強化兵の話(34)
???「……む」
???「……」
???「頼む。この通りだ」
???「……」
???「お前たちは私が私事で動くことを嫌うというのはわかっている。だが――」
???「総統、勘違いされては困ります。確かに私たちは貴方の私事で動くことはできないが今回は状況が違う。テロリストから関係のない市民を守る、国防上行わなければならないことだろう?」
総統「あぁ、そうだ。だが退役したお前の仲間まで呼んでする作戦に私事が入っていないなどというつもりはない」
???「それでもだ。貴方の直属部隊隊長の俺も許可を出した。それしかないんだ」
総統「……身勝手かもしれんが妻と娘を頼む」
隊長「やれることを出来る限り。中途半端だけはしないさ」
総統「……吉報を待つ」
隊長「了解!」
隊長「――っそ! おいっ! 状況は!?」
???「こちら、副官。異常なし!」
???「いったーっ! 足とれたーっ!」
???「隊長、俺は問題ないけどレディーがご機嫌斜めってところだな」
???「……索敵系装備ロス、医療系装備問題なし」
隊長「……」
副官「……隊長、狙撃手が――」
隊長「分かった。副官、衛兵は俺と共に進行を継続。軍曹は伍長を救護と現地点と退路の確保」
軍曹「はいよ。おっ、狙撃手の足はちゃんと残ってんな。着けるか?」
伍長「えっ、なんか運気下がりそうだから嫌」
隊長「……」
総統「……くそっ」
隊長「申し訳ありません」
総統「お前たちのせいではない。正規兵がむやみに前に出過ぎたせいだ。だが自爆など……まだ戦況も決まってなかったというのに早計過ぎるだろう……」
隊長「……」
総統「……娘の様子は?」
隊長「かろうじて。奥さまがかばっていたおかげか命だけはなんとか。ただ損傷が激しいため強化手術を受けることを医者が勧めております」
総統「……強化手術か」
隊長「それについてのもろもろのリスクはご存じだと思うので割愛しますが事態は急を要します。なるべく早いご決断を」
総統「……あぁ。今日はもういい。休んでくれ」
隊長「はい、失礼します」
総統「――」
隊長「……はい」
総統「――-」
隊長「了解しました」
総統「――-! ――っ!」
隊長「……」
総統「次の任務はこれだ」
隊長「……ここは――」
総統「ここでレジスタンスと副総統秘書との密会があったとの報告があった。決起もそう遠くないだろう」
隊長「暗殺、ですか」
総統「いや街ごと焼きはらえ」
隊長「……どういう意図で?」
総統「副総統はまだ役に立ってもらわねばならぬ男だ。しかし主従関係がまだわかっていないようだからな」
隊長「見せしめ、というわけですか」
総統「なに、国のため。逆に残り少ないレジスタンス組織をある程度集めてくれたと考えれば国益につながった行動ともとれる」
隊長「……街一つといえど相当な火薬を運び入れることになりますが」
総統「それくらい自分で考えろ。あぁなんだったら昔の仲間に手伝ってもらえばいいではないか。強化手術を受けたものは皆兵役に処す決まりだからな」
隊長「……約束を破られるのですか?」
総統「破るのではない、上書きするだけだ。大体先の総統との口約束と国民の義務を秤にかけようとでもいうのか?」
隊長「……いえ、わかりました」
総統「あぁそれでいい。吉報を待っている」
隊長「残念だが、それは叶わないな」 カチャ
ターン……
隊長「……」
総統「」
隊長「……ただいまより脱出を試みる。第一発見まで三分弱――」
???「残念ですが第一発見まで三秒かかりませんでしたね」
隊長「っ!?」 カチャ
???「民間人です。武装もなし、ほら両手上げてますよ」 ヒラヒラ
隊長「お前は……」
???「はい。総統閣下の一人娘、幼女様の世話係のメイドでございます」
隊長「……どうしてここに?」 ス……
メイド「……強いて言うならば何となくでしょうか?」
隊長「真面目に話してるんだが」
メイド「そうですね、女の勘かと」
隊長「すまないが無駄話を――」
メイド「まぁ貴方が総統閣下の元を去るのが近々ではないかと思っておりましたので」
隊長「……」
