亜季「ミリタリー話ですか?」 (60)
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大和亜季(21)
マキノ「はい。ミリタリー趣味がおありとうかがいました」
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八神マキノ(18)
身長:160cm
体重:45kg
B:85 W:56 H:83
誕生日:11月7日
星座:蠍座
血液型:B型
利き手:右
出身地:岐阜
趣味:諜報活動
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1374156062
亜季「ああ、いや、たしかに軍事ものは好きですが、私のメインはサバゲーでして、ミリタリーマニアと言えるほどでは……」
比奈「でも、詳しいじゃないっスか、亜季さん」
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荒木比奈(20)
亜季「それなりには……程度ですよ。せいぜいが初級者程度です。ところで、どこから現れたんですか、比奈殿」
比奈「マキノさんの後ろからですよ。それに……」
あい「私もいるよ」
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東郷あい(23)
亜季「あい殿まで」
マキノ「お二人は、プロデューサーが私につけてくれたんです」
あい「教育係というやつだよ。とはいえ、レッスンはトレーナーがやるし、プロデュースはもちろん彼がやる」
比奈「要するに、アタシたちに期待されてるのは、事務所に溶け込ませることっスね」
マキノ「一緒にいる時間が学校などより短いはずの事務所内で人間関係を構築するのに、先導者がいたほうが効率的というのは理解できます」
あい「マキノくん。彼と話す時のような口調でいいんだよ?」
マキノ「……よろしいのでしょうか? 皆さんは先輩の上、年齢も私より上なのですが」
比奈「楽に話してくれるほうがいいっスよ」
亜季「同意します」
マキノ「……そう。では、そうさせてもらいましょう。それで、大和さん」
亜季「亜季でいいですよ。みんなそう呼んでますから」
マキノ「では、亜季さん。比奈さんたちが私を貴女の所へ連れてきたのは、至極もっともな理由があるわ」
亜季「ほう」
あい「さっきも言ったように、我々は新人である彼女がこの事務所になじむ手助けをすることを期待されている」
比奈「それには、まあ、雑談をするのが一番と思うわけですが」
マキノ「彼女たちは、趣味の近い人間ならば話題も広がり、盛り上がるだろうと考えたのよ。それについては私も文句なく同意できるわ」
比奈「それで、ミリタリー話、となるわけっスよ」
亜季「ははあ……。すると、マキノ殿の趣味はミリタリー関連なのですか?」
あい「いや、関連はある分野ではあるが、違う」
亜季「では、なんでしょう?」
マキノ「諜報活動、よ」
亜季「はい?」
マキノ「諜報活動」
そんなわけで、亜季とマキノを中心にミリタリー系の話をだらだらしていくSS。
本題のミリ話は明日以降に。とりあえず最初は装輪戦車の話題の予定。
亜季「趣味で、でありますか?」
マキノ「ええ、趣味で」
亜季「そ、そうですか……」
あい「まあ、気持ちはわかるが、そこはそういうものだと認めるしかあるまい」
比奈「いろいろいますしね、うちは」
亜季「……そうですね」
マキノ「なんだか、あきれられているような気配があるけれど」
亜季「あきれてはいません。ただ、予想外ではありました」
マキノ「ふむ……。なるほど。私も予想外の連続だわ。アイドルになるなんてね」
比奈「アタシもアイドルになれるなんて思いもしませんでしたよ」
あい「私もね」
亜季「それもこれも我々を見出し導くプロデューサー殿のおかげというわけでありますね!」
マキノ「あれはあれで……。いえ、まあ、いいわ」
あい「ともあれ、知っての通り、諜報活動は政治、特に外交や軍事と密接に関係する分野だ。きっと亜季くんとなら、話が弾むだろうと思ってね」
亜季「なるほど。一理ありますね。しかし、いきなり言われても……」
比奈「あ、じゃあ、アタシが話題ふってもいいですか?」
あい「ほう? なんだい?」
比奈「フィクションの中の兵器の話なんスけどね」
マキノ「ふむ。とっかかりとしては悪くないかも。私も映画や漫画は見るし、生々しさも薄いでしょう?」
あい「そうだね。いいかい、亜季くん?」
亜季「ええ、まあ……。わかる範囲で、ですけど」
比奈「では改めて。最近、漫画とかアニメで出てきた軍事ものについてちょっと気になったりしてるんスよね」
