グリシャ「進撃名作劇場」(524)

このSSは進撃キャラを童話のキャラに当てはめて物語を進行してゆくSSです。
キャラ崩壊、原作10巻までのネタバレがありますので閲覧注意。
また初心者ですので遅筆になります。
至らない点などありましたら、御指導の程宜しくお願いいたします。

では次よりスタートです。

グリシャ「進撃名作劇場、『白雪姫』」

グリシャ「むかしむかし、あるところに心優しいお妃さまが居ました」

グリシャ「しかしそのお妃さまは体が弱く、なかなか子供が出来ませんでした」



カルラ「はぁ……何時になったら子宝に恵まれるのかしら」チクチク

カルラ「…いたっ!――やだ、指刺しちゃったわ」

カルラ「あ、雪に血が……。私の子供も、雪みたいな白い肌と血みたいな赤い唇を持った、綺麗な子が良いわねぇ」

カルラ「――でも、産まれたらどんな子でも可愛いと思っちゃうかも。うふふ」チクチク

グリシャ「その後、お妃さまの願いが通じたのか、雪のような白い肌と血のような赤い唇をもつ可愛い子が産まれました」


赤ん坊「ふぇあぁあ!ふぇあぁあ!」

カルラ「ああ、可愛い赤ちゃん…。そうね、あなたの名前は…エレン。エレン・シュネーヴァイス(注釈:独語で白い雪)よ…」



グリシャ「しかしお妃さまはその直後、産後の肥立ちが悪く、そのままお亡くなりになってしまいました」

グリシャ「白雪と名付けられたエレンは、それは美しく育ちました」

グリシャ「そんなエレンが9つになる頃、新しいお妃さまが現れました」

グリシャ「新しいお妃さまは大変いじわるな性格で、いつも自分が一番でなければ気が済まない性分でした」



ユミル「私はこれからも好き勝手に面白く生きてやるのさ!」

グリシャ「いじわるなお妃さまは、精霊が宿った魔法の鏡を持っており、様々な質問をしておりました」

グリシャ「特に多かったのが、『この世界で誰が一番美しいか』と言う質問でした」




ユミル「鏡よ鏡よ鏡さん、この世界で一番美しいのはクリスタだ。いいね?」

サシャ「ええっ!?アッハイ」

エレン「おい終わっちまったぞ」

初心者だと言ったな?
あれは嘘だ。

ユミル「さて気を取り直して、オイ鏡。世界で一番美しいのはこの私だろ?」

サシャ「えーっと、そうですねぇ……」


―…エレン……―

サシャ(!?)

―…エレンと言え……―

サシャ(なに!?なんか変な声聞こえちょるんやけど!)

―…エレンだぁあああああ!―




サシャ「うひゃあああ!エレン!エレンですぅ!(だから脳内の声を止めてぇ!)」

ユミル「ぁあ゙!?なんでクリスタじゃねーんだよエレンの野郎!許さん!」ガシャンガシャン

サシャ「割らないで!」

グリシャ「鏡の答えに腹を立てたお妃さまは、エレンを殺そうと狩人にけしかけました」


ユミル「いいか!殺したって証拠にエレンの心臓を持ってくるんだぞ!」





ハンネス「とは言われたものの、カルラ様には世話になったし、俺あのお妃さま嫌いなんだよなぁ」

ハンネス「と言うわけで、エレン。適当に逃げとけ。俺がなんとかごまかしとくから」

エレン「適当に、って……」

ハンネス「そうだ。向こうの森の中に7人のドワーフたちが住み着いてるんだが、その内の1人が随分賢いらしい」

ハンネス「そいつに頼ればなんとかなるかもしれん」

エレン「……まあ他に手も無いし、行ってみるよ。ありがとうハンネスさん、気をつけろよ!」ソソクサ

ハンネス「おう。向こうに着いたら手紙寄越せよ!あと寝る前に歯磨き忘れるなよ~!」

ハンネス「……行ったか。達者でなエレン」

ハンネス「さて、適当に獣の心臓でも見繕って帰んべー」



ハンネス「お妃さまー心臓持ってきたぞ」

ユミル「でかしたおっさん!お祝いだ!」

ハンネス「活きが良いヤツだぞ。おい七輪とタレ持ってこい!あと酒!」

サシャ「やっほーい!」

グリシャ「お妃さまが狩人と獣の心臓で一杯やっているころ、白雪は7人の小人の住む森へとたどり着きました」

グリシャ「偶然にも、仕事帰りの7人の小人は、白雪姫の前を通りかかったのです」



女型『ハイホーハイホー』ズシンズシン

鎧『実際仕事ガ好キ』ズシンズシン

超大型『残業ヨロコンデー』ズゥゥンズゥゥン


エレン「小人め……一匹残らず駆逐してやる!!」ギリッ

エレン「……と言うわけで行くあてが無いんだ」

アルミン「それは大変だね……」

ジャン「こんなヤツ匿うこたぁねえぜ!お妃に目を付けられちまう!」

クリスタ「そんなことをいったら白雪がかわいそうだよ!」

ライナー「ヘブシっ!……ベルトルト、どうする?」ズズ

ベルトルト「どうしよっかなー……」ネムイ

アニ「……しらない人、こわい」

コニー「……」


エレン「なあ、そこの丸坊主はなんで喋らないんだ?」

ジャン「アイツはぼんくらだから自分が喋られるかどうかすら考えてねぇのさ!」

エレン「なあ頼むよ!宿代なら身の回りの宝石で工面できるからさ!」

アルミン「うーん。僕らドワーフからすれば人間のお金なんて、大して価値がないんだ」

クリスタ「掘れば鉱石や金は出るからね」

ジャン「決まりだ!帰れ!」

ライナー「まあまあジャン、落ちつけヘブションッ!」

ベルトルト「くかー」

アニ「ベルトルト起きて、風邪ひく……」

コニー「……」




アルミン「じゃあこうしよう!白雪、君は僕らの家で炊事洗濯掃除などをやってくれ。その代わり君の衣食住は保証しよう!」

ジャン以外「それがいい!そうしよう!」

ジャン「待てよ!俺はこいつが気にいらねぇ。何でかわかんねえがすげえ気にいらねぇ!コイツに家の敷居は跨がせねぇ!」

エレン「こいつ何でこんなに怒ってんの?」

クリスタ「ごめんねっ!ジャンは怒りんぼなの」ペコペコ

アルミン「ジャン、僕達は仕事ばかりで家事が疎かだったんだし、これは渡りに船だよ」

ジャン「だけどよぉ!」

ライナー「俺はお手伝いさんがいると助かるな。ヒェックショイ!」

ベルトルト「もなずくー……すー」zzz

アニ「怖いけど、がまんする」

コニー「……」


ジャン「ケッ、分かったよ!勝手にしな!」

エレン「悪いなみんな。俺頑張って家事するよ!」

グリシャ「こうして白雪は、7人の小人の家にご厄介になることにしました」

グリシャ「7人の小人は個性的で、1人として似たような小人は居ません」


グリシャ「リーダーで物知りのアルミン。怒りっぽくて苛々しているジャン。いつでも笑顔で周りを和ませるクリスタ。」

グリシャ「くしゃみが癖のライナー。おおらかで寝坊助のベルトルト。恥ずかしがり屋ですぐ顔を赤らめるアニ」

グリシャ「そしてぼんくらで、いつもボーっとしているコニー」

グリシャ「白雪は彼らにとても良くしてもらいました。そんな彼らとの生活も早くも一年が過ぎようとしています」

エレン「飯出来たぞー」

小人達「いただきまーす」

ジャン「まずい!まずいぞ!出てけ!」ガツガツ

エレン「と良いつつ食ってんじゃん」ガツガツ

アルミン「おいしいねっ」ハムハム

クリスタ「おいしいね~」ハムハム

ライナー「胡椒、コショウ~っと……ブェックショイ!」ブワワ

ベルトルト「くぅー、くぅー……」

アニ「ベルトルト起きて」

コニー「」モグモグ






???「…………」

グリシャ「さて、悪いお妃さまは、再び魔法の鏡へ質問をしたのです」



ユミル「鏡ぃー。もう白雪死んだし私が美人ってことでいいよねー」グデーン

サシャ「ほらほらお腹しまいましょうね、お行儀悪い。……あれ?白雪生きてますね?」

ユミル「マジ?」ガバッ

サシャ「マジマジです」

ユミル「ちっ、あのオッサン騙しやがったな。くっそ面倒くせ!」ガッシャンガッシャン

サシャ「割らないでっ!」


ユミル「こーなりゃ、私が直接引導を渡すしかねーわさ。キヒヒ!」

グリシャ「白雪が生きていることに腹を立てばお妃さまは、遂に自分の手で白雪を殺そうと決意しました」

グリシャ「もちろん白雪と7人の小人は、そんな事知る由もありません。はてさて、白雪は無事に生き延びることが出来るのでしょうか?」


エレン「ヘックショイ!」

ライナー「ブェックショイ!」

ジャン「風邪か!出てけ!」

アルミン「薬草持ってくる?」

エレン「大丈夫だ。誰かうわさしてんだよ」ズズ

グリシャ「白雪がドワーフ達の住む森に居ると知ったお妃さまは、物売りの老婆に化けて白雪を捜します」



ユミル「さーてと、白雪くんはどこかなーっと……。お!あれは小人!丁度いい、アイツに聞いてみよう」

ユミル「おいそこのチビ!」



クリスタ「なーに?」トテテ

ユミル「」ズッキューン

ユミル「結婚しよ」

クリスタ「?」キョトン

ユミル「あ、ごめん間違えた。……この辺でとても可愛い男の子を見なかったかい?」

クリスタ(可愛い男の子……白雪かしら?)

クリスタ「多分その子ならお花畑にいると思うな」

ユミル「よーしよし、良いこだねえ」ナデナデ

クリスタ「むふー♪」

ユミル「じゃあ私はそっち行ってみようかね。お仕事頑張るんだよ……」ソソクサ

クリスタ「ありがとー!」手ピラピラ




グリシャ「なんと、優しいクリスタは白雪の居場所をお妃さまに話してしまったではありませんか!」

グリシャ「お妃さまのことなどつゆ知らず、白雪はお花畑で花占いをしておりました」





エレン「俺は巨人を駆逐出来る、出来ない、出来る……」プチップチップチッ

ユミル(なんつー物騒な占いしてやがる。全くなんであんなのが……)

ユミル(まあいい。白雪ぃー、今日がお前の命日だぜぇー……ケヘヘ)




ユミル「もしもし、そこの可愛い坊や?」

エレン「駆逐ゥ!?」ビクン

ユミル「何だよその返事。……私は物売りなんだけどね、このハーネス居るかい?」スッ

エレン「お!リヴァイ兵長モデルの立体起動装置用ハーネスだ!……でもお高いんだろ?」

ユミル「いやいやぁ、これはお試し品さ。実際に着けて感想を聞かせとくれよ……」

エレン「マジで!?やるよ!」ウキウキ

ユミル「じゃあ私が着けてあげるからね……。動くんじゃないよ?」

エレン「早く早く!」

ユミル(かかったなアホが!このまま締め殺してやるよ!)


シュル……キュッ、ギュウウウ





エレン「…………」←亀甲縛り

エレン「いやなんでだよ」

ユミル「あれー?おっかしーな」

ユミル「悪いねぇ。今直すからね……」

エレン「はーやーくはーやーくー!」ジタバタ

ユミル「動くなって!……そらっ!」

エレン「んぎゅぅぅ首入っ……くっ、ぇえ゙っ!」ギリギリ




エレン「」チーン

ユミル「ハァーッ!ハァーッ!よっしゃ!白雪姫完ッ!誰か来る前にさっさととんずらよ!」ピュー



グリシャ「かわいそうな白雪は、お妃さまに紐で締められ、息絶えてしまいました……」

グリシャ「白雪が息絶えてから暫くすると、薬草を積みに来たアルミンが白雪を見つけました」


アルミン「白雪どうしたの?こんなところで寝ていると風邪引くよ?」

エレン「」チーン

アルミン「白雪?」

エレン「」チーン

アルミン「……!大変だ!みんなー!」



グリシャ「アルミンが大声で叫ぶと、他の小人が一斉に集まって来ました」


女型『ドウシタノ!?』ドシンドシン

鎧『事件ナノカ!……ブェェックショォーイッ!?』ビュオオオオ

クリスタ「おちるー!」ビュオオオオ

ジャン「馬鹿やろー!」ビュオオオオ

コニー「……!」ビュオオオオ

超大型『眠イ……』ウツラウツラ

アルミン「みんな大変だ!白雪が息してない!」

小人達「な、なんだってー!?」

ジャン「うわあああ何でだよ馬鹿やろー!」ビエエン

クリスタ「やだよぉ……。白雪ぃ……」クスンクスン

コニー「」ジワワ

ライナー「な、何とかならないのか!?」

アニ「わ、わかんないよ……」グスッ

ベルトルト「とにかく、ハーネスを切ろう……」

アルミン「うん……」


チョキチョキチョキチョキ


エレン「……ッハァ!ハァーッ!ハァーッ!」

小人達「キェァアア!イキカエッタアアアアアア!」



グリシャ「小人達がハーネスを切ると、なんと白雪が息を吹き返したではありませんか!」

エレン(亀甲縛り)「悪い、助かった……」ゼェハァ

ジャン「ふん!そのままくたばっちまえば良かったのにな!」

ライナー「泣いて心配してた癖に良く言うぜ……ブェックシ」

アルミン「あぁあ良かったよ白雪!」

クリスタ「良かったよーぅ!」ビエエン

アニ「……ぅ、無事でよかった」

ベルトルト「安心したら眠くなっちゃったよ」

コニー「」ニコニコ

エレン(亀甲ry)「ああ……心配かけて悪かった」

クリスタ「でも誰がこんなひどいことを!」

エレン(亀ry)「んーと……。駄目だ、ショックで記憶が混乱してやがる」

ジャン「使えねーな!」

アルミン「とにかく早く家に戻ろう!危ないヤツがうろついているんだし!」

ライナー「じゃあ俺がみんなを運ぼう!ヘッブシ!」



グリシャ「力持ちのライナーは、みんなを持ち上げ帰路を急ぎました」



クリスタ「いそげー!」キャッキャッ

ベルトルト「ぐーっ」

鎧『ヨロコンデー』ズシンズシン

エレン亀「俺を荷物みたいに持つな!」

お妃さまの悪巧み、白雪はどうなってしまうのでしょうか?

さて今宵はここまで。
【KYOJINSLAYER】こと【進撃名作劇場】
続きはまたいずれ。

ヘンゼルとグレーテルのアルミンとクリスタ

父ライナー、母アニ、魔女ユミルで…やっぱないな

>>47 もうしわけないが白雪姫が終わったら、次は映画だ。
実際お気に入りで、見た人も沢山いるだろう。


それでは進撃名作劇場、白雪姫。
はじまり、はじまり。

グリシャ「白雪を連れて帰った小人達は、その晩に白雪について話し合いました。しかしねぼすけのベルトルトはそうそうに寝てしまいました」



エレン「くー……」

ベルトルト「すやー」


アルミン「これは白雪の言っていた、いじわるなお妃の仕業だろう」ヒソヒソ

ジャン「やっぱり面倒な事になっちまった!白雪なんて追い出そうぜ!」ヒソヒソ

クリスタ「だめだよ!白雪が危ない!」ヒソヒソ

ライナー「白雪を追い出すにしても、まずはお妃をどうにかする必要があるな。ックシ!」ヒソヒソ

アニ「……森は、人間の屍肉を嫌う」ボソボソ

コニー「」コクコク

アルミン「とにかく明日は白雪に、外に出ないよう言っておくよ。白雪は家事をしてくれるし、かくまうって約束は守らないと」ヒソヒソ

ジャン「面倒くせぇ!」ヒソヒソ

グリシャ「こんな具合に小人達の話し合いが終わり、朝がやってきます」

グリシャ「白雪は小人達の話し合いなどつゆ知らず、いつものように朝食の準備をします」




エレン「飯出来たぞー。クルミと干しブドウ入りのポリッジ(注釈:麦の粥みたいなもの)だ」

全員「いただきます」

ジャン「まずい!出てけ!おかわり!」ガツガツ

エレン「はいはい」

アルミン「おいしいねっ」ズスー

クリスタ「おいしいね~」チシチシ

ライナー「くっ、クルミが変なとこに……ブッフォォ!」

アルミン「うわぁぁぁあぁ」ベッチョリ…

ベルトルト「ごぼがぼ」ブクブク

アニ「ベルトルト、顔でご飯食べちゃダメ」ガバ

コニー「」フキフキ

エレン「大丈夫かアルミン。ほらチーン」フキフキ

アルミン「んんー……ありがとう。あ、白雪」モグモグ

エレン「どうした?おかわり?」

アルミン「違うんだ。今日は家でじっとしてくれ」

アルミン「昨日の今日だし、あんまり出歩かず家事に専念して欲しいんだ」

ベルトルト「僕らは仕事があるから家を空けるけど、知らない人を中に入れないでね……ぐぅ」

エレン「あ、そっか……。悪いみんな、迷惑かけちまうな」

ジャン「全くだ。出てけ!」

アニ「出たらダメなんだってば……」

ライナー「なぁに、白雪だって家事してくれてるんだ。お互い様だ」

クリスタ「そうだよ!」ニパー

コニー「う!」コクコク

エレン「みんなぁ……。ありがとなぁ~!」ブワワ

グリシャ「そんな訳で小人達は白雪を家に残し、意気揚々と仕事に出かけます」

グリシャ「さて、件のいじわるなお妃さまは一体どうしているのでしょう?」





ユミル「鏡ー。美しいヤツー」ダランダラン

サシャ「だんだん問い掛けも適当になってますね。――あー、お妃さまー……?」

ユミル「え?まだ白雪生きてる感じ?」

サシャ「残念ながらバリバリ元気ですね。今独りでお留守番です」

ユミル「っあー、めんどくせーな!……仕方ない、もう一度行ってくるか」ヨッコラセ

サシャ「行ってらっしゃーい。お土産は鹿肉がいいです!」

ユミル「あ、忘れてた」

サシャ「え?」

ユミル「モッチャム!」ガシャーン

サシャ「グワーッ!サヨナラ!」パリーン

グリシャ「再び物売りの老婆に化けたお妃さまは、白雪の元へと向かいました」



ユミル(ここがあの女のハウスね……って、そうじゃない。白雪が独りで留守番している家か)

ユミル(今度はこの猛毒を塗ったクシを頭にブッ刺してやる。さしもの白雪もこれでおしまいってヤツだ!ヘケケ!)




ユミル「ごめんくださーい。物売りでーす」コンコン

エレン(物売りかー。色々日用品が欠けてるけど、知らない奴入れるなって言われてるし)

エレン「すいませーん。ウチセールスお断りしてまーす」

ユミル「チッ、馬鹿の癖に余計な知恵を持ってやがる」

エレン「おい聞こえたぞ!馬鹿っつったほうが馬鹿なんだぞクソボケが!」

ユミル「誰がクソボケだ!」

ユミル「良いから開けろや!商品買え!損はねーぞ!?」

エレン「押し売りだってそんな攻めの姿勢にはならねーよ!帰れ!」

ユミル(手強いな……。なら泣き落としだ!)

ユミル「うう……私には病気の家族がいて、どーしても金が居るんだよぉ」サメザメ

エレン「マジか!買う!」

ユミル(かかったなアホが!)



白雪が扉を開けた。その時である!



ユミル「イヤーッ!」

ALAS!オキサキ=サンの腕に縄めいた筋肉が浮かび上がったではないか!
オキサキ=サンは腰を落とし、キョジン筋力を以てクシ・スリケンを投擲!

しかし……おお、見よ!
突然のアンブッシュに動じずシラユキ=サンはキョジン瞬発力とキョジン反射神経でジゴクめいたスピードで投擲されたクシを掴む!
そしてそれを握り潰したのだ!タツジン!