メイド「どうですか? 女の勘ですが、なかなか侮れないものでしょう?」
隊長「あぁ、確かにな。で、それとお前がここにいることと、どう関係が?」
メイド「簡単ですよ。幼女様を誘拐していただきたい」
隊長「……え?」
メイド「あの方にとってこの屋敷は牢獄、閣下は看守でした。もう二十歳も近くなるというのに屋敷から一歩も出ずにこれからどうなるかもしれぬというのなら、少なからず面識のある方に保護されたほうがよろしいかと」
隊長「……色々と、おかしいが」
メイド「今なら特典として誰も知らない屋敷外へ通ずる道もついてきます」
隊長「……断ったら?」
メイド「断りませんよ?」
隊長「根拠は……女の勘、か?」
メイド「それより簡単に、貴方という人柄です」
隊長「すまないがこれでも人として最低な部類に入る生き方していると思うが」
メイド「ですが一度助けた人を無下に殺すこともしないでしょう?」
隊長「いや、殺さないと連れ去るは同義じゃないだろう?」
メイド「幼女様は強化兵ですが身体にいくつも欠損があることはご存じですよね?」
隊長「……あぁ、はいはいわかったよ」
メイド「そうです、あの法律。良くて地雷特攻、慰安婦程度しか活用方法はなく、従軍にも耐えられない」
隊長「確かに見殺しになるか」
メイド「見殺しになりますね」
隊長「だがそれでもいいというかもしれないよ? なにせこの国一番のお偉いさんを殺したんだ、逃げるのに足手まといは極力勘弁願いたいね」
メイド「そうですね なら賭けてみましょうか? あなたがあの子を見捨てるのかどうかを?」
隊長「……」
幼女「……」
隊長「……あー何だ、変な所はないか?」
幼女「いえ、大丈夫です」
隊長「そうか」
幼女「……」
隊長「……」
幼女「すみません、ご迷惑おかけして」
隊長「子供が気にすることじゃない」
幼女「……メイドが無理を言ったのではないのですか?」
隊長「いや……」
幼女「やりとりならばメイドから漏らさず伝えてもらっています」
隊長「……まだ戻れるぞ。言っては悪いとは思うがそんななりだ、戦場に出されないかもしれないし、父親の資産もいくらもあるだろう。こんな仇のような人間についてくるより安全だし不快じゃないと思うが」
幼女「なら置いてくればよかった筈です。それをしなかったのは何故ですか?」
隊長「……すまん」
幼女「いえ、恩人に差し出がましい真似をしました」
隊長「いや、俺の覚悟が決まってなかったのが悪いんだ。中途半端なことしてる、謝らなきゃなのは俺だよ」
幼女「……なら謝罪のかわりに私を連れて行ってくれますか?」
隊長「楽な道ではないぞ?」
幼女「どう転んでも、です」
隊長「そうか……そうだったな」
幼女「どうぞ、よろしくお願いします」
隊長「あぁ」
軍曹「お待たせ」
伍長「ううん、ごめんね。朝食作ってもらって」
軍曹「なに、体調悪いんだろ? そんな時くらい頼ってくれよ」
伍長「ありがと、まぁ体調悪いって言うかお腹に違和感がね」
軍曹「……もしかして、やりすぎ?」
伍長「うーん、良かったんだけどちょっとかな? 痛覚鈍り過ぎて身体の負荷わかりにくいからね」
軍曹「何かと便利だけど限度知らずだからな、この身体は」
伍長「まぁこの年齢でも若々しくいられるっていうのはいいことだけどね」
軍曹「確かに」
コンコン
伍長「……どちら様かしら?」
軍曹「二人、片方は轍があるにしてはだいぶ時間が……大型のバイクを押してくるような常識的な人間なんていたか?」
伍長「困ったことに爆音響かせドアぶち破るような人なら一人知ってるわ」
軍曹「同感。まぁ問答無用でもないから話は通じるだろ」
コンコン
伍長「早く出てこいって」
軍曹「今行くよー」
ガチャ
軍曹「はい、どちらさん?」
隊長「おう」
軍曹「お、隊長じゃん。休暇でも取れたんですか?」
隊長「あぁ、そんなところだ。見たところ元気そうだな」
軍曹「まあまあ楽しくやってるよ。で、そちらのお嬢様はどちら様?」
隊長「そのことについて話がある。伍長もいるんだろ?」
軍曹「あぁ分かった。入って」
伍長「あら隊長、久しぶり」
隊長「久しぶりだな」
伍長「今お茶だすわね」
