結衣「きょうこ死んだ」 (23)
京子が交通事故にあって死んだ。
私が京子のお葬式で思ったのは悲しいとか寂しいとかじゃなくて「あっけないな」だった。
昨日まではあんなに楽しそうに遊んでたのに、今日はもう動かない。
それがとても不思議だった。
皆は凄く泣いていたけど、私は一切泣かなかった。
京子が居なくても日常は回って行く。
翌朝、私は起きて、朝食を食べて、支度をして学校に行った。
ごらく部や生徒会の皆は、休んでいるようだった。
多分、自宅で悲しみに暮れているのだろうな。
私は何時ものように授業を受けて、黒板の内容をノートに写した。
何時もよりも静かな授業風景に、少しだけ眠くなった。
お昼休みにあかりが登校してきた。
あかりの事だから、きっと「休むとみんな心配するから」という理由で出てきたんだろうな。
こんな時くらい自分の事を優先して考えてもいいのにね。
そんな事を思いながら。1人でお昼ごはんを食べた。
放課後、何時ものようにごらく部の時間が始まる。
私が部室で漫画を読んでいると、あかりがやってきた。
あかり「……結衣ちゃん」
結衣「こんにちは、あかり」
あかり「……うん、こんにちは……」
流石にあかりは疲れているようだった。
眼の下にも隈が出来ている。
私がそれを指摘すると、あかりは力なく笑った。
あかり「えへへ、昨日ちょっと、夜更かししちゃったんだ……」
それから特に会話も無く、下校時間になった。
帰宅路でも2人は一緒だったけど、特に会話は無かった。
あかり「……結衣ちゃん」
結衣「ん?」
あかり「……ばいばい」
結衣「うん、さよなら、あかり」
短い挨拶をして、あかりと別れた。
部屋に戻って、掃除をして、晩御飯を作った。
オムライスだった。
少し多めに作ったそれを無理して1人で食べた。
それから食器を洗ってお風呂に入って洗濯をして。
宿題を終わらせてから、1人で冷たい布団に入った。
1人暮らしを始めた当初はあんなに心細かったのに。
今では1人で居ても何も感じなくなっている。
これもきっと、京子のおかげなんだろうな。
そんな事を思いながら眠りについた。
結衣「おやすみ」
翌日学校に行くと千歳が登校して来ていた。
彼女もずいぶん疲れてるみたいだった。
他に大室さんや古谷さんも、もう登校してきているらしい。
結衣「おはよう、千歳」
千歳「あ……船見さん、おはよう」
結衣「綾乃は?」
千歳「……綾乃ちゃんは、まだちょっと辛いみたいで、休んでる」
結衣「そっか……」
千歳「……千鶴も」
結衣「千鶴も?」
綾乃は兎も角、千鶴までショックを受けてたのは意外だった。
彼女は、京子の事を嫌っていたと思ったのだけど。
そんな事を考えながら、今日も授業を受ける。
この教師は、何時もダイナミックな板書をする。
黒板一杯を使った解説はとても判りやすいのだけど、それをノートに写すのはちょっと大変だ。
そのまま映していたらノートに収まらなくなってしまうので、ちょっとした工夫が居る。
後から誰かが見た時にちゃんと判るように書くのが秘訣だ。
そうしないと
結衣「……」
お昼ごはんは千歳と一緒に食べる事にした。
あかりも、きっと今頃は大室さんや古谷さんと一緒に食べているのだろう。
千歳とは、主に綾乃や千鶴の事についてお話した。
京子の話題は、流石にまだ辛いだろうから一切触れなかった。
結衣「綾乃と千鶴、早く学校に来れるようになればいいね」
千歳「……そやね」
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