澪「けいおんの短編集です」(1000)

                                |    はじまるよー
                               \___  ______
                                 )ノ

                         ,;;==========:、
                      i=i/  '´   ヽi;:| .l
   t―-,、      .t―-,、.      |:||  l |_i」ハi_j」 || l

  く   \     く   \     l ||  | |(|l゚ ヮ゚ノ| ||  l
   ),,-‐''''"~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'|'=' ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~ヽヾ ̄ ̄~v~ ̄ヾヽ

   /_________,|_____|_ 二二二 ̄ ̄ ̄~iOO/E三:三ヨOO)
  iL_   /⌒ヾ.      |_        |      /⌒ヾ======-------===i
    ~~"'''ii (*) i____,,|_____l___ ii (*)に二O0;>‐[二]‐<0O;)
        .ゞ_ノ ̄ ̄ ̄ゞ三ノ           'ゞ_ノ ̄ ̄ ̄ゞ三ノ

第一話「誕生日!」

7月2日 今日はムギちゃんのお誕生日です!


                        ,  -─ -  、
                      イ          `へ 、
                   /                \
                  /                  ヘ
.                 /    /!              ∧
                /   //|    ∧           ハ
                /   /∠_人   /i^\          !
                {  /    | ハ / ゝ-ヘ     i      |     
.                | Ⅳ,,,=x   l/ ∨    ∨   !      |
                ! |彳モハ     ィ=x  ∨  ./     |
                | | 辷ノ     ハチハ. |  /     /

                γ|⊂⊃ ,    辷jノ ′|  ト、    .|
                ノ {        ⊂⊃ rハ / } /   ∧
                人 \   r==、    / ! i | /_ノ/     人
                / ハ、 \  ヽ ノ   , ィ   ノ i´/` ̄ \   \
                !x  ヽ  ヽ __ /   /´ /| (     ヽ    \
.               || 〉、 |   |  /   イ / { \    }     ヽ


音楽室!


律「ということでムギのために私たちがお金を出し合ってバースデーケーキを用意したぞ!」ジャーン

紬「……!みんな…!ありがとう!!」

梓「さぁムギ先輩、ローソクの火を吹き消しちゃってください!」

紬「わかったわ!」


紬「フー、フーッ! あれ……なかなか消えないわね……?」

唯「ムギちゃん!もっと強く吹かないと!」

紬「わかったわ! ………フーッ!!」

澪「……あ、1本だけ消えた」

紬「……あれー?」ショボーン


澪「ムギ、深呼吸して息をたくさん吸い込んでみたらどうだ?」

紬「たしかに、その方がいっぱい息を吐けそうね……ありがとう、澪ちゃん。やってみるわ!」

紬「スゥー……フーッ!!!」


梓「……火がゆらめいただけですね…」

紬「全然消えない……」ズーン


澪「うーん?なんで消えないんだろう……?ムギってもしかして、バースデーケーキの火消すの、苦手?」

紬「うぅん。苦手もなにもバースデーケーキのろうそくを消すのは今日が初めてだわ」

律「へぇ……なんか意外だな……てっきりムギの家のことだから、毎年でっかいケーキを用意して、盛大にパーティーをして祝ってると思ってたんだけどな」

紬「いえ……パーティー自体はしているんだけれど……その、こんなこと言うのも何だけど、私のうちのケーキは ローソクが立てられないほどイチゴがびっしりと敷き詰められていたから……」

律「金持ちすげーな!!」


唯「ねぇー、もう火は消さなくていいんじゃない?そろそろケーキ食べたいよー」グゥー

澪「たしかに、あんまりこんなこと長くやってても仕方ないしな……」

澪「まぁはじめての挑戦だし、上手くできなくたって仕方がないよ。大体どうせローソクは食べるときとっちゃうんだし」

梓「そうですね。じゃあローソク取っちゃっていいですよね?ムギ先p」

紬「待って、梓ちゃん!!」

梓「!? な、なんですか……?」

紬「もうちょっとだけ、頑張らせて…?その…、みんながせっかくローソクまで用意してくれたんだから、ちゃんと火を消しておきたいの」

梓「……!(ムギ先輩の目が真剣だ…!)」


梓「……わかりました。では、もうちょっとだけ頑張ってみましょうか」

紬「! あ、ありがとう、梓ちゃん!」


唯「えー!?あずにゃん、それじゃ私がケーキを食べられなくてもいいって言うの!?」

梓「いつもムギ先輩のケーキ食べてるんだから 少しぐらい我慢してください!」

唯「……はーい」


律「でも、息をたくさん吸っても火は消せなかったわけだし……もうこれ以上どうしようもないような…」

紬「大丈夫よ、りっちゃん!とっておきの方法があるわ!」ピポパ

プルルル……ガチャ

紬「もしもし?斉藤?」

一分後


ガチャ

斉藤「紬お嬢様!お申し付けられたもの、お持ちいたしました!」

紬「ありがとう、斉藤。もう下がっていいわよ」

斉藤「かしこまりました」バタン


澪「……電話してから、随分早く来たな」

律「…で、ムギ。私にはその頼んだものが扇風機にしか見えないんだが……」

紬「その通りよ、りっちゃん! この扇風機で風を起こせばローソクの火は消えるはずだわ!」

紬「とりあえずスイッチオン!」ブォーン


梓「……うーん、今のところ、火が消える気配はありませんね……もうちょっとローソクに近づけてみてはどうですか?」

紬「そうね。アドバイスありがとう、梓ちゃん」ブォーン

唯「……近づけてもダメかー。ムギちゃん、もっと風を強くできないの?」

紬「一応、最大パワーのスイッチを押したんだけれど………あら?何かドクロマークのスイッチがあるわ」ポチッ

澪「え」

ブオォォォオオン!!!

律「のわぁ!!す、すげぇ風だ!!」

澪「た、立っていられない……」バタッ

唯「ふ、吹き飛ばされそうだよー!」

梓「ム、ムギ先輩、とにかく一旦止めてくださーい!!」

紬「ご、ごめんなさい」ポチッ


律「ハァ…ハァ……、すっげえ威力だった…」

唯「飛ばされるかと思ったよー…」

澪「…これだけの風だったらローソクの火も……」チラッ


澪「……3本しか消えてない」

紬「えぇー!?」ガーン


唯「まったく、あずにゃんもローソク立てすぎなんだよ!一体何本立てたのさ!」

梓「いや……ムギ先輩が18歳になるので18本ですけど…」

唯「てことはあと14本!?」

律「…まだまだ先は長いな……」


澪「でも、こんな高威力の風で火がほとんど消えないなんて……もうどうしようもないよ…」

紬「いや、まだ手はあるわ澪ちゃん!」ピポパ

紬「もしもし斉藤?」


一分後


斉藤「お待たせしました紬お嬢様!」ガチャ

澪「だから はやっ!!」

紬「ありがとう、斉藤。……これならきっといけるはずだわ……」

唯「……?ムギちゃん、それは何なの…?」

斉藤「それはモンスターボールというものでございます」

梓「モ、モンスターボール!? ポ○モンの!?」

斉藤「はい。ちょっくらDSの画面の中に入って取ってまいりました」

斉藤「お嬢様のためならたとえ火の中、水の中、電子ゲームの中……どこだって参上する覚悟でありますから。では皆様方、ご武運を!」バタン

律「一体何者なんだよあの人……」

紬「まぁとにかく! これでローソクの火が消せるはずだわ!行け、ピジョット!」ポンッ

ピジョット「ピジョー!!」


澪「うわぁ!!ボ、ボールから、鳥が……!」

唯「で、でもこの子なら…!ローソクの火を消せそうだよ!!」

紬「私もそう思うわ! ……行くわよピジョット!『ふきとばし』!!」

ピジョット「ピジョー!!」バサッバサッ!!

ゴォォォォォオオ!!!!


澪「……!!!な、なんて風だ…!さっきの風とは比べ物にならない強さだぞ!!」

梓「な、なにかにつかまってないと本当に飛ばされそうですー!!」

律「う、うわぁ!!私のカチューシャが!!」ゴォォォォォ

唯「あぁー!!りっちゃーん!!あぁ……りっちゃんが校庭のあんなところまで…」

律「だからカチューシャだって言ってるだろ!」

梓「あぁー!もう私まで飛ばされてしまいそうです!ムギ先輩そろそろやめてくださーい!!」

紬「わかったわ!戻りなさい、ピジョット!」ポシュウ


梓「ハァ…ハァ…ハァ……、飛ばされるかと思った」

唯「…りっちゃんのことは一生忘れないよ……」

律「だから私は飛ばされてないっての!」

澪「でも、これだけの風ならきっとローソクも!」バッ


澪「……こ、これだけの風なのに…!4本しか消えてない…!」

紬「えぇー!!?」ガーン


律「そ、そんな……さっきよりずっと強い風だったのに…!」

唯「こ、こんなことってありえるの…?」

梓「もう……これ以上どうすれば……!」

紬(もう……ダメなのかしら……)ハァー…


しかし その時奇跡は起こった

ムギがため息を吐いた次の瞬間

瞬く間にローソクの火が続々と消えていった

数秒後には 18本のローソクの火は全て消えていた



律「!?え…?何が起こったんだ……!?」

澪「ロ、ローソクの火が……消えた…!!」

紬「や、やったー!!」

諦めムードが漂っていた部室の空気は一変し、気が付けば歓声が上がっていた


梓「ま、まさかムギ先輩のため息が残り全ての火を消してしまうなんて……!ミラクルです!!」

唯「と、とにかくムギちゃんおめでとー!!」ムギュー

紬「ありがとう、唯ちゃん!!///」

唯と紬は抱き合い 喜びを分かちあった


律「よっしゃー!ローソクの火も無事消えたことだし!みんな、ケーキを食べるぞー!」

紬「おー!」


澪「……その前に、することがあるだろ? ちゃんとムギのことお祝いしなきゃ!」

律「…そうだな! よーし!みんな!!せーの、でいくぞ!」

唯律澪梓「せーのっ!」

唯律澪梓「ムギ(ムギちゃん、ムギ先輩) お誕生日おめでとうございます!!」

紬「…!! みんな……!ありがとう!!!///」


ガチャ

さわ子「あー、あっつーい………ムギちゃん冷たいお水ちょうだーい……」

律「なんだよさわちゃん。そんなだらしない格好して……」

さわ子「仕方ないでしょ、暑いんだから………あ!ちょうどいいところに扇風機があるじゃなーい!ちょっと借りるわね!」ポチッ

紬「あ、そのボタンは……」

ブォオオオオン!!!

さわ子「…ぶっ!!あっ!わ、私のメガネがー!!」ゴォオオオ



唯律澪紬梓「………あーあ……」



第1.5話「フット・イン・ザ・ドアテクニック」

音楽室

                 _

                 /二})ー.、__
               ,.ノ: : : : : : : : : : : :、>.、
             /: : :/: : : :イ:l: : : : : : :ヽ: :\
           //: : /: : : :/:|:|l: : :|:|:.: : : : : : : \

          .//:/ノ: : }l: : :/::ノ|: : : :|:ヘ:::.: : : : : :\:ヾ__ ノ
         .//: :j:l: :|l f 、://⌒!: : : :|:! ヽ::.: : : : }l: :ヽ \_,
        //:/: lj: :|: : :>    ヽ: |: :!  \:l: : : :\: :i
       /:ノ/: :j: l: :|: :/≧斥  !: |:.|   ヽ; : : : ヘ:i: i  

       j: :/ノ: :レl: : |:イ/ /:ん  ヽ:ヘlイテx  |: i: : }ミlll 
       |:/:j: : ノ |: : |:| 弋)ソ   リ /:んヽ |: l:|: jl:トミ(  ねぇねぇりっちゃん_
       イ: : : i:|::|: : : | XX      弋)ソノ .|:!: |: lノノノノ   お願いがあるんだけどさー、
       Ⅳ: :.|:l:::|: : : |      ′  XX /jノ|: |⌒{ ) (ヽ  私のティーカップここまで持ってきてくれない?
       |ハ: :|:|:|::||: : 人    r ,     /ーイ|: |__ノイ: <´ -、
        !: ハ:|::||: : : |:>       ノ─イ|::|:j_ノ|:::ノ|:)-ノノーj

        乂 ヽヘi: : :.|ソ:::| >  < )l\__, j::!:ノ/l__}_ ´  /
      _ / ̄ ヽ \:|r- '     l__ -イ´ノ′ノヽ   \/
     }  \   }: : : :}- 、      __ レ─- 、  イ l    }
     j     \ } イ: : :|l_~l-,、__ __ ,-、/     ヽ ーイ    i
    / ヘ   \ヽl|ο: :i `'ー'-r_j-'イ_     Y     ヽ
    ! ,  `丶 _ ヽ}l二二l     /′ `  、  イ      )


            ,  -‐  ̄ ̄ ‐- 、
          /: : : : : : :!_=ニニニニニ=_` 、

         , ' : : : : : : : : |_ -‐-ヽ__ |_-、`:` ‐、
        /: : : : : : : : : :,'´         `ヽ,:i: :',
       ,': : :|: :|: : : : : ,'    _       ',l: : l

       ,' : : :|: :|: : : i : ! -‐ ´     ヽ   i: : |
       i: : : :|: :|: : : |: :|           ` |: : |
        |: : : :|: :|: : : |: :| x==、      __  |: : :! 
      ,': |: i: l _|: : : i: :|{.い:ハ     んミx ,': : :|   まぁそれぐらいなら……  

      / : |: ', / |: : : :' :|弋_:ノ     !::リ } , ::i : ,      
     ./ : /!: :`l l : : : |`!        ¨´ ,' : |: ,'
    /:/ .|: : i:|ヽ', : : :!         ,   ': : ,'V     ほい、持ってきたぞ
    '´  レ´ .!: : ',: : |      __    ./: : ,
.            |: :|:iヽ,:|` 、   ´ `  /: : /
          レ'├i、`、  ` -  _ , ' | : :/
           /i   ' `' 、 .ト、    レ´
       ,  ´  |   .',  .`,| rヽ 、
    , '´       |.    ,  /ミ/h!',ヽ` 、
   /  \     |     ', / |.i.|ヾ', 丶 ` 、
   ,     ヽ    `‐-,   ,.  |.| ! ',ヽ/   i

               ,  -── ‐- ,
           ,  ´ : : : : : : : : : : : : : : ` . . 、
          / : : : : / : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
           , ' : : :/ : i: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :ヽ
        / : : : /: : : :|: : : : : : : : :', : : : : : 、 : : : : : : .
.       / : : : /\: : ;| : | : : : : : : ト, : : : : : :' : : : : : ::',
      ,' : : : :/, : : `/、', :! : : : : : : | ヽ : : : : :ヽ : : :', : '

        ' : : : :,' : \/  ' :',: : : : : :| /\: : : : :', : : |: : ',

       ': : : : :| : : :/    ヽ'、: : : : ::|    ', : : : i : : !: : :'
     |: : : : ::|: : :,'     ` ヽ : ::|     , : : |: : :| : : |
     |: :|: : : ',: : |  xテチミ   ヽ; ::| テチミx .', : :!: : :!: ::|  ありがとーりっちゃん!
     |: :|: : : :ヽ :!  レ::ハ     ヽ|レ::ハ } | :;' : : | : : |    じゃあついでに紅茶も注いで!!
     |: :|: : : : :`'| .弋__:ノ       弋__:ノ  | |: : : |: : :'!    
     |: :|: : : : : : ,        ,        'リ: : : :| : : |
     |: :|: : : : : : :',               ,' : : : : :| : : |
     ',| |: : : : : : : :、      i  ̄ l     ': : : : : : !: :i |
      !`! : i : : : : : :\    '、  ノ   /i : : : i: : :|: :l|
       ヽ、! : : : : : !: : _' 、     , _': : :|: : : :,': :/: ∧|
      , -‐、-、; : : : |r‐| | ` -  ´ |, |-、:|: : :/__/r-'、 !
    / / i-,ヽ : |.{´  \   /  .! .: |: :/_.}‐'-、 ヽ
    ,|   ´  / /_ .ヽ,!:|    `>_<    |.: .:レ'.:{ \ `  i
   /.:|    ' '  }.: .: .:!   , ' , | i ヽ  ' .: .: | /ヽ,     |.ヽ
.  | .:|.      /.: .: .: |.  / /i .| | ', ヽ / .: .: | ヽ,      .|.: .|

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           ,_ - . _´ -────- 、` '. . .、
         _/: : |‐ , -‐ ´ ̄ ̄ ̄ ̄ `' ‐'、: : : ヽ

          , '/: : : !´ : :、_: :\: /: :/: : : :', : : : :ヽ
       /: :!: : : :|: /      ̄ ̄  ̄ ` ヽ', : : :i: :ヽ
      ./:: ::| : : : |´               , : :l : : i

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      |: : : | : : : |    \      /     ',: ! : : l
      |: : : | : : : |     ヽ     ´         i : : : l
      |: : : | : : : |            xテチミ   | : : : ',
      |: : : | : : : l  xテチミx      イ:ソ:ハ }  ! : : : : '   ヤダよ
      |: : :_|: : : : , { ん::ハ      '、こ:ノ   ': : : : : :'    なんで私がやらなきゃならないんだ
      |: : i |: : ',: :',  辷ノ.              | : : : : i: |
      レ': `|: : :ヽ; ,         '       |: : : : i:l: !
     ノ : : : !: : : : `、             u  !: : : : |:リ
    ´ ‐-|: : :| : : : : : i        ‐-     , .' i: : : : |、ヽ
      ノ: : :',: :i : : : :',\    ´     /: : !ト,: : : l `ヽ

      '´ ‐-‐| /ヽ, : : :,-,` 、      /、ハ / .|: : ,'
         リ rニ`-‐‐`, `' 、 ' -‐´ /  `‐、-‐.|: /‐ 、
         /       ` 、 \  /、   / i .レ   ヽ
        /          ヽ, ヽ i ヽ ./ |      '

.       /             ,  i__ rl {  !       '
       /              ,\ i | /- |     i   ',
      ,               l  `.|中ミx     ,'   ヽ

              _
         ,  '  ̄ : : : :  ̄ ` . . 、
       , ´ : : : : : / : : : : : : : : : : \

      / : : : :/ : : / : : : : ヽ : : : : : : : ' ,
     ./: : : : : / : : ,' : : : : : : :| : : : :ヽ; : : :ヽ
    /: : / : :/、 : : |:i、 : : : : :| : : : : ヽ, : : : '

    , : : / : :,': :ヽ ,イ:! ',: : : : : :!ヽ : : : : : :', : : :.',
   ,' : :/: : /\ :/ リ|´ヽ: : : : :|ヽ_', : : : : : ヽ: : :'

   i: : :! : : : : : /     .', 、: : !.、  ヽ : : : : | :|: :i
   |: : |: :! : : : '  __ノ   ヽ!ヽ| ヽ _ ヽ; : :i | :|: :|
   |: : :v:|: : :/         '.     i、: |リ: |: :|
   |: : :l: |: :i:i   ≡=-      -=≡  | V : : !: :!  えー!?なんで失敗したのー?
   |: : :|: :V: |,       ,       ,' : : : :| |   フット・イン・ザ・ドアテクニックなのにー
   |: : :| : : : | , u              ' :i: : : :| |
   |: : :| : : : |`'    r‐‐-‐‐、   / : | : : : :|: :|
   ヽ : !: : : :| : :\  .`´ ̄`´ ./ : : l: : : :| i

    \! i: :|: : : :ハ' 、 _,   イ、: : : : | : : i: | /
      `!ヽ |-‐ ´|  \  _ ノ  i` ‐-| : :ノレ´
   _ /´ `    !  /ヾr,ト-ヽ  .|   レ´ i` ‐ ,
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     |: :|: : ! u             |: : : :| :|

     |:/: !: : :| x==x      x==x  | : i: :|V
     |': r|: : : ' { ん::ハ      ん:ハ } .!: :': :h|  ふっと……?
     /:: :',| : i: :', .弋__:ノ     弋_:ノ  ' ,': :,' !'、   なんだそのふっとなんとかテクニックって
    , : :/:i.!: :ヽ; ,             ,':/: ::!´i: ヽ

    //|: !:', : : ヽ,       '    u  i´: : :': :|\`、
   ´   |/ : ' : : :|      __       /|: : /: ::|  `¨
     ./: :,イ:', : |:\    ´ `    /,イ: :/ \|
     /' ´  レ ',::|ヽ: : 〉  、  , イヽ:/ .|:/  __
      , -─ヾ!-‐/ |_  ` ´ / .|ヽ-! ´  ` 、
     /       |   ヽ /   /         ',
      /.         |  /ヽ|/´ヽ  /          ,

    ./    i    レ' 〉.r-ノ V           |
    |     ,     .///u i.',      /       |
    l       ',    // i |.|.|i.|     i /       ,'
    ',      '   { l .// !.!'.!    .l'       /、
    }       ',  ', `/| .| '/    /        ,' !
    |       '  ヽ' || .レi    /         /

                  _
             ,  ' ´ : : : ` . . . . 、
           _/ : : : : : : : : : : : : : : : : \
         , '´ : : : : : : : : : : : : :i : : : : : : : : :ヽ
        / : : : : : : : : :/:: : : : : :|: : : : : , : : : : : ヽ

         ,' : : : : : : : : :/ : : : : :/| : : : : :| : : : : : : :'.
       ' : : : : : i : : : i : : \/  .|: : : : : ト, : : : : : :i: ',
       ': : : : : : :| : : : !: \:/  , '; : : :i: | .', : : : : :| : ,
      |: : : : : : : !: : : :|: : :/   ヽ_.',: : |: !  , :i : : :! : |
      |: :/: : : : :| : : : |: :/ x==x  ヽ/レ .‐´V: : i |: : !
      |:/: : : : :/| : : : レ { .んメ:l   ´  テミx, |:: :|:|: :/ つまり最初に簡単な要求をして応じさせれば
      |' : i : : :l .| : : : |  .辷::ノ     レ'::/ ,i: // : |   難しい要求も飲ませやすくなるってテクだよ!
      ! : :|: : ::ヽ| : : : |          ` ´./.レ'´|: :,'
       |: :| : : : | : : : !        ,   ' : : : :! /
       |: :| : : : |: : ::|             ,': : : : :レ
       リ、: ', : : : :! : : : ! ヽ     ´`  ,.イ|: : : : /
        `'_ヽ、_ !: : ', |  `  、 _ ,  ´: :/':! : : /
      / `\  ヽ; ヽ|,   /、  レ'_レ' | : :/
     /´¨ `' .、.\ V' ',    ヽi  `iヽ レ´
    /       ' , \  ヽ-、 r‐ |   / ト、
   ,       ヽヽ .\  ',    ,!  / /  i
   |         ヽ `' 、 ヽ, ' ` ‐´ | / / i |
  ノ          ,   `‐-ヽ',  |i <   .| !
  |             |    〈 .'|  | /   ! |

                 ,  -──-  _
             ,  ´ : : : : : : : : : : : : : :` . . 、
           , '´ : : : : __ _ : : : : i : : : : : : : ヽ
         /: : , - ´_ -─‐- `__ ‐ |: : : : : : : : : ヽ

      r ' ´: : : /‐ ´ : : : : : : : : : : : ` ' ', : : : : : : : : : :'
      |: : : : |: |: : _: :ヽ|: :/: _ -‐- __ : |: i: : : : :i : : : :'

      | : : : |: |/  ` ‐-‐ ´     `¨! !: : : : :|: : : : i
      ',: : : :!: |               l | : : : : |: : : : :!
       l: : : | :|  、       /   ',| : : : : |: : : : :|
       .'; :! | :|   \     ´       .| : : : : |: : : : :!
       ! l: ', :!l  x==x、     ィxテミx | : : : : |、: : : :|
       V: : ':|:', { 彳:i      .iシxl } |: : : : ::| l : : :ヽ   なるほど……そういうことだったのか
        |: : :リ: :'  弋リ     弋_ノ  .! : : : : |/ : i : : \    よーし、待ってろ唯
        |: : : : : :',                 |:: : : : :|: :', |─ ‐ ヽ    私がお手本を見せてやるから
        |: : : : : : |,    '          | : : : : |: : \
        |: i : : : : |ヽ    - 、    /|: : : : :!|`ヽ, ヽ、
        ヽ|', : : : | f, \      ,イ´/ |: : : :/リ    ̄
         ` ヽ : :|-‐ノ\.`' ‐-< ´ / i .|: : :/‐- _
         /´ ヽ,| ト,  rヽ.  ヽ/  .|. ! :/      ̄__‐ 、
        |     ` .| } |       ヽ .|/    /   `ヽ
        | i.     レ| {         '、    /        i
        | ,     `.!         ',    /          |
        |  ,    ./,\         '           .|
        |  }  / ,イ i.|`r 、       .',           !
        |  |  .i // i .|.l !',ヽ`i      !  /      |
        |  |   ヽ_,/./| ', ヽ! i .|     .| /        |

 

                  ,  -── ‐- 、
                 , ' , - ── - 、: : !:` . . 、
              , ´:/- ‐  ̄ ̄ ‐ - .`i : : : : : \

             /: :/:__ - 、 : , -──z_ :|: : : : i : : :ヽ

             i: : :l /´    `´      .`|: : : : :!: : : ::i
             | : : i  , -‐     ‐- 、  ! : : : :| : : : :|
             | : : |  '          '  .i| : : : |: : : : |
             | : : |              | : : : |: : : : |
             | : : | x==x     x==x |: : i: :|: : : : i
             |: : : l { ん:i     ん:ハ } , : :' : |、: : :,'
             |: : : :, 弋_リ     弋_;リ  ,': /: : | i : l  みおー、私 今日ペン持ってくるの忘れちゃってさ……
        _    |: : : :i     ,       ., :/: : : | ノ: : :',     あったら貸してくれないか?
        ,' |    .|: : : :|           /:/ : : : ,'´: :i: : :\
        | .|    .|: : : :ヽ    、  ノ   /´,,': : : :': :| |` ─-ヽ
        | .|    ,: :i: : : :i .、        イ i: : : :,: : |ヽ
        .__ | ,    ',: !: : : |´/ \  _,  ' ´ .|' | : : :'`─- 、

     ,-i ,   ヽ   , Vヽ : | i  |',    / . |: : /     ヽ
    _| .! , '´`- ',  ./   .\!|´'、 l }    i r,  |: /       ヽ
    | '、ヽ-t,   , /     .|´ ヽ,\  /  ', レ         ',
     `r´¨ ',  }´  .i       `iヽ/    V    i /      ,
      \    {   ',        ', .`i        |'.       l
       |    iヽ  ヽ,|        |O.|        .!     ,イ
       |    .l !\   !        |O.|        '    / .|
       |    ',  ヽ |       . ̄        i  /   |

              ____
          ,..-..':::::::::::::::::::::::::::`......、
       ,...‐."::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`....、
      /:::::::::::::∧::::::::::::::::::::::::ハ:::::::::::.,:::::ヽ
    /:::::::::::::::::, V::::::ト、:::::::::::::.,:::::::ハ:::::::::::..,
   /::::::::::::::::;イ::,  V:!::ム\::::::::::::i::::::::::::,::::::::::ム
.  /:::::::::::::::::/ !.i   !トx::ム__、::::::::!::::::::::::i:::::::::::::::i
  ,.::::::::::::i:::::::レ !:!   ヾ ヾ:::、\:::::|::::::::::::|:::::::::::::::|
  !:::|::::::::|:::::/ !'      `ヽ  \|::::::::::::|:::::::::::::::|

. !::::!:::::::!!:,::i         ,x=≡ミx、::::::::::|:::::::::::::::|
 i:!:::|:::::::! ' ,x=ミx       ん:::ハV:::::::: : |::i、:::: : |  ペン?
 |!::::i::::::ムヾ:{ ん:ム       V__:ソ !::::::::::::i:::! Y:::::::i   わかった、それぐらいなら貸してやるぞ
  L:::、::::ム.  ヾ::ソ         !:::;..ィ`':::| .八:::::!    まったくしょうがないなぁ……

    丁`..,     ,         " i:::::::::::i/:::::::::::|     次からは忘れないように気をつけろよ?
     |::::::ハ                  |::::::::::i:::::::::: : |
     |::::::八      r....、      , !:::::::::i:::::::::::::::|
.     !::::::::::ゝ     ゝ_ 〉    /,:::::::::::!::::::::::: : |
      ,::::::::::i >       イ  !::::::::::!::::::::::::::::|
     |::::::::::::|, --- > - r '    !:::::::::,、::__::i
     i:::::::::::::!   /  / ヽ   ,::::::::::i 7 /  `ヽ
.     !::::::::::::!  / /   .}   /::::::::::! / /     ム
      !:::::::::::i  ,.,ヘ      ,::::::::::::!" /       ,
      !:::::::::::| .! ! 、     ,::::::::::::!./,        ,
     .,イ::::::::::::!i .! !  Y   , - .!:::::::::::!" i         ハ
     , .!::::::::::::! / }       ,i::::::::::::!  !         i
    ,ィ i:::::::::r- < ___ ./.!:::::::::::!  !    ,      |
  /、-┴‐r┴─  Y─┘/ .|::::::::::,   |  /      .ハ
. Y ` ̄ 丁:::}─    ム"¨7 ,.!::::::::::!   ! /        .,
.八    |::::「¨      V  ,.i:::::::::::!  /
  .ヽ,...--...、:ゝヽ      ゝ!.i:::::::::::! ./

                          -―‐-   _
                , . : : ´ : : : : : : : : / >、

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                 ,: : : : : :/: : : :/: : : : : : :Xへ : :_:_:_:〉 :.
               ′: : : :/: : : : |: : : :|: |: : : V´⌒  `Vハ
             i: : : : : : : : : : :|: : : :|: |: : : :l \    ',:.|
             |: : : : : : : : : : :|: : : :|: | : : : l   `ヽ   } |
                V: : : : :N: : :| : : : : |: |: : : : l  xz、_  ハ|  ありがとう澪!
                  }′ : : l! : : |: : : : ┤:|: : : : l-《 衍` /: :|   あ、ペン出してもらったついでにもう一つお願いがあるんだけど…

                 ノ: : :|: : l!: : :| : 〃7|: |: : : : :l, ヽlツ ′:.|    澪、この婚姻届にサインしてくれないか?
             ∠ィ : : |: : : : : :N {{ ((|: |: : : : :l    ヽ:.ハ
         ー=彡 : : : ノ: : : : : : :|: >-| : : : : Ν     /: : }
              >‐=彡: : : :|: : : | : : |八: : : : |  =ァ ィ : : N
          ⌒ ̄厶イ ノ厶 : /: / _ヽト: : |   `/ |: : : |
           / ̄ ̄ ̄ ̄ 厶へ `く⌒ ヽ|‐- '′ リ: : ′

          -=彡/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\}、         レ
      ―;;;;;;;;;;/;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ト
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;;;;;;;;;;弋厂    |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;//;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;||
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;;;;;;;;;;;;;;}     /;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ノ;;;;;;;;;;;; |
;;;;;;;;;;;V    /;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;イ;;;;;;;;;;;;;;;; |
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          ,  --──‐-   、
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     ':::::::::::::|::::::|.|:::::::::::|V|:::::: | i::::::::::| :::::: ::|::|
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.    |:||::::::::|:i´.  _       '´ ̄ヾ|:::::::::::|::|  うん、わかったよ律
.    |:|:|:::::::|::',  '´ ̄ヾ           |::::r-,::: |     まったくしょうがないなぁ♪
     |:::L_:_」:::', ///        ///|::::レ'::: |
    |:::::::::|::::::|',               |::::|:::::::::|
    |:::::::::|:::::|ヽ'    ヽ´ ̄ノ   ,..i::::|:::::::::|

    |:::::::::|:::::|::::::ヽ.、  .` ̄  /::::|::::|:::::::: |
    |:::::::::|:::::|::::::::::::::::`l  - ´ l:::::::::|::::|:::::::: |
    |:::_:|::: |:::::::::::::/|    /ヽ_:,':::::|:___:L

.    / ヽ.|::::|  ̄ / ヽ `ヽ v-'´ / ,::::::|  / `ヽ
    i.    |::::|  ヽ .iヽv'示ヽ/ /|:::::::|/      ',
   .l.   |::::| ',  r´~',,,'' || ||'',,/` 7,'::::::::|      l
    '   |::::| ' .ヽ ,,''l || || /'',,/ .|:::::::::|      /
     ',.   |::::|  ', ,,''  ',.|| .||  /'',,.|:::::::::|     /
    |ヽ |::: |  ', ii ヽ,,''  '',,´  ,,|:::::::::|    /|

           , .  '"´    `ヽ: : : :`ヽ、
         /   ,. -‐── {: : : : : : : \
        / , .ィ´: :./:/: : : ハ: :l: : : : : : :.\
      ///: : : V'´ l/゙゙゙´  ̄  V:.l: : :ヽ : : : :ヽ
     /: {: : :>'゙゙゙´          V.:.:. |: ヽ: : : : }
     |: : V´           /     i:.:.:.:|: : l: : : : :\
     |: : :l         /      |:.:.:.:|: : l: : : : : : :\
     l: : :',  \_      ,r=ミヽ |: : ::|: : l: : : : : : : : :.\ どうだ唯?こんな風にやるんだぞ

     /: : : ヽ  ,r=ミ     イハ.:ぅ} .|: :./|: : |: : :ヽ: : : |  ̄
      l: : : : : ハV ん心    ヒ。沙 |: /: |: : |: : : :ト、/⌒Y⌒ヽ
      |: : : :./.: ハヽヒ少     '゙゙゙  |/ V.:.:.:.|: :.:.:.j l   l  |´ `Y⌒i
      |: : : : : : :ハ ,,,  '  ,  -、   「  ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄{   |  j   「 ̄ ̄
      |: : : : /:/ : :j     イ    }   | 婚姻届「 ̄ ̄ ̄`ー{  ,'  /
      |: : : ∧: : :,. ヘ、   ヽ_ノ   /|      | ̄ ̄  ̄ ̄ヽ_ノ_ ノ
      |: : /  ヽ: : : :.:.> 、   ,. イ,.:.:.| 「 二二二二二二二二| |  ̄ ̄ ̄
      |: /    \.:.:.:|\:( `T´ /.:.::.| | 秋山澪 | 田井中律| |二二
      |/        \|  / `V´   . :| 「 二二二二二二二二| | ̄ ̄

            ,r─ //`Vハ    :| |             | |二二
            /    ノノ::.K ヽ/| 「 ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ̄ ̄
         ,r‐イ   /,.イ::ト、:ヽ   | |             |  
          /  i  〈:〈/:/l::l ヽ:ヽ _ノ! 「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ !  ¨¨¨
        /   l  ∧::/ .l::l ノ:ノ  | |..二二二二二二二二.!  ..
      /    V/ //  l::「´    | |                 」  …

                 _.  -―‐-
              . : :´ : : : : : : : : : : `丶、
          /:: : : :/: : : : :/ : : /: : : : : :\
          /: : : : : / : : : : /ニニイ : : : : :ヽ: : \
       /: : : : : / : : : : /ニ〃|i{ : : : :|: : : ヽ

       / : /: : : {: :/ : :/: //{ | ハ : : : : | : : :ヽ: ,
        {://: : : :_:V : :/ / l八 |′ ; : : /:i : : : |: :
       /:' : : :/´7: : :l:イ 、_ 、 \  : : ハ/: :}: : l: :|
     ´ / : : : ハ '|/: : |:| んヘァ`  j:/'"}: :/ : /: :
      / : : : / : ヽ!:| : :l:|" ` ー     fぅァイ: : /: :/  いや……それりっちゃんにしかできないと思うよ…
     {-‐1:/: : :/ | |: :∥       , ゞ''.イ} : / : /
      / ̄`ヾ⌒マ| : :|u       "//:ィ':|: :/
     /        l: : |\   </   イ/l /: :レ'
   /         | : | , ヘ`:ーr:ァi´: : : :|: :/ |
  /           i |: :l   Vイ/: l: : : : :レ i |
  ,′         | !;ハ -ーマY`j:ハ: : /   リ

  i            l   }、_ 〉〉 Y} /
  | i         /   /: : : : Y′ レ′



                ~完~

第2話

「ゲル状がいいのぉ~」


ある日の放課後。私はいつものように部室に向かっていました。

いつもの廊下を渡り、いつもの階段をのぼり。

そして私はいつものように部室のドアを開けました。

しかし、中に広がっていたのは異様な光景でした……


ガチャ

梓「こんにちはー」

いつものように挨拶をしながら、私は部室のドアを開ける


紬「梓ちゃん、こんにちは」

私が部室の中に入るとすぐに ムギ先輩の声が聞こえた

扉の位置からはムギ先輩の姿は見えなかったが きっとお茶の準備でもしてくれているのだろう

梓「ムギ先輩、お早いですね」

扉を閉めながら 私はムギ先輩にねぎらいの言葉をかけた


梓「あ!ムギ先輩!私も手伝いますよ」

私はムギ先輩がお茶の準備をしているのだと思い込み、食器棚の方に向かった

梓「え」

しかし、私はその途中で足を止めた


            ´         `ヽ
          /      ∧   ヽ \

          /     /  / ヽ   |  ヽ
         ,'      |   /二 ヽVヽ/ゝ  }   こんにちは、梓ちゃん
         |  |   |  /    }/  ヘ∧{   
         |  |   |/ ●     ● /:::::}
       , 、 ,, } r|   |⊂⊃     ⊂⊃:::::{--、,,
    ─(_)/ ヽ|   |    ▽    |:::::|⌒)   `, 
   (                       ̄  ,r‐

     ̄つ    '⌒'           ,r─‐‐''
     (´              ,r──'
       ̄ ゙̄'───--------‐'

食器棚の前に液状のムギ先輩がいたからだった


梓「えっ!?ちょっ!?まっ!!」

あまりに突然の出来事に 私は混乱してしまった

紬「今 お茶淹れるわね」

それに対して ムギ先輩は何事もないかのように私に話しかけた


梓「な、なんでムギ先輩 そ、そんな姿になってるんですか!」

ようやく落ち着きを取り戻した私は ムギ先輩に質問をぶつけた

紬「わからないわ~、なんか気づいたらこうなってたの♪」

そう言いながら紬はニュルニュルと地面を這う


梓「てかなんでそんなに楽しそうなんですか!」

私は まったく危機感を感じていないムギ先輩に向かって大声で叫ぶ

紬「だってこんな経験めったにできないじゃない♪」

梓「……」

正直 どんな状況でもすぐに適応できるムギ先輩はすごいと思った


梓「でもいつ……その……ムギ先輩はそんな姿になってしまったんですか?」

私は動揺を抑えながらムギ先輩に質問した

紬「さぁ……なんか部室に来てしばらくしたらこうなっていたわ」


梓「そんなことありえるんですか……」

正直そんなことあり得るわけがないと思ったが

現実に目の前に液状化したムギ先輩がいるのも事実だった


梓「ま、まぁとにかく!元に戻る方法を考えましょう!」

私は声を張り上げて提案した

紬「そうね……」

やっと事態を重く受け止めたのか 紬も真剣な口調で返事をした


梓「まぁ、まずは液体ということですから冷凍してみましょう!」

梓は軽い口調で凄いことを宣った

紬「れ、冷凍……?」

梓「そうです。液体を固体にするためには冷凍すればいいんですよ」

梓「幸い部室には冷蔵庫があります。さぁムギ先輩、冷凍庫に入ってください」ガラッ

紬「え、ちょ……梓ちゃん!?まっt」

バタン

紬の返事も待たずに梓は液状の彼女を容器に入れ 冷凍庫に入れた


ガチャ

部室の扉が開き 澪が入ってきた

澪「やぁ梓、おはよう」


澪「……あれ?梓しか来てないのか?」

澪は部室を見回しながら言った

梓「あぁ、ムギ先輩が冷凍庫の中にいます」


澪「……え?」

澪は梓の言っている言葉の意味がよく分からなかった


澪「あの……梓……? それは……どういう……?」

澪はおそるおそる梓に質問をぶつけた

梓「あぁ、ムギ先輩が液体になってしまったので冷凍庫で凍らせているんですよ」

澪「梓……」

澪は梓が日ごろのストレスでおかしくなってしまったのだと思った


梓「ちょ……! なんでそんな哀れむような目で見てくるんですか!」

梓は口を尖らせながら 怒りっぽい口調で言った

澪「いや、だって……ムギが液体になったとか、冷凍庫に入れたとか梓が変なこと言うから……」


梓「本当ですって!私が部室に来たらムギ先輩が液状化していたんです!今 証拠を見せますよ」ガラッ

梓はそう言いながら 冷凍庫の引き出しをゆっくりと開けた

澪「こ…これは!」



       _________________________

      /|/       .──── ./                 / /|
     //|/    ´         `ヽ,/ /       . . / /  |
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 ///    /     /  / ヽ   |  ヽ     .// / /.     |
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 | /     ´|  |   |/ ○     ○ /:::::}           |      .|
 |   .       } r|   |⊂⊃     ⊂⊃:::::{      /.     |        |
 |.     .   / ヽ|   |    △    |:::::|      /    /|////////|
 |     .   //  i f⌒ト.       ィ⌒ヽ         ./|     /
 |      ̄ ̄ ̄ ̄`ー'  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ー'  ̄   /     /|/////
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   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


冷凍庫の中には氷づけになった紬の姿があった


梓「よい…しょ!」

梓は凍った紬を冷凍庫から取り出す


澪「えっ!ムギ!ちょっ、えっ!?大丈夫なのか!?」

澪は手をばたばたと動かし 相当あわてながら言った


梓「思った通り固まりましたね……あとはムギ先輩を覆っている氷を溶かすだけです!」

慌てふためいている澪とは対照的に 梓は冷静な口調で言った


澪「でも……氷がかなり分厚いぞ…… どうやって溶かすんだ?」

澪の言うとおり紬を覆う氷の体積はかなり大きなものであった

梓「そこまでは考えてませんでした……」


ガチャ

澪と梓が思案にふけっていると、再び部室の扉が開く音がした

律「おーっす……って、ええっ!!?」

律が部室に入るといきなり 氷づけになった紬の姿が彼女の視界に飛び込んできた

律「え……あの……えっ!?ムギ凍っ……!?一体何がどうなってんだ!?」

律が驚くのも無理がないことであった


澪「あー、ムギが液状化しちゃってそれを凍らせたものを今取り出したところなんだ」

対して澪は真面目な口調で律に説明を加える


律「はぁ!?何言ってんだ澪!?」

律は澪がおかしくなってしまったのだと思ったが 現に目の前に凍った紬の姿があるのもまた事実であった

梓「律先輩……なにか氷を溶かすいい方法ありませんかね?」

梓も真剣な表情で律に質問をする

律「これ……現実なんだよな……?」

そういいながら律は氷に触れてみたが どうやら本物の氷の中に紬がいるのは間違いなさそうだった

律は 現実に紬が凍っていると認めざるを得なかった


律「そうだ!」

突如頭にインスピレーションがわき 律が叫んだ

澪「?何か思いついたのか!?」

澪は期待の眼差しを律の方に向ける

律「あぁ!澪と梓がイチャイチャすればいいんだよ!!」


澪梓「……へっ?」

澪と梓は、すぐには律の提案がどういったものかを理解することはできなかった


律「要するに、二人がイチャイチャしてお熱くなればいいってことだよ!」


澪梓「!? ええっ!!?///」

澪と梓は不意をつかれたような 素っ頓狂な声を出した


律「つまりだな、澪と梓が抱き合ったりすれば熱気が生まれるだろー?それを利用するんだよ」

律は名案とばかりに 得意気な顔をして言う

澪「な…!お前そんなので熱が発生するわけないだろ!///」

梓「そ、そうですよ!おかしなこと言わないでください!!///」

澪と梓は顔を真っ赤にして反論する


律「でも……お前ら顔真っ赤っかじゃん。めちゃくちゃ熱出てそうだぞ」

澪「!///」 澪は自分の頬を手で触ってみたが確かに体温が上がっているようだった

梓「確かに熱は出てますけど!澪先輩と私が…して…それで氷を溶かすだなんて……!///」

梓の頭は今にも沸騰してしまいそうだった


律「まぁものは試しっていうじゃん!とりあえずやってみようぜー!」

律はまるで他人ごとであるかのように言った

澪「ちょ……!お前本当は面白そうだからそんなこと言ってるんだろ!」

澪は恥ずかしさから思わず大声を上げてしまう

しかし律は 真剣な表情で澪に言い返した


律「いいか!澪!ここにいるムギがずっと凍ったままでいいのか!?」

律「やってみないで効果がないと判断して諦めてしまっていいのか!?」

澪「!!」

律の言葉を聞き 澪の目の色が変わった


澪「わかった 律、わたしやるよ。 よし!梓!行くぞ!!」

澪は真剣な口調で力強く言い放った

梓「えっ!?ちょっ……!澪先輩!?まだ心の準備が……!」

梓は手をブンブンと振り、たじろぎながら 澪の方を見る

澪「梓……!」

澪は氷の中の紬に目を向けた後、訴えかけるような まなざしで梓を見つめた


梓「……わかりました」

澪としばらく目を合わせた後 梓は決意の言葉を述べた

梓「澪先輩、私たちが熱を出してムギ先輩の氷を溶かしましょう!」

梓は拳を高く上げ力強く宣言した



澪「よし……!梓!行くぞ!!」

梓「はい!!」

                        _      _ -_'. '─- . ._|. ',::ヽ  >.-´ : : : : : : : :`: -.、    l:::'
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                        ∧::::ヽ':| : : : : : : ',: : : |',.' ヽ : l: : : : :|: ,'_.|:i: : : : i: l_!|_': : l : : : |: : :i: :ヽ
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         , ' : :/.    , ': : / ./:/ ./: : : : :/|: :',       |: : :| `´  ̄  t-'.  '  ヽ/       |   !: : : |
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       /: :/     ,: : :/リ /'/: : : : : : :/ ,: : : :l      | : : |      /    ヽ、  / ./     .!: : : :!
        / :/     」 - ´, . '´: : : : : : : :/ /: : : :,'        |: : :|ヽ、_ /       `  /      |: : : :|
.       /: /    /´  /: : : : : : : _ -‐´ /: : : : ,       l: : :l   |              i       |: : : :|
      /: /   /  /: : : : : : , ´ .l | /: : : : :l        ヽ: :|  .l              ',       |: : : :!
.    ,': :,'   /   /: : : : : : /   | l./: : : : : :!         ヽ/              ヽ.       |: : : :!
    i: : '  /   /: : : : : /     ', ./: : : : : : |          /                 i     |: : : |
  

そう言うと、澪と梓は互いに身を寄せ合った


律「ヒューヒュー、お熱いですな!お二人さん!」

律は冷やかしの言葉をかけたが 二人から発せられる熱にとっては焼石に水であった

澪「梓…///」

梓「澪先輩…///」


シュウウウウ…!

澪と梓が抱き合ってから数分後、部室に氷が溶ける音が響きわたった

律「……!氷が…溶けていく……!」

しばらくして紬を覆っていた氷は全て溶解した

紬「あ…?私は……?」

紬の姿も元に戻り 意識もはっきりしているようだった


律「ムギ!大丈夫か!?」

すぐに律が紬のもとへ駆け寄る

紬「えぇ……私は大丈夫よ、りっちゃん……」

律に返事をした後、紬が部室を見回すと 身を寄せ合う澪と梓の姿に気づいた

紬「梓ちゃんたちが氷を溶かしてくれたのね……!ありがとう!」

紬は二人の方を向き 感謝の言葉を澪と梓に述べた


紬が元に戻ったことに気づくと 澪と梓は互いの体を離し、紬のもとへ駆け寄る

澪「ムギ!元に戻ってよかったよ!」

梓「ムギ先輩!私もムギ先輩が絶対もとに戻るって信じてました!」

澪と梓は安堵したような表情で紬に話しかけた



律「よーし!ムギも元に戻ったことだし!お茶にしようぜ!」

律の元気のいい声が部室に響きわたる

紬「はい!今お茶の準備するわね!」

律の声に応えて 紬も張り切ってお茶の準備を始めた


・・・・・・


次の日の放課後。私はいつものように部室に向かってました。

梓「ほんと、昨日は大変だったな…」

私は昨日のことを思い出しながら いつもの廊下を渡り、いつもの階段をのぼりました。

そして私はいつものように部室のドアを開けました。


梓「こんにちは~」

紬「こんにちは♪」

私が挨拶をするとムギ先輩がすぐに挨拶を返してくれました。

               , -────────-- 、
             /                \
           /                     \
       ___/_                       \
    ´        `丶、         ,,,, -─--、     ヽ
 /   /           \       /      ヽ    l こんにちは、梓ちゃん♪
./ /  /{.    ∧ │ │  ヽ、   /   _    l   |
| {  厶{    /_厶.  |    │  /   /  ヽ  /    ノ
|八./\)  /(/∨   |   l八|  /    i  ヽ_ノ  /   /
| リ ●\/ ●  .|/ │    }| /      \___ノ    /
|:Y  ,,    ,,  /   ∧  ノ ノl  l             /
|介::.. _▽ __ /  厶イ丁Y;/__!、___________ノ




……かたつむり姿の。

梓「もうヤダこの部活」



第3話

「インターチェンジ」


それはある金曜日の朝の出来事でした。


唯の部屋


唯「zzz」スピー


ジリリリリリン!

唯「……!?」ガバッ

ジリリリリン!

唯「……う、うーん…うるさいよぉ目覚まし君…」ポチッ

目覚まし「ジリリ……」ピタッ

唯「……ん~…zzz」


同時刻。平沢家のリビング



憂「そろそろ目覚ましをセットした時間なんだけど……」チラッ

憂「……今日もお姉ちゃん目覚ましが鳴る時間過ぎても起きてこないなぁ…」

憂「また起きれなかったのかな?……とりあえず様子を見に行かなきゃ」スタスタ

憂(でも二度寝しちゃうお姉ちゃんもかわいい!)


コンコン

憂「お姉ちゃーん、入るよー?」ガチャ

唯「むにゃ……zzz」グー


憂「やっぱりまだ寝てる…それにしてもよく寝てるなぁ」

憂「でも、かわいそうだけど起こさなくちゃ!あんまりゆっくりしてると遅刻しちゃうからね」


憂「お姉ちゃーん!朝だよー!起きてー!」ユサユサ


唯「ん…?あぁ……あさ?」ゴシゴシ

唯「うーん…憂ー?あと5分だけ寝かせて……」

憂「ダーメ。遅刻しちゃうよ」

唯「ブー、憂のケチー」プンプン


唯「うーん……まだ眠いよー」フラフラ

憂「お姉ちゃん、階段気を付けて降りてね?私 先に降りちゃうね」スタスタ

唯「ほーい……」

憂「じゃあ私は階段の下からお姉ちゃんが降りるの応援してるね!」

唯「ありがとー、憂ー。 よーし、慎重に、しんちょうに……」ギシ…

唯「!!! うわぁっ!!」ズルッ

憂「って!!お姉ちゃん!危ない!」ダッ

ゴロゴロ・・・ゴチン!!


憂?「ったぁー…あ、ごめんね憂。転んじゃったや…憂もだいじょ………」

憂?「………ん……?」

唯?「お姉ちゃん大丈夫!!?……ってあれ?」

憂?「あれ?目の前に私がいるよ……?な、なんで……?」

唯?「まさか……お姉ちゃん…これって……」



唯憂「「入れ替わっちゃった!!?」」


憂(唯)「どどどどうしよう憂!!!」アセアセ

唯(憂)「ど、どうするもこうするも とりあえず学校行かなきゃ!! 遅刻しちゃうし!」

憂(唯)「で、でも…」

唯(憂)「大丈夫!とりあえず大人しくしておけばバレないよ!……多分」

憂(唯)「そ、そうだよね!大人しくしておけば大丈夫だよね!!」


唯(憂)「あー、もうこんな時間! とりあえずお姉ちゃん!自分の部屋に行って、私が着る制服取っててきて!私は朝ご飯の準備をしておくから!」

憂(唯)「ラジャー!!」ダダタッ゙


・・・・・・

通学路

唯(憂)「じゃあ分かった?お姉ちゃんは私のクラスに行ってね?そして今日はおとなしくしておいてね」

唯(憂)「もとに戻る方法は明日とあさってで考えよう?」

憂(唯)「分かったよー、憂も授業とかわかんなくて大変だろうけど……頑張ってね!」

唯(憂)「うん!ありがとうお姉ちゃん!」


唯憂「今日は頑張るぞー!!」


・・・・・・

憂の教室



憂(唯) (えーと…憂のクラスってここだよね?とにかく今日はバレないように頑張らなきゃ)ガララッ

梓「!あ、憂来た!おはよう」

憂(唯)「あ、あずにゃん おはよー」

梓(……ん?)

純「おー、やっと憂来たー!! おはよー!」

憂(唯)「純ちゃんもおはよー」

純「…で、来ていきなりで悪いんだけどさ……憂!今日の宿題見せて!お願い!!!」

憂(唯)「えっ!?(しゅ、宿題…!?……何のことやらさっぱり…?)」


梓「ちょっ……純ー、また宿題やってこなかったの?」

純「いやー、宿題を出されてたことをすっかり忘れててさ……今日の登校中に思い出したの!」

純「どうせ梓は見せてくれなさそうだし、最初から憂に頼んだんだー」

梓「なによそれ…まぁ確かに頼まれても見せなかっただろうけど」

純「だから憂!お願い!宿題見せて!!頼れる人は憂しかいないんだよー」

憂(唯)「いや…あの……(どどどうしよう!)」

憂(唯)「(も、もうこうなったら……!)いや…純ちゃん、今日はダメだよー。やっぱり宿題は自分でやらなくちゃ」

純「えー!?そ、そんなー!」ガーン

純「そ、そうだよね……憂も宿題見せるのはいいかげん嫌だったよね?ゴメンね憂…」ズーン


梓「まったく…自業自得だよ」

憂(唯) (あわわわわ……純ちゃんを傷つけちゃったよ……こ、ここはフォローしとかないと!)

