小鍛治健夜の少なからぬ幸せ (85)

健夜「ナンパされたの」

恒子「あはははははは! はぁ……、すこやんの冗談はおもしろくないなぁ」

健夜「冗談じゃないよ! 本当なんだから!」

恒子「えー……?」

健夜「あ、まだ疑ってる」

恒子「うーん……。じゃあ、仮に本当だったとしましょう」

健夜「仮じゃないよ。それになんでちょっと上から目線なの……」

恒子「いつナンパされたの? すこやんって、麻雀打ってるか、司会とかの仕事をしているか、家でごろごろしてるかの三パターンしか動きがないよね?」

健夜「……」

恒子「……言ってから思ったんだけど、これって、完全におっさんだね」

健夜「おっさんじゃないよ! もっといろいろしてるよ!」

恒子「そうかなぁ」

健夜「そうだよ! もっとこう……、例えば……、こう……、……とにかくいろいろだよ!」

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恒子「具体的には?」

健夜「えーと、服を買いに行ったりとか」

恒子「すこやんの服って大体お母さんが買ってきてなかったっけ」

健夜「……下着も服も半分くらいは自分で買ったよ」

恒子「せめて下着は全部自分で買おうよ」

健夜「甘いものを食べに出かけたりとか」

恒子「通販で済ませてたような……。通販がないやつはお母さんに買ってきてもらってたよね」

健夜「列に並んでるといつの間にか割り込まれて買えないんだもん……」

恒子「……」

健夜「おうちで料理したりとか」

恒子「それは確実にお母さんがやってるね」

健夜「……掃除したりとか」

恒子「それもお母さんだね。せめて自分の部屋は自分で掃除機をかけよう?」

健夜「洗濯……」

恒子「言うまでもなくお母さん」

健夜「休日にデートしたりとか……」

恒子「それもお母さんと」

健夜「お母さんとデートなんてするわけないでしょ! 見栄張っただけだよ!」

恒子「今更そんなばればれな見栄を張られても……」

健夜「まったく、こーこちゃんは……」

恒子「いやいや。今のは、まったくすこやんは、でしょ」

健夜「あ」

恒子「ん?」

健夜「今! 今こうしてるよ! 女子会!」

恒子「でも誘ったの私だし」

健夜「うっ……」

恒子「誘った時に『えー? 久しぶりの休みだから家でごろごろしてたいよ……』とか言ってたし」

健夜「うぅっ……」

恒子「そもそも、すこやんとだと女子?会になるし」

健夜「ならないよ!?」

恒子「あ、すいませーん! 生中1つと……、すこやんは?」

健夜「えっと、カシスオレンジで」

恒子「カシスオレンジ1つ、それと串盛りを1つ」

健夜「串盛り、良いね」

恒子「食べ物は?」

健夜「私はまだ良いかな。ホッケが残ってるし」

恒子「はいはい。じゃあそれでお願いしまーす」

健夜「次の注文はたこわさいってみようかな……。日本酒も欲しくなっちゃうかな」

恒子「……」

健夜「ん? どうしたの?」

恒子「話は戻るけど」

健夜「うん」

恒子「居酒屋でサシ飲みは女子会って言わないと思う」

健夜「!?」

恒子「あ、来た来た。生中こっちでーす!」

健夜「カシスオレンジはこっちです」

恒子「それ、言わなくてもわかると思う」

健夜「気分だよ」

恒子「じゃあ飲み物が来たところで乾杯といきますか!」

健夜「飲み始めて1時間は経ってるのに……?」

恒子「良いから良いから!」

健夜「もう……。何に乾杯するの?」

恒子「えーと……、君の瞳に?」

健夜「場所的にムードもへったくれもないね」

恒子「はい行くよー! 君の瞳に!」

健夜「か、かんぱ~い!」

恒子「それで」

健夜「?」

恒子「ナンパされたって話は?」

健夜「もういいよ……」

恒子「拗ねないでよー」

健夜「別に拗ねてないもん」

恒子「アラサーが“もん”とか言うのはどうかなー」

健夜「アラサーって言わないで!?」

恒子「なに、すこやん? 二代目牌のおねえさんでも狙ってるの?」

健夜「狙ってないよ! さすがにあの格好は無理だよ!」

恒子「そうだねえ。胸がちょっと、足りないよねえ……」

健夜「そこの問題じゃないよ!?」

恒子「話がすぐ脇に逸れるなぁ」

健夜「だいたいは、こーこちゃんのせいだよ。あっちにふらふら、こっちにふらふらって……」

恒子「私は真っ直ぐだよ。それはもう、すこやんのスタイルのように!」

健夜「うるさいよ! そこは放っておいて!」

恒子「それで、ナンパって言うのはいつされたの?」

健夜「全国大会の解説の仕事のとき」

恒子「あんときかー」

健夜「大変だったけど楽しかったね」

恒子「そうだね。……ん? それって結局は、麻雀、仕事、ごろごろの範疇の中じゃないの」

健夜「それはもういいから」

恒子「で、なんて声をかけられたの?」

健夜「うん。私がちょっと迷子になっちゃって、それで困ってたら助けてくれたの」

恒子「それ、ナンパって言うの?」

健夜「そのあとメールアドレス交換したし……」

恒子「ふーむ。それにしてもナンパ目的で人助けかー。それってどうなんかなー」

健夜「あ、違うよ。助けてもらったあとにお話してたら、ちょっと盛り上がって。それで、せっかくだからって交換したの」

恒子「へー。交換は相手が言ってきたの?」

健夜「あ……、いや、私から……」

恒子「……」

健夜「な、なに?」

恒子「それ、ナンパしたのすこやんじゃん」

健夜「違うよ! そういうあれじゃなくて! それにその子がナンパしたみたいになっちゃいましたねーって言ってたの!」

恒子「はいはい」

健夜「もう……」

恒子「ふーん。遅咲きの青春ですなあ」

健夜「遅咲きとかひどくない!?」

恒子「あれ?」

健夜「?」

恒子「ちょっと待って」

健夜「え、なに?」

恒子「さっき、“その子”って言ったよね?」

健夜「うん。言ったけど?」

恒子「え? まさか相手は高校生?」

健夜「……うん」

恒子「……」

健夜「こーこちゃん?」

恒子「……」

健夜「……」

恒子「……」

健夜「何か言ってよ……」

恒子「は……」

健夜「は?」

恒子「犯罪だわー……」

健夜「犯罪じゃないよ!? 何言ってるの!?」

恒子「すこやん、せめて条例は守りなよ?」

健夜「本当に何言ってるの!?」

恒子「でも高校生か。大丈夫なの?」

健夜「今度は何が……」

恒子「話題についていけてる?」

健夜「うん、それは大丈夫だよ。メールしてるけどそんなに困ったことない」

恒子「ザギンでシースーとかちゃんと通じてるの?」

健夜「私ですら世代じゃないよ! 第一そんなのメールする機会なんてないから!」

恒子「えー? じゃあ、どんなメールしてるの?」

健夜「おはよう、とか。おやすみ、とか」

恒子「なんか若さを感じないメールだね」

健夜「こればっかりは私だけのせいじゃないからね!?」

恒子「もうちょっと酒の肴になるようなメールはしてないの?」

健夜「酒の肴って……。今朝だとこんな感じかな」

恒子「あ、見て良いの?」

健夜「うん。大丈夫」

Time:07:32

From:ナンパの人

Title:おはようございます

本文:

おはようございます

今日は朝が早いって言ってたけど、起きてます?

