シレン「…幻想郷?」霊夢「そうよ」(117)
幻想郷 博麗神社
シレン「…ん」ムクリ…
コッパ「シレン!良かった…やっと気がついたんだな!」
シレン「…ここは?」
???「ここは博麗神社よ」ガラリ…
コッパ「霊夢!今シレンが目を覚ましたんだ!」
霊夢「そうみたいね。無事で何よりだわ…えーっと…シレン…あなたはだっけ?」
シレン「どうして俺の名を?」
霊夢「そのしゃべるタヌキから聞いたのよ」
コッパ「オイラはタヌキじゃない!語りイタチだ!」
セリフ訂正
霊夢「…えーと…シレン…あなたはだっけ?」×
霊夢「…えーと…あなたはシレン…だっけ?」○
霊夢「タヌキもイタチも似たようなもんじゃない」
コッパ「一緒にすんな!」
霊夢「うっさいわねぇ…」ボリボリ…
霊夢「まぁいいわ。それよりあなた達に話があるの」
シレン「話…?」
霊夢「えぇ…あなたが目を覚ますまでにそのタヌ…」
コッパ「…」ジトー…
霊夢「コッパから色々と話を聞いたけど…」
霊夢「あなたは外の世界からこの幻想郷に迷い込んでしまった人間…外来人ね」
シレン「幻想郷…?」
霊夢「えぇ…幻想郷っていうのは…」
…少女説明中…
シレン「…つまりこの幻想郷を覆う大結界のせいで幻想郷からは出られないというわけか」
霊夢「そうよ」
コッパ「おいおい…カンベンしてくれよ…せっかく月影村から出られたのに、今度は別の場所で足止めかよ…」
霊夢「まぁ運がなかったと思って諦めなさい」
コッパ「そんなぁ…」
シレン「これもクロンの導きか…」
霊夢「クロンって?」
シレン「クロンは俺達、風来人に縁(ゆかり)ある旅の神だ」
霊夢「そうなんだ」
霊夢(旅の神様…ねぇ…)
シレン「霊夢…」
霊夢「なに?」
シレン「ひとつ聞きたいんだが…俺達はこの神社の境内に倒れていたんだよな?」
霊夢「えぇ」
シレン「そばに、俺の荷物はなかったか?」
霊夢「いいえ…何もなかったわ」
シレン「…そうか」
霊夢「何か大事なものでもあったの?」
シレン「長年旅を続ける中で愛用していた刀と盾が入っていたんだ」
霊夢「それは災難だったわね」
霊夢「でも外の世界から幻想郷に人が入って来た時に、その人と、持ち物が別々の場所に流れつくなんてよくあることだから、いつかきっと見つかるわよ」
シレン「そうなのか」
コッパ「よし!そうと決まったら早速探しに行こうぜ!」
シレン「しかし、どこを探せば…」
コッパ「う…」
霊夢(多分、流れ着いてるとしたら無縁塚あたりだろうなぁ…けどあそこは危険だし…)
霊夢「だったらまずは人里で聞き込みでもしてみたら?」
コッパ「人里?」
霊夢「えぇ…因みに場所はこの神社から出て…」
…少女説明中…
霊夢「…って感じだけど、分かった?」
シレン「あぁ」
コッパ「じゃあ今度こそ行ってくるよ!」
シレン「世話になったな」
霊夢「いいわよお礼なんて…それよりあなた達、宿のアテはあるの?」
コッパ「あ…」
霊夢「だったら日が暮れないうちにここに戻って来なさい。さっきの部屋、使わせてあげるから」
シレン「いいのか?」
霊夢「えぇ…どうせ元々空き部屋だったしね」
コッパ「すまねぇな、霊夢」
霊夢「ただし、泊めるかわりに境内の掃除やら神社の雑務やら色々とやってもらうわよ」
コッパ「それくらい、朝飯前だ!」
霊夢「いってらっしゃーい」フリフリ…
コッパ「おう!」フリフリ…
シレン「行ってくる」スタスタ…
―――――…
霊夢「行ったわね。さてと…」クルリ…
霊夢「紫~!いるんでしょ~!出てきなさいよ~」
紫「よくわかったわね」ヴン…
霊夢「あ!いたいた!…どーせあの二人を幻想郷に引き入れたのあんたなんでしょ?」
紫「いいえ。私ではないわ…」
霊夢「ホントにぃ~?」ジー…
紫「本当よ。それより霊夢、あなたの方こそ博麗の結界の管理を怠って綻びが生じたんじゃないの?」
霊夢「失礼な!バッチリ管理してるしわよ!…ほら、ご覧の通り神社の結界はどこも綻んでないわ」
紫「…確かに」ジー…
霊夢「紫の仕業でもないとしたらどうやって幻想郷に来たんだろ?」
