幸子「スカイダイビング?」 (55)
太陽の日差しが穏やかな午後、事務所でのひと時。
こんな静かな日には、趣味であるノートの清書がすこぶる捗ります。
カリ、カリッ。
……ゴシゴシ……
地味ではありますが、完成後の整ったノートを見ると満足感で顔が緩みます、ふふん。
そしてボクの顔を緩ませる原因が、もう一つ。清書したノートを見せると決まって優しく頭を撫でてくれる、ボクの——
——バンッ!——
P「やっと幸子をトップアイドルにのし上げる企画が決定したぞ!喜んでくれ、スカイダイビングだ!!」
こうして平和な昼下がりは、待ち望んだプロデューサーさんのとんでも発言で終わりを告げるのでした。
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幸子「な、何が決まったんですか?今、耳慣れない言葉を聞いた気がしたんですが」
P「ああ、驚くのも無理はない。よく聞けよ、ス カ イ ダ イ ビ ン グ だ!」
幸子「」
およそアイドルとは無縁の単語に、開いた口が塞がらないボク。
幸子「……Pさん」ジー
P「何だ、そんなに嬉しいか?ははっ、無理しなくていいぞ。今日は特別に胸をかしてやろう」カモーン
幸子「Pさんっ」
P「おうっ」
幸子「働きすぎておかしくなっちゃったんですね……可哀相に」ポンポン
P「ん?んん?」
訝しげなPさんの背中を、労うようにさすってあげる。
P「あれ、嬉しくないのか?次回、シンデレラライブのメインイベンターだぞ!」
幸子「それはもちろん嬉しいです。遅すぎる位ですが、ボクのカワイさがやっと世に認められたってことですからね!」
P「だろ?幸子が天使は空から舞い降りないと、って言ってたから頑張って企画したんだぞ!」
幸子「頑張った結果が?」
P「スカイダイビングだ!」テカテカ
幸子「ダメですこのプロデューサー、早く何とかしないと……」ガク
P「何だ、気に入らないのか……?」シュン
幸子「えっ」
P「俺は、幸子のカワイさを引き出す一番のアイデアだと思ったんだが。そうか」ズーン
幸子「え、え、何かボクが悪いみたいな空気になってませんか!?あれっ?」
?「ちょっと待つにゃ!」
幸子「!?」
P「誰だ!?」バッ
突然ソファの影から上がった声に、大げさな返事をするPさん。
幸子「誰って……わ、わざとらしいです。何か悪巧みをしているんじゃないでしょうね?」ヒキ
みく「話は聞かせてもらったにゃ!さっちゃん、Pチャンをイジメたら承知しないよ!」ビシッ
仁王立ちでボクと対峙する女性は案の定、同じ事務所の先輩アイドル前川みくさん。
そ、それにしても何を言い出すんでしょうかこの猫さんは!
