神崎蘭子「私の日々」 (55)

――――夏、渋谷、CG事務所前

木村夏樹「・・・ったく、まだ8時半だっつーのに、どうしてこんなクソ暑いんだか・・・」ブロロ

夏樹「こんな朝はえーのとか、このギョーカイで、あり得ねえっつの・・・」ブロロロ

夏樹(つって、あと待ち合わせまで30分もあるんだよな・・・)

夏樹(アイツがツーリング行きたいとか言い出して、ようやく今日スケジュールが合って)

夏樹(んで、ご当人様はまだ来ておられねえし・・・)

夏樹(て、なんだよ、アタシがめっちゃ楽しみにしてたみてえじゃんか!)

夏樹「・・・ま、自分に嘘付いてもしょうがねえか。・・・・・・暑い。・・・たぶんアタシが悪いんだな、これは・・・」ブロロロロ・・・

ミカヅキモ キレイダヨネー♪
夏樹(ん、アイツからメール、か。今いったいどこをほっついて・・・)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1375018836

多田李衣菜『なつきち、ごめーん!ほんとごめんね!ドタキャンになっちゃうんだけど、今日仕事が入っちゃってさ・・・
今日ホント楽しみだったんだけど(ガチでフル装備用意してたからね!)、なんかアメリカンなロックスターのスケジュールが合わなくなって、歌番組の収録が今日になっちゃってね・・・
プロデューサーもホント急に言い出すしさ。あとでなつきちのプロデューサーさんにも話して埋め合わせもしてもらうから、ホントゴメン。
ロックスターさんのサインももらっておくからさ!そう!世界がうらやむロックスターと、和風のロックアイドルリーナの夢の競演なんだぜ!ウッヒョー!』

夏樹「・・・途中でハナシ変わってんじゃねえか」ブロロ

夏樹(ま、普通に考えりゃその「海外のロックスター」サマだけ別撮りすりゃいいんだろうけど、アイツのプロデューサーも気を回してくれたんだろうな・・・)

夏樹(そんなご対面たぶん一度きり、んでアタシとは結局いつでも会えるんだからな、だりー。ったく、仕方ねえなあ・・・)

夏樹「・・・ということで、クソ暑くてクッソ暇なアタシがひとり取り残されると。ったくどうしようk」ブロロ・・・

神崎蘭子「・・・ぁ、あ、あ、あのッ!!!」

夏樹「うおィ!ら、蘭子か・・・」ブロロロロ・・・

蘭子「わ、煩わしい太陽ね!」

夏樹「あ、あぁ。おはよう、なんだっけ、か?お前の中じゃ」

蘭子「然様♪さて、爾来鳴動す其が轟きは何ぞや・・・?」(そうなんです♪ところで、さっきから鳴ってる音が気になって来たんですが・・・?)

夏樹「(と、とどろき・・・)あ、なんだごめんな、うるせえよな。エンジン止めるよ。これが、アタシのバイクな」

蘭子「は、鋼の駿馬・・・!而してその聖名は?」(バ、バイク・・・!なんて言うバイクなんですか?)

夏樹「(姓名、じゃねえよなたぶん・・・)えっと、このバイクの名前なら、カタナってんだ、スズキのカタナ。もうかなり前に生産終わってて、とっくに中古なんだけど・・・」

蘭子「カタナっていうんですか!すっごいかっこいい!・・・ハッ!こほん。」(聖剣<エクスカリヴァー>と申したか!俗隷には過ぎたる名ぞ!・・・ハッ!)

夏樹「ははは・・・。(素になるほど食いついてきたな・・・)ま、地元の先輩に譲ってもらってさ、いろいろカスタムもしたんだぜ?マフラー、ここな?これもヨシムラっていう・・・」

蘭子「然様であったか・・・。この大魔の摂理をもて、其が神髄を訴求するに能わずと雖も、其が真貌を睥睨するには足りぬべし♪然れども、何故其が赫き鉄騎を・・・?」
(そうなんですか・・・。私にはよくわからなかいんですけど、さらに改造するだなんて、かっこいいですね♪そういえば、どうしてそのバイクをここに・・・?)

夏樹「(前半なにいってんだか全然わかんねえ!)え、っと、なにゆえ、どうして、このバイクを?ってことか?」

夏樹(ひとに話すことじゃないかもしれねーけど、まあドタキャンされた分くらいのグチなら許してくれ、っての)

夏樹「・・・一年、こないだ大型の免許とって一年、になったんだよ。んで、だりーと話しててさ、出会った一年半前と比べて、ずいぶん忙しくなったな、って」

夏樹「ふたりでフェス出たりさ、色々あって・・・みたいなこと話してて、そういや大型とったのは一年前だった、って話になってさ」

夏樹「したらだりーのヤツ、いきなり目の色変えて、アタシの両肩つかんでさ・・・」

李衣菜『一年経ったの!?・・・ウッヒョー!そしたらなつきち、もうタンデムが出来るようになったってことじゃん!タンデム!
タンデム、イージーライダー、マジロック!ほ、ほら、ねえなつきち、このロックアイドルリーナ様をタンデムしてもいいんだよ!?私もロックでなつきちもロック、ロックが二倍!いや、タンデムもあわせて200倍だあぁぁッ!!(・・・決まった!)』