エレン「いきなりのアンブッシュとは、なかなか楽しませてくれる。ドーモ、オバア=サン。シラユキです」

ユミル「ドーモ、シラユキ=サン。オバアです。クシ買うべし、損はない」

エレン「断る!なんやかんやでそれは邪悪めいた仕掛けがしてあるんだろ。俺は詳しいんだ!イヤーッ!」

シラユキ=サンは奥ゆかしいアイサツの体勢から決断的に跳躍。空中で一回転し踵を振り下ろす!キヨミズ!

ユミル「サンシタめいた言葉だ!このまま死ぬがいい!イヤーッ!」

ゴウランガ!オバアもシラユキにつられ跳躍したではないか!
鞭めいてしなった貫手をシラユキの踵目掛け振り上げる!


claaaaaaaash!


キョジン膂力とキョジン膂力とがぶつかり合い、あたりが吹き飛ぶ!
シラユキとオバアも爆風に煽られ、そのまま地に落下する。

フニッ


エレン「ん?」

ユミル「んん?」

 気がついたら、俺は彼女の体を下敷きにして倒れていた。

 柔らかい感触。ちょっとだけ、良い匂いがした。
 そしてその柔らかい感触は、特に俺の右腕から感じている事に気がついた。


エレン「あ……」


 胸を、がっちりと。
 指の隙間から柔らかそうな肉が形を変えて浮き上がっている。


ユミル「はっ……はは、離れろよっ!」

エレン「うわごめん!」


 羞恥に上擦った声が俺を一喝する。

 俺はバネのように跳ね上がり、後退った。

 改めて彼女を見ると、頬を赤く染め、切れ長の瞳に涙を浮かべ、俺から身を守るように、自らその細い体を抱いていた。

 ――ごめん。
 直ぐにそう言えばいいのに、喉が干上がったようにカラカラで、上手く言葉が紡げない。

 手が、熱い。

 彼女のぬくもりが腕から伝わって、脳を灼いている。

 その熱が体にまで伝わって、全身が灼けていく。
 上手く息継ぎが出来なくて、喘ぐように呼吸しているのが嫌でも理解出来た。

ユミル「なあ」


 声を掛けられ、心臓を鷲掴みされたように体が痙攣する。

 彼女が近付く。

 彼女の瞳の中の俺が、段々大きくなってゆく。

 そして

ユミル「えい」ブシャッ

エレン「アバーッ!?」




グリシャ「あわれ、毒の櫛が頭に刺さり、白雪は再び息絶えてしまいました……」




エレン「」ナムアミダブツ

ユミル「へっ、ガキに乳揉まれた程度でBOYS BE...してたまるかっての」


ユミル「……」





ユミル(ベルトルさんならオチてたかも。――なんて、な)

グリシャ「お妃さまと入れ違いに、七人の小人達が仕事から帰ってきました」

グリシャ「小人達達は毒の櫛で刺された白雪を直ぐに見つけました」



アルミン「大変だー!白雪が!」

ジャン「ちくしょおお誰だああ!誰がやったー!」

クリスタ「えーん!」

ベルトルト「早く櫛を抜かないと!」


グリシャ「小人達は急いで櫛を抜きましたが、白雪はぐったりしたまま動きません」


アニ「白雪!しっかりしな」

コニー「!」ユサユサ

ライナー「まずいな……!息はあるが衰弱してる!」

アルミン「早くベッドに運ぼう!」

小人達「おう!」

グリシャ「その後、白雪は小人達のかいがいしい看護により、なんとか持ち直しました」




エレン「みんな、ごめんな……」

ジャン「良いから寝てろ!」

アルミン「まさかここまでするなんて!もう許さないぞ!」

クリスタ「お妃なんて嫌い!」

ライナー「堪忍袋の緒が切れた!」

ベルトルト「調子に乗りすぎたね、お妃さま」

アニ「……倒す!」

コニー「!」コクコク

アルミン「みんなで白雪を守るんだ!」

小人達「おおーっ!」

グリシャ「小人達は、いじわるなお妃さまと戦う決心をしました」

グリシャ「仕事を分担し、白雪に悪いやつが近付かないよう見張りを続けます」


鎧『秩序』ゴゴゴ

女型『敵ヲ許サナイデス』ゴゴゴ



グリシャ「小人達の活躍もあり、ここしばらくは平穏な日々が続き、白雪の体調も徐々に良くなっていきました」



エレン「ううー……なんかまだダルい」

クリスタ「だいじょうぶー?」

アルミン「お水、飲む?」

エレン「すまねえ……」グテッ

アドリブなど、するべきではなかった。

グリシャ「さて、白雪が床に臥せっている頃、いじわるなお妃さまはどうしているかと言うと――」




ユミル「んー。鹿肉って食いやすいけど、味が淡泊なんだよなぁ」ムグムグ

サシャ「だから良いんですよ。あ、白雪まだ生きてます」ムグムグ

ユミル「ブフォーッ!?」

サシャ「うわっ汚!」

ユミル「ぐぬぬ、白雪のヤツまるでゴキブリみてーだな!よっしゃまた……」

サシャ「直接出向くのは止めておいた方が良いと思いますよ?なんかデッカい小人が警戒してます」

ユミル「なんて矛盾したボディガードだ。……ああクッソー!」グワァァアア

サシャ「ひゃああぁ何故私を持ち上げてるんですかぁ!?」

ユミル「っそぉぉい!」ブンッ

サシャ「ぁああ~れええぇぇ~っ……」ヒュゥゥウウ


\ガッシャーン!/

グリシャ「いじわるなお妃は悩みました。どうやったら小人達に邪魔されずに白雪を亡き者に出来るか」



ユミル「……!そーだ、逆にあのチビどもを利用してやりゃいいじゃん!」



グリシャ「悪巧みの算段がついたお妃さまは、三度老婆に扮し、森へと向かいました」

グリシャ「手には口にした瞬間、永久の眠りにつく恐ろしい毒林檎。これを白雪に食べさせようと言うのです」

グリシャ「しかし白雪は、床に臥せったまま動くことが出来ません。果たしてどうなってしまうのでしょう」



エレン「うゔーん……」

アルミン「しっかりするんだ!エレン」

クリスタ「薬草取ってくる!」トテテ

アニ「……私も」トテテ

コニー「オ、オデモ!」トテテ

クリスタ「白雪、大丈夫かなー」ポテポテ

アニ「……わかんない」ポテポテ

コニー「ウウ……」ポテポテ


ユミル(ひひ!来やがった来やがった、あん時の天使!)

ユミル(なんか余計なやつが二匹くっついているが、一匹はビクビクしてるし、一匹はあからさまに馬鹿っぽいし、問題ねえ!)



ユミル「そこの小人さーん……」

クリスタ「あ!おばあさんだ!」ニパー

ユミル(きゃわわ)

アニ「ひう!……だ、だれ?」コソコソ

コニー「う」

クリスタ「えっと、おばあさん!」ニコニコ

アニ「……だれ?」

ユミル「怪しいもんじゃないよ。……ところで、随分悩んでたようじゃないか」

クリスタ「えっとね、白雪が大変なの!」

アニ「……くるしんでる」

コニー「」コクコク

ユミル「そりゃ大変だね……。そういや、ここに甘いリンゴがあるんだけどね」ゴソゴソ

クリスタ「リンゴあるの!?」

コニー「ク、クデ!」

ユミル「はいはい。とっても甘いからねぇー……。病人に食べさせたらすぐ治るよぉ?」

クリスタ「ほんと!?」キラキラ

アニ「なお、る?」

ユミル(イタタタ、良心が痛む)

グリシャ「クリスタたちは、お妃さまから毒林檎を受け取ってしまいました」

グリシャ「毒林檎とは夢にも思わないクリスタたちは、早く白雪に林檎を食べさせてあげようと帰路を急ぎます」




女型『待ッテテ白雪!』ドドドドド

クリスタ「はやいはやーい!」キャッキャッ

コニー「!!!」



グリシャ「やがて日も暮れるころ、クリスタたちは毒林檎を手に家に到着してしまったのです」



クリスタ「ただいまー!」トテテ

アニ「いまー」トテテ

コニー「マー」トテテ

アルミン「オアエリ。嬉しそうだね」

クリスタ「林檎もらったのー!」

アルミン「誰から?」

クリスタ「んーと、おばあさん!甘いからすぐ病気が治るって!」ギュムギュム

エレン「ンン゙ンーーーッ!」ビクッビクッ

アルミン「そのまま詰めちゃだめだからね!?」

アニ「すりおろしてポリッジにいれよう」トテテ

アルミン「それが良いね。白雪、大丈夫」

エレン「だいじょうぶだ……。もんだいない……」コヒューコヒュー

クリスタ「ご、ごめんなさい!」ペコペコ

アルミン「あんまり大丈夫じゃなさそうだけど……。食欲ある?今アニがポリッジ用意してるんだ」

エレン「お、おう。いただきます……」ゼーゼー

アニ「で、出来た……」トテテ

エレン「ありがとな、アニ」

アニ「うん……///」

エレン「……」モソモソ

クリスタ「甘い林檎が入ってるのよ!」

アルミン「そうだ、その林檎は貰ったものなんだよね?そのおばあさんっていうのは?」

クリスタ「確か、前は物売りって言ってた」

エレン「!」

アルミン「?――どうしたの、白雪?」

エレン「いや……。俺の頭に櫛を刺したのも物売りの婆さんなんだけど……」

クリスタ「え!?」

アニ「まさか!」

アルミン「し、白雪!ポリッジを吐き出して!早く!」



カラー……ン

エレン「―――」


ボフッ



アルミン「し……白雪ーーッ!」

クリスタ「いやあああああ!」

アニ「あ、ああぁ……」

コニー「……!」







グリシャ「白雪は、林檎の毒で永久の眠りにつきました――」

お妃さまの悪巧みにより、永久の眠りに堕ちた白雪。
そんな白雪のもとに現れたのは――!?

【KYOJINSLAYER】こと【進撃名作劇場】
今宵はここまで、続きはまたいずれ。

無駄なベルユミ要素イラネ

すまん、本当にすまんな。
贖罪のオチ(下ネタ)にベルユミ要素が必要なのだ……

だが>>82のような意見は実際貴重なので色々皆で話してほしい。
ただ奥ゆかしさ重点だ。いいね?

なに、ベルユミ要素はもう無いから気にしないでいい。
あともう一つ言い訳するのだが、これはスターシステムをさいようしている実際新しいSSだ。


では進撃名作劇場
はじまるよ。

グリシャ「いじわるなお妃さまの悪巧みにより、毒林檎を食べてしまい、永久の眠りに堕ちた白雪」

グリシャ「小人達はたいそう嘆き、その体を硝子の棺に収め、花畑へ置きました」





アルミン「くそっ……。どうしてこんな……こんな!」

ジャン「うわああああ!起きろ!起きろ馬鹿やろー!うわあああん!」

クリスタ「うぁ……わたしのせいだ……!ごめ、ごめんなさ……!」

ライナー「あれは、仕方なかったんだ……」

アニ「うっ……う」

ベルトルト「大丈夫……」なでなで

コニー「ア゙ー!」ポロポロ



グリシャ「小人達が悲しみに暮れていたまさにその時、花畑に近づく一つの影が……」



「これは、何の騒ぎ?」

グリシャ「小人達の前に現れたのは、アマゾネスの女王様です」



アルミン「あなたはアマゾネスの女王様!?なぜここに?」

ミカサ「シーシアスが嫌がらせをしてきた。ので、アセンズを滅ぼしてきた」

ミカサ「それで、あなた達は一体なにを?」



グリシャ「小人達は、アマゾネスの女王様に白雪とのあらましを説明しました」



ミカサ「そう、それは可哀想……」シュン

クリスタ「わらひがっ、わあひが、わるいの、っ。ふぅう゛~っ……!」

アニ「……うわああん!」

コニー「ア゙ー!ア゙ー!」ブワワ

ミカサ「嘆いては駄目。悪いのはあなたたちの優しさにつけこんだお妃」

ミカサ「白雪も可哀想。何もしてないのにこんな……」

エレン「――」

ミカサ「!!」キュゥゥゥン



グリシャ「なんと女王様は、棺の中の白雪に一目惚れしてしまったのです」




ミカサ「白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪」ベロベロベロ

アルミン(うわぁ……執拗に白雪の口辺りを舐めまわしている)

ライナー「("恋愛は身近な狂気"と言うが……)ヒッキシ!」

クリスタ「うわあああん!こわいよー!」ビェェン

ミカサ「お妃は許せない。削ぐ」カッ

ミカサ「だけど、白雪をそのままにしておけない。何か助ける方法があるはず」

アルミン「毒のせいだっていうのは解るんだ。でもこの森にある毒キノコのものとは違うし……」

ライナー「解毒用の薬草もすべて試したんだが……」

クリスタ「うえええええん!」

ミカサ「……待って!賢そうな小人さん。あなたは今"毒"と言った?」

アルミン「うん」

ミカサ「毒であれば、何とか出来るかもしれない」

ジャン「本当か!なら早くなんとかしてくれよ!このままじゃ白雪がかわいそうだ!」

ミカサ「安心して。私は強い。すごく強い……ので、なんとか出来る」

アニ「……おねがい!」

コニー「ア!」コクコクコク
ミカサ「了承。まずは白雪を棺から出してほしい」

アルミン「わかった!」



グリシャ「女王様の指示に従い、小人達は白雪の体を棺から出します」

エレン「――」

ミカサ「白雪の髪キレイ白雪から良いニオイ白雪の唇ぷにぷにしてる白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪白雪」ゴゴゴ

アルミン「女王様!白雪を助けて!」

ミカサ「わかった。――では、蘇生を開始する」



グリシャ「そうして女王様は思いっきり息を吸い込み」




ミカサ「――!」カッ


ズキュウウウウウウウウウウウウウウウウンッ!!


アルミン「ああっ!」

クリスタ「きゃー!!」



グリシャ「なんと!女王様は白雪に口付けをしたではありませんか!」

ミカサ「んっ……ふむ、ちゅ……」ペチャペロクチュピチャベロベチャ

エレン「――」

アルミン「うわぁ……」


ピタ


ミカサ「気合いは溜まった。これから本番」キリッ

アルミン「真面目にやってよぅ!」



グリシャ「改めて女王様は、白雪を見据え――」



ミカサ「シャッ!」


ドゴォオォオオオン!




グリシャ「渾身の一撃を白雪の体に叩きこみました」

エレン「ふぉお゙おぉおおおお!?」

アルミン「うわああああああああああ!?」

クリスタ「うぇええええん!」ビェェン

ライナー「何やってんだー!?」

ミカサ「安心して。これは適切な蘇生術」

ミカサ「極限流に伝わる隠し技。肝臓を拳撃で刺激して解毒作用を高める回復技」

エレン「」ビクッビクッ

ライナー(どう見ても死にそうなんだがコレは……)ゴクリ

ベルトルト(比喩表現じゃなくて、顔が青い……)

クリスタ「白雪死んじゃやだああああ!」ユサユサ

アニ「し、しらゆき……!」ユサユサ

エレン「――ん……っ」

小人達「!?」

>>104
極限流にそんなのあったか?www

グリシャ「なんと!女王様の接吻(物理)により、白雪は息を吹き返したのです!」




エレン「み、みんな……。俺は、おれぇえ゙えれれれれれ」ビチャビチャ

ミカサ「白雪大丈夫?」サスサス

エレン「あ、ああ……。アンタは?」

クリスタ「アマゾネスの女王様!」

アルミン「白雪を助けて?くれたんだ!」

エレン「そうか……。悪い女王様、迷惑かけちまったな」

ミカサ「気にしなくてもいい。あなたのためなら何でもする」

エレン「お、おう……?しかし腹が痛ぇし気持ち悪い……」

ミカサ「それはいじわるなお妃って奴のせいなんだ(棒読)」

エレン「何だって!?それは本当か?」



アルミン「……」

ライナー「……」

>>105 ゲームには無いが、コミックボンボン版にてリー・パイロン戦の時に使っていたのだ。

グリシャ「今までの悪事が、いじわるなお妃さまの仕業だと知らされた白雪はいよいよ怒り心頭です」

グリシャ「怒り狂った白雪は、お妃さまを討伐するべく立ち上がりました」




エレン「許せねえ!お妃の野郎……!駆逐してやる!あの汚らわしい毒虫め!駆逐してやる……!」ギリリ

ミカサ「白雪がそうしたいならそうしよう。私は白雪の味方。白雪に仇為す輩は全て削ぐ。慈悲はない」

クリスタ「ぶっ殺してやる!」

ライナー「!?」



グリシャ「こうして白雪とアマゾネスのお姫様、そして7人の小人達はお妃さまのいる城に向かいました」

ミカサ「汝ら罪無し……」

超大型『ビィィィッグオォオ゙ォオオオ!』カッ!


ドカァァアアァアァン!!

CABOOOOOM!


女型『シャアアアア゙アアア!!』ゴゴゴ

鎧『アバラアアア゙アアア!!』ゴゴゴ

ズドガーン!!

\ギャアアアア/\アイエエエエエ/


ユミル「……」

サシャ「……」

ユミル「これは何?どうなってんの?」

サシャ「こりゃもうわかんねえな……」

グリシャ「小人達の活躍により、白雪達はお妃さまを追い詰めるのに成功したのです」




超大型『』ゴゴゴ

鎧『』ゴゴゴ

女型『』ゴゴゴ

エレン「よお……五年ぶりだな……!」

ユミル「もう時間軸なんてあってないようなもんだけどな!」

ミカサ「お妃、あなたの罪を数える日々が来た」

ユミル「畜生!」

アルミン「お妃さま!なぜこんなことを!?白雪には罪はないはずだ!」

ユミル「うるせーな!アタシは自分が一番綺麗じゃねーと気がすまねーんだよ!あとクリスタ!」

クリスタ「?」

ライナー(解るぞお妃……)

サシャ「いやー、すいません。私が"この世界で一番美しいのは白雪"だと言ってしまいまして」

ミカサ「鏡、あなたは間違っていない」ウンウン

白雪「なんでまたそんな事……。俺男じゃん」

サシャ「いや、実は頭の中で響いた声にそう言えと強要されまして」

ユミル「はあ?何だそりゃ」

アルミン「頭の中に」

ライナー「どうしたアルミン?」

アルミン「――鏡さん。その声は、他になんと?」

サシャ「えっと……。"進撃の世界はきっと無限ループするよ?調査兵団を信用するな!"……って」

クリスタ「やはりか」

 そう言うとクリスタはアルミン王家の剣を抜き放った!そして聖なる言葉をとなえる。

クリスタ「○○○○○(好きな言葉をいれよう)!」

サシャ「ギャー」

クリスタ「無限ループなど、するか!愚か者!」

サシャ「ギャー!」

 ALAS!サシャの尻から暗黒ベルトルト(二役目)がエクトプラズムめいて現れた!

暗黒「もう少しでうまくいったものの!読者どもは台所を犬めいて転げ回りおるわ!僕は詳しいんだ!」

アルミン「ダマラッシェー!」

 アルミンニンジャが暗黒ベルトルトの首をチョップではねた!