こっちは晴れてて良い天気ですよー

恒子「……」

健夜「ど、どうしたの?」

恒子「いや、どこから突っ込もうかと」

健夜「え!?」

恒子「とりあえず、ナンパの人ってなに?」

健夜「えっと、実はまだ名前知らなくて……」

恒子「ええ!? だってもう知り合ってから2ヶ月は経つよね!?」

健夜「タイミングを逸しちゃって……。今更聞きづらいし」

恒子「それにしたってさー」

健夜「今のところそんなに不都合はなくてさ。呼び掛けるときも“きみ”とか“あなた”とかでなんとかなるし」

恒子「どこの熟年夫婦よ」

健夜「ふ、夫婦って! まだちょっと早いよ!」

恒子「まだって……。突っ込みどころが増えていくわー」

健夜「夫婦……。えへへ」

健夜「はあ……。顔が熱い。日本酒頼んで良い?」

恒子「良いよー。すいませーん!」

健夜「一合で良いかな」

恒子「私も飲みたいから三合にしよう。えっと、立山の、冷やで良いよね?」

健夜「うん」

恒子「立山の冷やの三合を一つ。お猪口は二つで。あと、たこわさと、んー……、白えびの刺身一つとかまぼこの刺身一つ」

健夜「たこわさありがとー」

恒子「それにしたってナンパの人って名前はひどくない?」

健夜「そうかなぁ」

恒子「そうだよー。」

健夜「だってさ」

恒子「うん?」

健夜「ナンパされたのなんて始めてだもん」

恒子「……ひょっとしてものすごく嬉しかったの?」

健夜「えへへ」

恒子「これはもう小鍛治ちょろ夜だ」

健夜「なにそれ……」

恒子「いや、小鍛治健ちょろの方が良いかな?」

健夜「どっちも良くないよ!?」

恒子「でもさ、高校生にモーニングコールされる社会人ってどうなの?」

健夜「そのあとすぐに起きたよ」

恒子「本当かなぁ。朝のすこやんは強敵だからメールくらいで起きるとは思えないけど」

健夜「ノーコメントで……」

恒子「相手への返信は……、これか」

Time:08:41

From:自分のアドレス

Title:Re:おはようございます

本文:

