エレン「…母さん?」ユミル「」(136)

初SSです
お手柔らかにお願いします

ネタバレは…あるかも

―対人戦闘訓練中―

エレン「ッ!」

体を前面に倒し突進する要領で、ナイフに見立てた木剣をアニへと突き立てようとする

アニ「シッ!」

それに対しアニは、己の間合いへと入ってきた瞬間にローキックを放ち、エレンの突進を止める。

エレン「いっ!!」

苦痛に顔を歪める。
しかし、何度も続けてきた攻防だ。蹴りが当たる瞬間に当たる面をずらして致命的なダメージにはならなかった。

エレン「このっ!」

再度、木剣を突き立てる。
相手の体制が崩れている時…アニの蹴り足が戻る前に一気に突っ込んで決める…はずだった。

アニ「フッ!」

エレンの突きを体を横にして回避し、相手の勢いを利用して一気に背面を取る。
アニはその隙を見逃さず、蛇のようにエレンの首と腕に掴みかかった!

エレン(やばっ!)

そう思い、手を振り払おうとした瞬間にアニの強烈な足払いが足と地面とを切り離していた。
どさりと派手に地面に体を打ち、背中を打った痛みが己の負けを教えてくれる。

エレン「〜〜〜っ!……アニ、もう一回だ!」

アニ「三回までだって言ったろ?今日はもうおしまいだ。」

エレン「くっ…もう一回だけ駄目か…?」

アニ「と言うかアンタ、いい加減学習しなよ。何回同じ技でやられるんだか。」

アニ「もしかして私に痛めつけられたいの?」


エレン「んな訳ねーだろ!お前の技が速くて簡単に対処できねーんだよっ!」

アニ「じゃあどうやったら対処できるか今日はゆっくり考えな」ヒラヒラ

此方を振り返らず、手を振りながら離れていく
とりあえず今日はもう付き合ってくれることはなさそうだ。

エレン「くそっ!……他の奴とでも組むか」

エレン「ん?…アイツは…」

対人格闘術は他の重要な科目とは違い評価の点数にならない。
故に成績上位の訓練兵は流す者が殆どだ。

ユミル(……ったく、こんな訓練にクソ真面目にやってる奴の気がしれねぇな)

目線の先には金髪の少女クリスタがミカサと組んで真面目に対人格闘術の訓練をしている。
…訓練と言うよりは遊ばれていると言ったほうが近いが

ユミル(意味のねぇ訓練で疲れるなんて馬鹿のすることだっつの)ハァ…

当のユミルはと言うと教官に目を付けられないように移動しながら上手くサボっていた。

ユミル(っと、教官がこっちに近づいてきやがったか)

教官の視界に入らない場所に移動しようとした時、後ろに気配を感じた。

エレン「よう」

ユミル「あ?…エレンか、何か用かよ?」

エレン「…クリスタと一緒にいないんだな。珍しい」

ユミル「こんな面倒な訓練の時にまであんなクソ真面目な奴と一緒にいる訳ねぇだろ。で、何の用だ?」

エレン「組む相手がいなくなったんだ。お前も暇そうだし一緒にやろうぜ」

ユミル「人の話聞いてたか?せっかく面倒な訓練をサボってるのにやる訳ねぇだろ」

ユミル「と言うかなんで私なんだよ。アニとかミカサとでも組んでろ」

エレン「アニはさっき断られちまったんだ。ミカサは…クリスタと組んでるだろ。」

だから頼むよっと言いたげに此方をジッと見つめてくる。

ユミル「あっそ、どっちにしろお前みたいな馬鹿の相手なんかパスだ。体がもたねえ。」

エレン「…そうかよ」スタスタ

ユミル(……何だアイツ?)

思った以上に早く食い下がった事に肩透かしをくらってしまう。

ユミル「ま、どうでもいい。…適当に流して終わらせるか」

?「何を流すと言うんだ?」

ユミル「決まってんだろ?この退屈な訓練だよ」クルッ

キース「ほう、どうやらこの訓練は貴様にとって退屈なようだな。…どれ退屈にならないよう
     貴様には特別に別な課題を与えよう」

ユミル「」

―???―

破壊された建物、彼方此方から立上る炎 人々が巨人から我先にと逃げ惑い、
悲鳴をあげながら喰われていく、辺りは正に地獄絵図だった。
巨人に破壊された家の下敷きとなり、身動きがと れない母を助けようするが
瓦礫をよって潰された母の体は、まるで壁と同化したようにビクともしない。