クリスタ「これで闇は去った」

アルミン「サシャよ、さらばだ」



エレン「またこれか」

グリシャ「鏡に取り憑いた暗黒ベルトルトを退治した白雪達は、改めてお妃さまを問いただします」



ミカサ「今までの悪事は全て暗黒ベルトルトの仕業だとわかった。けどあなたは実際白雪に手を出した。だからその報いは受けなければならない」

ユミル「へっ!じゃあ好きにしやがれ!縛り首か?晒し首か?」

ミカサ「残念ながらそんなことはしない。この物語は青少年も安心して見ることが出来る健全な物語」

ミカサ「なので、それに相応しい罰を与えます」

エレン「でもそんな罰あるか?」

ミカサ「ある。それにはベルトルトが必要」

ベルトルト「ふぁあああ~……って、僕?」

ミカサ「そう。古式では赤く灼けた靴を履いて死ぬまで踊ってもらうけど……」

クリスタ「ひうぅ……」ビクビク

アニ「……」ビクビク

ミカサ「さすがに小さな子がいる前でそんな残虐な行為は不可能」

ミカサ「だから代わりに赤く灼けたベルトルトの超大型(意味深)で死ぬほど突かれてもらう。いいね?」

ユミル「アッハイ……じゃねえ健全どこいった!」

【ただいまお妃さま激しく前後。しばらくおまちください】

グリシャ「こうしていじわるなお妃さまは、白雪達によって懲らしめられたのです」




ユミル「」プシュー

ベルトルト「彼女を起こさないでやってくれ。死ぬほど疲れてる」

ミカサ「白雪、これで復讐は果たした。――だけどまた同じような不埒者が現れないとは限らない」

ミカサ「だから私にあなたを守らせてほしい。私が一生白雪を守ろう」

エレン「いいぞ」

ミカサ「……!嬉しい!」

エレン「なんならさ、お前らも暮らそうぜ」

小人達「え!?」

ミカサ「!!!!!!!!!???????????」

エレン「いやさ、最初はお妃から逃げる為にご厄介になっただけなんだけどさ……」

エレン「一緒に暮らしてたら、もっとみんなと一緒に居たくなったんだ!」

アルミン「白雪……君ってヤツは!」グスン

ジャン「ゾッとしねえ話だ!でもどうしても、って言うなら良いぞ!」

エレン「ああ!どうしてもみんなと居たい!みんな俺の家族なんだ!」

クリスタ「で、でも白雪……」

アニ「わたしたち、は」

コニー「ウウ……!」

エレン「俺の為にしてくれたんだろ?確かに今回はこんなことになったけどさ……。俺を助ける為にしてくれたんだし、気にしてないさ」

クリスタ「……!」ブワワ

アニ「しらゆきー!」ブワッ

コニー「アアアーッ!」ビエエン

エレン「あはは、泣くなって!よしよし」ナデナデ

ライナー「一件落着かな。ヒェックシ!」

ベルトルト「安心したら眠くなってきたよ……。ぐー」

サシャ「私はお腹がすきました!ぐー」ブッ

ミカサ「あ……!」

ミカサ「まあ、いいか。白雪がそうしたいなら、私もそうしよう。白雪の望みは私の望みだ……」

エレン「よっし!じゃあ飯作るか!」

小人達「おー!」

ミカサ「白雪、私も手伝う」






グリシャ「こうして白雪は、アマゾネスの女王様と、7人の小人達と、いつまでも幸せに暮らしましたとさ」






~めでたし、めでたし~

◆おとぎのくには、またいつか◇

【進撃名作劇場-NEXT STAGE-】

――汝、貪るなかれ。

――汝、欲すなかれ。

――汝、怠るなかれ。

――汝、姦すなかれ。

――汝、妬むなかれ。

――汝、怒るなかれ。

-進撃名作劇場-

【セブン―Se7eN―】

×××××「――」

◇第一章◆


-ローゼ州 トロスト-


警官「ひでぇ雨だ」

警官「雨もだが、匂いもだぜ。……死語一週間か?」

警官「ああ、ガキと女房を殺って自分も――だとよ。イカレ野郎が」

警官「全くだ。――おい、あれ見てみろよ」



キース「……」


警官「あの爺さん、まだ定年じゃないのか。相棒もいないのに良くやるよ」

警官「いや、エルヴィン所長とのやりとりを聞いたんだがよ、あと一週間で辞めるってよ」

警官「ふぅん……」

若い男「失礼だが、アンタがキース・シャーディス?」

キース「……お前は?」

若い男「マリア州警シガンシナ署から異動してきた、エレン・イェーガー捜査官です」

キース「エレン?女みたいな名前だ。……君が私の新しい相棒ということか?」
エレン「らしいな。宜しく頼む、キース」

キース「残念だが仲良くする気は無い。私が君に教えてやれるのは技術だけだ。どうせ一週間だけの付き合いだしな」スタスタ

エレン「お、おい――」

警官「災難だな、あいつ」

警官「ああ。あの偏屈な爺にあたるなんてよ」

ザアアアア―……


――仕事が欲しいんだ。銅貨一枚でいい……――

――テメェどこ見てやがる、ぶっ殺……――

――……でどう?銅貨一枚で丹念にしゃぶってあげる……――



キース「…………」

キース「エレン。お前はなぜトロストに?」

エレン「何故って?」

キース「シガンシナ辺りは治安も良いし、トロストに居るような屑も蔓延っていない。殉職する確率の高い警官からすれば楽園のようなものだ」

キース「そんな生活を捨てて、なぜトロストに?」

エレン「なぜって、そりゃ警官としてだな――」

キース「"警官としての責任を果たし、市民の安寧を守るため。"か?そんな御為ごかしはよせ」

キース「私から言わせれば、トロストなんかに赴任してくる警官は、英雄志願の莫迦者か、腐敗した組織の甘い汁を啜りにきた毒虫か、だ」

エレン「――あんた、俺のこと嫌いか?」

キース「別に?」

エレン「俺はただ、警官として人の役に立ちたいだけだ」

キース「そんな考えは捨てたほうが良いぞ、エレン。ここはクソ虫の吹き溜まりだ。お前が求めるような事件なぞ無い」

キース「全てが陰鬱で、救いようが無いんだ。心を蝕まれないうちに早くシガンシナに戻れ」

エレン「ご忠告どうも。――だが俺は戻る気はないね。そんな街だからこそ、俺はここに居なきゃいけない」

キース「……勝手にしろ」

エレン「勝手にするさ。――で、ボス。俺達はどこに向かっているんだ?」

キース「私の車だ。お前が運転しろ」スタスタ

エレン「……仰せのままに」ハァ…


ザアアアア―……

◇◆Monday◆◇

~イェーガー宅~


ミカサ「……う、ん」

エレン「――起こしたか?」シュルッ

ミカサ「……えれ、ん?もう仕事なの……?」

エレン「ああ。気合い入れていかないとな」

ミカサ「熱心」

エレン「ああ、俺はセルピコなんでね。――ほら、キスして?」

ミカサ「いってらっしゃい、セルピコ警部。……んっ」

エレン「……っ、は。じゃあミカサ、良い子でお留守番してろよ?」

ミカサ「向こうの人に迷惑かけないように、ね」

エレン「――ちぇっ」

ザアアアア―


キース「……」

エレン「悪い、待たせたな。――朝飯、食う?」

キース「そんな暇は無い。事件だ、行くぞ」

エレン「へいへい」モグ


――ブロロロロ……―


エレン「事件ってのは?」

キース「ダウパーのモーテルから女の死体があがった」

エレン「女?」

キース「サシャ・ブラウス。親の名義で一人暮らしをしていたらしい。最近親元への連絡が途絶えたと言うので警察が調べたら――と言うのがあらましだ」

エレン「死因は?」

キース「現場で諸々を、直接確認しろとのことだ」

エレン「なんだよそれ……。トロストの警官はいつもこんななのか?」

キース「嫌なら帰ってもらっても構わんぞ」

エレン「はいはい文句を言って申し訳ありませんでしたよ!……で、俺は現場で何を?」

キース「何も」

エレン「何も……って、何もするなってか?俺は現場でマスかいてろってか?」

キース「お前は私の元に就いたんだろ。暫くは私のやり方に従ってもらうぞ、イェーガー」

エレン「……わかったよ、クソっ」


ザアアアア―…

ブロロロロ…

~ダウパー・モーテル~


警官「お待ちしてました」

エレン「中の様子は?」

警官「さあ」

エレン「さあ……って、内部に入ってないのか!?現場保全はどうしてるんだよ?」

警官「何分担当じゃないんでね。中に入った奴なら他にいるからソイツにあたってください」

キース「イェーガー時間の無駄だ。中の様子は直接確かめろ」

エレン「お、おい!待てよっ!」




エレン「暗いな……」

キース「ライトを点けろ。――酷い腐臭だ。だが人間のとは違う」

エレン「判るのか」

キース「お前とは踏んだ場数が違う」

ギシッ……ギシッ……

カサカサカサ……

エレン「……うへっ、ゴキブリじゃねえか」

キース「……」

カサ…カサカサ…

ギシッ……ギシッ……


エレン「……あ」

キース「いたな」



サシャ「――――」


エレン(座った状態で、スパゲティに顔突っ込んでやがる……)

キース(……壁にはトマトソースの缶詰。ここから見ても劣化は見られない。最近買ったものか?)
カサ…カサ…

キース(ゴキブリが辺りを徘徊している。薄暗く湿度が高いロケーションに不快害虫のサービスか。まともな人間なら勘弁願いたいな)

キース(なら彼女はまともな人間ではないか、まともな人間として考えられる状態ではないか、だ)

警官「ああ、お二人ともここにおられたんですか」

エレン「なあ、コイツを調べたか?」

警官「いえ?触れてもいませんが」

エレン「はあ?じゃあなんで死亡だなんて……」

警官「スパゲティに顔うずめて微動だにしない奴が生きてると思います?」

エレン「――チッ!」


…………


キース(……)

キース(彼女の椅子を見ていたが、彼女の足は椅子の脚に縛られていた)

キース(ズボンの裂け目からは糞尿の垂れ流し。腹は見て分かるほどに肥大化している)

キース(座りっぱなしでスパゲティを食していた。……いや)

エレン「おいキース、これを」

キース「どうしたイェーガー」

エレン「これ、見てくれ。彼女の後頭部」

キース「……銃口の痕、か」

エレン「つまり……?」

キース「彼女は犯人によって、椅子に縛られ頭に銃を突きつけられ、スパゲティを食べさせられた」

キース「糞を垂れ流そうと、胃が裂けよいとお構いなしに――」

エレン「……食い過ぎで、死んだ?」

キース「ああ。正確に言えば無理やり食わせられたわけだが……」ゴソゴソ

エレン「イカレてやがる……。なんでわざわざこんな真似を!」

キース「さてな。イェーガー……こいつを見てみろ」

エレン「ああ?……レシート?」

キース「このトマトソースの缶詰のだ。最近買い足されてる」

エレン「これが、なんだってんだよ?」

キース「恐らくは彼女に食わせるために買い足したものだ」

キース「わざわざ犯行が露見するリスクを犯してまでも、だ」

エレン「イカレ野郎だからだろ」

キース「若しくは相当頭のキレるやつかもな。目立たずこんな異常な犯行を行えるほど緻密な計算が出来るやつか」

エレン「……」

キース「……とにかく、あとは鑑識に任せよう。ここは衛生上問題がある」

エレン「精神的にか?」

キース「色々、だ」



サシャ「――――」


カサ…カサ…カサ…

第一章
【GLUTTONY―暴食―】

完。二章に続く。

忘れてた。グロ注意。

(このスレッドが)逝ったかと思ったよ。

【進撃名作劇場】
―Se7eN―

◇第二章◆



-トロスト分署 屍体安置所-



サシャ「――」

リコ「死語大分時間が経ってる。毒殺ではなかったよ」

エレン「まだ若いってのに、もったいないな」

キース「確かにな。――彼女は引きこもりってヤツらしい」

エレン「引きこもり?」

キース「田舎からトロストに出たは良いが、周囲と折り合いが会わず、やがてモーテルに引きこもり、暴食で気を紛らわす日々を送っていたという」

エレン「……」

リコ「見ろ、彼女の胃袋だ。――まだ膨張してるよ。こんな細い体のどこに入ってたんだか」

リコ「見た目は肥満には程遠いが、中身は成人病のバーゲンセールだ。これじゃ遅かれ早かれ死んでたな」

キース「他には?」

リコ「……内臓のところどころで内出血が起きてる。それと血栓」

エレン「やっぱり、死因は食い過ぎか」

キース「銃痕らしき、アザは?」

リコ「そのままズバリ、だ。ありふれた市販の銃で、特定は難しいな」

キース「見立て通りか」

エレン「――さて、お集まりの皆様。殺人事件です」

キース「……」

エレン「……」

-トロスト分署 分署長のオフィス-


キース「彼女は延々とスパゲティを食わせられていた。その結果、喉と胃はパンパンに腫れ上がっていた」

エルヴィン「……」

エレン「……」

キース「それから、彼女は犯人に暴行を受けている。腹を蹴り上げられ、内臓の一部が破裂している」

エレン「サディストの変態かよ……」

キース「かなり異常ではあります。だが突発的なものではないと感じます」

エルヴィン「彼女に恨みを持つ者の犯行――という線は?」

キース「動機を持つほど深い関わりをもつ人間は居ませんでした」

キース「この事件はまだまだ続きます」

エルヴィン「まさか」

キース「普通拳銃を所持しているなら撃てばいい。――にも関わらず、わざわざ手間をかけている。何か意味がある」

エルヴィン「話を膨らませすぎだ」

キース「犯人はわざわざ二回も買い物に出掛けている。レシートがその証拠だ。犯行が露見する危険を犯してまで、です」

キース「この事件(ヤマ)は私には重過ぎる」

エレン「おい、おい、おい……!」

キース「私を担当から外して欲しい。引退前の事件ではない」

エルヴィン「何を言い出すんだシャーディス」

キース「この事件は延々と続く」

エルヴィン「退職まで6日だ。事件を気にすることは無いさ。――今まで未解決だった事件なんて山ほどあるだろう?」

キース「たとえ未解決だろうと、全力を尽くしてきた」

キース「……率直に云うが、イェーガーには荷が勝ちすぎている」

エレン「おい、待てよ……!俺の履歴書見なかったのか?シガンシナの殺人課に5年居たんだ。素人じゃない」

キース「お前には早過ぎる事件だ」

エレン「おい!本人の目の前でぬけぬけと言ってんじゃねえ!――分署長、二人だけで話せませんか?いくらムシが好かないからってこんな――」

エルヴィン「黙れイェーガー」

エレン「……!」

エルヴィン「なあシャーディス……こんな事件は君にしか任せられない。――ここは分署だ、勝手は許されないんだ」

キース「……」

エレン「……自分がやりますよ」

エルヴィン「……なんだと?」

エレン「えぇー、彼には降りてもらい楽しい隠居生活を!――代わりに、俺がやります」

エルヴィン「許可出来ん。君には別の事件に移ってもらう」

エレン「はあ!?」

エルヴィン「話は以上、下がってよろしい」

エレン「……」

エルヴィン「下がれ」

エレン「……了解、しました」


キィ……バタン

エルヴィン「シャーディス、君には気の毒だが……この哀れなご婦人の後始末は君にやってもらう」

キース「……」

エルヴィン「なあキース、こんなのは日常茶飯事じゃないか。考え過ぎだ」

キース「そうだと良いがな」

エルヴィン「――貴方は私の師匠だ。信頼もしてる。――だが、これもありきたりの事件だ。君が苦慮することなんかない」

キース「解ってはいる。……すまんな」

エルヴィン「いや――良いんだ。行ってくれ」

キース「……失礼します」



キィ……バタン

◇◆TUESDAY◆◇

-トロスト アップタウン-

――……い、スリだ!誰か捕ま……――

――……おい、また誰か刺されて……――

――……汚ぇな。誰か警察を呼……――



新聞売り「号外、号外だよー……」


MURDER HAS A NEW

UP-TOWN ADDRESS!

――"新たに 山の手で殺人"




――……ねえ、お兄さん。一発……――

――……すいません、この近くの皮革……――

-トロスト アップタウン トロスト・ロウファーム・オフィス-


「ドーク地方検事だ!」
「ネタは頂いたぞ!」
「なんでドークが?」


ナイル「お待たせしました。お静かに……」

「ドーク地方検事、お願いします!」
「こちらにも!」
「こっちにも、お願いします!」

ナイル「皆さん静粛に!静粛にお願いします。お静かに、騒がないで」



ナイル「……よろしい、では会見を始めます。質疑応答の時間は10分のみ。質問は一人ずつ順番に秩序正しく。……さもなくば打ち切ります」




ミーナ「……順番、回るかしら」

エレン「……」カッカッカッ…

ミーナ「……!刑事さん、刑事さん!私、トロスト・ジャーナルのミーナ・カロライナ記者ですが……!」カッカッカッ

エレン「駄目だ。質疑応答はドーク地方検事に」カッカッカッ

-執務室内-


エレン「……収穫は?」

刑事「まだ何も」

エレン「解った。……現場は俺が見とくから、コーヒーでも飲んでこいよ」

刑事「どーも……」

エレン「……」


~~♪

TV《……ここでニュース速報をお送りします》

TV《今朝、弁護士のダリオ・イノセンシオ氏が遺体で発見されました。ナイル・ドーク地方検事の会見を、現場の有るビルからお送りします》

《イノセンシオは法廷弁護士でしょう?》
《なぜ検事局が?》
《検事局が捜査指揮を執るのは拙いんじゃないですか?》

ナイル《今の発言は侮辱に他ならない。利害の抵触などあり得ませんよ》

《しかし裁判ではイノセンシオ氏に煮え湯を……》

ナイル《待て。私は警察幹部と会談していたのだが、この事件を担当するのは、最高の捜査官だ》


ナイル《事件は速やかに解決されるでしょう!》


《……!》
《……?》

ナイル《……!!……。……》



エレン「――ッチ」

ブツッ


TV《――――》

エレン(……)

エレン(部屋はあからさまな、アッパークラスの内装だな)

エレン(よく解らない調度品や絵画、中流階級にありがちな、知識をひけらかすためのよく解らない本)

エレン(床はよく磨かれてキズも埃もない)



エレン(……"コレ"以外はな)



"GREED"(強欲)




エレン(グリード、ね……)

エレン(……?)

エレン(これは、女の写真だ)

エレン(見た目からして、イノセンシオの娘ってやつか。けれど……目の回りをなぞるように描かれた、この血)



エレン(どう言うことだ?)

-トロスト分署 キースのオフィス-


キース「……」パタ、パタ、パタパタ、パタパタパタパタ

エルヴィン「シャーディス、タイプ時にすまないな」

キース「いや」パタパタパタ、パタパタ

エルヴィン「――ニュースを見たか?」

キース「全然だ」パタパタ、パタ、パタ


エルヴィン「――ダリオ・イノセンシオが死体で発見された。何者かが事務所に押し入り、殺害したと見られる」



エルヴィン「床に"強欲"と描かれていた」

キース「……」パタ…

キース「強欲?」

エルヴィン「血糊でな。――今、イェーガーが現場を担当している」

キース「そうか。良い経験になるだろうな」

エルヴィン「……なあキース、刑事を辞めてどうする気だ?」

キース「働くさ。畑を耕し、家を修理して……」

エルヴィン「なあ、虚しくはないのか?」

エルヴィン「もう、刑事ではなくなってしまうんだぞ」

キース「だからこそ、だ」

エルヴィン「――無理だと思うがね。この商売は君の天職だ。辞められやしないさ」

キース「……」

キース「犬の散歩をしていた男が居た」

キース「そいつは防寒に襲われ、金品を奪われて、歩道に転がされて放置されたんだ」

キース「そのあと、通りがかった奴にナイフで犬を殺され、両目を抉られた」

キース「――ゆうべ、近所で起きた事件だ」

エルヴィン「……」



キース「私には、もうついていけん」





エルヴィン「昔からじゃないか」

キース「かもな」

エルヴィン「……ただ、刑事が君の天職だということは否定すまい?」

キース「……」

コトッ……



キース「……?」

エルヴィン「サシャ・ブラウスの胃の中から摘出された」

エルヴィン「プラスチックの破片が数枚、無理やり喰わされていたらしい」

キース「……その辺に置いてくれ」

エルヴィン「ああ」


カッカッカッ…



キース「……」


――天職であることは否定すまい?


キース「……」パタ…パタ、パタパタ…

-トロスト ダウパーのモーテル-



キース「……」


キース(現場百編、とはな)

キース(……エルヴィンが寄越した破片。これは間違いなく犯人からのメッセージだ。犯行の象徴性から見て、何かしらの意味を持つ)

キース(問題は、このモーテル内をどう探すか、だ)

キース(……胃の中。――食料か?冷蔵庫が近くにあったはずだが……。――あった)

ガチャ……


キース(……食材、調味料共に充分な量が揃っているように見えるがな。――彼女(サシャ)からすればどうだったろうか)

キース(しかし、異常らしい異常は見当たらない。食料ではないのか?では胃の中になぜ入れた?)



