暇潰しに(45)
短編でもいかかでしょうか?
他のSSが投下される間や、単なる暇潰しにどうでしょう。
不思議系というかなんというか……とりあえず話は10個もないので期待はしないで箸休め程度に適当にでも読んで頂けたら嬉しいです。
では
――鏡に映る――
いつも通勤する電車に乗っていると、ある駅で不思議なものを見た。
俺はいつもドアの近くに立っていた。その駅は扉が開くと鏡が見える。鏡と言っても柱にステンレスのような物が巻かれているだけだが。
その鏡を何気なしに見ているとそこにはいないはずの女性がいた。
「え?」
思わず辺りを見回した。誰も気にしていないようだ。どうやら自分にしか見えていないらしい。目を擦ってみても消えない。
女性は乗車する為にそこに待っているらしかった。
…なかなか綺麗な人だ。正直、自分好みだ。髪は茶色で肩までのボブ。白いシャツに薄いピンクのスーツ姿だった。
突然彼女が右を向き、驚いたように手を口にあてた。そのまま後退りをし、逃げようとしている。
声は聞こえないが、やめて、と言っているようだった。彼女が見ている方向から光る物が見えた。刃物…のようだ。
そこで映像は消え、自分が鏡に映っていた。
扉が閉まり、動き出す。
あれはなんだ?俺は疲れているのか?白昼夢でも見たのだろうか……今は朝だが。
それから毎朝それを見るようになった。毎回同じ映像だった。一度違う時間の電車に乗った時は見る事が出来なかった。
おそらくあの時間のあの電車を待っている時に起こる、もしくは起きた出来事なのだろうと考えた。
過去にここでそういった事件がなかったか、素人なりに調べてみたが特にそんなものは見つけられなかった。
ある日、彼女が乗ってきた。あの駅から。来ているスーツは紺だった。
胸が高鳴った。彼女だ。間違いない。ということはあれはこれから起こる事なのか…。
唐突に「彼女を守らなければ!」という気持ちに駆られた。
…もう、きっと、初めに見た時から俺は彼女に惚れしまっていたんだと思う。
彼女が襲われる時間、場所はわかるが、日にちがわからない。仕方なく彼女を暫く見守ることにした。
今日の服はベージュだった。
今日の服は淡いイエローだった。おはようとはにかむ笑顔が可愛らしい。
今日の服は水色だった。
彼女は一人暮らしのようだ。
今日の服はまた紺だ。
家を出る時間がギリギリだよ。遅刻するかと心配した。
今日の服は黄色だ。
朝はパン派みたいだ。
今日の服は黒だ。
話をする時もにこやかでとてもいい人だな…。昼食はサラダが多くて心配になる。痩せすぎてるくらいだと思うけどなぁ。
言ったら怒られそうだけど。
そしてついにその日が来た。白いシャツに薄いピンクのスーツ姿。
「あの服」だ!彼女を見守り始めてから初めて見る服だが、俺は見た事がある。あの鏡で。
今日だ。今日が「あの日」だ。鼓動が早い。不安と喜びが混ざったような不思議な感覚だ。
そうだ!犯人はナイフを持っているようだった。何か武器を持っていった方がいいだろう。
何かないか…これでいいか。小さな果物ナイフだが相手を威嚇する事くらいならできるだろう……多分。
そう思い、俺は家から出た。
――――彼女の悲鳴が耳に響いている。何故だ。何故「アイツ」は現れない?彼女は勘違いをしている。彼女が怯えるべき相手は俺じゃない。俺は彼女を守る人間だ。
だから怯えないでくれ。お願いだよ。
このナイフはいざという時すぐに止めに入れるよう持ってるだけだよ。
叫ばないでくれ。俺は君のために会社を辞めたんだ。君の周りに不審な奴がいないかいつも見張っていたんだ。
そんな目で見ないでくれ。毎日毎日君の事ばかり考えてた。毎日毎日君を見ていた。君が会社に行くときも仕事中も帰宅する時も
家 に い る 時 も。
ああ、うるさい。鏡を見ているときは声なんて聞こえなかった。静かにしてくれないか?