幸子「これ、ボクがイジメられてる側ですよねっ!ちゃんと話を聞いてくれてましたか?」
みく「そうかにゃー?Pチャンが頑張って考えてくれた企画に、ダメだししてるんじゃにゃいのー?」
しな、っとPさんに寄りかかるとボクに流し目を送るみくさん。
幸子「そんなんじゃありません!というかみくさん、Pさんにひっつきすぎなんじゃないですか?」ムー
みく「そーぉ?普通だと思うけど、にゃ〜」ベタベタ
幸子「うぅーっ!」
みく「ふーっ!」
P「ははっ、相変わらずお前たちは仲が良いな」
幸子・みく『(こいつは……)』ジトー
みく「コホン。それで、スカイダイビングやってあげにゃいの?」
幸子「ぼ、ボクはアイドルですよ!?なんでそんな芸人さんみたいな」
?「スカイダイビング!?にょわーっ、スゴーイ☆」
幸子「!?」
P・みく『誰だ(にゃ)!?』
幸子「ま、またですか……」
またもや現れた乱入者とお約束な二人の反応に、思わず頭を抱えてしまうボク。
幸子「でもそうですね、ちょうど良いです。きらりさん、ボクを飛ばそうだなんて酷いと思いませんか?」
きらり「うきゅ?えっとねー」
きらり「きらりはー、アリだと思うにぃ☆さっちゃんのカッコいいトコロ、見てみたいなー♪」ピカー
幸子「うっ……」
あまりにも純粋な意見。きらりさんの後ろ姿に、後光が差して見える気がします。
みく「みくもー、さっちゃんのカワイイところがみたいにゃー♪」
幸子「あ、そういうの良いですから」
みく「扱いがひど過ぎるにゃ!みくは待遇の改善を求めるよ!」フカー
ノリやすい割には、攻められるともろいみくさん。
その姿がカワイイのでつい、ボクも調子に乗って絡んでしまいます。
幸子「もう、怒らないでください。撫でてあげますから、ね?」ナデナデ
みく「にゃっ!?…しょうがないにゃー、もっと撫でてくれたら考えてあげてもいいよ?」ゴロゴロ
幸子「ふふっ、仕方ない猫さんですね?いいですよ、ごろごろ…」
みく「ふにゃー、さっちゃんに骨抜きにされちゃうにゃぁ」
きらり「あー、二人ともずるいにぃ!きらりもはぴはぴすぅー☆」ハッグー
幸子・みく『ぅぐ(にゃ)っ』
P「仲睦まじいところ悪いが、そろそろ俺の相手もしてくれるか?」
みく「出たっ、悪のすうじくだにゃ!」ビシッ
きらり「にょわー、イジメっ子は成敗だにぃ☆」
P「お前ら、寝返り早くないか!?」
みく「だってにゃー、さっちゃん嫌がってるんだよ?」
きらり「かわいそうだにぃ……」
幸子「残念でしたね、Pさん!お二人を丸めこんでボクを飛ばせようとしたみたいですが、ボクにかかればこの通りです♪」フフーン
P「ああ、良い物を見せてもらったよ」
P「だが俺は諦めていないぞ、幸子」グッ
Pさんは突如真剣な顔になり、ボクの両肩を掴む。
幸子「な、何ですか急に。真面目な顔したって騙されませんからね?」
P「真剣な話だ。確かにスカイダイビングは奇抜な発想かもしれん。お前が考えているように、危険も伴うだろう」
幸子「だ、だったらやめっ」
P「だから練習には必ず俺が付き添って、万全を期す。本番迄は、一緒にだって飛ぶ。俺を信じてくれ」
幸子「一緒、に?ぁ、かお近い……です」
幸子「何で、そこまで拘るんですか?ワイヤーで吊るとか、やり方は他にもあるじゃないですか」プイ
P「そんな半端な演出じゃダメなんだ。アイドル輿水幸子の魅力を十分に伝えるために、強いインパクトがほしい」
P「俺は、それがスカイダイビングでの登場だと確信して企画した。それだけじゃ、ダメか?」
幸子「そんなの、勝手です……」
幸子「でもっ。でも、Pさんはボクに飛んで欲しいんですよね?」
P「ああそうだ。これをやれるのは、幸子しかいない。俺はそう信じてる」
幸子「……手、握ってください」
みく「ちくわ大明神」
P「うん?」
幸子「頭も、撫でてください」
P「分かった。これで、いいか?」ギュッ、ナデナデ