ガチャ…パタン



キース(……ん?)

キース(床に傷。……まだ新しい。最近つけられたものだ)

キース(……もしや)

カチャ…カルカルカル…


キース(やはりな、一致する。――では、この辺りに手掛かりを隠したのか)

キース(……怪しいのは、冷蔵庫の裏側だな)

キース「よっ……!」

ゴトッ、ガタタッ

キース「ふ……っ!」

ズリッ、ズリズリズリ……








キース「ああ、やはりな……」





GLUTTONY







キース("暴食"か)

第二章・前
【GREED―強欲―】


完。後編に続く。

ふとした疑問だが、皆さんは人間のスープを見たことはあるだろうか。

まあスープは比喩表現だ。想像してみるといい。
浴槽の上に青白い人皮が浮いて、腐肉は浴槽に垂れ流しだ。だが腐肉と混ざった汚水は胆汁に染まりコーヒー牛乳めいて濁っているからごあんしんだ。
それで皮の方は原型を保っているが、青白く濁った目の回りにはハエの蛹がビッシリとまつわり、鼻穴や口からハエが湧き出てくる。

匂いはキテレツではない。せいぜい硫黄と排泄物の匂いが混ざり合い、空気をすうたび喉が焼けるようにイガイガするだけだ。


おやすみなさい。

みんななかよし。

【進撃名作劇場―Se7eN】
はっじまーるよォロロロロロ

◆第二章・後編◇


-トロスト分署 オフィス-



キース「このメモが犯行現場の、冷蔵庫の裏に貼ってあった」



"Long is the way and hard that out of hell leads up to light."



エルヴィン「――"地獄の闇より、光へと続く途(みち)は長く険しい"……」

キース「ミルトンの『失楽園』からだ」

エルヴィン「……これが何を意味するというんだ?」

キース「始まったのさ」

エレン「……」

エルヴィン「……」

キース「この写真なんだが……」ペラ

"GLUTTONY"

キース「冷蔵庫の裏に、油で描かれていた文字だ」

エレン「グラトニー?なんだそりゃ」


キース「人間の"七つの大罪"。キリスト教において、人間が堕落する原因となる悪欲を示したものだ」
エルヴィン「……」

キース「暴食(グラトニー)。それから――」ペラ

"GREED"

キース「強欲(グリード)」

エレン「!」

キース「"怠惰"、"憤怒"、"傲慢"、"淫欲"。――それと、"嫉妬"。……7つだ」

キース「あと五つは起きるということだ」コツコツコツ

エルヴィン「待て、どこに行く気だ?」

キース「――私にはとても出来ない」

コツコツコツ……

-トロスト キースのアパート-


キース「……」

シュッ――トン

キース(ブルズアイ。……投げナイフで、ダーツの的を射抜くのは簡単だというのに――)

キース(……ミルトンか)

キース(……文書からの引用。"大罪"の引用。大胆で意味の無いように思える犯行)

キース(ただの狂人ではない。少なくともある程度の教養を持ち合わせている)

キース(だが材料は、まだ少ない。犯人を知るには"同化"が必要だ。犯人と同じ目線で、犯人の軌跡を辿り――)

キース「……」

キース(何を考えているんだ、私は。このヤマは重い。私が関わるべきではない)

キース「……」


えぇー、彼には降りてもらい楽しい隠居生活を!


――代わりに、俺がやります


キース(……仕方ない。未熟な後釜に、インストラクションを授けてやるか)

ザアアアアアアア……

キース「おい、タクシー!」

ブロロロロ……キィィ

運転手「どうぞ」

キース「ありがとう」

バタン

キース「……」

キース(相変わらず鬱陶しい雨だ。街も毒々しい緑にまみれたまま――)


……――おい、お巡りを呼べよ!

……――また殺しかよ。うわっ

……――面倒臭ぇな。おらどけクズども!


運転手「どこまで?」

キース「――ここから、離れてくれ」

-トロスト大図書館-

守衛「ようこそ」

キース「すまんな」

守衛「いえいえ。何かありましたらお呼び下さい」

――おい!早く戻れよ!勝負の続きが出来ねえだろ!

守衛「ばかやろー、仕事だろ」

キース「ははは……」


キース(……さて)カッカッカッ…

――さて、続きといこうや。

――レートは?

――また給料を溝に捨てる気かよ、ははは……

キース「……二階の諸君」

キース「理解に苦しむよ。これほどの知識の山に囲まれながら、諸君らときたら――はは、ポーカーばかりだ」


「馬鹿言っちゃいけねえよ、旦那」
「俺らほど教養に長けた奴等は居ねえぜ」
「ああ、ウンコなんか文化の香りがするぜ!」
「ははは……!」

キース「ははは、よけいな世話だったな」

守衛「わかりましたよ。――じゃあ、こんなのはどうです?」

……ブツッ、ジジ――

~~♪

キース("G線上のアリア"か。――なかなか悪くないチョイスだ)

キース(さて……)

キース(まずは、ミルトンの『失楽園』)

キース(それから、"7つの大罪"を取り扱う書物。――確か、『カンタベリー物語』の一編にそれが……)

キース(後は、宗教的観点から罪の云々について説くもの。……ダンテの『神曲』から当たってみるか)

キース(拷問、倫理、それから……)

-トロスト エレンのアパート-


エレン「……」

エレン(サシャ・ブラウスに"暴食"……。延々と食事……)

ペラッ…

エレン(……足を縛ってまで、なんでこんな殺し方したんだ?)

ペラッ…

エレン(それにダリオ弁護士の事件……)


"被害者は、自分の贅肉を切り裂き……"


エレン(……拷問?にしては中途半端だ。爪剥ぐなり耳を削ぐなり、この手のサイコ野郎ならやりそうな事をやっていない)


エレン「ふぅー……っ」

ミカサ「……っ」

~~♪~~♪

キース(……)


――煉獄。

――浄罪。

――騎士の話。

――己の肉を……。

キース(……これは)


◆◇◆◇◆◇◆◇


-トロスト分署-


キース(……残業している奴は、居ないか)

コツコツコツ…パサッ。


"イェーガーへ"

"『カンタベリー物語』『神曲』を読め。"

第二章・後
【GREED―強欲―】

完。第三章へ続く。

アニ「あっ、あっ、あるみんっ、あーるみんみんっ♪あっ、あっ、あるみんっ、あーるみんみんっ♪」


ふぅ……皆、熱中症には気をつけるんだぞ。
おやすみなさい。

ヒッチちゃんと体だけの関係になりたい。

【進撃名作劇場―Se7eN―】
はじまるよー。

◆第三章◇



◆◇WEDNESDAY◇◆


ザアアアアアアアアア――……

エレン(天気雨かよ、くそっ。早く車に……)バチャバチャ

ガチャ、バタン。


エレン(シャーディスからの指示とは言え……)


『神曲 浄罪編』


エレン「……何がダンテだ!くそダンテ!大ボケのカマ野郎!男の癖になよなよした詩をぐちゃぐちゃ書きやがって!」

エレン「……んぁあ゙あああ゙ああぁーっ!クソっ!」

コンコンコン

エレン「……?」

ドンドンドン

エレン「(巡査……?)――ああまて待て。今開けるから」

ウィィィ……

巡査「シャーディス警部補からです」

エレン「手間かけたな、ご苦労さん」

ウィィィ…

エレン(紙包……。あのじいさん、今度を寄越しやがったんだ?)ガサガサ

エレン「……」

エレン「あーはいはい、感謝するよボス。……ちぇっ」



『カンタベリー物語』

-トロスト分署 イェーガー刑事のオフィス-


エレン(……個人部屋、か。ようやくサマになってきたかな)

エレン(気合いいれてあのイカレた事件を解決しねーとな)

キィィ……


キース「……」カリカリ

エレン「……」

エレン(何でシャーディスが居るんだよ……)

キース「――!おお、すまんな。待て、すぐ移るから……」ガサガサ…

エレン(奥に机がもう一つ……。なんだ、シャーディス、口では何だかんだ言いながら乗り気じゃないか)

エレン「……なあ、イスまだ残ってるんだけど」

キース「ああ、良い。使ってくれ」ガタガタ…

エレン「そう……」ドサッ…

エレン(……)スッ…

エレン(カンタベリー物語、ね。……まあ、後で読んどくさ)

ガラッ…スッ…ピシャッ

プルルルル!プルルルル!

エレン「……」

キース「……」

プルルルル!プルルルル!

エレン「なあ、電話……」

キース「もうここはお前の部屋だ。お前が取れ」

エレン「あいよ……」

ガチャ

エレン「はい、イェーガーだ」

《……。……》

エレン「……!どうした、なにか有ったか?」

《……。……》

エレン「おい頼むよ……。仕事場にはかけてくるなっていつも言ってるだろ……!」

《……。……》

エレン「――居るけど、なんで?」

《……。……》

エレン「何で……?――ああ、分かったよわかりました」

エレン「……シャーディス」

キース「何だ」

エレン「女房からだ」

キース「……何?」

エレン「話したいんだってさ」

キース「……いや、わからないな。なぜお前の女房が私に?」

エレン「こっちが聞きたいっての。いいから出てくれよ」

キース「……」



キース「はい、シャーディスですが……」

キース「……ああ、はい、こちらこそどうぞよろしく……」

エレン「……」

キース「……それは、光栄です。ですが……あ、はい……それではお言葉に甘えて……ええ、どうもありがとう。じゃあ……」

エレン「……」

キース「……」スッ…

エレン「お前《プツッ、ツー…》……ッチ」ガチャ

ガチャ

エレン「――それで?」

キース「何が?」

エレン「電話!」

キース「ああ……!奥さんから今夜夕食に招待された。伺うよ」

エレン「ああ、それ――……何だって?」

キース「八時だ」

エレン「……あっ、そ」

-トロスト エレンのアパート-


ガチャ…

ミカサ「おかえりなさい、エレン」

エレン「このヤロ……」チュッ

ミカサ「ふふ、なぁに?」

キース「お邪魔するよ」

エレン「女房のミカサだ。――ミカサ、シャーディスだ」

キース「どうも。ミカサとは変わった名前だね」

エレン「東洋の血が混ざってるんだ」

ミカサ「よろしく。よくお話は聞いています。――ファーストネーム以外は」

キース「はは……キースです」

ミカサ「素敵なお名前ですね……。改めて、こちら主人のエレンです。よろしく」

エレン「はいはいよせよ。すぐ戻る――チビ達は?」

ミカサ「皆良い子にしてる。――どうぞ、キースさん」

エレン「おーい、グリシャ!カルラ!良い子にしてたかぁ?」

大型犬「ウォンウォン!」

小型犬「キャンキャン!」

エレン「よしよし、元気みたいだな!お利口お利口――!」


――ウォンウォン!

――ははっ、そんなトコ舐めるなよ!

――キャンキャン!


キース「……」

キース「いい匂いだ。その料理」

ミカサ「そう……?ああ、その、ありがとう。すごく嬉しい。――そこにお掛けになって。何か飲みます?」

キース「いや、大丈夫だ。後で頂くよ」

ミカサ「コートはそこら辺りに脱いで。――散らかっているでしょう?まだ片付けも終わってないの」

キース「いや、構わないよ」

キース「幼なじみ、だとか。彼とは」

ミカサ「ええ。――笑われるかもしれないけど、初めてのデートで『結婚しよ』って思ったの」

キース「そうか――。最近では珍しいな。そういう、男女の馴れ初めは」

ミカサ「……ええと」

キース「……ああ、大丈夫。銃は外すよ」

ミカサ「ありがとう。拳銃なら何度も見たけど、慣れることは出来ないから――」

キース「はは、私もだ」

~~♪~♪

キース「ご馳走さま。美味しかったよ」

ミカサ「ありがとう。――ご結婚は?」

キース「生憎、していない」

ミカサ「どうして?」

エレン「おいミカサ……よせよ」

キース「チャンスは有ったんだが、何故か……な」

ミカサ「勿体無い。本当に」

キース「そうかな。――どんな人でも、暫く一緒にいると私に嫌気がさすらしい。……彼に聞いてみな」

エレン「そのとーり!ま、さ、に、その通りだ」

ミカサ「ふふっ。……この街には、長いの?」

キース「――長すぎる」

エレン「……」

ミカサ「……」

キース「この街をどう思う」

ミカサ「……」

ギュッ

ミカサ「あ……」

エレン「まあ、な……。落ち着くには時間が掛かる。――大丈夫だ、ミカサ」

キース「やがて慣れるさ。どこにでも嫌なところは有るんだ――」

ゴゴゴゴゴゴ……

キース「……?」

カタカタ…ガタガタ…

エレン「地下鉄さ。これが嫌なところの一つだな」

ゴゴゴゴゴゴ…

ミカサ「直ぐに収まるから」

エレン「まあな」

ガタガタ…カタカタ…カタ…

キース「……」

エレン「……」

ミカサ「……」

カタ…

エレン「……ったくあの不動産屋のクソッ垂れが……!」

ミカサ「……」

エレン「あ、ああ…。悪いミカサ。――何度か案内されてさ、親切だしミカサもそいつが気に入ってた」

エレン「だけど来る度に、いつも急かして5分ぐらいで引き上げるんだ……」

ミカサ「引っ越して、初めて解った」

キース「……疲れを癒やし、凝りをほぐす。――マッサージ機能付きだな」

エレン「……」

ミカサ「……」

キース「――ふっ、くくく……!」

エレン「……ふっ!」

ミカサ「……ふふ」

キース「いや、失敬――ふはははははは……!」

ミカサ「――ふふっ、あはははっ……!」

エレン「……っ、ははは!いーよ、笑ってくれ」

ミカサ「あはははっ……!」

エレン「ははは!どうしてミカサまで笑うんだよ……!」

ミカサ「だって……あははは!」

キース「はっはっはっは……!」

◇◆◇◆◇◆◇◆

エレン「犯人はイノセンシオの事務所が閉まる前に侵入してる。――イノセンシオは残業してたのかな?」

キース「勿論――。えげつなく稼ぐ弁護士だ」

エレン「死体は火曜日の朝に発見された。事務所は月曜日も休み……」

エレン「つまり犯人は金曜に侵入。そのまま隠れて、じっくり土曜から月曜、犯行に費やした」

エレン「――見てくれ」ペラッ

キース(……害者の写真。肥満体の中年が拘束され跪かされている。だが右手が……)

エレン「右手だけ縛られず、肉切り包丁を持たされている」

キース「最近流行りの超硬質スチール製か。硬くてよくしなる」

エレン「ミカサも愛用してるよ」

エレン「次はこれ、天秤だ」ペラッ

キース「……」

エレン「それとこのメモが」ペラッ



"One pound of Flesh"
"No more No less"
"No cartilage No Bone"
"Only flesh.This"
"Talk gone...A the he world"
"Go Free."



キース「……1ポンドの肉、きっかり1ポンド。骨や軟骨は除く……『ヴェニスの商人』だな」

エレン「いや、知らない……」

キース「強欲な金貸しの課した誓約書だよ。……それを成せば、後は自由だ……か」

エレン「イノセンシオの椅子は、汗でびっしょりだった」

キース「当然だ。――犯人はたっぷり時間を掛けて、イノセンシオにどこの肉を切るか決めさせた」

エレン「……」

キース「――もしお前が銃を突きつけられたら、体のどの部位を切る?」

エレン「……腹の贅肉かな。イノセンシオも腹の周りを切ってる」

キース「……まずは先入観を棄てろ。死体を考えるな。最初に感じた衝撃も忘れろ」

キース「大事なのは、何か一つのもの……一つの項目を挙げて、徹底的に、あらゆる可能性を突き詰めるんだ」

エレン「うーん……。何か飲み物持ってくるよ。――ビール、飲むか?」

キース「ああー……ワインが良いな。あるか?」

エレン「んーと、解らん。探してみる……」

キース(……)

キース(大罪……苦痛……思考……誓約……暗喩……)

エレン「んーっと……」ガサゴソ

キース「……これは"説教"だ」

エレン「説教?"罰"じゃなくて?」

キース「大罪は中世の説教に使われた。――当時は7つの徳目と7つの大罪を説教の道具に使ったんだ」

エレン「そうそう、『教区司祭の話』やダンテだ」コポポ…

キース「ほう。ちゃんと読んだか」

エレン「まあね。――なあ」

キース「ん?」

エレン「『神曲の浄罪篇』だけど、ダンテはウェルギリウスと共に、罪人を見ながら、煉獄の山を登るだろう?」コトッ

キース「浄罪への7つの断層か」

エレン「そうそう、それ。あれでは"傲慢"が最初だ。"暴食"じゃない」

キース「ふむ。――仮に浄罪篇が犯人にインスピレーションを与えたとしよう」

キース「するとこの犯罪は、『罪に対する贖い』になる」

キース「犯人は"痛悔"を無理強いしたわけだ」

エレン「つうかい?」

キース「犯した罪を悔い改め、二度と犯すまいとすることだ」

エレン「拳銃を頭に突きつけられてか。じゃあ仕方ないよな」

キース「そうだな」

キース「指紋がない」

エレン「ああ」

キース「被害者同士の繋がりもない」

エレン「うん」

キース「目撃者もいない」

エレン「そこなんだよ。奴は逃げる時、見られたはずなんだ」

キース「都会じゃ、他人に関心を持たない。――例えば、女性が強姦魔に襲われた時は『火事だ!』……と叫ぶ」

キース「『助けて!』と叫んでも、痴話喧嘩と勘違いされて誰も助けに来ない」

エレン「なんだよそれ……最低じゃねえか……!」

キース「まあな。――まだヒントが残っている筈だ」

エレン「……なあ、シャーディス。まだ続けたいけどさ、俺はそろそろ寝るよ。グリシャとカルラの散歩もあるし」

キース「気にするな。週末に退職する人間が、好奇心でやってるだけだ」

エレン「……!そうだった!待ってくれ、これを……」ペラ

エレン「イノセンシオの娘だが、事件当日は留守だった。――この目の辺りをなぞった血、何か意味が?」

キース「脅迫かもしれん」

エレン「セイフハウスに匿ってるよ。文句も無しときた」

キース「……何かを見た。あるいは、『何かを見るはずなのに、まだ何かを見ていない』のだとしたら……?」

エレン「そりゃ、なんだよ?」

キース「解らん。だが……」

キース「これも"一つ"だ」

【集中力がきれたので中断。続きは明日】

-トロスト某所 セイフハウス-


シャルル「……っ、うう……!なぜ父が……っ!」

エレン「シャルルさん。犯人は必ず我々が逮捕します。ですので……どうか、ご協力お願いします」

キース「……」

エレン「犯行現場の写真です。これを見て、何か置いてあるものの位置が変化してるとか、些細なことで良いから教えて下さい」ペラッ

シャルル「っ、そんな――。……わかりません……っ」

エレン「よく思い出して――」

シャルル「お願い……!今は無理なの……!ううっ……」

エレン「……」

キース「諦めるな。必ずチャンスは有る」

シャルル「……あ」

エレン「!」

シャルル「この、絵……っ。逆、です……っ」

エレン「……!」

キース「犯人からの挑戦状か――」

-トロスト アップタウン トロスト・ロウファーム・オフィス-


エレン「この絵か……」

キース「動かしてないだろうな」

エレン「あの写真のまんまだろ?写真は鑑識が来る前のだ」

ガタッ…

キース(掛けていた場所には何も無さそうだ)

エレン「無いな」

キース「絶対に何かある」

ガサッ…スッ…ゴソ…

キース「……!ネジをつけ直している」

エレン「ああ……!」

キース「……」チャキ

エレン「ちょ、なんだよソレ……」

キース「飛び出しナイフだ。あると便利でな」ザクッ…ビィィー…

エレン(なんつーもの持ってんだか……)

ペラッ…

キース(ご開帳だ。だが……)

エレン「ねえじゃねーか!畜生!」

キース「――必ず何かある」

キース(絵画の表面、紋様。なんでもいい、奴は必ず痕跡を残している。そういう奴だ)

キース「……」

エレン「……犯人の描いたモノじゃあるまいし……。あいつは俺達をオモチャにしてんだよ!」

キース「焦るな……」

キース(絵画に目立った痕跡はない。――だが犯人が意味の無い事をするとは思えん)

キース(視点を変えよう。絵画自体に仕掛けが無いなら――)チラ

キース(やはり、あの壁か)

ギシッ…

キース(――目に見えるものが全てではない)

キース(違和感は見当たらないが……。だが、あるとするならば――)

キース(指紋採取用の鉄粉を持ってきて正解だったな。これを……)

サッサッサッサッ…

エレン「家具にまで登っちゃってさ……笑えるね」

キース「待て……」

サッサッ…

キース(……!何か、浮かび上がってきた)

サッサッ…

キース(これは……指紋!)