静かにしてくれ静かにしてくれ静かにしてくれ静かにしてくれ静かにしてくれ。
彼女は手を口にあてたまま後退りをし続けている。
「やめて!」
と言いながら。ナイフが蛍光灯の光を鏡に反射させ、きらりと光った。
終りと書くのを忘れた。
一つ目終りです。
――何が起きた――
ある日、地下鉄に乗っているとドンッという衝撃にあった。
気を失っていたのか、気づくと幾人かの人と一緒に線路に倒れていた。
皆、何が起きたのかとざわついている。それぞれ携帯を使い外へ連絡をとろうとしていた。自分もそれに倣った。
ツーツーツー…
電話は通じない……。電波はちゃんとあるのに。メールを打ってみた。
[何故か地下鉄の線路にいる。助けて]
これでいいかな。わかってくれるだろう。
そう思い、送信する。
……………よし、送れた。返事を待つかな。
「一体何が起きたんでしょうね?」
近くにいたサラリーマン風の青年に声を掛けられた。
『さあ…事故だとしてもおかしいですね。我々だけここに残されているというのも…』
「そうですよね…」
本当におかしい。事故ならば電車が近くにあるはず…それに誰一人、怪我はしていないようだ。
機器類の不具合にしても、乗客を線路に置き去りというのは納得がいかない。
皆、同じような事を口にしていた。考える事は同じなんだな。
――という事はこの考えも同じなのだろうか?俺達は実はもう……。
そう思っていると、少し年配の男性がボソリと言った。
「もしかしたら…我々はもう死んでいるのでは…?」
辺りが静寂に包まれた。やはり皆、少しは考えていたのだろうか…?
「まさか!そんなことあるわけないわ!」
若い女性が声を震わせながら言った。
「そりゃ…電話は通じなかったけど…でも…」
消え入りそうな声だった。またも静寂が訪れた。
……そう……なのだろうか……?
「とにかく」
若い男性が口を開いた。
「助けを期待出来なさそうだから、線路を伝って駅を目指しませんか?」
「そうだな」
「それがいいかも」
賛同する者が多いようだ。
……チッ…チッ…チッ…
いやに時計の針の音が耳につく………何か違和感を感じる…。なんだろう?前にも感じたような…。
考えを巡らせている間も皆は話し合いをしている。その声が何故か遠い……。代わりに何か別の音が聞こえる。なんだろう?……ピ…ピピ……
…………………………………。
ああ。そうか。気付いてしまった。
これは、私の夢だ。
ああ、目が覚める。話し合いをしている皆に申し訳ないな……。申し…わ…け………。
ピピピ ピピピ ピピピ
目覚ましの電子音だ。のろのろと目覚ましの音を消す。
『うーん、変な夢だったな』
ベッドから体を起こし、伸びをする。
夢の中の住人はまだ話し合いを続けているのかな?そんな事を考えてちょっと笑ってしまった。
リリリン リリリン リリリン
メールだ。こんな朝から誰だろう?携帯を手に取りメールを開いた。
差出人
「自分」
本文
[何故か地下鉄の線路にいる。助けて]
終
――ある男の恋心――
男は悩んでいた。
どうすれば手に入れられるだろうか。彼女を。
通勤中に見かける彼女。いつも綺麗な服を着て、毎日服屋さんで働いている。
彼女が家にいてくれたらどれだけ楽しいだろうか。きっと帰る度に癒されるのだろう。
彼女が欲しい。
でも私が手に入れられるだろうか?しがない会社員でしかない私が。いや、手に入れられるはずだ。
意を決して店に入った。
「すみません、ショーウィンドウいる彼女をください」
終
なんでこんな時間に立てたんだろう……超寝みぃ。
話数少ないのに途中退場すまぬ。明日またよくわからない時間に投下します。
……まあ、暇潰しの為の短編だからいいよね!