憂(唯)「ま、まぁ というのも実は私も宿題を忘れただけなんだけどね!」

梓純「……えっ!!?」  クラスメイト「!!?」


梓「な、な……!? まさか……!憂が宿題を忘れるなんて……!!」

純「そんな…連続宿題提出記録を樹立したあの憂が……!」

ガヤガヤ…ザワザワ…

キョウアラシガクルンジャ… イヤ インセキガオチテクルノカモ…

憂(唯)「あ、あはは……(うぅ…憂、なんかごめんね……)」


ガララッ

先生「はいみんな席着けー」

梓「あ、先生来ちゃった。じゃあ憂、またね」

憂(唯)「あ、うん…」

憂(唯) (あ……そういえば憂の席ってどこだろ…?)キョロキョロ

純「……憂?何やってんの?」

憂(唯)「いや、私の席ってどこだったかなって…あはは…」

梓純「なっ!!?」 クラスメイト「!?」



純「いや…憂の席はあそこでしょ?今日は憂どうしたの?」

憂(唯)「あ、そうだそうだそこだったね!!ちょっと度忘れしちゃった!よくあるよね? ね?あはは…」

純「憂…?大丈夫?具合悪いなら保健室に…」

憂(唯)「大丈夫!大丈夫だから、心配いりません!じゃあまたね純ちゃん!! (ふぅー…なんとかなったよ…)」

純「うん……」

先生「ほらー、そこー!さっさと席着けー」

憂(唯)「す、すみません!」ダッ

憂(唯)「(はぁ……でもこんな調子で無事に一日やり過ごせるのかな……)」



・・・・・・

唯の教室前


唯(憂)「(お姉ちゃんのクラスってここでいいんだよね……)」ドキドキ

律「おっ、唯じゃん。おっはよん!! …何やってんだ扉の前で?」

唯(憂)「えっ! あっ、律さ……りっちゃん!?」

唯(憂)「お、おっはようぅ!!(いきなり声かけられたから少し声が裏返っちゃった……)」

律「な、なんだよその挨拶…… どうした、昨日なんか変なモンでも食ったのかー?」

唯(憂)「! そ、そんなことないよ! 晩ごはんは昨日もちゃんと的確に素早く安全に調理したよ!!」



律「まーた憂ちゃんにごはん作ってもら…… ん……?『調理した』……?」

唯(憂)「あっ!?(しまった!つい……)」

唯(憂)「き、きのうはね!いつも憂にはお世話になってるからね、私がたまにはご飯を作ってあげたんだよ!」アセアセ


律「なーんだ、そうだったのか。 なんかごめんな、唯?いつも憂ちゃんにごはん作ってもらってるわけじゃあないよな」

唯(憂)「そ、そうだよ~(本当はちがうけどね……)」


律「まぁとりあえずボサッと突っ立ってないで教室入ろうぜ」ガララッ

唯(憂)「う、うん(上級生の教室……)」ドキドキ



唯(中身は憂だが) と律が教室に入るとすぐに そのことに気づいた紬が二人に挨拶をしてくれた


紬「! あ、唯ちゃんとりっちゃんおはよう。 唯ちゃん、昨日はありがとね」

唯(憂)「……え? 昨日…?」


律「何だよー、唯 昨日のこと忘れちまったのかー? 昨日お前ムギに弁当を分けてやってたじゃないか」

唯(憂)「あ、あーそういえばそうだったねー!ちょっと度忘れしちゃった(お姉ちゃん優しいな///)」


律「……大丈夫かよ? あ、まさか今日テストがあることも忘れてないよな?」

唯(憂)「えっ!?テ、テスト!? 今日ですか!?」



紬「……唯ちゃん…」

律「……その調子だとまた忘れてたのか…」

唯(憂) (ま、また……? お姉ちゃん、テストの日程はしっかり覚えておかなきゃダメだよぉ……)


唯(憂)「で、でも何のテストなの?」

律「!?そこからかよ!」

紬「唯ちゃん……今日 生物のテストがあるって昨日先生が言ってたでしょう?」



唯(憂)「そ、そうだったんだ……(まぁ私が知ってるわけないんだけど……)」


律「あ!さては唯、昨日の授業寝てたなー?」ニヤニヤ

唯(憂)「! そ、そんなことないよっ!昨日は授業もちゃんと聞いて復習も予習も歯磨きもしっかりしたよ!」

律「……本当かよ。 今日テストあること忘れてた唯が予習復習をしっかりしたなんて言っても、ねぇ。 にわかには信じられませんな」


紬「私は信じるわ唯ちゃん! 唯ちゃんは嘘つくような子じゃないものね!! ごほうびに今日はケーキ一つおまけしちゃうわね♪」

唯(憂)「え、えへへー…ありがとー(予習復習は当たり前のことだと思うんだけどなぁ……)」



ガララッ

先生「はいみんなー席に着いてー」

律「あ、先生来ちゃった。 じゃあ唯、テスト頑張れよ」スタスタ

唯(憂)「うん!……(あれ?そういえばお姉ちゃんの席ってどこだろ?)」キョロキョロ


律「あ! 唯また机の中に弁当箱忘れてるぞ!今日はちゃんと持って帰れよー」

紬「あらあら」

唯(憂) (……あそこか)



・・・・・・

憂の教室

先生「……であるからして……」

憂(唯) (ねむいよぉ……)ウトウト

梓(珍しく憂が眠そうにしてる……)


先生「……じゃあここ、平沢!」

憂(唯)「!? ひゃ、ひゃい!!」ガバッ

純(『ひゃい』って……なんか今日の憂かわいい///)



先生「江戸時代に享保の改革をおこなった人物、わかるかー?」

憂(唯)「きょ、きょうほうの改革だから……えーと……」


憂(唯)「と、徳川綱吉……?(だっけ……?)」

先生「綱吉長生きだなーw 『吉』は合ってるけどな」


先生「えー綱吉でなく吉宗ですね、徳川吉宗。8代将軍徳川吉宗はー……」

ザワザワ…… ウイガマチガエルナンテメズラシイネ

憂(唯)「あうぅ……(間違えちゃった……)」


純(うーん? 今日は憂どうしちゃったんだろう?)

梓(憂……まさか……)



・・・・・・

唯の教室


律「あーやっとテスト終わったー!……でもあんまりできなかったなぁ」

紬「ちょっと今回のテストは難しかったわね」

律「本当だよ、もうちょっと手加減してほしかったぜ。…唯はできたのかー?」


唯(憂)「まぁ大体ね」サラリ

律紬「!?(余裕の表情!?)」



律「だ、だって、このメンデルの遺伝3法則でどれが一番重要かとか……こんなの分かんなくね?」

唯(憂)「あー、メンデル3法則の中では分離の法則が一番重要なんだよ。優性の法則は不完全優性のとき、独立の法則は遺伝子が連鎖していると成り立たないけど、分離の法則はいつでも成立するから」

律「な、な……!?あの唯が…こんなに答えをスラスラと……! 私、夢を見てるんじゃないよな……?」ツネー


紬「じ、じゃあ唯ちゃん この人間の目にはなぜ盲点があるのか……ってのは分かった?」

唯(憂)「あぁ、それは網膜の一部を視神経の集まりが貫通しちゃてる部分があるからだよ。視神経が集まっているところには光を感じられる杆体細胞も錐体細胞も分布してないから目には盲点があるんだよー」

紬「す、すごいわ唯ちゃん!ちゃんと勉強してきたのね!今日はケーキ丸ごと一個おまけしちゃうわ!!」

唯(憂)「えへへぇ///」



律「しっかしあの唯が勉強とはなー。どういう風の吹き回しなんだー?」

唯(憂)「いやぁ…まぐれだよまぐれ!」

紬「またまた、そんな謙遜しなくてもいいのよ。唯ちゃんすごいわ。私も勉強頑張らないと」


紬「あ!そういえば、唯ちゃん、この問題はわかった?私最後まで答えに迷ったんだけど……」

唯(憂)「? どの問題ですかー?」

紬「この問題なんだけど……」

律「じゃあその間に私はちょっとトイレ行ってくるわ」ガララッ

唯(憂)「あ、行ってらっしゃーい」



2年生の廊下

律「そーらをじゆうに、とーびたいな~♪」スタスタ


澪「あ、律じゃないか!おはよう…… って何の歌うたってんだよ……」

律「お!1組の澪ちゃんじゃないですか!おっはよん!」

澪「1組は余計だ!!……そうだ、律 今日のテストはできたのか?」


律「テスト?あぁさっきのか。 もちろん!!あんまりできなかったぜ!!」ブイッ

澪「ならピースなんてするな!」ゴチンッ

律「いてっ!!暴力反対!」


澪「まったく、昨日せっかくテスト対策教えてやったのに……」

律「澪のヤマは当たらないからなー」

澪「昨日はちゃんと教えただろ!」ペシッ



律「でも、今回のテストは何か唯がよくできてたみたいだぜー」


澪「ん…?唯……?唯ってあの唯か?」

律「ほかにどの唯がいるんだよ…」


律「まぁ私も最初は驚いたけどなー。唯があんなにテストできるとはなー」

澪「へぇ……唯も勉強頑張り始めたんだな。 律も頑張らなきゃダメだぞ」

律「へいへーい。 いやー、でも分離の法則が一番重要だなんて知らなかったなー」


澪「え? 唯はその問題もできてたのか?」



律「うん。私がこの問題できなかったー、って言ったら教えてくれたし」

澪「な……!?  うそ……私もその問題できなかったのに……」

律「嘘じゃないよ。……って噂をすれば!おーい、唯ー!」


唯(憂)「うん?あー、りっちゃんかー。澪さ……澪ちゃんもおはよう」

澪「唯!!」ズイッ

唯(憂)「!? な、何澪ちゃん……?」


澪「今日のテストよくできたって本当なのか?」

唯(憂)「そ、そうだよ~(澪さん顔が怖いよ……)」



澪「本当に本当だったのか…… よし、そうとなれば!」 

澪「唯、今日の昼休みにmatchだッ!!」ビシッ


律「!? ま、マッチ……!? 何だ澪、タバコでも吸うのか? ワルだなー」

澪「ちがう!そのmatchじゃない!」


唯(憂)「りっちゃん……matchには試合とか競技って意味もあるんだよー」

澪「そう。そっちの意味のマッチな。だから唯、昼休みに生物学の知識を競おう!!」


律「……澪ちゃんも負けず嫌いでちゅねー」プププ

澪「! ち、ちがうぞ!!ただテストで負けたからとかじゃなくてお互いに知識を切磋琢磨するためだ!本当だぞ!!」



律「どうだか。 …唯ー、別に断ってもいいんだぞ? いやー思えば、私も何回澪と知識を競い合されたことか……」

澪「ねつ造すんな」ゴチンッ

律「いちっ」


唯(憂)「え、えーと……(でも断ったら澪さんに申し訳ないな……)」


唯(憂)「よし!わかったよ!澪ちゃん、昼休みに勝負をしよう!」

澪「! 本当か!? ありがとう唯!」ガシッ

唯(憂)「えへへ///」


澪「……でも昼休みは覚悟しておけよ唯! じゃあまた昼休みにな」スタスタ



律「急に何だったんだよアイツ……」


律「でも大丈夫だったのか唯? 本当にあんな勝負受けちまって……澪もけっこう頭いいぞ?」

唯(憂)「大丈夫!! 心配しないで律さ……りっちゃん!」

律「すごい自信だなー。唯もすごく勉強してきたんだなー、まぁ一応応援しとくぞ」

唯(憂)「ありがとうりっちゃん!!(お姉ちゃんの名誉のためにも……この勝負、負けるわけにはいかないよ!)」


律「! あっ!!」

唯(憂)「? どうしたんですか?」

律「トイレ行くの忘れてた!!」ダッ

唯(憂)「…… い、行ってらっしゃ~い」



・・・・・・

お昼休み


憂の教室

純「あー、やーっと終わったー!!!もう数学は難しくていやだよー!」ガバッ


梓「……もう純ったら、よだれ垂れてるよ」

純「へっ……?あっ……/// へへっ、あまりにも難しいもんだからちょっと寝ちゃいましてね……」

梓「ちゃんと授業は聞いとかないとダメだよ。ね、う……い?」

憂(唯)「zzz」スヤスヤ


純「……う、憂が寝てる……」

梓「め、珍しいね。てかはじめて見た気がする(そういえば日本史の授業でも眠そうにしてよね……まるで唯先輩みたいに)」


純「ていうか教科書にまでよだれがかかってるよ!!流石に起こさないと!」ダッ


純「おーい!憂ー!! 起きてー!授業終わったよー!」ユサユサ


憂(唯)「う、うーん……?純ちゃん? あぁ……寝ちゃってたんだ、私……」

梓「珍しいね?憂が授業中居眠りするなんて(……目の前にいる人が本当に憂、ならね)」

憂(唯)「そ、そうかなぁ?(憂はいつもちゃんと授業聞いてるんだねやっぱり……)」

梓「まぁとりあえずごはん食べよう?」



憂(唯)「そうだねー!今日のお弁当は何かなー?楽しみー!」

梓「……!(これは……!)」


梓「あ、あー!!私 急にゴールデンチョコパンが食べたくなってきたなー!!うん!純一緒に買いに行こうそうしよう
ごめんね憂ちょっと待ってて!」ガシッ

純「ぐえっ! ちょ……梓ぁー!?」ズルズル


憂(唯)「……?(あずにゃんどうしたんだろ?)」



1年生の廊下

純「ちょっと梓ー!急に何すんのよ! それに私、今日は別にGCP食べたくないよー!」


梓「……なによGCPって」

純「Golden Chocolate Pan だよ!その略語。私が考えたんだよ!」

梓「いや待って。パンって確か英語でbreadじゃなかったっけ」

純「うっ! ま、まぁ細かいことはいいじゃん!大事なのは語感の良さだよ、梓」


梓「語感って……別にGCPでもGCBでも変わらないような…」

純「いーや!両者の間には埋めようと思っても埋めがたいふかーい溝があってね!」

梓「ふーん。はい次の方どうぞー」

純「って聞いてよ!?」



純「いい略語だと思うんだけどなー、GCP。……まぁいいや、で、梓?何で私を呼び出したの?」

梓「あ、そうそう純に話があるんだった!……まったく純が急にGCPの話なんてしだすからだよ」


純「お?梓も私の略語気に入っちゃった? 梓なら特別にタダで特許あげちゃうよ」

梓「だからもうGCPの話はいいって!」

純「じゃあ梓、本題は何なの?」


梓「……純さぁ、今日の憂、何だか変だと思わない?」 

純「あー、それは確かに私も思った。 さっきも授業中寝てたし、自分の席の場所忘れたり……憂らしくはないよね」



純「まぁきっと憂にもいろいろあるんだよ。単に寝不足なんじゃない?ほら、昨日は宿題を夜遅くまでやってたとか」

梓「でも憂、今日は宿題忘れてたじゃない」

純「あ、そういえばそうだったね……うーん、じゃあなんでだろ……? 梓はどう思ってるの?」


梓「……なんか今日の憂、唯先輩に似てると思わない?」

純「唯先輩に?……うーん、失礼だけど たしかに授業中に寝たり問題間違えたり 似ているような部分もあったけど……
  たまたまじゃない?」


純「でも梓ー、なんでそんなこと聞くの? ……あ、まさか憂と唯先輩が入れ替わってるとか!! …まぁそんなわけないk」

梓「そう!それだよ、純!!」ズイッ

純「えっ!!?」



梓「だってもし唯先輩と憂が入れ替わってると仮定すれば、今日の憂の言動がおかしいことにも説明がつくでしょ?」

純「確かに憂と唯先輩は背格好が似てて、髪型とか変えれば入れ替われそうではあるけど……でも、声はいつもの憂の声だったよ?」

梓「うーん、そう言われてみれば……声はいつもの憂の声だったんだよね……」


梓「……あっ!!もしかして!」

純「? 何、梓?」

梓「もしかして今日の憂は唯先輩と入れ替わってるフリをしてるんじゃない?」


純「…入れ替わってるフリ……? じゃあ憂は唯先輩のマネをしてるってこと?」

純「うーん……ありえなくはないけど……でも何のために?」



梓「…動機かぁ……確かに、動機がないよねぇ……やっぱ気のせいなのかなぁ」

純「じゃあさ、憂と唯先輩の人格というか中身が入れ替わっちゃったとか!それなら今日の憂が唯先輩みたいなのにも説明がつくし!」

梓「まさか。マンガじゃあるまいし、そんなことあるわけ……」


???「おーい、梓ー!」

梓「……?私を呼ぶ声?」

純「……この声は!」


澪「やぁ梓。それに鈴木さん」

純「澪先輩!!」



梓「み、澪先輩!?どうして1年生の廊下に……?」

澪「いやぁ、ちょっと気合いを入れようかと思ってね」

純「!!さ、さすがです!澪先輩!! 昼食をとる前にわざわざ1年生の廊下を通ることで気合いを入れるなんて……」


純「憧れます!!シビれます!!!」

澪「いや、そうじゃない。これから唯と生物学の勝負をするところなんだ」


梓「……? 唯先輩と勝負するんですか?ムギ先輩となら話は分かりますが……それって勝負になるんですか?」

澪「そう思うだろ?でもなんか唯の奴、律の話によると今日のテスト、よくできたみたいなんだ」



梓「ゆ、唯先輩がテストで高い点数を……?なんだかにわかには信じられません……」

澪「しかも私が解けなかった問題もどうやら正解したらしい」


梓「な……!あ、あの勉強嫌いの唯先輩が澪先輩にできない問題を解くなんて……!!明日天変地異でも起こりそうな勢いですね……」

澪「まぁ、そういうことみたいだから私は唯と生物学の知識を磨き合うことにしたんだ!」

梓「はぁ……」


澪「あ、そろそろ時間だ。 じゃあな、梓と鈴木さん。必ずいい結果を報告するからな!」スタスタ

純「が、頑張ってくださーい!」



梓「……純」

純「うん。澪先輩の話だと今日の唯先輩はすごくテストができたみたいだね。 まるで憂みたい……」

梓「……私たちも見に行ってみよっか。唯先輩と澪先輩の勝負」

純「そうだね。今日憂がなんか変な原因がわかるかもしれないしね」


純「あ! そういえば憂のことずっと教室で待たせたままじゃん!」

梓「まぁ中身は本当に憂なのかどうか怪しいけどね…… とりあえず、一旦教室戻ろっか?」

純「りょーかい!」



憂の教室


ガララッ

梓「憂、ごめんね遅くなっちゃって」

憂(唯)「あずにゃ……梓ちゃん、遅いよー!もうご飯一人で先に食べちゃったよー」プンスカ

純「ゴメンゴメン。いやぁ、ちょっと熾烈なGCP争奪戦があってね!」


憂(唯)「え?純ちゃん?『ジーシーピー』ってなに?」

純「あぁ、GCPはゴールデンチョコパンの略だよ。……やっぱわかりにくいかなぁ?」

憂(唯)「うぅん。私はすごく格好いいと思うよ!」キラキラ

純「あ、ありがとう (こういう微妙に感性がズレてるところはいつも通りなんだけどなぁ……)」



梓「それでさー、私たちこれから唯先輩の教室に行くんだけどさ……」

憂(唯)「うぇっ!!? な、なんで……?(まさか……バレちゃった!?)」

純「なんか唯先輩と澪先輩が生物の知識を競い合うらしいよ。面白そうだから憂も行こうよ」

憂(唯)「えっ!?うぃ……じゃなくてお姉ちゃんが!?(い、一体何があったの……)」


梓「うん。なんか唯先輩、今日のテストよくできたみたいだよ? ね、憂。行こ?」

憂(唯)「う、うん……(今日のテストって確か生物だったよね……?憂、まだ習ってないはずなのに……やっぱり憂はすごいや)」

憂(唯)「わかったよ!梓ちゃん、純ちゃん、行こう!(でも入れ替わってることがバレたわけではなさそうだね……ひとまずよかったよ……)」ホッ


梓「……」

純「じゃあ行こっか」



・・・・・・・

唯の教室

ガララッ

澪「おーい、唯ー。来たぞー」


律「お!来たか!! 唯ー、1組の澪がお出ましだぞー!」

澪「だから1組は余計だって! さぁ唯、勝負をしよう!」

唯(憂)「分かったよ、澪s…ちゃん。それで、どんな風に勝負をするの?」

澪「あぁ。勝負方法を言ってなかったな。まぁここはシンプルに、各自で教科書の範囲内から問題を出し合って 先に答えられなかった方が負けということにしよう」



純「すごくシンプルでいいと思います///」

澪「だろ?鈴木さんも気に入ってくれてよかった……って鈴木さん!?」



梓「私もいます」

憂(唯)「あの……私も……」

唯(憂)「!? おね……う、憂!?(なんでお姉ちゃんが……!?まさか……バレちゃった!?)」

律「なんだー、3人とも揃って。梓たちも澪と唯の勝負見に来たのかー?」

純「はい!!!」


唯(憂)「でもなんでそのことを……?」

梓「あぁ、それはさっき澪先輩と私たちの廊下ですれ違いまして。勝負のこと教えてくれたんですよ」

純「なので私たちも見にきちゃいました!!」



唯(憂)「そ、そうだったんだー……(ふぅ……どうやら入れ替わってることがバレちゃったわけではなさそう……お姉ちゃんも上手くやってくれてるなー)」

澪「なんだ、梓たちももこの勝負が見たかったのか。なら、言ってくれればよかったのに……まぁ、ともかく、唯!!勝負を始めるぞ!」

唯(憂)「は、はい!!(き、緊張するー!!)」


紬「先行と後攻はどうするの?」

唯(憂)「じゃあここは公平にじゃんけんで……」

澪「いや、唯が先行でいいぞ」

唯(憂)「えっ!?」


律「なんだ、そんなに余裕ぶっこいて大丈夫なのか澪ー? 唯、ラッキーだったn」
憂(唯)「うぃ……じゃなくてお姉ちゃんをナメないほうがいいよ!!」



唯(憂)「!?(お、お姉ちゃん!?)」

憂(唯)「あ、ゴメン……つい……」

唯(憂)「うぅん。おn……憂。私頑張るよ!!(絶対勝ってみせるよ!!)」


律「感動の姉妹愛でちゅね!! ……じゃあ私も澪のこと応援してやるか」

澪「いや、いいって」

律「遠慮すんなって。 澪ー!負けたら私の胸に飛び込んできてもいいぞー!!」

澪「なんで負けた時の話なんだよ! まったく。……まぁいいや。唯、問題出していいぞ」



唯(憂)「わかったよ!うーんと……じゃあ……」

唯(憂)「人間のタンパク質を構成するアミノ酸の種類はいくつでしょう?」


律(おぉ……なかなか難しそうな問題……。でもこれぐらいの問題、澪なら解けそうだな)

澪「えーと……20種類!!」

紬「……正解ね」ペラペラ



澪「じゃあアミノ酸に関連した問題を私も出そうかな」ニヤリ

澪「唯!人間の必須アミノ酸の名称を全て答えてください!(フフフ……これは解けまい)」

紬律「!!?」

律(な、なんて鬼畜な……!)

紬(いちおう教科書の片隅にちっちゃく書いてあるけれど……唯ちゃん分かるかしr)
唯「ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン……だね」


澪律紬「!!?(即答!?)」



澪「な、なんだと……!まるで何でもない問題であるかのように流暢に……!」

紬「ぜ、ぜんぶ名称も合っているわ……」ペラペラ

律「す、すげー……」

梓純「……(まだ習ってない範囲だからよく分からない……)」

憂(唯) (さすが私の妹だね!!)フンス


唯(憂)「じゃあ私も必須アミノ酸に関連した問題を。澪さん、植物の必須アミノ酸は何種類あるでしょう?」

澪「な……!?しょ、植物!? え、えーと……」

澪(ダメだ!!全く分からない!)


澪「……まいりました」



紬「ゆ、唯ちゃんの勝ちー!」

唯(憂)「やった!」


律「す、すごいなー、唯!今日は一体どうしちまったんだ!?」パチパチパチ

澪「いやー、完敗だよ!悔いのない負けだ!唯の実力は本物だったんだな!」

唯(憂)「いやぁ……(やったよ、お姉ちゃん!!)」テレテレ

憂(唯)「おめでとー!!」パチパチパチ


梓「……純、ちょっと教室の外、いい?」

純「……わかった」



2年生の廊下


梓「純、正直さっきの勝負見てどう思った?」

純「いやぁ、なんていうか、唯先輩って頭よかったんだなって……」

純「……まるで憂みたいにね」


梓「やっぱり、まさかとは思うけど本当に憂と唯先輩の中身が入れ替わってるのかなぁ?」

純「うぅーん……この勝負だけでは何とも…… あ!何ならさ、梓!」

梓「何?」

純「ちょっと試してみない?梓、耳貸して」


純「…………」ヒソヒソ

梓「……なるほど。やってみる価値はありそうだね」



・・・・・・

唯の教室


ガララッ

梓「再び失礼しまーす……」

律「なんだよ梓と佐々木さん、どこ行ってたんだよー?」

純「いやぁ、ちょっとお花を摘みに……あと私の名前は鈴木です!」

律「そうだっけ?ゴメンゴメン」



梓「話はかわりますけど それにしても今日の唯先輩はすごかったですね!!」

梓「ついこの間まで、よく小テストの追試を受けていたのに……まるで別人のようです!」

唯(憂)「(ギクッ!)わ、わたしもねー、もう追試を受けるのはイヤだったから、今回は必死で勉強したんだよ~。うん」

純「そうだったんですか。 …あ!別人といえば梓ー、今日の憂もまるで別人みたいだったよね!」

憂(唯)「ふぇっ!?」ギクッ


梓「あー、そうだったねぇー、今日の憂は授業中寝てたり、宿題忘れたり……まるで別人みたいだったなぁー」チラッ

憂(唯)「ききき気のせいじゃないかな!!!私はいつも通りだよ!!」



澪「でもあの憂ちゃんが……なんだか想像できないな」

律「うん……なんだか唯みたいだな」

紬「憂ちゃん……体調悪いの?薬が必要ならあげてもいいけれど……」

憂(唯)「いやいや!体調が悪いというわけじゃあ……」アセアセ


澪「そう言えば唯も今日突然テストがよくできてたよな」

律「あ!そういえば 唯、今日は授業中全然寝てなかったぞ! 昨日まではよく寝てたのに……」

唯(憂)「」ギクギクッ

紬「たしかにちょっと不自然な気はするけれど……」

澪「というか今日の唯の様子や梓たちの話を聞いた限りではまるで唯と憂ちゃんが入れ替わってるかのようだな」

唯憂(ギクギクギクッ!!!)



憂(唯)「ま、まさかぁ~、そんな……入れ替わるなんて、そんなことあるわけないじゃん! マンガじゃあるまいし」

唯(憂)「そ、そうだよ~!澪ちゃん、考えすぎだよ」

澪「そうかなぁ……?」ジロジロ

梓(よし!先輩たちが疑いを持ち始めたよ! もうひと押しするよ、純!!)

純(わかったよ!)



純「あ、もしかして!!」

憂(唯)「な、なに純ちゃん……?」

純「唯先輩と憂はそれぞれが入れ替わってるフリをしてるんじゃないですか?」



律「なっ!? い、入れ替わってるフリだと!?」

紬「でも、ありえなくはないかも……」

唯(憂)「そ、そんなことしてないよ!!(まぁ本当に入れ替わっちゃってるからなんだけど……)」

憂(唯)「そ、そうだよ!!言いがかりだよ!」


澪「……本当か?」ジトー

律「なんだか怪しいなー……」



梓「じゃあ律先輩、確かめてみればいいんじゃないですか?」

律「確かめる?」

梓「そうです。もし憂と唯先輩が入れ替わってるフリをしていないなら本人そのもののはずです」

律「ま、まぁそうなるな」

梓「だからその本人にしか分からない質問をしてみればいいんですよ」

律「な、なるほど……。わかった、じゃあ唯、一つ質問するぞ」

律「昨日唯はムギに弁当分けてあげてたけど、その分けてあげたおかずはなーんだ?」


唯(憂)「!!!(わ、分かるわけないよぉ~……)」



唯(憂)「……わかりません」


律「!! ってことは!やっぱり入れ替わってるフリしてるんじゃねえか!!」

憂(唯)「……入れ替わってるフリじゃないよ」


律「まだ言うのか憂ちゃん。だって現に唯は問題に答えられなかっt」

憂(唯)「本当に入れ替わっちゃったんだよ!!」

澪律紬「なっ……!!?」

梓純(……!!)



唯(憂)「ちょっ……!お姉ちゃん!!」

憂(唯)「もういいんだよ憂。みんなにももう本当のこと話そ? 私、みんなには嘘つきたくないよ……」

唯(憂)「お姉ちゃん……」


律「ちょ……!唯がお姉ちゃんって言ったり憂ちゃんが憂ちゃんのことを呼んだり……一体何がどうなってんだ!?」

紬「私にも何がなんだか……」

澪「キコエナイキコエナイキコエナイ……」



純「あの、憂、唯先輩……? その、入れ替わっちゃったっていうのは……?」

憂(唯)「うん……、信じられないと思うけど……。 どうやら憂と私の中身が入れ替わっちゃったみたいなんだ……」

梓「…………まさか本当に入れ替わっていたとは……」


律「い、いやでも私はまだ信じられない! これも演技の可能性だってあるよな!?」

憂(唯)「……昨日ムギちゃんに分けてあげたおかずはから揚げたよね?ムギちゃん、りっちゃん」

律紬「!?(あ、合ってる……)」



紬「じゃああなたは……憂ちゃんじゃなくって、唯ちゃんなの……?」

憂(唯)「うん……嘘ついちゃってゴメンね?ムギちゃん」

澪「だから唯、今日はあんなにテストできたのか……」

唯(憂)「ごめんなさい。でも、澪さんと勝負できて楽しかったです」


純「でも、どうして憂と唯先輩は入れ替わっちゃったんですか?」

憂(唯)「あぁ……それは」

憂(唯)「実は今朝、私が階段から転げ落ちちゃって……」

唯(憂)「それを私が受け止めようとして、お姉ちゃんとぶつかっちゃって……」

紬「……気がついた時には入れ替わっていたのね?」

唯憂「はい……」



梓「しかしそんなことが本当にあるんですね。なんだか漫画みたいです」

澪「そうは言っても唯と憂ちゃんが入れ替わってるのは紛れもない事実だからな……。なんとか元に戻す方法を考えないと」

紬「そうね!私たちも唯ちゃんと憂ちゃんが戻れるように協力しましょう!!」

憂(唯)「みんな……ありがとう!!」


律「! おっ!!いいこと思いついたぞ!!」

澪「……?なんだ、律。言ってみろよ」

律「まぁ説明はあとでするからさ。とりあえずみんな、私についてこーい」



階段の踊り場


律「ついたぞ!!」


澪「ついたぞって……まだ階段の途中じゃないか」

律「いや、ここでいいんだよ」

梓「何がですか……」


律「じゃあ憂ちゃん……いや唯か、ちょっと階段下りて」

憂(唯)「う、うん。わかったよ」スタスタ

紬「……?りっちゃん……? 何をするつもりなの?」

律「何って……今から憂ちゃんに階段を転げ落ちてもらうんだよ」

唯澪憂「……えっ!?」



澪「ちょ……!律!!なんでそんなことさせるんだ!危ないだろ!」

律「いや……原因と同じことをすれば元に戻るんじゃないかと思って……」

澪「そ、そんなことで元に戻るかどうか分からないだろ! ケガしたらどうするんだ!」

梓「確かにやってみる価値はあるとは思いますけど……でも澪先輩の言うとおり、危険ですよ!!」

律「そ、そうだよな……。やっぱり別の方法をさがs」
唯(憂)「私は律さんの方法に賛成です!!」


澪「!?ゆぃ……… じゃなくて憂ちゃん!?」



唯(憂)「澪さんの言うとおりケガするかもしれないし、元に戻れるとは確かに限らないとは思うけど……」

唯(憂)「でも梓ちゃんの言うように、やってみる価値はあると思うし、可能性が少しでもあるのなら私、その可能性に賭けてみたいんです」

澪「で、でも……」


紬「……わたしは憂ちゃんを応援するわ」

梓「!?ムギ先輩!?」

紬「これは私たちの問題でも確かにあるだろうけれど、やっぱり唯ちゃんと憂ちゃんの問題だと思うの」

紬「ここは憂ちゃんの意思を尊重して、私たちはサポートに徹するべきだと思うわ」



純「……私も、憂がやりたいと言っているならそれを止める理由はないと思います」

唯(憂)「紬さん……純ちゃん……」

憂(唯)「私も!憂が転げ落ちてくるんだったら全力で受け止めちゃうよ!!絶対、逃げたりしないから!」

唯(憂)「お姉ちゃんまで……」



澪「わ、わかったよ。憂ちゃんがそこまで言うのなら……」

澪「私もサポートするよ。ただし、絶対ムリだけはするなよ?」

唯憂「みんな……!」


律「……決まったな。あとは実際にやってみるだけだ。私も唯と憂ちゃんが絶対元に戻れるって信じてるぞ」

唯(憂)「律さん、ありがとうございます!」


唯(憂)「……じゃあお姉ちゃん、行くよ」

憂(唯)「わかったよ!!」

唯(憂)「……」スーハー



唯(憂)「……澪さん、背中を押してくださいませんか? その、ちょっと勇気がでなくて……」

澪「えっ!? な、なんで私が!?」

唯(憂)「その、澪さんが一番近くにいたから……。それに、澪さん力が強そうですし。とにかく、お願いします!!」

澪「い、いや……でも……」オロオロ



律「……あっ!澪の後ろにお化けの集団が!!」

澪「なっ!!!? ひ、ぴぃっ!!」ドンッ

唯(憂)「!!」グラッ

憂(唯)「澪ちゃんありがとう!!」ダッ


ゴロゴロ・・・ゴチン!


澪「あっ!!憂ちゃんゴメン!! 大丈夫か!?」ダッ



唯憂「いたたた……」

澪「唯!憂ちゃん! 大丈夫か!?」ユサユサ


憂「少し体は痛いけど……私は大丈夫です、澪さん!」

唯「私も大丈夫だよ、澪ちゃん!」

澪「そうか、よかった……」


澪「……ん?」

唯憂「……あれ?」



唯「……憂?」

憂「……お姉ちゃん?」


唯「私たち、元に戻れたの……?」

憂「そ、そうみたいだね」


唯憂「……や、やったー!!」


憂「律さん!!ありがとうございます! おかげで元に戻れました!」

律「良かったな!!本当によかった……! 正直私もホッとしたよ、二人ともケガなく元に戻れて」


唯「ほかのみんなもありがとね!みんなで私たちのこと心配してくれて……その気持ちだけで十分嬉しかったよ」

梓「べ、べつに唯先輩のことを心配してたわけじゃありませんけどね/// 私は憂のことが心配だっただけですから!」

唯「またまたー、あずにゃん 照れなくてもいいんだよー?」

梓「ててて照れてなんかいませんよっ///」



純「でも憂と唯先輩が元に戻れて本当に良かったですよ! やっぱり憂は宿題を見せてくれる憂じゃあないとね!」

紬「……ちょっと純ちゃん、宿題はちゃんと自分でやらなきゃダメよ?」

純「じょ、冗談ですよー」

アハハハ……



律「よぉーし!唯と憂ちゃんも元に戻ったことだし!お祝いにGCPでも……」ズルッ


律「あっ」グラッ

澪「!! 律!危ない!!」ダッ


ゴロゴロ・・・ゴチンッ!


唯「!! 澪ちゃん、りっちゃん!大丈夫!?」ユサユサ

律?「あぁ、なんとか……。ったぁー… まったく、律! きをつけろよ……ってあれ?」

澪?「いててて……澪、ごめん…… ………ん?」


紬梓純「……」

唯憂「あらー……」

第3.5話

またまたお誕生日!

部室

               / : : : : /-―――――‐--:、 : : : : \
                /: : : : /:,.厶-―――――‐--: :|: : : : : : ヽ

              /: : /: :/: ::/::::\Z\/ }/Z : : : :|: : : : : : : '.
          /: :〃: : :,': :./_> ̄         ゙̄丶:| : /: : : : : |   8月21日!
        \  /// : : /l: :/ __\      _,斗ー |:j/ : : : :l: :|     今日は私の誕生日だぞ澪!!

.     ―‐-   /'´/⌒V:│;〃アf心ヾ  ー孑ゥ≠ミ: : / : : : : : l: |        というわけでバースデーケーキをくれ!
.    --―     /    V:l小. {ト イ|     f{ノ::Ⅵ ∨: : : :.j: : :| |
    _, -'´   {     V: : } Vヒソ     |トーイソ/: : : : ∧.:.:|: |
          ∧      '; : { ''    ' -―v` ー〃: : : : : :/ヽ'; :|: :|
          レ ヘ、   ヽ:ゝ ._  f     )′: : : : : /_ノ: V|\|
            \  j/⌒\>ゝ .. _//:.: :/∨: :/\ |
             `/     \ : : :_|厶-―<:::^}/|/
           __/  /    マ'弋\: : : : : : : :∨
          /   {  /   /  ∨ヘ: : : : : : : : : ∧
           (____`ー{ _,/    |川: : : : : : : : : : :|
                 `ーr‐ゝ、_,∠ ノ|川: : : : : : : : : : :ト,、
                  |: : : |   ノ//: : : : : : : : : : : : :\
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         |:: |:: |:: |⌒リ   ヽ:|⌒\:| \|:::::|::::::::|::::::::::::|
         |ハ|::::L:」x=ミ     x==ミ |:::::l::::::: |::::::::::::|
         { {::::|:| { ぅハ      う心 }|:::::|::::::∧ ::::::: |    あー、そういえば今日お前の誕生日だったっけ。
              \」  Vソ     弋ソ レ'::::::Y }::::::::リ     おめでとう、律。
              |::. .:::::      :::::::::  |:::::::::: /::::::: |       ちなみにケーキは用意するの忘れちゃった。
              |::::.   '        |:::::::::/::::::::::::::|         ゴメンな?
              |:::人   マつ     }:::::::/:::::::::|::::::|
              |::::::个..、       /::::::/ :::::::: |::::::|
              |::::::::|::::::>.... r ´ .::::::::/|::::::::::: |::::::|
              |::::::::|:::::::::::::::::|  /:::::::/ { ::::::::::|::::::|
              |::::::::|八:::::::_::ノ ./:::::::/ -‐-、:::::|::::::|
              |::::::::|___//  .::::::::/'"´    ヽ:|::::::|
              |::::::/ 〈 {__/:::::::/         、::: |

         _...:-‐――--...._
       /::::::;:::::::__:::::::::::、:`ヽ
      /:;:::::::::r‐_二二__‐-i::ヽ::ヽ
     /::::!:::::::f´ヽヾ:::l/::::`:ヽi::::!:::::!
    l::::::|:::::::|´` ー-‐ "´ ‐}:::::|::::l|
.    |:::::l|:::::::|         |::::::|:::;||    そ、そんな……!
.  ./:l::/|::::;::{____,  、__ |:::;:::|::|i:l      楽しみにしてたのに……
  /j:|:/:;|::|l:::|,γη  nNヽ |:::l|::h:|::iヽ      シクシク…
. .'' レ:::(.|::|;ly .| | h. r l l ||':/j::|j;:v` ゛ 
.  /_::,::::|::::/l i. i ! { | .i ! i. h//::j:ヽ\
  '´ _ '´_」|:::i'    |.|    |'::;トゝ__`

  f´::::::::::::〉、i.    v    /::ノ:::::::::`ヽ
  |::::::::::::::〈:::ゝー-_Λ__ --‐!/::::::::;:::::::::/
  |::::::::::;、:;/::::::::::::::ヽ'::::::::::::::::Y:::;:':::::::::::i
  ,}::::ヽ、`|::::::::::::::::;;。|::::::::::::::::::V:__;:::::::::j
  |::::::::::l::/::::::::|ヽ:/::db::::::;::';::::::::レ:::::::::〈
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 |:::::::::::::::::::::::::::ヽ:::イ|.| .|ノ::::::::::::::::::::::::::i
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             ,.......----.......、
          ,..-'::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
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       .|::::::|::|::::::::::|::::::::/;ィ::ト、ヽ::::::::::::::ヽ`|--‐'
       .|::::::|::|::::::::::|:::::::|/,.|::l \ヽ 、:::::::::ヽ|
       |:::::|:::l::::::|::|::::::/' ヽ|  \:L、::::::::::|
       .|::::|:::ヽ::::ト:ヽ::ト       ヽ.ヽ::::::|ヽ
        |:::イ::::ヽ::ト‐ぅ示    -ぅア lヘ-'    な、泣くなよ!悪かったって!
        |:ヽ|::::::`ト| .ゝ '      ゝ ' .∧:|      代わりにプレゼントあげるから!!
       /::::`|::::::::| ///   . ///./:::|:::|        前向いてて……?

      ./::::::::::|::::::::|.u   , --、   ノ::::::|:::|
     /---、-、::::|ヽ  ` - '  イ.、:::::|:::|

    /   ` 、 ヽ::::| ` `  -.イ | .ヽヽ:::::|:::|
   ./     .ヽ ヽ:::ヽ  .,`i' ,、 |  | ヽ::::|:::|
   .l       |  ヽ::::ヽ /| P V  .| |:::::|::l
  ,イ   ヽ   |  ヽ::::Y.Y.トi|ヽヽヽ|/ |:::::|/
. /イ    \ ./   .l::::::| | ヽ| ヽ`/ |  |:::::|'
'::::/ |      |    ト:::::| `i.┘ヽ`ヽヽ./:::::|
::;イ       .|   .|.|:::::| .| 〉┘┘|/:::::/


               ___
            . : :´: : : : : : :`: : .、
          ,.: ´;,.. -‐‐―‐‐-- 、: :`ヽ、
        ,.:': : :/,,.. -‐‐r┬―ァ-: ,.、`! : :`、
       ,.': :!: : !__ムvヽjヽ!,ル'ヘ/ムィ,`!: : l:ハ
      ,' : :l: : :!           `キ : :|: :l

     ,イ: : :l: : :|    ,,. ノ ヾ、      |: : |: :.!
      / !:.!: :! : :.! ‐--‐'′   ` ー-- !: : |: :ヘ   なんだよ別に澪の方 向いててもいいじゃんか……

    { !:.l: :|: : :.!  ‐- 、   ,. -‐   |: : :!: : :',     まぁいいや、前向いてればいいんだな?
    | !ノ: :|: : : !ィテ千ミ     ,ィ云示ォl: : :|: : :iハ      でも一体どんなプレゼントなんd
    ! /: : f| : i :| 弋::ツ     弋::ツ !: : :|): :.ト}
     ムィ: ソ!: ハ:|  ,,    .::.     ム: : l: : : |
        |/|.:l: : :i|             ,|.: : :l: :iヘ!

       レ'!: : |ヘ、             ノ:|: : 八リ
          ,.へ :!:.:l> .. ' ̄ ` ,. イ:.:.:.|: ∧

      /.:.:.:.:.:リ:.:.!   ヽ、‐-‐ フ l:.:.:.:.:|/:.:.:ヽ
     /.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.l   ,ィ=Yヾ   !:.:.:.:.{:.:.:.:.:.:.:.\
    ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.ト// /l_li ヘ、 !.:.:.:.:.:}.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
  i'´ .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ.:.:.:! {ィ'! | !ト、ゝ|:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ

  {.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:|  ヽソ |ト_ソ !:.:.:.ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}

           ,  -‐ ´  ̄ ̄ ` ' 、
           (            )
           ヽ   (    ノ  ノ
             ` ̄ T  ̄ T ̄´
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        ': : : |              ! .L/ .V L__| |,'::/:: ::| ,':: :: :: :: :: :: :: :: :!

     ,': : : : !   、         、   |.      /,/:: :::/ ':: :: :: :: :: :: :: :: ::l
      ': i: : : ',   ○         ○   _|  < /'/_ノ: ,':: :: :: :: ::i:: :: :: ::,'    チュッ
     |: ,|: : :f |              l  ///   |:: :: :,'`, :: :: :: ::|:: :: :: /
     |:,'.|: : :| |⊂⊃         ⊂⊃',        .|:: :::i  |:: :: :: :: ! :: :: i
     !' !: : /'、     r-─ 、     ,_>、.      |:: :::|_ノ!:: :: :: :::|:: :: ::|
      |: / レ'` ─- -,`──‐'‐─ ´\| |:/`¨ ' ニ !::, -、 :|:: :i:: :: ::!:: :: ::'.,

      レ      / 彡|ミ  \     |'     {`ヽ/ | '|:: :|:: :: :: :: ::、:: :\
           , ' | / / J  .i  〉、       l丶`.>_,' .|:: :| :: :: :: l:: ::\‐-ヽ
        r- ´,  ' Y  o    |/、 \     `¨‐'i|:: | !:: ハ :: :: ::|ヽ;: :: >
        `‐ ´   |  o    !  `' _ つ     { V' .|:/ _!V|:: ::|   ̄
            ノ、 _ -、   _}、            /-─ .!‐´、ヽ,`‐'
            ヽ_/ i  l`¨l 」ノ         ヽ_|_|_|-‐´
               !‐┬‐┬´|           ./ |  /
              |- |   |- |          /フ'.|- /
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                    ,  -‐   ̄ ̄ ̄ `   、
                  ,  ' :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: `.. .、
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               ., ' :: :: :: :: :: :: :: :: :: :/ :: :: :: ::/ :: ::/、:: :: :: \
              / :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::/ :: :: :: ::/ :: ::/ i :: :: :: :: ヽ
                ,':: :: :: :: :: :: :: :: :: :: :/ :: :: ::/|:: ::/  | :| :: :: : :: :i
             ' :: :: :: :: ::i :: ::| :: :: / :: :/::/-‐':::/-  | :|ヽ :: :: :: :!

                ! :: :: :: :: :::|:: :::|:: :: :|:: :://´  i::/    | :i 、'.:: :: :: :|
             i :: :: :: :: :: :! :: :| :: :::|:: /    !'     |:,'  l i:: :: ::|
              |:: :: :: :: :::,-' :: ::! :: ::i::,'         /  .|:! :: :: |
              |:: :: :: :: / -.! :: :', :: :|:| ヽ、_,         リ :: :i::|
              |:: / :: ::i { .|:: :: :' :: :',|   . ̄     .、__, /:: :: :l::|
              |:/ :: :: ::\ .| :: :: ::', :|! ///     ,  `´ / :: ::i :|!'   ど、どうだ私からのプレゼントは?
              l':: :: :: :: :: :ヽ,:: :: :: ヽ!         ///, :: :: ,!:,'      律のために一生懸命準備してきたんだぞ
             ,' :: :: :: :: :: :: ::', :: :: :: ::ヽ    ヽ ._   ./:: :: /|´
            , :: :: :: :: :: :: :: :::', :: :: :: :: ヽ       / :: :i::|
           ./:: :: :: :: :: :: :: ::/:::ヽ__ :: :::ヽ,     ./ :: :: :: !i:!
           / :: :: :: :: :: :: , 'r ' ´    `ヽ, :` ‐- ´i :: :: :: :: :| |
         / :: :: :: :: :: :: /::/         ヽ :: :: ::,'i :: :: :: :: :!
        ./ :: :: :: :: :: :,.イ::/           ', :: ::/ ! :: :: :: :::|
       , ' :: :: :: :: :: ::/ ,':/             .i:: :,' | :: :: :: :: |
      ./ :: :: :: :: :: ::/ ./:/            .|::/  |:: :: :: :: ::!

              ___,..-..、_
         ,...-::, ニ ――--、!: : : : : : `: : .、
     ,.-:.‐:´,.=..――: : ̄: ―-|: : : : : : :、: : : : :ヽ
    /: :/: : {: : : /_ -――-:、|: : : : : : ヽ: : : : : :.ヽ
   ./: :/: ,-―`- ´       .|: :.!: : : : : }: : : : : : :ヽ
   ./: :{/              |: :|: : : : : :|: : : : : : : : .、
  /: : :/               |: |: : : : : :.|: : : : : : : : :.}
  .|: : : |           _ -―-V: : : : : : |: : ヽ: : : : : : |
  .|:./: :|__ -‐     ̄      |: : :|: : : |:.|、: :}: : : : : :|
  .|/: : .|          //ニ=、ヽ |: : |: : : :|:|:..ヽ:|: : :: : : :.|
  .y: : : |.  ,,=、ヽ      ´iう。:ヽ ヾ}: /|: : : |:|: : :}|: : : : : : |   しょ、正直ちょっと、いやかなり驚いた。
  .|: : |: :| /iてノヽ      リー::d / |:./:|: : : :||-‐.、: : : : : : : :|      でも……
  | : :.|: ::、 ヘゝ:d      ゝ-‐*  /:/:.|: : : :/,ハヽ: : : : : :|: 丶
  |: : :|:.、: .、  `ー ,    ///  //.|: : : : /ー,   ノ: : : :、:|丶.、.、
  |: :,: : : ゝ丶///          ツ |: : : : /-´ /: : : : : 、
 .|: ./: : : : !`              |: : : :/_./: : : : : : : : :、
 .|:./丶: : : 、     _       |: : :./: : : : : ,、: : ,、_: : _:ゝ
  レ   、: : : | 、      `       |: : /: : : : : : | ゝ、! .`

     .、: : :|:| 丶         イ| : /|: /\: |丶
,...-..、   、: :||  ツゝ _ _ - ´   |:/-―ヽ
::::::::::::::::::::: 、:|:―---テ:>.ヽ , - ´ /  /:::\

:::::::::::::::::::::::::、::::::::/::::::!  V      /::::::::::::,ゝ、
::::::::::::::::::::::::::::/::::::::/ ,-テノ- 、   /::::::::::::::::/:::::::::`:::...、
:::::::::::::::::::::::|´::::::::::::/´/|H | ヽヽ/::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::: ̄:`..-、

:::::::::::::::::::::::丶:::::://,// | | ヽヽ:::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

                ,.....,.: :_: -―――-:、: : :`: : . 、
              /: : /´ ̄ ̄: :T: >. 、` |: : : : : \
             /:: : ,イ: :z‐-ヽ:|/.-'z:_: : : `|: : : : : : : : 、

                 i: : :/:フ´         `<:|: :|: : : : : : : :、
             レ: :(/             | : |: : : : : : : : ::、
            /: : :' 、        ,-―、  |::: : : : : : : : : : ::i
            /: : ::|  `\`    ´     .| : : : : : : : : : : : |
           ,: : : : |         ,-_   .|: /: : : : |: : : : ::;
              ;: : : : :| x、ヽ     ィテ心ミ、 |/: : /: : |: : レ::/
           i: : /: : | "`ヾ     {ハイ:| ):〉/: : ::/: : ト、::|: /    最高のプレゼントをありがとな、澪!
           |: /: : : |        ヾ少/.|: : : /: : :ト |: :|:/
            |::|、:|: : | ''  '     ,,    |: : :/: : :/'.ノ: :Y
             |/ ヽ: :∧    ___      .|: : /: : :/´ハ: : |
       ハ      |: : :\   ー‐'      |: :/: : ::/: : : ヘ::\
     | |       i: : : :/\      .. <: /: :/:/: : : :|   ̄
     | |       、: / ̄ヘ`ー‐ ´    -|/: :/レ、: : : ::|
     |. 、/´l ,....-――、:|´/::/ j  _./  |: :/:::::ト、\:Y
.   ,―、i  |  |'::::::::::::::::::::/:::::::| __ヽ/     |/:::::::|::::::\`
.rイ´ヽ ト` j  .|::::::::::::::::::::\::::::;'/ィ.(. ヘ   /::::::::::::|::::::::::::`:::.、
.| ヽ | ノ) ィ  ヽ::::::::::::::::::/::/./// / ト | ./::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::`:::.、

                    , '´..:::::::::::::::::::::::::::::::..`丶、
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             i:::::::::::::::/i:::::i         ヽ::::ヽヽ:::i::::::::::::::::::::i

             i:::::::::::::::i  -- 、     ,ゝ≦===xァ i::::::::::::イ::::i  
             i:::::::::::::i ィ示テ=x      外ィタ リ/ i::::::::::::i i::::i   ふふ…、どういたしまして。良かった、律が喜んでくれて……。       

             i:::::::::::ヽ ヽ辷_i        ヽ--^  i::::::::::::iノ::::i     じゃあ改めて!
             i::i::::::::::ヽ             ,,,,,,   レ::::::::::i:::::i       誕生日おめでとう! 律!!
             i/i/i:::::::.  ,,,,    .         i:::::::::::i:::::i

                i::::::::.                /i::::::::::i:::::i  
                i:::::::::ヽ      ャ==ッ      .:::i::::::::::i::::::i
                i::::::::::::ゝ  へ  `      イ::::::i::::::::::i:::::::i
                /i:::::::::::::::::/  ヽ∩    < i::::::::i::::::::::i::::::::i
               i::::i:::::::::::::/_/ ヽ.i i -<   i┐::i::::::::::i:::::::::::i

               i::::i::::::::::/ __, -へ.i i __   __ ./ ト:i::::::::::i::::::::::::i
           / ̄ ̄ ̄i::::::::::i  / ヽ >i v     /: :i::::::::::i:::::::::::::::i
          i: : : : : : : : :i:::::::::::i   /ヽii i/L \  /: : i::::::::::i ̄ ̄ ̄`--、_

          /: : : : : : : : : i:::::::::    \ //∧ヽ\/: : :i::::::::::i: : : : : : : : : : : :ヽ
          i: : : : : : : : : : i::::::::::ヽ    i// ヽヽv: : : i::::::::::i: : : : : : : : : : : : : i

         ,. :': :/´`_....-――-.._.`i: :丶
         ,. : : :/: :/,:. -―――- :::|: :.i: : :ヽ、
       .,.': /: :/: |/、、: : |: : ||: : :/┤:|:i: : : |:ヽ

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       y: |: : :|: :.|           .v: : : :|: 、|
      /:.λ: : |: :|  _ `     ' ,  |: : ,: |-、|   ありがとう! 澪!!
     ./: , { |: : :|: |,ニ三、ヽ     ,,ニ三、|: /: :r .|:!     今までで一番最高の誕生日だ!!
     'イ/:ゝ|: : |: |            |/: : |ノ:、丶

      ./: : : i: : |ヽ| ""   ,   "" イ: : : |: : .ヽ 丶_
     'イノ´ |:}、: :|、.     __     ,/: : /:|ー--`
      _ ノ_:,、: : i 、    ( ̄.ノ    イ: : /-―- 、
    ., '     丶: | ゝ、   ̄   イ //     ヽ
   .i         |  ヽ ` ー ' /  |        }
   .i         .|  丶   ./   |        i
   |     |    .|    >  <_    |  |   ,   |
   |   、 .|   / |  / }|  |入   |  .|  /  /^,
  .λ   ヽ |   /  .V |ヽ< V >/ \/    | /  /  |

部室前
                              <タンジョウビオメデトウ、リツ
                                <アリガトウ、ミオ!! イママデデイチバンサイコウノタンジョウビダ!!

                          ,  ――  、
                       ィ ´         `ヽ、
                     /              \

                     /                 ヽ
.                    /    ∧     Ⅳ  i     .|
                   / i    / |    .| ∨  !   i  |
                   | i   ./ 彡仆   .|ミミヽ !    !  |  まったくりっちゃんと澪ちゃんったら///
                   | i  /    乂  |   \!   !  .|    廊下まで丸聞こえよぉ……///
.                   | i /      ヽ |    |  i  |     あらやだニヤニヤが収まらないわ……///

                    | ト | =≡=    ` =≡= ! ./   |      うふふふふふふふふふふふふふふh
.                    Ⅵ∧            レ   / |
                     | ハ ///  ,   /// /  / |      
                     |  !    、 /    /  /  |
                     |   >、  r^i^i   , <i  |   |
                    /  i彡`>! ! !. ト、イ /  |   |
                  , -! レ´ ̄つミミi   ハ  /  ├-┴ 、
                 /;;;;;;;;;/  ´ ̄ろミj   ` } /    };;;;;;;;;;;;;;;;ハ



りっちゃん誕生日おめでとうございます


おわれ

第4話

「ドライブ!」



運転免許試験場 学科試験会場


律「いよいよ合格発表だな……受かってるといいな、澪」

澪「うん……」ドキドキ

アナウンス『ピー これより電光掲示板で学科試験合格者の発表をいたします』


律「! きたか!!行くぞ、澪!!」グイッ

澪「り、律! まだ心の準備が……」ズルズル



電光掲示板前

澪「」クルッ

律「……? なんだよ急に後ろ向いて……」

澪「やっぱり怖い……。律、私の代わりに見てきて……」


律「……わかったたよ。まったく怖がりでちゅねー、澪ちゅわんは」

澪「う、うるさいなぁ/// じゃあ頼んだぞ、律」

律「へいへーい」ジー

澪「」ドキドキドキ

律「……ややっ!衝撃の結果が!!」

澪「えっ!?」


律「……つーか人が一杯いてよく見えないなー」

澪「もう帰りたい……」



律「もうちょっと前の方に行ってくるな? ……はい、ちょっと失礼しやすよ」グイッ


律「……よっと。 おー、ここからならよく見える…… …こ、これは……!!」

澪「!?」

律「澪、ちょっとこっちに来い」

澪「えっ!? で、でも……」

律「いいから来い!」

澪「……わかったよ。すみません、ちょっと失礼します」グイッ



澪「ど、どうだったの……?」ドキドキ

律「澪の番号って何番だったっけ?」テヘッ

澪「」ガクッ


澪「……030だよ」

律「あー、そうだったそうだった!」

律「えーと、030、030……あ、あった」

澪「え!?本当か!?」ガバッ


澪「……あった!」

律「おー、よかったじゃん澪ー。これで車乗れるな」

澪「……やった」

澪「やったー!やったよ律!! め、免許取っちゃった!」ピョンピョン



律「う、うん。よかったな澪。で、でも……」

澪「なんだ!?」ピョンピョン

律「その……飛び跳ねるのは周りの人に迷惑かと……」


澪「あっ……///」



澪「でもよかった……受かってて……」

律「本当だな。これも私が毎日澪に試験のポイントを教えてきたおかげだな!!」

澪「ねつ造すんな」ゴチンッ

律「あいたっ」



律「ってーな……。あ、頭がクラクラする……」

澪「ご、ごめん。ちょっと強くたたきすぎたか?」サスリサスリ

律「……今度の日曜日、澪がドライブに連れていってくれたら治るかも」

澪「……はい?」


律「だからドライブだよ、ドライブ。たしか澪のお父さん車持ってたよな?」

澪「うん、確かにパパは車持ってるけど……」

律「……パパ?」

澪「お、お父さん! ……で、でもお父さんが車貸してくれるかどうかわからないし、第一まだ私初心者だし……」

律「みおー……ダメ……?」ウルウル

澪「!? な、な……!?」



律「みおとドライブ行きたいよ……」ウルウル

澪「そ、そんな目で見るな!!」

律「みおー……ダメなの……?」ウルウル


澪「わ、わかったよ!パパに車貸してもらえるよう頼めばいいんだろ頼めば! まったくしょうがないなぁ……」

律「ホント!?ありがと澪大好きー!!」ギュー

澪「ちょっ///やめろよこんな人前で///」



律「じゃあ澪、もし車貸してもらえることになったら電話してくれ!」

澪「わかったよ」


・・・・・・

日曜日

澪の家



澪(そろそろ約束した時間だ……)

ピンポーン

澪「お?律来たかな? よっこらしょっと」ムクッ


澪「でもよかったな、パパが車貸してくれて。教官なしで路上に出るのはまだちょっと怖いけど……」スタスタ

澪「今日は、律を楽しませてやらなくちゃな!」ガチャ


澪「律、おはよ……って誰!?」

律「いや、わたしだし……」

澪「り、律なのか……?だって、お、おデコが出てないぞ!!」


律「私=おデコなのかよ!」


律「今日はせっかくの澪とのドライブの日だからおめかししてきたのに!」シクシク

澪「ゴ、ゴメン!あまり律が髪下ろした姿、その、見慣れてなかったから……」

律「ふーんだ。もういいよ、どうせ私はおデコ出してなきゃ誰だか分かりませんよーだ! もうカチューシャ着けちゃうもんねー」スチャ

澪(うぅ……ドライブに行く前から律のことを怒らせてしまった……)


澪「律、その……、ゴメン……」

律「……」グスッ

澪「ドライブで律の好きな所に行っていいから許してくれ……」

律「……いいの?」

澪「あぁ本当だ。どこでも連れてってやるぞ!」

律「よっしゃあー!!じゃあニューヨークへ行くぞ!澪!!」

澪「無理だ!!」



車内!