霊夢「二人から話を聞いた限り、色んな場所を冒険して各地で名を馳せたみたいだから、忘れ去られてってわけでもないでしょーし…」
紫「…あの二人は他に何か言ってなった?」
霊夢「うーん…。あ、そうえば旅の神様の導きがどーのとか言ってたわ」
紫「旅の神?」
霊夢「えぇ…たしかクロンだかクロムだかって名前らしいけど」
紫「…そう」
紫(旅の神…それに謎の二人…新たな変異の前触れでなければいいけど…)
…人里…
シレン「ここが人里か…」
コッパ「意外と近かったな」
シレン「あぁ」
コッパ「んじゃあ早速聞き込みを始めようぜ!相棒!」
シレン「そうだな」
コッパ「あのー!…すみませーん!」
???「…ん?…おかしいな。誰かに呼ばれた気声がするが、姿が見えん」キョロキョロ…
コッパ「下だよ!下!…アンタの足元!」ピョンピョン…
???「…!…声の主はお前か…」
コッパ「あぁ!オイラは語りイタチのコッパってんだ!それからあれがオイラの相棒の…」
シレン「…シレンだ」スタスタ…
???「シレンにコッパ…二人ともこの辺りでは見掛けん顔だな」
シレン「この人里には初めて来たからな。…ところで聞きたいことがあるんだが…」
???「なんだ?」
シレン「俺達は…」
…風来人説明中…
セリフ訂正
???「…誰かに呼ばれた気声がするが…」×
???「誰かに呼ばれた気がするが…」○
シレン「…というわけなんだ」
???「なるほどな…お前達は幻想郷の外から来た者で、愛用の刀と盾を探している…と」
コッパ「そうなんだ!」
???「ならば香霖堂に行ってみるといい」
シレン「香霖堂?」
???「あぁ…香霖堂はここからそれほど離れていない魔法の森に少し入った所にある」
???「そこの店主の霖之助という男は主に外の世界から流れてくる珍しい品を収集している古物商でな」
???「霖之助なら何か知っているかもしれん」
コッパ「わかった!ありがとう!…えーと…」
慧音「そう言えばまだ名乗っていなかったな。私は上白沢慧音。この人里で寺子屋を営んでいる」
シレン「慧音は教師なのか」
慧音「一応な。…あぁ、それから、この幻想郷の中には人を襲う妖怪もいるから、道中気をつけるんだぞ」
シレン「わかった」
魔法の森 入り口付近
コッパ「ふぃー…やっと着いたな」
コッパ「慧音の話じゃ、香霖堂はこの森に入ってちょっと行った所みたいだけど…」
???「ん~…おっかしいなぁ…アタシがこの森で迷うなんて有り得ないんだが…」
???「一体何がどうなってんだぜ?」ブツブツ…
シレン「…どうかしたのか?」
???「ん?あぁ…香霖堂に行こうとしたら何故か森から出ちゃってさぁ…」
???「何か森の中が迷路みたいになってんだよなぁ…」
シレン「森が迷路みたいに…」
コッパ「おい!シレン…見てみろよ!」
シレン「これは…変則地形か…!」
???「何なんだよその変則地形って…ってかアンタら…誰?」
シレン「俺はシレン…そしてこっちが相棒のコッパだ」
コッパ「よろしくな」
魔理沙「あ…あぁ…。アタシは霧雨魔理沙だ。よろしくな」
シレン「変則地形というのは何らかの理由で定期的に地形が変化し、その場所自体が迷宮のようになってしまうんだ」
魔理沙「そんなことがあるのか…にわかには信じられないけど実際そうなってるしなぁ…」
魔理沙「しっかしこの森に住んでるのに迷子になるなんて情けないにも程があるぜ…」ハァ…
シレン「変則地形を進むにはコツが要るからな。慣れていなければ迷うのは仕方ないことだ…」
コッパ「なぁ…魔理沙も香霖堂に行くんだろ?」
魔理沙「そうだけど…」
シレン「一緒に行かないか?俺達も香霖堂に用があるんだ。それに香霖堂までの大体の場所を教えてもらえれば有難いんだが…」
魔理沙「そりゃ願ったり叶ったりだぜ!」
コッパ「そうと決まったらさっさと行こうぜ。日が暮れるまでに帰らないといけないしな」
シレン「…だな」
魔法の森1F
マムル「ピキー!」ピョン
魔理沙「おわ!なんだコイツ!?」
シレン「そいつはマムルという魔物だ。大して危険じゃない」バシッ!
マムル「きゅ~…」ばた…
魔理沙「魔物?…妖怪とかじゃなくて?それにあんなヤツ、いままでこの森で見たことなかったぜ?」
シレン「変則地形はその特異性から元々その場所にいた生き物の生態系にも大きな変化をもたらすんだ」
シレン「おおかた、今のマムルも突然変異か何かで発生したんだろうな」
コッパ「ってかマムルってこんなところにもいるんだな」
シレン「魔理沙…方角はこっちで合ってるのか?」
魔理沙「あぁ…元々はそっちを真っ直ぐ…っておい!シレン!どこに行くんだぜ?」
シレン「元々がそっちなら今はその真逆だ」スタスタ…
魔理沙「ホントかよぉ…まぁ今はアンタに従うしかないか…また迷子はゴメンだぜ…」
コッパ「心配すんなって。こう見えてもシレンは名うての風来人なんだ。大舟に乗ったつもりで任せときなって!」
魔理沙(本当に大丈夫なんだろうか…)
魔法の森3F
シレン「…!…あれは…」ダダッ!
…ヒョイ…パシッ…
シレン「長巻きか…」
魔理沙「それ…もしかしてさっきアンタが言ってた探し物の刀?」
シレン「いや、違う。俺の愛刀は…」
ゆっくり「がおー」
コッパ「うわぁ!生首!?」
ゆっくり「ゆっくりしていってね!」
シレン「…」チャキ…
魔理沙「そんなに身構えなくても大丈夫だぜ二人共。コイツはただのザコ妖怪だ」ゲシッ!
ゆっくり「ゆゆ…!」バタッ…
コッパ「あ~、びっくりした…」
魔理沙「さて…先を急ごうぜ」
魔法の森5F 広間
魔理沙「なぁシレン…ここいらでちょっと休憩にしないか?脚が…もうパンパンだぜ…」ぜぇ…ぜぇ…
コッパ「なんだ?もう歩き疲れたのか?だらしないなぁ」
魔理沙「仕方ないだろ!こんなに歩いたのは久し振りなんだよ!そもそも普段はホウキで飛んでるからな」
シレン「魔理沙は空を飛べるのか?」
魔理沙「まぁな。アタシは見ての通り、魔法使いなんだぜ」
コッパ「だったら最初から飛べば良かったじゃねぇかよ」
魔理沙「今はそのホウキを持ってないんだ。いつもなら香霖堂まで歩いてすぐなんだからな」
魔理沙「あ~…こんなことなら家を出るときに持って来れば良かったぜ…」はぁ…
シレン「だったら、このあたりで少し休むか。ちょうど腹も減ってきたしな」
魔理沙「さっすがシレンは話が分かるな!…どこぞのイタチと違って」
コッパ「へん!話が通じなくて悪かったな!」ムスッ
シレン「ケンカはそこまでだ、二人共」
シレン「休憩ついでに、ここいらで腹ごしらえにしよう。腹が減るからイライラするんだ」ゴソゴソ…スッ…
魔理沙「お!おにぎりじゃん!サンキュー!」
シレン「ほら、コッパも」スッ…
コッパ「あぁ…」
魔理沙「へぇー…二人共、霊夢の神社にやっかいになってんのか」モグモグ…
シレン「あぁ」モグモグ…
魔理沙「じゃあこのおにぎりは霊夢が持たせてくれたのか?…って、アイツがそんな気の利いた事するわけねぇか」
シレン「そのおにぎりは拾ったヤツだ」
魔理沙「え…?」ムグムグ…ピタッ…
シレン「ついさっきこの森でな」
魔理沙「ちょ…!…拾ったって…。なんてもの食わせてくれてんだよ!?」ぶはっ!