レス、支援ありがとうございます。
上の話、文字抜け発見。一レスだからちょっと投下し直す。
スレタイは……まあ、話数が少なすぎて本当にちょっとした暇潰し……箸休め程度にしかならんなと思った結果でした。確かに最悪だww
では
――ある男の恋心――
男は悩んでいた。
どうすれば手に入れられるだろうか。彼女を。
通勤中に見かける彼女。いつも綺麗な服を着て毎日服屋さんで働いている。
彼女が家にいてくれたらどれだけ楽しいだろうか。きっと帰る度に癒されるのだろう。彼女が欲しい。
でも私が手に入れられるだろうか?しがない会社員の私が。いや、手に入れられるはずだ。
意を決して店に入った。
「すみません、ショーウィンドウにいる彼女をください」
――夢――
決まって見る夢がある。
戦地を駆け巡る夢だ。妙に生々しく、ここで死んだりしたら現実でもそうなりそうなくらい現実味がある。起きるといつもぐったりしてしまう。
「おはよう。眠そうだな」
声を掛けてきたのは俺の友人だ。学校に行く途中で約束もしていないのに、必ずと言っていいほどここで会う。
「ああ、夜更かししててな」
適当に誤魔化しておいた。夢の話など聞きたくもないだろうし。
あれがどんなに現実的でも夢だと言える理由はこの友人だ。
夢の中でも戦友として俺の近くにいる。友人が出る事で夢だと思えた。
のほほんと横にいる友人を見ると噴き出しそうになる。夢の中ではいつも必死だからだ。
――おい。生きてるか?
「ああ、何とかな」
またあの夢か。正直あまり見たい夢ではないのだが。
――もう、ここは駄目だ。
夢の中の友人は絶望的な顔をしている。その顔を見ると真剣な話にも関わらず笑ってしまいそうだ。
「そうは言ってもどこへ逃げるんだ」
――だが、このままだと……
その時、爆発音がした。耳鳴りがして何も聞こえない。動けない。
――大丈夫か……っ
友人の顔が歪む。その理由はすぐに分かった。俺の腕が無い。足もだ。
「うわぁぁぁ!!」
あまりの事に飛び起きる。身体中に汗をかいていた。
「はぁ、はぁ。なんて夢だ」
痛みまで現実的だった。額の汗を拭おうと手を上げる。
…………無い。腕が無い。足もだ。赤い液体がぼたぼたと零れ落ちる。
なんだ?これは?夢が現実になった?あり得ない。
そう、あり得ない。夢は現実になったりはしない。その時漸く分かった。
今が夢で夢が現実だったのだと。
終
うをっ!何か書かれとる!びっくりした。
夜来るって書いてたつもりだったのにレスちゃんとしてなかったww
もうちょっとしたら投下始めます。
お待ち頂けると幸いです。
――如何物(いかもの)――
賭事仲間の友人と共に散歩をしていると見たことのない古本屋を見つけた。小さな古びた店だ。
興味を駆られ入ってみると、中にはところ狭しと本が並んでいる。
一つの本に目を奪われた。真っ黒で背表紙には「十」とだけ書かれている。その本を手に取り開いてみた。
――これから先の十項目を全て読めばどれか一つが七日の間に貴方に降りかかります――
「嘘に決まってる」
つい口に出てしまっていた。その言葉に友人が反応した。
「ほう。面白そうじゃないか」
そう言うとその本を私から奪い、店主の元へ持っていってしまった。
「俺の家で二人で読もう」
友人は楽しそうにそう言った。
友人の家に着き、早速本を開いて読んでみる。一頁に一つずつ身に降りかかる不幸が書いてあった。始めは軽いものだった。
一、角に足の小指をぶつける
「なんだこりゃ」
友人は素っ頓狂な声をあげた。確かになんとも言えない不幸である。
ニ、立った拍子に頭をぶつける
「くだらんな」
私は本を閉じその辺に放り投げた。
「おいおい、買ったのは俺だぞ」
友人はすぐに拾い上げ続けて私に言った。
「なあ、賭けをしないか」
いつものように、にやりとしながらくだらない賭事を持ち出す。賭けの内容はこうだった。
この本は本物か、偽物か。私は当然、偽物へ賭けた。
そして全ての項目を読むべく再び本を開く。
――これから先の十項目は読めばどれか一つが七日の間に貴方に降りかかります――
一、角に足の小指をぶつける
ニ、立った拍子に頭をぶつける
三、何もない処で転び、足を負傷する
四、刃物で手を切る
五、壁にぶつかり鼻から血を流す
六、指の骨を折る
七、頭をぶつけ血を流す
八、足を潰される
九、腕が切断される
十、全身の骨を折り、死に至る
「これは」
友人の額から一筋の汗が流れた。読んでしまったことを後悔しているようだ。自ら始めたことだろうに。