隊長「あぁありがとう……タイミング悪かったか?」
伍長「別に朝食が少し遅れたからって死んじゃうわけじゃないわよ。それより食べてないんだったら作るわよ? 簡単なのしか用意できないけど」
隊長「いや……この子に少し作ってくれないか?」
伍長「……うーん」
隊長「どうした?」
伍長「流石にねぇ。人間の子供まで拾ってきちゃダメでしょ」
隊長「……は?」
軍曹「俺も全面的に同意させてもらうよ。家禽ならともかく流石に人はねぇ。しかも要介護者、どこの戦場で拾ってきたか知らないけど放置か、せめて孤児院に連れていくぐらいにしないと」
伍長「あ、言っておくけど私達に面倒見させようとかやめてよね! 自分で面倒見切れないなら拾ってこないって言うのが隊の決まりでしょ!」
隊長「……言っておくが拾ったわけじゃないぞ」
軍曹「……」
伍長「……」
隊長「というかお前たちもあったことのある人物だ」
幼女「どうも、総統の一人娘の幼女です。お久しぶり、お二人とも」
軍曹「……えーっと、ちょっと待ってね。あーやばい、ぜんっぜん思い出せない」
伍長「うーん、総統の娘さんってこんなに小さかったっけ? えーっと、あれよあれ。エアポート自爆テロの時だから……」
隊長「約十年前だな」
軍曹「あーあれか。空港に立てこもって身代金要求中にたまたま中にいた休暇中の警察がやらかして自棄にさせた事件」
伍長「そ、それでたまたまいた総統夫人が亡くなってその娘も瀕死の……世間的には死んじゃってるんだっけ、そういえば」
幼女「はい」
軍曹「あそこからか、あのクソが狂い始めたの」
伍長「ちょっと! 子供の前でそういうこと言わないの!」
幼女「お構いなく。あれ以来父が強化兵を物として扱うようになったのは周知の事実ですから」
今日はここまで
軍曹「あれ? その娘さんって当時初等部だったんじゃ?」
伍長「あの事件で治療のために強化手術受けたんでしょ。見た感じ両方義足右手が義手、包帯してるけど両目入ってないんでしょ?」
幼女「はい」
伍長「うーん、なんで第一強化兵なのに欠損部位付け足さなかったの? それくらいだった自己補填率もオーバーしないはずよ?」
軍曹「自己補填率?」
伍長「え?」
隊長「おい……」
幼女「……」
軍曹「えっ、知ってなきゃ駄目だったのか?」
伍長「当たり前でしょうが! 死ぬわよ」
軍曹「んな、大袈裟な」
隊長「いや、本当だ。俺達強化兵は元の身体の割合が低くなるほど神経の伝達にラグが生じるようになる。それがある値を超えると死ぬぞ」
軍曹「マジで!? 俺もう半分くらい移植品なんだけど」
伍長「体積じゃないのよ。特に末端、手足全部替えても一割程しか減らないし、逆に心臓一個で二割近くあるし」
軍曹「へぇ、あっ脳は?」
幼女「脳は代用がききません」
軍曹「……」
隊長「自分よりいくつも若い奴に言い負けるな、アホ」
軍曹「ちくしょー!」
伍長「……話戻していい?」
隊長「あぁ」
幼女「父が嫌ったんです。他人の身体が混ざるのが」
伍長「あぁ。よくある」
隊長「どうする? もう総統もいないし手術してもいいと思うが」
伍長「無理よ」
隊長「なぜだ?」
伍長「時間を置いた破損部位は癒着が起こりにくいのよ。そこを削っても削った場所までしか、その先は壊死するらしいの。実は第二世代以降は常識らしいわ 」
隊長「そうか……」
幼女「すみません」
伍長「あなたが気にすることじゃないわよ」
伍長「ところで、さっきなんか聞き流しちゃいけないこと聞いた気がするんだけど?」
軍曹「?」
隊長「あぁ。まだ未公表だと思うが総統を殺してきた」
軍曹「マジで!?」
伍長「あー……とうとうやったのね」
隊長「奴が俺達との決まりを破ろうとしなければこんなことにはならなかったさ」
伍長「隊長」
隊長「なんだ?」
伍長「あいつ、私達を復役させようとしたの?」
隊長「まぁな」
伍長「あー!」
隊長「!?」
幼女「だ、大丈夫ですか?」
軍曹「うん、まぁ言いたいことは分かるわ。とりあえずテレビな」 pi
隊長「テレビってな……おい、どうして総統邸が映ってるんだ?」
軍曹「いやまぁこんなこともあろうかとね」