夏樹「・・・タンデムっていうのはバイクの二人乗りのことな。そういえば法律で、二人乗り出来るのは免許を取って一年経って、なんだよ。アイツ乗れもしねえのにそんなこと調べてたんだよな・・・」

蘭子「・・・因果は吾が揺籃の中にありて」(・・・だいたい事情がわかってきた気がします。)

夏樹「ま、アタシも拓海や美世、最近じゃ里奈なんかとも何度かツーリングしたし、それ聞いてか前々からアイツも行きたがってたからな・・・」

夏樹「というわけで、あの売れっ子アイドルさんとスケジュールすりあわせてさ、今日って約束だったんだけど、アイツに急な仕事、とやらで、さ」

蘭子「慙愧の念を禁じ得ず・・・」(それは残念でしたね・・・)

夏樹「だからアタシは無駄足踏んじゃって、朝っぱらから暇!って訳だよ。
つーか、蘭子はこんな時間に事務所でなにしてんだ?オフ、だよな、珍しく制服着てるし・・・」

蘭子「然様なりや、私はひさかたの遠きアヴァロンの泉に身をやすらえて、しかれどなかなかと吾が聖躯を置きがたき襦児の煉獄を吾が魔に侵させんと赴いたが・・・」
(そうなんです、久々におやすみをもらって、最近はなかなか学校にも行けてなくて、楽しみだなあ、なんて思いながら向かったんですけど・・・)

蘭子「門はかくも堅きアルテミスの禁呪にありて、聞けば天(あめ)落つる刻なりやと。サンクチュアリは未だ聖縛の中にて、主の約束の地は即ち魔窟なるかと・・・」
(そしたら校門が閉まってまして。用務員さんは「もう夏休みだよ」なんておっしゃるし、おうちには今更恥ずかしくて帰れなくって・・・それで仕方なく事務所に。)

蘭子「ゆけば蠢動するマキナの軋み・・・何事かと寂庵を出れば汝が影ありて!」
(そしたら工事みたいなすごく大きな音がして、どうしたのかな、と様子を見に来たら、夏樹さんがいたんです!)

夏樹「へーぇ。大変だったんだね。(いつもに増して何いってんだかわかんねえよ!とりあえずオフではあるのか?)」

蘭子「うむ。さては汝よ・・・この醜態を晒したままむざむざと帰投すると?」
(ええ。ところで夏樹さんは・・・もうこのままお帰りになるんですか?)

夏樹「(ちょっと分かりやすくなったと思ったらなんか罵倒されてるっぽいんだけど!?)・・・ん、まあ、用もないしな。」

蘭子「抑々、汝らはどこへ赴かんと?」
(・・・あの、どちらへ行かれるご予定だったんですか?)

夏樹「・・・箱根。今は緑もキレイだしちょっと涼しいし、アイツにも一度みせてやろうかな、ってさ。」

蘭子「かくも険しき函谷関へ!げに恐ろしきは深淵なるか!・・・其が供物、聖俗はいかんぞ?」
(箱根ですか!いいですね!・・・その荷物、中を見ていいですか?)

夏樹「え、あ、うん・・・うぉッ!勝手に荷物開けるなよ!」

蘭子「汝がうべなえじことよ・・・これは!堕天の漆黒衣!宵闇の静謐なる使者<ヘラルド>!」
(いいって言ったじゃないですかぁ・・・なんですかこの真っ黒な革のお洋服!かっこいい!)

夏樹「うわぁッ!何広げてんだ!お前さっきからいい加減なに言ってんのかわかんねえよッ!・・・あっ」

蘭子「・・・」シューン

夏樹「ご、ごめんな・・・?蘭子の個性を悪くいうつもりはなかったんだよ・・・。えっと、それはライダースーツってヤツな。
だりーのヤツ、バカだから持ってこないかもしれないし、念のため持ってきたんだけど・・・」

蘭子「・・・」ギュー&ジーッ

夏樹「もしかして、着たいのか?」

蘭子「・・・」コクリ

夏樹「暑いだろうに・・・まあふだんからあんな格好なら大丈夫だろうけど・・・。・・・ていうかもしかしてバイク、乗りたい?」

蘭子「・・・・・・うん。」

夏樹「・・・はぁ」

夏樹「おーい!蘭子ー!もう着替えたかー!?入ってもいいかー!?」――――しばらくの、事務所内にて

蘭子「許可する。合い言葉を述べよ。」

夏樹「ねえよそんなものッ!いいから入るぞー」ガチャリ

夏樹「・・・やっぱ、黒系は様になるな、さすがだわ。」

蘭子「ふ、ふん!」(えへへ・・・)

夏樹「こっちも準備出来たし、ほら行くぞ!」

蘭子「・・・・・・ふぇっ!」

夏樹「ん?どーした?」

蘭子「些事にも非ず・・・」

蘭子(はじめて、手を握られちゃった・・・プロデューサーさん以外に・・・)

蘭子(夏樹さんって背丈もそんなに私とかわらないし、プロデューサーさんよりずいぶんちっちゃい手だなぁ・・・)

蘭子(私は、・・・どこかへ連れてってもらうのかな、もらえるのか・・・わからない、のだけど)

蘭子(・・・あのひとだって、わたしにはまだ、わからないよ。)