澪「律、シートベルトしたか?」

律「バッチリだぜ!」

澪「よし、ドアロックオッケー、ミラー、シートベルト、座席の位置も大丈夫!」

律「よっしゃー!出発だー!!」

澪「おー!」

ブロロロ……


澪「……で、律?どこに行くんだ?」

律「澪と一緒ならどこだっていいぜ」キリッ

澪「もう/// 急にそんなかっこいい台詞言うなよ」

律「う、うっせーし///」



澪「……じゃあ偕楽園に行こうか」

律「……快楽園?そんなところ私たちが行って大丈夫なのか?」

澪「漢字が違うよ漢字が!三大名園の方の偕楽園だよ」

律「あぁ、あれな!あの、ほら、なんかで有名な!!」

澪「お前絶対知らないだろ」

律「……ゴメンなさい、知ったかぶりしました」


澪「まぁ知らなくても無理はないけど。偕楽園は江戸時代に作られた公園で、梅がたくさん植えられてるんだ」

律「へぇー……でも澪、その偕楽園?への行き方分かるのか?」



澪「……分からん」

律「ダメじゃん! どうやって行くんだよ!」

澪「ふっふっふ……」

律「何がおかしい」

澪「律、お前の目の前にカーナビがあるの気づかなかったか?ほら、これ」

律「おぉっ!あったのか……って前見ろ澪ー!!」



澪「……ゴメン。でもこれさえあば道に迷わないぞ!!律、スイッチを押してくれ」

律「あぁ、分かった」ポチッ

カーナビ「ウィーン」

律「へぇ、カーナビってこんな感じなんだな。ん……?何だ、ユーモアモードって?」

澪「……あぁ、それあんまり面白くないぞ」

律「いやいや名前からして面白そーじゃん!ちょっとつけてみようぜー!」ポチッ

澪「えー……」



カーナビ「ポンッ この先の交差点、右です」

律「おー!喋った!!……でもあんまりユーモアじゃないな」

澪「……いや、律。この先の交差点を見てみろ」

律「え……?ってオイ!右に道路なんてないじゃん!!」

カーナビ「ポンッ ……なーんてね」

律「なんだこのカーナビ!!」



澪「いや、まだ怒るのは早いぞ律。ユーモアモードはこんな生易しいレベルじゃない」

律「えっ?」

カーナビ「ポンッ この先300Mで300M走行したことになります」

律「いいよそんなこと言わなくて!」

カーナビ「ポンッ 右手300㎞に富士山が見えます」

律「見えるか!!」

カーナビ「ポンッ …………」

律「……?何だ? 故障か?」

カーナビ「『ポンッ』って言ってみただけ///」



律「……」イラッ

澪「な?ろくでもない機能だr……って律!どこから持ってきたか分からないけど金槌をカーナビに振り下ろそうとするのはやめろ!!」


澪「ボタン押せば通常モードに切り替えられるから!とりあえず金槌は置け!」

律「……分かったよ」ポチッ



律「しっかし何だったんだよー、あのカーナビはよー……」

澪「まぁまぁ。せっかくの楽しいドライブなんだから。そう怒るなよ」

律「うん……」


ポツポツ……

律「……あ、雨降ってきた」


澪「え!? ……本当だ、フロントガラスに水滴が…。ワイパーつけないと」ウィーン

律「うわー……、せっかくのドライブなのに雨かよー……。テンション下がるなー」

澪「そうだな……。確かに残念だな……」



澪「……ふふっ」

律「なんだ、澪急に笑って……?笑い茸でも食べたのか?」

澪「なんでそうなるんだよ…… …私が律と初めて出会った時のこと思い出してたんだ」

律「私と初めて出会った時……?あー、そういえばあの時も雨が降ってたな……」



・・・・・・

12年前

放課後の昇降口


ザー……


みお「うわぁ!雨いっぱい降ってる!……天気よほうでは今日一日晴れだって言ってたのになぁ……」

みお「えーと、たしかかさ立てに予び用のかさをおいておいたはずだけど……」ガサガサ

みお「……あれー?」ガサガサ


みお「……な、ない!!たしかにここに置いておいたはずなんだけど……」

みお「うぅ……どうしよう……」グスン



ザー……


みお「雨、やまないなぁ……」


みおが昇降口の前で立ち尽くしていると 後ろからカチューシャをつけた女の子がやってきた

傘を持ったその子は 悲しそうに外を眺めていたみおに優しく(?)話しかけた


りつ「うわー!すごい雨だねー!!シャワーみたいだね!!!」

みお「えっ!?……う、うん、そうですね…」

りつ「……どうしたの?帰らないの? あ、もしかしてかさ忘れちゃったの?」

みお「……うぅん。かさ立てに置いておいたかさがなくなっちゃったの……」

りつ「えー!? だれかが間ちがえて持っていっちゃったのかなー?」

みお「うぅ……わたしのかさ……」グスン



りつ「じゃあさ、わたしといっしょに帰ろうよ!」

みお「……え?」

りつ「ほら、つめればさ、わたしのかさに二人はいれるでしょ!」

みお「い、いいの?」

りつ「うん! こまった時はおたがいさまだよ!」

みお「あ、ありがとう!」

りつ「えへへぇ///」


りつ「よーし、じゃあ行くよー! しゅっぱつだー!!」バチャバチャ

みお「う、うん!」バチャバチャ



りつ「ねぇ、名前はなんていうのー?」

みお「あ、秋山、みおです……」

りつ「へぇー!みおちゃんっていうんだー!わたしは田い中りつっていうんだー! よろしくね!」

みお「よ、よろしく」

りつ「みおちゃんちはどこら辺なのー?」

みお「じ、じゅう所は○○町の△△丁で……」

りつ「△△丁!? へぇー!わたしの家とけっこう近いんだねー!今度遊びに行っていい?」

みお「あ、あそびに……?」



りつ「そう!家も近くだし! ……あ!そうだ、明日から一緒に帰ろうよ!」

みお「……えっ!? い、いいの……?」

りつ「うん!」

みお「ほ、ほんと!? ……うれしい」

みお「あ、あの…私、その……人みしりだからなかなかおともだちができなくて……だから、その……うれしい!!」

りつ「わたしもみおちゃんと おともだちになれてうれしいよー!」

みお「あ、ありがとう! た、たいなかさんっ」

りつ「りっちゃんでいいよー」

みお「り、りっちゃん……?」



りつ「そう!あのねー、私の名前『りつ』でしょー? でも『りつちゃん』って言いにくいでしょ?だから『りっちゃん』!」

みお「……りっちゃん」

りつ「そうそう!りっちゃんです!!」ブイッ

みお「……ふふっ!あはは!」


りつ「おもしろかった?じゃあもう一回! りっちゃんです!!」ブイッ

みお「あはははは!! ……あぁー、おかしい…」

りつ「えへへへ///」



みお「……あ、もう家に着いちゃった」

りつ「へぇー、みおちゃん家ここだったんだ」

りつ「……あ!かっこいい車があるー!」

みお「あー、あれはパパの車なんだー」

りつ「へぇー、かっこいいねー! ……じゃあみおちゃん!また明日ね!」

みお「……うん!また明日…!」



・・・・・・

車内


澪「……で、あの時なくなった私の傘は結局お前が間違って持っててたんだよな」

律「なんだよー、まだそんなこと覚えてたのかよ…… どっちにしろもう時効だい!」

澪「そんなこと言ってるけどお前この前借りていった私の傘まだ返してないだろ!」

律「まあいいじゃん傘の1本や2本くらい。あとで返すからさー」

澪「……まったく。大体、雨が降りそうだって天気予報で言ってたら傘を持って来ればいいのに……」

律「私が傘を持っていくと雨が降らないし、逆に持ってかなかったときに限って雨が降るんだよ!」

澪「知らないよそんなこと!」



ザー……


澪「……雨、止まないな」

律「……そうだな」


澪「……」

律「……」

カーナビ「ツギノコウサテンヲウセツシテクダサイ……」


ザー……

澪「……」

律「……しゃべれよ」

澪「え?」



律「え?って言ってる場合か!! ダメだダメだこんな黙りこくってちゃあ! ますます気分が沈んじまうぞ!!」

律「というわけで澪! しりとりをして気分を盛り上げるぞ!!」

澪「また突然だなオイ!! ……大体、しりとりって言ったってそこまで盛り上がらないだろ」

律「ちっちっち。私がやろうとしているしりとりは、ただのしりとりじゃあないんだぜ」

澪「じゃあ何のしりとりなんだよ」

律「名付けて『い』で始まって『い』で終わる語onlyしりとりとでも言っておこうか」

澪「名前長っ!!」



澪「……でも普通のしりとりよりかは面白そうだな」

律「だろー? じゃあ私からなー」

澪「いや、やるとは言ってないけど」

律「それでもやるんだよ!!」

澪「私に拒否権はないのか!」



律「いーじゃん、しりとりくらいー。そんなケチケチすんなよー! 私からな、えーと……い、『芋洗い』!」

澪「勝手に始めるなよ……。あとなんだよ芋洗いって……美しくないなぁ」

律「しりとりに美しさなんて求めるなよ……じゃあ澪、美しい回答をどうぞ!」

澪「しょうがないなぁ、私もやればいいんだろ、やれば。 えーと……い、『一緒にいたい』……」


律「……え?」

澪「あ」

支援ありがとう!



澪「い、いやただしりとりの回答としていっただけだぞ!!深い意味はない!他意はないんだ!!」

澪「で、でも別に律と一緒にいたいってわけではないということではないぞ!」アセアセ

律「何焦ってんだよ……」

澪「別に焦ってなんかない!!」ギュイイイン

律「っわ!!あぶねえ!! 左折するときはもっとゆっくり曲がれよ!」

澪「ご、ごめん……。 そ、それはともかく!次は律の番だぞ! だからもうこの話はおしまい!」

律「わかったよ…… じゃあ、えーと、い、い……」

律「……『いつまでも一緒にいたい』」


澪「…………え?」



律「い、いやただ思いついたから言っただけだし! で、でも澪といつまでも一緒にいたくないというわけではないぞ!///」

澪「そ、そうか……」


澪「……///」

律「……///(なんかかえって変な雰囲気になっちまった……)」



数分後

澪「……あ、雨やんできた」

律「えっ!?」ガバッ


律「ほ、本当だ……なーんだ、やっぱり傘なんて必要なかったな!!」

澪「私の傘まだ返してないお前が言うセリフか!」


澪「でも、雨やんでよかったな。 せっかくのドライブなんだし……」

律「うん……」



澪「……? なんだ、あんまり嬉しくなさそうだな。あんなにテンション下がるだとかなんとか言ってたくせに」

律「…だってもう眠くなってきちゃったから……。 …着くまで寝るな? おやすみ……」

澪「また突然だな……。 ってオイ!寝るのはいいけど私の方に寄りかかってくるなよ!」

律「いいじゃーん、別にー。だってドアの方より澪に寄りかかったほうがあったかいんだもーん」

澪「そもそも寄りかかろうとするなよ!  ……ったく。運転の邪魔だけはするなよ?」

律「分かってるよー」スリスリ

澪「まったくしょうがないなぁ……///」



さらに数分後

律「zzz」


澪「……ホントに寝ちゃった」

澪「寝顔がよく見られないのが残念だけど…… きっとかわいい顔してるんだろうな///」

澪「しかし本当によく寝てるな……」

律「zzz」


澪「……」

澪「……りっちゃん♪」


澪「な、なんてな!!ちょっと言ってみただけだぞ!/// ……まぁ聞こえてないだろうけど。てか起きてたら恥ずかしくて言えないし」


澪「……そういえばいつからだったかなぁ、律のこと『律』って呼ぶようになったの」

澪「『りっちゃん』から『律』って呼ぶようになって、車乗れるようにもなって……。私もだんだんと大人に近づいているのかな……」




律「そうかもな……」


澪「なんだ、律もそう思ってたのk……」


澪「……ん? りつ……?」

律「何ですかな?」ニヤニヤ

澪「!!? んなっ!?」



澪「お、お前寝てたんじゃなかったのか!!!」

律「さっき起きた!」

澪「さ、さっきってど、どのあたりから……?」

律「うーん……澪が『りっちゃん』とか言ってたところぐらいからかなー」

澪「!!うあぁぁあああ!!!!」キキィーッ!!

律「のわあっ!!シートベルトが腹にっ!ぐえっ!」


律「ちょっ!!急にブレーキかけんなよ!危ないだろ!!あと停車するときはハザードランプッ!!」

澪「ご、ごめん……その、恥ずかしかったから……///」

律「はぁ……死ぬかと思った……」



律「てか昔は普通にりっちゃんって呼んでたんだし今更恥ずかしがることなんてないだろー?澪ちゃん?」ニヤニヤ

澪「それはそうだけど……」

律「今日ぐらいは私のことりっちゃんって呼んでくれてもいいんだぜー?澪ちゅわん!」

澪「そ、そんなことできるわけ……!」

律「えー、いいじゃーん。私も澪のことみおちゃんって呼ぶからさー」

澪「はぇ!?いや、いいよ!そんな呼び方しなくって!!」

律「そんなこと言わないでさ……、ね、いいでしょ?みおちゃん……?」ウルウル



澪「!?ま、またその手か! もうその手には乗らないぞ!」

律「ダメなの……?」ジワッ

澪「!! な、泣いてもダメなものはダメ!!」

律「そんな……!」グスッ

澪「な……!ほ、本当に泣くなよ」オロオロ

律「だって……みおちゃん…… うぅ」グスッ



澪「だー!!分かったよ!ちゃん付けで呼べばいいんだろ!呼べば! 今日だけだぞ!まったく……」

律「ホント!?やったぁーぃ!!」ガバッ

澪「ってお前全然 涙出てないじゃん!? 嘘泣きだったのか!騙したな!!」

律「なかなかの演技だっただろー?みおちゃん?」

澪「ま、まぁそうだな。その……りっちゃん///」

律「んー?そんなに顔真っ赤にしてどうしたのかなー?みおちゃん?」ニヤニヤ

澪「う、うるさいなぁ/// そ、そろそろ出発するぞ!もうちょっとで着くから、今度は寝るなよりっちゃん」

律「へいへーい。……よーし、快楽園に向けて再出発だー!」

澪「だから漢字が違うって!!」



20分後


……ちゃーん

りっちゃーん

律「……んあ?」

澪「ほらりっちゃん起きろ」ゴチンッ

律「いてっ!!!いきなり何するんだよ澪ちゃん!」

澪「……外を見てみろ、りっちゃん」

律「外……? あ!もしかしてもう着いたのか!?」



澪「まったく。もうすぐ着くから寝るなって言ったのに寝ちゃうんだもん」

律「ゴメンゴメン。 ……へぇー、あれが偕楽園か…」

澪「なんだか歴史の重みを感じるな……。あぁ、あそこにいるツインテの女の子もえらく感動しているぞ」

律「どれどれー? ……なんかあの人誰かに似てる気が…」

澪「りっちゃん、私たちも車から降りて近くで見て来よう」

律「あ、あぁ。分かったよ澪ちゃん」

ガチャ バタン



律「ちゃんと車の鍵閉めたのかー?澪ちゃん?」

澪「大丈夫だよ」

ミオセンパーイ リツセンパーイ


律「あれ……?どこからか聞き覚えのある声が……?」

梓「澪先輩!律先輩!!」タタタッ

律「!? え!?おま……梓っ!!? ど、どうしてここに!?」

澪「「何言ってんだ。落ち着けよ律。だいたいこここんなとこrにあzzずgいいいるわけ;ないんndろろロ」

律「まずお前が落ちつけよ!!」



澪「そんなこと言われても無理だ!! だってここにいるはずのない梓がいるんだぞ!!!落ち着いてなんかいられるか!!」

澪「だからきっとこの梓はお化けなんだよっ!! ひぃぃいいいい!!」

律(一人で随分と盛り上がってんなー……)


梓「…お化けって言われましても……。 私は本物ですよ。ホラ、ちゃんと足も地面に着いてるでしょ」

澪「ほ、本当だ……。でも梓、なんでここに……?」

梓「それはこっちが聞きたいくらいですよ……。びっくりしたんですよ、車から降りてくる澪先輩と律先輩を見つけた時」

梓「私は今日はお父さんとお母さんに連れられて偕楽園を見に来たんです! ……澪先輩たちは誰に連れてきてもらったんですか?」

律「なーに言ってんだ、梓! そんなの澪ちゃんに連れてきてもらったに決まってるだろー?」



梓「……え?澪ちゃん? ……てか澪先輩免許持ってるんですか!?」

澪「あぁ。先週取ったばかりだけど」ガサゴソ

澪「ほら、これが免許証だ!!」ジャーン

梓「!! すごいです澪先輩!もう車に乗れるなんて格好いいですっ!!」

澪「いやぁ///」テレテレ


梓「私も澪先輩の運転見てみたいなぁ……あ!」

律「……?どうした?」

梓「ちょっとお父さんとお母さんのところに行って来ますね!」ダッ

律「あ、あぁ。 ……どうしたんだ急に梓のやつ?」



五分後


梓「お待たせしました!」

律「おっかえりー、梓!何か頼みごとでもしてきたのかー?」

梓「ハイ!帰りは澪先輩の車で帰っていいかってお願いしてきました!」

澪「えっ!?わ、私の車で!? ……で、でも梓の家の事情とかは大丈夫なのか?私まだ初心者だから帰るのとか遅くなっちゃうかもしれないぞ」

梓「その点は大丈夫です! 実はというとお父さんとお母さんは明日もここに用事があって……。私はついでに今日は連れてきてもらったんです」

梓「本当はこの後電車で帰る予定だったんですけど…… 澪先輩、いいですよね…?」



澪「…そういうことなら……。 わかったよ、梓。帰りは車で一緒に帰ろう」

梓「……! あ、ありがとうございますっ!! わたし、嬉しいです!」

律「よかったなー、梓。これで梓も澪ちゃんのワイルドな運転を体感できるぞ!」

澪「そんな荒っぽい運転なんてしてないだろ!!さっきまで助手席でスヤスヤ寝てたくせに」

律「う……/// う、うるさいぞ澪ちゃん!!」


梓「……ふふっ。相変わらず先輩方は仲良しですね。今日は特に」

澪「そうか?いつも通りだろ」

梓「だって、お互いちゃん付けで呼び合って……///」

澪「えっ……? ……あっ!!!(忘れてたっ!!)」



澪「こ、これはだなっ!!!あくまで今日限定の罰ゲーム的なものであって///」アセアセ

律「そ、そうだ!!プラーベートではちゃん付けで呼び合ってるわけじゃあないぞ!!」

梓「本当ですか~?」ニヤニヤ

律「そ、そんなにニヤニヤするな中野ォー!!///」ガシッ

梓「きゃー澪先輩たすけてー」

律「ニヤニヤしてる奴にはこうだ!」コチョコチョ

梓「! あはははっ!!ひぃー、わ、腋はやめ……あはははは!!」

律「こちょこちょこちょー」

梓「あははははっ!!!」


澪「……まったくお前たち何やってるんだよ。 周りの人みんな見てるぞ」

オカーサンアレナニヤッテルノ-?   アレハイチャイチャネ。スバラシイコトダワー

律梓「あっ……///」



一時間後


澪「じゃあそろそろ帰ろうか」

律「えー、もうかよ!? だってまだ来たばっかじゃん!まだまだ遊び足りないぜ!! だからそこのコンビニで花火買って遊ぼうぜー」

澪「そんなの地元のコンビニで買えばいいだろ!!遅くなってもいけないからもう帰るぞ」

律「……わかったよ」シブシブ



梓「……澪先輩もいつも大変ですね」

澪「まぁな。でももう慣れちゃったよ」  

梓「……やっぱりすごいですね、幼馴染って。もし私が律先輩みたいなこと毎日されたらきっと殴っちゃいますよ」

律「まぁ!殴るだなんて平和的じゃないわね! お母さんそんな子に育てた覚えはありません!」

梓「律先輩に育てられた覚えはありませんけどね。むしろ律先輩は自分のこのあたりをもう少し育てた方がいいんじゃないですかー?」サスリサスリ

律「! お前も人のこと言えないだろー!!」

ギャーギャー


澪「……やれやれ」



数分後


澪「おい、二人とももういいだろ? そろそろ行くぞ。 律、梓。忘れ物はないよな?」

梓「あ、は、はい!」

律「待て、まだ決着g」

澪「じゃあ律は置いてくか」チラッ

律「わ、私も忘れ物ないでーす!」

澪「……よろしい。じゃあ帰ろうか。 梓、どこに乗る?」



梓「あ、じゃあ助手席に乗りたいです!」

律「えー!?私も助手席がいい!」

澪「お前は行きで助手席乗ってたんだからいいだろ! また運転中よっかかってこられても困るし……。ここは梓に譲ってやれ」

律「……へーい。わかったよ。 じゃあ私は後部座席からちょっかい出せばいいんだな!?」

澪「それはやめろ!!」



澪「じゃあ梓。鍵開けたから乗っていいぞ」ガチャ

梓「はい!ありがとうございます!」バタン

律「おー!後部座席も結構広いなー!」バタン

梓「……ちゃんと後部座席でもシートベルトしてくださいよ?」

律「わかってるよ……。 梓こそちゃんとチャイルドロックしとけよ」

梓「誰がチャイルドですか!!」

澪「お前ら少しは落ち着けよ……」バタン

梓「あ……。すみません……」



梓「……ん?澪先輩、これってカーナビですか?」

澪「ん?それ? そうだよ。それで今日はここまで来たんだ」

梓「へぇー。 ってことは帰りも使うんですよね?つけてみていいですか?」

澪「あぁ。いいぞ。電源スイッチはそのボタンな」

梓「えーと……このボタンですか?」ポチッ

カーナビ「ウィーン」

梓「あ、ついたみたいです!先輩、この後はどうすれば?」

律「そしたらそのユーモアモードってボタン押して」

梓「これですね!」ポチッ

澪「おい」



梓「あれ、いけなかったですか……?」

澪「いや、いけないってわけじゃないんだけど……」


カーナビ「ポンッ  あずにゃんペロペロ(^ω^)」


澪「こんな感じだから………って梓!!どこから持ってきたか知らないけどハンマーをカーナビに向かって振りかざそうとするのはやめろ!!!」



おわる


第5話

「唯先輩は私の目が届く範囲にいてください!」



ある日の夜。

私はいつものようにギターの練習を終えると、これまたいつものようにギー太を抱いて布団にもぐりこみました。

最近はギターの練習を終えたら一日の感謝をこめてギー太と一緒に寝るようにしているからです。えへへ

私はいつものようにギー太におやすみを言ったあと、彼を抱いて眠りにつこうとしました。

たくさん練習もしたし、今日もいつものようにすぐ眠れると思っていました。





梓「……というわけで今日は一緒に寝ましょう、唯先輩」ガチャ

唯「ぶっ!!? えっ!!?あ、あずにゃん!?」

……突然あずにゃんが私の部屋の窓から入ってくるまでは。



唯「なっ……えっ!?い、意味が分から……、てかそこ2階の窓だよ!?」

梓「何驚いてるんですか。唯先輩のためなら2階の窓から入ることくらい朝飯前ですよ」

唯「突然窓から誰か入ってきたらびっくりするのは当たり前だよ!! ていうかそれより今 夜中だよ!?な、何考えてんのさ、あずにゃん!危ないでしょ!」

梓「何考えてんのかって……そんなの唯先輩のことに決まってるじゃないですか。言わせないでくださいよ恥ずかしい///」

唯「い、意味分かんないよ!!」



梓「? 分かりませんでしたか? だって昨日、私言ったじゃありませんか。『唯先輩は私の目が届く範囲に居てください』って」

唯「そ、それがどうしたっていうのさ」

梓「ハァー……。まだ分かりませんか。だって昨日そんなこと言ったわけですし当然、私には唯先輩のことを監視、監督する義務が発生するでしょう?」

唯「いやちょっと待っt」
梓「待ちません。だから私は今夜は唯先輩と一緒に寝る必要があるんです!!!」

唯「いやいやいやその理屈はおかしい!絶対おかしいって!!」

いつも支援ありがとう!



唯「確かに今日の部活であずにゃんが目が届く範囲にいてとかなんとか言ってた気がするけれど……。
  だからといって普通こんなことしないでしょ! というかちょっと今日のあずにゃんおかしいよ……」

梓「そんなこと言われましても……。だって私、唯先輩がベッドから落ちやしないか、寝違えたりしないか、金縛りにあったりしないか心配で心配で……。
   だからこうするしかなかったんですよ」

唯「そ、そんなこと心配しなくて結構だよ!ていうか余計なお世話だって!!」


唯「とにかく!もう帰りなって!あずにゃんのお父さんとお母さんが心配するでしょ」グイグイ

梓「いーやーでーすー!それに私の両親は今旅行中で当分帰って来ないんで大丈夫です!」グイグイ



梓「もしかして……唯先輩は私と一緒に寝るのが嫌なんですか?」ウルウル

唯「な、泣き落とししようとしてもムダだからね!ダメなものはダメっ!! さぁあずにゃん帰る支度して」

梓「……わかりましたよ。じゃあこれから私は一人でさびしく街灯も少なく危ない夜道を涙を流しながら帰って自分の家のベッドで枕を濡らしてますよ。
  あー、こんなことを強いるなんて唯先輩がこんなに冷たい人だとは思わなかったなー」チラッ


唯「う……。 そんない言い方しなくってもいいじゃん……何か私が悪者みたいになってるし」

梓「唯センパァーイ……」ウルウル


唯「わ、わかったよ! しょうがないなぁ……。あずにゃん、今日だけだからね!!」

梓「!! ありがとうございます!!!唯先輩!」ギュー



唯「こ、コラ!あんまり騒がないの!憂寝てるんだから」

梓「す、すみません。つい……/// その、あまりにも嬉しくて///」

唯「私は全然嬉しくないけどね」

梓「もう、照れなくっていいんですよ唯先輩? まぁ確かに嬉しいことを素直に嬉しいって言うのは簡単なことじゃないですけど///」

唯「すごいポジティブシンキングだね……。なんでそういう解釈になるのさ……」

梓「私としては当然の解釈です。 ……じゃあ早速、一緒に寝ましょうか唯先輩?」モゾモゾ



唯「じゃあ私は別に布団をしいt」
梓「何をおっしゃいますか!!今までの展開から言ってこれは唯先輩も私と一緒に寝る流れに決まってるでしょう!」

唯「知らないよそんな流れ!!」


梓「さぁ、唯先輩? 遠慮なんてしなくていいんですよ……?ほら、私の隣に」パンパン

唯「遠慮も何も、それ私のベッドなのに……」

梓「じゃあなおさら遠慮はいらないじゃないですか。唯先輩、いつでも飛び込んできてくれてかまいませんよ?」

唯「いや、いいよやっぱり。私はお布団で寝るから。今日はあずにゃんが一人でベッド使ってくれていいよ、じゃあおやすみ電気消しちゃうね」

梓「! 待ってください!!」ガシッ

唯「ちょっ! あずにゃん手離してよ!電気消せないでしょ!」



梓「……唯先輩が私と一緒に寝るって約束してくれたら離します」

唯「は、はぁ!? てかなんでそもそもあずにゃんはそんなに私と寝たがるのさ!」

唯「私寝相悪いし、それに二人で寝るとベッドも狭くなっちゃうし何もメリットがないでしょ!」

梓「それでもいいんです!! それ込みでも私は唯先輩と一緒に寝たいんですー!」ジタバタ

唯「そ、そんなにバタバタしないの!ほこり立っちゃうでしょ!」

梓「……じゃあ唯先輩が私に布団かけてくれたらジタバタするのやめます」

唯「……わかったよ。布団かけるだけだからね? じゃああずにゃん、じっとしててn」
梓「確保ーっ!!!」ガシッ

唯「ギャーッ!!」



梓「ふっふっふ、かかりましたね!唯先輩! さぁ観念して私と一緒に寝ましょう!!」

唯「こ、こんな強引な手は無効だよー! はなしてー!」ジタバタ

梓「そ、そんなに必死に抵抗しなくたっていいじゃないですか。 ……唯先輩はそんなに私と寝るのが嫌なんですか?」グスッ

唯「い、いやってわけじゃあないけど……。 でも、その、何というか恥ずかしいっていうか……///」ゴニョゴニョ

梓「恥ずかしい……? ?何が恥ずかしいんですか? ただ一緒にベッドで寝るだけじゃないですか」

唯「だって……。 その、あずにゃんと一緒に寝るの、初めてだから……」

梓「まぁ今夜は寝かしませんけどね」ボソッ

唯「え? あずにゃん何か言った?」



梓「いやいや何でもありません。 ……私も唯先輩と一緒に寝るのは初めてですよ? 初めてなのはお互い様です!」

梓「だから恥ずかしがる必要性なんてどこにもないんですよ、唯先輩?」

唯「そ、そうなのかな……」

梓「そうですよ。いやそうに決まってます!さぁ、唯先輩、電気を消しましょう。そして一緒に寝ましょう」

唯「う、うんわかったよあずにゃん」パチッ

梓(にゃふふ、説得成功ですっ!!)



唯「じゃああずにゃん、ちょっと狭いけど、おやすみー」

梓「はい。おやすみなさーい」ギュー



唯「……あずにゃん」

梓「なんですかー?」ギュー

唯「なんで私の体に抱き着いてるの……?」

梓「あぁ、私いつも抱き枕抱いて寝てるんですよ。でも今日はそれがないので代わりに唯先輩を抱いて寝ようと思って……」

唯「な、なにそれ! それじゃ私が寝れないじゃん!」

梓「? なんでですか?別にただ私は抱き着くだけで唯先輩の安眠を妨げる気はありませんよ?」

唯「で、でも……。なんか緊張しちゃってこのままじゃ眠れないよー」ドキドキ

梓「なんで今更緊張するんですか。毎日部室で自分から抱き着いてるくせに」

唯「だ、だってそれとこれとはまるで状況が違うから……。なんかドキドキしちゃって……」



梓「へぇー。部室とは違ってベッドで抱き着かれるとドキドキしちゃうんですかー。どうしてですかー?」ニヤニヤ

唯「そ、それは……、その……///」

梓「もしかして私とあんなことやこんなことをする想像でもしちゃったんですかー?」ニヤニヤ

唯「! そ、そんなことないもん!!」

梓「強がってるわりにはお顔が真っ赤ですよ。唯先輩?」クスクス

唯「……!!///」カァー


梓「……唯先輩?正直に答えてください」

唯「……ゴメン。実を言うとちょっとあずにゃんと大人のことをする想像しちゃった…」

梓「正直でよろしいです。 まぁ私も唯先輩と……する想像をしちゃったんですけどね」


唯「……あずにゃん///」



梓「……唯先輩」

唯「な、なにあずにゃん」ドキッ

梓「……実際にしてみませんか?大人のこと」

唯「……え? えっ!?」


唯「あ、あずにゃん!それはいくらなんでも!!」

梓「大丈夫ですよ。私、唯先輩のこと好きですから」

唯「!? な、なっ……!?あずにゃん!?」

梓「そんなに驚くことないでしょう。だいたい、唯先輩のこと好きじゃなかったら『私の目が届く範囲にいてください』とかいいませんよ」



梓「……唯先輩も私のこと好きですよね?」

唯「そ、それはまぁ、その、好き……なのかな……」

梓「じゃあ何の問題もないじゃないですか。大人のことしちゃっても」

唯「そ、そうなのかな……?」

梓「そうですよ。好きな者同士で大人のことをする……ごく自然なことですよ」

唯「そ、そうだよね!みんなが通る道だよね……?」

梓「そうです!! ……だから唯先輩、いいですよね?」



唯「う、うん分かったよ、あずにゃん」

梓「じゃ、じゃあ唯先輩、 いいですよね?」ドキドキ

唯「う、うん……」ドキドキ

梓「で、では行きますよ! 失礼しますっ!!」ガバッ

ガチャ

憂「おねえちゃーん……眠れなくって……。一緒に寝よ……」

憂「って梓ちゃん!?なんでお姉ちゃんの部屋に梓ちゃんがいるの!?」

梓「」



・・・・・・

憂「まったく!梓ちゃん!!えっちなことをしようとするのはよくないと思うな!めっだよ!!」ガミガミガミ

梓「はい……すみなせん……」


憂「それに夜中に一人で外出しちゃ危ないでしょ!! 何かあったらどうするの!」

梓「反省してます……」


唯「で、でも憂。無理やりにでも家に帰さなかった私も悪いんだからもうその辺で許してあげて?」

憂「お姉ちゃんがそういうなら……」

梓「憂も唯先輩もごめんなさい。つい、気分が高揚してしまって……」 

唯「しょ、しょうがないよあずにゃん。あんな雰囲気だったんだもん」

憂「あはは……(どんな雰囲気だったんだろう……)」



唯「よし!お説教タイムはもう終わり!! 憂、あずにゃん。せっかくだし三人で寝よっか」

梓「……えっ!? さ、三人でですか!?」

唯「そうだよー。憂もいいでしょ?」

憂「私は別にかまわないよ」

唯「じゃあ決まりだね!三人で寝よう!」

梓「は、はい!!(結果オーライですっ!)」

唯「じゃあ今度こそおやすみー(ふぅ……これでやっと寝れるよ)」パチッ



数十分後


梓「……ムニャムニャ。唯先輩ー……zzz」ギュー

憂「おねえちゃーん……zzz」ムギュー

唯(……これじゃ結局寝れないよぉー!!)ウワーン





第7話

「救出劇!」



ある晴れた日曜日、唯ちゃんとりっちゃんは公園で楽しくキャッチボールをしていました。



律「よーし!唯、いくぞ! それっ」シュッ

唯「ほいっ!」パシッ


律「うぅん…、今のは我ながらなかなか良い球が投げられたぜ!」

唯「……こんな球で満足するなんてりっちゃんもまだまだだね。あまちゃんだよ」

律「な、なんだとー!? じゃあ唯、私のを上回るボールを投げてみろよ!」

唯「おまかせください! 私がお手本を見せてあげるね!」フンス

律「くそー、偉そうに……。できるもんならやってみやがれ!」



唯「…じゃあいっくよー! 必殺!スーパージャイロナックルボール!!!」ツルッ

唯「…あっ」

律「っておいっ!!どこに投げてんだよ!」


ヒューン…… ポトッ


唯「あっ……あの家の塀の中に入っちゃった!!」

律「おいいいいいいい」



律「とりあえずボール取ってこいよ!」

唯「えー……。 あ、あのボールはもう諦めない?」

律「やだよ!てかあれ私のボールだし!!」

唯「だってー!あぁいう家にボール入れちゃうと……」




唯『すみませーん。ボール落としちゃいましたー。…てへっ』

家主『……』プルプル

唯『あ、あのぅ……』

家主『バッカモーン!!公園でボール遊びはしちゃダメだといつも言っとるだろうが!! ガミガミガミガミ……』

唯『ひぃいいいいい』



唯「…ってなるよきっと!」

律「いつの時代の話だよ!!」



唯「でも、今の時代もそういう人がいないとは限らないでしょ? だからやめておこうよ……」

律「いーやーだー!あのボール結構高かったんだぞ! ていうか大体、今時そんな雷親父いるわけないだろ」

唯「そんなこと言ってるならりっちゃんがボール取ってくればいいじゃん!」

律「は、はぁ!?なんで私が!? ボール投げ込んだのは唯だろ!」

唯「だってりっちゃんは雷親父なんていないとと思ってるんでしょ? だったら怖いものもないんだしりっちゃんが取ってきてくれてもいいじゃん」

律「まぁそうだけどさぁ……」


唯「おねがーい。今度アイスおごるからさー…」

律「……2段重ねなら考えてやってもいいぜ」



唯「う……。わ、分かったよ。背に腹はかえられないよ」

律「よーし、契約成立だな! まったく、今の時代そんな怖い人なんているはずないのに……。ラッキーだぜ」

唯「そんなこと言って油断してるときっとカミナリ落とされるよ……」ブルブル

律「ないない。心配するな、唯!私がスマートに取ってきてやるからな! そこで待ってなさい」

唯「あぁ……りっちゃん!無事に帰ってこれるよう祈ってるよ……」

律「大げさだなぁ……。じゃあ行ってくるな」

唯「りっちゃん!ご武運を!!」



律「まったく。唯もビビりすぎだよなー、たかが庭に入ったボールを取ってくるだけだろうに」スタスタ


律「……この家だな。 うひゃー、結構な豪邸だなー…。まぁいいや、ちょっと失礼しますよ」キィーッ

律「そーっと、そーっと……」チラッ

番犬「……」ギロッ

律「え」


番犬「バウバウバウ!!!」

律「!? う、うわぁああああ!!?」ダッ



バウバウバウ!!! ウワァアアア

唯「!? これは…りっちゃんの声!?た、大変だ!」ダッ



唯「りっちゃん!!だ、大丈夫!?」タタタッ

律「ハァ……、ハァ……。あ、唯…。と、突然犬にほえられて……」

唯「だから油断するなって言ったでしょ!油断大敵だよ!」

律「だ、ってまさかこんな大きな犬がいるとは思わなくって……」

番犬「……」ギロッ

律「しかもまだこっち見てるし……」



唯「きっとりっちゃんのことが好きなんじゃない?」

律「縁起でもないこと言うなよ……」



律「でもどうしよう…。コイツがいる限りボール取れそうにないな…」

唯「…そうだね。怖いしねー」

律「とりあえずここから一旦出て作戦を練り直すか」



五分後


唯律「うーん……」

紬「……あら?唯ちゃんとりっちゃんじゃない!唯ちゃーん!りっちゃーん!」ブンブン

唯「あ!ムギちゃんだ!」

紬「どうしたの?こんな道端で……? 考え事?」スタスタ

律「あー……ムギ、実はかくかくしかじかってことがあって……」



紬「……つまり大きな犬がいてボールが取りにいけなくて困ってるってことね?」

律「そういうこと。 ムギー、何かいい案ないー?」

紬「うーん、そうねぇ……」


紬「……あっ! いいこと思いついたわ!!唯ちゃん、りっちゃん!!ちょっと待ってて!」ダッ

唯「!? む、ムギちゃん!? ……もの凄いスピードで行っちゃった…」

律「ムギの奴 急にどうしたんだ…?」



数分後


紬「おまたせー」タタタッ

唯「あ!ムギちゃんおかえりー! …急にムギちゃん走りだしたからちょっとびっくりしたよ」

紬「ごめんね、唯ちゃん? でもいいもの買ってきたわよ!」

律「……コンビニの袋だな。何買ってきたんだ?」

紬「えぇ。ちょっとそこのコンビニで最高級品質のビーフジャーキーを買ってきたわ!!」 


律「……え?最高品質……?」



唯「!!なるほど! それをエサにして犬がビーフジャーキーを食べてるスキにボールを取に行くって作戦だね!」

紬「そういうことよ!唯ちゃんはもの分かりがいいわねー♪」ナデナデ

唯「えへへへ///」


律「おいちょっと待て。ムギ、そのビーフジャーキー一体いくらしたんだ……?」

紬「えーと、5000円くらいだったかしら」

唯「!? ご、ごせんえん!?」

律「高っ!! い、いいのかそんな高級なモノ使っちまって!」

紬「だってあそこのコンビニにはこの種類のしか売ってなかったから……」

律「品揃え悪っ!!なんだそのコンビニ! 全然コンビニエンスじゃねぇし!!」



紬「…まぁそんなことよりも!今はボールを取らなきゃ、でしょ?値段なんか気にしてる場合じゃないわ」

唯「そうだよりっちゃん!今はボールを取るほうが大事だよ!」

律「そ、そうだよな! ……そうなのか?」

紬「とにかく、やってみましょ?」

律「わ、分かった。じゃあまずは私が入るからムギは後方から ビーフジャーキーで上手く犬の気を引いてくれ。頼んだぞ!」

紬「分かりました隊長!!」ビシィッ



律「よし、行くぞ……」スタスタ

番犬「……!」ギロッ

唯「ひぃっ!き、気づかれちゃったよ!」

律「よし、今だ!! ムギ、ビーフジャーキーをっ!!」

紬「分かったわ!! それっ!」ポイッ

番犬「! ワンワン!!」ダッ

番犬「~♪」ムシャムシャ

律「よしっ! 今だ!!」ダッ


律「えーと、ボール、ボール……。どこだー?」キョロキョロ

番犬2「…………」ギロッ

律「……えっ」



番犬2「バウバウバウ!!!」

律「うわぁっ!!!も、もう一匹いたのかよ!!」

唯「ちょっ……!りっちゃん大丈夫!?」

律「はぁ、 はぁ……。び、びっくりした……」


番犬2「グルルルル……」

唯「まさか2匹目がいたなんて……。しかももう一匹の犬より大きくて怖いよぉ……」

律「と、とりあえず離脱するぞ唯隊員!」ダッ

唯「アイアイサー!」ダッ

番犬2「バウバウバウ!!!」



・・・・・・


紬「ど、どうだった!?」ドキドキ

唯「だめだったよ、ムギちゃん……」

律「まさかもう一匹いるとは……」


唯「ムギちゃん、もうビーフジャーキーは残ってないの?」

紬「ごめんなさい。一つしか買っていなくって……」

唯「そっかー……。残念……」



紬「ま、またコンビニに行って買ってこようか?」

律「いやそれは流石にムギに申し訳ないよ。一個5000円だし……。別の方法を考えよう」

唯「ちょっと待って。お金はりっちゃんが出せばいいんじゃない?」

律「……唯隊員、私にそんな大金が出せると思うか? てか何度も言うけどボール投げ込んだのはお前だろ」

唯「そういえばそうだったね……。じゃあさっさと別の方法を考えようか!」

律「…ほんと、調子のいい奴だな」

唯「そうかな? えへへ……」

律「ほめてはないけどな」



唯「……でもだからと言ってほかにいい方法あるのかなー? ここはやっぱりムギちゃんにもう一回コンビニに行ってもらった方が……」

センパーイ・・・

紬「あら?どこからか聞き覚えのある声が……?」

梓「唯先輩!律先輩!ムギ先輩!!」タタタッ

唯「あ、あずにゃん!?」

 
梓「はい。唯先輩こんにちは。 どうしたんですか、こんな道端で皆さん?遊んでいるわけでもなさそうですし」

律「あー、梓……。 実はかくかくしかじかってことがあってな……」

梓「……つまり、ボールがそこの家の庭に入ってしまって、番犬がいて ボールを取るのに苦労してるってことですね?」

唯「そういうこと! ……ねぇあずにゃーん。何かいい作戦ないー?」



梓「作戦って……。 そんなこと言ってるからいつまでたってもボール取れないんですよ。
  ここは家の人にきちんと謝ってからボールを取りにいくべきです!」

唯「えー!?そ、そんな危険な……!!」

梓「どこが危険なんですか! 悪いことをしたらきちんと謝ることは人として当然のことでしょう!」

律「そ、そうだけど……」

梓「なんでそんなにイヤそうなんですか! ただ謝るだけじゃないですか」



律「でも、なんかその……怒られたらいやだし」

梓「悪いことしたんだから怒られるのは当然でしょう!もうインターホン押しちゃいますよ」ピンポーン

律「ちょっ!待てはやまるn」


律「……あぁ、終わった……。何もかも…」

梓「んな大げさn」インターホン「Hello?」

律梓「え」


唯「!? え、英語っ!?」

紬「が、外国人さんが住んでいるのかしら……?」



梓「ちょっ、えっ!? せ、先輩方どうしましょう!?」


律「……頑張れ、梓」

唯「応援してるよ、あずにゃん」

紬「梓ちゃんならきっと話せるわ」

梓「って何にもフォローしてくれないんですか!? てかなんで私が話すことになってるんですか!」

律「まぁ、言いだしっぺだし……」

唯「あと流れ的に?」

梓「なんですか流れって!!」


梓「……あ!!そうだ確かムギ先輩は海外とかにもよく行かれるんですよね!?それなら結構英語も」紬「No」

梓「あ、はいそうですよねすみません嘘ですごめんなさい」


梓「……はぁー、分かりましたよ。私が頑張ってお話してみます」

紬「頑張ってー!梓ちゃーん!」

唯「フレー、フレー!あーずーにゃん!!」

律「梓ー!いったれー!」

梓(き、緊張してきたー!)ドキドキ



梓「は、はろー……?」

インターホン「Who is it please?What is your business here?」

梓「び、びじねす……? あ、あの、えと…………。」

梓「ソ、ソーリー!!アイドントスピークイングリッシュウェル!! sumimasendeshitaッ!!」ダッ

紬「あ、梓ちゃーん!!」



・・・・・・


数分後


梓「すみません……。見苦しい姿をお見せしてしまって……」


律「いや、分かるぜ。梓の気持ち」

唯「そうそう。英語からは逃げ出したくなる時もあるよ。だから気にする必要なんてないよあずにゃん」

紬「そうよー。私たちは日本人なんだから日本語だけ話せればいいの。だからそんなに落ち込まないで、梓ちゃん?」

梓「そ、そうですよね!!英語なんて話せなくても生きていけますよね!!」

律「まぁセンター試験とかではほぼ英語必修だけどな」

梓「律先輩は慰めたいのかさらに落ち込ませたいのかどっちなんですか」



律「まあ、今はその問題よりもボールの問題だ。それにしても正攻法も使えないとなっちゃあ本当どうすればいいんだ……」

唯「りっちゃん……、もう諦めようよ。ボールは新しく買いなおそう?私もお金だすから」

律「……ダメだ。諦めるなんてダメだ! あのボールはな……」



一時間前


律『聡ー、ちょっとボール貸してー? 友達とキャッチボールするからさ』

聡『いいけど……絶対返せよな?』

律『分かってるって!!絶対返すから安心しろ!もし返さなかったら1000円やるよ!!』



律「……って言っちゃったんだよー」ウワーン

梓「何ですかそれ! 完全に自業自得じゃないですか!!」



梓「はぁ、何か思い出のボールなのかと思ったら……。まったく、心配して損しました。私もう帰っていいですか?」

律「そんなこと言うなよ梓ー!協力してくれよー」ガシッ

梓「いやですよ!私もいろいろと忙しいんですから」


律「……ケチだな」ボソッ

梓「何か言いましたか!?」クワッ

律「な、なんでもありませーん……」



紬「でもりっちゃんどうする? 1000円くらいなら貸してあげようか?」

律「いや、ビーフジャーキーも買ってもらって1000円まで貸してもらったら流石にムギに申し訳ないよ……」

唯「じゃあ聡くんの口を封じるとか!」

梓「怖いこと言わないでくださいよ……。もっと別の方法があるでしょうに」

唯「例えば?」

梓「それはもちろん……、その……。ほ、ほら!アレですよアレ!」

唯「あー、アレか~」

梓「そう!それですっ!!」

律「どれだよ」

梓「……どれでしょう」



紬「……何にも考えてなかったのね、梓ちゃん」

梓「はいごめんなさい。 ……すみません(なんかさっきから謝ってばかりな気がする……)」

唯「でもそんなアレにゃんもかわいいよー!!」ギュー

梓「ギニャー!!やめてください!こんな道の真ん中で…! あと誰がアレにゃんですか!!」



・・・・・・


澪「……たまにはその辺を散策してみるのもいいもんだなぁ」


ギニャー!!ヤメテクダサイ! コンナミチノマンナカデ!

澪「……? これは……梓の声?こっちの方から聞こえたな」

澪「……ちょっと行ってみるか」スタスタ



澪「あ、いたいた。てかみんないるじゃないか」

澪「おーい!何やってるんだー、みんなしてー!」

律「!? み、みお!?」クルッ

紬「あら、澪ちゃんも来たのね!」

澪「来たというよりは偶然通りかかっただけだけどな」


唯「でも偶然とはいえ、これでみんな揃っちゃったね!」

梓「ほんとすごい偶然ですね……」

律「一生分の運は使い切っちゃったかもな。まあ全部梓の運だけど」

梓「なんで私の分だけなんですか!!」



澪「お前ら少しは静かにしろよ……近所迷惑になるぞ」

律「やーい、怒られてやんのー」

梓「誰のせいですかッ……むぐぐ…アトデオボエテロデス」



澪「はぁ、まあいいや。で、お前たちはこんな道端で一体何してるんだ?ピンポンダッシュとかならやめとけよ」

律「小学生かよ! …そんなことじゃねえよ。実は、かくかく(ry」

梓(この人めんどくさくなって略した!)



澪「……要するに、あの家にボールが入っちゃって困ってるってわけか」

紬「そういうことね」

唯「ねぇー、澪ちゃーん、何かいい作戦なーい?」

澪「作戦って……。作戦なんて立てるまでもないだろう、私が取ってきてやるよ」

梓「え!?み、澪先輩!話聞いてましたか!? 家の中には番犬がいるんですよ!澪先輩は特にやめておいた方が無難かと思うんですが……」

澪「まあ見てろって、梓」スタスタ

唯「ちょっ!澪ちゃん!? ……本当に大丈夫なのかなぁ?」



澪「……こいつらだな?」スタスタ

番犬たち「……」ギロッ


唯「ひいっ!さ、早速澪ちゃんが番犬に気づかれちゃったよ!」

紬「ま、またほえられちゃうわよ! 澪ちゃん大丈夫かしr」

澪「おー、よしよし」ナデナデ

番犬たち「……ワンワン♪」

唯律紬梓「……なっ!?」



律「な……嘘だろ!? あ、あのいかつい眼をした凶暴な番犬が……!」

梓「澪先輩になついている!?」

紬「す、すごいわ澪ちゃん!!」


澪「……?何でそんなにみんな驚いてるんだ? 確かに顔はちょっと怖いけど、かわいい犬じゃないか」ナデナデ

唯「手馴れてる……」

澪「よしよーし。 ……あ、ボールを探さなきゃ、だったな。えーと、ボールは、っと……」キョロキョロ

澪「あ、あった。あれだな」ヒョイッ

澪「ほら、律。これだろ? 取ってきてやったぞ」



律「あ、ありがとう……。よく取ってこられたな…」

唯「さっきまであんなに苦労してたのが嘘みたいだよ……」

紬「改めてすごいわね、澪ちゃん…」

澪「いやいやこんなの朝飯前だよ。……あの頃と比べたらな。な、律?」

律「は?あの頃……?」


律「……あっ!!まさか……!」

澪「思い出したか。まあお前はよーく知ってるだろうな」

梓「……澪先輩?何なんですか、『あの頃』って」

澪「あぁ、みんなにも説明してやらなきゃな。あの頃ってのはな……」



・・・・・・

八年前のある日の下校時


りつ「ねーねー、みおちゃーん。今日はちがう道から帰ってみないー?」

みお「えっ?なんで?」

りつ「実はねー、この前あっちの道ですっごくかわいい犬を見たんだー! だからみおちゃんにも見せてあげたくって……」

みお「本当!?わ、わたしも見てみたい!!」


りつ「じゃあ決まりだねー!さっそく見にいってみよー!」

みお「う、うん……!!」



数分後


りつ「……着いた! この家だよー」

みお「へぇー、大きな家だねー。 ……で、犬さんはどこにいるの?」

りつ「この家の中だよー。だからみおちゃん!犬を見るには家の中に入らないと!」

みお「え……。でも人の家に勝手に入るのは……」

りつ「大丈夫だよー!ちょっとだけなら! 犬を見るだけだし」

みお「そうかなぁ……」



りつ「じゃあみおちゃんはかわいい犬さんを見なくていいの?」

みお「あ……。それは……」


みお「……わかった。ちょっとだけならいいよね……?じゃあちょっと見てくるねりっちゃん!」

りつ「うんっ!!」

みお「~♪」スタスタ


りつ(……引っかかったね!みおちゃん!!)ニシシ



みお「犬さん、どこかなー……?」キョロキョロ

番犬「グルル……」ギロッ

みお「えっ」


番犬「ワンワンワンワン!!!」

みお「えっ!!? う、うわぁああああ!!?」バタッ

みお「」


りつ「いえーい!みおちゃん驚かせ作戦大成こ……ってみおちゃーん!?」ユサユサ


・・・・・・



澪「……あんなことを何度もされたらそりゃ慣れますよ」

律「そ、そういえばそんなこともあったな……」


律「まあ、あれも実は澪がもっと犬好きになるように私が仕組んだ作戦だったんだけどな!!」

梓「……1000%嘘ですね」

律「そこまで全力で否定しなくてもいいじゃん!」



紬「でも、これで無事にボールも取れたわけだし!これで一件落着ね」

澪「そうだな。まったく、もうボール投げ込むなよな?ほら律、ボール」シュッ

律「投げ込んだのは私じゃないのに……」パシッ

唯「ま、まあ細かいことはいいじゃん!!みんなでボールを救出した記念に万歳三唱しよう!!」

律(こいつごまかしやがった!)


梓「てか救出って……そんな大層な」

紬「でもそれなりに苦労したわけだし、大げさな表現ではないと思うわ! まさに救出劇ね!」

梓「そうです かねぇ……」



唯「ムギちゃん、あずにゃん何やってるの?早くみんなで万歳三唱するよ!」

梓「……私もやらなきゃダメですか?」

唯「当たり前でしょ!マストだよマスト!」

梓「なんで英語なんですか……」


梓「…はぁ、まったく。分かりましたよ、手短にお願いしますよ」

唯「そうこなくっちゃ!」


唯「よーし!あずにゃんの許可ももらったことだし!みんなで万歳三唱だよ!!」

律紬「おー!!」


澪「……まあ付き合ってやろう、梓」

梓「……はいっ!」



唯「それじゃあいっくよー!! バンザーイ!!」

澪紬梓「バンザーイ!」

律「バンザー……」ツルッ

律「いっ」

梓「うっ」

澪「えっ」


ヒューン…… ゴンッ!!


……キシャアアアア!!