亜季「昨今は女子高生と戦車のアニメもありましたしね」
マキノ「ガールズ&パンツァー……でしたっけ?」
亜季「そうですね。設定はかなりぶっとんでましたが、あそこまで戦車に注目したアニメはありませんでしたからね!」
あい「私も奈緒くんがぜひと言うので見てみたが、エンターテインメント作品全体を見回してもなかなかないくらいの戦車づくしではあったな」
※ガールズ&パンツァー(GIRLS und PANZER)
2012年10月から2013年3月まで放送されたテレビアニメ。
戦車を用いた競技において、少女たちが全国優勝を目指すスポ根もの。
あるいは、アーニャがカチューシャと一緒にカチューシャに乗ってやってきてカチューシャを歌うアニメ。
比奈「二次大戦の映画が流行ってた頃はあったんでしょうけどね」
亜季「いやあ、映画は実写なだけにいろいろとごまかしが……。かえっていまならCGを利用できますが」
マキノ「東側の情報も出そろっているし?」
亜季「ええ。まあ、昔は昔で、まことしやかに伝えられていた『お話』が面白かった面はあるのですが」
マキノ「ふふ、たしかにね」
亜季「まあ、しかし、それはいまは置いておきましょう。比奈殿が気になるのはどんなところですか?」
比奈「ええと、ガルパンとかからはちょっと離れるんですが。キャタピラじゃなくてタイヤの戦車とか、アニメやゲームではよくあるっスよね?」
マキノ「多脚戦車とかもあるわね。さすがにあれは未来技術すぎる気がするけれど」
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士魂号L型[高機動幻想ガンパレード・マーチ]
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剣菱重工 HAW-206[攻殻機動隊S.A.C]
比奈「ええ。ああいうのって、実際はどうなのかなー……と」
亜季「あー、なるほど装輪戦車と多脚戦車ですか……」
あい「装輪、と言うのだね」
亜季「そうですね。一般的な戦車のキャタピラは日本語では無限軌道や履帯と言いまして……。そのような方式を装軌と言います」
比奈「ふむふむ」
亜季「それに対してタイヤの方式は装輪となります。多脚については、もし実用化されても多脚式と言われるのではないでしょうか」
比奈「まあ、多脚は見た目重視ですから……。実際の車で実用化されていない以上、実現性に期待はしていませんけど……」
マキノ「いえ、たしか、森林作業車では存在していたような……」
あい「ほう? あるのか、多脚」
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Plustech社(フランス)森林作業車
亜季「私も聞いたことがあります。ただ、完成はしても、製品化はされていなかったのではないでしょうか」
マキノ「コスト面で折り合いがつかなかったのかもしれないわね」
比奈「お金っスか。現実だとそこがネックですね」
あい「森林だと、人が入っていったほうが費用もかからないということだろう」
亜季「脚を持ち上げて移動というのが必要な地形となると、かなりの難地形ですから、それなら人を入れて柔軟に対応させた方が」
マキノ「作ってはみたけれど……か」
亜季「企業の場合、技術実証のために製作ということもありますからね」
あい「技術力を誇示するためのデモンストレーションだね?」
マキノ「なるほどね」
亜季「多脚に対して装輪は、普通にそこらを自動車が走っているのでもわかるとおり、十分こなれた技術です」
あい「軍事的にも装甲車などはよく知られているね」
亜季「それこそ市販されているレベルのものもありますしね」
マキノ「要人警護のために用いられる装甲車もあるわね」
比奈「重武装のものもあるってことっスかね」
亜季「はい。しかし、装輪戦車となると……」
あい「ないのかな?」
亜季「少なくとも現状は存在しません」
マキノ「その理由を聞いても?」
亜季「ええ。これを説明するには、まず、そもそも戦車というものが現在どのようなものであるかを理解してもらわないといけません」
比奈「戦車の実態っスか?」
亜季「そこまで大仰ではありませんが……。現代の戦車というものは全てMBT、日本語で言うところの主力戦車に分類されます」
比奈「あれ? 軽戦車や中戦車といった分類があったような……」
亜季「それは、かつての話ですね。現在は豆タンクも軽戦車も中戦車も重戦車も超重戦車もありません」
あい「日高愛くんが泣くね」
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日高愛(13)