夏樹「さっきからそんなうつむいてんなってば・・・はい、エレベータ降りるぞ」

夏樹「アタシはバイク取りに行ってくるからさ・・・ちょっと入り口で待ってろよ、じゃな」

蘭子(あっ・・・。手、離されちゃった・・・)

蘭子(ずっと握ってて欲しいわけじゃないけど、ね、・・・私のわがまま・・・)

蘭子(みんな、私だけじゃない、忙しくて・・・私もいい加減、ひとりで自信を、持たなきゃ、な)

夏樹「おーい、・・・まだうつむいてんのか?前見てねえと危ねえぞ、いろいろと」

蘭子(前見てないと、か・・・そうだよ、ね。前を向いていないと、わからないし、きっとわかってもらえない)

蘭子(私はアイドル、みんなが見てる・・・夏樹さん「は」、私の言うことをわかってないみたいだけど・・・)

蘭子(・・・それでも少し、甘えちゃおう。)

夏樹「おーい。蘭子ーぉ、おーい?」

蘭子「えいっ!」

夏樹「おおぅ、いきなり飛び乗んのかよ!」

蘭子「濫觴への拘泥、夫れ激瀑を手に抱くがごとき愚行ならずや!いざ気高き函谷関へと我を誘えッ!」
(いつまで事務所にいるつもりですか?まだ行かないんですか?もう行っちゃいましょうよ!箱根!)

夏樹「あ?・・・やっぱ相変わらず何を言ってんのやらさっぱr・・・うおっ!?」

蘭子「・・・吾が聖躯をゆめ彷徨せしむことなかれ、さもなくば吾が神魂<マナ>も俗世を離(か)れぬ!」
(・・・つよくつかまってないと、落ちちゃうじゃないですか)

夏樹「・・・ん。ああ、今度はなんとなくわかったから、とにかく、強くつかまっとけよ。じゃ、行くからな。」ブロロロン・・・

ブロロロロ・・・
――11:00、神奈川、どこか、ながい道

夏樹(んー。割と来たなぁ。未成年は、二人乗りだと高速走れないんだよな、一応守ってるからなげーったらもう)

夏樹(アタシもタンデムするのはじめてだし、・・・いくらタンデムする子に年齢制限はないとはいえ、よそ様の子、)

夏樹(っつーかうちの事務所の紛れもないエースだからなぁ・・・。蘭子は。やっべえ、今更になって緊張してきた・・・)

夏樹(安全運転、ああもう絶対この子は、守ってやらないとなぁ・・・)

蘭子「ゆけい!駆けよ大汗馬<フェルガナ>!翔べブケファロス!我、なお蒼天とともにあり!」キラキラ

夏樹(慣れてきたんだか、本人はこんな調子だがな。ホントに何を考えてるんだか・・・)

夏樹(・・・だりーに似てる、なんて思っちゃだめ、だな、なんか、かわりのものにしてるみたいになるから、な)

夏樹(こいつはこいつ、アイツはアイツ。ついでにアタシもアタシなんだよ・・・)

ブロロロロ・・・ブロ
夏樹「はーぁ。」

蘭子「如何した?雲井なる高天原には我らいまだ届かぬではないか」

夏樹「(わからん・・・)・・・」

夏樹「休憩、だ、きゅーけえ。結構経ったし、ちょうど日陰だしな。トイレとか大丈夫か?」

蘭子「なっ・・・。そ、其の呪はいまだ我を煩わせじ!・・・ただ・・・」

夏樹「・・・ただ?」

蘭子「・・・いえ。」

夏樹「・・・そか。アタシは行ってくるから、ちゃんとここで待ってなよ」

蘭子「・・・うむ。」

蘭子「待ちわびたぞ!・・・む!其はなんなるぞ!ラピスラズリの氷燈・・・?」
(待ってましたよ!・・・ん、なんですか、それ?むらさき色のソフトクリーム・・・?)

夏樹「ここらへんの名物、だってさ。ソフトクリーム。山梨、近いからな」

夏樹「すっげー美味そうだったからさ、金もちょいあるし、買ってきた」

蘭子「・・・」

夏樹「・・・お前に。」

蘭子「・・・ッ!」パアアアア!

夏樹「落とすんじゃねえぞ・・・」

夏樹(ったく、わかりやすいんだか、まるでわからないんだか、訳わかんねーって。・・・だからアイツに重ねちゃダメだっつの)ナデ

夏樹(お子さま、なんだろうな、アタシもだし。それはわかる・・・から、わかんない、ままでいいや)ナデナデ

蘭子「ハムハム・・・」ナデラレニッコリ

夏樹「食い終わって、しばらくしたら・・・行くからな」ナデリナデリ・・・

その1おわり

――――夏の、別の日、渋谷、事務所そば

向井拓海「・・・よっしゃ!これでPの野郎の目は抜け出せたな!」

拓海(少なくとも、昨日アイツがここにいたのは確か・・・!)

拓海(アタシがあれを見逃すかよ!)

拓海(たっぷりと用意してやったのに、こそこそとこのアタシから隠れやがって・・・)

拓海(!)

拓海「・・・見つけたぞ、てめえ・・・ッ!たぁーーっぷりとかわいがってやるからなぁっ!(・・・ザッ)・・・ッ!?」

蘭子「・・・かくも冥き羊水の蔭にて、いったい何事か?」(・・・事務所の裏で、なにしてるんですか?)