カルラ「エレン!逃げてっ!」

横目に己の体格の数十倍はある巨人が写る。
醜く口角を上げ、必死に逃げようとしている自分達を嘲笑うかのように此方に迫ってきていた。

エレン「逃げたいよ俺も!早く出てくれよっ!」

カルラ「母さんの足は瓦礫に潰されて…ここから 出られたとしても走れない…!…分かるだろ?」

エレン「俺が担いで逃げるよっ!」

涙を流しながら母の懇願を断る。分かっている。逃げなければ自分も死ぬのは分かっているのだ。
しかし、それでも母と別れたくはない。母と今生の別れにはしたくない。

カルラ「どうして、いつも母さんの言うことを聞かないのっ!」

カルラ「最後くらい言うことを聞いてよっ!」

エレン「嫌だっ!…嫌だ…」

巨人の足音と振動がゆっくりと迫ってくる。 だがそのとき、兵士の一人がエレンを担ぎ上げる

エレン「待って、母さんがまだいるんだ!助けてくれ!」

カルラ「エレン!」

エレン「母さん!母さん!」

巨人が夕日に照らされ、さらに大きな影がカルラを覆い尽くす。
カルラを潰していた瓦礫を、払うかのように退けてつかみ掛かった。

巨人「…」ニタァ

カルラ「エレン…生き延びるのよ」

巨人につまみ上げられ、涎を垂らした口へと運ばれていく
肉や骨の潰れる音、鮮血を撒き散らしながら絶命 した母の姿が写りこむ

エレン「ぁ…ああ…うわぁぁぁっ!!母さぁぁぁん!」

母を殺された絶望、悲しみ、怒り、様々な負の感情がぶつかり合い絶叫する。
同時に目の前の景色が暗く塗りつぶされ、消えていった。

                             ┃
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                               :

食堂とは厳しい訓練を終えた訓練兵にとって一日の憩いの場である。食事の時間には満員となり、決して上手いとは
言えない食事を喜ぶ声、訓練でうまく結果を残せず仲間に愚痴る声、時には仲間同士で意見がぶつかり喧騒が起こるのだ。

しかし、今はその食堂も消灯時間の間近になれば暗く静寂に保たれてる。
そんな時間に騒ぎ立てていればいつ訓練所名物の鬼教官が頭突きを食らわせに来るか分からないからだ。

そのような時間に珍しく歩く人影が一つあった。

ユミル(あー……ったく、あのハゲ教官め、こんな時間まで走らせやがって……)

別にサボっていたわけではない『ちょっと』訓練を流していだだけだと悪態を吐き今日は運悪く、教官に目を付けられてしまったと頭をガシガシと掻く。

ユミル(おかげでクリスタと食うどころか、メシ抜きになったじゃねえか)

ため息混じりに仲間が残していてくれた硬いパンを齧り、租借する

(…もう少しマシな飯は出ないもんかね……ん? )

ふと自分以外に気配を感じ、周りを見渡すとテーブルに突っ伏している仲間の姿があった。

ユミル(…あれはエレンか?)

エレン「……」

こんな時間に食堂で寝てるなんて馬鹿なんだろうか
それよりも何時も周りにいる保護者がエレンを放っといて何してるんだ?そう思いつつも近づく

ユミル(…なんでコイツこんな所で寝てるんだ? )

エレン「……」

何となく向かい側の席に座り、安らかに寝息を立ててる姿を呆れた表情で眺めながら残ったパンを口に放り込んだ

ユミル「ふぅ…今日も硬いパンをごちそうさんっ と…」

一息つき、改めてエレンの方を見るが、相変わらず安らかな寝息を立ている

ユミル(……コイツはどんだけ寝てんだよ)

一向に起きだす気配のない姿に眉を潜め、チラリ と壁にかかった時計に視線を移す
そろそろ教官が見回りに来る時間だ。

ユミル「ま、知ったことじゃねぇな」

ユミル「お前も教官に罰則を食らいな」ククク

良くて頭突き一発、明日額が腫れていたら笑ってやろうとそう呟いて踵を返す。

エレン「……母さん」ツー

ユミル「───っ!」

微かに紡がれた言葉、自分の足音に紛れて聞こえないほどの小さい声で呟かれた言葉のはずなのに
何故かはっきりと聞こえてしまった。思わず振り向き、エレンの方を見る。閉じた瞼が 僅かに濡れていた。

ユミル(…泣いてる…のか?)