律「あ、て、手がすべって……」

梓「ボールが今度はあっちの家に……。てかなんかすごい鳴き声が聞こえてきたんですけど」

紬「……あれはアマゾンの密林に暮らす凶暴な動物の鳴き声ね」

唯「てことはその凶暴な動物がいる家にボールが落ちたってこと!?」

律「……そのようだな」

梓「冷静に分析してる場合ですかっ!!」


律「なーに大丈夫だ梓。心配は無用だ、澪がまた取ってきてくれるから……」

澪「無理だっ!!!」ゴチンッ


おわれ



第7.5話「誕生日!」

                     ___
                 ,   : : : : : : : : : : ヽ  
              /: : : : : : : / : : : : : : : : : \

             /: : : : : : : : i: : : : : ト: : : : ヽ: : :\\
            ./: : : : : : : : : : |: : : : : |ヽ: : : : ト: : : : :ヽ\
           /: : : : : i : : : : : i: :、: : i  ヽ: : : iヽ: : : : ヽヽニニ-
           /: : : : : :| : : : : ::.|: : :\i   V: : | ヽ: : : : i
           レ: : : : :. i : : : : : i \: //   V: :i ヽヽ: : :|
         /: :/: : : : | : : : : : i: : :./      Vリ  ヽ: :ト 、  11月27日 今日は私の誕生日だよー
        //: :/: : : : :/i : : : : : |: :/           .i: :|: :\
       / /: :/_: :r 、  i : : : : : |/   _      ィ≡x レリヽヽ ヽ      
        /: :/ i i i } /ヽ| : : : : : i z≠ ̄        |: :ヽ: :トリ  ──  ̄ ヽ
       /: :/ / ノ└‐ ‐ / i : : : : :.|            i: : :i: :/  ̄ ̄丶     ハ
      i/L. / <´.:.:.:.:..:.:.:.:.ヽ| : : : : :i            i_ ⌒ ー‐、   \    .i
      / / /.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:  V : : : ::|       _  ‐  / 二     \       |
    ./  / i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.    i: /: : i|::|          ( /─      ,\      i
   ./  / i i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:@   .i : : : ノ リ  ̄  ‐─<   ヽー   , <  \    /

.  / /   | .ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:. / ̄ ̄              ̄ ̄  \    .\ /
 // ─    .ヽ.:.:.:.:..:.:.:.:..:./                       ` ' ー --/
             ̄ ̄´

平沢家

                  _彡イ: : : : : : :/: :/!、 : : : : : : : : : : : \ 、 \.'.,

              .       ̄〃 : : : : / : / | V: : l: : :ヽ: : : : : : :ヽヽ Yl
              .     / : : : : : /: :/  | V: :l、 : : :': : : : : : : :ヘ  ハ
                  /: : : : /: : :l: :ム   !  V :L、: : : } : : : : : : :ハ<: : {
              .   / : : : : j: : :/! /   |   \! V : : : : : : |: /: lヽ : \
                  . : : l: : ! : / !/ 、   |    -ヽ \: : : : l: |/: : } .ト、: : :\    ……できたっ!お姉ちゃんのケーキ!
                 l: :/! : l: / ,rテ云      xテ云Xヽ| : : : l : : Λヽ  ̄ ̄`
                 l/  .! : V 〈l .r::::ハ     r':::ハ !〉|: : :,:リ : /: lゝ'
              .      l: : :ハ  弋)ソ      弋)ソ ' |:/- V
                     V'\',  ,,,,,   '     ,,,,,,    ' )  }
                        }                ,  /
            人           人.      lテヽ       / ̄
             (::0::)            (::0::).  _   ` ´    イ
        ヘ∧i∧∩ .,  ヘ   ∧i∧   ∧_∧ ./ ̄ ̄\
      ,<介>( ゚Д゚)/""_~_<イト>_"_(゚ー゚*)_~_~(´∀` ) `/    \

     /~ヘ *。U「お誕生日おめでとう∪. |゚';(    ) ./    x< ̄ ,

     !<介>  .,ヘ― .,ヘー―,ヘ―‐..,ヘ.‐┘ヘ .<介>i/   /   _}
     |ヽ。,,_ <介> <介>  <イト>  <介> <介>.,_,,。ィ|   /  / ̄  \
     |   ~~"""''''''''ー―--゛-"-――'''''''"""~    ::| ./  /      .}
     |    巛        巛       巛   ::|

     |    巛        巛       巛   ::|
  ...-―|    巛        巛       巛   ::|ー-。、
 ヽ_  ヽ。,,_ 巛        巛       巛 _,,。ィ __ノ

   /     ~~"""''''''''ー―-----――''''''''''"""~~    \
   (_ イ       へ         .へ      ト 、_ノ
      ヽ。  _/  .\      ./  \_  _ノ
                  ヽ、___/



憂「今日はお姉ちゃんにとって特別な日だからね。私もケーキ作ることくらいしかできないけど、しっかりお祝いしなきゃ!」


憂「よし!部屋の飾り付けもオッケー! あとはケーキをテーブルに乗せれば……」トテトテ

憂「……できた!完成だー!!」パチパチ


憂「あとはお姉ちゃんが部活から帰ってくるのを待つだけだ」

憂(えへへ……お姉ちゃん、喜んでくれるかな? お姉ちゃんが帰ってきたら、きっと……)


憂の想像

唯『たっだいまー。…わぁー!ケーキだー!!すごーい、おいしそー!!ありがと憂大好きー!!!』ギュー

憂『えへへぇ///もう、お姉ちゃんったら///』



憂「な、なーんてことになったりして!」

憂「……うへへへ…」

憂(って何考えてんだ私!!)

憂(お水でも飲んで冷静になろ……)ガッ

憂「って!!しまっ…!(テ、テーブルの脚に足が……!)」

グラッ…… ガッシャーン!  グチャ……

憂「あぁーっ!!」

憂「」


・・・・・・


一時間後

ガチャ

唯「ういー、ただいまー」

シーン……

唯「あれ……?憂どうしたんだろ? てか家も暗いし……」

唯「まさか……憂に何かあったんじゃ!」ダッ


唯「憂!!」ガララッ

憂「……あ、おねえちゃん……グスッ…おかえり……」ズーン



唯「う、うい……?ど、どうしたのそんな部屋の隅っこで……?電気もつけないで…」

憂「ごめんね、お姉ちゃん。今日はお姉ちゃんのためにケーキ作ったんだけどね、その…落としちゃった」

唯「そ、そうだったの……」

憂「あはは……今日はお姉ちゃんにとって特別な日なのにね……。ごめんね、お姉ちゃん。こんなダメな妹で。本当にごめん」

唯「うい……」


唯「……憂、こっち向いて」

憂「……えっ?」クルッ
唯「ほら、憂。あったかあったか」ギュー

憂「!? おおおお姉ちゃん!?」



唯「ふふっ。いーこいーこ」ナデナデ

憂「ふわぁああ/// ……じゃなくて!」

憂「ど、どうしてお姉ちゃん撫でるの!?私ケーキ落としちゃったのに…」

唯「そんなことは気にしなくていいんだよ、憂!誰にでも失敗することはあるんだから。それに……」

憂「……それに?」

唯「……憂。間違っても自分のことをダメな妹だなんて言っちゃだめだよ。憂は私にとって かけがえのない大切な自慢の妹なんだから!」

憂「!!!」



憂「……お、おねえちゃーん!」ギュー

唯「よしよし。いい子いい子」ナデナデ

憂「……ありがと、お姉ちゃん。なんかすっきりした」

唯「姉として当然のことをしたまでだよ~。じゃあ、とりあえず電気つけよっか?」パチッ


唯「!!こ、これは……!」


唯が部屋の電気をつけると 彼女の目の前に『お姉ちゃんおめでとう』と丁寧な字で書かれた大きな横断幕が照らし上げられた



唯「~~~!!う、ういー!!ありがとう!!!」ギュー

憂「ふふっ。お姉ちゃん……、改めて 今日はおめでとう」


無数の星々が輝く寒空の中 平沢家のリビングからは 遅くまで二人の姉妹の楽しそうな笑い声が聞こえていました


唯ちゃん誕生日おめでとう
あずにゃんは祝ってやれなくてスマン


第8話

「虫歯!」



ある日の放課後。軽音部はいつものように練習……ではなくてティータイムをしていました。


律「あー!うめー!! ムギ、今日のケーキも最高にうまいっ!!」モグモグ

唯「おいし~♪」ムシャムシャ

紬「うふふ、どういたしまして」


澪「ちょっ……、お前ら練習は……」

律「これ食べ終わったらやっるてばー」

澪「ほんとかよ……」ジトー



律「んまっ!なんですかその目は! 私が嘘ついたことなんてありましたかしら?」

澪「あったあった。軽く100回はあった。昨日だってそう言っておいて結局練習しなかったじゃないか」

律「今日はするからさー、安心しろ! 101度目の正直ってことで」

澪「信用できるかっ!!」


唯「あずにゃんもケーキたくさん食べな?」

梓「いや、そんなにはいりませんよ……。それより練習をですね」

紬「でも梓ちゃん、今日はバナナケーキをたくさん持ってきたんだけど……」

梓「食べます」キッパリ



澪「ホント、梓はバナナケーキ好きだな」

梓「子供のころから大好きなんです」モグモグ

紬「たくさんあるから一杯食べてねー?」ドッサリ

律「多っ!! すげえ量だなオイ!」


唯(……でもさりっちゃん、これだけケーキが多ければ あずにゃんも食べるのに時間がかかって練習時間もなくなるかも……)ヒソヒソ

律(……それもそうだな。じゃあ梓にはゆっくりケーキを食べてもらって……)梓「食べ終わりました~。ムギ先輩ごちそうさまです」カラッ

唯律「ってはやっ!!!」



梓「じゃあケーキも食べ終わったことだし、練習しますよ?唯先輩、ほらギター出して」

唯「あ!そうだそうだ!ケーキ食べたあとは歯磨きしなきゃ!!」

律「そ、そうだったなー!いやー、すっかり忘れてたよ!!食後は30分ぐらいかけてゆっくり歯磨きをしなきゃな!」

梓「……唯先輩?律先輩?」ゴゴゴ……

唯律「ひいっ!!?」

澪(梓からすごい殺気が……!)



唯「わ、わかったよあずにゃん。今日はちゃんと練習するよ……。ね、りっちゃん?」

律「そ、そうだな」イソイソ

梓「それでいいんですよ。そうと決まったら 今日はビシバシいきますよ!!」

唯律「はーい……」

梓「もっと元気出して!!」

唯律「は、はいっ!!」


澪「今日の梓はやけに気合い入ってるな……」

紬「バナナケーキのおかげかしら?なんだか頼もしいわー」

梓「澪先輩もムギ先輩も! いきますよっ!」

澪紬「は、はいっ!!!」



・・・・・・


部活終了後 

梓の家


梓「うーん、今日は久々にみっちり練習できたなー!」 

梓「先輩方もちゃんと練習すればもっともっと上手くなるのに……、なんだかもったいないよね」グゥー


梓「あっ……。お腹鳴っちゃった///」


梓「今日は練習前、あんなにケーキ食べたのになぁ……。まあそれなりにハードな練習をしたからだろうけど」

梓「とりあえずジュースでも飲もっと」キュポッ

梓「~♪」ゴクッ

ズキッ



梓「……っ!?」

梓「い、いたっ!?ジュ、ジュースが歯にしみて……?」

梓「まさか……これって……」


梓「いや、冷静になれ私。たまたましみただけかも。とりあえずもう一口……」ゴクッ

ズキッ

梓「~~~!!」バタバタバタ



梓「そんな……!まさかこれって……虫歯!?」

梓「バナナケーキ食べ過ぎたからかな……?と、とにかく歯医者さんに行かなきゃ」アセアセ

梓「でも私、歯医者さんって行ったことないからなぁ……。確かテレビとかで見る歯医者さんのイメージって……」



梓の想像

歯医者『はい、じゃあ口を大きく開けてねー』

梓『は、ひゃい……』アーン

歯医者『あー、こりゃけっこうすごいねー……。じゃあドリルで削っちゃうねー』スチャッ

梓『!?(そ、それを口に入れるんですか!?)』

歯医者『じゃあいきますよー』ギュイイイン

梓『うにゃぁあああああ!!!?』



梓「ひぃぃっ!!」ブルブル

梓(は、歯医者怖いよぉおおおおお!!)ガタガタ


梓「……そうだ、もしかしたら自然に治るかも…。うん!きっと治るよねっ!!」

梓「とりあえず、歯医者行くのはまた今度にしとこ……」



アズサー、ゴハンヨー

梓「あ、ごはんどうしよ……」

梓「(と、とりあえずここは!)き、今日は外で食べてきたからいらなーい!」

梓(ふぅ……、これでしばらくはなんとか……。明日の朝ごはんも寝坊したとか言えば食べなくて済むし……)

梓「それからどうするかは明日考えよっと」

梓(あぁ、そんなことを考えてるうちに睡魔が……。今日はたくさん練習して疲れてるからか…な……)


梓「……zzz」グー



翌朝


梓「い、行ってきまーす!!」ガチャ

梓(まさか本当に寝坊しちゃうとは……)タッタッタ


ズキッ

梓(うっ……。走るとちょっと歯が痛む……)

梓「や、やっぱり今日は歯医者に……」

梓(そういえばそこの角を曲がったところに歯医者さんがあったような……。しかもあそこは確か朝早くからやってたはず…!)

梓「確かこの角を曲がって……」


梓「あ、あったあった。あれだ」

梓(……今日はやってるのかな?)スタスタ



ガチャ

梓「!」(歯医者の中から人が!)サッ



スネ夫「うわぁあああん!ママァア!!怖かったよぉお!!!」

スネママ「頑張ったわねー、スネちゃま。あとでご褒美にケーキをあげるザマスね」 

スネ夫「うん……」グスッグスッ



梓「……」


梓「……やっぱり今日行くのはやめておこうっと」クルッ

梓「って!もうこんな時間じゃん!!はやく学校行かなきゃ!」ダッ

ズキッ

梓「…いったーい!」



・・・・・・


そんなこんなでお昼休み

梓(なんか歯がときどき痛んで授業に集中できなかった……)ズキズキ

純「あーずさー。お昼食べよー」

梓「えっ……? あ、うん……(一応おひるは持ってきたけど……。歯痛いし…)」


梓「あ、やっぱ今日はいいや。お腹減ってないし」グゥー

梓「あっ……」



純「いやバリバリお腹鳴ってるじゃん! 何ー?梓ももしかしてお昼忘れたのー?」

梓「いや、そういうわ……(いや、待てよ。おひるを忘れたことにしておけば食べなくてすむかも)」

梓「……けなの!そうそう!今日は私、遅刻しそうになってたでしょ?だからお昼忘れたの!!」

純「ふーん、そうだったんだ。それは残念だねぇ」

梓「うん。あー残念だなーみんなとお昼食べられなくてー(ふぅ…これでなんとかなりそう)」

純「でも心配しなくていいよ、梓。こんなこともあろうかと今 梓の分まで憂がお昼ご飯買いに行ってるから」


梓「……は?」



ガララッ


憂「純ちゃーん。買ってきたよー」

純「あ、噂をすれば、だね。 憂ー、おつかれー!」

梓「え、あの……これはどういう……?」

純「あー、ただ私も憂も今日はお弁当忘れたから 憂に私の分も買ってきてもらったの!もちろん自分のお金は出したよ!」

純「本当は私が自分の分は食べるつもりだったけど……かわいそうだから梓にも少し恵んであげるよ」

憂「え?梓ちゃんもお弁当忘れたの?珍しいねー」

純「でも良かったね、梓。この心優しい私という友達がいて…。 さあ梓、好きなパンを一つ選びなされ!!」

梓「い、いやいやいやいいって!!そんなことしてもらっちゃあ純に悪いよ!」



純「遠慮すんなって。ほら、食べなー」ベリリッ

梓「本当に大丈夫だってば!」

純「むぅ……。なんでそんなに遠慮するんだい、梓は…」


憂「あ、もしかして」

純「ん?何ー、憂?」

憂「梓ちゃん、もしかしてダイエットしてるんじゃない?」

純「えっ!?」

梓「!!(ナイス憂っ!!)」



梓「そ、そうなの!!実は最近太ってきちゃってさー、昨日からダイエット始めたの!」

梓「放課後にケーキとか食べ過ぎたからかなー、だから今日はお腹がへっても何も食べないって決めたんだー、あー残念だなー」

純「えー……。でも私にはとても太ってるようには見えないけどなー」

純「むしろちっちゃいんだから もっとたくさん食べた方が……」ジー

梓「ちょっ……! どこ見て言ってんの!」


梓「ともかく!私はもう決心したんだから!! 今日は何も食べないからね!」



憂「……だって、純ちゃん」

純「そっかー……。じゃあしょうがないね、そんならお昼は二人で食べよっか、憂?」

憂「そうだねー……。ちょっと残念だけど」

梓「(よかった、なんとかなった……)じゃあ私は本でも読んでるn」純「スキありっ!!」ズボッ

梓「モゴッ!!?」



梓「ひょっ……!ひゅん、はにふんほよ!!」モゴモゴ

純「へっへーん。油断大敵だよー、梓ー」

純「大体、ダイエットしてるとしても お昼ご飯抜いちゃ体がもたないよ」

憂「そうだよ梓ちゃん。お昼はちゃんと食べておいた方がいいよ」

梓「もごごご……!(そ、そんなこと言われたってー!! は、歯が痛くて……)」



純「……?いつまでもごもごしてんの、梓?そのパンそんなに固かった?」

梓「いひゃ……ひょういうはへはひゃいへほ……(どうしよう……この状況)」

純「噛めないんなら私が手伝ってしんぜよう」ガシッ

梓「へ……? ひゅん、ほうひはほ、ひょつぜんひゃたしのはたまとひゃごをふかんで……」


純「えいっ」グッ

梓「!!? いったぁー!!?」



梓「モグモグ……ゴクッ」

梓「ハァー、ハァーッ……。な、何するのよ純……」

純「いや、梓があまりにも食べづらそうにしてたからさ、何か私にできることはないかなって。…ちょっと力入れすぎたかな?」

梓「ほんと勘弁してよもう……。まだ歯がいたいよ……。ズキズキいってるし」ズキズキ

純「ごめんごめん」


純「……ん?歯がいたい……?」

梓「あっ!!(し、しまった!)」

梓「いや違う!いいい言い間違い!! 羽交い(絞めし)たいって言おうとしたの!ほら、よくあるじゃん?略語って!」

純「その略語使うタイミングあるの!?」



憂「ねぇ梓ちゃん……本当にダイエットなの? 私たちに何か隠してない?」

梓「う、憂たちに隠し事なんてするわけないじゃん! 本当にダイエットだって!!」


憂「……本当かなー」

純「確かに、あやしいねー。これは間違いなく何か隠してるよ」

梓(ヤバイヤバイヤバイ…。これでもし虫歯だってバレちゃったら……)


梓の想像


憂『え!?梓ちゃん、虫歯だったの!?』

純『これは大変だ!すぐに歯医者さんに連行しなきゃ!』ガシッ

梓『ちょっ……!まだ心の準備が……』

憂『問答無用だよ、梓ちゃん』ガシッ

梓『ま、まって!お助けー!!』


チュイイイイイイイン

ウニャアアアアアア!!!


梓(ひぃっ……)ガタガタ

梓(そ、そんな事態になるのは絶対に避けなきゃ!!)



憂「梓ちゃん?どうしたの、今度は急に震えて……?もしかして風邪?」

梓「う、ううん。そういうわけじゃないk(いや待て。ここは風邪をひいたということにして離脱すれば、しばらくは……!)」

梓「……というわけでもなくて、あー確かに風邪かもー、最近寒くなってきたからなぁー、ゲホッ!ゴホッ!」

純「うわ……すごくわざとらしく見える」


梓「…とにかく!私はきっと風邪ひいたの! というわけで念のためちょっと保健室行ってくるね!!」ダッ

純「めちゃくちゃ元気じゃん!」


ガララ……バタン



純「……本当に行っちゃった」

憂「……ねぇ純ちゃん」

純「分かってるって。あれは間違いなく」

純憂「虫歯だね」


純「そうと決まれば、早速捕まえに行こうか、憂」ガタッ

憂「そうだね」ガタッ



・・・・・・


梓(なんとかピンチは脱出できた……)

梓(それにしても疲れた……。保健室では寝ちゃおっかな……って)

梓「あれ!?保健室閉まってる!?」


梓「そんな、急になんで……?」

ピンポンパンポーン

梓(ん?放送……?保健室関連の放送かな?)

放送『えー、2年の中野梓さんにお知らせです。あなたが虫歯であるということは分かっています。至急校門の前まで来なさい』


梓「」ブッ


梓「てかこの放送、純の声じゃん!? ど、どうして私が虫歯だってわかったの……!?」

梓「とりあえずここに居ちゃダメだ、逃げなきゃ!!」アタフタ


梓「とりあえずどこか人がいない所に……! そ、そうだ、屋上だ!屋上に行こう!!」ダッ



・・・・・・


屋上


ガチャ……

梓「……」ソーッ

バタン

梓「よかった、誰もいないみたいです」ホッ



律「……そうだな」



梓「はい。良かったですよ、誰もいなくて」

梓「……ん?」


梓「!?って律先輩!!?(待ち伏せされてた!?)」

律「よっ。梓」



紬「私たちもいるわー」ヒョコッ

唯「あずにゃんも屋上にお昼食べにきたのー?」

梓「いや、あの、私は……(あれ…捕まえようとしてこない…? 先輩たちさっきの放送聞こえてなかったのかな)」

梓「あの、先輩方さっきの放送聞こえましたか……?」

律「えっ…?放送?そんなのあったのか?」

紬「ここは屋上だから校内放送は聞こえないのかも」

澪「梓、何か重要な放送だったのか?」

梓「い、いえいえ!大丈夫です(よかった…。どうやら私を捕まえに来たわけではないみたい)」ホッ



唯「そんなことよりあずにゃん、今日はムギちゃんが新作クッキーを持ってきてくれたんだけど、あずにゃんも食べる?」

梓「えっ…?クッキーですか……?(ま、また食べ物……)」


梓「……今日はお腹減ってないんで大丈夫です」

紬「そう?せっかく持ってきたのに残念だわ」ガックリ

梓(あぁムギ先輩そんなに気を落とさないでください!)



律「でも腹減ってないってことは梓は屋上に何しに来たんだ?」

梓「そ、それは、そのですね……。えと…」

律「まさか憧れの澪先輩に会いに来たとか!」

梓「もう、そんなんじゃありませんよ/// 私はただ歯医者から逃れるために来ただけです。からかわないでくださいよ」

律「だよなー」

アハハハ……



澪「……え?」

梓「あ」



澪「え、何 梓、歯医者って……?」

梓「いや、あの、それは、そのう……」

紬「梓ちゃんもしかして虫歯なの?」

梓「あ……う……(ヤバイヤバイヤバイよこの状況!!)」



梓「……あっ!!あんなところにUFOが!!ものすごい勢いで飛んでますっ!!ブォンブォンいってます!!」

澪紬「えっ?」クルッ

梓「スキありですっ!」ダッ

律「あ!に、逃げた!!」

唯「な、なんて古典的な……!」

律「引っかかる方もあれだけどな。とりあえず追うぞ!!」

梓(捕まってたまりますか!!)ダッ



私は走った

とにかく走った

無我夢中になって走った

歯医者という恐怖から逃れるために 私は全力で足を動かした



でも、これからどうすれば……?

……そうだ。旅に出よう。風来の旅に出よう。

旅に出れば歯の痛みも和らぐかもしれない うん。きっとそうだ、いやそうに決まってる……!

そうと決まれば歯医者から逃r……いや旅に出るために 今、この屋上の扉を開こう!



梓「やってやるです!!」ガチャ

憂「はい、捕まえたー♪」ガシッ

梓「…ですよねー」


・・・・・・

その後間もなくして 私は憂と純に半ば強制的に歯医者へと連れていかれた

連行される間も私は必死に抵抗を試み、幾度も逃走を企てたが 成功には至らなかった


……そして、ついに運命の時を迎えた



助手「……中野梓さーん!」

梓「!!!(つ、ついに私の番が来てしまった……)」

純「ほら、梓。名前呼ばれたんだから行ってきな」

梓「そ、その前にちょっとトイレに……」

憂「…梓ちゃん?」

梓「はい、すみません。行ってきます……」シブシブ


助手「ではこの部屋の中にどうぞー」

梓「はい……」

ガラララ……ピシャッ



純「……梓、大丈夫かな」

憂「大丈夫だよ、梓ちゃんなら」

純「まあそうであることを祈るしかないよね」


ハイ、ジットシテテネー

ニャアアアアア!!?ナ、ナニヲスルデスカ!! ヤ、ヤメテクダサーイ!!



純「って言ってるそばから小学生ばりに騒いでるし……」

憂「あはは……大変そうだね」



ガララッ

助手「はい、お疲れ様でしたー」

梓「は、はい……。ありがとうございました……」フラフラ

純「梓ー、おかえりー」

憂「梓ちゃんお疲れ様。はい、タオル」

梓「ありがと、憂。はぁー、やぁーっと終わったぁー……」

純「でも良かったじゃん、梓。これでもう痛い思いしなくてすむよ」

梓「全然よくないよ……。まいったよ、本当に昨日今日は」

憂「今日からはしっかり歯磨きしなきゃね」

梓「歯磨きは絶対するよ。もうこんな思いはしたくないしね!」

純「それがいいね。私もまた今日みたいに放送室を乗っ取ってまで校内放送したくないしね」

梓「乗っ取ってって何!?」



純「まあ話すと長くなるけど……聞く?」

梓「……いや、敢えて聞かないでおくよ。関わりたくないし」

純「なにそれひどっ!」


梓「……でも純、その、ありがとね」ボソッ

純「どうも。まあ校内放送だから学校中の人に知れ渡っちゃっただろうけどね」

梓「はいさっきのありがと取り消しね」

純「撤回はやっ!!」



梓「憂も心配かけてごめんね?」

憂「ううん、全然平気だよ。それより、もしかしたらお姉ちゃんたちの方が心配してるかも」

梓「あ……。そういえばそうかもね……急に逃げてきちゃったし」

純「案外誰も心配してなかったりしてねー」ニシシ

梓「そ、そんなことないもんっ!」



純「まあともかく。明日は元気な姿を見せてやりな。それとも、私がまた放送室をジャックして伝えてあげようか?」

梓「あー、急にまた羽交いたくなってきたなぁー」ギリギリ

純「ぐえぇ……冗談なのにぃ……」

憂(梓ちゃんもすっかり元気になったな……。これでお姉ちゃんたちも心配しなくてすむね)

純「ちょっと、憂、見てないでたすけ……ぐえっ!」


・・・・・・


翌日の放課後、軽音部はいつものようにティータイムをしていました。


律「あー!うめー!!ムギ、今日のケーキも最高にうまいっ!!」

唯「おいし~♪」ムシャムシャ

澪「……おいしいな」

紬「うふふ、どういたしまして」


ガチャ

梓「こんにちはー……ってまたケーキ食べてるんですか」

律「おー、梓来たか。どうだ?虫歯は治ったのか?」ニヤニヤ

梓「う、うっせーです/// もうとっくに治しましたよ、昨日」

唯「あずにゃんも歯医者さんが苦手だったなんてかわいいねー」ニヤニヤ

梓「う…///。も、もうこの話はおしまいです!ほら、練習の前に歯磨きしますよ!すぐに準備してください!」

唯律「はーい……」



唯律「……ってはい?」

梓「? 何そんなに驚いた顔してるんですか?ほら、唯先輩も律先輩も。歯ブラシ出して」

梓「さあ、今日からはビシバシ歯を磨きますよ!!」

唯「…えぇーっ!?」

律「どうしてこうなった」

梓「まあというわけで皆さん、食後はきちんと歯を磨きましょう!あずにゃんとの約束ですよ!!」

律「全然まとまってねーから!!!」



おわれ

第9話「澪誕!」

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     l:::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::l ィx=≡ミxヽ      l/  l::::::::::::::l
     .l:::::::::::::::::::/ ̄ l::::::::::::::::l ゞん:::ハ ヾ      ,x弐ミx/:::::::::l    1月15日

     .l:::::::::::::::::/ /:: l\:::::::::::l |:::::::::|        ん:ハ //::::::::::l     今日は私の誕生日だぞ
      l:::::::::::::::::. ヽ l:::::\::::::l ゞ 沙       .|::::リ /:::::::/l:l
      l:::::::::::::::::::ゝ  l::::::::::ヽ:l            ヾ  /l\/ l
      l::/::::::l::::::::::::::\l:::::::::::::::l  ::::::::::     、::::::: l::l
      l/::::::::l::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::l              ::l
      l::::::::::l:::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::l       、 _,    丿l
     /::::::::::l:::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::l           ./:::.l
     /::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::入::::::ヽヽ       ...<::::::./
    /::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::l: :ヽ::::::ヽ /`........_/l::::::::::::/

    /::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::l: : : ヽ::::::::ヽヽ:::::::/ .l::::::::::/
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年が明け、冬休みも終わり、学校も再開した1月の初旬の放課後。

軽音部は今年も相変わらず(?)楽しくティータイムをしていました。



ガチャ

梓「こんにちはー」

唯「あっ!あずにゃん来た! あけおめー!!!」ギュー

梓「ちょっ!?///新年早々抱き着かないでくださいよっ///」


梓「もう、離れてください!みなさんも唯先輩に何とか言ってやってくだ……」

律「あー紅茶うめー」ズズー

梓「……」シドー

律「え、何?」

梓「いや 年が明けてもやっぱりいつも通りなんだな、と思って……」ガックリ



紬「まあまあ梓ちゃん。廊下寒かったでしょ?梓ちゃんも温かいお茶どうぞ」コトッ

梓「ありがとうございます……。 あれ?そういえば澪先輩は?」

唯「あー、澪ちゃんは学校の春期講習の申し込みかなんかで遅れるってー」

梓「……唯先輩とかは申し込まなくて大丈夫なんですか」

唯「えー私? 大丈夫だよー、憂に勉強教えてもらってるし?」

律「それは姉としてどうなんだよ」

唯「てへへ」


梓「あきれた……。まあそれはともかくとして!そろそろ練習しましょうか」

律「待て、梓。お前何か大事なことを忘れてないか?」

梓「へ?大事なこと……?」

律「…梓。今日の日付を言ってみろ」

梓「今日の日付……?今日は確か1月10日……。あっ」

梓「そういうことでしたか!確かに、もうすぐ成人式ですね!!」

律「そうそう…。ってそっちかよ!! 違うわい!!」



梓「…冗談ですよ。もうすぐ澪先輩の誕生日…ってことですよね?」

律「なんだよー、分かってるんじゃないかよ。 そんなら最初から素直にそう答えなさい!」

唯「澪ちゃんももうすぐ誕生日かー…。誕生日といえばケーキ……」ジュルリ

梓「ちょっ……。ケーキももちろん準備しますけど、あくまでも澪先輩を祝うためのケーキですからね!」

唯「わかっへるよー。あ、ムギちゃん ケーキのおかわりあるー?」モグモグモグ

梓(まるで説得力がない!)



紬「はい、唯ちゃんケーキ。…あ、そうだそうだ、プレゼントも用意しなきゃねー。何がいいかしら」

律「私はホラーDVDにしようかなー。あ!お化け屋敷ペアチケットもいいな!」

紬「そ、それはさすがにどうかと思うけど……」

律「こっちも冗談だよ冗談。……あ!何ならみんなで何か一つ 澪にプレゼントしないか!?」

梓「! いいですね!」

梓「みんなで気持ちを一つにしてプレゼントを贈るなんて…!すてきですっ!」

律「だろー?それに私たちが負担する費用も4分1で済むしな!!」

梓「……まあそういう理由だと思いましたけど」



紬「まあまあ。それはともかくとして、とりあえずプレゼント何にするか決めなきゃ」

唯「ハイハイ!大きなぬいぐるみはどうでしょうか!」

梓「ぬいぐるみですか…。確かに澪先輩 ぬいぐるみとが好きそうですし、いいかもしれませんね!」

唯「だしょー。あ!せっかくだから思いっきり大きなのにしようよ!」

律「大きなのって…。そもそも何のぬいぐるみにするんだよ」

唯「うーん……。キリンとか…?等身大の」

梓「そんな大きなもの買ったら玄関通れませんよ……。てかそもそも売ってるんですか」



紬「じゃあウサギさんとかネコさんのぬいぐるみとか!」

律「うーん…。それでもいいんだけど、何かありきたりだなー…」

律「それに澪のことだからウサギとかのぬいぐるみはもう持ってる可能性もあるし、もっと面白いやつにしようぜ!」

梓「例えばなんですか?」

律「それはだな……。えーと……」

律「……てへっ」

梓「考えてなかったんですか」

律「もうホラーDVDでいいや……」

唯「妥協はダメだよりっちゃん隊員!」



紬「……あ!何ならこういうのはどうかしら!」

唯「…? なになにー、ムギちゃん?聞かせてー」

紬「………ていう案なんだけど」

梓「……なるほど。いいかもしれませんね」

唯「さすがムギちゃん!私は賛成です!!」

律「ナイスアイデアだなムギ!! よーし、ムギの案でけってーい!」

梓「ちょっ…。勝手に決めないでくださいよ…。でも私もムギ先輩の案でいいですけど」

紬「うふふ。じゃあ今年の澪ちゃんの誕生日プレゼントは決定ってことで」

唯「きっと澪ちゃん喜ぶね!!」



・・・・・・

1月15日 放課後の講堂前


澪(律に今日の放課後 ここに来るように言われたけど一体何だろう……)

澪(まさか、私の誕生日をここで祝ってくれるとか……? いや、こんな大規模なところでそんなわけないか)ガチャ



澪「律ー?入るz」ファンクラブ会員1「!! 澪先輩来たよ!!!」

会員7「!? ほ、本当だ!澪先輩だ!!」

ウソー!!? ホントダー! ミオセンパイキター!! カッコイイー!! ミオタン!ミオタン!

ワイワイ…… ガヤガヤ…… ザワザワ…… 

澪「ってうぇええええ!!?(え!?な、何この人数!?)」



律『! やっと来たか澪!さぁさぁ皆さん!本日の主役、秋山澪さんのご登場だー!!盛大な拍手をお願いします!』

ワー!!! キャーキャー パチパチパチ! ミオセンパーイ!! ミオタン!ミオタン!

澪「え……あの……、これは、どういう……?」

律『ほーら、本日の主役!いつまでも入口のところで突っ立ってないで さっさとステージの方まで来なさい!』


澪「……かえろ」クルッ

紬「そうはさせないわー」ヌッ

澪「ってうわぁあああ!!? ム、ムギ!?一体どこから……」

紬「細かいことはいいのよー。とりあえずステージの方まで行きましょ」グイッ

澪「ちょっ、ムギ!?待っ…いたたた!」ズルズル



紬「隊長!本日の主役を連れてきました!!」ビシィッ

律「よーし、よくやったムギ! あとはこちらに任せてくれ!」

澪「ひぃっ!な、何をするつもりだ!!」ジタバタ

律「唯、梓!澪を抑えといてくれ」

唯梓「ラジャー」ガシッ

澪「梓まで!? だ、誰か助けてくれー!!」

梓「大丈夫ですよ、澪先輩。ちょっといろいろと握るだけですから」

澪「ハンドルをか!?それとも寿司をか!?どっちにしろいやだぁa」
律『というわけで!今から秋山澪 誕生日記念握手会をはじめたいと思いまーす!』

ワーワーワー!! キャーキャー!! ミオセンパーイ!! マッテマシター!! ミオタン!ミオタン!

澪「」ガクッ



紬「さあさあ!みんな押さないで並んで並んでー!」

澪「せっかくの誕生日が……どうしてこんなことに……。コンナコトナラオウチカエッテオケバヨカッタ…」ブツブツ

律「まあいーじゃんいーじゃん。とりあえず、握手会、スタートッ!」


ファンクラブ会員1「じゃあ私から!」

ファンクラブ会員1「澪先輩!お誕生日おめでとうございます!私ケーキ作ってきたんですけどよかったら食べてください!」

澪「え…?わ、わたしのために……?あ、ありがとう…」

会員2「私もクッキーを焼いてきました!」

澪「わ、わざわざ悪いな…。ありがとう」

会員3「澪先輩と握手できるなんて感激です!私、この手は一生洗いません!!」

澪「て、手はちゃんと洗わなくちゃダメだぞ」

会員4「澪先輩お誕生日おめでとうございます!(キャー!澪先輩と握手しちゃった!!)」

澪「あ、ありがとう///(あれ…?こういう風に祝われるのも意外といいもんだな///)」

会員5「ミオタン……ミオタン……」ブツブツ

澪(……たまに変な人もいるけど)


・・・・・・

数十分後

会員30「澪先輩、お誕生日おめでとうございます!」

澪「あぁ。ありがとう」ニコッ

会員30「(カッコイイ……///)では、失礼します!」タタタッ

ガチャ バタン


律「よし!これで全員終了だな!!澪、おつかれ!」

澪「あぁ。確かに結構疲れたけど…、意外と握手会ってのもいいもんだな///」

唯「うわぁ!見て見て!プレゼントの量もすごいことになってる!!」ドッサリ

律「マジだ……。どこの芸能人だよ…」

紬「こんなに祝ってくれる人がいるなんて澪ちゃんは幸せ者ねー」

澪「そ、そうかな///」



梓「そうだ!私たちからも澪先輩のことお祝いしないと!」

唯「! そうだね!忘れるところだったよ!」

律「じゃあせーの、で祝うか!!いくぞ、みんな!せーのっ!」

唯律紬梓「澪(ちゃん、先輩)お誕生日おめでとう(ございます)!!!」

澪「!! みんなまで……!あ、ありがとう!!」


澪「みんなのおかげで今日は今までで一番忘れられない誕生日になったよ……!」ウルウル

紬「あ、澪ちゃん 目が赤くなってるー!」

澪「ち、ちが……!これは目から汗が出てきただけだっ!」

梓「ふふっ……」



澪「そ、そうだ!!そろそろ片づけをしないとなっ!!だからこの話はもうおしまい!」

律「片づけ……? 何言ってんだ澪、片づけどころか本番はこれからじゃないか」

澪「……え?だって今 握手会は終わっ」
ピンポンパンポーン

アナウンス「まもなく、秋山澪さん お誕生日会第2部がはじまります 皆様ご着席ください」

澪「……はい?」


ガチャ

ハジマルッテー! キター! ミオセンパーイ! マッテマシター!! ミオタン!ミオタン!

ドドドドド……

澪「う、うわぁあああ!!?」


澪「ちょっ!!ど、どういうことなんだよ律!?」

律「あ、ちなみに第2部は澪による単独ライブの予定だから、よろしく」

澪「はぁあああ!?な、なんだそれ!!」

律『それでははじめまーす!秋山澪さんによる単独ライブでーす!ごゆっくりお楽しみくださーい!!』

澪「おぃいいいいい!!!」



純「……今年の誕生日は、澪先輩にとって(いろいろな意味で)忘れられない思い出となったそうです」

澪ちゃんお誕生日おめでとう

第10話

「寒い!」


ある寒い 冬の朝の平沢家


~唯の部屋~


……エチャーン

オネエチャーン


唯「……んぁ…?」

憂「お姉ちゃーん、朝だよー、起きてー」ユサユサ


唯「…うーん……、あと5分だけ……」ムニャムニャ

憂「ダメ。遅刻しちゃうよ」

唯「でもー。布団から出たら寒いしー…。だからもうちょっとだけ……」

憂「ダーメ。ごはん冷めちゃうよ」

唯「ぶー。憂のケチ……」ガバッ


唯「うぅっ…!さむっ!」ブルルッ


憂「今日はこの冬一番の寒さになるって天気予報で言ってたからねー」

唯「な、なんですと!? てことはもしかして雪とか降るのかな!?」

憂「うーん……。雪は降らないって言ってたな」

唯「えー……。残念…。そしたらただ寒いだけだね」

憂「そうだねー…」


憂「とりあえず、こたつに入りながらごはん食べて、あたたまろっか?」

唯「うん。……あぁー、さぶいー」ブルブル


・・・・・・・

30分後

唯「行ってきまーす!」ガチャ

ヒュウウウウウウ

唯「うぅ…!さ、さむい!!身を切られるような寒さだよ!!」ブルブル


唯「うわ!あそこの水たまりの水、凍ってる!!」

唯(どれぐらい凍ってるのかな……?)ガシガシ

パリッ……ピチャッ

唯「!!つめたっ!」


唯「くっ…。罠だったか……。油断大敵だね…」

唯(あー、靴ぬれちゃったし早く学校に行ってあったまろう……)


・・・・・・・

数十分後

部室


唯「あぁー!やっとついたー! …でも当たり前だけど部室も寒いね……」ガタガタ

唯「しかーし!部室にはエアコン君があるからね!! ふふふ……、これで今年一番の寒さなんてなんのそのだよ」ピッピッ

シーン……

唯「……あれ?つかないや」


唯「あ、もしかしてリモコンの電池が切れてるのかな?どれどれ…」カパッ

唯「あれー…?結構新しい電池だ……」

唯「あ!そういえば先週電池替えたんだったっけ。じゃあ電池が切れたわけじゃないか……」



唯(いちおうテレビのリモコン君の電池でも試してみよう……)パカッ

唯「……」ピッピッ

シーン……

唯「うーん……。やっぱりつかない…」


唯(一応……)ピッピッ

シーン……

唯「まあテレビのリモコンでエアコンがつくわけないよね」


ガチャ

律「おいーっす……って何やってんだお前」

唯「あっ。りっちゃんおはよー」



律「てかそれテレビのリモコンじゃん。エアコンのリモコンはそっちだぞ。昨日ちゃんと寝たのかよ、オイ」

唯「ふふふ……私をなめてもらっちゃ困るよりっちゃん。なんと昨日は9時に寝ました!」

律「はえーな、オイ! てかそんなに大声で言うことじゃないだろ」

唯「そんなことより りっちゃん!さっきからエアコンが動かないんだよ!」

律「……いやそりゃあテレビのリモコンじゃ動かないだろ」

唯「そうじゃなくって!ホラ!」ピッピッ

シーン……

律「あれ……? ホントだ、エアコンのリモコンでも動かないな」



律「うーん、まいったな……。壊れちまったのかー?よりにもよってこのクソ寒い日に」

唯「りっちゃん……。このままじゃ私、凍死しちゃうかも……」

律「!? 大丈夫か唯隊員!?」

唯「あぁ……寒さでからだ…が……」ガクッ

律「唯……? ゆいーっつ!!!」



唯「……飽きたね」

律「……そうだな」



律「てかこんなことしてる場合じゃねーな。何か部室を暖める方法を考えないと……」

ガチャ

梓「おはようございまー……って何やってるんですか先輩方」

唯「遭難ごっこだよー。あずにゃんもやる?」

梓「そんなことやってる暇があったら練習しましょうよ……」


梓「てかなんでこんなに部室寒いんですか?エアコンつけましょうよ」

律「あー、それなんだけどな梓……。実はエアコン、壊れちまったみたいなんだ」

梓「……え?」



梓「え、何ですか壊れたって……?まさか先輩方、壊したんじゃ……」

唯「失礼な!! 違うよ!リモコン押してもエアコンがつかなくなっちゃったの!」ピッピッ

シーン……

唯「ほらっ!ね?」

梓「あれ、本当ですね……。この前電池替えたばかりなのに」



律「そういえば電池替えたのって梓だったよな。本当にちゃんとした電池持ってきたのかー?」

梓「失礼な!ちゃんと持ってきましたって!てか現に昨日までは使えてたじゃないですか」

唯「うーん、そうなんだよねー。昨日までちゃんと使えてたんだよねー……」

唯「まったく、どうしてこの冬一番寒い日に壊れてしまうんだい、このエアコン君は」

梓「……日ごろの行いが悪いからじゃないですかね」ボソッ

唯「ひどーい!?私たちが何したっていうのさ!」

梓「練習しなかったり、練習しなかったり、練習しなかったりとかじゃないですか?」キッパリ

律「……なんかすんません」



唯「そんなことより!今はこの寒さをなんとかする方法を考えなきゃ、だよ!あずにゃん、何かいいアイデアない?」

梓「急にそんなこと言われましても……。 …あ!ちょっと待っててください!」スタスタ

ガチャ バタン

律「……?梓のやつどうしたんだ?急に音楽準備室になんて入って」

唯「まさか 抜け駆けして一人で音楽準備室の中で暖を取るつもりなんじゃ……」

律「いや、さすがにそれはないだろ」


ガチャ

梓「お待たせしましたー。……よいしょっと」

唯「あ、あずにゃん出てきた!」

律「両手でなんか持ってるな……。何だそれ梓、ストーブか?」



梓「はいっ! ……よっと。結構重いですね、やっぱり」ドスッ

律「へえー。そこの音楽準備室にストーブなんてあったんだなー」

梓「ハイ。この前掃除した時に見かけたのを思い出しました」

唯「いろいろ置いてあるんだねー、音楽準備室。私そこで暮らそうかなー」

梓「唯先輩があんな場所で暮らしたら中がさらにぐちゃぐちゃになるからダメです!」

唯「えー、何それー……。ひどいよあずにゃん」

梓「てか音楽準備室の私物、いいかげん持ち帰ってくださいよ。まだまだ唯先輩の私物いっぱいありましたよ」

唯「そ、そんなことより今はさっさとストーブつけて部室を暖めようよ!あー、さむいさむい」

律梓(話逸らしたな……)



律「まあでも確かに唯の言うことももっともだ、今はちゃっちゃとストーブつけて部室を暖めちゃおうぜ!」

律「とりあえず、梓。このコードをコンセントに繋いで、はい」

梓「分かりました。よいしょっと……」グッ

梓「律先輩!繋げました!」

律「よっしゃー、いくぜ!スイッチオン オブ ザ ストーブ!!!」ポチッ

唯「おー、なんかかっこいいよりっちゃん!!」

梓「文法とかいろいろおかしい気がするけどとりあえずこれで部室は……」

ストーブ「」


梓「……うんともすんとも言わないんですが」



唯「まさか……これって」

律「……多分壊れてるな、このストーブ」

唯「えぇーっ!?ま、また!?」


唯「ほんとにつかないの!?ちょっと貸して、りっちゃん」

律「無理だって。そもそも電源が入らねーんだから」

唯「むぅ……。本当だ」ポチッポチッ



梓「せ、せっかくやっとの思いで持ってきたのに……。まさか壊れてるとは…。すみません、先輩方…」ガクッ

律「まあそんなにクヨクヨすんなって。悪いのは梓じゃない」

梓「律先輩……!」

律「よしよし。じゃあとりあえず、このストーブを一人で音楽準備室に戻してこようか、梓?」

梓「はいっ!!」



梓「……って何でそうなるんですか!律先輩も手伝ってくださいよ!!そっち側持ってください!」

律「ちっ……。分かったよ…。よいしょ」

梓「…あーてがすべったー」パッ

律「ってオイ!!重っ!?中野ォー、貴様ー!!」

梓「舌打ちした罰です。てか唯先輩も手伝ってくださいよ」

唯「私も手伝いたいところなんだけどさー、私物を持ち帰る準備があるから……」

梓「そんなのあとでやってください!ほら、そっち側持って!!」

唯「……はぁーい」シブシブ


・・・・・・

唯「はぁーっ、やーっと戻し終わったー…」

律「結構重かったぜ……」


梓「でもどうします?エアコンもストーブもダメとなれば、一体どうやって部室を暖めれば……」

唯「そうだよねぇ……。うーん、どうすれば…」


律「……あ!いいこと思いついた!!」

唯「えっ!?なになにりっちゃん!?聞かせてー!」

梓「なんか少し嫌な予感がしますが…。まあとりあえず、聞かせてください律先輩」



律「よくぞ聞いてくれた! 唯、梓。よくよく考えたらストーブ並みに温かいものがこの部室にはあると思わないか?」

梓「ストーブ並みに温かいもの……?そんなのどこにあるんですか」

唯「全然わかんないよー!りっちゃん、もったいぶらないで教えてよー!!」

律「ふっふっふ。そんなに教えてほしいか、唯?」

唯「是非とも教えてくださいりっちゃん先生!このままじゃ私気になって日課の昼寝もできません!!」

梓(いつも昼寝してたんですか!?)

律「よーし、じゃあ特別に教えてしんぜよう。それは……」ジリジリ

梓「……律先輩?どうしたんですかそんな顔してこっち向かってきt」
律「それは!お前らの体のことだー!!」ガバッ

梓「に"ゃっ!!?」



律「考えてみたらさー、私たちの体温って結構な温度じゃん?つまり抱き合ってればストーブなんていらないじゃーん」ギュー

梓「ふぁああああ///(律先輩に抱き着かれるのってすごく久しぶりな気がする///)」

唯「あー!りっちゃんずるーい! 私もあずにゃんに抱き着くー!」ギューッ

梓「ふにゃああっ!? ゆ、唯先輩までっ!!?///」

律「どうだー?梓ー」ギュー

唯「えへへーあずにゃーん」ギュー

梓(あ、あったかい……。なんか密着しすぎな気がするけど、確かにこれなら 律先輩の言うとおりストーブなんて……)



ガチャ

紬「みんな、遅れてゴメ……」

紬「ってあらあらまあまあ!みんなどうしたのそんなに身を寄せ合って!?」

梓(って言ってるそばから密着してるところ見られたー!!)



梓「いやいや!あ、あのですね!!ムギ先輩誤解しないでくださいこれはですね!」

律「おー、ムギー。おっはようさん」

唯「ムギちゃんおはよー。今日も寒くてやんなっちゃうよねー」

梓「って何でそんなに普通でいられるんですかっ!?」



律「なんでって言われても……。大体、寒かったから身を寄せ合ってただけじゃん。何も問題ないぜ!」

唯「そうだよあずにゃん。何もやましいことしてるわけじゃないんだから、もっと堂々としなきゃ」

梓「そ、そうかもしれないですけど……。やっぱり、その…、恥ずかしいといいますか///」

紬「そんなことないわ、梓ちゃん!私は色々な意味で素晴らしいことだと思うわ!!」キラキラ

梓「ど、どういう意味ですか!てかそんなに目を輝かせて言わないでくださいー!」

唯「てことでムギちゃんも私たちと一緒に抱き合おー?」

紬「どんとこいです!!」フンス!



紬「じゃあまずは梓ちゃんからにしようかしらねー♪」ジリジリ……

梓「ちょっ!?ま、また私ですか!?別に私からじゃなくて唯先輩や律先輩からでも」

紬「問答無用よー♪」ギュー

梓「ふわぁあああ///(ム、ムギ先輩やわらかい……)」


唯「おー!あちらの二人もやりますなー!こっちも負けてられないですぜりっちゃん!」

律「おうよ!よし唯、私の胸に飛び込んで来い!!」

唯「アイアイサー!りっちゃん覚悟!!」ギュー

律「何をー!おかえしだー!!」ギュー


アハハハ…… ワイワイ ヤメテクダサイヨモー

澪(……遅れたから急いできてみたものの 非常に扉を開けづらいんですが)



澪(でも練習しないで遊んでばかりいられてもダメだからな……。ここは私がビシッっと言ってやらなきゃ!)ガチャ

澪「おい!お前ら!!遊んでないで練習をs」律「!! 澪が来たぞ!!総員、突撃ィー!」

唯紬「おー!!!」ダダッ

梓「やってやるです!(もうヤケクソです!)」ダダダッ

澪「えっ!?う、うわぁあああ!!?」バタッ



・・・・・・

澪「ハァーッ、ハァーッ……。ひ、ひどい目に遭った……」

律「ただみんなで抱き着いただけ だけどな!」

紬「そういえばりっちゃん、私が来たときなんでみんなして抱き合ってたの?」

律「あー、そういえばムギとかにはまだ理由を言ってなかったな……。実は、かくかくしかじかってことがあってな……」

澪「……つまり、律がエアコンとストーブを壊したと」

律「そうそ……ってそうじゃねぇよ!!ちゃんと話聞いてたのかよ、オイ!」



澪「冗談だよ。しっかしストーブとエアコン両方ともこの寒い日に壊れるなんてな。全く不運としか言いようがないよ」

梓「そうですね……。やっぱり日ごろの行いが悪いんでしょうか……」ジトー

律「なんでこっち見るんだよ!」

梓「だって……ねぇ?澪先輩」

澪「そうだな。律はもっとちゃんとしておいた方がいい」

律「私の扱いひどくね!?」

唯「そうだよりっちゃん。部長なんだからもっとしっかりしなきゃ」

律「お前もな!」

唯「えー……」



澪「とりあえず!これで全員揃ったんだから、練習するぞ!!」

唯「で、でも身を寄せ合ってなきゃ寒いよー……」ブルブル

澪「練習してればそのうち体も温まってくるさ。ほら、準備準備!!」

唯律「えー……」



紬「まあまあ唯ちゃん、りっちゃん。練習が終わったら温かいお茶でも飲んであったまりましょ?」
         
紬「澪ちゃん、ちょっとだけ待って。ポットの準備だけするから」ポチッ


紬「…?あら…? つかないわ……?」ポチッポチッ

梓「え…?ポットまでつかないんですか……?」

律「おいおい…これってブレーカーとか落ちちゃってるんじゃねーの…?」

唯「そ、そういえば部室の電気もつけてなかったね。つくかな……?」パチッパチッ

紬「……電気もつかないね」

律「てことはやっぱり停電してんじゃん!!」

律「…ん?停電……? そういえば昨日の部長会議で……」



~昨日の部長会議~

和『明日の朝、学校で電機関係のメンテナンスがあって 授業が始まる時間まで教室以外は停電になるから、朝練がある部活動は注意してね』

律『あーい……zzz』



律「…って言ってたような気が……」

澪「……やっぱりお前の日ごろの行いの悪さが原因だったのか」スタスタ

律「み、澪しゃん……?どうしたのそんな怖い顔で拳を振り上げながら近づいてきて……。ぼ、暴力はいけませんわよ?」

澪「問答無用」ゴチンッ

律「いでっ!!」



梓「まったく、部長会議くらい真面目に受けてくださいよ……」

梓「でもこれで、ようやくストーブとかがつかない原因が分かりましたね。すごく単純な原因でしたけど」

律「こういった事態を未然に防ぐためにも日ごろからしっかりしておこうと思いました、ハイ」プクー

唯「あははは!おもちみたーい!」サスリサスリ

律「うるせーやい!!」


紬「あらあら。……あ、そうだ。今日のケーキ冷蔵庫に入れておかなきゃ」ガチャ

梓「え?でも冷蔵庫も停電してるから使えないんじゃあ…」

澪「まあ今日はこの通りの寒さだし、別に大丈夫だろ」

紬「……あら?冷蔵庫の電気ついてるわ……?」

澪「……えっ?」



梓「てことは…」ポチッ

ゴォオオオオ!!!


梓「やっぱり! 先輩!エアコンつきましたよ!!」

唯「おー!!てことは停電解除!?や、やったー!!」

律「ああ、やっとだな……!ここまで耐え忍んだ甲斐があったぜ!」

唯「あぁー、あったかいー……」

紬「うふふ。これで一件落着かしらね」

澪「そうだな」

アハハハ……



梓「…あれ?でもそういえば さっきの律先輩の話だと停電って授業が始まるまでってことでしたよね……?」

律「そ、そうだけど……? あ、まさかてことは……!」

澪「も、もう授業始まってるってことじゃないか!!!」

律「そ、そうなりやすね……」

澪「なっえっとっ、とにかく急がないと…!」アセアセ

律「大丈夫だって澪。停電のメンテナンスを手伝って遅れた体でん行けばみんな笑って許してくれるさ、きっと…」

澪「んなわけあるかっ!!」ゴチンッ



第11話

献血!