マキノ「日高愛……。かの日高舞の娘にしてトップアイドル……だったような」
比奈「彼女のキャッチコピーが『とつげき豆タンク!』なんですよ」
マキノ「なるほど……。勢いは感じられるわね」
あい「ああ。同名のよしみで合ったことがあるが、これがもう元気で……。あ、いや、すまない。話を続けてくれたまえ」
亜季「はい。ともあれ、現状は主力戦車一本なわけです」
比奈「ふむふむ」
亜季「その主力戦車に求められるのは、あらゆる陸上戦力と直接戦闘を持続的に行えることなんです」
あい「それだけの火力と防御力が求められるわけだね」
マキノ「それと、機動力もでしょうね」
亜季「はい。そして、この場合、想定される陸上戦力には自分たちと同等の主力戦車も含まれます」
比奈「まあ、自分のところにもあるなら、敵にもあるのが普通っスよね。数や特徴はともかく……」
亜季「ええ。ですから、主力戦車は、自らが持つ火力と同等の打撃を受けても戦闘を継続できるだけの防御力が求められます」
マキノ「矛盾の話みたいね」
亜季「状況によっては撃ち抜かれてしまうのですがね。それでも、正面装甲で一発も受けきれないとなると、やはり、これは戦車とは言い難くなります」
あい「ん……。なんとなくわかってきたぞ。それだけの防御力を持つ装輪の車両がないということじゃないか?」
亜季「その通りです。火力だけなら主力戦車に並ぶか多少劣る程度のものはあります。しかし、装甲が同程度の装輪車両はありません。現状では」
比奈「つまり、それが装輪戦車が存在しないということなんスね」
マキノ「現状、ね」
亜季「そうです。現状です」
あい「将来にはありえると?」
亜季「その問題は難しいところですね。それより、まずはいまの時点でどのような車両があるのか、お見せしてお話を進めようかと思うのですが」
比奈「見せる?」
亜季「ネットで検索すれば画像が出てくるので……。このPCで見てもらおうかと」ゴソゴソ
あい「なるほどね」
今日はここまでー。
濃い話にしてみたいけど、かみ砕くのって大変だね!
亜季「まずは、装輪車両に行く前に、主力戦車をいくつか出してみますか。みなさんはどれがお好みですかね?」
あい「私はこのレオパルト2かな。ドイツの戦車だったよね」
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レオパルト2(2A6)
マキノ「私はM1A2ね」
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M1エイブラムス(M1A2)
比奈「あー、あれはないんですか。北欧の平べったいやつ……」
亜季「Strv.103ですか? さすが比奈殿、渋いところを攻めてきますね。これですか?」
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Strv.103(通称Sタンク)
比奈「あ、これです、これ」
亜季「なるほど。しかし、残念ながらこのSタンクはもう退役してしまったんですよ。後継はレオパルト2になりました」
比奈「へえ、そうなんスか……。絵描き的にはこの形状惹かれるんスけどね」
マキノ「……これじゃ、砲が動かないんじゃない?」
亜季「ええ。この戦車はスウェーデン軍に採用されていたのですが、スウェーデン軍が求める戦術に合致するような形態をとっています」
あい「というと?」
亜季「スウェーデンは国家政策自体、中立主義を取っていた時代が長かったのですが、国防はよりその色彩が強く、武装中立の色合いが濃いんです」
比奈「大きな軍事力を持つことで、他のところからちょっかい出されないようにしてるんスね」
マキノ「たしか、いまでもNATOに加盟していなかったわね」
亜季「その通りです。そして、そのような姿勢から、スウェーデンの戦車に求められたのは、起伏に富んだ国土を利用とした待ち伏せ戦術でした」
あい「隠れるなら、背が低い方が有利か」
亜季「はい。それに、自動装填装置を搭載し、乗員の数を抑えることにも成功しています。スウェーデン国内で効率よく使うための戦車ですね」
マキノ「砲を動かしたりして対応力を高めるより、自国に適したやり方への特化というわけか……」
亜季「ええ。まあ、特異な戦車ですね。とはいえ、先ほども言ったようにもう退役してしまいましたが」
比奈「後継が普通の戦車になったのは時代の変化っスかね?」
亜季「むしろ予算ではないですかね。コンセプトを引き継いだStrv.2000計画というのもありましたが、打ち切られました」
あい「なるほどね」