エレン「…ぅぅ……」グスッ

今度は明確に嗚咽をもらす。嫌な夢でも見ているのだろうか

ユミル(ハッ…寝たまま泣けるなんて器用だな、おい)

シンガシナ区…
数年前に巨人の進撃にあった地区だ。
確かエレンはそこで育ったと言っていた。
実際に巨人を目撃した上で難民としてこちらに流れて来たなら唯ではすまない
本人は大したこと無いと言っていたが、壮絶な経験をしたという事は嫌でも想像がつく

ユミル「…だから何だってんだよ…」ボソッ

エレン「ぁ……ぅ…」グスッ

呟いた途端、片方の手が何かにすがる様に動いた
心なしか嗚咽も大きくなった気がする

ユミル(……)チッ

苛立ちが頂点に達して思い切り舌打ちをする。
教官に目を付けられた事といい、今日に限ってエレンがこんな所で寝ている事といい、今日は本当についてない日だ

ユミル「……」ストッ

エレンの隣に座り、ジッと見つめる。
いつも強気で絶対に諦めず、厳しい訓練をこなしている青年の顔はどこにもなく
迷子になった子供が必死に母を探している

そう…ユミルの目には写った

ユミル「……クソッ!」

本日何回目の舌打ちだろうか、喋らずにしてここまで腹立たたしい目の前の男は、自分を苛立たせる天才かもしれない

ユミル(…ったく、柄にもない事させやがって)

こう言うのはいつも周りにいる保護者の役目だろ。
そう呟き、エレンに対して何をするか考えた結果
叩き起こすのは気が引ける、しかし何もせずに待っていたら鬼教官に見つかる。

そう考え、エレンの頭を撫でる事にしたのだ。
出来るだけ優しく、割れ物を扱うかのように

ユミル(何やってんだかな私は…)ナデナデ


こんな事は所詮、意味のない自己満足だろう。
そう思い自分自身の行為に呆れていた。

ユミル(あぁ、もう面倒くせえ…!…)ガシガシ

もう片方の手で乱暴に頭を掻く
今日は運が悪くて、気分がおかしくなってるんだ
自分を苛立たせる目の前の男が悪いのだ



エレン「…ぅ……ん…」

ユミル「!」

いつの間にかに乾いた瞼をこすりながらエレンはゆっくりと体を起こす。

ユミル(ようやくお目覚めかよ、寝坊助野郎)

エレン「……ふぁ…」

まだまだ重たそうにうっすらと目を開けてこちらを見る

エレン「……」

ユミル「……」ギロッ

教官に見つかる前に起こしてやる所か
自分にこんな事をやらせたのだ。唯じゃすまさない
さて、何をやらせようか、どれだけコキを使ってやろうか…

そう考えた矢先に目の前の男は

エレン「…母さん?」

こんなすっとんきょうな事を言ってきやがった

ユミル「」

とりあえず、書き溜め終了です

また今度

沢山呼んでいただいて恐縮です。

稚拙ながらも描写方式で文章を打っていますがどうでしょう
台詞だけでキャラがなにやっているかを表現できる人が羨ましい…

続きを投下します。




嫌な夢を見ていた様な気がする。
断片的にしか思い出せないがとても嫌な夢だと思う

しかし、そんな夢でも飛び起きる気にはならなかった。


エレン(……暖けえ…)

