エレン「第6回壁内野球大会……?」 (15)

――食堂――

マルコ「……」

ジャン「……」

ライナー「なんだ? これ」

ベルトルト「……さあ。どういうことなんだろうね」

コニー「野球? なんだってそんなことしなくちゃならねえんだ!? 俺達は兵士だろ?」  

サシャ「それって美味しいんですか?」

クリスタ「はは、食べ物ではない……かな」

アルミン「あ、皆、張り紙見てくれた?」

エレン「あ、ああ。ちょうど見てるところだけど――なんだよこれ」

アルミン「驚いたでしょ! 壁内には、何個か野球チームがあって、その大会に僕たち104期訓練兵が参加することになったんだ!」

エレン「そ、そうなのか……。いや、俺達はそんな野球なんてしてる場合じゃ……」

アルミン「なにを言ってるんだエレン! 野球は素晴らしいものだよ! 監督、コーチは教官から僕に一任されてる。だから、有無を言わさず絶対に
参加してもらうし、絶対に勝つよ! えいえいおー! あれ? 聞こえなかったかな? えいえいおー!!」

ジャン(なんでこいつはこんなにノリノリなんだ……)

ミカサ「アルミン。それはいいけど、練習はどうするの?」

エレン「そうだそうだ。俺たちは訓練兵。野球のルールは知ってても、練習なんてする時間はないぞ!」

ジャン「エレンに賛同するわけじゃねえが。野球なんて、ガキのころにやって以来だしな。大会に出て勝つってんなら、それなりに練習は必要だぞ」

アルミン「あ、それは大丈夫。もうすでに話はつけてあるから。今日から2ヶ月で、僕たちは大会で優勝できるチームになれるように、練習メニュー
もすでに組んであるよ。もちろん、グラウンドも道具も、時間も教官から許可はもらってる」

サシャ「なんと!」

クリスタ「用意周到だね」

アルミン「ありがと。絶対に勝ちたいからね!」

ライナー「そこまで準備しておいてから告知するのにも理由がありそうだな。何を企んでるんだ?」

アニ「なにかしらの見返りもなく、野球ごっこに興じられるほど、私たちは莫迦じゃないよ」

アルミン「企んでるなんてひどいなぁ。……まあ、アニの言う通りなんだけどさ。みんなを納得させるための材料が足りなくってね、それで発表が
遅れたんだ」

ベルトルト「?」

マルコ「なにか、ありそうだね」

アルミン「今回の大会に向けての練習は本来の兵士としての訓練と同様に扱われる。採点されたりもするから、訓練兵としての順位、成績に関わ
ってくるよ」

ジャン「はぁ!? なんだそれ!」

コニー「ってことは……馬鹿な俺でもわかるぞ。ってことは、野球を頑張れば憲兵団になれるんだな!」

ユミル「そこまで単純ではないだろ」

アルミン「あはは。まあ、平たく言えばそういうことかな。野球が終われば、兵士としての訓練に戻るけどね」

サシャ「でも、それじゃああまり変わらないじゃないですか。兵士の訓練が野球に変わっただけです」

エレン「いいところをついたなサシャ! そうだぞアルミン。わざわざ兵士の訓練を中断してまで野球に打ち込んでどうするんだよ。それで巨人を
駆逐できるのかよ」

アルミン「ふむふむ……」

ジャン(まだなにか持ってるなこいつ)

アルミン「言い忘れてたけど、今回の大会で優勝できたら、出場選手には特別に牛の肉が振る舞われることになってるんだよ」

サシャ「やります」

ジャン「早っ!」

サシャ「牛の肉ですよ!? それで反応しないなんてジャンは馬鹿なんですか!?」

ジャン「馬鹿に馬鹿って言われたくねえよ! おいエレン! 幼馴染なんだからなんとかしろ!」

アルミン「あ、それと出場チームの中には巨人軍っていうチームがあるよ。そいつらを野球でも駆逐したくないかい?」

エレン「俺は野球をするぞ!!!!!!!!」

ジャン「この駆逐馬鹿!」

――かくして――

アルミン「よし。なんだかんだあったけど、参加してくれてありがとう。僕が監督を務めさせていただきます。アルミン・アルレルトです。よろしく」

ジャン(まさか訓練兵全員が参加するとは……)

マルコ「僕がキャプテンを務めさせていただきます。マルコ・ボットです。よろしく」

ジャン(なんでいつの間にマルコがキャプテンになってんだよ。てか俺もなんで参加してんだ?)