シレン「…冗談だ。ここに来る前に人里で買った」
魔理沙「はぁ…それを聞いて安心したよ。…にしてもシレン、冗談キッツイぜ」ハハ…
コッパ(ホントは拾ったんだけどな)
魔法の森8F
シレン「森が開けて来たな」
コッパ「ん?…向こうの方になんか見えるぞ」
魔理沙「あれは…香霖堂だ!」
シレン「あの建物がそうなのか」
魔理沙「あぁ!…やっとここまで来れたぜ」
魔理沙「これもアンタらのお陰だな。礼を言うぜ」
コッパ「おう!」
シレン「気にするな。困った時はお互い様だ」
香霖堂
魔理沙「邪魔するぜー」
霖之助「いらっしゃい、魔理沙。…おや?そちらの方は?」
シレン「俺はシレン。風来人だ」
霖之助「風来人?」
コッパ「世の中の不思議やお宝を追い求めて旅をする者のことさ」
霖之助「つまり冒険者ということか」
コッパ「まぁそんなモンだな」
霖之助「それで、その風来人のシレンさんがウチに何の用だい?」
シレン「実は…」
…風来人説明中…
霖之助「…なるほど。それで僕の店に来てくれたというわけか」
シレン「あぁ」
霖之助「……残念だが、君の愛刀と盾はウチにはないよ」チラッ…
シレン「…?…そうか」
霖之助「すまないね。せっかく訪ねて来てくれたのに」
霖之助「ところで魔理沙。君は何をしに来たんだい?冷やかしなら…」
魔理沙「おいおい…なんだよこの扱いの差は。…まぁ別にいいけどさ……っと!」ゴソゴソ…コトッ…
魔理沙「最近、八卦炉の調子がおかしいんだよ。だから今日はコイツの具合をみてもらう為に来たんだぜ」
霖之助「僕は修理屋じゃないんだが…」
魔理沙「そこをなんとか!」
霖之助「…わかったわかった。ただし工賃はいただくからね」はぁ…
魔理沙「えー…お金取んのかよー」
霖之助「僕は商売人だからね」
魔理沙「商魂たくましいとはこのことだぜ」ブツブツ…
コッパ『おーい!シレン!こっちに来てみろよ!なんか面白そうな物がいっぱいあるぞ!』
霖之助「…!…すまないが、その部屋には僕のお気に入りの品や非売品がしまってあるんだ」
霖之助「だから勝手に入らないでもらえると有難い」
シレン「…だそうだ」
コッパ『ちぇっ…わかったよ。って、うわぁ!』
ドサドサドサッ!…ズシーン!…
魔理沙「なんか今、奥の方から凄い音がしたぜ!?」
シレン「コッパ!?」バッ!
…モクモクモク…
コッパ「いっててて…」
シレン「大丈夫か!?」
コッパ「あ…あぁ。なんとかな。それよりちょっと力を貸してくれ」
コッパ「見ての通り、棚の上から落ちてきた箱やら物やらの下敷きになって動けねぇんだ」ジタバタ…
シレン「わかった。すぐにどかしてやる」ゴソゴソ…
…風来人救助中…
コッパ「あ~…びっくりした」
霖之助「まったく…君の相棒のお陰で僕の大事な道具が…」
シレン「すまないな。けど…」
魔理沙「…シレン?」
シレン「コッパのお陰で見つかったよ。俺の愛用の刀と盾…」
シレン「剛剣マンジカブラと風魔の盾がな」
霖之助「…!」
シレン「さっき棚から落ちてきた道具の中に紛れてたんだ」
魔理沙「霖之助…」ジトー…
霖之助「で、…でもそれが君の物であるという証拠はあるのかい?」
シレン「証拠ならある。このタグだ。ここに俺の名が記されている」
霖之助「タグだって!?」
霖之助(よくわからない文字が書いてあったから気にも留めていなかったが…)
魔理沙「なぁ、霖之助…返してやれよ」
霖之助「しかし…!」
魔理沙「お気に入りなのは分かるけどさぁ、シレンはそれが無くて困ってんだぜ?」
コッパ「オイラからも頼むよ」
霖之助「…わかった。この刀と盾を君に返そう」
シレン「…いいのか?」
霖之助「あぁ…本人の名前まで書いてあるなら仕方ない…持って行くといいよ」
シレン「有難う、霖之助さん」
霖之助「いや…礼には及ばないよ…」はぁ…
魔理沙「まぁ、その…なんだ。元気出せって」
霖之助「魔理沙…」スッ…
魔理沙「ん?…その手はなんなんだぜ?」
霖之助「八卦炉の修理代…まだもらってないんだが…」
魔理沙「……ツケで」
霖之助「駄目だ」ニッコリ…
香霖堂前…
霖之助『またお越しください』
魔理沙「今月は財布がピンチだぜ…」どんより…
シレン「…」ゴソゴソ…
…風来人装備中…
シレン「やはり、この刀と盾が一番手に馴染む」チャキ…
コッパ「やっぱこれが無いとしっくりこねぇよな!」
魔理沙「へぇー…結構サマになってんじゃん」
シレン「ガキの頃からずっと愛用してるからな」スッ…
シレン「それより、さっきは世話になったな。コイツが戻ってきたのは魔理沙のお陰だ」
魔理沙「そんなの気にすんなって!困った時はお互い様なんだろ?」ニッ…
シレン「そうだったな」フッ…
コッパ「じゃあ目的も果たしたし、そろそろ帰るか」
シレン「あぁ…。」クルリ…
魔理沙「じゃあな!シレン!…コッパ!…気ぃ付けて帰れよー!」フリフリ…
夕暮れ…
博麗神社
コッパ「なんとかギリギリ夜になる前に帰って来れたな」
シレン「あぁ…」
…スタスタスタ…
シレン・コッパ「ただい…」
霊夢「おそーい!」
シレン・コッパ「……ま」
霊夢「はい、これ!」スッ…
コッパ「…鉈と…竹の筒?」
霊夢「今から二人には薪割りと風呂焚きやってもらうからね!」
シレン「わかった」スタスタ…
コッパ「…人使い荒いなぁ」ボソッ…
霊夢「ん?今何か言った?」ジトー…
コッパ「いや…何も…」
霊夢「まったく…アンタはもうちょっと相棒を見習いなさい!…ほら、シレンなら黙って薪割りに行ったわよ」
コッパ「…へ~い」しぶしぶ…
霊夢「分かればよろしい」
夜…
無縁塚
???「ここは…どこだ?」スタスタ…
???「あっしは確か…あの野郎を追ってたはずなんだが…」ブツブツ…
??「おや?アンタ…ひょっとして人間かい?」
???「えぇ…まぁ一応」
??「一応?なんか妙な言い方だはねぇ…まぁいいか」
???「…アンタは?」
小町「あたいかい?あたいは小野塚小町…死神さ」
???「…!…死神」
小町「それよりアンタ!人間がこの無縁塚に長居しちゃあいけないよ…ロクなことにならないからね」
???「無縁塚?ここは供養峠じゃあないんですかぃ?」
小町「供養峠?何だい?そりゃあ…」
小町「…っていうか、アンタ、何やら訳ありみたいだねぇ…名前は?」
???「あっしは…」
博麗神社 居間
霊夢「…ヨシゾウタ?」
シレン「あぁ…」
コッパ「オイラ達がここにくる前世話になった月影村ってとこでとんでもない悪さを働いてたヤツさ」
霊夢「悪さって?」
シレン「話せば長くなるんだが…」
…風来人説明中…
霊夢「なるほどねぇ…清々しいまでの外道ね」
コッパ「いや、外道なんてもんじゃねぇ。ド腐れ外道だよありゃあ」
霊夢「彼こそがオロチと呼ばれる怪物の正体で…」
霊夢「ただ己の我欲の満たす為に、何度も何度も村から生け贄として子供を差し出す事を要求し…」
霊夢「満月の夜の度に怪しい儀式を行い…その儀式で血を抜かれた子どもは“魔物”として生きる事を強いられ…」
霊夢「自身はその子供たちから集められた大量の血を使って……」
コッパ「あ~!思い出しただけでも腹が立ってきたぜ!」
霊夢「でも、そのオロチは倒したんでしょ?」
コッパ「まぁな」
シレン「だが…一つだけ気になる事がある」
霊夢「気になる事って…?」
シレン「オロチを倒して、村をあとにしようとしたら、今度は村の出口の道が変則地形になってしまったんだが…」
霊夢「ふんふん…それで?」
コッパ「そこで相棒は倒したはずのオロチを何度か見かけたって言うんだ」
霊夢「…一緒にいたのにコッパは何も見なかったの?」
コッパ「あぁ…だからオイラは気のせいじゃないかと思うんだ」
シレン「俺もはっきりと見えた訳じゃないか確かに確信は持てないんだがな」
霊夢「なんだか色んな意味で後味の悪い話ね」
シレン「あぁ…」
翌朝…
博麗神社 境内
…シャッ…シャッ…シャッ…シャッ…
シレン「…よし」
シレン「霊夢。境内を掃除してきた」
コッパ「廊下の雑巾がけも終わったぞ!」ヒョコ…
霊夢「あら…早かったわね。それじゃ、ごはんにしましょうか」
博麗神社 居間
シレン・コッパ「いただきます」
霊夢「はい、どうぞ」
霊夢「…探し物は無事見つかったのよね」モグモグ…
シレン「あぁ」ズズッ…
霊夢「それは良かったけど…これからどうするの?」
シレン「とりあえずこの幻想郷を見てまわろうと思う」
霊夢「(幻想郷から)出る方法を探す為に?」
シレン「それもある」
霊夢「それもって…それ以外になにかあるの?」
コッパ「そりゃあ冒険…だよな」ニッ…
シレン「あぁ。ここは不思議で満ち溢れている」
シレン「ここから出られるのがいつになるかは分からんが、少なくともそれまで退屈はせずに済みそうだ」
霊夢「退屈せずに済みそうって…アンタねぇ…」
霊夢(肝が据わってるとゆーかなんとゆーか…シレンってもしかして楽天家?)
霊夢「まぁ、止めはしないけどあんまり無茶しないでね」
コッパ「おう!」
シレン「それじゃあ、行ってくる」
人里
コッパ「やっぱ聞き込みと言えばここだよな」
シレン「そうだな」
コッパ「んじゃあ早速……ん?」
…ワイワイ…
…ガヤガヤ…
コッパ「向こうに人だかりができてるな…何だろ?」
シレン「気になるな…」
コッパ「行ってみるか?」
シレン「あぁ…」
…スタスタスタ…
人里 寺子屋前
慧音「なに?それは本当なのか、妹紅?」
妹紅「えぇ…」
慧音「くそ…こんな時に…!」
子供「はぁ…はぁ…」
『はい、ちょっくらごめんなすってぇ』
村人「お、おい!そんなに押すなよ…」ヨロ…
慧音「む?…今の声、どこかで…」クルリ…
妹紅「…慧音?」
慧音「…!…お前達は、昨日の…」
コッパ「あ!慧音!」
シレン「何かあったのか?」
慧音「あ…あぁ…少々困った事になってな…」
…教師説明中…
シレン「なるほど…話はわかった」ヒョイッ…ガシッ!
子供「うぅ…。ぜぇ…ぜぇ…」
慧音「シレン!その人の子を背負ってどうするつもりだ!?」
コッパ「どうするもなにも、要はこの子を迷いの竹林にある永遠亭ってとこのお医者に看せりゃあいいんだろ?」
慧音「確かにそうだが…」
妹紅「ねぇ?あなた達、今の話ちゃんと聞いてた?それができないから困ってんのよ」
妹紅「昨日から竹林の様子がおかしい!竹林に詳しい私でも方向感覚が狂う!」
妹紅「それに今まで見たこともないような変な生き物まで…!」
シレン「変則地形とはそういうものだからな」
慧音「変則…地形?」
シレン「今は説明している時間が惜しい。…妹紅」
妹紅「なに?」
シレン「永遠亭までの大体の道案内を頼む。それさえ分かれば後は俺がなんとかする!」
妹紅(…淀みなく言い切ったわね…)
妹紅「……わかったわ。竹林はこっちよ。付いてきて」スタスタ…
シレン「あぁ」スタスタ…
慧音「では、私も…」
妹紅「慧音…あなたはここにいなさい」バッ!
慧音「だが…!」
妹紅「あなたにもしもの事あったら寺子屋の子供達はどうするの?」
慧音「…ッ!」
慧音「……すまないが、お前達、人の子を頼んだぞ」
妹紅「えぇ」
シレン「心配するな。この子を無事に送り届けて、戻ってくる…必ずだ」
コッパ「おうよ!オイラ達に任せときなって!」
迷いの竹林1F
子供「ぜぇ…ぜぇ…」
シレン「薄暗いな…」
妹紅「ここは竹が生い茂っていて日中でも日の光があんまり届かないからね」
妹紅「くれぐれも足下には注意して…」
コッパ「大丈夫だって!ちょっと暗いくらいでつまづいたりなんか…」カチッ!