伍長「待ちなさい。スイッチは私が押すわ」
軍曹「はいよ。お好きにどうぞ」
伍長「あぁっ、あの馬鹿野郎!」 グシャ
ドンッ
伍長「……ふぅ、サイッコー」
軍曹「晴れた?」
伍長「……まぁまぁってとこね」
隊長「ビルの解体作業じゃないんだぞ。どこにあんな量の火薬仕込んでたんだよ……」
軍曹「こういうときのためにね。基礎部分に仕込んでたから隊長にも気づけないよ。気付かれても困るし」
伍長「そういうこと。で、これからどうするつもり?」
隊長「あぁ、まずうちの隊員を全員集める」
軍曹「……」
伍長「……」
幼女「?」
隊長「……どうかしたか?」
伍長「二つほどね」
軍曹「奇遇だな、俺も同じ数だけ思うところがある」
隊長「なんだ?」
伍長「一人絶対合いたくない馬鹿がいるのよ!」
軍曹「まじであいつに会うのだけは勘弁したい。ここ十年ようやく平和に生きてきたんだ。あいつと一緒にいるくらいなら一人で大規模戦場を鎮圧するほうがましだね」
隊長「そこまで嫌うか?」
伍長「隊長は階位が上だから問題ないのよ! あいつ、軍隊だからって下には無茶ばっかりさせて!」
軍曹「そういうわけであいつはぶこうぜ、な?」
隊長「……考えておく。で、もうひとつは?」
伍長「うん、申し訳ないんだけどさ……」
隊長「……」
伍長「……残り三人のうち、狙撃手はもうこの世にいないのよ」
隊長「!?」
軍曹「言いたいことはわかるけどさ、マジなんだよ」
隊長「まさか……おい……」
伍長「死因は交通事故。時期はね、ちょうど入隊一年目よ」
隊長「……」
軍曹「……」
伍長「……」
幼女「……その方は大切な人だったのですか」
隊長「いや」
軍曹「うん、別にいらん」
伍長「ていうか隊が解散してから入隊ってなんなの? 私顔も見たことないんだけど」
隊長「実は俺もだ。助手から新たに第一強化兵を作ったから入隊させてやってくれって押しつけられたんだが、それが五年前。本人も戦争したいってわけじゃなかったからとりあえず役目だけ与えて自由にさせてたんだが……」
軍曹「実験のあまり押しつけてくんのやめてくれねぇかなぁ、助手ちゃん。そういえばなんて役目振り分けたんだ?」
隊長「決まってるだろ。一年以上生き延びてくれ」
軍曹「oh……」
伍長「もうそれ自体フラグじゃない……」
幼女「話が良く……」
軍曹「あぁ、うちの隊には六つ役職があって、隊長、副官、工作索敵兵、突撃兵、制圧兵。最後に狙撃手なんだがなんでか狙撃手だけ一年以内に死んじまうんだよ」
伍長「なんでかしらね?」
隊長「俺が聞きたいわ」
軍曹「戦場じゃなきゃいけると思ったんだけどなぁ」
隊長「あぁ、まったくだ」
伍長「流石に次は役職新設してあげましょうよ」
隊長「いや、新人って役職も用意してるぞ?」
伍長「なにそれ?」
隊長「とりあえず皆の補佐」
軍曹「……適当すぎない?」
隊長「実際五人でどうにか回ってるんだからいいんだよ。なのにどっちがいいって聞くとすべからく狙撃手でって言いやがる」
伍長「誰だって役割ありと雑用じゃ、前者がいいに決まってるでしょうに……」
隊長「そこは慣れない部隊配属から雑用選ぶような謙虚な人間じゃないほうが悪いと思うぞ」
軍曹「手柄立ててこその人間に無茶言うなよ!」
隊長「まぁそこは今後に期待しよう。第一強化手術なんてハイリスクローリターンなことする奴はそうそういないだろうしな」
伍長「まぁ隊員集めはいいとして、それからは?」
隊長「そのころには俺が国家反逆罪で指名手配されてるからとりあえず今ある拠点を渡り歩いて助手のところまで行くことか」
軍曹「おー整形するのか?」
隊長「整形というより改造に近いな。ちなみに全員だ」
伍長「ちょ、なんでよ!」
隊長「まずもって俺が指名手配されれば隊員全員指名手配されるからな。街にいる強化兵なんて本当にごくわずかなんだ、職質されてPD(パーソナルデータ)抜かれるだけでそこが戦場になる」
軍曹「そうなると残りのメンバー拾いながらセーフハウスに移っていくことになるな」
隊長「助手のところでPDを変えればもう自由だからな。それまでの辛抱だ」
伍長「で、PDはどこまで変えるのよ?」