3学期が始まって1か月ほど経った頃、私が部室に行くために階段を上がっていると ふとあるポスターが目についた


澪「へぇー、何かかわいい何かかわいいキャラが描いてあるなぁ…なんのポスターだろ…」

目をこらしてポスターに書かれている文字を読むと 私は顔から血の気が引いていくのが分かった

澪「け…献血……!?血……!?」ガクガク

澪「ひぃいいい!!」ダッ

血を連想した私は 気が付けば恐怖から踵を翻し 悲鳴を上げながら階段を全力で駆け上っていた



なんとか部室の前までたどり着き 視界からポスターも消えほっと一息をつく

澪「はぁー……怖かった」

澪「痛い思いをしてまで自分の血を分けることなんてないよな、まったく」ガチャ

独り言をつぶやきながら 私は部室のドアを開けた


部室を見まわしてみると どうやら私以外の全員は既に揃っているようだった



私は挨拶をしようとしたが それを遮るように律が口を開いた

律「あ!来たか澪!澪は献血行くの?」

律の言葉を聞いて 再び「血」の文字が私の頭をよぎった


澪「ひっ!!」

思わず私は悲鳴を上げてしまう



澪の悲鳴にもかまわず 唯がさらに畳み掛ける

唯「澪ちゃんも行こうよ!なんかタダでジュースとかお菓子とか貰えるみたいだよ!」

唯は興奮した口調で 澪に向かって話した

唯と律のことだ どうせお菓子目当てで献血に行くのだろう

子供じゃあるまいし、もちろんそんな理由ならば、お誘いを受けても私は行くつもりはなかった

でもどんな理由があるにせよ、私には献血にはきっと行かないだろう

だって……

私は少し沈黙したあと 小さい声でこう答える



澪「いや…私はやめてくよ……」

澪「私、痛いのダメだし…血を見るのとか怖いし……」

そう。血が怖いのだ。それが例え自分のものであっても。


律「そっか…」

それを聞いた律は残念そうにつぶやいた



紬「じゃあ明日は私たちだけで行く?」

お茶菓子の準備をしていた紬も 少し残念そうな顔でそう提案する

梓「澪先輩がそういうなら仕方ないと思います…少し残念ですけど…」

唯「そうだね…」

律「まぁ澪には悪いけど…明日は私たちが戻ってくるまで一人で練習しててくれ!」


…どうやら明日の放課後は軽音部の私以外のみんなは献血に行ってしまうようだった

なんでみんなわざわざ痛い思いしに行くんだろ……

正直、そう思った



練習が終わった後の帰り道 私は律に尋ねてみた

澪「律はさ…その、献血とか怖くないの?」

律「いやまぁ別に怖くはないかなぁ…」

律「てかジュースとか粗品とか貰えるし寧ろ楽しみだぜ!」

律はにこやかに笑い返事をする

澪「すごいな…律は…」

確かに粗品目当てで少し興奮しているってこともあるとは思ったが、私は素直に律の気丈さに感心した



思えば私は本当に痛いことが苦手だった

子供のころ予防注射を受ける際も注射される前から泣いていたし

歯医者での治療の順番待ちは もはや死刑の執行を待つような気分であった


苦手はそう簡単に克服できるものではなく

今も「血」という文字を見ただけで悲鳴を上げてしまう状態であることは先ほどの行動に示す通りであった



澪「私はやっぱり痛いのはダメだな…」

律「昔からそうだもんなー、澪は。まぁそういう人もいるし、仕方ないよ」

律は慰めるように言った

そしてその後 律はうなだれて歩く私を一瞥した後、付け加えるようにつぶやいた

律「…でも私は多少の痛みならしてもいいと思うな」

律「針が刺さる痛みなんかよりもっと大きな痛みで苦しんでいる人もいるわけだし、そんな人に
私が分けた血が役に立つならこんなに嬉しいことはないよ」

澪「へぇ…」

正直律らしくもない台詞だと思ったが 言いたいことには共感できるような気がした



・・・・・・

夜になってからも ベッドの上で横になりながら私は考えていた 

澪(献血、か……)

澪(…血……ひぃっ!!)

澪(いやダメだダメだ!うろたえちゃ!)

澪(やっぱり少し痛いだろうけど…困っている人のためになるなら…やってみようかな…)

澪「……私が分けた血が役誰かのに立つ、か…」

澪「……zzz」

考えているうちに いつしか私は眠りに落ちてしまっていた



翌日の放課後、献血に行く前に唯が私に話しかけてきた

唯「じゃあ澪ちゃん、行ってくるね!なるべく早く戻ってくるから」

唯の言葉に対し 決意に満ちた表情で私は答えた

澪「いや……唯 私も行くよ、献血」



その後、私は軽音部のみんなと一緒に献血に向かった

いざ自分の番になり、注射針を腕に近づけられた時は やっぱり緊張して気を失いそうになったが、

みんなの励ましもあって、なんとか献血を終えることができた


献血を終えると係員の人が ご協力ありがとうございましたの言葉とともに私に粗品を手渡してくれた

はしゃぐ唯と律を尻目に 私は粗品の袋を握りしめ、達成感を感じていた



献血を終えた後の部室への帰り道

私が階段を上っていると 先日見かけた献血のポスターが再び目に入った


澪「私の血…誰かの役に立つといいな…」

私は自分の腕に貼り付けられたガーゼをなで 再び階段をのぼり始めた




.     , -‐―‐- 、
   く__╋__〉
 ゞ``;ィ"   .  ヾ゙'z  みんなも気が向いたら献血に行こう!
 ヾツ冫i.レソルlバjリ、;`

. ´''゙ヘミ(li> ┃┌O              ∧_∧
.     ヾl、'' ヮ''ノ| ├─| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  r(  ~∀)∴
.        ,{゙につ| ├─| ]┬┬┬┐┝━┿   つ
      〈___i」.| ├─|_____|  ⊂、  .ノ
.       (__iノ └┘              レ'


第12話

「憂誕」


      / : : ://: : : /: : : : : : : : : : : : : : `: 、

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    /: : : : く / : : : : /: :/: : : : : : /: : : : : !: : : : : : : : \
  /: /: : :〃: : : l : / : : : : : / : : /: : :/ : : ハ |: : : : : : : : :\

 ―- ァ: :/:/!|: : :V: : : : : : / : : /: : :/|: : /||: : : :| : : : : : : \

    !: : l:.{ |: | !: :/:/ : : : : /: :/| : :ム|: :/ l: !'、: : |: : : : : : : :|⌒
    !: : | L!: : ヽ:! l : : : : : : :斗 1:/   !:/ |!ヽ!: :|l : : : : : |: |
    !: /| : ':ヽ : :|/| : : : : ! /  _.|'-、  !'   リ  |: :ト|: : : : :|:|
    V !: :ハ: :\!|: : : :.|/,x芹芸ヾ      _-∨|: : : : :!: |
.      j /ヽ}: |: :/|: |: : :小,イノ:::゜}      ,芸芯 | : : : : ハ |   2月22日
     /   |: !:/Λ !、: : | 之Zソ       {.ノ:::ハ}/|: : / / |!    今日は私の誕生日です
        V ヾ { ( \!    、、、     、ゞソ ハ:|/|/
             \_                 `` ハ/  /
              !ヽ       , 、    ′
              _|  \             イ
           r-く >、   .         ゛
           /::::::::\   >、  ¨7 "´
.           rく、:::::::::::::::\   \/
        /::::::::::\::::::::::::::\   〉、
      /:::::::::::::::::::::::\::::::::::::::\/ア} 、
     .::::::::::::―:::::::::、::::::::ヽ::::::::::::::ヽ{ ! ヾ:.、
    /:::::::::::::::::::::::::::::::\::::::ヽ:::::::::::::::ヽ|l、 l ';::::、

.   i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::ー::ァ:::::::',{ }| ヽ:::l
.  〔::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::/:::::::::::', |ヘ }::::}



純「それじゃあ、今日は憂の誕生日ということで! 憂のことを全力で祝ってしんぜよう!」

憂「わー!ありがとー、純ちゃん」

梓「憂の誕生日だからって朝から押しかけてきちゃったけど…。憂、迷惑じゃなかった?」

憂「ううん、全然。それにお姉ちゃんもまだ寝てるし」

梓「え?まだ寝てるの?だってもう9時過ぎてるよ」

憂「お姉ちゃん、私のためにプレゼント作ってくれてるみたいで…。それで徹夜してたみたい」

梓「あー、なるほど。そういうことか。それなら納得」



純「でもさー、ついつい休日ってお昼頃まで布団で寝てたくなっちゃうよね」

梓「それは純だけでしょ。休日だからって怠けてると、怠け癖がついちゃうよ」

純「大丈夫だってー。私、やるときはちゃんとやる人間だし?」ゴロゴロ

梓「人んちに来て早速ゴロゴロしてる人がそんなこと言っても説得力ないよ…」



梓「あ、そうそう。プレゼントと言えば」ガサゴソ

梓「……はい、憂。お誕生日おめでとう」

憂「わー、かわいい猫さんのぬいぐるみ! ありがとー、梓ちゃん!」

梓「ふふっ。どういたしまして」

梓「なんか2月22日は猫の日でもあるらしいからさ。だからプレゼントも猫のぬいぐるみにしちゃったけど……喜んでもらえてよかったよ」

純「おっ!プレゼント贈答の流れ? じゃあ私もとっておきのプレゼントをあげちゃおっかなー?」ゴソゴソ

純「はい!憂!プレゼントだよ。ついでに梓にもあげる」

梓「えっ!?じゅ、純が私のプレゼントまで用意してくるなんて…。何か企んでるんじゃないよね」

純「ひどっ!そんなわけないじゃん!!これは私の純粋な気持ちだよ、キモチ」



憂「ありがとー、純ちゃん。……えっとこれは、腕輪…かな?」

梓「なんかドーナツみたいな形してるね」

純「そう!まさに君たちの言うとおりドーナツ型の腕輪だよ!しかも私の手作り!!」

憂「へぇー、わざわざ私のために作ってくれたんだ、純ちゃん」

純「その通り……と言いたいところだけど実はもうちょっと深い目的があるのよ」

梓「次の純の誕生日にプレゼントのお返しを期待する目的とか?」

純「ちがーう!それにその腕輪、私の分もあるし」スチャッ



梓「すでに腕につけてたの!?」

憂「わー♪似合ってるよ、純ちゃん!」

純「でしょー?ほら、憂たちもつけてみなよ」

梓「別にいまじゃなくてもいいじゃん。私は明日試しにつけてみるよ」

純「ダーメ!今つけて!」

梓「わ、わかったよ……」スチャ

憂「私もつけましたー♪ ……でも純ちゃん、どうしてプレゼントを腕輪にしようと思ったの?」

純「ほんとは首輪にしようと思ったんだけどね」

憂梓「えっ」



純「うそうそ。冗談だよ、冗談。憂の誕生日は2月22日だから、腕輪をプレゼントしようと思ったんだ」

梓「いやいや、それじゃ説明になってないでしょ」

純「何言ってんの、梓。2月22日だから『う・で・わ』の日なんじゃん」



憂「純ちゃん……」

梓「純、どうやら熱があるみたいだね。とりあえず救急車呼んだ方がいいかな」

純「わー!!冗談!これも冗談だから!!!本当の理由は2月22日は世界友情の日だからですすみませんでした!」

憂「世界友情の日……?2月22日って世界友情の日でもあるの純ちゃん?」

梓「また適当なこと言ってるんじゃないよね」

純「さすがにこれは本当のことだって!だから友情の証として腕輪を作ってきたってわけ」

憂「友情の……」

梓「証……?」



純「そう。これから先、3年生になっても、大学生になっても、大人になっても、ずーっと友達でいられるようにっていう願いをこめてね」

梓「じゅ、純らしくもない台詞だけど……」

憂「なんだか素敵だね、そういうの」

純「そ、そうかな///」

憂「うん!私とっても素敵だと思うよ!! 今日はこんなに素敵なプレゼントをありがとうね純ちゃん!」

純「いやいや、なんだかそう言われると照れるね///」

梓「私からも一応お礼言っとくよ。ありがとね、純」

純「梓まで……」ジーン



憂「ふふっ。友情の証かぁー。なんだか友情をプレゼントでもらっちゃったみたい」

純「我々の友情は永久に不滅です!」

梓「もうっ。純ったら……」

憂「あ、でももちろん梓ちゃんから貰ったプレゼントも大切にするよ?……今日は二人とも、ありがとね」

梓「と、当然のことをしたまでだよ///」

純「わー梓照れてるー」ププッ

梓「て、照れてなんてないよ///」



憂「ふふっ。…それじゃあ二人とも、ケーキでも食べよっか?」

純「!! いただきます!」

梓「じゃあ……私もいただいちゃおうかな」

憂「そうこなくっちゃ!じゃあお姉ちゃんの特製ケーキ、準備しちゃうね」

梓「え……?ケーキ作ったの唯先輩なの……?」

憂「うん。お姉ちゃんの誕生日に私がケーキ作ってあげたからそのお返しにって張り切っちゃって」

梓「唯先輩の張り切り……何か嫌な予感が…」

憂「大丈夫だよー。なんか2月22日はおでんの日なんだーって言ってケーキにおでんの具乗せてたけど」

純「全然大丈夫じゃないよねそれ!?」



梓「ほ、ほらケーキなら私もお店で買ってきたしさ!お昼に食べるケーキはそっちにしない?」

純「そ、そうそう。唯先輩の作ったケーキなら、夜にでも二人っきりで食べた方が絶対おいしいって」

憂「そうかな……?じゃあそうさせてもらおうかな」

梓純(た、助かった…)


梓「…コホン。それじゃ気を取り直して……」

梓「憂、お誕生日おめでとう。これからもよろしくね」

純「ハッピーバースデー、憂ー!いつまでも友達でいようね」

憂「~~!!ふ、二人とも…! ありがとうー!!」ギュー

梓純「うわぁっ!?///」


憂ちゃんお誕生日おめでとうございます


終われ


第13話

「アズプラス」

~平沢家~

憂「おねえちゃん、それ何のゲームやってるの?」

唯「あー、これ?『アズプラス』だよー。ムギちゃんが作ってくれたの」

憂「えっ!?このゲーム紬さんが作ったの!?」

唯「うん。私が家でもあずにゃんのこと可愛がりたいよー、って言ったら作ってきてくれたんだー」

憂「へぇー。すごいんだね紬さん」

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        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


憂「……で、これは何をするゲームなの?」

唯「もう、憂ったらー。さっき言ったじゃん!あずにゃんを可愛がるゲームだよー」

唯「ほら、画面上にあずにゃんがいるでしょ?このあずにゃんをたーくさん可愛がってあげるの!」

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           ノ:::: /  ` ー-  ___|_     |\:\{:::::::::::::::::::\
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                                       \_)
憂「……今は寝てるみたいだね」


唯「本当だ。でもそろそろ夕飯の時間だからあずにゃんにもご飯あげないと」



憂「ごはん?このゲームの梓ちゃんにもごはんあげられるの?」

唯「そうだよー。…えーと、ほらこの説明書の121ページにも書いてある通りだよ!」

憂(説明書分厚っ!!!)

唯「えーと、アイテム欄からたいやきを選んで、と……」

唯「あずにゃーん、ごはんだよー!」

       ハ    }ト.、                    ,.イイ
   /  V   |}::.\              //::.::}
  / {  ノヽ     |..トヽ::.:\ ,. -―――- ..._,..イ::./イィ::.{ }}

    `´      {{ {く`' ヽ:/  ...:.: :.  ..:.:..:. ミ: 、/ 孑リ
    ノ      ∨z/ ...:/.: ...::{ .:. :....:.:.i ..:.:.:.:\zV

    \         ∨/.: ..:′....:ハ .:.. .: ...:.| ..:.:.ヽ .:.:〈、
     ヽ      ,/.i .:. .:{:. ..:./ |.:.. .:. .:.:|i ..:.:.:i:..:.:ト:'.
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     ⌒)  ,.:...:.:{:{:.|.:{:..::ト.:.:.{    {ヽ:.i..:.:リ  }..:.|i..:.:ト.l|
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      .′.:.:':.: /  | .: l从               ム|.}ハ{ハ ..:.:.. i
       i ..:.: i.:ノ    l:i :i{  \   ヘ    ..イ }イ..:|ヽ i:...:.:. l
     ,l ..:.: {′   |:{小  /i> -- i爪   ノ }:.リ   ':....:.|
     /|..:.:.:.|     从{,.斗ヘ. ` ーx rー' ノト..   /:/   l::...:. |
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 l! ':.:.:/|..:.:.: |  { .::.:: i ..::.:::::.く..:.ノノ j.| V.:\、.ヽ:.:/:.{ }}i .':.:.}:.:.i

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|l }l !.:| |i! ヽ:.:.ヽ  ヽ::. |l | ::.::.::::ヽ ̄ヽ}7}} ::. ̄ヽア.::.::.}/|!ノ::/   jl |{

憂「!? おねえちゃんの声に反応した!?」

唯「あー、このゲームマイク機能もついてるの。だからあずにゃんと直接おしゃべりもできちゃうんだよ!」

憂「そんなことまで……!科学の力ってすごいね!!」


唯「ほーら、あずにゃーん。たい焼きだよー」ポイッ

憂「あ、画面上にたい焼きが!梓ちゃんも気づいたみたい!」

                                       (( /:}
                  ___  ___   __   /::_ノ ))
                 {:::Z\::::::´::::::::::::::::::::::::`く:::/Z:}  (::::(
        じ ー─ っ   VZ/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\Z:厶  )::::)

                    /∨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨\`く::/
                /::/::::::::::::/{::::::::::::::}八::::::::::::::::::::::::Y゙ ̄}
                   /::::::: 八::/\八::::::: //| :::::::::::::: |::::::|\/
               i:::::|::::|:::乂 ◯ ∨|/ ◯八/::::: i::::|::::::|⌒〉
               |:::::∨|:::::|⊂⊃     ⊂⊃::::::::|: :|::::::|/}
               |:::::│|::::;ゝ _ △  _人:::::厶イ::::│,イ⌒ヽ

                  {:::::::{_∨{::(_、_,_)─(_、_,_厂∨_ノ{ ::::├┴一'フ 
                ー-~'⌒          ̄   ー-~'⌒´


      ∠ZZヽ、_ ___,
.    /Oヽ :::::::::;:ハ-={

    く)ノく;;;;)::::::;;;;_人=_}
      ー=≪_;;ン


憂「あ!食べ始めたよおねえちゃん!」

唯「ほんとだー。可愛いねー」

             ___         //{
             }\:.:.:.:.:>───<:.:./V  っ
             ∨/ヽ:.::::::::::::::::::::::::::: `く/    っ
             ,ゝ、/:/:::/::::{::::::::::::ヽ::::::ヽ

                /:::イ :::|::::|::、∧::::::: }:ハ::::::: ト、  
         __/::::/八::::|::::|∨ ':::: /|:/| :: |:j:::ヽ

        〃:.:.:/ :::,′ V|::│> ∨< |:::::jハ::::i
        ^⌒7:::::/ヽ.  ヾi:::|⌒)_..._(^Y!::::リ_,j::::|  はみ
.           /::: ∧:.:.ヽ ∧:|'^´_" )ヾ`^ レく  | ::|   はみ
         {:::::{ \/ :`y'、ソ、)、ソ、y、)',,::彡",ヽ

            '::::::':、 / (( ) .iy'ソ ' )'y )、ソ、),,彡'彡|
           \::::r'=、 ,  ::i )/i y )、) 'y k彡,,"」
             `く`''、._ノ .::ノ/彡f ::ヽ ;Y 、、、,-ー'"
             \ハ`ー-'=ー"ニ=ー~"`^

                        
憂「あれ?でもお姉ちゃん、アイテム欄のたい焼きのデータに賞味期限1月31日とか書いてあるけど……」

唯「…えっ!?」

                          

             ___         //{
             }\:.:.:.:.:>───<:.:./V  ┛┗
             ∨/ヽ:.::::::::::::::::::::::::::: `く/   ┓┏
             ,ゝ、/:/:::/::::{::::::::::::ヽ::::::ヽ

                /:::イ :::|::::|::、∧::::::: }:ハ::::::: ト、  
         __/::::/八::::|::::|∨\:::::/|:/| :: |:j:::ヽ

        〃:.:.:/ :::,′ V|::│○ ∨○ |:::::jハ::::i  かぶっ
        ^⌒7:::::/ヽ.  ヾi:::|⌒)vー‐v(`!::::リ j::::|  
.           /::: ∧:.:.ヽ ∧:|'^´___ `^レく.  | ::| 
         {:::::{ \:.∨`ーイ( \\   ヽ. | ::|
            '::::::':、 「/∨_ノ| ヽ, ∨}    V: /
           \:::\〈//\/|  ノ}   \_   ∨
             `く⌒`ト、 ∧しヘ{  u     ';
             \;ハ `ー{\八       ';

               ∨  j   ヽ{\    u '、
                `ー'′   \       \  _

唯「!! いたいいたい!!」

憂「あ、梓ちゃんが画面上の手に……。でもさすがにおねえちゃんは痛みは感じないんじゃ……」

唯「ううん。実はこの本体、振動機能があって噛まれた時の痛みを再現できるようになってるの」

憂「そ、そんなところまで……。本当に細かいところまでよくできてるんだねこのゲーム」

                                       /ヘ
                                      /   )
                                    /   /
                                 \\   /
                                      \\

               _         _      /    /
              ∧  >―――<  ∧    /  /
              彡}/:::::::::::::::::::::::::::::',/ミ    /  /
                /∨:::::::::∧::::::::::∧::::::::∨\ / /
           /:::::::イ::::::/\|/|:::,'/∨|::::|\(/ミ´)

           ,゙.:::::::/ |::::::|千:┬∨┬:千! ::|/(__):ヽ  ガルルルルル
           ,':::::::/o |::::::| 乂ノ   乂ノ |::::|  ∧::::::',
          ;:::::::|   レ|:::|ゞ'' (⌒⌒) ''ィ|::N. / |:::::::|
           |:::::::|   ヽ:::∨ 不不 ∨//   .|:::::::|
           |:::::::|    ∨ 〈ヽ∨/〉 |/      |:::::::|
           |:::::::|     ',  ∨〉/  ,'   o  |:::::::|
           |:::::::|      ∧  'o   {      |:::::::|
          \八   / [ヘ  ゚o l ̄〕、   八/

                \/\ム_____〉_∧/\
           〃⌒い /\__LlJJJr⌒?/
           {///ハ:::く__>'´    {///リ|
           ∨///}}/      ∨//}}
           弋__彡         {_`_彡

憂「お、怒っちゃったね梓ちゃん……」

唯「だ、大丈夫だよ。まだたい焼きはあるから!!今度は賞味期限を確認してと……。それっ!」ポイッ


    \      ヽ  ___            .....-‐┐/    /
      \     ヽ 〉z、:..:..:> ――‐z..'..:..:..:,∠}}   /
.              厶- > ' ...:...:...:...:...:...:...:...:./⌒>  X
                  {イ/, ..:/.:/ .:i..:..:i:.ヽ.:..:..:ヽ孑   十

               //.:イ斗 {   } .}.ハート i.:.::トrト、  ナ
           も   从:/:|ハ:ハ.:.::/イノ }/}:ノ|.:.::i:::ヽ:.ヽ.  r‐r‐
            ぐ    i.:| :/,z==ミV′ =ミ、|.:.:::|):∧:..'. 丶.ノ
               |.:{.:{つ      ⊂つ} .:.::}:/ l:.:. !
            r‐r‐ }.::込.  `爪`T’  / ::.:/′ }.:..| も
              丶.ノ /.::}ヽトミ:i7{‐;;‐ミ]7チ/イ}/―x. /:..;′ぐ
                /..:/   ∧つ(_ノヽ.:.:} /.:/⌒’{:..:′
            __.ノ.:ノ    廴7´oト、.:.:/V.:ノ    |:..{
          .イ.:ご´_    厂 >┴ = イ\   ヽ:.\__
      _ /′`  ̄ ̄`r‐、-<`ヽ/___r― 、__ノ     \:__ミ⌒`
   ,/o´_;ソ777t>'ト、  {::..::..::斗 '´ _/⌒∨       /´― ’
.  i >‐/:o:__' :i :;;三〉 ヽ. `¨´    i⌒.:.::/
.  ヽヽ`ー`== 彡__ノ ノ       廴.:ノ
    `  二二二  ´
憂「あ!嬉しそうな顔で食べ始めたよお姉ちゃん!!」

唯「よかったー……。今度は大丈夫そうだね」

あずにゃん「オイシイデス!アリガトウゴザイマスユイセンパイ!!」

憂「しゃ、しゃべった!?このゲーム音声つきなの!?」

唯「うん。もちろん声優はあずにゃんで完全フルボイスだよ!!」

憂(いったいいつ収録したの!?)

                    フ`ヽ:::`ヽ        Xヽ/V}
                    ム  ヽ:::::::`ー―-- 、∠   i::::i
                    彡xxv:::::::::::::::::::::::::::::Z   i:::::i

             __  ....  __ /.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::シtxvzi::::}
         ィ  ´.:::::::::::::::::::::/.:::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{
      ,  ´.:::::::::: ..  ´    //:::/:::::ィ/></:::::::::::::/:::::::::::::::.!:::::::',
    ,.:::::::::::::,  ´        /イ::/::::::// // i::::::::::r ´ ¨ `ヽ:::}:::::::::',
  /:::::::::/          {/::::::::/  V i::::::::人     }:::::::::_j
  /::::::::/            l r‐‐、‐-、  {::/ 〉ヾ、__ /::::::::ヘヽ

 ,::::::::/             /〈   ヽ     ィ/::::::::::::::o::i::::::∧',∧   ~♪
 {:::::::i            /o:::ヾ__  }  、_._,  /:::::::::::::::o:::i/  V∧
  ,::::::i          __ {::::::::::::::::::ヾテ/>--z ´.::::::::::::::::::r'     V∧

  ,::::{     __,  ´   `ヽ:::::___/:::くフト、/.:::::::::::::::::/       V∧
   ヽト、   ,´/        }トー一'::::::::∨/.::::::::::::. ィ        }::::::}
      /::::{      ..,イヾ、:::z‐-、/.:::::::::::::::::/          i:::::::i
     /.::::::::::`ヽ__..,イ´  〉 /    Y:::::::::::ィ´             }:::::::!
     l:::::::::::::::::/《 i    } ′     }:::::::/                ∧:::::}
   xZ ヽ、__..ィ   `ヾ、 __ノ}     /∧:::/             ∧::::::.!
  r'::::{         /`ヽ,∧    //ィ}/             ∧::::::V

  i::::::ト、     .. ':::::::://.:::::`ー--イ}ム/             ∧:::::::V
  `ヽ::::`ー一 ´::::::::::/ /.::::::::::::::::::ム{//             /.::::::::::/

    ヽ.:::::::::::::...  '  /.:::::::::::::::::/ーレ          __..イ.:::::::::::::/
      ̄ ̄      {:::::::::::::::::/          __Z:::::::::::::::::../´
憂「たい焼き食べて 梓ちゃんも満足そうだね。本物のねこさんみたいになってるよ」


唯「そうだねー。あ!じゃあ今度はあずにゃんに猫のものまねをさせてみよう!!」

憂「え!?そ、そんなこともできちゃうの!?」

唯「うん!えーと、確か説明書の65ページに……。あ、あったあった。えーと、こうしてそうしてああすれば……」

           ,'`ヽ\   _ __ _  ,.  ィ ´;
            : ミ ` ヽゝ'´. : : : : : :.`:.く `ミ ;
            ; ミ,.:'´. : : : : : : : : : : : : .\ミ .;
           ,:V: : : : :/: : : : : : : ヽ: : : : :ヽ{
            //.: : : : /: : : : : : : : /i: : : : : ',:i
         //: : : : :./__{:ノ : : : メ、_}:_:}: : : i: ト、

          ∧{: : : : ,′ リ ',:. :/  l: /:`.: .}:.|: :ヽ
         /: :.V: :{:!      V   l/ l:.:.://: : : .',
          /: : : :V∧:{  ◯      ◯  l:.:/:.ハ: : : :.',   ネ、ネコノモノマネデスカ……?

       /: : : : /: : ハ           l/: :.| '.: : : i
        /: : : : /l: : : :{ '゙゙゙゙      ゙゙゙゙゙゙ j: :/:|  i: : : |

       ,': : : :./ l: : : :ト .   △     イ:/: :j  |: : : |
       i: : : :,′ ',: : :L  > _,. < l/:/:,′ |: : : |
       |: : : i   /:ト、: :\: :/ \_/ i: : V./l/`ヽ |: : : |
       |: : : |  l.:.:.:.:.\: |.:.{ ノ芥ヽ/.:.:.:.:}.:.:.:.:.:.:.} l: : : |
       l: : : | /´  ̄`ヽ.:.フ/ ハ V{:.:.:.く.::.:.:.:.:.ハ l: : : |

       l: : : | { ゝ‐'しソ く.:.:.Vノ ト、ノ.:.:/.:.:.:.:./.:.:'.: : :.:l

       |: : ::| l7ニニフ´i.:.:.:\l | | l./.:.:.:.:.:.:.j.:.:.: |l: : : |
       |: : ::| /c.:.:.:.:.:.;'.:.:.:.:.:.:L|V|_|.:.:.:.:./⌒ヽ.:.:.:.||: : : |
       |: : :./c.:.:.:.:.:.:.i.:.:.:.:.:.:.:.:.c.:.:.:.:.:.:...し'ノ ノト、.:.!: : : :|
       |: :.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ト'ー'= ':.:.V{: : : :|
       |:.:.:{.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::.:.:.:.',ヽ__ノ.:.:.:.i: : : :.|
       |:.:.:.:\.:._.:/.:.:.:.::::::::::::.:.:.::::::::.:.:.:ヽ.:.:.:.::.:.:/l: : : :|
       |:.:.:.:.|   l.:.:.::::::::::::.:.:.::.c..:.::::::::::::::::.:.`T´ |: : : :|
唯「そう!猫のものまねをあずにゃんにやってほしいの!!」


憂「す、すごい。本当に伝わった……」

唯「流石ムギちゃんのゲームだね!!……じゃああずにゃん、とりあえず『にゃー』って言ってみて」

             ,从、            ,ィイ              . -‐- 、
            /.:.:,ィハ          /.:.:.{     . -―- 、     /     ヽ
              //V イ{-―‐- ... /:厶ィ::}    /       ヽ   ′ { こ  i
              ,!:!  ,. イ´ ̄ ̄.:.ミ...く≦ ,.不.  |  { こ   i  |   :  |

          /.:{:| / .:.: .:.:. :. :.. :.:..:.. :.:\ 孑    |   や  |   |   :  |
        /..:/∨ ..:.:,.イ:. :..:{ :..:.:.:..i .:..:..:.. 〈   |   (   | ノ.       ノ
         厶.:彡/.! ..:-l‐{十.:.. ..:.:.}斗i一. l }     |   )   |  ̄ ` ー‐ ´
        /..:.:.}. ‐:!.:|.i .:..|ハ:ト、.:.i ..:./iハ|:.:.. .∧    |   (   |

.       / ..:.:,仁.:.| 从..:.{ __ミ `{∨ ム__}!:リ:.ハ::ヽ  l    :    |
     / ..:.:.:{:ミ:._| .:.:.ト》'fう::iヽ   '行::iV}/:.:i:.:..'.. ノ   :    l
     .′ .: ハ:〃| .:.小. Vツ    ヒツノ'|:...:.|:.:.:.'.´ ヽ.  ?  .′
    .′..:.::′ \.|:....:| xxx.    '    xx}:...:.l:.:.:.:.i    ー― '
   .′ .:.:i    |:. .:{、 U   __    .イ: ..:.|!:.:.:..l
   .′: ..:.l      |:. .:| >,   ‘ー '  イ }.:..:.:ハ:.:.:.l
  .′..: ..:l  ,. -- .i.: :.{,ノ\ ` ¬チ、  _|:.:.:.′}:.:.:.|
  i ..:..:..:.:l /    从.:ト、   ` ーrく 厂´リ:イ/⌒ヽ:..|
  | .: .:..:.:|′     \,ト -≧、廴l{ハj] /' 「i{ /⌒≧_、
  | ..:.:.:.:.:{    ,.イ /´ ̄ヽ{/「iトミ!   ├!/ /´  ヽ}
  | ..:.:.:.:.:|、   / ノ /     `Y }V7`ヽ }7 /      ヽ.
  { ..:.:.:.:.:| }  / { {、  i l { ト{ 廴_j } 从 {{ i  { i ,{ }

唯「そうそう!そんな感じ!!あーあずにゃん可愛いー!!!」

憂「かわいいねー。あ!カメラ目線ならもっと可愛いかも!」

唯「!それもそうだね! ほら、あーずにゃん。こっち向いてにゃあって言ってごらん?」

              ___               __
              {`ヽ、\_  -―――――-/,..イ⌒7
              | 乙\_>'"´  ̄ ̄ ̄ ̄`^<  乙 }
              ∨  /::::::::::::::/:::::::::::::::丶::::::::::\  >|
              ∨/:::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∨/

                〃::::::::: / :::::{ :::::::::::::::::::::::j::::::::::::ヽ::∧
               _{i:: /:::::::| ::: ;'|::::i::::::::::::::::::,'|::::| ::::::::|:::i:ト、
               /:|i:::|:::::::::|::::/ |::::i:::::::::::::::/│::| ::::::::|:/:j:::::、
            /::::|::::|:::::::/∨ イ:::|::::::::::::/ `:ト:∧::::::::::::リ::::::::,   にゃあ

              /::::: i|:::|::::::i ,_ |::∧ ::::::/   j/_;::::/::::ト、:::::::::,
           /::::::::/|:八::::|!《不)心 \/  ィ千不》/ :::::|ハ::::::::::,
             /::::::::/ :| :::::ヽ{. 弋.:ソ      弋:.ソ |! ::::::|   :::::::::::、
         /::::::::/  | :::::::∧ :.:::::::   ,    :::::.: ,′:::: |  \:::::::ヽ
           /::::::::/   ';:::::::::小、           ,{:::::::::: |    ヽ ::::::::,
.          /::::::::/     ヘ:::::::::|: :> _  ‐っ  . イ | :::: //\     ';::::::::i
       /:::::: /   /: : ;ゝ--{/: : | >  -</ | ノ-―〈: : : ヽ    :::::::|
       ,':::::: /   /: : / 、\\: :|  \_/  八_〈 / /ヽ: : }  :|:::::::|
       :::::::/    { : : {、 { {r┴イ : | />'介く\/: :.(つー'ー'ソ: : |   |:::::::|
      |:::::::i     〉 八_ ̄ニrく〉: :∨/ l| |\∨: 〈/ト.二-∧: : }   |:::::::|
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       ヽ:::::::..    \__/ : : : : : : O | : : : : : : \__/   /::::::/
.        \:::::\     / : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : :|    /::::::/

唯「きゃー!可愛いー!!」ギュー

憂「クスッ。お姉ちゃんったらそんなに強くゲーム機握りしめちゃって」



唯「だってあずにゃんが可愛いんだもんー」ポチッ

プツン

唯憂「あっ」

憂「お、お姉ちゃん!!電源が……!!」

唯「大丈夫大丈夫。このゲーム、オートセーブだから。『リセットしてやり直そうなんて言語道断よ!人生にリセットボタンなんてないんだから!何事も一発勝負よ!!』
  ……ってムギちゃんも言ってたし」

憂「そ、そうなんだ…(賞味期限とかやり直しがきかないとか微妙なところでリアルなゲームだな)」

唯「とにかく!これで今日からは帰ってからも毎日あずにゃんを可愛れるよー!」

憂「でもだからと言ってあんまりやりすぎないようにね」

唯「その辺は気を付けるから大丈夫だよー、憂ー。よーし!今日から頑張ってあずにゃんを可愛がるぞー!!」

~そんなこんなで一週間後~


放課後の部室

    k           ,.ィ
    lト' 、 -──‐ /ィ!   /
    〉'´:::::::::::::::::::::::::´'〈   l. . な  唯

    /::::::::::::i:::::::::l:::::::::i:::ヘ  .|   で  先
   /:::|::::/'´|:::::::l``!、:|:::::ト、 .l.   な  輩
  . ハ:::l::/_,,,,_!,:::メ,,,,,_ハl:::::|::l  |   で

   |::l::::|'`.モメ' V. モメ '.|::::l:::|  l.   し

   l:::|l:::l '''   '  ''' /:::l|:::l  |   て
   |:::l|::::ト   ワ  .ィ:::/.l:::|  l   下
   l:::|.ヽ:|メ>. -. <.l:/ |::l.  l   さ
   |:::l /:/:| `><´l ', 'ヽ、.l::|  |   い
.  l:::| {:::::::ヤXオヤ/.く::::::::}.|::l  ゝ、
  |:::l |::::::::∨i|::トV'´::::::l .l:::|   ` ‐--‐ '"´

  l:::|  l::::::::::`l| '.!:::::::::::| .|:::l
  |:::l.  l:::::::::::::゚:::::::::::::::l l:::|

唯「ふぅー、すっかりあずにゃんも私に懐いてきたねー。嬉しい限りだよ」

梓「……そうですね」ジトー



唯「あー、あずにゃん可愛いよー!!あ、そうだあずにゃんもやる?このゲーム?」

梓「私はいいです!!!」ブスー

唯「な、なんでそんなにふてくされてるのさ…」

梓「自分の胸に聞いてみたらどうですか?まったく、毎日毎日。そんなゲームなんかに夢中になって……」

紬「あら。もしかして梓ちゃん?最近唯ちゃんがゲームに夢中でかまってくれないから嫉妬しちゃったのかしら?」クスッ

梓「そ、ひょんなことありません!!!」ガタッ

紬「うふふ……」

唯「なんだー、あずにゃん。かまってほしいなら言ってくれればいいのにー」

梓「い、いやいや!そんなこと思ってませんから!!」

唯「いいんだよ?遠慮しないで。じゃあまずは頭を撫でてあげようかなー?」

梓「うぅ…///」
         : : :: : : : : : : : : : : : : : :\
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ヽ: : : : : : : : : : : : : : : へ
| えへへ~     .| : : i: i : : : : |: : : : : : : 二ニノ
| あずにゃん   | : :/i | : : : : | V: : :i: : :∧     な で り

|   にゃん     | V ヽi : : :ノ:i  V : |:: : : :ヽ       な で り
|     にゃん♪ |V  V: : /i/   V:i: : :i\i  ニニ
ヽ_   ____/V   V リ  __ V ─── <コ‐┐
   ∨: : : : : : : : : :V ,.=≠     ´::::::::::::::::::::::::::::::ゝゝi }、
    /: : : r:i: : i : ヽ///,     /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::し ))
    /: : : :ヽ:|:: :|: : ∧   r‐/::::::::::::::::::::|::|::::::::::::|:::::::::::::::::::ハ
    i:∧} : : i : : : : : .i   ヽi::::::::::/:::::::/i:::i::::::::::::|ヽ:::::::i:::::::::├ 、
    {/ ヽ/: : | : ト: i : ト /:::i:::::i:::::i:::::::/ V:::::::::::/ V:::::|:::::::::i::|:::i
      ノ \: : ヽ: : :  i:::::|::::|:::::|::::/  ヽ ト::::::// .V:::i:::::::::|:i::::|
       /  ̄ ̄  ヽ|:::::i:::::i:::::レ __  ヽ/ __ .|:::::::::i::|:::i  や、やめてください!///
      /ヽ       i:::::|::::|::::::|.弋ホテ    弋ホテi:::::::::.|:i::::|
     i  `、       |::::i:::::i::::::i  `~´////// `~´ |::::::::::i::|:::ヽ


唯「もう。あずにゃんったら。つれないんだからー。じゃあ今度はこれでどうだ!!」

梓「ちょっ…!///な、舐めないできださいよっ!!//」


                               i__/: : : : : : : i: : : : : : i: : : : : : : : : : : :ヽ    (⌒ ⌒)

                               ヽ─: : : : :/ : :V | : i : : : :ト、: : : : : : : : : : : :     \./
                        ぺろぺろ    / / : : 八 V/ i: |ヽ: : :.ト ヽ: : : : : : : : : : :∧
             (⌒ ⌒)     ────  、   ノ:./ : : : : : :〉   i.:| V: :|  V: : : : : : : :ヽ : : |
              \./    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ: i/: : : /: :/__   ヽi  Vi __ V i : : : : γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
                 ::.::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヽ: : : :i 彡テミ     V テミミ,V : : : : .|  今日はあずにゃんを       |
  γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ:::::::::::ト:::_::::::::::::\ i _    丶     _ ヾV: : : : |.        独占しちゃうよー♪  |
   |  ふぎゃっ              .|:i:::::::::::ヽ  i\::::::::::ハ//// }       //// / V: : : 乂____________ ノ
   |    な、舐めないでくださいっ  |::|:::::::::::::i ノ  ヽ::::::::i ̄ ̄ 、       `─ /: : :V: /: /} : : : i
   乂_____________ノ:::ト::::::::::::|   r彡V::::::ト 、   7 T" 7 ̄  / : : : :V: / i: : : : :|
           |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::| ̄ヽ .ヽ::::::|  yf///.V i:::::::ヽ ヽ ノ ノ   /: : : /: : : //: : .i: : i
           i::::::::::::::::::::::::::::::::i::::i:::i _   ヽi//、////  ヽj:::::::.i    ̄    /: : : / : : / : : : :i/:i : :|
          /:::i:::::::::::::::::::::::i::::i:::|:::| xテチミx //////-‐-、  i:::i ヽ  ___/:i: : / ─/: : : ノ/ .ヽ::|
          i::::|::::::::::::::::::::::::|::::ヽ //////// __/    i  i:::::L_ /i    i/      ` <、
          |::::i::::::::::::::::::::::::::::::∧/////   /      ノ  ::::::i  ヽ j    /        < ヽ、
          i::::::|ヽ:::::::i:::::::::::::::::::::ヽ、     {        /:::i:: ハ  `丶 /i    _ <"      i
          |::::::i ` >:::|:::::::::::::::::::_>、  `─     入 V \ヽ     /_<"           |
          i::::::|     >::::::::/   ニ\ ──  T  }   ヽ二ニニi                .i
          /::::::i     r─/  /     ヽ, _r 、 r─ 、 K  \  |          /     |
         /:::::::|     i 、ヽ i        ヽ    ゚ヽ     \ \  ヽ/         j      ) i


唯「あー私も久しぶりにあずにゃんとスキンシップしたら気分が高まってきたよ!!もう我慢できない!あずにゃん、聞いて?」

梓「な、なんですか?///」


                                ,'´ ̄ ̄` ,      ──  、
                     __        !.  好  .l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::へ
                 : : : : : : : : : : : : : : ヽ   !   き   l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: \
      -―‐-    ./ . : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :l   だ   l::::::/:::::::::::i::i::::::::::::::::::::::::::::::::二ニ-
   /       \/: : : : : : : : : :: : : : : : : : : : : : : ∠   よ   l::::/::::::/┤i::::::::::::i::.::::::::::::::::::::ヽ    ,'´ ̄ ̄ ̄`',
  /      あ     ヽ: : : : : : : : i: : : : : : : : : : : : : : : :\    /:::/::/  .i:i:::::::::::i i::ト::::::::i::::::::::ヘ    !        l
 ./      . ず      ',: : : : :: : : |: : : :| : : : : : :\ : : : :  ̄ ̄ :::/    .i|i:::::::::::| i:i ヽ::::|::::::::::::i   l にゃ…  l
 '       に     . : : : :i: : :i : : : ト: : : : : i:| ヽ:ヽ : : : へヽ::|  ⌒  リ V::::/ |:i   i::::i::::::::i::ヽ∠        l
 |          ゃ      |: :.i: : :| : : |: \i \: : : |リ  rヽト: : : : ヘ:::::i       ヽ/ リ⌒ .|::.:!:::::::|:::! \\ ___/
 |         ん       |: :.i: : :| : : |:\ノ  ヽ.: : i   ,x=x : : |: |::.|.xミテx、///////     レ|:::::::i:::::|
 l   大            | : i: : :| : : ヽ/─  ヽ: |  ´弋リ V: : !:|:i  ////////// ィ≠ミェ i:::::::::|/::i
 |   好            | : |.: : i: : : V  ___  ヽi       ∨::|        ` ///// ` |::::::::|:::::|
 |   き       .     | ヽi: : :| : : : |,ィてリ,      、 //// i:::i               i::::::::|:::::i
  '                ': : ヽi: : i : : : i 込ツ           :::|     __        /::::::i::i:::::::|

              ': : : :ヽi: : |: : : .| ////    _ 、   /::::::::i 、   ( ノ       /::::::./ .i:::::::i
    \       / i : : : : :ヽ: i : : : i        く_    /::::::::::i \          < i::::::/  |:::::::|
       ‐--‐ iヽ: :i: : : ヽ トヽ ト : : |i丶  ____ /  ト:::/ / {::::::::::フ⌒ヽ< i } i::::/  !:::::::!
            ヽi / ヽi ヽヽ: :|リ     /ヽ   ̄フヽi    `ニ 二´ >.- ヽヽ/ヽ  . |:::::::|
             /ヽ\     丶i      i   \    ヾ ww入_<      ヽ \ .i:::::::|



唯「これが私の気持ちだよ、あずにゃん」

梓「ゆ、唯先輩……!」

梓「う、嬉しいです……。だって、その……。わたしも唯先輩のこと、す、好きでしたから……」

唯「えへへー。じゃあ私たち、両想いだね!!」

梓「そ、そうですね///」

唯「じゃあ、私たち付き合っちゃおうか?あずにゃん」

梓「は、はい!!喜んで!!!」

イチャイチャ


紬「……このゲームの役目はこれでおしまいね」スッ

紬「さて、次の計画を実行に移さなきゃ」


~翌日~

澪の家

ピンポーン


澪「はーい」ガチャ

宅配便業者「ちわー。宅配便でーす。お届け物を届けに来ましたー。ハンコお願いしまーす」

澪「はい…。(お届け物……?何だろう……?)」

宅配便業者「ハンコアリアトーシター。では失礼しやーす」バタン

澪「何の荷物なんだろ…? どれどれ……。…ん?商品名『リツプラス』……?」




第14話

「誕生日!!」


7月2日 今日はムギちゃんの誕生日です!


              ´       `丶、
           /           ⌒\
                /             ヽ
         / // /{      ヽ
          │ /⌒|        i |      : :'.
        | {{/`⌒|    |  | |        : :|
        | i|   |    | <⌒V   | . : : : :|
        | i|f^うハV八  ト \ }  ′: : : : :}
        l リ ヒソ   \|_∨Ⅳ // : : : : : /
        | : i "      う心∨ /∧ : : : : /
        | :八  '   ヾン/  /ノ: : : : /:|

         / : ノ\` ー  "/ ./: : : : : :/: :|
.      / /  _`ニエア  / . : : : : :/: : :|
.     / /  ∠  ∠,, イ  /: : : : : /i: : 八
     { /{ /        / :/: : : : : /: i: : : : ヽ
.      \ ∨⌒\.     / :/: : : : : : : : : : : : : : :'.
      ∨        / :/: : : : : : : : : ∨: : : : : '.
       /      }   / :/: : : : :ハ : : : : :',: : :!: : :i
.      /        ′: : : : : :/: : : : : : : : : : j : : |
     /      /  { : {: : : :/: : : : :\: : : ∨ : : |
.    /      /   八  ∨ / : : : : : : : ヽ: : : : : :ノ


部室


律「今日はムギの誕生日だな!」

梓「ムギ先輩、おめでとうございます!」

紬「うふふ、ありがとう」

唯「今日は誕生日なんだからムギちゃんはゆっくり座ってていいよ~。 お茶菓子の準備とかは全部私たちがやるから!」

紬「なんだか悪いわ~」



澪「いつもお茶菓子の準備してくれてるわけだし、今日ぐらいはムギにはゆっくりしてもらわないとな」

律「そうそう。ムギにはいっつも世話かけっぱなしだからなー」

紬「もう、私は好きでやっているだけだから そんなに固いこと言わなくてもいいのに……」

唯「いいのいいの。とにかく、今日はムギちゃんはゆっくりしてていいからね。今、紅茶淹れるね」コポポ

梓「ケーキもちゃんと用意してありますよ」ジャーン

紬「うふふ。みんな、ありがとう」



紬「じゃあ早速、みんなでケーキを食べましょうか」スッ

唯「あー!!待ってムギちゃん! ケーキも私たちが切るからムギちゃんは何もしなくて大丈夫だよー」

紬「そ、そう?じゃあお願いするわね」

梓「切り分けました。ムギ先輩、どうぞです」コトッ

紬「ありがとう。ついでと言っては悪いんだけど、誰かフォークを取ってくれるかしら」

律「いや、その必要はないぜ。私たちがあーんして食べさせるから」

紬「そう。それなら大丈夫ね~」




紬「……えっ?」



紬「…えっ!!? り、りっちゃん、今なんて……」

律「あー、聞こえなかった? 今日は私たちがムギにあーんして食べさせるから今日はムギはゆっくりしてていいよって言ったの」

紬「さ、さすがにそこまではしてもらわなくても」

澪「遠慮するなってムギ。ほら、あーんして」

紬「遠慮とかそういうのじゃなくって! えと、あの……」

澪「……ムギは私に食べさせてもらうのが嫌なのか?」ウルウル

紬「そ、そういうわけじゃないけど…」

澪「ならいいじゃないか。ほら、あーん」

紬「……あ、あーん///」パクッ

紬(食べさせてもらっちゃった///)モグモグ



唯「私も食べさせてあげるねー。ムギちゃん、はいっ、あーん」

紬「あーん///」

紬(い、意外とこういうのもいいかも///)モグモグ


梓「あ、ムギ先輩!お口の横のところに食べかすがついてますよ!」

紬「! まあ大変!誰かティッシュを取ってもらえるかしら」

梓「それには及びませんよ。私が拭いてあげますから」

紬「そう?じゃあお願いしちゃおうかしら」



梓「分かりました。では失礼します」ズイッ

紬「えっ……?あの梓ちゃんティッシュは…?ていうか顔ちk」

梓「失礼します」ペロッ

紬「!!?(し、舌で拭くの!?///)」

梓「ふぅー。これでバッチリです!なんとか綺麗に拭き取れました」

紬「あ、ありがとう///」ドキドキ



律「てかこんなことぐらいしか できなくてごめんなー? 本当はもっとちゃんとしたプレゼントとかを用意しておくべきだったんだけど…」

紬「い、いえ!!プレゼントなんかなくても私は十分満足してますから!!」

紬「むしろ今日はみんなありがとうね? 私のために、こ、こんな体を張った///」

律「ムギを喜ばせるためなら何だってするつもりだったからな!大変だったんだぞー、澪や梓を説得するの」

澪「だー!!!その話はおしまい!! そんなことより 改めてムギの誕生日を祝うぞ!」

唯「うん、そうだね。じゃあせーのでいこっか!」

唯律澪梓「せーのっ!!」

唯律澪梓「ムギ(ちゃん、先輩)お誕生日おめでとう(ございます)!!」

紬「み、みんな……!ありがとう!」


・・・・・・

翌日


律「うぃーっす。 みんなやっとるかねー」ガチャ

梓「律先輩大変です!!ムギ先輩の様子が……!」

律「!? ムギに何かあったのか!?」

唯「いや、それが……。ちょっとあんなことになってまして…」



紬「はい、澪ちゃんケーキよー。あ~ん♪」

澪「わ、わたしは大丈夫だって!!」

紬「遠慮しなくていいのよー? ほら、あーんして?」

澪「……あ、あーん///」パクッ



律「おおぅ……。ムギもあーんプレイに目覚めてしまったか…」

梓「何ですかあーんプレイって」

紬「明日は梓ちゃんたちにもやってあげるわねー?」ニコニコ

律「どうしてこうなった」


唯「…何はともあれ!ムギちゃんおめでとうだよ!!」

梓「全然まとまってませんから!!」


ムギちゃんおめでとうございます


第15話

「七夕!」


七月七日 七夕です!



                          rー 、
                   _   (⌒ヾ-、::\
          ∧       /::::::ヽ/⌒,へ:::ヽ\:|
           |::::',     ∠/⌒ フ:::/  `V  !
     __  {:::::} ,イ      /|:::/
      \:::::ヽ、V/::/     /   V ,イ二ニ=、
       \;;;;;;水;;ノ   ,ィ' _ rーー(⌒ヽ⌒ヽ、

       <二ヽ|/   /ソ" ̄ /::::/ \::::\;;;;;`、
           |  / "     |/   iヽ:::::| \:|
<⌒ヽ     ,.イ レ'/     __      i \|  !
  \::::\  /:/ /ソ    ,ィ /:::::::::::ヽ   | ̄ |

<⌒ヽ:::::)/::::/ //   // (::::::/ ̄ `\ | 目|
  \::::\{:::ノ //  {;;,イ⌒i:::::\      | 指|
    \:::::Y // r-く   |:::::|\:::::\    | せ|
       ̄|///(::::::\ l:::::|  ヽ::::::',     .|__|
       /7"  i\:::::ヽV    \|
     //   | ̄ |`V

     //     .| 武|
    ,'/     | 道|
    |.|     | 館|

    |.l     .|_ |



音楽室


律「よーし、七夕といことで 今日の練習は中止!!みんなで願い事を考えるぞー」

澪「なんでそうなるんだよ!」

紬「竹と短冊も買ってきたわ!!」ジャーン

梓「……いつのまに!」

律「だから皆、今日はもう観念して七夕を楽しめ!」



梓「……また今日もまともに練習できなさそうですね」グスン

澪「……そうだな」ガックリ

律「まぁまぁ、そんな落ち込むなって。澪も願いごと考えようぜー」

律「ハイ、澪。短冊」

澪「……じゃあ『今すぐ練習したいです』って書いていいか?」



律「……ふーん、澪はそんなお願いごとでいいんだー」

澪「…え?」

律「よくよく考えてみろよ。澪、七夕は一年に一回しか来ないんだぞ? それなのに今日今すぐ練習したいとかそんな限定的な願い事でいいのか?」

澪「確かに……、そうだな。わかった、律 私もちゃんと願い事考えるよ」

律「そうこなくっちゃ!……悪いな、梓。 澪はもらってくぞー」

梓「あぁ澪先輩まで律先輩たちのサイドに……」



唯「あずにゃんもこっち来ていいんだよー?楽しいよー?」

梓「い、いいですよ。 私は一人で練習してますから」

唯「えー…… あ! じゃあ私があずにゃんの分のお願いごとも書いてあげるね!」

梓「……勝手にしてください」

唯「じゃあ本当に書いちゃうよ! えーと…『毎日ネコミミをつけたいです』……っと」

梓「!!ちょっ!何ですかそれ!私そんなこと思ってません!!」

梓「貸してください!私が自分で書きます!」バッ

律「おー、梓もこちら側へようこそようこそ。 まぁ座れー」

梓「あっ……」



梓「結局こうなるんですよね……」

紬「でも私、こうしてみんなでお願い事考えられて嬉しいわ♪」



唯「……書けたよ!」

律「おー、随分早いなー。ちょっと見せて」

唯「いいよー。 はいりっちゃん」

律「どれどれー? ふむふむ、『ムギちゃんのお菓子がもっとたくさん食べられますように』……?」

律「って今の水準じゃまだ満足してなかったのかよ!」

紬「ごめんね唯ちゃん、明日からお菓子もっとたくさん持ってくるね?」

唯「やったー!もう願い事叶っちゃったよ」

梓「まだ竹にかけてすらいませんけどね」



澪「いいなー…」ブツブツ

律「澪はなんて書いたの?」ヒョコッ

澪「!!ダ、ダメ!! 私のは見せないからな!」

律「……あー、あんなところに澪の大好きなうさぎさんがー!」

澪「えっ!?」バッ

律「スキあり!」サッ

澪「!!律!だましたな! 返せ!!」

律「やーだよん。さぁー、澪ちゃんはなんて書いたのかなー?どれどれ……」

短冊『体重が減りますように体重が減りますように体重が減りますように体重が……』

律「怖っ!! お経かよ!」



澪「……だって今年もまた太っちゃったんだもーん!」ワーン

律「だからといってあんなに書く必要はないだろ!」



唯「あずにゃんは何て書いたの?」

梓「! わ、私のもお見せすることはできません!」

唯「ブー、あずにゃんのケチー……あ!あずにゃんの後ろにムギちゃんが!」

梓「まったく、律先輩と同じ手は食いませんy」紬「だーれだ?」ガバッ

梓「!!!ちょっ!?えっ!?」



紬「さぁ唯ちゃん今のうちに!」

唯「わかったよ!スキありっ!!」サッ

梓「に"ゃー!!///ダ、ダメです唯先輩!読まないでください!」

唯「えー?どうしよっかなー?」ニヤニヤ

梓「明日からはいくらでも抱き着いてくれてかまいませんから!!」

唯「え!?ホント!?いいのあずにゃん!?」

梓「だ、だから短冊は返してください!あとムギ先輩もそろそろ手を離してください!」

紬「わかったわ」スッ



梓「はぁ……。まさかムギ先輩があんないたずらしてくるなんて……」

紬「だって願い事はみんなで共有しあった方が楽しいじゃない♪」



梓「そんなもんですかねぇ……。 まあともかく、唯先輩 短冊の方返してください」

唯「わかったよー。……ってあれ?確かここに置いといたはずなんだけど……?」

律「……『大きくなれますように』…か。ほーう?」ニヤニヤ

梓「!!! 律センパーイ!」ボカッ



律「いてっ!殴ることないだろー!」

梓「だって!ひどいですー!」ポカポカ

律「だからいたいって!!」

ギャーギャー


澪「まったく……。何やってんだか」

紬「うふふ……」



唯「ちなみにムギちゃんは何て書いたの?」

紬「私? 私はね、『女の子どうしがもっと流行りますように』って///」

唯「へ、へぇ~…」

澪「か、叶うといいな」


澪「……あとは願いごと見せてないのは律だけだぞ。律も見せろよ」

律「へっ…?や、ヤダっ!!」



梓「子供ですか……。まったく、私と澪先輩の願い事を勝手に見たんだから、律先輩だけ見せないのは不公平です!」

律「……笑わない?」

梓「プッ!急にしおらしくなってどうしたのさりっちゃん!アハハハ!!」

律「……じゃあ唯以外に見せるか」

唯「ゴ、ゴメンりっちゃん!謝るから私にも見せてー」

律「じゃあ、ハイ///」ペラッ



紬「どれどれ……『これからも私たち軽音部5人が仲良く過ごせますように』。……素敵ね!」


澪「なんだよ、すごく立派な願い事じゃあないか律。こういうのなら堂々と見せつけてくれていいんだぞ」

梓「そうですよ。律先輩にしては珍しくまともなこと書いてるんですから」

律「! なんだと中野ぉー!」

梓「きゃーたすけてー」

澪「やれやれ……」



紬「じゃあみんなの願い事も無事書けたことだし!竹に短冊をかけましょうか」

唯「うん!」


唯「……ってあれ?竹は?」

紬「あら……?確かにここに置いておいたはずなんだけど……」

律「部室の外に置いてきちゃったんじゃねーの?私ちょっと見てくるわ」ガチャ



律「……」

梓「…?どうしました律先輩?あったんですか?」

律「いやまあ あるにはあったんだけど……」

純「三期は主役になれますように、…と。あぁもう吊るすスペースがない!」

律「どんだけ吊るしてんだよ!!」



梓「てか純!勝手に私たちの竹使わないでよ!」

純「え……。そんなに言うんなら返すよ。ハイ」

律「この状態で返すなよ!」

唯「りっちゃんどうしたの……ってうわぁ!?」

澪「お、おばけの木かと思った……」

紬「す、すごい短冊の数ね……。これだけかければ本当に願い事も叶っちゃいそうね」



ダダダダダ……

律「な、なんだ!?誰かがもの凄い速度で階段を上がってくるぞ!?」

憂「私です!」キィーッ

唯「う、憂!? どうしたのそんなに慌てて!?」

憂「そ、それがね!け○おんの3期が決まったって!今、新聞で見て!」

純「!? ほ、ホントに!?こんだけ吊るした甲斐があったよ!」

律「ま、まさか本当に願い事が叶うとは……」


純「で、憂!?私のポジションはどうなの!? もちろん主役だよね!?」

憂「純ちゃん? ……あー純ちゃんはリストラだって」

純「」バタッ


おわれ


第16話「相合傘」



ある梅雨の放課後


ドザァァアアア!!!