誰かが頭を撫でている。
まるで太陽が包み込んでくれるかの様な感覚が頭にあったからだ。

エレン「…ぅ……ん…」

この手は知っている
自分を誉めてくれた時、叱られて拗ねていた時、落ち込んでいて励ましていてくれた時

そう、いつだって自分を受け入れてくれた感触だ。

エレン「……ふぁ…」

重たい瞼を無理矢理こじ開け、欠伸をかみ殺す
撫でている手の方に顔を向け体を起こして…

エレン「…母さん?」

そう…目の前の知り合いに呟いてしまった

ユミル「」

エレン「」

空気が凍る
ここまで適切に今の現状を適切に表してくれる言葉はないだろう。

目の前の知り合いはピタリと固まってしまい、自分も何を言えばいいのか分からなくなっている。
無論、目は一瞬で覚めてしまった。

エレン「……」

ユミル「……プッ」

数秒か数分か…
自分にとっては永遠のような時間だったが

先に動いたのは知り合いだ。
自分の頭にあった手を口元まで持っていく

ユミル「ダハハハハハ!お前、母さんって、母さんって…!…何だよ!」ヒー

エレン「ぁ……え…」(な、何でユミルが…//)カアアアァ

自分は何を言ってるんだと一瞬で顔が青くなり、瞬く間に羞恥で耳まで熱くなる。

一方でユミルは腹を抱え、涙を浮かべながら笑い転げていた。

ユミル「私がお前の母さんな訳ねぇだろっての、エレンちゃんは実は甘えん坊なのかなー?」ゲラゲラ

エレン「なっ!、うるせぇ!ちょっと寝ぼけてただけだ!」

ユミル「だからって母さんはねーだろ…ダッハハハハハ」ヒー

エレン「ぐっ…」

自分の失言だったのは事実だ。
言葉を詰まらせ、笑い転げるユミルを睨み付ける


ユミル「あー、笑った笑った、お前って面白い奴だったんだな」

エレン「…そうかよ」

涙を拭いながら、ようやく落ち着いたのであろう
軽く息を切らしながら、こちらを見てくる。

エレン「ってか、お前も人の頭をなでてんじゃねーよ!」

ユミル「強がんなってエレンちゃん、本当は撫でられたいんだろ?」ニヤニヤ

エレン「っ…そんな訳ねーだろ!」

目の前で手を揺らされ、先程の失言を改めて思いだし、顔を背ける。

ユミル「ま、何でもいいけどよ、明日の水汲み当番は私の代わりにお前がやれよ」

エレン「はぁ!?何で俺がやらなきゃ…むぐっ」

ユミル「静かにしろよ。消灯ギリギリなんだ教官に見つかったらどうするんだよ。」

理不尽な要求に思わず大声が出そうになった所で口を押さえられ、
シーっともう片方の手で口元に人差し指を当てて静かにしろとジェスチャーしてくる。

さっきまでのお前の笑い声はいいのかと目で抗議しながら振り払う

エレン「……」

ユミル「別にやらなくてもいいぜ?いい話の種ができた事だしな」ククク

エレン「なっ…お前…!…」


ユミル「そんなに怒るなよ、やってくれるならご褒美に撫でてやってもいいぜ?」

エレン「そんなご褒美なんかいる訳ねーだろ!」

ユミル「じゃ、無償で頼むわ」

エレン「…クソッ…分かったよ!」

逆立ちしても口じゃ敵わない。今まであまりユミルとは話した事はなかったが、この短いやり取りでその事がよく分かった

これ以上粘っても余計に馬鹿にされるだけだろう

ユミル「聞き分けのいい子は好きだぜ?エレンちゃん」ポンッ

エレン「ちゃん付けすんな!」

     ・
     ・
     ・

エレン(ああ、もう、何だって俺が明日水汲みをしなきゃいけないんだよ)

エレン(そりゃ、俺があんな所で寝てるのも悪いけどよ、あんなに笑うこともないだろ)

エレン(…あいつも人の頭を勝手に撫でやがって)ブツブツ

でも、と一呼吸置く。
撫でてくれた手は…柔らかくて優しかった

エレン「あいつの手、暖かったな」ボソッ

アルミン「誰の手が暖かいの?」

エレン「うおっ!脅かすなよアルミン」

アルミン「ご、ごめん、でも僕はさっきから目の前にいたよ?」

エレン「え?そうなのか?」

アルミン「うん、ボーッとしてたからね、こんな時間までどうしたの?」

エレン「いや、食堂で寝ちまってな…」

アルミン「エレンってば、そんな所で寝てたら風邪引いちゃうよ?」

エレン「分かってるよ、ちょっと疲れが出ただけだ」

アルミン「訓練ばかりじゃなくしっかり休まないとダメだよ?」

エレン「分かってるって、お前もミカサみたいな事言いやがって」

アルミン「あはは、もしかしてさっきの手が暖かいってミカサの事?」

エレン「…いや、違う」

アルミン「あれ、そうなの?じゃあ誰の事?」

エレン「……」

突然黙りこんだ、親友の姿に違和感を覚える
心なしか顔も赤くなっている気がする。

アルミン「…エレン?」

エレン「だ、誰でもいいだろ!遅いしもう寝るぞ!」

アルミン「あ、ちょっと待ってよ!」

ぬあっ
読み直してて誤字発見

>>38
×ここまで適切に今の現状を適切に表してくれる言葉はないだろう。

                ↓

○ここまで今の現状を適切に表してくれる言葉はないだろう。

     ・
     ・
     ・

ユミル(あーあ、柄にもない事しちまったな)

ユミル(それにしてもあいつ…)

ユミル(ま、あいつにどう思われた所で関係ないか)