幸子「そ、想像するだけでこんなに武者震いしちゃうんですから……」フルフル
幸子「ボクが震えてしまう時は、ずっと、こうしていて下さい」
幸子「そう、約束してくれるなら」
みく「パクパクモグモグ」
幸子「飛んであげなくもないです……Pさんの、為に」ギュッ
ボクは怯えを振り払うように、目の前の大きな体に抱きつく。
P「……それじゃ、ダメだ」
幸子「え……何でですか?飛んであげるって言ってるのに!」
P「そこだ。幸子の為のステージなんだぞ。自ら進んでやってこそ、意味がある」
幸子「だって……で、も」
P「だから、幸子が望んでくれるんなら俺は一つだけ何でも言うことを聞いてやる」ギュッ
幸子「ぁっ…」
みく「」
一方的に抱きつく格好だったボクの背中にPさんの腕が回され、抱きしめあう形になる。
……あたたかい……
P「思ってくれるか?スカイダイビング、挑戦したいって」
幸子「くふっ……Pさんは、本当に我がままですね」スリスリ
P「我ながらそう思うよ」
幸子「——特別ですよ?ボクは優しいので、Pさんの願いを叶えてあげます」
P「ああ、聞かせてくれ」
幸子「プロデューサーさん。ボクを……連れて行ってください。誰にも届かない、高い高い所まで」
P「っはは。任せとけ!!」
P「……ところでみく、何か言ったか?」
みく「おーーっそい、にゃ!いつまで二人の世界に浸ってるんにゃ!みくとは少しだけだったのに、酷くない?」
みく「も〜、ほらっ。いい加減、離れるにゃ、よっ」グイー
P「お、おぉ。幸子、すまん。つい嬉しくて、な」ナデナデ
幸子「もぅ終わりなんですか……?」ポー
P「うん?」
幸子「っ!?……っな、ななな何でもありません!」
http://i.imgur.com/jBGZC3a.jpg
http://i.imgur.com/PIla4Cl.jpg
輿水幸子(14)
http://i.imgur.com/3X4RuFN.jpg
http://i.imgur.com/YbQOCyR.jpg
前川みく(15)
P「そ、そうか。どこか痛かったりしないか?」
幸子「だ、大丈夫です!ボクはカワイイから、プロデューサーが抱きしめたくなる気持ちもわかりますし」テレテレ
きらり「さっちゃんカワイイにぃ☆」パクパクモグモグ
みく「ちくわ食べてんじゃねーにゃ!」
きらり「みくちゃんがくれたのにぃ」シュン
みく「あ、ついにゃ。ゴメンにゃ、きらりん?あぁもう、噛ませ感がスゴいのにゃ……」ガックシ
みく「で、でもっ。さっちゃんが活躍するんだから応援してあげないとにゃ!みくは一番の味方だよ!」
きらり「あはっ、みくちゃんカッコいいにぃ☆きらりも応援するよー!」
幸子「みくさん、きらりさん……ふ、ふふーん!こんな良い友人に恵まれているのも、ボクがカワイイからですね!どやぁっ」グス
>>16 ありがてぇ……ありがてぇ。感謝です!
P「ふむ、本当にいい友達を持ったな」
みく「さて、そろそろみく達はレッスンだから失礼するにゃ。二人とも、TPOを弁えるんにゃよ?」
幸子「ボ、ボクは別にっ//」
きらり「さっちゃん、また後でねー☆」
P 「待て。みく、きらり」ゴゴゴ゙
みく「なんにゃなんにゃ?みくはもう行かないと、に゛ゃっ」ガシッ
P「良いこと思いついた」
みく「イヤな予感しかしないにゃ」
きらり「Pちゃん、なになにどしたのーっ☆」
P「応援すると言ったな?」
みく「あれはウソにゃ」ニッコリ
P「よし。お前ら、全員で飛ぶか!」
幸子・みく・きらり『な、なんだってー!?』
みくの話を聞くにゃあぁぁ……
そんな叫び声が事務所にこだまして、事務所には再び静寂が訪れるのでした。
書き溜め分終わり。もう少し続きます、また明日。
おつ
きらりならハピ☆ハピで飛んでくれる
……バラバラバラバラ……
みなさん、走馬灯ってご存じでしょうか。
刹那の瞬間、それまでの一生が映画フィルムを早送りしたように流れるという現象です。
ボクがPさんからスカウトされた時を思い出している今、これがその状態なのかも知れません。
—
——
「初めまして。君が、幸子ちゃんかな?」
いわゆる、ありきたりな初対面のご挨拶。
それがボクに向けられた初めてのPさんの言葉でした。
ただ、体育座りで真っ赤に目を腫らす少女に向けた言葉としては、若干不適当ではなかったかと思います。
幸子「!——ど、どなたですか?……ボクのお知り合いでは、なかった筈ですが」
色々なプロダクションの入所テストに挑戦していたものの、結果を出せずにいた当時。
その日も練習に身が入らずにいたボクは先生と口論になり、スタジオを飛び出してしまいました。
行く場所も無く建物の裏口で声を殺して泣いていた時に声を掛けてきたのが、その人。Pさんでした。
幸子「こんな所で初対面の女の子に声をかけるなんて、非常識だと思います」キッ
誰にも知られたくない泣き顔を見られ、スーツ姿の男性に憤りをあらわに対応するボク。
P「……すまん、配慮が足りなかったな。悪気はなかったんだが、申し訳ない」
くる、とボクに背を向け万歳の姿勢を見せながらも男性は会話を続ける。
P「先生から、スカウトの人間が来ると聞かされていなかったかな。君にも、アポをお願いしていたんだが」
幸子「……そんなこと、知りません」
本当は、思い当たる節があった。ボクを含めデビューを希望する子が、自主的に提出していたPRビデオ。
沢山のプロダクションに送られていた筈だけど、これまで反応が有ったことなど一度も無かった。
先生と物別れした際に何か言われた気もするけれど、今は思い出す気にもなれない。
P「そうか、急に頼んだからな。しかし弱った、幸子ちゃんのパフォーマンスが見れると期待して来たんだが」
若干挑発するように、ちらっ、とこちらを伺う男性。
その仕草にさらに波立つ感情を出来るだけ隠して、ことさら丁寧にお断りしておく。
幸子「失礼だとは思いますが、そんな気分じゃありません。お引取り頂けませんか?」
P「そうだな、きっとタイミングが悪かったんだ。またコンディションがいい時に、会いにこれると良いんだが」フゥ
幸子「申し訳ありませんが、期待しないでください。他の子を当たったらいかがですか?」
ここまできたら確信犯としか思えない。神経を逆撫でるような言い草に、膨らんだ怒りをそのまま放ってしまう。
P「……君は、デビューしたいんじゃなかったのかな?」
幸子「っ、だったら何だって言うんですか!?あなたに関係ないでしょう、もう帰ってください!!」
P「この場所を教えてくれたのは、君の先生だよ」
幸子「?……だ、だったら、何だっていうんです」
突然先生の話を持ち出され、勢いを削がれてしまうボク。
P「悪いが、ここに居る理由も聞かせてもらった。ああ、それが悪いとは言わない。ぶつかり合うのも成長には必要だと思うからね」
P「ただ、先生は君を信じて俺を向かわせてくれた。ここに居ることも、予想がついていたみたいだ」
P「ついさっきまで言い合っていたのに、大人だな。切り替えが早いってのは、大人を名乗るのに大事な要素じゃないかな」
P「君はまだ年齢的に幼いが、アイドルとして仕事をする気があるならチャンスを逃すな。俺が言いたいのは、それだけだ」
P「それじゃ、スタジオに戻ってるよ。もしその気になったら、来てくれれば良い」ヒラヒラ
パタン、と静かに扉を閉めて去って行く男性。
その時のボクの感情を、どう言い表せば良いでしょうか。
幸子「……す、好き放題言ってくれたくせに、何がそれだけだ、ですか……っ」プルプル
憤慨、もしくは憤怒。
ただ今思えばそれは全部次の瞬間、何かのエネルギーに変換された気がします。
幸子「——ふふっ、フフフ。」
幸子「ボクの泣き顔を見ておいて、タダで帰ろうなんていい根性ですね」
幸子「良いでしょう。お望み通り、踏み潰してあげます!」フギャー!
