掃除下請挽歌(15)

野比家 深夜

ジュボ!ジリジリジリ……ふぅ~


のび太「何してるの?」

「ゴメン、起こしてしまって」


のび太「いや……トイレに行きたくて起きただけから」

「そうか~まだ夜だから心配するな」


のび太「それは知ってるけど……それよりもスティール眠らなくていいの?」

スティール「ありがとう。大丈夫だ」ジュボ!


スティールが家に来てから早3ヶ月……ドラえもんと同じく僕のもう一人の親友のような存在になった。



スティール「起きろー朝だぞー」

のび太「うっ……ああっ!?」


スティール「今現在の時間は8:47」

のび太「うわああああ遅刻だぁ~!!」


ササッー

ドラえもん「うるせぇ!」

のび太「ごめんよ~ドラえもぉん」 

スティール「落ち着けよ、‘デヴィエス”」


スティールが来てからドラえもんはグレた。

のび太「行ってきまぁぁぁすー!!」

玉子「気をつけて行ってらっしゃいね~」 


スティール「玉子さん、皿洗浄しときました」

玉子「あら!助かるわ~」


スティール「気にしないで下さい居候として当たり前の事したまでですから」

野比家 昼間

僕が学校にいる間ドラえもんとスティールはチェスをやっている。


スティール「チェックメイト」

ドラえもん「もう一回たのむ」


スティール「おk」


大体、スティールが勝つ。


ドラえもん「なぁ~なんでここに来たんだ?」

スティール「何となくだ」


ドラえもん「何となくって……他にもいろいろ場所あるだろうが」

スティール「一番人が気なさそう町だからだ」


ドラえもん「オマエ……誰かに追われているのか?」

ドラえもん「つーか一番人が来なさそうな町だからだって~酷くないか?」

スティール「そうか……追われてるのは確かだが、別に逃げてるワケじゃないチェックメイト」


ドラえもん「もう一回だ」

スティール「わかったよ」


スティールが何故ここに来たのかよくわからない。

でも、悪い人間ではないのは話してみてわかった。

のび太帰宅


のび太「ただいまぁ~」

スティール「お帰り。冷蔵庫に大福入ってるから食べな」


のび太「有り難くいただくよぉ~」

スティール「ちょっと出掛けてくるから3時間後に戻るよ」


のび太「わかった、ママにもそう伝えとくよ」

スティール「ありがと」


スティールは何故か、僕が帰ってくると台所から包丁を持って
出て行く。

学校の裏山

「おいおい、約束の10分も遅刻しておいて謝罪もしないのか?」

スティール「相変わらず虫酸が走るヤツだな……お前は」


「女装して逃げまわってたオマエが言えた台詞じゃないな~ソレ」

スティール「今ここでお前を挽き肉してやりたい……!!」

シャギンッ

「落ち着けよ。俺が死ねばテツオと沙都子はどうなる?」

スティール「……っ」

「察しのいいオマエなら分かるだろ?」

スティール「チッ……」


「不憫な奴だなオマエは」

スティール「お前にだけは言われたくない」


「そうか……まあそんな事よりも頼みたいことがある」

スティール「次は誰を消すんだ?」


「焦るなよ」

スティール「いいからとっと言え」


「ほらよ」スッ

スティール「?」


「名はウィリアム・アダムス。元アメリカ海兵隊で大尉を勤めてた男だ」

スティール「始末する訳は?」

「元’アジャストメント・ストレイン”所属」

スティール「おk……わかった。要するに余計な事をアメリカ政府に喋る前に消せって訳だな」


「やはり、あの人が認めた男だな」


スティール「うるせぇ……それよりも仏さんはどこにいる?」

「今回の仕事は少しばかり特殊なんだ」


スティール「何?」

「三日前……‘あの人”はある情報を裏社会に流した」


スティール「何の情報だ?」

「オマエがロス・セタスを壊滅させたという情報だ」


スティール「何してんだ、あの雌豚は」

「その情報を流せば、名を挙げたい連中がオマエを殺しにやってくる」

スティール「逆効果じゃないか?それは」


「意外とそうでもないんだよな~ソレが」

スティール「……」


「あちらの手数は、25名……何だが未確認情報によると第33歩兵大隊がアダムスの傘下に入った可能性がある」


スティール「マジかよ……」

「心配するな。こちらも腕の立つ部隊を援軍として送り込む」


スティール「それでいつ頃攻めてくるんだ?」

「多分……明日辺りだろうな」


スティール「そうか、わかった」

「どうした?」

スティール「今日、俺は町を出る」


「いいのか?」

スティール「そうしないと関係ない人達に火の粉が降りかかる」   


「別に構わないが、どうなるか分からんぞ」

スティール「黙れインポ野郎。さっさと消えろ」


「フッ……じゃあ、オレは消えるとするよ」

スティール「いつかミンチにしてやる」


「期待して待ってやるよ」

空き地

スティール「」スーハー

ジャイアン「オッサン!邪魔だ!空き地から出やがれ!!」


スネ夫「ジャイアン、やめときなよ。また半殺しにされ……」

ジャイアン「スネ夫~余計な事をベラベラ喋るじゃねぇ~」


スネ夫「ひぃいいいっ!?スイマセンでした~」

スティール「……帰ろ」


野比家

のび太「おかえりー」

ドラえもん「おい、どこ行ってたんだ?」


スティール「ちょっと古い友人に会ってきた」

ドラえもん「ソイツの名は?」


のび太「ちょっと、ドラえもんあんまりそういうのは……」

スティール「丸部道九郎。職業は検事だ」  


ドラえもん「ふむ……それで何を話してた?」

スティール「昔話に花を咲かせてたら、3時間を越えてしまったんだ悪いな」


のび太「別にいいよ~たまには昔話もいいよね」

スティール「だな」


この時、もう少し質問していれば……少し事態が良くなっていたかも知れない。

今頃言っても後の祭りだが。

突如としてスティールはドラえもんを連れて外に出た。

30分後にドラえもんだけが帰ってきた。



スティールは?と訊ねたら

ドラえもん「友人の仕事を手伝う為に海外に行くからお別れだ……って」

と涙を浮かべながら答えた。


何故泣いているのか聞くと

ドラえもん「気にするな」

としか言わなかった。
 

後々振り返ると、ドラえもんは30分の間にスティールから全てを聞かされていたのだろう。


この時の僕は何も知らなかった……何も知らなかったのだ。

あれが起きるまで。

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