しかしくだらない悪戯だ。十に近づくに連れ身体への影響が酷いものになっている。最後には死だ。
「何、これは偽物だ。何も起きやしないさ」
私は平然と言ってやった。当たり前だあり得るはずがない。
「ま、賭けは私の勝ちだろうな。七日後に会おう」
事が起きても証明する者はいないが、私達はお互いを信用していた。
今までもくだらない賭事に興じてきたが嘘があったことは一度もない。賭けに関してはいつでも真剣であった。
「そうだ、自ら角に小指をぶつけるなよ」
笑いながらそう言うと友人の家を後にした。
――眠い。全身の力が抜けひたすらに眠い。友人が私に話し掛けている。
あれから七日が経った。七日目である今日、友人は十項目の内一つも起こらなかったと報告してきた。
私の報告をしようとしたその時、家に車が飛び込んできた。
友人が必死で私に話し掛けている。私も車の下から友人へ話し掛けようとした。うまく声が出ない。友人は声を聞き取ろうと耳をこちらへよせてきた。
「賭けは、私の、勝ち、だ」
息も絶え絶えに伝えた。
やはりあの本は偽物だ。何故なら私はこの六日のうちに一項目から七項目そして今、残りの項目全てを体験したからだ。
―――私は賭けには勝った。
終
――壺[つぼ]――
目覚めると昼過ぎだった。家族は全員出掛けているようで静かだ。
起こしてくれれば良いのにと愚痴を溢したが、これはまたとない機会だと思った。
この家は無駄に広い。裏には倉が一つあり、その二階の角に決して開けてはいけない「壺」がある。
幼い頃から言い聞かされていたので、「壺」の中身にはさほど興味はない。
ただその古びた「壺」を見るのが好きだった。爺ちゃんはそれすらもあまり良い顔をせず中々見る機会がなかった。
起き抜けだが脇目も振らず、すぐに倉へと向かった。いつ誰が帰ってくるかもわからない。急ごう。
―――ない。確かにここにあったはず。勝手に移動させるなんて事は爺ちゃんが許さないはずだ。
待てよ。親父が「壺」にかなり興味を持っていた。
親父は入り婿で外からの人間だから「壺」の言い伝えには懐疑的だった。
言い伝えとはこの「壺」を開けると恐ろしい事が起こると言う、ありきたりなものだ。
開けた者には得も言われぬ恐怖を与えられこの世から消える。そしてその時に近くにいた者も同様の目に合う、とされている。
親父は聞いた時から真剣には受け取らず、少し馬鹿にしていた嫌いがあった。開けてしまえ、と度々爺ちゃんに言っていた。
親父と爺ちゃんは普段は仲が良かったが、「壺」の事になると喧嘩が始まる。爺ちゃんはそれを残念に思っていて、近々「壺」を何処か神社か寺にでもやろうと言っていた。それまでの間、あの棚から動かさないようきつく言われていた。
もう一度「壺」が置いてあった棚を見る。丸く跡が残っていた。
もしかして、親父か爺ちゃんが「壺」をどうにかしてしまったのかもしれない。
最後にもう一度だけでも見たかったな。
落胆して階段で項垂(うなだ)れていると、腹が鳴った。そういえば何も食べてなかったな。
家に何かあったかと玄関を開けて気がついた。出るときに鍵が掛かっていなかった。いくら俺がいるとはいえ、寝ていたのだから鍵くらい掛けていって欲しいものだ。
――居間に着くと食卓の上には朝食と、ある物が置かれていた。
――俺は空っぽの、古びた「壺」にまた会うことができた。
終
――蝉――
ミーンミーン
この蒸し暑い中、煩(うるさ)い蝉が鳴いている。
宿題に手をつける気がせず、かといって遊びに行く気にもなれず庭を背にに寝転がりぼんやりとしていた。
毎年夏休みには一週間くらい婆ちゃんの家に行くことになっている。田舎で自然以外何もない所だ。始めの2日くらいは中々楽しめるのだが3日4日になってくると飽きてくる。
ましてやもう俺は中学生だ。いつまでも虫取りや川遊びなんぞにかまけていられるほど幼くない。
ミーンミーン
寝転がっている部屋は庭に通じている。エアコンなどつけてもいないので引き戸も全開だ。お陰で蝉の鳴き声が全て入ってくる。煩い。耳を塞ぐ変わりに目を瞑った。
ミーンミーンミー…
本当にすぐ近くで鳴いているようだ。手を広げ、大の字になるべく寝返りを打った。
――ぐしゃっ
何かを潰した音がした。いやに乾いた音だったので、丸めた新聞紙かビニル袋かを腕の下敷きにしてしまったかとゆっくりと確認した。
――――蝉だ。
腕の下にあったのは潰れた蝉だった。ぱらぱらと羽や身体の破片を落とし、蝉というのはあまり体液というものがないのだなと考えていた。
先程煩いくらい鳴いていたのはこの蝉だったのだろうか?