おはやうー

起きてたよ

朝の準備をしてて気付かなかった、ごめんね

こっちも良い天気です

健夜「あ、また変な顔してる」

恒子「笑うのも失礼かなって我慢してた」

健夜「今更過ぎるよ! そんなこと言ったらこーこちゃんの9割は失礼でできてるから!」

恒子「ぷへへ」

健夜「そんな変な笑いを漏らすくらいなら、言いたいことを言って!」

恒子「おはやうーって、これ完全に寝ぼけてる」

健夜「単なる打ち間違いだよ……」

恒子「朝の準備とか、これ絶対に嘘だよね。起きて慌てて返信したでしょ」

健夜「そ、そんなことないよ」

恒子「しかもこのあと昼まで二度寝してた」

健夜「なんでそんなことまでわかるの!?」

恒子「いやー、実は今日の昼前にすこやんちに遊びに行ってたんだよね」

健夜「初耳なんだけど!」

恒子「すこやんが全然起きないから、お母さんとお茶して帰った」

健夜「うちのお母さんと仲が良すぎるよ……」

染谷先輩が可愛すぎて辛かった人です

明日以降、のんびり更新していきます

前スレにあった1の他の17スレって何か教えてもらえない?
読んでみたい

恒子「まあ、メールは後でじっくり見させてもらうとして」

健夜「?」

恒子「馴れ初めを具体的に聞かせてもらおうか」

健夜「馴れ初めって……、えへへ」

恒子「はいはい、それはもういいから」

健夜「えっと、駅から会場に行こうとして、時間があったからタクシーじゃなくて歩いて向かったの」

恒子「結構距離がなかったっけ? あ、適当に置いといてください。すこやん、グラス下げてもらっちゃって良い?」

健夜「あ、大丈夫」

恒子「これも下げちゃってください。それで、歩いていく途中で迷子になったのね」

健夜「うん。んっ……! このたこわさ思ったより辛い」

恒子「どれどれ。お、本当だ。この刻んだ茎わさびがくせになるねー」

健夜「辛いけど美味しいね。それで、大体の方角はわかってたんだけど全然会場に着かなくて」

恒子「あの会場は結構大きいから遠くからでも見えそうなんだけどなぁ」

健夜「ビルの隙間からちらちら見えるんだけど、見えるのに近づけないから逆に焦ってきちゃって」

恒子「ふーん。麻雀の元世界ランク2位は迷子っぷりも堂々たるものですなぁ」

健夜「意味がわからないよ!?」

恒子「それで、うろうろしてたら颯爽とその子が現れたと」

健夜「そうなんだ。だんだん時間も迫ってきてるし、どうしようって焦ってたら、『どうしました?』って。今考えたらそこからタクシーを拾えばよかったんだけどね」

恒子「気が動転するとそういうことあるよねー」

「どうしました?」

健夜「え? えっと……」

「怪しい者じゃないですよ。なんか困ってそうだったので」

健夜「あ、はい。困ってます……」

「落し物でもしたんですか?」

健夜「いえ、あそこに見える建物まで行きたいんですけど、その、迷子になっちゃいまして……」

「あの建物って……。奇遇ですね。目的地は同じみたいです」

健夜「そうなんですか? じゃああなたも麻雀の」

「そうなりますねー。そういうあなたも?」

健夜「えへへ。そうなりますね」

「……」

健夜「?」

「いえ、別に。じゃあせっかくなので一緒に行きましょうか」

健夜「……お願いします」

「それにしても駅から歩くのって遠くないですか?」

健夜「昨日まではバスで行ってたんですけど、今日はだいぶ時間もあったので行けるかなー、と思っちゃって」

「ははあ。バスだとすぐ着くからそう思うのもわかりますよ」

健夜「あなたはずっと歩いてるの?」

「そうですね。応援しかやることないんで、早起きしたときは暇潰しがてら歩いてますよ」

健夜「出場選手じゃないんだね」

「残念ながら地方予選で負けちゃいました」