エレン「嘘だろ……!」

キース「――鑑識を呼べ」

◇◆◇◆◇◆◇◆


ブシュシュ……シュー

エレン「……」

キース(特殊な薬品を塗り、紫外線灯を当てつつ、エアスプレーで吹き出す。それで全てが見える)

ブシュシュ…

鑑識「見ろよ……」

エレン「!」

キース「!」

エレン「……正直、こんなの、見たことあるかよ……?」

キース「――無い」

キース(人の指で描かれた――)


HELP
   ME
(助けて)


鑑識「こりゃ、違うね……。指紋も、指の形も被害者のものじゃない」

-トロスト分署内-

ピピ…カタカタカタ…

キース(指紋照合システムに前科(マエ)があれば、すぐに見つかる筈だが……)

プーッ

・・NO MATCH・・
 (不一致)

カタカタカタ…

エレン「犯人の奴……助けてほしいのかな?」

キース「――違うな。こいつは犯行を止める気はない」

エレン「どうだか。――こいつは"頭の中で悪魔が囁いてる"って手合いだよ。ダリス・ザックレーを撃った野郎は、ハジメ・イサヤマが囁いたんで撃ったって――」

鑑識「あのね……、指紋の照合には3日かかる場合もあるんだ」

鑑識「頼むから、どっか余所に行って幸運を祈っててくれ」

エレン「……」

キース「……」

カタカタカタ…

◇◆◇◆◇◆


エレン「っあー、まさかソファで仮眠をとる羽目になるとはね……」

キース「お嬢さんに『犯人を捕まえる』と言っていたが、あれは本気か?」

エレン「ああ」

キース「――私にもあんな頃があった。今はとても、あんな事は言えん」

エレン「犯人を挙げられないなら、此処で何をしてるんだよ?」

キース「――断片を集めている」

キース「ありとあらゆる証拠を……膨大な写真や標本を集めて――」

キース「事件の経過、あらゆる事柄を、どんな些細な事でも書き留める」

エレン「――それだけ?」

キース「そうだ」

エレン「……」

キース「我々はそれを書類に纏め――犯人が起訴されたときのために備えておく」

キース「――救出される日に備え、無人島でダイヤを集めるようなものだ」

エレン「――くだらねえ……。嘘ついてんじゃねえよ、爺さん」

キース「……どんな手がかりも、煙のようなものだ」

キース「浮かばない被害者の遺体が、山ほど転がってるんだ」

エレン「……」

キース「……」

エレン「だが、今夜の手がかりには興奮したはずだぜ。そんなあんたでも……ふぁああ……」

キース「……」

エレン「――絶対に捕まえる」

キース「……」

キース(……こいつもエルヴィンも、好き勝手言ってくれる)

キース(……)

キース(もう解らんよ。私には)

第三章・前
【××××××】

完。後編に続く。

保守ありがとうございます。
やめたくなりますよー仕事。

【進撃名作劇場―Se7eN―】
はじまるます。

◆第三章・後


◆◇THURSDAY◇◆


-トロスト分署・ラボ前-


エルヴィン「……」

キース「……」zzz

エレン「……んがっ」zzz

エルヴィン「起きろ、この寝坊助ども!」パンパン

キース「んぐっ!?」

エレン「ぉお゙っ?」

エルヴィン「おはよう紳士諸君、イェーガーと大分仲良くなったみたいだな。もたれかかられてたぞ」

キース「……」

エレン(うへぇ……)

エルヴィン「容疑者の身元が判明した」

「!!」

-分署内ブリーフィングルーム-

エルヴィン「容疑者の名は"ライナー・ブラウン"。壁の指紋から身元が割れた。奴はかなり以前から精神を病んでいる」

エルヴィン「マリア州南部の生まれで、両親から英才教育を施されたが、皮肉にもどこかで道を踏み外した」

リヴァイ巡査部長「……」

エルヴィン「奴には麻薬と強盗の前歴があり、当時10歳だったクリスタ・レンズへの強姦未遂で豚箱にぶち込まれた」

エルヴィン「――が、弁護士によりあっという間に釈放された」

エルヴィン「その時の弁護士がダリオ・イノセンシオ。――例の『強欲』だ」

エルヴィン「今日でこの事件に終止符を打つ。S.W.A.Tと現場の指揮はリヴァイ、お前が執れ」

リヴァイ「ああ……」

エルヴィン「奴はここ最近大人しくしているが、住所は押さえているし令状も――……」




エレン「アンタは『違う』ってツラしてるな」

キース「こいつとは思えん」

エレン「どうして」

キース「……この男には"奥行き"が無い」

◆◇◆◇◆◇

ブロロロ…


エレン「……撃たれたことは?」

キース「幸いにも、この34年間一度も無い」

キース「――相手を撃つつもりで銃を抜いたことは三度あるが、引き金を弾いた事は一度もない。……お前は?」

エレン「俺も無いよ。撃たれたことは一度もない」

エレン「でも……」

エレン「撃ったことはある。一度だけ」

エレン「警官になって、初めて容疑者の逮捕に向かった……。まだ新米で、ビビってたんだな――」

エレン「部屋に踏み込むと、ヤク中のジャンキーが銃を乱射してきた。……同僚が、腕を撃たれたんで、それで」

キース「……」

エレン「――あいつ、なんて名前だっけ……」

エレン「コマみたいに回って……まるでスローモーションみたいだった。」

エレン「救急車の中で、その……"そいつ"は死んだ」

キース「……」

エレン「……」

ファンファンファンファンファンファン…!

エレン「目の前で……」

ファンファンファンファン…

エレン「なんでだ……!名前が思い出せない」

キース「……」

ブロロロ…

-トロスト ライナーのアパート前-


ザァアアアア―…


「パトカー?」
「バンまであるぞ」
「厄介事か?」


バンッ

リヴァイ「GO.GO.GO!」

S.W.A.T「……」ザザザッ


バタン


エレン「着いたか」

キース「……」

ゴンゴンゴン…!


S.W.A.T「急げ!上の階だ」カッカッカッ

リヴァイ「非常階段と裏口は?」カッカッカッ

S.W.A.T「ブラボーとチャーリーがついてます」カッカッカッ

リヴァイ「よし……。お前ら、306号室にクソッ垂れが潜んでいる。抵抗するなら容赦はするなよ」カッカッカッ

S.W.A.T「コピー」カッカッカッ

◆◇◆◇


S.W.A.T「!」

リヴァイ「……」

リヴァイ(306号室。……"ライナー・ブラウン"。間違いないな)




キース「見つけたようだな」

コニー「おら!刑事(デカ)は下がってな!」カッカッカッ

エレン「おっと!……何だよ、S.W.A.Tのチビ野郎」

コニー「隊長」

リヴァイ(ハンマーの用意も出来たか)

リヴァイ「ダイナミックエントリーだ」

S.W.A.T「……」コクッ

コニー「……」ブォンッ

バキイッ!


コニー「警察だ!」

ザカザカザカッ!

「クリア!」
「クリア!」
「クリア!」


エレン「……」

キース「……」

キース(見た目はただのボロアパートだが、何か変だ……)

キース(生活感が有るようで、無い――。まるで、浮浪者が廃墟を使っているかのような……)


「いません!」



リヴァイ(……おかしいな。物音一つ――人の気配すらねえ)

リヴァイ(だが、明らかな生活の痕跡はある。……逃げられた?いや、奴に事前に動きを察知出来るような勘の良さがあるとは思えない)

リヴァイ(……じゃあ――)

コニー「隊長……!」

リヴァイ「!」

リヴァイ(……奥の、不自然に膨らんだぼろ切れ。あれか――)

リヴァイ「お早う、ベイビー」

…………

リヴァイ「お目覚めの時間だ、起きろ」
…………



リヴァイ「……」クイッ

コニー「……」コクッ


コツッ…コツッ…コツッ…

リヴァイ「起きろよ、阿呆。MP5のキャンディでも食いてえのか」

コニー「マスターキーもオマケにつけてやろうか?」

…………

リヴァイ(ぼろ切れの膨らみようから、間違いなく誰か寝てるんだが……)

リヴァイ(マジの阿呆か、死んでるか……)

リヴァイ「……」チラッ

コニー「……」コクッ


コニー(ツラ、拝ませて貰うぜ。変態野郎!)


バサッ!

ライナー「――――……」


リヴァイ「……!!」

コニー「……ッ、ゲボッ、ケホッ!」

コニー(何て臭いだよ…っ!)

リヴァイ「……なんなんだ、これは……!」



リヴァイ「刑事ッ!!」

――こいつを見てくれっ!


エレン「!」

キース「見つかったか!」

タッタッタッ




エレン「……!ゲホッ!」

キース「……これは、まさか」

キース(まるで人間の干物だ……)

エレン「酷ぇ……」

キース(遠目から解るほど痩せこけ干からびた体。骨格が丸解りだ……)

キース(ほんのり赤みを帯びたように見えるのは、日に焼けない白い肌に血管が透けて見えるからだろうか……)



キース「救急車を呼べ」

コニー「何言ってる、霊柩車だろ?」

キース「法医官を呼ぶんだ」

エレン「何やってる、みんな外に出ろ!誰も何も触るなよ!」

リヴァイ「チッ……全員出ろ」


ゾロ…ゾロ…


コニー「まるで蝋人形だぜ……」

キース(……壁に刻まれた、あの文字)


"SLOTH"



キース「――『怠惰』……」

エレン「……!おいキース!」

キース「どうした」

エレン「見ろよ。――あんの野郎……っ!」

ペラッ

キース(……これは、ライナー・ブラウン。苦悶の表情を浮かべている)

キース「……3日前の日付だ」ペラッ

キース(段階を踏んで、様々な表情のライナーが写されている。時を遡るにつれて、苦悶の表情も激しくなっている)

キース(……やせ細った奴の体には痛々しいまでに投薬の痕が残っている。蚯蚓腫れなんてもんじゃない。血管を千切りとって、それを傷跡に添えてるように見えるな……)

キース「これが最初か……見ろ」ペラッ

エレン「!」

キース「この日付は、一年前の"今日"だ」

リヴァイ(……首の筋肉、気道に血管。全部丸解り、か)

リヴァイ(皮膚の乾燥のせいか、不自然な切り傷があるな。歯なんかガタガタだ。あれじゃ飯は食えねえな……。――頬骨のつなぎ目まで透けて見えるじゃねえか。)




エレン「髪の毛のサンプル……。クソに、小便のサンプル。……これは爪のサンプルだ」

リヴァイ(汚ぇな)

エレン「俺たちを舐めてやがる……!」

ライナー「――――……」

リヴァイ「まあ、この近親相姦野郎には相応しい報いだ……」チカッチカッ



ライナー「……オホア゙ッ!」

リヴァイ「ッ!?」バッ

キース「!」

キース(目にライトをあてられた途端に……!)

エレン「!?」チャキ

リヴァイ「生きてる!屑野郎が生きてるぞっ!」ジャキッ

ライナー「オ゙ハッ…!ハッハヒュッ!オ゙ッ!エ゙フッ!……エエ゙オ゙ッ!アア゙ッ゙…!」ガタンガタンッ

キース「落ち着け……!」

リヴァイ「こいつ!」

キース「銃を下ろせっ!大至急救急車だ!」

ライナー「ア゙ッ…!ア゙ハッア゙ハッ…!ゲボッ!アッ゙…ア゙ァアハァッ!」ガタンッ

「GO!」
「急げ!」



ファンファンファンファンファン…

◆◇◆◇◆◇


キース「犯人(やつ)は遊んでいる」

エレン「冗談じゃねえ……!」

キース「……」

エレン「……ッ!」イライラ

キース「感情に振り回されるな」

エレン「……ああ?またか?」

キース「どんな過酷な状況でも、冷静に細部を――」

エレン「俺は感情で生きてるんだよ……!」

キース「……聞いているのか?」

エレン「聞いてるよ!」


パシャ!

エレン「っ!?」

「失礼」

エレン「おい何やってる!立入禁止だぞ、とっとと出てけよ!」

???「報道ですよ、UPIのカメラマンだ」パシャパシャ

エレン「おい撮るな!出てけよ、出てけって……出ていけっっ!!」ブォンッ

ガッ

??? 「おわあっ!おいっ!こっちには報道の権利があるんだ!」

エレン「うるせえぞ出てけクソハイエナのブンヤがっ!!」

???「写真を撮ったからな!あんたのだ!」タッタッタッ…

エレン「そうかい、そうかよ!俺はイェーガー刑事だ!"J.A.G.E.R"!よく覚えとけ、バカヤロー!」

…―スペルが言えるとはね!恐れいったよ原始人が!

エレン「ぶっ殺すぞセンズリ野郎っ!」

エレン「……なんでこんなに早く嗅ぎ付けるんだ?」

キース「――警官に"賄賂(そでのした)"を渡したのさ。いい小遣いになる」

エレン「……」

キース「……」

エレン「その――すまなかったよ。……でも、アイツ……あの野郎があんまり――」

キース「構わんさ」

エレン「……え?」

キース「感情で生きている奴も面白い」コツ、コツ、コツ…

エレン「……」


ザァアアアア…―

-ローゼ州付属トロスト大病院-


キース(ライナー・ブラウン。病院のベッドは寝床より寝心地が良ければいいな――?)

医者「――筋肉と脊髄の著しい劣化から見て、一年間は寝てたと推測」

医者「おびただしい種類の薬物が投与されていた。――床ずれが広がるのを防ぐための抗生物質まで」

エレン「――本人は、何か話そうとはしていませんでしたか?」

医者「脳が軟化しているし、舌を咬み切っているから無理だ」

キース「先生」

医者「何かね?」

キース「彼が回復する可能性はありますか?」

医者「……」

キース「……」

医者「今この瞬間、目に光を当てるだけでショック死するね」

エレン「……!」

キース「……」

医者「あんな患者を見るのは初めてだよ」

医者「彼は想像を絶する苦痛を味わってきた」

医者「――なのに、まだ地獄が待っている」

エレン「……」

キース「……」

医者「……お休み」カッカッカッ…

-キースのアパート-

~♪~~♪

キース「……」

PLLLLL...PLLLLL...

キース「……?」

ガチャッ

キース「はい」

《……キース?ミカサです》

キース「ミカサ……?どうかしたのか」

《えっ、いや、何でもない。元気》

キース「エレンは?」

《今はここに居ない。シャワーを浴びている。――いきなり電話をして、ごめんなさい》

キース「……構わんよ。私に、何か用か?」

《ええ、その……誰かに相談をしたくて。――どこかで、会える?明日の朝にでも》

キース「なぜ私に?」

《この街で知っているのは、貴方だけ。他にはいない》

キース「……」

《だから時間があれば……電話してください。お願いします》

キース「――ああ」

《ありがとう……。あ、もう切らないと――おやすみなさい》

キース「ああ、おやすみ」

Pー……

キース「……」


~♪~~♪~♪

第三章・後
【SLOTH―怠惰―】

完。第四章に続く。

そう言えば、以前暇つぶしに書いた【アルミン「あー……」】がついにエレ速に上がってました。
これもみなさんのおかげだ、スゴイ・メデタイ!感謝。
これからも良質かつくだらないSSを量産していくから、サケとスシを片手に、ほどほどにお付き合いください。


余談だがスリーピーススーツだとおしっこするとき面倒だよね。
おやすみ。

調査兵団だ!我々は何をするか解らないぞ!


進撃名作劇場【―Se7eN―】
再開です。

◆第四章・前◇

◆◇FRIDAY◇◆


-トロスト ダイナー・ペトラ-

ジュゥゥゥ…パチパチ…


ミカサ「あなたはこの街に長く住んでいる……ので、この街を良く知っていると思って」

キース「――暮らしにくい街だ」

ミカサ「……ごめんなさい。わざわざ来てもらって」

キース「――なぜ、エレンに相談しない?きっとわかってくれる」

ミカサ「……今は、負担をかけたくない」

ミカサ「――それに、この街に長く住んでいる人と話がしたかった。……ここは、シガンシナとは違い過ぎて、環境が……」

キース「……」

ミカサ「……私が、小学校の教師だったことは?」

キース「ああ、聞いてる」

ミカサ「いくつか、学校を見学してみた。けど……」

キース「……」

ミカサ「ここの状況は、酷すぎる」

キース「……私立の学校には?」

ミカサ「……どうだろう――」

キース「……」

キース「……ミカサ、本当は何を悩んでいるんだ?」

ミカサ「……」




ミカサ「お腹に赤ん坊がいる。エレンとの子供」



キース「……」


ミカサ「……」

キース「ミカサ……。そういう相談には、私は相応しくない」

ミカサ「……」

ミカサ「この街が嫌い……!っ、うぅ……っ」

キース「……」





キース「昔、ある女と一緒に住んでいた。夫婦同然にな」

ミカサ「……?」

キース「子供も、出来た。あたりまえに――」

キース「或る朝、私は普通に家を出ようとした。だが出来なかった」

キース「妊娠を告げられた翌日だったんだ」

ミカサ「……」

キース「生まれて初めて、"恐怖"を感じた」

キース「"こんな酷い街で、子供を産むのか――"……と」

キース「"こんな残酷な世界で、子供を育てられるのか――?"……とね」

ミカサ「……」

キース「"やめるべきだ"と、何週間も説得した。そして彼女は、出ていった」

ミカサ「……私は、産みたい。エレンの子供を」

キース「……」

キース「ずいぶん昔の話だったが、今でも……あの、あの私の決断は正しかったと思ってる」

ミカサ「……」

キース「だが……『もしもあの時、別の決断をしていたら』。――そう思わん日は1日として無い……」

ミカサ「……」

キース「……もし、子供を産まないつもりなら、妊娠したことは伏せろ」

キース「だが、子供を産もうと決心したのなら……」

ミカサ「……」

キース「――精一杯、甘やかして育ててやれ」

ミカサ「……~~っ、……っ!!」ポロポロ

Pi Pi !

キース「――招集だ。行かなければ」

ミカサ「……キース」

キース「うん?」

ミカサ「……ありがとう」

キース「……」

-トロスト分署-


1.Gluttony-×
2.Greed-×
3.Sloth-×
4.Envy
5.Wrath
6.Pride
7.Lust


エレン「……」

キース「……大家によると、ライナーの家賃は、月初に現金のまま郵便受けに入っていたそうだ」

ペラッ

キース「大家の話では……」

――305号室の住人から苦情を言われたことは、ない。

――彼への苦情も、一切ない。

キース「"あんなに理想的な住人はいない"――だそうだ」

エレン「はっ、舌の千切れた住人が、大家の理想かよ」

キース「家賃の滞納も無しだったとさ」

エレン「……なあ!ここで待ってるだけかよ?」

キース「それも仕事だ」

エレン「外に行こうぜ!?薄らバカの異常者がコトを起こすまで待機だなんてバカげてるぜ!」

キース「奴を薄らバカとも、イカレ野郎だとも考えるな」

エレン「いいや、奴は完全にイカレてるよ。今頃あいつは婆さんのパンティ履いてクネクネ踊ってやがるんだ。自分の腐れマラをしごいてな――。違うか?」

キース「違うな」

エレン「いずれ奴の運も尽きるさ」

キース「運は関係無い。……我々は、ライナーが拘束された日からきっかり一年後に踏み込んだ。いや、踏み込まされた。……計算づくだ」

エレン「偶然だろ……」

キース「違うな。犯人からの最初の言葉を思い出せ」


"Long is the way and hard that out of hell leads up to light."


キース「"地獄の闇より光へと続く途(みち)は長く険しい"」

エレン「……だからなんだよ!?」

キース「言葉通りさ」

キース「ライナーを拘束し、丸一年ベッドに寝かしつけた」

キース「手首を切断し、その指紋でメッセージを残した。――投薬し、尿道に管まで通してな」


キース「犯人は入念で、綿密で、そしてなにより我慢強い……!」

エレン「あいつはただのボケだ!図書館通いしてようがボケはボケなんだよ!」

キース「……」

キース(……図書館!)

キース「おい、いま幾ら持ってる?」カツカツカツ

エレン「えっ、ええと、紙幣と銅貨が幾らか……」

キース「取材旅行だ。行くぞ――!」カツカツカツ

エレン「おっ、おい!どこ行くんだよ!?」

キース「図書館だ!」

エレン「待てって――」

キース「犯人は何に影響された?何を目指そうとした?」

キース「例えば、"切り裂きジャック"か……?」カツカツカツ

エレン「……ったく」

-トロスト バーガーショット『オルオ』-


キース「この店は衛生法違反を50も犯している」

エレン「……なあ、向かい側に座れよ。俺達……その、ホモみたいだ」

キース「良いから金を寄越せ」

エレン「やるけどさ……使い道を教えてくれよ」


コツコツコツ…


ハンネス「よう、シャーディス」

キース「やあ」

エレン「……」

ハンネス「……三人でホモるなんて聞いてねえぞ」

キース「ああ、こいつは大丈夫だ。――座れ」

ドッカ…

ハンネス「――なあ、これはアンタの頼みだからやるんだぜ?……ヤバいんだ」

エレン(話が見えない……)

ハンネス「だから、貸し借りナシで行こうや」

キース「ああ……」


スッ



ハンネス「一時間後だ」

キース「ああ」

コツコツコツ…


エレン「……これが金の使い道か?」


キース「そうだ」

-トロスト 散髪屋-

エレン「……」ブッスー…

キース「……わかった、訳を話してやる。これはお前を信用してのことだ」ヒソヒソ

エレン「ああ!もう少しでぶん殴ってたよ……!」ヒソヒソ

キース「あの男はFed(FBI捜査官)だ」ヒソヒソ

エレン「はあっ?ホームレスみたいな臭いだったぞ」ヒソヒソ

キース「かなり前からFBIと図書館は連携して、図書の貸し借りをチェックしている」ヒソヒソ

エレン「ああ、延滞の罰金か?」ヒソヒソ

キース「……読書傾向をチェックしているんだ。例えば――核兵器とか、『我が闘争』とか、特殊な分野を借りた人間をチェックしている」ヒソヒソ

エレン「ちょっと待て……!それって違法――」ヒソヒソ

キース「合法か違法かは問題じゃない」ヒソヒソ

キース「それに、そうやって出来た貸し出しリストで逮捕は出来ん。あくまでも捜査の参考にするだけだ」ヒソヒソ

エレン「はあ……」ヒソヒソ

キース「とにかく、図書カードを作るには身分証や公共料金の支払い書が必要だろう?」ヒソヒソ

エレン「……あっ!だから」ヒソヒソ

キース「そうだ。『神曲』や『カンタベリー物語』などの書物のリストを作り、それに当てはまる人間を捜す」ヒソヒソ

エレン「でも、20世紀の犯罪学を調べてる学生かもしれないし……」ヒソヒソ

キース「黙っているよりはマシだろう?」

カランカラン…

ハンネス「……」

エレン「なんでここを知ってるんだ?」ヒソヒソ

キース「いや"知らん"。……お前もな」ヒソヒソ

エレン「なるほど」ヒソヒソ

ハンネス「……」パサッ

カランカラン…

キース「……」

エレン(リスト、か……)

◆◇◆◇◆◇

キース「ダンテの『神曲』、『カトリックの歴史』、『殺人者と異常者』……」

エレン「『現代殺人捜査学』に『冷血』……『人間の絆』?」

キース「名著だ」

エレン「そうかい。『マルキ・デ・シャデ』……」

キース「『マルキ・ド・サド』。サド伯爵だ」

エレン「知らんよ……。それから『聖トーマス・アクア』なんとか……」

キース「『聖トーマス・アクィナス』。七つの大罪を記している……。これで全部か?」

エレン「ああ、それらを借り出しているのは……こいつだ」

"John do"


キース「よし、行くぞ」

エレン「"名無し"(ジョン・ドウ)?」

キース「……そいつだ」


ブロロロロロ…

【中断します】

このチャプターは切りどころが難しいです。

話は変わりますが、最近ヘッズを深夜SSで見かけるようになりました。何が原因なんでしょうネー。
おやすみ。

保守有難うございます。それから長々と留守にしてすいませんでした。
退っ引きならない事情がありましたが、無事解決しましてこの度カチグミ・サラリマンに昇格致しました。ガンバルゾー。

なので今日から平均的な投下が出来ると思います。ご迷惑かけて申し訳ありません。
少ししたら再開します。

>>309

-トロスト某所 アパート-


コツ、コツ、コツ、コツ…

キース「名前は間違いないか?」

コツ、コツ、コツ、コツ…

エレン「ああ……。あんたも見たろ?――名無(ジョン・ドウ)だ」

コツ、コツ、コツ、コツ……

エレン「厭なら帰るか?」

コツ、コツ、コツ、コツ、コツコツ……カッカッカッ……

キース「……とにかく、会って話を聞く」

エレン「……」


カッカッカッカッ…

エレン「バカげてるぜ……」

キース「話をするだけだ」

エレン「話?『失礼ですが、もしや連続殺人犯ではないですかぁ?』ってか」


カッカッカッカッ…カツン


キース(……ここか)

エレン「どーぞ、ボス」

キース「……お前が話せ。そのよく回る舌で」

エレン「ミカサから聞いたのか?」


コンコンコンコン…!


エレン「――はぁ、アホくせぇ……。"チャーリーズ・エンジェル"だな」

ドンドンドンドンドンドン!

コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ…

エレン「コンピューターの言いなりかっての、クソ」

ドンドンドンドン!


キース「……」


コツ、コツ、コツ、コツ…

キース(……!)

???「……」

コツ…コツ…コツ…コツ…

キース(此方に近づいてくる……。帽子と外套、逆光で顔が見えないが、まさか――)

キース「イェーガー」

エレン「?」

コツ…コツ…

エレン(人影――)

コツ、コツ、コツコツコツ…チャカチャッ

二人「!」

ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥン!

エレン「ぉおっ!?」バッ

キース「ふうっ!」バッ

チュイン!パゥン!ガシャン…!

???「……」バッ

トットットットッ………

キース(発砲……!奴が!)

エレン「くっ、無事か!?」

キース「ああ……!」ヨロッ

エレン「くそっ!」

トットットットッ!


エレン「下だ!下に行った!」

トットットットッ、チャカッ!

エレン(くそっ階段かよ!死角が多い!)

エレン「……っ、っつっ!」バッ

…………

エレン(段差はクリア、下は……)

コッ…コッ…コッ、バッ!

エレン(踊場にも……)

スッ……

エレン(っ影!ヤバイ!)

ドゥンドゥンドゥン!

エレン「あぅゔっ!」バッ

バッチュインパゥ……ン……

エレン(危っ……ねええっ!)

エレン「シャーディス、五階だ!五階にいる!」

エレン「……」ゴクリ

―ママー……?―

エレン「っ!」バッ

―ママァーッ……!―

エレン(何の声だよ……!)

コツ、コツ、コツ…

エレン「……っ!」バッ

………

エレン(廊下に人影、無し)

キース「……っ」

コッコッコッコッコッ…

ガチャ

キース「!」バッ

女性「……」ソーッ

キース(住人か……?)

キース「警察だ。裏口は?」

女性「……!」スッ…

キース(向こうか)

キース「鍵は閉めとけ!絶対に出るな!」コッコッコッ…!

女性「……!」コクコク

バタン…

「おい、凄い音がしたぞ!」
「何があったんだ?」

エレン「廊下に出るな!部屋に入ってろっ!」

バタン…バタン

エレン「……」

エレン(あの野郎、どこに……)

コツ…コツ…コツ…

―ェエェン、ア゙ァアア゙ンッ…―

コツ…コツ…コツ…

―キャァァッ!アァアアアッ……!―

エレン「っ!」ダダダッ

エレン(女が出てきた!あの部屋か!)

エレン「っっ!」バッ

エレン(この部屋には居ない!隣か!)

―……バタン…―

エレン(畜生!やっぱ隣だ!)ダダダッ

バッ!

エレン「伏せろっ!」

「きゃああ!」
「何だ!?」

???「っ!」ダダダッ……

エレン(奥に逃げた!)

ダダダッ!

エレン(バスルームの窓が開いてる!ここから……)スッ…

チャコッ

エレン「うぅっ!」

ドォンドォンドォンドォンドォン!

エレン「ぁあ゙ぁっ!」

ガシャン!パリン!



ザァアアアアッ…

???「……」

コッコッコッコッコッコッ…

エレン(くっ……このっ!)ジャキッ

ザァアアアアッ…

コッコッコッ…

エレン(畜生!雨樋を伝って……)

エレン「くっ!」ダダダッ……

ザァアアアアッ…

「何だうるせぇぞ!」
「静かにしろ!」

???「ハッ、ハッ、ハッ……」


スッ…

ガシャン!


ジリリリリリリリ……!

キース(イェーガーは……!)ダダダッ


―…ジリリリリリリリ…―

キース(!防犯ベル――)

―…コッコッコッ…―

キース(!階段の下か!)バッ


エレン「ハッ!ハッ!ハッ……!」ダダダッ…


キース(イェーガーか!では奴も……)コッコッコッコッコッコッ…




エレン「ハッ、ハッ、ハッ……!――!!」

エレン(窓だ!あそこから雨樋に……!)

ザァアアアアッ…


エレン「畜生!雨で滑る!」ゴンッゴンッゴンッゴンッゴンッ!

エレン「確か奴はあの辺りに……ふっ!」バッ!

ドゴドォンッ

エレン「オ゙ウッ!――っあ……」

エレン(背中モロに打……窓!割られてる!奴だ!)バッ、チャカッ


???「……!」フッ……

エレン「あの野郎、吹き抜けからっ……!」

ザァアアアアッ…

ジリリリリリリリ…

エレン(吹き抜けの下!――いない!?逃げ足速すぎだろ!)

ジリリリリリリリ…





???「フッ…フッ…フッ…ぉおっ!っく……」ドトッドトッドトッドトッ…

???(足を……くそっ!)

???「……!」バッ

エレン(あの野郎、避難ハシゴから!)



ザァアアアアッ…


???「っ!」

シュルルルルル…ダララララッ…ットン…タタッタタッタタッ…

エレン(……居た!あいつ足を挫いたのか?チャンスだ!)

???「っ、はぁっ、くっ!」タタッタタッ

キキィーッ!ドガンッ!パパッ!パパパパーッ!

「事故だぁーっ!」
「こ、こっちくんな!」

ドガンッ!キキィーッ!

ザァアアアアッ…

ザァアアアアッ…

エレン(あの路地か!逃がすか!)

シュルルルルル…ダララララッ…バッ、ドタッ!

エレン「ぁあ゛ぁ……っ!」

エレン(腕っ……折、っ……じゃねえ!あいつ、あいつを!)

エレン(車の上を通るしかねえか!)

ゴンッ…ゴンゴンッ…ゴゴンッ


ザァアアアアッ…

パパーッ!パパパパパーッ!
ファオファオファオファオファオ…

キース(事故のバーゲンセールだな。イェーガーは……あれか!)ダダッ


ザァアアアアッ…

ザァアアアアッ…

ファオファオファオ…

エレン「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…!」バチャバチャバチャバチャ……

エレン(前方にトラック……作業員数名)

エレン「邪魔だどけぇっ!」バチャバチャバチャバチャ

エレン「はあっ、はあっ……」

ザァアアアアッ…

エレン(奴の姿が見えない……トラックか?)

ザァアアアアッ…

エレン(壁との隙間……いない)

エレン(運転席……いない)

エレン(トレーラーの連結部っ!……いない)

ザァアアアアッ…



エレン(あとは側面の……)バチャ、バチャ……



???「ふんっ!」ビュッ

エレン「――!ぐあっ!」ゴスッ

バシャアアンッ……

エレン「ゔぁあぁあ……あぐ、うぅ……」

ゴンッ…ゴンッ…

ザァアアアアッ…

エレン(何が、銃っ……落っ、いてえ……)

エレン「うぅっ…ぐうっ…」バチャッ、バチャッ

???「……」

エレン(早く、はやく拾わないと……)

チャキッ……


エレン「ハア゙ッ…ぁ、ああ……」

???「……」

エレン「あ…ぁ゙っ、ああっ……」

ザァアアアアッ…

エレン(なんだ……銃が、頭に……!)

エレン(死ぬのか?殺されてしまうのか?)

エレン(何も出来ずに、ゴミのように……!)

ザァアアアアッ…

???「……」チャキ

エレン「っ……やめろぉぉっ……!!」

ザァアアアアッ…


「イェーガー……っ!」


???「…………」

【すいませんが体調が悪いので中断。続きは明日に】

>>341

ザァアアアアッ…

???「……」

バッ

バシャ、バシャ、バシャ…

エレン「……?」

エレン(助かった――のか……?)ズルッ
バシャアンッ


バシャバシャバシャバシャ


キース「……!イェーガー!」バシャバシャバシャバシャ…

エレン「う、……っあ゙っ」ヨロッ…

キース「立てるか?」

エレン「ああ……」

ザァアアアア…

-"ジョン・ドウ"の部屋前-


キース「どこに行く気だ」

エレン「決まってんだろ、部屋の中だよ」ガチャ…

キース「いかんいかん……待て」

エレン「……」ガチャ、ガチャガチャ

キース「止めろ」

エレン「なんでだよ……。発砲したんだぞ!?」

キース「ここは駄目だ!」

エレン「相当の理由があるんだ!」

キース「捜査令状がいるんだ!」

キース「思い出せ「根拠があるんだ!」……どうやって此処に来た?」

エレン「……」

キース「いいか、FBIのことは秘密なんだ」

エレン「いい加減にしろよ!どけって!」

キース「FBIの協力があったことを表には出せん!ここに来た"理由が……」

エレン「ガタガタ言いやがって……!」ガチャ…

キース「おい止めろ!聞け、聞くんだ」グイッ、ドン

エレン「いってえな何すんだよ!手を放せ!放せってコノヤロー!」バッ

キース「分かった分かった……、悪かったよ……。話を聞いてくれ」

エレン「……」

キース「いいか、こんな特殊な状況じゃ奴を起訴には持ち込めない。奴を裁判で有利にさせるだけだ!それでもいいのか?」

エレン「令状なんか取ってられるか!そんなのはクソだ!」

キース「……いい「駄目だ!待てない!」イェーガー!」

エレン「……」

キース「ドアを開ける"正当な理由"がいるんだ」

エレン「……」

キース「分かったな?」

エレン「……」

エレン「……分かったよ。ああ、その通り……頭に、血が登っててさ。あんたの言うとおりだ……」コッコッコッ…

キース「分かってくれたか……」

エレン「……フンッ!」ヒュッ

バキッ!

ガタン…カランカラン…ッ

キース「……!!」

エレン「ぁあー……、ドアを壊しまったよ……。もう仕方ないよな」

キース「……」

キース「このっ……、この大莫迦野郎がっ!」

コッコッコッ…

エレン「……」

エレン(……正当な理由ね)

エレン(……!)



エレン「金!まだ残ってるか!?」

ザァアアアアッ…

警官「……」

ユミル「だからさ、あの男よく出掛けてたんだよ、人殺しのあった日に。それで……あぁーっと……」

エレン「シャーディス刑事に連絡した」

ユミル「そうそう、電話したんだよ!……あいつ、なんだか気色悪い男で、そんでこの近所でも殺しがあったもんで……」

エレン「よぉーし、もう良いぞ。――あとは話した通りだ」

警官「は、了解しました」

エレン「よし、じゃああの警官の書類にサインしてくれ」

ユミル「あいよ……」カリカリ…



キース「……」

ザァアアアアッ…

ユミル「どうだ?名演技だったろ?」ボソ

エレン「上出来。……これで飯でも食え」

ユミル「よっしゃ」

エレン「アルコールはナシだぞ」

ユミル「解ってるって……」バシャ、バシャ、バシャ…

キース「……」

エレン「……正当な理由の出来上がりだ。行こうぜボス」



ザァアアアアッ…

-"ジョン・ドウ"の部屋内-


キィ…

キース「ここで待ってろ」

エレン「馬鹿言うな」

ギシ…ギシ…ギシ…

エレン(暗いな。懐中電灯無しじゃなにも見えない……)

エレン(……!)

エレン(……あれは、工具……か?よく判らん刃物もある……)

ギシ…ギシ…ギシ…

キース(……赤く輝く十字架のアンク。聖母の像……)

キース(敬虔なクリスチャン……にしては、やけに血なまぐさいコトに関わりがあるな)

キース(電光板には、写真。どれも常軌を逸しているな)

キース(ロボトミー手術。これは拷問か……?)

ガラッ

キース(引き出しの中には、聖書と薬品のアンプル……)

ギシ…ギシ…ギシ…

エレン(服は全てクリーニング済み……。ちっ、良いもの着てやがるぜ)

ギシ…ギシ…ギシ…

キース(……戸棚にトマトソースの缶詰、ウィリアム・シェイクスピア作『ヴェニスの商人』……)



キース(そして誰かの右手首)

キース「……ライナー」

キース(領収書が貼り付けられている……)

"ワイルド・ビル皮革店"

キース(棚の中は……)ペラッ


キース(女か。身なりからして、娼婦か?)

ギシ…ギシ…ギシ…

キース(あの扉は……)

ギィィ…

キース(書斎ってやつか。乱雑に積まれた書籍。カバーに無題という点から、奴個人が制作したものだと考えるべきか?)

キース(……ここにも写真だ。塗りつぶされたり、縫い付けられたり、意図が見えない)

エレン(……あの、赤い光は何だ?)

ギィィ…

エレン(バスルーム……。いやこの赤色灯に写真、"現像室"ってか?)

エレン(……何を撮ってたんだ?)

エレン(……!)

エレン(この女……サシャ・ブラウス!)

エレン(拳銃を鼻っ面に突きつけられて、顔を歪ませてから撮影してる……)

エレン(……!こっちはダリオ・イノセンシオ!……死ぬ寸前のところを撮影してる。――変態野郎が!)

エレン(……バスタブの中は……)

エレン「……っ!」

エレン「シャーディスッ!」

エレン「シャーディスッ!」

ダダダッ…

キース「なんだ!?」

エレン「……っはぁ」

キース「……どうした?」

エレン「やられたよ……」

キース「何のことだ」

エレン「あの腐ったUPIのクソカメラマンだ!」

キース「……?」

キース(浴槽の中、か?)