クリスタ「ユミル!」

クリスタ「今まで走らされてたんだよね?大丈夫?」

ユミル「クリスタ〜、あいかわらず今日も可愛いな、私がいなくて寝れなかったか?」ダキッ

クリスタ「もう、心配してるのに!」

ユミル「心配いらねーよ、次はバレないようにサボるさ」

クリスタ「さ、サボったら駄目だよ!ユミルは成績いいんだからで頑張れば上位10人にも…」

ユミル「評価に響く科目は、そこそこ真面目にやるよ。」

ユミル「お前こそどうでもいい対人格闘術なんて適当に流せよ。ただでさえチビで体力ないんだから体もたねえぞ?」

クリスタ「それは…そうだけど、どんなことでも本気になれば楽しいから…」


どんなことでも本気で訓練をする…
クソ真面目にやってる姿だけは、エレンと一緒だな

…動機は全く違うが

ユミル「そうかよ…もうこの話題は終わりだ。」

ユミル「明日も早いんだし寝るぞ」テクテク

クリスタ「ま、まってよ。ユミル!」

とりあえず、ここまでです
お疲れ様でした。

続きを投下ー

エレン「…ふぁ」

エレン「はぁ…何で俺が」ブツブツ

起き慣れない時間に無理やり起きた為か、顔を洗ったにも関わらず眠気が取れない。
アルミンに言う通り休むことも訓練だ。
昨日の食堂で寝てたこともそうだが、眠くてミスって訓練中に死んじゃいました何て悪い冗談だ。

エレン「とっとと終わらせて寝直そう…」


クリスタ「…あれ、エレン?」

井戸の水を汲み取ろうと、準備しようとした瞬間にいきなり後ろから声をかけられた。
振り向くと、クリスタが怪訝そうな顔で見ている。

クリスタは妹だな

エレン「ん、クリスタか、今日はユミルが水汲み当番じゃなかったのか?」

クリスタが当番ならユミルも着いてくるだろうし、疲れていても任せようとしないだろう。
少なくとも自分には

クリスタ「うん、そうだよ。私は今日ユミルが疲れてるから代わりに水汲みをしようと思ったんだけど…」

クリスタ「どうしてエレンがしてるの?」

エレン「あ、ああ、えーと…」

クリスタ「?」

突然の問いに目線を逸らして言葉を詰まらせる。
脅されてやってます。と正直に答えてやってもいいんだが、主に昨日の出来事を根堀り葉堀り聞かれると困る

エレン「お、俺もクリスタと同じだ、昨日ユミルが疲れてたから代わってやるって言ってたんだよ」

クリスタ「!」

クリスタ「そうなんだ、ありがとう!」

突然目を輝かせて、自分に近寄ってくる

エレン「…何でクリスタが礼を言うんだよ?」

クリスタ「ユミルって本当は悪い人じゃないんだけど、誤解されやすいの」

エレン「……」

クリスタ「私も人の事言えないけど、親しく話す人とかあまりいないんだ。だからエレンみたいに気にかけてくれる人がいると嬉しいの!」

エレン「そうか…」

クリスタ「よかったらこれからもユミルをよろしくね」ニコッ

屈託の無い笑顔を向けられる。
同期達の会話で女神や天使と言われているが、なるほどこれがそうかと納得した。
同時に嘘を吐いた事への罪悪感も生まれる。

エレン「あ、ああ…」

クリスタ「じゃあ二人で水汲みを早く終わらせようか」

エレン「手伝ってくれてありがとな。」

クリスタ「ふふっ、こちらこそだよ。エレン」

     ・
     ・
     ・

ユミル「んで…二人で私の代わりに水汲みをやってくれたって訳か」

エレン「ああ…」

クリスタ「そうだよ。エレンってば力持ちだから助かっちゃった。」

エレン「俺もクリスタがいなきゃこんなに早くには終わらなかったからな。」

ユミル「流石、私のクリスタ、今度結婚しようか」ダキッ

クリスタ「も、もう、大げさだよ」

ユミルに肩を抱かれて、身じろぎシナガラ答えるクリスタ
軽く抵抗しながらも満更でもなさそうな様子にまるで姉妹ようだ。

クリスタ「ほら、エレンにもお礼を言わなきゃ駄目だよ!」

ユミル「あ?分かってるってそれよりも今はクリスタだ」ナデナデ

エレン(こいつは相変わらずクリスタばっかだな…)