律「うおっ!! 外すごい雨だな!」

澪「ほんと、滝のような雨だな……。そういえば、天気予報でも今日から梅雨入りしたって言ってたしな」


澪「さて、雨はすごいことになってるけど帰るとするか。お前も濡れないように気を付けて帰れよ、律」

律「……」

澪「……?オイ、律どうしたんだよ? 帰らないのか?」

律「……カサワスレタ」

澪「んなっ!!?」



澪「お、おいだって今日は一日中雨だって天気予報で言ってただろ!なのにどうして傘持ってこなかったんだよ!」

律「だって朝は雨降ってなかったし、それに今朝は寝坊して天気予報どころじゃなかったんだよ!私は悪くない!!」

澪「どう考えても悪いのはお前だ」ゴチンッ

律「あだっ」


澪「はぁ、まったくあきれた…。私も今日は予備の傘持ってきてないぞ」

律「何言ってんだ澪。予備の傘なんて必要ないだろ」

澪「え……?どういうことだよ」

律「こういうことだー!!」ガバッ

澪「!? ちょっ!何するんだよ律!!いくらなんでもこの傘で二人入るのは狭いだろ!」



律「えー、いーじゃん別にぃ。ちょっとくらい狭くてもさ」

澪「ちっとも良くない!エリザベスが雨で濡れちゃうだろ!」

律「……じゃあ澪は私が雨に濡れてもいいっていうのか?」

澪「自業自得だろ」

律「ひどい!!私にこの滝のような雨の中、服も靴も何もかも全部びっちょびちょになりながら帰れっていうのか!!?」

律「澪のオニ!アクマ!!」

澪「なんでそこまで言われなきゃいけないんだよ!」



澪「はぁ、まったくしょうがないなぁ……。次からはちゃんと傘持って来いよ。ほら、入れ」

律「みおしゃん……! ありがとー!!」ギューッ

澪「だー!!雨降ってるのに抱き着くな!濡れちゃうだろ! そんなことするなら本当に置いてくぞ!」

律「……もし置いていったらみんなに澪はオニアクマだって言いふらす」

澪「さて置いてくか」スタスタ

律「うわー!!冗談だから置いてかないでー!!」


・・・・・・

ザァー……

律「雨なかなかやまないな」

澪「そうだな……」

律「そういえばさ」

澪「なんだ?」

律「いや、こうして二人で同じ傘に入って帰るのっていつ以来だったかな……って思ったんだ」

澪「そういえば昔は雨の日はよく同じ傘に入って帰ってたかもな……」

澪「まあ、それも毎回お前が傘忘れてくるせいだったけど」

律「そ、そうだったっけ?ヨクオボエテナイナー」

澪「私はそのおかげで毎回 律にちょっかい出されてびちょびちょに濡らされてたからよく覚えてます!」



律「まあ細かいことはいーじゃんいーじゃん。昔のことだしさ。こんなに雨も降ってることだし、全て水に流そうぜー」

澪「上手いこと言ったつもりなのかもしれないけど 私はずっと忘れないからな」

律「やっぱりオニアクマだ」ボソッ

澪「何か言ったか?」ジロッ

律「な、なんでもないのよん? あ!あの水たまりでっけーな!琵琶湖なみにあるんじゃねーか!?ほら、見てみろよ澪!」

澪「露骨に話逸らすな!」



澪「……でも本当に大きいな。こんなに大きかったら通りづらいな、気を付けていかないと」

律「あー!!後ろから車がー!!」

澪「わひゃあ!!?」グラッ

律「ぷっ…!あははは!!うそだよーん。やーい、こけそうになってやんのー。あははは!!」

澪「りーつー……?」ジロォ

律「は……ゴメンナサイ」

澪「もう怒った!今度という今度は許さないからな!」プイッ



律「ねー、澪ぉー。ごめんってばぁー」ユサユサ

澪「……」プイッ

律「なぁー澪ー、許してよー。今度 澪が好きなバンドのCD貸してあげるからさー」ユサユサ

澪「……本当?」

律「あぁ、もちのロンだ!絶対貸すからさ!!」

澪「……じゃあ今回だけは特別に許してあげる。でも次になんか変なことしたら許さないからな!」

律「さっすが澪しゃん!! 心の友よー!」ギュー

澪「って言ってるそばから!こ、こら抱き着くなって!!/// まったく、もう///」


・・・・・・

唯「ふいー、やっと雨あがったねー。今日はもうアイス買いに行けないと思ったけど、よかったぁ」

憂「そうだねー。 ……あれ?あの人たちは…」

唯「? どしたの憂……ってあれは!

ミオー、モットソッチヨレヨー  チョッ…ソンナニヒッツクナヨー!///


唯「澪ちゃんとりっちゃんだ! もう雨止んでるのに相合傘とは…。仲良しですなぁ」

憂「ふふっ。本当だね」ニコニコ


律「澪しゃーん♪」スリスリ

澪「だー!!そんなに寄ってくるなぁー///!」


その後、雨が止んでいるのに相合傘していたのに気付いた澪ちゃんが 恥ずかしさのあまり気絶してしまったのはまた別のお話


おわる

第17話「律誕」


                -/⌒^:7ニ==- ミ、_

              /: : / : : /: :厶:\ヽ: :}\⌒ヽ
            /: : :.:/: /: :|/    ̄`⌒^'くリ: ハ
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           / : : : : ⌒| : l 小 V::ソ    r':ハ リ: :│
.          厶: : : 〈 ^(l: 人: |      、ヾン /: : :|
           厶イ \_|: : : N  ''      '' {: : : |    8月21日  今日は私の誕生日だぜ
           ∠:/: : |: : : |     ー ‐   八| : '
            /: : : |: : : ト         イ: : iV
              //{: : : : : |  `  ..__/|V| : リ
               ヽ八: :l‐┐r─┴ト、:| | :/
                  /7ヽ| /=ヘ.   | ト、|/
            _ . イ /| / ∧ハ /| |    、_
        /     ∨/∨ /「¨| ∨/ ∨     `ヽ
          /  /  く / { l/{ | | ノ/ /     / }

        {.  |  /|  しイl | |'J/ 〃夲癶夲∨ /


ピリリリリ!!



午前零時になり、日付が変わったことを示すアラームが部屋に鳴り響いた

8月21日が到来し、今年も幼馴染であるあいつの誕生日がやってきた

澪「おい、律ー。日付かわったぞ、起きろー」ユサユサ

律「んぅー…zzz……」

アラームが鳴り終わると同時に私は律を起こしにかかったが 全く起きる気配がない

少しゆする力を強めても、相当深い眠りに落ちてしまっているのだろうか、一向に瞼が開かれる様子はなかった

しばらくして、 私は律を起こすことを諦め椅子に腰をおろす

澪「まったく…。何が『仮眠とるから12時になったら起こして~』、だ」

そんな恨み言をつぶやきながら 私は気持ちよさそうに眠る幼馴染の寝顔を見つめる



澪「この分だとプレゼントあげるのは明日になりそうだな」

用意してきたプレゼントを握りながら独り言ちる

せっかく今日は泊まることになったんだから、日付が変わったらすぐに渡したかったのに…

律「……ムニャムニャ…zzz」

そんな希望もむなしく、ベッドの上に横たわっている本日の主役は 相変わらず夢の中の世界を満喫中のようであった

澪「はぁ……。私も寝るか…」

ため息を一つついた後、私は椅子から立ち上がり あらかじめ敷いておいた布団に寝転がる

澪「あ……電気消さなきゃ」

照明をつけっぱなしのことに気づき、私は布団から起き上がり スイッチを切りに向かった



澪「……」

しかしスイッチに手をかけた瞬間 少しばかり名残惜しいという気持ちがどこからか湧いてきた

澪「せっかく12時まで起きてたのに、このまま寝るのはなんか勿体ないよな…」

なぜこんな気持ちが湧いてきたのかは分からないが、少し考えたあと、寝る前に自分だけであいつのことを祝ってやることにした


なるべく音を立てないように注意しながら、私は再びベッドの上ですやすやと眠る幼馴染のもとへ向かう

澪「少し、緊張するな」

私は一度大きく深呼吸をした後、寝台上の眠り姫の耳元に祝福の言葉を囁いてやった

澪「ハッピーバースデー、律」

祝辞を述べ終えると、心なしか 律の口元が少し緩んでいるように見えた



澪「さて、今度こそ寝なきゃな」

私は再び立ち上がり、スイッチのもとへと向かう


スイッチに手をかけると、どこからか寝言が聞こえてきた

律「ん……みおぉ~……zzz」

澪「ふふっ…、まったく。明日また祝ってやるからな」

照明のスイッチの音が響いたあと 部屋には二つの寝息のみが 静かにこだましていた



りっちゃん誕生日おめでとうございます

第18話「たいふう!」


ある台風が接近中の日、学校から休校の連絡が伝えられる中、軽音部の部員たちは何故か音楽室に集っていた…。



ゴォォォォォォォォ……


唯「雨風が強くなってきたね……」

紬「えぇ……」

律「まったく。誰だよこんな台風の日なのに学校あるとか大嘘言ったのは……」

澪「お前だ!!」


澪「まったく。律がいけないんだぞ。連絡網きちんと回さないから……」

律「だってー、今朝はお父さんとお母さん、両方いなかったんだし仕方ないじゃーん!
  そんな状況下で私がきちんと起きてて連絡網回せると思うか!?」

澪「知らないよそんなこと!」


梓「はぁー…。そろそろこの辺も暴風域に入ったみたいですしねぇ……。しばらく帰るのは無理かもしれませんね」

唯「えぇー!? ってことは今日はもう帰れないかもしれないってこと!?」

梓「仕方ないでしょう。今回の台風は十年に一度ってくらい大型のものらしいですし」

唯「じゃあ今日はここに泊まることになるかもしれないってこと…?」

紬「それは由々しき問題ね……」



澪「確かに、ケーキとかしか食料がないもんな…。今日一日これだけで過ごせるのかどうか…」

紬「それに枕がないのも重大な問題だと思います、隊長!」

澪「ここでも枕投げするつもりだったの!?」

紬「だって…お泊まりと言えばやっぱり枕投げかなって」テヘッ

澪「そもそも枕投げするような気分にならないと思うけどな…」



律「てかそもそも布団がないのも問題だな。今日はここで雑魚寝かー?」

梓「ま、まだ今日は帰れないって決まったわけじゃありませんから……」

律「いーや!梓、帰れなかった時のことを考えて、今から寝る場所を確保しておかなければならーん!」

梓(…こういう時だけ無駄に部長っぽい!)

唯「でも寝る場所って言ったって……。そんなのあるの?そこのソファーに一人くらいなら寝られそうだけど……」

律「よくぞ聞いてくれた唯隊員! こんなこともあろうかと、実は音楽準備室に寝袋が3つほど、ストックしてあるのだよ!!」

唯澪紬梓「おぉー……」



紬「結構何でもあるのね、音楽準備室って♪」

澪「いやいや、どう考えてもうちの学校だけだから。てかどこから持ってきたんだよ……」

律「まあ細かいことはいーじゃんいーじゃん。これで泊まることになっても安心ってことだしな!!」

梓「ちょっと待ってください。寝袋は3つしかないんですよね?」

律「ああ。ちゃんと3つ取り揃えてるぞ!」

梓「で、そこのソファーに一人寝るとすると…」

唯「……あれ?ってことは誰か一人は床ってこと?」

律「…………そうなりますわね」

澪「全然安心じゃなかった!!」



律「よし!じゃあ誰か床で寝たい人!!」

澪「いるわけないだろ!」

律「えー、でも誰かが床で寝ないとな なわけだし……」

紬「じゃあジャンケンで決めるのはどうかしら?」

唯「ええー、それじゃつまんないよ」

梓「じゃあ唯先輩は何がやりたいんですか?」

唯「よくぞ聞いてくれたよあずにゃん! ここはババ抜きで決着をつけることを提案します!」

律「おっ、そっちの方が確かに面白そうだなー」

紬「トランプは私が持ってます!」ジャーン

澪(…さすがムギ!)



唯「よーし!じゃあ順番決めるじゃんけん、いっくよー!」

澪「って結局ジャンケンするんじゃん!!」



澪「…はい。誰が床で寝るかはジャンケンで決めような。ほらそこトランプ配らなーい」

唯律「えー」ブーブー

梓「ジャンケンの方が早く決まるし、いいじゃないですか。ほら、はやくやりますよ!」

律「ふっふっふー、残念だったな、みんな。このおまじないがある限り、私はじゃんけんに負けないのだよ!」グッ

唯「おー、手を組んでねじって手の間の隙間を覗き込むおまじないだね!よーし私も……」グイッ

澪「なんで説明口調!?」

紬「見えた! この手の形は…? ダイナマイト…?」

唯「ムギちゃん言っちゃダメだよ~」

紬「ごめ~ん」

梓(てか思いっきり反則技のような……)


澪「ほら、そろそろやるぞ。最初はグー!」

律「待って!もうちょっとで見えるから!」

澪「……最初はグー」スタスタ

律「あ!わかりましたすぐ始めます!すぐ始めるからそのグーの手を下ろして!!」



律「じゃあいくぞー。最初はグー!じゃんけんぽーい!」


・・・・・・



律「」

唯「りっちゃーん、お~い」ユサユサ

律「」

澪「かれこれ30分たったわけだけど……。まったくいつまでこの状態なんだ律は」

梓「まあ一発で一人だけパー出して負けたわけですし…。ショックが大きかったのかもしれませんね…」

唯「勝利のチョキ!!」

律「」



紬「みんなー、ケーキの準備ができたわよ~」

律「えっ?ケーキ!?」ガバッ

澪「あっ、復活した」

・・・・・・

ゴォオオオオオオオオオオオ


梓「…しかしほんとに雨が止む気配がありませんね……」

澪「どうやらここに来て台風の速度が遅くなってるらしいな。本当に冗談抜きで今日は帰れなさそうだ……」

律「ひゃぁ~ひゃいふうはんへはくなへはひひのに!!」モグモグ

澪「お前は食べながらしゃべるな!」

唯「本当だよねー。台風なんてなくなればいいのにねー」

澪「そして何故聞き取れる!?」



梓「しかしまさかここまで強い台風だなんて想像もしてませんでした」

澪「ムギの家とかならこんな台風でも安全そうだけどな」

紬「もう、澪ちゃんたら。私のうちはそんなに大層なものじゃないわ」

律「そういやムギの家って行ったことないなー。やっぱあれなのか?スゲーでかいのか?敷地は東京ドームくらいとか!」

紬「さすがにそんなに大きくはないわー。甲子園くらいかしら?」

梓(どちらにしろ相当大きいような……)



唯「執事さんとかもいるんだっけ?なんだか羨ましいなー」

紬「唯ちゃんだって憂ちゃんがいるじゃない♪」

唯「えへへ///そうでした///」

律「確かに憂ちゃんいれば執事なんて要らなそうだなー。というわけで憂ちゃんくれ!!」

唯「ダメだよ!憂はあげられないよ!」

律「じゃあアタッシュケースいっぱいのケーキと交換で!」

唯「うーん……?」

澪「いやいや、そこ悩むとこじゃないだろ」

唯「ってダメダメ!憂はそんなものとは交換できないよ!」

梓「まったく。唯先輩はいっつも食い意地はってるからそんなことで悩むようになっちゃうんですよ」

唯「ひょんなほとないほん!!」ムシャムシャ

澪「わかった。わかったからとりあえず食べながら喋るのはやめろ」



律「あっ!閃いた!」

紬「? どうしたの?りっちゃん急に?」

律「いや、こんな台風の日こそ安全なムギの家に泊まるべきなんじゃないかなって」

澪「……は? いやだって律、外はあの有様だぞ。いくらムギの家の人でもそもそも迎えにこられるわけが……」

紬「来れますよ?」

澪「来れるんかい!!」



唯「じゃ、じゃあ今日はムギちゃんの家に泊まれるってこと!?」

梓「で、でもムギ先輩の家って確か一ヶ月くらい前から予約が必要なハズじゃあ……」

紬「大丈夫よ~。今日はこの台風でちょうど予約のキャンセルが結構あったから」

律「! そうなのか!なら安心だなー!」

律「よーし!今日はムギの家に泊まることにけってーい!!」

澪「ムギ、本当にいいのか? こんな突然だけど」

紬「大丈夫よ、澪ちゃん!私にまかせて!!」


キィィィィン……


澪「あ、こんな台風のなか飛行機が飛んでるぞ…。大丈夫なのかな」

梓「……てかあの飛行機こっちに向かってきてません?」

律「てか明らかに近づいてきてるじゃねえか!! うわっ!!校舎とスレスレのとこ通ってったぞ今!」

唯「うわぁ!!こ、校庭に着陸したよ!!」

律「一体何が起こってるんだ…?」

紬「あっ、迎えが来たみたいね。みんな、行きましょ?」

唯澪律梓「……えっ?」



唯「えっ!!? あ、あの飛行機ムギちゃん家のなの!?」

紬「そうよ~。まあ私の家のものって言うよりは家そのものだけどね」

梓「い、意味がよくわからないのですが…」

紬「つまりあの飛行機が私の家の一つってことよ~。最近は学校から帰ったら毎日いろんなところを旅してるの♪」

澪「ム、ムギが言ってることが凄すぎてにわかには信じられない……!」

律「あっ、だから予約制なのか」ポンッ

澪「そしてお前はあっさり納得するな!!」



紬「さっ。じゃあみんなそろそろ行きましょ?」

唯律「はーい」スタスタ

澪「なんでそんなにお前らは普通の反応なんだよ!」

唯「えー?だってなんだか楽しそうじゃん?」

律「それに飛行機なんて滅多に乗れるもんじゃないしなー。しかもあれだろ?ファーストクラスとか体験できちゃうかもしれないんだぜ

!!」

梓「さ、さすがにそんなのはないような…。ね、ムギ先輩?」

紬「? あるわよ?」

梓「ってそれもあるんですか!!」


梓「はぁ……。何だか凄すぎて言葉が出ません…」

澪「私も夢なんじゃないかって思えてきた…」ツネー

律「みおー!!これは夢なんかじゃないぜ!!」バシッ!

澪「…ありがとう律。これが夢じゃないってよーくわかったよ」ニマァ

律「あ、あはっ。す、シミマセン」



律「よーし!気を取り直して!! みんな!ムギの家に乗り込むぞーっ!!」

律「…………ってあれ?」

唯「飛行機が……?」

梓「いなくなってますね」


澪「そしていつの間にか雨も上がってるな。どうやら台風がここにきてスピードを上げて通り過ぎてったらしい」

律「え、えぇー!? じゃあもしかして……」

紬「ごめんなさいみんな…。その、台風が通り過ぎたから予約キャンセルって話は無しになったって……」

律「やっぱりかーい!!」



梓「ま、まあでもこうして雨があがったわけですから。私たちもそれぞれ家に帰れば……」


ピンポンパンポーン

校内アナウンス『最終下校時刻を過ぎたので、昇降口の扉が自動ロックされました。
        校門の方も間もなく施錠しますので、校庭にいる学生方は速やかにお帰りください』

ピンポンパンポン


梓「」


唯「……だそうですけど」

澪「雨上がっても結局帰れないんじゃん!!」


律「あれ……?ということは私が寝るところは…?」


唯「床だね」

澪「床だな」

紬「床ね」

梓「床ですね」


律「」



純「…こうして軽音部にとって、今日の台風の日はいい思い出となりましたとさ」

憂「めでたし、めでたし♪」

律「めでたくねーし!!!」

おわれ

「一番くじ」

音楽室


ガチャ

律「ちょりーっす」

澪「やあ律。やっと来たか」

律「あれ?今日は澪だけか。今日何かあったっけ…?」

澪「何いってるんだ律。今日は一番くじ戦争の日じゃないか」

律「は…?せ、戦争……?な、何言ってるんだ澪。熱でもあるのか?」

澪「ああ!私は今けいおんの一番くじへの情熱に満ち溢れている!!」

律「は、はぁ?」

澪「よし、律。それじゃ早速行くぞ」

律「行くってどこにだよ」

澪「決まってるじゃないか。けいおんの一番くじを引きに行くんだよ。さあ行くぞ律!!」グイッ

律「強制的に連れてくつもりかよ!!」


律「でもその何だっけ……一番くじ?ってのはどこでやってるんだ」

澪「今回のはホビーショップとか、ローソンとかでやってるみたいだな」

律「へぇ…。おもちゃ屋さんだけじゃなくてコンビニとかでもやってるのか」

澪「ただ今回の戦争には一つ問題がある」

律「戦争って…。そんな大層なもんでもないだろうに」


澪「いや、一番くじを甘く見るな律!! 現に私は過去のくじで、沢山の犠牲者を目にしてきたからな」

澪「買い占められて引けなかった者、目の前で売り切れて引けなかった者、自転車が壊れてて戦地に赴けなかった者…
  過去にはたくさんの犠牲者がいたんだ」

律「いや最後のは犠牲っていうか自己責任だろ」

澪「とにかく!今回は開催店舗も少ないし激戦が予想される! ここで立ち話してる場合じゃない!行くぞ、律!!」

律「ってか何で私も行かなきゃなんないんだよ!澪一人で行けばいいじゃんか」

澪「馬鹿だなぁ。もし回数制限があるところに当たったら困るだろ? だから人数は多いに越したことはない!!」

律「現金なやつだ!!」

さてくじでも探してくるか


・・・・・・

律「…で?まずはどこに向かうんだ?」

澪「最初はここから一番近いローソンに行こうと思う」

律「ここから一番近いってなると…。あぁ、校門を出てすぐのあそこのローソンだな」

澪「いや、そこじゃない。そこは開催店舗じゃないからな」

律「え?じゃあどこだよ」

澪「隣の学区にあるローソンだ」



律「は?隣の学区…!?それって結構遠くねぇか?5kmくらいあるぞ」

澪「さっきも言ったけど今回は開催店舗が少ない。だから仕方ない」

律「でもなぁ…。自転車で行くにしても結構疲れるぜ…?」

澪「大丈夫だ。今日はパ…お父さんの車を借りてきてある」ジャーン

律「そういやお前免許持ってたっけ…(※4話参照)」



澪「というわけで早速向かうぞ律!!」

律「はいはい」


・・・・・・

澪「ふぅ…。流石に車だとわりとすぐについたな」

律「なんかいつも通りにしかみえないけど…。本当にくじなんてやってんのか?」

澪「くじの景品は見えないところに置いてあるかもしれない。ほら、行くぞ律」

律「あ、私も行くのね…」


ティンローン

店員「いらっしゃいませー」

澪「さて、くじはどこかなっと…」


曽我部「あ、秋山さん!?」

澪「そ、曽我部先輩!?どうしてここに!?」

曽我部「もう///私はもう高校卒業したんだから先輩呼びなんてしなくていいのに」

曽我部「私はけいおんのくじを引きに来たの。近くにやってるところここしかなかったから…。もしかして秋山さんも?」

澪「は、はい!私もです。」

曽我部「やだ凄い偶然ね///。 今日はくじ引きに来て本当に良かったわ」

曽我部先輩についての参考URL
http://dic.pixiv.net/a/%E6%9B%BD%E6%88%91%E9%83%A8%E6%81%B5


律「先輩はもうくじ?は引いたんですか?」

曽我部「私も今来たところだったの。それで、今から引こうと思ってたところなの」

澪「じゃあ曽我部先輩、お先にどうぞ」

曽我部「えっ?いいの?」

澪「先に来てたのは曽我部先輩ですし。それに後輩の私から先に引くなんてできませんよ」

曽我部「ありがとう秋山さん。じゃあ先に引かせてもらうわね」

曽我部「すみませーん!けいおんのくじ、5回お願いしまーす!」


・・・・・

澪「下位賞ばかりでしたね…。残念でしたね…」

曽我部「ううん。私、引けただけで満足だから」


曽我部「さあ次は秋山さんの番よ。上位賞当たるといいわね」

曽我部「じゃあ私、そろそろ行くわね?今日は会えて嬉しかったわ。またね秋山さん、それに田井中さんっ」

ティンローン

店員「ありがとうございましたー」



律「行っちゃったな。あー、相変わらず何か生徒会長っぽい雰囲気は健在だなー」

澪「まあそれはともかく。曽我部先輩の分まで、上位賞当てるぞ!! すみません、けいおんのくじください!」

店員「あー、けいおんのくじなんですけどね。さっきの方が買った分で売り切れてしまいました」

澪「え」



律「ありー…。澪、残念だったな…」

澪「次…」

律「え?」

澪「こうしちゃいられない!次行くぞ、律!!」ガシッ ダッ

律「ちょっ!? うわぁ!!」


・・・・・・

律「ハァ…ハァ…。あんな強引に引っ張ることないだろ。まだ腕痛いぞ」

律「てか次って一体どこ行くんだよ…。もう近くのコンビニではやってないんだろ?」

澪「今度は百合ヶ丘駅にあるデパートに行く」

律「は?駅…?てか百合ヶ丘って桜ヶ丘の隣駅の?」

澪「そうだ。そこのデパートの7Fのホビーショップでくじを取り扱ってるらしい。そこに向かうぞ」

律「確かあのデパートってめちゃくちゃ大きかったような…。ちっちゃい頃私も行ったことあるけど聡とか迷子になってたし」

澪「デパート内の案内板とか見れば大丈夫だろ。行くぞ!!」

秋山澪FCの創設者でストーカー紛いのことをしていた方ですね

で、ラストワン賞は誰が…

しえん!!!




デパート店内

律「うひゃー…やっぱ広ぇー……。さすが県内有数のショッピングセンターだけあるな」

澪「よし、じゃあ早速7Fに向かうぞ。えーと、エレベーターはっと…」

律「あ、エレベーターならデパートの入口の案内図に場所が書いてあったな。こっちだ、ついてこーい」


5分後

律「まよった」

澪「うぉおおい……。何やってるんだよ…」

律「確かこの辺だったはずだったんだけどなぁ…。さっきのとこ左だったかな」

>>701
ラストワンのことすっかり忘れてたw
かなり無理がありますが、後で曽我部先輩の家に送られたということでw



和「…あら?澪と律じゃない」

律「和!? どうしてここに!?」

和「私は7Fの書店に用があってきたんだけど…。澪たちは?」

澪「ああ。私たちはくじを引きにきたんだ」

和「くじ……?福引みたいなものかしら。なんだか澪も主婦っぽいところがあるのね」

澪「いやいや福引なんてそんな生易しいレベルのものじゃない。これは戦いなんだ」

和「そ、そうなの…。なんだか大変そうね」


律「で、ちょうど私たちも7Fに行こうとしてたところだったんだけど…」

和「あら、そうだったの。じゃあ一緒に行こうか?」

澪「本当か!?ありがとう和!」

和「確かエレベーターは…あっちの方にあったはずね」



5分後

和「あれ?さっきいた場所に戻ってきたわね」

澪「和でしても迷うとは…」

律「私が迷うのも無理ないなっ」

澪「んなこと堂々と言ってる場合か!!」

和「店員に聞いた方が早いかもね。すみませーん!」


・・・・・・

7F

澪「はぁ…。やっとついた…」

律「エレベーターも凄い混みっぷりだったな…。みんなくじ目的だったりして」

澪「! こうしちゃいられない!行くぞ律!!」ガシッ

澪「またな、和!!」ダッ

律「だから腕を引っ張るなってのぉおお!!」


和「……本当になんだか大変そうね」



澪「よし!ホビーショップはここだな!」キキィ

律「うぶっ!! 急に止まるなよ!」


澪「ごめんごめん。それはともかく!今はくじだ!!」

澪「すみません!けいおんのくじください!」

店員「あー、けいおんのくじなんですが、ついさっき買い占められた方がいまして…」

澪「え」


しえん!!!!


話は変わるけど、『リツプラス』のイラストがあったんですね
知らなかったなぁ…


・・・・・・

澪「バカな……。まさか二連敗を喫するとは…」

律「みおー、もう諦めようぜ。どっちにしろ市内ではもうやってる所ないんだろ?」

澪「いや、まだ市外がある」

律「市外…?隣の市まで行くってことか?」

澪「そういうことだ。さあ行くぞ律!!」

律「すごい執念だなオイ!」


>>707
探してみたら昔はリツプラスの動画もあったみたいだね 今はもう消えちゃってるみたいだけど
いずれにせよ澪ちゃんにリツプラス遊ばせてみたいw



澪「次の店は結構遠いところだな……。すまん律、カーナビつけてくれ」

律「カーナビ? あっこれか」ピッ

カーナビ「ウィーン」

澪「目的地を入力してっと……」ピッピッ

澪「よし。これで大丈夫だ。さあ行くぞ律」

律「へいへい」


・・・・・・

律「なーみおー。もう結構走ってるけどいつ着くんだー?」

ポンッ モクテキチマデアト10キロデス

澪「…あと10キロくらいみたいだから20分くらいかかるかも」

律「えぇー!? そんなかかるの?」

澪「仕方ないだろ。今回は開催店舗が少ないんだから」

律「……じゃあ着くまでカーナビであそんでよ」ポチッ

澪「おい。あんま変なボタン押すなよー?」


律「わーてるって」ポチッ

カーナビ「ポンッ ユーモアモードを起動します」

澪「言ったそばからユーモアモード押してるし…。こら律。目的地に着けなくなるからやめろ」

律「えー…。じゃあこの冷静モードってのやってみるか…」ポチッ

澪「冷静モード……?そんなのあったのか」

律「そんなのあったのかって、これ澪ん家のカーナビじゃんか」

澪「パパの車のだからあんまり触ったことないんだよ。でもまあ冷静モードなら大丈夫……」

カーナビ「ポンッ さっきの道左でしたけど直ちに影響はありません」

澪「じゃなかった!!」


澪「ああ、さっきの道左だったってことはUターンして戻らないと……」

律「直ちに影響ないって言ってるし大丈夫じゃねーの?」

澪「道の場合はそうも行かないだろ。まったく変な機能ばかりだな、このカーナビは」

カーナビ「ポンッ イライラするのは運転に良くありません。冷静さを保ちましょう」

澪「余計なお世話だよ!」


澪「まったく…。もう普通のに戻すぞ」ポチッ

律「ああん。結構面白かったのに…」


澪「運転者にとってはいい迷惑! …よし。そんなこんなしてる内にもうすぐ着くぞ」

律「……今度こそくじ引けるといいな澪」

澪「律……! 応援してくれるのか!」

律「そして当たった景品をお宝鑑定団に出してお金をババーンと!」

澪「売・り・ま・せ・んー!」


・・・・・・

澪「着いた!」

律「ひょえー…。この辺は初めてくるなー…。なんだか新鮮」

澪「よし、じゃあ早速くじを…」

律「あっ、澪!あそこに楽器屋さんがあるぜー!!行こー」グイグイ

澪「今はくじが先!!」


ティンローン

澪「くじあるかな……」

曽我部「いらっしゃいま……って秋山さん!?」

澪「うぇえっ!? そ、曽我部先輩っ!?ど、どうして!?」

曽我部「私ここでバイトしてるの。それで今日はバイト前にくじを引きにいってたんだけど……」

律「す、すごい偶然だな……」


律「でもここも開催店舗なんですよね?何で曽我部先輩はわざわざ私らの地元まで来たんですか?」

曽我部「えっ?ここは開催店舗じゃないわよ?」

澪律「えっ」


澪「えっ、だっ、だって先輩、このサイトにはここが開催店舗って……」

曽我部「ああそのサイトね。そこは古い情報とかがたまにそのまま載ってたりするから……」

澪「そ、そんなぁ~……」ガックリ

律「澪……。くじの代わりにこの当たりつきのお菓子買ってやるから泣き止めって」

澪「そんなんじゃやだっ! 私はくじが引きたいの!」

曽我部「秋山さん……」


曽我部「…そうだ! 秋山さん、ちょっとそこで待ってて」

澪「……?」グスッ


・・・・・・

数分後


曽我部「秋山さん!朗報よ!!」

澪「えっ…?」

曽我部「いま店長に確認してみたら、この近くの○△町のローソンでくじやってるって!!」

澪「ほ、本当ですか!!?」ガバッ

曽我部「そこは最近できたとこだからサイトには載ってなかったみたい。しかもまだ沢山残ってるそうよ!」

澪「!! ありがとうございます先輩! よし、律。行くぞ!!」グイー

律「どわぁああ!!だから張り切りすぎだってのぉ!」


ティンローン


曽根部「……くじ引けるといいわね、秋山さんっ」


澪「よし!○△町に急行だ!! しっかり捕まってろよ律!」ブオーン

律「おい!ちゃんと制限速度は守れよ?」

澪「分かってるって。…待ってろよ、一番くじ。今度こそ決着をつけてやるからな!!」


・・・・・・

○△町 ローソン前駐車場


律「澪のやつくじ引けたかなー」

澪「律!!くじ引けたよ!」ドッサリ

律「ってめちゃくちゃ引いてるし!!」



澪「この日のために沢山貯金してたからな///。おかげで欲しいのも手に入ったし」

律「どれ?何があたったのか見せて」

澪「!! そ、それはダメ!」

律「あ、澪。バックミラーに何やら黒い影が!」

澪「ひっ!!?」

律「スキあり!」バッ

澪「あっ、こら律。返せ!」

律「見るだけだってー」ガサゴソ


律「あ…///こ、これは…///」

澪「///」

律「私と澪のフィギュア…///」

澪「これだけはどうしても当てたかったんだ///。ほ、ほら幼馴染だしなっ」

律「…みおしゃーん!!」ギューッ

澪「うわぁっ!こんなところで抱きつくなっての!///」

澪(今日は大変だったけど…無事にくじ引けてよかった!)


カーナビ「…ポンッ 律澪は正義!」


おわり




ちなみにどうでもいい話ですが、>>1は13回引いてA、B、F×2、H×2、I、J×6という結果になりました
ただJ賞6つのうち4つ唯を引くという凄まじい引きをしてしまいましたがw


「ハロウィン」


放課後の音楽室


紬「そういえば、今日はハロウィンね」

唯「あー、そういえばそうだねー!! 10月31日!」

紬「パンプキンケーキ持ってくればよかったかしら?」

唯「今日のケーキもおいしいし大丈夫らよ~」モグモグ

唯「あっ!そうだ! ムギちゃん、ちょっと待ってて」ガチャ バタン

紬「?」


数分後


ガチャ

唯「ムギちゃん、トリックオアトリート!!」←ブタの着ぐるみを着ている

紬「あ、仮装パーティーね♪」

唯「へっへっへー。お菓子くれないといたずらしちゃうぞー?」

紬「いやー、クッキーあげるから許してー♪」

唯「わーい!!」ヌギッ モグモグ


唯「…あれ?これじゃいつもと変わらないね」

紬「え、お菓子あげない方がよかったのかしら」オロオロ

唯「いやいやそれは大丈夫です!!」モグモグ


紬「何か唯ちゃんの姿を見てると私も仮装してみたくなってきたわ」

唯「さわちゃんが作った衣装にハロウィン用のないのかな?」ゴソゴソ

紬「あっ、がぼちゃの服があるわ!」

唯「本当だー。さわちゃん本当に衣装つくり好きだよね……」

紬「ちょっと試しに着てみるわね」ゴソゴソ



紬「どうかな?」クルルッ

唯「わー、凄く似合ってるよムギちゃん!!かわいい!」

紬「えへへー///」

唯「よーし、ここまで来たら今日はみんなを驚かせてあげようよムギちゃん!」

紬「楽しそう! 私、ハロウィンの日にみんなを驚かせるのが夢だったのー♪」

紬「で、でも唯ちゃんはその恰好でするの?」

唯「あっ… ちょ、ちょっと着替えてくるね!」



・・・・・・

唯「じゃーん!魔女の服でーす!」

紬「わー、似合ってる似合ってるー♪」

唯「あとはみんなを驚かせるだけだね!」

ガチャ

唯紬(来た!!)



梓「すみませーん、ちょっと遅れまし……」

唯紬「あずにゃん(梓ちゃん)!! トリックオアトリート!!」

梓「た……ってえぇっ!?」


唯「ほらあずにゃーん。お菓子くれないと悪戯しちゃうぞー」

梓「ちょっ…!?お菓子?…な、何なんですか一体!?」

紬「今日はハロウィンでしょ?だからみんなを驚かせることにしたの」

梓「また唯先輩が何か吹き込んだんですね……」



梓「でもお菓子って言われても……。あいにく私何も持ち合わせてませんよ」

唯「なにー、お菓子がないだとー? ならば!」

紬「梓ちゃんには悪戯ね!」

梓「い、悪戯…?」

唯「さああずにゃん覚悟して!」ガシッ

梓「ちょっ…!? そんな後ろから両脇掴んで! 一体何をするつもりですかー!」ジタバタ

紬「えい!」ムギュー

梓「む、ムギ先輩!!?」

紬「えへへ、私も梓ちゃんに抱きついてみたかったの」

梓(やわらかくてあったかい……)ポワー


紬「…はいっ、これで悪戯はおしまいよー」スッ

梓「あっ……(微妙に名残惜しい…)」

唯「そして私からもー、悪戯のプレゼント!」スチャッ

梓「にゃっ!? ……ってこれいつものネコミミじゃないですか」

唯「あずにゃんは今日一日それつけててね」

梓「いやですよそんなの!いくらハロウィンだからって……」

唯「えー…。じゃあさわちゃん特製のもっと派手な衣装のほうがいいかー…」ガサゴソ

梓「や、やっぱりネコミミでいいです!!」



紬「と、いうわけで仮装仲間が増えましたー♪」

梓「半ば強制的ですけどね…」

唯「次からはあずにゃんもトリックオアトリート、って言うんだよ?」

梓「はぁ…、まったく…。今日だけですからね」

ガチャ

紬「! 誰か来たわ! さあ梓ちゃん準備して!」

梓「は、はいっ」



律「うーっす……ってあれ?誰もいない……?」

唯「りっちゃん!!」ヌッ

律「うわぁ!!びっくりした! てか何だよその格好」

紬梓「りっちゃん(律先輩)トリックオアトリート!!」ヌヌッ

律「ってみんな仮装してるし!?」


しまったトリップつけっぱなしだった…


唯「さありっちゃん、トリックオアトリートだよ。お菓子か悪戯か…。好きなほうを選んで!」

律「お菓子なんて言われても…。あ、食べかけのアンパンならあるぞ。食うか?」ガサゴソ

梓「それは流石にいりませんよ…」


紬「ってことはりっちゃんにも悪戯ね」ジリジリ

律「お、おい…?悪戯って何するつもりだよ? てかみなさん…?ど、どうしてそんなに不敵な笑みを浮かべながら近づいてくるのかしら…?」

唯紬梓「突撃ー!!」コチョコチョ

律「ちょっ!わ、脇はやめろって!そこ弱いんだよ! ……あははは!!」



律「はぁ…ひどい目にあった……。お前らもうちょっと手加減してくれよ…」

梓「す、すみません。なんだか夢中になってしまいまして…」

紬「ごめーん」

律「まあいいけどさ。よし、私も仮装するとするか!」

唯「はい、じゃありっちゃん。さわちゃんの服の中からすきなの選んで」

律「えーと、どれにすっかなー……。あっ!このお化けの服っぽいパーカーにしよー!!」

梓「うわ……。なんというか凄い服ですね……。ちゃっかりフードの部分にお化けの顔まで書かれていますし……」

律「ふっふっふー。これならきっと澪もビビらせられるはずだぜ!!」

梓「やっぱりそれが目的ですか!?」



ガチャ

律「噂をすれば!よし総員戦闘態勢に入れー!!」

唯紬「おー!!」

梓「唯先輩とムギ先輩もノリノリだー!」



澪「やあ、おまたせ……?」

律「ウゥー…。みーおー……。トリックオア……」

律「トリートッ!!」クワッ

唯「おぉ!なんとも怨念がこもってそうなおねだり!」

梓「ちょっと律先輩!やりすぎですよ! そんなことしたら澪先輩は……」

澪「……」

梓「あれ?全然動揺してない……」



律「くっ……。この程度では澪を驚かすのに十分でなかったか…」

紬「りっちゃんの仇は私が討ちます! わーっ!わーっ!」←扉のカゲから驚かせているつもり

梓「バレバレだー!」



梓「はぁ……。澪先輩、すみません。こんなくだらないことに巻き込んでしまって……」

律「くだらないとは何だー!私は真剣だい!」

梓「なら練習もそのくらい真剣にやってください!」

律「そ、それとこれとは話が違うし?」

紬「私は毎日真剣にやってるわよ? りっちゃん、練習は真剣にやらなきゃダメよ?」

唯「そうだよりっちゃん。私も毎日いつでも白刃どりできるくらい真剣にやってるんだから!」

律「それのどこが真剣なんだよ…」



律「てかさっきから澪のやつ反応がないな」

梓「呆れかえってるからじゃないですか」

律「そんなことないよなー? なーみおー」ユサユサ

澪「」バタッ

唯「え!? 澪ちゃん!?」

紬「……気絶してるわ」

律「ってことはこいつ立ったまま気絶してたのかよ!」



唯「わー、澪ちゃん器用だね!」

梓「んなこと言ってる場合ですか! はやく保健室に連れてかないと……」

澪「……うん?」ムクリ

唯「あ、気が付いた!」

紬「よかったわー、澪ちゃん……。驚かしてごめんね?」

澪「…いいんだ。今日はハロウィンなのに警戒してなかった私も悪いし」



律「よーし!澪も無事復活したことだし!」

梓「練習ですね!?」

律「ちがーう! 澪にまだお菓子か悪戯かを決めてもらってないだろ?だからそれを決めてからだ!」

梓「まだやるんですかこれ……」

澪「ああ、そういえば私ハロウィンのためにお菓子持ってきたんだった」ゴソゴソ

律「え!? 用意いいなみおー!じゃあ早速みんなで食おうぜ!」

澪「ああ。はい、律。これが持ってきたお菓子だ」

律「どれどれー?」


律「……暴○ハバネロ」

唯紬梓「えっ」



おわる

第21話
「モンティ・ボックス」


音楽室


ガチャ

唯「みんなおはよー……ってあれ? 誰もいないや」

唯「みんなまだ来てないのかぁー……。ってややっ!?あ、あれはっ!?」


唯「まだ誰も来てないはずなのにテーブルの上にケーキがっ!!?」

唯「……ムギちゃんの忘れ物かな?」ジュルリ

唯「……誰もいないし、食べてもバレないかな……。うん、きっとバレないよね!」

唯「そうと決まれば早速! さてスプーンはっと……」イソイソ

律「ちょーっと待ったぁあ!!」ガチャ

唯「!? り、りっちゃん!?」

律「偶然見つけたケーキを一人占めしようとするなんてズルいぞ、唯! 私にも食べさせろー!!」



唯「えー!? このケーキ、私が先に見つけたんだよ? こういうのは早いもの勝ちなのです!」

律「じゃあ唯が部室に置いてあったケーキ 勝手に食べてたってみんなに言っちゃうぞ」

唯「うっ……脅すなんて卑怯だよりっちゃん……」


唯「わ、わかったよ……。りっちゃんにもケーキあげるよ」

律「よし、契約成立だな」



律「……そうだ!ただケーキ一緒に食べるだけじゃつまらないし、ここはケーキを賭けて一つゲームしないか、唯?」

唯「ゲーム? 人生あてもんゲームとか?」



律「のんのん。私がやろうとしてるのは、ただどの箱に当たりが入ってるかを唯が当てるだけの簡単なゲームなのだー!」

唯「おおっ。つまり当たりの箱を当てれば、ケーキは私のものってことだねりっちゃん!」

律「そゆこと。どうだ、唯。やるか?」

唯「受けて立つよりっちゃん!!」

律「そうこなくっちゃ! よし、じゃあルールを説明するぜ」


律「まず私がこの箱に当たりの紙を隠すから、唯はその中から一つ選んでくれ」ゴソゴソ

唯「あっ、それってこないだの一番くじのフィギュアの箱じゃん! しかも3つも!?りっちゃん羨ましい……」

律「いや。この私と澪のフィギュアの箱は澪から貰ったので、このラストワン賞の箱は曽我部先輩から貰ったやつだ」(※実質19話『一番くじ』参照)

唯「なーんだ。りっちゃんが当てたんじゃないのかー…。でも嬉しいよ!お小遣いピンチで引けなかった私の仲間がいて!!」

律「別にお金がなかったから引かなかったわけじゃないし!」


しえん!

あと、『薫が…』に辿り着きました



律「さて、話を戻すぞ。今からこの3つの箱の中に当たりの紙を一つ入れる。唯はこの中から当たりと思う箱一つ選んでくれ」

唯「そうは言ってもこの箱正面は透明になってるけどいいの?」

律「もちろん、箱を正面から見るのは禁止な! それで、当たりの箱を無事選べたら、唯の勝ちってわけだ」

唯「でも待ってくださいりっちゃん隊員! 箱が3つあったら当たる確率は3分の1だし、私は不公平だと主張します!」

律「まあ待て。まだルール説明は終わってないぜ、唯」


律「というのもお前が箱を選んだあとに、私が唯が選ばなかった残り2つの箱から一つハズレの箱を選んで中身を見せる」

律「その後、お前に自分が選んだ箱と残った箱を交換する権利を与える。どうだ、これなら公平だろ?」

唯「なるほど。それなら確かに公平だね」

唯「わかったよりっちゃん! この勝負、受けてたつよ!」

律「よし、じゃあ箱準備するからちょっと待ってろ」

>>747
菫ノートのことですか?
違ったらスマソ



・・・・・・

律「唯ー! 準備できたぞー!」

唯「いよいよ勝負の時が来たね。 えーと、どの箱にしようかな……」

唯「決めました! ここはやっぱりこのラストワン賞の私の箱にしたいと思います!」

律「むっ。自分のフィギュアの箱を選んできたか……」

唯「いや~。やっぱりここは自分を信じるべきかなー、と」

律「これは箱だけどな。まあいいや、じゃあ私もハズレの箱を一つ見せるぜ!澪の箱オープン!」パカッ

唯「おぉー……。澪ちゃんの箱はハズレだったのかぁー……。あぶなかったぁ」

律「よし。ここでお前に選択権を与える。お前が選んだラストワン賞の箱と、この私のフィギュアの箱。さあ取り替えるか?どうする?」

唯「え、えーと……? どうしよう……?」



唯「うーん……。取り替えても取り替えなくても確率は2分の1で一緒な気がするし……」

律「替えたらかえって外しちまう可能性もあるしなー?」ニヤニヤ

唯「うっ、それもそうだね。 じゃあこのままで……」

和「ちょっと待って!」ガチャ

唯律「!? 和(ちゃん)!?」


和「話は聞かせてもらったわよ、唯。これは箱を替えた方がいいわ」

唯「な、なんで!? てかどっちにしろ当たる確率は2分の1で一緒じゃあないの?」

和「違うわ。 この場合だと箱を替えた方が当たる確率が高くなるの」



律「え……? な、なんでだよ!替えても替えなくても、当たる確率はどう考えても2分の1だろ」

和「確かに、一見するとそう見えるわね。 でも、この場合は2分の1にはならないわ」

唯「どういうことなの和ちゃん!!」

律「いーや、絶対2分の1だろ! 箱2つのうち1つが当たりなんだもん!2分の1しかありえないって!」

和「うん。律の言うとおり、箱2つから『ランダムに』1つ選ぶ場合は確率は2分の1ね。でも、さっきもいったけどこの場合はそうじゃないわ」

律「ど、どういうことなんだよ和」

和「いまから説明するわ。唯、あなたは最初に3つの箱のうちから1つ選んだわよね?」

唯「うん。私のフィギュアの箱を選んだよ」



和「じゃあ唯、ここで質問よ。その時点で唯が当たりを引いている確率は分かるかしら」

唯「うーん……、3つのうちから1つ選ぶわけだから……。3分の1?」

和「正解。じゃあ今度は律。その時に唯がハズレを選んでる確率は分かるかしら」

律「バカにすんじゃねー! そんなの当然3分の2だろ」

和「その通りよ。つまり3つの箱から1つ選ぶと当然ハズレの確率の方が高くなるのは分かるわよね」

律「まあそれはそうかもしれないけどさ……。それが2つの箱を選ぶ時の確率と何の関係があるんだ?」

和「その答えは唯が箱を選んだあとの律の行動にあるわ」

律「へっ? 私の?」



和「そう。 ちなみに、律は唯が箱を選んだあと何をしたか覚えてるわよね?」

律「ああ。唯が選ばなかった箱のうちから一つ選んでハズレの箱を見せたぜ」

和「そう! その行動こそがまさに確率が2分の1にならない証拠なのよ!!」ビシイッ

唯「あ、頭がこんがらがってきた……。和ちゃん、分かりやすく説明して!」

和「よく考えてみて。例えば、最初に唯が当たりの箱を引いてると仮定するわね?」

唯「う、うん」

和「その場合、残った2つの箱はどうかしら?」

唯「そりゃあ、私が当たりを引いてるわけだから……。どっちもハズレだよ」



和「じゃあここで律に質問よ。律がその2つの箱から1つハズレを見せた場合、残った箱はどうなるかしら?」

律「そんなのハズレに決まってるだろ。2つのハズレから1つ見せてるだけだし」

和「唯、律。ここで何か気づかない?」

唯「気づくって? 別に当たり前の話をしてただけじゃあ……?」

和「いいえ。今言ったことが、当たる確率が2分の1じゃないことを示してるの」

唯律「な、なんだってー!?」



和「じゃあもう少し考えてみましょうか。唯、さっきの仮定のまま箱を替えたとすると、箱の当たりハズレはどうなるかしら?」

唯「えっとー、さっきは私が当たりを引いてた仮定だから……。はいっ!箱を替えたら必ずハズレになります!」

和「そうなの。言いかえれば、唯が最初に当たりを引いていた場合、箱を替えれば必ずハズレるってことね」

和「じゃあ今度は律。唯が最初にハズレを引いた場合を考えてみましょうか」
 
律「唯が最初にハズレを引いてた場合? てことは当たりの箱は残り2つのうちのどっちかに残ってるってことだな」



和「そうね。そこで律に質問よ。当たりの箱が含まれた残り2つの箱から、1つハズレの箱を見せたら、残りの箱はどうなるかしら?」

律「そりゃあ、絶対当たりの箱が残るだろ」

和「……何か気づかない?」

律「……あっ!この状態で箱を替えれば、必ず当たりを引けるな!」

和「その通りよ。つまり、唯が最初に当たりの箱を引いていた場合は、箱を替えれば必ず外れて、
  逆に最初にハズレの箱を引いていれば、箱を替えれば必ず当たるのよ!」

唯律「そ、そうだったのかぁ……」



和「ここまで説明すれば、なんで2分の1にならないか分かるわよね?」

律「もっちろん! ……わからん!」

唯「全然分かりません和先生!」

和「えー……。てかちょっとは考えようとしなさいよアンタたち……」



律「三度の飯より考えることが嫌いだー!」

唯「嫌いだー!!」

唯律「わーっはっはっ」

和「はぁ……。なんだか唯たちの将来が心配になってきたわ」



和「まあいいわ。じゃあ、続けて説明するわね。さっきも言ったとおり、箱を取り替えれば当たりとハズレが逆になるってことはわかったわね?」

唯「う、うん。確か最初に当たりの箱を引いていた場合は箱を替えればハズレになって……」

律「最初にハズレの箱を引いている場合は箱を替えれば必ず当たるんだったな」

和「そうよ。じゃあ、ここで確率のことを考えてみましょうか」

唯「確率……?」

和「さっきも質問したけど、最初に当たりの箱を引く確率は覚えてるかしら、唯?」

唯「えっと、最初は3つのうちから1つ選ぶんだから、3分の1だよ」



和「じゃあもう少し考えてみましょうか。最初に当たりの箱を引いていた場合は、替えれば必ずハズレるんだったわよね?」

律「! あ、ということはまさか!当たりハズレの確率も逆になるってことか!?」

和「その通り。つまり、最初に当たりの箱を引いていた場合、箱を替えると必ずハズレになるでしょ?」

和「だから箱を取り替えてハズレになる確率は3分の1×100%だから3分の1になるの」

唯「と、いうことは最初にハズレの箱を選ぶ確率は3分の2だから……」

和「同じように、箱を替えれば必ず当たりになるから、箱を替えれば当たる確率も3分の2×100%で3分の2になるの」

唯「な、なんてこと……!」

律「まさか箱を替えた方が確率が高かったとは……!」



唯「和ちゃんありがとう!ふっふっふ。てなわけで箱のほうは取り替えてもらうよりっちゃん!」

律「ズ、ズルいぞ! 和の話の前にお前替えないとか言いかけてたじゃねーか!」

唯「あれはまだ宣言前だからセーフ! さありっちゃん、取り替えて!」

律「……本当にいいんだな?替えて?」

唯「揺さぶったって無駄だよりっちゃん! 私の決意はトンちゃんの甲羅なみに固いんだから!」

律「……ファイナルアンサー?」

唯「ファイナルアンサー!」

律「本当にファイナルアンサー?」

唯「ファイナルアンサー!」

律「本当に本当にファイ」

和「早く替えてあげなさいって」グイッ

律「うわーん!」



・・・・・・

唯「よーし、じゃあ開けるよー」

律「好きにしろい!」

唯「悪いね、りっちゃん。りっちゃんの箱オープン!」パカッ

唯「……ってあれ? 当たりの紙が入ってない……!!」

律「ぷくくく……!! よっしゃああ!! 引っかかったぁああ!!」

律「残念だったな唯。当たりだったのはこのラストワン賞の箱だ!!」パカッ

唯「えぇーっ!!? ちょっと和ちゃん!話がちがうじゃん!」

和「私は箱を替えた方が確率が高いって言っただけよ。外れるときは外れるわ」

唯「そ、そんなぁ……。私のケーキ……」ガックリ



律「へっへーん。箱替えなきゃ当たりだったのに、余計なことしたな!」

律「てことでこのケーキは私のものだ! 遠慮なく食わせてもらうぜ!! いただきまーす」パクッ

唯「うぅー……。いいなぁ……」

和「ていうかそのケーキ誰のなのよ? まだムギは来てないみたいだけど。まさか盗み食いとか……」

律「ちがうって。ただ部室に来たら机の上にケーキが置いてあって、それを食べてるだけだから大丈夫だ」

和「それのどこが大丈夫なのよ……」


和「まったく……。そんなことばかりしてるといつかバチが当たるわよ」

律「そんなことあるわけないって~。和は心配しすぎなんだよ」

和(律が気にしすぎなだけな気がするわ……)


