が見えないから救いのような、見たかったような」

「ってか何で母さん偉い人たちと知り合いなの。イェーガーさんとか」

「……あー、一人でぶつぶつ言いながら魚捌く俺。寂しい」

「友達も少ないもんなあ。ご近所さん皆無なのがいけないと思うんだけど」

「俺のコミュ力は母さん寄りだから本気出せば大丈夫、父さんとは違う」

「来年からは訓練兵だし、大丈夫だよ俺。頑張れるよ俺」

「魚捌けたし、食ったら寝る!もう父さんたちとか知らね」

「……訓練所入る前には独り言の癖直そ」

「ただいまー。あれ、電気付けてないね」

「夕飯はしっかり食ったみたいだな。満腹になって寝たか?」

「綺麗に食べたみたいだね。君よりも上手かも」

「訓練所で魚が出たらモテただろうに」

「食糧事情が改善されたから僕たちのときみたいな食事は出ないよ、たぶん」

「あの食事でよくそこまで伸びたよなあ」

「君も女子にしては大きい方でしょ?」

「当然のようにでかくなった息子はときどき8倍近くになるし」

「彼女、連れてきてくれるといい。」

「私みたいな物好きでかつ可愛い子を希望する。クリスタみたいな」

「クリスタは難易度高いんじゃないかな……っとそうだ、一つ忘れてた」

「何だよ」

「おかえり、ユミル」

「……ああ。おかえり、ベルトルト」

おわり

おまけと本編が同じくらいの量で自分でも引いた

レス有難かったです。読んで下さってありがとうございました

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