ミカサ「……」

ジャン(ああそうか。ミカサが参加するっていうから、つい……)

エレン「巨人駆逐巨人駆逐巨人駆逐巨人駆逐巨人駆逐巨人駆逐―――――」ブツブツ

サシャ「牛肉牛肉牛肉牛肉牛肉牛肉牛肉――――」ブツブツ

ジャン(なんかエレンとサシャは取り憑かれたように何かブツブツ言ってるし……)

アルミン「それじゃあ早速練習を始めようか。……でも、人数が多いなぁ」

ジャン(お前が集めたんだろ)

アルミン「よし。今日はランニングだ。今が午前9時だから――午後9時までグラウンドを走ってね」

ジャン「は!?」

アルミン「ちなみに脱落したものは開拓地行きとはいかないけど、訓練兵としての成績がガタ落ちするよ。はいスタート。なにもたもたしてんの?
ゴーだよゴー」

ダズ「そんな……せっかくここまでやってきたのに、こんなところで成績を落とすなんて――厭だああああああああああ!!!!」ドドドドドド

トーマス「ここで頑張れば俺にだって上位のチャンスが――!!」ドドドドドド

ライナー「おお。あいつらすごいな」

アニ「別にペースについては何も言われてないんだし、わざと体力を消耗することないね」

ベルトルト「うん。とにかく12時間のランニングをやりぬこう」

ミカサ「エレン、ペースが乱れてる。それでは保たない」

エレン「うるせえな! 俺のペースがあるんだよ!」

アルミン「はいそこ喋らない! 黙って走る!」ピピー!

クリスタ「……そういえば、私たちは走らなくていいの?」

ミーナ「そうだよ。私たちも成績下げたくないし、練習に参加しないと」

アルミン「君たちはマネージャーとして参加してもらうことにしたんだ。練習ではなくて、その働きで評価するから、成績の方も頑張ればプラスに
なるよ。是非とも選手たちをサポートしてほしい」

ユミル(あの金髪優等生。私のクリスタに手を出したらどうなるかわかってるんだろうな)

コニー「うっひょおおおおおおおおおおおおおお!!!!! 走るのキモティー!!!!!!!!!!」ドドドドドド

サシャ「コニー!!!! 負けませんよー!!!!!!!」ドドドドドド

アニ(単なる馬鹿か)

――12時間後――

アルミン「はいお疲れ様ー。流石は毎日過酷な訓練に耐えてるだけあって、殆どがクリアだね。流石流石」

エレン「こ、これくらい……なんてこと……ないぜ……」ゼーゼーハーハー

ミカサ「エレン。タオル、それと水」

ライナー「ランニングとはいえ……さ、流石にきついな」

クリスタ「お疲れ様。はい、ライナー」

ライナー「ありがとう。助かる(結婚しよ)」

マルコ「ダズたちは序盤にとばして、そのままリタイアか。でも、サシャとコニーは流石だね」

コニー「おう! 今日は俺の勝ちだな! サシャ!」

サシャ「お腹がすきました……お昼抜きで走らされるとは思いませんでした」

アニ「初めに12時間走り続けろって言ってたじゃないか」

ジャン「本当に馬鹿なんだな」

ユミル「流石は成績上位者は違うな。もうおしゃべりする余裕があるのか」

ベルトルト「ユミルもすごいよ。殆ど息が乱れてない」

アルミン「さて、アップも終わったことだし、これから素振り200本! さあ準備準備!」パンパン

エレン「は?」

アルミン「聞こえなかった? バットを持って均等に並んで! バットが当たらないように気をつけて!」

ジャン「おい、俺の耳がおかしくなったのか? 今アルミンの奴、この12時間ランニングをアップと言った気がしたが」

ライナー「俺にもそう聞こえた。おいアルミン。なんの冗談だ!」

アルミン「はよ」

ユミル「頭おかしいんじゃねえかあのチビ」

マルコ「……いや。さっきのは選定だ」

ベルトルト「選定?」

マルコ「スポーツの基本は走ること。基礎体力を見たのかもしれない。アルミンがなにを考えているのかは計り知れないけど、おそらく、今日脱落
したものは明日からの練習は参加できないだろう」

ベルトルト「……なるほど。つまり、この練習は――」

マルコ「優秀な選手を育てるというよりも『少しでも優秀じゃない選手』をふるい落とすための練習だ。そして、ふるい落とされた奴は――。
     ……いや、よそう。とにかく、練習続行だ」

エレン(俺たちは大変なことに参加しちまったのか……?)

アルミン「さっさとしろ」

兵士たち「はい!」ダダダダダダダダ

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