ガチョ

紬「みんなー、遅れてごめ……あっ!りっちゃんそのケーキ……!」

律「あ、あれ?やっぱり食べちゃダメなやつだった?」

紬「食べちゃダメというか……。実はそのケーキ賞味期限が切れてたから後で回収しようとして置いておいたんだけど……」

律「えっ」


律「あっ、なんかお腹が……」ギュルルルル

和「早速バチが当たったわね……」

唯「当たりおめでとう、りっちゃん」ポンッ

律「こんな当たりうれしくねーし!! あっ……」ギュルルル


おわれ

参考 モンティ・ホール問題
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%95%8F%E9%A1%8C

第21.5話
「梓誕」


          ., -‐ '"::::::::::::::::::::::`> 、
.         /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
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       ,':::::::::l:::::::::::::/|:ト,:::::::::::::: ト,::::::::::::::::`ヽ

       イ::::::!:::|:::::::l ム+!-、:::::::::::| V::::|:::::::::::::トゝ
     /:::::::::: |:: |:::::::!/  _L  、::::イ厂l::/:::::::.:::::}
.  /::::::::ハ::: !:::lハ::::レ'朽.ヾ  ヽ/,チモミ〈|::::::::::::/
. /::::::::/ .ヽ }::::::::ヽト弋_ソ     ト' リ 〉l:::::::,イ   11月11日
/::::::::/    Ⅵ::::::::: | ,,,,,,   ,  `´ イ レ':∧     今日は私の誕生日です
::::::::/       l:::::::::::|    __  "" j: |l::::::: |
:::: /         !::::::::::|    ヽ...ノ   ノ::::|ハ:::::: |
::./         l:::::::::|>、      イ:::::::::ハ::::: !
'         入:::: l`ヽ、`' ‐r<  |:::::::/  l:::::::!
       , -<  |ヽゝ  ,ィV,、 ト、_lイ/   !::::::l
     /      |  ト  / 〉仆、j  l>、_   !:::::}
.    /       \ ヽ' //l!!ト、v |;;;| >、 .!:::::l
.     {        く  V〈/.ハl } | |;;;|   } !::: |



11月11日

音楽室


梓「こんにちはー」ガチャ

律「おー、梓来たかー。誕生日おめでとん」

梓「ありがとうございます。……ってあれ?今日はまだ律先輩しか来てないんですか?」

律「みんな掃除当番かなんかしてるんじゃねーの?まあそのうち来るだろ」


律「あ、そうだ。梓にはプレゼントあげなきゃなー。はい、梓プレゼント」ゴソゴソ

梓「どうもです。……って何ですかコレ」

律「何って言われても『今日一日甘えてもいい券』だけど?」

梓「……はい?」



律「なんだよその微妙な反応はー!せっかく頑張って作ったんだぞっ」

梓「いや、誰だって誕生日にこんな紙貰ったら困惑しますよ! 何ですか今日一日甘えてもいい券って!!」

律「いやー、誕生日くらい梓に甘えさえてあげた方がいいかと思って……」

梓「まるで私が欲求不満みたいな言い方ですね……。いいですよ、別に私甘えたいとか思ってませんから」

律「まあまあ、遠慮すんなって。二度とないかもしれないぞー?私たちに甘えられる機会なんて」

梓「そんなこと言われましても……。何というか律先輩には甘えたいと思わないというか……」

律「何それひどくね!?」



律「まあでもそんなこと言ってるけど 本当は梓も心の片隅で甘えたいって思ってるんじゃないか?」

梓「はぇ!? そ、そんなこと思ってるわけないじゃないですか!」

律「またまたー。いっつも唯がやってるみたいに抱き着いてくれてもいいんだぜ?」

梓「唯先輩じゃないんだから そんな恥ずかしいことできませんよっ///」

律「何言ってんだ、私と梓の仲だろー?恥ずかしがることなんてないじゃーん。それに今なら誰もいないし!」

梓「そんな誤解されるような台詞言わないでくださいよ! てかそんな簡単に抱き着くなんてできるわけ……」



律「……梓は私に抱き着くのが嫌なのか?」ウルウル

梓「えっ……?ちょっ、律先輩……?」

律「そうだよな、こんなプレゼントより他のがよかったよな。ゴメンな、こんなダメな先輩で……」

梓「あ、別にそういうわけでは……」

律「いいんだぞ、梓。無理しなくって……」グスッ

梓「無理なんてしてません!大丈夫です!! 私、このプレゼントも結構嬉しかったので」アセアセ

律「…本当か?」

梓「はいっ!ホントです!」

律「じゃあ抱き着いて」

梓「はい! ……はい?」



梓「えっ、や、やっぱり抱き着かなきゃダメですか?」

律「なんだ、やっぱり嫌なのか」ズーン

梓「い、いやいや!そういうわけでは!」

律「でも梓、さっきから抱き着こうとしてくれないじゃん」

梓「あ、その、私 律先輩に抱き着いたことないので……、何か躊躇してしまうというか……」

律「……分かった。そういうことなら、私も無理に抱き着けとは言わないよ。」



律「何かこういうのも変だけどさ、後輩は梓一人だけだし、私たちもあんまり甘えさせてやれなかったからさ……」

律「誕生日くらい、梓に甘えさせてやった方がいいかなって思って こんなプレゼントにしちゃったけど、どうやら失敗みたいだな」アハハ

梓「律先輩……」

律「よし、今日はちょっと早いけど練習するか! 待ってろ、今準備するからな」

梓「ま、待ってください!」

律「えっ?」クルッ

梓「律センパイ……」ギューッ

律「梓!?」

梓「……なんだか急に甘えたくなってきました。律先輩、やっぱり今日はこの券使わせてもらっていいですか?」

律「梓……。…あぁ! もちろんだぜ!」

梓「ふふっ……。ありがとうございます」ギュッ


ガチャ

唯「ごめーん、掃除当番で遅れちゃったー……。あ!あずにゃんがりっちゃんに抱き着いてる!」

澪「おっ、梓が抱き着いてるなんて珍しいじゃないか」

紬「あらあら、仲良しね」

梓「あぁ、先輩方こんにちは。これはですね……」

律「いやー、梓が抱き着きたいっていって聞かなくてさー」

梓「ちょっ」



唯「えー、あずにゃん浮気なんてひどいよー」

梓「唯先輩まで! てか浮気ってなんですか浮気って!」

梓「もう!律先輩にこれを渡されたから抱き着いてただけですよっ」スッ

紬「どれどれー? 『今日一日甘えていい券』?」

律「そう! 私から梓へのプレゼントだ!」

唯「なーんだ、浮気してたわけじゃなかったんだね、あずにゃん。わたしゃてっきり……」

梓「だからなんで浮気の話になるんですか!?」



紬「私たちからもプレゼントあげなきゃねー。今、バースデケーキ準備するわね」

梓「ありがとうございます、ムギ先輩」

律「おー、バースデーケーキか! よし梓。今日は食べさせてやるからな」

梓「そ、そこまではしなくていいですよ///」

唯「あー、ずるいよりっちゃん!私もあずにゃんにあーんするんだから!」

澪「トライアングル・ラブか……。あ、新しい詩が浮かんできそうだ!」

梓「もう、澪先輩までー///」



梓「はい、とりあえずそろそろ練習しましょう!バースデケーキは練習が終わったあと!」

唯「えぇー!? ケーキ食べてからにしようよー」

梓「ダメです!そうやっていつも練習しないじゃないですか!」

澪「そうだぞ、唯。それに今日は梓には甘える権利があるみたいだし、唯は甘えちゃダメなんじゃないか」

唯「それもそっかー……。分かったよあずにゃん、練習しよ! そのあと一杯甘えていいからね!」

梓(なんだか私が甘えたがりの後輩になってる気がしますけど……)

紬「じゃあ練習の前に改めて梓ちゃんのことお祝いしましょうか!」

律「そうだな!」

唯澪律紬「梓(ちゃん、あずにゃん)誕生日おめでとー!」

梓「(まあいっか!)みなさん、ありがとうございます!」ガバッ

唯澪律紬「わわっ!?」



おわり


あずにゃん誕生日おめでとうございます

第22話「魔法瓶」



とある日の保健室


梓「ハァー…。今日の体育 身体測定かー。いやだなー……」

純「えー、そうかな? 走ったりとかするよりはさ、疲れないしいいじゃん。むしろ私は大歓迎!」

梓「イヤなものはイヤなの。 はぁ……、なんか憂うつ…」

純「あっ、まさか梓。身長計るのが嫌だとかー?」ニヤニヤ

梓「うっ」ギクッ

純「あっ、ゴメン。もしかして図星だった…?」

梓「ちっ、違うよ!! そんなことないもん!!」

梓「とにかく、身体測定はいやなのー!!」

純(やっぱり身長測るのが嫌なんだな…)


・・・・・・

身体測定 終了後

憂「あ、純ちゃんもう身長測り終わった?」

純「うん。今年は1cmくらいしか伸びてなかったけどね」

憂「私は1.5cm伸びてた!」

純「おっ。憂選手やりますなー。夢の160cm台いっちゃうんじゃない?」

憂「もう、純ちゃんったら。流石にそれはないよー」

アハハハハ……

梓「あははははは……」ドヨーン…

純「うっ…。何やらすごい負のオーラを携えた人が…」

憂「あ、梓ちゃんは何cm伸びてたの?」

梓「1mm……縮んでた…」

憂純(気まずい……)



純「そ、そんなに落ち込むなって梓。きっとこれから急速に伸びてくって!」

憂「そ、そうだよ!きっと梓ちゃんは大器晩成型なんだよ!」

梓「……じゃあいつ急速に伸びるようになるの?」

純「えっ……そ、それは……」

梓「何月何日何時何分何秒!地球が何回回ったとき!?」

純「小学生か!!」



憂「で、でも私は小っちゃいのもかわいくていいと思うけどな」アセアセ

梓「それは憂が身長伸びて余裕があるから言えるだけでしょ」

純「ダメだ。完全にふてくされちゃってる」

憂「これはしばらくそっとしておいた方がいいかもね…」

梓「ふてくされてなんかないもん!!」

純「わかったわかった。とりあえず、ホームルーム遅れないように早く着替えよ」

梓「……ぬぅー」


放課後


梓「くそー、純と憂めー。ちょっと身長伸びたからって……」ブツブツ

梓「はぁ…。でもいつまでも身長のこと気にしてても、仕方ないか」

梓「これから部活だし、切り替えていかなきゃね!」

梓「よーし!頑張れ私! 身長がなんだ!!今日はたくさん練習してやるです!!」ガチャ



梓「みなさん こんにち……」

唯「えー、澪ちゃん今年は2cmも伸びたの!?」

律「すげーな。165とかいっちゃうんじゃねーか!?」

紬「明日お祝いのケーキ持ってくるわね!」

澪「そ、そんなに持ち上げるなよ~///」

梓「」


唯「あ、あずにゃん。やっほー」

律「おー。梓来てたのかー」

律「……そういえば、2年も確か今日が身体測定だったよなー?梓は何cm伸びたんだ?」

梓「うぐっ」グサッ

紬「……?梓ちゃん、どうしたの? 具合悪いの?」

澪「梓、大丈夫か。顔真っ青だぞ?」

梓「い、いえ!私は大丈夫ですから! さ、さぁー皆さん今日も張り切って練習しましょー!!」


律「ははーん? さては梓。今年もあんま身長伸びなかったんだろー?」

梓「ぐっ…!そ、そんなことありません!! 私、今年はそこそこ伸びましたから!」



唯「へぇー。何cmくらい伸びたのー?」

梓「へっ? え、えっと…」

唯「?」

梓「じゅ、十センチくらい…?」


唯「えっ……?」

澪「じゅ、10cm…?」

梓「はっ…!(つ、つい強がってしまった!!)」


律「いや流石に10cmはねーだろ…。どうみてもいつものサイズだし」

唯「あずにゃん?無理しなくていいんだよ? あずにゃんは小っちゃいからこそあずにゃんなんだから」

梓「……むぅ」



部活終了後


梓「うぅ…。あの後もみんなして身長の話して……。 もう泣きそう…」

梓(ハァ…。なんで私ってこんな身長低いのかな……)

梓「何か身長伸ばす方法ないのかなーっ、っと…。……ん?」

カァー カァー

梓「あっ! カラスがまたゴミ捨て場あらそうとしてる!まったくもう……」タッタッタ

梓「こら!あっちいきなさい!!しっし!」ブンブン

カラスたち「カァー!カァー!」バサバサバサ…



梓「ふー…。なんとか追い払えた…」

梓「よかった…。ゴミ袋とかも破けてないみたい」ホッ

キラッ

梓「……ん?今何か光ったような…?」

梓「これかな…? 魔法瓶…?」

梓「まだ新しい……。これを捨てるなんて勿体ないことするなぁ」

梓「まったく。バチ当たりな人もいるもんだね。魔法瓶くんっ」キュッキュッ


モワモワモワ……

梓「!? ゲホッゴホッ!!ま、魔法瓶から煙が……!?」

魔人「よぉーっす!」

梓「ブッ!!ちょ……!えっ…!!? 魔法瓶から人がっ!?」



魔人「そんなに驚かないでよ。アンタが呼び出したんだからさ」

梓「よ、呼び出した…!?何の話?」

魔人「ほら、アンタ魔法瓶こすってくれたでしょ? いやー、おかげで何年かぶりに社場に出られたよー」

梓「は、はぇっ……!?」

魔人「またまたー。そんな何も知らないような素振りしてるけど、本当はアタイの魔法目的で呼び出したんでしょ?」

梓「ま、魔法!? なんのことですか!?」

魔人「なんだい、知らないで呼び出したの? 魔法ってのは願い事を3つまで適えるっていう魔法ね。ほら、よく御伽噺とかにあるあれだよ」

梓「…私、夢を見てるのかな…」ツネー

魔人「ちょっと失礼だな!まぎれもない現実だって!」



梓「そ、そんなこと言われても…。にわかには信じられないというか…」

魔人「まあ無理もないかもね。魔法瓶から出てくる魔人なんて、普通の人は見たことないだろうしね」

梓「そりゃそうですよ! ていうかこんなの漫画の世界でもありませんよっ!」

魔人「あはは。で、アンタ名前はなんていうの」

梓「……中野梓です」 

妖精「梓っていうのかい! とりあえずよろしくな!!……っても私の姿はアンタ以外には見えないんだけどね」


梓「え?そうなの…?」キョロキョロ


「ちょっと…。あそこのゴミ捨て場で一人でぶつぶつ言ってる子がいるわよ」ヒソヒソ

「最近急激に寒くなってきたからかしらねぇ」ヒソヒソ


魔人「なっ?本当だろ?」

梓「……そうみたいだね」グスン



梓「とりあえず、元の場所に戻して、と……」コトッ

魔人「ってオイオイオイ!!ちょっと待てよ!! まだ願い事聞いてないぞ!」

梓「でも急に願い事なんていわれても……」

魔人「遠慮すんなって! あるだろ?願い事のひとつやふたつくらいさ」

梓「そんなこと言われても……。本当に私は願い事なんて……」

梓(……あっ)


純『あ、まさか梓。身長測るのがいやだからとかー?』ニヤニヤ

律『さては梓。今年も身長あまり伸びなかったんだろー?』ニヤニヤ


梓「……本当に、願い事かなえてくれるんですか?」

魔人「そりゃもちろん!アタイの力を信じろって!! 但し三つまでだけどな」

梓「じゃあ、あの…。ここでは言い辛い願い事だから…」



魔人「OK。どこへでも連れてきな。アタイはそれまで中で寝てるからさ」スゥー…

梓「あ、中に戻れるんだ…」


梓「でも本当にこんなのが願い事かなえてくれるのかなぁ?」ジトー

魔人「こんなのとは失礼だな!アタイの怒りの魔法を浴びせてやろうか」ヌッ

梓「わー!ごめんなさい! 信じますから!許してください」

魔人「冗談だって。さ、行くんなら行きな」スゥー…

梓(何かとんでもないことになってしまった……)



・・・・・・

サーン…

マジンサーン…

魔人「んあ?」

梓「魔人さーん!」ノゾキッ

魔人「うわぁっ!!びっくりした! そんな蓋の隙間から覗かないでくれよ!」

魔人「魔法瓶をこすればすぐ行くから!次からはそうしてくれ!」

梓「あっ…。ごめん」キュッキュッ

魔人「ふぅ…。心臓止まるかと思ったよ」

梓「魔人にも心臓とかあるの?」

魔人「教えてあげてもいいけど、願い事一つ分と交換な」

梓「そ、それはダメ!」

魔人「あははっ。ジョーダンだってぇ。……で?願い事ってのは何だい?」

梓「実は……」



・・・・・・

魔人「なるほどね。要するに背を大きくして、みんなを見返してやりたいってことか」

梓「お恥ずかしながら…」

魔人「よし。アタイに任せときな!みんなの前に堂々と出られるようにしてやるぞ!」

梓「よ、よろしくお願いします!」

魔人「よーし。じゃあちょっと目瞑ってろよー?アデニングアニンシトシンチミン!!」

魔人「はっ!!」モワーン…

梓「ゲホッ…ゴホッ…!ま、また煙が…!」

魔人「はいお疲れさん。これで願いがかなったはずだよ」

梓「これだけでですか? 一見何も変わってないように見えますけど……。私、本当に大きくなったんですか?」



魔人「あ!梓まだアタイの力を信じてないね!? 気づかないかい?見える世界が変わってることに」

梓「そういわれてみれば……。何だかいつもより目線が高くなってるような……?」

魔人「だろ? 鏡見てごらん。自分の変わりっぷりに気づくはずだよ」

梓「…! 本当に背が高くなってる!」


魔人「ついでにサービスで服のサイズも直しといてやったからさ。明日は堂々と学校に行ってくるといいよ」

梓「!! あ、ありがとうございます!このご恩は一生忘れませんっ!」

魔人「おいおい照れるからよせって///」



魔人「…で。あと願い事2つ叶えられるけど。そっちのほうはどうする?」

梓「あ……。それはまだ決めてないんですけど…」

魔人「そっか。じゃあ決まったら起こしてくれ。それまでアタイは例のごとく寝てるから」

魔人「じゃ、決まったら呼んで」スゥー…



梓「……夢じゃないよね?」サスサス

梓「今まで背伸びしないと届かなかった棚にも簡単に手が届く…」

梓「ほんと、夢みたい…」

梓(これなら明日からは健康診断でも背の順で並ぶときでも何であろうが堂々としていられる!)

梓「きっと私のこの姿を見たらみんなも…」


純『えー!? 梓すっごい背高くなってるじゃん! モデルみたい!』

憂『梓ちゃん、格好いいー!』

和『私 生徒会に行って梓ちゃんファンクラブの設立を早急に申請してくるわ』

さわ子『新しく梓ちゃん用の衣装を新調しなきゃ~!』

紬『明日お祝いのケーキ5個くらい持ってくるわね!』

律『きぃーっ!悔しいけど羨ましいぜっ』

澪『なんだか梓の方がお姉ちゃんみたいだな///』

唯『背が高いあずにゃんも可愛いー!』ムギュー


梓「なーんてことになったりしてね///」

梓「……うへへ」



アズサー、ゴハンヨー

梓「(あっ、もうそんな時間だったんだ……)い、今いくー!!」

梓(ふふっ、なんか明日学校に行くのが楽しみになってきた!!)



・・・・・・

翌日


梓の教室


純「でさー、それで兄ちゃんがさー……」

憂「へぇー、そんなことあったんだー」アハハ

ガララッ

純「あっ、誰か来た」

憂「随分背の高い子だねー。あんな子このクラスにいたっけ」

純「転校生かなんかじゃない? あれ、こっち向かってくるよ?」

憂「というか見慣れた顔と髪型の子のような……」

梓「おはよう、純。それに憂」

純憂「……えっ?」



純「あの……。転校生の方ですか?」

梓「失礼な!! 私だよ私!」

憂「この声…、この髪型…。まさか本当に梓ちゃんなの!?」

梓「そうだよ。何、どうしたの二人とも?」ニヤニヤ

憂「な、なんというかびっくりした……」

純「てか急に背高くなりすぎじゃない!?一体何があったのよ」

梓「私もいろいろと大きくなる努力したんだよ。ふふ、もうこれで純たちに小さいとは言わせない!」

純「いや、別に小さいとか言ってないし。…てか何か違和感がすごいというか……」

憂「何か梓ちゃんじゃないみたいだね……」

梓「ちょっ!?せっかく大きくなったのにその反応ひどくない!?」

純「そんなこと言われたって……。急にそんな姿になられても、すぐには受け入れ難いというかさ…」



純「てかまさか梓……。ネットとかで怪しい薬買って飲んだんじゃないよね? あるいは手術したとか……」

梓「! そ、そんなわけないじゃん! ほ、ほら私にも急成長期がきたのっ!!」

純「…本当かなー? 何か小細工でもしてるんじゃないのー?」ジロジロ

憂「私は前の梓ちゃんの大きさも結構好きだったけどなー」

梓(ぐぬぬ……!まさかの大不評!!)


キーンコーンカーンコーン……

純「あ、もうすぐ授業だ。ほら、梓も憂も席戻りな」

憂「うん。じゃあまたね、梓ちゃん」スタスタ

梓「……むぅー」ポツーン


・・・・・・


放課後


梓「はぁー……。背が高くなったのはいいものの……。思ったより皆の反応が微妙だったな……」

梓「でもまだ軽音部のみなさんたちがいるです! 先輩方ならきっと大きくなった私をほめてくれるはず……」

梓「……ほめてくれるよね?」

梓「いけないいけない! 戸惑うなんて私らしくもない! だめだめ!自身を持てわたし!」パシパシ

梓「よしっ!やってやるです!!」ガチャ



梓「皆さん、こんにちは!!!」フンスッ

唯「あーずにゃ……ってあれ?」

梓「どうしたんですか唯先輩?いつものように抱きついてくれてもいいんですよ?」ニヤニヤ

唯「いや……、その……。ど、どちらさま……?」

梓「」



梓「ちょっと唯先輩!私ですよ私! いつもあなたに抱きつかれてるあずにゃんですよ!」

唯「だってあずにゃんはそんなに大きくないよ!」

梓「私だって成長くらいしますよ!(魔法で成長したんだけど……)」

律「まさかあの七夕のときに書いた願い事が叶ったのか……?」(※15話参照)

梓「ふふん。そうかもしれませんねっ」

律「てかそれにしたって成長したにしろ大きくなりすぎじゃないか……?170くらいあるように見えるぞ……」

澪「私よりも全然……」

律「そして大きくなったわりにそこはあんまり変わってないな」ジー

梓「こ、ここの話は今はいいんです!」



紬「梓ちゃん、まさか危ない薬でも飲んだんじゃないよね?」

梓「ムギ先輩まで純と同じこと言うんですか!? これは純粋な成長です!」

律「そんなこと言われてもなー……。にわかには信じられねーよな……」

澪「なんか変な感じはするな……」

唯「こんなに大きいあずにゃんなんてあずにゃんじゃないよ……」


梓「」ガーン


梓「もういいです!せっかく大きくなったのに誰もほめてくれないなんて!私もう帰ります!!」ガチャ バタン

唯「あ、あずにゃん待って! ……行っちゃった」



律「てか突然一体何があったんだー? 急にあんなに大きくなってさ」

澪「それは分からないけど……。でも、梓もせっかく成長したのに、ひどいこと言っちゃったかもな……」

紬「まだ梓ちゃん近くにいるかもしれないし、私探してくるわ」ガタッ

律「いや、待てムギ。ここは少し梓をそっとしておいた方がいい気がする。なんか感情も高ぶってたみたいだったし」

紬「でも……」

律「その代わり、部活が終わったら皆で梓の家に謝りに行く。」

律「澪の言うとおり私らがひどいこと言っちゃったのは事実だし……。それならいいだろ?」

紬「……うん。わかった、りっちゃんの言うとおりにする」



律「よーし! てことで部活が終わったら皆で謝りに行くぞー!」

唯紬「おーっ!!」

澪「よし、そうと決まればそれまで練習だな」

唯「えー? まずはお茶しようよ」

澪「ダメだ。それに梓のためにお詫びにケーキもって行ってあげた方がいいだろ?」

唯「むぅ、わかったよ。よーし!今日は久々に真面目にやりますかぁ!」

律「おうよ!」


紬「おー♪」

澪「さっ、早速始めるぞ!」


・・・・・・

梓の家

梓「結局昨日と同じように逃げ出してしまった……」ドヨーン

梓「せっかく大きくなったのにほめられるどころか誰も認めてくれないなんて……」ハァ…

梓「もういいや……。元に戻してもらお……」キュッキュッ

モワモワモワ……

魔人「ジャジャーン!呼ばれて出てきてチェケラッチョイ!!」

梓「何よそれ……。てか今までそんな登場の仕方してなかったじゃん」

魔人「結構インパクトあるっしょ? 暇だから寝てる間に考えてたんだ!」

魔人「……で梓。そんなことより残りの願い事は決まったの?」

梓「決まったことは決まったんだけど……」

魔人「何だか言い辛そうだな。まあ、ともかく言ってみなよ」

梓「実は……」



魔人「えーっ!? 背を元に戻したいだって!?」

梓「うん……」

魔人「だ、だって昨日、背高くしたばかりじゃん!!」

梓「そうなんだけどさ……。その、やっぱり私には元の大きさが一番な気がするから……」

魔人「いや背を元に戻すのは別にいいけどさ……。何か願い事の無駄使いっつーか、勿体ない気がするけど本当にいいのね?」

梓「うん。お願いします……」

魔人「分かった。じゃあ遠慮なく元に戻させてもらうぞ」

魔人「ペプシントリプシンリパーゼアミラーゼ!!」

モワモワモワ……

梓「さよなら、高身長の私……」シュルル……



魔人「……本当によかったのか? 何か一日だけの高身長体験!みたいになっちまったけど」

梓「いいんです。急に大きくなってもいいことばかりじゃないって分かりましたし」

魔人「アタイには願い事の無駄づかいにしか見えないんだが……」

梓「うっせーです!! 勿体ないことしたなんて思ってないんだから!」プイッ

魔人「ったく、強がっちゃってぇ。最後の願い事は慎重に考えなよ」

梓「わかってるよ……」

魔人「まあ慎重にっつってもあんま何日もかかるようじゃダメだけどな」

梓「え? もしかして日数制限とかあるの?」

魔人「あれ、言ってなかったっけ? 有効期限はアタイを呼び出した日の翌日までって」

梓「……は?」



梓「ってそれ今日までじゃん!!最初に言ってよもう!」

魔人「ゴメンゴメン、言うの忘れてたよ」

魔人「と、いうわけで今日中に決めないと願い事叶えられなくなるからヨロシク」

梓「ちょっとぉ! てか今日中に決めろとかそんなこと急に言われても思いつきませんって!」

魔人「何でもいいんだぞ?たとえば100億万円ほしいとかでも」

梓「その願い事はどうかと思うけど……」

魔人「じゃあさ、梓のかねてからの夢を実現させるのはどう?」

梓「私の夢?」

魔人「そう。ほら、小学生の時とかにも書いたろ?ミュージシャンになりたいとか総理大臣になりたいとかお嫁さんになりたいとかさ」

梓「お嫁さん……?」



魔人「ああ、もちろんそんなのでも構わない。アタイの力にかかれば意中の相手と結婚するのもカンタンだからね」

梓「結婚……」ドキッ


梓(もし、唯先輩と結婚したら……)

唯『おかえり、あずにゃん。ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ?』

梓『全部いただきます!!』ガバッ

ギシギシニャンニャン



梓「///」ボンッ



魔人「ど、どうしたんだよおい。急に悶えはじめて」

梓「魔人さん!私願い事決めました!!」ズイッ

魔人「お、おう。てか顔近いって!」

魔人「まあいいや、言ってごらんよ」

梓「は、はいっ!」

梓「ゆ、ゆいせんぱいと……け、け……///」



ピリリリリ

梓「こ、こんな時に電話!?」

魔人「またナイスなタイミングだな。 願い事は電話終わったら聞いてやるから、とりあえず出ちゃいな」

梓「どこがナイスタイミングですか……」ピッ

梓「もしもs」

律『梓!! 大変だ! 唯が、唯がっ……!!』

梓「!? ど、どうしたんですか律先輩!?落ち着いてください! 唯先輩に何かあったんですか!?」

律『唯が、車に……うぅ。ひかれた……』

梓「えっ……?」



梓「あの、律先輩……?冗談ですよね?」

律『梓の家に謝りに行く途中で……、道に飛び出した子猫を助けようとして、唯も、飛び出して……うっ…』

梓「そんなバカなそんなバカなそんなバカな……」

律『とにかく○△病院に来てくれ!! すぐに!』プツッ

梓「うそ……」プーッ、プーッ……

魔人「おいどうしたんだよ? 何かあったのか?顔真っ青だぞ」

梓「ま、魔人さん!!」ガシッ

魔人「お、おい!?本当にどうしたんだ!? 大丈夫かよ!?」

梓「唯先輩が!唯先輩が……!!」ユサユサ

魔人「ただごとじゃないみたいだな。説明してくれよ」

梓「唯センパイが、グスッ。事故にあって、いま病院にいるっていっで……。うぅ……」グスッ

魔人「じ、事故ぉ!?」



梓「! そうだ妖精さん! 唯先輩を治してよ! 私の最後のお願い事!!」ユサユサ

梓「ねっ?いいでしょ!? 唯先輩を治して!」ブンブン

魔人「……残念ながらそれは無理だ」

梓「!? 何でよ!? 何でも叶えてくれるって言ったじゃない!!」

魔人「ああ確かに言ったさ。でも叶えられるのは、アタイを呼び出した当人に効果が及ぶ願い事だけなんだ……」

梓「そ、そんな……! じゃあ唯先輩のケガは治せないってこと!?」

魔人「すまないが、そうなるな……」

梓「そ、そんな……」ガクッ

梓「うぅ……唯先輩……。唯せんぱぁーい!!」ウワーン

魔人「……すまない」



梓「……私、ちょっと行ってきますね」スクッ

梓「○△……グスッ びょういんに……」フラフラ

魔人「梓……」




魔人「(……そうだ!) ま、待て梓!!」

梓「……なんですか?」

魔人「一つだけ、方法があるかも……」


・・・・・・

数十分前


唯「あずにゃん、まだ怒ってるかなー?」

律「ある程度でいいから落ち着いてくれてるといいんだけどな……」

紬「お詫びのケーキも持ってきたし、とにかくちゃんと謝らなきゃね」

澪「そうだな」

ニャー


唯「あ!ネコさんだ!」

紬「まあ!可愛いわー」

律「野良ネコか? にしても通学路でネコ見かけるのなんて珍しいな」



澪「かわいいな……」ナデナデ

ネコ「ニャー」トテトテ

律「……プッ。逃げられてやんの」

澪「う、うるさい!」

唯「あっ、ネコさんそっちの方行ったら危ないよー」

ネコ「ニャー!」ダッ

唯「あっ!コラ待ちなさい!!」タタッ

ブロロロロロ

紬「! 唯ちゃん危ない!!」

唯「えっ!? う、うわぁ!!」

律「唯ーっ!!」

キキイーッ!!



唯「……」

唯「……あれ?なんともない……?」

梓「よかった、間に合いました……」ガシッ

唯「あ、あずにゃん!? どうしてここに!?」

運転手「ったく危ねぇな! 気をつけろ!!」

ブロロロ……



梓「はぁ、はぁ……。よ、よかったぁ……」ヘナヘナ


律「唯!! 大丈夫か!?」

唯「う、うん大丈夫。あずにゃんが助けてくれたから」

澪「え、梓いつの間に来てたの!?」

澪「はぁ、でもよかった……。急に飛び出したもんだからびっくりしたよ」

紬「本当……。もし梓ちゃんが来てくれなかったら大変なことになってたかもしれないわね」



律「てか梓、お前身長もとに戻ってないか?」

梓「そ、その話は今は置いといて! 唯先輩! 急に飛び出しちゃダメじゃないですか!!危ないでしょ!!」

唯「ご、ごめん……」

梓「でも……。 本当に……グスッ。ひかれなくて……よかったよぉ…」グスッ

唯「あずにゃん……。たすけてくれてありがとね」ナデナデ

梓「……唯センパーイ!」ウワーン

唯「よしよし」ナデナデ



梓「……もう危険なことはしないでくださいね?」

唯「うん、これからはもっと気をつける。だからほら、涙拭いて? ほら、ハンカチ」

梓「ありがとうございます」ポロポロ


・・・・・・


梓「……ありがとうございます。大分落ち着きました」

律「にしても梓、お前いつ来たんだー? さては気配を消して私らのことを……」

梓「ちがいますよ!もうっ!」

澪「あ、それとごめんな、梓? 梓がせっかく大きくなったのにあんな態度とっちゃって……」

梓「澪先輩、もうそれはいいんです。私、この身長のままでいいって分かりましたから」

律「……で? 大きくなるのにどんなトリック使ったんだよ?梓しゃん?」ウリウリ

梓「そ、それは教えられません」

律「えぇーん!? ケチー……」

梓「ほ、ほら! もう遅いですしいつまでも話し込んでたら暗くなっちゃいますよ! そろそろ帰らないと!」



紬「そうね。梓ちゃんにも会えたことだし、今日はもう帰りましょうか」

紬「改めて梓ちゃん、ごめんね? でも私はやっぱりこのサイズの梓ちゃんが一番だわ」

唯「私からもごめんね? 背が高くてもあずにゃんは あずにゃんなのにあんなこと言っちゃってさ」

梓「もうっ。その話はいいっていったじゃないですか。私は怒ってませんから」

律「やっぱり梓はちっちゃくてナンボだしなー?」ニヤニヤ

梓「胸見ながら言わないでくださいよ! てか律先輩には言われたくありません!」

律「何だとー中野ぉー!!」ガシッ

梓「きゃーおやめになってー」

キャッキャッ

澪「まったく……何やってるんだか」ヤレヤレ


澪「ほら、そろそろ帰るぞ。みんなまた明日な」

紬「みんなまたね~」


・・・・・・


梓の部屋


梓「……今日はありがとうございました、魔人さん」

魔人「上手くいったみたいで良かったよ。過去に人を送り届けるってのは初めてだったからさ」

梓「……ふふっ」

魔人「何だよ梓。急に笑って」

梓「いや、魔法瓶拾っておいてよかったなって思って」

魔人「えー、二日経ってようやくアタイのありがたさに気づくなんて遅すぎるんじゃないのー?」

梓「そうかな……?」

魔人「ちょっ!そこで悩むなよ!」

アハハハ……



魔人「……さて。これで梓とはお別れだね」

梓「そういえば、願い事3つしたのに、これじゃ何も変わってないのと一緒ですね」

魔人「あはは、本当だね! アタイもこういうパターンは初めてみたかも」

梓「でも私、これでよかったと思います。何も変わらなくっても、今のままで私は十分幸せですから」

魔人「ははっ、欲がないねぇ。アンタは」

梓「謙虚だと言ってください!」

魔人「褒めたつもりだったんだけどね」

梓「だって魔人さん、あんまり人とか褒めなそうですし……」

魔人「あ、こう見えても結構お世辞は上手いんだよアタイは!」

梓「って結局お世辞だったんじゃないですか!!」

魔人「バレた?」

梓「もうっ……。本当に変な魔人さん」



魔人「よし!じゃあお別れの前にアタイに言うことはないかー?」

梓「へっ……?」

魔人「ほら、無言でお別れなんて寂しいだろ? なんでもいいからさ」

梓「……ありがとうございました、魔人さん」

魔人「ははっ、またそれかよー! でも梓らしいっちゃ梓らしいか!」

魔人「じゃあアタイからも! こちらこそありがとな! 短い時間だったけど楽しかったぞ!!」



梓「……また会える時って来るんですかね」

魔人「さあな? まあアタイの気分次第ってとこかな?」

梓「なんですかそれ」クスッ

魔人「まあ会えなくてもアタイは梓のこと、忘れるまで忘れないけどな」

梓「ちょっとー、それはひどくない?」

妖精「うそうそ。忘れないよ、梓と出会ったことは」

梓「……私も忘れませんよ。魔人さんと出会ったこと」



魔人「じゃあそろそろ行くな。その魔法瓶はあげるよ」

梓「うん。ありがとうね、魔人さん」

魔人「じゃあ元気でな! グッドラック!!」スゥー……

梓「そちらこそお元気でー!」



梓「……」

梓「……行っちゃったか」

梓「変だったけど不思議な魔人さんだったな……。何か、まだ信じられない気分……」キュッキュッ

魔法瓶「……」

梓「何か少し寂しくなっちゃったな……」



ピンポーン

梓「ん? 誰だろ、こんな時間に」

梓「はーい」ガチャ

純「あああ梓! 大変なの!!」

梓「ちょっ、何よ純? こんな夜中にどうしたのよ」

純「い、今そこのゴミ捨て場で魔法瓶を拾ったら何か変な魔人が出てきて!!」アワアワ

梓「えっ」



「唯誕」

                 ___
            _  '"´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`丶、
           '⌒:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:⌒\.:.:.:.\
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       |.:.:|=={_∧:.:{.:.:.:.:.:.|´厶 \.:.:l.:.:j.:.:.:.:.:{
       |.:.:||==∧l厶 !\:.:.:| f升iハ |:ヽ|:.イヽ.:.:.:'、  11月27日は私の誕生日だよー
.         '.:八:.:.|i f爪ハ  \! 弋)リ | .:.:.: | }.:.:.:.:ヽ
        ヽハ\、弋)リ ,    ////!.:.:.:.:.|'´.::.:.:.:.: |
          |.:.:.:ゝ///         | .:.:.: |:ノ:.:.:.}.:.:.j
          |:.:.:人     tっ     /.:.:.: 人>┴'く
         ';.:.:.:.:.:> _   _ イ/.:./ /    ヽ

          ヾ{\:{ヽ:{ `T∧ /}//         |
.              ∧`   | rfく /   !       |
            {  、    ∨ハ ∨    |     リ
                '.   \j 《V小'_》 丶j     lヘ

            ∨ ヽ|   l|o| l|     |     |∧
               ∨ :l  lト、!.l|    |      |
               〈. 八   ∨     |      | ∧
              ∨  ヽ.   \   |       |  ヘ
                  ∨   \.   \ !      .|/   \


~唯の誕生日の10日ほど前~


音楽室


梓「あ、そういえばもうそろそろ唯先輩の誕生日でしたね」

唯「おっ!あずにゃん覚えててくれたんだね!?うれしいよー」ギューッ

梓「やめてください/// ……で、誕生日プレゼントのことなんですけど……」

唯「あ!もしかして先にくれるの!?」

梓「ええまあ。はい、どうぞ」ペラッ

唯「ありがとー! これ何?ポイントカードみたいだけど?」

梓「まあそれに似てますかね」

唯「へー?何のポイントカードなのあずにゃんっ」

梓「唯先輩の誕生日プレゼントと交換するためのポイントカードです」

唯「へぇー!」



唯「……えっ?」



梓「ほら、裏面にスタンプみたいなの押せる欄があるじゃないですか?そこに1時間勉強するごとにスタンプ押してあげますから」

唯「ちょっ!? ポイント貯めないとプレゼントもらえないの!?」

梓「はい。唯先輩にもっとしっかりしてもらうために、今年は少し厳しくしてみました」

唯「そ、そんなぁ……。てかあずにゃんさん、私の目にはスタンプ欄が20個ほどあるように見えるんですが……?」

梓「これでも甘くしたんですよ。誕生日までに20時間勉強したら、唯先輩に誕生日プレゼントあげます」

唯「に、20時間!!? そんな長時間無理だよ!!」

梓「毎日2時間ずつやってください! それぐらい、高校生なんだから当たり前の勉強時間です!」

唯「しょ、しょんなぁ~……」ガックリ

梓「そして勉強が終わったらこのタイマーに勉強時間を記録してください。毎日確認して、スタンプあげますから」スッ

唯「はーい……」


・・・・・・


部活後 平沢家


唯「はぁー……。プレゼントのために勉強しなくちゃぁー……。まったく、あずにゃんも一日2時間とか厳しすぎるよっ」プンプン

唯「とりあえず、やらなきゃ。……とりあえず生物でもやろ」ゴソゴソ

唯「えーと、遺伝の法則について。遺伝子系がAAとaaの個体が交配した場合、そこから生まれる新個体の遺伝子系を答えなさい、か



唯「えーとAAとaaだから……?」

唯「……?」



10分後


唯「まったく、なんで私の机はこんなに汚いかな。やっぱり勉強の前には机の整理だよね!よいしょっと……」ドサッ

唯「あ!これ前に澪ちゃんから借りたままの小説だ。こんなとこにあったとは…」ペラペラ

唯「………」ペラペラ



そして2時間後

唯「はぁー、読み終わったぁー」パタッ

憂「おねえちゃーん?そろそろお風呂入らないと」ガチャ

唯「はっ!もうそんな時間!?どうしよう勉強しなきゃいけないのに……」アワアワ

憂「お風呂冷めちゃうよ?」

唯「う、うん今入るよ」スクッ

唯(……まあ明日からやればいっかー)



翌日

音楽室


梓「唯先輩、どうですか?順調ですか?」

唯「えっ?何が?」

梓「何がじゃないでしょ……。ほら、勉強のこと」

唯「あっ……! ……ま、まあまあ順調かな?」ダラダラ

梓「じゃあ昨日渡したタイマー見せてください」

唯「ふぇっ!? な、なんで……?」

梓「毎日スタンプ押すって言ったじゃないですか。ほら、タイマー出して」

唯「どうぞ……」スッ



梓「あれ? って勉強時間ゼロじゃないですか! 何か怪しいと思ったら、やっぱりやってなかったんですね!」

唯「き、昨日は机の整理とかして今日から本格的にやろうかと思ってたの!! 今日からちゃんとやるよ!」

梓「唯先輩のちゃんとやるは信用できません!」

唯「ひどいよあずにゃん……」

梓「はぁ……。とにかくプレゼントは20時間が絶対条件ですからね!今日からは本当にちゃんとやってくださいよ?いいですねっ!」

唯「……はぁーい」



平沢家


唯「はぁ……。今日こそ真面目にやらないと。プレゼント貰えないのはいやだし」ガサゴソ

唯「よーし!やーるぞー! 今日は日本史から!」フンスッ

唯「えーと、次のうち徳川吉宗が行った政策を選びなさい。1上米の制、2三方領地替え、3田畑永年売買の禁令の制定、4元禄小判の鋳造」

唯「えーと、徳川吉宗だから……?」

唯「……」コロコロ

唯「あっ、外れたっ!」



一時間後


唯「はひー……。や、やっと一時間終わった……。とりあえずタイマーに入力してっと……」ピッピッ

タイマー「ユイセンパイゴクロウサマデス。アト19ジカンガンバッテクダサイ」

唯「あ、あずにゃんの声だ。凄い高性能だねこのタイマー…」シゲシゲ

唯「にしてもあと一時間もやらなきゃとかもう無理だよー。しかも昨日の分も取り戻さなきゃだし……」

唯「……!」ピコーン

唯「そうだ、一時間くらい多めに入力しちゃえばいいんだ!このくらいならバレないよね」ピッピッ

ビリビリビリ

唯「あう"っ!!!」

タイマー「ユイセンパイガスルコト ナンテオミトオシデス!! バツトシテ1ポイントボッシュウデス!」ポシュウ…

唯「あぁー!!せっかく貯めたのにーっ!!」



唯「やっぱり真面目にやらなきゃダメかぁー……」ガックリ

唯「でも今日は疲れたし眠いしもういいかな……」ウトウト

唯「はっ!ってダメダメ!! そんなことしたら明日以降もっと大変になる!」

唯「ああ、でも眠気が……」ウトウト

唯「……zzz」



翌日


梓「どうですか唯先輩?昨日は勉強できましたか?」

唯「…………」

梓「またできなかったんですか」ハァー…

梓「まあいいです。とにかくタイマー見せてください」

唯「だって昨日はちゃんと一時間も勉強したのに、ちょっと入力間違えたら没収されちゃったんだよ!さすがにひどいよ!」

梓「ズルしようとするのがいけないんです! とにかく、今日から気持ちを切り替えて頑張ってください」

唯「はぁ~い……」


・・・・・・

それから6日後


梓「あの?唯センパイ?」

唯「な、ナンデスカ?」ダラダラ

梓「明後日ですよね?唯先輩の誕生日」

唯「ソダネ」

梓「なのに私の目には空欄があと10個ほどあるように見えるんですが……」

唯「きょ、今日と明日頑張るから!!だからプレゼントだけはっ!!」

唯「だからあずにゃん?ちょっとだけスタンプおまけして?」

梓「ダメです」キッパリ

唯「そ、そんなぁ~……。一日5時間なんて無理だよー……」

梓「毎日ちゃんとやらないのがいけないんです! とにかく、スタンプが埋まらないとプレゼントあげませんからねっ!」

唯「ちぇー……」


平沢家


唯「えーと、栄養ドリンクに、ブラックガムに、鉢巻と……」コトッコトッ

唯「とにかく頑張って今日と明日は勉強しなきゃ……。プレゼントのために!」

唯「よし!やるぞー!!」


一時間後

唯「さっそく眠気が……」ウトウト

唯「でもだいじょーぶ!これがあるからね!! 栄養ドリンクっ!」

唯「10秒チャージッ!!」ゴクゴクッ

唯「ぷはぁーっ!!ふっふっふー!眠気なんてこの平沢唯にかかればイチコロなのです!」

唯「よーし! この勢いであと4時間! 頑張るぞー!!」



さらに10分後


唯「あれ……?またねむけが……?」ウトウト

唯「くっ。栄養ドリンク程度じゃダメだったみたいだね……。でもまだこれがあるよ! ブラックガム!」

唯「これさえあれば眠気スッキリのはず……」モムモム

唯「はぁー辛い!! でも今度こそこれで大丈夫!」

唯「眠気など私の敵ではないのだー!!」カリカリカリ


それから30分後


憂「おねえちゃん夜食もってきたよー」ガチャ

唯「zzz」

憂「って寝てる!?」


憂「おねえちゃん? 寝てるの?」ユサユサ

唯「……はっ! あれ!?いつの間にか寝ちゃってた!?」

憂「眠いなら寝たほうがいいんじゃない? 無理に勉強しても体に悪いよ」

唯「でもそしたらあずにゃんのプレゼントが……」



憂「じゃあ朝早起きしてやればいいんじゃない?」

唯「早起き?」

憂「そう。それに朝勉強すると、記憶もしやすいんだって」

唯「おー!ならいいことづくめだね! 私決めたよ、憂!とりあえず今は寝て、朝勉強するよ!!」

憂「クスッ。頑張ってね、おねちゃん」

唯「まっかせなさーい」フンスッ

憂「じゃあ電気消しちゃうね?おやすみ」パチッ

唯「うんおやすみー」


翌日

音楽室


梓「唯センパイ?」

唯「は、はひっ」

梓「タイマーを見る限り昨日の勉強時間は1時間みたいですけど?」

唯「けけけ計画では早起きして4時間くらいやるつもりだったんだよ!? でも目覚ましの電池が抜けてて……」

梓「言い訳は結構です!……はぁ、これじゃプレゼントは無理そうですね」

唯「今日頑張るから!だからプレゼントはっ!!」

梓「流石に今日だけで9時間は無理でしょ。だからもう諦めてください」

唯「そんなこと言わないであずにゃーん! もう一度だけチャンスをどうか私にっ!!」

唯「このとおり!!」ドゲザー

梓「まったく何やってるんですか……」



梓「はぁ……、分かりましたよ。そこまで言うんだったらチャンスをあげましょう」

唯「本当に!? ありがとうあずにゃん!」

梓「確か唯先輩のクラスでは明日古典の小テストがありましたよね?」

唯「う、うん」

梓「もしそのテストで100点とれたら、スタンプ9個一気に押してあげます」

唯「ひゃ、100点!? 待ってよあずにゃん!明日の小テストは今年一番難しい範囲なんだよ!だからせめて70点くらいに……」

梓「ダメです。プレゼント欲しいなら頑張って100点とってください」

唯「あずにゃんのケチ……」

梓「そんなこと言うんだったらこのチャンス取り消してしまってもいいんですよ?」ニコニコ

唯「わー!やりますから!やるからそれだけは勘弁してーっ!!」


・・・・・・


憂「はぁーっ、やーっと宿題終わったぁ」ノビー

憂「もう1時近くかぁ。そろそろ寝なくちゃ」

憂(その前にトイレ行こう……)ガチャ

憂「あれ?お姉ちゃんの部屋まだ電気ついてる」

憂「おねえちゃーん?」ガチャ

唯「なにーういー?」カリカリカリ

憂「まだ勉強してたの?もう1時だしそろそろ寝ないと」

唯「ダメだよ憂。あずにゃんのプレゼントがかかってるんだから」カリカリカリ

憂(お姉ちゃんが真剣だ!)

憂「……わかったよ。でもあんまり無理しないでね?」

唯「わかってるよういー。おやすみ」ニコッ

憂「うん!お姉ちゃんも頑張ってね!」

唯「うん!!」カリカリカリ


その日の帰りのホームルーム



唯「」ソワソワ

律「? なにそわそわしてんだ?」

唯「早くさわちゃん来ないかな」ソワソワ

澪「さわ子先生と何か約束してるの?」

唯「今日古典の小テストあったでしょ?早く結果が知りたいんだ」

紬「今回のは自信あるの唯ちゃん?」

唯「自信あるというか、100点取らないとプレゼントもらえないからね」ソワソワ

澪「ああ……。そういえば梓が昨日そんなこと言ってたな」


ガララッ

さわ子「みんな席についてー。今日の小テスト、堀込先生から預かってきたから皆に返却するわよー」

律「あっ、噂をすればだな。じゃあな唯、健闘を祈る!」スタスタ

唯「うんっ!ありがとりっちゃん」




さわ子「次は……平沢さん!」

唯「は、はいっ!! いたっ!」ガタタッ ゴンッ

和「ちょ、ちょっと唯大丈夫?」

唯「こ、これくらい何ともないから大丈夫!」タタッ


唯(100点とれてるかな……?)

さわ子「平沢さん、今回は頑張ったわね!今回はクラス内で平沢さんが一番の成績よ。はいっ」ペラッ

唯「きゅ、九十五てん……」バタッ

さわ子「おめでとう、平沢さ……ってあれ!?」

さわ子「ちょっと!? 大丈夫!?」

唯「あずにゃ…の……プレゼ…トが……ほしかっ…た……」ガクッ

さわ子「平沢さーん!!?」



放課後

音楽室


唯「」

澪「な、なあ唯。そんなに落ち込むなって。すごいじゃないか!クラスで一番だぞ!」

唯「」

紬「ゆ、唯ちゃん。今日は唯ちゃんの好きなイチゴのショーットケーキ持ってきたのよ~。ねっ?食べよ?」

唯「……いならい」

律「あちゃー……重症だぞこれは」


ガチャ

梓「こんにちはー」

律「ああ、梓来たか」

梓「唯先輩の様子はどうですか?」

澪「それがこんな感じで……」

唯「」

梓「そうとう落ち込んでるみたいですね……」

紬「あと5点だったもんねぇ……」



梓「はぁ、まったくしょうがないですね」ゴソゴソ

梓「唯センパイ」コトッ

唯「……?なにこれあずにゃん」

梓「何って、プレゼントですよ」

唯「えっ……?」

梓「なにそんなに驚いてるんですか?ほら、受け取ってください」

唯「だ、だってあずにゃん私100点取れなかった……」

梓「その答えならもうすぐ分かると思いますよ」ニコッ

唯「……?」


ガチャ

さわ子「みんなやってるー?」

澪「あっ、さわ子先生。こんにちは」

さわ子「唯ちゃん」スタスタ

唯「……なんですか?」

さわ子「唯ちゃんのテストを届けに来たのよ。ほらっ」スッ

唯「あ……。そういえば私ショックでテストの紙落としたままだったんだった……。ありがとう、さわちゃん先生」

唯「……あれっ?ひゃ、100点になってる!!?」



さわ子「実はさっきねー。堀込先生から問題ミスの報告があってね。一問だけ正解の選択肢がなかった問題があったそうよ」

唯「てことはさわちゃん……」

さわ子「ええ。その問題はみんなに得点あげることになったらしいから、唯ちゃんのも100点になったってわけ」

唯「や、やったー!!」ガタッ

紬「よかったね~、唯ちゃん」

唯「ありがとムギちゃん! 私やったよ!」

律「すごいはしゃっぎぷりだな、オイ」

澪「それだけ欲しかったんだろ。梓のプレゼント」

唯「うんっ!」



紬「じゃあみんなでケーキ食べよ?バースデケーキも持ってきてたの~」

梓「そうですね!……あ、ケーキ食べる前に、唯先輩にことお祝いしなきゃですね」

律「そうだな。じゃあ、せーのでいこうぜー。せーのっ!」

澪律紬梓さわ子「唯(ちゃん、唯先輩)誕生日おめでとう(ございます)!」



特にオチもなくおわり

大分遅れたけど唯ちゃんおめでとうございました

第23話

「ドライブ2」

第4話「ドライブ!」の続編(?)的なもの


ある日の音楽室


唯「そういえばさ、澪ちゃんって免許持ってるんだっけ?」

澪「うん。AT限定のだけど」

紬「澪ちゃんもう車に乗れるなんて凄いね~」

澪「よせよムギ。まだまだ初心者だし」

梓「でもこの前澪先輩の車に乗ったときは結構運転 上手だと思いました」

澪「そうかな///」

唯「あずにゃん澪ちゃんの車乗ったことあるの?」

梓「はい。もう大分前ですけど…。一回だけ乗せてもらいました」

唯「ずるい!」

梓「そんなこと言われましても……」

律「そうだぞ梓。抜け駆けして一人だけ澪の車に乗るなんて」

澪「そういうお前はもう2回乗ってるだろ」
律「あり?そうだっけ?」



紬「いいなー、私も澪ちゃんの車乗ってみたいなぁ」

澪?「わかった。じゃあ今度の日曜にみんなでドライブに行こうか」

紬「本当に!?楽しみ!」

唯「どこ行くの!? ヨーロッパ!?」

澪?「どこでも連れてってやるぞ!ヨーロッパでもどこでも」


澪「おいちょっと待て」クルッ

律「そして私のワイルドな運転をぉ……」

澪「お前は私の後ろで何をやってるんだ」グググ……

律「ぐぇぇ……冗談なのにぃ……」



澪「……でもいいかもな。たまには皆でドライブ行くのも」

梓「でも大丈夫ですか?5人乗ると車の中さすがに狭くなってしまうんじゃ……」

澪「大丈夫だ梓。律を置いてくから」

律「おい!!」


律「まったくなんて酷い子なの! お母さんそんな非道な子に育てた覚えはありませんっ!」

澪「お前はもう2回乗ってるんだし、今回はいいだろ」

律「ヤダーッ!私もまた澪の車乗りたいっ!」



澪「そんなこと言われても……。パパの車は4人乗りだしなぁ……」

律「つめれば大丈夫だって!」

梓「シートベルトとかどうするんですか。数足りませんよ」

律「急ブレーキかけられてもふんばる!」

梓「無茶言わないでください」ハァ

紬「澪ちゃん何とかならない?」

澪「うーん……。私まだ初心者だから、定員オーバーのところを警察にみつかってもまずいしなぁ」

律「その時はわいろを渡す!」

梓「…律先輩は黙っててください」



唯「はいはい! 誰か一人自転車でついていくというのはどうでしょうか!」

梓「…さすがに無理だと思います」

唯「ちっちっちー。ロープを澪ちゃんの車につけて、引っ張ってもらえばいいんだよっ!!」

梓「そんなことしたら自転車こわれますよ!?」


梓「はぁ……。わかりました。そういうことなら私、今回は諦めますよ。先輩方だけで楽しんできてください」

唯「いいの?あずにゃん」

梓「私はもう1回乗ってますしね。今回は先輩方に譲ることにします」

紬「なんだか悪いわね、梓ちゃん」



律「……じゃあ私もやめるわー」

梓「……?部長やめるんですか?」

律「ちがうし!! 私も行くのやめるって言ったの!私もなんやかんやで2回乗ってるしな」

唯「あずにゃんよかったねー。これで寂しくないね」

梓「なんで私が寂しがりや屋みたいになってるんですか!?」

律「私はただ梓を一人だけ仲間はずれにするのもどうかなーって思ったんだけどなぁ」

梓「べ、別にいいですよっ。私は気にしませんから」



律「ふーん、そうか。じゃあやっぱり澪たちと一緒に行くことにすっかなー?」

梓「えっ…?」

律「じゃーな、梓。一人で留守番よろしくな」

梓「あ……」ショボーン

律(……おもろい)


律「うそうそ! 日曜日はたくさん遊ぼうぜ梓しゃーん!!」ギューッ

梓「わっ!ちょ、ちょっとやめてくださいよ///」

紬「よかったねー、梓ちゃん」ナデナデ

梓「うぅ……///」



と、いうわけで日曜日は唯・紬は澪の運転する車でドライブ、律・梓はお留守番(?)をすることになりました!