隊長「表面的な遺伝情報に生体データ、あとは身長、外見を少しいじる」
軍曹「質問でーす。イケメンになってもいいんですか」
隊長「あぁ、助手がやってくれるならな」
軍曹「oh……」
伍長「諦めなさいあの子のセンスに任せたら奇形になるわ」
幼女「すみません」
軍曹「おう、どした?」
幼女「そこに行くまでに私が邪魔になるはずです」
伍長「そう?」
隊長「うーん。幼女、君の生存を知っているのはどのくらいいる?」
幼女「メイドに幾人かの使用人だけかと思いますが」
隊長「副総統には?」
幼女「いえ、知られては父が権威の陰りになると厳重に」
隊長「俺たちと同じか……」
伍長「メイド?」
幼女「私を屋敷の外に逃がす手伝いをしてくれた人です」
軍曹「へぇ、なら平気じゃね? 見方なんだろ?」
隊長「たぶんな」
軍曹「なら飯でも食べてゆっくりしながら考えようぜ。そろそろさっきやっちゃったことの特番始まるころだろうし」 pipipi……
TV『――とうを殺害したとされる指名手配犯、隊長と呼ばれる人物についての続報が入ってきました。先ほど起きた総統邸爆破テロはその隊長の元隊員が関与しているとのことです。また十年前のエアポート自爆テロ事件の際に亡くなられていたと思われていた総統閣下の一人娘、幼女様がその隊長という人物によって拉致監禁されていたことがこのたび幼女様の世話をしていた人物の証言により判明されました』
メイド『総統閣下は、あの人に脅されていたんです! 幼女様を盾に! どうか、どうかっ、幼女様を御助けに、総統閣下の敵をお願いしますっ!』
TV『なお現在総統代理として副総統がこのテロに対し、火急速やかに対処し、ことの究明に努めるとのコメントを――』
隊長「……」
伍長「……」
軍曹「……」
幼女「……」
今日はここまでかもね
ダダダダッ
伍長「隊長!どうする!?」
隊長「次のセーフハウスまではどのくらいだ!?」
伍長「三十キロ! 撒かないとその次までもたないわよ!」
隊長「わかった。軍曹!」
軍曹「なんでしょ!?」
隊長「副官、工作兵の状況はわかったか!?」
軍曹「副官はこっちに向かってるらしいが距離がありすぎる上に向こうも襲撃されてる! 工作兵はサウスパークのセーフハウスに隠れてるってよ!」
隊長「サウスパーク!? 国境間際になんで!?」
伍長「カジノ!」
隊長「は?」
伍長「カ・ジ・ノッ! ギャンブルキングなのよ!」
隊長「なんだそれは!?」
軍曹「詳しくは後で! とにかくあいつは安全だから! それよりもうトラップが尽きる!」
隊長「だから一気に整備に出すなって言ってるだろ!」
伍長「安いのよ!」
隊長「主婦かっ!?」
伍長「主婦よっ!」
隊長「……各員装備の報告」
軍曹「こちら軍曹ワイヤー三本に鉈、投石が八つ」
伍長「こちら伍長ナイフ二本包丁三丁ハンドガン一丁」
隊長「了解……すまんな、こんなに早く問題が起きるとは。きつくないか?」
幼女「私は大丈夫です。それより私を背負いながらでも大丈夫ですか?」
隊長「問題ない。普段の半分位しかないから身軽過ぎて調子が狂う位だ」
伍長「なんかいい雰囲気のとこ悪いけどどうするか決めて!」
隊長「敵は第二世代が二十強。足止めも効果薄い。幸い山中だ、三方に進み互いに定距離保ちつつ隠れながら前進、方位の中に入った奴から潰していけ」
伍長「了解!」
軍曹「了解!」
隊長「あと伍長、後で強化訓練な」
伍長「ふぁ!?」
兵士「……止まれ」
兵士「どうした?」
兵士「……静か過ぎる。待ち伏せされてるぞ」
兵士「……どうする? 一度合流するか?」
兵士「いや敵が散ってるとも限らん。相手はたった三人だ、遅れ――」 ザシュ
兵士「なっ!?」 カチャ
ブチ
隊長「……よし、集合」
軍曹「うーす。おう、完全に頚椎引きちぎってんね」
伍長「はいはい。さっさと鉈回収してよね」
隊長「伍長、VITD(生体情報転送装置)にハックかけてくれ」
伍長「どんな動きにする?」
隊長「とにかく走らせろ」
伍長「了解」
隊長「軍曹、武器のセキュリティの解除は?」
軍曹「両方とも終わってるよ」