ギシ…

キース(……!!これは、イェーガーと私の写真……)

―…写真を撮ったからな!アンタのだ…―

キース「……」

エレン「……目の前いたのにっ……!」

第四章・前
【LUST―淫欲―】

完。後編に続く。

ペトラさんの死体を見たとき、悲しみより「まだこれ使えるよね」と思った奇行種は私です。

進撃名作劇場はじまるます。

◆◇◆◇◆◇

ファオファオファオファオ…


ナナバ「犯人の顔はこんな感じ?」

エレン「んぁあそっくりだ、上手いよ。そいつをバラまいてくれ」

ハンジ「手帳、小切手、身分証も無し。あったのはこの領収書だけだね」ペラ

エレン「もっと良く探せよ……」

ハンジ「あ!ちょっとこれ見て……。ベッドの下から札束発見。彼のヘソクリかな?」

エレン「へっ、ざまあ見ろ。野郎、今頃金に困ってるぜ」

ハンジ「もう1つ、ウソみたいな事実があるんだけど……」

エレン「なんだよ?」



ハンジ「指紋が見つからないんだよね。ただの1つも」

エレン「……そんなの信じられねぇ。もっと良く探せ」

ハンジ「はーい……」


◆◇◆◇◆◇


エレン(奴の書斎か。つまんなさそうな本ばっかりだな)

キース「――もっと人手が要る」

エレン「俺らはベストを尽くしてるだろ。どうして人手が要るんだ?」

キース「ここに奴の書いたノートが2000冊ある。一冊につき250頁だ」

エレン「殺しについて何かあったか!?」

キース「……"我々は病める操り人形"――」ペラッ


"舞台は暗く、薄汚い"

"周りを省みず、堕落と姦淫の舞に興じ、溺れゆく"

"道を踏み外した我等"

エレン「……」

キース「まだ有る――」ペラッ


 今日、地下鉄で一人の男が話しかけてきた。
 寂しい男の、『天気がどうだ』とかいう、つまらない世間話だ。

 最初は愛想良く相槌を打ってやったが――次第に、あまりのくだらなさに頭痛がしてきた。

 次の瞬間、男へと嘔吐していた。

 男は怒ったが、こっちは笑いが止まらなかった――。


キース「――日付なし」

キース「ノートは本棚に雑然と並んでいる。――思いつくままに書き連ねたのだろう」

エレン「ライフワークってヤツだな……」

キース「50人が24時間交代で読むとしても、2ヶ月はかかるな」

エレン「ああ分かってる分かってる分かってるってー……」

――…リリリリリン…


エレン「――!?」

キース「……!」

……リリリリリン…

「電話だ……」

…リリリリリン…

エレン「――っ!」

エレン「電話、何処だ?」

――…リリリリリン…

「さあ?」
「電話あったか?」「解らん」
「何処にある!?」
「何処で鳴ってるんだ!」「解らんって」「どこだ?」

エレン「み ん な 静 か に っ ! !」


…………


――リリリリリン

エレン(聞こえた!さっきよりはっきりと――)

エレン(この辺りの筈だが……)

リリリリリン…

エレン(!あの部屋か!)

エレン(服が散乱してる……。この下に!)

エレン(何処だ!はやく出てこいよ!出てこいってんだ!)バッドサッ


リリリリリン!リリリリリン!


エレン(あった!)

エレン「……」

……ガチャッ

エレン「――はい」


『感心したよ』



エレン「……!」

エレン(シャーディス……いた!録音を)チラッ

キース(録音だな)チラッ

『よく見つけることが出来たね。見事だ……』

キース「……」カチッ

『君たち警察には頭が下がる』

エレン「――そりゃ、嬉しいね……"ジョン"!」

エレン「いいか『まあこっちの話を聞いてくれ。――今日の一件で予定を変更することにした』

『一言、君達を誉めたくてね』

エレン「……」

『ケガをさせて悪かった。けどあの時はああするしか無かったんだ……。許してくれるかな?』

エレン「うん――」

『もっと話したいけど、楽しみは後にとっておく――』

ブツッ

エレン「あ――!……っ」

キース「……」

カチッ キュルキュルキュルキュルキュル…

『今日の一件で……』

キース「録れた」

エレン「よし……」

「……」
「……」
「……」

エレン「……」

キース「……諸君、仕事に戻れ」





◆第四章・後◇

エレン「当たってた……」

キース「ん?」

エレン「説教の事だ。確かに奴は説教師だ」

キース「ああ……。殺しは説教のつもりだ」

エレン「この写真の奴、知ってるよ――。こいつも……こいつも!――この鼻デカのブロンドは?」

キース「……娼婦だろうな」

エレン「多分ね。――ジョンの眼に留まった……」

キース(……そして、そのブロンドの写真を隠すように貼り付けてあった領収書……)


"ワイルド・ビル皮革店"

◆◇SATURDAY◆◇


-トロスト ワイルド・ビル皮革店-


オルオ「ああ、そいつならゆうべ取りに来たぞ」

エレン「ゆうべ?」

オルオ「おお」

エレン「こいつ?」ペラッ

オルオ「"ジョン・ドウ"。名前が名前だ、忘れねえよ。足を引きずってたな……」

キース「何を購入した」

オルオ「写真がある……。少しばかりユニークなのがな」

オルオ「俺は"アホーマンス・アーティスト"だと睨んだね」

エレン「なに?」

オルオ「解らないか?解らないのはお前がまだ俺の域に達してないからだ……」

エレン「冗談は顔だけにしてくれよ……ったく」

オルオ「ほれ、舞台で小便してそれを飲んだりする――あれの類だよ。だから"アホ"ーマンス」ペラッ

エレン「ああ、ああ……」

エレン「……ほら」ペラッ

キース「……」

オルオ「安くしすぎたぜ……」

キース「これを作ったのはお前か?」

オルオ「はっ、注文があれば何でも作るさ」

ファオファオファオファオファオ…!

pipipipi!

エレン(呼び出し!)

キース「……ブロンドが居た」

エレン「!」

バッ

オルオ「あっ写真!俺のなんだが!俺のなんだが!?」

-トロスト 闇クラブ-

♪♪!♪!♪♪♪!…

エレン(ここか。裏じゃ売春や変態プレイを堪能出来るって噂の音楽クラブ……)



警官「そこから出て来い!」

ジャン「俺がなにしたってんだ!」

警官「良いから出て来いっつってんのが解らないのか!」

ジャン「カウンターからは一歩も動いちゃいねえよ!」

警官「言われた通りにしないとブタバコにぶち込むぞ!貴様みたいなクズにでも良い寝床になるだろうよ!……!」



エレン「……」

別の警官「こっちです」

♪!!♪♪!!♪♪♪…

キース「この音楽どうにかならないのか!?」コツコツ…

警官「今係の者を捜させてます!」コツコツ…

コツコツコツコツ…

警官「あそこです」
エレン「ご苦労」

コツコツ…

警官「……!殺人課の方ですか!?あの、見てください!」

エレン「大丈夫だ。早い見せろ……」

キース「……」

キース(今度の"罪"は、ドアに刻まれている……か)


"LUST"(淫欲)

「動くんじゃない、落ち着け!」
「いいか……、すぐ外してやるからな」

ダズ「ひっ……ひっぁ……」


エレン(部屋には数人の警官と、痩せた男。目撃者……では無さそうだな)

エレン(ガイシャはベッドのシーツにくるまれている……。多分、あのブロンドだ)

警官「……」バサッ

エレン「……!」

キース「……」


ヒッチ「――――」

エレン(ひでぇ……。なんて顔で死んでやがる。それに×××がズダズダじゃねえか……)

キース(凶器は間違いなく……あの痩せた男が身につけた――)

ダズ「頼むからぁ早ぁくこれ外してくれぇああ!外してくれよぉおおっ!!」

エレン「お前ら早く外せよ……!さっさと出ろっ!」


♪!!♪!!♪♪…

-トロスト分署 取調室-

PLLLL...PLLLL...


エレン「……」

ジャン「……」

エレン「もう一度だけ聞きたいんだけどさ……」

ジャン「……」

エレン「アンタは何も見てないし何も聞いていない?」

ジャン「……ああ」

エレン「そうか」

ジャン「ああ」

ダズ「奴、ぁ俺に『結婚してるか』って聞かれっ……けっ、拳銃が見えたんだ……!」

キース「……女は?」

ダズ「なに?オンナ……?」

キース「あの売春婦はどこに居た?」

エレン「誰かがお前の店に来て、下の部屋でハメハメするとしたら……客は必ずアンタの前を通るんだろ?」

ジャン「――ああ」

エレン「一人位見たろ?なんか包みだの袋だの、荷物を持ってきた奴をさ……」

ジャン「……ウチに来る奴ぁ、何かしら"荷物"を抱えて来るんだよ」

ジャン「ギッシリ詰まったスーツケースを抱えてくるやつもな」

ダズ「おっ……女はベッドに……ぃ居た、ぁあ…っ!っ、ううっ――!」

キース「……」ペラッ

キース「そして、ワイルド・ビル皮革店製の"刃付き避妊具付きの拘束服"を着けられたわけだ」

ダズ「ひっ……うっ、グッ……うううっ……」

キース「――誰が縛った?お前か?」

エレン「なあジャン。アンタは、自分の仕事が好きか?――あの店が好きか?」

ジャン「いいや」

ジャン「――好きな訳ゃねえ」

エレン「……」

ジャン「だが、それが『人生』ってモンだ」

エレン「……」

ジャン「……」ギシッ

ダズ「あいつぁ銃を持ってた……!それで、それで俺に……ぃぃいひっ、ヤらせた……ぁ!」

キース「……」

ダズ「無理矢理、殺らせたっ!」

ダズ「あの、あの変な物っ出してきて……俺に!俺に着けさせたっ……!それでっそれで……『あの女と犯れ』と……!」

キース「……」

ダズ「それで殺ったっ!!あの女とヤったっっ!!」

ダズ「ぁっあ……神様ぁ……カミサマ神様っ!口に拳銃が突っ込まれてた!拳銃っが、喉元まで突っ込まれてたんだぁっ!」

ダズ「F×××××××××K!!」


っつ……ァっ神様っ……!
っ…うか助けっ、助けて下さい……!
お願いです神様どうか助けて下さい……!
神様お願いで……

-トロスト バー『タイタン』-

~♪~~♪

エレン「……はぁ」カランッ

キース「――ハッピーエンドとは、いかないな」

エレン「ふん」

キース「絶対に……」

エレン「逮捕出来ればハッピーだよ」

キース「……もし、ジョン・ドウを捕まえたとして――奴が本物の悪魔ならお前も納得するだろうが……」

キース「奴は悪魔じゃない。人間だ」

エレン「――なあ、アンタは何時もそうやって、皮肉だとか理屈だとかを並べたり……。俺を鍛えてくれてるつもりなら嬉しいが、でも――」

キース「"でも英雄になりたい。"――か?」

キース「人々は英雄なんか求めてはいない。みんなチーズバーガーを食べたり、宝くじを買ったりして――」

エレン「おい……!何だってアンタはそうひねくれてんだよ?何でだ?」

キース「さあな」


カランカランッ…


キース「……まあ、色々あったからだろうな」

エレン「……例えば」

キース「――今じゃ、無関係が美徳のように持て囃されてる。もうそんな街で、世界で暮らしたくないんだよ、私は」

エレン「アンタも同類じゃねえか」

キース「ああ私だけ違うとは言ってない。俺にも分かる、痛いほど解るんだよ……!無関係が一番だと!」

キース「人生のあらゆる問題と闘うより、麻薬に溺れるほうがラクだ」

エレン「あ?」

キース「必死で稼ぐより盗んだほうが簡単だ」

エレン「ああ……」

キース「子供を育てるなら殴るのが容易い。人を、愛するには労力がいるからな」

エレン「アンタが話しているのは犯罪者のことだろ?つまりそんなのは、頭のイカれた連中のことで――」

キース「いや、違う違「そうだ!そうだろ」そうじゃない、待て!私は日常生活の話をしているんだ」

キース「それがっ、それが解らんほどお前はウブじゃあるまい?」

エレン「よせよ……。まあ、よく考えてみろって――」

エレン「アンタは世間の無関心がどうしても気に入らない。だから……自分も無関係でいるんだろ?そんなの筋が通ってないよ」

キース「……お前は」

エレン「無関心じゃねえ」

キース「お前に何が出来る?」

エレン「さあね。――兎に角、アンタは……今言ったことを信じてるからこの仕事を辞めるわけじゃないんだろ?そう信じたいだけだ。――そのほうが、ラクだから」

キース「……」

エレン「アンタは俺に同意を求めてるんだ。『そうそう、世の中腐りきってる。みんなで山奥の丸太小屋に住もう』ってな」

キース「……」

エレン「そんなの俺はごめんだ。同意なんか出来やしない。絶対に、絶対に……」

キース「……」

エレン「……出来ない」

キース「……何故だ」

エレン「俺が、この世界に生まれたからだ」

エレン「俺達が、その、そんな世界を作ったなら、俺達がそんな世界を嫌だと思うなら、変える義務があるんだよ」

エレン「戦うべきなんだ」

キース「戦えるのか」

エレン「戦うんだよ。敵がどんなに強かろうが、世界がどれだけ残酷だろうが関係ない」

キース「……」

エレン「……もう買えるよ。金、置いとく」パサッパサッ

エレン「――でも、ありがとう」

キース「……」

~♪~~♪~♪

-エレンのアパート-

エレン「……」


"世の中、無関心が一番だ"

"俺にも分かる、痛いほど解るんだ!"


エレン(シャーディスだって、昔はあんなんじゃなかった筈だ)

エレン「……」モゾ

ミカサ「……」

エレン「愛してるよ……とっても」

ミカサ「――分かってる」

-キースのアパート-

チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…

キース「……」

"戦うべきなんだよ"

"敵がどんなに強かろうが、世界がどれだけ残酷だろうが関係ない"


キース「……っ」

チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…

ガシッ

ブンッ

ガシャンッ!カランカラン…カラ…

キース「……」

チャキッ…シュッ、トンッ…

―戦えるのか?俺は……―

チャキッ…シュッ、トンッ…

チャキッ…シュッ、トンッ…

第四章・後
【LUST―淫欲―】

完。第五章に続く。

次回(多分バレてるだろうが)ジョン・ドウの正体が明らかに!

これが終わったら、シチューボーイには悪いけどまだまだ進撃SSを書くよ。おやすみ。

ベルトルさんの三角座りと寝相の悪さにはちゃんと意味があったんだね……

じゃけん、五章投下しましょうね~(勤勉)

◆第五章◇

◆◇SUNDAY◇◆

-トロスト分署 緊急通報センター-

PLLLLL...

オペレーター「はい、こちら警察です」

『……』

「――?何です?」

『……やったよ』

『また、"奴"がやった……!』

-トロスト 某レジデンス-


キース(犯行の現場はバスルームか。タイルやバスタブに血が飛び散ってる)

キース(被害者の名は『アニ・レオンハート』。職業はモデル。一人暮らし……)

キース(その彼女は今、猫のぬいぐるみと共に永遠の眠りについている)


"PRIDE"


アニ「――――」


キース(……傲慢)

キース(血文字の下には彼女の遺影(グラビア)か。――鷲鼻だが、確かに美人だ)

エレン「……」

キース「彼女が握り締めているのは、何だ?」

エレン「あー……睡眠薬だよ。接着剤で糊付けされてる」

エレン「反対側の手には電話だ」

キース「顔は見たか?」

エレン「……切り刻んで、包帯を巻いてある」

キース「電話で助けを呼べば生きられる」

キース「――醜い顔でな」

キース「それが嫌なら、薬を飲んで楽になれ――か」

エレン「よせよ……!」

ミケ「……鼻を削いである。頬骨も砕いてるな」

キース「絶望をあおるための演出だろうな」

ミケ「この匂いからしても、"やりたて"ってのが良く解る」

-トロスト分署前-

バタム バタム

キース「イェーガー」

キース「事件が片付くまで捜査に残りたい」

エレン「は!?」

キース「結末は二つに一つだ。我々が奴(ジョン・ドウ)を逮捕するか……」

キース「奴が7つの殺人を完了するか」

ブゥウウウ――…ゥン……

エレン「俺の心配なら結構だよ。ありがたいが、独りでもやれる」

キース「あと数日、お前の相棒を勤めさせて欲しいんだ。構わないか?」

ブロロロロロ…バタム

コツ、コツ…

タクシー運転手「け、警察署前……です……」

「…………」

コツ、コツ、コツ…

-トロスト分署 エントランス-



エレン「俺が断れないと思ってんのか?――戻ったぞ、レディ」

受付「奥さんから電話があったわよ。留守録つけたほうが良いんじゃない?」

エレン「ありがとよ」



「刑事さん……」



キース「終わったら辞めるさ」


「刑事さん?」


エレン「お好きなように……」


「刑事さぁぁーんっ!!」

エレン「!?」

キース「!」

シー…ン…

エレン(……血まみれの、シャツを着た……)

キース(金髪の、愛想の良さそうな小男……)




アルミン「僕だよ、"ジョン・ドウ"だ」

キース「奴だ……!」

エレン「そこを動くなよ!」チャキッ

警官「っ!」チャキッ

ドカドカドカドカ…!

エレン「床に伏せろ!」

キース「みんな、離れてろ!」

アルミン「――久しぶりだね」

エレン「伏せろ!伏せろよ生ゴミ野郎っ!早く腹這いになれ害虫が!」

アルミン「……」スッ

エレン「早くしろ!早くしろっ!早く伏せろクズ野郎!糞虫っ!」

警官「確保!」カチャッ

ヌル…ッ

警官「何の血だ?畜生め……!」

エレン「……っ!」
キース(アニ・レオンハートの血か……!)




アルミン「――すまないけど、僕の弁護士を呼んでくれ」

キース「……」

エレン「なんて野郎だっ……!」

-トロスト分署 取調室-



アルミン「――。―――……」

マルコ「……?……。………」




エレン(弁護士と密談中か……。何を話してやがる……!)