クリスタ「ちょ、ちょっと髪がグチャグチャになっちゃうよ!」

エレン「……」ジー

頭を撫でられ、一気に抵抗してユミルから離れる。
当のユミルは大げさに私の天使が離れちまったと言っている。

クリスタ「全く…もう、また梳かさなきゃ…」

ユミル「どうせ走り回ったりしたら意味ねぇだろ?今崩れても後で崩れても一緒だろ」

クリスタ「それはそうだけど、ユミルも女の子なんだから気を使いなよ!」

ユミル「そんな面倒な事やるわけねぇだろ。」

両手を上げで大げさに身振り手振りで理解できないと伝えてくる。
クリスタはその様子に頬を膨らませながらため息を吐く。

ユミル「それはさておきクリスタ、悪いんだが部屋からタオルを取ってきてもらえないか?」

クリスタ「え、うん、分かった」タッタッタ

チラリとエレンの方を見て目で合図をする。
クリスタは察したのか特に聞き返すこともなく離れていく。

ユミル「さてと…」

エレン「…なんだよ」

ユミル「まあ、約束だからな。あの事は言わないって事で、とりあえず礼は言わなくていいよな?」

エレン「別に構わねぇけどよ…」

ユミル「じゃ、次は教官に怒られる前にお前のことを起こしてやったんだから、その恩人って事でもう一回言うことを聞いてもらおうか?」

エレン「……分かったよ、次は何をすればいいんだ?」

ユミル「…ずいぶん聞き分けがいいな」

エレン「どうせ、やらなきゃ言うんだろ?」

ユミル「おいおい、心外だな。私は約束は守るぜ?」

エレン(本当かよ…)

疑心の目でユミルを見る。
ユミルはと言えばそんな事も気にせず、ニヤニヤしながら見てくる。

ユミル「じゃあ、次の水汲みもよろしくな、エレンちゃん。それで今回の事を手打ちにしようぜ?」

エレン「だからちゃんって呼ぶな!」

ユミル「じゃあ、任せたからな」ククク

エレン「あ、おい!」

ユミル「あ?何だよ」

エレン「あ……その……」チラッ

ユミル「?」

エレン「……て…」

ユミル「は?聞こえねーよ、言いたい事があるならはっきり言え」イライラ

ジャンほどではないが思ったことをすぐにいう奴。
そういった印象だったため、言い難そうに言葉を詰まらせてる姿に多少のイラつきを感じた。

エレン「」カアアアァ

エレン「な、何でもねーよ!」ダッ

ユミル「……」

今日はここまでです。
ありがとうございました。

>>60
クリスタは妹…その発想はなかった

余談ですがユミルの手は大きくて綺麗(断言)
異論は認めない

続きを投下します

エレン「ハァ…ハァ…何やってんだ俺は」

エレン(危ねえ…俺はさっき何を言おうとしてんだよ!)

昨日、あれだけ笑われたんだ。次に撫でてくれ何て言ったら
笑われるどころじゃすまねぇぞ…

エレン(何て言われるか分かったもんじゃねぇ…)

しかし、昨日は失言をしてしまった事の恥ずかしさでよく見ていなかったが
細長い綺麗な手だった。まるでピアノ奏者のような手をしていた。


エレン(ユミルの手…綺麗だったな…)

クリスタ「エレン!」タッタッタ

背後からクリスタが心配そうな顔をしながら走って来ていた。

エレン「!」ビクッ

クリスタ「ハァ…ハァ…」

エレン「ク、クリスタか、走ってきてどうしたんだ?」

クリスタ「さっき、エレンが部屋から飛び出してくるのを見て…その、ユミルと喧嘩でもしたのかなって」

エレン「いや、別に喧嘩したわけじゃない」

クリスタ「…そうなの?てっきりユミルが失礼な事を言って怒っちゃたと思ったんだ…」

クリスタ「ユミルってば、無神経と言うか無遠慮な所があるからさ…私もよく言われて怒るんだけど…」

エレン「…頭にくる事を何度か言われてるけど、そういう訳じゃねーよ」

クリスタ「…本当?」

エレン「本当だよ。だから心配すんな。」

クリスタ「あの…何があったかは…」

エレン「…聞かないでくれ」

別に大した事ではない。
無いんだが、恥ずかしいんだと心の中で呟く

だが逆にその反応はクリスタの心配を煽るものであった。
相当言いたくないことなのだろう。表情を曇らせながらも出来るだけ力になってあげたいと思った

クリスタ「そっか…私に何か出来る事はある?」

エレン「いや、特には無…」

いや、一つあった。
言いかけた言葉を飲み込んでクリスタに向き直る。

クリスタ「…?」

首を傾げるクリスタ。まるで小動物的な可愛らしさがある。


エレン「クリスタ…一つお願いがある」

クリスタ「わ、私に出来ることなら…」

自分がなぜこの様な事を考えているのか、相手にやって初めて分かるんじゃないだろうか
ユミルはなぜ自分の頭を撫でてくれてのだろうか。
そう考え俺はクリスタに一つお願いをする。