亜季「まあ、こんな変わり種もあるということですね。さて、次は現存する軍用装輪車両について見ていきましょうか」
マキノ「ええ」
亜季「装輪戦車ということになると、参考になるのは装輪自走砲ですかね」
あい「自走砲?」
亜季「文字通り、火砲を自走化したものです。本当にトラックに砲をのっけただけというようなものから、多少の装甲は施されているものまで様々です」
比奈「へえ。あ、これ知ってますよ。す、すとら……ええと」
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亜季「すごいですね。そこまでは合ってますよ」
あい「ストラヴィンスキー?」
マキノ「ストラディバリ?」
比奈「あ、思い出しました、ストライダー!……でしたっけ?」
亜季「ああっ、惜しい! ストライカーですね」
比奈「うう、外したっス」
あい「まあまあ」
マキノ「それにしても、これ、イメージ的には、いわゆる戦車に見えるのだけれど」
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ストライカーMGS
亜季「そうですね。実際、このストライカーMGSの主砲は105mm51口径ですからね」
マキノ「そう言われても……」
亜季「先ほどのStrv.103の主砲の原型になります。実際には口径長を延伸したものが搭載されましたし、世代的にはだいぶ前ですけど……」
あい「火力に関しては、しばらく前の戦車と同等、というわけか」
比奈「でも、装甲が薄い、と?」
亜季「基本的には14.5mm重機関銃弾に耐えるのが限界とされています」
あい「ふうむ……。どれくらいのものかいまひとつ想像がつかないな」
亜季「重量がかなりありますが、なんとか歩兵でも運用可能な範囲の銃で撃ち出せる弾丸で、装甲が撃ち抜ける、と言ったらわかりますかね?」
比奈「歩兵で……」
マキノ「となると、車載の武器なら、もっと簡単にダメージを与えられそうね」
亜季「ええ、その通りです。まして対戦車用の兵器なら楽に抜けます」
あい「正面からそういった兵器と対することを想定されてない、ということかな」
亜季「はい。米軍のストライカーMGSに限らず、似たようなコンセプトの車両はいろいろとありまして……。イタリア、フランス、中国と見てみましょうか」
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チェンタウロ
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AMX-10RC
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PTL-2(02式100mm装輪自走対戦車砲)
比奈「へえ、似たような感じですね、確かに」
亜季「しかし、いずれも、機関銃程度の防御力です」
マキノ「そういえば、現有兵器のスペックってどこまで信用していいのかしら? 公表されるそのままとは思えないんだけど」
亜季「どうでしょうね。輸出されたりもしますし、予算獲得のために議会を納得させる必要もあったりするので、信用できるスペックではないでしょうか」
マキノ「ああ、なるほど。そういう事情があるのね。機密をどう扱うかも大変ね」
比奈「本当に重要な機密はばれないようになってるんでしょうけどね」
亜季「もちろん、技術的な面ではしっかり機密を保っていると思いますよ」
あい「ふうむ……。ところで、これらの車両は、どんな用途に使うのかな? 正面から突っ込むのは難しそうだが」
亜季「そうですね。威力偵察が主任務ですかね。簡単に言うと、少しちょっかいを出してみて、敵の状況を把握するお仕事です」
あい「なかなか危険そうだ」
比奈「でも、待ち伏せでもない限り、いきなりのことに対応するのって大変そうじゃないっスか?」
マキノ「装甲を撃ち抜けない軽い銃を持った歩兵くらいしか対応できないうちに戻る……のが理想?」
亜季「まあ、そううまくいかないことも多いのですが。それと、前進展開ですか」
比奈「前進展開?」
亜季「見ての通り、これらの車両は六輪や八輪の装輪車両です。履帯よりは不整地踏破能力は劣るものの、路上の走行能力は高いものになります」
あい「まあ、キャタピラよりはタイヤのほうが早く移動できそうだな。舗装されている場所なら、だが」
亜季「逆に、でこぼこした地形や、ぬかるんだ場所、雪上などでは、装軌車両に分があるのですが」
比奈「それぞれに得意な場所があるわけっスね」
亜季「はい。さらに言うと、装輪車両は長距離での負担も小さくなります。装軌車両は重いのでどうしても駆動系に負担がかかりますから」
マキノ「これらの車両は装甲が薄くて軽い分、動き回りやすいと」
亜季「その上、空輸も可能です。鉄道輸送も、揚陸艦による輸送も、重く大きな車両よりたやすく出来ます」
比奈「なるほど……。単体の移動力だけではないんスね」
亜季「ええ。ともかく火力が必要なところに応急的に展開させる場合や、海外へ緊急展開しなければいけない場合などに有利となりますね」
マキノ「なるほど、それでアメリカやフランスがね……」
あい「海外植民地を多く持っていたり、世界の警察をやっていたりするからね。緊急で火力を届ける要求があるわけだ」
亜季「理解が早くて助かります。……しかし、我が国でも開発しているんですよ、この手の車両」
あい「ほう」
亜季「機動戦闘車と言いまして……。これが、イメージ図です」
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機動戦闘車の開発イメージ図
比奈「離島に空輸したり、ゲリラ部隊への対処ですか。へえ……。日本でもこんなの考えてるんですねえ」
亜季「ただ、この車両……戦車枠を潰すんじゃないかって話でいろいろとありまして」
あい「戦車枠?」
マキノ「たしか、防衛大綱で戦車の定数が定まってるのよね」
あい「ほう。そうなのか。よく知っているね、マキノくん」
マキノ「兵器単体のことはそれほどよくわからないけど、各国が公表する報告書は見ているから」
比奈「ほへー……」
亜季「昨今はネットですぐに見られますからね」
マキノ「ええ」
亜季「ともあれ、マキノ殿の言うとおり、戦車の定数は決まっております。その定数も削減されつつある現状、いかに即応性に優れた車両といえど……」
あい「戦車の枠を食いつぶしてまで配備する必要はないと」
亜季「そう考える人もいます。私はまだできあがっていない車両ですし、戦車の定数についてもどうなるかは今後次第と思っておりますが」
比奈「うーん……」
あい「どうしたね?」
比奈「いえ、なんか、こう……。たぶん、軍事好きの間では、これって微妙な話題なんですよね? 違います?」
亜季「まあ、そうです」
マキノ「へえ?」
比奈「いや、よくあるんですよ。マニアなコミュニティには」
マキノ「どういうこと?」
比奈「『問題であることはわかるが、突っつくと議論じゃなく喧嘩になりかねない』って話題が……あるんスよ」
あい「ああ……なるほどね」
亜季「国防の問題ですから、熱くなる人が出るのはしかたないのですけれどね」
マキノ「議論にならず喧嘩になるというのは論理的ではないわね」
あい「まあ、そうは言っても聞き分けのない人間はいるものさ」
亜季「……実を言えば、この手の車両を『装輪戦車』と呼ぶ言い方もあるにはあるんです。しかし、私としては、戦車と同一視して欲しくなかったんです」
比奈「この機動戦闘車の件もあって、ですか?」
亜季「ええ」
あい「なるほどね。なかなかに難しいものだ。とはいえ、聞いてみるといろいろわかることもあるね」
マキノ「さっきのスウェーデンの戦車にしても、これらの車両にしても、求められる戦い方があることとか」
比奈「それにふさわしい能力を持つように設計されてることとかっスね」
亜季「おお。素晴らしいですね。なかなか、その手のことは理解してもらえないのですよね」
あい「まあ、えてして我々のような素人は『強い兵器』をたくさん作ればいいのでは、と思ってしまうからね」
亜季「すべてにおいて最強というのは、なかなか実現しがたいですからね。まして状況によっては……」
マキノ「戦車は火力も防御力もあるけれど、重くて取り扱いが難しいようだし、といって軽くするには装甲を犠牲にする必要が出てくるようだものね」
比奈「それだけでもないんでしょうけどね」
亜季「いえ、しかし、そこまでわかってもらえれば、話した甲斐がありますよ」
あい「ふむ。ところで、話は戻るが、装輪戦車……直接に大火力と向き合うようなものに関しては、実現可能性は低いと見ているのかな?」
亜季「それに関しては……。技術的な話をしなければいけないかとも思ったのですが……」
マキノ「ですが?」
亜季「みなさんが、兵器によって求められる戦い方があるということを理解してくださったので、はっきり言ってしまうことにします」
比奈「ええ」
亜季「結局の所、戦場の要請次第だと思っています」
あい「戦場の要請?」
亜季「装輪車両において、防御力、命中率を含めた火力制御、不整地の走行性能などの要素を戦車と同等に高めるのは、技術的に困難を伴います」
マキノ「そうなのね」
亜季「ですが、戦場でそういった車両が必要と考えられれば。そうした車両を開発すべしとの意志決定があれば、技術的な問題はいずれ解決されます」
あい「ほう」