いや、いくらなんでもこれだけ近い処で鳴かれれば今の俺でもわかる。きっと死にかけの蝉だったのだろう。
蝉の死骸を片付けるのも億劫で蝉のいる場所を避け、そのまま仰向けに寝転がり目を瞑る。
すると急激な眠気に襲われそのまま闇に落ちた――――
―――どれくらい寝ていたのだろう?
ふと起きると蝉の鳴き声がしなくなっていた。少し薄暗い。夕方だろうか。畳に目を落とすと蝉の死骸が無くなっていた。
母さんか婆ちゃんかが片付けてくれたのだろうか。それにしても何かおかしい。何がおかしいのかと考えていると外が少しずつ明るくなり始めた。
夕方ではない。朝だ。随分と長く眠っていた。母さんや婆ちゃんも何故起こしてくれなかったのか。
ああ、でもなんだろう、この感覚は。この光がとても嬉しい。毎朝見ているはずの太陽の光がとても嬉しいのだ。
――外へでて見つけなければ。
唐突にそう思った。見つけなければならないものがなんなのか、考える間もなく外へ飛び出した。
村中を駆け巡り、叫んだ。
おーい、おーい。どこだー
誰に向かって言っているのか自分でもわからなかった。でも見つけなければいけない。
村中には恋人同士であろう男女があちらこちらにいた。
ああ、そうだ。俺は相手を見つけなければいけないのだ。
おーい、おーい。誰かー
村中を駆けたが簡単には相手を見つけられなかった。へとへとになりながら、一先ず家で休むことにした。
心なしか大きく感じる庭先に着き、畳へうつ伏せに寝転がった。もう動けない。
突然俺の上に影が掛かった。巨大な腕が俺を目掛けて落ちてくる。
―――ぐしゃっ
――もう、起きなさい。風邪引くわよ。
その母さんの声で飛び起きる。
どっどっどっどっ…
心臓が早鐘を打っている。今のは夢か。随分と現実感があった。心臓を落ち着かせようと深呼吸をしていると、母さんの小言が耳に入ってきた。
――その蝉、どうするの?ちゃんと片付けなさいよ。
畳を見ると腕で潰した蝉がまだそこにいた。俺はその蝉を拾い上げ、庭へでた。
母さんはてっきり俺が庭へ投げ捨てるとばかり思っていたらしく、穴を掘り始めた俺を見て驚いていた。
丁寧に土を被せ手を合わせる。こいつは相手を見つけられたんだろうか。
―――ごめんな。
目を瞑り呟いた。
終
ぐしゃっ
で終わっててもよかったかもな
以上でお仕舞いです。
本当は10つ書いて投下したかったんだが7つしか書けなかった……。
こういう短編を沢山書ける人って凄い。改めてそう思った。
いやマジで。
読んでくださった方、レスくださった方ありがとうございました。
>>41
潰しても平気な主人公にちょっと後悔させたかったんだ。
でも確かにそこで終わった方がなんか不気味でいい気がする。
レスありがとう。
このSSまとめへのコメント
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