コッパ「え?」
…ビュンっ!…
コッパ「うわぁ!」ピョン!
…ドスっ!…
シレン「コッパ!」
コッパ「ふぃ~…あっぶねぇ、あぶねぇ。まさかこんな竹藪の中から鉄の矢が飛んでくるなんて…」
妹紅「だから注意してって言ったのに…」
妹紅「この竹林にはてゐってヤツがいてね、侵入者を永遠亭に近付けさせないように、そこら中に罠をしかてるのよ」
コッパ「そ…そうだったのか…」
妹紅「普段ならその罠の位置もほぼ分かってたんだけど今は何もかも出鱈目になっててどうしようもないわ」
妹紅「二人共…自分の身は自分で守ってね」
シレン「わかった。…気をつけよう」
コッパ「こりゃあ中々やっかいだな」ゴクリ…
…スタスタ…
シレン「…この先はいつもなら真っ直ぐだったんだな?」
妹紅「そうよ」
シレン「なら、今はその三叉路を右だ。とにかく急ごう」
妹紅「わかったわ」
迷いの竹林4F
中チンタラ「チュー!」
シレン「…!」ザッ…
コッパ「出てきやがったな!魔物め!」
妹紅「ここは私に任せて…」スッ…
シレン「妹紅…?」
妹紅「燃えなさい!」ボッ!
コッパ「…!…炎!?…いや、火の鳥!?」
中チンタラ「ヂュウッ!?」ゴオォー!
中チンタラ「」プスプス…ビクンビクン…
シレン「…今のは?」
妹紅「私の力の一部よ」
コッパ「もしかして妹紅は妖…」
妹紅「私は人間よ?…今までも、これからもね…」スタスタ…
コッパ「そ…そっか…変な事言ってごめんな」アセアセ…
迷いの竹林10F
コッパ「しっかし、歩いても歩いてもおんなじ景色でうんざりするなぁ」
コッパ「流石にちゃんと進めてるかどうか不安になってくるな…」
妹紅「それなら大丈夫よ」
コッパ「え?」
妹紅「永遠亭に辿り着くまでに、目印にしてるポイントがいくつかあるんだけど…」
妹紅「…今の所、そのポイントをちゃんとした順番で順調に通過してるわ」
妹紅「お前の相棒は大したものね」
シレン「…?」ピタッ…
コッパ「ん?どうしたんだ?シレン…急に立ち止まって…」
シレン「何か…聞こえないか?」
妹紅「…?…別に…なにも…」
???「助けてー!」
妹紅「…!…この声は…!」
シレン「こっちだ!」ダダッ!
迷いの竹林10F 広場
妹紅「…!?…何あれ!?…この先の広場…見渡す限り化け物だらけじゃない!」
魔物の群れ「「…」」ワラワラ…
シレン「あれは…魔物の巣窟(モンスターハウス)だ!」
コッパ「…!…お、おい!あそこ!魔物の群れの中に女の子が!」
???「い、嫌ぁ!来ないで!来ないでぇー!」ジタバタ…
妹紅(…!…やっぱり、さっきの声は…)
妹紅「ミスティア!…何してるの!?…早くそこから逃げて!」
ミスティア「…!…妹紅!た、助けて!…足にトラバサミが食い込んで動けないの!」ギチッ…
妹紅(…助けに行こうにも数が多すぎる…どうすれば!?)ギリッ!
チェインヘッド「オォ…!」ガッ!
ミスティア「きゃあ!」
妹紅「ミスティア!」
シレン「妹紅…少しだけこの子を頼む」スッ…ヒョイ…
子供「…はぁ…はぁ…」
妹紅「シ、シレン!?」ガシッ!
シレン(これで両手が使える…)
妹紅「子供を頼むって…何考えて…!?」
シレン「あの女の子を助けてくる」
妹紅「助けるもなにも…何の力も無いただの人間のあなたが、たった一人でどうやってあんな数の化け物を…!」
シレン「確かに、俺は何の力も無いただの人間だが…」ゴソゴソ…
シレン「…この盾と…」スッ…
…風魔の盾を装備した!…
シレン「…この刀があれば…」チャキ…!
…剛剣マンジカブラを装備した!…
シレン「一人であの程度の魔物の群れの相手など…造作もない」
妹紅「ほ…本当に大丈夫なの?」
シレン「あぁ…だからここは俺に任せてくれ」
…モンスターハウスだ!…
…風来人救助中…
シレン「正面からあの群れに突っ込むぞ!…コッパ!」
コッパ「おう!」
…タッタッタッタッタッ!…
イダテン「…ッ!」ビュオォ!