拓海(お、終わった・・・)

拓海「・・・ッ、なんもしてねえよ!近寄んじゃねえ!」

蘭子「ひっ・・・ご、ごめ・・・で、でも、かろき阿片に溺るるは甚だ・・・」
(たばこをすったりなんかしちゃいけないんですよ、やめたほ・・・)

拓海「!?、こ、これはアタシと関係ねえぞ!」

蘭子「猫ちゃんじゃないですかッ!!」(闇のみには留まざりし夕暮(せきぼ)をたゆとう眷属!)

蘭子「・・・ハッ!」

拓海「い、いや、これは・・・つーか今お前普通に」

蘭子「かくなる我も時が折りに渺々たる彼岸を垣間見ん、黄昏と闇の間隙にありしもの、ローレライ!」
(ここはちょうど日陰になってて、私もたまに猫ちゃんたちを見に来るんですよ。この子は黒猫のローレライちゃんです♪)

拓海「ロ、ローレライ・・・?」

蘭子「然様、はて、我も汝れが影をグリモワールに刻めり、謁見させることにも吝かにはあらず」
(そうです!そうだ!私この子は絵にも描いてて!見てくれませんか!)

拓海「なんだそのスケッチブック、持ち歩いてるのか・・・ってお前すげえな!うめえな!超かわいいじゃねえか!」

蘭子「ふん!」

拓海「すげえ、柔らけー毛並み、つぶらな瞳、しゅっとした身体つき、まんま生き写しじゃねえか!
さすが、やっぱ蘭子Pのヤツが言ってた、なんだっけ?、ブリュンなんとか・・・」

蘭子「禁忌なる闇の神域!」
(やめてください!)

拓海「怒んなよ!なに怒ってん、・・・だよな?怒ってんなら、いや、けなしたいワケじゃねーから・・・」

拓海「それより、もっと見てえよ!ちょっとそのスケッチブック貸してくれよなッ!」ガシッ

蘭子「・・・きゃっ」

拓海(ちっ、ちょっとイヤな気分にさせちまったみてーだな・・・。あれ?ていうかアタシ、なんでこんなノリノリで猫好きバラしてんだ?)

拓海「・・・いや、スマン。蘭子が、こー、見せたくねーって、ところがあったら、教えろ。な?もっと見てーんだって、蘭子の絵が。」

蘭子「・・・さすれば、赦しを与えようではないか」
(・・・わかりました、見て、くださいね。)

拓海「おう、了解だと受け取っておくな!」ペラッ

拓海「・・・なあ、この猫の絵、右上の日付がさっきの、なんだ、ローレライ?のと一緒なんだけどさ、もしかしてこの辺、他に猫もいるのか?」

蘭子「然様。彼は緑風の此岸を統べしもの・・・、手負いの闘者<バーサーク>、その真名をベッケンバウアーと呼ぶべし!」
(そうです!この子はこのあたりのボス猫ちゃんで・・・、もう傷だらけなのが特徴なんですが、名前はベッケンバウアーちゃんって言うんです♪)

拓海(ベ、ベッケンバウアー!?サッカー、だろ・・・?たしか、昔の。どうしてそこを名前の由来にしたんだよ・・・)

拓海「その、あー、ベッケンバウアー?ここらへん、の猫か知らねえけどさ、蘭子のそのワケわかんねーパワーで、呼べたりしねーの?」

蘭子「容易。ここはもう私の結界よ?さあ、いでよ!召喚(よば)れよ!聖闘士、ベッケンバウアーよ!」
(だいじょーぶです。このあたりの猫ちゃんは私にすっかりなついちゃってますから。おいでー!ベッケンバウアーちゃーん!)

・・テクテク、ニャー

拓海「ホントに来た!しかも絵のまんまじゃねーか!マジでか!」

蘭子「ふふ。かの魔都も、既に吾が掌中にあり、よ。」
(えへへ。このあたりは、ずっと私のひみつきち、だったんですから。)

拓海「・・・?すげーんだな、やっぱお前って。」

――・・・ナデニャー、ニャニャーナデナデ、ナデニャァニャ

拓海「・・・なぁ蘭子、実はアタシ、家から猫の餌もってきたんだけど、お前も、やるか?」

蘭子「・・・餌付け、と?」

拓海「(今のは分かりやすいな・・・)いや、よくねーのはわかってんだけどよ。アタシがルールがどうこういうのも、アレだけど、それでも、さ。」

拓海「・・・だけど見過ごせねーんだよな、手当たり次第ホケンジョに持ってく、ってのは、どうしても。・・・アタシの性にあわねえ。あと、まあ、かわいい、し、な。」

蘭子「・・・。」

拓海「だけどさ、アタシがこれ以上猫飼うほど、ぶっちゃけ金なんかねえし。・・・どうすりゃいいかわかんねえんだよ。」

拓海「だから、まあ・・・。一回くらいのメシはあげても、バチは当たらねえんじゃねえかな?むしろ、もうすぐホケンジョに行くかもしれないコイツらもちっとは浮かばれて、いつかのアタシらも・・・浮かばれる、かも」