隊長「作業終わり次第伍長に片方わたせ。ここから全力で撤退する」
軍曹「ん、迎撃は辞めたん?」
隊長「あれは敵が俺たちのことを知っている正規兵だったらを想定してたからな。装備も兵練も二流。まずもって俺達にツーマンとか喧嘩売ってるとしか思えんからトラップだけで充分撒ける」
軍曹「でも、それならならやっちゃええやん」
隊長「こいつらは近くにいただけの寄せ集めだ。それが直ぐに全滅となれば正規軍の出が早くなる。適当に泳いでもらわないと困るんだよ」
軍曹「へぇ、そんなもん?」
伍長「そんなもんよ。はい、適当なところまでいったら重体になるようセットしたから早く逃げましょ」
隊長「あぁいくぞ!」
伍長「……」 カチャ
……
伍長「……」 コン、ココン
……ココン、ココン
伍長(中、仲間。侵入、続け) ブンブン
隊長(了解) コク
伍長「……」 カチャ
………
伍長「……」 コツ、コツ
……
???「後ろだ」
伍長「!?」 バッ
………
伍長(いない!? あっ――)
???「カセット音と肉声の違いはまだわからんか」
伍長「無茶言わないでよ、副官。出来るわけないでしょ」
副官「できなきゃ死ぬだけだ。降りるからどいてくれ」
伍長「はーい」
副官「ふぅ……隊長は?」 スタッ
隊長「ここだ」
副官「隊長……そ、その背中の荷物は?」
隊長「……護衛対象?」
軍曹「いや、俺に同意求められても困るわ」
副官「どこの孤児かはしらないけれどその場に戻してきた方がよろしいかと思います」
隊長「なんで皆捨て猫拾ったみたいな反応なんだ?」
伍長「普段の行いのせいじゃない?」
軍曹「同意」
隊長「まぁいい、事の次第は理解しているか?」
副官「はっ。また無茶しましたね」
隊長「あぁ、すまん」
副官「いえ、同じ状況なら同じことをしたでしょうから。せめて先に一方貰えれば遠隔で仕込んでおいたライフルで止めをさせたのですが、まぁ爆破したので気分は悪くはないです」
隊長「お前も仕込んでたのか」
副官「いずれ敵になるなら排除出来る状況をつくらない馬鹿などいません」
隊長「あー出来るいい部下をもって幸せだ。さて、その総統の娘がこの子だ」
副官「ふむ……」
副官「隊長……そ、その背中の荷物は?」
隊長「……護衛対象?」
軍曹「いや、俺に同意求められても困るわ」
副官「どこの孤児かはしらないけれどその場に戻してきた方がよろしいかと思います」
隊長「なんで皆捨て猫拾ったみたいな反応なんだ?」
伍長「普段の行いのせいじゃない?」
軍曹「同意」
隊長「まぁいい、事の次第は理解しているか?」
副官「はっ。また無茶しましたね」
隊長「あぁ、すまん」
副官「いえ、同じ状況なら同じことをしたでしょうから。せめて先に一方貰えれば遠隔で仕込んでおいたライフルで止めをさせたのですが、まぁ爆破したので気分は悪くはないです」
隊長「お前も仕込んでたのか」
副官「いずれ敵になるなら排除出来る状況をつくらない馬鹿などいません」
隊長「あー出来るいい部下をもって幸せだ。さて、その総統の娘がこの子だ」
副官「ふむ……」
幼女「幼女です。父が迷惑をかけ申し訳ありません」 ペコ
副官「それであなたを責めるのは筋違いです。あなたも被害者であるから」
幼女「でももう唯一の肉親です」
副官「関係ありません。それより隊長、これからどうしますか?」
隊長「サウスパークに行く」
副官「了解です。ヘリをチャーターしておきましたので向かいましょう」
隊長「助かる」
伍長「なんでそんなもの持ってるのよ?」
副官「命令だ。揃えられる限りの移動手段を用意すること。不確実だが宇宙までいけるぞ」
伍長「不確実って……使わないで済むようにしないと」
副官「まぁ今回のミッションは楽だからな。まず使わないだろう」
軍曹「そうなのか? 世界中から狙われるお尋ねものなんだろ、俺たち」
隊長「だがここまで来れば万が一ほどしか状況は悪化しないしな」
副官「ええ、ではその万が一を引かないようすぐ出立しましょうか」
軍曹「はーい」
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません