久「あら貴方は、有珠山の……岩館さん？」

揺杏「あ、覚えててくれました？」

久「ええ。決勝で戦わせて貰ったんだから、当たり前よ。それで、今日はどうしたのかしら？」

揺杏「よくぞ聞いてくれました！実はですね、着ていただきたいも のが……」

咲（どうして有珠山の人が……！？）

咲（そ、そうだ……この人が来たってことは！）



由暉子「岩館先輩やはり止めた方が」

咲（や、やっぱり来たーーっ）

久「……へぇ、衣装の試着をね？」

揺杏「どうですか？協力してもらえます？」

由暉子「……」

咲（ど、どどどどうしよ！こ、声かけた方がいいかな？あの時の言葉のお礼もしたいし……でも、なんて切り出せば……）ｿﾜｿﾜ

久「……」


由暉子「ほら清澄の方も迷惑してますよ、早く帰りましょう？」

咲（！？）


咲（か、帰っちゃうよ！部長お願い、承けて……っ！！）

久「……」ﾁﾗ

咲（……部長っ！）ｿﾜｿﾜ

久「いいわよ」

揺杏「ほ、本当ですか！？」

久「ええ、面白そうなものも見られそうだしね？」ﾌﾌ

咲「！」ﾊﾟｧ


由暉子「……」


揺杏「それでは、この衣装から……」

咲（どうして……こうなったの……）


揺杏「……いい……凄く、いいっ！」

咲（もう十回は着せ変えられてるよ……）


揺杏「……うんうん、映えると思ってたんだよね。うちの学校にはサキちゃんみたいな、素朴で可愛い子いないし……やっぱり目のつけどころが違うね、私！」

咲（しかもいつの間にか名前呼びになってる……真屋さんとは一度も話せてないのに……）ﾁﾗ

久「色々と揃えてくれたのに、私たち二人で悪いわね」

由暉子「いえ。こちらこそ連絡もなく申し訳ないです」

咲（もう少し、もう少しで終わるよね……終わったらすぐに……）


揺杏「……ささっ、これも着てみてよ！」

咲「……」

久「……凄かったわね？岩館さん。でも咲ったら、なかなか似合ってたわよ？」

咲「……」ｽﾞｰﾝ

久「特に有珠山の制服なんかーー」


咲（せっかく長野まで来てくれたのに……）

久「優希たちもいればねー、急用だったから仕方ないけれど」

咲（真屋さんと全然、話せなかった……）

久「らしくもなくはしゃいじゃったわ、こういうのもたまにはいいわねー」

咲（ちゃんと……伝えたかったな……）

久「……咲？」

咲「……」

久「……」ﾊｧ


久「……行ってきなさい、咲」


咲「へっ？」


久「真屋さんに言いたいことがあるんでしょ？だったら追いかけて、ちゃんと伝えてきなさい？」

咲「部長……」

久「まぁ……秋季大会が終わるまでは恋愛禁止だけど、ね？」

咲「！？」

咲「そっ、そそそそんなんじゃ……っ！」ｶｰ

久「いいから、ほら……早く行かないと追いつけなくなるわよ？」

咲「は、はいっ！」ｶﾞﾁｬ

ﾀﾀﾀ

久「……」

久「……伝えられてないのは、私もか」

久「はぁ……敵に塩は贈りたくないけれど、いいもの見せてもらったし……今回は特別ね」

久「……」

久「……写真、撮っとけばよかったかしら？」

揺杏「いやー清澄は当たりだったな！」


由暉子「……はぁ」

揺杏「サキちゃんたちのおかげで新境地を開拓できたよ！」

由暉子「始めは困惑してましたけどね」

揺杏「ユキは手厳しいって……あ、そういえばよかったの？」

由暉子「……なにがです？」

揺杏「んー、サキちゃんと話さないでさ。全国終わってから会いたがってたじゃん？」

由暉子「別に……会いたがってたわけじゃ……」

揺杏「ふーん、まぁいいけど。話したくなったらいつでも話せるし？」ﾆﾔﾆﾔ

由暉子「？」

揺杏「終わりよければ全てよしってこと！サキちゃんの家番もGETしたしさ」


由暉子「！？」


由暉子「そ、それはどういう……私にもお……



「ま、真屋さんっ、ちょっとお時間いいですか……っ！」


ツモ