健夜「そっかー。出てたら応援できたのにな」

「そういうあなたは選手なんですか?」

健夜「違うよ。今回は勝ち負けが関係ない立場なの」

「そうなんですか。今回はってことは以前は全国に?」

健夜「そうだね。たまに、もう一度あの場所に立ってみたいなって思うことがあるよ」

「昔はレギュラーだったなら尚更そういう思いも強まりそうですね」

健夜「うん。でもそんなに昔の話じゃないからね!?」

「ははは、わかってますよ」

健夜「あ、会場がだんだん近づいてきた」

「ここまで来たらあとはこの道沿いに行けば着きそうですね」

健夜「そうだね。……えっと、せっかくだからこのままお話しながら行きませんか?」

「とっくにそのつもりでした。ではここで、サヨウナラって言っても、結局同じ道を行きますしね」

健夜「あははは、それもそうだねー」

恒子「ふーん」

健夜「だいたい、こんな感じだったかな」

恒子「ふーむ?」

健夜「え、なに?」

恒子「いや、その子ってひょっとして……」

健夜「?」

恒子「やっぱりいいや」

健夜「ちょっと! 気になるんだけど!?」

恒子「まあまあ」

健夜「もう……」

恒子「で、実際のとこどうなの?」

健夜「どうって?」

恒子「その子と付き合ったりとかそういうのはないの?」

健夜「えぇー……。うーん……」

恒子「顔がにやけてるよ」

健夜「でも、相手は高校生だよ?」

恒子「そんくらいの年の差カップルなんていくらでもいるよー」

健夜「そ、そうかな?」

恒子「相手が一年生で15歳だったとしたら、アラフォーのすこやんとは22歳差か……。ちょっときついか?」

健夜「アラサーだよ!? 12歳しか違わないから!」

恒子「12歳も結構でかいような。同じ干支じゃん」

健夜「後押ししたいのかやめさせたいのか、どっちなの!?」

恒子「いやー、私は常にすこやんの味方だよ」

健夜「疑わしいにも程があるよ……」

恒子「すこやん的にはお付き合いできたら良いなってとこかな」

健夜「うん、まあ……」

恒子「高校生なんて年上に憧れるところがあるんだから、年の功を活かして積極的にいってみたら? 大人の女って感じでさ。年の功を活かしてさ」

健夜「年、年うるさいよ! ……今、ちょっと積極的に動いてるんだ」

恒子「お? 何してるの?」

健夜「今度の連休で遊びに行ってみようかなって思ってて、相手に話を振ってみたんだ」

恒子「おー。良いじゃん、良いじゃん。なんて返事がきた?」

健夜「あっちも乗り気っぽくて、是非遊びましょう!って」

恒子「なんだー。思ったより動いてるじゃん」

健夜「そうかな?」

恒子「くれぐれも条例には……」

健夜「そんな心配は良いから!」

恒子「いや、そこは大事なとこでしょう。あれ、すこやんの携帯光ってるよ」

健夜「メールだ……」

恒子「例の子?」

健夜「うん」

恒子「良いですなー。そんな色っぽいメールとは無縁な私の携帯が泣いてるぜ。……あ、こっちは着信があった。……局から?」

健夜「お仕事の話かも? 電話してきて良いよ」

恒子「そうするねー。ゆっくり戻ってくるから気兼ねなくラブラブメールでもしてて」

健夜「まだそういうのじゃないから!」

恒子「いやー、お待たせ。今度ある地方の麻雀大会の話だったよ。……って、どうしたの、すこやん?」

健夜「…………」

恒子「テーブルに突っ伏して、寝てるの?」

健夜「…………」

恒子「ん? 携帯? 見ろってこと?」

健夜「…………」

Time:19:36

From:自分のアドレス

Title:こんばんは

本文:

今はお友達とご飯を食べています

今度の連休に遊びに行くって話だけど、本当に行っても大丈夫かな?

Time:19:43

From:ナンパの人

Title:Re:こんばんは

本文:

外食か

良いですね

その話なら大丈夫ですよ

来てもらうのも悪いので、こっちから遊びに行きましょうか?

Time:19:46

From:自分のアドレス

Title:Re:Re:こんばんは

本文:

そこは気にしなくても大丈夫だよ

学生には旅費も結構な出費になるでしょう?

Time:19:50

From:ナンパの人

Title:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

それを言ったらそっちも学生じゃないですか

それじゃあ、遊びに来たときはご飯奢りますよ

Time:19:54

From:自分のアドレス

Title:Re:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

え?

私は学生じゃないよ?

Time:20:00

From:ナンパの人

Title:Re:Re:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

あれ?

この間の大会に来てたのって自分の学校が出場してるから応援に行ってたんじゃ……?

Time:20:03

From:自分のアドレス

Title:Re:Re:Re:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

あの時は解説の仕事だよ

Time:20:07

From:ナンパの人

Title:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

解説の仕事ってことはプロの方だったんですか

と言うことは結構年上なんですかね

恒子「あちゃー……、やっぱりか」

健夜「……やっぱりってなに」

恒子「いやあ、さっきの話聞いてたら、すこやんのことを学生と勘違いしてるんじゃないかなって思ったのよ」

健夜「……」

恒子「まあ、若く見られてたってことで良いじゃない!」

健夜「ははは……、そうだね……」

恒子「うわあ、暗いなぁ……。そのメールには返信したの?」

健夜「ううん……まだ」

恒子「しておきなよ。全然気にしてないかもしれないよ?」

健夜「そうかなぁ……」

Time:20:29

From:自分のアドレス

Title:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

私が大会に出場してたのは十年前になるよ

だから、ちょうど一回りくらい違うかな

恒子「なんとも自虐的な」

健夜「別に隠してたわけじゃないし……」

恒子「そんな不貞腐れなくてもすぐに、アラサーですねって返ってくるよ」

健夜「……突っ込む気力も起きないよ。今日はそのネタ禁止ね。本当に怒るから」

恒子「……」

健夜「……」

恒子「……」

健夜「……」

恒子「……」

健夜「……」

恒子「……」

健夜「……」

恒子「返信来ないね」

健夜「……」

恒子「まあ、今の時間なら高校生はお風呂かもしれないし」

健夜「……」

恒子「30分経っても来なかったらそん時は追撃メールでも送ろうか!」

健夜「……」

恒子「……」

健夜「……ふふ」

恒子「……」

健夜「……」

恒子「怖いよ」

健夜「……」


恒子「気を取り直して何か注文しよう!」

健夜「……」

恒子「アラ――」

健夜「……」

恒子「新政の六號でも飲もうかな」

健夜「……」

恒子「アラ――」

健夜「……」

恒子「アラ汁も美味しそうだなぁ」

健夜「……」

恒子「アラ――」

健夜「……」

恒子「あらびきハムとソーセージセットも美味しそうだね」

健夜「……」

恒子「アラ――」

健夜「……」

恒子「新巻鮭も良いね」

健夜「……言いなよ」

恒子「え?」

健夜「言いたいならアラサーでもアラフォーでも言いなよ! 何さ、新巻鮭って! そんなの居酒屋のメニューにあるわけないでしょ!」

恒子「あるよ? ほら、ここ」

健夜「あったよ! 何でそんなのあるのさ!」

恒子「いや、私に言われても」

健夜「新巻鮭は置いといて! 言いたいんでしょ!? ほら、言いなよ! あわれみを込めて言いなよ!!」

恒子「えー……」

健夜「さあ! ほら!」

恒子「ええと……、すこやんのアラフォー……」

健夜「アラサーだよ!!」

恒子「……今日のすこやん、めんどくせー」

健夜「もう! 今日は飲むよ! メニューの上から全部いっちゃうよ!」

恒子「明日に響くよー?」

健夜「老い先短いってこと!?」

恒子「ああ、こりゃもう駄目だ」

健夜「ピンポン! ピンポン押して!」

恒子「ピンポン……? 呼び出しブザーのことかな?」

健夜「他に何があるの!?」

恒子「からかいたいけど更に面倒くさいことになりそうだからやめておこう……。あれ?」

健夜「なに?」

恒子「携帯光ってるよ?」

健夜「!?」

Time:20:51

From:ナンパの人

Title:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

すみません、お風呂行ってました

年上のお姉さんですね

じゃあ今度の連休はお言葉に甘えて来てもらっちゃおうかな

美味しいご飯、探しておきますね

今から楽しみです

恒子「おー。良かったね。年の差は全然気にしてないみたいよ?」

健夜「……えへへ」

恒子「同じ干支になるのにねー」

健夜「お揃いだね」

恒子「今日のすこやんは上がり下がりが激しいなぁ」

健夜「返信どうしよう……。楽しみにしてます、で良いかな」

恒子「良いんじゃない? アラフォーらしく盆栽の絵文字でも付けようよ」

健夜「アラサーだよ、えへへ」

恒子「そこは突っ込むんだ」

Time:20:57

From:自分のアドレス

Title:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:こんばんは

本文:

私も楽しみにしてますね

そう言えばお互いにまだ名前を知りませんでした

次にあった時に改めて自己紹介をしませんか?

健夜「ああ、どうしよう。なんかドキドキしてきた」

恒子「いまさら?」

健夜「だって、こんなの初めてだよ?」

恒子「何なら付いていこうか? 動画撮って配信しちゃうけど」

健夜「本気で怒るよ!?」

恒子「さすがに冗談だって」

健夜「もう……」

恒子「名前聞けたら教えてね」

健夜「聞いて何をするつもりなの……」

恒子「何もしないよー? 単なる好奇心」

健夜「なら良いけど」

恒子「会って何したかも教えてねー。あ、話せる範囲で良いよ? 条例違反なことを話されても反応に困るから」

健夜「しないし、話さないよ!?」

恒子「んじゃあ、ここは幸せいっぱいのすこやんの奢りってことで良いよね」

健夜「ええー……」

恒子「まあまあ、前祝ってことで良いじゃない」

健夜「うん、じゃあそれで良いよ」

恒子「やった! すいませーん! のどぐろの刺身と塩焼き2人前ずつと、越乃寒梅の乙焼酎ください」

健夜「奢りになった途端に酒と肴のランク上がりすぎじゃない!?」





終わり

何度かネット環境がないところに飛ばされていたおかげでちょっと遅れました

一応これで終わりのつもりです

続きは何も考えてないので思いついたらと言うことで……

次は基本に戻って染谷先輩か、変化球でニワカ先輩になるかと思います



>>34

そのうち十篇は別作品になりますが、全部タイトルを挙げた方が良いですか?

すこやんは突っ込み型ヤンデレ

健夜「私だけを見て……」

健夜「他の女なんて見ないで、ずっと私だけを……」

健夜「私、だけ、を……」

健夜「……って、近いから! どんだけ寄ってくるの!?」

健夜「いや、嬉しいけど肌とかをじっくり見られるとちょっと恥ずかしいって言うか」

健夜「え? 思ったより若い肌をしてる?」

健夜「えへへ、そうかなぁ」

健夜「まるで三十代って……、まだ三十路じゃないから! いくつだと思ってたの!?」

健夜「アラフォーじゃないよ! アラサーだよ!!」

健夜「……アラサーとか言わせないで!」

健夜「あなたは寄り過ぎずに私だけを見てたら良いの! 物理的じゃなくて精神的に!」

健夜「他の女を見てたら、その女を和了り殺しちゃうんだから」

咲関連はこのスレを合わせて八篇です

・まこ「京太郎だけか」京太郎「ええ」

・咲の登場人物であるところの染谷まこに関する千夜一夜物語

・球磨川『僕は悪くない』 まこ「いや、どう考えてもおんしのせいじゃろ」

・abc in 咲

・咲の登場人物であるところの染谷まこ及び他の人物達に関する一千一秒物語

・フランケン「そろそろ混ぜるです!」久「……」まこ「……」竹井「……」

・染谷先輩が可愛すぎて辛い

・小鍛治健夜の少なからぬ幸せ


残りの十篇は進撃SSです

興味があればどうぞ

・アルミン「襲い来るモノ」

・ハンジ「あなたの言葉を胸に、私は生きていく」

・ライナー「俺は、こんなことには負けない」

・アニ「陽だまりを歩く」

・エレン「お前らやる気出せよ!」

・エレン「涼しき夏、暖かき冬」

・ミカサ「残酷で美しく、淡々とした世界」

・ジャン「ミカサと付き合うまでの十五日間」

・クリスタ「秘密は言えなかった」

・ミカサ「まだ名前はない」

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