マキノ「つまり、各国は装輪による、戦車と同等の戦力を必要としていないと?」
亜季「そういうことです」
比奈「なるほど……。必要は発明の母、ですか」
マキノ「けれど、それは……。状況が変化することで、そういった車両が必要となることもありえる、ということよね」
亜季「そうですね。ですから、フィクションの世界では、それなりの理由があって存在しているものだと思いますよ。それこそ多脚戦車も」
比奈「なるほどー……」
亜季「まあ、私個人は、装輪戦闘車両に関しては、いずれこういう方向に行くんじゃないかと思っているのですが……」
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XM1219
あい「なんだね、これは?」
マキノ「それこそ、フィクションに出てきそうな外観ね」
比奈「ロボっぽいっス」
亜季「はい、これはロボットですよ」
三人「えっ!?」
亜季「米軍の未来戦闘システムの一部を担うはずだったロボット兵器です。対戦車ミサイルなどを積んで、リモートで動く車両ですね」
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(戦闘イメージ)
亜季「これを含む戦闘システムの計画自体がキャンセルされてしまったので、この車両がそのまま開発されることはないでしょうが……」
あい「似たようなものが出てくるかも、と?」
亜季「はい。人間の保護を考えずに、内部構造を守るだけの車両なら、もう少し無理が出来るんじゃないかなあ、と……。まあ、これは妄想の類ですが」
マキノ「でも、一時は予算がついていたってことは、いずれ出てきてもおかしくないわよね」
亜季「それはもちろん。これほどのものでなくても、無人兵器はどんどん出てきてますからね」
比奈「……知らないところで、予想以上に未来でした、21世紀」
あい「同感だ」
マキノ「……面白いわ」
亜季「はい?」
マキノ「このロボット兵器、興味深いわ。いえ、亜季さんの話は興味深い事ばかりよ。もしよければ、もっとお話してもらえる?」
亜季「ええ、それは構いませんが……」
比奈「ふむ。これは目論見通りっスね」
あい「ああ。しかし、興味深いのは私も同じだ。亜季くん、私もいろいろと聞かせてもらっていいかな?」
亜季「え? あ、はい」
比奈「じゃあ、あれですね。飲み物でも買ってきましょうか」
あい「そうだな、では……」
その後、我々は軍事の話からその周辺について様々に話し込んだ。
マキノくんを亜季くんに引き合わせたのは間違いなく正しかったと言えるだろう。
吾粲だったのは、私も比奈くんも話に夢中になって、レッスンに遅れそうになったことだ。
いやはや、まったく、お恥ずかしい話だ。
とはいえ、マキノくんが事務所になじむための第一歩としては成功だったのではないだろうか。
新しい仲間である彼女が、今後も皆と仲良くやってくれることを望みたい。
東郷あい
そんなわけで、装輪戦車の話はこれにておしまいです。
この後、いずもの艦名バレの件に触れて、マキノさんの得意分野の諜報の話に行く予定……だったのですが……。
いろいろとかみ砕いて書くには自分の知識が足りないと痛感したので、そちらは、もう少し勉強してからやらせてもらうことにします。
ということで、ひとまずこれにて、このスレはHTMl化申請します。
本当にただの軍事雑談になってしまいましたが、読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
知識ゼロなので質問させて。
装甲とか搭載した武器とかをそのままに足だけタイヤに変えるんじゃ駄目なの?
タイヤじゃ重さに耐えられないってこと?
駆動系の配置も違うしね。
タイヤはようは風船だから、反動で跳ねるというのもある。
>>53
技術的な課題についてすっとばしちゃったので、わかりにくいですよね。すいません。
簡単にまとめると
・装軌車両ですらもてあまし気味な現代戦車の重量を支えるのが厳しい
・元々の安定性、射撃後の揺動の制御などが、難しい(>>55が言うとおり、根本的には膨らんだゴムまりみたいなものだから)
・不整地踏破能力を高めようとすると、足回りの構造が複雑化して、装輪の利点が減じる
・車高が高くなりがち
等々の問題点があります。
まあ、装軌にしろ装輪にしろそれぞれに有利不利があるので、結局は補い合って使えばいいよね、ということになっていくわけですが。
実際には予算の制約等で補完する車両をそろえられるとは限らないのですけどねw
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