拓海「・・・いや、蘭子の猫、なんだろ?、を、いますぐアタシがホケンジョに通報とかする、ってワケじゃなくて・・・。まあいいや、一回だけだ、一回だけ!」

蘭子「・・・御意。汝れの意志、しかと受け取ったわ。」
(・・・わかりました。向井さんの、言うこともなんとなく・・・。)

拓海「バカみてーなその場しのぎくらい、猫にも人間にもできんだから、なら、させてやれってな。・・・おい、ほら、猫缶。」

拓海「お前は、たぶん、その黒猫、ローレライの方がいいんだろ?ならそいつは任せたから・・・」

蘭子「ははははは!皇帝の拝謁を拒めるものなどおらぬわ!・・・って、またしてもそなたは、禁断のグリモワールを・・・ッ!」ナデナデ
(ふふっ、ほんとうはあなたがベッケンバウアーちゃんを気に入ったのでしょう?・・・って、また絵を見るんですか!?)

拓海「(さっきから、ぐれむあーる、ってのが、スケッチブックのことなんだろうな)いや、片手空いてるしな・・・せっかくだし。」

拓海「・・・てーか、あらためて、よく描けてるよ。マジで。繰り返しになるけど、やっぱすげーんだな、お前。なんか呼べるし。呪文で。」

蘭子「・・・恩に着るわ。(・・・魔翌力とかじゃなくて、ふつうにそこにいたから呼んだのだけど、なんだか勘違いされてるのかも、嬉しいけど・・・)」

拓海「・・・さっきから、なんかアタシ、蘭子には教えてもらってばっかりだな。ここのこともずっと前から知ってる、んだろ?他にも、アンタにはなんでも知られてるっつーか、言ってもいいかな、っていうか。」

拓海「正直、スマン、てめえの言ってること、アタシにはさっぱりわかんねーけどさ。・・・いや、ちげーな。わかんねーところだと、わかんないんだな、ってわかったっつーか・・・。」

蘭子「・・・?」

拓海「そのスケッチブックさ、蘭子の説明じゃどんなんだかわかんねーけど・・・。ゲンブツと絵と見たらさ、ぴったりで、すげーかわいくて、すげーな、って思うんだよ。」

拓海「たとえば、単車、バイクな?あるだろ。色白な蘭子には縁のねーもんだと思うが。」

拓海「アタシは単車、乗れるし、つーか乗りこなしてる。ちょっと見れば、どんな車種かもわかる。けど。どーゆーゲンリ?で動いてるかは知らねえ。美世の説明もいつも半分聞き流してるしな。」

拓海「似たようなもんじゃねえのかな、お前の言葉と、絵と、猫。・・・なんで単車が走るのか、アタシの手足みてーなのか、わかんない、知ってるから、すげーんだよ。」

拓海「・・・おっといけねえ。コイツ、すぐスネるのな。・・・はは、やっぱアタシに似てん・・・」ナデナデ

蘭子(向井さん。意外と優しいのは、聞いたことあったけど、やっぱり熱いひとなんだな・・・)

蘭子(正直、私にはよくわからなかったけど。私の手足、じゃなくって、あのとき。ただすがりつくもの、だったしな・・・)

蘭子(けど・・・しくみ、乗りかた、バイクそのもの。って、もしかしたら、私の言葉、プロデューサーさん、私自身・・・?)

蘭子(私の言葉を、わかってくれるだけで、私のことを、大丈夫なの、かな?)

蘭子(私は、普通に、向井さんや夏樹さんは優しいって、わかった、んだよね・・・。)

拓海「思いついたッ!」ガバッ

蘭子「わっ・・・」

拓海「こいつら、うちの事務所で飼えるかどうか、聞いてみねーか?」

拓海「あそこなら涼しいし、メシも金も少しはあるし。みくのヤツとか、あとガキどもの遊び相手もつとまるだろーし。」

拓海「・・・アタシみたいな、はみだしモンも拾ってくれた、ところだから、な。」

蘭子「其はまこと妙案ならずや!吾がグリモワール断章、三篇を見よ!」

拓海「・・・ん?これもうめーけど、まだ猫の絵があったのか?」

蘭子「いでよ、シュヴァルツェンベック!」

トタトタ・・・ニャー

拓海「うおぉい!?」

蘭子「ギュンターネッツァー、レンセンブリンク、ラトー、マッツォーラ・・・」

ゾロゾロゾロゾロ・・・

その2おわり
ちょっとBSで柿谷を見てます

了解です

――――夏、夏祭りの日、花火、渋谷、事務所のなかで

ガチャ、バーンッ

蘭子「闇に飲まれよッ!」(お疲れ様でーす♪)

蘭子「・・・む。俗世を浄化すべき同輩どもは不在、か。」
(・・・あれ。だれもいない・・・)

蘭子「同朋よ、ゆめ薨ることなかれ・・・」
(みんなおしごとかな。早くだれかかえってこないかなー。)

蘭子「・・・・・・」

蘭子「・・・・・・冷房最高ー!」(凍てつく波動よ!)