エレン「頭を撫でさせてくれ」

クリスタ「…え?」

エレン「頭を撫でさせてくれ」

クリスタ「…え?」

一瞬エレンが何を言っているのか理解できなかった。
脈絡が無さ過ぎるお願いに思考が停止してしまう。

エレン「…駄目か?」

直後にバツが悪そうな顔でエレンが聞いてくる
停止した思考が無理やり現実に引き戻される。

クリスタ「え、いや、駄目じゃないけど…」

クリスタ「どうして撫でるのかなって…」

エレン「撫でる人の気持ちを知りたくてな」

もうちょっと詳しく理由を話してくれなきゃ分かんないよ!と心の中で叫ぶ
しかし、自分から協力すると言った手前もあり、エレンは理由を言いたくないため
困惑した顔でエレンを見ることしか出来ない。

クリスタ「えっと…よく分からなんだけど…」

エレン「…やっぱり嫌だよな…ごめんな、クリスタ」

大して仲の良くない奴に撫でられるのは普通に考えて抵抗があるだろう
申し訳なさそうに顔を下げる


クリスタ「…ぃ…嫌とは言ってないよ!」

エレン「え?」

クリスタ「別に頭を撫でるだし……大丈夫だよ」カアアアァ

顔を真っ赤にしながら、言ってくるがどうにも大丈夫な様には見えない。

エレン「ほ、本当にいいのか?」

クリスタ「ぅ…うん。でも…優しく……ね?」スッ

一応もう一度聞いた後にクリスタが頭を差し出してくる。
そういえば、撫でられることはあっても撫でることは、幼少期の頃を含めて初めてなんじゃないか
真っ赤になったクリスタの顔を見ながらそう考える。

エレン(やっぱり、恥ずかしいよな。)

エレン「じゃあ、撫でるぞ」

クリスタ「…うん」

エレン「……」ナデナデ

クリスタ「……」

誰かから優しく撫でられる。別に大したことじゃない
しかし、妾の子として疎まれながら育った自分に今までこうやって撫でられた事はあっただろうか

エレン「……」ナデナデ

クリスタ「ぁぅ……」

少なくとも今日まで同年代の異性に撫でられるといった経験なんて一つもない。
恥ずかしさと共に、誰かから優しくされる嬉しさも感じていた。

エレン「……」スッ

クリスタ「…ぁ…」

エレン「どうだった?」

クリスタ(ど、どうだったと言われても…)