ゴーレム「オォ…」ズィ…
ヤンピー「ピィ!」バサッ!
妹紅(…行く手を阻まれた!…)
シレン「…攻めの<印>…“かまいたち”…!」チャキ…ブォン!
…ズババババッ!…
イダテン「…ッ!?」ブシュ!
ゴーレム「オ…オォ…!?」フラ…ドサッ!
ヤンピー「ピギィ…!?」バタッ…
妹紅(…!…三体を同時に!?…こころなしか今、シレンが振るった刀の軌跡がいくつにも分かれて見えたような…!?)
チェインヘッド「オォ…」ゴゴゴ…
…チェインヘッドは力を溜めた!…
ミスティア「ひ…ひぃ…!」ガタガタ…
シレン(このままでは…!)ゴソゴソ…
シレン「コッパ!この巻物を持って走れ!」スッ…
コッパ「これは?…!…へへ、そういうことか!…分かったぜ、シレン!」バッ!
チェインヘッド「グオォ!」ブォン!
ミスティア「いやぁー!」ビクッ!
コッパ「おっと!そうは問屋が卸さねぇ!ってなァ!」ペタッ!…カッ!…
…ガキイィーン!…
チェインベッド「ウォ!?」ヨロ…
ミスティア「…え!?…な、何が起こったの?」
コッパ「聖域の巻物で結界を張ったんだ…この中に魔物は入ってこれないから安心しな」
ミスティア「結界?…それに魔物って!?…そもそもあんた誰!?」アワアワ…
コッパ「とにかく落ち着け!…あとは相棒がなんとかしてくれるさ」クィッ…
ミスティア「相…棒?」
…ズバァッ!…
チェインヘッド「ウ…オォ…!?」ヨロ…ズシーン!
シレン「…こいつで最後だ」チャキン…
ミスティア(…!…あれだけたくさんいた化け物が…全部倒れてる…!)
シレン「大丈夫か?」
ミスティア「え?あ、…うん」
コッパ「よし!罠も外れたぜ!」カチャカチャ…パカッ!…
シレン「…少し血が出ているな…この薬草を使うといい…」スッ…
ミスティア「ありがと…」
妹紅「シレン!ミスティアは…!?」タッタッタ!
シレン「少し怪我をしたようだが無事だ」
妹紅「そう…大事に至らなくて良かった…」ホッ…
子供「ぜぇ…ぜぇ…」
ミスティア「妹紅…その人間の子は?」
妹紅「この子は急病人なのよ。だから私は人里で会ったこの二人と永遠亭に行く途中なんだけど…」ジー…
ミスティア(人里から?…じゃあこのシレンってヤツは…人間!?)
妹紅「…あなたも一緒に来なさい。よく見たら翼も怪我してるじゃない」
ミスティア「へ…平気だってば!このくらいすぐに治…」パタパタ…
コッパ「てい!」つん!
ミスティア「あうっ…!」ズキッ…
シレン「良かったら肩を貸そうか?」
ミスティア「…い!要らないって…!これ以上人間の世話になるなんて…!」
コッパ「その足で歩けんのか?」つんつん!
ミスティア「ひぎぃ!」ズキズキッ!
シレン「…あまり無理するな」ガシッ!ヒョイ…!
ミスティア「うぅ…///」
ミスティア(よりによって人間に助けられるなんてぇ…)
永遠亭 玄関
子供「はぁ…はぁ…」
ミスティア「…」ムスッ…
鈴仙「…分かりました。そういう事でしたらその子を連れて上がって下さい。師匠なら奥にいます」
妹紅「悪いわね」スタスタ…
鈴仙「ミスティアの怪我は私が看ますからあなたは私に付いてきてください」
シレン「あぁ…」スタスタ…
ミスティア「えー!私も永琳の方が…」
鈴仙「なにか言った?」ニコ…ヴン!
ミスティア「な、何も言ってないからその赤い目はやめて欲しいなぁ…」クラクラ…
コッパ「なぁシレン…オイラはここで待たせてもらうよ」
コッパ「…どうも薬の匂いってのは苦手なんだ」
シレン「…だそうなんだか、構わないだろうか?」
鈴仙「別に構いませんよ」
コッパ「すまねぇな」
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