日曜日


紬「澪ちゃんおはよー」

澪「おはようムギ。……あとは唯だけか」

紬「そういえば今日はどこに行くの?」

澪「そういえばまだ決めてなかったな。ムギ、どこがいい?」

紬「うーん……。ホームセンター?」

澪「おいおい。それじゃ近くにもあるし、すぐ終わっちゃうぞ」

紬「それもそうね……。じゃあ百合ヶ丘の遊園地なんてどうかしら?」

澪「百合ヶ丘の遊園地か……。ちょっと遠いけど、いいかもな!」



紬「遠くても大丈夫なの?」

澪「あぁ。百合ヶ丘遊園地なら確か40Kmくらいだから一時間くらいで着くだろうし」

紬「えへへ~、楽しみ~♪」

澪「ムギはよく行くのか?遊園地とか」

紬「ううん。最後にいったのは中学1年の頃だったから……、5年くらい前かしら」

澪「この辺に遊園地ないしな。私も最近は全然行ってないや」

紬「なら今日はいっぱい楽しめそうね♪」

澪「ああ、そうだな。お互い久々だしな」



唯「遅れてごめーん」タタッ

澪「遅いぞ、唯。5分遅刻だ」

唯「えへへへ……。最近急に寒くなってきたから、中々布団から脱出できなくて」

澪「よし。これでみんな揃ったし、そろそろ行こっか?」

唯「そいえばどこ行くの?」

紬「澪ちゃんと話し合ってね、百合ヶ丘の遊園地に行くことになったの」

唯「百合ヶ丘の遊園地!? 私そこ行くの久々だー!」

紬「よかった、唯ちゃんも久しぶりみたいで。今日はいっぱい楽しみましょうね」

唯「ガッテンです!」



澪「じゃあ助手席にはどっちが乗る? それとも2人とも後部座席でもいいけど」

唯「はい! 是非とも助手席に乗ってみたいです!!」

澪「ムギはそれでいい?」

紬「うん。私は澪ちゃんの車に乗れるだけで満足だから」

澪「じゃあ出発するぞー。シートベルトつけるの忘れるなよ」

唯紬「アイアイサー!」


・・・・・・

澪「よし、シートベルト、ドアロック、バックミラーOK。座席の位置も大丈夫!」

澪「唯とムギもシートベルトしたか?」

唯「バッチリだよ!」

紬「ちゃんとつけました~」

澪「じゃあ発進するぞー」

ブロロ……



紬「わー、すごいすごーい! 本当に私澪ちゃんの車に乗ってる……!」

澪「クスッ。まったく、そんなにはしゃぐような事じゃないだろ」

唯「じーっ」

紬「? 唯ちゃんどうしたの?」

唯「いやー、切り替えができるレバー?みたいなのはないかと思って」

澪「シフトレバーのことか?それならここにあるぞ」チョイチョイ

唯「おぉー!じゃあ動かしてみていい!?」

澪「もちろんダメ!! 助手席はそういうことする席じゃないの!」

唯「ぶー……。せっかく何か澪ちゃんのサポートしようと思ったのにぃ……」

澪「むしろ唯には何もしてもらわなかった方が私にとってはありがたいかな……」

唯「ひどいよ澪ちゃん!?」



紬「あ、澪ちゃん! そこにあるのはカーナビ?」

澪「えっ? あぁ、一応な」

紬「へぇー! つけてもらってもいいかしら」キラキラ

澪「うん。どっちにしろその内つけようと思ってたしな。悪いけど唯、カーナビつけてくれ」

唯「おまかせください!」ポチッ

カーナビ「ウィーン」

澪「そしたら目的地入力してくれるか?」

唯「えーと、百合ヶ丘遊園地、と……」ポチポチ



カーナビ「ポンッ 目的地が入力されました」

澪「サンキュー唯。あとで入力する手間が省けたよ」

カーナビ「ポンッ 次の交差点、右です」

紬「わー、しゃべったー♪」

唯「これさえあればヨーロッパでもどこでもいけそうだよ~」

澪「いや、ヨーロッパはさすがに無理だから」



唯「? 何か他にもいろんな機能があるみたいだねこのカーナビ」

澪「あぁ……。言っとくけどそれ全部面白くないぞ」

唯「でもユーモアモードって名前からして面白そうじゃん。ねっ、つけてみてもいい?」

澪「えぇー……。ユーモアモードにするとロクなことがないからなぁ……」

唯「じゃあこの熱血モードってのは?」

澪「熱血モード……? それはまだ試したことないな」

紬「試したことないなら一度つけてみたら?澪ちゃん」

澪「まあユーモアモードよりは多分マシだろうし……。わかった、唯。つけてみてもいいぞ」

唯「わーい!」ポチッ



唯「どんな感じになるのかなー?」ワクワク

カーナビ「ポンッ!! 次の交差点左だッ!!!」

澪「うるさっ!?」



カーナビ「ポンッ 返事はッ!!?」

澪「返事しなきゃダメなの!? は、はいっ」

カーナビ「声が小さい!!!」

澪「は、はいぃ!!!」

紬「うふふ。中学校時代の部活動を思い出すわ」

唯「ムギちゃん意外に体育会系だったの!?」



カーナビ「ポンッ 次の交差点、左だッ!!」

澪「はいっ!!! ……はぁ、ホント変な機能ばっかりだなこのカーナビは」

唯「あれ?何か工事やってるよ」

澪「あれ本当だ。 じゃあ違う道から行くしかないか」

カーナビ「諦めんなよっ!!」

澪「えっ!?」

カーナビ「諦めたらそこで試合終了なんだよ!行ける行ける、絶対行ける!! ネバーギブアーップッ!!」

澪「無茶言うなよ!!」



澪「はぁ……。もう普通のに戻すぞ!まったく何なんだこのカーナビは……」

紬「ちがう道探さなきゃね」

澪「まあ次のとこ左に曲がって、その後元の道に戻っていけば問題ないだろ」


澪「って言ってる間にもう次の交差点か。左に曲がってと」チッカチッカ

唯「あれ?急に坂道になったね」

紬「随分大きな道路に合流するのねー」

澪「あれ?この感じ……。何か嫌な予感が……」

唯「あ!何か料金所とか書いてあるよ!」

澪「やっぱりー!」



紬「高速道路!? まさかあの高速道路なのっ!?」

澪「そうみたいだな……。あぁやっぱりUターンして戻る道もないか」

紬「なら進むしかないわね澪ちゃん! 高速道路に!!」

澪「うぅ……どうしてこんなことに……」

唯「澪ちゃんなんでそんなテンション低いの? 楽しそうじゃん!100キロとかだせるんでしょ?」

澪「それが怖いんだよ。かなりのスピードで車線変更とか合流とかしなきゃだし」

紬「高速教習で大丈夫だったんだし、澪ちゃんならできるわよ」

澪「うーん……。あれ以来高速は走ってないし、自信ないなぁ」

カーナビ「ポンッ 自分に自信を持たないでどうするんだ!! もっと自信を持て!!」

澪「まだついてたのかお前は!」



澪「はぁ……。もうここまで来たら仕方ないか。覚悟を決めていくしかないな」

紬「がんばってー、澪ちゃん」

唯「フレー、フレー! みーおーちゃん!」

カーナビ「ファイトォオオ!! いっぷぁああつ!!」

澪「お前はだまってろ」プチッ


紬「あ、あそこがお金払うところ?」

澪「うん。えーと……私はここから入ればいいのか」

唯「お金払うのなら任せて!」フンスッ

ガコッ

唯「って何もしてないのにゲートが開いたっ!?」

澪「ああ、この車ETCついてるからな」

唯「何それ!? 澪ちゃんすごい!もう一回やって!!」

澪「無茶言うなよ」

紬「帰りにもう一回見せてもらいましょ」

澪「いや、帰りは絶対乗らないから」

唯「えーなんで? 帰りも乗ろうよ」

澪「さっきも言ったけど、怖いんだよ。スピード出すの。 ……あぁ、そんなこと言ってる内にそろそろ合流だ」

紬「サポートなら任せて! 澪ちゃん!後ろは猛スピードできてるけどスペースは十分よ! 入るなら今よ!!」

澪「逆に入りづらいよ!?」



澪「はぁ……。なんとか合流できた」

紬「わぁー、速い! 今何キロくらい出てるの?」

澪「今ちょうど100キロくらいかな」

唯「100キロ! ついに音速をこえた!」

澪「いや、こえてないから」



唯「ねえ澪ちゃん」

澪「なんだ?」

唯「なんかトンネルとかガードレールとか多くて景色あんまりよくないね」

澪「まあその辺は仕方ないさ。高速だし」

唯「お店とかもないし……」

澪「そうだな。でも信号がないのだけは快適かな」

唯「道にも迷わないしね」

澪「確かに。それも大きなメリットだな」チラリ

カーナビ(何か冷たい視線を感じる……)


紬「でも高速道路って意外とまっすぐな道なのね。もっと急なヘアピンカーブとかあるところだと思ってたわ」

澪「どんな高速道路想像してたの!?」


・・・・・・


澪「はぁ……。やーっと高速おりられた……」

唯「もうすぐ着く?」

澪「ああ。もうちょっとじゃないかな。確かあの遊園地、高速道路の近くにあったはずだし」


澪「あっ、噂をすれば。見えてきたぞ」

唯「おぉー!」

紬「大きい観覧車!」

澪「ほんと、いつみても大きいな。県内でも結構大きい方なんだっけか」

紬「観覧車は絶対乗ろうね」

澪「ああ。眺めもいいだろうしな」



唯「あとはジェットコースターも絶対乗ろうね!」

澪「えっ!? わ、私は遠慮しとこうかな……」

唯「澪ちゃん怖いの?」

澪「そそそそんなことないぞ! ただ酔いやすい体質なだけだっ!」

紬「お化け屋敷にも行こうね~」

澪「ムギまで悪ノリしないの!」


遊園地 園内


澪「よし、ついたぞ」

唯「おぉー!!」

紬「ひろーい!」

澪「休日だからか結構にぎわってるな」

紬「まずは何に乗る?」

澪「そうだな……」ジー……

唯「えっ?澪ちゃんあれに乗りたいの?」

紬「あれは……メリーゴーランド?」



澪「へっ……?ち、違う! ただ見てただけだって!」

唯「なーんだ。澪ちゃんったらじっと見てるもんだからてっきり乗りたいのかと思ったよ」

紬「澪ちゃん乗ってみたら?なんだかとても絵になりそう!」

澪「バカいうなよ。大体あれは子供が乗るもんだろ」

唯「だって澪ちゃんああいうの好きそうだし……」

澪「勝手に決めつけるなよ!」



紬「でも楽しそうじゃない? 私、乗ってみようかしら」

唯「それなら私もお供するよムギちゃん!」

澪「えっ!?」


紬「たまには子供心に戻ってみるのもいいかな、って思って」

唯「澪ちゃんも乗ろうよー」

澪「そんなこと言っても恥ずかしくないか?乗ってるの小さい子ばっかだぞ」

唯「みんなで乗れば恥ずかしくないよ!」

澪「逆に目立つような……」



紬「じゃあ私と唯ちゃんだけで乗る?」

唯「そうだね…。澪ちゃん悪いけどちょっと待っててね」

澪「えっ……?」


澪「や、やっぱり私も乗るー」

唯紬(にやり)



紬「その前に私お手洗い行ってくるから先に並んでおいてくれる?」

澪「えっ?うん。わかったよ」

唯「私も行っておこっかな」

澪「唯も行くの?なるべく早く戻ってこいよ」

唯「ガッテン承知の助です! 行こ、ムギちゃん」

紬「はーい」タタッ

澪「大丈夫かなぁ」


数分後

澪「唯たち戻ってこないな……」ソワソワ

係員「次でお待ちのお客様ー、お乗りくださーい!」

澪「うぇっ!? どうしようもう呼ばれちゃった!」

子供たち「キャッキャッ」ゾロゾロ

澪「あ……えと……」

係員「ほら、あなたもお乗りください」

澪「あ……、はい(唯ー!ムギー! 早く来てくれー!!)」



唯「はぁ…、はぁ……!おそくなっちゃった!」

紬「まだ間に合うかしら?」

係員「それでは皆さん、メリーゴーランドスタートです!」


唯「あっ、もう始まっちゃうみたい」

紬「ま、間に合わなかった……」ガックリ

ユイ、ムギ!! オソイゾ!!


紬「? どこからか澪ちゃんの声が……?」

唯「あっ、ムギちゃん!澪ちゃんが乗ってるよ!!」

紬「あら本当だわ! 似合ってるわ~」

澪「そんなことしてないでお前らも早く来てくれよ!今ならまだ間に合うかも……」

唯「写真撮っちゃお」カシャ

澪「唯ぃぃいいいい!!」


数分後

澪「はぁ……酷い目にあった……」

紬「遅れちゃってごめーん」

唯「でもおかげでいい写真が撮れました!」

澪「それはすぐに消しなさい!」

唯「もうあずにゃんにメールで送っちゃった」テヘッ

澪「おい」



澪「はぁ……。梓に送ったってことは確実に律にも見られちゃうだろうな……」

紬「可愛く撮れてたし、いいじゃない♪」

唯「和ちゃんたちにもあとで送ってあげよっと」

澪「やめなさい!」


澪「さて、次は何乗ろうか」

紬「私あれ乗ってみたい!」バッ

唯「コーヒーカップ?」

紬「私、一度コーヒーカップに乗るのが夢だったの……!」

澪「そんなにか!」


澪「まあいいや。じゃあ乗ってみようか」

唯「回すのなら任せて!」

紬「えっ?これ自分でも回せるの?」

唯「うん。真ん中にハンドルあるでしょ?あれを回せばギューン!って回るよ」

紬「本当!? 早速やりましょう!!」


コーヒーカップ内

澪「みんな座ったか?」

唯紬「オッケーです!」

係員「それではコーヒーカップ スタートしまーす」

澪「おっ、始まるみたいだぞ。あんまり回しすぎるなよ」

紬「はーい」グルグルグルグル

澪「って言ったそばからもの凄い勢いで回してるし!?」



紬「わー!これすっごく楽しい!!」グルグル

澪「うわ……目が……」クラクラ

唯「なんか少し気持ち悪くなってきたかも……」


唯「でも負けるわけにはいかない!ムギちゃん、私も加勢するよ!」

紬「ええ!一緒に頑張りましょう唯ちゃん!!」グルグルグル

澪「いや……寧ろもう頑張らないでくれ……。うぇ」


・・・・・・・


澪「あ、あぁ……。やっと、おわった……」フラフラ

唯「め、目がぁ……」クラクラ

紬「二人とも大丈夫!?」ケロッ

唯「ムギちゃん、あんなに回してたのに元気だねぇ……」フラフラ

澪「しばらくまともに歩けそうにないな……」フラフラ

唯「ちょっと休憩させてー……」

紬「そう? じゃあそこのベンチで休憩しましょうか」


数分後

澪「はぁ……。やっと落ち着いてきた……」

紬「みんなー、焼きそば買ってきたわよー」ドサッ

唯「ありがとムギちゃ……って多っ!?」

紬「えへへ……。一杯あったからつい買いすぎちゃった」モグモグ

澪「5個はさすがに多くないか? 結構中身も入ってるし」

唯「いざとなったら私が食べてあげるよ!」

澪「そんなに食べたら太るぞ……」

紬「あっ……美味しかったからもう3つも食べちゃってた……」

澪「ってはやっ!!」



紬「どどどどうしましょう」アセアセ

唯「ムギちゃん!これはカロリーを消費することをしないとだよ!」

紬「なるほど! それだとしたら次行くべきは……」ガシッ

澪「えっ!? お、おいどこ連れてくんだよー」


・・・・・・・


唯紬「ここだね!」

澪「なんでジェットコースターなんだよ!!」

紬「澪ちゃん、カロリーを消費するためよ! がんばって!」

澪「私はそんなに食べてないよ!」


澪「まったく……。私は乗らないからな」

唯「えぇー、いいじゃん澪ちゃん。乗ろうよー」

澪「やだよ。ほ、ほら食後は急激な運動とかは控えろっていうし」

紬「ジェットコースターだし大丈夫よ」

澪「ほ、ほらあんまり大声出すのもみっともないし」

唯「それが醍醐味なんだよ~」

澪「そ、そうだ!これからひつ○のショーンの再放送の時間だ! 唯たちが終わるまでそれ見て待ってるな!あは、あはは……」

唯「ひつじのショ○ンの再放送は明日だよ」

澪「あは……」



紬「ほら、澪ちゃん。乗るわよー」グイッ

澪「離せムギ!! あんなものに乗ったら生きて帰ってこれないぞ!!」

唯「大丈夫だよ、澪ちゃん。ジェットコースターは安心な乗り物だから」ガシッ

澪「急に坂道くだったり、上下逆さまになったりするのに安心なんてできない!」

唯「そのスリルがいいんだよ」

澪「いいや!よく聞け唯! スリルを求めすぎるのはよくないぞ!お金を運用するなら投資より銀行!
  乗り物に乗るならジェットコースターよりゴーカートに乗るべきだっ!!」

唯「意味が分からないよ!?」


紬「澪ちゃん、乗ってみると案外楽しいかもよ?」

澪「そうかなぁ……。私にはあれに乗るメリットが分からないよ」

係員「次のジェットコースターでお待ちのお客様ー、お乗りくださーい」

唯「あ、はじまるって!行こ、ムギちゃん、澪ちゃん!」ガシッ

紬「ええ!」ガシッ

澪「ちょっ!だから私は行かない……!って人の話を聞いてくれぇ……」ズルズル



澪「結局強制的に乗せられてしまった……」ガタガタ

唯「澪ちゃんそんなに怯えなくて大丈夫だよー。落ちたりはしないから」

紬「そうよー。私も初めて乗るときは怖かったけど、慣れれば大丈夫よ」

澪「落ち着け。こういう時は素数を数えるんだ。2、3、5、7、11、13……」ブツブツ

唯「完全に緊張しちゃってるね」



アナウンス「それではジェットコースター、スタートしまーす! 極上のスリルをお楽しみくださーい!」

澪「ひぃっ!? わ、私やっぱり帰るー!」ジタバタ

唯「澪ちゃん、動き始めたのに動いたら危ないよ」

澪「うぅ……。観念して乗るしかないか……」

紬「大丈夫よ、澪ちゃん。すぐに楽しくなるから」

澪「そんなこと言ったってなんか早速 坂を上り始めてるじゃないか!」

唯「これは結構すごいのが来るかもね!」

紬「ええ!」

澪「コワクナイコワクナイコワクナイ……」ブルブル



唯「いよいよ下りだね!」

紬「ドキドキするね~」

澪「ミエナイキコエナイ……」ガタガタ

唯「ほら、澪ちゃん顔あげて」

澪「やだっ!」

紬「あら澪ちゃん、口に青のりがくっついてるわよ」

澪「えっ!?」バッ

ギュォオオオオオ!!!

唯紬「わー!!!」

澪「きゃああああああああ!!?」



・・・・・・

アナウンス「お疲れ様でした。またのご搭乗をお待ちしておりまーす」

唯「楽しかったねー」

紬「うん!」

澪「」

唯「ねっ、澪ちゃ……って気絶してる!?」

紬「澪ちゃん大丈夫!?」ユサユサ

澪「のぼりいちにち…、くだりいっとき…… 」ガクッ

唯「澪ちゃん隊長ー!?」


数分後


澪「はぁ……どんでもない目にあった」

紬「ごめんなさい。まさか澪ちゃんがあんなに苦手だとは思わなくって」

澪「いや、いいんだ。もう過ぎたことだしな」

唯「じゃあ次はお化け屋敷だね!!」

澪「……だからといってこれ以上ふざけるのはやめような?」ゴゴゴ

唯「じょ、冗談ですから!」



澪「というかもう結構な時間だし、そろそろ帰らないと日が暮れちゃうぞ」

唯「えっ!?もうそんな時間なの!?」

紬「冬は日が短いからねぇ」

唯「も、もう少しだけ遊んでこうよ!」

澪「うーん……。あと1つなんか乗るくらいだったらギリギリ大丈夫かな」

紬「だったらあれに乗ろうよ! 観覧車!」

唯「! そうだね!すっかり忘れてたよ!」

澪「確かに、それでしめるのもいいかもな。よし、じゃあ行こうか!」

唯紬「おーっ!」



唯「あー、私観覧車に乗るの久しぶりだ」

紬「私も~」

澪「これは結構景色にも期待できそうだな。桜ヶ丘の方までよく見えそう!」

唯「私の家も見えるかな?」

澪「見えるんじゃないか?まあ探すのは無理だろうけど」

唯「ウォ○リーを探せは得意だから任せて!」

澪「それとこれとじゃまた違うだろ!」



紬「わー、だんだん上昇してきたわ」

澪「これは凄いな。本当に遠くまでよく見える……」

唯「あはは!下に歩ってる人小さーい!人が米粒のようだ!」

澪「なんだよそれ」クスッ



紬「絶景かな~」カシャ

唯「かな~」カシャカシャカシャ

澪「はしゃぎすぎだろ……ってか撮りすぎ!」

唯「……何かさ」

紬「なにー?」

唯「夏フェスの時を思い出すね」

澪「また急だな。まあ、あの時も人たくさんいたしな」

唯「私たちもこんなにたくさんの人の前でさ、いつか演奏したいね」

澪「どうしたんだ急に?」

唯「というか観覧車の上でライブやってみたい!!」

澪「この高さで!?」



唯「いやー、それならお客さんたくさん集まっても大丈夫かなって」

澪「その自信はどこからくるんだ」

紬「こんなにたくさん人を呼ぶなら、もっと頑張らなきゃね」

唯「うん!明日からHTTの宣伝チラシ作って……、あ!広告とかも出しちゃう!?」

澪「まずは練習だろ!」

唯「そ、それは後からでもいいんじゃないかなー?」

澪「たくさんの人を魅了できるバンドに なるためには実力が伴わないと、だろ」

唯「やっぱり練習はしないとダメかー……。わかったよ澪ちゃん!私明日からちゃんと練習するよっ!!」

澪「というか部活で練習することは当たり前のことなんだけどな……」



澪「でも確かに、こんなにたくさんの人の前で、いつか演奏できたらいいなって私も思う」

唯「澪ちゃん……!わかってくれたんだね!」ギューッ

澪「お、おいよせ!こんな狭い中で!」

唯「澪ちゃんぎゅーっ」

澪「お、おい! まったくもう///」

唯「へっへっへー。下に着くまで離しませんぜー」

澪「やめろったらもう///」

紬「あらあら」カシャ

澪「そしてそこ写真撮らない!」


・・・・・・


帰りの車内



澪「はぁー……。今日は楽しかったけど何かどっと疲れたな……」

カーナビ「ポンッ ゴジタクニトウチャクシマシタ」

澪「よーし!やっと着いたー……。おーい唯、ムギ。着いたぞ」

唯紬「zzz」スゥ……

澪「……って二人とも寝てるし。あんなにはしゃいでたもんな」

紬「もうこれ以上回せないわ……」ムニャムニャ

澪「まったく、どんな夢見てるんだか」クスッ

唯「あはは。澪ちゃんそれはお化けじゃなくて遊園地のキャラクターだよ……」ムニャムニャ

澪「こっちは失礼な夢だな!」



澪「おい唯ー、ムギー。着いたぞー。そろそろ起きろ」ユサユサ

紬「うーん……? あら……?寝ちゃってた」

唯「まだ朝じゃない……」ボケー

澪「寝るなら自分ちで寝なさい。いいから起きろ」

唯「ここで寝るからお構いなくー……」グー

澪「かまいます!」



コンコン

澪「まったく……って何だ?誰だ窓ガラス叩いてるのは……」

律『私だよん!』

澪「って律!? な、なんでお前ここにいるんだ!?」

律『澪たちが帰ってくるのを待ってたんだよ! ちょうど今ぐらいが帰ってくる時間かなって』

律『とりあえず外ででこいよ! ガラス越しに話すのも面倒だし」

澪「わざわざ待ってなくたっていいのに……。まあいいや唯、ムギ行こうか」

紬「はーい」ガチャ

律「と見せかけて……隙ありっ!!」バッ

紬「きゃっ!?」

澪「お、おい!何でお前は車の中入ってくるんだよ!」



梓「すみません澪先輩。律先輩ったら澪先輩たちを待つって聞かなくて……」

唯「あ、あずにゃんもいたんだね!ただいまー!」

梓「お、おかえりなさい……です」

澪「で、なんでお前はわざわざ待ってたんだよ」

律「いやー、何かおみやげないかなってー」

紬「ごめんなさい……。すっかり買うの忘れてたわ」

律「そんなー!」ガーン


唯「ごめんねりっちゃん……。ジェットコースターとかで遊ぶのに夢中だったから……」

律「あ! そういえば澪ちゅわん楽しそうにメリーゴーランド乗ってましたしねー!」ガサゴソ

澪「だっ!!! その画像は今すぐ消せ!!」

律「もう待ち受けにしちゃった」パカッ

澪「うわぁー! 何てことしてるんだお前は!!」グググ

律「いやーん、おやめになってー」

梓「それに澪先輩、律先輩さわ子先生とか純にも送ってましたよ」

澪「ほーう?」ゴゴゴ

律「いやー、よく撮れてるから皆に送った方がいいかなって……」

澪「いいわけないだろ!!」ゴチンッ

律「あいたっ!!」



唯「写真といえば……こんな写真も撮れたよ!」ゴソゴソ

梓「? 遊園地の園内の写真ですか?」

唯「観覧車の中から撮ったんだよ!」

律「おー!観覧車!」

唯「ねっ?絶景でしょ!?」

梓「普通園内の光景は撮らないと思うんですが……」

唯「それでね、私たちもこんなに人を集めてバンドできたらいいなって思ったんだー」

梓「人の話を……って急にバンドの話!?」

律「おお、唯がめずらしくまともなことを」



唯「りっちゃんたちもそう思わない?」

律「流石にこんなには集まらないと思うけどな」

唯「あー! りっちゃん私たちの力を甘く見ない方がいいよ!」

紬「そうよ! 私たちにできないことなんてないわ!」

梓「ムギ先輩まで!?」



律「でも確かに。私たち5人が集まれば、無理なことなんてないよな! な、梓?」

梓「まず練習ができてない気がするんですが……」

律「あ、明日からやるし!」

唯「私も明日からちゃんとやります!」

紬「明日からお茶菓子は持ってこない方がいいかしら」

唯律「お茶してからちゃんとやります!!」

梓「それじゃ結局いつもどおりな気が……」

澪「まあ、私ららしいって言えば私ららしいし。これでいいんじゃないかな」

梓「……それもそうですね」



澪「さてと。いつまでもこんなとこで話してたら遅くなっちゃうぞ」

紬「そうね。そろそろ帰ろっか」

梓「ですね」

律「よーし!道案内は任せろー! みんな座席に座ったかー?」

澪「歩いて帰るんだよ!」




カーナビ「こうしてッ!! 軽音部史上二回目のドライブはッ!! フッ!! 静かに!!! 幕ウォオオオオ!! 閉じたァアアアアアーー!!」

澪「そして全然静かじゃない!!!」プチッ



おわる


第24話

「クリスマス」



12月25日。 今年も世界中の子供たちが楽しみにしている クリスマスがやってきました。

クリスマスといえば、サンタさんがやってきて子供たちにプレゼントをくれる特別な日です。

これはそんな世界の子供たちに夢を与えることを仕事とする あるサンタたちの物語です。


           , '⌒⌒ヽ ゚。 o    *       ○            o   。゚      ゚。 o    *        ○
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    ⌒, ' /。三三.三゜三。三三\ヽ    ゚   ⌒ ⌒ ⌒  ⌒  ⌒ヽ  o"   O",'    o   。゚      ゚。 o    *       | つ   「,"|
    , ' /三三三。三三三三三゚三\ヽ  "⌒ " o   ⌒  。    ⌒ヽ    .  、┃,'        .,,..--─-..,,_            !,'っ_ ⊂_,! 
  , ' /三。三三三三三。三三三三三\ヽ""    ⌒    ⌒    ⌒ ヽ。 。.. ヽ┃/,      /,,..,._. : .:.:.:.: .`ヽ、             /   ・ ヽ つ
 ' /o三三三三三o三三三三三三三三\ヽ。  。 ⌒     ヽ⌒ ⌒⌒ヽ  ヽ。 .┃/_/  _,.-'''" " '' - ;_: .:.:.::.:. :.: .ヽ           ●,__ ;;;;;|`: . 、
 ~ )三。三三l)。三三三゜三o三)三三三三\ヽ======='ヽ ヽ ヽ 。ヽ .\ヽ┃__/.,.'´         "' ;: .:.:.:.:.〉::..ヽ       . :´==/: : : : : \: : : \
  )。三三三|ll | ̄| ̄| ̄| ̄||l |三三三三三\)       |.| |.| |||\ヽ ヽ 。 ヽ....ヽ┃/,.'  __,..―-,,..._ ;,: : : .゙'.,;::〈⌒ヽノ`´゙'ゝ / /: /{: :{: : : : : :ヽ: : : :',

  )三三三。|ll |  |  |  |.o ||l |三。三三)   。. |l ̄| ̄l|  || .||  || . ||⌒⌒⌒_||ヽ__┃,'_,./::/‐|:::::::l/┤ハ::"'‐.;,.:'''ヘ. ぐ ; :、( /: :{=/⌒{: : |\}⌒: : ' : : : :}
  )三。三三|ll |  | o.| 。|  ||l |.三三゚三)  ゜  。|l ̄| ̄l|  | |  | ..||    。 .||ヽ__┃_/l:::仏≦ヘ::/ z≦ハl:::|:::::|"':,}  ´゙⌒´ {: :人{ 、 \| 、 ヽ: j: : : :.i
  )三三。三|ll |  |  |  |◎||l |三゚ 〔日)      ̄ ̄ ̄。     。..||  _ __ ||  ┃' /:::リ ヒソ ′ヒソ /::::l:::/:::::!        |/: :ハ y=ミ   ィ=ミ ∧/ ト: |
  )。三三三|ll |。 |  |゚ 。|  ||l |。三三||゜) 。   ゜     。    。||__)ヽ)ヽ.||  ^^_.|::::{        / ::::「) :::::|       |: :j:Y xx     xx / : |ノ: : !
  )三三。三|ll |_|_|_|_||l |三三。||_.)          o        ||゚.。.ノ__ノ|||  ./:::::lハ::仆 .._ -   /:::: /´:|:::::::|        {八: ゝ_  ヽフ  /: : :.:|: ;} }
 ⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒(*´-`,Ⅵ::::ソ勺 7:イV_  |::::::i!         \{\{ >ァr‐七{: : /リ:/|/
          ⌒___⌒⌒       。  "  。  ⌒⌒   o     。 (    ) |::/  |___/ ,ッ'⌒ヽ :::::|          / ,'"~`ヽ :V"::.ヽ
                                                    ソ\ ハ  /:::;::::::::::}::::|            /   {==,==}  :: ..: }
.                                                   /::::/::`'O`":::::::ヽ::::::::i!:::::!         | {  `-'-"   :| .:::i



ゴーン…ゴーン…


梓「あ……12時の鐘……」

梓「今年も私たちの出番がきたみたいだね」

梓「ほら、トナ唯!起きてー?」ユサユサ

唯「んー……?何ー、あずにゃん? お正月はまだだろうが……」ムニャムニャ

梓「何寝ぼけてるんですか!ほら、今日はクリスマスでしょ!」

唯「あーそっかー! そういえばそうだったねー!……じゃあ私寝るね」グー

梓「コラコラコラ」グイッ



唯「えー?今年も走らなきゃダメ?」

梓「当たり前でしょう! 私たちは子供たちに夢を与えるのが仕事ってことになってるんですから」

唯「ちぇっ、わかったよ。じゃあ今年もちゃっちゃっと終わらせますかー!」



唯「ほら、あずにゃんちゃんと掴まった?」

梓「え?ちょっと待って今準備するかr」

唯「待ちません!行くよー!!」ダダッ

梓「うわー!!!」

                                                             .,,.-─-,_
     ________ __ ____ __ _                                  /,,..,._. : .:..`ヽ、 ))
                                                        _,.-'''" " '' - ;_: .:.:.::.: .ヽ

                                                       ,.'´        "' ;: .:.:.:.:.〉::..ヽ
                           ________ __ ____ __ _     ((  ,.'  __,..―-,,..._;,: : : .゙'.,;::〈⌒ヽノ`´゙ゝ,
                                                     ,'_,./       :"'‐.;,.:'''ヘ. ぐ ; :、(

          ∩     ∩                                     `'' - ""''`~^'''~~"'''"~~"''   ´゙⌒´
          | つ   「,"|                      

           !,'っ_ ⊂_,!三==──
           /   ・ ヽ つ                             ,_,,,-::/`'::/~;_;;;..三==──
          ●,__ ;;;;;|`: . 、                           (::::(::/:::::/:::(::::/::::\  /:: ̄:::`ヽ__三==──
         . :´==/: : : : : \: : : \                       /;' '' '' '' '' '' ''j::::::::::::::::r":::/ ̄`ヽ:::::::::::::\__
          / /: :/{: :{: : : : : :ヽ: : : 三==──               /:.ム`  '⌒ ハl::j::::::::::j/        ̄ ̄\:::::::::::::\

       /: :{=/⌒{: : |\}⌒: : ' : : : :}    三==──            |:/○  ○  /::/::::::::/     三==── ̄ ̄ ̄
         {: :人{ 、 \| 、 ヽ: j: : : :.i                    /{xx   xx'u /::/)::::::/'7⌒)
        |/: :ハ y=ミ   ィ=ミ ∧/ ト: |                   /::::ト △     /::/_;/":ヽ/\___
       |: :j:Y xx     xx / : |ノ: :三==──             V ソ勺 7_::イV_/:::::::/ \:::::::::::::::::\三==──
        {八: ゝ_  ヽフ  /: : :.:|: ;} :}                    |/  |___/ ッ'":::::::/      ̄ ̄ ̄ ̄
        \{\{ >ァr‐七{: : /リ:/|/                    i\ ハ  /:::::::::::三==──        _ --、__
          / ,'"~`ヽ :V"::.ヽ                     _/::::::O::`"::::::::::::::/             /  ;;  ゙ー 、

            /   {====}  :: ..: }_________ _   ノノ ̄ ̄.ノノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|                     ヽ 三==──
         | {  `-'-"  :.ノ.::イ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~| l⌒l`l⌒l`|.| ̄          |          '/ ゙iリ      ;;;  ヽ
         ゝ(_~)=====(~_)============="i!             三==── i-'     ',
           j        |              i_____|________ノ.     /゙ー´      , )   ;;    三==──
           /ミ≠|三||キ\彡 ○               ||    ||         /  ;;       );;;ヽ    ノ;
           O ○三○ キ彡 ○"          \\ニ\\二二二二二二二二二フ/(/ ̄ ̄ ̄ `ー───────ー "



梓「ちょっ、トナ唯!!いきなり走り出さないでよっ!」

唯「ちゃんと掴まってって言ったじゃん」

梓「まったく、振り落とされるかと思ったよ」

唯「……で、あずにゃん?最初はどの家に行くの?」

梓「えーと……決めてませんでした」

唯「ちょっ」



梓「だって仕方ないじゃないですか。今年から急にこの辺の管轄に配属されたんですもん」

唯「でも異動してから結構時間あったじゃん」

梓「まあそれはそうですけど。サンタも忙しいんですよ?プレゼント買い出ししたり年末の特番見たり」

唯「……やっぱりサボってたんじゃん」

梓「まあその話はもういいじゃないですか!」

梓「とりあえずプレゼント配りに行きますよ! まずはあの家にしましょう!!」

唯「また適当な決め方だなぁ……」

梓「ほら、ずべこべ言ってないで屋根の上に降りて!」

唯「わかってますよ。ほいさっ」スタッ


・・・・・・

みおの家


みお母「みおちゃん、そろそろ寝ましょう? もう今日は寝る時間よ」

みお「やだっ!今日はサンタさんが来るまでおきてるの!」

みお母「へー?そんなこと言っちゃっていいのかなー?サンタさん、そんなわがままな子がいる家には来ないかもしれないよー?」

みお「や、やっぱり寝るー」

みお母「ふふっ。じゃあ、電気消しちゃうね?おやすみ、みおちゃん」パチッ

みお「うん。おやすみー」


みお(サンタさん、来てくれるかな……?)ドキドキ


数分後


みお(サンタさんが来るまでおきてたいけど……ねむ気が……)ウトウト

ウニャアアアアアア!!?

ドサドサドサッ!!!


みお「!!? な、何の音っ!?」

みお「だ、だんろのあたりから聞こえてきたような……?」ガタガタ

梓「ゲホッ、ゴホッ……! ちょっとトナ唯!急に突き落とさないでくれる!?」

唯「あずにゃんが怖がっていつまでも降りようとしないのがいけないんじゃん」

梓「ああああれは呼吸をきちんと整えてから降りようとしただけ!」

唯「もしかして あずにゃんってサンタなのに高いところ苦手?」プププ

梓「なっ……!そ、そんなわけないでしょう!!」

ギャーギャー

みお「だ、だれかしらない人がいる!!」



みお「あ、あのう……」

梓「なんですか!!?」クワッ

みお「ひいっ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」ブルブル

唯「ちょっ……。サンタが子供怖がらせてどうするの」

梓「あっ……」



梓「あのね、私はね……」

みお「ごめんなさいごめんなさい」ブルブル

唯「まだ怖がってるし……。こうなったらあずにゃん! 早くプレゼントをっ!」

梓「はいっ!!」ゴソゴソ



梓「はい、プレゼントだよ」

みお「グスッ……。うぇっ……?プレゼント?」

梓「そう。今日は私、プレゼントを届けに来たんだよ」

みお「わ、わたしに……? おねえさん、もしかしてサンタさん……なの?」

梓「そうだよ。この辺の管轄に入ったのは今t……ムグッ」

唯「そ、そうなの!このお姉さんはサンタさんで、みんなにプレゼントを配ってる途中なんだよー!(子供たちの夢を壊さないの!)」

みお「へぇー……!」キラキラ



梓「じゃあプレゼント、枕のとこに置いておくね」スッ

みお「あけてもいい?」

梓「もちろん。私がサンタ協会の補助金で買っ……ムググ」

唯「どうぞどうぞ! どんどん開けちゃって!(余計なこと言わないの!!)」


みお「うん!ありがとう!」パカッ



みお「わー! かわいいくまのぬいぐるみ……! ありがとう!サンタさん!!」

梓「どういたしまして。いい年末を過ごしてね」ナデナデ

みお「えへへぇ///」

唯「じゃあ私たちそろそろ行かなきゃ。他の子たちも待ってるから」

みお「来年もきてくれる?」

梓「うん。私が来年もこの管k」 唯「もちろんだよ!絶対来るから!だから楽しみに待っててね」

みお「うんっ!!」


・・・・・・・

数分後



みおパパ「みおちゃーん?はいるよー」ガチャ

みお「zzz」

みおパパ「よし寝てるな。早速プレゼントを……ってあれ?」

みおパパ「えっ!? な、なぜ……!?(どうして私が今プレゼントしようとしたぬいぐるみをみおちゃん抱いて眠ってるんだ……!?」

みお「んー……サンタさんー……zzz」

みおパパ「サンタ……?」

シャンシャンシャンシャン……

みおパパ(……確かに、気のせいかもしれないがどこからか鈴の音が聞こえる……)

みおパパ「……本当に、いたのかもしれらいな」


シャンシャンシャンシャン


梓「ほらトナ唯! もっと鈴大きな音で鳴らして!」

唯「そんなこと言われてもー!こっちも足動かさなきゃだし結構きついんだよ!そんなに言うならあずにゃんが鳴らせばいいじゃん!」

梓「私だって次どこの家にするか決めるのに忙しいんです!」

唯「鈴鳴らしながら考えればいいでしょ」

梓「いやですよ面倒くさい」

唯「ちょっ」



唯「はぁ、これが本当に子どもたちに夢を配るサンタの姿なのかな。 面接とか大丈夫だったの?」

梓「まあそれなりに取り繕いましたから」

唯「いや取り繕っちゃダメでしょ。サンタになろうとする人が」

梓「もう!細かいことはいいじゃないですか!」

梓「ホラ、次はあの家にしますよ!降りる準備して!」

唯「ハーイ……。ってこの家煙突ないよ」

梓「あっ、本当だ。仕方ない、ちょっとめんどくさいけど……」


りつの家


りつ母「ほらりっちゃん!テレビはもう終わり!そろそろ寝なさい!」

りつ「えー!? 今日ぐらいいいじゃん!せっかくのクリスマスなのにー!」

りつ母「ダーメ。冬休みだからって、夜更かしするのは体によくないわよ! もう寝ときなさい」

りつ「ちぇっ……。はーい……」シブシブ



りつの部屋

りつ母「じゃありっちゃんおやすみ」

りつ「うん!おやすみー。おかあさんプレゼントよろしくねー」

りつ母「はいはい。あとで枕元に置いておくね」

りつ「うんっ!!」



数分後

りつ(プレゼント何かなー?)ワクワク

コンコン

りつ「ん? まどのほうからなんか音がするぞ」

りつ(なんだー?)ガララッ

梓「メリークリスマース!!」ズカズカ

りつ「うわぁあああ!!?」


唯「ちょっ……!あずにゃん許可もとらずに勝手に入っていいの!?」

梓「大丈夫です。令状もありますし」ペラッ

唯「そんなのまであるの!?」



りつ「ていうかおまえたち何ものだ! おかあさんじゃないのにプレゼントもってるし!」

梓「何言ってるの。あなたの家にプレゼント配りにきたに決まってるでしょう。はい、プレゼント」スッ

りつ「い、いみわかんねー!!」

りつ「サンタさんなんて本当はいないはずだろ!クリスマスにプレゼントくれるのは本当はおとうさんやおかあさんなんだろ!?
   わたしはしってるんだ!」

唯「と、とりあえず落ち着こう?」

りつ「だからおねえさんたちは きっとにせものだ!! けーさつをよぶぞ!」

唯「ちょっ……あずにゃん! どうしよう!!」

梓「大丈夫だから。ほら、キミとりあえずプレゼントあけてごらん?」

りつ「……わなじゃないよな?」

梓「そんなことサンタがするわけないでしょ?何なら私が代わりに開けてあげようか」

りつ「……いい」パカッ



りつ「! わー!!わたしがほしかったかわいいカチューシャだ!!」

梓「ふふっ。どう?これで私がサンタだって信じてもらえた?」

りつ「うん! ……でもサンタさんってもっとひげがもじゃもじゃのおじさんかと思ってた」

梓「今の時代、サンタにもいろいろいるんだよ。鼻の光らない喋るトナカイもいるくらいだしね」

唯「それって私のこと!? ひどーい!」

りつ「へぇ……。へんなサンタもいるんだね」

梓「じゃあプレゼントもあげられたし、私たちそろそろ行くね?」

りつ「うん! ありがとうへんなサンタのおねえさんたち!!」

唯(結局変なサンタで覚えられちゃった!!)


数分後


ガチャ

りつ母「さて、りっちゃんにプレゼントあげなきゃ」

りつ「zzz」

りつ母「ぐっすり寝てるわね。じゃあプレゼントを……」

りつ母「……あら?この子カチューシャ握りしめて寝てるわ」

りつ母「結構いいカチューシャね。でもこんなの買ったことあったかしら……?」

りつ「んー……ありがとー……へんなサンター……。zzz」

りつ母「えっ?サンタ……? まさか」

シャンシャンシャンシャン……

りつ母「鈴の音……?」

りつ母(空想の世界の話だとずっと思っていたけど……。本当は、いたのかもしれないわね)


・・・・・・


シャンシャンシャンシャンシャン……

梓「ハァー、ハァーッ……。鈴鳴らすのも結構疲れるんですね」

唯「でしょ?これで少しは私の気持ちが分かったでしょ?あずにゃん」

梓「もう鳴らさなくていいや」ポイッ

唯「って何やってんの! ダメでしょ!サンタとあろうものが鈴捨てちゃ」

唯「鈴の音はサンタのトレードマークなんだから!サンタ協会法でも定められてたよね?」

梓「うっ……。分かりましたよ。鳴らせばいいんでしょう鳴らせば! まったく仕方ありませんね……」シャンシャン

唯「……あずにゃん、こんなんでよく今までサンタやってこれたね……」

梓「いいじゃないですか、たまにはやさぐれサンタがいても。色んなサンタがいた方が面白いでしょ?」

唯「そういう問題じゃないと思う」キッパリ



梓「も、もうその話はこのくらいにして次の家行きますよ!! ほら、降りる準備する!」

唯「ほいほい……」

唯「てかこの家大きい……いやでかすぎるよね!? 大豪邸だよ!!」

梓「確かに煙突もものすごいでかいですね……。入りやすくていいですけど」

唯「じゃああずにゃん、いこっか」

梓「また突き落とさないでくださいよ?」

唯「えっ?」ドンッ

梓「やっぱりこうなるんですかー!」ヒューン……


・・・・・・


つむぎの部屋

斉藤「お嬢様、そろそろお休みの時間でございます」

つむぎ「あら本当、もうそんな時間なのね。…斉藤、今日のパーティーは楽しかった?」

斉藤「はっ。私も存分に楽しませて頂きました」

つむぎ「うふふ……。よかった」

斉藤「では、電気の方を消させて頂きますね」パチッ

斉藤「では私はこれで。お休みなさいませ、お嬢様」

つむぎ「まって、斎藤」

斉藤「何でございましょうか」

つむぎ「……今年はサンタさん、くるかしら」



斉藤「サンタ様ですか……。今年も、必ずお越しになると思われますが」

つむぎ「でも去年もおととしもこなかったじゃない」

斉藤「お、お嬢様……? しかし去年も一昨年もプレゼントを貰っておられたはずでは……?」

つむぎ「……だって知ってるもの。あれは本当はサンタさんからじゃなくてお父さまからのプレゼントなんでしょう?」

斉藤(き、気づいておられたのですかお嬢様……)

斉藤「し、しかしそれはあくまでもお父様が サンタ様から受けっとったプレゼントを代わりに渡しているだけであって……」

つむぎ「ううん、いいのよ斉藤。サンタさんは、本当はいないってこと、わたしわかってるから」

斉藤「お嬢様……」



つむぎ「……ごめんなさい。こんなことお父さまに知られたら、きっとゆめのない子だと思われちゃうわよね」

つむぎ「だから斉藤、このことはお父さまには内しょにしておいてね?」

斉藤「……はっ。もちろんでございます」

つむぎ「うふふ。じゃあ今度こそおやすみなさい」

斉藤「おやすみなさいませ、お嬢様」バタン



つむぎ(……やっぱり斉藤にあんなこというべきじゃなかったかしら。でも、サンタさんはげん実には……)

ニャァアアアアアア!!? ドサドサドサッ

つむぎ「!? な、なに!?」ガバッ



つむぎ「まさか、しん入者!? 今すぐSPに連らくを……」

梓「ま、待って!私は怪しい人じゃない! サンタ!」

つむぎ「え……?サンタ、さん……なの?」

梓「はい。正真正銘、本物のサンタクロースですよ」

つむぎ「!! ほ、本当にサンタさんが来てくれたの!? わたしの家に!?」

唯「そうだよー。私たちはそれが仕事だからね」

つむぎ「わぁー……! 本当にいたんだぁ……!」

梓「当然だよ。やっぱり子供たちに夢を与える人がどこかにいなきゃね。はい、これプレゼントだよ」

つむぎ「……あっ」スッ

梓「どうしたの手引っ込めて? あっ、もしかして手とかケガしてた? じゃあ机の上にでも」

つむぎ「まって!」


梓「えっ?」

つむぎ「……わたしにはプレゼントを受け取るしかくはないわ……」

唯「なんで? あ、ほかのプレゼントの方がよかった?取り替えようか?」

つむぎ「そういうことじゃなくって! その……。わたしはサンタさんなんていないって思ってたゆめのない子どもだから……」


つむぎ「だから、サンタさんからプレゼントをもらうなんてできないわ」

梓「それが理由?」

つむぎ「えっ……?」

梓「言ったでしょ?私たちには子供たちに夢を与える義務があるって」

つむぎ「そ、それはそうかもしれないけど……」



梓「それにつむぎちゃんは本当はサンタさんのこと信じてたんじゃない?」

つむぎ「そ、そんなことないわ、よ……」

梓「だったらベットに吊るしてあるくつ下なあに?」クスクス

つむぎ「! あ、それは……その……」

梓「つむぎちゃんはきっとサンタさんがいないって自分を無理やり納得させてただけだよ。でも大丈夫だよ。現にここにサンタはいるからね」

唯「そうだよつむぎちゃん! 何も遠慮することはないんだよ!」

つむぎ「で、でも……」



梓「じゃあいらないのなら帰っちゃうよ」クルッ

つむぎ「えっ……」

梓「他の子も待ってるからね。いらないというんなら仕方ないね」

梓「ほら、トナ唯行くよ」

唯「えっ!? う、うん」

つむぎ「ま、まって!!」


つむぎ「……やっぱりプレゼント、ほしいです!」

梓「ふふっ、やっぱり欲しいんじゃん。はい、プレゼントだよ」スッ

つむぎ「うぅ……///」



つむぎ「あ、あのあけてもいいですか?」

唯「もちろんだよ!! どうぞどうぞ!」

つむぎ「あ、ありがとう」パカッ


つむぎ「……わー!すてきなティーカップ……! これ本当にもらっていいんですか?」

梓「もちろんだよ。大切にしてね」

唯「また来年も来るから。楽しみにしててね」

つむぎ「……うんっ!」

琴吹家 モニタールーム

『来年も来るから、楽しみにしててね』

『うんっ!!』


斉藤「……まさか、本当に存在したとは…」

紬父「あぁ。私もこの目で見たのは初めてだよ。侵入者かと思ったらまさかサンタであったとはな」

紬父「よし、お前たちはもう下がっていいぞ」

SPたち「はっ」

斉藤「しかしまだ私には信じられませぬ……」

紬父「私もおとぎ話の中だけのものだと思っていたが……。それは我々の決めつけだったのかもな」

紬父「しかし今年はせっかく衣装を新調したのに残念だな……。まさか本物が来るとはな、一本取られたよ」

斉藤「旦那様もお嬢様にプレゼントをあげてこられてはどうですか?」

紬父「私も?」

斉藤「プレゼントを二つ貰って喜ばぬ子供はおりませんよ」

紬父「ふふ……。それもそうだな……。よし、では今年も一つ、夢を運んでくるとしよう」

斉藤「行ってらっしゃいませ、旦那様」


・・・・・・


十数年後の12月25日

音楽室



律「澪ー、もうこのくらいでいいんじゃねーか?」

澪「そうだな、大分片付いたしな。よし、じゃあそろそろ終わ……」ゴソゴソ

澪「……あっ」

紬「? どうしたの澪ちゃん」

澪「いや、懐かしいぬいぐるみが出てきたなって思って」

律「随分ボロボロだな。これ澪のか? 汚いし捨てちゃった方がいいんじゃねー?」

澪「そ、それはダメ!!」

律「あ、わりぃ。大切なものだったか」

澪「うん。もういつだったか忘れたけど、サンタさんに貰ったものだから……」

律紬「サンタ!?」


律「ぷぷぷ!みおちゅわんはもしかしてまだサンタを信じてるんでちゅかー!?」

澪「ち、違う! でもこれは本当に貰ったんだよ!サンタさんに!」

紬「あ……そういえば私もだいぶ前だったけど、サンタさんにプレゼント貰ったことがあったわ」ガサゴソ

紬「ほら、このティーカップ」スッ

律「またまたー。二人とも寝ぼけてて親か誰かと勘違いしたんじゃねーの?」

紬「いいえりっちゃん!あれは間違いなくサンタだったわ!

澪「そ、そうだ!私も間違いなくサンタさんを見た!」

律「本当かよー。大体サンタなんて空想の世界の話で……」

律「……ってあれ?そういえば私も一回だけサンタにプレゼント貰ったことあったような……?」

澪「!! 律、お前もか!!」ガシッ

律「うわー!急に仲間認定するなよ! もしかしたら寝ぼけてただけかもしれないし……」

紬「サンタは絶対いると思います!」

律「どこからそんな自信が!? 根拠はあるのかよ」

紬「ありません!」

律「ないんかい!」


ガチャ

唯「みんな遅くなってごめーん」

梓「遅れてすみません」

澪律紬「……」

唯「え……あれ? み、みんなどうしたの固まっちゃって」

澪「サンタ……」

梓「えっ?」

澪「そういえば私が見たサンタって唯と梓に似てた!!」

唯梓「えぇ!?」


紬「本当……! 思い起こしてみれば唯ちゃんと梓ちゃんにそっくりだったわ」

律「言われてみれば私が見たのも唯と梓に似てたきが……」

梓「あ、あの? 何の話ですか……?」

澪「ああ。ただ昔サンタさんからプレゼント貰った時のこと話してただけだよ。大した話じゃない」

梓「普通に凄い話に聞こえるんですが!?」



ガチャ

さわ子「みんなメリークリスマース! プレゼント持ってきたわよ」

唯「おおっ。サンタの話をしてたらさわちゃんサンタ登場」

律「なんだよプレゼントって……。まさかコスプレ衣装とかじゃないよな」

さわ子「その通りよ!! サンタのコスプレ衣装でーす!」

律「却下」

さわ子「えぇー……。せっかく作ったのに……」

紬「うふふ。 そろそろみんなでケーキ食べましょ?今日はクリスマスケーキ持ってきたの」

唯律さわ子「食べます!!」



梓「はぁ……。今年最後の登校日なのにいつも通りですね……」

唯「練習は来年からやります!」

律「来年から本気だす」

澪「まったく信用できない!」


紬「澪ちゃんも梓ちゃんもケーキ食べましょ?」

澪「ありがとムギ。……まあ今日くらいはいいか。ゆっくりケーキでも食べて楽しもう?梓」

梓「……そうですね!」

シャンシャンシャンシャン……



紬「あら?鈴の音?」

律「なんだよさわちゃん。鈴まで持ってきてたのかよ。テンション高ぇーなぁ」

さわ子「え? 私じゃないわよ」

律「あり?そうなの? じゃあ幻聴か」

澪「いや違う律! これはきっとサンタさんだ!」

律「あらやだこの子ったら。まだそんなこと言ってるのかしらん」

唯「そういえばりっちゃんたちさっきは結局何の話してたの?」

梓「私も気になります」

律「ああ、あれはな、幼い純粋なみおちゃんがサンタさんからプレゼントを貰うっていう心温まる……」

澪「お前も貰ったことあるって言ってただろ!」


・・・・・・

トナ唯「あの子たち、元気みたいでよかったね」

あずサンタ「うん……。私たちのそっくりさんが同じ部にいてびっくりしたけど」


トナ唯「……じゃああずにゃん、今年は久々にこの管轄に戻ってきたわけだし。そろそろプレゼント配る準備しよっか?」

あずサンタ「そうだね。 あっ、鈴はトナ唯よろしくね」

トナ唯「はいはい。結局こうなるのね……」

シャンシャンシャンシャン……



あずサンタ「次はあなたの家にいくかもしれませんよ」


おわる

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