藤本里奈「ちょりーっすう☆、って蘭子ちん?」ガチャッ

蘭子(あ、どうしよう。あんまり絡んだことのないひとだ・・・)

里奈「やっば、よく考えたらあたしナマ蘭子ちんはじめてかもー!」

里奈「蘭子ちん忙しいみたいだし、あたし新入りだし、この事務所どんだけでかい、って感じだし・・・」

里奈「とりまなんしてーん☆」

蘭子(どうしよ、どうしよう・・・。理解してもらえるのかな・・・、いろいろと。)

蘭子「お、王としての業<カルマ>を取り払い、聖剣を授かりしのち、ま、魔窟に吹ける凍てつく波動に身をやすらえていたのだ!」
(お、お仕事が早めに終わったので、タク券を頂いて、じ、事務所で涼もうかな、って・・・)

里奈「えー☆タク券もらったの?さっすが、売れっ子ってまぢやばいねっ」

蘭子(すっごいばっちり通じちゃってるッ!?)

蘭子「き、貴殿もまた、『瞳』を持つもの、たらんと言うのか・・・?」
(あ、あなたも、藤本さんも、私の言葉が、わかるんですか?)

里奈「うん☆わかるよー。てか、藤本さん、とかじゃなくてー、リナ、とか里奈ちゃん、とかでいいって!」

蘭子(私の中で呼んでるだけなのに!?)

蘭子「で、では訊くが・・・貴女に吾が真言はいかように虚空の残滓として在するのか?」
(じゃ、じゃあ、おたずねしたいんですが・・・里奈、ちゃんには、私の言葉と意味がどんな風に聞こえているんですか?)

蘭子(これはプロデューサーさんにも、きいたことなかったよ・・・)

里奈「敬語・・・。まいっか。なんてかねー、同時に聞こえてくるんだよね。蘭子ちんが口で言ってるのと、ホントに言いたいことが同時に。」

里奈「あたし、すんごいバカだからさー。口で言ってるほうの言葉とか、まぢぜんぜん意味わからんぽよなんだけど、」

里奈「わかる、んだからわかる、って感じ?アレ、自分でもよくわかんない・・・」

蘭子(わかる、からわかる・・・か。でも、そうしたらわからないもの、ってずっとわからないのかな。)

蘭子(夏樹さん、拓海さん、はわからないなりに、わからなくてもなんとかなっていたけれど・・・)

蘭子「さすれば、貴女の漿水は煉獄の釜にていかように湧き上がるのか?」
(なるほど・・・そしたら、里奈ちゃんは、私の本音、がわかっちゃってるとき、どんな風に思いますか?)

里奈「ん?ちょい意味ワカンナいんだけど・・・えっとね、」

蘭子「・・・いや、あのっ、」

里奈「あ、そじゃなくて。あたしバカだからちょっと時間かかって・・・てか、そんな質問した意味がわかんない、的な?」

里奈「ま、あたしなりに答えるよ☆ ・・・えっと、なんか、クヤシいかも。」

里奈「あたしのおな中の子に蘭子ちんのすっごいファンの子がいてね?女の子なんだけど・・・あたしがこの事務所入ったこと教えたらいろいろ教えてくんの。」

里奈「あたしは中学出てからいろいろ忙しくてテレビもあんま見てなかったし?スカウトされた時にタレント一覧とか見せられても、全然まぢわかんなくて・・・」

里奈「んで蘭子ちゃんと同じ事務所?とかその子に聞かれてさ、スカウトされた時に名前だけ聞いたって言ったら、やっば、だって、知らないとか。今一番売れてるから!とか。」

里奈「画像見せてもらって、うわー、確かにメッチャカワイイかも☆とか思ってるとき、めっちゃ語るわけ、とにかく何言ってるかわかんないんだけど、超可愛くて、ミステリアスで、」

里奈「だけど怒ってんのとか喜んでんのとかすぐに顔に出てかわいい!とか。まぢいろいろ語っててさ、盛ってんじゃね?とか思ってて・・・」

里奈「んで事務所入っても、レッスンとか営業とかで忙しくて、・・・なんのハナシしてたっけ?」

蘭子「・・・あ、」

里奈「あ、蘭子ちんが本音がわかるのはちょっとヤかも、ってハナシだったねー。ごめん、まぢ女ってハナシまとまんないから、トーク番組とか出る時にあたし気ぃつけないと・・・」

里奈「・・・ぢゃないって。」

里奈「んと、それでね?それで蘭子ちんの出てる番組とか見れなかったし、取材のヤツとかも漢字だらけだったからバカなあたしは即パスだったし・・・」

里奈「・・・けど、まあ何ヶ月かいるうちにさ、あの子、さっきの子ね?のハナシもゆうて盛ってないかな?ってさ。事務所デカいけど、さすがにうわさ話とかは聞こえてくるし、交流ある子もいるしさ☆」

里奈「だから蘭子ちんとの初カラミ、どんな感じになんだろなーとか思ってたから、どんなフシギな感じに、ブットんでる感じになるんだろうな?ってアガっててさ」

蘭子「かくて、貴女は、沛然たる驟雨に遭いて蒼穹の陥穽に没入した、と?」
(それで、じっさい里奈ちゃんが私にあったら、がっかりしたんですか?)

里奈「がっかりとかじゃないよー☆ ・・・でも蘭子ちんは間違いなくすんごい人気者で、それで蘭子ちんのファンって、蘭子ちんの言ってることわかんないんでしょ?」

里奈「絶対その子たちの第一印象ヤバかったって。強烈で・・・いろんな人がそれにやられてるんでしょ?」

里奈「でもあたしはそうならなかった、わかっちゃうんだもん。ファンの子たちと、一緒のアレは感じられないんだなー、って。ちょいさびしいべ?」

里奈「・・・・・・でも、ぶっちゃけたあたしが言うのもなんだけど、蘭子ちんは気にしなくていいよ、あたしが最後のピザを食べられなかったーっ!ってくらいのハナシだし」

蘭子「・・・ええ。」

里奈「・・・蘭子ちん?・・・」

里奈「じゃ、あたしからも質問☆そーゆーしゃべり方してるとき、どんな感じなん?」

蘭子「え?」

里奈「同じ質問だよ☆あたしもいろいろ答えたし、たぶんリアクション的に蘭子ちんのPにもさっきみたいのは聞いてなかったんしょ?だからきっと、はじめてされる質問。」

蘭子「・・・・・・わ、私は、この、茫漠たる泉より加護と恩寵を得て、昔日には火の國にてシリウスの瞬きを吾がラグランジュ・ポイントに収め、」
(私は、こういうふうにすることで、強くなれているような気がしているんです。今でも着飾ってますけど、昔、熊本にいたころなんかはべたべたにもっと濃くまっしろな化粧をして、)

蘭子「俗世間にかかずらわず、秘匿されしカナアンにて乳と蜜を得て、其は恰も吐血する霊体の如し・・・」
(俗世間にかかずらわず、ひとりでお部屋に籠もってこっそりお絵かきしたりして、というより、ほんとうの自分の上に、かっこよくて、恥をかかない自分をお絵かきしていたんですよ、ずうっと。)

蘭子「其が折りに、瞳を持ちし我が友に見初められ、・・・アイドルとは即ち偶像なりしが、其が黒ミサにて吾が神性を顕現させつ、朋には罪を告解しつつ、更なるペルソナを授けられ、」
(そんなときに、プロデューサーさんと出会ったんです。アイドルって、つまり偶像ってことでしょう?だからライブやお仕事で精一杯自分のカッコいい姿を見せて、恥ずかしさなんかどこかへいって、でも困った時はプロデューサーさんに甘えて、もっとやる気にさせられて、新たな演出を考えてくれるんです。)

蘭子「・・・かくして偶像は金の牛を得て、敬虔なる殉教者を我は屠り捧げて、私は神性をさらに吾が霊体に加えたりしが」
(そうやって、絵に描いた「偶像」はさらに描いた通りのものになって、ファンのみなさんが喜んでるのも力にして、私はどんどん強くなっているんです!)

里奈「ごめん蘭子ちん、もう何回目かわかんないけどあたしバカだからさ、ぐーぞーとか言われてもわかんないんだけど・・・」

里奈「きっと、楽しい、よね。てか、不安なときに、さっき言ってたプロデューサーみたいに、ホントに頼れるのがいたら、楽しい、はずなんだよ?」

里奈「だれかが壊そうとしないと、強いかどうかなんてわからないと思うけど・・・。みんなは蘭子ちんを愛してて、壊そうとすることはないから☆」

里奈「だから・・・したいことを、したいって言うのが蘭子ちんの仕事。ふつうに、楽しかったり、悲しかったり・・・ふつうに、わかることは、わかっちゃうからね。」

里奈「自分のことなら、わかることは多いだろうしさ、わかることがホントにだいたいわかったら、すごいって、あたしは思うな。」

里奈「そしたらすんごい自由になれる。蘭子ちんは自由じゃん。衣装のツバサで自由に飛ぶじゃん。だからもっと自由に、強くなってさぁ。あたしはわかることしかわからないから、バカのあたしも、自分がバカだってわかってて、意外と強いな、ってたまに思う。」

里奈「そだ。蘭子ちん、アド交換しよ?スマホ?ガラケーかあ、じゃ、このバーコードを読んで・・・。」

蘭子「・・・は、はい。わかりました。り、り、里奈ちゃんの、アドレスに、送ればいいんですね?」

里奈「・・・どしたの?なんか無理してない?」

蘭子「いえ、そ、そんなんじゃなくて、自由にしてくれ、って、って、里奈ちゃんが言うので・・・」

里奈「そか。ぢゃ、自由にしてね☆」

蘭子「じ、自由って、ふつうになれるんですね・・・」

里奈「まだちょっと不自然だけどねー、ま、キゴゴロのシレル、って感じ?でいいんじゃない?じゃ、あたし早上がりだから・・・おっつにゃーん☆」

蘭子「お、お疲れ様です・・・」

蘭子(ふう、あんなひと、はじめてだったな・・・)

蘭子(あ、机にプロデューサー用の資料・・・私にイベントゲストのお仕事!?)

蘭子(えぇぇ・・・はじめてだ。そういうお仕事・・・。お電話して相談しないと。)

蘭子(そして、ほんとうに、きっと、自由に、聞きたいことを、聞いてみないと・・・)

TLLLLL・・・

蘭子「ぷ、プロタゴラスの論駁!」(プロデューサーさん!)

蘭子「焦熱の礼、大儀であった。(花火のお仕事、お疲れ様です!)かの聖戦、・・・いや、い、イベントの、お仕事なんですが、その・・・」

蘭子「む、無理してないです!それで・・・ちょっとおたずねしたいことがあるので、事務所に来ていただけませんか・・・?」

蘭子(・・・わからないことがあるなら。)

その3おわり
花火アイプロ蘭子エクストラプロデュースへ続く

――――夏、渋谷、CG事務所内、おまけのような

パタン

李衣菜「はぁー。」

モバP「どうしたよ、李衣菜?携帯見ながらため息とか、運勢とか悪かったのか?今日。」

李衣菜「そんなんじゃないってー、です。」

P「さっきまですっごいテンションだったでしょ・・・。いや、やっぱり、今日はなんか予定いれてたのか?」

李衣菜「そーですよっ!今日はなつきちと初ツーリングの予定だったんですよ!ロックスターに会えるのは嬉しいですけど、嬉しいですけど、うぅぅ・・・。」

P「あ、それはすまなかったな・・・。あとで夏樹ちゃんのプロデューサーさんと折衝しなきゃな、セッションの時みたいに。」

李衣菜「あ、そうだプロデューサー!私ついにスメルズ・ライク・ティーン・スピリットのイントロ、弾けるようになったんですよ!」

P「おお、あのニルヴァーナの?(・・・そして、初心者御用達の?)」

李衣菜「ふっふっふ、ニルヴァーナじゃなくてナーヴァナなんですよ?本場じゃ。ついで、カートコバーン、じゃなくてコベインなんです。まったく、プロデューサーはロックじゃないんだから・・・」

P「・・・お前、いつもに増してニワカ臭いぞ、それは。」

李衣菜「ええ!だって、一般的にはこう呼ばれるけど現地ではこれがただしい、ってWikipediaに書いてありましたよ!?正しいのににわかなんですか!?」

P「あのね、なにが正しくて、なにが間違ってるとかじゃないんだよ、「わかってる」、っていうのは。それにぶっちゃけその程度の知識、わりとみんな知ってるんだよ。」

P「オアシスがオエイシス、だとか。うちの事務所のキャシーがグラハムじゃなくてグレアム、だとかね。」

P「それでも、話し相手の常識、知識にあわせるように、もちろん相手のことなんて本当はわかんないんだけどさ、けどね、いや、だからこそ、一般的なことばを使って、それでいて少しのオリジナリティを加えるのが、「わかってる」ヤツのすることなんだよ。」

P「だからそうやって、知ってることをひけらかすような言い方は一番いけない。しかもほとんど常識みたいなモンをだぞ、マヌケすぎるわ。」チョップ

李衣菜「いったあ!いつもそんなひどい言い方しないのに今日はひどい!暴力反対!」

P「こんな威力で痛いわけないだろ・・・。はあ、今日のお前のにわかはちょっとタチがわるいそれなんだよ。」

P「何かがわかっていて、それをひとに示すことで優位に立とうとする。見下そうとする。そんなんダメだ、ロックじゃねえ。」

P「これまでのお前は、知ったかぶったり、しどろもどろになったりするくらいで・・・」

P「自分が知ってること、知らないことをちゃんと知っていて、そして他人に押しつけなかった。」

P「・・・いいじゃねえか、知らねえものは知らねえままで!それを必死になって、自分でもがき苦しんで、つかまえに行こうとすることこそロックなんだよ!」


P「だからもっと李衣菜、お前はお前を知れ!お前のにわかは、ほんとのところ、とぉぉんでもなくロックなんだぁぁぁッ!」

李衣菜「おお、さすがプロデューサー!やっぱりロックですよ!プロデューサーは!なつきちの次くらいに!」

P「バカ野郎!ロックに比較はいらねえんだよッ!・・・んほん。いや、冷静になろう。うん。今日はマジでだいじな仕事だからな。」

P「お前のにわかが変な方向に出て(歯ギターとか)、大物スターの前で恥をかくわけにはいかん。ご自慢のストラトは持ってきたか?」

李衣菜「もっちろんですよ!ほら!」

P「(またステッカーがキラキラと・・・らしくてなによりだよ、まあ。)・・・つーか弦が若干古くなってないか?いつ交換した?」

李衣菜「えっと・・・二ヶ月前・・・、ですけど、今日はちゃんと替えの弦を用意したんですよ!ほら!このダグトリオっていう・・・」

P「ダグトリオじゃなくてダダリオだ!この野郎!っていうか本番当日に弦を変えるヤツがあるか!本番中にチューニングが狂うぞ!・・・ああいいっ、今のうちに交換して弾きならしておけ!」

李衣菜「ええ、またプロデューサーとのマンツーマン猛特訓ですかぁ!オッヒェー!」

P「なんだその奇声は!つーか前言撤回!変な方向の知識は伸ばさなくていいから、とにかく基本的な知識は覚えてくれ!頼むからァッ!」

その4おわり
SSおしまい

せかされて書きました。
はじめて書きました
怖かったです。

あ、続くはその3だけか

>>47
ごめんなさい、モバマスゲーム本編における蘭子とのやりとりに続く、という意味です。
わかりづらくてすみません。

というより、キャラの画像は自ら探してきて貼るべきなのでしょうか?
それとも、どなたかが貼って下さるのを待って、HTML化依頼をすべきなのでしょうか?
勝手がわからずもうしわけないです。

了解です。

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