える「許嫁ですか」入須「ああ」 (29)
える「でも、私達女の子同士ですよね」
入須「そうだな」
みたいな感じでオナシャス
える「親の決めた、それも当人同士が聞かされて居ない許嫁なんて、果たして拘束力はあるのでしょうか…?」
入須「わかりたくもない。ただ…」
える「…ただ?」
入須「千反田家といえば、誰が言い出したか解らないがこの地域の 桁上がりの四名家、無下に誂う理由も探し出せないんだろうな」
>>2
期待
える「そう…ですね…」
える「確かに私の家は、一般的な家庭よりも多少恵まれている事は否定しません」
入須「多少、どころか?あれが」
える「しかしですね!」
入須「お、おお…」
える「そもそも婚姻制度と云う物は恋愛感情抜きにして語られる面では、お家大事の一念において古来から政略結婚や家督制度の崩壊を恐れての婿養子や」
入須「おちつけ」
える「ましてや私と入須先輩は同性です!これは!所謂ムラ社会というシステムを生きながらえさせる為に国家と云う概念に真っ向から立ち向かうという、余りに無謀な判断d」
入須「だから」
入須「落ち着け」
入須「ここ数ヶ月、君を意識的に観察していた」
える「え?ちょ…入須先輩?ちか、近いですよ?」
入須「ふふ…私は元々男性女性という差別化に着いては常々疑問を持っていたんだ…」
入須「私が必要としているもの、欲しているものは、良く言えば手駒であり、悪く言えば道化だ。私の、私だけの」シュル
える「い、入須せん…ぱ…?」
入須「欲しい物は欲しいと言えば全て手中に収めてきた」ハラリ
入須「もっとも、本当に欲しいけれど太刀打ち出来ない物もある、と知ったのは神山高校に入ってからだがな」
える「…え?」
いりすたそ~
入須「千反田、正直に答えてくれ」
入須「キミと、折木奉太朗との関係はどこまで進んでいるんだ?」
える「!?」
はよ
入須「逆に考えるんだ」
入須「何者かが圧力をもってして、豪農「千反田」」家の傍をうろつく害虫…いや、流石にこれは言葉が悪いな、気を悪くしないでくれ」
える「い、いえ…」
入須「つまり血筋を重んじる保守的な権力者、といっても所詮村どまりの権威力だとは思うが、その人物を仮にxとしよう」
入須「xに取って、えるが産まれた事、その後千反田家に男の跡取りが居ない事」
入須「これらから推測するに、欲に溺れた御老体方が導き出しそうな答えはなんだ?える」
える「…それこそ、時代錯誤の政略結婚でしょうか…?い、いえ、私は別にお見合いに対して否定的な印象を持っているとかそういうのでは…」
入須「惜しいな、える」
える「え?」
入須「確かに古今東西、自我の為私利私欲の為に年端も行かない男女を強制的に婚約状態にし、それらをコントロールする事で権限を欲しいままにして来、またそれが成功したケースは多々あるだろう」
入須「ふぅ…『愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ』とはよく言ったものだ」
える「あ、あの…」
入須「申し訳ありませんが、先程から先輩の仰る意味が良く理解出来ずにいます」
入須「ほう?私の知っているえるはそこまで愚鈍では無かったと記憶しているが、私は買いかぶり過ぎていたか?」
える「ご期待に添えず申し訳有りません、としか今は言えません」
える「入須先輩には幼い頃からお目を掛けて頂き、とても感謝しています」
える「また、偶然同じ神山高校の先輩後輩と名れた事、私は、おこがましくはありますが、『お姉ちゃん』とまた再会出来た様な、そんな、他の人に話したら笑われてしまいそうな、甘くて苦い感傷に囚われる時もあります」
入須「お姉ちゃん…」
える「はい!厚かましいかとは思いますが、私にとって入須先輩はお姉ちゃんとお呼びするのが一番しっくりくる間柄なのだと思っています、ですが…」
入須「…」
える「神山高校に入学し、久しぶりにお姉ちゃんの顔を見た時」
える「私は、務めて他人行儀に振る舞う事しか出来ませんでした…」
入須「…んで」
える「え?」
入須「何で昔みたいに話掛けてくれなかったの…?」
える「これは…言い訳になってしまいます、いいえ、言い訳にしかならないのですが」
入須「…」
える「私の記憶の中のお姉ちゃんと、ここに来て初めて見たお姉ちゃんは、まるで別人かと思えるような…上手く言えませんが、それも人間としての成長の結果、若しくは過程なのであれば、過去の存在である私なんかが割り込むべきではないかと思いまして」
入須「違う…」
える「え?」
入須「私の欲しかった答えはそうじゃない」
える「入須…先輩?」
入須「昔みたいにお姉ちゃんって呼んでよ、える」
鬱展開にしたいが無理だ
あと誰かたのむ
入須「そもそも高校に入学した当時のえるはそうじゃなかった」
える「先輩…?」
入須「あの頃のえるは」
える「?」
入須「あの頃のえるは私の知っているえるだった」
える「先輩…」
入須「先輩って呼ばないで!」ガスっ
える「つぅ…」
入須「…ああ、血が出てるな、える、見せてみろ、頭か?」
入須「…これなら命に別状はないな。突き倒した拍子にぶつかったのが後頭部でよかった」
入須「なに、えるの髪は長く美しい、もし縫うとしてもこの程度の傷なら3~4針だし、髪の毛で傷跡も目立たないぞ」
入須「しかし、キミのお陰で少しばかり冷静になれたよ、感謝する」
入須「仮にも女帝の二つ名を欲しいままにする私のとした事が、少し手駒に思い入れをし過ぎてしまったらしい」
入須「…そこまで」
入須「そこまで私はキミを怒らせてしまつまったか?何か言って欲しいのだが」
入須「…ふむ」
入須「沈黙は金、という奴か、流石名家豪農千反田家とご息女、世の駆け引きとやらをわかってらっしゃる」
入須「でもな、える」
入須「私にはそんな駆け引きをしないでいいいんだよ?」
入須「確かにキミと折木君が恋仲だったことに対して腹は立ったさ」
入須「あまつさえ身分の差を物ともせず、君があの馬の骨と結婚をしたと聞いてからは、もう私の世界に色が戻る事は無かった」
入須「けれども、身分の違いを乗り越える事が出来るのなら、性別なんて関係ないだろう?える」
入須「私にはキミが必要なんだ、君じゃなきゃだめなんだ」
入須「私は欲しい物は欲しいといえばなんでも手に入ってきたんだ、手段は問わず」
入須「もちろんキミも」
入須「折木君も」
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