エルヴィン「名前だけは白状したよ。"アルミン・アルレルト"だそうだ」

キース「アルレルト?マイヴェスじゃなくてか?」

エレン「アホみてぇな名前だな……」

エルヴィン「奴は自身の指先を削いでいた。奴の部屋から一つも指紋が出なかったのはその為だ」

エルヴィン「かなり前からそうしてきたらしいな……」

エレン「預金口座とか、拳銃の入手経路は?」

エルヴィン「手掛かり無しだ。――クレジットカードや借金、就職の経歴も無い。五年前に開いたであろう口座も、現金での取引のみだ」

エルヴィン「兎に角分かっているのは、奴が正真正銘の金持ちで、教養も有り――」

エルヴィン「完全に異常者であることだけだ」

キース「……『ジョン・ドウ』になりきったんだ」

エレン「尋問はいつ始めるんです……?」

エルヴィン「尋問は無い。裁判所に直行だ」

エレン「はあ……?奴が大人しく自供する訳がない。理屈が通らないですよ!」

キース「まだ、何かある」

エレン「おちょくられて馬鹿みたいに突っ立ってろって?――冗談じゃねえ。まだ終わっちゃいない……!」

キース「……」

キース「どうやら、お前と初めて意見が合ったようだな」

キース「まだ何かある」

エレン「だが、何があるってんだ?」

キース「……」


アルミン「――。――……」


キース「あと二人殺せば、奴の"説教"は完成する」

キース「待つか……」チラッ


マルコ「――。――?―…」


キース「弁護士に聞くしかないな」

-トロスト分署 応接室-


マルコ「依頼人はあと2つ、死体があると言っています」

エレン「……」

キース「……」

ナイル「……」

エルヴィン「……」

マルコ「彼は死体を或る場所に隠していて、今日の18時に、イェーガー刑事とシャーディス刑事の2人だけを案内したいと……」

エレン「なぜ俺達を?」

マルコ「"尊敬している"そうだ」

キース「……奴の誘いだ」

マルコ「2人が申し訳でを断るなら、永遠に死体は見つからないと言っています」

ナイル「私なら死体なぞ腐らせておくがね」

エレン「おいおいおい待て待て……。奴は拘留されて三食昼寝ケーブルTV付きだ。俺の女房だって導入してないのに――。何でマトモに取り合うんだ?」

エルヴィン「イェーガー」

エレン「クサイよ!プンプン臭う。それにコイツ、ああ?アンタ。三千$のスーツ着込んであの糞虫の為に働くなんて、最低だな!」

エルヴィン「イェーガー!」

マルコ「我々弁護士は、依頼人の為に最善を尽くす義務があるんだ」

エレン「良く言えるな、吹き出物野郎が……」

エルヴィン「――我々は取引には応じない」

マルコ「申し出が受け入れられない場合、こちらは全面的に精神異常を主張しますよ」

ナイル「結構だ。是非やってみるといい」

マルコ「ドーク検事。これだけ異常犯罪なら、我々の主張は必ず通りますよ?」

ナイル「必ず有罪にする。断言して良い」

マルコ「もし申し出が受け入れられたなら……彼は供述書に署名し、全ての罪を認めると言っています」

キース「……」

エレン「……」

エルヴィン「……君達の事件(ヤマ)だ。君達で決めろ」

エレン「――全面自供だな?ノッた」

マルコ「――条件は"2人"の同意です」

キース「……精神異常を主張するなら、今の会話が反証になる。――これは警察に対する脅迫だ」

マルコ「ならば僕達は死体の話を出す。――2つの死体があることを知りながら、その発見に警察が乗り気ではないとマスコミが知ったら、大騒ぎになりますよ」

キース「……本当に死体が有るのなら、な」

ナイル「それについては、鑑識から報告があった。アルミン・アルレルトの着衣と爪を調べてもらったんだ」

キース「……」

ナイル「まず本人の、指紋を削いだときの血液を採取した。次にアニ・レオンハート女氏の血液もあった」

ナイル「それともう1人、また別の人間の血だ。――誰のかは解らない」

…………

ナイル「相手は手錠をしている。余計な真似は出来ない」

キース「……」

エレン「――終わらせよう」

キース「……」

第五章
【PRIDE―傲慢―】

完。第六章に続く。

いよいよ最後だ、ガンバルゾー。

あとアニが美人モデルってことに疑問を抱いたイディオットは正直に申告し、しかる後にIDの画数分巨人を討伐しなさい。
じゃ、おやすみなさい。

◆第六章◇

-トロスト分署 シャワー室-


シャアアアア……


キース「――もし、あいつの頭が割れて中からU.F.Oが出てきても、慌てるなよ」

エレン「ああ、解ってる……」

ゾリ…ゾリ…

エレン「なあ、もし間違って乳首剃り落としちまったらさ、労災になるかな?」

キース「ふん……ははは……多分な」

エレン「ははは……そうか」

キース「もし請求する勇気があるなら、俺が買ってやろう」

エレン「ん……」


シャアアアア…

キース(ムダ毛を剃り落とし、イェーガーと共に無線と仕込み、防弾ベストを着込む)

キース(弾を装填し、戦いに備える)

キース(我々を出迎えたのは記者からの質問攻めとフラッシュの嵐。その後ろをジョンが付いて来る)

キース(天空にはヘリからの護衛と監視、防弾処理の為された護送車には仕切りが付いている)

キース(見た目だけならば、安全だ)

◆◇◆◇◆◇◆◇


ブロロロロ…

キース「……」

エレン「……」

アルミン「……」

キース「……お前は誰だ」

アルミン「……」

キース「本当の正体は?」

アルミン「――意味が解らないな」

キース「今、自分の正体を明かしたら、何か不都合でもあるのか?」

アルミン「僕が誰であるかなんて、全く無意味なことだ。――そのまま左に行ってくれ」

ブロロロロ…

エレン「行き先はどこなんだ?」

アルミン「――すぐ解るよ」

エレン「死体を二つ拾いに行くだけとは思えない。――今までのお前のやり口から見てな」

アルミン「……人にものを聞かせたいなら――」

アルミン「手で肩を叩いても駄目だ。金鎚で思い切り殴ればいい。そうすれば、人は耳を傾ける」

エレン「……じゃあお前は、他人様にモノを聞かせるほどエラいってのか?」

アルミン「……僕はそんな特別な存在じゃない。ただ、僕の"してること"は特別だ」

キース「……してること?」

アルミン「ああ」

エレン「ああ゙ー……俺には、ありふれた事件にしか見えないね」

アルミン「それは違うさ」

エレン「違わないね。どれだけ騒いでようが、後二ヶ月もすればみんな目もくれなくなるさ」

アルミン「……君はまだ、全体を見ていない」

アルミン「総てが終わり、幕が閉じれば――……。人々は理解し難いだろうけど、認めざるを得なくなる」

ブロロロロ…

エレン「……訳わかんねえよ」

キース「……」

エレン「どーせくだらない計画なんだろ?」

アルミン「君に見せるのが待ち遠しいよ。……素晴らしい結末になる」

エレン「……じゃあ、お前の横で見させてもらうからな。幕が上がったら教えろよ。見逃したくないんでね」

アルミン「安心しなよ。……絶対に、見逃さない」

ブロロロロ…

バコバコバコバコ……

《車は依然北上中、荒野に出る。このまま追跡を続行する……》

バコバコバコバコ…


ブロロロロ…

アルミン「……」

キース「――嬉しそうだな」

アルミン「もうすぐだからね」

ブロロロロ…

エレン「……いつも疑問に思うんだが、よかったら教えてくれよ」

アルミン「……」

エレン「頭のおかしい奴って、自分で解ってんの?自分はいかれてるとか」

エレン「例えば、夜中に一人でエロ本読みながらマスを掻いてたとする。そんなとき、ふと――『ワオ、俺ぁホントに頭おかしいぞ』とか、そう思ったりするのか?」

アルミン「……僕が異常者なら安心かい?」

エレン「その通りだよ」

更新待ってたよ。

アルミン「……僕を理解してもらおうとは思わないよ。ただ僕は――選ばれたんだ」

エレン「ついに出た」

キース「そう信じるのは勝手だが――、お前は自分の論理が矛盾していることに気づいてない」

アルミン「――どんな?」

キース「……もしお前が、神か何かに命じられて、その使命を遂行しているのなら、自分が"楽しんでいる"のはおかしいんじゃないか?」

アルミン「……」

キース「お前は人殺しを楽しんでいる。とても殉教者には見えんな」

>>437 私生活にかまけてました。ごめんなさい。


アルミン「……イェーガー刑事はどうかな。取調室で僕と2人きりになれば、思い切り"楽しむ"だろう?」

エレン「……」

アルミン「違うかな?好きなだけ僕をいたぶることが出来るだろう?」

エレン「そいつは心外だな。俺は絶対に――」

アルミン「結果を恐れて、しないだけだ」

エレン「……っ」

アルミン「でも本心は違う」

アルミン「……自分の仕事を楽しむ権利はある。楽しんでたのは否定しない」

アルミン「罪深い人間を罰することを……」

エレン「おい待てよ、お前は罪のない人間を殺してただろ」

アルミン「……罪が無い?それば冗談なのか?」

アルミン「あの大食い女。満足に意思疎通の出来ない牝豚。あいつの豚のような食生活を見れば、食欲も失せるだろ……」

アルミン「その次の弁護士なんか感謝状を貰いたいぐらいだよ……!」

キース「……」

アルミン「あいつは銭を稼ぐために、ペラペラと!嘘を並べて!人殺しや強姦魔、ありとあらゆる人間の屑を街に放ってきたんだ!」

エレン「人殺し?お前じゃなくて――」

アルミン「あの女!女だ!性根が腐りきって、ただ見かけだけの美しさだけでしか生きていけない最低の女だ!」

アルミン「それからヤクの売人!アイツはケツの穴で犯るのが専門だった!梅毒を撒き散らす娼婦もいた!」

ブロロロロ…

アルミン「――世の中、穢れきっている。罪の無い人間なんて、よく真顔で言えるな?」

エレン「……」

アルミン「問題はそこだ。"罪"はあらゆる街角に、あらゆる家庭に、あらゆる人間に転がってる」

アルミン「でも、みんなそれを許している。些細なことだから、あまりにも罪が普遍化してしまったから、四六時中、許している……」

アルミン「……でも、もはや赦されない――」

アルミン「僕が模範を、教義を示した……。人々は僕の行いを悩み……研究し……教義として口伝してゆく……。永遠に……」

エレン「ああ、そうかよ。――誇大妄想だな」

キース「……」

アルミン「……僕に感謝したほうがいい」

エレン「なんでだよ」

アルミン「君の名前が後生にまで残る」

アルミン「……いいかい、エレン。僕が此処にいる理由はただ一つ、僕がそう望んだからだ」

エレン「いいや違うね!いずれ捕まえたさ」

アルミン「へえ、そうか。僕を泳がせて?……で、何をしてたのさ?五人の"罪なき人々"が殺されるのを待ってまで、タイミングを見計らっていたと?」

アルミン「どんな証拠を持っていた?僕が出頭してこなかったら、どんな証拠で僕を追い詰めるつもりだったのか、言ってみろ!」

エレン「ジョン――いやアルミン、熱くなるなよ。いつかお前の部屋をノックしたじゃねえか」

アルミン「……ああ、そうか。――確かあの時は、君を助けた」

エレン「……」


ズイッ


アルミン「――殺そうと思えば、殺せたんだけどね……」クスクス

エレン「……いいから下がれ」

アルミン「情けをかけてあげたのさ」

エレン「下がってろ……!」

アルミン「これから鏡を見る度に思い出すといい。君に残された人生は、僕のおかげで救われたのだと――」

エレン「下がれってんだろ異常者!少し黙ってろ!」

アルミン「……」

エレン「てめぇは救世主なんかじゃない。ワイドショーのネタだ!二週間程度のな!」

キース「……」

エレン「……」

アルミン「僕は憐れんだりしない。皆、神に滅ぼされたソドムとゴモラの住人だ」

キース「お前がしたことは神の裁きと同じだと?」

アルミン「……神の御技は不可思議だ。――あの高圧線の鉄塔。あれが行き先だ」

ブロロロロ…

バコバコバコバコ…

《待ち伏せの様子はない!見渡す限りなにも無しだ》

《ここは着陸不可能!》

《あと二分で護送車が到着する!高度を上げろ!上空で待機!あと30秒!東で待機する!》

ブロロロロ…ザザッ

キィ…バタム


エレン(荒野だな……。向こうの山が霞んで見える)

キース(土も草も乾いている。アザゼルの山羊がさ迷う荒野とはこのことか)

エレン(……隠れられそうな場所もないし、気配もしない。罠は無さそうに見えるが……)

エレン「奴を車から下ろす……ほら降りろ、ゆっくり……」

ブゥウゥゥウン…ウォオォン…

キース「……」

エレン「どうした!」

キース「犬の死体だ」

アルミン「……僕じゃない。――今何時かな?」

キース「……何故」

アルミン「知りたいんだ」

キース「……7時1分」

アルミン「……間もなくだ」

エレン「――行こうじゃないか」

アルミン「……。こっちだ」

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

アルミン「……」

エレン「……」

キース「……」

――ブロロロロ…

キース「……?」

キース(……バン!?)

キース「イェーガー!」

エレン「ん?……!おい、しゃがめ!早く!伏せろアルミン!」

アルミン「……」

キース「そこに居ろ!」ザッザッ

アルミン「来たか――」

バコバコバコバコ…


アルミンの声《話が出来て嬉しいよ、エレン》


バコバコバコバコ…

《ターゲットは赤い服の男。照準を合わせておけよ》

バコバコバコバコ…


キースの声《北からバンが一台接近してくる》

キースの声《そのまま待機。指示があるまで、動くなよ……》


バコバコバコバコ…

キース「車から降りろ!」カチャ

ズササッ…バタム

ベルトルト「わああっ!撃たないでくれっ!」

キース「両手を頭の後ろで組め!」

ベルトルト「いきなりなんなんだよ!?」

キース「何しにここへ来た!」

ベルトルト「は、配達員だよ!エレンって人に荷物を届けてくれって……エレン・イェーガー刑事に!」

キース「……」

キース「荷物を出せ。ゆっくりとだ」

キース(……小さいな。抱きかかえられるぐらいの小さな箱だ)

ベルトルト「これ一つに500もくれたんだ……。7時きっかりに配送するようにって……」

キース「下に置け……」

ベルトルト「……」ソロ…

無線《不審な段ボール!すぐに爆弾処理班を手配!》

キース「後ろ向いて、車に手をつけ。早く!」

ベルトルト「ひっ!」

キース(IDはこれか。……ベルトルト・フーバー、配達員。顔も一致……)

キース「よし、こっち向け。……ここから去れ」

ベルトルト「あっ、ああ……」タッタッタッタッ…

キース「運転手は追い返した。北だ。拾ってやれ」

無線《了解》

キース「……さて、箱はどうするかな」

キース「……」


キース「開けてみる」チャキ



◇◆◇◆◇◆


エレン(……シャーディスの奴、どうしたんだ?何があった?)

アルミン「……」




アルミン「君には本当に感心しているよ」

アルミン「君は立派に生きている。自信を持っていい」

エレン「ありがとよ。だから黙ってろ」


◆◇◆◇◆◇


ザク…ザク…ザク

パクッ…

キース(血だ……。中に何が……)

パカッ…

キース「うわあっ……!!」

キース「……!」

キース(まさか、そんな……!これをイェーガーに……!)


キース(…まさか!)

キース「ヘリは離れてろ、絶対に近づくな!これは奴の罠だ……!」

キース「……イェーガーッ!」ダッ



◇◆◇◆◇◆


アルミン「ほら、来たよ」


……を…てろ……


エレン「……?なにっ!?」

アルミン「僕も君のように生きたかった……」

エレン「いいから黙ってろ。……一体何言ってんだー!?」

アルミン「聞いてるのかい?……本当に君が羨ましいよ」



アルミン「美人な奥さん……」


エレン「――何?」

アルミン「ミカサ……」

エレン「……何を、言っている?」

アルミン「分署の警官は、相手がマスコミだと簡単に情報を流す……」

エレン「……」


……イェーガーァァっ……!


アルミン「今朝、君が家を出たあとに、お邪魔したんだ」

エレン「!」

アルミン「平凡な夫の――平凡な暮らしがどんなものか味わってみたくてね」


……銃を捨てろぉっ!

アルミン「ただ、抵抗されてしまって……」

エレン「……」

アルミン「そこで、手土産を貰ってきたんだ」






アルミン「奥さんの首だ」

エレン「……っ!!」

……アルミン・アルレルトの着衣と爪を調べてもらっ……

……本人の、指紋を削いだときの血液……次にアニ・レオ……

……それともう1人、また別の人間の血だ。――誰のかは解らない……



キース「イェーガー!」

エレン「っ!」

エレン「なあ……こいつ、何を言ってんだ?」

キース「……銃を寄越せ」

エレン「あの箱は……?」

キース「銃を棄てろ」

エレン「あの箱は!?何が入ってた!」


アルミン「――君の平凡な暮らしが妬ましかった……」



――『嫉妬(envy)』は僕の罪らしい……――

第六章
【ENVY-嫉妬-】

完。第七章へ。

◆第七章◇


エレン「何が入ってたんだよ!?」

キース「その銃を貸せっ!」

エレン「中身が何だか言えよぉっ!!」

アルミン「……言ったじゃないか」

エレン「嘘だ!この大嘘吐きが!黙ってろっ!!」ジャキッ

キース「エレン、これが狙いだ。お前に……お前に撃たせたいんだ!」

エレン「煩いっ!……っ、嘘だ!なあ嘘なんだろ?はっきり言えよ!」

面白い!元ネタは何?

アルミン「復讐するんだ、エレン」

エレン「ミカサは無事だと言えよっ!!」

アルミン「怒るんだ。怒れ!」

エレン「無事だと言えぇっ!!」

キース「……もしこいつを殺したら――」

エレン「やめろっ!!」

キース「お前の負けになるぞ……!」

エレン「やめろぉぁーっ!!」

アルミン「彼女は命乞いをした」

キース「黙れ!」

アルミン「"命だけは助けてくれ"と――」

キース「黙れ……っ!」

アルミン「"お腹の中に赤ん坊がいる"と――」

キース「黙れぇぃっ!」

>>467 映画やで


エレン「――っ」

キース「……」

アルミン「……ぁあ、知らなかったのか――」

キース「…………」

エレン「――っ、……!」ジャキッ

キース「エレン、銃を寄越すんだ」

キース「こいつを殺したら、こいつの"勝ち"になる……!」

エレン「……っ!ああ、そんなっ!嘘だっ!嘘だああっ!」
キース「……っ!」

エレン「……っ、……~~っ!」

アルミン「……」

「エレン――」

エレン「……!!!」

ドゥン

アルミン「――」

キース「!」

ドゥンドゥンドゥン

ドゥン

ドゥンドゥン



《撃ちやがった!》

《イェーガー!どこに行く!そこを動くな!》


《シャーディス、何が起きてるんだ!?》

《何が起こったんだ!》

◆◇◆◇◆◇

ファオファオファオ…

バタム…

エレン「…………」

エルヴィン「出来る限りの事はする……」

ブロロロロ…


キース「……頼みます」

エルヴィン「これから、どうする?」

キース「……」

……戦うべきなんだよ――

……戦うんだよ。敵がどんなに強かろうが、世界がどれだけ残酷だろうが関係ない――



キース「何とか、やっていくさ……」

――ヘミングウェイは、自著でこう記した。


『この世は素晴らしい。戦う価値がある』と。


――……。


――戦うことには、賛成だ。




進撃名作劇場
第七章
【WRATH-憤怒-】


【-Se7eN-】

◆われわれはラッコやイルカについて考えるべきではないか?◇

なんとか終わりました。
長い間ほったらかしにして申し訳ないです。

それにしてもヒッチちゃんがアニメでは可愛くなりすぎましたね。
あの頼めばヤラせてくれそうな尻軽アトモスフィア重点の顔面を返してください。

◆ワッパッパッオワー◆

(ダミ声)荒野を旅するセクシー美女バンド軍団、我らが女神、ブーブス・セクシー・ストライキング・バンド、BSSB!

知性とウィットと強い意志を備えた我らがリーダー!ギターリスト!ユミル!(カットイン)

「あーん?今日のサンドバッグはアンタってわけ?」

頭は悪いが爆乳で美女!難しい歌詞はやめときな!飯と男を喰いまくる!サシャ!(おっぱいがゆれる)

「いいこと思いつきました!あなたが私のかわりにトイレいってくればいいんですよっ!」

エンジェル・キューティー・スプーキー・ビューティー・ベーシスト!
小さいが年齢はリーガリー・ノープロブレム!クリスタ!(じと目)

「まだダメ……まだ降りてこないの……うすしおちょうだい」

マシンガン?私のマーシャルアーツにまかせて!
ボーンナム並みのドラミング!ミカサ9!(画面が叩き割られる)

「……ファック?」

キューティービューティーハニービー!
バン(盗品)に楽器(盗品)を詰め込み、四人のビューティフル・ガールズ・ソー・セクシーがトラベリング!
だけどプロフェッサー・エルヴィン率いるナチスの残党が襲いかかるぞ! 得意のマーシャルアーツとロック魂でぶっ飛ばせ!

進撃名作劇場
Extra Stage.

【ブーブス・バンド】
副題:暗黒半魚人とルルイエ仕込みのパイズリ


どうどうスタートだ!
(四人の背後で爆発)

次からはこれをやるよ。
以下の点にちゅういだ。


◆全員ビッチ。

◆ドイツといえばナチス

◆青少年のなんかには配慮しない。

◆おっぱい

◆アルミンは性的搾取される。あたりまえ。

◆ライナーが出て死ぬ。

◆よむとちのう指数がていかする。

じゃあ数日後から開始な。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月09日 (月) 05:39:34   ID: PXeFDbpe

コレ切っ掛けでモトネタの映画観たが面白いな
頭の良いキチ〇イほど恐ろしいものはない

2 :  SS好きの774さん   2014年08月29日 (金) 01:44:25   ID: 6g5cHgka

…刑事の話、面白いがやはり想像すると…なぁ…自分にとっては元ネタの映画見た人勇者だよ…ところで最終的にはあれ、どゆこと?バカだから分かんね 結局エレンが銃で殺っちゃって負けたのか?

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