響「映画『風立ちぬ』を観てきたぞ」 (22)
※映画『風立ちぬ』のネタバレを含みます。
春香「あ! 響ちゃんも観てきたんだ」
響「うん。貴音とね。春香も観たの?」
春香「私は千早ちゃんと観に行ったよ! すっごく良い映画だったよね!」
響「う~ん……まあ、良かったといえば良かったんだけど……」
春香「?」
響「なんかさ、主人公の二郎が菜穂子に対してちょっと冷たいかなって……」
春香「え? なんで? すごく奥さん想いじゃなかった?」
響「いや、それなら普通に山の病院に帰してあげた方が良かったんじゃないかな……」
春香「あー……でも二人はあれでしょ、残された時間が少ないからって……」
響「まあもう死期が近いとかなら分かるんだけどさ、あの段階だとまだそうともいえなかったんじゃない? だからこそ治療してたんだろうし……」
春香「うーん……」
響「自分だったら……やっぱり好きな人には少しでも長く生きてほしいって思うけどな」
春香「でもそれだとさ、本当に年に数回とかしか会えないんじゃない? 二郎さんってすごく多忙そうだし」
響「それはそうかもしれないけど」
春香「年に数回しか会えない状態で十何年生きるのと、ああやって短い間でも一緒に暮らせるのとだったら、一概にどっちが良いとはいえないんじゃないかなあ」
響「うーん……でもちゃんと治療して病気が治ったら、その後は文字通りずっと一緒にいられるわけだし」
春香「でも絶対に治る保証なんてないよ」
響「うーん……」
春香「それに、綺麗な時だけ見ていてほしいっていう菜穂子さんの気持ちも、すごく分かるし」
響「あー……自分はそこもちょっと気になったぞ」
春香「え?」
響「だってそれだとさ、まるで綺麗じゃなくなったら見てもらえないみたいじゃないか」
春香「いや、そういう意味じゃないと思うけど……」
響「でも、少なくとも菜穂子はそう思ってたんじゃないの? だからこそ最後は二郎の元から去ったんだと思うし」
春香「そこはまあ、女として少しでも綺麗な自分を見せたいっていう……」
響「でも病床に伏せってるのに毎日化粧なんて……ちょっと普通じゃないぞ」
春香「うーん……」
響「あとさ、病気の菜穂子の隣で煙草を吸うのはいくらなんでもないと思うさ。いくら菜穂子がそうしてって言ったからって……」
春香「あー、まああれは確かにちょっと……って思ったかな。まあでも菜穂子さんはその頃からもう覚悟してたのかもしれないし」
響「んー。まあそこはそうだとしても、なんか全体的に、菜穂子が都合の良すぎる女として描かれてるように思ったんだよね」
春香「響ちゃんは意外に毒舌だねぇ」
響「まああくまで自分はそう思うってだけだけどね。だから春香のように思うのも全然良いと思うさ」
春香「私はまあ……そうだね、そこまで深く考えてなかったってのもあるけど」
春香「でもやっぱり、私は二人の恋愛描写は良かったって思うな。確かに響ちゃんが言うように、やりようによってはもっと長く一緒にいられたのかもしれないけど……」
響「…………」
春香「でも二人はあのとき、あの瞬間に、ああしたいと思ったから、ああしたんだよ。だから、それで良かったんじゃないかな」
響「……ん、そだね」
春香「たとえるならそう……『じゃあいつやる? 今でしょ!』みたいな!」
響「……流石にもう古いぞ、春香」
春香「のヮの;;」
ガチャッ
やよい「こんにちはー! 春香さん! 響さん!」
春香「こんにちは、やよい! 今日も一段と可愛いね!」
響「はいさい、やよい! 今日も思わず持ち帰りたくなるような可愛さだなー」
やよい「二人とも、何のお話してたんですか?」
春香「今やってる映画の『風立ちぬ』の感想を言い合ってたんだよ」
響「やよいはまだ観てないか?」
やよい「あ、『風立ちぬ』なら私も伊織ちゃんと観ました!」
春香「あ、やよいも観てたんだ!」
響「じゃあやよいはどう思った? 二郎と菜穂子の恋愛描写について」
やよい「二郎さんと菜穂子さんのですか?」
春香「うん」
やよい「とっても良かったかなーって!」
春香「だよね! 流石やよい!」
響「むぅ……やよいは肯定派か……」
やよい「あーでも、ちょっとわかんないとこもあったかも!」
響「? どのへんだ?」
やよい「えっと、二郎さんと菜穂子さんが結婚式をした後に」
春香「うん」
やよい「菜穂子さんが布団をめくって、『来て』って二郎さんに言ったシーンが、何かよく分からなかったかなーって」
春香「あっ……」
響「あ、ああ……」
やよい「菜穂子さん病気なのに、添い寝とかしちゃだめなんじゃないかなーって」
春香「そ、そうだね。うつっちゃうもんね」
響「やよいは賢いなあ!」
やよい「別に一緒のお布団じゃなくても、お隣のお布団のままでもいいんじゃないかなーって」
春香「うんうん、私もそう思うよ」
響「やよいは賢いなあ!」
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