クリスタ「…ちょっと、恥ずかしかったかな…」

エレン「そうか…」

クリスタ「その…ぅ、嬉しかったよ!安心するって言うか…」

エレン「ユミルに撫でられる時もそんな感じか?」

クリスタ「え、ユミル…?」


エレン「ああ、さっきも撫でられたりしてるからさ」

クリスタ「うーん、そんなに意識はしてないけど…そうなのかも…」

ユミルには抱きつかれたり撫でられたりはしてるが、大して意識はしてない。
…髪をグシャグシャにされたりチビと言われたり軽く馬鹿にされている事も多いからだ。

エレン「そっか…やっぱり異性と同性に撫でられるのは違うのかもな」ウーン

クリスタ「……」

クリスタ「ねぇ、エレン」

エレン「ん、どうした?」

クリスタ「どうしても、ユミルと喧嘩した理由って言えないの?」

エレン「だから喧嘩をした訳じゃ…」

クリスタ「……」ジッ

エレン「うっ……」

クリスタ「言いにくい事を何度も聞いてごめんなさい」

クリスタ「……でもね、私は本当に二人を心配して言ってるんだ。小さい事でも気まずくなったら嫌だなって…だから…」

クリスタ「…駄目?」

上目使いで、真剣に此方を見つめてくる。
目の前の少女は本気で此方を心配しているのだ。
その姿に罪悪感が沸いてくる

しかし、それが故に自分が考えていることの下らなさで言う事を躊躇う。



エレン「っ!」

自尊心と罪悪感の葛藤は…

エレン「わ、分かった!話すよ!」

罪悪感の勝利に終わった。

クリスタ「本当!」パァ

エレン「ああ、でも周りにには…」

クリスタ「うんっ!絶対に言わない!」

エレン「…実はな」

今日の投下はこれまでです

ありがとうございましたー

短いけど投下しますー

これまでの経緯をクリスタに説明する。
勿論、失言云々で笑われたことや脅されたことはすべて抜かしたが…


クリスタ「えっと、つまり…エレンはユミルに撫でられたいって事?」

エレン「ああ、そうだと思う…」


クリスタ「…えぇっ!」

エレン「……っ」カアアアァ

目の前の少女が目を大きくさせて驚く。
そりゃそうだ自分だって、戸惑ってるくらいなんだから…

クリスタ「あ、ごめんなさい!ちょっと驚いちゃって…」

クリスタ「その…エレンがそんな事考えるとは思わなくて…」

エレン「いや、俺自身も驚いてるからな…」

クリスタ「で、でもそれなら直接ユミルに言えば…」

エレン「……っ」

言葉に出してみて、ユミルの性格を考える。
間違いなく、エレンの事を全力でからかうだろう。

クリスタ「あ……は、恥ずかしいよね」

エレン「まあ、確かにクリスタの言う通りだけどよ…」

クリスタ「そういう事なら、私も協力するよ!」

エレン「ホントかっ!」

クリスタ「うん!…でも、あまりできる事はないかも… 」

エレン「そんな事ねえって、ありがとな、クリスタ。頼らせてもらうぜ」

クリスタ「!……うんっ!任せておいて!」ニコッ




クリスタ(って、言っちゃたけど…)

エレンが自分の事を期待してくれたから思わず、言ってしまった。
しかし、あのユミルにさりげなくエレンを撫でさせる何て方法があるだろうか…

クリスタ(誰にも言っちゃ駄目って言われてるし…)

自分が代わりにユミルに頼むのは却下、誰かに知恵を借りるのも却下

クリスタ「うーん、やっぱりエレンが頼むしか…」ボソ

ユミル「エレンがどうしたって?」ヌッ

クリスタ「きゃっ!…ユミルってば脅かさないでよ!」

ユミル「お前が回りに気づかないのが悪いんだろ」

ユミル「つーか、タオル取って来てくれって頼んだのに何やってんだよ」

クリスタ「あ、ごめん…」ゴソゴソ

スッと取ってきたタオルをユミルに渡す。

クリスタ「さっきまでエレンと話してたんだ…」

ユミル「はぁ?アイツと何はなしてたんだよ」

クリスタ「エレンが部屋を飛び出して来たから、ユミルがまた失礼な事を言ったのかと思って話してたんだよ。」

ユミル「私じゃねーよ。アイツが勝手に飛び出して行っただけだ。」ガリガリ

意味分からねぇと呟き、頭をガリガリと掻く

ユミル「アイツは何か言ってたか?」ハア

クリスタ「う、ううん、何も…」

ユミル「死に急ぐ位なんだから言いたいことは言えっての。そう思わないか?」

クリスタ「もう!皆がユミルみたいに無神経じゃないんだよ!」ムッ

ユミル「おいおい、無神経ってのは心外だな。私は事実と思った事を正直に言ってるだけだぜ?」ハハハ

クリスタ「それが駄目だって言ってるじゃない!」

ユミル「はいはい、流石私のクリスタ怒った時も可愛いな」ダキ

クリスタ「真面目に聞いてよ!」

ユミル「んで、エレンと何かあったのか?」

クリスタ「え、な…何で?」

ユミルの突然の言葉に言葉を詰まらせる。


ユミル「男と女が二人で隠れて話していたらそりゃあ…なぁ?」ニヤニヤ

特に何か意図があって言った訳ではなく、ただこのまま話を続けられるのは面倒だと思い、話を変えるために言ったのだ
目の前の天使はこういった話にはからっきしだから話を変えるのにはちょうどいい
…実際何かあったら殺すけど

クリスタ「ちがっ!エレンとはそんなんじゃ!……あっ」

別にエレンとは今まであまり話した事もないし、特に何もないと返そうとしたが
先ほどエレンに撫でられた事を思い出し、顔を赤くさせる。

ユミル「…もしかしてマジで何かあったか?」

クリスタ「な、何もない、エレンとは何にも無いから!」カアアアァ

顔を真っ赤にさせて手を上下に振り回しながら、必死に否定しても何かありましたって言っているようなものだ
これで何もないと思うのはコニーくらいだろう。

ユミル「…ふーん。そうか」

クリスタ「ほ、本当だから!信じてよぅ!」

明らかに疑いの目で見られている事に気づいて、軽く涙目になっている

ユミル(だからそうやってムキになってる段階で嘘って分かるんだよ)

ユミル「はいはい信じたから、そろそろ今日の訓練に向かわないと遅れるから行くぞ」スタスタ



クリスタ「ま、待ってよ!」

ユミル(とりあえず、死に急ぎマザコン野朗には聞かなきゃいけない事ができたな)

ここまでです
ありがとうございました

ssですが
スタートとゴールさえ決めれば大丈夫かと思ってましたが実際に書いてしまうと迷いますね

ここをこうしたほうがとかこの部分を追加しようとかして予想以上に膨れ上がってしまいます
もうちょっと単純に勢いで書けばいいんでしょうけど自分の性格上なかなか出来ない…

稚拙な文章ですがよろしくお願いします。

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