それから先は、あまり良く覚えていません。
思い出せるのは駆け足でスタジオへ戻り、澄まし顔のPさんに襲い掛かっ……もとい。
ボクの華麗なパフォーマンスを見せつけてあげたこと。
それを見たPさんが恭しくボクの手を取りスカウトさせて欲しい、と懇願して来たことくらい。
…たぶん、ですが。
先生、ボクは今立派にアイドルとして活動しています。
あのときは、素直に謝れなくてごめんなさい。
全部終わったら、必ずお礼に行きますから!
誰も成し遂げたことの無いチャレンジで……天使から、トップアイドルに、なります!
今日は終わり。次回、飛びます
次回城之内死す、を思い出してしまったwwww
>>37 ……
みなさん!いよいよお別れです!
地球を守る輿水幸子は大ピンチ!
しかも、デビルガンダム最終形態へ姿を変えたきらりが、モバPに襲い掛かるではありませんかっ!
果たして、全アイドルの運命やいかに!
ボクのシンデレラストーリー、最終回!
「輿水幸子大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ!!」
……バラバラバラバラ……
P「……ちこっ……、幸子!」
幸子「……はっ!?」ガクッ
幸子「え、あれ?……プロデューサー、さん」
p「おい、本当に大丈夫か?」
幸子「……不思議な夢を見ていました。もう、飛ぶんでしたっけ」
スカイダイビング本番直前、高度2,000mの上空でボクはなんと意識を失っていたらしい。
P「何だ、落ち着いてるじゃないか」
さっきまで緊張と怯えで震えていたとは思えない、とPさんは言う。
うん、妙に静かな気分です。
Pと幸子の石破ラブラブ天驚拳か……
幸子「みくさんは、自分を曲げない姿を見せてくれました」
みく『もうやけくそにゃ!すかい・ふぃーーっしゅ!げっとだにゃあぁぁ〜……』ピュー
みくさんっ……スカイフィッシュの正体はハエ等の昆虫らしいです。
幸子「きらりさんは、ハピハピパワーを分けてくれました」
きらり『きらりん・ハピ☆ハピ・ふらいんぐあたぁーーっく♪いっくよぉー……☆』ゴォー
きらりさん、それは誰へのアタックですか?Pさんの顔が青ざめています。
幸子「……今度は、ボクの番です!」
幸子「ダイブ、スタンバイ!」
P「!?」
幸子「レディ・ゴーッ!!」フギャー……
P「……いった、か……」
P「——よし、俺も続くぞ!」ヒュー
……来ましたね、Pさん!
気を抜けば意識を持っていかれそうな、強烈な風圧の中。
ボクは、確かにPさんの姿を視界に入れていた。
——実は今回のダイブ、ただ4人で飛ぶだけではありません!
練習を重ねたフォーメーション、プロジェクト『☆』開始です!!
寝る。
>>41 やったぜ。
—
——
ちひろ「皆様、ご覧頂けますでしょうか。メインイベンター、輿水幸子を始めアイドル達がライブ会場へ舞い降ります」
ファン『\うおぉぉお!/』
ちひろ「彼女らは単独でのスカイダイビングを行うため、30回以上の練習を積んできました」
ちひろ「それだけではありません。今回、特別な訓練を受け独自のフォーメーションを完成させたのです」
ちひろ「力を合わせ、アイドルの星となる。その思いの形を見届けてください!」
幸子「行きますよ!」
P「おう!」
みく「がってん承知だにゃ!」
きらり「まかせるにぃ☆」
【イメージ】
※てっぺんが幸子、時計回りにP、みく、きらりの順(○が頭部)
○
人
○< >○
∨
W`
↓
○
人
○<∨>○
W`
ファン『あ、あれはー!?』
ちひろ「フォーメーション”スター☆”完成です!」
ファン『\\おおぉーっ!//』
そのどよめきは、会場が震えるほどの迫力だったそうです。
一方ボクはPさんからのVサインで成功を確認し、ほっと胸を撫で下ろしました。
三人と別れ、パラシュートを肉眼でもはっきり見えてきたライブ会場へとコントロール。
後は、大勢のお客さんが待つ会場に降り立つだけ。
もう少し、あとちょっとでステージに立てます!
幸子「っ!?」ゴーッ!!
——待望の舞台を目前に、ボクは突風に攫われ。……セットの枠に引っかかってしまったのでした。
反動で、一瞬意識を失いそうになる。
空中ブランコのように振り回された後恐る恐る目をあけると、騒然とした会場が目に入った。
ちひろ「ただいま、アクシデントにより演目を一時中断しております。そのままお待ちください」
ちひろさんのアナウンスが遠く聞こえる。身動きしようにも、パラシュートが絡まってもがくことしか出来ない。
……危険……救出を……中断……不安になる発言が次々と耳に飛び込んでくる。
P「幸子!……体に、異常ないか!?」
顔から血の気が引くのを感じた次の瞬間、懐かしいとさえ感じられる声がボクを包んだ。
幸子「っ、Pさん!」
いち早く地上に降り立っていたPさんの呼びかけにボクは宙吊りのまま、目を丸くして応える。
P「はははっ、天使の羽が曲がってるぞ?」
幸子「これ、殆ど悪魔の羽ですよね!Pさんが決めたくせにっ」ムー
P「そうだったか?幸子によく似合ってる、カワイイぞ!」
慌しい周囲をよそに、気にした様子もなくからからと笑うものだから思わず軽口を叩いてしまう。
幸子「体は、平気です。でも」
幸子「……ごめんなさい。ボクが、油断したから」
P「ライブにアクシデントはつきものだ、気にするな!それに、幸子ならそのままでも行けるだろ?」チョイチョイ
首元を示すジェスチャー。事前に用意していたワイヤレスマイクのグリーンランプに今頃気づく。
Pさんはそのままアナウンス席に向かい、両手で大きく○の合図。
その先を見ると、大きくため息をついた後に苦笑いでOKの返事を返すちひろさんの姿が見えた。
幸子「な、ななっ、もしかしてマイクが生きてるのを確認しにきただけですか!?」
P「まさか。代わりのヤツも持ってきてたぞ、そんな気の利かない男に見えるか?」
幸子「そんな話、してないもん!Pさんのバカ、鈍感、イジメっ子!!」フギャー
ヒョイ、と得意げに代替らしいマイクを見せ付けてくるPさんに罵倒を浴びせる。
幸子「まったく……でも、来てくれたから。信じてくれたから、許してあげます。何しろ、」カチッ
幸子『ボクはカワイイですからね!』キィーン
ファン『\天使が舞い降りたーっ!/』
幸子『』パクパク
突然入ったマイクと、取り払われていくカーテンに頭が追いついて行かない。
足元にはちゃっかりセットの陰に隠れたPさんと、いつの間にか隣に陣取ったみくさんときらりさん。
みく「やったるにゃー!さっちゃん、ふぁいとだよっ!」ガッツポーズ
きらり「さっちゃん、すっごくカワイイにぃ☆後で一緒に歌おうねぇ♪」
アナウンス席に目を向けると「巻きで!」と書かれたボードをかかえたちひろさんの姿が見える。
……もぅ。残念ですが、Pさんへのお説教は後回しみたいです。
目の前にはパノラマのように広がるライブ会場と、隙間の無いほどに集まった大勢のお客さん。
幸子『皆さん、お行儀よく待てて関心ですね。カワイイボクが褒めてあげますよ!』
幸子『ご褒美に、空から舞い降りた天使なボクの歌声を心に刻み込んであげます♪』
幸子『それでは聞いてください。——』
重なる前奏と、続ける詩に言葉をのせて。
視界の隅にプロデュサーさんを映したまま、ボクは最初の曲を歌いはじめました。
おわり。読んでくれた方、レスをくれた皆様。
ありがとうございました!
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